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  • 特許-セラミックス複合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】セラミックス複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/117 20060101AFI20241127BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20241127BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20241127BHJP
【FI】
C04B35/117
C09K11/08 B
C09K11/80
H01L33/50
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022026599
(22)【出願日】2022-02-24
(65)【公開番号】P2023122849
(43)【公開日】2023-09-05
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大栗 裕史
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-011885(JP,A)
【文献】植松敬三,アルミナの焼結における速度論,セラミックス,1995年,Vol.30, No.5,PP.399-403,ISSN:0009-031X
【文献】YOKOTA, Kozo et al.,Influence of Starting Particle Size of Alumina Powder Prepared by Grinding on the Size of Platelike Grain in the Respective Sintered Bodies,Journal of the Ceramic Society of Japan,1998年,Vol.106, No.9,PP.855-859,ISSN:0914-5400, DOI:10.2109/jcersj.106.855
【文献】小山孝ほか,粒子分散アルミナセラミックスの微構造に及ぼす液相生成添加物の影響,Journal of the Ceramic Society of Japan,1996年,Vol.104, No.4,PP.308-311,ISSN:0914-5400, DOI:10.2109/jcersj.104.308
【文献】PARK, Chan woo et al.,Effects of SiO2, CaO2, and MgO Additions on the Grain Growth of Alumina,Journal of the American Ceramic of Society,2000年,Vol.83, No.10,PP.2605-2609,ISSN:0002-7820, DOI:10.1111.j.1151-2916.2000.tb01596.x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/10-35/119
C09K 11/00-11/89
H01L 33/48-33/64
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下である酸化アルミニウム粒子と、前記希土類アルミン酸塩蛍光体粒子とは異なる組成を有する希土類酸化物粒子と、を含む原料混合物を準備することと、
前記原料混合物を、成形して、成形体を得ることと、
前記成形体を焼成して、焼結体を得ること、を含み、
前記酸化アルミニウム粒子は、前記酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した、粒径が20.2μm以上25.4μm未満の粒子の含有割合が1.0体積%以下であり、粒径が16.0μm以上20.2μm未満の粒子の含有割合が1.5体積%以下であり、粒径が12.7μm以上16.0μm未満の粒子の含有割合が2.0体積%以下であり、粒径が10.1μm以上12.7μm未満の粒子の含有割合が2.5体積%以下であり、粒径が8.0μm以上10.1μm未満の粒子の含有割合が1.0体積%以下であり、レーザー回折法で測定した体積基準の粒度分布曲線における小径側からの積算値が25%及び75%のときの粒径をD 25 及びD 75 と表記したときに、VD=(D 75 -D 25 )/(D 75 +D 25 )で表されるVD値が0.6未満であり、酸化アルミニウムの純度が99%以上であり、
前記成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、焼成温度が1550℃以上1800℃以下の範囲内であり、酸素含有雰囲気で焼成する、セラミックス複合体の製造方法。
【請求項2】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が1.0μm以上8.0μm未満の粒子の含有割合が61体積%以上である、請求項1に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項3】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が0μmを超えて1.0μm未満の粒子の含有割合が26.9体積%以下である、請求項1又は2に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項4】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記酸化アルミニウム粒子のレーザー回折法で測定した体積基準の粒度分布における小径側からの積算値が50%の体積平均粒径が、1.0μm以上2.0μm以下の範囲内である、請求項1から3のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項5】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記酸化アルミニウム粒子を目開き308μm以下のふるいでふるい分けし、ふるいを通過した前記酸化アルミニウム粒子を含む前記原料混合物を準備することを、を含む請求項1から4のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項6】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記酸化アルミニウム粒子を目開き160μm以上のふるいでふるい分けし、ふるいを通過した前記酸化アルミニウム粒子を含む前記原料混合物を準備すること、を含む請求項1から5のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項7】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記希土類アルミン酸塩蛍光体と、前記酸化アルミニウム粒子と、前記希土類酸化物粒子と、を乾式混合する、請求項1から6のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項8】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記希土類アルミン酸塩蛍光体粒子が、下記式(I)で表される組成式に含まれる組成を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
(Ln 1-aCe(AlGa12 (I)
(前記式(I)中、Lnは、Y、Gd、Lu及びTbからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、a、b及びcは、0<a≦0.22、0≦b≦0.4、0<c≦1.1、0.9≦b+c≦1.1を満たす。)
【請求項9】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記希土類アルミン酸塩蛍光体粒子のフィッシャーサブシーブサイザー法で測定した平均粒径が10μm以上20μm以下の範囲内である、請求項1から8のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項10】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記原料混合物中の希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が5質量%以上40質量%以下の範囲内である、請求項1から9のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項11】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記希土類酸化物粒子のフィッシャーサブシーブサイザー法で測定した平均粒径が0.05μm以上5μm未満の範囲内である、請求項1から10のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項12】
