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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】三次元映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/349 20180101AFI20241128BHJP
   H04N 13/337 20180101ALI20241128BHJP
   H04N 13/128 20180101ALI20241128BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241128BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H04N13/349
H04N13/337
H04N13/128
G09F9/30 349E
G09F9/30 349Z
G09F9/00 313
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020197891
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086078
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】河北 真宏
【審査官】薄井 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-148871(JP,A)
【文献】特開2020-060711(JP,A)
【文献】特開2013-247458(JP,A)
【文献】特開2022-063924(JP,A)
【文献】特開2017-062295(JP,A)
【文献】特開2017-125906(JP,A)
【文献】特開2008-299278(JP,A)
【文献】特開平08-201726(JP,A)
【文献】河北 真宏 Masahiro KAWAKITA,映像情報メディア学会 2019年冬季大会講演予稿集 [CD-ROM] 2019年映像情報メディア学会冬季大会講演予稿集 PROCEEDINGS OF THE 2019 ITE WINTER ANNUAL CONVENTION PROCEEDINGS OF THE 2019 ITE WINTER ANNUAL CONVENTION
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/349
H04N 13/337
H04N 13/128
G09G 5/36
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多視点映像を重畳して三次元映像を表示する三次元映像表示装置であって、
時間方向に視点位置をずらした前記多視点映像を同じ表示位置に二次元映像として表示する二次元映像表示手段と、
前記多視点映像を構成する視点映像の半画素ずらしにより前記視点映像の解像度を高める高解像度化手段と、
前記高解像度化手段の前段または後段に備えられ、前記多視点映像を構成する視点映像ごとに光軸をシフトして前記視点映像を増やすことで再生光線の密度を高める高密度化手段と、
前記解像度および前記密度を高めた視点映像を重畳結像し、拡散して前記三次元映像を表示する表示光学系と、
前記多視点映像のフレームごとに付加された制御信号に基づいて、前記高解像度化手段における半画素ずらし、および、前記高密度化手段における光軸のシフトを制御する駆動手段と、を備え
前記高解像度化手段は、
前記駆動手段の制御によって、光の偏光を切り替える第1偏光切替素子と、
前記第1偏光切替素子で偏光が切り替えられた多視点映像を前記偏光に応じて斜め方向に半画素ずらす複屈折素子と、を備え、
前記高密度化手段は、
前記駆動手段の制御によって、光の偏光を切り替える第2偏光切替素子と、
前記第2偏光切替素子で偏光が切り替えられた多視点映像を個々の視点映像に分離して結像させる結像手段と、
前記視点映像ごとの映像光を前記偏光に応じて異なる方向に回折させて光軸をシフトさせる偏光回折素子と、を備え、
前記多視点映像のフレーム周波数をfHzとした場合、
前記駆動手段は、前記制御信号に基づいて、前記第1偏光切替素子および前記第2偏光切替素子の偏光を切り替えるすべての組み合わせをf/4Hzの周波数で繰り返すように、前記高解像度化手段および前記高密度化手段を制御することを特徴とする三次元映像表示装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記制御信号に基づいて、前記第1偏光切替素子における偏光の切り替えをf/2Hz周期で行うとともに、前記第2偏光切替素子における偏光の切り替えを、前記第1偏光切替素子の制御から1フレームずらして、f/2Hz周期で行うことを特徴とする請求項に記載の三次元映像表示装置。
【請求項3】
前記多視点映像のフレームごとに、前記フレームの予め定めた画素位置に、前記第1偏光切替素子および前記第2偏光切替素子のそれぞれを駆動制御するための制御信号が付加されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の三次元映像表示装置。
【請求項4】
多視点映像を重畳して三次元映像を表示する三次元映像表示装置であって、
時間方向に視点位置をずらした前記多視点映像を同じ表示位置に二次元映像として表示する二次元映像表示手段と、
前記多視点映像を構成する視点映像の半画素ずらしにより前記視点映像の解像度を高める高解像度化手段と、
前記高解像度化手段の前段または後段に備えられ、前記多視点映像を構成する視点映像ごとに光軸をシフトして前記視点映像を増やすことで再生光線の密度を高める高密度化手段と、
前記解像度および前記密度を高めた視点映像を重畳結像し、拡散して前記三次元映像を表示する表示光学系と、
前記多視点映像のフレームごとに付加された制御信号に基づいて、前記高解像度化手段における半画素ずらし、および、前記高密度化手段における光軸のシフトを制御する駆動手段と、を備え
前記高解像度化手段は、
前記駆動手段の制御によって、光の偏光を切り替える第1偏光切替素子と、
前記第1偏光切替素子で偏光が切り替えられた多視点映像を前記偏光に応じて斜め方向に半画素ずらす複屈折素子と、を備え、
前記高密度化手段は、
前記駆動手段の制御によって、光の偏光を切り替える第2偏光切替素子と、
前記第2偏光切替素子で偏光が切り替えられた多視点映像を個々の視点映像に分離して結像させる結像手段と、
前記視点映像ごとの映像光を前記偏光に応じて異なる方向に回折させて光軸をシフトさせる偏光回折素子と、を備え、
