(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】化合物、酸発生剤、組成物、硬化物及びパターン、並びに硬化物及びパターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 209/88 20060101AFI20241127BHJP
C07D 335/16 20060101ALI20241127BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C07D209/88 CSP
C07D335/16
C09K3/00 K
(21)【出願番号】P 2021545535
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2020033851
(87)【国際公開番号】W WO2021049470
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2019164899
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 依純
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 哲千
(72)【発明者】
【氏名】有吉 智幸
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1491975(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1491973(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第103389621(CN,A)
【文献】特開2005-319758(JP,A)
【文献】米国特許第06261738(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第107163169(CN,A)
【文献】特開2010-164964(JP,A)
【文献】特表2008-506749(JP,A)
【文献】特表2006-517950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式
(A2)又は(A3)で表される化合物。
【化1】
式中、R
1
及びR
2
は、トリフルオロメチル基であり、
nは0であり、
R
12
、R
14
、R
15
、R
16
、R
17
及びR
19
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR
30
、-COR
30
、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は前記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
R
30
は、水素原子、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素環含有基若しくは前記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
前記置換基を有している脂肪族炭化水素基、前記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基及び前記置換基を有している複素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO
2
Hであり、
R
18
は、ニトロ基であり、
R
61
は、炭素原子数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基である。
群I:-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CS-、-S-、-SO-、-SO
2
-、-NR
70
-、-NR
70
-CO-、-CO-NR
70
-、-NR
70
-COO-、-OCO-NR
70
-、-SiR
70
R
71
-
R
70
及びR
71
は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基を表し、R
70
又はR
71
が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【化2】
式中、R
1
及びR
2
は、トリフルオロメチル基であり、
nは0であり、
R
12
、R
14
、R
15
、R
16
、R
17
、R
18
及びR
19
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR
30
、-COR
30
、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は前記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
R
30
は、水素原子、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素環含有基若しくは前記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
前記置換基を有している脂肪族炭化水素基、前記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基及び前記置換基を有している複素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO
2
Hであり、
群I:-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CS-、-S-、-SO-、-SO
2
-、-NR
70
-、-NR
70
-CO-、-CO-NR
70
-、-NR
70
-COO-、-OCO-NR
70
-、-SiR
70
R
71
-
R
70
及びR
71
は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基を表し、R
70
又はR
71
が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
請求項
1に記載の化合物を含む酸発生剤。
【請求項3】
請求項
1に記載の化合物と、
樹脂成分と、
を含む、組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分が、酸硬化性樹脂成分である、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載の組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項
4に記載の組成物を硬化する硬化工程を有する硬化物の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂成分が、酸分解性樹脂成分である、請求項
3に記載の組成物。
【請求項8】
請求項
7に記載の組成物を含むパターン。
【請求項9】
請求項
7に記載の組成物を用いて塗膜を形成し、形成された塗膜に含まれる化合物から酸を発生させる工程と、
前記化合物から酸を発生させる工程後に前記塗膜の一部を現像し、パターンを形成する工程と、
を有するパターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸発生剤として好適に使用される化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸発生剤は、光等のエネルギー線照射や加熱処理等により酸を発生する物質である。
特許文献1及び特許文献2には、酸発生剤として、スルホン酸誘導体化合物からなる光酸発生剤又は熱酸発生剤が発明されている。また、特許文献1及び特許文献2には、酸発生剤から発生する酸により重合又は架橋等の化学結合の形成により現像液に対する溶解性が減少するネガ型レジスト、酸の作用でエステル基或いはアセタール基の化学結合の切断等により現像液に対する溶解性が増加するポジ型レジスト等と共に酸発生剤を用いることが記載されている。また、具体的な用途として、半導体、オーバーコート剤、塗料、接着剤、インク用途等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-169173号公報
【文献】US2020183271
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、これらの酸発生剤は、酸発生感度が低い場合があった。
【0005】
そこで本発明の課題は、酸発生感度に優れた化合物を提供することにある。
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するオキシムスルホネート化合物が、酸発生感度に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(A)で表される化合物(以下、化合物Aと称する場合がある。)である。
【0008】
【化1】
(式中、R
11及びR
20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR
30、-COR
30、-OCOR
30、-COOR
30、-SR
30、-SOR
30、-SO
2R
30、-NR
31R
32、-NR
31COR
32、-CONR
31R
32、下記一般式(1)で表される基、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表すか、又はR
11及びR
20が結合して、直接結合、-S-、-O-、-CO-、-CR
41R
42-若しくは-NR
41-を表し、
R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR
50、-COR
50、-OCOR
50、-COOR
50、-SR
50、-SOR
50、-SO
2R
50、-NR
51R
52、-NR
51COR
52、-CONR
51R
52、下記一般式(1)で表される基、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
Xは、直接結合、-S-、-O-、-CO-、-CR
61R
62-又は-NR
61-を表し、
R
30、R
31、R
32、R
41、R
42、R
50、R
51、R
52、R
61及びR
62は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、R
30、R
31、R
32、R
41、R
42、R
50、R
51、R
52、R
61又はR
62が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
16とR
17、R
17とR
18、R
18とR
19及びR
19とR
20は、結合して環を形成していてもよく、
上記置換基を有している脂肪族炭化水素基、上記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基及び上記置換基を有している複素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO
2Hであり、
R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20のうち1つ以上が下記一般式(1)で表される基である。)
【0009】
【化2】
(式中、R
1は、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
R
2は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
上記置換基を有している脂肪族炭化水素基、上記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基及び上記置換基を有している複素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO
2Hであり、
nは0又は1を表し、
上記一般式(A)で表される化合物中に上記一般式(1)で表される基が複数存在する場合、複数存在するn、R
1及びR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
*は、結合箇所を表す。)
