(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】可変情報印刷物、可変情報印刷物データを作成する方法及び可変情報印刷物データを作成するためのソフトウェア
(51)【国際特許分類】
B42D 25/30 20140101AFI20241128BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B42D25/30
B41M3/14
(21)【出願番号】P 2021100656
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 一矢
(72)【発明者】
【氏名】浅井 義則
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-343900(JP,A)
【文献】特開2019-137042(JP,A)
【文献】特開2001-018563(JP,A)
【文献】特開2021-020327(JP,A)
【文献】特開平08-169170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00-25/485
B41M 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴重価値が等しい製品が複数存在する可変情報印刷物において、
基材の少なくとも一部に、所定の模様を有した可変情報領域と、固有情報を示す固有情報画像部を備え、
前記可変情報領域は、第1の透過背景画像部と背景部を備え、
前記第1の透過背景画像部と前記背景部のどちらか一方に、前記所定の模様を有し、
前記所定の模様を有する、前記第1の透過背景画像部と前記背景部のどちらか一方と、
前記固有情報画像部は、一部が重複し、かつ、毛抜き合わせで配置され、
前記複数存在する可変情報印刷物の各々において、前記所定の模様を有する前記第1の透過背景画像部と前記背景部のどちらか一方は、
i)形状が同じで、前記所定の模様が異なり、又は
ii)形状が異なり、前記所定の模様が同じ、又は
iii)形状及び前記所定の模様が異な
り、
前記形状及び/又は前記所定の模様は、前記固有情報と関連性を有する
ことを特徴とする可変情報印刷物。
【請求項2】
前記可変情報領域は、少なくとも第2の透過背景画像部を有し、
前記第1の透過背景画像部と前記第2の透過背景画像部は、一部が重複した透過重複部を有し、
前記可変情報領域の濃度は、
iv)前記透過重複部>前記第1の透過背景画像部=前記第2の透過背景画像部>前記背景部、又は、
v)前記背景部>前記第1の透過背景画像部=前記第2の透過背景画像部>前記透過重複部であることを特徴とする
請求項1に記載の可変情報印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造及び変造を防止する必要があるセキュリティ印刷物であって、例えば、パスポート、運転免許証等の身分証明書、カード等、個別識別を必要とする、例えば、個人情報等の固有情報を可変情報として含む可変情報印刷物、可変情報印刷物データを作成する方法及び可変情報印刷物データを作成するためのソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ印刷物には、偽造、変造防止効果を与えるために様々な技術が適用されている。近年、カラー複写機の高画質化やカラー製版技術のコンピュータ化に応じて、セキュリティ印刷物の偽造、変造防止策も高度化することで対応してきた。
【0003】
偽造、変造防止対策が施されたセキュリティ印刷物として、個人情報等の固有情報に応じて印刷内容を変える必要がある可変情報印刷物が存在する。
【0004】
図1は、従来の可変情報印刷物(S′)を印刷する工程を示した平面図である。
【0005】
可変情報印刷物(S′)は、偽造及び変造を防止する必要があるセキュリティ印刷物であって、例えば、パスポート、運転免許証等の身分証明書、カード等、貴重価値が等しい製品が複数存在し、個別識別を必要とする個人情報等の固有情報を可変情報として含む印刷物である。
図1(a)に示された従来の可変情報印刷物(S′)は、
図1(b)に示された図形、模様、組織名等の全ての可変情報印刷物(S′)に共通して印刷する共通印刷部(p1′)が形成された印刷物(s′)をあらかじめ作成し、この印刷物(s′)に対して、
図1(c)に示された固有情報の顔写真及び氏名である固有情報部(p2′)を後刷りで印刷することで完成していた。
【0006】
図2は、従来の可変情報印刷物(S′)が変造され易いことを示した斜視図である。
【0007】
このような作成過程を経る可変情報印刷物(S′)は、
図2(a)に示された前刷り段階の印刷物(s′)を保管しておき、
図2(b)に示された固有情報部(p2′-1)である可変情報印刷物(S′)の所有者Aの顔写真及び氏名「印刷局 太郎」、あるいは
図2(c)に示された固有情報部(p2′-1)である可変情報印刷物(S′)の所有者Bの顔写真及び氏名「印刷局 花子」を後刷りで印刷する。
【0008】
従来の偽造防止対策が施された印刷物として、以下の特許文献として記載した特許第4635160号、特許第4336807号、特開2019-137042号、特許第3855013号等が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4635160号
【文献】特許第4336807号
【文献】特開2019-137042号
【文献】特許第3855013号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の可変情報印刷物(S′)では、保管されていた前刷り段階の印刷物(s′)が盗難にあうと容易に偽造されることとなる。また、
図1(a)に示された真正な完成品の可変情報印刷物(S′)に対して、印刷された顔写真及び氏名を、薬品等を用いたり削り取ったりすることで消去し、新たな顔写真及び氏名を不正に印刷することで、容易に変造することも可能であり、従来の可変情報印刷物では、偽造あるいは変造を防止する対策が十分ではなかった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、変造及び偽造を防止する効果が高く、また高いデザイン表現が可能な可変情報印刷物、可変情報印刷物データを作成する方法及び可変情報印刷物データを作成するためのソフトウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の可変情報印刷物は、貴重価値が等しい製品が複数存在する可変情報印刷物において、基材の少なくとも一部に、所定の模様を有した可変情報領域と、固有情報を示す固有情報画像部を備え、可変情報領域は、第1の透過背景画像部と背景部を備え、第1の透過背景画像部と背景部のどちらか一方に、所定の模様を有し、所定の模様を有する、第1の透過背景画像部と背景部のどちらか一方と、固有情報画像部は、一部が重複し、かつ、毛抜き合わせで配置され、複数存在する可変情報印刷物の各々において、所定の模様を有する第1の透過背景画像部と背景部のどちらか一方は、
i)形状が同じで、所定の模様が異なり、又は
ii)形状が異なり、所定の模様が同じ、又は
iii)形状及び所定の模様が異なることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の可変情報印刷物は、形状及び/又は所定の模様は、固有情報と関連性を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の可変情報印刷物における、可変情報領域は、少なくとも第2の透過背景画像部を有し、第1の透過背景画像部と第2の透過背景画像部は、一部が重複した透過重複部を有し、
可変情報領域の濃度は、
iv)透過重複部>第1の透過背景画像部=第2の透過背景画像部>背景部、又は、
v)背景部>第1の透過背景画像部=第2の透過背景画像部>透過重複部であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の可変情報印刷物用のデータを作成する方法は、データ入力部と、演算処理部と、記憶部と、データ出力部とを備える可変情報印刷物データの作成装置を用いて、可変情報印刷物データを作成する方法であって、記憶部には、背景画像データを生成するための情報と、マスクデータを生成するための情報と、固有情報データとが予め記憶されており、データ入力部により、記憶部から背景画像データを生成するための情報と、マスクデータを生成するための情報と、固有情報データとを読み出すステップと、演算処理部により、背景画像データが可変である場合は、読み出された背景画像データを生成するための情報に基づいて背景画像データをその都度生成し、背景画像データが可変でない場合は、背景画像データを生成するための情報に基づいて固定された背景画像データを生成するステップと、演算処理部により、透過領域データを備えるマスクデータを生成するステップであって、マスクデータが可変である場合は、読み出されたマスクデータを生成するための情報に基づいてマスクデータをその都度生成し、マスクデータが可変でない場合は、マスクデータを生成するための情報に基づいて固定されたマスクデータを生成するステップと、演算処理部により、読み出された固有情報データの画像データを生成するステップと、演算処理部により、生成された背景画像データのうちマスクデータの透過領域データを透過した透過背景画像データと、固有情報データの画像データとを基材上に形成するための可変情報印刷物データを作成するステップと、を備え、マスクデータ及び背景画像データのうち少なくともいずれか一方が可変であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の可変情報印刷物用のデータを作成する方法において、演算処理部は、マスクデータ、あるいはマスクデータ及び背景画像データを可変である固有情報データに基づいて生成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の可変情報印刷物用のデータを作成する方法において、透過領域データは、背景画像データを、階調性を有することなく均一の透過度で透過領域データを透過させ、又は背景画像データを、階調性を有するように透過領域データを透過させることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明の可変情報印刷物用のデータを作成するためのソフトウェアにおいて、ソフトウェアはコンピュータに、予め記憶された背景画像データを生成するための情報と、マスクデータを生成するための情報と、固有情報データとを読み出させるステップと、背景画像データが可変である場合は、読み出された背景画像データを生成するため情報に基づいて背景画像データをその都度生成させ、背景画像データが可変でない場合は、背景画像データを生成するための情報に基づいて固定された背景画像データを生成させるステップと、透過領域データを備えるマスクデータを生成させ、マスクデータが可変である場合は、読み出されたマスクデータを生成するための情報に基づいてマスクデータをその都度生成させ、マスクデータが可変でない場合は、マスクデータを生成するための情報に基づいて固定されたマスクデータを生成させるステップと、読み出された固有情報データの画像データを生成させるステップと、生成された背景画像データのうちマスクデータの透過領域データを透過した透過背景画像データと、固有情報データの画像データとを基材上に形成するための可変情報印刷物データを作成するステップと、を備える方法を実行させ、マスクデータ及び背景画像データのうち少なくともいずれか一方が可変であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の可変情報印刷物は、所定の模様を有する可変情報領域を、透過背景画像部(本発明の第1の透過背景画像部と第2の透過背景画像部に該当)と背景部に区分けして配置し、さらに、可変情報領域と固有情報画像部と重複して配置した後、複数存在する可変情報印刷物において、互いに所定の模様を異ならせることで、本発明の可変情報印刷物を、異なる所有者の可変情報印刷物として改ざんしようとした場合、所定の模様が透過背景画像部の形状でのため、別の形状に変更した場合、元々の形状以外の箇所には所定の模様が存在してないので、新たに所定の模様を作成するという手間が掛かってしまうため、容易に改ざんをすることができず、変造及び偽造を防止する効果が高い。
