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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20241127BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20241127BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20241127BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/54
H01L33/56
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021051356
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149290
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 兵庫
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-112635(JP,A)
【文献】特開2012-116894(JP,A)
【文献】特開2019-159140(JP,A)
【文献】特開2013-149906(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133432(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/085848(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/089075(WO,A1)
【文献】特開2017-108092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に配置され、上面を光取り出し面とする発光素子と、
前記発光素子の前記上面に配置される、蛍光体を含有する波長変換部材と、
前記波長変換部材の側方に配置されるアウター樹脂部材と、を備え、
前記アウター樹脂部材が、シリコーン樹脂と、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンと、を含む、発光装置。
【請求項2】
前記発光装置は、更に前記発光素子の周囲に配置されるインナー樹脂部材を備える、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記アウター樹脂部材は、前記シリコーン樹脂100質量部に対して、前記酸化チタンの含有量が20質量部以上80質量部以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記シリコーンオイルが、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、及びメチルハイドロジェンシリコーンオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記アウター樹脂部材に含まれるシリコーン樹脂のショアA硬度が30以上80以下の範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂が、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有するジメチルポリシロキサン及び/又は変性ジメチルポリシロキサンと、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、から得られる付加反応型シリコーン樹脂である、請求項1から5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記基板上に、更に前記発光素子とは別の半導体素子を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記波長変換部材が、前記蛍光体と無機材料とを含むセラミックス複合体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記蛍光体が、希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、前記無機材料が、無機酸化物である、請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記アウター樹脂部材の厚みは、50μm以上600μm以下の範囲内である、請求項1から9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
集合基板の上に、上面が光の取り出し面となる、複数の発光素子を縦横に配置する工程と、
前記複数の発光素子の上面に蛍光体を含有する複数の波長変換部材を配置する工程と、
前記複数の波長変換部材のそれぞれの側方にアウター樹脂部材用組成物を配置する工程と、
前記アウター樹脂部材用組成物を硬化させてアウター樹脂部材を形成する工程と、
隣合う前記発光素子の間の前記アウター樹脂部材と、前記集合基板と、を切断する工程と、を含み、
前記アウター樹脂部材用組成物が、シリコーン樹脂と、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンと、を含む、発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記複数の発光素子を縦横に配置する工程において、又は、前記複数の発光素子を縦横に配置する工程の前後において、縦横に配置される前記発光素子の横又は縦方向のいずれか一方向で、隣合う前記発光素子の間に、前記発光素子とは別の複数の半導体素子を配置する工程、を含み、
前記アウター樹脂部材用組成物を配置する工程において、前記波長変換部材の側面を覆うようにするとともに、前記複数の半導体素子の上面を覆うように前記アウター樹脂部材用組成物を配置する、請求項11に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記複数の発光素子を縦横に配置する工程後であって、前記アウター樹脂部材用組成物を配置する工程前において、前記発光素子の周囲にインナー樹脂部材用組成物を配置する工程、を含む、請求項11又は12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記インナー樹脂部材用組成物を配置する工程において、前記半導体素子の側面の少なくとも一部を前記インナー樹脂部材用組成物で覆う、請求項12を引用する請求項13に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記アウター樹脂部材用組成物を配置する工程において、前記インナー樹脂部材用組成物の表面に前記アウター樹脂部材用組成物を配置する、請求項13又は14に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記アウター樹脂部材用組成物を配置する工程において、前記アウター樹脂部材用組成物を、隣合う前記複数の波長変換部材の間に滴下して配置する、請求項11から15のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記アウター樹脂部材用組成物を配置する工程の前に、前記アウター樹脂部材用組成物を準備する工程を含み、
前記アウター樹脂部材用組成物を準備する工程において、酸化チタンとシリコーンオイルを乾式混合し、200℃以上360℃以下の温度範囲内で熱処理して、表面処理された酸化チタンを得ることと、
