(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】粒子群特性測定装置、粒子群特性測定方法、粒子群特性測定装置用プログラム、粒子径分布測定装置及び粒子径分布測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20241126BHJP
【FI】
G01N15/0227
(21)【出願番号】P 2021552335
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2020037815
(87)【国際公開番号】W WO2021075309
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2019188443
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】立脇 康弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真悟
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-277687(JP,A)
【文献】特開2017-116260(JP,A)
【文献】特開2000-146817(JP,A)
【文献】特開2015-105898(JP,A)
【文献】特開2013-015357(JP,A)
【文献】特開平04-036637(JP,A)
【文献】特表2015-520397(JP,A)
【文献】特開2001-56282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の特性である粒子群特性の時間変動を測定するものであって、
前記粒子群を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された撮像画像を処理し、当該撮像画像に映り込んだ粒子の情報である粒子情報を抽出する粒子情報抽出部と、
時系列に沿った複数時点における前記粒子群特性を、それぞれの時点以前に撮像された複数の前記撮像画像から抽出される前記粒子情報に基づいて算出する粒子群特性算出部と、を備え、
前記複数の時点のうちの1つの時点における前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像の一部は、それ以前の時点において前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像の一部と画像取得時間帯が重複している、粒子群特性測定装置。
【請求項2】
前記1つの時点における前記粒子群特性の算出に用いた前記複数の撮像画像は、前記1つの時点の1つ前の時点における前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像と部分的に重複する、請求項1に記載の粒子群特性測定装置。
【請求項3】
前記粒子群特性算出部が、各時点において、その直近に前記撮像画像から抽出された前記粒子情報を含む複数の前記粒子情報に基づいて前記粒子群特性を算出する請求項1又は2に記載の粒子群特性測定装置。
【請求項4】
前記粒子群特性算出部が、撮像された順番が連続する一定数の前記撮像画像から抽出された前記粒子情報に基づいて、各時点における前記粒子群特性を算出する請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子群特性測定装置。
【請求項5】
前記粒子群特性の算出を指令する算出指令信号を前記粒子群特性算出部に出力する算出指令部をさらに備え、
前記算出指令部が所定の時間間隔毎に前記算出指令信号を出力する請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子群特性測定装置。
【請求項6】
前記粒子群特性の算出を指令する算出指令信号を前記粒子群特性算出部に出力する算出指令部をさらに備え、
前記算出指令部は、前記粒子情報抽出部が所定数の前記撮像画像から前記粒子情報を抽出する毎に前記算出指令信号を出力する請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子群特性測定装置。
【請求項7】
前記粒子群特性算出部により算出された前記各時点における算出結果をリアルタイムで表示させる表示制御部をさらに備える請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子群特性測定装置。
【請求項8】
前記粒子群特性算出部が異なる複数の前記粒子群特性を算出するものであり、
前記表示制御部が、当該複数の前記粒子群特性を同一画面に表示する請求項7に記載の粒子群特性測定装置。
【請求項9】
前記粒子群特性が、前記粒子群を構成する複数の粒子の代表粒子径である請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子群特性測定装置。
【請求項10】
分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の特性である粒子群特性の時間変動を測定する方法であって、
前記粒子群を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにおいて撮像した撮像画像を処理し、当該撮像画像に映り込んだ粒子の情報である粒子情報を抽出する粒子情報抽出ステップと、
時系列に沿った複数時点における前記粒子群特性を、それぞれの時点以前に撮像された複数の前記撮像画像から抽出される前記粒子情報に基づいて算出する粒子群特性算出ステップと、を備え、