【0020】
また、本発明の可変情報印刷物データを作成する方法によれば、可変情報領域と固有情報画像部と重複して配置するが、固有情報画像部と可変情報領域は、従来の印刷物のように、先に可変情報領域を印刷して、後から可変情報領域の上に固有情報画像部を印刷(重ね刷り)して形成するのではなく、マスクデータと所定の模様の基データとなる背景画像データを用いて作成することで、一度刷りで本発明の印刷物は作成可能となる。よって、固有情報画像部の下には所定の模様が存在してないので、新たに所定の模様を作成するという手間が掛かってしまうため、変造を断念することになり変造及び偽造を防止する効果が高い。
【0021】
また、本発明の可変情報印刷物データを作成するためのソフトウェアによれば、所定の模様の基データとなる背景画像データや、マスクデータが可変である場合、予め読み出された情報に基づきそれぞれを都度生成させるステップを有する。よって、氏名や顔画像などを単に印字のみする際に、それらの氏名データや顔画像データを可変していた従来技術とは異なり、背景画像データやマスクデータを可変とすることで、新たに所定の模様やマスクデータの基データを作成するという手間が掛かってしまうため、変造を断念することになり変造及び偽造を防止する効果を向上させることが可能である。
【0022】
さらに、本発明の可変情報印刷物データを作成する方法及びソフトウェアによれば、ユーザーが予め記憶させた、背景画像データを生成するための情報、マスクデータを生成するための情報及び固有情報データを用いて、適宜1枚1枚の印刷部に対して、各データを可変にするか否かを設定してデータを作成できるため、変造及び偽造を防止する効果だけではなく、高いデザイン表現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来の可変情報印刷物を印刷する際の工程を示した平面図。
【
図2】従来の可変情報印刷物が変造され易いことを示した斜視図。
【
図3】本発明の第1の実施の形態による可変情報印刷物を示した平面図。
【
図4】本発明の第1の実施の形態による他の構成の可変情報印刷物を示した平面図。
【
図5】本発明の第2の実施の形態による可変情報印刷物を示した平面図。
【
図6】本発明の第3の実施の形態による可変情報印刷物を示した平面図。
【
図7】本発明の第4の実施の形態による可変情報印刷物を示した平面図。
【
図8】本発明の第4の実施の形態による他の構成の可変情報印刷物を示した平面図。
【
図9】透過背景画像部と所定の模様において、固定の場合と可変の場合を対比して示した表。
【
図10】本発明の可変情報印刷物を作成する可変情報印刷物データに用いる透過背景画像データと、透過背景画像データを作成するために用いるデータ階層(レイヤー)構造である第1階層と第2階層との関係を示した説明図
【
図11】本発明の可変情報印刷物を作成する可変情報印刷物データに用いる透過背景画像データと、透過背景画像データを作成するために用いるデータ階層(レイヤー)構造である第1階層(背景画像データ(D2))と第2階層(マスクデータ(D3))との関係を示した説明図。
【
図12】
図10に示されたマスクデータが反転された場合における第1階層(背景画像データ)と第2階層(マスクデータ)との関係を示した説明図。
【
図13】本発明の第4の実施の形態に示した可変情報印刷物における背景画像データと2層のマスクデータとの関係を示した説明図。
【
図14】本発明の第4の実施の形態の
図8に示した可変情報印刷物を作成する可変情報印刷物データにおける背景画像データと2層のマスクデータとの関係を示した説明図。
【
図15】本発明の第1~第4の実施の形態による可変情報印刷物を作成する可変情報印刷物データにおける第1階層(背景画像データ)、第2階層(マスクデータ)、第3階層(固有情報データ)の関係を示した説明図。
【
図16】本発明の第1~第4の実施の形態による可変情報印刷物を作成する可変情報印刷物データにおいて、固有情報データに基づいて背景画像データを画像処理ソフトウェアで生成することを示した説明図。
【
図17】本発明の第1~第4の実施の形態による可変情報印刷物を作成する可変情報印刷物データにおいて、固有情報データに基づいてマスクデータを画像処理ソフトウェアで生成することを示した説明図。
【
図18】本発明の第1~第4の実施の形態による可変情報印刷物を作成する可変情報印刷物データにおいて、固有情報データに基づいた顔写真データを選択して固有情報データの画像データを画像処理ソフトウェアで生成することを示した説明図。
【
図19】
図16~
図18において選択した背景画像データ、マスクデータ、固有情報データを用いて基材に形成する可変情報印刷物データを画像処理ソフトウェアで作成することを示した説明図。
【
図20】本発明の可変情報印刷物データを作成する方法を実行するための作成装置の構成を示したブロック図。
【
図21】本発明の可変情報印刷物データを作成する手順を示すフローチャート。
【
図22】可変情報印刷物データを作成する方法において、マスクデータと背景画像データを、それぞれ固定及び/又は可変とした場合における、可変情報印刷物データを示す模式図。
【
図23】可変情報印刷物データを作成する方法において、マスクデータと背景画像データを、それぞれ固定及び/又は可変とした場合における、可変情報印刷物データを示す模式図。
【
図24】本発明の可変情報印刷物データにおけるマスクデータとして用いることが可能なクリッピングマスクデータ、レイヤーマスクデータのそれぞれの一例を示した説明図。
【
図25】本発明の可変情報印刷物データにおける背景画像データとして用いることが可能な画像データの一例を示した説明図。
【
図26】本発明の実施例1の可変情報印刷物を示した平面図。
【
図27】本発明の実施例1で用いたデータベースを示す模式図。
【
図28】
図26に示された可変情報印刷物を作成する可変情報印刷物データにおける固有情報データ、マスクデータ、背景画像データを示した説明図。
【
図29】本発明の実施例1の他の形態の可変情報印刷物を示した平面図。
【
図30】
図29の可変情報印刷物の作成に用いるマスクデータ(D3)を示した説明図。
【
図31】本発明の実施例1の他の形態の可変情報印刷物を示した平面図。
【
図32】
図31の可変情報印刷物の作成に用いるマスクデータ(D3)を示した説明図。
【
図33】本発明の実施例1の他の形態の可変情報印刷物を示した平面図。
【
図34】
図33の可変情報印刷物の作成に用いる背景画像データ(D2)を示した説明図。
【
図35】本発明の実施例1の他の形態の赤外線(IR)を照射すると潜像文字が視認される可変情報印刷物を示した平面図。
【
図36】
図35の可変情報印刷物の作成に用いる背景画像データ(D2)を示した説明図。
【
図37】本発明の実施例2の可変情報印刷物を示した平面図。
【
図38】
図37に示された可変情報印刷物を作成する可変情報印刷物データにおける固有情報データ、マスクデータ、背景画像データを示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施の形態による可変情報印刷物、可変情報印刷物データを作成する方法及び可変情報印刷物データを作成するためのソフトウェアについて、図面を用いて説明する。
【0025】
図3は、本発明の第1の実施の形態による可変情報印刷物(S1-1、S1-2)を示した平面図である。
【0026】
本発明の可変情報印刷物(S1-1)は、偽造及び変造を防止する必要があるセキュリティ印刷物であり、例えば、パスポート、運転免許証等の身分証明書、住基カード、マイナンバーカード、保険証、チケット等、貴重価値が等しい製品が複数存在し、製品の所有者を個別に識別するための個人情報等の固有情報が可変情報として形成された印刷物である。
【0027】
図3(a)に示す可変情報印刷物(S1-1)と、
図3(b)に示す可変情報印刷物(S1-2)は、それぞれが基材(1)の少なくとも一部に、所定の模様を有した可変情報領域(2-1、2-2)と、可変情報印刷物(S1-1、S1-2)の所有者の情報である、氏名、顔写真、コンサート会場の座席番号等の固有情報を示す固有情報画像部(3-1、3-2)を備えている。所定の模様は、
図3(a)では、複数のダイヤ形状から成る階調模様とし、
図3(b)では、砂目模様から成る階調模様としている。
【0028】
図3(a)において固有情報画像部(3-1)は、所有者の顔写真と漢字の氏名で「印刷局 太郎」が基材(1)上に形成されている。また、
図3(b)において固有情報画像部(3-2)は、所有者の顔写真と漢字の氏名で「印刷局 花子」が基材(1)上に形成されている。
【0029】
可変情報領域(2-1、2-2)は、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)と背景部(5-1、5-2)を備える。第1の透過背景画像部(4-1、4-2)は、階調模様である所定の模様を有する。本発明において、所定の模様は、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)と背景部(5-1、5-2)のどちらか一方に有する構成であるが、第1の実施の形態では、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)に有する。
【0030】
所定の模様を有する第1の透過背景画像部(4-1、4-2)と固有情報画像部(3-1、3-2)は、一部が重複し、かつ、毛抜き合わせで配置される。
図3では、固有情報画像部(3-1、3-2)である所有者の氏名と、所定の模様を有する鳳凰の形状である第1の透過背景画像部(4-1、4-2)の一部が重複して配置される。なお、所定の模様が背景部(5-1、5-2)に有する構成の場合、背景部(5-1、5-2)と固有情報画像部(3-1、3-2)は、一部が重複して配置される。
【0031】