前記原料混合物を準備することにおいて、前記原料混合物中の前記希土類酸化物粒子の含有量が0.01質量%以上3質量%以下の範囲内である、請求項1から11のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項13】
前記成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、成形体を1次焼成して第1焼結体を得ることと、
前記第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得ること、を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項14】
前記第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得ることにおいて、熱間等方圧加圧により、50MPa以上300MPa以下の範囲内、1500℃以上1800℃以下の範囲内で2次焼成すること、を含む、請求項13に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項15】
前記焼結体の厚みを100μm以上400μm以下の範囲内に加工すること、を含む、請求項1から14のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)と、LEDやLDの発光素子から発せられた光の波長を変換する蛍光体を含む波長変換部材を備えた発光装置が知られている。このような発光装置は、例えば車載用、一般照明用、液晶表示装置のバックライト、プロジェクターなどの光源に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Ceで賦活されたイットリウムアルミニウムガーネット蛍光体と、蛍光体粒子の間に存在する酸化アルミニウムからなる無機材料と、蛍光体粒子の表面の少なくとも一部を覆うように付着された蛍光体粒子よりも小さい粒径を有する添加材粒子と、を含むセラミックス複合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-149394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光体と、透光性の無機材料とを含むセラミックス複合体は、セラミックス複合体から発せられる光の色調のばらつきを抑制することが求められている。
そこで、本発明の一態様は、発光の色調のばらつきを抑制することができるセラミックス複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下である酸化アルミニウム粒子と、を含む原料混合物を準備することと、前記原料混合物を成形して、成形体を得ることと、前記成形体を焼成して、焼結体を得ること、を含むセラミックス複合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、発光の色調のばらつきを抑制することができるセラミックス複合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】セラミックス複合体の製造方法の第1態様を示すフローチャートである。
図2A】本発明の一態様に係る発光装置の概略平面図である。
図2B図2AのIIB-IIB’線における概略断面図である。
図3】実施例1及び2で用いた酸化アルミニウム粒子及び比較例1で用いた酸化アルミニウム粒子のレーザー回折法による体積基準の粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、セラミックス複合体の製造方法及びセラミックス複合体を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下のセラミックス複合体の製造方法及びセラミックス複合体に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。また、本明細書において、セラミックスは、1000℃以下の温度下において、あらゆる無機非金属材料をいう。
【0010】
セラミックス複合体の製造方法は、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下である酸化アルミニウム粒子と、を含む、原料混合物を準備することと、原料混合物を成形して、成形体を得ることと、成形体を焼成して、焼結体を得ること、を含む。
【0011】
図1は、セラミックス複合体の製造方法の第1態様を示すフローチャートである。図面を参照にして、セラミックス複合体の製造方法の工程を説明する。図1に示すように、セラミックス複合体の製造方法は、原料混合物を準備することS101と、原料混合物を成形して成形体を得ることS102と、成形体を焼成して焼結体を得ることS103と、を含む。
【0012】
原料混合物を準備することにおいて、原料混合物は、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下である酸化アルミニウム粒子と、を含む。酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対する、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下であれば、焼成による酸化アルミニウムの結晶の異常成長が抑制され、不良部分の生成が抑制された焼結体を得ることができる。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合は、0.4体積%以下であることがより好ましく、0.3体積%以下であることがさらに好ましく、0.2体積%以下であることがよりさらに好ましく、0.1体積%以下であることが特に好ましく、0体積%でもよい。酸化アルミニウム粒子のレーザー回折法で測定した粒径は32.0μm以下であればよい。
【0013】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子の粒径は、レーザー回折法を用いたレーザー回折式粒子径測定装置(例えばマスターサイザー2000、Malvern社製)を用いて測定することができ、体積基準の粒度分布から酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して各粒径の範囲の粒子の含有割合(体積%)を測定することができる。
【0014】
なお、原料混合物を成形して得られた成形体を焼成することにより、酸化アルミニウム粒子から生成される結晶が異常成長すると、得られた焼結体に例えば「凝集」、「ヌケ」、又は「窪み」と呼ばれる不良部分が生成されている場合がある。焼結体に「凝集」、「ヌケ」、又は「窪み」の不良部分が生成されていると、発光の色調ばらつき、製品歩留まりが低下する場合がある。焼結体に現れる不良部分において、「凝集」は大きい粒子の周りに小さい粒子が集まって大きな結晶相が形成されると推測され、白っぽく見える不良部分である。焼結体に現れる不良部分において、「ヌケ」は大きい粒子が存在することによって結晶相が成長し難くなり結晶相が小さいままになると推測され、黒っぽく見える不良部分である。焼結体に現れる不良部分において、「窪み」は、比較的大きな粒子の周囲に小さな粒子が集まって結晶が異常成長し、異常成長した結晶によって結晶相が密接せずに表面が凹む表面が凹む不良部分である。
【0015】
例えば、原料混合物を準備することにおいて、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%を超える酸化アルミニウム粒子を用いると、粒径が25.4μm以上の粒径の比較的大きな粒子の周囲に小さな粒子が集まって結晶が異常成長し、焼結体に「凝集」、「ヌケ」、又は「窪み」の不良部分が生成され、発光の色調がばらつき、製品の歩留まりが低下する場合がある。