前記複数の時点のうちの1つの時点における前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像の一部は、それ以前の時点において前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像の一部と画像取得時間帯が重複している、粒子群特性測定方法。
【請求項11】
分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の特性である粒子群特性の時間変動を測定する粒子群特性測定装置用のプログラムであって、
前記粒子群を撮像する撮像部としての機能と、
前記撮像部により撮像された撮像画像を処理し、当該撮像画像に映り込んだ粒子の情報である粒子情報を抽出する粒子情報抽出部としての機能と、
時系列に沿った複数時点における前記粒子群特性をそれぞれの時点以前に撮像された複数の前記撮像画像から抽出される前記粒子情報に基づいて算出する粒子群特性算出部としての機能と、
をコンピュータに発揮させ、
前記複数の時点のうちの1つの時点における前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像の一部は、それ以前の時点において前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像の一部と画像取得時間帯が重複している、粒子群特性測定装置用のプログラム。
【請求項12】
分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の粒子径分布を測定するものであって、
前記分散媒と前記粒子を混合して懸濁液とする混合槽と、測定セルとの間で、前記懸濁液を循環させる循環系と、
前記測定セル内を流れる前記懸濁液にレーザ光を照射して生じる散乱光に基づいて前記粒子群の粒子径分布を測定する光学式測定系と、
前記循環系を流れる前記懸濁液中の前記粒子群の特性の時間変動を測定する請求項1に記載の粒子群特性測定装置と、
を備える粒子径分布測定装置。
【請求項13】
分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の粒子径分布を測定する方法であって、
前記分散媒と前記粒子を混合して懸濁液とする混合槽と、測定セルとの間で、前記懸濁液を循環させる循環ステップと、
請求項10に記載の方法により、循環する前記懸濁液中の前記粒子群の特性の時間変動を測定する粒子群特性測定ステップと、
測定セル内を流れる前記懸濁液にレーザ光を照射して生じる散乱光に基づいて前記粒子群の粒子径分布を測定する粒子径分布測定ステップと、
を含む粒子径分布測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の特性(粒子群特性ともいう)の時間変動を測定する粒子群特性測定装置、粒子群特性測定方法、粒子群特性測定装置用プログラム、粒子径分布測定装置及び粒子径分布測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分散媒中に分散させた粒子群は、粒子の分散や凝集等によりその状態が経時的に変化することが知られている。そのため、例えば粒子群の粒子径分布等の測定を行う際には、予め粒子群の例えば代表粒子径等の粒子群特性の時間変動を測定して粒子群の状態をモニタリングしておき、粒子群が所望の状態になってから粒子径分布測定を行いたいといった要望がある。
【0003】
従来このような粒子群特性の時間変動の測定には、粒子群にレーザ光を照射して生じる回折光や散乱光の光強度を検出するレーザ回折・散乱方式の測定装置が用いられることがある(特許文献1)。しかしこのレーザ回折・散乱方式では、レーザの安定性の問題から測定前にブランク測定を行う必要があるため、長時間にわたって粒子群特性の時間変動を測定することが難しいという問題がある。
【0004】
そこで、光を照射した粒子群を撮像して得られる撮像画像を処理し、撮像画像に写り込んだ粒子の情報(粒子情報ともいう)を抽出する等して代表粒子径等の粒子群特性を算出する、所謂画像解析方式の装置を用いて粒子群特性の時間変動を測定することが考えられている。この画像解析方式の装置であれば、ブランク測定を必要としないため、長時間にわたる粒子群特性の時間変動の測定が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら画像解析方式の装置を用いる場合には、撮像時のサンプルからの透過光量を十分に確保すべくサンプル中の粒子の濃度を低くする必要があるため、1つの撮像画像に写り込む粒子の数が少なくなってしまう。そのため、1つの撮像画像を処理してこれに写り込む粒子の粒子径等の粒子情報に基づいて粒子群特性を算出する従来の画像解析方式の装置では、算出される粒子群特性に含まれる統計的な誤差が大きくなってしまう。この問題を解決するには、統計誤差を許容範囲まで低減するのに必要な数の撮像画像が得られる度に当該複数の撮像画像を用いて粒子群特性を算出することも考えられる。しかしながらこのやり方では、必要な数の撮像画像を取得するのに時間が掛かってしまうため、粒子群特性の更新間隔が長くなり、その時間変動を把握しにくいという問題がある。