前記表面処理された酸化チタンと、シリコーン樹脂と、を混合して、前記アウター樹脂部材用組成物を得ること、を含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記アウター樹脂部材用組成物を準備する工程において、酸化チタン100質量部に対して、シリコーンオイルを0.5質量部以上15質量部以下の範囲内で混合する、請求項17に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)の発光素子を用いる発光装置は、変換効率の高い光源であり、自動車等の車載用や室内照明等の一般照明用の発光装置、液晶を使った画像表示装置のバックライト光源、イルミネーション、交通信号灯用、プロジェクター用の光源装置等の広範囲の分野で利用されている。
【0003】
LEDを用いた発光装置は、配線を有する基板に発光素子を実装して用いるものが知られている。その他、発光素子とほぼ同等のサイズを有するパッケージ、いわゆるCSP(Chip Scale Package)や、複数の発光素子を高密度で実装する面状発光装置の開発が進められている。
【0004】
発光装置は、基板上に配置された発光素子と、発光素子からの発光を波長変換する波長変換部材と、発光素子からの発光を反射させるための反射部材等を備える。反射部材は、樹脂と、光を反射させる酸化チタン等の添加材を含む樹脂組成物が用いられる。例えば特許文献1には、LEDから離間して波長変換部材が配置される発光装置が開示されている。特許文献1には、発光素子からの発光を、発光素子から離間して配置された波長変換部材まで到達させるために、発光素子の近くに配置される反射部材として、耐熱性を有するフッ素樹脂と、シリコーンオイル化合物で表面処理された酸化チタンと、を含む反射部材用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-185294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、樹脂部材の割れやクラック等の発生を抑制することができる発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に係る発光装置は、基板と、前記基板に配置され、上面を光取り出し面とする発光素子と、前記発光素子の前記上面に配置される、蛍光体を含有する波長変換部材と、前記波長変換部材の側方に配置されるアウター樹脂部材と、を備え、前記アウター樹脂部材が、シリコーン樹脂と、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンと、を含む。
【0008】
本発明の第二の態様に係る発光装置の製造方法は、集合基板の上に、上面が光取り出し面となる、複数の発光素子を縦横に配置する工程と、前記発光素子の上面に蛍光体を含有する含有する複数の波長変換部材を配置する工程と、前記複数の波長変換部材のそれぞれの側方にアウター樹脂部材用組成物を配置する工程と、前記アウター樹脂部材用組成物を硬化させてアウター樹脂部材を形成する工程と、隣合う前記発光素子の間の前記アウター樹脂部材と、前記集合基板と、を切断する工程と、を含み、前記アウター樹脂部材用組成物がシリコーン樹脂と、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、樹脂部材の割れやクラック等の発生を抑制することができる発光装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
図2】実施形態に係る発光装置の概略平面図である。
図3】発光装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4】発光装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図5A】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図5B】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図5C】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図5D】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図5E】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な平面図である。
図6】発光装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7A】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図7B】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図7C】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図7D】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図7E】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図7F】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。
図7G】発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例えば、CSPは、発光素子とほぼ同等のサイズであるため、発光素子や波長変換部材の周囲をモールドする樹脂部材の量が少ないため、発光素子に通電すると、通電時に発生する熱、外部環境による吸湿等の影響で、発光素子や波長変換部材の周囲に形成された樹脂部材にクラックが発生しやすくなる場合がある。発光素子に通電すると発光素子から光とともに熱が発せられる。また、発光素子の上面の光取り出し面に配置された波長変換部材からも、波長変換された光とともに熱が発せられる。波長変換部材の周囲に配置されるアウター樹脂部材は、通電により発光素子及び波長変換部材から発せられる熱と、通電の停止による発光素子及び波長変換部材の冷却と、の繰り返しによって、波長変換部材とアウター樹脂部材との密着性が低下する。また、アウター樹脂部材は、外部環境に晒されるため、湿度等の影響も受けやすい。特にCSPのように発光素子とほぼ同じサイズとなる小型の発光装置の場合、発光素子や波長変換部材の周囲に設けられるアウター樹脂部材の幅が狭くなり、その狭い幅に応じてアウター樹脂部材の量が少なくなる。これらによって、アウター樹脂部材は割れやクラックが発生しやすくなる。特に、波長変換部材とアウター樹脂部材の密着性が低下して、波長変換部材からアウター樹脂部材が剥離すると、この剥離した部分が起点となり更に割れやクラックが発生しやすくなる。
特許文献1に開示されている反射部材用の樹脂組成物は、常温で固体のフッ素樹脂を含むため、小さい面積に配置するためには、フッ素樹脂を融点以上に加熱して溶融する必要がある。そのため、フッ素樹脂を融点以上に加熱することにより、フッ素主成分のガスが放出され、製造設備が腐食されやすくなり、その対策費用が高額になり、発光装置のコストが高くなる。
【0012】
一方で、発光素子や波長変換部材からの発熱及び冷却の繰り返しによる影響を抑制するために、例えばアウター樹脂部材をより柔らかくすることが考えられる。しかしながら、アウター樹脂部材を柔らかくすると粘着性が上がるため、搬送や梱包がし難く量産性に劣る場合が生じてくる。
また、アウター樹脂部材を柔らかくし、外部環境からの影響を抑制するために、例えばヒンダードアミン系の液体の光安定剤をアウター樹脂部材に添加することが考えられる。しかしながら、ヒンダードアミン系の光安定剤は塩基性であるため、アウター樹脂部材の硬化が阻害される場合が生じてくる。
【0013】
更に、例えばショアA硬度が30未満程度のショアA硬度の低い樹脂を用いてより柔らかいアウター樹脂部材を形成することも考えられる。しかしながら、このような樹脂では、アウター樹脂部材を形成後もアウター樹脂部材が柔らかく粘着性があるため、搬送や梱包がし難く量産性に劣る場合が生じてくる。
【0014】
そこで、本実施形態に係るアウター樹脂部材を用いることによって、アウター樹脂部材をより柔らかくすることなく、波長変換部材とアウター樹脂部材との密着性を向上して、アウター樹脂部材の割れやクラックを抑制することができる。