前記多視点映像のフレームごとに、前記フレームの予め定めた画素位置に、前記第1偏光切替素子および前記第2偏光切替素子のそれぞれを駆動制御するための制御信号が付加されていることを特徴とする三次元映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元映像を表示する三次元映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dメガネを用いた二眼式をはじめとして、多様な三次元映像表示方法が提案されている。特に、空間像再生型の三次元映像表示方式は、水平方向および垂直方向の視差を再現できる利点がある。この方式は、多方面に光線を再生するため、非常に多くの映像情報が必要になる。
この三次元映像表示方式において、光線を高密度に再生するため、複数台の映像表示装置(プロジェクタ等)を用いて多視点の映像を表示する手法が開示されている(特許文献1,2参照)。
また、1台の三次元映像表示装置で、多視点映像の光線の再生方向を時分割に切り替える手法が開示されている(特許文献3参照)。この手法は、異なる視点位置の画像を時分割で交互に表示することで、視点数を増加させ、高精細化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-81440号公報
【文献】特開2017-62295号公報
【文献】特開2020-148871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載の手法は、複数台の映像表示装置を組み合わせるため、装置全体の規模が大きくなってしまう。一方、特許文献3に記載の手法は、時分割で多視点映像を表示するため、映像表示装置の大型化を防ぐことができる。
しかし、特許文献3に記載の手法は、さらなる高精細化のために、分割数を多くして再生光線を増やすには、時分割光線を再生するための駆動素子の制御が煩雑となるため、さらなる工夫が求められていた。
【0005】
本発明は、このような従来手法の課題に鑑みてなされたもので、従来よりも時分割光線を再生する制御を簡易化して、高精細な三次元映像を表示することが可能な三次元映像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る三次元映像表示装置は、多視点映像を重畳して三次元映像を表示する三次元映像表示装置であって、二次元映像表示手段と、高解像度化手段と、高密度化手段と、表示光学系と、駆動手段と、を備える構成とした。
【0007】
かかる構成において、三次元映像表示装置は、二次元映像表示手段によって、多視点映像を表示する。この多視点映像は、空間的に視点位置の異なる視点映像を二次元配列した映像であって、時間方向に予め定めた周期で視点位置がずれた映像である。
【0008】
そして、三次元映像表示装置は、高解像度化手段によって、多視点映像を構成する視点映像の半画素ずらしにより視点映像の解像度を高める。この半画素ずらしは、偏光切替素子と複屈折素子とで実現することができる。この高解像度化手段は、偏光切替素子の状態を切り替えて、多視点映像の偏光を切り替えることで、複屈折素子により、偏光状態に応じて多視点映像の半画素ずらしを実現することができる。
【0009】
そして、三次元映像表示装置は、高密度化手段によって、多視点映像を構成する視点映像ごとに光軸をシフトして視点映像を増やすことで再生光線の密度を高める。この光軸のシフトは、偏光切替素子と結像手段と偏光回折素子とで実現することができる。この高密度化手段は、偏光切替素子の状態を切り替えるとともに、結像手段により多視点映像を個々の視点映像に分離して結像させる。このとき、高密度化手段は、偏光回折素子により、視点映像ごとの映像光を偏光に応じて異なる方向に回折させることで、光軸をシフトさせることができる。
【0010】
また、三次元映像表示装置は、表示光学系によって、視点映像の解像度および光線の密度を高めた視点映像を重畳結像し、拡散する。これによって、観察者は、視点位置に応じた映像光の光線により三次元映像を視認することができる。
また、三次元映像表示装置は、駆動手段によって、多視点映像のフレームごとに付加された制御信号に基づいて、高解像度化手段における半画素ずらし、および、高密度化手段における光軸のシフトを制御する。
このように、三次元映像表示装置は、多視点映像に付加されている制御信号により、多視点映像のフレームごとに、半画素ずらし、および、光軸のシフトを容易に制御することができる。
なお、三次元映像表示装置は、高密度化手段を多段に構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、視点位置の異なる多視点映像を、時分割で切り替えて表示する場合、多視点映像に付加されている制御信号により、時分割光線を再生する制御を容易かつ確実に行うことができる。
これによって、本発明は、多視点映像を精度よく時分割表示することができ、高精細な三次元映像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置の構成を示す平面図である。
図3】多視点映像の構造を説明するための説明図であって、(a)は1,2フレーム目ごと、(b)は3,4フレーム目ごとの映像を示す。
図4】半画素ずれた映像を生成する手法を説明するための説明図であって、(a)は解像度が2倍の視点映像、(b),(c)は、(a)の視点映像から画素をずらして抽出した視点映像を示す。
図5】多視点映像に付加された制御信号を説明するための説明図であって、(a)は多視点映像の制御信号を記録する領域を示し、(b)は(a)の領域を拡大した拡大図である。
図6】高解像度化手段における半画素ずらしの処理を説明するための説明図であって、(a)は半画素ずらしを行っていない状態を示す図、(b)は半画素ずらしを行っている状態を示す図である、
図7】高密度化手段における光軸のシフトを説明するための説明図であって、(a)は映像光の偏光状態に応じて光軸をシフトした図、(b)は映像光の(a)とは異なる偏光状態に応じて光軸をシフトした図である。
図8】偏光回折素子と集光レンズとの位置関係を説明するための説明図である。
図9】色収差の補正手法を説明するための説明図であって、(a)は色収差が発生する仕組み、(b)は色収差の補正手法を示す図である。
図10】駆動手段の駆動パターンを説明するための説明図であって、(a)は、第1駆動手段のスイッチの状態と偏光切替素子の液晶応答特性とを示し、(b)は、第2駆動手段のスイッチの状態と偏光切替素子の液晶応答特性とを示す図である。
図11】駆動手段の他の駆動パターンを説明するための説明図であって、(a)は、第1駆動手段のスイッチの状態と偏光切替素子の液晶応答特性とを示し、(b)は、第2駆動手段のスイッチの状態と偏光切替素子の液晶応答特性とを示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置の動作を示すフローチャートである。