群I:-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CS-、-S-、-SO-、-SO
2-、-NR
70-、-NR
70-CO-、-CO-NR
70-、-NR
70-COO-、-OCO-NR
70-、-SiR
70R
71-
R
70及びR
71は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基を表し、R
70又はR
71が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0010】
本発明においては、R13が上記一般式(1)で表される基であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、上述の化合物Aが、下記一般式(A1)、(A2)又は(A3)で表される化合物であることが好ましい。
【0012】
【化3】
(式中の各記号は上記一般式(A)と同義である。ただし、R
11及びR
20は結合していない。)
【0013】
【化4】
(式中の各記号は上記一般式(A)と同義である。)
【0014】
【化5】
(式中の各記号は上記一般式(A)と同義である。)
【0015】
本発明においては、上記一般式(A1)中のR11、R12、R14、R15、R16、R17、R19及びR20が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であり、R18が、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であり、
上記一般式(A2)中のR12、R14、R15、R16、R17及びR19が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であり、R18が、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であり、R61が、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であり、
上記一般式(A3)中のR12、R14、R15、R16、R17、R18及びR19が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましい。
【0016】
本発明においては、nが0であることが好ましい。
【0017】
本発明においては、R1が、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基であり、上記置換基を有している脂肪族炭化水素基及び上記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基がハロゲン原子であり、
R2が、シアノ基又は炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基であり、上記置換基を有している脂肪族炭化水素基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基がハロゲン原子であることが好ましい。
【0018】
本発明は、上述の一般式(A)で表される化合物を含む酸発生剤を提供する。
【0019】
本発明は、上述の一般式(A)で表される化合物と、樹脂成分とを含む組成物を提供する。
【0020】
本発明は、上述の樹脂成分が酸硬化性樹脂成分である組成物を提供する。
【0021】
本発明は、上述の酸硬化性樹脂成分を含む組成物の硬化物を提供する。
【0022】
本発明は、上述の酸硬化性樹脂成分を含む組成物を硬化する硬化工程を有する硬化物の製造方法を提供する。
【0023】
本発明は、上述の樹脂成分が酸分解性樹脂成分である組成物を提供する。
【0024】
本発明は、上述の酸分解性樹脂成分を含む組成物を含むパターンを提供する。
【0025】
本発明は、上述の酸分解性樹脂成分を含む組成物を用いて塗膜を形成し、形成された塗膜に含まれる化合物から酸を発生させる工程と、上記化合物から酸を発生させる工程後に上記塗膜の一部を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターンの製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、化合物、酸発生剤、組成物、硬化物及びパターン、並びに硬化物及びパターンの製造方法に関するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
A.化合物
まず、本発明の化合物について説明する。
本発明の化合物は、下記一般式(A)で表されることを特徴とするものである。
【0028】
【化6】
(式中、R
11及びR
20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR
30、-COR
30、-OCOR
30、-COOR
30、-SR
30、-SOR
30、-SO
2R
30、-NR
31R
32、-NR
31COR
32、-CONR
31R
32、下記一般式(1)で表される基、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表すか、又はR
11及びR
20が結合して、直接結合、-S-、-O-、-CO-、-CR
41R
42-若しくは-NR
41-を表し、
R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR
50、-COR
50、-OCOR
50、-COOR
50、-SR
50、-SOR
50、-SO
2R
50、-NR
51R
52、-NR
51COR
52、-CONR
51R
52、下記一般式(1)で表される基、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
Xは、直接結合、-S-、-O-、-CO-、-CR
61R
62-又は-NR
61-を表し、
R
30、R
31、R
32、R
41、R
42、R
50、R
51、R
52、R
61及びR
62は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、R
30、R
31、R
32、R
41、R
42、R
50、R
51、R
52、R
61又はR
62が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
16とR
17、R
17とR
18、R
18とR
19及びR
19とR
20は、結合して環を形成していてもよく、
上記置換基を有している脂肪族炭化水素基、上記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基及び上記置換基を有している複素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO
2Hであり、
R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20のうち1つ以上が下記一般式(1)で表される基である。)
【0029】
【化7】
(式中、R
1は、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
R
2は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
上記置換基を有している脂肪族炭化水素基、上記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基及び上記置換基を有している複素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO
2Hであり、
nは0又は1を表し、
上記一般式(A)で表される化合物中に上記一般式(1)で表される基が複数存在する場合、複数存在するn、R
1及びR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
*は、結合箇所を表す。)
群I:-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CS-、-S-、-SO-、-SO
2-、-NR
70-、-NR
70-CO-、-CO-NR
70-、-NR
70-COO-、-OCO-NR
70-、-SiR
70R
71-
R
70及びR
71は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基を表し、R
70又はR
71が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
本発明によれば、化合物Aが、上記の構造を有していることにより、酸発生感度に優れたものとなる。
ここで、酸発生感度に優れる理由については、明確ではないが、以下のように推察される。
化合物Aは、2つのベンゼン環が芳香族性を有するように結合した構造を有することにより、可視光以下の波長の光、例えば、i線(365nm)を含む400nm以下の波長領域の光に吸収率に優れたものとなると共に、吸収したエネルギーを効果的に上記一般式(1)で表される基に供給することができる。その結果、上記化合物Aは、酸発生感度に優れたものとなるのである。
【0031】
上記一般式(A)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(A)における炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基は、芳香族炭化水素環及び複素環を含まない炭化水素基であり、置換基を有していてもよい。置換基を有している脂肪族炭化水素基とは、脂肪族炭化水素基中の水素原子の1つ以上が置換基で置換された構造の基である。
無置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基が挙げられる。また、置換基を有する上記脂肪族炭化水素基としては、上記無置換の脂肪族炭化水素基中の水素原子の1つ以上が置換基により置換された基等が挙げられ、該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO2H等が挙げられる。
【0033】
上記炭素原子数1~20のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。直鎖のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、iso-アミル、tert-アミル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルが挙げられる。分岐のアルキル基としては、iso-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、iso-ヘプチル、tert-ヘプチル、iso-オクチル、tert-オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、へブロタデシル、オクタデシル等が挙げられる。
【0034】
上記炭素原子数2~20のアルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、末端に不飽和結合を有する末端アルケニル基であってもよく、内部に不飽和結合を有する内部アルケニル基であってもよい。末端アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル及び5-ヘキセニル等が挙げられる。内部アルケニル基としては、例えば、2-ブテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル、4-ドデセニル及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル等が挙げられる。
【0035】
上記炭素原子数3~20のシクロアルキル基としては、炭素原子数3~20の飽和単環式アルキル基、炭素原子数3~20の飽和多環式アルキル基、及びこれらの基の環中の水素原子の1つ以上がアルキル基で置換された炭素原子数4~20の基が挙げられる。上記飽和単環式アルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシル等が挙げられる。上記飽和多環式アルキル基としては、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル等が挙げられる。飽和単環式又は飽和多環式アルキル基の環中の水素原子を置換するアルキル基としては、上記炭素原子数1~20のアルキル基として例示した基が挙げられる。飽和多環式アルキル基の環中の水素原子の1つ以上が、アルキル基で置換された基としては、例えば、ボルニル基等が挙げられる。
