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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】誘導式位置測定機構
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01D5/20 110F
G01D5/20 K
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021018048
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2021173750
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】10 2020 205 398.7
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】マルク・オリバー・ティーマン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ホイマン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンデル・フランク
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059779(JP,A)
【文献】特開2019-184477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0041691(US,A1)
【文献】特開2019-101041(JP,A)
【文献】特開2014-119453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187161(US,A1)
【文献】特開2014-77752(JP,A)
【文献】特開2019-152454(JP,A)
【文献】特開2000-180209(JP,A)
【文献】特開2018-4630(JP,A)
【文献】特開2015-59934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0257417(US,A1)
【文献】特開平5-113302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査要素(1)およびスケール要素(2)を備えた誘導式位置測定機構であって、前記位置測定機構により、第1の方向(x)でのおよび第2の方向(z)での前記スケール要素(2)に対する相対的な前記走査要素(1)の位置が決定可能であり、
- 前記スケール要素(2)が、前記第1の方向(x)に沿って並ぶ目盛構造(2.1)を含んでおり、前記目盛構造(2.1)が前記第2の方向(z)に沿って、第2の周期長(Dz)をもつ周期的な軌道を有しており、かつ
- 前記走査要素(1)が、第1の受信トラック(1.1)、第2の受信トラック(1.2)、および第3の受信トラック(1.3)ならびに励磁導線(1.4、1.5、1.6)を含んでおり、これに関し
前記3つの受信トラック(1.1、1.2、1.3)の各々がそれぞれ2つの受信導体路(1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32)を有しており、前記受信導体路(1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32)が前記第1の方向(x)に沿って、第1の周期長(Px)をもつ周期的な軌道を有しており、前記受信トラック(1.1、1.2、1.3)が、前記第2の方向(z)に互いに対してずれて配置されている、誘導式位置測定機構。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導式位置測定機構であって、前記第1の受信トラック(1.1)が前記第2の受信トラック(1.2)に対して相対的に、前記第2の方向(z)に第1のトラックずれ(Pz12)の分だけずれて配置されており、かつ前記トラックずれ(Pz12)が、前記第2の周期長(Dz)のn倍と等しくなく、このときnが自然数であり、つまり
Pz12≠n・Dz
である、誘導式位置測定機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の誘導式位置測定機構であって、前記第2の受信トラック(1.2)が前記第3の受信トラック(1.3)に対して相対的に、前記第2の方向(z)に第2のトラックずれ(Pz23)の分だけずれて配置されており、かつ前記第2のトラックずれ(Pz23)が、前記第2の周期長(Dz)のn倍と等しくなく、このときnが自然数であり、つまり
Pz23≠n・Dz
である、誘導式位置測定機構。
【請求項4】
請求項2または3に記載の誘導式位置測定機構であって、前記第1のトラックずれ(Pz12)または前記第2のトラックずれ(Pz23)が、さらなる自然数mで割った前記第2の周期長(Dz)のn倍と等しく、つまり
Pz12=n・Dz/m、式中、n≠m、または
Pz23=n・Dz/m、式中、n≠m
である、誘導式位置測定機構。
【請求項5】
請求項4に記載の誘導式位置測定機構であって、前記さらなる自然数mが3であり、つまり
Pz12=n・Dz/3、式中、n≠3、または
Pz23=n・Dz/3、式中、n≠3
