(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】材料蒸発のためのアセンブリ、真空堆積装置、および材料蒸発のための方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20241127BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20241127BHJP
C23C 14/26 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C23C14/24 A
C23C14/12
C23C14/26 B
(21)【出願番号】P 2022541946
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2020050213
(87)【国際公開番号】W WO2021139878
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カーメギル, ペジマン
(72)【発明者】
【氏名】シュタルケ, セバスティアン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-150678(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0060038(KR,A)
【文献】特開2011-157602(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0051204(KR,A)
【文献】特表2007-500794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0142341(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1772621(KR,B1)
【文献】国際公開第2020/244733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C14/00-14/58
H01L21/00-21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料蒸発のためのアセンブリ(100)であって、
るつぼ内の容積を少なくとも部分的に満たす材料蒸発のための
粉体として材料を収容するように構成されたるつぼ(110)、
前記るつぼ内にある、複数のメッシュ構造体(130)および複数の導電体(120)、ここで前記複数の導電体(120)の各導電体は、前記複数のメッシュ構造体(130)の少なくとも1つのメッシュ構造体に熱を伝達するために前記複数のメッシュ構造体(130)の1つの対応するメッシュ構造体に連結されており、
前記複数のメッシュ構造体の少なくとも1つは、前記材料に接触するように構成されており、ならびに
複数のコイル(140)、ここで前記複数のコイルの各コイルは、前記複数の導電体の少なくとも1つの対応する導電体に誘導エネルギーを提供するように構成されており、前記誘導エネルギーは、前記複数の導電体の少なくとも1つの対応する導電体を加熱し、熱は、材料蒸発のため、前記複数の導電体の対応する導電体に連結され
ているとともに前記材料に接触する前記複数のメッシュ構造体の少なくとも1つの対応するメッシュ構造体に伝達される、
を備える、材料蒸発のためのアセンブリ(100)。
【請求項2】
前記複数の導電体が、リングである、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記リングが、前記るつぼの内壁に隣接して配置されている、請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記複数のメッシュ構造体のうち先に加熱されたメッシュ構造体の下に隣接して配置された前記複数のメッシュ構造体のさらなるメッシュ構造体を加熱することによって、材料蒸発のために前記複数のメッシュ構造体の少なくとも1つのメッシュ構造体を順次加熱するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記るつぼが、セラミックるつぼである、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記複数のメッシュ構造体が、セラミック材料を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記複数のメッシュ構造体が、炭化ケイ素を含む、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記複数のコイルを通る電流の流れが、各コイルについて個別に制御可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記複数のコイルが、水冷式である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記複数のコイルのワイヤ間又は導体間に冷却流体を供給する、請求項
1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記るつぼが、
底壁、
頂壁、
側壁、
前記頂壁内または前記頂壁の近くの開口部、
を備え、前記複数のコイルが、前記るつぼの前記側壁の周りに配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
蒸発した材料の分配のために構成された、前記頂壁内または前記頂壁の近くの前記開口部と連通する分配管を、さらに備える、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記るつぼが、
底壁、
頂壁、
側壁、
前記底壁内または前記底壁の近くの開口部、
を備え、前記複数のコイルが、前記るつぼの前記側壁の周りに配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記るつぼが、