毛抜き合わせとは、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)と固有情報画像部(3-1、3-2)が互いに重なり合わないよう嵌め合わせて配置されたことである。本発明における、所定の模様を有する第1の透過背景画像部(4-1、4-2)と固有情報画像部(3-1、3-2)において、「一部が重複し、かつ、毛抜き合わせで配置される」とは、
図3(a)に示すように、固有情報画像部(3-1)である「印刷局 太郎」と、第1の透過背景画像部(4-1)である所定の模様を有する鳳凰が、領域としては一部が重複している状態をいう。具体的には、固有情報画像部(3-1)である「印刷局 太郎」のうち「太郎」という文字のみ、一見、第1の透過背景画像部(4-1)である鳳凰の形状の上に、重ね刷りにより印刷したように視認される。しかし、実際には、固有情報画像部(3-1)の一部である「太郎」の文字の下には所定の模様を有する鳳凰が存在せずに、毛抜き合わせで配置されている。
【0032】
本構成とすることで、仮に可変情報印刷物(S1)が盗難にあった場合、印刷された顔写真や氏名である固有情報画像部(3-1、3-2)を、薬品等を用いたり削り取ったりすることで消去し、新たな固有情報画像部(3-1、3-2)を不正に印刷しようとした場合、固有情報画像部(3-1、3-2)とともに第1の透過背景画像部(4-1、4-2)も消去してしまい、容易に変造することが不可能となり、従来の可変情報印刷物よりも、偽造あるいは変造を防止する対策が十分となる。
【0033】
なお、固有情報画像部(3-1、3-2)は、周囲に輪郭を有していても良い。例えば、
図3(a)及び
図3(b)に示す固有情報画像部(3-1、3-2)は、周囲に第1の透過背景画像部(4-1、4-2)を有さない領域を輪郭として形成されている。具体的には、
図3(a)の固有情報画像部(3-1)の一部である「太郎」の文字の周囲と、
図3(b)の固有情報画像部(3-2)の一部である「花子」の文字の周囲には、印刷を有さない基材(1)が露出した領域が輪郭として形成されている。なお、輪郭は基材(1)を露出しても良いし、インキで着色しても良い。固有情報画像部(3-1、3-2)が輪郭を有する場合、輪郭も含めた領域を固有情報画像部(3-1、3-2)とする。よって、固有情報画像部(3-1、3-2)の輪郭と、周囲に第1の透過背景画像部(4-1、4-2)が毛抜き合わせで配置される。
【0034】
図3(a)に示す可変情報印刷物(S1-1)と、
図3(b)に示す可変情報印刷物(S1-2)とを対比して明らかなように、複数存在する可変情報印刷物(S1-1、S1-2)において、
図3(a)に示す第1の透過背景画像部(4-1)と、
図3(b)に示す第1の透過背景画像部(4-2)は、階調模様である所定の模様が異なるが、鳳凰の形状は同一形状である。
【0035】
なお、所定の模様は階調模様に限定されず、いかなるものであってもよく、また、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)の形状は鳳凰の形状には限定されず、所定の模様を視認する際に必要な面積を有するものであればいかなものであってもよい。
【0036】
以下、本発明においては、総称して説明する場合には、可変情報印刷物(S1)、可変情報領域(2)、固有情報画像部(3)、第1の透過背景画像部(4)、背景部(5)とする。
【0037】
図4は、本発明の第1の実施の形態による他の構成の可変情報印刷物(S1-3、S1-4)を示した平面図である。
【0038】
図3において、可変情報領域(2-1、2-2)は、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)に、階調模様である所定の模様を有する構成としたが、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、可変情報印刷物(S1-3、S1-4)における可変情報領域(2-1、2-2)は、背景部(5-1、5-2)に、階調模様である所定の模様を有する構成としても良い。
【0039】
以上のように、第1の実施の形態による可変情報印刷物(S1)は、複数存在する可変情報印刷物(S1-1、S1-2、S1-3、S1-4)において、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)は、形状が同じで、所定の模様が異なる。
【0040】
図5は、本発明の第2の実施の形態による可変情報印刷物(S2-1、S2-2)の構成を示した平面図である。
【0041】
図5(a)に示す可変情報印刷物(S2-1)と、
図5(b)に示す可変情報印刷物(S2-2)は、それぞれが基材(1)の少なくとも一部に、所定の模様を有した可変情報領域(2-1、2-2)と、固有情報画像部(3-1、3-2)を備えている。なお、第2の実施の形態では、可変情報領域(2-1、2-2)と、固有情報画像部(3-1、3-2)は、少なくとも一部が同じ領域に備えているが、基材(1)に備えていれば、本発明において形成する領域に限定はない。
【0042】
第2の実施の形態は、
図5(a)に示す可変情報印刷物(S2-1)と、
図5(b)に示す可変情報印刷物(S2-2)とを対比して明らかなように、複数存在する可変情報印刷物(S2-1、S2-2)において、
図5(a)に示す第1の透過背景画像部(4-1)と、
図5(b)に示す第2の透過背景画像部(4-2)は、線画模様である所定の模様が同じであるが、形状が異なる。
【0043】
例えば、
図5(a)の第1の透過背景画像部(4-1)は、可変情報印刷物(S2-1)の所有者を示す固有情報である「印刷局 太郎」の名前のローマ字表記である「TAROU」を示す文字形状であり、
図5(b)の第1の透過背景画像部(4-2)は、可変情報印刷物(S2-2)の所有者を示す固有情報である「印刷局 花子」の名前のローマ字表記である「HANAKO」を示す文字形状である。
【0044】
なお、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)の形状は、文字形状には限定されず、所定の模様を視認する際に必要な面積を有するものであればいかなものであってもよいが、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)の形状及び/又は所定の模様は、固有情報と関連性を有することが好ましい。
【0045】
所有者を示す固有情報画像部(3-1、3-2)である「印刷局 太郎」や「印刷局 花子」と、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)の形状である所有者の名前のローマ字表記である「TAROU」や「HANAKO」に関連性を有することで、偽造及び変造を容易に作成させないためと、一見にして真偽判別が可能であるというメリットがある。例えば、
図5(a)に示す可変情報印刷物(S2-1)の固有情報画像部(3-1)である「印刷局 太郎」を「印刷局 花子」に変更できたとしても、さらに、第1の透過背景画像部(4-1)の形状である「TAROU」を、
図5(b)に示す「HANAKO」の形状に変更するという二重の手間が必要になり、変造犯は、時間と費用を費やすため、変造を断念することになる。
【0046】
また、
図5(a)においては、第1の透過背景画像部(4-1)は、所定の模様が「TAROU」の形状で切り取られ、
図5(b)においては、第1の透過背景画像部(4-2)は、所定の模様が「HANAKO」の形状で切り取られている。そのため、これを別の形状に変更した場合、元々の形状以外の箇所には所定の模様が存在してないので、新たに所定の模様を作成するという手間が掛かってしまうため、変造を断念することになる。加えて、
図5(a)に示すように固有情報画像部(3-1)である「印刷局 太郎」と、第1の透過背景画像部(4-1)である「TAROU」を形成する領域を重ねた場合、固有情報画像部(3-1)である「印刷局 太郎」の下部は所定の模様が存在してないので、新たに所定の模様を作成するという手間が掛かってしまうため、変造を断念することになる。
【0047】
すなわち、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)の形状及び/又は所定の模様は、固有情報と関連性を有することで、偽造犯の作成する手間を増やすことにより、偽造及び変造を容易に作成させないことと、一見にして真偽判別が可能(「印刷局 太郎」と「TAROU」を簡単に照合できる)となる。
【0048】
なお、
図5において、可変情報領域(2-1、2-2)は、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)に、階調模様である所定の模様を有する構成としたが、背景部(5-1、5-2)は、階調模様である所定の模様を有する構成としても良い。
【0049】
すなわち、第2の実施の形態による可変情報印刷物(S2-1、S2-2)は、複数存在する可変情報印刷物(S2-1、S2-2)において、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)は、形状が異なり、所定の模様が同じである。
【0050】
図6は、本発明の第3の実施の形態による可変情報印刷物(S3-1、S3-2)の構成を示した平面図である。
【0051】
図6(a)に示す可変情報印刷物(S3-1)と、
図6(b)に示す可変情報印刷物(S3-2)は、それぞれが基材(1)の少なくとも一部に、所定の模様を有した可変情報領域(2-1、2-2)と、固有情報画像部(3-1、3-2)を備えている。
【0052】
第3の実施の形態は、
図6(a)に示す可変情報印刷物(S3-1)と、
図6(b)に示す可変情報印刷物(S3-2)とを対比して明らかなように、複数存在する可変情報印刷物(S3-1、S3-2)において、
図6(a)に示す第1の透過背景画像部(4-1)と、
図6(b)に示す第1の透過背景画像部(4-2)は、形状及び所定の模様が異なる。
【0053】
例えば、
図6(a)の第1の透過背景画像部(4-1)は、可変情報印刷物(S3-1)の所有者を示す固有情報である「印刷局 太郎」の名前のローマ字表記である「TAROU」を示す文字形状であり、
図6(b)の第1の透過背景画像部(4-2)は、可変情報印刷物(S3-2)の所有者を示す固有情報である「印刷局 花子」の名前のローマ字表記である「HANAKO」を示す文字形状である。また、
図6(a)の所定の模様は、
図5(a)と同じ、線画模様から成る階調模様とし、
図6(b)では、
図3(b)と同じ、砂目模様から成る階調模様としている。
【0054】
なお、
図6において、可変情報領域(2-1、2-2)は、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)に、階調模様である所定の模様を有する構成としたが、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)に、背景部(5-1、5-2)は、階調模様である所定の模様を有する構成としても良い。
【0055】
このように、第3の実施の形態による可変情報印刷物(S3-1、S3-2)は、複数存在する可変情報印刷物(S3-1、S3-2)において、第1の透過背景画像部(4-1、4-2)は、形状及び所定の模様が異なる。
【0056】
