(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20241127BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241127BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20241127BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 C
C23C16/42
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022571474
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047165
(87)【国際公開番号】W WO2022138599
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2020214783
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】平 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
(72)【発明者】
【氏名】門島 勝
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-093551(JP,A)
【文献】特開2018-198288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
H01L 21/31
C23C 16/42
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板に対して原料ガスを供給する工程と、
(b)
(a)の後、前記基板に対して窒素及び水素含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する工程と、
(c)前記基板に対して
N
2
ガスおよび希ガスの少なくともいずれかである不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する工程と、
(d)(a)と(b)との間において、前記基板が存在する空間にN
2
ガスおよび希ガスの少なくともいずれかであるパージガスを供給して、ノンプラズマの雰囲気下で前記基板が存在する空間をパージする工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を、(b)における前記基板が存在する空間の圧力よりも低く
し、
(c)において前記基板が存在する空間に供給されるガスの供給流量を、(d)において前記基板が存在する空間に供給されるガスの供給流量よりも小さくする基板処理方法。
【請求項2】
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を、2Pa以上6Pa以下とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を、2.66Pa以上5.32Pa以下とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を、3Pa以上4Pa以下とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
(c)において前記不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、(b)において前記窒素及び水素含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間よりも長くする請求項1~4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
(c)において前記不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、(a)において前記原料ガスを供給する時間よりも長くする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を、(d)における前記基板が存在する空間の圧力よりも低くする請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記不活性ガスは、N
2ガスを含む請求項1~
7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記不活性ガスは、Arガスを含む請求項1~
7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記窒素及び水素含有ガスは、NH
3ガス、N
2H
2ガス、N
2H
4ガス、N
3H
8ガスのうち少なくともいずれかを含む請求項1~9のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記原料ガスは、ハロシランガスを含む請求項1~10のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
(c)では、前記基板が処理される処理容器の外部に設けられた電極に電力を印加することにより、前記処理容器の内部で前記不活性ガスをプラズマ状態に励起させる請求項1~11のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記基板上に膜を形成する工程を、処理容器内で複数枚の前記基板を支持具により支持した状態で行い、その際、複数枚の前記基板の間隔を、前記支持具により支持可能な最大枚数の基板を支持する場合における基板の間隔よりも大きくする請求項1~12のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記基板上に膜を形成する工程では、複数枚の前記基板の間隔を、前記支持具により支持可能な最大枚数の基板を支持する場合における基板の間隔の2倍以上とする請求項13に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記基板上に膜を形成する工程を、処理容器内に複数枚の前記基板を配列させた状態で行い、その際、複数枚の前記基板の間隔を12mm以上60mm以下とする請求項1~14のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記基板上に膜を形成する工程を、処理容器内に複数枚の前記基板を配列させた状態で行い、その際、複数枚の前記基板の間隔を15mm以上60mm以下とする請求項1~14のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
(c)では、前記基板の側方から、前記基板に対して、前記不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する請求項1~16のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
(a)基板に対して原料ガスを供給する工程と、
(b)
(a)の後、前記基板に対して窒素及び水素含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する工程と、
(c)前記基板に対して
N
2
ガスおよび希ガスの少なくともいずれかである不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する工程と、
(d)(a)と(b)との間において、前記基板が存在する空間にN
2
ガスおよび希ガスの少なくともいずれかであるパージガスを供給して、ノンプラズマの雰囲気下で前記基板が存在する空間をパージする工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を、(b)における前記基板が存在する空間の圧力よりも低く
し、
(c)において前記基板が存在する空間に供給されるガスの供給流量を、(d)において前記基板が存在する空間に供給されるガスの供給流量よりも小さくする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
基板が処理される処理容器と、
前記処理容器内へ原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内へ窒素及び水素含有ガスを供給する窒素及び水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内へ
N
2
ガスおよび希ガスの少なくともいずれかである不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
ガスをプラズマ状態に励起させるプラズマ励起部と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
(a)処理容器内の基板に対して前記原料ガスを供給する処理と、(b)
(a)の後、前記処理容器内の前記基板に対して前記窒素及び水素含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する処理と、(c)前記処理容器内の前記基板に対して前記不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する処理と、
(d)(a)と(b)との間において、前記処理容器内に前記不活性ガスを供給して、ノンプラズマの雰囲気下で前記処理容器内をパージする処理と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する処理を行わせ、(c)における前記処理容器内の圧力を、(b)における前記処理容器内の圧力よりも低く
し、(c)において前記処理容器内に供給されるガスの供給流量を、(d)において前記処理容器内に供給されるガスの供給流量よりも小さくするように、前記原料ガス供給系、前記窒素及び水素含有ガス供給系、前記不活性ガス供給系、前記プラズマ励起部、および前記圧力調整部を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項20】
(a)基板に対して原料ガスを供給する手順と、
(b)
(a)の後、前記基板に対して窒素及び水素含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する手順と、
(c)前記基板に対して
N
2
ガスおよび希ガスの少なくともいずれかである不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する手順と、
(d)(a)と(b)との間において、前記基板が存在する空間にN
2
ガスおよび希ガスの少なくともいずれかであるパージガスを供給して、ノンプラズマの雰囲気下で前記基板が存在する空間をパージする手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する手順と、
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を、(b)における前記基板が存在する空間の圧力よりも低く
し、(c)において前記基板が存在する空間に供給されるガスの供給流量を、(d)において前記基板が存在する空間に供給されるガスの供給流量よりも小さくする手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリやDRAM等のメモリデバイスやCPU等のロジックデバイス等の半導体デバイスは、年々高集積化することが求められている。高集積化のためには、微細な回路パターンに極薄の膜を精度良く形成する技術が必要とされ、そのための成膜方法として、例えば、基板に対して原料ガスと反応ガスとを交互に供給する方法がある。近年、配線寸法等が微細化する傾向にあるため、基板上に形成される膜の膜厚や膜質の均一性およびそれらの再現性を向上させることが重要となる。また、次世代向けデバイスにおいて構造や材料の変化に伴い、低温で高品質な膜を得る成膜技術が必要とされている。
【0003】
基板上に形成される膜としては、シリコン窒化膜(SiN膜)等を挙げることができ、SiN膜は、例えばフッ化水素(HF)水溶液を用いてシリコン酸化膜(SiO膜)等をエッチングする際におけるエッチングストッパ層として使用されることがある。SiN膜を形成する成膜技術の1つに、プラズマを用いて低温で膜を形成する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラズマを用いて低温で成膜を行う場合、膜のウェットエッチング耐性が低下し、膜質が悪化することがある。本開示の目的は、プラズマを用いて低温で高品質な膜を形成する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)処理容器内の基板に対して原料ガスを供給する工程と、
(b)前記処理容器内の前記基板に対して窒素及び水素含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する工程と、
(c)前記処理容器内の前記基板に対して不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
(c)における前記処理容器内の圧力を、(b)における前記処理容器内の圧力よりも低くする技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、プラズマを用いて低温で高品質な膜を形成する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置における電極ユニットの概略構成図であり、電極ユニットを斜視図で示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一態様における処理シーケンスの例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の変形例1における処理シーケンスの例を示す図である。
【
図7】
図7(a)は、複数枚のウエハ200の間隔を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔とする例を示す図である。
図7(b)は、複数枚のウエハ200の間隔を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔の2倍以上とする例を示す図である。
図7(c)は、複数枚のウエハ200の間隔を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔の4倍以上とする例を示す図である。
【
図8】
図8は、評価サンプル1のSiN膜のウエハ面内におけるウェットエッチングレート(WER)と膜厚の測定結果を示す図である。
【
図9】
図9は、評価サンプル2のSiN膜のウエハ面内におけるWERと膜厚の測定結果を示す図である。
【
図10】
図10は、評価サンプル3のSiN膜のウエハ面内におけるWERと膜厚の測定結果を示す図である。
【
図11】