である、誘導式位置測定機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の誘導式位置測定機構であって、前記第1の受信トラック(1.1)が前記第2の受信トラック(1.2)に対して相対的に、前記第2の方向(z)に第1のトラックずれ(Pz12)の分だけずれて、および前記第2の受信トラック(1.2)が前記第3の受信トラック(1.3)に対して相対的に、前記第2の方向(z)に第2のトラックずれ(Pz23)の分だけずれて配置されており、前記第1のトラックずれ(Pz12)が前記第2のトラックずれ(Pz23)と同じ大きさであり、つまり
Pz12=Pz23
である、誘導式位置測定機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の誘導式位置測定機構であって、前記目盛構造(2.1)が、前記第1の方向(x)に沿って目盛周期(Dx)で周期的に並んでおり、前記目盛周期(Dx)が、前記第1の周期長(Px)と同じようなまたは正確に同じ長さを有しており、したがって
0.75・Dx≦Px≦1.25・Dx
が当てはまる、誘導式位置測定機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の誘導式位置測定機構であって、前記目盛構造(2.1)が、前記第2の方向(z)に沿って正弦波形の軌道を有している、誘導式位置測定機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の誘導式位置測定機構であって、前記目盛構造(2.1)が、畝状部(2.11)および隙間(2.12)として形成されている、誘導式位置測定機構。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の誘導式位置測定機構であって、前記受信導体路(1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32)が、前記第1の方向(x)に沿って正弦波形の軌道を有している、誘導式位置測定機構。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の誘導式位置測定機構であって、前記スケール要素(2)が、前記第2の方向(z)に対して平行に延びる軸(A)の周りを、前記走査要素(1)に対して相対的に回転可能であり、かつ前記第1の方向(x)が周方向に延びている、誘導式位置測定機構。
【請求項12】
請求項11に記載の誘導式位置測定機構であって、前記スケール要素(2)が円筒体として形成されている、誘導式位置測定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の第1の方向でも第2の方向でもスケール要素に対する相対的な走査要素の位置を決定するための誘導式位置測定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導式位置測定機構は、例えば2つの互いに対して相対的に回転可能な機械部分の角度位置を決定するための角度測定機器として使用される。誘導式位置測定機構ではしばしば、励磁導線と、例えば導体路の形態での受信トラックとが、共通のたいていは多層のプリント基板上に施されており、このプリント基板が、例えば角度測定機器の固定子と固定的に結合している。このプリント基板に対向してスケール要素が存在しており、このスケール要素上には目盛構造が施されており、かつスケール要素は角度測定機器の回転子と回転不能に結合されている。励磁導線に、時間と共に交番(又は、変化)する励磁電流が印加されると、受信トラック内で、回転子と固定子の相対回転中に角度位置に依存する信号が生成される。この信号はその後、評価電子機器内でさらに処理される。
【0003】
このような誘導式位置測定機構はしばしば、電気駆動装置のための測定機器として、相応の機械部分の相対運動または相対位置の決定に用いられる。この場合には、後続電子機器の生成された角度位置値が、駆動装置の制御のために、相応のインターフェイス構成を介して供給される。多くの用途では、角度位置値だけでなく、軸方向での変位またはずれに関する位置値の生成も望まれている。
【0004】
一平面内での位置の2次元測定が可能な位置測定機構も知られている。
本出願人のDE102012223037A1では、角度位置も軸方向のずれも決定可能な誘導式位置測定機構が説明されている。軸方向のずれまたは軸方向の位置は、2つの目盛トラックの間の、周りを取り巻いている溝を使って確定される。このような位置測定機構により、軸方向のずれは比較的小さな測定距離にわたってしか決定され得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】DE102012223037A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎となる課題は、2方向の位置の決定が可能な比較的正確で安価な誘導式位置測定機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明により、請求項1の特徴によって解決される。
