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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】組成物及びそれを含有する発光素子
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20241128BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20241128BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20241128BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241128BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20241128BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20241128BHJP
【FI】
C08L65/00
C08G61/12
C08K5/34
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H05B33/22 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020142407
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2021063210
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019188927
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 雄太
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真佑子
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/047644(WO,A1)
【文献】特開2011-102355(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168667(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031639(WO,A1)
【文献】特開2014-001349(JP,A)
【文献】特開2010-155985(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114976(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146806(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/009069(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/066509(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/066510(WO,A1)
【文献】特開2020-107869(JP,A)
【文献】特開2005-209626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 65/00
C08G 61/12
C08K 5/34
H10K 50/10
H10K 50/16
H10K 50/15
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位を有する鎖状高分子化合物と、式(Z)で表される環状低分子化合物とを含む組成物であって、
前記鎖状高分子化合物に含まれる構成単位の合計モル量に対して、式(X)で表される構成単位のモル分率が1~80モル%であり、式(Y)で表される構成単位のモル分率が1~90モル%であり、かつ式(X)で表される構成単位と式(Y)で表される構成単位のモル分率の和が70~100モル%であり、
前記鎖状高分子化合物が、分子量分布を有し、ゲル浸透クロマトグラフィー(ポリスチレン換算)により求めた重量平均分子量が1×10 ~1×10 である重合体であり、
前記環状低分子化合物が、分子量分布を有さず、分子量が200~10000の化合物であり、
前記環状低分子化合物及び前記鎖状高分子化合物の液体クロマトグラフィーにより求められる面積百分率の合計値を100としたとき、前記環状低分子化合物の液体クロマトグラフィーにより求められる面積百分率の合計値が0.1以上1.5以下である、組成物。
[式中、
X1及びaX2は、それぞれ独立に0以上の整数を表す。
ArX1及びArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2及びArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2及びArX4が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
X1~RX5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、又は架橋基を含む基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2、RX3及びRX5が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
[式中、Ar Y1 は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
[式中、pは1~8の整数を表し、qは0~8の整数を表し、3≦p+q≦16である。他の記号は前記に同じ。ここで、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位の結合の順番は限定されない。式(X)で表される構成単位が複数存在するときは、当該構成単位は同一でも異なっていてもよい。式(Y)で表される構成単位が複数存在するときは、当該構成単位は同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記環状低分子化合物の分子量が1000~10000である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記鎖状高分子化合物が、架橋基A群から選択される少なくとも1種の架橋性基を有する、請求項1に記載の組成物。
(架橋基A群)
[式中、
XL は、メチレン基、酸素原子、硫黄原子又は-CO-を表し、
XL は、0~5の整数を表す。R XL が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。複数存在するn XL は、同一でも異なっていてもよい。
*1は結合位置を表す。
これらの架橋基は置換基を有していてもよく、該置換基が複数存在する場合、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。]
【請求項4】
更に、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の組成物及び/又はその硬化物を含有する、発光素子用膜。
【請求項6】
陽極、陰極及び有機層を有する発光素子であって、前記陽極及び前記陰極の間に前記有機層を有し、前記有機層が請求項に記載の発光素子用膜である、発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及びそれを含有する発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とも表記する)等の発光素子は、ディスプレイ及び照明の用途に好適に使用することが可能である。発光素子を構成する有機層は、高分子化合物を含む組成物を用いて湿式成膜法により形成することができる。この高分子化合物は種々の製法により製造されるが、その製法に由来して環状の低分子化合物を含むことがある。この環状低分子化合物を含む高分子化合物を用いて成膜した場合には膜形成に悪影響を与えるなどの理由から、高分子化合物には環状低分子化合物を含まないことが望ましい。例えば、特許文献1には、環状オリゴマーなどの低分子量成分を削減した所定の重量平均分子量及び分散度を有する共役ポリマーが報告されており、特許文献2には、環状化合物を含む低分子量成分を削減した高分子量化合物が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-287000号公報
