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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021067050
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162296
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】和井田 匠
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】正路 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056810(JP,A)
【文献】特開2018-146752(JP,A)
【文献】特開2021-039192(JP,A)
【文献】特開2019-015840(JP,A)
【文献】特開2019-109537(JP,A)
【文献】特開平11-024492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接触し定着ニップを形成する回転可能な加圧部材と、
前記定着ベルトを加熱する加熱源と、
前記加熱源の温度を検知して前記加熱源の温度が所定温度を超えた場合に前記加熱源の発熱を停止させる温度検知部材と、
前記加熱源と前記温度検知部材との間に介在する金属製の伝熱部材と、
を備え、
前記加熱源の温度が前記所定温度を超えた場合に、前記伝熱部材が変形して前記温度検知部材及び前記加熱源の両方に対する前記伝熱部材の接触面積が増加することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接触し定着ニップを形成する回転可能な加圧部材と、
前記定着ベルトを加熱する加熱源と、
前記加熱源の温度を検知して前記加熱源の温度が所定温度を超えた場合に前記加熱源の発熱を停止させる温度検知部材と、
前記加熱源と前記温度検知部材との間に介在する金属製の伝熱部材と、
を備え、
前記伝熱部材は、前記温度検知部材又は前記加熱源に向かって中央部が凸となる凸面と、前記凸面とは反対の面であって中央部が凹となる凹面とを有し、
前記加熱源の温度が前記所定温度を超えた場合に、前記伝熱部材が前記凸面と前記凹面の凹凸が反転するように変形して前記温度検知部材に対する前記伝熱部材の接触面積が増加することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記温度検知部材は、前記加熱源の温度が前記所定温度を超えた場合に、前記伝熱部材の凸面に接触する凹部、又は、前記伝熱部材の凹面に接触する凸部を有する請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加熱源は、前記加熱源の温度が前記所定温度を超えた場合に前記伝熱部材の凸面に接触する凹部、又は、前記伝熱部材の凹面に接触する凸部を有する請求項2又は3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記伝熱部材は、前記加熱源の温度が前記所定温度以下の場合に、前記温度検知部材に対して前記凹面が対向するように配置され、
前記伝熱部材は、前記温度検知部材の直径よりも小さい直径の円形に形成される請求項2から4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記伝熱部材の前記加熱源側の面と前記温度検知部材側の面との間の厚さは、前記加熱源の前記伝熱部材側の面と前記定着ベルト側の面との間の厚さよりも薄い請求項1から5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記伝熱部材の前記温度検知部材に接触する面、前記伝熱部材の前記加熱源に接触する面の少なくとも一方に、熱伝導性を有するグリスが付着している請求項1から6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置においては、用紙にトナー画像を定着させる定着装置が搭載されている。
【0003】
一般的に、定着装置は、互いに接触する一対の回転体を備えており、回転体同士の間(定着ニップ)に用紙を通過させることにより、用紙が加熱及び加圧され、用紙上のトナー画像が定着される。
【0004】
近年、省エネルギー化又はウォームアップ時間短縮などのために、回転体として、ローラよりも熱容量の小さい定着ベルトを用いた定着装置が開発されている。また、この種の定着装置においては、安全性の観点から、定着ベルトを加熱する加熱源の温度検知を行うヒューズ又はサーモスタットなどの温度検知部材が設けられている。万が一、故障などの異常により加熱源が過剰に温度上昇した場合は、その温度上昇を温度検知部材が検知することにより、加熱源への通電を遮断し、加熱源の発熱を停止させる。
【0005】
温度検知部材が加熱源の温度を応答性良く検知するためには、温度検知部材が加熱源の近くに配置されていることが好ましい。特に、温度検知部材を加熱源に直接接触させて配置した場合は、温度検知部材の応答性が良くなる。しかしながら一方で、温度検知部材が加熱源に直接接触していると、温度検知部材が接触する箇所において加熱源の熱が温度検知部材に奪われることにより、加熱源の温度が部分的に低下し、画像の定着品質にムラが発生する虞がある。
【0006】