【0007】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、撮像画像に基づいて粒子群特性の時間変動を測定するものであって、算出される粒子群特性に含まれる統計的な誤差を低減でき、かつその時間変動を把握し易い粒子群特性測定装置を提供することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る粒子群特性測定装置は、分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の特性である粒子群特性の時間変動を測定するものであって、前記粒子群を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された撮像画像を処理し、当該撮像画像に映り込んだ粒子の情報である粒子情報を抽出する粒子情報抽出部と、時系列に沿った複数時点における前記粒子群特性を、それぞれの時点以前に撮像された複数の前記撮像画像から抽出される前記粒子情報に基づいて算出する粒子群特性算出部とを備え、前記粒子群特性算出部が、各時点における前記粒子群特性を、それよりも前の時点における前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像と、撮像した時間帯が一部重複する複数の前記撮像画像から抽出された前記粒子情報に基づいて算出することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、各時点における粒子群特性を、複数の撮像画像から抽出される粒子情報に基づいて算出するようにしているので、1つの撮像画像から抽出される粒子情報に基づいて算出する場合に比べて粒子情報の統計量を多くでき、算出される粒子群特性に含まれる統計的な誤差を低減できる。しかも、各時点における粒子群特性を、それよりも前の時点における粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像と撮像した時間帯が一部重複する複数の撮像画像から抽出された粒子情報に基づいて算出するように構成されており、すなわち各時点における粒子群特性の算出に用いられる複数の撮像画像の一部として、それよりも前の時点までに既に得られている撮像画像を利用するので、統計誤差を許容範囲まで低減するのに必要な数の粒子情報を確保するのにかかる時間を短縮でき、各時点における粒子群特性を短時間で算出することができる。これにより、算出される粒子群特性に含まれる統計的な誤差を低減しながらも、その時間変動を把握しやすくできる。
【0010】
前記粒子群特性測定装置は、前記粒子群特性算出部が、各時点における前記粒子群特性を、その1つ前の時点における前記粒子群特性の算出に用いられた複数の前記撮像画像と一部が重複する複数の前記撮像画像から抽出された前記粒子情報に基づいて算出することが好ましい。
このようにすれば、各時点における前記粒子群特性を、その1つ前の時点における粒子群特性の算出に用いられた複数の撮像画像と一部が重複する複数の撮像画像から抽出された粒子情報に基づいて算出するようにしており、すなわち各時点における粒子群特性をその1つ前の時点における粒子群特性の算出に用いられる粒子情報の一部を加味して算出するので、隣り合う時点間における粒子群特性の変化量を小さくできる。これにより、隣り合う時点間における粒子群特性の変化量を小さくすることで、各時点における粒子群特性を平滑化し、その時間変動を劇的に把握しやすくできる。
【0011】
前記粒子群特性測定装置は、前記粒子群特性算出部が、各時点においてその直近に抽出された前記粒子情報を含む複数の前記粒子情報に基づいて前記粒子群特性を算出することが好ましい。
このようにすれば、各時点において算出される粒子群特性を、各時点における粒子群の最新状態を反映したものにできる。
【0012】
前記粒子群特性算出部の態様として、撮像された順番が連続する一定数の前記撮像画像から抽出された前記粒子情報に基づいて、各時点における前記粒子群特性を算出するものを挙げることができる。
【0013】
前記粒子群特性測定装置は、前記粒子群特性の算出を指令する算出指令信号を前記粒子群特性算出部に出力する算出指令部をさらに備え、前記算出指令部が所定の時間間隔毎に前記算出指令信号を出力することが好ましい。
このようにすれば、一定の時間毎の粒子群特性の変動を把握できるので、ユーザ利便性を高められる。
【0014】
前記粒子群特性測定装置は、前記粒子群特性の算出を指令する算出指令信号を前記粒子群特性算出部に出力する算出指令部をさらに備え、前記算出指令部は、前記粒子情報抽出部が所定数の前記撮像画像から前記粒子情報を抽出する毎に前記算出指令信号を出力することが好ましい。
このようにすれば、粒子群を撮像した時刻に対する粒子群の変動を把握できるので、ユーザ利便性を高められる。
【0015】
前記粒子群特性測定装置は、前記粒子群特性算出部により算出された前記各時点における算出結果をリアルタイムで表示させる表示制御部をさらに備えることが好ましい。
このようにすれば、ユーザは、粒子群特性の時間変動をリアルタイムで確認することができる。
【0016】
粒子群特性測定装置は、前記粒子群特性算出部が異なる複数の前記粒子群特性を算出するものであり、前記表示制御部が当該複数の前記粒子群特性を同一画面に表示することが好ましい。
このようにすれば、複数の粒子群特性として互いに異なる種類のものを同一画面に表示することにより、粒子群の状態の時間変動を把握することができる。例えば、複数の粒子群特性として代表粒子径D50と代表アスペクト比とを表示する場合、代表粒子径D50の値が経時的に小さくなり、アスペクト比が経時的に大きくなっていると、分散している粒子が壊れたり変形したりしている可能性があることを把握できる。
【0017】
前記粒子群特性の具体的態様としては、前記粒子群を構成する複数の粒子の代表粒子径を挙げることができる。
【0018】