図11は、評価サンプル4のSiN膜のウエハ面内におけるWERと膜厚の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、
図1~
図5、
図7(a)~
図7(c)を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(熱励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内、すなわち、この処理容器内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0012】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
【0013】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232cのバルブ243a~243cよりも下流側には、ガス供給管232d~232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d~232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241fおよびバルブ243d~243fがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232fは、例えばSUS等の金属材料により構成されている。
【0014】
図1、
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に、すなわちシンメトリに配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、原料(原料ガス)が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232bからは、反応体(反応ガス)として、例えば、窒素(N)及び水素(H)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。N及びH含有ガスは、Nソース(窒素源、窒化ガス、窒化剤)として作用する。
【0017】
ガス供給管232cからは、反応体(反応ガス)として、例えば、酸素(O)含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスは、Oソース(酸素源、酸化ガス、酸化剤)として作用する。
【0018】
ガス供給管232d~232fからは、不活性ガスが、それぞれMFC241d~241f、バルブ243d~243f、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。後述するように、不活性ガスを、処理室201内でプラズマ状態に励起させて供給することもでき、その場合、不活性ガスを改質ガスとして作用させることもできる。
【0019】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、N及びH含有ガス供給系(反応ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、O含有ガス供給系(反応ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232d~232f、MFC241d~241f、バルブ243d~243fにより、不活性ガス供給系が構成される。上述のように、不活性ガスを改質ガスとして作用させる場合は、不活性ガス供給系を、改質ガス供給系と称することもできる。
【0020】
上述の各種ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系は、バルブ243a~243fやMFC241a~241f等が集積されてなる集積型ガス供給システム248として構成されていてもよい。集積型ガス供給システム248は、ガス供給管232a~232fのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232f内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243fの開閉動作やMFC241a~241fによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型ガス供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232f等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型ガス供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0021】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。
図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231は、例えばSUS等の金属材料により構成されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。APCバルブ244を排気バルブと称することもできる。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めてもよい。
【0022】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、例えばSUS等の金属材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0023】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0024】
基板を支持する支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように構成されている。すなわち、ボート217は、複数枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、垂直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
図7(a)~
図7(c)に示すように、ボート217は、複数本、例えば3~4本の支柱217aと、支柱217aのそれぞれに設けられた複数の支持部217bとを有し、複数の支持部217bのそれぞれにより複数枚のウエハ200をそれぞれ支持することができるように構成されている。
【0025】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0026】
反応管203の外部、すなわち、処理容器(処理室201)の外部には、プラズマ生成用の電極300が設けられている。電極300に電力を印加することにより、反応管203の内部、すなわち、処理容器(処理室201)の内部でガスをプラズマ化させて励起させること、すなわち、ガスをプラズマ状態に励起させることが可能となっている。以下、ガスをプラズマ状態に励起させることを、単に、プラズマ励起とも称する。電極300は、電力、すなわち、高周波電力(RF電力)が印加されることで、反応管203内、すなわち、処理容器(処理室201)内に、容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma、略称:CCP)を発生させるように構成されている。
【0027】
具体的には、
図2に示すように、ヒータ207と反応管203との間に、電極300と、電極300を固定する電極固定具301と、が配設されている。ヒータ207の内側に、電極固定具301が配設され、電極固定具301の内側に、電極300が配設され、電極300の内側に、反応管203が配設されている。
【0028】
また、
図1、
図2に示すように、電極300および電極固定具301は、ヒータ207の内壁と、反応管203の外壁との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の外壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向に延びるようにそれぞれ設けられている。電極300は、ノズル249a~249cと平行に設けられている。電極300および電極固定具301は、平面視において、反応管203およびヒータ207と同心円弧状に、また、反応管203およびヒータ207とは非接触となるように、配列、配置されている。電極固定具301は、絶縁性物質(絶縁体)で構成され、電極300および反応管203の少なくとも一部をカバーするように設けられることから、電極固定具301をカバー(絶縁カバー、絶縁壁、絶縁板)、または、断面円弧カバー(断面円弧体、断面円弧壁)と称することもできる。
【0029】
図2に示すように、電極300は複数設けられ、これら複数の電極300が、電極固定具301の内壁に、固定されて設置されている。より具体的には、
図4に示すように、電極固定具301の内壁面には、電極300を引っ掛けることが可能な突起部(フック部)301aが設けられており、電極300には、突起部301aを挿通可能な貫通孔である開口部300cが設けられている。電極固定具301の内壁面に設けられた突起部301aに、開口部300cを介して電極300を引っ掛けることで、電極300を電極固定具301に固定することが可能となっている。なお、
図4では、1つの電極300に、2つの開口部300cが設けられ、1つの電極300を2つの突起部301aに引っ掛けることで固定する例、すなわち、1つの電極300を2箇所で固定する例を示している。なお、
図2では、9つの電極300を、1つの電極固定具301に固定する例を示しており、
図4では、12の電極300を、1つの電極固定具301に固定する例を示している。
【0030】
電極300は、ニッケル(Ni)などの耐酸化材料で構成されている。電極300を、SUS、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等の金属材料で構成することもできるが、Niなどの耐酸化材料で構成することにより、電気伝導率の劣化を抑制することができ、プラズマ生成効率の低下を抑制することができる。さらに、電極300を、Alが添加されたNi合金材料で構成することもでき、この場合、耐熱性および耐腐食性の高い酸化被膜であるアルミニウム酸化膜(AlO膜)を、電極300の最表面に形成するようにすることもできる。電極300の最表面に形成されたAlO膜は、保護膜(ブロック膜、バリア膜)として作用し、電極300の内部の劣化の進行を抑制することができる。これにより、電極300の電気伝導率の低下によるプラズマ生成効率の低下を、より抑制することが可能となる。電極固定具301は、絶縁性物質(絶縁体)、例えば、石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。電極固定具301の材質は、反応管203の材質と、同様とすることが好ましい。
【0031】
図2に示すように、電極300は、第1電極300aと、第2電極300bと、を含む。第1電極300aは、整合器305を介して、高周波電源(RF電源)320に接続されている。第2電極300bは、アースに接地されており、基準電位(0V)となる。第1電極300aをHot電極またはHOT電極とも称し、第2電極300bをGround電極またはGND電極とも称する。第1電極300aおよび第2電極300bは、それぞれ、正面視が矩形形状の板状部材として構成されている。第1電極300aは少なくとも1つ設けられ、第2電極300bは少なくとも1つ設けられる。
図1、
図2、
図4では、第1電極300aおよび第2電極300bのそれぞれが、複数設けられる例を示している。なお、
図2では、1つの電極固定具301に、6つの第1電極300aと、3つの第2電極300bと、が設けられる例を示しており、
図4では、1つの電極固定具301に、8つの第1電極300aと、4つの第2電極300bと、が設けられる例を示している。整合器305を介してRF電源320から、第1電極300aと第2電極300bとの間にRF電力を印加することで、第1電極300aと第2電極300bとの間の領域にプラズマが生成される。この領域をプラズマ生成領域とも称する。
【0032】
なお、第1電極300aの表面積は、第2電極300bの表面積の2倍以上3倍以下とすることが好ましい。第1電極300aの表面積が第2電極300bの表面積の2倍未満となる場合、電位分布の広がりが狭くなり、プラズマ生成効率が低下することがある。第1電極300aの表面積が第2電極300bの表面積の3倍を超える場合、電位分布がウエハ200のエッジ部分にまで広がることがあり、ウエハ200が障害となりプラズマの生成効率が飽和することがある。また、この場合、ウエハ200のエッジ部においても放電が生じ、ウエハ200へのプラズマダメージが生じることもある。第1電極300aの表面積を、第2電極300bの表面積の2倍以上3倍以下とすることにより、プラズマ生成効率を高め、ウエハ200へのプラズマダメージを抑制することが可能となる。なお、
図2に示すように、電極300(第1電極300a、第2電極300b)は、平面視において、円弧状に配置されており、また、等間隔に、すなわち、隣接する電極300(第1電極300a、第2電極300b)間の距離(隙間)が等しくなるように配置されている。また、上述のように、電極300(第1電極300a、第2電極300b)は、ノズル249a~249cと平行に設けられている。
【0033】
ここで、電極固定具301と電極300(第1電極300a、第2電極300b)とを、電極ユニットと称することもできる。電極ユニットは、
図2に示すように、ノズル249a~249c、温度センサ263、排気口231a、および排気管231を避けた位置に配置されるようにすることが好ましい。
図2では、2つの電極ユニットが、ノズル249a~249c、温度センサ263、排気口231a、および排気管231を避けて、ウエハ200(反応管203)の中心を挟んで対向(対面)するように配置される例を示している。なお、
図2では、2つの電極ユニットが、平面視において、直線Lを対称軸として線対称に、すなわちシンメトリに配置される例を示している。電極ユニットをこのように配置することで、ノズル249a~249c、温度センサ263、排気口231a、および排気管231を、処理室201内におけるプラズマ生成領域外に配置することが可能となり、これらの部材へのプラズマダメージ、これらの部材の消耗、破損、これらの部材からのパーティクルの発生を抑制することが可能となる。
【0034】
主に、電極300、すなわち、第1電極300aおよび第2電極300bにより、ガスをプラズマ状態に励起(活性化)させるプラズマ励起部(活性化機構)が構成される。電極固定具301、整合器305、RF電源320をプラズマ励起部に含めてもよい。
【0035】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0036】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0037】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241f、バルブ243a~243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s、RF電源320、整合器305等に接続されている。