【0016】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が20.2μm以上25.4μm未満の粒子の含有割合が1.0体積%以下であることが好ましい。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が20.2μm以上25.4μm未満の粒子の含有割合が1.0体積%以下であれば、酸化アルミニウムの結晶の異常成長がより抑制され、不良部分がより少なく、発光の色調ばらつきを抑制したセラミックス複合体を得ることができる。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が20.2μm以上25.4μm未満の粒子の含有割合は、0.8体積%以下であることがより好ましく、0.7体積%以下であることがさらに好ましく、0.6体積%以下であることがよりさらに好ましく、0.5体積%以下であることが特に好ましく、0.1体積%以上でもよく、0.2体積%以上でもよい。酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子を含んでいないことが好ましい。
【0017】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が16.0μm以上20.2μm未満の粒子の含有割合が1.5体積%以下であることが好ましい。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が16.0μm以上20.2μm未満の粒子の含有割合が1.5体積%以下であれば、酸化アルミニウムの結晶の異常成長がより抑制され、不良部分がより少なく、発光の色調ばらつきを抑制したセラミックス複合体を得ることができる。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が16.0μm以上20.2μm未満の粒子の含有割合は、1.4体積%以下であることがより好ましく、1.3体積%以下でもよく、0.1体積%以上でもよく、0.2体積%以上でもよく、0.3体積%以上でもよい。
【0018】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が12.7μm以上16.0μm未満の粒子の含有割合が2.0体積%以下であることが好ましい。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が12.7μm以上16.0μm未満の粒子の含有割合が2.0体積%以下であれば、酸化アルミニウムの結晶の異常成長がより抑制され、不良部分がより少なく、発光の色調ばらつきを抑制したセラミックス複合体を得ることができる。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が12.7μm以上16.0μm未満の粒子の含有割合は、1.9体積%以下であることがより好ましく、1.8体積%以下でもよく、0.1体積%以上でもよい。
【0019】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が10.1μm以上12.7μm未満の粒子の含有割合が2.5体積%以下であることが好ましい。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が10.1μm以上12.7μm未満の粒子の含有割合が2.5体積%以下であれば、酸化アルミニウムの結晶の異常成長がより抑制され、不良部分がより少なく、発光の色調ばらつきを抑制したセラミックス複合体を得ることができる。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が10.1μm以上12.7μm未満の粒子の含有割合は、2.2体積%以下であることがより好ましく、0.1体積%以上でもよい。
【0020】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が8.0μm以上10.1μm未満の粒子の含有割合が1.0体積%以下であることが好ましい。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が8.0μm以上10.1μm未満の粒子の含有割合が1.0体積%以下であれば、酸化アルミニウムの結晶の異常成長がより抑制され、不良部分がより少なく、発光の色調ばらつきを抑制したセラミックス複合体を得ることができる。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が8.0μm以上10.1μm未満の粒子の含有割合は、0.9体積%以下であることがより好ましく、0.1体積%以上でもよい。
【0021】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が1.0μm以上8.0μm未満の粒子の含有割合が61体積%以上であることが好ましく、63体積%以上でもよく、65体積%以上でもよく、85体積%以下であることが好ましく、80体積%以下でもよく、75体積%以下でもよい。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中の粒径が1.0μm以上8.0μm未満の粒子の含有割合が61体積%以上85体積%以下の範囲内であれば、希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換された光との色調差が小さい酸化アルミニウムを含む結晶相が焼成により形成されやすくなり、発光の色調のばらつきを抑制したセラミックス複合体を得ることができる。酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量に対して、レーザー回折法で測定した粒径が1.0μm以上7.9μm以下の粒子の含有割合が61体積%以上85体積%以下の範囲内でもよい。
【0022】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が0μmを超えて1.0μm未満の粒子の含有割合が、0μmを超えて1.0μm未満の範囲以外の粒径の粒子の残部であればよい。酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が0μmを超えて1.0μm未満の粒子の含有割合が26.9体積%以下でもよく、26.5体積%以下でもよく、26.0体積%以下でもよく、25.9体積%以下でもよく、25体積%以下でもよく、0.1体積%以上でもよい。
【0023】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子のレーザー回折法で測定した体積基準の粒度分布における小径側からの積算値が50%の体積平均粒径は、1.0μm以上2.0μm以下の範囲内であることが好ましく、1.2μm以上1.8μm以下の範囲内でもよく、1.5μm以上1.7μm以下の範囲内でもよい。原料混合物に含まれる酸化アルミニウム粒子中のレーザー回折法で測定した体積基準の粒度分布における小径側からの積算値が50%のときの体積平均粒径が、1.0μm以上2.0μm以下の範囲内であれば、希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換された光との色調差が小さい酸化アルミニウムを含む結晶相が焼成により形成されやすくなり、発光の色調のばらつきを抑制したセラミックス複合体を得ることができる。
【0024】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子は、レーザー回折法で測定した体積基準の粒度分布における小径側からの積算値が25%及び75%のときの粒径をD25及びD75と表記したときに、VD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるVD値が0.6未満であることが好ましい。酸化アルミニウム粒子の粒度分布におけるVD値が0.6未満であると、酸化アルミニウム粒子の粒度分布が狭くなり、酸化アルミニウム粒子の大きさが揃っているため、焼結体中に大きさが揃った酸化アルミニウムを含む結晶相(後述する第2結晶相)が形成される。焼結体からなるセラミックス複合体に入射された光は、大きさの揃った第2結晶相の粒界で散乱され、後述する第1結晶相に含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換された光と、第2結晶相を透過する光との色調差が小さくなり、セラミックス複合体から出射される光の色調のばらつきを抑制することができる。酸化アルミニウム粒子のVD値は、0.599以下でもよく、0.570以下でもよく、0.400以上でもよく、0.450以上でもよい。