底壁、
頂壁、
側壁、
前記底壁内または前記底壁の近くの開口部、
を備え、前記複数のコイルが、前記るつぼの前記側壁の周りに配置されている、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項15】
請求項1から3のいずれか一項に記載の材料蒸発のためのアセンブリ(100)を備える、真空堆積装置(400)。
【請求項16】
材料蒸発のための方法(600)であって、
るつぼ内部の容積を少なくとも部分的に満たすために、粉体として材料を、複数のメッシュ構造体の少なくとも1つのメッシュ構造体が前記材料と接触するように、
前記るつぼ内に用意すること、ここで、複数の導電体が、前記るつぼ内に設けられており、前記複数の導電体の各導電体が、前記複数のメッシュ構造体の少なくとも1つのメッシュ構造体に熱を伝達するために前記複数のメッシュ構造体の対応するメッシュ構造体に連結されており、
アセンブリの複数のコイルの少なくとも1つのコイルに電流を流すこと(610、620)、
前記複数のコイルの前記少なくとも1つのコイルから前記複数の導電体の少なくとも1つの対応する導電体に誘導エネルギーを提供し、前記複数の導電体の前記少なくとも1つの対応する導電体を加熱すること、および
前記複数の導電体の対応する導電体に連結された前記複数のメッシュ構造体の少なくとも1つの対応するメッシュ構造体への伝熱により前記材料を蒸発させること、
を含む方法。
【請求項17】
電流が、前記複数のコイルの各コイルに順次に流される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、材料蒸発、例えば有機材料の蒸発のためのアセンブリおよび方法に関する。本開示の実施形態は、特に、蒸気流を生成するためのアセンブリおよび方法に関し、特に、真空堆積システムにおいて有機発光ダイオード(OLED)を作製するのに適した有機材料蒸気流を生成するためのアセンブリおよび方法に関する。特に、本開示の実施形態は、材料蒸発のためのアセンブリ、真空堆積装置、および材料蒸発のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]多くの技術分野や用途において、基板上に材料の層を堆積させることは有益である。特に、有機発光ダイオード(OLED)の製造中には、1種類以上の材料の薄膜が、基板上に形成される。特に、有機材料の層は、蒸発によって形成される。材料の蒸発には、蒸気の流れを発生させるために、るつぼを使用することができる。蒸気はマスクを通って、基板上に所定のパターンで膜を形成する。また、OLEDの作製には、ホストとドーパントなどの2種類以上の材料の共堆積も考えられている。
【0003】
[0003]OLEDは、発光層が特定の有機材料の薄膜を含む発光ダイオードである。OLEDは、特に、テレビ画面、コンピューターモニター、携帯電話などのディスプレイ、照明用途に使用されている。OLEDディスプレイは、従来のLCDディスプレイと比較して、より優れた性能を示す。特に、OLEDディスプレイは、高輝度・高コントラスト、広視野角、色の範囲の向上を提供する。ディスプレイに画素を表示するためにOLEDが使われているが、OLEDは直接発光するので、バックライトが不要である。そのため、性能の向上に加え、OLEDディスプレイのエネルギー消費も、従来のLCDディスプレイに比べて大幅に削減される。OLEDは、フレキシブルな基板上に製造することもできる。
【0004】
[0004]OLEDは、2つの電極の間に1層以上の有機材料を含む。OLEDディスプレイでは、したがって有機蒸発器を用いて基板上に層が堆積され、個別に制御可能な画素を持つマトリックスを形成する。有機蒸発器では、有機材料を加熱して蒸発させる。次に、蒸気がマスクを通して基板上に導かれ、所定のパターンで層を形成する。
【0005】
[0005]堆積させる材料の蒸発には、るつぼを使用することができる。蒸発させる材料は、通常、粉体として、固体状態で、るつぼ内に配置され、るつぼ内に配置された材料を蒸発させるために、熱が供給される。
【0006】
[0006]蒸発時に劣化しやすい非常に不安定な有機材料の劣化を避けながら、るつぼ内の材料の蒸発速度を正確に保証することは、困難な場合がある。
【0007】
[0007]それゆえ、材料の劣化を最小限に抑えるために、るつぼ内の熱または熱分布を制御することは、有益である。この利点は、OLEDならびにOLEDスクリーンおよびディスプレイの製造に特に関連する。
【発明の概要】
【0008】
[0008]上記に照らして、材料蒸発のためのアセンブリ、真空堆積装置、および材料蒸発のための方法が提供される。さらなる詳細、態様、利点、および特徴が、従属請求項、詳細な説明、および添付の図面から明らかである。
【0009】
[0009]一実施形態によれば、材料蒸発のためのアセンブリが提供される。材料蒸発のためのアセンブリは、材料蒸発のための材料を収容するように構成されたるつぼと、るつぼ内に配置された1つ以上のメッシュ構造体と、誘導エネルギーを提供するように構成された1つ以上のコイルとを含み、誘導エネルギーは、材料蒸発のために1つ以上のメッシュ構造体を加熱する。
【0010】
[0010]一実施形態によれば、真空堆積装置が提供される。真空堆積装置は、本開示のいずれかの実施形態による材料蒸発のためのアセンブリを含む。
【0011】
[0011]一実施形態によれば、材料蒸発のための方法が提供される。材料蒸発のための方法は、1つ以上のメッシュ構造体の少なくとも1つのメッシュ構造体が材料と接触するように、るつぼ内に材料を用意すること、アセンブリの1つ以上のコイルに電流を流すこと、および誘導加熱により材料を蒸発させることを含む。
【0012】