【0015】
以下、本発明に係る発光装置及びその製造方法を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具現化するための例示であって、本発明は、以下の発光装置及びその製造方法に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。また、本明細書において、「シート」、「フィルム」「層」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「フィルム」は、シートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられ、また「シート」はフィルムとも呼ばれ得るような部材も含む意味で用いられる。
本明細書において、「上」、「下」という用語は、発光装置において、光を取り出す側とその逆側を指す用語としても用いる。例えば、「上方」は、光を取り出す方向を意味し、「下方」はその逆の方向を意味する。また、「上面」とは光を取り出す側にある面を意味し、「下面」とはその逆側の面を意味する。また、側面とは、上面又は下面に対して直交する方向の面を意味する。
【0016】
発光装置について図面を用いて説明する。図1は、実施形態に係る発光装置の概略断面図である。図2は、実施形態に係る発光装置の概略平面図である。ただし、説明の便宜上、発光装置及び各部材の大きさ、厚さ等は単なる例示であり誇張して記載している。また、後述の説明の便宜上、半導体素子及びインナー樹脂部材も含めて図示しているが、図4Dのように、半導体素子及びインナー樹脂部材を用いない形態を採ることもできる。
【0017】
発光装置
発光装置100は、基板20と、基板20に配置され、上面10aを光取り出し面とする発光素子10と、発光素子10の上面10aに配置される蛍光体を含有する波長変換部材50と、波長変換部材50の側方に配置されるアウター樹脂部材40と、を備える。アウター樹脂部材40が、シリコーン樹脂と、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンと、を含む。発光素子10は、基板20上にバンプと呼ばれる導電部材60を介してフリップチップ実装される。発光装置100は、基板20上に発光素子10とは別の半導体素子70を備える。半導体素子70も、基板20上に導電部材60を介してフリップチップ実装される。発光装置100は、発光素子10の周囲に配置されるインナー樹脂部材30を備える。平面視において、波長変換部材50の面積は、発光素子10の上面10aの面積よりも大きいことが好ましい。波長変換部材50の上面50aは、発光装置100の光取り出し面となる。波長変換部材50は、発光素子10の上面10aに導光部材80を介して接着されることが好ましい。導光部材80は、発光素子10の側面及び上面10aを連続して覆っている。インナー樹脂部材30は、発光素子10の側方に配置され、導光部材80の少なくとも一部と接触しており、かつ、半導体素子70の側面70bの少なくとも一部を覆っている。アウター樹脂部材40は、波長変換部材50の側方及びインナー樹脂部材30上及び半導体素子70上に配置され、半導体素子70を埋設させる。アウター樹脂部材40の厚みTは、基板20に対して垂直方向の厚みをいう。インナー樹脂部材30を備える場合は、基板20と垂直方向のアウター樹脂部材40の高さからインナー樹脂部材30の高さを引いた差分をいう。基板20は、予め個片化されたものであってもよく、後述する製造方法において、集合基板20aを個片化したものであってもよく、同じ符号を使用する。
【0018】
発光装置100において、アウター樹脂部材40は、発光装置100の外形を構成する。波長変換部材50の上面50aが矩形状である場合、波長変換部材50の上面50aの一番短い一辺の大きさを1とした場合に、波長変換部材50の上面50aの端からアウター樹脂部材40が構成する発光装置100の外形の端までの一番狭い幅Wは、0.10mmm以上0.30mm以下の範囲内とすることができる。
【0019】
アウター樹脂部材
アウター樹脂部材は、波長変換部材の側方に配置され、アウター樹脂部材の上面と波長変換部材の上面とは同一平面であることが好ましい。つまりアウター樹脂部材の上面の少なくとも一部の高さが、波長変換部材の光取り出し面と同一の高さとなるように配置することが好ましい。これにより略直方体の発光装置を提供することができる。
また、アウター樹脂部材の上面の一部が「ひけ」ていてもよい。例えば、アウター樹脂部材のうち、波長変換部材の側面と接している部分が、波長変換部材の光取り出し面と同一の高さであり、波長変換部材の側面と接していない部分が、波長変換部材の光取り出し面よりも低い高さとなっている場合である。アウター樹脂部材を構成する樹脂の硬化収縮に伴って、アウター樹脂部材の上面にいわゆる「ひけ」という凹みが生じる場合があるためである。
【0020】
アウター樹脂部材は、シリコーン樹脂と、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンと、を含む。アウター樹脂部材に含まれる酸化チタンの表面に水分が付着していると、酸化チタンの光触媒作用が大きくなり、アウター樹脂部材に含まれるシリコーン樹脂の光劣化が促進され、シリコーン樹脂成分が一部分解し、揮発又は脆くなる。アウター樹脂部材に含まれるシリコーン樹脂成分が、揮発又は脆くなると、アウター樹脂部材の、割れやクラックが発生しやすくなる。シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンは、酸化チタンの表面に存在する水分が少なくなる。そのため、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンと、シリコーン樹脂を含むアウター樹脂部材は、光劣化が抑制され、樹脂成分の分解が抑えられて脆くなりにくく、その結果、アウター樹脂部材の割れ又はクラックの発生を抑制することができる。
【0021】
アウター樹脂部材の割れやクラックを抑制するために、例えばアウター樹脂部材をより柔らかくすることが考えられる。アウター樹脂部材を柔らかくし、外部環境からの影響を抑制するために、例えば液体の光安定剤をアウター樹脂部材に添加することが考えられる。液体の光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系の光安定剤が挙げられる。しかしながら、ヒンダードアミン系の光安定剤をアウター樹脂部材に添加した場合には、塩基性の光安定剤のためにアウター樹脂部材の硬化が阻害される場合があり、硬化の阻害が起こると、アウター樹脂が柔らかく粘着性が発現するため、搬送や梱包がし難く、量産性に劣る場合がある。
【0022】
また、より柔らかいアウター樹脂部材を形成するために、ショアA硬度の低い樹脂を用いてアウター樹脂部材を形成することも考えられる。しかしながら、例えばショアA硬度が30未満の硬度の低い樹脂を用いてアウター樹脂部材を形成した場合、アウター樹脂部材を形成後もアウター樹脂部材が柔らかく粘着性があるため、搬送や梱包し難く量産性に劣る場合がある。
【0023】
アウター樹脂部材は、シリコーン樹脂と、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンとを含むため、アウター樹脂部材をより柔らかくすることなく、アウター樹脂部材の割れやクラックを抑制することができる。
【0024】
酸化チタンは、ルチル型酸化チタンでもよく、アナターゼ型酸化チタンでもよく、ブルッカイト型酸化チタンでもよいが、安定な結晶構造であり、反射率が高いルチル型酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンの平均粒径は、0.1μm以上1μm以下の範囲内でもよく、0.2μm以上0.8μm以下の範囲内でもよい。酸化チタンは、二酸化チタンを主成分として含むことが好ましい。
【0025】
シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、及びメチルハイドロジェンシリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。シリコーンオイルは、2種以上を併用してもよい。
【0026】
酸化チタンは、酸化チタンとシリコーンオイルを乾式混合した後、加熱して表面処理されることが好ましい。酸化チタンとシリコーンオイルを乾式混合した後に加熱することによって、酸化チタン表面に強固な被膜が形成され酸化チタンの表面に存在する水分を少なくすることができる。
【0027】
アウター樹脂部材に含まれるシリコーンオイルにより表面処理された酸化チタンは、シリコーン樹脂100質量部に対して、20質量部以上80質量部以下の範囲内であることが好ましく、25質量部以上75質量部以下の範囲内でもよく、30質量部以上70質量部以下の範囲内でもよい。酸化チタンが表面処理されていることによって、樹脂の光劣化の主原因となる、酸化チタンの表面に付着している水分が少なくなるため、アウター樹脂部材の割れ又はクラックの発生を抑制することができる。
【0028】
アウター樹脂部材は、表面処理された酸化チタン以外の無機材料を含んでいてもよく、表面処理された酸化チタン以外の無機材料としては、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、イットリア安定化ジルコニア、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。アウター樹脂部材に、表面処理された酸化チタン以外の無機材料が含まれる場合、表面処理された酸化チタンと、酸化チタン以外の無機材料の合計量が、シリコーン樹脂100質量部に対して、20質量部以上80質量部以下の範囲内であることが好ましく、25質量部以上75質量部以下の範囲内でもよく、30質量部以上70質量部以下の範囲内でもよい。
【0029】
シリコーン樹脂は、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有するジメチルポリシロキサン及び/又は変性ジメチルポリシロキサンと、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、から得られる付加反応型シリコーン樹脂であることが好ましい。付加反応型シリコーン樹脂は、硬化収縮が少ないので、他の発光装置の部材に硬化後のダメージを与えにくいので望ましい。
【0030】
アウター樹脂部材に含まれるシリコーン樹脂のショアA硬度は、30以上80以下の範囲内であることが好ましく、40以上80以下の範囲内であることがより好ましく、55以上80以下の範囲内であることが更に好ましく、60以上75以下の範囲内であることがより更に好ましい。アウター樹脂部材に含まれるシリコーン樹脂のショアA硬度は、JIS K6253に準拠して、デュロメータータイプAを使用して測定することができる。アウター樹脂部材に含まれるシリコーン樹脂は、ショアA硬度が30以上80以下の範囲内であれば、樹脂部材の粘着性が抑えられゴム物性(靭性、伸び)に優れるため、波長変換部材との剥離が抑制されれば、波長変換部材からの放熱や冷却に追従して、柔軟に膨張又は収縮し、割れやクラックを抑制することができる。
【0031】
アウター樹脂部材の厚みは、50μm以上600μm以下の範囲内であることが好ましい。アウター樹脂部材の厚みは、基板に対して垂直方向の厚みをいう。アウター樹脂部材の厚みが50μm以上600μmであれば、割れやクラックの発生を抑制することができる。アウター樹脂部材の基板に対して垂直方向の厚みは、半導体素子の厚みやインナー樹脂部材の厚みによって異なり、部位によって厚みが異なる。アウター樹脂部材の各部位の厚みが、50μm以上600μm以下の範囲内であれば、割れやクラックを抑制することができる。
【0032】
基板
基板の材料としては、絶縁性材料であって、発光素子からの光や外光が透過しにくい材料が好ましい。例えば、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)樹脂等の樹脂を挙げることができる。なお、樹脂を用いる場合には、必要に応じて、ガラス繊維、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等からなる無機フィラーを樹脂に混合してもよい。基板に無機フィラーを含むことにより、機械的強度の向上や熱膨張率の低減、光反射率の向上を図ることができる。
【0033】
発光素子
発光素子は、発光ダイオード(LED)又はレーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子を用いることができる。用途に応じて任意の波長の光を発する発光素子を選択することができる。例えば、波長変換部材に含まれる蛍光体を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を挙げることができる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。光取り出し面となる上面の逆側の下面にp電極及びn電極の一対の電極が形成されている発光素子を用いることができる。発光素子は、好ましくは380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、より好ましくは390nm以上495nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、更に好ましくは400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。発光素子は、導電部材を介して基板に電気的に接続される。
【0034】
波長変換部材
波長変換部材は、蛍光体を含有する。波長変換部材は、無機材料を含有してもよい。波長変換部材は、蛍光体と無機材料とを含むセラミックス複合体を含むことが好ましい。波長変換部材は、蛍光体と無機材料とを含むセラミックス複合体からなる蛍光体層の単層のものであってもよく、蛍光体と無機材料とを含むセラミックス複合体からなる蛍光体層と、樹脂、ガラス及び無機物からなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる透光性層とが積層されたものであってもよい。また、蛍光体と無機材料とを含むセラミックス複合体は、1種の第1蛍光体を含むものであってもよく、第1蛍光体とは組成が異なる他種の第2蛍光体を含むものであってもよい。また、1種の第1蛍光体と無機材料とを含む第1セラミックス複合体を第1蛍光体層とし、第1蛍光体とは組成が異なる他種の第2蛍光体と無機材料とを含む第2セラミックス複合体を第2蛍光体層とし、更に蛍光体を含まない透光性層が積層されたものであってもよい。透光性層はセラミックス複合体に含まれる後述する無機酸化物と同様の無機酸化物からなる板状体であってもよい。
【0035】
波長変換部材に含まれる蛍光体は、希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、無機材料は無機酸化物を含むことが好ましい。蛍光体は、希土類アルミン酸塩蛍光体を前述の第1蛍光体としてもよい。希土類アルミン酸塩蛍光体としては、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)が挙げられる。YAG系蛍光体は、ガーネット構造を有し、希土類元素からなる群から選択された少なくとも1種の元素で賦活された蛍光体をいう。希土類アルミン酸塩蛍光体は、例えばY(Al,Ga)12:Ce、Lu(Al,Ga)12:Ce、(Re1-xSm(Al1-yGa12:Ce(Reは、Y、Gd及びLaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、x及びyは、それぞれ0≦x<1、0≦y≦1を満たす。)で表される組成を有する蛍光体が挙げられる。本明細書において、蛍光体の組成を示す組成式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成式中に含むことを意味し、複数の元素から2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、蛍光体の組成を示す式中、コロン(:)の前は母体結晶を構成する元素及びそのモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。「モル比」は、蛍光体の組成の1モル中の元素のモル量を表す。