【0025】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の純度が99.0質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることがより好ましい。酸化アルミニウム粒子の酸化アルミニウムの純度が99.0質量%以上であると、不純物が少なく、不良部分の生成が抑制され、輝度の高い光を出射できる焼結体を製造することができる。酸化アルミニウム粒子の酸化アルミニウムの純度は、カタログに記載された純度を参照にしてもよい。ただし、酸化アルミニウム粒子は、流通の過程で不純物が付着する場合があるので、酸化アルミニウム粒子の酸化アルミニウムの純度は測定して求めることもできる。純度の測定は、酸化アルミニウム粒子の質量を測定し、その後、酸化アルミニウム粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、酸化アルミニウム粒子に付着又は吸着されている有機分や水分を除去し、焼成後の酸化アルミニウム粒子の質量を測定し、焼成後の酸化アルミニウム粒子の質量を焼成前の酸化アルミニウム粒子の質量で除すことによって、酸化アルミニウム粒子の純度を求めることができる。
【0026】
原料混合物を準備することにおいて、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子は、下記式(I)で表される組成式に含まれる組成を有することが好ましい。希土類アルミン酸塩蛍光体粒子に含まれる希土類元素を第1希土類元素ともいう。
Ln 1-aCe(AlGa12 (I)
(前記式(I)中、Ln は、Y、Gd、Lu及びTbからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、a、b及びcは、0<a≦0.22、0≦b≦0.4、0<c≦1.1、0.9≦b+c≦1.1を満たす。)
【0027】
希土類アルミン酸塩蛍光体粒子に含まれる第1希土類元素Ln は、Y、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される2種以上の元素を含んでいてもよい。第1希土類元素Ln は、Y、Lu及びGdからなる群から選択される少なくとも1種でもよい。第1希土類元素Ln は、Y及びGdでもよく、Y及びLuでもよい。希土類アルミン酸塩蛍光体粒子中に、2種以上の第1希土類元素Ln 含み、第1希土類元素Ln がY及びGdの場合、第1希土類アルミン酸塩蛍光体の組成中、Y及びGdのモル比(Y:Gd)は99.5:0.5から70:30の範囲であることが好ましく、99:1から80:20の範囲内でもよく、99:1から90:10の範囲内でもよい。
【0028】
前記式(1)中、aは、0.0003≦a≦0.20でもよく、0.001≦a≦0.150でもよく、0.002≦a≦0.100でもよく、0.004≦a≦0.090でもよく、0.005≦a≦0.080でもよい。
【0029】
前記式(1)中、bは、0.02≦b≦0.3でもよく、0.04≦b≦0.24でもよい。前記式(1)中、cは、0.6≦c≦1.0でもよく、0.7≦c≦1.0でもよい。前記式(1)中、b及びcの合計は、1でもよい(b+c=1)。
【0030】
原料混合物を準備することにおいて、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子は、フィッシャーサブシーブサイザー(Fisher Sub-Sieve Sizer、以下「FSSS」ともいう。)法により測定された平均粒径が10μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましく、12μm以上18μm以下の範囲内でもよい。FSSS法は、空気透過法の1種であり、空気の流通抵抗を利用して比表面積を測定し、主に一次粒子の粒径を求める方法である。FSSS法で測定された平均粒径は、フィッシャーサブシーブサイザーズナンバー(Fisher Sub-Sieve Sizer’s Number)である。希土類アルミン酸塩蛍光体粒子のFSSS法により測定された平均粒径が10μm以上20μm以下の範囲内であれば、粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下である酸化アルミニウム粒子とともに焼結した際に、希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換された光と、焼成により形成された酸化アルミニウムの結晶相から出射される光との色調差が小さくなり、発光の色調のばらつきを抑制した焼結体を含むセラミックス複合体を得ることができる。
【0031】
原料混合物を準備することにおいて、原料混合物は、希土類酸化物粒子を含んでいてもよい。希土類酸化物粒子は、希土類アルミン酸塩蛍光体の組成とは異なる組成を有する。希土類酸化物粒子は、組成中に賦活元素を含んでいない。原料混合物中に希土類酸化物粒子を含んでいると、後述する成形体を焼成するときに、希土類酸化物粒子と酸化アルミニウム粒子が反応しやすく、酸化アルミニウムの結晶の異常成長が抑制され、結晶径の揃った結晶相を含む焼結体を得ることができる。
【0032】
希土類酸化物粒子は、具体的には、Y、La、Pr11、Nd、Gd、Tb、Yb、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。希土類酸化物粒子は、Y、La、Nd、Gd、Tb、Yb、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、Y、Gd、Tb、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。希土類酸化物粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。希土類酸化物粒子に含まれる希土類元素を第2希土類元素ともいう。第2希土類元素は、Sc、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0033】
希土類酸化物粒子のFSSS法により測定した平均粒径は、0.05μm以上5μm未満の範囲内であることが好ましく、0.1μm以上4μm以下の範囲内であることがより好ましい。希土類酸化物粒子の平均粒径が0.05μm以上5μm未満の範囲内であると、後述する成形体を焼成するときに、希土類酸化物粒子と酸化アルミニウム粒子が反応しやすく、酸化アルミニウムの結晶の異常成長が抑制されやすくなる。
【0034】
原料混合物中の希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量は、5質量%以上40質量%以下の範囲内であることが好ましく、6質量%以上38質量%以下の範囲内でもよく、7質量%以上35質量%以下の範囲内でもよい。原料混合物が、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子及び酸化アルミニウム粒子からなる場合には、原料混合物中の酸化アルミニウム粒子は、原料混合物から希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量を差し引いた残部である。原料混合物が、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子及び希土類酸化物粒子からなる場合には、酸化アルミニウム粒子及び希土類酸化物粒子の合計量は、原料混合物から希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を差し引いた残部である。
【0035】
原料混合物に、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子、及び希土類酸化物粒子が含まれる場合には、希土類酸化物粒子の含有量が0.01質量%以上3質量%以下の範囲内であることが好ましい。原料混合物が、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子及び希土類酸化物粒子からなる場合は、酸化アルミニウム粒子の含有量は、全体量から希土類アルミン酸塩蛍光体粒子及び希土類酸化物粒子の合計量を差し引いた残部である。原料混合物中に前記範囲内の含有量で希土類酸化物粒子が含まれていると、後述する成形体を焼成するときに、希土類酸化物粒子と酸化アルミニウム粒子が反応して、酸化アルミニウムの結晶が異常成長をするのを抑制することができる。酸化アルミニウムの結晶の異常成長が抑制されると、結晶径の粒度分布が狭く、結晶径の揃った酸化アルミニウムを含む結晶相を含む焼結体を得ることができる。得られた焼結体は、母材となる酸化アルミニウムから形成された結晶相の粒度分布が狭く、結晶径が揃った結晶であるとセラミックス複合体に入射された光が希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換されるとともに、酸化アルミニウムを含む結晶相で散乱され、焼結体を含むセラミックス複合体から出射される光の色調のばらつきを抑制することができる。