図13】本発明の変形例の実施形態に係る三次元映像表示装置の構成を示す平面図である。
図14】高密度化手段を2段構成にした場合の視点映像のシフト位置を示す図であって、(a)は斜め方向に順次シフトした視点位置を示し、(b)は水平方向と斜め方向とに順次シフトした視点位置を示す。
図15】高密度化手段の変形例を示す図であって、(a)は結像手段の光路上の後段に偏光ビームスプリッタ群を備えた構成例、(b)は偏光ビームスプリッタを用いて光軸をずらす手法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
≪三次元映像表示装置の構成≫
まず、図1図2を参照して、本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置1の構成について説明する。
【0014】
三次元映像表示装置1は、多視点映像を重畳して、水平方向および垂直方向に視差を有する三次元映像Tを表示するものである。
図1に示すように、三次元映像表示装置1は、二次元映像表示手段10と、高解像度化手段20と、高密度化手段30と、表示光学系40と、駆動手段50と、を備える。
【0015】
二次元映像表示手段10は、時間方向に視点位置をずらした多視点映像を同じ表示位置に二次元映像として表示するものである。
この多視点映像は、水平方向および垂直方向の異なる複数の視点位置の映像(視点映像)をフレームごとに斜め方向に交互に半画素ずらした映像である。また、多視点映像は、予め定めた周期で、さらに視点位置が異なるとともにフレームごとに斜め方向に交互に半画素ずらした映像が挿入されている。
二次元映像表示手段10は、多視点映像を高解像度化手段20に照射する。また、二次元映像表示手段10は、駆動手段50に多視点映像を出力する。
【0016】
高解像度化手段20は、多視点映像を構成する視点映像の半画素ずらしにより視点映像の解像度を高めるものである。この高解像度化手段20は、多視点映像をフレームごとに斜め方向に半画素ずらす。ここでは、高解像度化手段20は、駆動手段50の制御によって、二次元映像表示手段10が表示する多視点映像を、フレームごとに光路を斜め方向に半画素ずらして、多視点映像を高密度化手段30に照射する。
【0017】
高密度化手段30は、多視点映像を構成する視点映像ごとに光軸をシフトして視点映像を増やすことで再生光線の密度を高めるものである。この高密度化手段30は、時間方向に視点位置の異なる多視点映像の光線を、視点位置に応じてシフトする。ここでは、高密度化手段30は、駆動手段50の制御によって、高解像度化手段20が表示する多視点映像を、視点位置の異なるタイミングで光軸を視点位置のずれた分だけシフトして、多視点映像を表示光学系40に照射する。
なお、高密度化手段30は、高解像度化手段20の前段または後段のいずれに備えても構わない。
【0018】
表示光学系40は、高密度化手段30から背面照射される、視点映像の解像度および光線の密度を高めた視点映像を重畳結像し、拡散して三次元映像Tを表示するものである。
駆動手段50は、多視点映像のフレームごとに付加された制御信号に基づいて、高解像度化手段20における半画素ずらし、および、高密度化手段30における光軸のシフトを制御するものである、
【0019】
以下、図2を参照して、三次元映像表示装置1の各構成について詳細に説明する。
なお、以降の説明において、視線の水平方向をx方向、垂直方向をy方向、奥行き方向をz方向として説明する。
【0020】
<二次元映像表示手段>
図2に示すように、二次元映像表示手段10は、多視点映像を表示する際に、多視点映像の個々の視点映像Iを、二次元映像として表示する。なお、表示する視点映像Iの間は隙間があってもよいし、なくてもよい。隙間がある場合、当該隙間は、黒映像の表示、または、遮光を行うこととする。
二次元映像表示手段10は、図示を省略した光源からの光を背面照射されることで表示する液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、LED光源を自発光するマイクロLEDディスプレイ等の直視型ディスプレイで構成することができる。
また、二次元映像表示手段10は、水平偏光または垂直偏光のいずれか一方に偏光された多視点映像を表示するものとする。ここでは、多視点映像が水平偏光であることとする。
【0021】
ここで、図3図5を参照して、二次元映像表示手段10が表示する多視点映像の構造について説明する。
図3に示すように、多視点映像は、視点位置の異なる視点映像を、垂直方向(y方向)にm個(m≧2)、水平方向(x方向)にn個(n≧2)ずつ二次元配列した映像である。
【0022】
ここでは、多視点映像は、予め定めた周期として、2フレームごとに、垂直方向および水平方向にそれぞれ視点位置が1/2相当分ずれた映像とする。
図3(a)に示す(4k+1),(4k+2)フレームFA(kは0以上の整数)で表示する多視点映像(FA0,0~FAm-1,n-1)と、図3(b)に示す(4k+3),(4k+4)フレームFB(kは0以上の整数)で表示する多視点映像(FB0,0~FBm-1,n-1)とは、垂直方向および水平方向にそれぞれ視点位置が1/2相当分ずれた映像である。
例えば、フレームFBの視点映像FB0,1は、フレームFAの視点映像FA0,0,FA0,1,FA1,0,FA1,1の中間の視点映像である。
また、図3(a)の(4k+1),(4k+2)フレームFAは、それぞれ半画素ずれか映像である。また、図3(b)の(4k+3),(4k+4)フレームFBは、それぞれ半画素ずれた映像である。
【0023】
なお、半画素ずれた映像は、解像度が2倍の映像から生成することができる。例えば、図4(a)に示す視点映像IXを、多視点映像で使用する視点映像の解像度が2倍の映像とする。図4中、〇印,□印は、画素を示す。〇印および□印の画素は、それぞれ水平方向および垂直方向に1画素ずれた画素である。
図4(b)に示す視点映像I1は、図4(a)に示す視点映像IXの〇印の画素を抽出した映像である。また、図4(c)に示す視点映像I2は、図4(a)に示す視点映像IXの□印の画素を抽出した映像である。
このように、解像度が視点映像IXの半分になった視点映像I1,I2は、それぞれ水平方向および垂直方向に半画素ずれた映像となる。
【0024】
また、多視点映像には、後記する駆動手段50が、高解像度化手段20および高密度化手段30を制御(ON/OFF制御)するための制御信号を含んでいる。
具体的には、図5(a)に示すように、多視点映像Gの視点映像以外の領域Aに、制御信号を記録しておく。
例えば、図5(b)に示すように、領域Aは、多視点映像Gの左上の2画素であって、左側の画素が高解像度化制御信号Sig1、右側の画素が高密度化制御信号Sig2である。
【0025】