斯かる課題に対して、下記特許文献1(特許第4546233号公報)においては、加熱源と温度検知部材との間に樹脂製のスペーサを介在させる構成が提案されている。この構成においては、スペーサが加熱源と温度検知部材の間に介在していることにより、温度検知部材が加熱源に対して非接触に保持されるため、温度検知部材が直接接触することによる加熱源の温度低下を防止できる。一方、異常により加熱源お温度が過剰に上昇した場合は、樹脂製のスペーサが溶融することにより、溶融した樹脂が温度検知部材と加熱源との間の空隙を満たすと共に、温度検知部材が加熱源に接近する。これにより、加熱源の熱が溶融した樹脂を介して温度検知部材へ伝わりやすくなるため、異常加熱時における温度検知部材の応答性を確保できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような樹脂製のスペーサを用いた構成においては、熱伝導性又は溶融温度のばらつきなどにより、樹脂の溶融状態が一様にはなりにくいため、加熱源の温度が所定の温度を超えた場合に、スペーサが確実に溶融して加熱源の発熱を停止させることができない虞がある。従って、温度検知部材の応答の精度及び確実性を向上させるためには、樹脂製のスペーサに代わる構成が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、回転可能な無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトの外周面に接触し定着ニップを形成する回転可能な加圧部材と、前記定着ベルトを加熱する加熱源と、前記加熱源の温度を検知して前記加熱源の温度が所定温度を超えた場合に前記加熱源の発熱を停止させる温度検知部材と、前記加熱源と前記温度検知部材との間に介在する金属製の伝熱部材と、を備え、前記加熱源の温度が前記所定温度を超えた場合に、前記伝熱部材が変形して前記温度検知部材及び前記加熱源の両方に対する前記伝熱部材の接触面積が増加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温度検知部材の応答の精度及び確実性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、通常時における安全装置の状態を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、異常加熱時における安全装置の状態を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、通常時における安全装置の状態を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、異常加熱時における安全装置の状態を示す図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、通常時における安全装置の状態を示す図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、異常加熱時における安全装置の状態を示す図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、通常時における安全装置の状態を示す図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、異常加熱時における安全装置の状態を示す図である。
図11】本発明の第5実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、通常時における安全装置の状態を示す図である。
図12】本発明の第5実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、異常加熱時における安全装置の状態を示す図である。
図13】本発明の第6実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、通常時における安全装置の状態を示す図である。
図14】本発明の第6実施形態に係る安全装置の構成を示す図であって、異常加熱時における安全装置の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置1は、画像形成部2と、記録媒体供給部3と、転写部4と、定着部5と、記録媒体排出部6と、を備える、電子写真方式のプリンタである。なお、本発明に係る画像形成装置は、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいは、これらのいずれか2つ又は3つの機能を備える複合機などであってもよい。
【0014】
画像形成部2においては、画像を形成する4つの作像ユニット7Y,7M,7C,7Kと、各作像ユニット7Y、7M,7C,7Kが備える感光体10の表面に静電潜像を形成する露光装置8と、が設けられている。4つの作像ユニット7Y,7M,7C,7Kは、像担持体としての感光体10のほか、感光体10の表面を帯電させる帯電部材11と、感光体10の表面に現像剤を供給する現像装置12と、感光体10の表面をクリーニングするクリーニング部材13と、を備えている。各作像ユニット7Y,7M,7C,7Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外、同様の構成である。露光装置8は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラーなどを備えている。
【0015】
記録媒体供給部3においては、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙トレイ18と、給紙トレイ18から用紙Pを1枚ずつ送り出す給紙ローラ19と、が設けられている。給紙トレイ18に収容される用紙Pには、普通紙のほか、厚紙、薄紙、はがき、封筒、塗工紙(コート紙又はアート紙など)、又は、トレーシングペーパなどが含まれる。また、記録媒体として、用紙以外に、OHPシートなどの樹脂製シートが用いられてもよい。
