(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】現像装置及び現像方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241128BHJP
G03F 7/30 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/30 569C
H01L21/30 569F
G03F7/30 502
(21)【出願番号】P 2020213453
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 公一朗
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-081964(JP,A)
【文献】特開2012-173510(JP,A)
【文献】特開2015-008267(JP,A)
【文献】特開2015-041672(JP,A)
【文献】特開2013-140881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0314158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に現像液のパドルを形成して当該基板を現像する装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板の上方に位置して、前記基板の面内にガスを供給するガスノズルを有し、
前記ガスノズルは、前記基板保持部に保持された前記基板に対して、当該基板の半径方向に異なった複数の領域にガスを供給する複数のノズル吐出口を有して
おり、
前記複数のノズル吐出口は、前記基板保持部に保持され回転する前記基板の周方向および半径方向に異なる位置にて、各々から吐出する前記ガスが前記基板に到達するまで互いに干渉しないように配置され、
前記現像液のパドルにおいて前記ガスが供給される領域の現像液が冷却される、現像装置。
【請求項2】
前記ガスによる前記現像液の冷却が行われながら現像が進行する、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記複数のノズル吐出口は、前記基板の回転中心を挟むように位置している、請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記ガスは、表面にて現像が進行中である前記基板の上に形成された前記現像液のパドルに向けて供給されるときに、前記ガスが前記パドルに到達する部分において前記基板の表面が露出しないような流速で吐出される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記複数のノズル吐出口のうち、少なくとも1のノズル吐出口は、他のノズル吐出口とは大きさが異なっている、請求項
1~4のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記複数のノズル吐出口のうち、外側に位置するノズル吐出口からの単位面積あたりのガス流量は、内側に位置するノズル吐出口からの単位面積あたりのガス流量よりも多い、請求項
1~5のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記複数のノズル吐出口は1のガス流路から分岐して形成されている、請求項
1~6のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記複数の領域は一部が重なっている、請求項
1~7のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項9】
前記ガスノズルには、現像後の基板を洗浄する洗浄液を基板に吐出する洗浄液ノズルが設けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項10】
基板上に現像液のパドルを形成して、当該基板を現像する方法であって、
前記パドルの形成後または形成途中に、
前記基板を回転させながら、
前記基板の上方から前記パドルに向けて、前記基板の半径方向に異なった複数の領域に複数のノズル吐出口から冷却用のガスを供給し、
前記複数のノズル吐出口は、回転する前記基板の周方向および半径方向に異なる位置にて、各々から吐出する前記ガスが前記基板に到達するまで互いに干渉しないように配置され、