【0036】
上記炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、シクロアルキル基で置換された炭素原子数4~20の基を意味する。シクロアルキルアルキル基中のシクロアルキル基は単環であってもよく、多環であってもよい。シクロアルキル基が単環である炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、2-シクロブチルエチル、3-シクロペンチルプロピル、4-シクロヘキシルブチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、2-シクロノニルエチル及び2-シクロデシルエチル等が挙げられる。シクロアルキル基が多環である炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、3-3-アダマンチルプロピル及びデカハイドロナフチルプロピル等が挙げられる。
【0037】
上記無置換の脂肪族炭化水素基中の水素原子の1つ以上が置換基により置換され、該置換基がハロゲン原子である基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-クロロエチル、2-ブロモエチル、へプタフルオロプロピル、3-ブロモプロピル、ノナフルオロブチル、トリデカフルオロヘキシル、へプタデカフルオロオクチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1-ジフルオロエチル、1,1-ジフルオロプロピル、1,1,2,2-テトラフルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、7H-ドデカフルオロへキシル等のハロゲン化アルキル、ノルボルニル-1,1-ジフルオロエチル、ノルボルニルテトラフルオロエチル、アダマンタン-1,1,2,2-テトラフルオロプロピル、ビシクロ[2.2.1]へプタン-テトラフルオロメチル等のハロゲン化シクロアルキル若しくはハロゲン化シクロアルキルアルキル等が挙げられる。
【0038】
本発明において、基の炭素原子数は、基中の水素原子が置換基で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、上記炭素原子数1~20のアルキル基の水素原子が置換されている場合、炭素原子数1~20とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。
また、本発明において、所定の炭素原子数の基中のメチレン基が二価の基で置き換えられた基の炭素原子数は、その置換前の基の炭素原子数を規定する。例えば、本明細書中、炭素原子数1~20のアルキル基中のメチレン基が二価の基で置き換えられた基の炭素原子数は、1~20である。
【0039】
上記一般式(A)における炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環含有基は、芳香族炭化水素環を含み、複素環を含まない炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基を有していてもよく、置換基を有していてもよい。置換基を有する芳香族炭化水素環含有基とは、芳香族炭化水素環含有基中の水素原子の1つ以上が置換基で置換された構造の基である。
無置換の芳香族炭化水素環含有基としては、例えば、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基がアリール基で置換された基が挙げられる。また、置換基を有する上記芳香族炭化水素環含有基としては、上記無置換の芳香族炭化水素環含有基中の水素原子の1つ以上が置換基により置換された基等が挙げられ、該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO2H等が挙げられる。
【0040】
上記炭素原子数6~20のアリール基は、単環構造であってもよく、縮合環構造であってもよく、更に2つの芳香族炭化水素環が連結したものであってもよい。
2つの芳香族炭化水素環が連結したアリール基としては、2つの単環構造の芳香族炭化水素環が連結したものであってもよく、単環構造の芳香族炭化水素環と縮合環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよく、縮合環構造の芳香族炭化水素環と縮合環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよい。
2つの芳香族炭化水素環を連結する連結基としては、単結合及びカルボニル基等が挙げられる。単環構造のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等が挙げられる。縮合環構造のアリール基としては、例えば、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル及びピレニル等が挙げられる。2つの単環構造の芳香族炭化水素環が連結したアリール基としては、例えば、ビフェニル、ベンゾイルフェニル等が挙げられる。
【0041】
上記炭素原子数7~20のアリールアルキル基とは、アルキル基中の水素原子の1つ以上がアリール基で置換された基を意味する。炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フルオレニル、インデニル、9-フルオレニルメチル、α-メチルベンジル、α,α-ジメチルベンジル、フェニルエチル及びナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0042】
上記一般式(A)における炭素原子数2~20の複素環含有基は、複素環を含む基であり、具体的には、複素環基及び複素環基と炭化水素基とを組み合わせた基からなる一群の基を意味する。複素環含有基は、芳香族炭化水素環含有基を有していてもよく、脂肪族炭化水素基を有していてもよく、置換基を有していてもよい。置換基を有する複素環含有基とは、複素環含有基中の水素原子の1つ以上が置換基で置換された構造の基である。
【0043】
無置換の複素環含有基としては、ピリジル基、キノリル基、チアゾリル基、テトラヒドロフラン基、ジオキソラニル基、テトラヒドロピラニル基、モルホリルフラン基、チオフェン基、メチルチオフェン基、ヘキシルチオフェン基、ベンゾチオフェン基、ピロール基、ピロリジン基、イミダゾール基、イミダゾリジン基、イミダゾリン基、ピラゾール基、ピラゾリジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、ベンゾオキサゾール-2-イル基、チアゾール基、イソチアゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、モルホルニル基等の複素環基、並びにアルキル基の水素原子の1つ以上が複素環で置換された基等が挙げられる。また、置換基を有する上記複素環含有基としては、上記無置換の上記複素環含有基中の水素原子の1つ以上が置換基により置換された基等が挙げられ、該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO2H等が挙げられる。
【0044】
更に、無置換の複素環含有基は、複素環と単環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよく、複素環と縮合環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよい。2つの芳香族炭化水素環を連結する連結基としては、単結合及びカルボニル基等が挙げられる。複素環と単環構造の芳香族炭化水素環とが連結した複素環含有基としては、ベンゾチオフェン等が挙げられる。
【0045】
上記一般式(A)における上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基は、複数の二価の基が隣り合う構造を有しない。複数の二価の基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
上記脂肪族炭化水素基のメチレン基の1つ以上が、上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基としては、例えば、脂肪族炭化水素基であるボルニル基中のメチレン基が-CO-に置き換えられた基である、10-カンファーイル基が挙げられる。
【0047】
上記一般式(A)において、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R18とR19及びR19とR20が結合して形成する環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。単環としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン及びシクロペンテン等の単環のシクロアルカン、ベンゼン等の単環の芳香族環、ピロリジン、ピロール、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、テトラヒドロピリジン、ラクトン環及びラクタム環等の単環の複素環が挙げられる。縮合環としては、ナフタレン及びアントラセン等が挙げられる。
【0048】
本発明においては、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20のうち1つ以上が上記一般式(1)で表される基である。
化合物Aが有する上記一般式(1)で表される基の数、すなわち、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20中の上記一般式(1)で表される基の数は、1又は2であることが好ましく、1であることが好ましい。上記数であることで、化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
本発明においては、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20のうち1つ以上が上記一般式(1)で表される基であればよいが、なかでも、R13及びR18の少なくとも一方の基が上記一般式(1)で表される基であることが好ましく、特に、上記一般式(A)のR13が上記一般式(1)で表される基であることが好ましい。
このような構造であることで、化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
【0049】
上記一般式(A)におけるnは、0であることが好ましい。nが0であることで、化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。
【0050】
上記一般式(A)のR1で表される、上記置換基を有している脂肪族炭化水素基、上記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基及び上記置換基を有している複素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基は、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
上記一般式(A)のR1は、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素含有基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~20の置換基を有している脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の置換基を有している芳香族炭化水素含有基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~20の置換基を有している脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の置換基を有している芳香族炭化水素含有基であり、上記置換基を有している脂肪族炭化水素基及び上記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基がハロゲン原子であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1~20の置換基を有している脂肪族炭化水素基であり、上記置換基を有している脂肪族炭化水素基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基がハロゲン原子であることが好ましい。
