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特許7594998ドライフィルム、硬化物、および、電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ドライフィルム、硬化物、および、電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241128BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241128BHJP
   H05K 1/03 20060101ALN20241128BHJP
   H05K 3/28 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C08J5/18 CFC
C08J5/18 CEY
C08K3/013
H05K1/03 610L
H05K1/03 610J
H05K3/28 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021509008
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2020010575
(87)【国際公開番号】W WO2020195843
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019059068
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 新
(72)【発明者】
【氏名】仲田 和貴
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/161756(WO,A1)
【文献】特開2017-178990(JP,A)
【文献】特開2005-238469(JP,A)
【文献】特開2016-050224(JP,A)
【文献】特開2016-149388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H05K 1/03、3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上のアクリル酸エステル共重合体である高分子樹脂と、少なくとも液状エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂と、着色剤と、無機フィラー(但し、前記着色剤を除く。)と、を含む遮光性熱硬化性樹脂組成物(但し、前記遮光性熱硬化性樹脂組成物が、エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂を含む場合を除く。)からなり、
前記着色剤の配合量が、前記遮光性熱硬化性樹脂組成物の固形分に対して0.3~20質量%であり、
前記無機フィラーの配合量が、前記遮光性熱硬化性樹脂組成物の固形分に対して0.1~70質量%であり、
前記無機フィラーの凝集粒の最大粒子径が10μm以下である硬化性樹脂層を備え、
前記硬化性樹脂層の厚さをX(μm)とするとき、前記無機フィラーの凝集粒の最大粒子径がX/2(μm)以下であることを特徴とするドライフィルム。
【請求項2】
前記ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂の配合量が、前記遮光性熱硬化性樹脂組成物の固形分に対して1~35質量%である請求項1記載のドライフィルム。
【請求項3】
請求項1または2記載のドライフィルムの硬化性樹脂層を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項4】
請求項記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルム、硬化物、および、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等に用いられるプリント配線板に設けられるソルダーレジストや層間絶縁層等の保護膜や絶縁層の形成手段の一つとして、ドライフィルム(積層フィルム)が利用されている(例えば特許文献1)。ドライフィルムは、所望の特性を有する樹脂組成物をキャリアフィルムの上に塗布後、乾燥工程を経て得られる樹脂層を有し、一般的には、キャリアフィルムとは反対側の面を保護するための保護フィルムがさらに積層された状態で市場に流通している。ドライフィルムの樹脂層を基板に貼着(以下「ラミネート」とも称する)した後、パターニングや硬化処理を施すことによって、上記のような保護膜や絶縁層を有するプリント配線板などを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-010179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライフィルムは半導体チップの封止材にも用いられる。半導体ウェハ上にラミネートしたドライフィルムを硬化させて封止材を形成した後、ダイシングを例えばブレードタイプの切断機を用いて行って個別の半導体チップに切り分ける。このダイシングの際に、封止材の切断端部にバリが生じたり、封止材に欠けが生じたりすることがあった。また、半導体チップを封止した後は、チップ上の封止材の膜厚が薄くなるものの、そのような場合でも外部からの光を遮断し半導体チップを保護するための遮光性が求められている。
また、光学センサモジュールにおける隔壁や、マイクロLEDを用いたディスプレイにおけるRGBの各発光素子の周囲に配置される材料には,遮光性の高い樹脂が求められているところ、これまでの樹脂は、必ずしも遮光性が十分ではなかった。また、ドライフィルムは、黒色ソルダーレジスト等の他の用途において、光の透過率が低いことが求められることがある。
さらに、ドライフィルムは、樹脂層が基板と十分に密着するように、基板上で硬化させたときの反りが少ないことが求められているところである。
【0005】
そこで本発明の目的は、遮光性に優れ、反りが抑制され、さらに、ダイシングの際のバリや欠けを抑制することができるドライフィルム、硬化物、および電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂と、着色剤と、無機フィラーを含む遮光性硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を備えるドライフィルムであって、無機フィラーの凝集粒の最大粒子径が、硬化性樹脂層の厚さの半分以下であることにより、分散性に優れ、十分な遮光性と、反りが抑制され、ダイシングの際のバリや欠けの抑制が可能であることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明のドライフィルムは、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂と、着色剤と、無機フィラーと、を含む遮光性硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を備え、
前記硬化性樹脂層の厚さをX(μm)とするとき、前記無機フィラーの凝集粒の最大粒子径がX/2(μm)以下であることを特徴とするものである。
本発明において遮光性とは、硬化性樹脂層の膜厚40μmにおいて、光波長380-780nmの全波長領域で透過率が0.5%未満であることをいう。
【0008】
