(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びその製造方法並びにパターン形成用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20241128BHJP
C08K 5/134 20060101ALI20241128BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241128BHJP
C08G 73/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08L79/08 A
C08K5/134
G03F7/027 514
C08G73/06
(21)【出願番号】P 2022528888
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2021021166
(87)【国際公開番号】W WO2021246478
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2020098751
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043474(WO,A1)
【文献】特開2003-209104(JP,A)
【文献】特開2001-075280(JP,A)
【文献】特開昭57-025329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 -101/14
C08K 3/00 - 13/08
C08G73/00 - 73/26
G03F 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、重合性基を有する樹脂、酸化防止剤、及び、有機溶剤を含み
前記酸化防止剤の含有量が、前記樹脂の含有量に対して、50質量ppm~500質量ppmであり、
前記酸化防止剤の酸化還元電位は、
0.65V以下であり、
前記有機溶剤の含有量が、樹脂組成物の全質量に対して、0を超え10質量%以下であり、
粉体状、粒体状又はペレット状である
樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物の全質量に対する、前記樹脂、前記酸化防止剤、及び、前記有機溶剤の合計含有量が、90質量%以上である、請求項
1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物の全質量に対する、前記樹脂、前記酸化防止剤、及び、前記有機溶剤の合計含有量が、95質量%以上である、請求項
1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂が、ポリイミド前駆体を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂が、下記式(2)または(3)で表される繰返し単位を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
式(2)
【化1】
式(3)
【化2】
式(2)中、A
1およびA
2は、それぞれ独立に、酸素原子またはNHを表し、R
111は2価の有機基を表し、R
115は、4価の有機基を表し、R
113およびR
114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、
式(3)中、R
121は、2価の有機基を表し、R
122は、4価の有機基を表し、R
123およびR
124はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【請求項6】
前記重合性基が、ラジカル重合性基である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記酸化防止剤が、フェノール系化合物、アルコール系化合物、アルデヒド系化合物、アミン系化合物、ニトロソ系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、および、ケトン系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記酸化防止剤が、不飽和度が1以上のフェノール系化合物、又は、不飽和度が1以上のアルコール系化合物である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記有機溶剤が、炭化水素化合物、アルコール系化合物、カルボン酸、ケトン系化合物、エステル系化合物、エーテル系化合物、ニトリル系化合物、アミド系化合物、アミン系化合物、スルホン系化合物及びスルホキシド系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を製造する方法であって、
前記有機溶剤、及び、前記樹脂を含む製造用組成物に対して、前記酸化防止剤を添加する添加工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
溶剤中で原料を反応させて前記樹脂を含む反応液を得る合成工程、及び、
前記反応液中の前記樹脂を再沈し、前記再沈された前記樹脂を前記有機溶剤に再溶解し、樹脂溶液を得る再沈再溶解工程を含み、
前記樹脂溶液を、前記製造用組成物として用いて前記添加工程を行う、請求項
10に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記添加工程後に、前記樹脂を再沈する再沈工程を含む、請求項
10又は
11に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記再沈工程後に、前記有機溶剤を除去する乾燥工程を行う、請求項
12に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、溶剤とを混合する混合工程を含む
パターン形成用組成物の製造方法。
【請求項15】
前記混合工程において、感光剤を更に混合する、請求項
14に記載のパターン形成用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその製造方法並びにパターン形成用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機溶剤中で重合性基を有する樹脂を合成し、重合性基を有する樹脂を含む合成反応液を得ることが行われている。
上記樹脂は、乾燥により上記合成反応液から上記有機溶剤の一部を除去し、上記樹脂及び上記有機溶剤を含む、粉体状、粒体状又はペレット状の樹脂組成物の形態で用いられる場合がある。
例えば、上記樹脂を含むパターン形成用組成物等の組成物を調製する場合には、上記樹脂組成物を溶剤に再溶解する方法が行われる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、リフレクタと、このリフレクタに埋め込まれているリードフレームとを備え、凹所を有し、上記凹所の底面に前記リードフレームの一部が露出しているベース、上記ベースの前記凹所内に搭載されている発光素子、及び上記ベースの前記凹所内に充填され、上記発光素子を封止している封止材を備え、上記リードフレームの表面における前記リフレクタに接する領域は、Raが0.5~1.5μmの範囲内の粗化面を有し、上記リフレクタは、平均粒径9~25μm、粒径6μm以下の粒子の割合25~40体積%であるシリカ粉を含有する樹脂組成物の成形体である、発光装置が記載されている。
特許文献2には、可逆的熱変色性色材を内包させたマイクロカプセル、紫外線吸収剤及び酸化防止剤を、樹脂に含有させてなる感温変色樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-107360号公報
【文献】特開平7-331090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重合性基を有する樹脂を含む粉体状、粒体状又はペレット状の樹脂組成物において、溶剤に再溶解した場合のろ過性の向上が求められている。
また、上記樹脂組成物を再溶解して調製されたパターン形成用組成物においては、より微細なパターンを形成できることが求められている。
本発明において、パターン形成用組成物がより微細なパターンを形成できることを「パターン形成性に優れる」ともいう。