【0036】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子をふるい分けすることと、ふるい分けした酸化アルミニウム粒子と、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、を混合することを含んでいてもよい。混合することにおいて、ふるい分けした酸化アルミニウム粒子と、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、必要に応じて希土類酸化物粒子とを混合してもよい。
【0037】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子をふるい分けすると、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下である酸化アルミニウム粒子を得ることができる。
【0038】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子のふるい分けすることは、酸化アルミニウム粒子を目開き308μm以下のふるいでふるい分けすることが好ましい。酸化アルミニウム粒子は、目開き308μm以下のふるいでふるい分けし、ふるいを通過した酸化アルミニウム粒子を用いることが好ましい。目開き308μm以下のふるいで酸化アルミニウム粒子をふるい分けすることにより、ふるいを通過した酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下となる。ふるい分けによりふるいを通過した酸化アルミニウム粒子を用いて、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と焼成することにより、酸化アルミニウムの結晶の異常成長を抑制し、「凝集」、「ヌケ」、又は「窪み」の不良部分の生成を抑制した焼結体を得ることができる。ふるいは、目開き308μm、線径200μm、ナイロン♯50メッシュを用いてもよい。目開き308μmのふるいは、例えば、NB50(株式会社NBCメッシュテック製)を用いることができる。
【0039】
酸化アルミニウム粒子のふるい分けは、酸化アルミニウム粒子を目開き160μm以上のふるいでふるい分けすることが好ましい。酸化アルミニウム粒子は、目開き160μm以上のふるいでふるい分けし、ふるいを通過した酸化アルミニウム粒子を用いることが好ましい。目開き160μm以上のふるいで酸化アルミニウム粒子をふるい分けすることにより、ふるいを通過した酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウム粒子の全体量100体積%に対して、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下となる。ふるい分けによりふるいを通過した酸化アルミニウム粒子を用いて、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と焼成することにより、酸化アルミニウムの結晶の異常成長を抑制し、「凝集」、「ヌケ」、又は「窪み」の不良部分の生成を抑制した焼結体を得ることができる。ふるいは、目開き160μm、線径71μm、ナイロン♯110メッシュを用いてもよい。目開き160μmのふるいは、例えば、N-No.110S(株式会社NBCメッシュテック製)を用いることができる。ふるい分けは、少なくとも1回行うことが好ましく、2回以上行ってもよい。
【0040】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子と、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、必要に応じて希土類酸化物粒子を混合することは、乾式混合してもよく、湿式混合してもよい。
【0041】
乾式混合は、工業的に通常に用いられる混合機を用いて行ってもよい。混合機は、ボールミル、振動ミル、ロールミル、ジェットミル等が挙げられる。
【0042】
湿式混合は、酸化アルミニウム粒子と、希土類アルミン酸塩蛍光体と、必要に応じて希土類酸化物粒子と、を液媒体に分散させて、スラリーを得た後、スラリー中に分散された酸化アルミニウム粒子と希土類アルミン酸塩蛍光体粒子とを大気雰囲気、80℃以上105℃以下の温度で、15時間以上48時間以内で乾燥させて、原料混合物を得てもよい。液媒体は、脱イオン水、炭素数1から4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルコール、又はこれらの混合物を用いることができる。
【0043】
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子をふるい分けすることと、ふるい分けした酸化アルミニウム粒子と、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、必要に応じて希土類酸化物粒子を混合することと、得られた混合物をふるい分けすることと、とを含んでいてもよい。
【0044】
原料混合物を準備することにおいて、希土類アルミン酸塩蛍光体と、酸化アルミニウム粒子と、必要に応じて希土類酸化物粒子とを、混合し、得られた原料混合物をふるい分けするこことによって、原料混合物の凝集を抑制することができる。原料混合物のふるい分けは、目開き308μm以下のふるいでふるい分けしてもよい。原料混合物のふるい分けは、目開き160μm以上のふるいでふるい分けしてもよい。目開き308μmのふるい又は目開き160μmのふるいは、酸化アルミニウム粒子をふるい分けしたふるいを用いることができる。原料混合物のふるい分けは、少なくとも1回行うことができ、2回以上行ってもよい。
【0045】
原料混合物を成形して成形体を得ることにおいて、原料混合物を成形する方法としては、プレス成形法等の知られている方法を採用することができる。プレス成形する方法としては、例えば金型プレス成形、JIS Z2500:2000、No.2109で用語が定義されている、冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)等が挙げられる。その他に一軸で圧縮して、原料混合物を成形してもよい。原料混合物を成形する方法は、得られる成形体の形状を整えるために、2種の方法を採用してもよい。例えば原料混合物を、金型プレスにより成形をした後に、CIPを行ってもよい。原料混合物をローラベンチ法により一軸で圧縮して成形した後に、CIPを行ってもよい。CIPは、水を媒体とする冷間静水等方圧加圧法により原料混合物をプレスして成形することが好ましい。
【0046】
金型プレス成形時の圧力又は一軸で圧縮して成形する場合の圧力は、好ましくは5MPa以上50MPa以下の範囲内であり、より好ましくは5MPa以上30MPa以下の範囲内である。金型プレス成形時の圧力又は一軸で圧縮して成形する場合の圧力が前記範囲であれば、成形体を所望の形状に整えることができる。
【0047】
CIPにおける圧力は、好ましくは50MPa以上200MPa以下の範囲内であり、より好ましくは50MPa以上180MPa以下の範囲内である。CIPにおける圧力が50MPa以上200MPa以下の範囲内であると、後述する1550℃以上1800℃以下の焼成により相対密度が95%以上であるセラミックス複合体を得ることが可能な成形体を形成することができる。
【0048】
成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、焼成温度は、1550℃以上1800℃以下の範囲内であることが好ましく、1600℃以上1750℃以下の範囲内であることがより好ましく、1650℃以上1700℃以下の範囲内であることがさらに好ましい。成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、焼成温度が1550℃以上1800℃以下の範囲内であれば、希土類アルミン酸塩蛍光体を溶解させることなく、希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相、酸化アルミニウムを含む第2結晶相、及び必要に応じて希土類酸化物が結晶成長して生成された第3結晶相を含む焼結体を得ることができ、焼結体からなるセラミックス複合体を得ることができる。
