(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20241128BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B23K26/00 M
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2021017183
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-171632(JP,A)
【文献】特開2008-096153(JP,A)
【文献】特開2007-105775(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0984726(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 ― 26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物に対してレーザービームを集光照射する集光器を備えたレーザービーム照射ユニットと、
該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを相対的に移動させる移動ユニットと、
該レーザービームのビームプロファイルを測定する測定ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、
を備え、
該測定ユニットは、
該チャックテーブルの保持面と平行な受光面を有するように該チャックテーブルに隣接して設けられ
、
非測定時には該チャックテーブルの上面より下方にレーザービームの入射面が位置する待避位置に位置付けられ、
測定時には該チャックテーブルの上面より上方に該入射面が位置する測定位置に位置付けられることを特徴とする、
レーザー加工装置。
【請求項2】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物に対してレーザービームを集光照射する集光器を備えたレーザービーム照射ユニットと、
該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを相対的に移動させる移動ユニットと、
該レーザービームのビームプロファイルを測定する測定ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、
を備え、
該測定ユニットは、
該チャックテーブルの保持面と平行な受光面を有するように該チャックテーブルに隣接して設けられ
、
集光点を通過して発散したレーザービームを拡大する顕微鏡と、
該顕微鏡によって拡大された該レーザービームの強度を減衰する減衰光学系と、
該顕微鏡によって拡大され、該減衰光学系によって減衰された該レーザービームを撮像する撮像素子と、
を含むことを特徴とする、
レーザー加工装置。
【請求項3】
該測定ユニットは、
非測定時には該チャックテーブルの上面より下方にレーザービームの入射面が位置する待避位置に位置付けられ、
測定時には該チャックテーブルの上面より上方に該入射面が位置する測定位置に位置付けられることを特徴とする、
請求項
2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該受光面に垂直な方向であるZ軸方向に該測定ユニットを移動させるZ軸方向移動ユニットを更に備えることを特徴とする、
請求項1
乃至3のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物に対してレーザービームを集光照射する集光器を備えたレーザービーム照射ユニットと、
該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを相対的に移動させる移動ユニットと、
該レーザービームのビームプロファイルを測定する測定ユニットと、
該測定ユニットの受光面に垂直な方向であるZ軸方向に該測定ユニットを移動させるZ軸方向移動ユニット、および該Z軸方向に該レーザービームの集光点を移動させる集光点位置調整手段の少なくともいずれかと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、
を備え、
該測定ユニットは、該チャックテーブルの保持面と平行な
該受光面を有するように該チャックテーブルに隣接して設けられ
、
該制御ユニットは、該測定ユニットと該集光点とをZ軸方向に順次相対的に移動させて、レーザービームの状態をスルーフォーカスで測定させることを特徴とする、
レーザー加工装置。
【請求項6】
該制御ユニットは、
該受光面に照射された該レーザービームの位置を記憶する記憶部と、
該記憶部に記憶されたレーザービームの位置と、所定のタイミングで測定したレーザービームの位置と、を比較する比較部と、
該比較部で比較したレーザービームの位置が所定値以上変化している場合に警告を報知する報知部と、
を有することを特徴とする、
請求項1