本発明のドライフィルムは、無機フィラーの凝集粒の最大粒子径が10μm以下であることが好ましく、無機フィラーの配合量が、前記遮光性硬化性樹脂組成物の固形分に対して0.1~70質量%であることが好ましく、着色剤の配合量が、前記遮光性硬化性樹脂組成物の固形分に対して0.3~20質量%であることが好ましく、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂の配合量が、前記遮光性硬化性樹脂組成物の固形分に対して1~35質量%であることが好ましく、硬化性樹脂層が、さらに、液状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0009】
本発明の硬化物は、前記ドライフィルムの硬化性樹脂層を硬化して得られることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の電子部品は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遮光性に優れ、反りが抑制され、さらに、ダイシングの際のバリや欠けを抑制することができるドライフィルム、硬化物、および電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のドライフィルムの一実施態様を模式的に示す概略断面図である。
図2】着色剤の色彩をL*a*b*表色系中のa*値およびb*値を座標軸として表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のドライフィルム、硬化物および電子部品を、より具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態のドライフィルム11の模式的な断面図である。図1に示されるドライフィルム11は、硬化性樹脂層12が、キャリアフィルム13上に形成され、保護フィルム14を積層した三層構造である。ドライフィルム11は、必要に応じて、保護フィルムと硬化性樹脂層との間、又は支持フィルムと硬化性樹脂層との間に、他の樹脂層を設けてもよい。
【0014】
<硬化性樹脂層>
本発明のドライフィルムは、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂と、着色剤と、無機フィラーと、を含む遮光性硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を備え、当該硬化性樹脂層の厚さをX(μm)とするとき、無機フィラーの凝集粒の最大粒子径がX/2(μm)以下である。
【0015】
無機フィラーは、得られる硬化物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度、絶縁層の周囲にある銅等の導体層と線膨張係数(CTE)を合わせることによるクラック耐性等の諸特性を向上させることができる。もっとも、無機フィラーは、遮光性硬化性樹脂組成物を調製してインキにしたときに凝集する。本発明者らの研究により、凝集した無機フィラーの凝集粒が大きいと、ダイシングの際のバリや欠けを生じ易いことが判明した。また、硬化物の遮光性(低透過率)は、硬化性樹脂組成物中にカーボンブラックなどの着色剤を含むことにより向上する。本発明者らの研究により、凝集した無機フィラーの凝集粒が大きいと、硬化物中で無機フィラーが光を散乱させ易く、遮光性に不利であることが判明した。そこで、硬化性樹脂層の厚さをX(μm)とするとき、無機フィラーの凝集粒の最大粒子径がX/2(μm)以下であることにより、ダイシングの際のバリや欠けを抑制することができ、また、半導体チップ上の薄膜においても遮光性を向上させることができる。
【0016】
また、硬化性樹脂層は、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂を含むことにより、着色剤及び無機フィラーの凝集を抑制し、着色剤及び無機フィラーの分散性を向上させ,沈降を抑制することができ、ひいては遮光性と硬化性樹脂組成物の長期安定性とを共に向上させることができる。さらに、硬化物の反りを抑制することができる。
ドライフィルムの硬化性樹脂層は、一般にBステージ状態と言われる状態であり、遮光性硬化性樹脂組成物から得られるものである。以下、各成分について説明する。
【0017】
[ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂]
ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂のガラス転移点は、-40~20℃であることが好ましく、-15~15℃であることがより好ましく、-5~15℃であることが特に好ましい。-5~15℃であると、硬化物の反りを良好に抑制することができる。
また、高分子樹脂の重量平均分子量は高いほど着色剤及び無機フィラーの沈降防止効果が大きいことから、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがより好ましい。上限値としては、例えば、100万以下であり、50万以下であることが好ましい。
【0018】
高分子樹脂としては、ブタジエン骨格、アミド骨格、イミド骨格、アセタール骨格、カーボネート骨格、エステル骨格、ウレタン骨格、アクリル骨格及びシロキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有する高分子樹脂などが挙げられる。例えば、ブタジエン骨格を有する高分子樹脂(日本曹達社製「G-1000」、「G-3000」、「GI-1000」、「GI-3000」、出光興産社製「R-45EPI」、ダイセル社製「PB3600」、「エポフレンドAT501」、クレイバレー社製「Ricon130」、「Ricon142」、「Ricon150」、「Ricon657」、「Ricon130MA」)、ブタジエン骨格とポリイミド骨格を有する高分子樹脂(特開2006-37083号公報記載のもの)、アクリル骨格を有する高分子樹脂(ナガセケムテックス社製「SG-P3」、「SG-600LB」、「SG-280」、「SG-790」、「SG-K2」、根上工業社製「SN-50」、「AS-3000E」、「ME-2000」)などが挙げられる。
【0019】
高分子樹脂としては、硬化物の平坦性の観点からガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上のアクリル共重合体であることが好ましい。また、着色剤および無機フィラーの分散性と組成物の沈降を抑制する観点から、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が10万~100万のアクリル共重合体であることが好ましく、ガラス転移点が-5~15℃かつ重量平均分子量が20万~50万のアクリル共重合体であることが好ましい。
【0020】
アクリル酸エステル共重合体は、官能基を有していてもよく、官能基としては例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミド基等が挙げられる。
【0021】
アクリル酸エステル共重合体は、エポキシ基を有することが好ましく、エポキシ基およびアミド基を有することがさらに好ましい。エポキシ基を有することにより、硬化物の反りを抑制することができる。
【0022】
アクリル酸エステル共重合体としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジンSG-70L、SG-708-6、WS-023 EK30、SG-P3、SG-80H、SG-280 EK23、SG-600TEA、SG-790が挙げられる。アクリル酸エステル共重合体は合成して得てもよく、合成方法としては、例えば、特開2016-102200号公報記載の合成方法が挙げられる。