前記現像液のパドルにおいて前記ガスが供給される領域の現像液が冷却される、現像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、現像装置及び現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、チャック装置に保持された被処理物上にノズルからの現像液を供給し、一定時間経過後にチャック装置を構成するスピンナーを回転させて被処理物上の現像液を振り切るようにしたパドル型ホトレジストの現像装置において、現像液とエアとを混合してミスト状の現像液を噴出するノズルを備え、このノズルに至る現像液配管の少なくとも一部が温調水の循環経路内に配置されている現像装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板上にパドルを形成して当該基板を現像するにあたり、基板面内の温度分布を制御して、現像後の基板面内の線幅の均一性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板上に現像液のパドルを形成して当該基板を現像する装置であって、前記基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板の上方に位置して、前記基板の面内にガスを供給するガスノズルを有し、前記ガスノズルは、前記基板保持部に保持された前記基板に対して、当該基板の半径方向に異なった複数の領域にガスを供給する複数のノズル吐出口を有しており、前記複数のノズル吐出口は、前記基板保持部に保持され回転する前記基板の周方向および半径方向に異なる位置にて、各々から吐出する前記ガスが前記基板に到達するまで互いに干渉しないように配置され、前記現像液のパドルにおいて前記ガスが供給される領域の現像液が冷却される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上にパドルを形成して当該基板を現像するにあたり、基板面内の温度分布を制御して、現像後の基板面内の線幅の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかる現像装置の構成の概略を模式的に示した側面断面図である。
【
図2】
図1の現像装置のガスノズルから窒素ガスをウェハに向けて吐出している様子を示す説明図である。
【
図3】
図2に示した状態を、平面から説明する説明図である。
【
図4】実施の形態にかかる現像方法のプロセスシーケンスを示す説明図である。
【
図5】実施の形態にかかる現像方法の他のプロセスシーケンスを示す説明図である。
【
図6】窒素ガスによる温度制御をしない場合のウェハの面内の線幅均一性を示す説明図である。
【
図7】実施の形態にかかる現像方法によって窒素ガスによる温度制御をした場合のウェハの面内の線幅均一性を示す説明図である。
【
図8】実施の形態にかかる現像装置のガスノズルにおける内側のノズル吐出口からのみ窒素ガスを吐出して温度制御を行った場合の、ウェハの面内の線幅均一性を示す説明図である。
【
図9】実施の形態にかかる現像装置のガスノズルにおける外側のノズル吐出口からのみ窒素ガスを吐出して温度制御を行った場合の、ウェハの面内の線幅均一性を示す説明図である。
【
図10】実施の形態にかかる現像装置のガスノズルおける各サイズの好ましい範囲を説明するための説明図である。
【
図11】2つのノズル吐出口の大きさが異なっているガスノズルの説明図である。
【
図12】ノズル吐出口からの窒素ガスの吐出領域が、周方向、径方向共に異なっている場合の説明図である。
【
図13】ノズル吐出口からの窒素ガスの吐出領域が周方向で同一の場合の説明図である。
【
図14】ノズル吐出口からの窒素ガスの吐出方向が斜め下方外側であるガスノズルの説明図である。
【
図15】3つのノズル吐出口を有するガスノズルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という場合がある。)などの基板の表面にレジスト膜を形成し、パターンを露光した後に現像することが行われている。現像する場合、基板上に現像液のパドル(液だまり)を形成して現像することが行われている。
【0009】
この場合、パドル現像時の基板の面内温度が不均一であると、現像後のパターンの線幅の寸法の均一性が悪化する。すなわち、例えばパドル現像時においては、基板のセンター部からエッジ部にかけての温度変動に差があり、その結果、基板のセンター部からエッジ部にかけてのパターンの線幅にばらつきが発生する。とりわけ現像処理時の温度感度が高いi線レジストなどでは、その傾向が顕著であった。
【0010】
特許文献1に記載の技術では、現像液とエアとを混合してミスト状の現像液を噴出するノズルに至る現像液配管の少なくとも一部を温調水の循環経路内に配置するようにしているが、パドル現像時の面内の温度均一性に改善の余地がある。
【0011】
そこで本開示にかかる技術は、基板上にパドルを形成して当該基板を現像するにあたり、基板面内の温度分布を制御して、現像後の基板面内の線幅の均一性を向上させる。
【0012】