【0016】
転写部4においては、給紙トレイ18から供給された用紙Pに画像を転写する転写装置14が設けられている。転写装置14は、中間転写ベルト15と、一次転写ローラ16と、二次転写ローラ17を備えている。中間転写ベルト15は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ16は、各感光体10に対応して中間転写ベルト15の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ16が中間転写ベルト15を介して各感光体10に接触することにより、中間転写ベルト15と各感光体10との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ17は、中間転写ベルト15の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0017】
定着部5においては、用紙Pに画像を定着させる定着装置20が設けられている。定着装置20は、無端状の定着ベルト21と、加圧部材としての加圧ローラ22などを備えている。定着ベルト21と加圧ローラ22は互いに圧接されており、これらの間に定着ニップが形成されている。
【0018】
記録媒体排出部6においては、用紙Pを装置外に排出する一対の排紙ローラ23が設けられている。
【0019】
続いて、図1を参照して画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0020】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット7Y,7M,7C,7Kにおいて、感光体10が回転を開始し、帯電部材11によって感光体10の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置8が各感光体10の表面へレーザ光を照射する。これにより、レーザ光が照射された部分の電位が低下し、各感光体10の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置12からトナーが供給され、各感光体10上にトナー画像が形成される。
【0021】
各感光体10上に形成されたトナー画像は、各感光体10の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ16の位置)に至り、回転する中間転写ベルト15上に順次重なり合うように転写される。また、トナー画像の転写後、各感光体10上に残留するトナーは、各クリーニング部材13によって除去される。そして、中間転写ベルト15上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト15の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ17の位置)に至り、用紙Pに転写される。
【0022】
この用紙Pは、記録媒体供給部3から供給されたものである。記録媒体供給部3においては、印刷動作開始の指示があった後、給紙ローラ19が回転することにより、給紙トレイ18から用紙Pが1枚ずつ送り出される。そして、送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ24によって一旦停止された後、中間転写ベルト15上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が転写される。
【0023】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着部5へと搬送される。そして、定着部5において、定着ベルト21と加圧ローラ22によって用紙Pが挟持されながら搬送されることにより、用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは、記録媒体排出部6へ搬送され、排紙ローラ23によって装置外に排出される。これにより、一連の印刷動作が完了する。
【0024】
以下、図2に基づき、本実施形態に係る定着装置20の基本構成について説明する。
【0025】
図2に示されるように、本実施形態に係る定着装置20は、定着ベルト21及び加圧ローラ22のほか、ヒータ25と、ヒータホルダ26と、ステー27と、を備えている。
【0026】
定着ベルト21は、用紙Pの未定着画像担持面側に配置され、用紙P上の未定着画像を定着させる定着部材である。定着ベルト21は、無端状のベルト部材によって構成され、その長手方向両端に挿入される一対のベルト保持部材によって回転可能に保持されている。すなわち、定着ベルト21は、一対のベルト保持部材によって、非回転時においては基本的に張力が作用しない、いわゆるフリーベルト状態で保持されている。また、定着ベルト21の内側には、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのヒータ25が配置されている。
【0027】
加圧ローラ22は、定着ベルト21の外周面に接触して定着ニップ100を形成する回転体である。具体的に、加圧ローラ22は、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴムなどから成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFA又はPTFEなどから成る離型層によって構成されている。加圧ローラ22は、バネなどの付勢部材によって定着ベルト21側へ押圧され、定着ベルト21の外周面に圧接されている。これにより、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(接触箇所)に、定着ニップ100が形成されている。