【0023】
高分子樹脂は、1種を単独または2種類以上を組合せて用いることができる。高分子樹脂の配合量は、組成物の固形分全量基準で1~35質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましくい。上記範囲内であると、無機フィラーなどの分散性や組成物の長期安定性を向上させることができる。特に、高分子樹脂の配合量が5質量%以上であると、透過率が低く基板の反りを抑制する硬化膜を得ることができる。
【0024】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により、例えば、以下に述べる測定装置、測定条件にて測定できる。
測定装置:Waters製「Waters 2695」
検出器:Waters製「Waters2414」、RI(示差屈折率計)
カラム:Waters製「HSPgel Column,HR MB-L,3μm,6mm×150mm」×2+Waters製「HSPgel Column,HR1,3μm,6mm×150mm」×2
測定条件:
カラム温度:40℃
RI検出器設定温度:35℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5mL/分
サンプル量:10μL
サンプル濃度:0.7質量%
【0025】
[着色剤]
着色剤としては、遮光性硬化性樹脂組成物を得ることができるものであれば特に限定されないが、公知慣用の黒色着色剤を使用することができる。具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄、酸化コバルト、ペリレン系黒色着色剤などが挙げられ、これらの着色剤は、単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
着色剤は、ペリレン系着色剤、該ペリレン系着色剤と補色関係にある着色剤の組み合わせでもよく、その組合せにより遮光性を呈すればよい。
ペリレン系着色剤には緑色、黄色、橙色、赤色、紫色、黒色などの色を示すものがあり下記のようなカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)番号がつけられているものを挙げることができる。
-緑色:Solvent Green 5
-橙色:Solvent Orange 55
-赤色:Solvent Red 135, 179; Pigment Red 123, 149, 178, 179, 190, 194, 224
-紫色:Pigment Violet 29
-黒色:Pigment Black 31, 32
上記以外のペリレン系着色剤も使用することができ、例えば、カラーインデックスの番号はないが近赤外線透過黒色有機顔料として知られているBASF社のLumogen(登録商標)Black FK4280、Lumogen Black FK4281、集光性蛍光染料として知られているLumogen F Yellow 083、Lumogen F Orange 240、Lumogen F Red305、Lumogen F Green850等も他のペリレン系化合物と同様に紫外線領域の吸収が少なく、着色力が高いため好適に使用することができる。
【0026】
本発明においてペリレン系着色剤と組み合わせて用いられる補色着色剤について以下に説明する。まず、本発明における補色関係について説明する。
着色剤はカラーインデックスカラーの通りの色彩を呈していない場合もあるため、JIS Z8729に規定される方法により樹脂組成物の硬化塗膜の外観色調を測定・表示し、L*a*b*表色系中の色彩を示すa*値およびb*値を座標軸(図2を参照)で確認し、ペリレン系着色剤との組み合わせで得られる硬化塗膜の(a*値,b*値)を(0,0)に限りなく近づけるための着色剤を補色関係にある着色剤として選定する。ここで、硬化塗膜の膜厚は、特に限定されないが、例えば40μmである。
また、(0,0)に限りなく近い(a*値,b*値)としては、a値及びb値がそれぞれ-5~+5の範囲であり、-2~+2の範囲であることが好ましい。また、補色関係にある着色剤としてはペリレン系着色剤でもペリレン系着色剤以外の着色剤でもよい。
【0027】
ペリレン系着色剤と補色関係にある着色剤としては、ペリレン系着色剤との組合せによって、互いの着色剤の表色系a*値およびb*値が、それぞれ0に近づくものであればいずれの着色剤であってもよく、以下の着色剤が挙げられる。
より好ましいペリレン系着色剤と補色関係にある着色剤との組合せとしては、Pigment Red 149,178,179と緑色アントラキノン系着色剤(Solvent Green 3、Solvent Green 20、Solvent Green 28等)の組合せであり、ペリレン系着色剤同士の混色(組合せ)であれば、赤色ペリレン系着色剤(Pigment Red 149,178,179)と黒色ペリレン系着色剤(Pigment Black 31、32)との組合せと、黒色ペリレン系着色剤(Pigment Black 31、32)と同じく黒色ペリレン系着色剤(Lumogen(登録商標)BlackFK4280.4281)との組合せである。
【0028】
また、着色剤は、黄色着色剤と紫色着色剤の組合せ、黄色着色剤と青色着色剤と赤色着色剤の組合せ、緑色着色剤と紫色着色剤の組合せ、緑色着色剤と赤色着色剤の組合せ、黄色着色剤と紫色着色剤と青色着色剤の組合せ、及び緑色着色剤と赤色着色剤と青色着色剤の組合せの群から選択されたいずれかの組合せでもよく、その組合せにより樹脂組成物が遮光性を有すればよい。その他、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤などを組み合わせてもよい。
【0029】
青色着色剤としては、フタロシアニン系、アントラキノン系等があり、ピグメント(Pigment)、ソルベント(Solvent)に分類されている化合物などがある。これ以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
赤色着色剤としては、モノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがある。
黄色着色剤としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等がある。
緑色着色剤としては、フタロシアニン系、アントラキノン系がある。これ以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0030】
紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤としては、具体的には、Pigment Violet 19, 23, 29, 32, 36, 38, 42; Solvent Violet 13, 36; C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73;C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
着色剤の配合量は、特に制限はないが、組成物の固形分全量に対し、好ましくは0.3~20質量部である。配合量を0.3質量部以上とすることで、遮光性を向上させることができる。一方配合量を20質量部以下とすることで、分散性に優れた組成物を得ることができる。
【0031】