[0012]本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明が、実施態様を参照することによって行われ、そのいくつかが、添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は、例示的な実施態様のみを示し、したがって、範囲を限定すると見なされるべきではなく、他の同等に有効な実施態様を認めることができることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態による材料蒸発のためのアセンブリの概略断面図を示す。
【
図2】分配管を備えた、本開示の実施形態による材料蒸発のためのアセンブリの概略断面図を示す。
【
図3】るつぼの底壁の近くに開口部を備えた、本開示の実施形態による材料蒸発のためのアセンブリの概略断面図を示す。
【
図4】本開示の実施形態による蒸発装置の概略図を示す。
【
図5】本開示の実施形態による材料蒸発のための実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0018]次に、様々な実施形態について詳細に言及する。実施形態の1つ以上の例が、各図に示されている。各例は、説明のために提供されるものであり、限定を意味するものではない。例えば、ある実施形態の一部として図示または説明された特徴は、他の任意の実施形態で、またはそれと組み合わせて使用されて、さらに別の実施形態をもたらすことができる。本開示は、このような修正および変形を含むことが意図される。図に示された詳細、寸法、角度、その他の特徴の多くは、特定の実施態様を例示したものに過ぎない。したがって、他の実施態様は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、他の詳細、構成要素、および特徴を有することができる。さらに、本開示のさらなる実施態様は、以下に説明する詳細のいくつかがなくても、実施することができる。
【0015】
[0019]以下の図面の説明において、同じ参照番号は、同じまたは類似の構成要素を示している。一般的には、個々の実施形態に関する相違点のみを説明する。特に断らない限り、ある実施形態における部分または態様の説明は、他の実施形態における対応する部分または態様にも適用することができる。
【0016】
[0020]本明細書に記載されるアセンブリおよび方法は、特に、例えば、OLEDならびにOLEDディスプレイ、スクリーンおよびモニターの製造に用いられるような有機蒸発器における、材料蒸発のために構成されている。
【0017】
[0021]本開示の実施形態において、蒸気は、るつぼ、特にセラミックるつぼ内で誘導によって生成される。るつぼは、1つ以上のメッシュ構造体を含む。例えば、誘導熱を1つ以上のメッシュ構造体に伝達するために、1つ以上の導電体が、るつぼ内に設けられてもよい。いくつかの実施形態では、導電体は、るつぼの内壁に隣接して配置されたリング、特に金属リングとすることができる。
【0018】
[0022]本明細書に記載される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、材料蒸発のためのアセンブリが提供される。アセンブリは、材料蒸発のための材料を収容するように構成されたるつぼと、るつぼ内に配置された1つ以上のメッシュ構造体とを含む。1つ以上のコイルが、誘導エネルギーを提供するように構成され、誘導エネルギーは、材料蒸発のために1つ以上のメッシュ構造体を加熱する。例えば、1つ以上のコイルは、1つ以上の導電体を加熱することにより、1つ以上のメッシュ構造体を間接的に加熱してもよい。加えて、または代わりに、1つ以上のコイルは、例えば、メッシュ構造体内に誘導電流を発生させることによって、1つ以上のメッシュ構造体を直接加熱してもよい。
【0019】
[0023]
図1は、本開示の実施形態による材料蒸発のためのアセンブリの概略断面図を示す。材料蒸発のためのアセンブリ100は、るつぼ110と、るつぼ内に配置された1つ以上のメッシュ構造体130と、1つ以上のコイル140とを含む。1つ以上のコイル140のコイルに流れる電流は、1つ以上のメッシュの少なくとも1つのメッシュを加熱する。1つ以上のコイル140のコイルは、るつぼ110内の1つ以上のメッシュ130の少なくとも1つのメッシュに伝達される誘導加熱を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、3つ以上のコイルを提供することができ、各コイルは、1つ以上のメッシュ構造体の対応するメッシュ構造体に加熱を提供するように構成される。例えば、6つ以上のコイルを提供することができる。
【0020】
[0024]いくつかの実施形態によれば、3つのメッシュ構造体が、るつぼの充填高さに沿って提供され得る。るつぼ内に提供された材料の量に応じて、複数のメッシュ構造体のうちのメッシュ構造体をオンまたはオフに切り替えることができる。具体的には、より多くの材料が、るつぼに提供されるほど、加熱されるメッシュ構造体の量を減らすことができる。したがって、るつぼに提供された材料への熱負荷を減らすことができ、同時に、メッシュ構造体による蒸発材料の目詰まりを回避することができる。
【0021】
[0025]
図1に例示的に示すように、1つ以上の導電体120が、るつぼ110内にある。1つ以上のコイル140のうちの1つ以上のコイルに流れる電流は、1つ以上の導体120のうちの1つ以上の導体の内部に電流を誘導する。したがって、1つ以上の導体は、誘導加熱によって加熱される。誘導加熱は、1つ以上の導体から、るつぼ110内に配置された1つ以上のメッシュ構造体130のうちのそれぞれのメッシュ構造体に伝達される。
【0022】
[0026]いくつかの実施形態では、るつぼは、材料によって、特に、OLED、例えば、またはOLEDディスプレイもしくはスクリーンの製造のための有機材料によって、少なくとも部分的に満たされている。材料は、1つ以上のメッシュ構造体130のメッシュを通過して、るつぼ110内の容積またはメッシュ構造体間の容積、またはメッシュ構造体とるつぼの壁との間の容積を少なくとも部分的に満たす粉体であり得る。加熱するために、粉体は、1つ以上のメッシュ構造体130のメッシュ構造体に接触することができる。
【0023】