以下、本実施形態にかかる現像装置の構成について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかる現像装置1の構成の概略を模式的に示す側面断面の様子を示している。現像装置1は、筐体10内に、基板保持部としてのスピンチャック11を有している。スピンチャック11は、基板としてのウェハWを水平に保持する。スピンチャック11は、昇降自在な回転部12と接続され、回転部12はモータなどによって構成される回転駆動部13と接続されている。したがって回転駆動部13の駆動によって保持したウェハWは回転可能である。
【0014】
スピンチャック11の外側には、カップ21が配置されており、飛散する現像液、洗浄液、並びにこれらのミストが周囲に飛散することが防止される。カップ21の底部22には、排液管23と排気管24が設けられている。排液管23は、排液ポンプなどの排液装置25に通じている。排気管24は、バルブ26を介して、排気ポンプなどの排気装置27に通じている。
【0015】
現像装置1の筐体10内の上方には、要求される温湿度のエアをカップ21内に向けてダウンフローとして供給する送風装置14が設けられている。
【0016】
ウェハW上に現像液のパドルを形成する際には、現像液ノズル31が用いられる。この現像液ノズル31は、例えばアームなどのノズル支持部32に設けられており、ノズル支持部32は駆動機構(図示せず)によって、図中の破線で示した往復矢印A(Z方向)のように昇降自在であり、また破線で示した往復矢印B(X方向)のように水平移動自在である。現像液ノズル31には、供給管33を介して現像液供給源34から現像液が供給される。
【0017】
なおパドルを形成するにあたり、ウェハWの直径以上の長さを有する吐出口を備えたいわゆる長尺ノズルを用いる場合には、ウェハW上を一端部から他端部までスキャンすることで、ウェハW上に現像液のパドルを形成することができる。またウェハWの直径に対して充分小さい幅の液柱を形成するように液を吐出する、いわゆるストレートタイプのノズルの場合には、吐出口をウェハWの中心上方に位置させ、ウェハWを回転させながら現像液を吐出することで、ウェハWの全面に現像液を拡散させて、ウェハW上に現像液のパドルを形成することができる。また現像液のパドル形成は、ストレートタイプのノズルを長尺ノズルと同様にウェハW上をスキャンさせることや、ストレートタイプの様に液を吐出する吐出口を複数ウェハW上にならべて、それぞれの吐出口から現像液を供給するといったことで行われてもよい。
【0018】
ガスノズル41は、ノズル本体42を有している。ノズル本体42はアームなどのノズル支持部(図示せず)に設けられており、当該ノズル支持部は駆動機構(図示せず)によって、図中の破線で示した往復矢印C(Z方向)のように、昇降自在であり、また破線で示した往復矢印D(X方向)のように水平移動自在である。
【0019】
ガスノズル41は、2つのノズル吐出口43、44を有している。ノズル吐出口43、44は
図2に示したように、ガス流路45から分岐して形成されている。ガス流路45は、ガス供給管46を介してガス供給源47に通じている。ガス供給源47には、不活性ガスや非酸化性ガスとして、例えば窒素ガスが用意されている。
【0020】
またガスノズル41には、現像後の現像液をウェハW上から洗浄する洗浄液供給ノズル51が設けられている。洗浄液供給ノズル51は洗浄液供給管52を介して、洗浄液供給源53に通じている。洗浄液としては、例えば純水が用いられる。洗浄液供給ノズル51は、前記した2つのノズル吐出口43、44の間に位置しているが、その位置はこれに限られるものではない。もちろん洗浄液供給ノズル51は、ガスノズル41とは独立した構成としてもよい。
【0021】
そしてガス流路45から窒素ガスがガスノズル41に供給されると、
図2に示したように、各ノズル吐出口43、44から窒素ガスが吐出される。この場合、窒素ガスは通常放射状に広がって吐出されるが、各ノズル吐出口43、44から吐出されるガス流域43a、44aは、ウェハWに到達するまで、相互に干渉しないように、各ノズル吐出口43、44間の距離、各ノズル吐出口43、44の開口径の大きさ、ガス流量が設定されている。
【0022】
また本実施の形態では、
図2に示したように、ガスノズル41の中心Pから、各ノズル吐出口43、44の中心位置までの距離a、bは同一となるように各ノズル吐出口43、44が配置されている。なお必ずしも、距離a、bが同一となるようにノズル吐出口43、44の位置を設定する必要はない。
【0023】
さらにまた
図3に示したように、平面視でみると、ガスノズル41の中心Pを挟んで、各ノズル吐出口43、44は対向するように配置されている。すなわち、
図3に即して説明すれば、ノズル吐出口43は時計の9時位置、ノズル吐出口44は時計の3時位置となるように配置されている。この場合もガスノズル41の中心Pを挟んで、各ノズル吐出口43、44を対向するように配置する必要はなく、後述のように、周方向に異なった位置に設定してもよい。また本実施形態では、平面視でウェハWの中心Qを挟むような位置に各ノズル吐出口43、44が配置されている。こうすることで、各ノズル吐出口43、44から吐出されるガスがウェハWあるいはその表面に形成されている現像液のパドルに到達するまで互いに干渉することを容易に防止できる。