カーボンブラックは、樹脂中で分散することで遮光性が得られる。カーボンブラックは、一般に黒色の着色剤の用途に使用されているカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックの1種又は2種以上を用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。さらに、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブを使用してもよい。
カーボンブラックを樹脂組成物に配合する際は、カーボンブラック粉末を加えてもよいし、カーボンブラック分散液を加えてもよい。
カーボンブラックの平均粒子径は10nm以上500nm以下であるのが好ましく、10nm以上300nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。なお、平均粒子径は、電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径である。
【0032】
カーボンブラックの配合量は、遮光性硬化性樹脂組成物の固形分全量基準で、0.1~20質量%であることが好ましい。カーボンブラックの配合量が0.1質量%以上で十分な遮光性が得られ、20質量%以下でクラックの発生を抑制することができる。
また、カーボンブラックの配合量が多いほど当該カーボンブラックの沈降し易いが、前述したガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂を含むことにより、カーボンブラックの沈降が抑制されている。ここに、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂の配合量と、カーボンブラックの配合量とは、質量比で1:1~100:1であることが好ましい。
【0033】
[無機フィラー]
硬化性樹脂層は、無機フィラーを含有する。無機フィラーを配合することによって、得られる硬化物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度、絶縁層の周囲にある銅等の導体層とCTEを合わせることによるクラック耐性等の熱特性を向上させることができる。無機フィラーとしては従来公知の無機フィラーが使用でき、特定のものに限定されないが、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカなどのシリカ、タルク、クレー、ノイブルグ珪土粒子、ベーマイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコン酸カルシウムや、銅、錫、亜鉛、ニッケル、銀、パラジウム、アルミニウム、鉄、コバルト、金、白金等の金属粉体が挙げられる。無機フィラーは球状粒子であることが好ましい。中でもシリカが好ましく、硬化性組成物の硬化物の硬化収縮を抑制し、より低CTEとなり、また、密着性、硬度などの特性を向上させる。
【0034】
無機フィラーは、表面処理されていてもよい。表面処理としては、カップリング剤による表面処理や、アルミナ処理等の有機基を導入しない表面処理がされていてもよい。無機フィラーの表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理すればよい。
【0035】
無機フィラーの表面処理は、カップリング剤による表面処理であることが好ましい。カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、予め無機フィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、無機フィラー100質量部に対するカップリング剤の処理量は、例えば、0.5~10質量部である。
【0036】
硬化性反応基としては熱硬化性反応基が好ましい。熱硬化性反応基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。中でも、アミノ基およびエポキシ基のいずれか少なくとも1種が好ましい。なお、表面処理された無機フィラーは、熱硬化性反応基に加え、光硬化性反応基を有していてもよい。
【0037】
なお、表面処理がされた無機フィラーは、表面処理された状態で硬化性樹脂層に含有されていればよく、硬化性樹脂層を形成する硬化性樹脂組成物に無機フィラーと表面処理剤とを別々に配合して組成物中で無機フィラーが表面処理されてもよいが、予め表面処理した無機フィラーを配合することが好ましい。予め表面処理した無機フィラーを配合することによって、別々に配合した場合に残存しうる表面処理で消費されなかった表面処理剤によるクラック耐性等の低下を防ぐことができる。予め表面処理する場合は、溶剤や硬化性樹脂に無機フィラーを予備分散した予備分散液を配合することが好ましく、表面処理した無機フィラーを溶剤に予備分散し、該予備分散液を組成物に配合するか、表面未処理の無機フィラーを溶剤に予備分散する際に十分に表面処理した後、該予備分散液を組成物に配合することがより好ましい。
無機フィラーは、粉体または固体状態で硬化性樹脂組成物の他の成分と配合してもよく、溶剤や分散剤と混合してスラリーとした後で他の成分と配合してもよい。
【0038】
無機フィラーの凝集粒の最大粒子径は、硬化性樹脂層の厚さをX(μm)とするとX/2(μm)以下である。凝集粒の最大粒子径が硬化性樹脂層の厚さの二分の一以下であることにより、硬化性樹脂層中で無機フィラーによる光の散乱を抑制して十分な遮光性を得ることができる。また、無機フィラーを含むことそれ自体はダイシングの際のバリの抑制に有利であるが、凝集粒の最大粒の粒径が大きいと却ってバリが生じ易く、しかもダイシングの際に欠けが生じやすくなる。
無機フィラーの凝集粒の最大粒子径は、上述した硬化性樹脂層の膜厚との関係を満たしたうえで、10μm以下であることが好ましい。無機フィラーの凝集粒の最大粒子径が10μm以下であることにより、ダイシングの際のバリや欠けを、より効果的に抑制することができる。上述したガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂は、無機フィラーの分散性を向上させることができる。したがって、ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、インキの状態で分散安定性に優れ、無機フィラーが凝集するのを抑制することができる。したがって、インキ、すなわち、硬化性樹脂組成物を長期保存した後でも無機フィラーの凝集粒の最大粒子径を10μm以下に維持することができる。
【0039】
無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。無機フィラーの配合量は、ドライフィルムの硬化性樹脂層の固形分全量基準で、0.1~70質量%であることが好ましい。無機フィラーの配合量が0.1質量%以上の場合、熱膨張を抑制して耐熱性が向上し、一方、70質量%以下の場合、クラックの発生を抑制することができる。また、無機フィラーの配合量は、20質量%以上であるとダイシング耐性が向上するので好ましい。
【0040】
[エポキシ樹脂]