図7は、本発明の第4の実施の形態による可変情報印刷物(S4-1、S4-2)の構成を示した平面図である。
【0057】
図7(a)に示す可変情報印刷物(S4-1)は、基材(1)の少なくとも一部に、所定の模様を有した可変情報領域(2-1)と、固有情報画像部(図示せず)を備えている。
【0058】
第4の実施の形態は、複数存在する可変情報印刷物(S4-1)において、可変情報領域(2-1)は、第1の透過背景画像部(4-1)と第2の透過背景画像部(6-1)を有している。第1の透過背景画像部(4-1)は三角形状であり、第2の透過背景画像部(6-1)は、楕円形状である。さらに、第1の透過背景画像部(4-1)と第2の透過背景画像部(6-1)は、一部が重複した透過重複部(7-1)を有する。
【0059】
図7(a)における領域(z)の拡大図を
図7(b)に示す。透過重複部(7-1)、第1の透過背景画像部(4-1)及び第2の透過背景画像部(6-1)は、いずれも線画模様である所定の模様を有しており、さらに隣り合う領域同士、例えば、透過重複部(7-1)と第2の透過背景画像部(6-1)は、線画模様が途切れることなく繋がっているが、濃度が異なる。また、透過重複部(7-1)と第1の透過背景画像部(4-1)も、線画模様が途切れることなく繋がっているが、濃度が異なる。
【0060】
透過重複部(7-1)は、第1の透過背景画像部(4-1)と第2の透過背景画像部(6-1)と、領域は重なっているが、印刷物の構成としては、第1の透過背景画像部(4-1)と第2の透過背景画像部(6-1)を重ね刷り(例えば、先に楕円形状の第1の透過背景画像部(4-1)を印刷した後、その上から、三角形状の第2の透過背景画像部(6-1)を印刷する)したものではなく、一度刷りで形成している。加えて、前述のとおり、隣り合う領域同士は、線画模様が途切れることなく繋がっているが、濃度が異なる。
【0061】
よって、真正な完成品の可変情報印刷物(S4-1)に対して、印刷された顔写真及び氏名を消去して新たな顔写真及び氏名を不正に印刷しようとした場合、第1の透過背景画像部(4-1)、第2の透過背景画像部(6-1)、透過重複部(7-1)の形状に加えて、所定の模様、さらには濃度まで再現することは非常に困難であることから、容易に変造することはできず、より偽造抵抗力が向上したセキュリティ印刷物を形成することが可能となる。
【0062】
可変情報領域(2-1)の濃度は、透過重複部(7-1)>第1の透過背景画像部(4-1)=第2の透過背景画像部(6-1)>背景部(5-1)である。この条件を満たす濃度とすることで、肉眼では、透過重複部(7-1)は、第1の透過背景画像部(4-1)と第2の透過背景画像部(6-1)とが重なった領域として視認可能となるが、前述のとおり、重ね刷りで形成しているのではなく、単層(一度刷り)で形成している。よって、第1の透過背景画像部(4-1)と第2の透過背景画像部(6-1)を重複させることにより作成方法を複雑化させ、偽造及び変造を容易に作成させないことが可能となる。
【0063】
第1の透過背景画像部(4-1)と第2の透過背景画像部(6-1)を使用する場合、重複させることが好ましい。第1の透過背景画像部(4-1)と第2の透過背景画像部(6-1)を重複させることにより、新たな形状の透過重複部(7-1)ができ、意匠性(デザイン)が高まる。透過重複部(7-1)と、透過重複部(7-1)とは濃度が異なる第1の透過背景画像部(4-1)及び第2の透過背景画像部(6-1)が隣り合うことで、濃度の異なるものが複数あることにより、意匠性(デザイン)のバリエーションが増えるというメリットがある。加えて、複数の領域が重複し、濃度の異なる領域を隣り合わせて形成することにより、構成を複雑化させ、意匠性(デザイン)を高めさせている。また、偽造及び変造を容易に作成させないというメリットもある。
【0064】
図7においては、2つの透過背景画像部(4-1、6-1)を有しているが、n以上(nは、3以上の整数)有しても良い。透過背景画像部(4)が3つ以上の場合として、例えば、4つの場合、透過重複部(7-2)において、透過背景画像部(4)が2つ重複した領域(第1の透過背景画像部と第2の透過背景画像部の一部が重複した透過重複部)、透過背景画像部(4)が3つ重複した領域(第1の透過背景画像部、第2の透過背景画像部及び第3の透過背景画像部の一部が重複した透過重複部)、又は透過背景画像部(4)が4つ重複した領域(第1の透過背景画像部、第2の透過背景画像部、第3の透過背景画像部及び第4の透過背景画像部の一部が重複した透過重複部)と、透過重複部(7-2)を形成する透過背景画像部(4)の数が異なる場合がある。その場合、透過重複部(7-2)の濃度は、形成する透過背景画像部(4)の数が多いほど、高くなる。
【0065】
図8は、本発明の第4の実施の形態による他の構成の可変情報印刷物(S4-2)を示した平面図である。
【0066】
可変情報印刷物(S4-2)において、可変情報領域(2-2)は、第1の透過背景画像部(4-2)と第2の透過背景画像部(6-2)を有している。第1の透過背景画像部(4-2)は三角形状であり、第2の透過背景画像部(6-2)は、楕円形状である。さらに、第1の透過背景画像部(4-2)と第2の透過背景画像部(6-2)は、一部が重複した透過重複部(7-2)を有する。
【0067】
図8においても、
図7と同様に、透過重複部(7-2)、第1の透過背景画像部(4-2)及び第2の透過背景画像部(6-2)は、いずれも線画模様である所定の模様を有しており、さらに隣り合う領域同士、例えば、透過重複部(7-2)と第2の透過背景画像部(6-2)は、線画模様が途切れることなく繋がっているが、濃度が異なる。
【0068】
可変情報領域(2-2)の濃度は、背景部(5-2)>第1の透過背景画像部(4-2)=第2の透過背景画像部(6-2)>透過重複部(7-2)である。
【0069】
図8は、2つの透過背景画像部(4-2、6-2)を有しているが、
図7と同様に、n以上(nは、3以上の整数)有しても良い。透過背景画像部(4)が3つ以上の場合として、例えば、4つの場合、透過重複部(7-2)において、透過背景画像部(4)が2つ重複した領域(第1の透過背景画像部と第2の透過背景画像部の一部が重複した透過重複部)、透過背景画像部(4)が3つ重複した領域(第1の透過背景画像部、第2の透過背景画像部及び第3の透過背景画像部の一部が重複した透過重複部)と、又は透過背景画像部(4)が4つ重複した領域(第1の透過背景画像部、第2の透過背景画像部、第3の透過背景画像部及び第4の透過背景画像部の一部が重複した透過重複部)と、透過重複部(7-2)を形成する透過背景画像部(4)の数が異なる場合がある。その場合、透過重複部(7-2)の濃度は、
図7とは異なり、
図8においては、形成する透過背景画像部(4)の数が多いほど、低くなる。
【0070】
即ち、第4の実施の形態による可変情報印刷物(S4-1、S4-2)は、複数存在する可変情報印刷物(S4-1、S4-2)において、複数の透過背景画像部(4-1、4-2、6-1、6-2)と、一部が重複した透過重複部(7-1、7-2)を有する。
【0071】
図9は、透過背景画像部(4)と所定の模様において、透過背景画像部(4)の形状及び/又は所定の模様が固定の場合と可変(異なる)の場合を対比して示した表である。
【0072】
透過背景画像部(4)及び所定の模様がともに固定の場合は、従来の可変情報印刷物(S′)に相当する。
【0073】
所定の模様が可変であり透過背景画像部(4)が固定の場合、本発明における第1の実施の形態に対応し、所定の模様が固定であり透過背景画像部(4)が可変の場合、本発明における第2の実施の形態に対応し、所定の模様及び透過背景画像部(4)がともに可変の場合、本発明における第3の実施の形態に対応する。
【0074】
ここで、透過背景画像部(4)又は所定の模様、あるいは透過背景画像部(4)及び所定の模様を可変とする場合、固有情報として、例えば、顔等の人物の写真や肖像画、個人名、ブランド名、薬剤の名称等に基づいて選択したものとしてもよい。しかしながら、必ずしも固有情報とリンクして選択することには限定されず、固有情報と異なる他の情報に基づいて選択してもよく、あるいはいずれの情報にも基づかずに任意に可変としてもよい。例えば、乱数を発生して乱数に応じた可変情報としてもよいが、透過背景画像部(4)又は背景部(5)のどちらか一方に所定の模様を有する必要がある。
【0075】
なお、所定の模様は、例えば、赤外線(IR)を照射したり、レンチキュラーレンズを載置したりすると通常光のもとで、肉眼では不可視であった文字、図形、模様等が視認される潜像画像を含んでいても良い。このような潜像画像は、固定である場合には限定されず、個人情報等の固有情報に応じて可変であってもよい。
【0076】
可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)に用いる基材(1)は、上質紙、コート紙、アート紙等の紙葉類や、フィルム、プラスチック、カード用のプラスチック等の複合素材等、印刷可能な材料であれば特に限定はない。
【0077】
また、可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)を作成する印刷方法は、オフセット印刷、グラビア印刷、凹版印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷及びデジタル印刷等公知の印刷方法を用いることが可能であるが、1枚ごとに固有情報画像部(3)や透過背景画像部(4)を異ならせる場合は、版面を用いない、レーザープリンターやインクジェットプリンタを用いるデジタル印刷が好ましい。
【0078】
可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)を基材(1)上に形成するインキは、前述した印刷方法に対応したインキ及びトナーを用いる。
【0079】
次に、本発明の可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)を作成する方法について説明する。
【0080】
図10は、本発明の可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)を作成する可変情報印刷物データ(D1)に用いる透過背景画像データ(D4)と、透過背景画像データ(D4)を作成するために用いる、データ階層(レイヤー)構造である第1階層(背景画像データ(D2))と第2階層(マスクデータ(D3))との関係を示した説明図である。
【0081】
可変情報印刷物データ(D1)に用いる所定の模様の基データである背景画像データ(D2)と、透過背景画像部(4)の基データであるマスクデータ(D3)との関係について説明する。説明上、理解し易いように層構成として説明するが、あくまでもデータによるものであり、実際の出力物である可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)は層構成を有しているものではなく、単層構成である。
【0082】
図10(c)並びにその一部を拡大した
図10(d)に示すように、
図10(c)に示す第1階層に背景画像データ(D2)が位置し、その上層の第2階層に、