【0049】
成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、焼成は、酸素含有雰囲気で行うことができる。酸素含有雰囲気中の酸素の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。成形体は、大気(酸素含有量が20体積%以上)雰囲気のもとで焼成してもよい。成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、焼成は、大気圧(0.101MPa)雰囲気で行うことができる。
【0050】
成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、焼成時間は、2時間以上20時間以内であることが好ましく、4時間以上10時間以内であってもよい。焼成後、1時間以上100時間以内、大気雰囲気で、第1焼結体を20℃以上200℃以下になるまで冷却することを含んでいてもよい。
【0051】
成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、成形体を1次焼成して第1焼結体を得ることと、得られた第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得ることと、を含んでいてもよい。
【0052】
成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、成形体を1次焼成する温度、雰囲気、時間、得られた第1焼結体を冷却することは、前述の成形体を焼成して焼結体を得ることにおける成形体を焼成する温度、雰囲気、時間、冷却と同様であることが好ましい。
【0053】
成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、成形体を2次焼成して第2焼結体を得ることは、JIS Z2500:2000、No.2112で用語が定義されている熱間等方圧加圧(HIP:Hot Isostatic Pressing)により、1500℃以上1800℃以下の範囲内で2次焼成することが好ましい。第1焼結体を2次焼成して得られる第2焼結体は、相対密度のより高くなる。2次焼成の温度は、1550℃以上1800℃以下の範囲内であることが好ましく、1600℃以上1750℃以下の範囲内であることがより好ましく、1650℃以上1700℃以下の範囲内であることがさらに好ましい。2次焼成は、アルゴン又は窒素雰囲気で行うことができる。
【0054】
2次焼成は、HIPにおける圧力が、好ましくは50MPa以上300MPa以下の範囲内であることが好ましく、80MPa以上200MPa以下の範囲内であることがより好ましい。HIPにおける圧力が50MPa以上300MPa以下の範囲内であると、希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相の結晶構造にダメージを与えることなく、第2焼結体の全体を均一に、より高い密度にすることができる。
【0055】
HIPによる2次焼成は、例えば0.5時間以上20時間以内で行うことが好ましく、1時間以上10時間以内で行ってもよい。2次焼成後、1時間以上10時間以内、アルゴン又は窒素雰囲気で、第2焼結体を20℃以上200℃以下になるまで冷却することを含んでいてもよい。
【0056】
セラミックス複合体の製造方法は、アニール処理すること、加工すること、及び面処理することの少なくとも1つを行うことを含んでいてもよく、2つ以上を行うことを含んでいてもよく、3つを行うことを含んでいてもよい。アニール処理すること、加工すること、又は、面処理することは、成形体を焼成して焼結体を得ることの後に行うことが好ましい。成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、成形体を1次焼成して第1焼結体を得ることと、第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得ることと、を含む場合には、アニール処理すること、加工すること、又は面処理することは、第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得ることの後に行うことが好ましい。
【0057】
アニール処理することは、還元雰囲気で、成形体を焼成して焼結体を得ることにおける焼成温度、よりも低い温度で熱処理する。成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、成形体を1次焼成して第1焼結体を得ることと、第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得ることを含む場合には、1次焼成温度及び2次焼成温度よりも低い温度で熱処理する。焼結体は、還元雰囲気でアニール処理することによって、希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相中に含まれる酸化された賦活元素を還元することができ、発光中心となる賦活元素の酸化による波長変換効率の低下と輝度の低下を抑制することができる。還元雰囲気は、へリウム、ネオン及びアルゴンからなる群から選ばれる少なくとも1種の希ガス又は窒素ガスと、水素ガス又は一酸化炭素ガスとを含む雰囲気であればよく、雰囲気中に少なくともアルゴン又は窒素ガスと、水素ガス又は一酸化炭素ガスとを含むことがより好ましい。アニール処理は、焼結体又は第1焼結体に行ってよく、第2焼結体に行ってもよく、第1焼結体又は第2焼結体のいずか一方に行ってもよい。
【0058】
アニール処理することの温度は、焼成温度よりも低い温度であり、1000℃以上1500℃以下の範囲内であることが好ましい。アニール処理の温度は、より好ましくは1000℃以上1400℃以下の範囲内であり、さらに好ましくは1100℃以上1350℃以下の範囲内である。アニール処理の温度が、焼成温度、1次焼成温度又は2次焼成温度よりも低い温度であり、1000℃以上1500℃以下の範囲内であれば、セラミックス複合体中の希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相に含まれる酸化された賦活元素を還元し、波長変換の効率の低下と輝度の低下を抑制することができる。
【0059】
加工することは、得られた焼結体を所望の大きさ又は厚さに切断する加工を行ってもよい。焼結体の厚みは、100μm以上400μm以下の範囲内に加工することが好ましい。焼結体の厚みが100μm以上400μm以下の範囲内であれば、焼結体を構成する第1結晶相に含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換された光と、第2結晶相及び第3結晶相を含む場合には第3結晶相を透過する光との色調のばらつきが小さく、色調のばらつきの小さい光をセラミックス複合体から出射することができる。加工は、公知の切断する方法を利用することができ、例えば、ブレードダイシング、レーザーダイシング、ワイヤーソーから選択された少なくとも1種の方法を用いて切断する方法が挙げられる。これらのうち、切断面の凹凸をより低減することができる点からワイヤーソーが好ましい。
【0060】
面処理することは、得られた焼結体を切断して得た切断物の表面を面処理する工程である。面処理することによって、セラミックス複合体の発光特性の向上のために、焼結体を含むセラミックス複合体の表面を適切な状態とすることができる。上述の加工すること、及び、面処理することによって、所望の形状、大きさ又は厚さの焼結体を含むセラミックス複合体を得ることができる。面処理することは、焼結体を加工することの前に行ってもよく、加工した後に行ってもよい。面処理する方法は、例えば、サンドブラストによる方法、機械研削による方法、化学的エッチングによるから選択された少なくとも1種の方法が挙げられる。
【0061】
前述の焼結体からなるセラミックス複合体は、光源と組み合わせて、発光装置の波長変換部材を構成する部材として用いることができる。セラミックス複合体を用いた発光装置の一例について説明する。
【0062】
発光装置は、セラミックス複合体を含む波長変換部材と、励起光源とを備えることが好ましい。