また本発明の粒子群特性測定方法は、分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の特性である粒子群特性の時間変動を測定する方法であって、前記粒子群を撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップにおいて撮像した撮像画像を処理し、当該撮像画像に映り込んだ粒子の情報である粒子情報を抽出する粒子情報抽出ステップと、時系列に沿った複数時点における前記粒子群特性を、それぞれの時点以前に撮像された複数の前記撮像画像から抽出される前記粒子情報に基づいて算出する粒子群特性算出ステップと、を備え、前記粒子群特性算出ステップにおいて、各時点における前記粒子群特性を、それよりも前の時点における前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像と、撮像した時間帯が一部重複する複数の前記撮像画像から抽出された前記粒子情報に基づいて算出することを特徴とする。
このような粒子群特性測定方法であれば、前記した本発明の粒子群特性測定装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0019】
また本発明の粒子群特性測定装置用のプログラムは、分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の特性である粒子群特性の時間変動を測定する粒子群特性測定装置用のものであって、前記粒子群を撮像する撮像部としての機能と、前記撮像部により撮像された撮像画像を処理し、当該撮像画像に映り込んだ粒子の情報である粒子情報を抽出する粒子情報抽出部としての機能と、時系列に沿った複数時点における前記粒子群特性をそれぞれの時点以前に撮像された複数の前記撮像画像から抽出される前記粒子情報に基づいて算出するものであり、各時点における前記粒子群特性を、それよりも前の時点における前記粒子群特性の算出に用いた複数の前記撮像画像と、撮像した時間帯が一部重複する複数の前記撮像画像から抽出された前記粒子情報に基づいて算出する粒子群特性算出部としての機能と、をコンピュータに発揮させることを特徴とする。
このような粒子群特性測定装置用プログラムであれば、本発明の粒子群特性測定装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0020】
また本発明の粒子径分布測定装置は、分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の粒子径分布を測定するものであって、前記分散媒と前記粒子を混合して懸濁液とする混合槽と、測定セルとの間で、前記懸濁液を循環させる循環系と、前記測定セル内を流れる前記懸濁液にレーザ光を照射して生じる散乱光に基づいて前記粒子群の粒子径分布を測定する光学式測定系と、前記循環系を流れる前記懸濁液中の前記粒子群の特性の時間変動を測定する、前記した本発明の粒子群特性測定装置と、を備えることを特徴とする。
このような粒子径分布測定装置であれば、前記した本発明の粒子群特性装置により循環系を流れる懸濁液中の粒子群特性をモニタリングするので、循環系内における粒子群特性の時間変動を把握しやすい。このため、従来に比べてより適切なタイミングで光学式測定系を用いた粒子径分布の測定を開始することができる。
【0021】
また本発明の粒子径分布測定方法は、分散媒中に分散した複数の粒子から成る粒子群の粒子径分布を測定する方法であって、前記分散媒と前記粒子を混合して懸濁液とする混合槽と、測定セルとの間で、前記懸濁液を循環させる循環ステップと、前記した本発明の粒子群特性測定方法により、循環する前記懸濁液中の前記粒子群の特性の時間変動を測定する粒子群特性測定ステップと、測定セル内を流れる前記懸濁液にレーザ光を照射して生じる散乱光に基づいて前記粒子群の粒子径分布を測定する粒子径分布測定ステップと、を含むことを特徴とする。
このような粒子径分布測定方法によれば、本発明の粒子径分布測定装置と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本発明によれば、粒子群の撮像画像に基づいて粒子群特性の時間変動を測定するものであって、算出される粒子群特性に含まれる統計的な誤差を低減でき、かつその時間変動を把握し易い粒子群特性測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態の粒子径分布測定装置の全体構成を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態の撮像部による撮像画像の一例を示す図。
【
図3】同実施形態の粒子群特性測定装置の機能ブロック図。
【
図4】同実施形態の粒子群特性測定装置による粒子群特性算出の流れを説明する図。
【
図5】同実施形態のディスプレイの表示画面の一部を例示する画面図。
【
図6】同実施形態のディスプレイの表示画面の一部を例示する画面図。
【
図7】同実施形態の粒子径分布測定装置の粒子情報抽出動作を示すフローチャート。
【
図8】同実施形態の粒子径分布測定装置の粒子群特性算出動作を示すフローチャート。
【
図9】他の実施形態の粒子群特性測定装置の機能ブロック図。
【符号の説明】
【0024】
200・・・粒子群特性測定装置
21・・・画像取得用セル
22・・・画像取得用光源
23・・・撮像部
24・・・第2情報処理装置
241・・・粒子情報抽出部
242・・・記憶部
243・・・粒子群特性算出部
245・・・表示制御部
25・・・ディスプレイ
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る粒子群特性測定装置200について図面を参照して説明する。なお本実施形態の粒子群特性測定装置200は、分散媒中に分散された複数の粒子から成る粒子群の粒子径分布を測定する粒子径分布測定装置100の一部を構成している。以下では、粒子径分布測定装置100の全体構成をまず説明し、その後に粒子群特性測定装置200の構成を説明する。