上記一般式(A)のR1で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(A)のR1で表される基の炭素原子数は、1~10であることが好ましく、なかでも、1~5であることが好ましい。
なかでも本発明においては、上記一般式(A)のR1が、炭素原子数1~20のアルキル基中の水素原子の1つ以上がハロゲン原子で置換された基である、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキルであることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1~10のアルキル基中の水素原子の1つ以上がハロゲン原子で置換された基である、炭素原子数1~10のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基中の全ての水素原子がハロゲン原子で置換された基である、炭素原子数1~5のパーハロアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基である、炭素原子数1~5のパーフルオロアルキル基であることが最も好ましい。R1がこのような構造であることで、化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。
また、なかでも本発明においては、合成容易及び酸発生感度により優れたものとするとの観点からは、上記一般式(A)のR1が、炭素原子数1~3のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~2のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1のパーフルオロアルキル基、すなわち、トリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0051】
上記一般式(A)のR2で表される、上記置換基を有している脂肪族炭化水素基、上記置換基を有している芳香族炭化水素環含有基及び上記置換基を有している複素環含有基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基は、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることが好ましい。
上記一般式(A)のR2は、シアノ基、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素含有基であることが好ましく、シアノ基又は炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、シアノ基又は炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基であり、上記置換基を有している脂肪族炭化水素基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基がハロゲン原子であることがより好ましく、なかでも、炭素原子数1~20の置換基を有している脂肪族炭化水素基であり、上記置換基を有している脂肪族炭化水素基中の水素原子の1つ以上を置換する置換基がハロゲン原子であることが好ましい。
上記一般式(A)のR2で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(A)のR2で表される基の炭素原子数は、1~10であることが好ましく、なかでも、1~5であることが好ましい。
なかでも本発明においては、上記一般式(A)のR2が、炭素原子数1~20のアルキル基中の水素原子の1つ以上がハロゲン原子で置換された基である、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキルであることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1~10のアルキル基中の水素原子の1つ以上がハロゲン原子で置換された基である、炭素原子数1~10のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基中の全ての水素原子がハロゲン原子で置換された基である、炭素原子数1~5のパーハロアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基である、炭素原子数1~5のパーフルオロアルキル基であることが最も好ましい。R2がこのような構造であることで、化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。
また、なかでも本発明においては、合成容易及び酸発生感度により優れたものとするとの観点からは、上記一般式(A)のR2が、炭素原子数1~3のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~2のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1のパーフルオロアルキル基、すなわち、トリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0052】
上記一般式(A)のR11及びR20は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基、又はR11及びR20が結合して、直接結合、-S-、-O-、-CO-、-CR41R42-若しくは-NR41-であることが好ましく、なかでも、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又はR11及びR20が結合して形成される、直接結合若しくは-CO-であることが好ましく、水素原子、又はR11及びR20が結合して形成される、直接結合若しくは-CO-であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A)のR12、R14、R15、R16、R17及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましく、なかでも、水素原子、ニトロ基、シアノ基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A)のR18は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A)のR18は、吸収波長の調整容易の観点からは、なかでも、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましく、特に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30であることが好ましく、なかでも特に、ニトロ基、シアノ基、-COR30であることが好ましく、なかでも特に、ニトロ基、シアノ基であることが好ましく、なかでも特に、ニトロ基、シアノ基であることが好ましく、ニトロ基であることが好ましい。
上記一般式(A)のR18は、合成容易の観点からは、なかでも、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましく、水素原子であることが好ましい。
上記一般式(A)のXは、直接結合、-S-又は-NR61-であることが好ましく、なかでも、-S-又は-NR61-であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A)中のR61は、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
上記一般式(A)中のR61で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、1~15であることが好ましく、なかでも、2~10であることが好ましく、特に、2~5であることが好ましい。
上記一般式(A)中のR61で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、なかでも、直鎖のアルキル基であることが好ましい。
【0053】
本発明においては、上記一般式(A)のR13が上記一般式(1)で表される基であり、かつ、化合物Aが有する上記一般式(1)で表される基の数が1つであり、Xが-S-であり、R11及びR20が結合していないこと、すなわち、化合物Aが、下記一般式(A1)で表される構造であることが好ましい。
このような構造であることで、化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
なお、R11及びR20が結合していない場合、R11及びR20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、-OCOR30、-COOR30、-SR30、-SOR30、-SO2R30、-NR31R32、-NR31COR32、-CONR31R32、下記一般式(1)で表される基、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の無置換若しくは置換基を有している芳香族炭化水素環含有基若しくは炭素原子数2~20の無置換若しくは置換基を有している複素環含有基、又は、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素環含有基若しくは上記複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表す。
【0054】
【化8】
(式中の各記号は上記一般式(A)と同義である。ただし、R
11及びR
20は結合していない。)
【0055】
上記一般式(A1)中のR11、R12、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A1)中のR11、R12、R14、R15、R16、R17、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましく、なかでも、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A1)中のR18は、吸収波長の調整容易の観点からは、なかでも、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましく、特に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30であることが好ましく、なかでも特に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-COR30であることが好ましく、なかでも特に、ニトロ基、シアノ基であることが好ましく、特に、ニトロ基であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。さらに、化合物Aは、吸収波長の調整容易なものとなるからである。
【0056】
また、本発明においては、上記一般式(A)のR13が上記一般式(1)で表される基であり、かつ、化合物Aが有する上記一般式(1)で表される基の数が1つであり、Xが-NR61-であり、R11及びR20が結合して直接結合となっていること、すなわち、化合物Aが、下記一般式(A2)で表される構造であることも好ましい。
このような構造であることで、化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
【0057】
【化9】
(式中の各記号は上記一般式(A)と同義である。)
【0058】
上記一般式(A2)中のR12、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A2)中のR12、R14、R15、R16、R17及びR19は、なかでも、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A2)中のR18は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましく、特に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30であることが好ましく、なかでも特に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-COR30であることが好ましく、なかでも特に、ニトロ基、シアノ基であることが好ましく、特に、ニトロ基であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。さらに、化合物Aは、吸収波長の調整容易なものとなるからである。