図2Aは、発光装置の一例を示し、発光装置100の概略平面図であり、図2Bは、図2Aに示す発光装置100のIIB-IIB’線の概略断面図である。発光装置100は、LED又はLDからなる発光素子20と、発光素子20からの光により励起されて発光するセラミックス複合体からなる波長変換部材30とを備える。発光素子20は、実装基板10上に導電部材60であるバンプを介してフリップチップ実装されている。発光素子20は、発光装置100の励起光源であり、発光素子20の発光面に波長変換部材30が接合される。発光素子20と波長変換部材30は、接着層40を介して接合されていてもよい。発光素子20及び波長変換部材30は、その側面が光を反射する被覆部材50によって覆われている。発光素子20は、実装基板10上に形成された配線及び導電部材60を介して、発光装置100の外部からの電力の供給を受けて、発光装置100を発光させることができる。発光装置100は、発光素子20を過大な電圧の印加による破壊から防ぐための保護素子等の半導体素子70を含んでいてもよい。被覆部材50は、例えば半導体素子70を覆うように設けられる。被覆部材50は、樹脂51と、着色剤、蛍光体及びフィラーからなる群から選択される少なくとも1種の添加材52を含んでいてもよい。以下、発光装置に用いる各部材について説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報の開示を参照することもできる。
【0063】
発光素子は、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子である、LEDチップ又はLDチップを用いることができる。発光素子は、好ましくは380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、より好ましくは390nm以上495nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、さらに好ましくは400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、特に好ましくは420nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。発光素子は、p電極及びn電極が設けられている。発光素子のp電極及びn電極は、発光素子の同じ側の面に形成されていてもよく、異なる側の面に設けられていてもよい。発光素子は、フリップチップ実装されていてもよい。
【0064】
波長変換部材は、前述のセラミックス複合体を用いることができる。波長変換部材として用いるセラミックス複合体の大きさは、発光素子の光の取り出し面を全て覆う大きさであればよい。発光素子と波長変換部材の間には、接着層が介在してもよく、接着層で発光素子と波長変換部材とを固着してもよい。波長変換部材は、前述のセラミックス複合体と、他の部材、例えば透光性部材を備えたものでもよい。
【0065】
発光装置の製造方法の一例を説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報、又は、特開2017-117912号公報の開示を参照することもできる。発光装置の製造方法は、発光素子の配置工程、必要に応じて半導体素子の配置工程、セラミックス複合体を含む波長変換部材の形成工程、発光素子と波長変換部材の接着工程、被覆部材の形成工程を含むことが好ましい。
発光素子の配置工程において、実装基板上に発光素子を配置し、実装する。発光素子と半導体素子とは、例えば、実装基板上にフリップチップ実装される。
発光素子と波長変換部材の接着工程において、波長変換部材を発光素子の発光面に対向させて、発光素子上に波長変換部材を接着層により接合する。
被覆部材の形成工程において、発光面を除く、発光素子、及び波長変換部材の側面が、被覆部材用組成物で覆われ、発光面を除く発光素子及び波長変換部材の側面に被覆部材が形成される。この被覆部材は、発光素子から出射された光を反射させるためのものであり、波長変換部材の発光面を覆うことなく側面を覆い、かつ半導体素子を埋設するように形成される。
以上のようにして、図2A及び図2Bに示す発光装置を製造することができる。
【実施例
【0066】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1
原料混合物を準備することにおいて、本実施例は、酸化アルミニウム粒子をふるい分けすることと、ふるい分けした酸化アルミニウム粒子と、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、希土類酸化物粒子と、を混合することを含む。
酸化アルミニウム粒子として、酸化アルミニウムの純度が99質量%の酸化アルミニウム(Al)粒子を用いた。酸化アルミニウムの純度は、酸化アルミニウム粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、焼成前と後の酸化アルミニウムの質量から求めた。
原料混合物を準備することにおいて、酸化アルミニウム粒子をふるい分けすることは、目開き160μm、線径71μm、ナイロン♯110メッシュのN-No.110S(株式会社NBCメッシュテック製)を用いて行った。ふるい分けは、1回行った。ふるい分けを行った酸化物アルミニウム粒子は、後述するレーザー回折法で測定した粒径が20.2μm以上25.4μm未満の粒子及び25.4μm以上の粒子のいずれの含有割合も0体積%であった。
賦活元素としてCeを含有し、第1希土類元素としてY及びGdを含有する、前記式(I)で表される組成式に含まれる(Y0.806Gd0.16Ce0.034Al12で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を準備した。希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の後述するFSSS法により測定した平均粒径は15μmであった。
第2希土類元素としてYを含む、希土類酸化物粒子として、酸化イットリウム(Y)粒子を準備した。酸化イットリウム粒子の後述するFSSS法により測定した平均粒径は0.1μmであった。
原料混合物を準備することにおいて、ふるい分けした酸化アルミニウム粒子と、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、希土類酸化物粒子と、を混合することは、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を11g、酸化アルミニウム粒子を88.9g、酸化イットリウム粒子を0.1g、それぞれ秤量し、乾式ボールミルで混合し、混合媒体であるボールを除き、原料混合物を準備した(図1において、原料混合物を準備することS101に相当する。)。希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子、及び酸化イットリウム粒子の合計からなる原料混合物100質量%に対して、希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量は11.0質量%であり、酸化アルミニウム粒子の含有量は88.9質量%であり、酸化イットリウム粒子の含有量は0.1質量%であった。
【0068】
原料混合物を成形して成形体を得ることにおいて、原料混合物を金型に充填し、10MPa(102kgf/cm)の圧力で、直径100mm、厚さ12mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を、包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方圧加圧装置(株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)製)を用いて176MPaでCIPを行い、原料混合物を成形して成形体を得た(図1において、原料混合物を成形して成形体を得ることS102に相当する。)。
【0069】
成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、本実施例は、成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、成形体を1次焼成して第1焼結体を得ることと、得られた第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得ることと、を含む。
成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、得られた成形体を、焼成炉(丸祥電気株式会社製)を用いて、大気雰囲気(0.101MPa、酸素濃度20体積%)で、1650℃の温度で1次焼成し、第1焼結体を得た。1次焼成の時間は、6時間であった。1次焼成後、12時間で第1焼結体を150℃になるまで冷却した。