この誘導式位置測定機構は、走査要素およびスケール要素を備えている。この位置測定機構により、第1の方向でも第2の方向でもスケール要素に対する相対的な走査要素の位置が決定可能である。スケール要素は、第1の方向に沿って並ぶ目盛構造を含んでいる。この目盛構造は第2の方向に沿って、第2の周期長をもつ周期的な軌道を有している。走査要素は、第1の受信トラック、第2の受信トラック、および第3の受信トラックならびに少なくとも1つの励磁導線を含んでいる。3つの受信トラックの各々がそれぞれ2つの受信導体路を有しており、受信導体路は第1の方向に沿って、第1の周期長Pxをもつ周期的な軌道を有している。3つの受信トラックは、第2の方向に互いに対してずれて配置されている。
【0008】
第1の方向は、例えば周方向または接線方向であり得る。この場合には、第1の方向での位置決定により、(回転)軸の周りの回転運動または旋回運動に関し、走査要素に対する相対的なスケール要素の角度位置が測定され得る。この場合の第2の方向は、とりわけ第1の方向に直交に方向づけることができ、例えばスケール要素が走査要素に対して相対的に回転可能な(回転)軸に平行に方向づけられ得る。
【0009】
その代わりにこの位置測定機構は、一平面内の2次元の位置決定が可能なように形成することもでき、その際、第1の方向は平面内で第2の方向に直交に方向づけられることが好ましい。この場合には、スケール要素が平らな板として形成され得る。
【0010】
通常は、走査要素とスケール要素は互いに対向して配置されており、かつ例えば軸方向または径方向に延びている空隙によって互いから離隔している。受信導体路はしばしば、互いに対して位相ずれ(例えば90°の位相ずれ)を有するように配置されている。
【0011】
第1の受信トラックが、これに隣接する第2の受信トラックに対して相対的に、第2の方向に第1のトラックずれPz12の分だけずれて配置されており、このトラックずれPz12が、第2の周期長Dzのn倍と等しくなく、このときnは自然数であり、つまりPz12≠n・Dzであることが有利である。したがって2つの受信トラックが第2の方向に、第2の周期長または第2の周期長の倍数の分だけ互いに対してずれて配置されることはあり得ない。
【0012】
これに加えて第2の受信トラックが第3の受信トラックに対して相対的に、第2の方向zに第2のトラックずれPz23の分だけずれて配置されており、この第2のトラックずれPz23が、第2の周期長Dzのn倍と等しくなく、このときnは自然数であり、つまりPz23≠n・Dzであることが有利である。
【0013】
それぞれのトラックずれPz12、Pz23に関する考察は、相応の受信トラックの専ら第2の方向での中心間距離に関する。
少なくとも3つの受信トラックに追加してもう1つまたは複数のさらなる受信トラックを設けてもよい。例えば、スケール要素に対する相対的な走査要素の回転を検出するために(モアレ誤差検出)。この場合には、1つの追加受信トラックが、少なくとも3つの受信トラックの1つに対し、第2の周期長のn倍と等しく離隔して配置されてもよい。
【0014】
第1のトラックずれPz12または第2のトラックずれPz23が、さらなる自然数mで割った第2の周期長Dzのn倍に等しいことが有利であり、つまり
Pz12=n・Dz/m、式中、n≠m、または
Pz23=n・Dz/m、式中、n≠m
である。
【0015】
本発明のさらなる形態では、さらなる自然数mは3であり、つまり
Pz12=n・Dz/3、式中、n≠3、または
Pz23=n・Dz/3、式中、n≠3
である。
【0016】
第1のトラックずれPz12が第2のトラックずれPz23と同じ大きさであることが有利であり、つまり
Pz12=Pz23
である。
【0017】
目盛構造が、第1の方向に沿って目盛周期Dxで周期的に並んでおり、この目盛周期Dxが、第1の周期長Pxと同じような長さを有することが有利である。とりわけ
0.75・Dx≦Px≦1.25・Dx、または
0.90・Dx≦Px≦1.10・Dx、または
Dx=Px
が当てはまる。
【0018】
目盛構造または受信導体路に関する周期的な軌道とは、空間において固定間隔に基づいて繰り返されるパターン(空間的に周期的)のことである。目盛構造または受信導体路が、湾曲した、つまり弧を描く軌道を有するように、かつとりわけ真っ直ぐな区間を有さないように形成されることが有利である。
【0019】
本発明の一変形形態によれば、目盛構造は、第2の方向に沿って正弦波形のまたは正弦波状の軌道を有している。それゆえに目盛構造に帰属する正弦波線の仮想の横座標は、第2の方向に平行に延びることになる。
【0020】
本発明のさらなる形態では、目盛構造は、畝状部および隙間または溝として形成されている。それぞれ第1の方向での畝状部の長さおよび隙間の長さが、目盛周期Dxまたは目盛構造の長さへと積算される。1つの目盛周期Dx内で、畝状部の長さを隙間の長さより大きくできることが有利である。
【0021】
受信導体路は、第1の方向に沿って正弦波形のまたは正弦波状の軌道を有することが有利である。
スケール要素は、目盛構造が存在する湾曲面(側面、凸状の外面、または凹状の内面)を有するとりわけ回転対称体として形成されることが有利であり、これに関しスケール要素は、第2の方向に対して平行に延びる軸の周りを、走査要素に対して相対的に回転可能であり、加えて第1の方向は周方向に延びており、または周方向に方向づけられている。しかしその代わりに、軸が第1の方向に平行に延びていてもよく、その場合、第2の方向が周方向に延びている。
【0022】
本発明のさらなる形態では、スケール要素が円筒体、とりわけ中空円筒体として形成されている。