[0027]1つ以上のコイル140の少なくとも1つのコイルに電流が流れると、るつぼ内の1つ以上の導電体120の少なくとも1つの導電体が、電磁誘導によって、すなわち誘導加熱によって加熱される。いくつかの実施形態では、熱は、少なくとも1つの導電体から1つ以上のメッシュ構造体130の少なくとも1つのメッシュ構造体へ、さらに伝達される。少なくとも1つの導電体から少なくとも1つのメッシュ構造体に熱が伝達されると、メッシュ構造体が熱くなり、メッシュ構造体に接触している粉体やメッシュ構造体を埋没させている粉体に熱がさらに伝達され、粉体が蒸発する。
【0024】
[0028]例えば、1つ以上の導電体をリング状またはリングの形になるように設けることが有利である。したがって、1つ以上の導電体は、1つ以上の導電体によって間接的に加熱されるようにメッシュ構造体を囲むことができる。加えて、または代わりに、1つ以上の導電体120は、るつぼの1つ以上の内壁の近くに配置され得る。あるいは、1つ以上の導電体は、誘導によって加熱されるのに適している限り、るつぼ内で異なる位置に配置されていてもよい。1つ以上の導電体、具体的には1つ以上の金属リングが、誘導によって加熱され、熱が、隣接するメッシュ構造体に伝達される。メッシュに接触している材料蒸発のための材料が、加熱され、その間、るつぼの壁は、蒸発している材料に比べ低温である。したがって、特に、るつぼの壁から熱が供給されるようなるつぼと比較して、有機材料への熱負荷を減らすことができる。
【0025】
[0029]いくつかの実施形態では、るつぼは、壁、例えば、頂壁、底壁、側壁を含む。
図2に示すように、開口部210が、壁に設けられており、例えば、
図1および
図2では頂壁に、
図3では底壁に設けられている。コイルが、るつぼの外側の側面に巻かれている。いくつかの実施形態では、材料は、るつぼの壁の充填開口部を通して、るつぼ内に移送されることができる。前記充填開口部は、例えば、適切なシールまたはプラグで、密閉可能であってもよい。
【0026】
[0030]いくつかの実施形態では、別々に作動できる1つ以上のコイル、例えば3つのコイルが存在し、すなわち、電流を各コイルに別々に流すことができる。例えば、コイルは、例えば、アクティブ水冷などの水冷によって、冷却されることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のコイル140をよりよく冷却するために、水または冷却流体が、1つ以上のコイル140の中空ワイヤ内を流れてもよい。加えて、または代わりに、1つ以上のコイルのワイヤ間または導体間に冷却流体を供給することができる。流体は、気体または液体であり得る。
【0027】
[0031]
図5は、材料蒸発のための方法600のフローチャートを示す。るつぼの内部の上側にあるメッシュ構造体、すなわち
図1における上側のメッシュ構造体まで充填され得る、
図1に示するつぼを考えると、一番上のコイルのみを作動させることができる(ボックス610で示される)。有機材料の表面、例えば、るつぼに充填されたある量の粉体の上面が、一番上のメッシュによって加熱され、一番上のメッシュは、一番上のコイルによって加熱される。残りのコイルは、作動されない。したがって、残りのメッシュは、能動的に加熱されることがなく、材料の劣化を回避または低減することができる。蒸発器のさらなる動作の間、有機材料は消費され、
図1に示される例示的な実施形態において、るつぼ内の有機材料の充填レベルが低下する。充填レベルは、一番上のメッシュ構造体より低くなるように低下し得る。それに応じて、先に作動されたメッシュ構造体より下のさらなるメッシュ構造体が、さらなる別のコイルの作動によって追加的に加熱され得る(ボックス620で示される)。時間とともに、中央のコイル、そして最後に一番下のコイルが、プロセスに加えられ、るつぼ内の材料を全て蒸発させる。
【0028】
[0032]蒸発させる材料だけが蒸発温度になればよいので、上から下へコイルを作動させること、つまり、最初は一番上のコイルだけを作動させ、時間とともに中央のコイル、そして最後に一番下のコイルの作動を追加することが、有利である。それ以外の材料は、より低温のままとすることができる。さらに、後続のより低いコイルの作動、例えば、後続のより低いメッシュの加熱(ボックス620を参照)に際して、より上のコイルは、低い充填レベルに対してより上のメッシュ構造体の目詰まりを回避するために、アクティブなままである。
【0029】
[0033]本開示に関連する1つの特定の利点は、例えば、蒸発プロセス中の材料劣化の回避または低減である。また、蒸発材料の熱負荷が軽減され、より大きな表面積が、蒸発のために利用できる。他の実施形態では、異なる数のコイルが存在してもよく、電流は、上から下への方向に沿って隣接するコイルに順次、流される。電力消費などによりコイルに発生する熱を放散させるために、アクティブ冷却を使用することができる。
【0030】
[0034]
図2に示すように、開口部210を、るつぼの頂壁内または頂壁の近くに設けることができ、蒸発した材料の蒸気が、前記開口部を通って、例えば、分配管200内を流れ、開口部202を通って、コーティングされるべき基板上に導かれる。本明細書に記載される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、1つ以上の導電体120は、例えば伝導によって、1つ以上のメッシュ構造体に熱を伝達するために、1つ以上のメッシュ構造体130に連結されている。上述したように、各導電体は、対応するメッシュ構造体に連結されてもよい。あるいは、各導電体は、対応するメッシュ構造体のセット、例えば、るつぼ内に配置された2つ以上のメッシュ構造体に連結させることができる。
【0031】
[0036]蒸発させる材料、例えば粉体を、るつぼ110内に配置することができる。例えば、粉体を、例えば、るつぼ110の頂壁内もしくは頂壁の近くの開口部210を通して、または密閉可能な開口部を通して導入することができる。分配管は、るつぼに材料を導入することを可能にするため、例えば、粉体の導入を可能にするために、取り外し可能で、一時的に分解されてもよい。るつぼ110内に導入された材料は、るつぼ内のメッシュ構造体を覆うことができる。