乃至5のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物を分割して個片化するために、被加工物に設定された分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射するレーザー加工装置が知られている(特許文献1、2参照)。このようなレーザー加工装置では、被加工物にレーザービームを集光照射する加工点において意図しないビーム形状であると、加工結果に悪影響を与える可能性があるため、ビームプロファイラを用いて加工前に予めビーム形状を確認する作業が行われている。例えば光路上の所定位置からレーザービームを取り込んで測定するレーザー加工装置が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-320466号公報
【文献】特許第3408805号公報
【文献】特開2001-077046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献3のレーザー加工装置のようにビームプロファイラのような大型の測定器を装置に組み込むと、装置の大型化を招くという課題がある。このため、例えば、ビームプロファイラを装置内に組み込まず、被加工物を保持するテーブル上に一時的に載置して測定する方法もあるが、装置の構成要素との干渉に注意しながらレーザービームをプロファイラに入射するのは非常に困難であるため、時間がかかる上に危険作業である。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の大型化を抑制しつつ簡単かつ安全にビーム形状を測定することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に対してレーザービームを集光照射する集光器を備えたレーザービーム照射ユニットと、該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを相対的に移動させる移動ユニットと、該レーザービームのビームプロファイルを測定する測定ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該測定ユニットは、該チャックテーブルの保持面と平行な受光面を有するように該チャックテーブルに隣接して設けられ、非測定時には該チャックテーブルの上面より下方にレーザービームの入射面が位置する待避位置に位置付けられ、測定時には該チャックテーブルの上面より上方に該入射面が位置する測定位置に位置付けられることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に対してレーザービームを集光照射する集光器を備えたレーザービーム照射ユニットと、該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを相対的に移動させる移動ユニットと、該レーザービームのビームプロファイルを測定する測定ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該測定ユニットは、該チャックテーブルの保持面と平行な受光面を有するように該チャックテーブルに隣接して設けられ、集光点を通過して発散したレーザービームを拡大する顕微鏡と、該顕微鏡によって拡大された該レーザービームの強度を減衰する減衰光学系と、該顕微鏡によって拡大され、該減衰光学系によって減衰された該レーザービームを撮像する撮像素子と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のレーザー加工装置において、該測定ユニットは、非測定時には該チャックテーブルの上面より下方にレーザービームの入射面が位置する待避位置に位置付けられ、測定時には該チャックテーブルの上面より上方に該入射面が位置する測定位置に位置付けられてもよい。
また、本発明のレーザー加工装置において、該受光面に垂直な方向であるZ軸方向に該測定ユニットを移動させるZ軸方向移動ユニットを更に備えてもよい。
【0009】
また、本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に対してレーザービームを集光照射する集光器を備えたレーザービーム照射ユニットと、該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを相対的に移動させる移動ユニットと、該レーザービームのビームプロファイルを測定する測定ユニットと、該測定ユニットの受光面に垂直な方向であるZ軸方向に該測定ユニットを移動させるZ軸方向移動ユニット、および該Z軸方向に該レーザービームの集光点を移動させる集光点位置調整手段の少なくともいずれかと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該測定ユニットは、該チャックテーブルの保持面と平行な該受光面を有するように該チャックテーブルに隣接して設けられ、該制御ユニットは、該測定ユニットと該集光点とをZ軸方向に順次相対的に移動させて、レーザービームの状態をスルーフォーカスで測定させることを特徴とする。