遮光性硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含むことができる。エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する樹脂であり、従来公知のものをいずれも使用することができる。分子中にエポキシ基を2個有する2官能性エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を3個以上有する多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、水素添加されたエポキシ樹脂であってもよい。エポキシ樹脂は、固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、半固形エポキシ樹脂や結晶化エポキシ樹脂があるが、なかでも、液状エポキシ樹脂を少なくとも含むことが好ましい。固形エポキシ樹脂および液状エポキシ樹脂は、それぞれ1種を単独で、または2種類以上を組合せて用いることができる。本明細書において、固形エポキシ樹脂とは40℃で固体状であるエポキシ樹脂をいい、半固形エポキシ樹脂とは20℃で固体状であり、40℃で液状であるエポキシ樹脂をいい、液状エポキシ樹脂とは20℃で液状のエポキシ樹脂をいう。液状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。例えば、特開2016-079384号公報の段落23~25に記載の方法にて行なう。また、結晶性エポキシ樹脂とは、結晶性の強いエポキシ樹脂を意味し、融点以下の温度では、高分子鎖が規則正しく配列し、固形樹脂でありながらも、溶融時には液状樹脂並みの低粘度となる熱硬化性のエポキシ樹脂をいう。
【0041】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。液状エポキシ樹脂を含むことで、ドライフィルムの可とう性に優れる。
【0042】
固形エポキシ樹脂としては、DIC社製HP-4700(ナフタレン型エポキシ樹脂)、日本化薬社製NC-7000(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬社製EPPN-502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)等のフェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);DIC社製EPICLON HP-7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬社製NC-3000H(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬社製NC-3000L等のビフェニル/フェノールノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製EPICLON N660、EPICLON N690、N770、日本化薬社製EOCN-104S等のノボラック型エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製TX0712等のリン含有エポキシ樹脂;日産化学社製TEPIC等のトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。固形エポキシ樹脂を含むことで、硬化物のガラス転移温度が高くなり耐熱性に優れる。
【0043】
半固形エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。半固形エポキシ樹脂を含むことにより、硬化物のガラス転移温度(Tg)が高く、CTEが低くなり、クラック耐性に優れる。
半固形エポキシ樹脂としては、DIC社製EPICLON 860、EPICLON 900-IM、EPICLON EXA―4816、EPICLON EXA-4822、日鉄ケミカル&マテリアル社製エポトートYD-134、三菱ケミカル社製jER834、jER872、住友化学社製ELA-134等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;DIC社製EPICLON HP-4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC社製EPICLON N-740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0044】
結晶性エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル構造、スルフィド構造、フェニレン構造、ナフタレン構造等を有する結晶性エポキシ樹脂を用いることができる。ビフェニルタイプのエポキシ樹脂は、例えば、三菱ケミカル社製jER YX4000、jER YX4000H、jER YL6121H、jER YL6640、jER YL6677である。ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂は、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製エポトートYSLV-120TEである。フェニレン型エポキシ樹脂は、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製エポトートYDC-1312である。ナフタレン型エポキシ樹脂は、例えば、DIC社製EPICLON HP-4032、EPICLON HP-4032D、EPICLON HP-4700である。また、結晶性エポキシ樹脂として日鉄ケミカル&マテリアル社製エポトートYSLV-90C、日産化学社製TEPIC-S(トリグリシジルイソシアヌレート)を用いることもできる。
【0045】
エポキシ樹脂の配合量は、合計で、組成物の固形分全量基準で1~70質量%であることが好ましい。上記範囲内であると、硬化物の耐熱性や可撓性やクラック耐性に優れる。また、液状エポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂と硬化剤と硬化促進剤と上記高分子樹脂の合計固形分全量基準で5~60質量%であることが好ましい。上記範囲内であると、ドライフィルムの柔軟性に優れる。
【0046】
遮光性硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、エポキシ樹脂以外の硬化性樹脂成分を含有してもよく、例えば、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。
【0047】
[硬化剤]
遮光性硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル基を有する化合物、活性エステル基を有する化合物、マレイミド基を有する化合物、脂環式オレフィン重合体等が挙げられる。硬化剤は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
フェノール性水酸基を有する樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール/ナフトール樹脂、α-ナフトール骨格含有フェノール樹脂、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ザイロック型フェノールノボラック樹脂等の従来公知のものを用いることができる。
フェノール性水酸基を有する樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン骨格フェノールノボラック樹脂(GDPシリーズ、群栄化学社製)、ザイロック型フェノールノボラック樹脂(MEH-7800、明和化成社製)、ビフェニルアラルキル型ノボラック樹脂(MEH-7851、明和化成社製)、ナフトールアラルキル型硬化剤(SNシリーズ、日鉄ケミカル&マテリアル社製)、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック樹脂(LA-3018-50P、DIC社製)、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂(LA-705N、DIC社製)などが挙げられる。