高解像度化制御信号Sig1は、高解像度化手段20を制御するための信号である。また、高密度化制御信号Sig2は、高密度化手段30を制御するための信号である。
高解像度化制御信号Sig1および高密度化制御信号Sig2は、例えば、画素値が(R,G,B)=(255,255,255)の場合、ONを意味し、(R,G,B)=(0,0,0)の場合、OFFを意味することとする。“0”,“255”のように2値を用いる必要はなく、例えば、“126”以上の値の場合、ONを意味し、“126”未満の値の場合、OFFを意味することとしてもよい。
また、ここでは、制御信号の位置として、多視点映像Gの左上の2画素を用いる例を示したが、右上、左下、右下等、予め定めた画素位置であればよい。
また、ここでは、多視点映像G中、視点映像Iの隙間に制御信号を付加する例を示したが、多視点映像Gに視点映像Iの隙間がない場合、視点映像Iの左上画素等、予め定めた画素位置を制御信号の位置とすればよい。
【0026】
このように、高解像度化制御信号Sig1および高密度化制御信号Sig2で制御を行う場合、制御対象となるフレームの表示と、駆動手段50の高解像度化手段20および高密度化手段30への状態切り替えの指示とが同じタイミングとなり、状態の切り替わりに遅延が生じてしまう。
そこで、二次元映像表示手段10は、時系列に多視点映像のフレームを駆動手段50に出力する際に、フレーム時間だけ遅延して多視点映像を高解像度化手段20に照射する。
なお、高解像度化制御信号Sig1および高密度化制御信号Sig2を、制御対象のフレームの1フレーム前のフレームに含ませることとしてもよい。これによって、二次元映像表示手段10は、多視点映像を高解像度化手段20に照射する際に、1フレームの遅延処理を行う必要がなくなる。
図2に戻って、三次元映像表示装置1の構成について説明を続ける。
【0027】
<高解像度化手段>
高解像度化手段20は、偏光切替素子21と、複屈折素子22と、を備える。
偏光切替素子21(第1偏光切替素子)は、二次元映像表示手段10が表示する多視点映像の偏光を電気的に切り替えるものである。
偏光切替素子21は、二次元映像表示手段10の前面に配置され、二次元映像表示手段10が出射する光の偏光を、駆動手段50の制御により切り替える。
偏光切替素子21には、例えば、液晶の偏光ローテータ等を用いることができる。
この偏光切替素子21は、駆動手段50の電圧制御によって、平常時(OFF)は水平偏光(p偏光)の光をそのまま通過させ、電圧印加時(ON)は水平偏光の光を垂直偏光(s偏光)に変換して出射する。
偏光切替素子21によって偏光が切り替えられた光は、複屈折素子22に照射される。
なお、二次元映像表示手段10が表示する多視点映像として、一方向に偏光していない映像を用いる場合は、二次元映像表示手段10の後段に偏光子を挿入して、一方向に偏光した光に変換すればよい。
【0028】
複屈折素子22は、偏光切替素子21で偏光が切り替えられた多視点映像を偏光に応じて斜め方向に半画素ずらすものである。この複屈折素子22は、偏光切替素子21から照射される光を偏光状態に応じて複屈折させる。この複屈折素子22には、水晶、方解石等の異方性の結晶を用いることができる。ここでは、複屈折素子22は、水平偏光の光(常光線)を屈折させずに透過し、垂直偏光の光(異常光線)を屈折させる。
複屈折素子22は、屈折率に応じて、斜め方向の半画素分のずれをシフト量として発生させるような厚みを有するものとする。
具体的には、常光線の屈折率をn、異常光線の屈折率をn、複屈折素子22の光の進行方向の厚みをt、としたとき、複屈折素子22の入射光の出射時における光線の位置のシフト量Δdは、以下の式(1)で表される。
【0029】
【数1】
【0030】
このシフト量Δdが斜め方向の画素ピッチの1/2となるように、複屈折素子22の厚みtを定めればよい。
このように、高解像度化手段20を構成することで、高解像度化手段20は、図6に示す光路の変更を行う。
図6(a)に示すように、後記する駆動手段50の第1駆動手段51が偏光切替素子21への電圧の印加を行わない場合(スイッチS1:OFF)、偏光切替素子21は入射した水平偏光(p偏光)の光をそのまま通過して、複屈折素子22に照射する。
そして、複屈折素子22は、入射した水平偏光(p偏光)の光を屈折させずに透過する。
また、図6(b)に示すように、後記する駆動手段50の第1駆動手段51が偏光切替素子21への電圧の印加を行った場合(スイッチS1:ON)、偏光切替素子21は入射した水平偏光(p偏光)の光を垂直偏光(s偏光)に変換して、複屈折素子22に照射する。
そして、複屈折素子22は、入射した垂直偏光(s偏光)の光を半画素分だけシフトする。
これによって、高解像度化手段20は、視点映像Iの斜め方向の画素ピッチをgとしたとき、駆動手段50(第1駆動手段51)の制御によって、画素ピッチをg/2に高解像度化することができる。
図2に戻って、三次元映像表示装置1の構成について説明を続ける。
【0031】
<高密度化手段>
高密度化手段30は、偏光切替素子31と、結像手段32と、偏光回折素子33(33a,33b)と、迷光遮断手段34と、を備える。
偏光切替素子31(第2偏光切替素子)は、高解像度化手段20の前面に配置され、高解像度化手段20で高解像度化された多視点映像の偏光を電気的に切り替えるものである。
偏光切替素子31は、偏光切替素子21と同様、液晶の偏光ローテータ等を用いることができる。
この偏光切替素子31は、駆動手段50の電圧制御によって、平常時(OFF)は水平偏光(p偏光)の光をそのまま通過させ、電圧印加時(ON)は水平偏光の光を垂直偏光(s偏光)に変換して出射する。
偏光切替素子31によって偏光が切り替えられた光は、結像手段32に照射される。
【0032】
結像手段32は、偏光切替素子31で偏光が切り替えられた多視点映像を個々の視点映像に分離して結像させるものである。
結像手段32は、視点映像Iに対向する位置に結像レンズ320を二次元状に配列した結像レンズ群として構成される。
【0033】
結像レンズ320は、入射光を結像するレンズであって、例えば、凸レンズで構成することができる。なお、結像レンズ320の形状は、視点映像Iの形状に合わせて、矩形形状であってもよいし、円形状であってもよい。
結像手段32は、個々の視点映像Iの偏光状態が切り替えられた光を偏光回折素子33(33a)に照射する。
【0034】
偏光回折素子33は、結像レンズ320から照射された光を偏光状態に応じて異なる方向に回折させて、光軸をシフトさせるものである。偏光回折素子33は、一対の偏光回折素子33a,33bで構成される。
偏光回折素子33は、水平偏光または垂直偏光の入射光を、偏光状態に応じて、異なる方向に±1次光として回折させる。