【0026】
粒子径分布測定装置100は、粒子群にレーザ光を照射した際に生じる散乱光の光強度を検出することにより、粒子群の粒子径分布を測定するものである。具体的にこの粒子径分布測定装置100は、
図1に示すように、試料投入槽111とレーザ回折用セル112の間を循環流路113を介し接続し、粉体試料を分散媒中に分散させた懸濁液を循環させるようにした循環系11と、レーザ回折用セル112内を流れる懸濁液にレーザ光を照射して生じる散乱光に基づいて粒子群の粒子径分布を測定する光学式(具体的には回折/散乱式)測定系12と、循環系11を流れる懸濁液中の粒子群の特性(粒子群特性ともいう)の時間変動を測定する粒子群特性測定装置200と、により構成される。
【0027】
試料投入槽111は、投入された複数の粒子を含む粉体試料とこれを分散させる分散媒(例えば純水やアルコールなど)とを混合して懸濁液とするものである。粉体試料と分散媒とを混合することで、粉体試料が含む粒子が分散媒中に分散されて粒子群を成す。
【0028】
循環系11には、懸濁液を強制的に循環させる遠心型の循環ポンプ114が設けられており、試料投入槽111内で混合された懸濁液をレーザ回折用セル112に送り出せるようになっている。
【0029】
レーザ回折用セル112は、所謂フロー式のものであり、外部から導入される懸濁液を、対向する一対の透光板の間に液密に流通させて外部に導出し得るように構成されている。この一方の透光板側から他方の透光板側に向かうようにレーザ光が照射される。
【0030】
光学式測定系12は、レーザ回折用セル112内の懸濁液にレーザ光を照射するレーザ光源121と、レーザ光の照射により生じる散乱光の強度を散乱角に応じて検出する複数の光検出器122と、複数の光検出器122により出力される光強度信号に基づいて粒子群の粒子径分布を算出する第1情報処理装置123とを備える。
【0031】
第1情報処理装置123は、物理的にいえば、CPU、メモリ、入出力インターフェース等を備えた汎用乃至専用のコンピュータであり、メモリの所定領域に格納された所定プログラムに従ってCPUや周辺機器を協働させることにより、粒子径分布算出部123aとしての機能を少なくとも発揮する。
【0032】
粒子径分布算出部123aは、複数の光検出器122から出力される光強度信号に基づいて、懸濁液中の粒子群の粒子径分布を算出する。具体的には、複数の光検出器122から出力された光強度信号が示す、散乱角とその散乱角における散乱光の強度から成る散乱パターンと、Mie散乱理論やRayleigh散乱理論やFraunhofer回折理論等から導かれる所定の理論演算式に基づいて、散乱パターンに対応する粒子径分布を算出する。
【0033】
粒子群特性測定装置200は、懸濁液中の粒子群を連続的に撮像して得られる撮像画像を処理することにより、粒子群特性の時間変動を測定するものである。具体的にこの粒子群特性測定装置200は、循環流路113に接続され、その内部を懸濁液が流通する画像取得用セル21と、画像取得用セル21内の懸濁液に光を照射する画像取得用光源22と、画像取得用セル21内の懸濁液を撮像する撮像部23と、撮像部23により撮像された撮像画像を処理して粒子群特性を算出する第2情報処理装置24と、第2情報処理装置24の算出結果を表示するディスプレイ25と、を備える。
【0034】
画像取得用セル21は、所謂フロー式のものであり、外部から導入される懸濁液を対向する一対の透光板の間に流通させて外部に導出し得るようにしたものである。一方の透光板から他方の透光板に向かうように光が照射される。
【0035】
画像取得用光源22は、画像取得用セル21内の懸濁液に対して平行光を照射するものであり、例えば白色LED等のLED装置と、当該LED装置から発せられた光を集光して平行光にするレンズ等の集光機構とを備えている。
【0036】
撮像部23は、画像取得用セル21内を流れる懸濁液中の粒子群を連続的に撮像し、その撮像画像(
図2参照)を示す撮像画像データを第2情報処理装置24に逐次出力するものである。撮像部23は、具体的には、カラーもしくはモノクロのCCDやCMOSイメージセンサ等の撮像素子を備えるものである。
【0037】
本実施形態の撮像部23は、撮像を指令する撮像指令信号を第2情報処理装置24から受け付け、これをトリガとして懸濁液中の粒子群の撮像を行うように構成されている。ここでは撮像部23は、撮像指令信号を受け付ける度に懸濁液中の粒子群を1回撮像し、これを出力するように構成されている。
【0038】
第2情報処理装置24は、物理的にいえば、CPU、メモリ、入出力インターフェース等を備えた汎用乃至専用のコンピュータである。この情報処理装置は、メモリの所定領域に格納された所定プログラムに従ってCPUや周辺機器を協働させることにより、
図3に示すように、粒子情報抽出部241と、記憶部242と、粒子群特性算出部243と、算出指令部244と、表示制御部245としての機能を少なくとも発揮する。
【0039】
粒子情報抽出部241は、撮像部23から出力された撮像画像データを受け付け、当該撮像画像データが示す撮像画像を逐次処理し、当該撮像画像に写り込んだ粒子の情報である粒子情報を抽出する。具体的にこの粒子情報抽出部241は、撮像画像データが示す撮像画像に対して、例えば平滑化、ノイズ除去、切り離し、円形分離、細線化、二値化、強調及び/又はエッジ検出等の画像処理を施し、撮像画像内に写り込んだ粒子(具体的には、所定の被写界深度内にある、所謂ピントが合っている粒子)のそれぞれの粒子情報を抽出する。この「粒子情報」とは、粒子群を構成する個々の粒子の物性値であり、例えば粒子径(面積円相当径)、アスペクト比、長軸長さ、短軸長さ、最大距離、周長、面積(実測μm2)、面積(ピクセル:粒子内の画素数)、真円度、凸性扁平率、撮像画素の強度等が挙げられるがこれに限らない。