【0049】
シアネートエステル基を有する化合物は、一分子中に2個以上のシアネートエステル基(-OCN)を有する化合物であることが好ましい。シアネートエステル基を有する化合物は、従来公知のものをいずれも使用することができる。シアネートエステル基を有する化合物としては、例えば、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、アルキルフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂が挙げられる。また、一部がトリアジン化したプレポリマーであってもよい。
【0050】
市販されているシアネートエステル基を有する化合物としては、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製、PT30S)、ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン社製、BA230S75)、ジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製、DT-4000、DT-7000)等が挙げられる。
【0051】
活性エステル基を有する化合物は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物であることが好ましい。活性エステル基を有する化合物は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル基を有する化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。また、活性エステル基を有する化合物としては、ナフタレンジオールアルキル/安息香酸型でもよい。
【0052】
市販されている活性エステル基を有する化合物としては、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物、例えば、HPC8000-65T(DIC社製)、HPC8100-65T(DIC社製)、HPC8150-65T(DIC社製)が挙げられる。
【0053】
マレイミド基を有する化合物は、マレイミド骨格を有する化合物であり、従来公知のものをいずれも使用できる。マレイミド基を有する化合物は、2以上のマレイミド骨格を有することが好ましく、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、2,2’-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、およびこれらのオリゴマー、ならびにマレイミド骨格を有するジアミン縮合物のうちの少なくとも何れか1種であることがより好ましい。オリゴマーは、上述のマレイミド基を有する化合物のうちのモノマーであるマレイミド基を有する化合物を縮合させることにより得られたオリゴマーである。
【0054】
市販されているマレイミド基を有する化合物としては、BMI-1000(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-2300(フェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-3000(m-フェニレンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-5100(3,3’-ジメチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-7000(4-メチル-1,3,-フェニレンビスマレイミド、大和化成工業社製)、BMI-TMH((1,6-ビスマレイミド-2,2,4-トリメチル)ヘキサン、大和化成工業社製)などが挙げられる。
【0055】
硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対し20~500質量部であることが好ましく、25~500質量部であることがより好ましい。
【0056】
以下では、一例として、光硬化性成分を含まない熱硬化性樹脂組成物で遮光性硬化性樹脂組成物を形成する場合について、上記成分以外に含み得る成分について説明する。
【0057】
遮光性硬化性樹脂組成物は、得られる硬化膜の機械的強度を向上させるために、さらに熱可塑性樹脂を含有することができる。熱可塑性樹脂は、溶剤に可溶であることが好ましい。溶剤に可溶である場合、ドライフィルムの柔軟性が向上し、クラックの発生や粉落ちを抑制できる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂や、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の縮合物であるフェノキシ樹脂或いはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
熱可塑性樹脂の配合量は、遮光性硬化性樹脂組成物の固形分全量基準で、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%である。熱可塑性樹脂の配合量が上記範囲内であると、均一な粗化面状態を得られやすい。
【0059】
さらに、遮光性硬化性樹脂組成物は、必要に応じてゴム状粒子を含有することができる。このようなゴム状粒子としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプロピレンゴム、ウレタン変性ポリブタジエンゴム、エポキシ変性ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基または水酸基で変性したアクリロニトリルブタジエンゴム、およびそれらの架橋ゴム粒子、コアシェル型ゴム粒子等が挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのゴム状粒子は、得られる硬化膜の柔軟性を向上させたり、クラック耐性が向上したり、酸化剤による表面粗化処理を可能とし、銅箔等との密着強度を向上させるために添加される。
【0060】
ゴム状粒子の平均粒子径は0.005~1μmの範囲が好ましく、0.2~1μmの範囲がより好ましい。ゴム状粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置と動的光散乱法による測定装置により求めることができる。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXII、動的光散乱法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のNanotrac Wave II UT151が挙げられる。
【0061】
ゴム状粒子の配合量は、遮光性硬化性樹脂組成物の固形分全量基準で、0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。0.5質量%以上の場合、クラック耐性が得られ、導体パターン等との密着強度を向上できる。10質量%以下の場合、熱膨張係数(CTE)が低下し、ガラス転移温度(Tg)が上昇して硬化特性が向上する。
【0062】