【0038】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作、整合器305によるインピーダンス調整動作、RF電源320への電力供給等を制御することが可能なように構成されている。
【0039】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0040】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上に薄膜として絶縁膜である窒化膜を形成する処理シーケンス、すなわち、成膜シーケンスの例について説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0041】
図5に示す本態様における処理シーケンスでは、
(a)処理容器内のウエハ200に対して原料ガスを供給する工程と、
(b)処理容器内のウエハ200に対してN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する工程と、
(c)処理容器内のウエハ200に対して不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する工程と、
を含むサイクル、具体的には、これらを非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上に膜を形成する工程を有し、
(c)における処理容器内の圧力を、(b)における処理容器内の圧力よりも低くする。
【0042】
本明細書では、このような処理シーケンス(ガス供給シーケンス)を、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の態様や変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0043】
(原料ガス→プラズマ励起N及びH含有ガス→プラズマ励起不活性ガス)×n
【0044】
なお、
図5では、(c)における処理容器内の圧力を、(a)における処理容器内の圧力よりも低くする例を示している。さらには、
図5では、(c)における処理容器内の圧力を、(b)における処理容器内の圧力よりも低くし、(b)における処理容器内の圧力を、(a)における処理容器内の圧力よりも低くする例を示している。
【0045】
また、
図5では、(c)において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、(b)においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間よりも長くする例を示しており、また、(c)において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、(a)において原料ガスを供給する時間よりも長くする例を示している。より具体的には、
図5では、(c)において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、(b)においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間よりも長くし、(b)においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、(a)において原料ガスを供給する時間よりも長くする例を示している。
【0046】
また、
図5に示す処理シーケンスでは、(a)、(b)、(c)をこの順に行うサイクルを複数回(n回)繰り返す例を示している。この場合、nは2以上の整数となる。
図5では、さらに、(a)を行った後、(b)を行う前に、ノンプラズマの雰囲気下で、処理容器内を不活性ガスでパージする例を示している。なお、(b)を行った後、(c)を行う前に、ノンプラズマの雰囲気下で、処理容器内を不活性ガスでパージするようにしてもよい。また、サイクルを複数回行う場合に、(c)を行った後、(a)を行う前に、ノンプラズマの雰囲気下で、処理容器内を不活性ガスでパージするようにしてもよい。これにより、処理容器内での各ガスのプラズマ状態での混合、それによる意図しない反応、パーティクルの発生等を抑制することが可能となる。これらの処理シーケンスは、以下のように表すことができる。なお、以下では、ノンプラズマの雰囲気下で行われるパージをPで表している。
【0047】
(原料ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→プラズマ励起不活性ガス)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→プラズマ励起不活性ガス→P)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P)×n
【0048】
なお、(b)では、処理容器の外部に設けられた電極300に電力を印加することにより、処理容器の内部でN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させることが好ましい。また、(c)では、処理容器の外部に設けられた電極300に電力を印加することにより、処理容器の内部で不活性ガスをプラズマ状態に励起させることが好ましい。
【0049】
また、(a)では、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して、原料ガスを供給することが好ましい。また、(b)では、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して、N及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給することが好ましい。また、(c)では、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して、不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給することが好ましい。
【0050】
なお、以下では、膜として、窒化膜を形成する例について説明する。ここで、窒化膜とは、シリコン窒化膜(SiN膜)の他、炭素(C)や酸素(O)や硼素(B)等を含む窒化膜をも含む。すなわち、窒化膜は、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)、シリコン硼酸炭窒化膜(SiBOCN膜)、シリコン硼酸窒化膜(SiBON膜)等を含む。以下では、窒化膜としてSiN膜を形成する例について説明する。
【0051】
本明細書において用いる「ウエハ」という言葉は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0052】
(ウエハチャージ)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。ウエハ200は、製品ウエハやダミーウエハを含む。
【0053】
(ボートロード)
その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0054】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0055】
(成膜処理)
その後、次のステップ1,2,3を順次実行する。
【0056】
[ステップ1]
ステップ1では、処理室201内のウエハ200に対して原料ガスを供給する。
【0057】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して原料ガスが供給される(原料ガス供給)。このとき、バルブ243d~243fを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0058】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:250~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:100~4000Pa、好ましくは100~1000Pa
原料ガス供給流量:0.1~3slm
原料ガス供給時間:1~100秒、好ましくは1~30秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。
【0059】
なお、本明細書における「250~550℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「250~550℃」とは「250℃以上550℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0060】
上述の処理条件下でウエハ200に対して原料ガスとして、例えば、クロロシラン系ガスを供給することにより、下地としてのウエハ200の最表面上に、Clを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、ウエハ200の最表面への、クロロシラン系ガスの分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積等により形成される。Clを含むSi含有層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSiの堆積層であってもよい。本明細書では、Clを含むSi含有層を、単に、Si含有層とも称する。なお、上述の処理条件下では、ウエハ200の最表面上へのクロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着が支配的に(優先的に)生じ、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積は僅かに生じるか、あるいは、殆ど生じないこととなる。すなわち、上述の処理条件下では、Si含有層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)を圧倒的に多く含むこととなり、Clを含むSiの堆積層を僅かに含むか、もしくは、殆ど含まないこととなる。
【0061】
Si含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ243d~243fを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。不活性ガスはパージガスとして作用する。処理室201内はノンプラズマの雰囲気下でパージされることとなる。これにより、処理室201内に残留する原料ガスとステップ2で処理室201内へ供給されるN及びH含有ガスとの混合、それによる意図しない反応(例えば、気相反応やプラズマ気相反応)、パーティクルの発生等を抑制することが可能となる。
【0062】
パージにおける処理条件としては、
処理温度:250~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:1~20Pa
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.05~20slm
不活性ガス供給時間:1~600秒、好ましくは1~40秒
が例示される。
【0063】
原料ガスとしては、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)を含むシラン系ガスを用いることができる。シラン系ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲンを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む上述のクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0064】
原料ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:4CS)ガス、ヘキサクロロジシランガス(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0065】
原料ガスとしては、クロロシラン系ガスの他、例えば、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0066】
原料ガスとしては、これらの他、例えば、Siおよびアミノ基を含むガス、すなわち、アミノシラン系ガスを用いることもできる。アミノ基とは、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンから水素(H)を除去した1価の官能基のことであり、-NH2,-NHR,-NR2のように表すことができる。なお、Rはアルキル基を示し、-NR2の2つのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0067】
原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH3[N(C3H7)2]、略称:DIPAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0068】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス、クリプトン(Kr)ガス、ラドン(Rn)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0069】
[ステップ2]
ステップ1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSi含有層に対してN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する。
【0070】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へN及びH含有ガスを流す。N及びH含有ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対してN及びH含有ガスが供給される(N及びH含有ガス供給)。このとき、バルブ243d~243fを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0071】
このとき、第1電極300aと第2電極300bとの間にRF電力を印加することで、第1電極300aと第2電極300bとの間の領域にプラズマが生成される。これにより、N及びH含有ガスがプラズマ状態に励起されて、NHx
*(xは1~3の整数)等の活性種が生成され、ウエハ200に対して供給されることとなる(プラズマ励起N及びH含有ガス供給)。このとき、ウエハ200には、NH*、NH2
*、NH3
*等の活性種を含むN及びH含有ガスが供給されることとなる。なお、*はラジカルを意味する。以下の説明でも同様である。