【文献】特開2005-209626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子の有機層は多層膜からなり、高分子化合物を含む溶液を順に塗布及び乾燥する湿式成膜法を用いて形成することができる。その場合、既に形成した膜上に溶液を塗布するときに、下部の膜から有機物が溶出又は混入すると、各膜の機能が失われ発光素子の特性に悪影響を与えてしまう。そのため、塗布及び乾燥後の膜は溶剤に対する耐性(即ち、硬化性)が高いことが望ましい。しかし、上述した特許文献1及び2に記載された発光素子は、膜の硬化性が必ずしも十分ではなかった。そこで、本発明は、発光素子に用いる硬化性に優れる有機層(膜)の製造に有用な組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]
式(X)で表される構成単位を有する環状低分子化合物と、前記環状低分子化合物と同一の式(X)で表される構成単位を有する高分子化合物とを含む組成物であって、前記環状低分子化合物及び前記高分子化合物の液体クロマトグラフィーにより求められる面積百分率の合計値を100としたとき、前記環状低分子化合物の液体クロマトグラフィーにより求められる面積百分率の合計値が0.1以上1.5以下である、組成物。
[式中、
X1及びaX2は、それぞれ独立に0以上の整数を表す。
ArX1及びArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2及びArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2及びArX4が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
X1~RX5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、又は架橋基を含む基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2、RX3及びRX5が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
[2]
前記環状低分子化合物の分子量が1000~10000である[1]に記載の組成物。
[3]
前記式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位を有する環状低分子化合物と、前記環状低分子化合物と同一の式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位を有する高分子化合物とを含む、[1]又は[2]に記載の組成物。
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
[4]
前記環状低分子化合物が、式(Z)で表される環状化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[式中、pは1~8の整数を表し、qは0~8の整数を表し、3≦p+q≦16である。他の記号は前記に同じ。ここで、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位の結合の順番は限定されない。式(X)で表される構成単位が複数存在するときは、当該構成単位は同一でも異なっていてもよい。式(Y)で表される構成単位が複数存在するときは、当該構成単位は同一でも異なっていてもよい。]
[5]
更に、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の組成物及び/又はその硬化物を含有する、発光素子用膜。
[7]
陽極、陰極及び有機層を有する発光素子であって、前記陽極及び前記陰極の間に前記有機層を有し、前記有機層が[6]に記載の発光素子用膜である、発光素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発光素子における硬化性に優れる有機層(膜)の形成に有用な組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該組成物又はその硬化物を含有する有機層(膜)を含む発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】合成例1で得られた混合物Aの液体クロマトグラフィー分析のチャートである。
図2】合成例2で得られた高分子化合物(P2)の液体クロマトグラフィー分析のチャートである。
図3】混合物Aの液体クロマトグラフィー分析のチャートにおける6.0分付近の成分(環状低分子化合物を含む)をMALDI-TOFMS分析した結果を示す。
図4】実施例1~3及び比較例1~3で用いた組成物中の環状低分子化合物の含有量(面積百分率)と残膜率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0009】
1.共通する用語の説明
本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基、i-Prはイソプロピル基、t-Buはtert-ブチル基を表す。
水素原子は、重水素原子であっても、軽水素原子であってもよい。
金属錯体を表す式中、金属との結合を表す実線は、イオン結合、共有結合又は配位結合を意味する。
【0010】
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(ポリスチレン換算)により求めた重量平均分子量が1×103~1×108である重合体を意味する。
高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよい。
高分子化合物は鎖状構造を有しており、両末端基は安定な基を有していることが好ましい。末端基に重合活性基がそのまま残っていると、高分子化合物を発光素子の作製に用いた場合、発光特性又は輝度寿命が低下する可能性があるからである。高分子化合物の末端基としては、好ましくは主鎖と共役結合している基であり、例えば、炭素-炭素結合を介して高分子化合物の主鎖と結合するアリール基(フェニル基等)又は1価の複素環基が挙げられる。
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×104以下の化合物を意味する。
「構成単位」とは、高分子化合物又は低分子化合物中に1個以上(さらに2個以上)存在する単位を意味する。高分子化合物又は低分子化合物中に2個以上存在する構成単位は、一般に「繰り返し単位」と呼ばれる。
【0011】
「アルキル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、通常1~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。分岐のアルキル基の炭素原子数は、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
「アルキル基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-プロピルヘプチル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ヘキシルデシル基、ドデシル基、及び、これらの基における水素原子が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基)が挙げられる。
【0012】
「シクロアルキル基」の炭素原子数は、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
「シクロアルキル基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基が挙げられる。
【0013】
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~10である。
「アリール基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0014】
「アルコキシ基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、通常1~40であり、好ましくは4~10である。分岐のアルコキシ基の炭素原子数は、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
「アルコキシ基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
「シクロアルコキシ基」の炭素原子数は、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