図10(b)に示すマスクデータ(D3)の一例として、クリッピングマスクデータ(D3-1)が位置する。
【0083】
なお、マスクデータ(D3)は、背景画像データ(D2)を透過させる透過領域データ(DT)を限定するものであり、背景画像データ(D2)と異なる階層に位置し、例えば、下層の背景画像データ(D2)に対して上層にマスクデータ(D3)が位置し、あるいは上層の背景画像データ(D2)に対して下層にマスクデータ(D3)が位置し、図内に黒色で示す透過領域データ(DT)において背景画像データ(D2)を透過させ、図内に白色で示す透過領域データ(DT)以外では背景画像データ(D2)を隠蔽する目的で用いられる。
【0084】
また、マスクデータ(D3)には、クリッピングマスクデータ(D3-1)と、後述するレイヤーマスクデータ(D3-2)の2種類があるが、本発明においては、総称して説明する場合には「マスクデータ(D3)」とし、個々に説明する場合には「クリッピングマスクデータ(D3-1)」、「レイヤーマスクデータ(D3-2)」とする。
【0085】
このように、背景画像データ(D2)の上層にマスクデータ(D3)を重ねて、マスクデータ(D3)の透過領域データ(DT)を透過した透過背景画像データ(D4)を用いて作成した可変情報印刷物データ(D1)を基材(1)の表面上に出力することで、可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)が得られる。なお、クリッピングマスクデータ(D3-1)は、透過領域データ(DT)から透過する背景画像データ(D2)を均一の透過度で透過させるものであって階調性を有しておらず、例えば、透過度が100%、言い換えれば、背景画像データ(D2)を遮蔽する遮蔽強度が0%であるが、本発明においては以下透過度として説明する。
【0086】
図11は、本発明の可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)を作成する可変情報印刷物データ(D1)に用いる透過背景画像データ(D4)と、透過背景画像データ(D4)を作成するために用いる、データ階層(レイヤー)構造である、第1階層(背景画像データ(D2))と第2階層(マスクデータ(D3))との関係を示した説明図であり、第2階層は、レイヤーマスクデータ(D3-2)の関係を示した説明である。
【0087】
図11(c)に示すように、第1階層に背景画像データ(D2)が位置し、その上層の第2階層に、
図11(b)に示す階調を有するレイヤーマスクデータ(D3-2)が位置する。背景画像データ(D2)の上層にマスクデータ(D3)を重ねて、マスクデータ(D3)の透過領域データ(DT)を透過した透過背景画像データ(D4)を用いて作成した可変情報印刷物データ(D1)を、基材(1)の表面上に出力することで、可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)が得られる。
【0088】
なお、
図11(a)に示す透過背景画像データ(D4)を用いて作成した可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)では、マスクデータ(D3)の階調に応じた濃度を有する透過背景画像部(4)が形成される。なお、レイヤーマスクデータ(D3-2)は、クリッピングマスクデータ(D3-1)と異なり、透過領域データ(DT)から背景画像データ(D2)を透過させる透過度が領域に応じて異なることで、階調性を有する。
【0089】
図12は、
図10に示すマスクデータ(D3)がネガポジ反転した場合における、データ階層構造である第1階層(背景画像データ(D2))と第2階層(マスクデータ(D3))との関係を示した説明図である。
【0090】
図12(c)に示されたように、第1階層に背景画像データ(D2)が位置し、その上層の第2階層に、
図12(b)に示すクリッピングマスクデータ(D3-1)が位置し、背景画像データ(D2)の上層にマスクデータ(D3)を重ねて、図内に黒色で示すマスクデータ(D3)の透過領域データ(DT)を透過した透過背景画像データ(D4)を生成し、透過背景画像データ(D4)を用いて可変情報印刷物データ(D1)を作成した後、基材(1)の表面上に形成することで、可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)が得られる。
【0091】
この可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)では、
図10(b)に示したマスクデータ(D3)と異なり、マスクデータ(D3)の透過領域データ(DT)がネガポジ反転した関係にある。
【0092】
図13は、
図7に示した第4の実施の形態の可変情報印刷物(S4-1)を作成する可変情報印刷物データ(D1)に用いる透過背景画像データ(D4)と、透過背景画像データ(D4)を作成するために用いるデータ階層(レイヤー)構造である背景画像データ(D2)と2層のマスクデータ(D3-2a、D3-2b)との関係を示した説明図である。
【0093】
図13(d)に示すように、第1階層として背景画像データ(D2)が配置され、
図13(b)、(c)に示すように、第2階層において2層のマスクデータ(D3-2a、D3-2b)が上層と下層に配置されている。2層のマスクデータ(D3-2a、D3-2b)はいずれも階調を有するレイヤーマスクデータ(D3-2)である。
【0094】
第2階層における2層のマスクデータ(D3-2a、D3-2b)のうち、
図13(c)に示す下層のマスクデータ(D3-2a)における楕円形状の透過領域データ(DTa)を透過した第1の透過背景画像データと、
図13(b)に示された上層のマスクにおける三角形状の透過領域データ(DTb)を透過した第2の透過背景画像データとが合成された画像データである、
図13(a)に示す透過背景画像データ(D4)を生成し、透過背景画像データ(D4)を用いて可変情報印刷物データ(D1)を作成した後、基材(1)の表面上に出力することで、可変情報印刷物(S4-1)が得られる。
【0095】
この場合、マスクデータ(D3-2a、D3-2b)は、レイヤーマスクデータである。よって、生成された透過背景画像データ(D4)において、下層のマスクデータ(D3-2a)を透過した第1の透過背景画像データと、上層のマスクデータ(D3-2b)を透過した第2の透過背景画像データが重複した透過重複部データ(D6)が、重複していない領域よりも濃度が高くなる。なお、2層以上のマスクデータ(D3)を用いて少なくとも2層のマスクデータ(D3)が重複した透過重複部データ(D6)を有する場合、少なくともいずれか一方のマスクデータ(D3)は透過度が透過領域データの全域で100%ではなく、少なくとも一部に透過度が100%より低い領域データを有する。
【0096】
図14は、
図8に示した第4の実施の形態の可変情報印刷物(S4-2)を作成する可変情報印刷物データ(D1)に用いる透過背景画像データ(D4)、データ階層構造である、背景画像データ(D2)と2層のマスクデータ(D3-1a、D3-1b)との関係を示した説明図である。
【0097】
図14(d)に示すように、第1階層として背景画像データ(D2)が配置され、
図14(b)及び
図14(c)に示すように、第2階層において2層のマスクデータ(D3-1a、D3-1b)が上層と下層に配置されており、2層のマスクデータ(D3)は、いずれも階調を有するレイヤーマスクデータ(D3-1a、D3-1b)であるが、
図13に示す可変情報印刷物(S4)におけるマスクデータ(D3-2a、D3-2b)と異なり、マスクデータ(D3)の透過領域データ(DT)が
図13とネガポジ反転した関係にある。
【0098】
第2階層における2層のマスクデータ(D3-1a、D3-1b)のうち、
図14(b)に示された下層のマスクデータ(D3-1a)における楕円形状の透過領域データ(DTa)を透過した第1の透過背景画像データと、
図14(c)に示された上層のマスクデータ(D3-1b)における三角形状の透過領域データ(DTb)を透過した第2の透過背景画像データとが合成された画像データである透過背景画像データ(D4)を生成し、透過背景画像データ(D4)を用いて可変情報印刷物データ(D1)を作成した後、基材(1)の表面に出力することで、可変情報印刷物(S4-2)が得られる。
【0099】
図14は、
図13におけるマスクデータ(D3)をネガポジ反転したレイヤーマスクデータ(D3-1a、D3-1b)であるため、下層のマスクデータ(D3-1a)を透過した第1の透過背景画像データを基に、基材(1)上に形成した第1の透過背景画像部(4-2)と、上層のマスクデータ(D3-1a)を透過した第2の透過背景画像データを基に、基材(1)上に形成した第2の透過背景画像部(6-2)とが重複した領域である透過重複部(7-2)の方が、重複していない領域である背景部(5-2)よりも濃度が低くなる。なお、2層以上のマスクデータ(D3)を用いて、少なくとも2層のマスクデータ(D3)が重複する領域を有する場合、少なくともいずれか一方のマスクデータ(D3)は透過度が透過領域データの全域で100%ではなく、少なくとも一部に透過度が100%より低い領域データを有する。
【0100】
図15~
図19を参照して、本発明の可変情報印刷物データ(D1)を作成する一例として、第3の実施の形態、すなわち、複数存在する可変情報印刷物(S3)において、第1の透過背景画像部(4)の形状及び所定の模様がいずれも異なる可変情報印刷物データ(D1)を作成する方法について説明する。
【0101】
図15は、第3の実施の形態による可変情報印刷物(S3)を作成する可変情報印刷物データ(D1)における、データ階層構造である、第1階層(背景画像データ(D2))、第2階層(マスクデータ(D3))、第3階層(固有情報データ(D5))の関係を示した説明図である。
【0102】
図15(a)に示すように、第3の実施の形態による可変情報印刷物(S3)を作成する可変情報印刷物データ(D1)は、
図15(d)に示す第1階層に背景画像データ(D2)が配置され、
図15(c)に示す第2階層にマスクデータ(D3)が配置され、
図15(b)に示す第3階層に固有情報データ(D5)が配置されて、
図15(a)に示された可変情報印刷物データ(D1)を基材(1)上に形成することで作成される。
【0103】
図16は、第1から第4の実施の形態による可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)を作成する可変情報印刷物データ(D1)において、固有情報データ(D5)に基づいて背景画像データ(D2)をソフトウェアで生成することを示した説明図である。
【0104】
図16(a)は、可変情報印刷物データ(D1)の作成に必要な情報となるデータを格納したデータベース(DB)を示す模式図である。データベース(DB)は、固有情報データ(D5)として「印刷局 太郎、男」、「印刷局 花子、女」、「印刷局 次郎、男」、「印刷局 良子、女」、「印刷局 三郎、男」、「印刷局 信子、女」が登録されている。
【0105】
図16(b)に示す第1階層の背景画像データ(D2)は、データベース(DB)に格納した固有情報データ(D5)としての個人情報データとリンクして可変する可変情報データであって、「男」の場合には基模様Aデータ、「女」の場合には基模様Bデータが用いられる。