【0072】
なお、ウエハ200に対して、N及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する前に、N及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させることなく供給する期間を設けるようにしてもよい。すなわち、ウエハ200に対して、プラズマ励起N及びH含有ガスを供給する前に、非プラズマ励起N及びH含有ガスを供給するように、すなわち、非プラズマ励起N及びH含有ガスをプリフローするようにしてもよい(非プラズマ励起N及びH含有ガスプリフロー)。この場合、まず、N及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させることなく供給し、所定期間経過後に、N及びH含有ガスの供給を継続した状態で、第1電極300aと第2電極300bとの間にRF電力を印加するようにすればよい。これにより、より安定したプラズマや活性種を生成させることが可能となる。
【0073】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:250~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:2~100Pa、好ましくは20~70Pa
N及びH含有ガス供給流量:0.1~10slm
N及びH含有ガス供給時間:10~600秒、好ましくは1~50秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
RF電力:100~1000W
RF周波数:13.56MHzまたは27MHz
が例示される。
【0074】
上述の処理条件下でウエハ200に対してN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給することにより、ウエハ200上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が窒化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、SiおよびNを含む層として、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。SiN層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、NHx
*等の活性種によるSi含有層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiN層は、ステップ1で形成されたSi含有層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0075】
SiN層が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのN及びH含有ガスの供給を停止する。その後、ステップ3を行うが、その前に、処理室201内をノンプラズマの雰囲気下でパージするようにしてもよい。この場合、ステップ1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除することができる(パージ)。これにより、処理室201内に残留するプラズマ励起N及びH含有ガスとステップ3で処理室201内へ供給されるプラズマ励起不活性ガスとの混合、それによる意図しない反応(例えばプラズマ気相反応)、パーティクルの発生等を抑制することが可能となる。
【0076】
N及びH含有ガスは、窒化剤(窒素源、窒化ガス)として作用する。N及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、H含有ガスでもある。N及びH含有ガスは、N-H結合を有することが好ましい。
【0077】
N及びH含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。N及びH含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0078】
N及びH含有ガスとしては、これらの他、例えば、窒素(N)、炭素(C)及び水素(H)含有ガスを用いることもできる。N,C及びH含有ガスとしては、例えば、アミン系ガスや有機ヒドラジン系ガスを用いることができる。N,C及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、C含有ガスでもあり、H含有ガスでもあり、N及びC含有ガスでもある。
【0079】
N及びH含有ガスとしては、例えば、モノエチルアミン(C2H5NH2、略称:MEA)ガス、ジエチルアミン((C2H5)2NH、略称:DEA)ガス、トリエチルアミン((C2H5)3N、略称:TEA)ガス等のエチルアミン系ガスや、モノメチルアミン(CH3NH2、略称:MMA)ガス、ジメチルアミン((CH3)2NH、略称:DMA)ガス、トリメチルアミン((CH3)3N、略称:TMA)ガス等のメチルアミン系ガスや、モノメチルヒドラジン((CH3)HN2H2、略称:MMH)ガス、ジメチルヒドラジン((CH3)2N2H2、略称:DMH)ガス、トリメチルヒドラジン((CH3)2N2(CH3)H、略称:TMH)ガス等の有機ヒドラジン系ガス等を用いることができる。N及びH含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0080】
[ステップ3]
ステップ2が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiN層に対して不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する。
【0081】
具体的には、バルブ243d~243fを開き、ガス供給管232d~232f内へそれぞれ不活性ガスを流す。不活性ガスは、MFC241d~241fによりそれぞれ流量調整され、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して不活性ガスが供給される(不活性ガス供給)。
【0082】
このとき、第1電極300aと第2電極300bとの間にRF電力を印加することで、第1電極300aと第2電極300bとの間の領域にプラズマが生成される。これにより、不活性ガスがプラズマ状態に励起されて、活性種が生成され、ウエハ200に対して供給されることとなる(プラズマ励起不活性ガス供給)。このとき、ウエハ200には、活性種を含む不活性ガスが供給されることとなる。
【0083】
不活性ガスとして、例えばN2ガスを用いる場合は、N2ガスがプラズマ状態に励起されて、Nx
*(xは1~2の整数)等の活性種が生成され、ウエハ200に対して供給されることとなる(プラズマ励起N2ガス供給)。この場合、ウエハ200には、N*、N2
*等の活性種を含むN2ガスが供給されることとなる。
【0084】
不活性ガスとして、例えばArガスを用いる場合は、Arガスがプラズマ状態に励起されて、Ar*等の活性種が生成され、ウエハ200に対して供給されることとなる(プラズマ励起Arガス供給)。このとき、ウエハ200には、Ar*等の活性種を含むArガスが供給されることとなる。
【0085】
不活性ガスとして、例えばHeガスを用いる場合は、Heガスがプラズマ状態に励起されて、He*等の活性種が生成され、ウエハ200に対して供給されることとなる(プラズマ励起Heガス供給)。このとき、ウエハ200には、He*等の活性種を含むHeガスが供給されることとなる。
【0086】
不活性ガスとしては、これらを処理室201内で混合させて、混合ガスとして用いることもできる。例えば、不活性ガスとして、N2ガスとArガスとの混合ガスを用いることもでき、N2ガスとHeガスとの混合ガスを用いることもでき、N2ガスとArガスとHeガスとの混合ガスを用いることもできる。
【0087】
なお、ウエハ200に対して、不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する前に、不活性ガスをプラズマ状態に励起させることなく供給する期間を設けるようにしてもよい。すなわち、ウエハ200に対して、プラズマ励起不活性ガスを供給する前に、非プラズマ励起不活性ガスを供給するように、すなわち、非プラズマ励起不活性ガスをプリフローするようにしてもよい(非プラズマ励起不活性ガスプリフロー)。この場合、まず、不活性ガスをプラズマ状態に励起させることなく供給し、所定期間経過後に、不活性ガスの供給を継続した状態で、第1電極300aと第2電極300bとの間にRF電力を印加するようにすればよい。これにより、より安定したプラズマや活性種を生成させることが可能となる。
【0088】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:250~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:2~6Pa、好ましくは2.66~5.32Pa、より好ましくは3~4P
a
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.01~2slm
不活性ガス供給時間:1~600秒、好ましくは10~60秒
RF電力:100~1000W
RF周波数:13.56MHzまたは27MHz
が例示される。
【0089】
上述の処理条件下でウエハ200に対して不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給することにより、ウエハ200上に形成されたSiN層が改質される。このとき、SiN層に残留していたCl等の不純物は、活性種によるSiN層の改質反応の過程において、少なくともCl等を含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、本ステップにて改質された後のSiN層は、ステップ2で形成されたSiN層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。また、この改質により、SiN層は緻密化され、本ステップにて改質後のSiN層は、ステップ2で形成されたSiN層に比べて、密度が高い層となる。
【0090】
なお、ステップ2におけるNHx
*等の活性種による改質反応により、ステップ2で形成されたSiN層におけるCl等の不純物の含有量は、ステップ1で形成されたSi含有層におけるCl等の不純物の含有量よりも低減されている。しかしながら、ステップ2で形成されたSiN層には、NHx
*等の活性種により除去しきれずに、例えば数原子%程度のCl等の不純物が残留することがある。本ステップでは、NHx
*等の活性種により除去しきれずにSiN層に残留したCl等の不純物を、NHx
*等の活性種とは異なる活性種、例えば、N*、N2
*、Ar*、He*等の活性種により、除去することができる。
【0091】
このとき、本ステップ、すなわち、ステップ3における処理室201内の圧力を、ステップ2における処理室201内の圧力よりも低くすることが好ましい。さらには、ステップ3における処理室201内の圧力を、ステップ2における処理室201内の圧力よりも低くし、ステップ2における処理室201内の圧力を、ステップ1における処理室201内の圧力よりも低くすることが好ましい。これらのように、各ステップ間での圧力バランスを調整することにより、ステップ2において生じるNHx
*等の活性種のライフタイムを最適化させることができ、また、ステップ3において生じるNx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイムを最適化させることができる。特に、ステップ3において生じるNx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイムを長期化させることが可能となる。なお、上述のように各ステップ間での圧力バランスを調整するためには、ステップ3おいて供給する不活性ガスの供給流量を、ステップ2において供給するN及びH含有ガスの供給流量よりも少なくすることが好ましい。すなわち、各ステップにおいて供給する各ガスの供給流量のバランスを制御することにより、各ステップ間での圧力バランスを調整し、各ステップで生じる各活性種のライフタイムをそれぞれ最適化させることも可能となる。
【0092】
また、本ステップでは、処理室201内の圧力を、2Pa以上6Pa以下、好ましくは2.66Pa以上5.32Pa以下、より好ましくは3Pa以上4Pa以下とするように低圧化させることが望ましい。この場合、本ステップにおける処理圧力を、ステップ1,2における処理圧力よりも低圧化させることが好ましい。なお、本ステップにおいて供給する不活性ガスの流量を、パージにおいて供給する不活性ガスの流量よりも低下させることで、さらには、ステップ2において供給するN及びH含有ガスの流量よりも低下させることで、このような処理圧力の低圧化を助長することができる。
図5は、本ステップにおいて供給する不活性ガスの流量を、パージにおいて供給する不活性ガスの流量よりも低下させることで、さらには、ステップ2において供給するN及びH含有ガスの流量よりも低下させることで、処理圧力の低圧化を助長する例を示している。
【0093】
本ステップにおいて、処理室201内の圧力を、2Pa未満とすると、不活性ガスをプラズマ状態に励起させる際に、活性種と一緒に発生するN2
+、Ar+、He+等のイオンの発生量が急激に増加し、ウエハ200へのイオンアタックが過剰に生じることがある。これにより、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチングレート(以下、WER)が高くなり、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性が低下することがある。これは、SiN層の表面層が、イオンによりアタックされることにより、SiN層の表面層の密度、ひいては、最終的に形成されるSiN膜の膜密度が低下することに起因すると考えられる。
【0094】
なお、このイオンアタックは、特に、ウエハ200の外周部において過剰に生じることがあり、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の外周部において高くなり、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の外周部において低下する傾向がある。すなわち、このイオンアタックにより、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性が悪化することがある。また、このイオンアタックにより、ウエハ200の外周部におけるSiN膜の膜構造が壊れ、その部分が疎な膜に変化することがあり、これにより、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の外周部において厚くなる傾向がある。すなわち、このイオンアタックにより、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性が悪化することがある。
【0095】