【0040】
粒子情報抽出部241は、撮像画像データを受け付けると、当該撮像画像を即時処理して個々の粒子情報を抽出する。そして、1つの撮像画像から抽出した個々の粒子の粒子情報を示す粒子データを、1つの粒子データ群としてメモリの所定領域に設定された記憶部242に格納する。粒子情報抽出部241は、撮像画像データを受け付ける度にこれを処理して抽出した新たな粒子データ群を、それまでに格納した粒子データ群と区別して記憶部242に格納する。
【0041】
例えば
図4に示すように、粒子情報抽出部241は、撮像部23から受け付けたn番目の撮像画像に3つの粒子が写り込んでいる場合、当該撮像画像から3つの粒子のそれぞれの粒子径を粒子情報として抽出する。そしてこの抽出した3つの粒子径に関する粒子データを、第n粒子データ群として記憶部242に格納する。
【0042】
そして粒子情報抽出部241は、受け付けた1つの撮像画像から粒子情報を抽出し終えると、撮像指令信号を撮像部23に即時出力するように構成されている。なお本実施形態の粒子情報抽出部241は、撮像画像から粒子情報を抽出し終えると、当該撮像画像を示す撮像画像データを記憶部242に格納することなく消去するように構成されている。これにより、記憶部242に格納されるデータ量を軽減することができる。
【0043】
記憶部242は、所定の上限数の粒子データ群を格納するように構成されている。記憶部242は、格納している粒子データ群の数が上限に達している場合、粒子データ群を新たに1つ受け付けると、格納された順番が最も古い1つの粒子データ群を消去するように構成されている。
【0044】
粒子群特性算出部243は、時系列に沿った複数時点における粒子群特性を、それぞれの時点以前に撮像された複数の撮像画像から抽出された粒子情報に基づいて算出する。具体的にこの粒子群特性算出部243は、記憶部242に格納されている粒子データ群を参照し、各時点以前に抽出された複数の粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいて、各時点における粒子群特性を算出するように構成されている。この「粒子群特性」とは、粒子群を構成する個々の粒子の粒子情報の代表値を意味する。例えば粒子情報が「粒子径」である場合、粒子群特性は「代表粒子径(D10、D50、D90等)」である。
【0045】
しかして本実施形態の粒子群特性算出部243は、各時点における粒子群特性を、少なくともその1つ前の時点における粒子群特性の算出に用いられた複数の粒子データ群と一部が重複する複数の粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいて算出する。すなわち粒子群特性算出部243は、1つ前の時点における粒子群特性の算出に用いる粒子情報を加味して、その次の時点における粒子群特性を算出するように構成されているといえる。
【0046】
粒子群特性算出部243は、各時点における粒子群特性を、少なくともその1つ前の時点において直近に抽出された粒子データ群と、これよりも抽出順が新しい粒子データ群と、を含む複数の粒子データ群に基づいて算出する。より具体的にこの粒子群特性算出部243は、各時点において、その直近に抽出された粒子データ群を含む複数の粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいて粒子群特性を算出する。さらには、抽出された順番が連続する一定数の粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいて、各時点における粒子群特性を算出する。ここで、各時点において参照する粒子データ群の数はユーザが任意に設定することができる。
【0047】
例えば、各時点において参照する粒子データ群の数が「20」に設定されている場合、
図4に示すように、粒子群特性算出部243は、あるP時点における粒子群特性を、直近に抽出された第n粒子群情報データ群から、第n-19粒子データ群まで遡った連続する20個の粒子データ群に基づいて算出する。そして粒子群特性算出部243は、その次のQ時点における粒子群特性を、直近に抽出された第n+6粒子群情報データ群から、第n-13粒子データ群まで遡った連続する20個の粒子データ群に基づいて算出する。
【0048】
具体的にこの粒子群特性算出部243は、
図4に示すように、各時点における粒子群特性を算出するにあたり、複数の粒子データ群に含まれる複数の粒子情報に基づくヒストグラム(横軸:階級、縦軸:頻度)を算出し、当該ヒストグラムに基づき粒子群特性を算出する。粒子群特性算出部243は、各時点において、異なる複数の粒子群特性を算出するように構成されてもよい。粒子群特性算出部243は、各時点において、例えば代表粒子径D
10、D
50及びD
90等の複数の同種の粒子群特性を算出してもよく、代表粒子径とアスペクト比と真円度等の異なる種類の粒子群特性を算出してもよい。
【0049】
粒子群特性算出部243は、各時点における粒子群特性を算出すると、これを示す粒子群特性データを即時出力する。またこれとともに、粒子群特性のために算出したヒストグラムを示すヒストグラムデータを出力するようにしてもよい。
【0050】