この偏光回折素子33は、水平偏光または垂直偏光の入射光の偏光状態に応じて、回折格子の溝方向を上下方向としたとき、左右方向に入射光を回折させる。なお、偏光状態に応じて、回折方向を変える偏光回折素子33には、公知の素子を用いればよい。例えば、特開2008-233539号公報、特開2016-136165号公報、特開2006-106726号公報等で開示されている偏光回折素子を用いることができる。
【0035】
偏光回折素子33aは、結像レンズ320から入射した光を、偏光状態に応じて回折することで、偏光回折素子33bの異なる位置に+1次光または-1次光として出射するとともに、偏光状態を切り替えるものである。
【0036】
偏光回折素子33bは、偏光回折素子33aと同じ向きで平行に離間して配置され、偏光回折素子33aで回折された光を、偏光状態に応じて、偏光回折素子33aに入射した光の方向に戻すとともに、偏光状態を切り替えるものである。
偏光回折素子33bは、回折後の光を迷光遮断手段34に照射する。
偏光回折素子33aおよび偏光回折素子33bは、多視点映像のそれぞれの視点映像Iが集光する位置の間隔を、視点映像Iのピッチ(映像中心間隔)の1/2となるように配置される。なお、偏光回折素子33aおよび偏光回折素子33bの配置については、あとで詳細に説明する。
【0037】
迷光遮断手段34は、偏光回折素子33aおよび偏光回折素子33bで偏光が変化しなかった0次光や、2次以上の高次光を迷光として、偏光回折素子33aおよび偏光回折素子33bの後段の光路上において遮断するものである。この迷光遮断手段34には、例えば、±1次光が照射される領域以外を遮光する遮光板で構成することができる。
【0038】
このように、高密度化手段30を構成することで、高密度化手段30は、図7に示すように光路の変更を行う。なお、図7では、結像手段32および迷光遮断手段34の記載を省略している。
図7(a)に示すように、後記する駆動手段50の第2駆動手段52が偏光切替素子31への電圧の印加を行わない場合(スイッチS2:OFF)、偏光切替素子31は入射した水平偏光(p偏光)の光をそのまま通過して、偏光回折素子33aに照射する。
そして、偏光回折素子33aは、入射した水平偏光(p偏光)の光を垂直偏光(s偏光)に変換し、-1次光として、偏光回折素子33bに照射する。また、偏光回折素子33bは、入射した垂直偏光(s偏光)の光を水平偏光(p偏光)に変換し、+1次光として出射する。
【0039】
また、図7(b)に示すように、後記する駆動手段50の第2駆動手段52が偏光切替素子31への電圧の印加を行った場合(スイッチS2:ON)、偏光切替素子31は入射した水平偏光(p偏光)の光を垂直偏光(s偏光)に変換して、偏光回折素子33aに照射する。
そして、偏光回折素子33aは、入射した垂直偏光(s偏光)の光を水平偏光(p偏光)に変換し、+1次光として、偏光回折素子33bに照射する。また、偏光回折素子33bは、入射した水平偏光(p偏光)の光を垂直偏光(s偏光)に変換し、-1次光として出射する。
これによって、高密度化手段30は、入射される視点映像Iの光を、水平偏光または垂直偏光の偏光状態に応じて、+1次光または-1次光として、視点映像Iの映像間のピッチの1/2間隔で光軸をシフトさせて後段の表示光学系40に集光させる。例えば、図2において、視点映像Iのx方向(水平方向)のピッチをDxとした場合、表示光学系40の集光レンズ41に集光する位置の間隔はDx/2となる。y方向においても同様である。
図2に戻って、三次元映像表示装置1の構成について説明を続ける。
【0040】
<表示光学系>
表示光学系40は、集光レンズ41と、視域形成レンズ42と、スクリーン43と、を備える。
【0041】
集光レンズ41は、偏光回折素子33で光軸がシフトされた視点映像ごとの映像光を重畳結像するものである。例えば、集光レンズ41は、凸レンズを用いることができる。
この集光レンズ41は、結像レンズ320から、結像レンズ320の焦点距離だけ離間した位置に配置される。
集光レンズ41は、結像手段32から照射され、偏光回折素子33で光軸がシフトされた視点映像Iの光を重畳して視域形成レンズ42に照射する。
【0042】
視域形成レンズ42は、集光レンズ41を介して背面照射される光線の方向を変化させて、画面全体の映像を観察できる領域(有効視域)を制御するものである。例えば、視域形成レンズ42は、凸レンズ、フレネルレンズ等で構成することができる。なお、視域形成レンズ42は、スクリーン43の前面または背面のどちらにあっても構わない。
【0043】
スクリーン43は、集光レンズ41を介して背面照射される多視点映像の光を、進行方向を保ったまま予め定めた範囲に拡散させるものである。なお、予め定めた範囲とは、予め規定される光線間隔の角度であって、例えば、0.2度から2度程度である。このスクリーン43は、一般的な拡散板で構成することができる。例えば、スクリーン表面を微小なレンズ構造としたものや、スクリーンに微小な開口アレイを形成したものを、スクリーン43とすることができる。
このスクリーン43は、多視点映像の光である離散的な入射光線を拡散することで光線間を補間する。
【0044】
<駆動手段>
駆動手段50は、第1駆動手段51と、第2駆動手段52と、を備える。
第1駆動手段51は、高解像度化手段20における多視点映像の偏光状態を切り替える制御を行うものである。
第1駆動手段51は、二次元映像表示手段10が表示する多視点映像のフレームに同期して、高解像度化手段20の偏光切替素子21を電圧制御する。
具体的には、第1駆動手段51は、多視点映像のフレームに付加されている高解像度化制御信号Sig1(図5)を参照して、偏光切替素子21への電圧の印加/非印可の制御を行う。第1駆動手段51は、高解像度化制御信号Sig1で高解像度化手段20の偏光切替素子21への電圧印可を指示された場合、内部のスイッチS1をONにして、偏光切替素子21に電圧を供給する。また、第1駆動手段51は、高解像度化制御信号Sig1で偏光切替素子21への電圧印可の停止を指示された場合、内部のスイッチS1をOFFにして、偏光切替素子21への電圧供給を停止する。
【0045】
第2駆動手段52は、高密度化手段30における多視点映像の偏光状態を切り替える制御を行うものである。
第2駆動手段52は、二次元映像表示手段10が表示する多視点映像のフレームに同期して、高密度化手段30の偏光切替素子31を電圧制御する。
【0046】
具体的には、第2駆動手段52は、多視点映像のフレームに付加されている高密度化制御信号Sig2(図5)を参照して、偏光切替素子31への電圧の印加/非印可の制御を行う。第2駆動手段52は、高密度化制御信号Sig2で高密度化手段30の偏光切替素子31への電圧印可を指示された場合、内部のスイッチS2をONにして、偏光切替素子31に電圧を供給する。また、第2駆動手段52は、高密度化制御信号Sig2で偏光切替素子31への電圧印可の停止を指示された場合、内部のスイッチS2をOFFにして、偏光切替素子31への電圧供給を停止する。