上記一般式(A2)中のR61は、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A2)中のR61で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、1~15であることが好ましく、なかでも、2~10であることが好ましく、特に、2~5であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A2)中のR61で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、なかでも、直鎖のアルキル基であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
【0059】
さらに、本発明においては、上記一般式(A)のR13が上記一般式(1)で表される基であり、かつ、化合物Aが有する上記一般式(1)で表される基の数が1つであり、Xが-S-であり、R11及びR20が結合して-CO-となっていること、すなわち、化合物Aが、下記一般式(A3)で表される構造であることも好ましい。
このような構造であることで、化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
【0060】
【化10】
(式中の各記号は上記一般式(A)と同義である。)
【0061】
上記一般式(A3)中のR12、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OR30、-COR30、炭素原子数1~20の無置換若しくは置換基を有している脂肪族炭化水素基、又は上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
上記一般式(A3)中のR12、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、なかでも、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。化合物Aは、酸発生感度により優れた化合物となるからである。また、合成容易であり、酸発生感度に優れた酸発生剤の形成が容易となるからである。
【0062】
上記化合物Aの具体例としては、下記式(1)~(54)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
上記化合物Aの製造方法としては、所望の構造の化合物が得られる方法であればよく、周知の化学反応を応用して合成することができる。例えば、下記スキームで表される方法が挙げられる。具体的には、公知のケトン化合物と塩酸ヒドロキシルアミンとを反応させることにより、オキシム化合物を得る。続いて、オキシム化合物にスルホン酸無水物を反応させることにより、化合物Aを得る方法が挙げられる。製造方法における反応温度、反応時間及び原料の使用量等の反応条件には特に制限はなく、公知の条件を採用すればよい。
【0068】
【化15】
(式中の各記号は上記一般式(A)と同義である。)
【0069】
上記化合物Aは、酸を発生する機能を有するものである。
上記化合物Aから酸を発生させる方法としては、酸発生剤に一般的に用いられる方法を用いることができる。具体的には、エネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法、これらの方法を同時に又は順に行う方法等を挙げることができる。
上記エネルギー線としては、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線及び荷電粒子線等が挙げられる。本発明においては、エネルギー線が、波長200nm以上450nmの範囲において、波長300nm以上400nm以下の範囲に極大スペクトルを有するものであることが好ましく、なかでも、波長340nm以上380nm以下の範囲に極大スペクトルを有するものであることが好ましい。上記化合物Aから効果的に酸を発生可能だからである。
また、光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハロゲンランプ、電子線照射装置、X線照射装置、レーザー(アルゴンレーザー、色素レーザー、窒素レーザー、発光ダイオード(LED)、ヘリウムカドミウムレーザー等)が挙げられる。
エネルギー線の露光量については、所望量の酸を発生可能であれば特に制限はなく、上記化合物Aの用途等に応じて適宜決定することができる。上記露光量は、5mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下が好ましい。
上記加熱処理における加熱温度としては、例えば、70℃以上450℃以下であることが好ましく、なかでも、150℃以上300℃以下であることが好ましい。また、加熱処理における加熱時間としては、例えば、1分以上100分以下であることが好ましい。上記加熱処理条件であることで、上記化合物Aから効果的に酸を発生可能だからである。
【0070】
上記化合物Aの用途としては、酸発生剤を挙げることができ、より具体的にはエネルギー線照射により酸を発生する光酸発生剤、加熱処理により酸を発生する熱酸発生剤等を挙げることができる。本発明においては、上記化合物Aの用途が、光酸発生剤であることが好ましい。酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮可能だからである。
【0071】
また、酸発生剤の用途としては、樹脂成分を含む組成物への添加用途を挙げることができる。
上記組成物の用途としては、例えば、光学フィルタ、塗料、コーティング剤、ライニング剤、接着剤、印刷版、絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基盤、半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機EL用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用・分離膜用等の封止剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、半導体用・太陽電池用等のパッシベーション膜、薄膜トランジスタ(TFT)・液晶表示装置・有機EL表示装置・プリント基板等に用いられる層間絶縁膜、表面保護膜、プリント基板、或いはカラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、プラズマ表示パネル用の電極材料、印刷インク、歯科用組成物、光造形用樹脂、液状及び乾燥膜の双方、微小機械部品、ガラス繊維ケーブルコーティング、ホログラフィ記録用材料、磁気記録材料、光スイッチ、めっき用マスク、エッチングマスク、スクリーン印刷用ステンシル、透明導電膜等のタッチパネル、MEMS素子、ナノインプリント材料、半導体パッケージの二次元及び三次元高密度実装等のフォトファブリケーション、加飾シート、人口爪、ガラス代替光学フィルム、電子ペーパー、光ディスク、プロジェクター・光通信用レーザー等に用いられるマイクロレンズアレイ、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシート、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート等のレンズシートのレンズ部、又はこのようなシートを用いたバックライト等、マイクロレンズ・撮像用レンズ等の光学レンズ、光学素子、光コネクター、光導波路、絶縁用パッキング、熱収縮ゴムチューブ、O-リング、表示デバイス用シール剤、保護材、光ファイバー保護材、粘着剤、ダイボンディング剤、高放熱性材料、高耐熱シール材、太陽電池・燃料電池・二次電池用部材、電池用固体電解質、絶縁被覆材、複写機用感光ドラム、ガス分離膜、コンクリート保護材・ライニング・土壌注入剤・シーリング剤・蓄冷熱材・ガラスコーティング・発泡体等の土木・建築材料、チューブ・シール材・コーティング材料・滅菌処理装置用シール材・コンタクトレンズ・酸素富化膜、バイオチップ等の医療用材料、自動車部品、各種機械部品等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
【0072】
本発明の酸発生感度に優れるとの効果をより効果的に発揮する観点からは、上記用途が、パターン形成組成物用であることが好ましく、例えば、酸硬化性成分と共に用いられるネガ型組成物用、酸分解性成分と共に用いられるポジ型組成物用等であることが好ましく、より具体的には、光学レンズ、光学素子、光コネクター、光導波路、高い酸発生感度を要求される液晶表示装置・有機EL表示装置・プリント基板等に用いられる層間絶縁膜等の形成に用いられる組成物用であることが好ましい。
【0073】
B.酸発生剤
本発明の酸発生剤は、上述の化合物Aを含むことを特徴とするものである。
酸発生剤が化合物Aを含むことにより、酸発生感度に優れた酸発生剤を容易に得られる。
【0074】
1.化合物A
本発明の酸発生剤に用いる上記化合物Aの種類としては、酸発生感度に優れた酸発生剤を容易に得られるものであればよく、酸発生剤中に1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。
【0075】
本発明の酸発生剤における上記化合物Aの含有量は、酸発生感度に優れた酸発生剤を容易に得られる量であればよく、酸発生剤の種類等に応じて適宜設定されるものである。本発明の酸発生剤における上記化合物Aの含有量としては、例えば、上記酸発生剤の固形分100質量部中に100質量部、すなわち、上記酸発生剤の固形分が上記化合物Aのみであるものとすることができる。本発明の酸発生剤における上記化合物Aの含有量は、酸発生剤の固形分100質量部中に100質量部未満、すなわち、酸発生剤が上記化合物A及びその他の成分を含む組成物であってもよく、例えば、20質量部超99.99質量部以下とすることができる。化合物Aの含有量が上述の範囲であることで、酸発生感度に優れた酸発生剤を容易に得られるからである。
本発明の酸発生剤が上記化合物A以外のその他の成分を含有する場合、酸発生感度に優れた酸発生剤がより容易に得られるとの観点からは、本発明の酸発生剤における化合物Aの含有量の下限が、酸発生剤の固形分100質量部中に50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることが更に好ましい。上記化合物Aの含有量の上限値を上述の範囲であることで、酸発生感度に優れた酸発生剤を容易に得られるからである。また、酸発生剤の粒径制御等が容易になるとの観点等からは、本発明の酸発生剤における化合物Aの含有量の上限は、酸発生剤の固形分100質量部中に99質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることが更に好ましい。化合物Aの含有量が上述の範囲であることで、酸発生感度に優れた酸発生剤を容易に得られるからである。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を含むものである。
また、上記化合物Aの含有量は、化合物Aとして2種類以上を含む場合には、化合物Aの合計量を示すものである。
【0076】
上記化合物Aについては、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0077】
2.その他の成分
上記酸発生剤は、上記化合物A以外のその他の成分を含むものであってもよい。このようなその他の成分としては、例えば、溶剤を挙げることができる。
上記溶剤は、酸発生剤中の各成分を分散又は溶解可能なものである。したがって、常温(25℃)大気圧下で液状であっても、上記化合物Aは溶剤には含まれない。上記溶剤としては、水、有機溶剤の何れも用いることができる。本発明においては、上記溶剤が有機溶剤であることが好ましい。上記化合物Aの溶解又は分散が容易だからである。
【0078】