【0036】
蛍光体は、希土類アルミン酸塩蛍光体の他に、組成が異なる蛍光体を有する蛍光体を含んでいてもよい。蛍光体は、希土類アルミン酸塩蛍光体とは組成が異なる蛍光体を、前述の第2蛍光体としてもよい。希土類アルミン酸塩蛍光体とは組成が異なる蛍光体は、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノケイ酸カルシウム系蛍光体(例えばCaO-Al-SiO:Eu,Cl)、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体(例えば(Sr,Ba)SiO:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えばSi6-zAl8-z:Eu(0<z<4.2))、窒化物系蛍光体(例えばCaAlSiN:Eu(CASN蛍光体)、(Sr,Ca)AlSiN:Eu(SCASN蛍光体))、マンガンで賦活されたフッ化物系蛍光体(例えばKSiF:Mn)、硫化物系蛍光体等が挙げられる。窒化物系蛍光体としては、L((2/3)u+(4/3)v):R又はL((2/3)u+(4/3)v-(2/3)w):R(Lは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の第2族又は第12族の元素であり、Mは、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr及びHfから成る群から選択される少なくとも1種の第4族又は第14族の元素であり、Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の希土類元素であり、u、v、wは、0.5≦u≦3、1.5≦v≦8、0<w≦3を満たす。)で表される組成を有する蛍光体が挙げられる。
【0037】
波長変換部材に含まれる無機酸化物は、発光素子からの光及び蛍光体で波長変換された光を透過する透光性を有する無機酸化物であることが好ましい。無機酸化物としては、例えばSiO、Al、ZrO、MgO、TiO、CeO、ZnO、SnO及びYからなる群から選択される少なくとも1種の無機酸化物が挙げられる。本明細書において、透光性とは、発光素子から出射される光及び蛍光体で波長変換された光の60%以上を透過するものであることを意味し、透光性を有するものとしては、例えば発光素子から出射される光の透過率が70%以上のものでもよく、80%以上のものでもよく、90%以上のものでもよい。セラミックス複合体に含まれる蛍光体が、希土類アルミン酸塩蛍光体である場合、無機材料は、Alを含むことが好ましい。
【0038】
半導体素子
発光装置は、基板上に発光素子とは別の半導体素子を備えることが好ましい。半導体素子は、基板上に発光素子に隣接して配置されることが好ましい。半導体素子は、発光素子を制御するためのトランジスタ、コンデンサ、規定電圧以上の電圧が印加されると通電状態になるツェナーダイオード(Zener Diode)の保護素子を挙げることができる。保護素子は、発光素子と同様に、対向する2面のうち、基板側の一方の面にp電極とn電極の一対の電極を有する半導体素子である。保護素子は、発光素子と同様に、導電部材を介して基板に電気的に接続される。基板に導電部材を介して接続された半導体素子の高さは、導電部材を介して基板に接続された発光素子と波長変換部材とを合わせた高さよりも低い方が好ましい。半導体素子をアウター樹脂部材に完全に埋没させることにより、アウター樹脂部材の上面を上昇させて、アウター樹脂部材の上面に生じる凹み(ひけ)を抑制することができる。
【0039】
導電部材
導電部材としては、バンプを用いることができ、バンプの材料としては、Auあるいはその合金、共晶ハンダ(Au-Sn)、Pb-Sn、鉛フリーハンダ等を用いることができる。導電部材はバンプに限定されず、例えば導電ペーストであってもよい。
【0040】
発光素子と導電部材の間、半導体素子と導電部材の間、又は、導電部材と導電部材の間には、インナー樹脂部材を設けてもよい。インナー樹脂部材は、基板上に配置された発光素子、半導体素子、導電部材等を、塵芥、水分、外力等から保護するための部材である。インナー樹脂部材の材料といては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂に必要に応じて着色剤、光拡散材、フィラー等が含まれていてもよい。
【0041】
導光部材
発光素子と波長変換部材の間には、導光部材が介在し、発光素子と波長変換部材とを導光部材で接着する。導光部材は、発光素子と波長変換部材を光学的に連結できる材料からなることが好ましい。導光部材を構成する材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が挙げられる。
【0042】
インナー樹脂部材
発光装置は、発光素子の周囲に、発光素子の上面又は波長変換部材の下面の高さまでインナー樹脂部材を備えていることが好ましい。発光素子の側面の周囲にインナー樹脂部材が配置されていることによって、光の取り出し効率が良くなり高輝度の発光装置を提供することが可能になる。インナー樹脂部材を構成する樹脂材料は、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、からなる群から選択される少なくとも1種を含む樹脂材料が挙げられ、2種以上の樹脂を含むハイブリッド樹脂であってもよい。インナー樹脂部材を構成する樹脂材料は、アウター樹脂部材と同様のシリコーン樹脂を含むものであってもよい。インナー樹脂部材は、アウター樹脂部材と同様の充填材を含んでいることが好ましい。具体的には、充填材として、前述のシリコーンオイルで表面処理された酸化チタン、シリコーンオイルで表面処理されていない酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、イットリア安定化ジルコニア、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0043】
発光装置の製造方法
発光装置の製造方法について図面を用いて説明する。図3及び図4は、発光装置の製造方法の一例を示すフローチャートを示す。また、図5Aから図5Dは、実施態様に係る発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。図5Eは、実施態様に係る発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な平面図である。図5Aから図5Eに示す各部材は、前述の発光装置に用いた各部材と同様の部材を用いることができる。
【0044】
発光装置の製造方法は、複数の発光素子を縦横に配置する工程S101、複数の波長変換部材を配置する工程S103、アウター樹脂部材用組成物を配置する工程S106、アウター樹脂部材を形成する工程S107、アウター樹脂部材と集合基板を切断する工程S108を含む。アウター樹脂部材用組成物を配置する工程S106の前にアウター樹脂部材用組成物を準備する工程S105を含んでいてもよい。以下、詳述する。
【0045】
発光装置の製造方法は、集合基板上に、上面が光の取り出し面となる、複数の発光素子を縦横に配置する工程(S101)を含む。