【0047】
(2枚の偏光回折素子の位置関係)
次に、図7図9を参照して、偏光回折素子33aと偏光回折素子33bとの位置関係について説明する。
偏光回折素子33aおよび偏光回折素子33bによる各視点映像の光線のシフト量は、偏光回折素子33の回折格子溝のピッチ(回折ピッチ)と、偏光回折素子33aおよび偏光回折素子33bの距離とによって特定することができる。なお、ここでは、偏光回折素子33に物理的に形成された溝のピッチを回折ピッチとして説明するが、回折に周期性を有する素子であれば、その周期が回折ピッチである。
偏光回折素子33の回折ピッチをp、入射光の波長をλとしたとき、1次光の回折角φは、以下の式(2)で表すことができる。
【0048】
【数2】
【0049】
また、偏光回折素子33aと偏光回折素子33bとの距離をL1としたとき、回折のシフト量Dは、以下の式(3)で表すことができる。
【0050】
【数3】
【0051】
すなわち、偏光回折素子33aと偏光回折素子33bとの距離をL1としたとき、図7(a)に示すように、偏光回折素子33aに入射した水平偏光は、垂直偏光に変換され、-1次光として進行方向を変えて、シフト量Dだけシフトした後、偏光回折素子33bに照射される。また、偏光回折素子33bに入射した垂直偏光は、水平偏光に変換され、+1次光として、偏光回折素子33aに入射した進行方向と同じ方向に回折される。
【0052】
また、図7(b)に示すように、偏光回折素子33aに入射した垂直偏光は、水平偏光に変換され、+1次光として進行方向を変えて、シフト量Dだけシフトした後、偏光回折素子33bに照射される。また、偏光回折素子33bに入射した水平偏光は、垂直偏光に変換され、-1次光として、偏光回折素子33aに入射した進行方向と同じ方向に回折される。
この光線のシフト量Dは、図2の偏光回折素子33で回折されずに集光レンズ41に照射する位置(0次光の照射位置)に対するずれ量である。
このように、偏光回折素子33aと偏光回折素子33bとの距離L1は、前記式(2),式(3)により、特定することができる。
【0053】
(偏光回折素子と集光レンズとの位置関係)
次に、図8を参照して、偏光回折素子33(33a,33b)と集光レンズ41との位置関係について説明する。
結像レンズ320側の偏光回折素子33aは、少なくとも視点映像Iの画素の光線をすべて同じ回折ピッチ内に透過させる位置に配置する必要がある。すなわち、視点映像Iの画素ピッチをg、偏光回折素子33aの回折ピッチをp、結像レンズ320の焦点距離をfとしたとき、偏光回折素子33aと集光レンズ41との距離L2は、以下の式(4)の関係を満たす必要がある。偏光回折素子33bも同様の条件を満たす必要がある。
【0054】
【数4】
【0055】
(色収差について)
偏光回折素子33を用いた場合、前記式(2),式(3)に示したように、視点映像Iの光線の回折のシフト量Dには、波長依存性がある。そのため、集光レンズ41に照射する位置において色収差が発生する。
このような色収差が発生する場合、表示する三次元映像にも、配色パターン等によって、色収差による色にじみが発生する場合がある。そのため、表示する多視点映像は、予め色収差を補正しておくことが好ましい。
【0056】
例えば、図9(a)に示すように、視点映像Iのある画素pxのRGBの光が、偏光回折素子33(33a,33b)によって回折された場合、RGBのそれぞれの波長に応じて回折する量が異なる。
この場合、画素の光が、偏光回折素子33bの同じ位置から出射するようにすればよい。すなわち、図9(b)に示すように、視点映像Iのある色(例えば、G)を基準として、視点映像Iの他の色の表示位置をシフトさせればよい。このシフト量Eは、以下の式(5)で表される。
【0057】
【数5】
【0058】
ここで、pは偏光回折素子33の回折ピッチ、L1は偏光回折素子33aと偏光回折素子33bとの距離、λは基準波長(例えば、G光の波長;550nm)である。
そして、他の色(例えば、R,B)については、基準波長の色を含んだ画素(ここでは、px)から、以下の式(6)に示すΔEだけシフトした画素(pxr,pxb)の色として表示する。なお、λは基準波長以外の色(R,B)の波長を示す。
【0059】
【数6】
【0060】
これによって、三次元映像表示装置1は、色収差の発生を抑えて、観察者に三次元映像を視認させることができる。
【0061】
(駆動手段の駆動パターン)
次に、図10図11を参照(適宜図2参照)して、駆動手段50における高解像度化手段20および高密度化手段30を制御する駆動パターンについて説明する。
図10(a)は、第1駆動手段51のスイッチS1の状態(a-1)と、高解像度化手段20の偏光切替素子21の液晶応答特性(a-2)とを示す。図10(b)は、第2駆動手段52のスイッチS2の状態(b-1)と、高密度化手段30の偏光切替素子31の液晶応答特性(b-2)とを示す。
【0062】
第1駆動手段51のスイッチS1は、多視点映像内の高解像度化制御信号Sig1(図5)によって、ON/OFF制御される。
第2駆動手段52のスイッチS2は、多視点映像内の高密度化制御信号Sig2(図5)によって、ON/OFF制御される。
図10に示すように、多視点映像のフレーム周波数をfHz(例えば、120Hz)とした場合、駆動手段50は、偏光切替素子21および偏光切替素子31の偏光を切り替えるすべての組み合わせをf/4Hz(60Hz)の周波数で繰り返すように、高解像度化手段20および高密度化手段30を制御する。
この場合、第1駆動手段51が偏光切替素子21を120Hzで駆動し、第2駆動手段52が偏光切替素子31を60Hzで駆動する。これによって、4多重の駆動パターンを実現することができる。
【0063】
なお、120Hz以上の切り替えができない液晶を用いる場合、図11に示すように、第1駆動手段51が偏光切替素子21を60Hzで駆動し、第2駆動手段52が偏光切替素子31を60Hzで駆動するとともに、それぞれの駆動パターンを1フレーム(16.7/2ms)ずらす。これによって、偏光切替素子21および偏光切替素子31の両方を60Hzで駆動して、4多重の駆動パターンを実現することができる。
【0064】
≪三次元映像表示装置の動作≫
次に、図12を参照(構成については適宜図1図2参照)して、本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置1の動作について説明する。
なお、三次元映像表示装置1の二次元映像表示手段10が表示する多視点映像は、図3図4で説明したように、時分割で視点位置が異なるとともに、半画素ずれた映像とする。また、多視点映像は、図5で説明したように、フレームごとに、高解像度化制御信号Sig1,高密度化制御信号Sig2を含み、高解像度化制御信号Sig1,高密度化制御信号Sig2は、1フレーム後の制御信号を示すことととする。