【0024】
現像装置1は、制御装置100によって制御される。制御装置100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、現像装置1におけるウェハWの現像処理を制御する各種のプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御装置100にインストールされたものであってもよい。記憶媒体Hは一時的記憶媒体か非一時的記憶媒体かを問わない。
【0025】
制御の例としては、現像から洗浄、乾燥に至るまでの一連の処理を挙げられる。例えば現像液ノズル31、ガスノズル41、洗浄液供給ノズル51の移動並びに供給・停止動作、一連のシーケンス、さらには送風装置14、排液装置25、バルブ26、排気装置27の動作についても制御される。
【0026】
次に、以上の構成を有する現像装置1による現像方法について、
図4(a)~(e)に基づいて説明する。この現像方法は、現像液ノズル31として、ウェハWの直径以上の長さを有する吐出口を備えたいわゆる長尺ノズルを用いた例である。まず、スピンチャック11上に保持されたウェハWに対して、現像液ノズル31が現像液をウェハW上に供給しながら、ウェハW上を一端から他端まで水平方向にスキャンする(
図4(a))。これによってウェハW上には、現像液のパドルKが形成され、ウェハWは静止現像される(
図4(b))。パドルKが形成されると現像液ノズル31は待機位置に退避する。
【0027】
その後
図4(c)に示したように、ガスノズル41がウェハWの中心方向に移動し、所定位置で停止する。この場合の所定位置は、例えば
図3に示したように、ガスノズル41の中心Pが、ウェハWの中心Qとは一致しない位置である。すなわち、ガスノズル41の中心Pが、ウェハWの中心Qに到達する前に停止する。つまりガスノズル41の中心PはウエハWの偏心位置に位置している。
【0028】
具体的には
図3に示したように、ノズル吐出口43からのガスによるウェハW上の吐出領域43bの中心とウェハWの中心Qまでの距離lと、ノズル吐出口44からのガスによるウェハW上の吐出領域44bの中心とウェハWの中心Qまでの距離mとは一致しない。この例では、距離lの長さは50mm、距離mの長さは110mmとした。またノズル吐出口43からのガスによるウェハW上の吐出領域43bと、ノズル吐出口44からのガスによるウェハW上の吐出領域44bの直径は、各々30mmに設定した。ウェハWの直径は300mmである。
【0029】
そしてスピンチャック11の回転により保持したウェハWを回転させながら、ガスノズル41の2つのノズル吐出口43、44からウェハWに向けて窒素ガスを供給する。そうすると、
図3に示したように、吐出領域43bによる温度制御領域は円環状の領域Mとなり、吐出領域44bによる温度制御領域は領域Mの外側に形成される円環状の領域Nとなる。
【0030】
このようにして現像液のパドルKに対して内側に円環状に窒素ガスが供給され、その外側に円環状の窒素ガスが供給される。現像液のパドルKに窒素ガスが供給されると、まず加圧された窒素ガスがノズル吐出口43、44から吐出される際に膨張するのでその際に窒素ガス自体が降温する。そしてそのように降温した窒素ガスが現像液に到達することで現像液自体が直接冷却され、また現像液の蒸発が促進されてそれに伴う気化熱によって領域M、Nの温度は低下する。
【0031】
その後そのようなガスノズル41によるパドルKの面内温度制御が終わると、ウェハWの回転を停止すると共に、ガスノズル41はさらに中心側へと移動される。そしてガスノズル41の中心P、すなわち洗浄液供給ノズル51の中心とウェハWの中心Qとが一致した位置にて停止する(
図4(d))。その後は、
図4(e)に示したように、ウェハWを回転させながら、洗浄液供給ノズル51から洗浄液FをウェハWの中心に向けて供給することで、パドルKを形成していた現像液が振り切られるとともに、ウェハWは洗浄液Fによって洗浄される。
【0032】
なお
図4に示した現像プロセスは、現像液ノズル31にウェハWの直径以上の長さを有する吐出口を備えた長尺ノズルを用いた例であったが、現像液ノズル31に既述したストレートタイプのノズルを用いた場合には、最初にパドルKを形成するプロセスのみが異なっている。すなわち、
図5(a)に示したように、現像液ノズル31をウェハWの中心に移動させ、ウェハWを回転させながら、ウェハWの中心に向けて現像液を供給することで、供給された現像液を遠心力によってウェハWの全面に拡散させてパドルKを形成する。そしてパドル形成後のプロセスは、前記した