これに対し、本ステップにおいて、処理室201内の圧力を、2Pa以上とすることで、不活性ガスをプラズマ状態に励起させる際に、活性種と一緒に発生するN2
+、Ar+、He+等のイオンの発生量を低減させることができ、ウエハ200へのイオンアタックの発生を抑制することができるようになる。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERが高くなることを回避することができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性が低下することを回避することが可能となる。これは、イオンは発生するものの、SiN層の表面層へのイオンアタックが抑制されることにより、SiN層の表面層の密度の低下を抑制することができ、これにより、最終的に形成されるSiN膜の膜密度の低下を抑制することができるためと考えられる。
【0096】
そして、このイオンアタックの抑制により、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の外周部において高くなり、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の外周部において低下する傾向を解消することも可能となる。すなわち、このイオンアタックの抑制により、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性の悪化を抑制することが可能となる。また、このイオンアタックの抑制により、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の外周部において厚くなる傾向を解消することも可能となる。すなわち、このイオンアタックの抑制により、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性の悪化を抑制することも可能となる。
【0097】
なお、本ステップにおいて、処理室201内の圧力を、2.66Pa以上とすることで、イオンアタック抑制効果をより高めることができ、上述の効果がより十分に得られるようになる。また、本ステップにおいて、処理室201内の圧力を、3Pa以上とすることで、イオンアタック抑制効果をさらに高めることができ、上述の効果がさらに十分に得られるようになる。
【0098】
本ステップにおいて、処理室201内の圧力を、6Paを上回る圧力とすると、不活性ガスをプラズマ状態に励起させる際に生じるNx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイムが短くなり、活性種がウエハ200の中央部まで到達しにくくなることがある。すなわち、不活性ガスをプラズマ状態に励起させる際に生じるNx
*、Ar*、He*等の活性種が、ウエハ200の中央部に到達する前に失活する割合が高くなることがある。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の中央部において高くなり、結果として、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の中央部において低下することがある。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性が悪化することがある。また、Nx
*、Ar*、He*等の活性種が、ウエハ中央部まで、到達する前に失活する割合が高くなることにより、ウエハ中央部における膜の緻密化の効果が不十分となり、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の中央部において厚くなることがある。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性が悪化することがある。これらは、活性種が届きやすいウエハ200の外周部におけるSiN層の改質効果が十分であるのに対し、活性種が届きにくいウエハ200の中央部におけるSiN層の改質効果が不十分となることで、ウエハ200の外周部と中央部とで、SiN層の改質効果に差が生じるためと考えられる。
【0099】
これに対し、本ステップにおいて、処理室201内の圧力を、6Pa以下とすることで、不活性ガスをプラズマ状態に励起させる際に生じるNx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイムを長期化させることができ、Nx
*、Ar*、He*等の活性種をウエハ200の中央部まで十分に到達させることが可能となる。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の中央部において高くなることを回避することができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の中央部において低下することを回避することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性の悪化を抑制することが可能となる。また、Nx
*、Ar*、He*等の活性種をウエハ200の中央部まで十分に到達させることが可能となることにより、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の中央部において厚くなることを回避することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性の悪化を抑制することが可能となる。これらは、ウエハ200の外周部におけるSiN層の改質効果が十分に得られるだけでなく、ウエハ200の中央部におけるSiN層の改質効果も十分に得られるためと考えられる。また、ウエハ200の外周部におけるSiN層の緻密化の効果が十分に得られるだけでなく、ウエハ200の中央部におけるSiN層の緻密化の効果も十分に得られるためと考えられる。
【0100】
なお、本ステップにおいて、処理室201内の圧力を、5.32Pa以下とすることで、Nx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイム向上効果をより高めることができ、上述の効果がより十分に得られるようになる。また、本ステップにおいて、処理室201内の圧力を、4Pa以下とすることで、Nx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイム向上効果をさらに高めることができ、上述の効果がさらに十分に得られるようになる。
【0101】
以上のことから、本ステップでは、処理室201内の圧力を、2Pa以上6Pa以下、好ましくは2.66Pa以上5.32Pa以下、より好ましくは3Pa以上4Pa以下とすることが望ましい。
【0102】
また、本ステップ(ステップ3)において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ2においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間よりも長くすることが好ましい。また、本ステップ(ステップ3)において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ1において原料ガスを供給する時間よりも長くすることが好ましい。さらには、本ステップ(ステップ3)において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ2においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間よりも長くし、ステップ2においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ1において原料ガスを供給する時間よりも長くすることが好ましい。各ステップ間で、このようなウエハ200へのガスや活性種の曝露時間(以下、活性種の曝露時間、ガス等の曝露時間とも称する)のバランスを調整することにより、ステップ2においてNHx
*等の活性種により生じさせる改質反応を最適化させることができ、また、ステップ3においてNx
*、Ar*、He*等の活性種により生じさせる改質反応を最適化させることができる。特に、ステップ3におけるNx
*、Ar*、He*等の活性種による改質反応を最適化させることが可能となる。
【0103】
SiN層の改質処理が終了した後、電極300へのRF電力の印加を停止し、ウエハ200へのプラズマ励起不活性ガスの供給を停止する。上述のサイクルを複数回繰り返す場合、ステップ3が終了した後、再び、ステップ1を行うが、その前に、処理室201内をノンプラズマの雰囲気下でパージするようにしてもよい。この場合、ステップ1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除することができる(パージ)。これにより、処理室201内に残留するプラズマ励起不活性ガスとステップ1で処理室201内へ供給される原料ガスとの混合、それによる意図しない反応(例えば、気相反応やプラズマ気相反応)、パーティクルの発生等を抑制することが可能となる。
【0104】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス、クリプトン(Kr)ガス、ラドン(Rn)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0105】
[サイクルの所定回数実施]
上述のステップ1,2,3を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面を下地として、この下地上に、所定の厚さの膜として、例えば、所定の厚さのシリコン窒化膜(SiN膜)を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiN層を積層することで形成されるSiN膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。なお、反応ガスとして、N,C及びH含有ガスを用いる場合、ステップ2において、例えば、シリコン炭窒化層(SiCN層)を形成することもでき、上述のサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200の表面上に、膜として、例えば、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成することもできる。
【0106】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上へ所望の厚さのSiN膜を形成する処理が完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとして不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0107】
(ボートアンロード)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。
【0108】
(ウエハ冷却)
ボートアンロード後、すなわち、シャッタクローズ後、処理済のウエハ200は、ボート217に支持された状態で、取り出し可能な所定の温度となるまで冷却される(ウエハ冷却)。
【0109】
(ウエハディスチャージ)
ウエハ冷却後、取り出し可能な所定の温度となるまで冷却された処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0110】
このようにして、ウエハ200上に膜を形成する一連の処理が終了する。これら一連の処理は、所定回数行われることとなる。
【0111】
なお、本態様では、成膜処理を、処理室201内で複数枚のウエハ200をボート217により支持した状態で行う例について説明した。この場合、
図7(a)に示すように、成膜処理を行う際に、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)とすることもできる。なお、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)とは、隣接するウエハ200間の間隔(距離)のことを意味する。例えば、ボート217により支持可能なウエハ200の最大枚数が100枚である場合に、100枚のウエハ200を、ボート217の支持部217bにより、それぞれ支持した状態で、成膜処理を行うようにしてもよい。なお、
図7(a)におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)、すなわち、各ウエハ200を支持する支持部217bの間隔(配列ピッチ)を、例えば6~12mmとすることができる。
【0112】
また、例えば、
図7(b)や
図7(c)に示すように、成膜処理を行う際に、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)よりも大きくするようにしてもよい。これにより、活性種が、隣接するウエハ200間を流れる際に、ウエハ200と衝突することで、失活してしまうことを抑制することができ、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を高くすることが可能となる。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の中央部において高くなることを抑制することができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の中央部において低下することを抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性の悪化を抑制することが可能となる。また、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の中央部において厚くなることを抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性の悪化を抑制することが可能となる。特に、N
x
*、Ar
*、He
*等の活性種、中でも、N
x
*等の活性種は比較的ライフタイムが短く、失活し易いことから、ステップ3において、この効果が特に顕著に生じることとなる。
【0113】
この場合、例えば、
図7(b)に示すように、成膜処理を行う際に、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)の2倍以上とするようにしてもよい。例えば、ボート217により支持可能なウエハ200の最大枚数が120枚である場合に、60枚のウエハ200を、ボート217の支持部217bにより、1枚おきにそれぞれ支持した状態で、成膜処理を行うようにしてもよい。この場合、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば12~24mm以上とすることができる。これにより、活性種が、ウエハ200と衝突することで、失活してしまうことを、より抑制することができ、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を、より高くすることが可能となる。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の中央部において高くなることを十分に抑制することができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の中央部において低下することを十分に抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性の悪化を、十分に抑制することが可能となる。また、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の中央部において厚くなることを十分に抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性の悪化を、十分に抑制することが可能となる。特に、N