また、本発明のレーザー加工装置において、該制御ユニットは、該受光面に照射された該レーザービームの位置を記憶する記憶部と、該記憶部に記憶されたレーザービームの位置と、所定のタイミングで測定したレーザービームの位置と、を比較する比較部と、該比較部で比較したレーザービームの位置が所定値以上変化している場合に警告を報知する報知部と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、装置の大型化を抑制しつつ簡単かつ安全にビーム形状を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム照射ユニットの概略構成を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されたレーザー加工装置の測定ユニットの概略構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態〕
まず、本発明の実施形態に係るレーザー加工装置1の構成について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係るレーザー加工装置1の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されたレーザー加工装置1のレーザービーム照射ユニット20の概略構成を説明する説明図である。
図3は、
図1に示されたレーザー加工装置1の測定ユニット50の概略構成を説明する説明図である。
【0014】
以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態のレーザー加工装置1は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向である。
【0015】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20と、X軸方向移動ユニット30およびY軸方向移動ユニット40を含む移動ユニットと、測定ユニット50と、撮像ユニット70と、表示ユニット80と、制御ユニット90と、を備える。また、
図2に示すように、レーザー加工装置1は、Z軸方向移動ユニット60を備える。
【0016】
実施形態に係るレーザー加工装置1は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、レーザービーム照射ユニット20によってレーザービーム21を照射することにより、被加工物100を加工する装置である。レーザー加工装置1による被加工物100の加工は、例えば、ステルスダイシングによって被加工物100の内部に改質層を形成する改質層形成加工、被加工物100の表面に溝を形成する溝加工、または分割予定ラインに沿って被加工物100を切断する切断加工等である。
【0017】
被加工物100は、実施形態において、シリコン(Si)、サファイア(Al2O3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板とする円板状の半導体デバイスウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。なお、被加工物100は実施形態に限定されず、本発明では円板状でなくともよい。被加工物100は、例えば、環状フレーム110が貼着されかつ被加工物100の外径よりも大径なテープ111が被加工物100の裏面に貼着されて、環状フレーム110の開口内に支持される。
【0018】
チャックテーブル10は、被加工物100を保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面11は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面11は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。チャックテーブル10は、保持面11上に載置された被加工物100を吸引保持する。チャックテーブル10の周囲には、被加工物100を支持する環状フレーム110を挟持するクランプ部12が複数配置されている。
【0019】
チャックテーブル10は、回転ユニット13によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット13は、X軸方向移動プレート14に支持される。回転ユニット13およびチャックテーブル10は、X軸方向移動プレート14を介して、X軸方向移動ユニット30によりX軸方向に移動される。回転ユニット13およびチャックテーブル10は、X軸方向移動プレート14、X軸方向移動ユニット30およびY軸方向移動プレート15を介して、Y軸方向移動ユニット40によりY軸方向に移動される。
【0020】
レーザービーム照射ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対してパルス状のレーザービーム21を照射するユニットである。
図2に示すように、レーザービーム照射ユニット20は、レーザー発振器22と、集光器23と、ミラー24、25、26と、を含む。
【0021】
レーザー発振器22は、被加工物100を加工するための所定の波長を有するレーザービーム21を発振する。レーザービーム照射ユニット20が照射するレーザービーム21は、被加工物100に対して透過性または吸収性を有する波長である。
【0022】