「シクロアルコキシ基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよいシクロアルコキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0015】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは6~48である。 「アリールオキシ基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよいアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0016】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数、特に1又は2を表す。)とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団である「p価の芳香族複素環基」が好ましい。
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、及び、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
【0017】
「1価の複素環基」の炭素原子数は、通常、2~60であり、好ましくは4~20である。 「1価の複素環基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよい1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基等で置換された基が挙げられる。
【0018】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
【0019】
「アミノ基」は置換基を有していてもよく、置換アミノ基が好ましい。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基が好ましい。
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジシクロアルキルアミノ基及びジアリールアミノ基が挙げられる。具体的には、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基が挙げられる。
【0020】
「アルケニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルケニル基の炭素原子数は、通常2~30であり、好ましくは3~20である。分岐のアルケニル基の炭素原子数は、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
「シクロアルケニル基」の炭素原子数は、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
「アルケニル基」及び「シクロアルケニル基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよいアルケニル基及びシクロアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、及び、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
【0021】
「アルキニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。アルキニル基の炭素原子数は、通常2~20であり、好ましくは3~20である。分岐のアルキニル基の炭素原子数は、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
「シクロアルキニル基」の炭素原子数は、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
「アルキニル基」及び「シクロアルキニル基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよいアルキニル基及びシクロアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、及び、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
【0022】
「アリーレン基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を意味する。アリーレン基の炭素原子数は、通常、6~60であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
「アリーレン基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよいアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基、及び、これらの基が置換基を有する基が挙げられ、好ましくは、式(A-1)~式(A-20)で表される基である。アリーレン基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
[式中、R及びRaは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表す。複数存在するR及びRaは、各々、同一でも異なっていてもよく、Ra同士は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。]
【0027】
「2価の複素環基」の炭素原子数は、通常、2~60であり、好ましくは、3~20であり、より好ましくは、4~15である。
「2価の複素環基」は置換基を有していてもよく、当該置換基を有していてもよい2価の複素環基としては、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール、トリアゾールから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基が挙げられ、好ましくは、式(AA-1)~式(AA-34)で表される基である。2価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
[式中、R及びRaは、前記と同じ意味を表す。]
【0035】
「架橋基」とは、加熱処理、紫外線照射処理、近紫外線照射処理、可視光照射処理、赤外線照射処理、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成することが可能な基である。好ましくは、架橋基A群の式(XL-1)~式(XL-19)で表される架橋基であり、より好ましくは、式(XL-1)又は式(XL-17)で表される架橋基である。
(架橋基A群)
[式中、
XLは、メチレン基、酸素原子、硫黄原子又は-CO-を表し、
XLは、0~5の整数を表す。RXLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。複数存在するnXLは、同一でも異なっていてもよい。
*1は結合位置を表す。
これらの架橋基は置換基を有していてもよく、該置換基が複数存在する場合、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。]
【0036】
なお、式(XL-2)~式(XL-4)中、波線は、異性体(好ましくは、Z体又はE体)を表す。波線が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0037】
「架橋基を含む基」とは、例えば、式(1)で表される基が挙げられる。
[式中、Lは、単結合、或いは、-(CH)-、-O-、-S-、-(CO)-、-(C)-、又はこれらから選ばれる2個以上の基が結合した2価の基を表す。但し、-O-同士、-S-同士、-O-及び-S-は、互いに直接結合しない。Yは架橋基を表す。Yが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0038】
Lとして、例えば、-(CH-(mは0~20の整数を表す)、-(CH-(C)-(CH-(pは0~10の整数を表し、qは0~10の整数を表す)、-(CH-O-(CH-(rは0~10の整数を表し、sは0~10の整数を表す)、-(CH-(C)-O-(CHu-(tは0~10の整数を表し、uは0~10の整数を表す)等が挙げられる。
【0039】
「置換基」とは、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基又はシクロアルキニル基を表す。置換基は架橋基を含む基であってもよい。
【0040】
2.組成物
本発明の組成物は、所定量の式(X)で表される構成単位を有する環状低分子化合物と、前記環状低分子化合物と同一の式(X)で表される構成単位を有する高分子化合物とを含むものである。前記環状低分子化合物及び前記高分子化合物の液体クロマトグラフィーにより求められる面積百分率の合計値を100としたとき、前記環状低分子化合物の液体クロマトグラフィーにより求められる面積百分率の合計値が0.1以上1.5以下(例えば、0.2以上1.5以下であってもよく、0.3以上1.4以下であってもよい)である。