x
*、Ar
*、He
*等の活性種、中でも、N
x
*等の活性種は比較的ライフタイムが短く、失活し易いことから、ステップ3において、この効果が特に顕著に生じることとなる。
【0114】
また、この場合、成膜処理を行う際に、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)の3倍以上とするようにしてもよい。例えば、ボート217により支持可能なウエハ200の最大枚数が120枚である場合に、40枚のウエハ200を、ボート217の支持部217bにより、2枚おきにそれぞれ支持した状態で、成膜処理を行うようにしてもよい。この場合、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば18~36mm以上とすることができる。これにより、活性種が、ウエハ200と衝突することで、失活してしまうことを、よりいっそう抑制することができ、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を、よりいっそう高くすることが可能となる。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の中央部において高くなることを、より十分に抑制することができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の中央部において低下することを、より十分に抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性の悪化を、より十分に抑制することが可能となる。また、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の中央部において厚くなることを、より十分に抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性の悪化を、より十分に抑制することが可能となる。特に、Nx
*、Ar*、He*等の活性種、中でも、Nx
*等の活性種は比較的ライフタイムが短く、失活し易いことから、ステップ3において、この効果が特に顕著に生じることとなる。
【0115】
また、この場合、例えば、
図7(c)に示すように、成膜処理を行う際に、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)の4倍以上とするようにしてもよい。例えば、ボート217により支持可能なウエハ200の最大枚数が120枚である場合に、30枚のウエハ200を、ボート217の支持部217bにより、3枚おきにそれぞれ支持した状態で、成膜処理を行うようにしてもよい。この場合、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば24~48mm以上とすることができる。これにより、活性種が、ウエハ200と衝突することで、失活してしまうことを、さらに抑制することができ、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を、さらに高くすることが可能となる。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の中央部において高くなることを、さらに抑制することができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の中央部において低下することを、さらに抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性の悪化を、さらに抑制することが可能となる。また、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の中央部において厚くなることを、さらに抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性の悪化を、さらに抑制することが可能となる。特に、N
x
*、Ar
*、He
*等の活性種、中でも、N
x
*等の活性種は比較的ライフタイムが短く、失活し易いことから、ステップ3において、この効果が特に顕著に生じることとなる。
【0116】
ただし、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)を大きくし過ぎると、1度に成膜処理可能なウエハ200の枚数が減少し、生産性が低下することがある。生産性を実用レベルとすることを考慮すると、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)の5倍以下とすることが好ましい。この場合、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば30~60mm以下とすることができる。
【0117】
これらのことから、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を高くし、生産性を実用レベルとするには、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば12mm以上60mm以下とすることが好ましいといえる。
【0118】
なお、生産性を実用レベルとしつつ、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率をより高くするには、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば15mm以上60mm以下とすることが好ましい。生産性を実用レベルとしつつ、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率をさらに高くするには、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば、18mm以上60mm以下とすることが好ましく、24mm以上60mm以下とすることがより好ましく、36mm以上60mm以下とすることがさらに好ましく、48mm以上60mm以下とすることがさらに好ましい。これらは、活性種のウエハ200の中央部への到達確率をより重視したウエハ200の配列ピッチということができる。
【0119】
また、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を高くしつつ、生産性をより高くするには、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば、12mm以上48mm以下とすることが好ましく、12mm以上40mm以下とすることがより好ましく、12mm以上36mm以下とすることがさらに好ましく、12mm以上30mm以下とすることがさらに好ましい。これらは、生産性をより重視したウエハ200の配列ピッチということができる。
【0120】
なお、上述の複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)の数値範囲の上限値と下限値は、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率と生産性とのバランスを考慮して、適宜組み合わせることができる。また、これらの場合、支持部217bの間隔(配列ピッチ)が、例えば6~12mmであるボート217により、数枚おきにウエハ200を支持する場合に限らず、支持部217bの間隔(配列ピッチ)そのものを、上述の数値範囲としたボート217により、ウエハ200を支持するようにしてもよい。
【0121】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0122】
(a)ステップ3における処理室201内の圧力を、ステップ2における処理室201内の圧力よりも低くするように、各ステップ間での圧力バランスを調整することにより、ステップ3において生じる比較的ライフタイムが短く、失活し易い傾向にあるNx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイムを最適化させることが可能となる。これにより、ステップ3におけるSiN層の改質効果を高めることが可能となる。結果として、最終的に形成されるSiN膜のWERを低くすることができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性を向上させることが可能となる。また、最終的に形成されるSiN膜を緻密化させることもでき、膜密度が高いSiN膜を形成することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜の膜質を向上させることが可能となり、高品質なSiN膜を形成することが可能となる。なお、上述のように各ステップ間での圧力バランスを調整するためには、ステップ3おいて供給する不活性ガスの供給流量を、ステップ2において供給するN及びH含有ガスの供給流量よりも少なくすることが好ましい。
【0123】
さらに、ステップ3における処理室201内の圧力を、ステップ2における処理室201内の圧力よりも低くし、ステップ2における処理室201内の圧力を、ステップ1における処理室201内の圧力よりも低くするように、各ステップ間での圧力バランスを調整することが好ましい。これにより、ステップ2において生じるNHx
*等の活性種のライフタイムを最適化させることができ、また、ステップ3において生じる比較的ライフタイムが短く、失活し易い傾向にあるNx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイムを最適化させることが可能となる。特に、ステップ3において生じるNx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイムを、より長期化させることが可能となる。これにより、ステップ3におけるSiN層の改質効果を高めることが可能となる。結果として、最終的に形成されるSiN膜のWERを低くすることができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性を向上させることが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜の膜質を向上させることが可能となり、高品質なSiN膜を形成することが可能となる。
【0124】
(b)ステップ3における処理室201内の圧力を、2Pa以上、好ましくは2.66Pa以上、より好ましくは3Pa以上とすることにより、不活性ガスをプラズマ状態に励起させる際に、活性種と一緒に発生するN2
+、Ar+、He+等のイオンの発生量を低減させることができ、ウエハ200へのイオンアタックを抑制することができるようになる。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERが高くなることを回避することができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性が低下することを回避することが可能となる。また、イオンアタックの抑制により、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の外周部において高くなる傾向を解消することが可能となり、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の外周部において低下する傾向を解消することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性の悪化を抑制することが可能となる。また、イオンアタックの抑制により、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の外周部において厚くなる傾向を解消することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性の悪化を抑制することが可能となる。
【0125】
(c)ステップ3における処理室201内の圧力を、6Pa以下、好ましくは5.32Pa以下、より好ましくは4Pa以下とすることにより、不活性ガスをプラズマ状態に励起させる際に生じるNx
*、Ar*、He*等の活性種のライフタイムを長期化させることができ、活性種をウエハ200の中央部まで十分に到達させることが可能となる。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の中央部において高くなることを回避することができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の中央部において低下することを回避することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性の悪化を抑制することが可能となる。また、Nx
*、Ar*、He*等の活性種をウエハ200の中央部まで十分に到達させることが可能となることにより、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の中央部において厚くなることを回避することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性の悪化を抑制することが可能となる。
【0126】
(d)ステップ3において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ2においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間よりも長くするように、各ステップ間でのウエハ200への活性種の曝露時間のバランスを調整することにより、ステップ3においてNx
*、Ar*、He*等の活性種により生じさせる改質反応を最適化させることができる。すなわち、上述の改質反応をより適正に生じさせることが可能となる。なお、ステップ3において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ2においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間よりも短くした場合、Nx
*、Ar*、He*等の活性種による改質効果が不十分となることがある。
【0127】