図5Aは、集合基板20a上に、上面が光の取り出し面となる、複数の発光素子を縦横に配置する工程を示す。ここで集合基板20a上に複数の発光素子10を縦横に配置するとは、横方向と縦方向に行列(マトリックス状)に配置される場合や市松模様や格子状などのように二次元上に種々のパターンで配置される場合も含む。ここでは行列(マトリックス状)に配置された発光素子10を例にとって説明し、横方向を行方向、縦方向を列方向と呼ぶこともある。集合基板20aの上には、正電極と負電極とに絶縁分離された導電パターンが形成され、バンプと呼ばれる導電部材60を介して、発光素子10が集合基板20aの導電パターンに、フリップチップ実装される。フリップチップ実装により、発光素子10は、集合基板20a上に機械的及び電気的に接続されている。実装に際して、導電部材60は、集合基板20a側に設けてもよく、発光素子10又は後述する半導体素子70側に設けてもよい。発光素子10と集合基板20aとの間にはインナー樹脂部材が充填されていてもよい。また、発光素子10を集合基板20a上に直接実装する場合だけでなく、発光素子10を実装したサブマウント基板等を介して集合基板20a上に実装する場合も含む。
【0046】
発光装置の製造方法は、複数の発光素子の上面に、複数の波長変換部材を配置する工程(S103)を含む。
図5Bは、複数の発光素子10の上面10aに、導光部材80を介して、複数の波長変換部材50を配置する工程を示す。導光部材80は、発光素子10と波長変換部材50とを接着し、光学的に連結する。導光部材80は、導光部材用組成物を印刷法、噴射法、モールド法、ポッティング法等の公知の方法によって発光素子10上に配置することができ、導光部材用組成物上に波長変換部材50を配置して、導光部材用組成物を硬化させることによって、発光素子10と波長変換部材50とを接着することができる。
【0047】
発光装置の製造方法は、アウター樹脂部材用組成物を配置する工程(S106)の前に、アウター樹脂部材用組成物を準備する工程(S105)を含んでいてもよい。
アウター樹脂部材用組成物を準備する工程において、酸化チタンとシリコーンオイルを乾式混合し、200℃以上360℃以下の温度範囲内で熱処理して、表面処理された酸化チタンを得ることと、表面処理された酸化チタンと、シリコーン樹脂を混合して、アウター樹脂部材用組成物を得ることを含む。
酸化チタンとシリコーンオイルの混合は、乾式ミキサー等を用いることができる。乾式混合後の熱処理は、220℃以上350℃以下の温度範囲内でもよく、240℃以上320℃以下の温度範囲内でもよい。熱処理時間は、5分以上120分以内でもよく、10分以上90分以内でもよく、15分以上60分以内でもよい。
【0048】
アウター樹脂部材用組成物を準備する工程において、シリコーンオイルは、酸化チタン100質量部に対して、シリコーンオイルを0.5質量部以上15質量部以下の範囲内で混合することが好ましく、1質量部以上12質量部以下の範囲内で混合してもよく、2質量部以上10質量部以下の範囲内で混合してもよい。酸化チタン100質量部に対して、シリコーンオイルを0.5質量部以上15質量部以下の範囲内で混合することによって、酸化チタンの表面に略均一にシリコーンオイルが付着して、熱処理を行うことによって、酸化チタンの表面に存在する水分又は水酸基を低減することができる。
【0049】
アウター樹脂部材用組成物を準備する工程において、表面処理された酸化チタンは、シリコーン樹脂100質量部に対して、20質量部以上80質量部以下の範囲内で混合することが好ましく、25質量部以上75質量部以下の範囲内で混合してもよく、30質量部以上70質量部以下の範囲内で混合してもよい。シリコーン樹脂と、表面処理された酸化チタンとの混合は、各種の分散機、混合機、混練機、撹拌機等を用いることができ、例えば、三本ロールミル、自転公転型ミキサー、ライカイ機、二軸混練機、プラネタリーミキサー等を使用することができる。
【0050】
発光装置の製造方法は、複数の波長変換部材のそれぞれの側方にアウター樹脂部材用組成物を配置する工程(S106)と、アウター樹脂部材用組成物を硬化させてアウター樹脂部材を形成する工程(S107)を含む。
図5Cは、波長変換部材50の側方にアウター樹脂部材用組成物40aを配置する工程、及び、アウター樹脂部材用組成物40aを硬化させてアウター樹脂部材40を形成する工程を示す。図5Cにおいて、アウター樹脂部材40と、アウター樹脂部材用組成物40aは、硬化によって名称を変えているため、同一部材に2つの符号を付している。アウター樹脂部材用組成物40aは、シリコーン樹脂と、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンと、を含む。アウター樹脂部材用組成物40aは、前述のアウター樹脂部材用組成物を用いることができる。アウター樹脂部材用組成物40aに光劣化の要因となる表面の水分が低減されているシリコーンオイルで表面処理された酸化チタンが含まれていることによって、アウター樹脂部材40の光劣化が抑制され、割れ又はクラックを抑制することができる。
【0051】
アウター樹脂部材用組成物40aを配置する工程において、アウター樹脂部材用組成物40aは、例えば射出成形法、滴下法、印刷法、モールド法、圧縮成形法等によって配置することができる。アウター樹脂部材用組成物40aを配置する工程において、アウター樹脂部材用組成物40aを複数の波長変換部材50の間に滴下して配置することが好ましい。アウター樹脂部材用組成物40aを隣合う波長変換部材50と波長変換部材50の間に滴下により配置することによって、アウター樹脂部材用組成物40aが、波長変換部材50の側面50bによって位置決めされる。位置決めを目的として、例えばダム等を配置する必要がなくなる。アウター樹脂部材用組成物40aを複数の波長変換部材50の間に滴下して配置する場合には、例えば樹脂吐出装置を用いることができる。アウター樹脂部材用組成物40aが充填された樹脂吐出装置の先端のノズルからアウター樹脂部材用組成物40aを滴下しながらノズルを移動させることで、複数の波長変換部材50の間にアウター樹脂部材用組成物40aを配置させることができる。
【0052】
アウター樹脂部材用組成物40aは、加熱により硬化させて、アウター樹脂部材40を形成することができる。アウター樹脂部材用組成物40aの硬化温度によって加熱する温度や時間は異なるが、例えば50℃以上200℃以下の温度で、1時間以上20時間以内加熱して硬化させることができる。アウター樹脂部材用組成物40aは、2段階で加熱してもよく、例えば、50℃以上100℃未満の温度で、1時間以上10時間以内、第1加熱した後、更に100℃以上200℃以下の温度で、1時間以上10時間以内、第2加熱してもよい。
【0053】
発光装置の製造方法は、隣合う発光素子の間のアウター樹脂部材と、集合基板とを切断する工程(S108)を含む。
図5D又は図5Eは、アウター樹脂部材40と集合基板20aとを切断する工程における、切断線12を示す。アウター樹脂部材40及び集合基板20aは、切断線12に沿って、発光素子10を少なくとも1つ含むように平面視において行方向及び列方向の少なくともいずれかの方向において、ともに切断される。これにより、複数の発光装置群から個々の発光装置を分離し、発光装置を製造することができる。
【0054】
異なる実施形態に係る発光装置の製造方法について図面を用いて説明する。図6は、発光装置の製造方法の一例を示すフローチャートを示す。また、図7Aから図7Fは、実施態様に係る発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な断面図である。図7Gは、実施態様に係る発光装置の製造方法の工程の一例を示す模式的な平面図である。図7Aから図7Gに示す各部材は、前述の発光装置に用いた各部材と同様の部材を用いることができる。
【0055】
異なる実施形態において、発光装置の製造方法は、複数の発光素子を縦横に配置する工程S201、複数の半導体素子を配置する工程S202、複数の波長変換部材を配置する工程S203、インナー樹脂部材用組成物を配置する工程S204、アウター樹脂部材用組成物を準備する工程S205、アウター樹脂部材用組成物を配置する工程S206、インナー樹脂部材及びアウター樹脂部材を形成する工程S207、アウター樹脂部材、インナー樹脂部材及び集合基板を切断する工程S208を含む。ただし、異なる実施形態に係る発光装置の製造方法に対して、半導体素子70、インナー樹脂部材用組成物30aを用いる以外は、上述の実施形態に係る発光装置の製造方法とほぼ同じであるため、S201、S203、S205、S206は説明を省略することもある。
【0056】