集光器23は、レーザー発振器22から発振されたレーザービーム21を、チャックテーブル10の保持面11に保持された被加工物100、または測定ユニット50に対して集光照射する。集光器23は、実施形態において、ミラー24、25、26に導かれたレーザービーム21を、被加工物100または測定ユニット50に向けて集光する。集光器23を通過したレーザービーム21の進行方向は、Z軸方向に平行である。
【0023】
レーザービーム照射ユニット20のうち、少なくとも集光器23は、レーザー加工装置1の装置本体2(
図1参照)から立設した柱3(
図1参照)に設置される集光点位置調整手段によってZ軸方向に移動可能に支持される。集光点位置調整手段は、集光器23によって集光されたレーザービーム21の集光点211を、チャックテーブル10の保持面11に垂直な光軸方向に移動させる。
【0024】
ミラー24、25、26は、レーザー発振器22と集光器23との間のレーザービーム21の光路上に設けられる。ミラー24、25、26は、レーザー発振器22が発振したレーザービーム21をレーザー発振器22から集光器23へと導く。例えば、レーザー発振器22から発振されるレーザービーム21がUV(紫外線)の場合、ミラー24、25、26には、UVを反射する反射膜が形成される。
【0025】
実施形態において、ミラー24は、レーザー発振器22が発振したレーザービーム21を、ミラー25へ反射する。ミラー25は、ミラー24で反射されたレーザービーム21を、ミラー26へ反射する。ミラー26は、ミラー25で反射されたレーザービーム21を、集光器23へ反射する。
【0026】
図1に示すように、X軸方向移動ユニット30は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。X軸方向移動ユニット30は、実施形態において、チャックテーブル10をX軸方向に移動させる。X軸方向移動ユニット30は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。
【0027】
X軸方向移動ユニット30は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。X軸方向移動ユニット30は、周知のボールねじ31と、周知のパルスモータ32と、周知のガイドレール33と、を含む。ボールねじ31は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ32は、ボールねじ31を軸心回りに回転させる。ガイドレール33は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール33は、Y軸方向移動プレート15に固定して設けられる。
【0028】
Y軸方向移動ユニット40は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。Y軸方向移動ユニット40は、実施形態において、チャックテーブル10をY軸方向に移動させる。Y軸方向移動ユニット40は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。
【0029】
Y軸方向移動ユニット40は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。Y軸方向移動ユニット40は、周知のボールねじ41と、周知のパルスモータ42と、周知のガイドレール43と、を含む。ボールねじ41は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ42は、ボールねじ41を軸心回りに回転させる。ガイドレール43は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール43は、装置本体2に固定して設けられる。
【0030】
測定ユニット50は、レーザービーム21のビームプロファイルを測定する。測定ユニット50は、レーザービーム21のビームプロファイルを測定し、測定結果を制御ユニット90に出力する。
図2に示すように、測定ユニット50は、レーザービーム21の集光点211を通過して発散した位置において、レーザービーム21のビームプロファイルを測定する。
図3に示すように、測定ユニット50は、実施形態において、顕微鏡51と、減衰光学系52と、撮像素子53と、を含む。
【0031】
顕微鏡51は、
図2に示す集光器23によって集光されたレーザービーム21を拡大する。顕微鏡51の倍率は、例えば、5倍以上100倍以下に設定され、実施形態では10倍に設定される。レーザー発振器22から発振されるレーザービーム21がUVの場合、顕微鏡51は、UVに耐性のあるUV対応の顕微鏡レンズを含む。
【0032】
減衰光学系52は、顕微鏡51によって拡大されたレーザービーム21の強度を減衰する。減衰光学系52は、レーザービーム21の強度を減衰させて、撮像素子53へ透過する。減衰光学系52は、例えば、所定の波長帯において波長を選ぶことなく、光量を一定量落として透過するND(Neutral Density)フィルタを含む。なお、減衰光学系52は、上記の例に限定されず、レーザービーム21の一部を反射するプリズムが複数設けられるものであってもよい。
【0033】