また、ステップ3において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ1において原料ガスを供給する時間よりも長くするように、各ステップ間でのウエハ200へのガス等の曝露時間のバランスを調整することが好ましい。これにより、ステップ3においてNx
*、Ar*、He*等の活性種により生じさせる改質反応を最適化させることができる。すなわち、上述の改質反応をより適正に生じさせることが可能となる。なお、ステップ3において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ1において原料ガスを供給する時間よりも短くした場合、Nx
*、Ar*、He*等の活性種による改質効果が不十分となることがある。
【0128】
さらに、ステップ3において不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ2においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間よりも長くし、ステップ2においてN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する時間を、ステップ1において原料ガスを供給する時間よりも長くするように、各ステップ間でのウエハ200へのガス等の曝露時間のバランスを調整することが好ましい。これにより、ステップ2においてNHx
*等の活性種により生じさせる改質反応を最適化させることができ、また、ステップ3においてNx
*、Ar*、He*等の活性種により生じさせる改質反応を最適化させることができる。特に、ステップ3におけるNx
*、Ar*、He*等の活性種による改質反応を、より最適化させることが可能となる。すなわち、上述の改質反応をより適正に生じさせることが可能となる。
【0129】
(e)ステップ3において、処理容器の外部に設けられた電極300に電力を印加することで、処理容器の内部で不活性ガスをプラズマ状態に励起させることにより、異常放電の発生を防止することが可能となる。これにより、処理容器内の部材へのダメージや、ウエハ200へのダメージを抑制することができ、さらに、パーティクルの発生を抑制することが可能となる。
【0130】
なお、例えば、処理容器内に連通するプラズマ生成室内にプラズマ生成用の電極を設け、プラズマ生成室内で不活性ガスを、上述のような圧力条件下でプラズマ状態に励起させて、処理容器内へ噴出させる場合は、異常放電が生じることがある。すなわち、この場合、プラズマ生成室内で発生させた活性種を、プラズマ生成室内から処理容器内へ噴出させる噴出口付近において、制御困難な局所的な放電がランダムに発生することがある。このような異常放電がプラズマ生成室内で発生すると、プラズマ生成室を構成する隔壁の内壁やプラズマ生成室内に設けられるノズル等へのダメージが生じることがある。また、このような異常放電がプラズマ生成室外、すなわち、処理容器内で発生すると、処理容器内の部材や、ウエハへのダメージが生じることがある。また、いずれの場合も、パーティクルを誘発させることがある。なお、処理圧力を低圧化させるほど、活性種の平均自由行程が長くなり、噴出口の内壁へのチャージアップ量が増加し、そこから噴出口の外へ伸びる電場が強まることがある。その結果、異常放電を発生させるのに十分な運動エネルギーが、その電場加速を介してプラズマ電子へ与えられることがある。すなわち、処理圧力を低圧化させるほど、異常放電が生じやすくなる。
【0131】
これに対し、処理容器の外部に設けられた電極300に電力を印加することで、処理容器の内部で不活性ガスをプラズマ状態に励起させることにより、上述の異常放電の発生を防止することができ、処理容器内の部材へのダメージやウエハ200へのダメージを抑制することができ、パーティクルの発生を抑制することが可能となる。なお、処理圧力を低圧化するほど、この効果が特に顕著に生じることとなる。
【0132】
なお、ステップ2においても、処理容器の外部に設けられた電極300に電力を印加することにより、処理容器の内部でN及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させることにより、異常放電の発生を防止することが可能となる。これにより、処理容器内の部材へのダメージや、ウエハ200へのダメージを抑制することができ、さらに、パーティクルの発生を抑制することが可能となる。
【0133】
(f)成膜処理を行う際に、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)よりも大きくすることにより、活性種のウエハ200との衝突による失活を抑制することが可能となる。結果として、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を高くすることが可能となる。これにより、最終的に形成されるSiN膜のWERがウエハ200の中央部において高くなることを抑制することができ、最終的に形成されるSiN膜のウェットエッチング耐性がウエハ200の中央部において低下することを抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内WER均一性、つまり、ウエハ面内ウェットエッチング耐性均一性の悪化を抑制することが可能となる。また、最終的に形成されるSiN膜の膜厚がウエハ200の中央部において厚くなることを抑制することが可能となる。すなわち、最終的に形成されるSiN膜のウエハ面内膜厚均一性の悪化を抑制することが可能となる。特に、Nx
*、Ar*、He*等の活性種、中でも、Nx
*等の活性種は比較的ライフタイムが短く、失活し易いことから、ステップ3において、この効果が特に顕著に生じることとなる。すなわち、N2ガス、Arガス、Heガス等の不活性ガス、中でも、N2ガスをプラズマ状態に励起させてウエハ200に対して供給する場合に、この効果が特に顕著に生じることとなる。
【0134】
例えば、成膜処理を行う際に、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)の2倍以上とするようにしてもよい。この場合、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば12~24mm以上とすることができる。これにより、活性種のウエハ200との衝突による失活を、より抑制することができ、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を、より高くすることが可能となり、上述の効果が十分に得られるようになる。
【0135】
また、例えば、成膜処理を行う際に、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)の3倍以上とするようにしてもよい。この場合、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば18~36mm以上とすることができる。これにより、活性種のウエハ200との衝突による失活を、よりいっそう抑制することができ、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を、よりいっそう高くすることが可能となり、上述の効果がより十分に得られるようになる。
【0136】
また、例えば、成膜処理を行う際に、複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、ボート217により支持可能な最大枚数のウエハ200を支持する場合におけるウエハ200の間隔(配列ピッチ)の4倍以上とするようにしてもよい。この場合、ウエハ200の間隔(配列ピッチ)を、例えば24~48mm以上とすることができる。これにより、活性種のウエハ200との衝突による失活を、さらに抑制することができ、活性種がウエハ200の中央部まで到達する確率を、さらに高くすることが可能となり、上述の効果が、より十分に得られるようになる。
【0137】
(g)上述の各種効果は、ステップ3において、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して、不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する場合に、特に顕著に生じることとなる。また、上述の各種効果は、ステップ2において、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して、N及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給する場合に、特に顕著に生じることとなる。また、上述の各種効果は、ステップ1において、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して、原料ガスを供給する場合に、特に顕著に生じることとなる。ただし、本開示は、各種ガスをウエハ200の側方から、ウエハ200に対して供給する場合に限定されるものではない。
【0138】
(h)プラズマを用いて低温で成膜を行う場合、膜のウェットエッチング耐性が低下し、膜質が悪化することがある。しかしながら、本態様によれば、プラズマを用いて低温で成膜を行う場合であっても、上述の各種効果を得ることができ、高品質な膜を形成することが可能となる。
【0139】
(4)変形例
本態様における処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0140】
(変形例1)
原料ガスとして、Si-N結合を含む原料ガスを用いることにより、原料ガスを、Siソースとして作用させるだけでなく、Nソースとしても作用させることができ、N及びH含有ガスの供給を省略することもできる。すなわち、成膜処理では、
図6および以下に示す処理シーケンスにより、ウエハ200上にSiN膜を形成するようにしてもよい。
【0141】
(原料ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P)×n
【0142】
この場合、
(a)処理容器内のウエハ200に対して原料ガスを供給する工程と、
(c)処理容器内のウエハ200に対して不活性ガスをプラズマ状態に励起させて供給する工程と、
を含むサイクル、具体的には、これらを非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上に膜を形成することとなる。なお、上述の処理シーケンスは、(a)と(c)とを非同時に行うサイクルを、それらの間に処理容器内をパージする工程を挟んで、所定回数行う例を示している。
【0143】
この場合においても、(c)における処理容器内の圧力を、2Pa以上6Pa以下、好ましくは2.66Pa以上5.32Pa以下、より好ましくは3Pa以上4Pa以下とすることが望ましい。
【0144】
本変形例における原料ガス、すなわち、Si-N結合を含む原料ガスとしては、モノシリルアミン((SiH3)NH2、略称:MSA)ガス、ジシリルアミン((SiH3)2NH、略称:DSA)ガス、トリシリルアミン((SiH3)3N、略称:TSA)ガス等のシリルアミンガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。原料ガスとしては、これらの中でもSi-N結合を3つ含むTSAを用いることが好ましい。これらの原料ガスは、上述の原料ガス供給系より、ウエハ200に対して供給することができる。なお、処理条件は、上述の態様の処理シーケンスのステップ1における処理条件と同様とすることができる。
【0145】
本変形例における不活性ガスとしては、上述の態様の処理シーケンスのステップ3における不活性ガスと同様、N2ガスや、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、本変形例においては、不活性ガスとしては、これらの中でもN2ガスを用いることが好ましい。これらの不活性ガスは、上述の不活性ガス供給系より、ウエハ200に対して供給することができる。なお、処理条件は、上述の態様の処理シーケンスのステップ3における処理条件と同様とすることができる。
【0146】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、N及びH含有ガスの供給を省略することができ、処理時間を短縮させることが可能となる。結果として、スループット、すなわち、生産性を向上せることが可能となる。
【0147】
(変形例2)
上述のサイクルは、さらに、ウエハ200に対してO含有ガスを供給する工程を含んでいてもよい。この場合、ウエハ200上にシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成することが可能となる。その場合、ウエハ200に対して、O含有ガスをプラズマ状態に励起させることなく供給するようにしてもよく、O含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給するようにしてもよい。すなわち、成膜処理では、以下に示す処理シーケンスにより、ウエハ200上にSiON膜を形成するようにしてもよい。なお、上述の態様と同様、プラズマ励起不活性ガスの供給前後のパージを省略することもできる。
【0148】
(原料ガス→P→O含有ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→P→O含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P→O含有ガス→P)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起O含有ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→P→プラズマ励起O含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起N及びH含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P→プラズマ励起O含有ガス→P)×n
【0149】
これらの場合、上述のO含有ガス供給系より、ウエハ200に対してO含有ガスを供給することができる。なお、処理条件は、上述の態様の処理シーケンスのステップ2における処理条件と同様とすることができる。なお、O含有ガスと一緒に、水素(H)含有ガスを供給するようにしてもよい。H含有ガスは、例えば、原料ガス供給系やN及びH含有ガス供給系より供給することができる。
【0150】
O含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、過酸化水素(H2O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。O含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0151】