【0065】
ステップS1において、駆動手段50は、第1駆動手段51によって、二次元映像表示手段10が表示する1フレーム前の多視点映像に含まれる高解像度化制御信号Sig1により、高解像度化手段20の偏光切替素子21における偏光切替を制御する。
ここでは、第1駆動手段51は、高解像度化制御信号Sig1により、電圧印可を指示された場合、偏光切替素子21への電圧印加を行い、偏光切替素子21を、水平偏光を垂直偏光に変換する状態に切り替える。
また、第1駆動手段51は、高解像度化制御信号Sig1により、電圧印可の停止を指示された場合、偏光切替素子21への電圧印加を停止し、偏光切替素子21を、水平偏光をそのまま通過させる状態に切り替える。
【0066】
ステップS2において、駆動手段50は、第2駆動手段52によって、二次元映像表示手段10が表示する1フレーム前の多視点映像に含まれる高密度化制御信号Sig2により、高密度化手段30の偏光切替素子31における偏光切替を制御する。
ここでは、第2駆動手段52は、高密度化制御信号Sig2により、電圧印可を指示された場合、偏光切替素子31への電圧印加を行い、偏光切替素子31を、水平偏光を垂直偏光に変換する状態に切り替える。
また、第2駆動手段52は、高密度化制御信号Sig2により、電圧印可の停止を指示された場合、偏光切替素子31への電圧印加を停止し、偏光切替素子31を、水平偏光をそのまま通過させる状態に切り替える。
【0067】
ステップS3において、二次元映像表示手段10は、多視点映像をフレームごとに表示し、高解像度化手段20に照射する。
ステップS4において、高解像度化手段20は、ステップS1で制御された偏光状態に応じて、ステップS3で照射された多視点映像を通過または斜め方向に半画素ずらして、高密度化手段30に照射する。
ここでは、ステップS1で偏光切替素子21が水平偏光をそのまま通過させる状態に切り替えられた場合、高解像度化手段20は、偏光切替素子21によって、ステップS3で照射された多視点映像の偏光を変えずに通過させ、複屈折素子22によって、多視点映像を屈折させることなく通過させる。
一方、ステップS1で偏光切替素子21が水平偏光を垂直偏光に変換する状態に切り替えられた場合、高解像度化手段20は、偏光切替素子21によって、ステップS3で照射された多視点映像の偏光を水平偏光から垂直偏光に変換し、複屈折素子22によって、多視点映像を斜め方向に半画素分ずらす。
【0068】
ステップS5において、高密度化手段30は、ステップS2で制御された偏光状態に応じて、ステップS4で照射された多視点映像の各視点位置の光軸をシフトして、表示光学系40に照射する。
ここでは、ステップS2で偏光切替素子31が水平偏光をそのまま通過させる状態に切り替えられた場合、高密度化手段30は、偏光切替素子31によって、ステップS4で照射された多視点映像の偏光を変えずに通過させる。
一方、ステップS2で偏光切替素子31が水平偏光を垂直偏光に変換する状態に切り替えられた場合、高密度化手段30は、偏光切替素子31によって、ステップS4で照射された多視点映像の偏光を水平偏光から垂直偏光に変換する。
【0069】
そして、高密度化手段30は、結像手段32の結像レンズ320によって、多視点映像を個々の視点映像に分離する。
さらに、高密度化手段30は、偏光回折素子33(33a,33b)によって、個々の視点映像を偏光状態に応じて、異なる方向に回折させて光軸をシフトさせる。
そして、高密度化手段30は、迷光遮断手段34によって、0次光や、2次以上の高次光を遮断して、個々の視点映像を表示光学系40に照射する。
【0070】
ステップS6において、表示光学系40は、ステップS5で照射された個々の視点映像を重畳表示する。
ここでは、表示光学系40は、集光レンズ41によって、偏光回折素子33で光軸がシフトされた視点映像ごとの映像光を重畳結像する
そして、表示光学系40は、視域形成レンズ42によって、視域を拡大させるとともに、スクリーン43によって、多視点映像の光を、進行方向を保ったまま予め定めた範囲に拡散させる。
そして、二次元映像表示手段10が多視点映像を表示する間(ステップS7でNo)、三次元映像表示装置1は、ステップS1に戻って動作を継続する。
一方、二次元映像表示手段10による多視点映像の表示が終了した段階で(ステップS7でYes)、三次元映像表示装置1は動作を終了する。
【0071】
以上説明したように、三次元映像表示装置1は、高解像度化手段20によって、多視点映像の解像度を向上させ、高密度化手段30によって、多視点映像の再生光線密度を向上させることができ、高精細な三次元映像を表示することができる。
また、三次元映像表示装置1は、多視点映像を高解像度化および高密度化するための時分割制御を、多視点映像に付加されている制御信号によって行うことができる。これによって、三次元映像表示装置1は、時分割光線を再生するための駆動素子(ここでは、偏光切替素子21,31)を容易に同期させることができる。
以上、本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置1の構成および動作について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。以下、種々の変形例について説明する。
【0072】
≪変形例≫
<変形例1>
ここでは、三次元映像表示装置1の二次元映像表示手段10を、直視型ディスプレイで構成した。
しかし、二次元映像表示手段10は、多視点映像を拡大照射するプロジェクタとして構成してもよい。
【0073】
図13に、プロジェクタを備えた三次元映像表示装置1Bの構成を示す。
図13に示すように、三次元映像表示装置1Bは、プロジェクタ2と、高密度化手段30Bと、表示光学系40と、駆動手段50と、を備える。表示光学系40および駆動手段50は、図2で説明した三次元映像表示装置1と同じものである。
【0074】
プロジェクタ2は、二次元映像表示手段10と、高解像度化手段20と、を内部に備える。また、プロジェクタ2は、レンズ2aを備え、多視点映像を拡大する。
二次元映像表示手段10および高解像度化手段20は、図2で説明した三次元映像表示装置1と同じものであるが、三次元映像表示装置1に比べて、大きさを小さくすることができる。
【0075】
高密度化手段30Bは、時間方向に視点位置の異なる多視点映像の光線を、視点位置に応じてシフトすることで、多視点映像を高密度化するもので、図2で説明した高密度化手段30と同じ機能を有する。
高密度化手段30Bは、偏光切替素子31と、結像手段32と、偏光回折素子33(33a,33b)と、迷光遮断手段34と、コリメータレンズ35と、を備える。
コリメータレンズ35以外の構成は、図2で説明した高密度化手段30と同じである。