図2では、3つのコイル140が、例示的に示されている。
図5に示すような、材料蒸発のための方法600によれば、ボックス610に従って、
図2に示す一番上のコイルに電流が流され、それゆえ、開口部210に最も近い一番上のメッシュ構造体が加熱される。そのため、一番上のメッシュ構造体に接触している材料が、蒸発する。一番上のメッシュ構造体に接触している全ての材料が完全に蒸発すると、ボックス620に従って、
図2に示す3つのコイル140のうちの中間のコイルにも電流が流され、
図2に示すメッシュ構造体130のうちの中間のメッシュ構造体の上にある材料が蒸発する。中間のメッシュ構造体に接触している材料も完全に蒸発すると、最後に、
図5のボックス620に従って、
図2に示した3つのメッシュ構造体130のうちの一番下のメッシュ構造体を加熱するために、3つのコイル140のうちの一番下のコイルにも電流が流される。
【0032】
[0037]蒸発中、蒸気は、るつぼ110の頂壁内の開口部210または頂壁の近くの開口部210を通過し、分配管200を通って流れ、最後に分配管200の開口部202から均一な流れで出て、本開示の実施形態による真空堆積装置内で基板をコーティングする。
【0033】
[0038]いくつかの実施形態では、メッシュ構造体と導電体を形成するリング(例えば金属リング)との間に良好な熱的接触が提供される。1つ以上のメッシュ構造体は、良好な熱伝導性を示す。いくつかの実施形態では、1つ以上のメッシュ構造体は、セラミック材料を含む。例えば、1つ以上のメッシュ構造体は、AlNまたはシェイパル(Shapal)、すなわちAlNとBNの組み合わせ、例えば70%の窒化アルミニウムと30%の窒化ホウ素を含むことができ、またはそれらから構成されることができる。1つ以上のメッシュ構造体は、炭化ケイ素を含んでもよい。
【0034】
[0039]本明細書に記載の実施形態によれば、有機材料は、同程度の低温のるつぼに収容されることができる。そのため、材料の劣化を防ぐことができる。有機材料は、短時間、加熱されて、蒸発し、例えば、メッシュ構造体に近い材料だけが、加熱される。したがって、本明細書に記載される他の実施形態と組み合わせることができる例示的な実施形態は、同程度の低い熱伝導率のるつぼを有する。るつぼは、セラミック材料を含んでもよい。るつぼは、SiCを含んでもよいが、るつぼの熱伝導率が炭化ケイ素より低くなるようなセラミックが、用いられてもよい。したがって、るつぼと1つ以上のメッシュ構造体のアセンブリに導入された熱による、るつぼの他の領域、例えば、現在加熱されていない領域における温度上昇を、少なくすることができる。いくつかの実施形態によれば、るつぼは、ZrO2、AlO2、またはPBN(熱分解窒化ホウ素)を含むか、またはこれらから構成されてもよい。
【0035】
[0040]いくつかの実施形態では、1つ以上のコイル140の各コイルを流れる電流を個別に制御することにより、コイルに結合された1つ以上の導電体の誘導加熱を個別に制御することができる。1つ以上のコイル140の各コイルに流れる電流を個別に制御することにより、1つ以上のメッシュ構造体の加熱を個別に制御することができる。
【0036】
[0041]いくつかの実施形態では、材料蒸発のためのアセンブリ100は、底壁、頂壁、側壁、頂壁内または頂壁の近くの開口部を含み、1つ以上のコイルが、るつぼの側壁の周りに配置されている。
【0037】
[0042]いくつかの実施形態では、材料蒸発のためのアセンブリの底壁および頂壁は、地表に対して平行に配置され、頂壁は、アセンブリの底壁よりも地表から高い距離/高さにある。いくつかの実施形態では、るつぼ内で発生した蒸気は、頂壁内の開口部210または頂壁の近くの開口部210を通って垂直方向に流れる。
【0038】
[0043]1つ以上のコイル140は、さらに、能動的に冷却されてもよい。例えば、るつぼの壁と材料蒸発のためのアセンブリのさらに外側の壁との間の空間において、1つ以上のコイルの周囲に水が流れてもよい。さらに、加えて、または代わりに、コイルは、中空の巻線または導体を含んでもよい。巻線または導体を中空にすることで、コイルの巻線または導体内を冷却することができる。
【0039】
[0044]いくつかの実施形態では、材料蒸発のためのアセンブリは、底壁、頂壁、側壁、底壁内または底壁の近くの開口部310を含み、1つ以上のコイルが、るつぼの側壁の周りに配置されている。蒸発した材料の蒸気は、底壁内または底壁の近くの開口部310を通って流れ、したがって、蒸気が頂壁の開口部を通って流れる他の実施形態と比較すると、反対方向に進む。
【0040】
[0045]いくつかの実施形態では、蒸発させる材料の粉体は、1つ以上のメッシュ構造体のメッシュを通過することができず、したがって、粉体は、1つ以上のメッシュ構造体を埋没させることができない。それらの実施形態では、粉体は、1つ以上のメッシュ構造体によって支持される。
図3に例示的に示すように、粉体は、例えば側壁の、例えば追加の開口部を通って、例えば密閉可能な開口部を通って、1つ以上のメッシュ構造体のうちのメッシュ構造体の上に配置されることができ、1つ以上のメッシュ構造体のメッシュを通過することができない。いくつかの実施形態では、1つ以上のコイルの少なくとも1つのコイルに電流が流されると、1つ以上のメッシュ構造体のうちのメッシュ構造体の上にある材料、例えば粉体が、加熱されて、蒸発が起こる。蒸気は、メッシュ構造体のメッシュを通って、メッシュ構造体の下の空間で、るつぼの底部に向かって、広がることができる。
【0041】
[0046]いくつかの実施形態では、
図3に例示的かつ概略的に示すように、1つ以上のメッシュ構造体は、1つのメッシュ構造体130であり得る。1つ以上のコイルは、1つのコイル150であり得る。るつぼは、例えば、頂部から、例えば、頂部の開口部から、または頂壁の取り外し可能もしくは密閉可能な部分を通して、充填可能であってもよい。蒸発させる材料の粉体は、例えば1つのメッシュ構造体で、支持されている。