【0041】
本発明の組成物に含まれる環状低分子化合物は、上記の面積百分率で、好ましくは0.1以上1.3以下であり、より好ましくは0.2以上1.2以下であり、更に好ましくは0.2以上1.1以下であり、特に好ましくは0.4以上1.1以下である。発光素子中の環状低分子化合物量がこの範囲であると、該組成物を用いた発光素子の有機層の硬化性が向上する。
【0042】
(1)高分子化合物
本発明の組成物に含まれる高分子化合物は、前記環状低分子化合物と同一の式(X)で表される構成単位を有する。
【0043】
前記高分子化合物において、式(X)で表される構成単位の含有率(モル分率)は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計モル量に対して、上限値が、例えば80モル%、好ましくは70モル%、さらに好ましくは60モル%であり、下限値が、例えば1モル%、好ましくは10モル%、さらに好ましくは30モル%である。式(X)で表される構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0044】
前記高分子化合物は、本実施形態の発光素子の輝度寿命がより優れるので、更に、式(Y)で表される構成単位を含むことが好ましい。式(Y)で表される構成単位の含有率(モル分率)は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計モル量に対して、上限値が、例えば90モル%、好ましくは80モル%、より好ましくは70モル%であり、下限値が、例えば0.5モル%、好ましくは10モル%、さらに好ましくは30モル%である。式(Y)で表される構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0045】
前記高分子化合物は、更に、その他の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位の含有率(モル分率)は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計モル量に対して、例えば、20モル%以下であり、さらに好ましくは10モル%以下である。その他の構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0046】
前記高分子化合物の好ましい態様としては、例えば、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物であり、当該高分子化合物に含まれる構成単位の合計モル量に対して、式(X)で表される構成単位が1~80モル%(好ましくは、30~60モル%)であり、式(Y)で表される構成単位が1~90モル%(好ましくは、30~70モル%)であり、かつ式(X)で表される構成単位と式(Y)で表される構成単位のモル分率の和が70~100モル%であるものが挙げられる。
【0047】
前記高分子化合物は、発光素子の有機層(膜)の硬化性をより向上できるため、前記架橋基A群から選択される少なくとも1種の架橋性基を有することが好ましい。
【0048】
なお、式(X)で表される構成単位、式(Y)で表される構成単位については後述する。
【0049】
前記高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよく、その他の態様であってもよい。複数種の原料モノマーを共重合した共重合体であることが好ましい。
前記高分子化合物のGPC(ポリスチレン換算)により求めた重量平均分子量は、好ましくは5×103~1×10であり、より好ましくは1×104~1×106であり、更に好ましくは1.5×104~5×105である。
【0050】
<式(X)で表される構成単位>
X1は、本実施形態の発光素子の輝度寿命がより優れるので、好ましくは0、1又は2であり、より好ましくは0又は1であり、更に好ましくは1である。
X2は、本実施形態の発光素子の輝度寿命がより優れるので、好ましくは0、1又は2であり、より好ましくは0である。
【0051】
X1~RX5は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、又は架橋基A群から表される架橋基であり、より好ましくはアリール基又は架橋基A群から表される架橋基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0052】
ArX1~ArX4で表される「アリーレン基」及び「2価の複素環基」の例及び好ましい範囲は、それぞれ、後述する式(Y)におけるArY1で表される「アリーレン基」及び「2価の複素環基」の例及び好ましい範囲と同じである。
ArX2及びArX4で表される「アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基」における、「アリーレン基」及び「2価の複素環基」の例及び好ましい範囲は、それぞれ、後述する式(Y)におけるArY1で表される「アリーレン基」及び「2価の複素環基」の例及び好ましい範囲と同じである。
ArX2及びArX4で表される「アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基」としては、後述する式(Y)におけるArY1で表される「アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基」と同様のものが挙げられる。
ArX1~ArX4は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
【0053】
ArX1~ArX4で表される基が有してもよい「置換基」の例及び好ましい範囲は、後述する式(Y)におけるArY1で表される基が有してもよい「置換基」の例及び好ましい範囲と同じである。
【0054】
架橋基を含まない式(X)で表される構成単位としては、例えば、式(X1-1)~式(X1-15)で表される構成単位が挙げられる。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
架橋基を有する「ArX2-RX2」及び「ArX3-RX4」の構造としては、例えば、式(3-1)~式(3-30)で表される構造が挙げられる。
【0062】
【0063】
【0064】
架橋基を有する式(X)で表される構成単位としては、例えば、式(4-1)~式(4-9)で表される構成単位が挙げられる。
【0065】
【0066】
<式(Y)で表される構成単位>
式(Y)で表される構成単位は下記の通りである。
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0067】
ArY1で表される「アリーレン基」は、本実施形態の発光素子の輝度寿命がより優れるので、好ましくは、式(A-1)~式(A-10)、式(A-19)又は式(A-20)で表される基であり、より好ましくは、式(A-1)~式(A-3)、式(A-6)-式(A-10)、式(A-19)又は式(A-20)で表される基であり、更に好ましくは、式(A-1)、式(A-2)、式(A-7)、式(A-9)又は式(A-19)で表される基である。
ArY1で表される「2価の複素環基」は、本実施形態の発光素子の輝度寿命がより優れるので、好ましくは、式(AA-1)-式(AA-4)、式(AA-10)-式(AA-15)、式(AA-18)-式(AA-22)、式(AA-33)又は式(AA-34)で表される基であり、より好ましくは、式(AA-4)、式(AA-10)、式(AA-12)又は式(AA-14)で表される基である。
ArY1で表される「アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基」における、「アリーレン基」及び「2価の複素環基」の好ましい範囲は、それぞれ、前述のArY1で表される「アリーレン基」及び「2価の複素環基」の好ましい範囲と同様である。
【0068】
ArY1で表される「アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基」としては、例えば、下記式で表される基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0069】
[式中、RXXは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0070】
XXは、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0071】
ArY1で表される基が有してもよい「置換基」は、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、1価の複素環基、置換アミノ基、又は架橋基を含む基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、更に好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