なお、偏光切替素子31は、コリメータレンズ35と結像手段32との間に備えてもよいが、プロジェクタ2とコリメータレンズ35との間に備えることで、プロジェクタ2の照射口の大きさに対応した大きさであればよいため、大きさを小さくすることができる。
【0076】
コリメータレンズ35は、プロジェクタ2が拡大する多視点映像の光を平行光に変換するものである。このコリメータレンズ35は、例えば、凸レンズで構成することができる。
コリメータレンズ35は、プロジェクタ2と結像手段32との間に、プロジェクタ2からコリメータレンズ35の焦点距離だけ離間して配置される。
なお、ここでは、プロジェクタ2の内部に高解像度化手段20を備える構成としたが、高解像度化手段20は、プロジェクタ2の外部で、プロジェクタ2と高密度化手段30Bとの間に備えてもよい。
【0077】
<変形例2>
ここでは、三次元映像表示装置1は、多視点映像を時分割に4多重するため、高解像度化手段20と高密度化手段30とを、それぞれ1つ備える構成とした。
しかし、三次元映像表示装置1は、高解像度化手段20または高密度化手段30のいずれか1つで構成しても構わない。
また、高解像度化手段20は、高密度化手段30の前段に限定されず、高密度化手段30の後段で表示光学系40の前段に備えることとしてもよい。
また、高密度化手段30は、奥行方向(z方向)に連接して多段に複数備える構成としてもよい。この場合、それぞれの高密度化手段30は、視点位置に応じて異なる位置に光軸をシフトさせればよい。
【0078】
以下、高密度化手段30を2段備える構成とした例で説明する。
図14は、各視点映像のフレーム上の光軸位置(以下、視点画像位置)を1つのマス目で表している。
図14(a)の◎印は、二次元映像表示手段10が表示する元々の視点画像位置を示す。二次元映像表示手段10に近い1段目の高密度化手段30は、◎印の視点画像位置aを△印,□印の視点画像位置b1,b2にシフトする。さらに2段目の高密度化手段30は、△印の視点画像位置b1を●印,▲印の視点画像位置c1,c2にシフトし、□印の視点画像位置b2を■印,◆印の視点画像位置c3,c4にシフトする。
この場合、二次元映像表示手段10が表示する多視点映像は、●印の視点画像位置の視点画像で構成されたフレーム、▲印の視点画像位置の視点画像で構成されたフレーム、■印の視点画像位置の視点画像で構成されたフレーム、◆印の視点画像位置の視点画像で構成されたフレームで構成される。
この場合も、多視点映像には、図5で説明したように2つの高密度化手段30に対応する制御信号を付加しておくことで、三次元映像表示装置1は、容易に時分割制御を行うことができる。
【0079】
なお、高密度化手段30の光軸シフトは、図14(a)に示すように、斜め方向のみにシフトする必要はなく、図14(b)に示すように、1段目の高密度化手段30で水平方向に光軸をシフトした後、2段目の高密度化手段30で斜め方向にシフトする等、多視点映像の視点位置に応じて予め設定しておけばよい。
【0080】
<変形例3>
ここでは、高密度化手段30が、偏光回折素子33(33a,33b)を備える構成としたが、偏光回折素子33を偏光ビームスプリッタ群で構成してもよい。
図15(a)は、結像手段32の光路上の後段に偏光ビームスプリッタ群33Bを備えた構成例を示す。
偏光ビームスプリッタ群33Bは、1つの結像レンズ320に対応して2つの偏光ビームスプリッタ33Ba,33Bbで構成される。
【0081】
偏光ビームスプリッタ33Ba,33Bbは、入射される光の偏光状態に応じて、入射光を透過または反射するものである。ここでは、偏光ビームスプリッタ33Ba,33Bbは、入射光が水平偏光であればそのまま透過し、垂直偏光であれば反射する。
【0082】
図15(b)に示すように、偏光ビームスプリッタ33Baは、結像レンズ320の光軸上に配置される。また、偏光ビームスプリッタ33Bbは、結像レンズ320のx方向(水平方向)のピッチ(視点映像のピッチ)をDxとした場合、光軸がDx/2シフトするように配置される。これは、y方向(垂直方向)においても同様である。すなわち、偏光ビームスプリッタ33Ba,33Bbは、光軸をずらす方向に斜めに配置される。
【0083】
偏光ビームスプリッタ33Baは、結像レンズ320からの入射光が水平偏光であれば、そのまま透過して、集光レンズ41(図2)に照射する。また、偏光ビームスプリッタ33Baは、入射光が垂直偏光であれば、入射光を反射して、偏光ビームスプリッタ33Bbに照射する。
偏光ビームスプリッタ33Bbは、偏光ビームスプリッタ33Baで反射された垂直偏光の光をさらに反射して、集光レンズ41(図2)に照射する。
これによって、偏光ビームスプリッタ群33Bは、偏光回折素子33と同じ機能を実現することができる。
【0084】
<変形例4>
ここでは、高密度化手段30の偏光回折素子33(33a,33b)を、水平偏光または垂直偏光の入射光を、偏光状態に応じて、異なる方向に±1次光として回折させるものとした。
しかし、偏光回折素子33は、右回り円偏光または左回り円偏光の入射光を、偏光状態に応じて、異なる方向に±1次光として回折させるものを用いてもよい。
その場合、偏光切替素子31と偏光回折素子33との間(結像手段32の前後)にλ/4波長板(不図示)を備えればよい。
λ/4波長板は、入射光に対して1/4波長の位相差を生じさせて、直線偏光を円偏光に変換するものである。
λ/4波長板は、入射した直線偏光である水平偏光を、右回り円偏光に変換する。また、λ/4波長板は、入射した直線偏光である垂直偏光を、左回り円偏光に変換する。
これによって、偏光回折素子33は、結像レンズ320から照射された光を偏光状態に応じて異なる方向に回折させて、光軸をシフトさせることができる。
【0085】
<変形例5>
三次元映像表示装置1,1Bは、二次元映像表示手段10を1つで構成したが、複数の二次元映像表示手段10を備え、多視点映像の個々の視点映像を複数の二次元映像表示手段10で表示することとしてもよい。
この場合、複数の二次元映像表示手段10は、フレーム同期を行うこととする。また、少なくとも1つの視点映像には、図5で説明した制御信号が付加され、駆動手段50に入力されることとすればよい。
【符号の説明】
【0086】
1 三次元映像表示装置
10 二次元映像表示手段
20 高解像度化手段
21 偏光切替素子(第1偏光切替素子)
22 複屈折素子
30 高密度化手段
31 偏光切替素子
32 結像手段
320 結像レンズ
33 偏光回折素子(第2偏光切替素子)
34 迷光遮断手段
40 表示光学系
41 集光レンズ
42 視域形成レンズ
43 スクリーン
50 駆動手段
51 第1駆動手段
52 第2駆動手段
図1
図2
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