図4(b)~(e)と同じである。なおこの場合、現像液ノズル31としてのストレートタイプのノズルを用いて吐出を行う際、吐出口をウェハW上に複数並べて現像液を供給するときには、例えば
図5(a)における現像液ノズル31と重なる位置にて、奥行方向に当該複数の吐出口を配置するようにして、かつこれらが現像液ノズル31の様に一体的に移動するようにすればよい。
【0033】
ところで発明者らの知見によれば、これまでパドルKの面内温度分布については、周辺部の方が温度低下が大きいことが分かっている。一方でパドルKに対して窒素ガスを吐出させてその時の温度制御について調べると、センター部分は面積が小さく、しかも吐出領域がセンター部分から少しずれていても影響を受けやすい。すなわち窒素ガスの吐出による温度伝搬がしやすい。またパドルKのミドル部分~エッジ部分にかけての領域については、面積が大きく、吐出領域が少しずれれば影響を受けにくく、温度伝搬がしにくいことを新たに知見した。すなわち、パドルKのミドル部分~エッジ部分にかけての領域については温度制御がしづらいことが判明した。
【0034】
これらのことから、実施の形態で用いたガスノズル41のように、複数のノズル吐出口43、44から、ウェハWの径方向に異なった位置からパドルKに向けて、窒素ガスを吐出させることで、そのようなミドル部分~エッジ部分にかけての領域の温度制御が行いやすくなり、その結果、パドルKの面内温度分布を均一化させて、現像後のウェハW上のパターンの線幅の均一性を向上させることができる。
【0035】
実際に
図3に示した吐出領域43b、44bのサイズで常温(例えば23℃)の窒素ガスを各ノズル吐出口43、44から各々5リットル/分の流量で吐出させたときの現像後のウェハW上のパターンの線幅を測定した結果について説明する。
図6~
図9においては、グラデーションによる線幅の表示をチップ単位の平均値で示し、また各図で下側に表示しているのは、同グラデーションにおける線幅の長さを表わしている(単位はnm)。
【0036】
図6は、窒素ガスによる温度制御を行なわなかった場合、
図7は
図3に示した例による温度制御を行った場合、
図8は、ノズル吐出口43からのみ5リットル/分の流量で窒素ガスを吐出した場合、
図9はノズル吐出口44からのみ5リットル/分の流量で窒素ガスを吐出した場合を示している。
【0037】
これによれば、
図3に示した例、すなわちノズル吐出口43、44の双方から窒素ガスを吐出した場合(
図7)が、最も面内の均一性が高いことが判明した。これに対し、ノズル吐出口43からのみ窒素ガスを吐出した場合(
図8)には、いわゆるミドル部分の均一性が
図3に示した例よりも劣っている。またノズル吐出口44からのみ窒素ガスを吐出した場合(
図9)には、センター部分の均一性が
図3に示した例よりも劣っている。
【0038】
したがって、
図3に示したように、径方向に異なった位置(距離)にある複数のノズル吐出口から窒素ガスを供給することで、全体としての温度分布の改善が実現できる。
【0039】
なお前記した実施の形態にかかるガスノズル41について各部位のサイズについて説明すると、
図10に示したように、まずガスノズル41の中心、すなわちガス流路45の中心と、ノズル吐出口43、44の中心との間の距離を各々G、Hとし、ノズル吐出口43、44の中心から吐出領域43b、44bの外側端部までの距離を各々g、hとすると、G≧g、H≧hとするのが好ましい。かかるサイズ設定をすることで、ウェハWの中心部への過度な冷却効果を抑えることができる。
【0040】
まちろん既述したように、G≠Hであってもよい。すなわち、ガスノズル41の中心を挟んで、ノズル吐出口43、44が対称に位置していなくともよい。また対称に位置していても、前記実施の形態で説明したように、ガスノズル41の中心をウェハWの中心から偏心させることで、吐出領域の位置を変化させることができる。またさらに、ガス流路45からノズル吐出口43、44までの距離を可変とすることで、さらに吐出領域、すなわち温度制御領域の選択の幅が広がり、それによって温度制御領域の幅が広がる。
【0041】
またウェハWを回転させながら窒素ガスを供給するので、吐出領域43b、44b自体の平面視での形状は、
図10に示したように、楕円形状であってもよく、もちろん真円であってもよい。
【0042】
また
図11に示したように、ノズル吐出口43、44の大きさを同一とせずに、異なった大きさのものとしてもよい。これによって吐出領域43b、44bの大きさを変えることができ、パドルKの温度分布の特性に合わせた最適な温度制御が可能となる。
【0043】
ガスの吐出によるパドルの面内温度の制御については、ガスの吐出流量、吐出位置、ウェハWの回転速度が制御パラメータとなる。この点に関し、もちろん各々独立したガス流路から各ノズル吐出口に異なった流速のガスを吐出するようにしてもよい(単位面積当たりの流量が異なるように吐出させてもよい)が、単一のガス流路から分岐させ、出口となるノズル吐出口の大きさを個別に変えた方が、ガスノズル41自体の構成を簡素化することができる。但し、流速を調整する場合には、パドルを崩さないように留意する必要がある。