ArY1で表される基が有してもよい置換基が更に有していてもよい「置換基」としては、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよいが、更に置換基を有さないことが好ましい。
【0072】
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、後述する式(Y-1)~式(Y-7)で表される構成単位が挙げられ、本実施形態の発光素子の輝度寿命の観点からは、好ましくは式(Y-1)又は式(Y-2)で表される構成単位であり、電子輸送性の観点からは、好ましくは式(Y-3)又は式(Y-4)で表される構成単位であり、正孔輸送性の観点からは、好ましくは式(Y-5)~式(Y-7)で表される構成単位である。
【0073】
[式中、RY1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。
Y1は、-C(RY2)2-、-C(RY2)=C(RY2)-又はC(RY2)2-C(RY2)2-で表される基を表す。RY2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、1価の複素環基、又は架橋基を含む基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY2は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0074】
Y1は、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y2は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、又は架橋基を含む基であり、より好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は架橋基を含む基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y1及びRY2が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、ArY1で表される基が有してもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0075】
Y1において、-C(RY2)2-で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基もしくはシクロアルキル基、双方がアリール基、双方が1価の複素環基、又は、一方がアルキル基もしくはシクロアルキル基で他方がアリール基もしくは1価の複素環基であり、より好ましくは一方がアルキル基もしくはシクロアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。2個存在するRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、-C(RY2)2-で表される基としては、好ましくは式(Y-A1)~式(Y-A5)で表される基であり、より好ましくは式(Y-A4)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0076】
【0077】
Y1において、-C(RY2)=C(RY2)-で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基もしくはシクロアルキル基、又は、一方がアルキル基もしくはシクロアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0078】
Y1において、-C(RY2)2-C(RY2)2-で表される基中の4個のRY2は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基又はシクロアルキル基である。複数あるRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、-C(RY2)2-C(RY2)2-で表される基は、好ましくは式(Y-B1)~式(Y-B5)で表される基であり、より好ましくは式(Y-B3)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0079】
[式中、RY2は前記と同じ意味を表す。]
【0080】
式(Y-1)で表される構成単位は、好ましくは、式(Y-1')で表される構成単位である。式(Y-2)で表される構成単位は、好ましくは、式(Y-2')で表される構成単位である。
【0081】
[式中、RY1及びXY1は、前記と同じ意味を表す。RY11は、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY11は、同一でも異なっていてもよい。]
【0082】
Y11は、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、より好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y11が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、ArY1で表される基が有してもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0083】
[式中、RY1は前記と同じ意味を表す。RY3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0084】
Y3は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y3が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、ArY1で表される基が有してもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0085】
[式中、RY1は前記を同じ意味を表す。RY4は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0086】
Y4は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y4が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲は、ArY1で表される基が有してもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0087】
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(Y-11)~式(Y-55)で表される構成単位が挙げられる。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
<その他の構成単位>
前記高分子化合物は、更にその他の構成単位を含んでいてもよい。当該その他の構成単位は、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位以外の構成単位であり、本発明の効果を奏する範囲で任意に選択することができる。
【0102】
<高分子化合物の製造方法>
前記高分子化合物は、ケミカルレビュー(Chem. Rev.),第109巻,897-1091頁(2009年)等に記載の公知の重合方法を用いて製造することができる。例えば、Suzuki反応、Yamamoto反応、Buchwald反応、Stille反応、Negishi反応及びKumada反応等の遷移金属触媒を用いるカップリング反応により重合させる方法が挙げられる。
重合に用いられる単量体は、前記式(X)で表される構成単位、式(Y)で表される構成単位、及びその他の構成単位等の2つの結合手に、当該カップリング反応に適した反応性基を有する化合物である。
【0103】
前記重合方法において、単量体を仕込む方法としては、単量体全量を反応系に一括して仕込む方法、単量体の一部を仕込んで反応させた後、残りの単量体を一括、連続又は分割して仕込む方法、単量体を連続又は分割して仕込む方法等が挙げられる。
【0104】
遷移金属触媒としては、パラジウム触媒、ニッケル触媒等が挙げられる。
【0105】
重合反応の後処理は、公知の方法を用いることができる。例えば、分液により水溶性不純物を除去する方法、メタノール等の低級アルコールに重合反応後の反応液を加えて、析出させた沈殿を濾過した後、乾燥させる方法等、これらのうちから1つ又は2つ以上を組み合わせて行うことができる。架橋基を有する構成単位を含む高分子化合物の純度が低い場合、例えば、再結晶、再沈殿、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
【0106】
(2)環状低分子化合物