【0028】
また、加圧ローラ22は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力が定着ベルト21に伝達されることにより、定着ベルト21が従動回転する。そして、定着ベルト21がヒータ25によって加熱され、定着ベルト21の温度が所定の温度(定着温度)となると、図2に示されるように、未定着画像を担持する用紙Pが、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(定着ニップ100)に搬送される。これにより、用紙Pが定着ニップ100を通過する際に加圧及び加熱され、未定着画像が用紙Pに定着される。
【0029】
ヒータ25は、基材30と、第1絶縁層31と、抵抗発熱体32と、第2絶縁層33と、を有する板状のヒータである。ヒータ25は、定着ベルト21の長手方向(用紙搬送方向に交差する用紙幅方向)に渡って伸びるように配置されている。基材30は、ステンレス(SUS)、鉄又はアルミニウムなどの金属材料によって構成される。また、基材30の材料として、金属材料のほか、セラミック又はガラスなどを用いることも可能である。第1絶縁層31及び第2絶縁層33は、耐熱性ガラス、セラミック又はポリイミドなどの材料で構成される。第1絶縁層31は、基材30の定着ニップ100側の面に積層され、第2絶縁層33は、第1絶縁層31よりもさらに定着ニップ100側に積層されている。なお、基材30がセラミックなどの絶縁材料から成る場合は、第1絶縁層31を省略することが可能である。抵抗発熱体32は、第1絶縁層31と第2絶縁層33との間に介在する発熱体である。抵抗発熱体32は、例えば、銀パラジウム(AgPd)及びガラス粉末などを調合したペーストを基材30の表面にスクリーン印刷などにより塗工し、その後、基材30を焼成することによって形成される。また、抵抗発熱体32の材料として、銀合金(AgPt)又は酸化ルテニウム(RuO)などの抵抗材料を用いることも可能である。
【0030】
また、ヒータ25は、定着ニップ100の位置において定着ベルト21の内周面に接触するように配置されている。このため、定着ベルト21が回転すると、定着ベルト21はヒータ25に対して摺動する。このとき、ヒータ25に対する定着ベルト21の摺動性を高めるために、ヒータ25と定着ベルト21との間に低摩擦シート、又はグリスなどの潤滑剤を介在させてもよい。
【0031】
ヒータホルダ26は、定着ベルト21の内側でヒータ25を保持する加熱源保持部材である。ヒータホルダ26は、ヒータ25の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料によって構成されることが好ましい。特に、ヒータホルダ26が、LCP又はPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂によって構成される場合は、ヒータホルダ26の耐熱性を確保しつつ、ヒータ25からヒータホルダ26への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト21を加熱できる。
【0032】
ステー27は、定着ベルト21の内側に配置される補強部材である。ステー27によってヒータホルダ26の定着ニップ100側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ26が加圧ローラ22の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト21と加圧ローラ22との間に均一な幅の定着ニップ100が形成される。また、ステー27は、その剛性を確保するため、SUS又はSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0033】
ところで、上記のような定着装置においては、定着ベルトの温度を画像定着に適した所定の温度(定着温度)に維持するために、サーミスタなどの制御用の温度検知部材が設けられている。制御用の温度検知部材によってヒータの温度が検知され、その検知された温度に基づいてヒータの出力が制御されることにより、定着ベルトの温度が所定の温度となるように維持される。
【0034】
また、定着装置においては、上記制御用の温度検知部材とは別に、ヒータの過剰な温度上昇を防止する安全装置としての温度検知部材が設けられている。例えば、制御用の温度検知部材が故障してヒータの温度が過剰に上昇した場合は、安全装置としての温度検知部材がヒータの温度上昇を検知することにより、ヒータへの通電を遮断し、ヒータの発熱を停止させる。
【0035】
このような安全装置においては、温度検知部材の応答性を良くするため、温度検知部材をヒータに対して近い位置に配置することが好ましい。しかしながら、良好な応答性を確保するために温度検知部材をヒータに対して直接接触させると、上述のように、温度検知部材が接触する箇所においてヒータの温度が部分的に低下する問題がある。
【0036】
また、この問題に対して、従来においては、ヒータ(加熱源)と温度検知部材との間に樹脂製のスペーサを介在させる方法が提案されているが、樹脂の溶融状態が一様ではないため、ヒータの温度が所定の温度を超えた場合に確実に樹脂が溶融してヒータの発熱を停止させることができない虞がある。そのため、本実施形態に係る定着装置においては、安全装置の応答の精度及び確実性の向上を図るため、次のような構成を採用している。以下、本実施形態に係る安全装置の構成について詳しく説明する。