上記有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類;アセトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール及びジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル又はモノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;蟻酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、等のラクトン類等が挙げられる。
【0079】
上記酸発生剤における上記溶剤の含有量は、酸発生剤100質量部中に、1質量部以上99質量部以下とすることができる。
【0080】
上記溶剤以外のその他の成分としては、後述する「C.組成物」の「2.樹脂成分」及び「3.その他の成分」の項に記載の内容を挙げることができる。
また、上記その他の成分としては、酸発生剤として用いられる公知の化合物等が挙げられる。
上記その他の成分の含有量は、上記酸発生剤の用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば、酸発生剤100質量部中に50質量部以下とすることができ、10質量部以下であることが好ましい。上記酸発生剤は、化合物Aの含有割合を大きいものとすることが容易となり、酸発生感度に優れた酸発生剤をより容易に得られるものとなるからである。
【0081】
3.その他
上記酸発生剤の製造方法としては、上記化合物Aを所望の配合量で含むものとすることができる方法であればよい。
上記酸発生剤が、化合物A及びその他の成分を含む場合には、公知の混合手段を用いる方法を挙げることができる。
【0082】
上記酸発生剤の用途としては、樹脂成分を含む組成物への添加用途を挙げることができ、具体的には、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0083】
C.組成物
本発明の組成物は、上述の化合物Aと樹脂成分とを含むことを特徴とするものである。
上記化合物Aを含むことで、得られる組成物等は、酸発生感度に優れたものとなる。
【0084】
1.化合物A
本発明の組成物に用いる上記化合物Aの種類としては、酸発生感度に優れるとの効果を発揮できるものとなればよく、組成物中に1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。
【0085】
本発明の組成物における上記化合物Aの含有量としては、酸発生感度に優れるとの効果を発揮できるものとなればよく、用いる樹脂成分の種類等に応じて適宜設定されるものである。
本発明の組成物における化合物Aの含有量は、例えば、上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。酸発生感度に優れるとの効果を発揮できる組成物を容易に得られるものとなるからである。
本発明の組成物における化合物Aの含有量は、例えば、上記組成物の固形分100質量部中に0.001質量部以上20質量部以下であることが好ましい。酸発生感度に優れるとの効果を発揮できる組成物を容易に得られるものとなるからである。
本発明の組成物における上記化合物Aの含有量としては、例えば、上記組成物100質量部中に0.001質量部以上20質量部以下であることが好ましい。酸発生感度に優れるとの効果を発揮できる組成物を容易に得られるものとなるからである。また、着色が抑制された組成物等の形成が容易だからである。
上記化合物Aの含有量は、化合物Aとして2種類以上を含む場合には、化合物Aの合計量を示すものである。
【0086】
なお、上記化合物Aについては、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
2.樹脂成分
上記樹脂成分として、高分子化合物又は高分子化合物となり得る成分を用いることができる。
また、上記樹脂成分は、化合物Aから発生した酸と反応可能な構造を有する酸反応性成分であってもよく、化合物Aから発生した酸と反応しない非酸反応性成分であってもよいが、上記樹脂成分が酸反応性成分であることが好ましい。樹脂成分が酸反応性成分であることで、上記組成物は、化合物Aが有する酸発生感度に優れるとの効果を容易に得られるものとなるからである。
【0088】
このような酸反応性成分としては、化合物Aから発生した酸により重合若しくは架橋して硬化する酸硬化性成分、又は化合物Aから発生した酸により現像液への溶解性が増加する酸分解性成分を用いることが好ましい。
本発明においては、樹脂成分が酸硬化性成分である場合には、酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸硬化性成分の硬化が容易なものとなる。また、樹脂成分が酸分解性成分である場合には、酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸分解性成分の分解が容易なものとなる。
【0089】
上記酸硬化性成分としては、カチオン重合性化合物を挙げることができる。
上記カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物等の環状エーテル化合物、ビニルエーテル化合物、ビニル化合物、スチレン類、スピロオルソエステル類、ビシクロオルソエステル類、スピロオルソカーボナート類、ラクトン類、オキサゾリン類、アジリジン類、シクロシロキサン類、ケタール類、環状酸無水物類、ラクタム類、アリールジアルデヒド類等のほか、これらの重合性基を側鎖に有する重合性或いは架橋性ポリマー及びオリゴマーが挙げられる。これらは単独又は2種類以上で混合してもよい。
このようなカチオン重合性化合物の具体例としては、例えば、国際公開2017/130896号に記載の酸反応性有機物質、国際公開2014/084269号、国際公開2016/132413号等に記載のカチオン重合性化合物として記載された化合物を用いることができる。
【0090】
上記酸硬化性成分としては、架橋性樹脂及び架橋剤の混合物も用いることができる。
上記架橋性樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン及びその誘導体;ポリアクリル酸及びその誘導体;ポリメタクリル酸及びその誘導体;ヒドロキシスチレン、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体から選ばれ形成される2以上の共重合体;ヒドロキシスチレン、スチレン及びそれらの誘導体から選ばれ形成される2以上の共重合体;シクロオレフィン及びその誘導体、無水マレイン酸、並びに、アクリル酸及びその誘導体から選ばれる3以上の共重合体;シクロオレフィン及びその誘導体、マレイミド、並びに、アクリル酸及びその誘導体から選ばれる3以上の共重合体;ポリノルボルネン;メタセシス開環重合体からなる群から選択される1種類以上の高分子重合体;アルコキシシリル基を有する重合体;これら高分子重合体にアルカリ溶解制御能を有する酸不安定基を部分的に置換した高分子重合体等が挙げられる。
上記ポリヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレンに由来する構成単位を含む重合体としては、例えば、特開2018-112670号公報に記載のフェノール性水酸基含有樹脂(QN)等も挙げることができる。
上記架橋性樹脂としては、例えば、国際公開2017/130896号に記載のレジストベース樹脂、特開2003-192665号公報に記載の(A)成分の酸の作用でアルカリ現像液に対する溶解性が変化する樹脂、特開2004-323704号公報の請求項3、特開平10-10733号公報に記載のアルカリ可溶性樹脂等として記載される樹脂も用いることができる。
上記アルコキシシリル基を有する重合体としては、例えば、アルコキシシリル基が芳香環に直接結合していない化合物を用いることができる。
【0091】
上記架橋剤としては、酸の存在下で、上記架橋性樹脂同士を架橋可能なものであればよい。このような架橋剤としては、エポキシ基含有化合物、水酸基含有化合物、アルコキシ基含有化合物、メチロール基含有化合物、カルボキシメチル基含有化合物等の、上記樹脂に含まれるフェノール性水酸基、カルボキシル基等の酸性基と、酸の存在下で反応可能な化合物を用いることができる。
上記架橋剤としては、より具体的には、特開2016-169173号公報、特開2018-112670号公報に記載の架橋剤等を挙げることができる。
【0092】
上記酸分解性成分としては、化合物Aから発生した酸により現像液への溶解性が増加するものであればよく、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、シラノール基等の酸性基を有する樹脂中の酸性基の水素原子の一部又は全てを保護基で保護した樹脂を挙げることができる。
このような酸性基を有する樹脂としては、例えば、上述した酸硬化性成分として架橋剤と共に用いられる架橋性樹脂を挙げることができる。特開2018-112670号公報に記載のポジ型化学増幅樹脂も用いることができる。
上記保護基としては、上記酸性基を保護できるものであればよく、例えば、特開2016-169173号公報に記載の保護基、国際公開2017/130896号に記載の酸不安定基、特開2018-112670号公報に記載の酸解離性基等を挙げることができる。また、上記シラノール基が保護基で保護された基としては、アルコキシシリル基が挙げられる。酸分解性成分として用いられる、アルコキシシリル基を有する重合体としては、例えば、特開2019-66828号公報に記載の「芳香環と当該芳香環に直接結合したアルコキシシリル基とを含む構造単位(I)、および酸性基を含む構造単位(II)を有する重合体成分(A)」として挙げられるものを用いることができる。
また、上記現像液としては、後述する「G.パターンの製造方法」の項に記載の現像液が挙げられる。
【0093】
上記酸反応性成分は、酸硬化性成分及び酸分解性成分以外にも、酸で反応する成分を用いることができ、例えば、アルカリ可溶性の基を有する樹脂が、酸により不溶化する樹脂も用いることができる。具体的には、ヒドロキシル基とカルボキシル基、下記に例示するようなカルボキシル基とカルボキシル基の酸触媒脱水縮合による分子内又は分子間の架橋反応等を生じる酸不溶化樹脂を挙げることができる。カルボキシル基とカルボキシル基の酸触媒脱水縮合を生じる酸不溶化樹脂としては、例えば、下記に示すように、酸によりカルボキシル基同士が脱水縮合するフタル酸構造を有する樹脂等が挙げられる。
【0094】
【0095】
上記非酸反応性成分としては、化合物Aから発生した酸と反応しないもの、より具体的には、化合物Aから発生した酸により硬化、分解、アルカリ現像液に対する溶解性の変化等を生じないものを用いることができ、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスチレン・ブタジエン系樹脂、ポリスチレン・オレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0096】
本発明の組成物における上記樹脂成分の含有量は、酸発生感度に優れたものとなるとの効果を得られるものであればよく、用いる樹脂成分の種類等に応じて適宜設定されるものである。
本発明の組成物における上記樹脂成分の含有量は、例えば、上記組成物の固形分100質量部中に10質量部以上とすることができ、30質量部以上99.9質量部以下であることが好ましく、50質量部以上99.9質量部以下であることがより好ましい。酸発生感度に優れたものが得られるとの効果を効果的に得られるからである。
本発明の組成物における上記樹脂成分の含有量は、例えば、上記組成物100質量部中に10質量部以上とすることができ、30質量部以上99.9質量部以下であることが好ましく、50質量部以上99.9質量部以下であることがより好ましい。酸発生感度に優れたものが得られるとの効果を効果的に得られるからである。
【0097】
3.溶剤
上記組成物は溶剤を含むことができる。
上記溶剤は、組成物中の各成分を分散又は溶解可能なものである。したがって、常温(25℃)大気圧下で液状であっても、上記化合物A及び樹脂成分は溶剤には含まれない。
上記溶剤としては、水、有機溶剤の何れも用いることができる。
本発明においては、上記溶剤が有機溶剤であることが好ましい。上記化合物Aの溶解又は分散が容易だからである。
上記有機溶剤としては、上記「B.酸発生剤」の項に記載の内容と同様とすることができる。