本発明の組成物に含まれる環状低分子化合物は、前記式(X)で表される構成単位が、直接結合して、又は、他の原子、基若しくは構成単位を介して、複数結合することにより、環状となった化合物である。環状低分子化合物は、通常、上記の高分子化合物の製造方法において単量体を重合させたときに副生する化合物である。
【0107】
環状低分子化合物は、式(X)で表される構成単位を1以上含んでいる。式(X)で表される構成単位を2以上含む場合、当該構成単位は同一でも又は異なっていてもよい。
【0108】
環状低分子化合物は、更に、式(Y)で表される構成単位を1以上含むことが好ましい。式(Y)で表される構成単位を2以上含む場合、当該構成単位は同一でも又は異なっていてもよい。
【0109】
環状低分子化合物の分子量は、通常、200~10000であり、好ましくは、1000~10000である。
【0110】
環状低分子化合物は、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位を有する化合物が好ましく、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位からなる化合物がより好ましい。
【0111】
環状低分子化合物としては、例えば、下記式(Z)で表される環状化合物が挙げられる。
[式中、pは1~8の整数を表し、qは0~8の整数を表し、3≦p+q≦16である。他の記号は前記に同じ。ここで、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位の結合の順番は限定されない。式(X)で表される構成単位が複数存在するときは、当該構成単位は同一でも異なっていてもよい。式(Y)で表される構成単位が複数存在するときは、当該構成単位は同一でも異なっていてもよい。]
【0112】
式(Z)で表される環状化合物のうち、pが2~8の整数であり、且つ、qが2~8の整数である環状化合物が好ましく、pが3~6の整数であり、且つ、qが3~6の整数である環状化合物がより好ましい。
【0113】
これらの環状低分子化合物の構造解析は、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法を用いた質量分析(MALDI-TOFMS)を用いて実施することができる。
【0114】
環状低分子化合物として具体的には、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0115】
(3)組成物中に含まれ得る他の材料
本発明の組成物は、他の材料を含んでいてもよい。他の材料として、例えば、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料、酸化防止剤が挙げられる。本発明の組成物は、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料を更に含有していてもよい。
【0116】
[正孔輸送材料]
正孔輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類され、好ましくは架橋基を有する高分子化合物である。
高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体;側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリアリーレン及びその誘導体が挙げられる。高分子化合物は、フラーレン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン及びトリニトロフルオレノン等の電子受容性部位が結合された化合物でもよい。
本発明の組成物において、正孔輸送材料の配合量は、前記環状低分子化合物及び前記高分子化合物の合計を100質量部とした場合、通常、1~400質量部である。正孔輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0117】
[電子輸送材料]
電子輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。電子輸送材料は、架橋基を有していてもよい。
低分子化合物としては、例えば、8-ヒドロキシキノリンを配位子とする金属錯体、オキサジアゾール、アントラキノジメタン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、テトラシアノアントラキノジメタン、フルオレノン、ジフェニルジシアノエチレン及びジフェノキノン、並びに、これらの誘導体が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフルオレン、及び、これらの誘導体が挙げられる。高分子化合物は、金属でドープされていてもよい。
本発明の組成物において、電子輸送材料の配合量は、前記環状低分子化合物及び前記高分子化合物の合計を100質量部とした場合、通常、1~400質量部である。電子輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0118】
[正孔注入材料及び電子注入材料]
正孔注入材料及び電子注入材料は、各々、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。正孔注入材料及び電子注入材料は、架橋基を有していてもよい。
低分子化合物としては、例えば、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン;カーボン;モリブデン、タングステン等の金属酸化物;フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム等の金属フッ化物が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン及びポリキノキサリン、並びに、これらの誘導体;芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子が挙げられる。
本発明の組成物において、正孔注入材料及び電子注入材料の配合量は、各々、前記環状低分子化合物及び前記高分子化合物の合計を100質量部とした場合、通常、1~400質量部である。正孔注入材料及び電子注入材料は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0119】
[イオンドープ]
正孔注入材料又は電子注入材料が導電性高分子を含む場合、導電性高分子の電気伝導度は、好ましくは1×10-5S/cm~1×103S/cmである。導電性高分子の電気伝導度をかかる範囲とするために、導電性高分子に適量のイオンをドープすることができる。
【0120】
[発光材料]
発光材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。発光材料は、架橋基を有していてもよい。
低分子化合物としては、例えば、ナフタレン及びその誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、並びに、イリジウム、白金又はユーロピウムを中心金属とする三重項発光錯体が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、フルオレンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、アントラセンジイル基及びピレンジイル基等のアリーレン基;芳香族アミンから2個の水素原子を取り除いてなる基等の芳香族アミン残基;並びに、カルバゾールジイル基、フェノキサジンジイル基及びフェノチアジンジイル基等の2価の複素環基を含む高分子化合物が挙げられる。
三重項発光錯体としては、例えば、以下に示す金属錯体が挙げられる。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
本発明の組成物において、発光材料の含有量は、前記環状低分子化合物及び前記高分子化合物の合計100質量部に対し、通常、0.1~400質量部である。発光材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0127】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、架橋基を有する架橋材料と同じ溶媒に可溶であり、発光及び電荷輸送を阻害しない化合物であればよく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
本発明の組成物において、酸化防止剤の配合量は、前記環状低分子化合物及び前記高分子化合物の合計100質量部に対し、通常、0.001~10質量部である。酸化防止剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0128】
3.組成物中の環状低分子化合物の分析