【0037】
図3は、本実施形態に係る安全装置の構成を示す図である。
【0038】
図3に示されるように、安全装置40は、温度検知部材としてのサーモスタット41と、弾性部材としてのバネ42と、金属製の伝熱部材43と、を備えている。
【0039】
サーモスタット41は、ヒータ25の過剰な温度上昇を検知した場合に、ヒータ25への通電を遮断する温度検知部材である。具体的に、サーモスタット41は、バイメタルと、可動ピンと、スイッチと、これらを内部に収容するケースなどによって構成されている。図3においては、サーモスタット41のケースのみが図示されている。バイメタルは、熱膨張係数の異なる2つの金属板を貼り合わせて形成されており、ヒータ25の温度上昇に伴ってバイメタルの温度が所定の作動温度以上になると、バイメタルが各金属板の熱膨張差によって変形する。この変形に伴って、可動ピンが作動することにより、スイッチの接点同士の接続が解除され、ヒータ25への通電が遮断される。
【0040】
サーモスタット41と伝熱部材43は、ヒータホルダ26に設けられた貫通孔26a内に収容され、バネ42によってヒータ25側へ弾発付勢されている。本実施形態においては、サーモスタット41と伝熱部材43が、バネ42の付勢方向から見て円形に形成されているため、貫通孔26aも円形(円柱状)に形成されている。なお、サーモスタット41、伝熱部材43、貫通孔26aの各形状は、円形に限らず、矩形などの他の形状であってもよい。
【0041】
伝熱部材43は、サーモスタット41内のバイメタルと同様、熱膨張係数の異なる2つの金属板を貼り合わせて形成されている。このため、ヒータ25の温度上昇に伴って伝熱部材43の温度が所定の動作温度以上になると、伝熱部材43を構成する各金属板の熱膨張差により伝熱部材43が変形する。伝熱部材43を構成する各金属板は、サーモスタット41内のバイメタルと同じ種類の金属材料であってもよいし、異なる種類の金属材料であってもよい。
【0042】
図3は、ヒータ25の温度が通常の温度状態である場合の伝熱部材43の状態を示す。この状態においては、伝熱部材43がヒータ25に向かって凸となるように湾曲しており、凸面であるヒータ25側の面43a(以下、「下面」という。)がヒータ25に対して接触している。本実施形態においては、伝熱部材43が円形に形成されているため、伝熱部材43の下面43aのうち、特にヒータ25に向かって突出する中央部(円形を成す伝熱部材43の中心部)43a1及びその近傍部分がヒータ25に接触する。一方、伝熱部材43のサーモスタット41側の面43b(以下、「上面」という。)は、中央部が凹となる凹面に形成されている。このため、サーモスタット41に対しては、伝熱部材43の上面43bのうち、特に円環状の縁部43b2が接触する。また、本実施形態においては、伝熱部材43の縁部43b2がサーモスタット41に対して接触するように、伝熱部材43の直径(幅)d1がサーモスタット41の直径(幅)d2よりも小さく設定されている。
【0043】
上記のような通常の状態に対し、ヒータ25の温度が異常により所定温度を超えた場合は、図4に示されるように、伝熱部材43が熱膨張差により変形し、伝熱部材43の凹凸が反転する。すなわち、伝熱部材43の下面43aが凹面となり、反対に、伝熱部材43の上面43bが凸面となる。
【0044】
この場合、図4に示されるように、伝熱部材43の凹面である下面43aのうち、特に円環状の縁部43a2がヒータ25に対して接触し、伝熱部材43の凸面である上面43bのうち、中央部(伝熱部材43の中心部)43b1及びその近傍部分がサーモスタット41に対して接触する。
【0045】
ここで、本実施形態においては、サーモスタット41が、伝熱部材43の凸形状に倣って凹状に形成された凹部41aを有している。このため、図4に示される状態においては、伝熱部材43の凸形状を成す上面43bが、サーモスタット41の凹部41aに対して接触する。
【0046】
このように、本実施形態においては、ヒータ25の温度が異常により所定温度を超えた場合は、伝熱部材43の凸形状を成す上面43bが、サーモスタット41の凹部41aに対して接触するため、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積が増大する。すなわち、図3に示される通常の温度状態においては、伝熱部材43の上面(凹面)43bの縁部43b2のみがサーモスタット41に対して接触するのに対し、図4に示される異常加熱時においては、伝熱部材43の凸形状を成す上面43bがサーモスタット41の凹部41aに対し広い範囲に渡って接触する。
【0047】
これにより、異常加熱時においては、伝熱部材43を介してヒータ25からサーモスタット41へ伝達される熱量が増大する。このため、サーモスタット41がヒータ25の温度に追従して急速に温度上昇し、ヒータ25への通電が即座に遮断される。一方、通常時においては、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積が小さく、伝熱部材43を介してヒータ25からサーモスタット41へ伝達される熱量も少ないので、サーモスタット41は作動せず、ヒータ25への通電は維持される。
【0048】
以上のように、本実施形態においては、熱膨張率の違いによって変形する金属製の伝熱部材43を用いることにより、サーモスタット41をヒータ25に対して直接接触しないように保持しつつ、通常時と異常加熱時におけるサーモスタット41への伝熱量を調整できる。これにより、サーモスタット41がヒータ25に直接接触することによるヒータの25の温度低下を防止できると共に、異常加熱時においてはサーモスタット41への伝熱量を増加させて、サーモスタット41を応答性良く作動させることができる。また、金属製の伝熱部材43は、樹脂製のスペーサに比べて、温度上昇に伴う変形の正確性及び確実性に優れる。このため、サーモスタット41の応答の精度及び確実性を従来よりも向上させることができ、信頼性が向上する。