また、本発明の組成物における上記溶剤の含有量は、上記組成物の用途等に応じ適宜設定されるものであり、例えば、上記組成物100質量部中に1質量部以上99質量部以下とすることができる。
【0098】
4.その他の成分
上記組成物は、必要に応じてその他の成分を含むことができる。
このようなその他の成分としては、組成物の用途等に応じて選択することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系、硫黄系酸化防止剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等からなる帯電防止剤;ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アミド系化合物、メラミン系化合物、フッ素樹脂又は金属酸化物、(ポリ)リン酸メラミン、(ポリ)リン酸ピペラジン等の難燃剤;炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アマイド系又は金属石けん系の滑剤;染料、顔料、カーボンブラック等の着色剤;フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、珪藻土、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト、シリカ等の珪酸系無機添加剤;ガラス繊維、炭酸カルシウム等の充填剤;造核剤、結晶促進剤等の結晶化剤、シランカップリング剤、可撓性ポリマー等のゴム弾性付与剤、増感剤等が挙げられる。
また、上記その他の成分は、アミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等の酸拡散制御剤も含むことができる。
上記増感剤としては、例えば、特表2008-506749号公報に分光増感剤として記載される化合物が挙げられる。
上記酸拡散制御剤としては、例えば、特開2019-8300号公報に「[D]酸拡散制御体」として記載される化合物が挙げられる。
本発明の組成物におけるこれらのその他の成分の含有量は、上記組成物100質量部中に50質量部以下とすることができる。
【0099】
5.その他
上記組成物の製造方法としては、上記各成分を所望の配合量で混合できる方法であればよく、公知の方法を用いることができる。
例えば、上記化合物Aを溶剤に溶解又は分散した後、上記溶剤に対して、樹脂成分を添加する方法等を挙げることができる。
【0100】
D.硬化物
本発明の硬化物は、上述の組成物の硬化物である。
また、上記組成物に含まれる樹脂成分が酸硬化性成分である。
【0101】
本発明によれば、上述の組成物を用いることで、酸硬化性成分の硬化が十分に進行した硬化物となる。
【0102】
本発明の硬化物は上述の組成物を用いるものである。また、樹脂成分が酸硬化性成分である。上記硬化物は、酸硬化性成分が硬化したものであり、酸硬化性成分同士が重合した重合体又は架橋した架橋体を含むものである。
このような組成物の内容については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0103】
上記硬化物の平面視形状については、上記硬化物の用途に応じて適宜設定することができ、例えば、ドット状、ライン状等のパターン状とすることができる。
【0104】
上記硬化物の用途については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0105】
上記硬化物の製造方法としては、上記組成物の硬化物を所望の形状となるように形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
このような製造方法としては、例えば、後述する「E.硬化物の製造方法」の項に記載の製造方法を用いることができる。
【0106】
E.硬化物の製造方法
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の硬化物の製造方法は、上述の組成物を硬化する硬化工程を有することを特徴とするものである。
また、上記組成物に含まれる樹脂成分は酸硬化性成分である。
【0107】
本発明によれば、上述の組成物を用いることで、酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸硬化性成分の硬化が十分に進行した硬化物を容易に形成可能となる。
【0108】
1.硬化工程
本発明における硬化工程は、上述の組成物を硬化する工程である。
上記組成物を硬化する方法としては、酸硬化性成分を硬化させることができる方法であればよく、化合物Aから酸を発生する方法を用いることができる。
化合物Aから酸を発生する方法としては、化合物Aから所望量の酸を発生できる方法であればよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法及びこれらを同時に又は順に行う方法を挙げることができる。このようなエネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法等については、上記「A.化合物」の項に記載の方法と同様の方法を挙げることができる。
本工程においては、なかでも、上記酸を発生する方法が、エネルギー線を照射する方法を含むことが好ましい。酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸硬化性成分を効果的に硬化可能だからである。
なお、上記組成物は樹脂成分として酸硬化性成分を含むものである。このような組成物の内容については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0109】
2.その他の工程
本発明の硬化物の製造方法は、上記硬化工程以外に、必要に応じてその他の工程を含むものであってもよい。
上記その他の工程としては、上記硬化工程後に、組成物の塗膜中の未重合部分を除去してパターン状硬化物を得る現像工程、上記硬化工程後に、硬化物を加熱処理するポストベーク工程、上記硬化工程前に、組成物を加熱処理して上記組成物中の溶剤を除去するプリベーク工程、上記硬化工程前に、上記組成物の塗膜を形成する工程等を挙げることができる。
本発明においては、上記その他の工程が、ポストベーク工程を有することが好ましい。化合物Aから発生した酸を効果的に拡散できる。その結果、酸硬化性成分の硬化が十分に進行した硬化物の形成が容易となるからである。
【0110】
上記現像工程における未重合部分を除去する方法としては、例えば、アルカリ現像液等の現像液を未重合部分に塗布する方法を挙げることができる。
上記アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液や、水酸化カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液等のアルカリ現像液として一般的に使用されているものを用いることができる。
また、現像液としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)やシクロヘキサノンなどの溶剤現像液として一般的に使用されているものを用いることができる。
上記現像液を用いた現像方法としては、現像したい部位と現像液とを接触させることができる方法であればよく、シャワー法、スプレー法、浸漬法等公知の方法を用いることができる。
上記現像工程の実施タイミングとしては、上記硬化工程後であればよい。
上記ポストベーク工程における加熱条件としては、硬化工程により得られた硬化物の強度等を向上できるものであればよく、例えば、200℃以上250℃以下で20分間~90分間とすることができる。
上記プリベーク工程における加熱条件としては、組成物中の溶剤を除去できるものであればよく、例えば、70℃以上150℃以下で30秒~300秒間とすることができる。
上記塗膜を形成する工程で、組成物を塗布する方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を用いることができる。
上記塗膜は、基材上に形成することができる。
上記基材としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、配線基板、金属、紙、プラスチック等を含むものを挙げることができる。
また、上記硬化物は、基材上で形成された後、基材から剥離して用いても、基材から他の被着体に転写して用いてもよい。
【0111】
F.パターン
本発明のパターンは、上述の組成物を含むものである。
また、上記組成物に含まれる樹脂成分が酸分解性成分である。
【0112】
本発明によれば、上述の組成物を用いることで、酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸分解性成分の分解が容易なものとなる。その結果、寸法精度等に優れたパターンの形成が容易となる。
【0113】
本発明のパターンは上述の組成物を用いるものである。また、樹脂成分が酸分解性成分である。上記パターンは、上述の組成物を用いて塗膜を形成し、不要部分を除去して形成したものである。
このような組成物の内容については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0114】
上記パターンの平面視形状については、上記パターンの用途に応じて適宜設定することができ、例えば、ドット状、ライン状等のパターン状とすることができる。
【0115】
上記パターンの用途については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0116】
上記パターンの製造方法としては、上記組成物を所望の形状となるように形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
このような製造方法としては、例えば、後述する「G.パターンの製造方法」の項に記載の製造方法を用いることができる。
【0117】
G.パターンの製造方法
次に、本発明のパターンの製造方法について説明する。
本発明のパターンの製造方法は、上述の組成物を用いて塗膜を形成し、形成された塗膜に含まれる化合物から酸を発生させる工程と、上記化合物から酸を発生させる工程後に上記塗膜の一部を現像し、パターンを形成する工程とを有するものである。上記組成物に含まれる樹脂成分は酸分解性成分である。
【0118】
本発明によれば、上述の組成物を用いることで、寸法精度等に優れたパターンが得られる。
【0119】
1.酸を発生する工程
本発明における酸を発生させる工程は、上述の組成物を用いて形成された塗膜に含まれる上記化合物Aから酸を発生する工程である。
本工程において、上記化合物Aから酸を発生させる方法としては、化合物Aから所望量の酸を発生できる方法であればよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法及びこれらを同時に又は順に行う方法を挙げることができる。このようなエネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法等については、上記「A.化合物」の項に記載の方法と同様の方法を挙げることができる。
本工程においては、なかでも、上記酸を発生する方法が、エネルギー線を照射する方法を含むことが好ましい。寸法精度等に優れたパターンが得られるとの効果を効果的に発揮可能だからである。
また、本工程においては、塗膜中の酸を発生する箇所については、平面視上塗膜の一部であることが好ましい。後述するパターンを形成する工程の実施が容易となるからである。
上記塗膜の平面視形状及び厚みについては、パターン塗膜の用途等に応じて適宜設定されるものである。
なお、上記組成物は、樹脂成分として酸分解性成分を含むものである。このような組成物の内容については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0120】
2.パターンを形成する工程
本発明におけるパターンを形成する工程は、上記化合物から酸を発生させる工程後に、上記塗膜の一部を現像し、パターンを形成する工程である。
本工程における現像する方法としては、現像液を用いて、現像する方法を挙げることができる。
このような現像液及び現像方法については、上記「E.硬化物の製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0121】
3.その他の工程
本発明のパターンの製造方法としては、上記酸を発生する工程及びパターンを形成する工程を有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有することもできる。