本発明の組成物に含まれる環状低分子化合物の量を分析する方法としては、例えば、高速液体クロマトグラフィー、質量分析法が挙げられる。高速液体クロマトグラフィーにより分析する方法としては、例えば、本発明の組成物を溶媒に溶解させ、この溶液を高速液体クロマトグラフィーで測定する方法が挙げられる。組成物を溶解させる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエンなどが挙げられる。
【0129】
本発明の組成物に含まれる環状低分子化合物を定量する方法を詳しく説明する。まず、本発明の組成物を溶媒に溶解させる。溶液中の組成物と溶媒との割合は、組成物1質量部に対して、通常、溶媒が2000質量部から100質量部である。得られた組成物の溶液を高速液体クロマトグラフィーで測定する。測定に用いるカラムとしてはシリカゲル担体にオクタデシル基を修飾したカラム(ODSカラム)が挙げられる。組成物には高分子化合物が含まれるため、カラムの細孔径は80Å~300Åであることが望ましい。本発明の組成物に含まれる環状低分子化合物は、液体クロマトグラフィーの面積百分率により算出する。
【0130】
液体クロマトグラフィーの測定条件の検討方法を詳しく説明する。まず、本発明の組成物における良溶媒を移動相として試料溶解溶媒のみで測定を行い、溶媒由来のピークの保持時間を記録する。次に、本発明の組成物を同条件で測定して、全てのピークの面積値を合算する。次に、移動相に本発明の組成物における貧溶媒を1容積%添加して測定を行い、得られたピークの面積値を合算する。この操作を繰り返し、液体クロマトグラフィーで得られたピークの面積値が、移動相が良溶媒のみの場合の面積値に対して10%以上減少したときの移動相組成を記録する。この移動相組成に対して移動相の貧溶媒組成を1容積%減らした条件を環状低分子化合物の定量に用いる測定条件とする。本条件において、試料溶解溶媒のピークに近接するピークが環状低分子化合物のピークに対応する。なお、組成物の良溶媒としては、例えばトルエン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、組成物の貧溶媒としては、例えばアセトニトリル、メタノールなどが挙げられる。
各ピークに含まれる化合物の構造解析は、各ピークを分取して溶液を濃縮し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法を用いた質量分析(MALDI-TOFMS)を用いて実施することができる。
上記のようにして測定された液体クロマトグラフィーの結果から、次の式により環状低分子化合物の面積百分率を算出できる。
環状低分子化合物の面積百分率=環状低分子化合物の面積値/(環状低分子化合物の面積値+高分子化合物の面積値)×100
なお、組成物には複数の環状低分子化合物が含まれることがあるため、環状低分子化合物のピークが複数検出されることもある。その場合、複数の環状低分子化合物の全てのピーク面積の総和が、環状低分子化合物のピーク面積に相当する。
【0131】
4.発光素子用膜
本発明の組成物を用いることにより、本発明の組成物及び/又はその硬化物を含有する発光素子用膜を形成することができる。発光素子用膜は、例えば、発光素子の有機層として用いることができる。発光素子用膜の厚さは、通常、1nm~10μmである。
【0132】
発光素子用膜は、高分子化合物、環状低分子化合物及び溶媒を含有する組成物(以下、「インク」と言う。)を用いて、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ-コート法及びノズルコート法等の湿式法により作製することができる。インクの粘度は、湿式法の種類によって調整すればよいが、好ましくは25℃において1~20mPa・sである。
【0133】
インクに含まれる溶媒は、好ましくは、インク中の固形分を溶解又は均一に分散できる溶媒である。インクにおいて、溶媒の使用量は、前記環状低分子化合物及び前記高分子化合物の合計1質量部に対して、通常、10~1000質量部である。溶媒として具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒などが挙げられる。
【0134】
発光素子用膜の作製において、高分子化合物に含まれる式(X)で表される構成単位及び/又は式(Y)で表される構成単位が架橋基を有する場合、当該高分子化合物を架橋させるための加熱温度は、通常、50℃~300℃であり、より好ましくは190℃~220℃である。加熱の時間は、通常、1分~1000分であり、好ましくは40分~80分である。また、架橋は、紫外光、近紫外光、可視光等の照射により行ってもよい。
【0135】
5.発光素子
本実施形態の発光素子は、陽極、陰極、並びに、前記陽極及び前記陰極の間に設けられ、前記組成物を含有する有機層を有する発光素子である。有機層としては、例えば、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層が挙げられる。これらの少なくとも1つの層が本発明の組成物を含有する。
【0136】
本発明の組成物を含有する有機層は、通常、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層及び電子注入層からなる群から選ばれる1種以上の層であり、好ましくは、正孔輸送層である。これらの層に含まれる材料としては、本発明の組成物の他、各々、上述した発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、正孔注入材料及び電子注入材料等が挙げられる。
【0137】
これらの有機層は、本発明の組成物と、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料又は電子注入材料とを、上述した溶媒に溶解させインクを調製して、上述した発光素子用膜の作製と同じ方法を用いて形成することができる。
【0138】
発光素子は、陽極と陰極の間に発光層を有する。本実施形態の発光素子は、正孔注入性及び正孔輸送性の観点からは、陽極と発光層との間に、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも1層を有することが好ましく、電子注入性及び電子輸送性の観点からは、陰極と発光層の間に、電子注入層及び電子輸送層の少なくとも1層を有することが好ましい。
【0139】
本実施形態の発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層等の各層の形成方法としては、通常、低分子化合物を用いる場合、例えば、粉末からの真空蒸着法、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、高分子化合物を用いる場合、例えば、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。積層する層の順番、数及び厚さは、発光効率及び輝度寿命を勘案して調整する。
【0140】
これらの積層された有機層(特に、正孔輸送層、電子輸送層及び発光層)は、湿式成膜法で形成することが好ましい。湿式成膜法は、有機材料を含む溶液を順次塗布して複数の有機層を形成する方法である。しかし、形成した有機層上に他の溶液を塗布する際に、有機層が該溶液に溶解したり、有機材料が層を超えて溶出又は混入したりすることがあり、発光素子の特性に悪影響を与えることがある。これを避けるため、当該有機材料には架橋基を有することが好ましい。つまり、架橋基を有する有機材料を用いて各層を塗布形成した後、該架橋基を架橋させて該層を不溶化することにより硬化性が向上し、発光素子特性に優れた有機層を形成することができる。特に、本発明の組成物に含まれる高分子化合物は1以上の架橋基を有することが好ましい。
【0141】
また、本発明の組成物には、高分子化合物とともに、所定割合の環状低分子化合物を含んでいる。そのため、当該組成物を含む溶液を用いて湿式成膜法で形成した有機層(膜)は、硬化性が向上し耐溶剤性に優れたものとなる(表1の実施例及び比較例における残膜率を参照)。この理由は必ずしも明らかではないが、次のような理由によるものと考えられる。一般に、有機層の残膜率を向上させるには組成物中の分子の運動性を低下させることが必要となる。組成物の大多数を占める鎖状高分子成分が併進運動を行えるのに対して、環状低分子化合物は鎖状成分との絡み合いが起こりやすく運動性が低い。このような運動性の低い環状低分子化合物が組成物に少量含まれることで、組成物全体の運動性の低下が起こり、残膜率が向上した、すなわち膜硬化性が向上したと考えられる。
【0142】
発光素子における基板は、電極を形成することができ、かつ、有機層を形成する際に化学的に変化しない基板であればよく、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板である。不透明な基板の場合には、基板から最も遠くにある電極が透明又は半透明であることが好ましい。