算出指令部244は、粒子群特性の算出を指令する算出指令信号を粒子群算出部243に出力する。本実施形態の算出指令部244は、第2情報処理装置24に内蔵されたクロックからの信号に基づいて時間を計測し、所定のタイミングで算出指令信号を出力するように構成されている。算出指令部244が算出指令信号を出力するタイミングは、一定の時間間隔(例えば1秒間隔)であってもよく、所定の時刻であってもよい。そして粒子群特性算出部243は、算出指令信号を受け付けると、記憶部242から粒子データを読み込み、粒子群特性を算出する。
【0051】
表示制御部245は、粒子群特性データを受け付け、これを算出結果としてディスプレイ25に表示させる。具体的に表示制御部245は、横軸を時間とし、縦軸を粒子群特性の値とするグラフをディスプレイ25に表示し、粒子群特性算出部243が算出した各時点における粒子群特性をこのグラフ上に順次プロットしてゆく。ここで、各プロットの横軸の位置は、粒子群特性を算出した時刻を示しており、第2情報処理装置24に内蔵されたクロックに基づくものである。具体的にこの時刻は、クロックが算出指令信号を出力した時刻である。なお、粒子群特性算出部243により算出された粒子群特性が複数種類ある場合、表示制御部245は、当該複数種の粒子群特性を同一グラフ上にプロットしてもよい。また表示制御部245は、表示されている最新時点における粒子群特性が示す値が所定の範囲内にある場合(例えば、代表粒子径D50が所定の閾値Dthを超えた場合)に、粒子径分布測定を開始してよい旨を示すメッセージをディスプレイ25に表示させる。
【0052】
また表示部制御部は、ヒストグラムデータを受け付け、これを算出結果としてディスプレイ25に表示させてもよい。
【0053】
ディスプレイ25に表示される画面の一例を
図5及び6に示す。
図5に示すように、ディスプレイ25には、粒子群特性(ここでは代表粒子径であるD
10、D
50及びD
90)の時間変動を示す粒子群特性変動グラフが表示される。この粒子群特性グラフは、一定時間毎(ここでは1秒毎)に最新値がプロットされる。
図5に示すように、所定の粒子群特性(ここではD
50)の値が設定した閾値D
thを下回ると、レーザ回折の実行をユーザに促すメッセージが表示される。また、
図6に示すように、ディスプレイ25には、各時点における連続する直近複数枚の撮像画像から抽出された粒子情報から算出されるヒストグラム(横軸:粒子径、縦軸:頻度とする粒子径分布)がリアルタイムで表示される。このヒストグラムは、一定時間毎(ここでは1秒毎)に最新の状態に更新される。
図5及び
図6に示す画面は、別々の画面に表示されてもよく、同一画面に表示されてもよい。
【0054】
次に、かかる構成の粒子群特性測定装置200の動作について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
(粒子情報抽出動作)
懸濁液から粒子情報を抽出する動作について説明する。当該動作は、粒子径分布測定装置100において、試料投入槽111内に粉体試料を投入して分散媒を混合し、得られた懸濁液を循環系11で循環させ始めた後に開始される。
【0056】
まず画像取得用セル21内を流れる懸濁液に対して画像取得用光源22から光を照射する。そして画像取得用セル21内を流れる懸濁液中の粒子群を撮像部23により撮像し(ステップS11)、当該撮像データを第2情報処理装置24に即時出力する。出力された撮像画像を粒子情報抽出部241により処理し、当該撮像画像に映り込んだ個々の粒子の情報(粒子情報)を抽出する(ステップS12)。撮像画像からの粒子情報の抽出が完了すると(ステップS13)、抽出した1又は複数の粒子情報を粒子データ群として記憶部242に格納する(ステップS14)。動作開始から所定時間が経過するまで(ステップS15)、ステップS11~ステップS14の動作を繰り返す。
【0057】
(粒子群特性算出動作)
粒子情報抽出動作により抽出された粒子情報に基づき、粒子群の粒子群特性を算出する動作について説明する。当該動作は、粒子情報抽出動作が開始した後に開始し、当該動作と並列して行われる。粒子群特性算出動作では、所定の一定の時間間隔で粒子群特性が算出される。
【0058】
所定のタイミングで記憶部242を参照し、直近に抽出された順番が連続する所定の複数個の粒子データ群を取得し(ステップS21)、当該複数粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいてヒストグラムを算出する(ステップS22)。算出したヒストグラムに基づき、粒子群特性を算出する(ステップS23)。算出した粒子群特性の値を、ディスプレイ25上のグラフにプロットする(ステップS24)。算出した粒子群特性の値が所定範囲内(例えば所定の閾値以上)にある場合(ステップS27)、粒子径分布測定装置100においてレーザ回折をしてよい旨のメッセージをディスプレイ25に表示する(ステップS26)。動作開始から所定時間が経過していない場合(ステップS27)、次の所定のタイミングで直近に抽出された順番が連続する所定の複数個の粒子データ群を取得する(ステップS21)。ここで粒子群特性算出部243は、1つ前のタイミングで取得した粒子データ群と一部が重複するように粒子データ群を取得する。そして、動作開始から所定時間が経過するまで(ステップS27)、ステップS21~ステップS26の動作を繰り返す。
【0059】
このように構成した本実施形態の粒子群特性測定装置200によれば、各時点における粒子群特性を、最新の撮像画像を含む連続した複数の撮像画像から抽出される粒子情報に基づいて算出するようにしているので、1つの撮像画像から抽出される粒子情報に基づいて算出する場合に比べて粒子情報の統計量を多くでき、算出される粒子群特性に含まれる統計的な誤差を低減できる。しかも、各時点における粒子群特性の算出に用いられる複数の撮像画像の一部として、それよりも前の時点までに既に得られている撮像画像を利用するので、統計誤差を許容範囲まで低減するのに必要な数の粒子情報を確保するのにかかる時間を短縮でき、各時点における粒子群特性を短時間で算出することができる。これにより、算出される粒子群特性に含まれる統計的な誤差を低減しながらも、その時間変動を把握しやすくできる。