目盛構造は、第2の方向に沿って、軸に対して異なる間隔を有し得る。例えば、スケール要素が錐体または(樽状の側面輪郭をもつ)球体として形成されていて、目盛構造が錐面または球面に存在することができる。この構造形式では、走査要素とスケール要素の相対位置の変更が、必然的に信号振幅の変化を生じさせ、この信号振幅はその後、第2の方向の位置に関する情報として追加的に用いられ得る。
【0023】
本発明の有利な形成形態は従属請求項から読み取られる。
本発明による誘導式位置測定機構のさらなる詳細および利点は、添付の図に基づく1つの例示的実施形態の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】スケール要素の透視図である。
図2】走査要素の平面図である。
図3】スケール要素の詳細図である。
図4】走査要素と一緒のスケール要素の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、走査要素1(図2)と、相対的に軸Aの周りを回転可能なスケール要素2またはスケールとの間の、第1の方向x(角度位置φに相当)での位置を検出するためにも第2の方向zでの位置を検出するためにも決定された位置測定機構に基づいて説明される。軸Aは、第2の方向zに対して平行に方向づけられている。したがって第1の方向xは周方向とも定義され得る。
【0026】
図1ではスケール要素2が、および図3ではスケール要素2の拡大された一部区間が示されている。ここではスケール要素2はアルミニウム材料から製造されている。スケール要素2は、この例示的実施形態では、軸Aをもつ中空円筒またはリングとして形成されており、この中空円筒またはリングの側面に目盛構造2.1が存在している。目盛構造2.1は、ここで紹介している例では、畝状部2.11およびその間にある隙間2.12または溝を含んでいる。それゆえに目盛構造2.1はそれぞれ、交互に配置された畝状部2.11と隙間2.12の、第1の方向xまたは周方向に対して周期的なシーケンスから成っている。目盛構造2.1の目盛周期Dx(図3)は、畝状部2.11の長さTと隙間2.12の長さGとの和であり、この長さT、Gは、第1の方向x、すなわち、周方向に延びている。
【0027】
Dx=G+T
長さTは、すべての畝状部2.11に関して同じ大きさであり、隙間2.12の長さGもそれぞれ同様である。これに加えて紹介している例示的実施形態では、1つの目盛周期Dx内で、畝状部2.11の長さTは隙間の長さGより大きい(T>G)。
【0028】
目盛構造2.1、つまり畝状部2.11およびその間にある隙間2.12は、空間的に周期的な軌道を有しており、この軌道は、第2の方向zに対し(沿って)実質的に正弦波形にまたは正弦波状に形成されている。これに関し、正弦波線の横座標は、軸Aに対して平行な線に沿って、つまり第2の方向zに延びている。ここで紹介している例示的実施形態では、目盛構造2.1の各々が、正弦波周期全体を複数回経て延びており、これに関し目盛構造2.1の各々が第2の周期長Dzを有している。
【0029】
図2による走査要素1は、複数の層を有するプリント基板として実施されており、かつスケール要素2の走査に用いられる。図示した走査要素1は、第1の受信トラック1.1、第2の受信トラック1.2、および第3の受信トラック1.3を有している。3つの受信トラック1.1、1.2、1.3の各々が、それぞれ2つの受信導体路1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32を含んでいる。走査要素1は、受信導体路1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32を包囲する励磁導線1.4、1.5、1.6をさらに含んでいる。これに加え、受信導体路1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32は、貫通ビアを有する異なる平面を延びており、これにより交点で望ましくない短絡が回避される。図示した例示的実施形態では、プリント基板構造内で少なくとも2つの層が設けられている。受信導体路1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32は、実質的に正弦波形にまたは正弦波状に形成された、空間的に周期的な軌道を有している。これに関し、正弦波線の横座標は、第1の方向xに対して平行な線に沿って延びている。隣接する受信トラック1.1、1.2、1.3のトラックずれPz12、Pz23は、関連する横座標の間隔、つまり中心間距離に相当する。ここで紹介している例示的実施形態では、受信導体路1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32の各々が、第1の周期長Pxをもつ正弦波周期全体を1回経て延びている。ここで紹介している例示的実施形態では、第1の周期長Pxが目盛周期Dxと同じ大きさである。
【0030】
Px=Dx=T+G