撮像素子53は、所定の視野範囲内を撮像する。撮像素子53は、視野範囲内において、顕微鏡51によって拡大され、減衰光学系52によって減衰されたレーザービーム21を撮像する。撮像素子53は、チャックテーブル10の保持面11と平行な受光面531を有する。受光面531は、集光点211を通過して発散したレーザービーム21を受光する。
【0034】
撮像素子53は、例えば、レーザービーム21のビーム径および空間的な強度分布を測定するビームプロファイラを含む。ビームプロファイラは、例えば、レーザービーム21を撮像して、レーザービーム21の形状および空間的な強度分布を示すレーザービーム21の平面像を取得する。ビームプロファイラは、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を含む。なお、撮像素子53は、ビームプロファイラに限定されず、レーザービーム21の波面、すなわち同一位相のビーム径やレーザービーム21の強度分布を測定する波面センサでもよい。
【0035】
測定ユニット50は、チャックテーブル10に隣接して設けられる。測定ユニット50は、実施形態において、X軸方向移動プレート14に支持される。測定ユニット50は、実施形態において、X軸方向移動プレート14を介して、X軸方向移動ユニット30によりX軸方向に移動される。測定ユニット50は、実施形態において、X軸方向移動プレート14、X軸方向移動ユニット30およびY軸方向移動プレート15を介して、Y軸方向移動ユニット40によりY軸方向に移動される。すなわち、実施形態において、測定ユニット50は、チャックテーブル10および回転ユニット13と共にX軸方向およびY軸方向に移動する(
図2に示す矢印方向を参照)。
【0036】
測定ユニット50は、Z軸方向移動プレート54を介して、Z軸方向移動ユニット60によりZ軸方向に移動される。測定ユニット50は、Z軸方向移動ユニット60によって、待避位置および測定位置との間でZ軸方向に移動可能である。待避位置における測定ユニット50は、チャックテーブル10の上面(保持面11)より下方に入射面501が位置する。測定位置における測定ユニット50は、チャックテーブル10の上面(保持面11)より上方に入射面501が位置する。すなわち、測定ユニット50は、非測定時には退避位置に位置付けられ、測定時には測定位置に位置付けられることが可能である。なお、測定ユニット50の入射面501とは、顕微鏡51の上端面を示す。
【0037】
Z軸方向移動ユニット60は、測定ユニット50の受光面531に垂直な方向であるZ軸方向に測定ユニット50を移動させるユニットである。Z軸方向移動ユニット60は、実施形態において、X軸方向移動プレート14上に設置されている。
【0038】
Z軸方向移動ユニット60は、Z軸方向移動プレート54をZ軸方向に移動自在に支持する。Z軸方向移動ユニット60は、周知のボールねじ61と、周知のパルスモータ62と、周知のガイドレール63と、を含む。ボールねじ61は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ62は、ボールねじ61を軸心回りに回転させる。ガイドレール63は、Z軸方向移動プレート54をZ軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール63は、X軸方向移動プレート14から立設した柱64上に固定して設けられる。
【0039】
撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を撮像する。撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラまたは赤外線カメラを含む。撮像ユニット70は、例えば、レーザービーム照射ユニット20の集光器23(
図2参照)に隣接するように固定されている。撮像ユニット70は、被加工物100を撮像して、被加工物100とレーザービーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット90に出力する。
【0040】
表示ユニット80は、液晶表示装置等により構成される表示部である。表示ユニット80は、例えば、加工条件の設定画面、撮像ユニット70が撮像した被加工物100の状態、加工動作の状態等を、表示面に表示させる。表示ユニット80の表示面がタッチパネルを含む場合、表示ユニット80は、入力部を含んでもよい。入力部は、オペレータが加工内容情報を登録する等の各種操作を受付可能である。入力部は、キーボード等の外部入力装置であってもよい。表示ユニット80は、表示面に表示される情報や画像が入力部等からの操作により切り換えられる。表示ユニット80は、報知装置を含んでもよい。報知装置は、音および光の少なくとも一方を発してレーザー加工装置1のオペレータに予め定められた報知情報を報知する。報知装置は、スピーカーまたは発光装置等の外部報知装置であってもよい。
【0041】
制御ユニット90は、レーザー加工装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物100に対する加工動作をレーザー加工装置1に実行させる。制御ユニット90は、レーザービーム照射ユニット20、X軸方向移動ユニット30、Y軸方向移動ユニット40、測定ユニット50、Z軸方向移動ユニット60、撮像ユニット70、および表示ユニット80を制御する。
【0042】