【0060】
そして本実施形態の粒子径分布測定装置100は、このような粒子群特性測定装置200を用いて循環系11を流れる懸濁液中の粒子群の特性の時間変動をモニタリングできるので、例えば粒子の分散具合等を観察しながら、適切なタイミングで光学式測定系12を用いた粒子径分布の測定を開始することができる。
【0061】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0062】
前記実施形態では、算出指令部244は、クロックからの信号に基づいて時間を計測し、所定のタイミングで算出指令信号を出力するように構成されていたが、これに限定されない。
図9に示すように、他の実施形態の算出指令部244は、粒子情報抽出部241が処理した撮像画像の数をカウントするように構成されており、粒子情報抽出部241が所定数の撮像画像から粒子情報を抽出する毎に、粒子群特性算出部243に算出指令信号を出力するように構成されてもよい。
【0063】
またこの場合、粒子情報抽出部241は、撮像画像を処理して当該撮像画像の撮像時刻を抽出し、当該撮像画像から抽出した粒子データ群と紐づけて記憶部242に格納することが好ましい。そして粒子群特性算出部243は、算出指令信号を受け付けると、所定数の粒子データ群を参照して粒子群特性を算出するとともに、当該所定数の粒子群に紐づけられた複数の撮像時刻を参照して、算出した粒子群特性に紐づける1つの時刻を決定し、これを撮像時刻データとして表示制御部245に出力する。ここで撮像時刻データが示す時刻は、参照した複数の撮像時刻のいずれか1つであってもよいし、参照した複数の撮像時刻に基づいて算出される、所定の基準時刻からの経過時間を示すものであってもよい。
【0064】
前記実施形態の粒子情報抽出部241は、各時点における粒子群特性をその1つ前の時点における粒子群特性の算出に用いられた複数の粒子データ群と一部が重複する複数の粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいて算出していたが、これに限らない。粒子情報抽出部241は、各時点における粒子群特性を、それよりも前の時点における粒子群特性の算出に用いた複数の撮像画像と、撮像した時間帯が一部重複する複数の撮像画像から抽出された粒子情報に基づいて算出するものであればよい。
【0065】
前記実施形態の画像取得用セル21はフロー式のものであったが、これに限らずバッチ式のものであってもよい。バッチ式の画像取得用セル21を用いた場合、分散媒の温度変化による粒子群特性の時間変動を把握することができる。
【0066】
前記実施形態の粒子群特性算出部243は、直近に抽出された粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいて各時点における粒子群特性を算出していたが、これに限らない。他の実施形態では、直近に抽出された粒子データ群を除く複数の粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいて粒子群特性を算出してもよい。
【0067】
前記実施形態の粒子群特性算出部243は、抽出順番が連続する複数の粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいて各時点における粒子群特性を算出していたが、これに限らない。他の実施形態では、抽出順番が不連続な複数の粒子データ群に含まれる粒子情報に基づいて粒子群特性を算出してもよい。
【0068】
前記実施形態の粒子群特性測定装置200は、粒子径分布測定装置100の一部を構成するものであったがこれに限らない。当然ながら、粒子群特性測定装置200が単独で用いられてもよい。
【0069】
前記実施形態では、粒子径分布算出部123aとしての機能と、粒子情報抽出部241、記憶部242、粒子群特性算出部243及び表示制御部245としての機能とが、別々のコンピュータにより発揮されていたが、これにかがらない。他の実施形態では、これらの機能が共通のコンピュータにより発揮されてもよい。
【0070】
前記実施形態では、粒子情報抽出部241、記憶部242、粒子群特性算出部243及び表示制御部245としての機能が一つのコンピュータにより発揮されていたがこれに限らない。他の実施形態では、これらの機能が複数のコンピュータによって発揮されてもよい。
【0071】
前記実施形態では、粒子情報抽出動作及び粒子群特性算出動作は、動作開始から所定時間経過することにより終了したがこれに限らない。他の実施形態では、粒子情報抽出動作は、所定枚数の撮像画像から粒子情報を抽出することで終了するようにしてもよい。粒子群特性算出動作は、算出した粒子群特性の値が所定値を超える又は下回ると終了するようにしてもよく、粒子群特性の値を所定回数算出すると終了するようにしてもよい。また粒子情報抽出動作及び粒子群特性算出動作のいずれも、ユーザが終了ボタンを押すことにより終了させてもよい。
【0072】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、粒子群の撮像画像に基づいて粒子群特性の時間変動を測定するものであって、算出される粒子群特性に含まれる統計的な誤差を低減でき、かつその時間変動を把握し易い粒子群特性測定装置を提供することができる。