【0049】
特に、サーモスタット41の凹部41aが、伝熱部材43の凸形状と同じ形状又は同じ曲率に形成されている場合は、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積をより確実に増大させることができ、サーモスタット41の応答の精度及び確実性がより一層向上する。ただし、サーモスタット41の凹部41aと伝熱部材43の凸形状は、一致している場合に限らず、異常加熱時における接触面積を大きく確保できれば互いに異なる形状であってもよい。また、伝熱部材43のサーモスタット41に接触する面(上面43b)、伝熱部材43のヒータ25に接触する面(下面43a)の少なくとも一方に、熱伝導性を有するグリスを付着させてもよい。これにより、ヒータ25からサーモスタット41への熱伝達をより一層向上させることができる。
【0050】
また、伝熱部材43は、熱容量が大きいと、ヒータ25温度が部分的に低下する要因となるため、薄く形成されることが好ましい。具体的には、図3に示されるように、伝熱部材43のヒータ25側の面(下面43a)とサーモスタット41側の面(上面43b)との間の厚さt1が、ヒータ25の伝熱部材43側の面(上面)と定着ベルト21側の面(下面)との間の厚さt2よりも薄く設定されていることが好ましい。このように、伝熱部材43の厚さt1がヒータ25の厚さt2よりも薄いことにより、伝熱部材43の熱容量が小さくなるため、ヒータ25に対して伝熱部材43が接触することによるヒータ25の温度低下を低減できるようになる。
【0051】
続いて、上述の実施形態(第1実施形態)とは異なる実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、主に異なる部分について説明し、それ以外の部分については基本的に上述の実施形態と同様であるので適宜説明を省略する。
【0052】
図5及び図6は、本発明の第2実施形態に係る安全装置の構成を示す図である。
【0053】
図5及び図6に示されように、第2実施形態に係る安全装置40においては、伝熱部材43の凹凸が、上述の実施形態(第1実施形態)とは逆になっている。すなわち、図5に示される通常時においては、伝熱部材43がサーモスタット41に向かって凸となるように湾曲し、図6に示される異常加熱時においては、伝熱部材43がヒータ25に向かって凸となるように湾曲する。また、本実施形態においては、上述の実施形態とは異なり、サーモスタット41の伝熱部材43に対向する面に、凸部41bが形成されている。
【0054】
このように構成された第2実施形態においては、図5に示される通常時、伝熱部材43の凸形状を成す上面43bとサーモスタット41の凸部41bとが接触する。すなわち、この場合、伝熱部材43とサーモスタット41のそれぞれの凸面同士が接触するので、互いの接触面積が小さくなる。
【0055】
一方、ヒータ25の温度が所定温度を超えた異常加熱時においては、図6に示されるように、伝熱部材43の凹凸が反転することにより、伝熱部材43の凹形状を成す上面43bが、サーモスタット41の凸部41bに対して接触する。従って、この場合は、伝熱部材43とサーモスタット41の接触面積が大きくなる。
【0056】
このように、第2実施形態においても、ヒータ25の温度が異常により所定温度を超えた場合は、伝熱部材43の凹凸が反転することにより、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積を増大させることができる。これにより、ヒータ25からサーモスタット41への伝熱量が増大するため、異常加熱時においては、ヒータ25への通電が即座に遮断される。一方、通常時においては、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積が小さく、ヒータ25からサーモスタット41への伝熱量も少ないので、サーモスタット41は作動せず、ヒータ25への通電が維持される。
【0057】
また、本実施形態においても、上述の実施形態と同様、金属製の伝熱部材43が用いられているため、サーモスタット41の応答の精度及び確実性が向上する。また、本実施形態において、サーモスタット41の凸部41bを、伝熱部材43の凹形状と同じ形状又は同じ曲率に形成した場合は、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積がより確実に増大するため、サーモスタット41の応答性がより一層向上する。なお、サーモスタット41の凸部41bと伝熱部材43の凹形状は、一致している場合に限らず、異常加熱時における接触面積を大きく確保できれば互いに異なる形状であってもよい。
【0058】
図7及び図8は、本発明の第3実施形態に係る安全装置の構成を示す図である。
【0059】
図7及び図8に示される第3本実施形態に係る安全装置40においては、上述の図5及び図6に示される第2実施形態の構成に加え、ヒータ25の伝熱部材43に対向する面に凹部25aが形成されている。
【0060】
このように、第3実施形態においては、ヒータ25の伝熱部材43に対向する面に凹部25aが形成されているため、ヒータ25の温度が異常により所定温度を超えると、図8に示されるように、伝熱部材43の凹凸が反転することにより、伝熱部材43の凸形状を成す下面43aがヒータ25の凹部25aに対して接触する。これにより、ヒータ25に対する伝熱部材43の接触面積が増大する。さらに、この状態において、サーモスタット41の凸部41bが、上述の第2実施形態と同様に、伝熱部材43の凹形状を成す上面43bに接触する。このため、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積も大きくなる。