このようなその他の工程としては、上記酸を発生する工程前に、上記組成物の塗膜を形成する工程、上記塗膜を形成する工程後に、加熱処理して上記塗膜中の溶剤を除去するプリベーク工程等を挙げることができる。
本発明においては、上記その他の工程が、露光後ベーク工程を有することが好ましい。化合物Aから発生した酸を効果的に拡散できる。その結果、酸分解性成分の分解をより効果的に進行できるからである。
上記塗膜を形成する工程、プリベークする工程については、上記「E.硬化物の製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができる。
また、露光後ベーク工程の条件としては、例えば、70℃以上150℃以下で30秒~300秒間とすることができる。
【0122】
4.その他
上記製造方法により製造されるパターン及びその用途等については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0123】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0124】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0125】
[実施例1](化合物1の合成)
4つ口フラスコに4-クロロ-2,2,2-トリフルオロアセトフェノンを10.00g(47.95mmol)、DMFを23.54g(理論収量の1.5倍)、Et2Nを5.09g(50.35mmol)加えて80℃で撹拌した。別の容器に4-ニトロベンゼンチオールを7.92g(51.06mmol)、DMFを23.54g(理論収量の1.5倍)加えて撹拌して溶解させ、滴下ロートに移して80℃の反応溶液に1時間かけて滴下した。5時間後放冷し、トルエンを加え、水洗を2回、飽和NaCl水溶液洗浄を1回行い、硫酸ナトリウムで脱水後、脱溶媒して中間体1-1を14.53g(収率92.6%)得た。
【0126】
【0127】
4つ口フラスコに中間体1-1を10.00(30.56mmol)、エタノールを31.38g(理論収量の3倍)、塩酸ヒドロキシルアミンを2.76g(39.72mmol)加え撹拌し、78℃で還流させた。5時間後放冷し、超純水を加えて室温で1時間撹拌してクエンチした。吸引ろ過により黄色粉末をろ別し、ジクロロメタンで晶析して中間体1-2を4.29g(収率41.0%)得た。
【0128】
【0129】
中間体1-2が3.31g(9.66mmol)入ったフラスコに窒素雰囲気下クロロホルムを13.75g(理論収量の3倍)加え、溶液を0℃に冷却後、トリエチルアミン1.96g(19.32mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸クロリド2.44g(14.49mmol)を10℃以下で滴下して加え、氷冷下24時間撹拌した。水10mLを加えてクエンチし、クロロホルムで抽出した。水洗を3回行い、硫酸ナトリウムで脱水した後エバポレーターで溶媒を留去した。ヘキサン:酢酸エチル=99:1でカラムクロマトグラフィーを行い、化合物1を1.81g(収率39.5%、淡黄色固体)を得た。1H-NMR及び19F-NMRの測定結果を表1及び表2に示す。
【0130】
【0131】
[実施例2](化合物2の合成)
4つ口フラスコに9-エチル-3-ニトロカルバゾールを8.00g(33.30mmol)、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)8を9.58g(理論収量の8倍)加えて溶解させた後、4-ジメチルアミノピリジンを4.48g(36.63mmol)加え、窒素気流下で撹拌して均一な溶液とした。系内温度を0℃に冷却し、トリフルオロ酢酸無水物7.69g(36.63g)を30分かけて滴下して加え、塩化アルミニウム13.32g(99.89mmol)を4回に分けて仕込んだ。80℃に昇温して9時間反応させた後、氷水に反応液を注ぎ込みクエンチした。油層を抽出した後、水洗を3回行い、チオ硫酸ナトリウムによる脱水後、溶媒を留去した。粗生成物3.43gをクロロホルム100gに60℃で溶解させたのち、シリカゲル25gを投入してろ過し、溶媒を留去して中間体2-1を3.12g(収率27.9%、黄色固体)得た。
【0132】
【0133】
フラスコに中間体2-1を2.09g(6.22mmol)、エタノールを20g、塩酸ヒドロキシルアミンを0.56g(8.08mmol)加え、加熱還流条件下で6時間反応を行った後、水を加えてクエンチした。酢酸エチルで油層を抽出し、水洗を3回行った後、硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を留去して中間体2-2を1.60g(収率73.3%)得た。
【0134】
【0135】
中間体2-2が1.24g(3.53mmol)入ったフラスコに窒素雰囲気下クロロホルムを8.50g(理論収量の5倍)加え、溶液を0℃に冷却後、トリエチルアミンを0.75g(7.41mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を1.99g(7.06mmol)、10℃以下で滴下して加え、氷冷下で1時間撹拌した。水4mLを加えクエンチし、クロロホルムで抽出した。水洗を3回行い、硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を留去した。クロロホルム:MeOH=1:3で晶析し、化合物2を0.10g(収率9.8%、黄色固体)得た。1H-NMR及び19F-NMRの測定結果を表1及び表2に示す。
【0136】
【0137】
[実施例3](化合物3の合成)
フラスコにチオサリチル酸を2.90g(18.81mmol)、脱水DMFを36.51g、4’-ブロモ-2,2,2-トリフルオロアセトフェノンを4.90g(19.37mmol)加え、窒素気流下で撹拌し均一な溶液とした後、銅を0.039g(0.608mmol)加え、発泡に注意しながら炭酸ナトリウムを2.31g(21.82mmol)加えた。120℃に昇温して1時間反応させた後、160gの1N塩酸に反応液を注ぎ込みクエンチした。イオン交換水で十分に洗浄した後、減圧乾燥し、中間体3-1を3.79g(収率61.8%、白色固体)得た。
【0138】
【0139】
フラスコに中間体3-1を1.00g(3.07mmol)、ポリリン酸を10g(中間体3-1の10倍量)加え、150℃で3時間撹拌した。反応液を氷水にあけてクエンチした後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、イオン交換水で洗浄した。エタノールで晶析し中間体3-2を0.58g(収率61.4%)得た。
【0140】
【0141】
フラスコに中間体3-2を0.54g(1.75mmol)、DMFを5g、塩酸ヒドロキシルアミンを0.16g(2.28mmol)加え、80℃で5時間反応させた。水を加えてクエンチした後、酢酸エチルで油層を抽出し、水洗を3回行い、硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を留去して中間体3-3を0.38g(収率61.8%)得た。
【0142】
【0143】
中間体3-3が0.38g(1.17mmol)入ったフラスコに窒素雰囲気下クロロホルムを2.6g(理論収量の5倍)加え、溶液を0℃に冷却後、トリエチルアミンを0.37g(3.62mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を0.99g(3.51mmol)、10℃以下で滴下して加え、氷冷下で1時間撹拌した。水4mLを加えクエンチし、クロロホルムで抽出した。水洗を3回行い、硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を留去した。メタノールで晶析し、0.25gの化合物3(収率48.6%、黄色固体)を得た。1H-NMR及び19F-NMRの測定結果を表1及び表2に示す。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
[製造例1](比較化合物2の合成)
フラスコにインドール(1.0eq.)、4-フルオロベンゾフェノン(1.2eq.)、炭酸カリウム(3.0eq.)及びジメチルスルホキシド(理論収量の5倍量)を入れ、窒素雰囲気下130℃で3時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、イオン交換水を加え、析出した固体をろ取した。得られた固体をイオン交換水で洗浄して乾燥し、中間体1を得た。
【0148】
【0149】
フラスコに中間体1を5.00g(16.82mmol)、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)53g(理論収量の8倍)、DMAP(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)2.26g(18.50mmol)を加え窒素気流下で撹拌して均一な溶液とした。フラスコを氷浴に入れて系内温度が0℃になったところでトリフルオロ酢酸無水物3.89g(18.50mmol)を30分かけて滴下して加えた。その後、AlCl36.73g(50.44mmol)を4回に分けて加え、昇温して40℃で反応を行った。40℃で3時間反応後、反応液を氷水に注ぎ込んでクエンチした。油層をクロロホルムで抽出し、水洗を3回行って、硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を留去し、粗生成物5.99gを得た。トルエンでカラムクロマトグラフィーを行い、1.92g(収率29.0%)の白色個体(中間体2)を得た。
【0150】
【0151】
フラスコに中間体2を1.90g(4.83mmol)、エタノール10g、塩酸ヒドロキシルアミン0.34g(4.8mmol)を加え、加熱還流条件下で10時間反応を行った後、水を加えてクエンチした。酢酸エチルで油層を抽出し、水洗を3回行って、硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を留去し、粗生成物1.14g(中間体3)を得た。
【0152】
【0153】
中間体3が1.06g(2.50mmol)入ったフラスコに、窒素雰囲気下でクロロホルム5.0g(理論終了の5倍)を加えた。溶液を0℃に冷却後、トリエチルアミン0.79g(7.76mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸無水物2.12g(7.51mmol)を10℃以下で滴下して加え、氷冷下で1時間撹拌した。水4mLを加えてクエンチし、クロロホルムで抽出した。水洗を3回行って、硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を留去した。得られた粗生成物をヘキサン:酢酸エチル=5:1でカラムクロマトグラフィーを行った後、メタノールで晶析し、0.10g(収率9.8%)の白色個体(比較化合物2)を得た。1H-NMR及び19F-NMRの測定結果を表1及び表2に示す。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
<光分解率評価>
実施例1~3で得られた化合物1~3、並びに下記比較化合物1及び2を、100mLメスフラスコに1.0×10-4mol測り取り、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)でメスアップ後、さらに1/10に希釈して1.0×10-4mol/LのPGMEA溶液を調整した。この溶液をスクリューキャップ付き1cm角セルに封入し、HOYA製高圧水銀灯(20mW/cm2)を用い、i線バンドパスフィルターを介して露光した。露光量は20mJ/cm2、50mJ/cm2及び100mJ/cm2とした。露光後、露光液をHPLC測定し、下記式により光分解率(%)を算出した。結果を表3に示す。
光分解率(%)=100-露光後の化合物のピーク面積/露光前の化合物のピーク面積×100
光分解率(%)が高いほど酸発生感度に優れた化合物である。
【0158】
【0159】
【0160】
汎用品の比較化合物1及び他の構造を有するオキシムスルホネート化合物である比較化合物2に比べて、本発明の化合物Aである化合物1~3の光分解率は高く、酸発生感度に優れた化合物であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明によれば、酸発生感度に優れた化合物を提供することができる。