同じ受信トラック1.1、1.2、1.3に属する受信導体路1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32は互いに対して相対的に第1の方向xに沿ってずれて配置されている。ここで紹介している例示的実施形態では、1つの同じ受信トラック1.1、1.2、1.3内に存在する受信導体路1.11、1.12;1.21、1.22;1.31、1.32(つまり第1の受信トラック1.1の受信導体路1.11、1.12、第2の受信トラック1.2の受信導体路1.21、1.22、および第3の受信トラック1.3の受信導体路1.31、1.32)は互いに対し、正弦波周期全体の1/4(第1の方向xに沿ってπ/2または90°)ずれて配置されている。受信導体路1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32は、最終的に第1の方向xでの位置決定に対し、90°移相した信号をもたらし得るように電気的に接続されている。
【0031】
第1の受信トラック1.1は隣接する第2の受信トラック1.2に対し、第2の方向zに第1のトラックずれPz12の分だけずれて配置されている。同様に第2の受信トラック1.2は隣接する第3の受信トラック1.3に対し、第2の方向zに第2のトラックずれPz23の分だけずれて配置されている。ここで紹介している例示的実施形態では、第1の受信トラック1.1と第2の受信トラック1.2との間の第1のトラックずれPz12と、第2の受信トラック1.2と第3の受信トラック1.3との間の第2のトラックずれPz23とは同じ大きさである(Pz12=Pz23)。その他の点では、図2および図4に示しているように、第1のトラックずれPz12および第2のトラックずれPz23は、第2の方向zでの受信トラック1.1、1.2、1.3の中心の間隔(中心間距離)に相応する。
【0032】
つまり、隣接する受信トラック1.1、1.2、1.3は互いに対して第2の方向zにそれぞれトラックずれPz12、Pz23の分だけずれて配置されている。ここで紹介している例示的実施形態では、第1のトラックずれPz12も第2のトラックずれPz23も、第2の周期長Dzの3分の1であり、つまり
Pz12=Dz/3=Pz23
である。
【0033】
図4による組み立てられた状態では、走査要素1とスケール要素2は、径方向の間隔、つまり径方向の空隙をあけて向かい合っており、したがってスケール要素2と走査要素1が相対的に回転すると、受信導体路1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32内で、それぞれの角度位置に依存する信号が誘導効果によって生成可能である。相応の信号が形成されるための前提条件は、励磁導線1.4、1.5、1.6が、走査される目盛構造の領域内で、時間と共に変化する電磁励起場を生成することである。図示した例示的実施形態では、励磁導線1.4、1.5、1.6が、平行平面で電流が流れる複数の個々の導体路として形成されている。走査要素1は、例えばASICチップを含む電子回路を有している。走査要素1のこの電子回路は、評価要素としてだけでなく、励磁コントロール要素としても働き、この励磁コントロール要素のコントロール下で励磁電流が生成され、励磁電流はその後、励磁導線1.4、1.5、1.6または単一導体路を貫流する。したがって励磁導線1.4、1.5、1.6は、1つの同じ励磁コントロール要素によって通電される。
【0034】
励磁導線1.4、1.5、1.6が通電すると、それぞれの励磁導線1.4、1.5、1.6の周りに管状または円筒形に方向づけられた電磁場が形成される。この生じている電磁場の力線は、同心円の形態で励磁導線1.4、1.5、1.6の周りに延びており、この力線の方向は、既知のように励磁導線1.4、1.5、1.6内の電流方向に依存している。畝状部2.11の領域で渦電流が誘導され、これにより、角度位置φに依存した場の変調が達成される。これに相応して受信トラック1.1、1.2、1.3により、それぞれ、相対的な角度位置φが測定され得る。ペアの受信導体路1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32はその受信トラック1.1、1.2、1.3内で、それぞれ90°移相した信号をもたらすように配置されており、これにより回転方向の決定も行われ得る。ただし1つだけの受信トラック1.1、1.2、1.3のこのように確定された角度位置φは、一般的に望ましくなく大きな誤差を有しており、この誤差は、さらなる受信トラック1.1、1.2、1.3を使った測定によって、例えば平均値を出すことによって補正または排除される。
【0035】
しかし受信トラック1.1、1.2、1.3によって、スケール要素2と走査要素1の間の第1の方向xでの相対位置または角度位置φだけでなく、第2の方向zでの相対位置も検出される。このために、受信トラック1.1、1.2、1.3のそれぞれの個別の測定値がそれぞれ、3つすべての受信トラック1.1、1.2、1.3から決定された(補正された)角度位置φと結び付けられる。
【0036】
したがってこの位置測定機構により、軸Aに対して平行に方向づけられた第2の方向zでのスケール要素2の相対位置が、最終的に角度位置φも検出可能な励磁導線1.4、1.5、1.6および受信トラック1.1、1.2、1.3を使用して検出され得る。
【符号の説明】
【0037】
1 走査要素
1.1 第1の受信トラック
1.2 第2の受信トラック
1.3 第3の受信トラック
1.4、1.5、1.6 励磁導線
1.11、1.12、1.21、1.22、1.31、1.32 受信導体路
2 スケール要素
2.1 目盛構造
2.11 畝状部
2.12 隙間
A 軸
Px 第1の周期長
Dz 第2の周期長
Pz12 第1のトラックずれ
Pz23 第2のトラックずれ
x 第1の方向
z 第2の方向
図1
図2
図3
図4