【0106】
第2階層のマスクデータ(D3)も背景画像データ(D2)と同様に、データベース(DB)に格納した固有情報データ(D5)としての個人情報データとリンクして可変する可変情報データであって、「TAROU」、「HANAKO」、「JIROU」、「YOSHIKO」、「SABUROU」、「NOBUKO」の文字データが用いられる。
【0107】
第3階層の固有情報データ(D5)として、「印刷局 太郎」という文字データ及び「顔写真A」という写真データ、「印刷局 花子」という文字データ及び「顔写真B」という写真データ、「印刷局 次郎」という文字データ及び「顔写真C」という写真データ、「印刷局 良子」という文字データ及び「顔写真D」という写真データ、「印刷局 三郎」という文字データ及び「顔写真E」という写真データ、「印刷局 信子」という文字データ及び「顔写真F」という写真データが用いられる。
【0108】
まず、第1階層の背景画像データ(D2)として、
図16(a)に示すデータベース(DB)に格納した固有情報データ(D5)としての「印刷局 太郎、男」、「印刷局 花子、女」、「印刷局 次郎、男」、「印刷局 良子、女」、「印刷局 三郎、男」、「印刷局 信子、女」に基づいて、
図16(b)に示す画像処理ソフトウェアにより「印刷局 太郎」は基模様Aデータ、「印刷局 花子」は基模様Bデータ、「印刷局 次郎」は基模様Aデータ、「印刷局 良子」は基模様Bデータ、「印刷局 三郎」は基模様Aデータ、「印刷局 信子」は基模様Bデータが生成され、
図16(c)に示すように、第1階層の背景画像データ(D2)が作成される。
【0109】
なお、画像処理ソフトウェアは、Adobe社製「Adobe Photoshop」、Adobe社製「Adobe Illustrator」等、公知の画像処理ソフトウェアを用いる。
【0110】
図17は、第1から第4の実施の形態による可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)を作成する可変情報印刷物データ(D1)において、固有情報データ(D5)に基づいてマスクデータ(D3)を画像処理ソフトウェアで生成することを示した説明図である。
【0111】
図17に示されたように、第2階層のマスクデータ(D3)として、
図17(a)に示すデータベース(DB)に格納した固有情報データ(D5)としての「印刷局 太郎」、「印刷局 花子」、「印刷局 次郎」、「印刷局 良子」、「印刷局 三郎」、「印刷局 信子」に基づいて、
図17(b)に示す画像処理ソフトウェアにより「印刷局 太郎」は「TAROU」、「印刷局 花子」は「HANAKO」、「印刷局 次郎」は「JIROU」、「印刷局 良子」は「YOSHIKO」、「印刷局 三郎」は「SABUROU」、「印刷局 信子」は「NOBUKO」が生成され、
図17(c)に示すように、第2階層のマスクデータ(D3)が作成される。
【0112】
図18は、第1から第4の実施の形態による可変情報印刷物(S1、S2、S3、S4)を作成する可変情報印刷物データ(D1)において、固有情報データ(D5)に基づいた顔写真データを選択して固有情報データ(D5)の画像データを画像処理ソフトウェアで生成することを示した説明図である。
【0113】
図18(a)に示すように、データベース(DB)に格納した第3階層の固有情報データ(D5)としての「印刷局 太郎」、「印刷局 花子」、「印刷局 次郎」、「印刷局 良子」、「印刷局 三郎」、「印刷局 信子」に基づいて、
図18(b)に示す画像処理ソフトウェアにより「印刷局 太郎」は「印刷局 太郎」という文字データ及び「顔写真A」という写真データ、「印刷局 花子」は「印刷局 花子」という文字データ及び「顔写真B」という写真データ、「印刷局 次郎」は「印刷局 次郎」という文字データ及び「顔写真C」という写真データ、「印刷局 良子」は「印刷局 良子」という文字データ及び「顔写真D」という写真データ、「印刷局 三郎」は「印刷局 三郎」という文字データ及び「顔写真E」という写真データ、「印刷局 信子」は「印刷局 信子」という文字データ及び「顔写真F」という写真データが生成され、
図18(c)に示すように第3階層の固有情報データ(D5)が作成される。
【0114】
図19は、
図16~
図18において選択した背景画像データ(D2)、マスクデータ(D3)、固有情報データ(D5)を用いて、基材(1)に形成する可変情報印刷物データ(D1)を画像処理ソフトウェアで作成することを示した説明図である。
【0115】
図19に示すように、画像処理ソフトウェアによりデータベース(DB)を用いて、データ階層構造である第1階層の背景画像データ(D2)、第2階層のマスクデータ(D3)、第3階層の固有情報データ(D5)の画像データがそれぞれ生成され、第1階層、第2階層及び第3階層が統合されて、可変情報印刷物データ(D1)が作成される。第1階層の基模様Aデータ又は基模様Bデータのうち、第2階層のマスクデータ(D3)としての文字の透過領域データを透過したものが透過背景画像データとして生成され、第3階層の固有情報データ(D5)としての文字データ及び顔写真データが生成される。
【0116】
なお、画像処理ソフトウェアで生成した各データを確認するために、公知の画像閲覧ソフトウェア(Adobe社製「Adobe Acrobat DC」)等を併用しても良い。
【0117】
さらに、バリアブル印刷ソフトウェア(FUJIFILM社製「Form Magic 4」)等を併用しても良い。バリアブル印刷ソフトウェアとは、レイアウトデータ(印刷するためのデザイン)を作成し、背景画像データ(D2)に関するデータ(第1階層)、マスクデータ(D3)に関するデータ(第2階層)、固有情報データ(D5)に関するデータ(第3階層)をレイアウトデータにしたがい、統合又はPhotoshop等の画像処理ソフトウェアに指示するソフトウェアであり、また、印刷用データ(PDF等)を作成するソフトウェアでもある。装置では、演算処理部(102)と記憶部(103)、いわゆるパソコンのソフトウェアである。
【0118】
また、画像データのファイル形式は、用いる画像処理ソフトウェアに併せて、PSD(Adobe Photoshop)、EPS(Adobe Photoshop)、AI(Adobe Illustrator)、EPS(Adobe Illustrator)、PDF(Adobe Acrobat DC)、XLSX(Microsoft Excel)、BMP、TIFF、JPEG等を適宜使用する。
【0119】
次に、本発明の可変情報印刷物データ(D1)の作成装置(M)について、図面を参照して説明する。
【0120】
図20は、本発明の可変情報印刷物データ(D1)を作成する方法を実行するための作成装置(M)の構成を示したブロック図である。
【0121】
この装置は、データ入力部(101)、演算処理部(102)、記憶部(103)、データ出力部(104)を備える。
【0122】
データ入力部(101)は、可変情報印刷物データの作成に必要なデータである、第1階層の背景画像データ(D2)、第2階層のマスクデータ(D3)、第3階層の固有情報データ(D5)を記憶部(103)に格納されたデータベースから読み出して入力する。
【0123】
演算処理部(102)は、データ入力部(101)に入力されたデータを用いて、データ階層構造である背景画像データ(D2)、マスクデータ(D3)、固有情報データ(D5)の作成を行い、第1階層、第2階層、第3階層の統合を行って、可変情報印刷物データ(D1)を作成する。
【0124】
記憶部(103)は、あらかじめ作成されたデータベースや、データ入力部(101)に入力された各種データを格納するとともに、演算処理部(102)からの出力を与えられて格納する。
【0125】
データ出力部(104)は、記憶部(103)に記憶されたデータ、あるいは演算処理部(102)から出力された可変情報印刷物データ(D1)を出力する。また、データ出力部104は画像表示部を含み、可変情報印刷物データ(D1)等の画像表示を行う。
【0126】
図21は、本発明の可変情報印刷物データ(D1)を作成する手順を示すフローチャートである。
【0127】
なお、
図21に示すデータを作成する方法は、
図20に示す作成装置を用いて行う。
【0128】
ステップS1として、背景画像データ(D2)を生成するための情報と、マスクデータ(D3)を生成するための情報と、固有情報データ(D5)を生成するための情報を記憶部(103)に格納されているデータベースからデータ入力部(101)が読み込む。情報とは、可変情報印刷物データ(D1)の作成に必要となるデータのことであり、あらかじめデータベース(DB)へ格納(登録)したデータをいう。
【0129】
データ階層構造である第1階層において、ステップS11として、演算処理部(102)が、背景画像データ(D2)が可変であるか否かを判断し、背景画像データ(D2)を生成するための情報に基づいて、背景画像データ(D2)が可変である場合は、ステップS12に移行して、読み出された背景画像データ(D2)を生成するための情報に基づいて背景画像データ(D2)をその都度生成する。以降、このステップS12に移行するごとに可変の背景画像データ(D2)を生成する。
【0130】
背景画像データ(D2)が可変でない場合は、ステップS13へ移行し、背景画像データ(D2)を生成するための情報に基づいて、データベースに固定情報データとして格納されている背景画像データ(D2)を引用し、固定された背景画像データ(D2)を生成する。
【0131】
ステップS12又はS13において生成された背景画像データ(D2)を、ステップS14において演算処理部(102)が第1階層に挿入する。
【0132】
データ階層構造である第2階層において、ステップS21及びS26により、以下のステップS22からステップS25の処理をマスクの数だけ繰り返す。
【0133】
ステップS22において、演算処理部(102)が、マスクデータ(D3)が可変であるか否かを判断し、可変である場合はステップS23に移行して、読み出されたマスクデータ(D3)を生成するための情報に基づいてマスクデータ(D3)をその都度生成する。以降、このステップS23に移行するごとに可変のマスクデータ(D3)を生成する。
【0134】
マスクデータ(D3)が可変でない場合は、ステップS24へ移行し、マスクデータ(D3)を生成するための情報に基づいて、データベースに固定情報データとして格納されているマスクデータ(D3)を引用し、固定されたマスクデータ(D3)を生成する。
【0135】
ステップS23又はS24において生成されたマスクデータ(D3)を、ステップS25において演算処理部(102)が第2階層に挿入する。
【0136】
データ階層構造である第3階層において、ステップS31として演算処理部(102)が固有情報データ(D5)の生成を行う。
【0137】
生成された固有情報データ(D5)を、ステップS32において演算処理部(102)が第3階層に挿入する。
【0138】
ステップS14、S25、S32により、データ階層構造である第1階層、第2階層、第3階層のそれぞれに挿入した背景画像データ(D2)、マスクデータ(D3)、固有情報データ(D5)をステップS41において演算処理部(102)が統合する。