成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、得られた第1焼結体を、熱間等方圧加圧(HIP)装置(株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(99.99体積%以上)のもとで、1650℃の温度、195MPaの圧力で、2時間、HIPによる2次焼成を行い、第2焼結体を得た。2次焼成の時間は、2時間であった。2次焼成後、5時間で第2焼結体が150℃になるまで冷却した。
本実施例において、成形体を焼成して焼結体を得ることの後に、具体的には成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、得られた第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得ることの後に、加工することを含む。
第2焼結体を、ワイヤーソーを用いて、所定の形状及び大きさに切断して、加工された第2焼結体を得た(図1において、成形体を焼成して焼結体を得ることS103に相当する。)。
本実施例において、成形体を焼成して焼結体を得ることの後に、具体的には成形体を焼成して焼結体を得ることにおいて、得られた第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得ることの後に、面処理することを含む。面処理することは、前述の加工することの後に行った。
加工後の第2焼結体の切断面の表面を平面研削機で研磨し、厚みが180μmの板状の第2焼結体からなる実施例1のセラミックス複合体を得た。
【0070】
実施例2
本実施例は、原料混合物を準備することにおける、酸化アルミニウム粒子をふるい分けすることを以下のように行ったこと以外は、実施例1と同様にして、厚みが180μmの板状の焼結体からなる実施例2のセラミックス複合体を得た。
原料を準備することにおける、酸化アルミニウム粒子のふるい分けは、目開き308μm、線径200μm、ナイロン♯50メッシュのNB50(株式会社NBCメッシュテック製)を用いて、酸化アルミニウム粒子のふるい分けを行った。ふるい分けは、1回行った。ふるい分けした酸化アルミニウム粒子は、後述するレーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0体積%であった。
【0071】
比較例1
本比較例は、原料混合物を準備することにおける、酸化アルミニウム粒子のふるい分けを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、厚みが180μmの板状の焼結体からなる比較例2のセラミックス複合体を得た。
ふるい分け行わない酸化アルミニウム粒子は、後述するレーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が1.1体積%であった。酸化アルミニウム粒子の純度は、実施例1と同様にして求めた。
【0072】
実施例1及び2、並びに比較例1で用いた各酸化アルミニウム粒子の体積基準に粒度分布をレーザー回折式粒子径測定装置(マスターサイザー2000、Malvern社製)を用いて測定し、酸化アルミニウム粒子の全体量に対する各粒径の粒子の含有割合を求めた。また、体積基準の粒度分布における小径側からの積算値が50%の体積平均粒径を求めた、結果を表1に示す。図3に、各酸化アルミニウム粒子の体積基準の粒度分布を示す。後述する表1に示すように、比較例1で用いた酸化アルミニウム粒子の体積基準の粒度分布において、25.4μm付近の含有割合は、1.1体積%であった。また、図3から、ふるい分けを行わない比較例1で用いた酸化アルミニウム粒子は、粗大粒子が多いことが確認できる。
【0073】
希土類アルミン酸塩蛍光体粒子及び希土類酸化物粒子である酸化イットリウム粒子について、以下のようにFSSS法により平均粒径を測定した。
各粒子についてFisher Sub-Sieve Sizer Model 95(Fisher Scientific社製)を用いて、気温25℃、相対湿度70%の環境下において、1cm分の各粒子の試料物原料をそれぞれ計り取り、専用の管状容器にパッキングした後、一定圧力の乾燥空気を流し、差圧から比表面積を読み取り、FSSS法による粒径を算出した。結果は上述のとおりである。
【0074】
得られた実施例及び比較例の各セラミックス複合体について、図2A及び図2Bに示す発光装置100を以下のようにして発光装置を作製した。発光素子20及び半導体素子70を実装基板10に載置した。具体的には、サファイア基板上に窒化物半導体が積層されて形成された、厚みが約0.11mmで、平面形状が約1.0mm四方の略正方形であり、主波長が450nmである発光素子20を、半導体成長基板であるサファイア基板側が光出射面となるように、発光素子20及び半導体素子70を一列に配置して、Auからなる導電部材60を用いて、実装基板10に形成させた導電パターンにフリップチップ実装した。
次に、発光素子20の上面に、接着剤40としてシリコーン樹脂を配置して、実施例及び比較例の各セラミックス複合体を板状に形成した波長変換部材30と発光素子20のサファイア基板の上面とを接着させた。
次に、発光素子20、波長変換部材30及び半導体素子70の周囲に被覆部材50を配置した。発光素子20、波長変換部材30の側面に沿って被覆部材50を配置するとともに、半導体素子70を被覆部材50の中に完全に埋没させた。被覆部材50に含まれる樹脂51は、ジメチルシリコーン樹脂を使用し、光反射性材料52として平均粒径が0.28μmの酸化チタン粒子を、樹脂51に対して60質量%含有させた。このような工程により、図2A及び図2Bに示される発光装置100を作製した。
実施例及び比較例の各セラミックス複合体を用いた各発光装置について、以下のように評価を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
実施例及び比較例の各セラミックス複合体を用いた発光装置をそれぞれ40個作製し、イメージング色彩輝度計(ProMetric I8、Radiant Vision Systems社製)を用いて、CIE(国際照明委員会)1931色度図の色度座標系における色度座標(x、y)を求めた。実施例及び比較例の各セラミックス複合体を用いた40個の発光装置の色度座標(x、y)の平均値を、実施例及び比較例のセラミックス複合体の色度座標(x、y)とした。また、実施例及び比較例の各セラミックス複合体を用いた40個の発光装置の色度座標(x、y)の標準偏差(1σ)を、色調のばらつきを評価する指標として求めた。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例1及び2に係る焼結体からなるセラミックス複合体は、レーザー回折法で測定した粒径が25.4μm以上の粒子の含有割合が0.5体積%以下である酸化アルミニウム粒子を含む原料混合物を用いて製造されたため、焼成による酸化アルミニウムの結晶の異常成長が抑制され、得られた焼結体の表面を走査型電子顕微鏡により得られたSEM画像を確認しても、「凝集」、「ヌケ」、又は「窪み」の不良部分を確認することができなかった。
【0078】
実施例1及び2に係る焼結体からなるセラミックス複合体は、酸化アルミニウムのVD値が0.6未満であり、酸化アルミニウム粒子の粒度分布が狭くなり、大きさが揃った酸化アルミニウム粒子を含む第2結晶相が形成される。セラミックス複合体に入射された光は、大きさが揃った第2結晶相の粒界で散乱され、第1結晶相に含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換された光と、第2結晶相を透過する光との色調差が小さくなり、セラミックス複合体から出射される光は、色調のばらつきが抑制された。
【0079】
実施例1及び2に係るセラミックス複合体を用いた発光装置は、出射した光の色度座標(x、y)の標準偏差(xσ、yσ)が、比較例1に係るセラミックス複合体を用いた発光装置から出射した光の色度座標(x、y)の標準偏差(xσ、yσ)よりも小さくなっており、色調のばらつきが抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の一態様のセラミックス複合体の製造方法によって得られたセラミックス複合体は、LEDやLDの励起光源と組み合わせて、車載用光源や一般照明用の照明装置、液晶表示装置のバックライト、プロジェクター用光源の波長変換部材として利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
10:実装基板、20:発光素子、30:波長変換部材、40:接着層、50:被覆部材、60:導電部材、70:半導体素子、100:発光装置。
図1
図2A
図2B
図3