発光装置の製造方法は、発光素子を配置する工程において、又は、複数の発光素子を配置する工程の前後において、縦横に配置される発光素子の横又は縦方向のいずれか一方向で、隣合う発光素子の間に、発光素子とは別の複数の発光素子を配置する工程(S202)を含む。
図7Aは、集合基板20a上に複数の発光素子10を縦横に配置する工程を示す。図7Bは、集合基板20a上に複数の半導体素子70を縦横に配置する工程を示す。図7Cは、複数の発光素子10の上面10aに、導光部材80を介して、複数の波長変換部材50を配置する工程を示す。集合基板20a上に、複数の発光素子10を縦横に配置する工程において、又は、複数の発光素子10を縦横に配置する工程の前後において、縦横に配置された発光素子の行又は例方向のいずれか一方向で、隣合う発光素子10の間に、発光素子10とは別の複数の半導体素子70を配置する。半導体素子70は、発光素子10と同様に、バンプと呼ばれる導電部材60を介して、集合基板20aの導電パターンにフリップチップ実装されている。半導体素子70と導電部材60の間にはインナー樹脂部材が充填されていてもよい。
【0057】
発光装置の製造方法は、複数の発光素子を配置する工程後であって、アウター樹脂部材用組成物を配置する工程前において、発光素子の周囲にインナー樹脂部材用組成物を配置する工程(S204)を含む。
図7Dは、複数の発光素子10を縦横に配置する工程後であって、アウター樹脂部材用組成物を配置する工程前において、発光素子10の周囲にインナー樹脂部材用組成物30aを配置する工程を示す。図7D及び図7Eにおいて、インナー樹脂部材30と、インナー樹脂部材用組成物30aは、硬化によって名称を変えているため、同一部材に2つの符号を付している。インナー樹脂部材用組成物30aを配置する工程において、半導体素子70の側面の少なくとも一部を、インナー樹脂部材用組成物30aで覆うことが好ましい。半導体素子70の側面だけでなく半導体素子70の上面の少なくとも一部を、インナー樹脂部材用組成物30aで覆うように配置してもよい。発光素子10及び半導体素子70の周囲にインナー樹脂部材30を配置することによって、発光素子10から出射された光が、半導体素子70や隣合う発光素子10に吸収される光量を減らし、高出力の発光装置を提供することができる。インナー樹脂部材用組成物30aは、例えば射出成形法、滴下法、印刷法、モールド法、圧縮成形法等によって配置することができる。発光素子10及び半導体素子70の周囲にインナー樹脂部材用組成物30aを配置するために、滴下法によって、インナー樹脂部材用組成物30aを配置することが好ましい。インナー樹脂部材用組成物30aは、発光素子10及び半導体素子70の周囲に配置した後、加熱し硬化する。また、インナー樹脂部材用組成物30aは、発光素子10及び半導体素子70の周囲に配置した後、加熱し仮硬化を行い、更にアウター樹脂部材用組成物40aを配置した後、アウター樹脂部材用組成物40aとともにインナー樹脂部材用組成物30aを加熱し本硬化しても良い。また、インナー樹脂部材用組成物30aは、発光素子10及び半導体素子70の周囲に配置し、更にアウター樹脂部材用組成物40aを配置した後、アウター樹脂部材用組成物40aとともにインナー樹脂部材用組成物30aを加熱し硬化しても良い。
【0058】
発光装置の製造方法は、アウター樹脂部材用組成物を準備する工程(S205)、複数の波長変換部材のそれぞれの側方にアウター樹脂部材用組成物を配置する工程(S206)、インナー樹脂部材用組成物及びアウター樹脂部材用組成物を硬化させて、インナー樹脂部材及びアウター樹脂部材を形成する工程(S207)を含む。
図7Eは、複数の波長変換部材50のそれぞれの側方にアウター樹脂部材用組成物40aを配置し、アウター樹脂部材用組成物40aを硬化させてアウター樹脂部材40を形成する工程を示す。アウター樹脂部材用組成物40aを配置する工程において、波長変換部材50の側面50bを覆うとともに、複数の半導体素子70の上面70aを覆うようにアウター樹脂部材用組成物40aを配置することが好ましい。アウター樹脂部材用組成物40aは、半導体素子70を埋設するように配置してもよい。半導体素子70の上面70aを覆うようにアウター樹脂部材用組成物40aを配置することによって、アウター樹脂部材用組成物40aの上面を上昇させて、アウター樹脂部材用組成物40aの硬化収縮に伴って、アウター樹脂部材40の上面に生じる凹み(ひけ)を抑制することができる。
【0059】
アウター樹脂部材用組成物40aを配置する工程において、インナー樹脂部材用組成物30aの表面にアウター樹脂部材用組成物40aを配置することが好ましい。アウター樹脂部材用組成物40aが、インナー樹脂部材用組成物30aの表面に配置されることによって、硬化後のインナー樹脂部材30が、アウター樹脂部材40で保護され、熱や湿度等の外部環境による影響からインナー樹脂部材30を保護することができる。
インナー樹脂部材用組成物30a及びアウター樹脂部材用組成物40aは、加熱により硬化させて、インナー樹脂部材30及びアウター樹脂部材40を形成することができる。インナー樹脂部材用組成物30a及びアウター樹脂部材用組成物40aの硬化温度によって加熱する温度や時間は異なるが、例えば50℃以上200℃以下の温度で、1時間以上20時間以内加熱して硬化させることができる。インナー樹脂部材用組成物30a及びアウター樹脂部材用組成物40aは、2段階で加熱してもよく、例えば、50℃以上100℃未満の温度で、1時間以上10時間以内、第1加熱した後、更に100℃以上200℃以下の温度で、1時間以上10時間以内、第2加熱してもよい。
【0060】
発光装置の製造方法は、隣合う発光素子の間のインナー樹脂部材、アウター樹脂部材及び集合基板を切断する工程(S208)を含む。
図7F又は図7Gは、隣合う発光素子10の間のアウター樹脂部材40、インナー樹脂部材30及び集合基板20aを切断する工程における切断線12を示す。図7F又は図7Gに示すように、切断線12に沿って、発光素子10と半導体素子70を少なくとも1つずつ含むように行方向及び列方向のいずれか一方向における、発光素子10と発光素子10の間と、行方向及び列方向のうちいずれかの他方向における、発光素子10と半導体素子70の間に配置されたアウター樹脂部材40及びインナー樹脂部材30を、集合基板20aとともに切断する。アウター樹脂部材40と集合基板20a、又は、インナー樹脂部材30、アウター樹脂部材40及び集合基板20aを切断する工程によって、複数の発光装置群から個々の発光装置を分離し、発光装置を製造することができる。
ここでは、半導体素子70、インナー樹脂部材30を含む形態で説明したが、いずれか一方を省略することもできる。
【実施例
【0061】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1
上述の実施形態で説明したように、図1図2に示す発光装置及び図7Aから図7Gに示す発光装置の製造方法と同様の工程にて実施例1に係る発光装置を製造した。上述の実施形態と同様の箇所については説明を省略することもある。
表面に導電パターンが形成された基板を準備した。基板として平板状の窒化アルミニウム基板を用いた。基板は、熱伝導率が170W/m・Kの窒化アルミニウム板材を焼成して形成した。基板の上に、Cu、Ni、Au等の金属材料で発光素子と電気的接続するための導電パターンを形成した。1つの発光装置の基板は、縦横の長さがそれぞれ約1.8mm、約1.45mmであり、厚みが約0.4mmである。導電パターンの厚みは約2μmである。
【0063】
集合基板上に、複数の発光素子を縦横に配置した。縦横に配置された複数の発光素子の行方向又は列方向のいずれか一方向で、発光素子とその隣の発光素子の間に半導体素子を配置した。発光素子は、サファイア基板上に半導体層が積層された平面形状が約1.0mm四方の略正方形であり、厚みが約0.11mmである。発光素子は、サファイア基板が光取り出し面(上面)となるようにして、Auからなる導電部材を用いて、導電パターン上にフリップチップ実装した。半導体素子は、平面形状が0.4mm×0.3mmの長方形であり、厚みが約0.14mmである。半導体素子は、Auからなるバンプを予め設け、導電パターン上にフリップチップ実装した。行方向における発光素子とその隣の発光素子の間隔は0.75mmであり、列方向における発光素子とその隣の発光素子の間隔は0.38mmであり、間隔が大きい方の行方向の発光素子とその隣の発光素子との間に半導体素子を配置した。