【0139】
ステップS42として、統合したデータを可変情報印刷物データ(D1)として記憶部(103)が格納して終了する。
【0140】
本実施の形態によるデータを作成する方法によれば、本実施の形態による可変情報印刷物の作成に必要なデータを簡易かつ効率良く作成することができる。
【0141】
本実施の形態により作成した可変情報印刷物(S)は、ステップS1において記憶部(103)に格納されたデータベースにおける、固有情報データ(D5)及び/又は背景画像データ(D2)を用いて、認証することも可能である。例えば、可変情報印刷物(S)をデジタル画像に変換した後、デジタル機器(具体的には、コンピュータ)上で、デジタル画像から固有情報画像部(3)、透過背景画像部(4、6)及び背景部(5)を抽出し、データベースと照合することで、可変情報印刷物(S)の認証を行うことが可能となる。
【0142】
認証を行う場合、前述した作成装置(M)は、さらに他のコンピュータ端末とも送受信するプロセッサ部及び画像入力部を有する構成とする。プロセッサ部により、可変情報印刷物(S)をCCDカメラ等の画像入力部にて撮影(またはスキャニング)し、入力された画像データを演算処理部(102)に送信した後、演算処理部(102)にてデータベースに登録された固有情報データ(D5)及び/又は背景画像データ(D2)と一致しているかどうかを判定する処理を行う。そして、固有情報データ(D5)及び/又は背景画像データ(D2)がデータベースに登録されているデータと一致している場合、可変情報印刷物(S)の所有者は本人であると判定し、一致していない場合は、所有者は別人あるいは偽造であると判定する。
【0143】
なお、本実施の形態による作成した可変情報印刷物(S)においては、データベースを用いずに認証を行うことも可能である。例えば、可変情報印刷物(S)に、固有情報データ(D5)及び/又は背景画像データ(D2)を用いて、公知の画像処理により2次元バーコードを生成した後、予め生成した2次元バーコードを、基材(1)上に付与する。なお、生成した2次元バーコードを、可変情報印刷物(S)の固有情報画像部(3)とすることも可能である。
【0144】
次に、可変情報印刷物(S)をスマートフォン等の画像入力部にて撮影(またはスキャニング)した後、入力された画像データを演算処理部(102)に送信した後、演算処理部(102)にて2次元バーコードから固有情報データ(D5)及び/又は背景画像データ(D2)を復元(スマートフォン等のディスプレイに表示)させた後、復元したデータと可変情報印刷物(S)に形成された固有情報画像部(3)、透過後背景画像部(4、6)及び背景部(5)と一致するか否かを目視で判定する。一致している場合、可変情報印刷物(S)の所有者は本人であると判定し、一致していない場合は、所有者は別人あるいは偽造であると判定する。
【0145】
認証を行う場合、前述した作成装置(M)は、さらに他のコンピュータ端末とも送受信するプロセッサ部及び画像入力部を有する構成とする。プロセッサ部により、可変情報印刷物(S)をCCDカメラ等の画像入力部にて撮影(またはスキャニング)した後、入力された画像データを演算処理部(102)に送信した後、演算処理部(102)にてデータベースに登録された固有情報データ(D5)及び/又は背景画像データ(D2)と一致しているかどうかを判定する処理を行う。そして、固有情報データ(D5)及び/又は背景画像データ(D2)がデータベースに登録されているデータと一致している場合、可変情報印刷物(S)の所有者は本人であると判定し、一致していない場合は、所有者は別人あるいは偽造であると判定する。
【0146】
図22及び
図23は、可変情報印刷物データ(D1)を作成する方法において、マスクデータ(D3)と背景画像データ(D2)を、それぞれ固定及び/又は可変とした場合における、可変情報印刷物データ(D1)を示す模式図である。
【0147】
図22(a)及び
図23(a)に、マスクデータ(D3)が固定で背景画像データ(D2)が可変である場合の可変情報印刷物データ(D1)の一例を示す。マスクデータ(D3)が鳳凰の形状で固定であり、背景画像データ(D2)が可変であり、マスクデータ(D3)の透過領域データ(DT)を透過した透過背景画像データ(D4)が生成されている。
【0148】
図22(b)及び
図23(b)に、マスクデータ(D3)が可変で背景画像データ(D2)が固定である場合の可変情報印刷物データ(D1)の一例を示す。マスクデータ(D3)が固有情報データ(D5)としての個人の顔に応じた形状を有しており、このマスクデータ(D3)の透過領域データ(DT)を透過した透過背景画像データ(D4)が生成されている。
【0149】
マスクデータ(D3)が固有情報データ(D5)としての個人の名前を表す形状を有しており、このマスクデータ(D3)の透過領域データ(DT)を透過した透過背景画像データ(D4)が生成されている。
【0150】
図24は、本発明の可変情報印刷物データ(D1)におけるマスクデータ(D3)として用いることが可能なクリッピングマスクデータ(D3-1)、レイヤーマスクデータ(D3-2)のそれぞれの一例を示した説明図である。なお、
図24において透過領域データ(DT)は黒色で示す。
【0151】
図24(a)に、クリッピングマスクデータ(D3-1)の一例としてアルファベットの文字形状を有するものを示し、
図24(b)にひらがなの文字形状を有するものを示す。
【0152】
さらに
図24(c)に、丸、三角、四角、星形形状を有し、背景画像データ(D2)を透過させるマスクデータ(D3)と、丸、三角、四角、星形形状を有し、背景画像データ(D2)を透過させるマスクデータ(D3)とを示す。
【0153】
図24(d)に、階調を有するレイヤーマスクデータ(D3-2)の一例を示す。四角、丸、八角の形状を有し、階調性を有する状態で背景画像データ(D2)を透過させる。同じ形状、例えば、四角を有するマスクであっても、階調の程度や階調の領域により異なるマスクデータ(D3)として機能する。
【0154】
図25は、本発明の可変情報印刷物データ(D1)における背景画像データ(D2)として用いることが可能な画像データの一例を示した説明図である。
【0155】
図25(a)に示す背景画像データ(D2)は、線画模様の一例であって、幾何学的形状を有する模様である。この線画模様を可変とする場合は、線画模様データ自体を変える場合や、全体の色あるいは一部の色を変える場合等がある。
【0156】
図25(b)に示す背景画像データ(D2)は、文字を含む画像データの一例である。特に微小文字を模様として画像データに含む場合、このような文字を全体に散りばめることで、背景画像データ(D2)として用いることができる。このような画像データを可変とする場合は、文字を変える場合、全体の色あるいは一部の色を変える場合等がある。
【0157】
図25(c)に示す背景画像データ(D2)は、連続的な階調を有する画像データの一例に相当する。このような階調を有する画像データを可変とする場合は、色を変える場合、階調の程度を変える場合、階調を有する領域を変える場合等がある。
【0158】
図25(d)に示す背景画像データ(D2)は、砂目模様の一例である。このような画像データを可変とする場合は、模様を変えたり、全体の色調あるいは一部の色調を変えたり、砂目の程度を変える場合等がある。
【0159】
この他の背景画像データ(D2)として、例えば、写真やイラストを用いるもの等が存在する。
【0160】
本発明の可変情報印刷物データ(D1)を作成するためのソフトウェアは、上述した可変情報印刷物データ(D1)を作成する方法を、コンピュータに実行させるものである。
【0161】
以上説明したように本発明の上記実施の形態によれば、背景画像データ(D2)において、マスクデータ(D3)の透過領域データを透過した部分と遮蔽された部分とが存在し、透過した部分が透過背景画像データとして基材(1)上に形成され、背景画像データ(D2)及びマスクデータ(D3)の少なくともいずれか一方が可変である。第三者が所有している真正の可変情報印刷物を参照したとしても、例えば、背景画像データ(D2)が可変である場合には、可変である背景画像データ(D2)において遮蔽されている領域を含む透過領域データを第三者は所有していないため、必要とする可変情報印刷物の変造及び偽造が困難である。
【0162】
また、マスクデータ(D3)が可変である場合は、可変であるマスクデータ(D3)の情報を第三者は所有しておらず、真正の可変情報印刷物を参照したとしても必要とする可変情報印刷物に応じたマスクデータ(D3)の作成が困難であるとともに、背景画像データ(D2)も所有していないため、可変のマスクデータ(D3)に応じた背景画像データ(D2)の作成が困難であることから変造及び偽造が困難である。このため、変造及び偽造に対して高い防止効果が得られ、また、マスクデータ(D3)及び背景画像データ(D2)の自由度が高く、優れたデザイン表現が可能である。
【0163】
本発明の実施の形態について説明したが、上記実施の形態は例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例】
【0164】
(実施例1)
本発明の実施例1について、説明する。実施例1では、
図26に示す、本発明の第1の実施の形態である、複数存在する可変情報印刷物(S5-1、S5-2、S5-3)において、透過背景画像部(4-1、4-2、4-3)に所定の模様を有し、かつ、第1の透過背景画像部(4-1、4-2、4-3)は、形状が異なり、所定の模様が同じ印刷物とした。
【0165】
可変情報印刷物(S5-1、S5-2、S5-3)は、
図20に示した作成装置(M)を用いて作成した。作成装置(M)は、データ入力部(101)とし、マウス、スキャナ、キーボードと、演算処理部(102)とし、画像編集ソフト(Photoshop)及びバリアブル印刷ソフトウェアFUJIFILM(Form Magic 4)を有するパソコン、記憶部(103)として、パソコン上のメモリを用い、データ出力部(104)はプリンター(FUJI XeroX社製「Versant 180Press」)を用いた。
【0166】
可変情報印刷物(S5-1、S5-2、S5-3)は、
図21に示した方法(フローチャート)で作成した。
【0167】
図21に示すステップS1として、背景画像データ(D2)を生成するための情報と、マスクデータ(D3)を生成するための情報と、固有情報データ(D5)を生成するための情報を、
図20に示す記憶部103にあらかじめ格納した、
図27に示すデータベースからデータ入力部101により読み込んだ。
【0168】
第1階層において、ステップS11として、演算処理部102が、背景画像データ(D2)が可変であるか否かを判断した。実施例1では、
図26に示したように、透過背景画像部(4-1、4-2、4-3)が有する所定の模様を固定の線画模様とした。よって、背景画像データ(D2)も固定の線画模様となることから、画像処理ソフトウェア(Adobe社製「Adobe Photoshop」)を用いて、
図28(c)に示す、背景画像データ)(D2)を生成した。
【0169】
ステップS12において生成した背景画像データ(D2)を、ステップS14において演算処理部102で第1階層に挿入した。