図5に示される材料蒸発のための方法600によれば、ボックス610に従って、
図3に示される1つのコイル140が、1つのメッシュ構造体を加熱する誘導加熱を提供し、材料が蒸発する。蒸発した材料の蒸気は、
図3に示す1つのメッシュ構造体130のメッシュを通過して、るつぼの底部に向かって流れ、そこで蒸気は、最後に、るつぼ110の底壁内または底壁の近くにある開口部310を通過する。
図3において、材料蒸発のためのアセンブリ100は、るつぼの底壁内または底壁の近くの開口部310を通過した蒸気を、コーティングされる基板に向かって分配するように構成された1つ以上の開口部302を有する分配管300に、さらに接続されている。本明細書に記載される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、1つ以上のメッシュ構造体は、粉体と接触している1つのメッシュ構造体であり得る。しかし、さらなるメッシュ構造体を設けることもできる。例えば、さらなるメッシュ構造体は、液体状態の蒸発材料と接触することができ、および/または、粉体と接触している1つのメッシュ構造体の下への液体状態の材料のトリッピングを回避することができる。いくつかの例によれば、さらなるメッシュ構造体は、2段階の蒸発、すなわち、固体状態から液体状態へ、そして液体状態から気体状態への蒸発を改善することができる。加えて、または代わりに、粉体と接触している1つのメッシュ構造体の下への材料の滴下や、1つのメッシュ構造体を通過する材料の落下を低減または回避することができる。さらに、粉体に供給されるエネルギーを増加させるために、さらなるメッシュ構造体が含まれることもある。
【0042】
[0047]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、材料蒸発のためのアセンブリは、材料の過熱を回避するために、蒸発させる材料の粉体と1つ以上の導電体との間の直接の接触を防止するように構成することができる。例えば、るつぼは、材料の過熱を回避するために、蒸発させる材料の粉体と1つ以上の導電体との間の直接の接触を防止するために、1つ以上の導電体の周りに設けられたシールドを含むことができる。例えば、シールドは、1つ以上の導電体がシールドとるつぼの壁との間に設けられるように設けることができる。有機材料と1つ以上の導電体との接触が減少することで、有機材料の劣化をさらに抑制することができる。
【0043】
[0048]材料蒸発のための方法は、1つ以上のメッシュ構造体130の少なくとも1つのメッシュ構造体が材料と接触するように、るつぼ110内に材料を用意すること、アセンブリの1つ以上のコイル140に電流を流すこと、および誘導加熱により材料を蒸発させることを含むことができる。例えば、電流は、1つ以上のコイル140の各コイルに順次、流される。
図5によれば、材料蒸発のための方法600が提供され、ボックス610で示されるように、一番上のコイルに電流が流され、一番上のコイルに関連する一番上のメッシュ構造体を作動させ、すなわち当該一番上のメッシュ構造体を加熱し、次に、全てのメッシュ構造体が作動されるか、または蒸発もしくは基板のコーティングが完了するまで、反復して、先に作動されたメッシュ構造体より下のさらなるメッシュ構造体が、追加的かつ順次に作動され、すなわち加熱される(ボックス620で示されるように)。
【0044】
[0049]先ず、るつぼの頂壁に近いコイルにのみ電流を流し、その後、既に電流が流れているコイルに隣接するコイルにも電流を流す。その後、追加のコイルに順次、電流を流し、例えば、既に電流が流されたコイルに隣接する、まだ電流が流されていなかったコイルに順次、電流を流す。いくつかの実施形態では、コイルに電流を流すことは、上から下へ、例えば頂壁から底壁へ、例えば頂壁に近いコイルからるつぼの底壁に近いコイルへ向かう方向に沿って、進行する。一度コイルに電流を流すと、全てのコイルに電流が流れるまで、および/または蒸発プロセスが完了するまで、電流はコイルに流されたままである。いくつかの実施形態では、順次に流される電流は、材料の表面からの材料の均一な蒸発を保証し、蒸発させる材料内の高過ぎる温度による材料の劣化を回避する。
【0045】
[0050]未蒸発材料、詳細には未蒸発材料の粉体は、所定の高さまで、すなわち所定の充填レベル/充填高さまで、るつぼの内部を充填し、充填レベルは、蒸発プロセス中に経時的に可変である。材料蒸発中の未蒸発材料と蒸気との間の境界は、表面を形成し、未蒸発材料がるつぼを充填する充填レベルは、例えば、るつぼの底壁からの前記表面の距離として定義することができる。いくつかの実施形態では、電流は、るつぼが未蒸発材料で充填されている実際の充填レベルまたはその近くである、例えば、るつぼが未蒸発材料の粉体で充填されている充填レベルの近くである、るつぼの底部に対するレベル/高さのコイルに流される。各コイルに電流を順次流すことは、未蒸発材料(例えば粉体)がるつぼを充填する充填レベルに近い、またはそれより上の全てのメッシュ構造体を加熱する効果を有する。
【0046】
[0051]本開示の実施形態によれば、加熱、詳細には誘導加熱は、るつぼ内の未蒸発材料と蒸気との間の境界の近くに位置する蒸発させる材料を最適な温度に保ちつつ、加熱し過ぎることによる蒸発させる材料の内部の劣化を回避するために、提供される。したがって、特に材料の劣化を回避するために、有益な熱分布が提供される。蒸発材料の熱負荷を低減することができる。より大きな表面積が、蒸発のために利用できる。
【0047】
[0052]
図4は、本明細書で説明する実施形態による堆積装置を示す。堆積装置400は、蒸発した材料を基板410上に堆積させるように構成されてもよい。堆積装置400は、堆積チャンバ470、詳細には真空堆積チャンバを含む。