【0064】
次に、複数の発光素子上に複数の波長変換部材を配置し、導光部材を用いて波長変換部材と発光素子の光取り出し面(上面)であるサファイア基板面を接着した。波長変換部材は、希土類アルミン酸塩蛍光体であるY(Al,Ga)12:Ceで表される組成を有するYAG系蛍光体と、酸化アルミニウムを含むセラミックス複合体を用いた。波長変換部材は、平面形状が約0.95mm四方の略正方形であり、厚みは約0.2mmである。
【0065】
次に、発光素子の周囲及び半導体素子の側面の少なくとも一部を覆うようにインナー樹脂部材用組成物を配置した。インナー樹脂部材用組成物は、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリジメチルシロキサンと、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒を含む、ジメチルシリコーン樹脂と、酸化チタン粒子を含む。インナー樹脂部材用組成物は、ジメチルシリコーン樹脂100質量部に対して、酸化チタン粒子30質量部を配合した。インナー樹脂部材用組成物は、複数の発光素子及び複数の半導体素子の周囲に滴下して配置した。
【0066】
次に、アウター樹脂部材用組成物を準備した。
酸化チタンとして、ルチル型二酸化チタン(平均粒径:0.28μm、カタログの記載参照)100質量部に対して、メチルハイドロジェンシリコーンオイルを3質量部添加し、乾式ミキサーにて、2分間混合し、260℃で30分間熱処理して、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタンを得た。
ショアA硬度60のジメチルシリコーン樹脂100質量部に対して、シリコーンオイルで表面処理された酸化チタン60質量部を添加し、三本ロールミルにて混合し、アウター樹脂部材用組成物を準備した。
【0067】
次に、波長変換部材の側方にアウター樹脂部材用組成物を配置した。アウター樹脂部材用組成物は、インナー樹脂部材用組成物の表面と、半導体素子の上面と、波長変換部材の側面を覆うように、複数の波長変換部材の間に滴下して配置した。
【0068】
次に、上記工程を経た基板及び他の部材を加熱炉に入れ、80℃で2時間、第1加熱し、次いで、150℃で3時間、第2加熱して、インナー樹脂部材用組成物及びアウター樹脂部材用組成物を硬化させ、インナー樹脂部材及びアウター樹脂部材を形成した。アウター樹脂部材の厚みTは、350μmであった。
【0069】
次に、図7F及び図7Gに示したように、切断線に沿って、発光素子と半導体素子を少なくとも1つずつ含むように行方向及び列方向のいずれか一方向における、発光素子と発光素子の間と、行方向及び列方向のうちいずれかの他方向における、発光素子と半導体素子の間に配置されたアウター樹脂部材、インナー樹脂部材及び集合基板を切断して、複数の発光装置群から個々の発光装置を分離し、実施例1の発光装置を製造した。得られた発光装置の波長変換部材の端からアウター樹脂部材が構成する発光装置の外形の端までの一番狭い幅Wは、0.10mm以上0.30mm以下の範囲内であった。
【0070】
比較例1
アウター樹脂部材用組成物として、実施例1で用いたジメチルシリコーン樹脂と同様のジメチルシリコーン樹脂100質量部に対して、シリコーンオイルで表面処理されていないルチル型酸化チタン(平均粒径:0.28μm、カタログの記載参照)60質量部を添加したこと以外は、実施例1と同様のアウター樹脂部材用組成物を用いて、実施例1と同様にして、比較例1の発光装置を製造した。
【0071】
比較例2
アウター樹脂部材用組成物として、ヒンダードアミン系の光安定基を含むシランカップリング剤である、4-(3[(トリエトキシ)シリル]プロポキシ)-1,2,2,6,6-ペンタメチルピぺリジン(CaS.No105918-62-5)0.6質量部を、更に添加したこと以外は、比較例1と同様のアウター樹脂部材用組成物を用いて、実施例1と同様にして比較例2の発光装置を製造した。
【0072】
比較例3
アウター樹脂部材用組成物として、後述する方法によって測定したショアA硬度28のジメチルシリコーン樹脂を用いたこと以外は、比較例1と同様のアウター樹脂部材用組成物を用いて、実施例1と同様にして比較例3の発光装置を製造した。
【0073】
評価
実施例及び比較例について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
ショアA硬度
アウター樹脂部材に含まれるシリコーン樹脂のショアA硬度は、JIS K6253に準拠して、デュロメータータイプA(製品名:GS-709G、TECLOCK社製)を使用して測定した。
【0075】
アウター樹脂部材の弾性率
アウター樹脂部材の弾性率は、ダイナミック微小硬度計(製品名:DUH、株式会社島津製作所製)を用いて以下の条件で測定した。比較例1のアウター樹脂部材の弾性率を100%として、実施例及び比較例の各アウター樹脂部材の弾性率を、比較例1のアウター樹脂部材の弾性率に対する相対弾性率として表した。
測定箇所:発光装置のアウター樹脂部材
圧子:6μm
試験力:3mN
【0076】
アウター樹脂部材のクラック発生時間
実施例及び比較例の各発光装置を、85℃、相対湿度85%の雰囲気下で、1.5Aで連続して通電し、目視で、波長変換部材の光取り出し面(上面)からアウター樹脂部材の端までクラックが発生した時間を測定した。比較例1のアウター樹脂部材のクラックが発生した時間を0時間として、実施例及び比較例の各アウター樹脂部材にクラックが発生した時間から比較例1のアウター樹脂部材のクラックが発生した時間を差し引いた時間をクラック発生時間として表した。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例1の発光装置に用いたアウター樹脂部材は、相対弾性率が146%と高く、比較例1のアウター樹脂部材と比べて硬度は低下していないことが確認できた。また、実施例1の発光装置に用いたアウター樹脂部材は、クラックが発生する時間が比較例1のアウター樹脂部材と比べて、500時間長く、クラックの発生が抑制できていることが確認できた。
【0079】
比較例2の発光装置に用いたアウター樹脂部材は、相対弾性率が84%と、比較例1のアウター樹脂部材に比べて低下していた。クラック発生時間も100時間と、実施例1の発光装置に用いたアウター樹脂部材と比べて短くなっていた。比較例2の発光装置に用いたアウター樹脂部材は、添加された光安定剤が塩基性であることから、アウター樹脂部材用組成物の硬化が光安定剤によって阻害されたために相対弾性率が低下したと推測された。
【0080】
比較例3の発光装置に用いたアウター樹脂部材は、ショアA硬度が28と低く、柔らかいシリコーン樹脂を用いたため、クラック発生時間は500時間と長くなったが、相対弾性率は55%と低くなった。比較例3のアウター樹脂部材は、柔らかく粘着性があると推測され、搬送や梱包が困難であり、量産性に劣ると推測された。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示の実施形態は、CSP、面状発光装置に用いることができる。本開示の実施形態による発光装置は、一般照明用の発光装置、車両用の発光装置、モバイル機器等の表示装置用のバックライトとして利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10:発光素子、20:基板、20a:集合基板、30:インナー樹脂部材、30a:インナー樹脂部材用組成物、40:アウター樹脂部材、40a:アウター樹脂部材用組成物、50:波長変換部材、60:導電部材、70:半導体素子、80:導光部材、100:発光装置。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G