【0061】
このように、第3実施形態においては、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積に加え、ヒータ25に対する伝熱部材43の接触面積も増加するため、異常加熱時におけるヒータ25からサーモスタット41への伝熱量がより一層増大する。これにより、サーモスタット41の応答性をより効果的に向上させることができる。また、本実施形態において、ヒータ25の凹部25aを伝熱部材43の凸形状と同じ形状又は同じ曲率に形成した場合は、ヒータ25に対する伝熱部材43の接触面積がより確実に増大するため、サーモスタット41の応答性がより一層向上する。なお、ヒータ25の凹部25aと伝熱部材43の凸形状は、異常加熱時における接触面積を大きく確保できれば、互いに一致しない場合であってもよい。
【0062】
図9及び図10は、本発明の第4実施形態に係る安全装置の構成を示す図である。
【0063】
図9及び図10に示されるように、第4本実施形態に係る安全装置40においては、ヒータ25の伝熱部材43に対向する面に、凸部25bが形成されている。また、本実施形態においては、伝熱部材43の形状が、上述の各実施形態のような曲線状の断面形状ではなく、平面部を有する折れ線状の断面形状となっている。詳しくは、伝熱部材43は、その中央部を含む平面部44と、平面部44の周囲に設けられた傾斜部45と、を有している。平面部44は、サーモスタット41の伝熱部材43に対向する面(平面)と平行に配置され、傾斜部45は、平面部44に対して傾斜するように配置されている。
【0064】
このような構成の第4実施形態においては、ヒータ25の温度が通常の温度状態である場合、図9に示されるように、伝熱部材43の傾斜部45がサーモスタット41側を向くように配置される。すなわち、伝熱部材43は、ヒータ25に向かって凸となるように配置される。また、この状態において、伝熱部材43の平面部44は、ヒータ25の凸部25b(平面)に接触し、伝熱部材43の傾斜部45の先端、言い換えれば、伝熱部材43の上面43bの縁部43b2は、サーモスタット41に対して接触する。
【0065】
これに対して、ヒータ25の温度が所定の温度を超えた場合は、図10に示されように、伝熱部材43の凹凸が反転することにより、伝熱部材43の平面部44がサーモスタット41に対して接触する。これにより、図9に示されるような傾斜部45の先端がサーモスタット41に接触する場合(通常時)に比べて、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積が増大する。なお、この状態において、ヒータ25に対しては、伝熱部材43の変形前と同様に、伝熱部材43の平面部44が接触するため、ヒータ25に対する伝熱部材43の接触面積は基本的に変わらない。
【0066】
このように、第4実施形態においても、伝熱部材43の凹凸が反転することにより、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積を増大させることができるので、異常加熱時におけるヒータ25からサーモスタット41への伝熱量が増大し、ヒータ25への通電を即座に遮断できる。一方、通常時においては、サーモスタット41に対する伝熱部材43の接触面積が小さく、ヒータ25からサーモスタット41への伝熱量も少ないので、サーモスタット41は作動せず、ヒータ25への通電が維持される。
【0067】
また、本実施形態においては、上述の実施形態と同様、金属製の伝熱部材43が用いられているため、サーモスタット41の応答の精度及び確実性が向上する。なお、伝熱部材43は、平面部44を有する形状ではなく、上述の各実施形態に挙げられるような曲線状の断面形状とすることも可能である。その場合、異常加熱時においてサーモスタット41と伝熱部材43との接触面積を大きく確保できるように、サーモスタット41の伝熱部材43に対向する面に、伝熱部材43の凸形状に倣って形成される凹部を設けることが好ましい。
【0068】
図11及び図12は、本発明の第5実施形態に係る安全装置の構成を示す図である。
【0069】
図11及び図12に示されるように、第5実施形態に係る安全装置40においては、ヒータ25の伝熱部材43に対向する面に、凹部25cが形成されている。この凹部25cは、伝熱部材43を全体的に収容可能な深さ及び広さに形成されている。
【0070】
本実施形態において、図11に示される通常時は、伝熱部材43がサーモスタット41側へ凸となるように配置されることにより、サーモスタット41が伝熱部材43によって支持される。このため、サーモスタット41は、ヒータ25に対して非接触状態で保持されている。
【0071】
一方、図12に示される異常加熱時は、伝熱部材43の凹凸が反転することにより、伝熱部材43がヒータ25の凹部25c内に進入する。詳しくは、伝熱部材43の凹凸が反転すると、バネ42の付勢力を受けてサーモスタット41が伝熱部材43をヒータ25側へ押圧することにより、伝熱部材43が弾性変形を伴いながら凹部25c内へ押し込まれる。これにより、サーモスタット41が、伝熱部材43を介することなくヒータ25に対して(直接)接触するようになる。
【0072】