遮光性硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。このような硬化促進剤の具体例としては、イミダゾールおよびその誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩および/またはエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-キシリル-S-トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N-ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、ヘキサ(N-メチル)メラミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m-アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス-2-シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6-トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン重合触媒;スチレン-無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物、金属触媒等の従来公知の硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤の中でも、BHAST耐性が得られることから、ホスホニウム塩類が好ましい。
【0063】
硬化促進剤は、1種を単独または2種以上混合して用いることができる。硬化促進剤の使用は必須ではないが、特に硬化を促進したい場合には、エポキシ樹脂100質量部に対して好ましくは0.01~5質量部の範囲で用いることができる。金属触媒の場合、シアネートエステル基を有する化合物100質量部に対して金属換算で10~550ppmが好ましく、25~200ppmがより好ましい。
【0064】
有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、2-メトキシプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等の他、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラクロロエチレン、テレビン油等が挙げられる。また、丸善石油化学社製スワゾール1000、スワゾール1500、三共化学社製ソルベント#100、ソルベント#150、シェルケミカルズジャパン社製シェルゾールA100、シェルゾールA150、出光興産社製イプゾール100番、イプゾール150番等の有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いることができる。
【0065】
遮光性硬化性樹脂組成物中の残留溶剤量は、0.5~7.0質量%であることが好ましい。残留溶剤が7.0質量%以下であると、熱硬化時の突沸を抑え、表面の平坦性がより良好となる。また、溶融粘度が下がり過ぎて樹脂が流れてしまうことを抑制でき、平坦性が良好となる。残留溶剤が0.5質量%以上であると、ラミネート時の流動性が良好で、平坦性および埋め込み性がより良好となる。
【0066】
遮光性硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、ナフタレンブラック等の従来公知の着色剤、アスベスト、オルベン、ベントン、微紛シリカ等の従来公知の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤、チタネート系、アルミニウム系の従来公知の添加剤類を用いることができる。
【0067】
遮光性硬化性樹脂組成物からなるドライフィルの硬化性樹脂層の厚さは、例えば、厚さが1~200μmであればよい。これらの厚さの範囲内で、遮光性硬化性樹脂組成物中の無機フィラーの凝集粒の最大径は当該硬化性樹脂層の厚さの二分の一以下にされる。硬化性樹脂層の厚さが大きい場合により平坦性に優れることから、例えば、厚さが30μm以上、さらには50μm以上、またさらには100μm以上でも好適に用いることができる。なお、硬化性樹脂層を複数重ねあわせて厚さが200μmを超える硬化性樹脂層を形成してもよい。その場合、ロールラミネーターや真空ラミネーターを用いればよい。
【0068】
[キャリアフィルム]
キャリアフィルムは、ドライフィルムの硬化性樹脂層を支持するものであり、該硬化性樹脂層を形成する際に、遮光性硬化性樹脂組成物が塗布されるフィルムである。キャリアフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、および、表面処理した紙等を用いることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。キャリアフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。キャリアフィルムの硬化性樹脂層を設ける面には、離型処理が施されていてもよい。また、キャリアフィルムの硬化性樹脂層を設ける面には、スパッタもしくは極薄銅箔が形成されていてもよい。
【0069】
[保護フィルム]
保護フィルムは、ドライフィルムの硬化性樹脂層の表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、硬化性樹脂層のキャリアフィルムとは反対の面に設けられる。保護フィルムとして、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)を用いることが好ましい。2軸延伸ポリプロピレンフィルムであることにより、硬化性樹脂層への積層後の冷却収縮を少なくすることができる。もっとも、保護フィルムとして、2軸延伸ポリプロピレンフィルムに限定されるものではない。保護フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~100μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。保護フィルムの硬化性樹脂層を設ける面には、エンボス加工やコロナ処理、微粘着処理等の密着性を向上させる処理や、離型処理が施されていることが好ましい。
【0070】
本発明のドライフィルムは、半導体ウェハなどにラミネートされて硬化性樹脂層を硬化して硬化物とすることにより、電子部品、特に半導体装置、プリント配線板や光学センサモジュールの封止材や永久保護膜の形成に好ましく用いることができる。中でも半導体チップ用の封止材に好適である。本発明のドライフィルムを用いて、配線を貼り合わせることによって配線板を形成してもよい。
【0071】
本発明の遮光性硬化性樹脂組成物の硬化物、又は本発明のドライフィルムの硬化物を用いた電子部品として、例えば半導体装置、プリント配線板や光学センサモジュールがある。かかる電子部品の製造方法としては、従来公知の方法を用いればよい。
【実施例
【0072】
以下、本発明の実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0073】
<遮光性硬化性樹脂組成物の調製>
実施例および比較例に記載の溶剤を容器に入れ、溶剤が揮発しないように50℃に加温しながら撹拌し、ついでそれぞれ樹脂成分およびカップリング剤を加えた。樹脂成分が溶解したことを確認したのちに、実施例に記載の無機フィラーと着色剤を加え十分に撹拌を行った。その後、ジルコニアジーズを充填したビーズミルにて混練して遮光性硬化性樹脂組成物を調製した。ビーズミルとしては、コニカル型K-8(ビューラ社製)を使用し、回転数1200rpm、吐出量20%、ビーズ粒径0.65mm、充填率88%の条件にて混練した。なお、表中の数値は、特に%の記載がない限り質量部を示し、また、溶剤、高分子樹脂およびナノシリカ以外は固形分量を示す。