O含有ガスと一緒に、H含有ガスを供給する場合、H含有ガスとしては、例えば、水素(H2)ガスや重水素(2H2)ガス等を用いることができる。2H2ガスをD2ガスとも称する。H含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0152】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。すなわち、サイクルが、さらに、ウエハ200に対してO含有ガスを供給する工程を含み、ウエハ200上にSiON膜を形成する場合であっても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0153】
なお、変形例1における上述のサイクルが、さらに、ウエハ200に対してO含有ガスを供給する工程を含んでいてもよい。この場合も、ウエハ200上にSiON膜を形成することが可能となる。その場合、ウエハ200に対して、O含有ガスをプラズマ状態に励起させることなく供給するようにしてもよく、O含有ガスをプラズマ状態に励起させて供給するようにしてもよい。すなわち、成膜処理では、以下に示す処理シーケンスにより、ウエハ200上にSiON膜を形成するようにしてもよい。この場合においても、上述の態様と同様、プラズマ励起不活性ガスの供給前後のパージを省略することもできる。
【0154】
(原料ガス→P→O含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P→O含有ガス→P)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起O含有ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P)×n
(原料ガス→P→プラズマ励起不活性ガス→P→プラズマ励起O含有ガス→P)×n
【0155】
この場合においても、上述の態様や変形例1と同様の効果が得られる。すなわち、サイクルが、さらに、ウエハ200に対してO含有ガスを供給する工程を含み、ウエハ200上にSiON膜を形成する場合であっても、上述の態様や変形例1と同様の効果が得られる。
【0156】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0157】
例えば、上述の態様における処理シーケンスのように、ステップ1,2,3を1サイクルとしてこのサイクルをこの順に所定回数(n回、nは1以上の整数)行う以外に、以下に示す処理シーケンスのように、各ステップを行う順番を変更してもよい。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0158】
(ステップ1→ステップ2→ステップ3)×n
(ステップ2→ステップ3→ステップ1)×n
(ステップ3→ステップ1→ステップ2)×n
【0159】
ただし、サイクルにおける最後のステップがステップ1やステップ2である場合は、最終的に形成される膜の最表面の組成や改質効果が、それ以外の部分と異なることがある。そのため、以下に示す処理シーケンスのように、最終サイクル終了後に、ステップ2やステップ3を行い、ステップ2による窒化度合いや、ステップ3による改質度合いが、それまでに形成された層と同等となるように、最終的に形成される膜の最表面の膜質の微調整を行うことが好ましい。
【0160】
(ステップ2→ステップ3→ステップ1)×n→ステップ2→ステップ3
(ステップ3→ステップ1→ステップ2)×n→ステップ3
【0161】
また、例えば、上述の態様における処理シーケンスのように、ステップ1,2,3を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行う以外に、ステップ1,2を複数回(m回、mは2以上の整数)行った後に、ステップ3を行い、このサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。また、ステップ1を行った後に、ステップ2,3を複数回(m回、mは2以上の整数)行い、このサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。これらの処理シーケンスは、以下のように表すことができる。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0162】
(ステップ1→ステップ2→ステップ3)×n
[(ステップ1→ステップ2)×m→ステップ3]×n
[ステップ1→(ステップ2→ステップ3)×m]×n
【0163】
また、例えば、
図7(a)に示すように複数枚のウエハ200をボート217により支持した状態でステップ1,2を行い、
図7(b)または
図7(c)に示すように複数枚のウエハ200をボート217により支持した状態でステップ3を行うようにしてもよい。すなわち、ステップ3における複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)P
1を、ステップ1,2における複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)P
2よりも大きくする(P
1>P
2)ようにしてもよい。この場合、例えば、P
1≧2P
2とすることが好ましく、P
1≧3P
2とすることがより好ましく、P
1≧4P
2とすることがさらに好ましい。例えば、P
2を6~12mmとした場合、P
1を12~24mm以上とすることが好ましく、P
1を18~36mm以上とすることがより好ましく、P
1を24~48mm以上とすることがさらに好ましい。これらの場合、ステップ3において、支持部217bの間隔(配列ピッチ)が、例えば6~12mmであるボート217により、数枚おきにウエハ200を支持する場合に限らず、支持部217bの間隔(配列ピッチ)そのものを、上述の数値範囲としたボート217により、ウエハ200を支持するようにしてもよい。なお、これらの場合、処理室201と同一構成の第1処理室と、第2処理室と、を準備し、ステップ1,2を第1処理室内で行い、ステップ3を第2処理室内で行うようにしてもよい。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。さらに、この場合、ステップ1,2を行うウエハ200の枚数を、ステップ3を行うウエハ200の枚数よりも多くすることが可能となる。
【0164】
また、例えば、
図7(a)に示すように複数枚のウエハ200をボート217により支持した状態でステップ1を行い、
図7(b)または
図7(c)に示すように複数枚のウエハ200をボート217により支持した状態でステップ2,3を行うようにしてもよい。すなわち、ステップ2,3における複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)P
1を、ステップ1における複数枚のウエハ200の間隔(配列ピッチ)P
2よりも大きくする(P
1>P
2)ようにしてもよい。この場合、例えば、P
1≧2P
2とすることが好ましく、P
1≧3P
2とすることがより好ましく、P
1≧4P
2とすることがさらに好ましい。例えば、P
2を6~12mmとした場合、P
1を12~24mm以上とすることが好ましく、P
1を18~36mm以上とすることがより好ましく、P
1を24~48mm以上とすることがさらに好ましい。これらの場合、ステップ2,3において、支持部217bの間隔(配列ピッチ)が、例えば6~12mmであるボート217により、数枚おきにウエハ200を支持する場合に限らず、支持部217bの間隔(配列ピッチ)そのものを、上述の数値範囲としたボート217により、ウエハ200を支持するようにしてもよい。なお、これらの場合、処理室201と同一構成の第1処理室と、第2処理室と、を準備し、ステップ1を第1処理室内で行い、ステップ2,3を第2処理室内で行うようにしてもよい。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。さらに、この場合、ステップ1を行うウエハ200の枚数を、ステップ2,3を行うウエハ200の枚数よりも多くすることが可能となる。
【0165】
また、例えば、プラズマ生成方式としては、容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma、略称:CCP)の他、誘導結合プラズマ (Inductively Coupled Plasma、略称:ICP)を用いるようにしてもよい。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0166】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0167】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0168】
上述の各種態様や各種変形例では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の各種態様や各種変形例に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の各種態様や各種変形例では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の各種態様や各種変形例に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0169】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の各種態様や各種変形例における処理手順、処理条件と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の各種態様や各種変形例と同様の効果が得られる。
【0170】
上述の各種態様や各種変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の各種態様や各種変形例における処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例】
【0171】
上述の態様における基板処理装置を用い、上述の態様における処理シーケンスにより、ウエハ上にSiN膜を形成した。原料ガスとしてはDCSガスを用い、N及びH含有ガスとしてはNH3ガスを用い、不活性ガスとしてはN2ガスを用いた。ステップ3における処理圧力を次の4通りの圧力条件(圧力条件1~4)に設定し、それぞれの条件にて、ウエハ上にSiN膜を形成し、4種類のSiN膜の評価サンプル1~4を作製した。評価サンプル1~4を作製する際、ステップ3における処理圧力以外の処理条件は、上述の態様における処理条件範囲内の同一の処理条件とし、ウエハの間隔(配列ピッチ)は、いずれも15~40mmとした。
【0172】
圧力条件1:0.01Torr(1.33Pa)
圧力条件2:0.02Torr(2.66Pa)
圧力条件3:0.04Torr(5.32Pa)
圧力条件4:0.06Torr(7.98Pa)
【0173】
評価サンプル1~4を作製した後、評価サンプル1~4のそれぞれのSiN膜のウエハ面内におけるWERと膜厚を測定した。それらの結果を
図8~
図11に示す。なお、
図8~
図11の横軸は、ウエハ200の中心からの距離(半径)を示しており、0mmはウエハの中央部を、150mm、-150mmは、ウエハ200の外周部(エッジ部)を示している。
図8~
図11の左側の縦軸は、WERを任意単位(a.u.)で示しており、右側の縦軸は、膜厚を任意単位(a.u.)で示している。図中、◇は膜厚を示し、●はWERを示す。なお、
図8~
図11は、それぞれ、評価サンプル1~4のSiN膜のウエハ面内におけるWERと膜厚の測定結果を示している。
【0174】
図8より、ステップ3における処理圧力を圧力条件1とした評価サンプル1のSiN膜では、ウエハ外周部におけるWERがウエハ中央部におけるWERよりも高くなっていることが分かる。また、評価サンプル1のSiN膜では、ウエハ外周部おける膜厚がウエハ中央部における膜厚よりも厚くなっていることが分かる。すなわち、評価サンプル1のSiN膜におけるウエハ面内WER均一性およびウエハ面内膜厚均一性は、いずれも良好ではないことが分かる。なお、評価サンプル1のSiN膜のWERがウエハ外周部において高くなったのは、圧力条件1にてN
2ガスをプラズマ励起させる際に生じたN
2
+によるイオンアタックにより、膜密度が低下したことが原因と考えられる。また、評価サンプル1のSiN膜の膜厚がウエハ外周部において厚くなったのは、圧力条件1にてN
2ガスをプラズマ励起させる際に生じたN
2
+によるイオンアタックにより、ウエハ外周部におけるSiN膜の膜構造が壊れ、その部分が疎な膜に変化したことが原因と考えられる。
【0175】
図9より、ステップ3における処理圧力を圧力条件2とした評価サンプル2のSiN膜では、WERがウエハ外周部とウエハ中央部とで同等となっていることが分かる。また、評価サンプル2のSiN膜では、膜厚もウエハ外周部とウエハ中央部とで同等となっていることが分かる。すなわち、評価サンプル2のSiN膜におけるウエハ面内WER均一性およびウエハ面内膜厚均一性は、いずれも極めて良好であることが分かる。
【0176】
図10より、ステップ3における処理圧力を圧力条件3とした評価サンプル3のSiN膜では、WERがウエハ外周部とウエハ中央部とで同等となっていることが分かる。また、評価サンプル3のSiN膜では、膜厚もウエハ外周部とウエハ中央部とで同等となっていることが分かる。すなわち、評価サンプル3のSiN膜におけるウエハ面内WER均一性およびウエハ面内膜厚均一性は、いずれも極めて良好であることが分かる。
【0177】
図11より、ステップ3における処理圧力を圧力条件4とした評価サンプル4のSiN膜では、ウエハ中央部におけるWERがウエハ外周部におけるWERよりも高くなっていることが分かる。また、評価サンプル4のSiN膜では、ウエハ中央部おける膜厚がウエハ外周部における膜厚よりも厚くなっていることが分かる。すなわち、評価サンプル4のSiN膜におけるウエハ面内WER均一性およびウエハ面内膜厚均一性は、いずれも良好ではないことが分かる。なお、評価サンプル4のSiN膜のWERがウエハ中央部において高くなったのは、圧力条件4にてN
2ガスをプラズマ励起させる際に生じたN
*、N
2
*等の活性種、特に、N
*等の活性種が、ウエハ中央部まで、到達する前に失活する割合が高くなり、ウエハ中央部における膜の改質効果が不十分となったことが原因と考えられる。また、評価サンプル4のSiN膜の膜厚がウエハ中央部において厚くなったのは、圧力条件4にてN
2ガスをプラズマ励起させる際に生じたN
*、N
2
*等の活性種、特に、N
*等の活性種が、ウエハ中央部まで、到達する前に失活する割合が高くなり、ウエハ中央部における膜の緻密化の効果が不十分となったことが原因と考えられる。
【0178】
以上のことから、ステップ3における処理圧力を0.02Torr(2.66Pa)~0.04Torr(5.32Pa)とすることにより、ウエハ面内WER均一性およびウエハ面内膜厚均一性が極めて高く、高品質なSiN膜を形成することができることが判明した。なお、ステップ3における処理圧力を2~6Paとすることによっても、ウエハ面内WER均一性およびウエハ面内膜厚均一性が極めて高く、高品質なSiN膜を形成することができることを確認した。
【符号の説明】
【0179】
200 ウエハ
201 処理室