図4に示すような堆積装置400の実施形態では、堆積装置400は、堆積チャンバ(特に真空堆積チャンバ)内の、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる材料蒸発のためのアセンブリ100と、蒸発した堆積材料を堆積させる分配アセンブリ420とを含んでいる。分配アセンブリ420は、少なくとも1つの分配管を含む。いくつかの実施形態では、分配アセンブリ420は、分配管の軸の周りに回転可能であるように構成されている回転可能な分配管を含んでもよい。いくつかの実施形態では、分配アセンブリ420は、複数の分配管を含んでもよい。いくつかの実施形態では、分配アセンブリ420は、
図2に図示された分配管200、すなわち、材料蒸発のためのアセンブリ100の上に配置された分配管を含む。他の実施形態では、分配アセンブリ420は、
図3に図示された分配管300、すなわち、材料蒸発のためのアセンブリ100のるつぼ110の底壁内または底壁の近くの開口部を通って流れる蒸気を受け取るように構成された分配管を含む。いくつかの実施形態では、分配アセンブリ420は、加熱ユニットを、さらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、分配アセンブリ420は、冷却ユニットを、さらに含んでもよい。
【0048】
[0053]本明細書に記載された実施形態は、特に、大面積基板上のOLEDディスプレイ製造などのための有機材料の堆積に関する。いくつかの実施形態によれば、大面積基板または1つ以上の基板を支持するキャリアは、0.5m2以上、特に1m2以上のサイズを有することができる。例えば、堆積装置400は、約1.4m2の基板(1.1m×1.3m)に相当するGEN5、約4.29m2の基板(1.95m×2.2m)に相当するGEN7.5、約5.7m2の基板(2.2m×2.5m)に相当するGEN8.5、あるいは約8.7m2の基板(2.85m×3.05m)に相当するGEN10さえもの基板などの大面積基板を処理するように適合させることもできる。GEN11およびGEN12などのさらに大きな世代とそれに対応する基板面積も、同様に実施可能である。例えば、OLEDディスプレイの製造では、GEN6を含む上記の基板世代のハーフサイズを蒸発でコーティングすることができる。基板世代のハーフサイズは、いくつかのプロセスがフルサイズの基板で実行され、後続のプロセスが以前に処理された基板の半分で実行された結果であってもよい。
【0049】
[0054]本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる本明細書の実施形態によれば、基板の厚さは、0.1mm~1.8mmとすることができ、基板のための保持装置は、そのような基板の厚さに適合させることができる。基板の厚さは、約0.9mm以下、例えば0.5mmや0.3mmとすることができ、保持装置は、このような基板の厚さに適合させることができる。通常、基板410は、材料堆積に適した材料で作られてもよい。例えば、基板は、ガラス(例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラスなど)、金属、ポリマー、セラミック、複合材料、炭素繊維材料、または堆積プロセスによってコーティングできる他の材料もしくは材料の組み合わせからなる群から選択される材料で作られてもよい。
【0050】
[0055]本明細書に記載の実施形態によれば、材料は、例えば、複数の開口部を有するファインメタルマスク(FMM)などのマスク463を用いることによって、基板上に所定のパターンで堆積させることができる。複数の画素を基板上に堆積させることができる。
【0051】
[0056]本明細書に記載される任意の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、堆積チャンバ470は、真空堆積チャンバであってもよい。本開示において、「真空堆積チャンバ」は、真空堆積のために構成されたチャンバとして理解することができる。本明細書で使用する「真空」という用語は、例えば10mbarより低い真空圧を有する技術的真空の意味で理解することができる。一般的には、本明細書に記載の真空チャンバ内の圧力は、10-5mbarと約10-8mbarの間、より一般的には10-5mbarと10-7mbarの間、さらにより一般的には約10-6mbarと約10-7mbarの間であってもよい。
【0052】
[0057]いくつかの実施形態によれば、真空チャンバ内の圧力は、真空チャンバ内の蒸発した材料の分圧または全圧(蒸発した材料のみが、真空チャンバ内で堆積される成分として存在する場合、ほぼ同じであり得る)のいずれかであると見なすことができる。いくつかの実施形態では、真空チャンバ内の全圧は、特に、蒸発した材料以外の第2の成分が真空チャンバ内に存在する(ガス等)場合には、約10-4mbar~約10-7mbarの範囲であってよい。
【0053】
[0058]
図4に例示的に示すように、材料蒸発のためのアセンブリ100および分配アセンブリ420は、トラックまたはリニアガイド464上に設けることができる。リニアガイド464は、材料蒸発のためのアセンブリ100および分配アセンブリ420の並進移動のために構成されてもよい。さらに、材料蒸発のためのアセンブリおよび分配アセンブリの並進移動を提供するための駆動装置が存在してもよい。詳細には、材料蒸発のためのアセンブリを非接触で搬送する搬送装置が、真空堆積チャンバ内に設けられてもよい。
【0054】
[0059]
図4に例示的に示すように、堆積チャンバ470は、ゲートバルブ465を有してもよく、それを介して、真空堆積チャンバは、隣接するルーティングモジュールまたは隣接するサービスモジュールに接続されることができる。通常、ルーティングモジュールは、さらなる処理のために基板をさらなる真空堆積装置に搬送するように構成され、サービスモジュールは、堆積チャンバ内のメンテナンスのために構成されている。特に、ゲートバルブは、隣接するルーティングモジュールまたは隣接するサービスモジュールなどの、隣接する真空チャンバに対する真空シールを可能にし、基板および/またはマスクを真空堆積装置へ出し入れするために開閉することができる。
【0055】