【0170】
第2階層において、ステップS21及びS26により、以下のステップS22からステップS25の処理をマスクデータ(D3)の数だけ繰り返した。
【0171】
ステップS22において、演算処理部102が、マスクデータ(D3)が可変であるか否かを判断した。実施例1の可変情報印刷物(S5-1、S5-2、S5-3)では、
図26に示したように、透過背景画像部(4-1、4-2、4-3)の形状が、
図27に示したデータベースにおける、固有情報データ(D5)の氏名の形状であるローマ字の「HARUKO INSATSU」を示す可変であることから、ステップS23に移行した。
【0172】
ステップS23において、
図28(b)に示した固有情報データ(D5)の氏名の形状であるローマ字の「HARUKO INSATSU」を画像データとして用いてマスクデータ(D3)を、画像処理ソフトウェア(Adobe社製「Adobe Photoshop」)で生成した。同様に、
図26(b)に示す可変情報印刷物(S2-2)の固有情報データ(D5)の氏名の形状であるローマ字の「NATSUO SEIHAN」を画像データとして用いてマスクデータ(D3)を生成し、
図26(c)に示す可変情報印刷物(S2-3)の固有情報データ(D5)の氏名の形状であるローマ字の「AKIKO KAIHATSU」を画像データとして用いてマスクデータ(D3)を生成した。このように、ステップS23に移行するごとに可変のマスクを生成した。
【0173】
ステップS23で生成したマスクデータ(D3)を、ステップS25において演算処理部102が第2階層に挿入した。
【0174】
ステップS31として演算処理部102が固有情報データ(D5)を、画像処理ソフトウェア(Adobe社製「Adobe Photoshop」)を用いて生成した。
【0175】
ステップS31で生成した固有情報データ(D5)を、ステップS32において演算処理部102で第3階層へ挿入した。
【0176】
ステップS14、S25、S32により、第1階層、第2階層、第3階層のそれぞれに挿入した背景画像データ(D2)、マスクデータ(D3)、固有情報データ(D5)を、ステップS41において演算処理部102が、バリアブル印刷ソフトウェアFUJIFILM(Form Magic 4)を用いて統合した。
【0177】
ステップS42として、統合したデータを、可変情報印刷物データ(D1)として画像のファイル形式PDF(Adobe Acrobat DC)で記憶部103へ格納した。格納した可変情報印刷物データ(D1)を用いて、基材(1)である上質紙にプリンター(FUJI XeroX社製「Versant 180Press」」で印刷することで、
図26に示した可変情報印刷物(S5-1、S5-2、S5-3)を作成した。
【0178】
なお、実施例1では、マスクデータ(D3)を、固有情報データ(D5)のローマ字形状の画像データを用いたが、
図29に示すように、固有情報データ(D5)の顔の形状をマスクデータ(D3)として、用いて作成することも可能である。その場合、前述した実施例1の作成方法において、
図27に示したデータベース(DB)に、あらかじめ、
図30に示すような固有情報データ(D5)である所有者の顔形状の画像データをマスクデータ(D3)として格納しておき、ステップS23でマスクデータ(D3)として用いることで、
図29に示した可変情報印刷物(S6-1、S6-2、S6-3)を作成することができた。
【0179】
また、実施例1では、
図28で用いた固有情報データ(D5)の顔形状をマスクデータ(D3)とした、階調を有さない画像データを用いたが、
図31に示す特殊な形状のスクリーンで形成した固有情報データ(D5)の顔の形状をマスクデータ(D3)として用いて作成することも可能であった。その場合、前述した実施例1の作成方法において、
図27に示したデータベース(DB)に、あらかじめ、
図32に示すような固有情報データ(D5)である所有者の顔形状であり、特殊な形状のスクリーンで形成した画像データをマスクデータ(D3)として格納しておき、ステップS23でマスクデータ(D3)として用いることで、
図31に示した可変情報印刷物(S7-1、S7-2、S7-3)を作成することができた。
【0180】
また、実施例1では、背景画像データ(D2)を固定としたが、
図33に示すように、固有情報データ(D5)である、所有者の顔画像データのように可変とすることも可能であった。可変である場合は、実施例1の作成方法において、
図27に示したデータベース(DB)に、あらかじめ、
図34に示すような固有情報データ(D5)である所有者の顔の写真をスクリーンによる網点で表現した画像データを背景画像データ(D2)として格納しておき、ステップS12で固有情報データ(D5)に応じた可変の半透明の顔画像データを用いて、背景画像データ(D2)を、画像処理ソフトウェア(Adobe社製「Adobe Photoshop」)を用いて生成した。以降、このステップS12に移行するごとに可変の背景画像データ(D2)を生成した後、ステップS14で、背景画像データ(D2)を演算処理部102で第1階層に挿入することで、
図33に示した可変情報印刷物(S8-1、S8-2、S8-3)を作成することができた。
【0181】
また、実施例1では、背景画像データ(D2)を線画模様としたが、
図35に示すように、赤外線(IR)を照射すると通常光のもとでは、肉眼で不可視であった文字が視認される潜像画像とし、さらに潜像画像を可変として作成することができた。赤外線光下で文字が視認される潜像画像である場合は、実施例1の作成方法において、
図27に示したデータベース(DB)に、あらかじめ、
図36に示すような赤外線(IR)を照射すると通常光のもとでは、肉眼で不可視であった所有者の氏名であるローマ字の「HARUKO INSATSU」が視認される潜像画像を表現した画像データを背景画像データ(D2)として格納しておき、ステップS12で固有情報データ(D5)に応じた可変の半透明の顔画像データが用いて背景画像データ(D2)を、画像処理ソフトウェア(Adobe社製「Adobe Photoshop」)を用いて生成した。なお、
図36においては、模式図として印刷物となった際に、IRビュアーを重ねて視認される潜像画像を表しているが、実際には画像データであり、潜像画像を確認することはできない。以降、このステップS12に移行するごとに可変の背景画像データ(D2)を生成した後、ステップS14で、背景画像データ(D2)を演算処理部102で第1階層に挿入することで、
図35に示した可変情報印刷物(S9-1、S9-2、S9-3)を作成することができた。
【0182】
(実施例2)
本発明の実施例2について、説明する。実施例2では、
図37に示す、第4の実施の形態による可変情報印刷物(S10-1、S10-2、S10-3)を作成した。
【0183】
作成装置(M)は、実施例1と同じ構成を用いた。
【0184】
背景画像データ(D2)が固定で、2つのマスクデータ(D3)がともに可変の可変情報印刷物データ(D1)を、
図21に示した方法(フローチャート)で作成した。
【0185】
図21に示すステップS1として、背景画像データ(D2)を生成するための情報と、マスクデータ(D3)を生成するための情報と、固有情報データ(D5)を生成するための情報を、
図20に示す記憶部103にあらかじめ格納したデータベースからデータ入力部101により読み込み、バリアブル印刷ソフトウェア(FUJIFILM社製「Form Magic 4」で演算処理部102により処理可能なデータを生成した。
【0186】
第1階層において、ステップS11として、演算処理部102が、背景画像データ(D2)が可変であるか否かを判断し、背景画像データ(D2)が可変でない場合はステップS13へ移行して背景画像データ(D2)が、
図38(c)に示されたように固定されデータベースに固定情報データとして格納されている背景画像データ(D2)を引用した。
【0187】
ステップS13において生成された背景画像データ(D2)を、ステップS14において演算処理部102で第1階層に挿入した。
【0188】
第2階層において、ステップS21及びS26により、以下のステップS22からステップS25の処理をマスクデータ(D3)の数だけ繰り返した。
【0189】
ステップS22において、演算処理部102が、マスクデータ(D3)が可変であるか否かを判断し、可変である場合は、ステップS23に移行して2層のマスクデータ(D3)が
図38(a)に示された固有情報データ(D5)に応じて可変となり、より具体的には、
図38(b)に示されたように固有情報データ(D5)の氏名のうち名字である「INSATSU」と名前である「HARUKO」のそれぞれの形状を2層のマスクデータ(D3)として用いてマスクデータ(D3)を、画像処理ソフトウェア(Adobe社製「Adobe Photoshop」)で生成した。以降、このステップS23に移行するごとに可変のマスクデータ(D3)を生成した。
【0190】
ステップS23において生成したマスクデータ(D3)を、ステップS25において演算処理部102で第2階層に挿入した。
【0191】
第3階層において、ステップS31として演算処理部102が固有情報データ(D5)を、画像処理ソフトウェア(Adobe社製「Adobe Photoshop」)を用いて生成した。
【0192】
生成した固有情報データ(D5)を、ステップS32において演算処理部102で第3階層に挿入した。
【0193】
ステップS14、S25、S32により、第1階層、第2階層、第3階層のそれぞれに挿入した背景画像データ(D2)、マスクデータ(D3)、固有情報データ(D5)を、ステップS41において演算処理部102が、バリアブル印刷ソフトウェア(FUJIFILM社製「Form Magic 4)」)を用いて統合した。
【0194】
ステップS42として、統合したデータを、可変情報印刷物データ(D1)として画像のファイル形式PDF(Adobe Acrobat DC)で記憶部103へ格納した。
【0195】
格納した可変情報印刷物データ(D1)を用いて、基材(1)である上質紙にプリンター(FUJI XeroX社製「Versant 180Press」」で印刷することで、可変情報印刷物(S10-1、S10-2、S10-3)を作成した。
【符号の説明】
【0196】
S1-1、S1-2、S1-3、S1-4、S2-1、S2-2、S3-1、S3-2、S4-1、S4-2、S5-1、S5-2、S5-3、S6-1、S6-2、S6-3、S7-1、S7-2、S7-3、S8-1、S8-2、S8-3 可変情報印刷物
1 基材
2-1、2-2 可変情報領域
3-1、3-2 固有情報画像部
4-1、4-2、4-3 第1の透過背景画像部
5-1、5-2 背景部
6-1、6-2 第2の透過背景画像部
7-1、7-2 透過重複部
D1 可変情報印刷物データ
D2 背景画像データ
D3、D3-1、D3-2 マスクデータ
D4 透過背景画像データ
D5 固有情報データ
D6 透過重複部データ
DT、DTa、DTb 透過領域データ
DB データベース
M 作成装置
101 データ入力部
102 演算処理部
103 記憶部
104 データ出力部
S′ 従来の可変印刷物
s 従来の印刷物
p1′ 共通印刷部
p2′ 固有情報部