このように、第5実施形態において、ヒータ25の温度が異常により所定温度を超えた場合は、サーモスタット41がヒータ25に対して(直接)接触するため、その接触箇所を介してヒータ25からサーモスタット41へ熱が良好に伝達されるようになる。これにより、異常加熱時においては、サーモスタット41がヒータ25の温度に追従して急速に温度上昇するため、サーモスタット41が応答性良く作動し、ヒータ25への通電が即座に遮断される。一方、通常時においては、伝熱部材43によってサーモスタット41がヒータ25に対して非接触状態で保持されていることにより、ヒータ25からサーモスタット41への伝熱が抑制され、ヒータ25への通電が維持される。
【0073】
また、本実施形態においても、上述の実施形態と同様、金属製の伝熱部材43が用いられているため、サーモスタット41の応答の精度及び確実性が向上する。なお、伝熱部材43の形状は、図11及び図12に示されるような平面部を有する折れ線状の断面形状ではなく、曲線状の断面形状であってもよい。
【0074】
図13及び図14は、本発明の第6実施形態に係る安全装置の構成を示す図である。
【0075】
図13及び図14に示されるように、第6実施形態に係る安全装置40においては、上記のような金属製の伝熱部材は設けられておらず、代わりに、互いに反発し合う磁性体46A,46Bが設けられている。一方の磁性体46Aは、サーモスタット41に設けられ、他方の磁性体46Bは、ヒータ25に設けられている。
【0076】
図13に示されるように、通常の状態においては、サーモスタット41が各磁性体46A,46B間の反発力によってヒータ25に対して離間する方向へ付勢されていることにより、サーモスタット41がヒータ25に対して非接触状態で保持されている。すなわち、磁性体46A,46Bの反発力とバネ42の付勢力は、互いに釣り合った状態でサーモスタット41とヒータ25との間に隙間が生じるように設定されている。この状態においては、ヒータ25からサーモスタット41への伝熱が抑制されるため、サーモスタット41は作動せず、ヒータ25への通電が維持される。
【0077】
一方、ヒータ25の温度が異常により所定温度を超えた場合は、図14に示されるように、磁性体46A,46B間の反発力が消失することにより、サーモスタット41がヒータ25に対して(直接)接触する。詳しくは、ヒータ25が過剰に温度上昇することにより、ヒータ25側の磁性体46Bの温度が、いわゆるキュリー点(磁性が失われる温度)を超えた結果、ヒータ25側の磁性体46Bの磁性が消失する。これに伴って、磁性体46A,46B間の反発力(付勢力)も消失するため、バネ42の付勢力によってサーモスタット41が押されてヒータ25に接触する。これにより、ヒータ25からサーモスタット41への伝熱が良好に行われるようになるため、サーモスタット41がヒータ25の温度に追従して急速に温度上昇し、ヒータ25への通電が即座に遮断される。
【0078】
このように、第5実施形態においては、温度上昇に伴って磁性が失われる磁性体46A,46Bを用いることにより、通常時においては、サーモスタット41をヒータ25に対して直接接触しないように保持しつつ、異常加熱時においては、サーモスタット41をヒータ25に接触させて、サーモスタット41への伝熱量を増大させることができる。これにより、通常時においては、サーモスタット41がヒータ25に直接接触することによるヒータの25の温度低下を防止できると共に、異常加熱時においてはサーモスタット41への伝熱量を増加させて、サーモスタット41を応答性良く作動させることができる。また、このような磁性体46A,46Bを用いた構成は、樹脂製のスペーサを用いた構成に比べて、サーモスタット41の応答の精度及び確実性に優れるため、信頼性が向上する。
【0079】
磁性体46A,46Bとしては、例えば、フェライト系の磁石などを適用可能である。フェライト系の磁石は、キュリー点が450℃程度であり、この温度はヒータの異常判定の基準となる温度領域に含まれるため、磁性体46A,46Bとして適している。なお、各磁性体46A,46Bは、永久磁石のほか、電磁石であってもよい。
【0080】
また、本実施形態においては、サーモスタット41がヒータ25に対して接触するように構成されているが、サーモスタット41がヒータ25に対して接触せず単に接近するだけでもよい。すなわち、ヒータ25の過剰な温度上昇に伴って磁性体46A,46B間の反発力(付勢力)が低下することにより、サーモスタット41がヒータ25に対して接近する場合でも、ヒータ25からサーモスタット41への伝熱が良好に行われるようになるので、サーモスタット41がヒータ25の温度に追従して温度上昇し、ヒータ25への通電を遮断できる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0082】
また、本発明は、図2に示されるような定着ベルトが一対のベルト保持部材によって回転可能に保持されるフリーベルト方式の構成に限らず、定着ベルトが複数のローラなどに掛け回されて張架される構成にも適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 画像形成装置
20 定着装置
21 定着ベルト
22 加圧ローラ(加圧部材)
25 ヒータ(加熱源)
25a 凹部
25b 凸部
25c 凹部
40 安全装置
41 サーモスタット(温度検知部材)
41a 凹部
41b 凸部
43 伝熱部材
46A 磁性体
46B 磁性体
100 定着ニップ
d1 伝熱部材の直径
d2 サーモスタットの直径
t1 伝熱部材の厚さ
t2 ヒータの厚さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【文献】特許第4546233号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14