[0060]本明細書に記載された他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、基板が、堆積装置400内で処理され得る。詳細には、2つの基板、例えば第1の基板と第2の基板が、堆積チャンバ470内のそれぞれの搬送トラック上で支持され得る。さらに、上にマスク463を設けるための2つのトラックを設けることもできる。詳細には、基板キャリアおよび/またはマスクキャリアの搬送のためのトラックは、キャリアを非接触で搬送するためのさらなる搬送装置を備えてもよい。
【0056】
[0061]通常、基板410上に材料を堆積させることは、基板を、それぞれのマスク463によって、例えば、エッジ除外マスクによって、またはシャドウマスクによって、マスクすることを含み得る。いくつかの実施形態によれば、マスク463、例えば、第1の基板に対応する第1のマスクおよび第2の基板に対応する第2のマスクは、それぞれのマスクを所定の位置に保持するためのマスクフレームに設けられる。
【0057】
[0062]
図4に示すように、リニアガイド464は、材料蒸発のためのアセンブリおよび分配アセンブリ420の並進移動の方向を提供する。アセンブリ100の両側には、マスク463、例えば、第1の基板をマスクするための第1のマスクと第2の基板をマスクするための第2のマスクが、設けられることができる。マスクは、材料蒸発のためのアセンブリの並進移動の方向と本質的に平行に延びることができる。さらに、堆積源の対向する両側の基板もまた、並進移動の方向と本質的に平行に延びることができる。
【0058】
[0063]
図4を例示的に参照すると、リニアガイド464に沿った材料蒸発のためのアセンブリ100および分配アセンブリ420の並進移動のために構成されたアセンブリ支持体461が、提供されてもよい。通常、
図4に模式的に示すように、アセンブリ支持体461は、材料蒸発のためのアセンブリ100と、るつぼの上に設けられた分配アセンブリ420とを支持する。したがって、材料蒸発のためのアセンブリ内で生成された蒸発した材料は、上方に移動し、分配アセンブリの少なくとも1つの分配管の1つ以上の開口部から出ることができる。したがって、本明細書で説明するように、分配アセンブリは、蒸発した材料、詳細には蒸発した有機材料のプルームを、分配アセンブリ220から基板10に提供するように構成される。分配管が回転可能である実施形態では、分配アセンブリ420の対向する両側に配置された基板410に向かって蒸発した材料の蒸気を分配するために、単一の分配管を回転させることができる。そのような実施形態では、分配アセンブリ420は、基板410に対して平行に並進することができ、最初に第1の基板に向かって蒸発した材料の蒸気を分配し、次に第2の基板に向かって蒸発した材料の蒸気を分配するために、回転することができる。回転と並進は、1つ以上の基板のコーティング中に複数回繰り返すことができる。
【0059】
[0064]
図5は、本明細書に記載された実施形態による、材料蒸発のためのアセンブリを用いた材料蒸発のための方法600のフロー図を示す。ボックス610は、コイルに電流を流し、少なくとも1つのコイル140によって提供される誘導加熱を用いて、るつぼ110内に温度勾配を与えることによって、メッシュ構造体、例えば、一番上のメッシュ構造体を作動させることを含む。1つ以上の導電体120が、コイルによって誘導加熱され、熱を1つ以上のメッシュ構造体130に伝達してもよい。加えて、または代わりに、1つ以上のメッシュ構造体130は、1つ以上のコイルによる誘導によって直接加熱されてもよい。るつぼ、1つ以上のコイル、1つ以上のメッシュ構造体および/または1つ以上の導電体は、本開示の実施形態に従って提供されてもよい。
【0060】
[0065]実施形態によれば、るつぼは、基板上に堆積させる材料を提供することができる。材料は、るつぼ110内に配置され、るつぼ内の1つ以上のメッシュ構造体130で蒸発させることができる。1つ以上のメッシュ構造体は、誘導加熱により、堆積させる材料の蒸発温度TEまで加熱させることができる。加熱は、堆積させる材料の蒸発温度TEより低い温度範囲を含む温度勾配を提供することができる。これにより、材料の貯蔵と蒸発を並行して行うことができる。
【0061】
[0066]ボックス620によれば、さらなるメッシュ構造体が、そのメッシュ構造体を加熱するためにコイルに電流を流すことにより、作動され、そのメッシュ構造体は、既に作動しているメッシュ構造体に隣接している。ボックス620は、先に加熱されたメッシュ構造体より下に、それに隣接して配置されたさらなるメッシュ構造体を順次に加熱することを含むことができ、特に、さらなるメッシュ構造体は、蒸発させる材料によって覆われているか、またはそれと接触している、るつぼ内の最も上のメッシュ構造体である。メッシュ構造体は、順番に作動させることができ、ボックス610に従って、コイル、例えば一番上のコイルに電流を流すことによって、例えば一番上のメッシュ構造体が最初に作動され、ボックス620に従って、さらなるメッシュ構造体が順次に作動される。それゆえ、メッシュ構造体の誘導加熱は、一番上のメッシュ構造体から開始され、残りのメッシュ構造体が、上から下へ順次加熱されていく。
【0062】
[0067]実施形態によれば、材料供給システムが、1つ以上のメッシュ構造体で材料を蒸発させるために、るつぼに新たな材料を供給してもよい。材料供給システムは、材料を貯蔵しながら、同時に、材料をるつぼに供給する(例えば、るつぼの壁におけるさらなる開口部を介して)ように構成されてもよい。さらに、材料供給システムは、供給および/または堆積プロセスを妨げることなく簡単に再充填することを可能にする。
【0063】
[0068]本書は、ベストモードを含む本開示を開示し、また、当業者が、任意のデバイスまたはシステムの製造および使用、ならびに組み込まれた任意の方法の実行を含んで、記載された主題を実施できるようにするために、例を使用している。以上、様々な具体的な実施形態を開示したが、上述した実施形態の互いに非排他的な特徴は、互いに組み合わされてもよい。特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定される。