【0044】
また発明者らの知見によれば、異なった吐出領域の軌跡が辿る異なった温度制御の領域、例えば
図3に示した領域M、Nは、ほぼ隣り合うように近接しているが、この場合、円環形状の領域M、Nが境界部分では、各領域M、Nからの温度の影響を受けるので、より冷却が促進されるという特性がある。したがってこのことを利用すれば、さらにさまざまな領域の温度制御を実現することが可能である。但し、既述したように、各ノズル吐出口43、44から吐出されるガス流域43a、44aは、ウェハWに到達するまで、相互に干渉しないように、各ノズル吐出口43、44間の距離、各ノズル吐出口43、44の開口径の大きさ、ガス流量が設定されていることが好ましい。到達前に相互に干渉してしまうと、吐出領域43b、44bが乱れてしまい、企図した温度制御ができないおそれがある。また、各ノズル吐出口43、44それぞれにおけるガスの流量は、ウェハW上に形成された現像液のパドルに到達する部分で現像液を押し広げてウェハWの表面が露出しない程度の流速となるよう設定されていることが好ましい。ウェハWの表面が部分的に露出すると、その部分にて現像処理不良や、液圧起因によるパターン倒れといった欠陥を生じるリスクがある。
【0045】
また前記した実施の形態では、ノズル吐出口43、44はガスノズル41の中心を挟んで対向する位置、換言すれば時計の3時位置と9時位置に配置して、吐出領域43b、44bも対向するようになっていたが、もちろんこれに限らず
図12に示したように、6時位置と9時位置に配置するようにしてもよい。すなわち、径方向に異なった位置、周方向に離間した位置に各ノズル吐出口を配置してもよい。
【0046】
なお前記した例は、いずれもウェハWの回転に伴って吐出領域が辿る軌跡によって形成される円環状の温度制御の領域M、Nがいずれも異なった領域であったが、もちろん一部が重なったものであってもよい。
【0047】
さらに
図13に示したように、円環状の温度制御の領域M、Nがすべて重なった場合であっても、本開示は提案できる。このような場合、ウェハWを回転させて温度制御する場合、ウェハWが1回転する間に同じ領域で重複して吐出領域43b、44bが通過するので、必要な温度制御を実施するためのウェハWの回転回数を減ずる、つまり処理時間を低減することができる。
【0048】
また前記した実施の形態では、ノズル吐出口43、44からのガスの吐出方向は、いずれも垂直下方であったが、
図14に示したように、外側に向けて斜め下方の方向にガスを吐出させるようにしてもよい。これによって、吐出領域の外側の領域に温度がより伝搬しやすくなり、制御の幅が広がる。
【0049】
さらにまた前記した実施の形態では、ノズル吐出口の数はいずれも2つであったが、これに限らず
図15に示したガスノズル61のように、ガス流路62から分岐して例えば3つのノズル吐出口63、64、65を有するガスノズル構成としてもよい。
【0050】
また前記した
図4、
図5に示したシーケンスにおいては、いずれもパドルKを形成した後に、ガスノズル41による温度制御を行うようにしていたが、パドルKの形成途中にガスノズル41からのガスの供給による温度制御を行ってもよい。すなわち、パドルKがウェハWの上に完全に形成される前に、パドル形成の後を追うようにガスノズル41を配置したり、移動させてガスを吐出するようにしてもよい。これはパドル形成の直後の方がガスの吐出による冷却効果が大きいためである。このような方法を採用することで、迅速でかつ効果的な温度制御が可能となる。
【0051】
なお前記した例は、温度に敏感なi線レジストの現像に特に有効であるが、もちろんこれに限らず、本開示は、例えばg線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーなどのエネルギー線による露光を行うレジストの現像にも効果がある。
【0052】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 現像装置
10 筐体
11 スピンチャック
12 回転部
13 回転駆動部
14 送風装置
21 カップ
22 底部
23 排液管
24 排気管
25 排液装置
26 バルブ
27 排気装置
31 現像液ノズル
32 ノズル支持部
33 供給管
34 現像液供給源
41 ガスノズル
42 ノズル本体
43、44 ノズル吐出口
43a、44a ガス流域
43b、44b 吐出領域
45 ガス流路
46 ガス供給管
47 ガス供給源
51 洗浄液供給ノズル
52 洗浄液供給管
53 洗浄液供給源
100 制御装置
F 洗浄液
K パドル
M、N 領域
W ウェハ