制御ユニット90は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、レーザー加工装置1の制御を行う。
【0043】
制御ユニット90は、例えば、撮像ユニット70に被加工物100を撮像させる。制御ユニット90は、例えば、撮像ユニット70によって撮像した画像の画像処理を行う。制御ユニット90は、例えば、画像処理によって被加工物100の加工ラインを検出する。制御ユニット90は、例えば、レーザービーム21の集光点211である加工点が加工ラインに沿って移動するようにX軸方向移動ユニット30を駆動させると共に、レーザービーム照射ユニット20にレーザービーム21を照射させる。
【0044】
制御ユニット90は、例えば、Z軸方向移動ユニット60を駆動させ、測定ユニット50を測定位置または退避位置に移動させる。制御ユニット90は、任意のタイミングで測定ユニット50にレーザービーム21のビームプロファイルを測定させる。制御ユニット90は、例えば、測定ユニット50によるレーザービーム21のビームプロファイルの測定データを取得する。制御ユニット90は、記憶部91と、比較部92と、報知部93と、を有する。
【0045】
記憶部91は、測定ユニット50の撮像素子53の受光面531に照射されたレーザービーム21の位置を記憶する。記憶部91が記憶するレーザービーム21の位置は、例えば、レーザー加工装置1の装置立ち上げ時、またはレーザービーム照射ユニット20の校正終了時等に、測定ユニット50を用いて測定された位置である。すなわち、記憶部91が記憶するレーザービーム21の位置は、所望のビーム形状を示す。
【0046】
比較部92は、記憶部91に記憶されたレーザービーム21の位置と、所定のタイミングで測定したレーザービーム21の位置と、を比較する。所定のタイミングで測定したレーザービーム21の位置は、被加工物100の加工中、アイドリング時またはメンテナンス時等に、測定ユニット50を用いて測定された位置である。
【0047】
報知部93は、比較部92で比較したレーザービーム21の位置が所定値以上変化している場合に警告を報知する。警告は、例えば、オペレータに校正を促す警告情報を含む。報知部93は、例えば、所定の警告情報を、表示ユニット80の報知装置に報知させる。
【0048】
なお、記憶部91の機能は、前述した制御ユニット90の記憶装置により実現される。また、比較部92および報知部93の機能は、記憶装置に記憶されたプログラムを、前述した制御ユニット90の演算処理装置が実行することにより実現される。
【0049】
以上説明したように、実施形態に係るレーザー加工装置1は、レーザービーム21のビームプロファイルを測定する測定ユニット50を、被加工物100を保持するチャックテーブル10と隣接して設けることで、省スペース化が可能であるため、装置の大型化を抑制することができる。また、被加工物100を保持するチャックテーブル10と隣接して測定ユニット50を設けることで、被加工物100の加工中であっても、例えばチャンネルの切り替え時や、所定数の加工ラインの加工終了毎等に、ビームプロファイルを測定することができる。
【0050】
また、レーザービーム21を反射して測定ユニット50へ導くためのミラーが不要であるため、コスト削減に繋がると共に、調整が簡便となりダウンタイムの短縮に貢献する。したがって、レーザー加工装置1は、簡単かつ安全にビーム形状を測定することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、測定ユニット50をZ軸方向に順次移動させて、レーザービーム21の状態をスルーフォーカスで測定および記憶させてもよい。すなわち、レーザービーム21の途中の収差を含めた3次元的なビームプロファイルを取得してもよい。
【0052】
また、Z軸方向移動ユニット60は、実施形態のボールねじ61およびパルスモータ62を有する構成に限定されず、エアシリンダを含む構成であってもよい。
【0053】
また、集光器23が長焦点の集光レンズである場合であって、集光器23を集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動させる集光点位置調整手段を備える場合、測定ユニット50をZ軸方向に移動させるZ軸方向移動ユニット60を備えなくてもよい。すなわち、測定ユニット50は、装置本体2またはチャックテーブル10に対して相対的に固定されてもよい。なお、集光器23がNA(開口数)の高い集光レンズである場合、ワークディスタンスが狭いので、周囲の構造物との干渉を防ぐため、測定ユニット50をZ軸方向に移動させるZ軸方向移動ユニット60が必要である。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル
11 保持面
20 レーザービーム照射ユニット
21 レーザービーム
211 集光点
22 レーザー発振器
23 集光器
24、25、26 ミラー
30 X軸方向移動ユニット(移動ユニット)
40 Y軸方向移動ユニット(移動ユニット)
50 測定ユニット
501 入射面
51 顕微鏡
52 減衰光学系
53 撮像素子(CMOSカメラ)
531 受光面
54 Z軸方向移動プレート
60 Z軸方向移動ユニット
90 制御ユニット
91 記憶部
92 比較部
93 報知部
100 被加工物