陽極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物、半透明の金属が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ;インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等の導電性化合物;銀とパラジウムと銅との複合体(APC);NESA、金、白金、銀、銅である。
陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム等の金属;それらのうち2種以上の合金;それらのうち1種以上と、銀、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金;並びに、グラファイト及びグラファイト層間化合物が挙げられる。合金としては、例えば、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、カルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
陽極及び陰極は、各々、2層以上の積層構造としてもよい。
【0143】
本実施形態の発光素子は、例えば、コンピュータ、テレビ、携帯端末等のディスプレイ、照明に用いることができる。
【実施例
【0144】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0145】
(重量平均分子量の測定)
実施例において、高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、移動相にテトラヒドロフランを用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。
【0146】
(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の条件)
測定する高分子化合物を約0.05質量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、GPC装置(東ソー(株)製、商品名:HLC-8320GPC)に10μL注入した。移動相は、1.0mL/分の流量で流した。カラムとして、PLgel MIXED-B(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いた。検出器にはUV-VIS検出器(東ソー(株)製、商品名:UV-8320GPC)を用いた。
【0147】
<合成例1>
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物(M1)19.0569g(21.50mmol)、化合物(M2)17.413g(18.94mmol)、化合物(M3)1.788g(3.34mmol)、ジクロロビス[トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン]パラジウム5.89mg(0.0068mmol)、及びトルエン(569g)を混合し、80℃に加熱した。得られた混合物に、20質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(77.1g)を加え3時間撹拌し、さらに化合物(M1)0.233g(0.26mmol)を加え1時間撹拌した。その後、そこへフェニルボロン酸(272mg)を加え、さらに15時間撹拌した。
その後、室温(25℃)まで冷却し、反応液をトルエン(2344g)で希釈し、イオン交換水(150g)で洗浄した。得られたトルエン溶液をアルミナ及びシリカゲルを混合したカラムに通すことにより精製した。得られたトルエン溶液を10質量%塩酸(150g)、3質量%アンモニア水(150g)、イオン交換水(150g)の順で、それぞれ2回ずつ洗浄し、アルミナ及びシリカゲルを混合したカラムを通すことにより精製した。
得られたトルエン溶液を4.5倍量のメタノールに滴下し、1時間撹拌した後、得られた固体をろ取し、乾燥させることで、高分子化合物(P1)と環状低分子化合物1との混合物Aを得た(27.8g)。
【0148】
混合物Aのポリスチレン換算の重量平均分子量は、1.07×105であった。後述する(環状低分子化合物の定量)の項に記載された液体クロマトグラフィーの結果より(図1)、混合物Aに含まれる環状低分子化合物1の量(面積百分率)は8.0%であった。
また、環状低分子化合物1について、後述する(環状低分子化合物の定量)の項に従い構造解析を実施した結果、下記式で表される化合物であることを確認した。これらの化合物は、図3の結果に対応する。なお、下記式中、(M1’)は原料である化合物(M1)から2つの反応性基(-B(pin))を除いた2価の基を表し、(M2’)は原料である化合物(M2)から2つの臭素原子を除いた2価の基を表し、(M3’)は原料である化合物(M3)から2つの臭素原子を除いた2価の基を表す。
【0149】
<合成例2>
合成例1で得られた混合物A(8.0g)をトルエンに溶解させ、1.0質量%溶液(800g)を調製した。この溶液を、3200gの酢酸エチルに滴下し、さらに2時間半撹拌後、静置し、高分子化合物を沈殿させた。デカンテーションし、上澄み液を取り除いた後、得られた沈殿に500gのトルエンを加え再溶解させた。得られたトルエン溶液を2600gのメタノール溶液に滴下し、さらに40分撹拌後、得られた固体をろ取し、乾燥させ、高分子化合物(P)を得た(5.6g)。
高分子化合物(P)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、1.34×105であった。後述する(環状低分子化合物の定量)の項に記載された液体クロマトグラフィーの結果より(図2)、環状低分子化合物は、反応系中に検出されなかった。
【0150】
(環状低分子化合物の定量)
合成例1で得られた混合物A、及び合成例2で得られた高分子化合物(P)のそれぞれに含まれる環状低分子化合物1の定量は、以下の方法で実施した。
(工程1)
試料(混合物A又は高分子化合物(P))を5mg秤量し、5mLのテトラヒドロフランに溶解させた。固形分が見えなくなるまで室温(25℃)で静置して試料を溶解させた。
(工程2)
以下の条件で試料溶液の液体クロマトグラフィー測定を実施した。
・液体クロマトグラフィー装置:(株)島津製作所 LC-20Aシリーズ
・移動相:テトラヒドロフラン/アセトニトリル=76/24(容積%)
・カラム:GLサイエンス(株)製 Inertsil ODS WP300 4.6mm×250mm
・測定温度:35℃
・検出器:(株)島津製作所 SPD-20A 365nm
・流量:0.5mL/分
【0151】
混合物Aの主な成分のピークは4.0分付近に出現し、溶媒が溶出する時間である6.0分付近にも小さなピークが出現した。各ピークを分取して溶液を濃縮後、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法を用いた質量分析(MALDI-TOFMS)を実施して構造解析を行ったところ、4.0分付近のピークは高分子化合物(P1)であり、6.0分付近のピークは複数の環状低分子化合物1であることを確認した。具体的には、図1の混合物Aの液体クロマトグラフィーのチャートにおける6.0分付近の成分を分取してMALDI-TOFMS分析した結果を図3に示す。
高分子化合物(P)についても同様に構造解析したところ、4.0分付近のピークは高分子化合物(P)であり、環状低分子化合物からなるピークは確認されなかった(図2)。
【0152】
液体クロマトグラフィーの結果から環状低分子化合物の面積百分率を以下の式で計算した。環状低分子化合物及び高分子化合物の面積は、図1において、LC解析ソフト(LabSolutions、(株)島津製作所製)を用いて求めた。ピークが重なっている部分の処理については、ピークとピークの間の極小点で垂直分割して面積値、面積百分率を求めた。
【0153】
環状低分子化合物の面積百分率=環状低分子化合物の面積値/(環状低分子化合物の面積値+高分子化合物の面積値)×100
【0154】
<実施例1~3、比較例1~3> 残膜率の評価
国際公開第2016/047536号の[0458]~[0463]に記載の方法に準じて残膜率の評価を行った。合成例1で得られた混合物Aと合成例2で得られた高分子化合物(P)とを所定の割合(質量%)で混合し、残膜率を評価した。結果を表1及び図4に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
表1及び図4の結果から、環状低分子化合物が所定の割合となる場合に残膜率が向上していることから、膜の硬化性が向上していると認められた。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の組成物を用いることにより、発光素子において硬化性に優れる有機層を形成することができる。
図1
図2
図3
図4