【0074】
<分散性>
調製した遮光性硬化性樹脂組成物を、JIS K5600-2-5分散度の方法に準拠し、0-50μmのグラインドゲージを用いて分散度の確認を行った。評価基準は以下のとおり。なお、グラインドゲージを用いて得られた凝集粒の最大粒子径を表中に示す。
〇:5粒値で判断した分散度が20μm以下
△:5粒値で判断した分散度が20μm超30μm未満
×:5粒値で判断した分散度が30μm超
【0075】
<組成物(インキ)の沈降抑制>
調製した遮光性硬化性樹脂組成物を透明な硝子スクリュー管に入れ、23℃に設定した恒温槽に12時間保管エージング処理した。遮光性硬化性樹脂組成物は、スクリュー管の底部から50mm仕込んだ。エージング後、遮光性硬化性樹脂組成物を取り出し側面より目視にて観察を行い遮光性硬化性樹脂組成物の沈降状態を確認した。判断基準は以下の通り。
〇:沈降はみられない。
△:組成物の上部より、1mm未満の透明な上澄み液が確認された。
×:組成物の上部より、20mm以上の透明な上澄み液が確認された。
【0076】
<ドライフィルムの作製>
調製した遮光性硬化性樹脂組成物を、粘度0.5~20dPa・s(回転粘度計5rpm、25℃)になるように溶剤の量を調整して、それぞれバーコーターを用いて、硬化性樹脂層の膜厚が乾燥後40μmになるようにキャリアフィルム(PETフィルム;東洋紡社製TN-200,厚さ38μm、大きさ30cm×30cm)に塗布した。次いで、熱風循環式乾燥炉にて硬化性樹脂層の残留溶剤が0.5~2.5質量%となるように70~120℃(平均100℃)にて5~10分間乾燥し、キャリアフィルム上に硬化性樹脂層を形成した。ついで、作製したドライフィルムの表面に80℃の温度に設定したロールラミネーターを用いて2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP、アルファンFG-201、フィッシュアイレス、王子エフテック社製)の張りあわせを行い3層構造のドライフィルムを作製した。
【0077】
<透過率>
得られた3層構造のドライフィルムの保護フィルムを剥がし、厚さ1mmのスライドグラス上に、真空ラミネーターMVLP-500(名機製作所製)を用い張りあわせた。条件は、ラミネート温度80~110℃、圧力0.5MPaにて行った。ついで、キャリアフィルムを剥離し、熱風循環式乾燥炉にて100℃×30minおよび200℃×60minの条件で樹脂層を硬化させた。得られた硬化物について、紫外可視近赤外分光光度計V-700(日本分光製)を用い、380nm~780nmでの透過率を測定した。評価基準は以下のとおり。
◎:全波長領域で、透過率0.1%未満
○:全波長領域で、透過率0.1%以上0.5%未満
×:全波長領域で、透過率0.5%以上
【0078】
<ダイシング耐性>
得られた3層構造のドライフィルムの保護フィルムを剥がし、厚み700μmの8インチシリコンウエハ上に、真空ラミネーターMVLP-500(名機製作所製)を用い張りあわせた。条件は、ラミネート温度80~110℃、圧力0.5MPaにて行った。ついで、キャリアフィルムを剥離し、熱風循環式乾燥炉にて100℃×30minおよび200℃×60minの条件で樹脂層を硬化させた。ついで、ダイシングマシーンDFD6240(ディスコ社製、セラミックブレード装着)を用い、硬化膜のダイシング耐性を評価した。ダイシングの条件は回転数10000rpm、送り速度1mm/minで行った。評価基準は以下のとおり。
◎:硬化膜表面のバリ、樹脂の欠け発生なし
〇:硬化膜表面に発生したバリ、樹脂の欠けの長さが1.0mm未満
×:硬化膜表面に発生したバリ、樹脂の欠けの長さが1.0mm以上
【0079】
<基板の反り>
銅厚12μm、板厚0.1mmの銅張積基板(MCL-E-770G、日立化成社製、サイズ10×10cm)を、電解銅めっき(アトテック社、めっき後の表面粗さ100nm以下)処理して銅厚を合計で20μmにした。ついで、前処理としてCZ-8101(1μmエッチング、メック社製)を行った。その後、OPPを剥離したドライフィルムを、基板上の片面に、2チャンバー式真空ラミネーターCVP-600(ニチゴーモートン製)を用い張りあわせた。条件は、ラミネート、プレスそれぞれ、温度80~110℃、圧力0.5MPaにて行った。ついで、キャリアフィルムを剥離し、熱風循環式乾燥炉にて100℃×30minおよび200℃×60minの条件にて樹脂層を硬化させた。
ついで、ピーク温度280℃、275℃以上での曝露時間10秒以上に設定したリフロー処理5サイクルを行い、基板の4隅の反り状態(反り形状は、全てスマイル)をノギスにて計測した。評価基準は以下のとおり。
◎:反りなし
〇:4隅のうち、1番反りの大きい部分の反り量が10mm未満
△:4隅のうち、1番反りの大きい部分の反り量が10mm以上30mm未満
×:4隅のうち、1番反りの大きい部分の反り量が30mm以上
【0080】
表1に、各成分の配合割合と評価結果を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1中の注釈*1~17は、次のとおりである。
*1:三菱ケミカル社製jER828、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量189g/eq、液状
*2:日本化薬社製NC-3000H、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、エポキシ当量290g/eq、
*3:ロンザジャパン社製プリマセットPT-30、ノボラック型シアネート樹脂、シアネート当量124g/eq、固形
*4:DIC社製EPICLON HPC-8000、活性エステル樹脂、活性当量223g/eq、固形
*5:明和化成社製HF-1M、フェノールノボラック樹脂
*6:四国化成社製2E4MZ、2-エチル-4-メチルイミダゾール
*7:東京化成工業社製コバルト(II)アセチルアセトナート
*8:ガラス転移点が20℃以下かつ重量平均分子量が1万以上の高分子樹脂であり、ナガセケムテックス社製テイサンレジンSG-80H MEKカット品、固形分18質量%、アクリル酸エステル共重合樹脂(官能基:エポキシ基、アミド基)
*9:三菱ケミカル社製カーボンブラック粉末MA77(平均粒径23nm)
*10:Paliogen Red K 3580、Pigment Red 149、BASF社製、ペリレン系着色剤
*11:Solvent Green 3、東京化成工業社製、緑色アントラキノン系着色剤
*12:ファーストゲンブルー 5380、DIC社製、フタロシアニンブルー
*13:Cromophtal(登録商標)Red A2BN、BASF社製、赤色アントラキノン系着色剤
*14:デンカ社製シリカ微粒子FB-3SDC(D50=3.1μm)
*15:アドマテックス社製シリカ微粒子SO-E1(D50=0.2μm)
*16:アドマテックス社製ナノシリカ(D50=50nm)、固形分30質量%
*17:信越化学社製エポキシシランカップリング剤KBM-403
【0083】
上記表1に示す結果から、各実施例に示した遮光性硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を備えるドライフィルムは、分散性、インキの沈降抑制性、光透過抑制性(換言すれば遮光性)、ダイシング耐性、基板の反り抑制性に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0084】
11 ドライフィルム
12 硬化性樹脂層
13 キャリアフィルム
14 保護フィルム
図1
図2