【0006】
本発明は、溶剤に再溶解した場合のろ過性、及び、再溶解によりパターン形成用組成物を調製した場合のパターン形成性に優れる樹脂組成物、及び、その製造方法並びにパターン形成用組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施態様の例を以下に示す。
<1> ポリイミド前駆体、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、重合性基を有する樹脂、酸化防止剤、及び、有機溶剤を含み
上記酸化防止剤の含有量が、上記樹脂の含有量に対して、0.1質量ppm~10,000質量ppmであり、
粉体状、粒体状又はペレット状である
樹脂組成物。
<2> 上記有機溶剤の含有量が、樹脂組成物の全質量に対して、0を超え10質量%以下である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 上記樹脂組成物の全質量に対する、上記樹脂、上記酸化防止剤、及び、上記有機溶剤の合計含有量が、95質量%以上である、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 上記樹脂が、ポリイミド前駆体を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5> 上記樹脂が、下記式(2)または(3)で表される繰返し単位を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
式(2)
【化1】
式(3)
【化2】
式(2)中、A
1およびA
2は、それぞれ独立に、酸素原子またはNHを表し、R
111は2価の有機基を表し、R
115は、4価の有機基を表し、R
113およびR
114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、
式(3)中、R
121は、2価の有機基を表し、R
122は、4価の有機基を表し、R
123およびR
124はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
<6> 上記重合性基が、ラジカル重合性基である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7> 上記酸化防止剤の酸化還元電位が、0.91V以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> 上記酸化防止剤が、フェノール系化合物、アルコール系化合物、アルデヒド系化合物、アミン系化合物、ニトロソ系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、および、ケトン系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9> 上記酸化防止剤が、不飽和度が1以上のフェノール系化合物、又は、不飽和度が1以上のアルコール系化合物である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10> 上記有機溶剤が、炭化水素化合物、アルコール系化合物、カルボン酸、ケトン系化合物、エステル系化合物、エーテル系化合物、ニトリル系化合物、アミド系化合物、アミン系化合物、スルホン系化合物及びスルホキシド系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を製造する方法であって、
上記有機溶剤、及び、上記樹脂を含む製造用組成物に対して、上記酸化防止剤を添加する添加工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
<12> 溶剤中で原料を反応させて上記樹脂を含む反応液を得る合成工程、及び、
上記反応液中の上記樹脂を再沈し、上記再沈された上記樹脂を上記有機溶剤に再溶解し、樹脂溶液を得る再沈再溶解工程を含み、
上記樹脂溶液を、上記製造用組成物として用いて上記添加工程を行う、<11>に記載の樹脂組成物の製造方法。
<13> 上記添加工程後に、上記樹脂を再沈する再沈工程を含む、<11>又は<12>に記載の樹脂組成物の製造方法。
<14> 上記再沈工程後に、上記有機溶剤を除去する乾燥工程を行う、<13>に記載の樹脂組成物の製造方法。
<15> <1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物と、溶剤とを混合する混合工程を含む
パターン形成用組成物の製造方法。
<16> 上記混合工程において、感光剤を更に混合する、<15>に記載のパターン形成用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶剤に再溶解した場合のろ過性、及び、再溶解によりパターン形成用組成物を調製した場合のパターン形成性に優れる樹脂組成物、及び、その製造方法並びにパターン形成用組成物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた露光も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方、又は、いずれかを意味する。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また本明細書において、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、TSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。それらの分子量は特に述べない限り、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、GPC測定における検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」又は「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側又は下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、更に第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。また、特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、又は、感光層がある場合には、基材から感光層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
本明細書において、特段の記載がない限り、組成物は、組成物に含まれる各成分として、その成分に該当する2種以上の化合物を含んでもよい。また、特段の記載がない限り、組成物における各成分の含有量とは、その成分に該当する全ての化合物の合計含有量を意味する。
本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101,325Pa(1気圧)、相対湿度は50%RHである。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0010】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、ポリイミド前駆体、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、重合性基を有する樹脂(以下、「特定樹脂」ともいう。)、酸化防止剤、及び、有機溶剤を含み、上記酸化防止剤の含有量が、上記樹脂の含有量に対して、0.1質量ppm~10,000質量ppmであり、粉体状、粒体状又はペレット状である。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、溶剤に再溶解した場合のろ過性、及び、パターン形成用組成物を調製した場合のパターン形成性に優れる。
上記効果が得られるメカニズムは不明であるが、下記のように推測される。
【0012】
重合性基を有する樹脂及び有機溶剤を含む粉体状、粒体状又はペレット状の組成物において、上記有機溶剤中に含まれる過酸化物、粉体、粒体又はペレットの製造時若しくは保管時に粉体又はペレットから発生する過酸化物等により、重合性基を有する樹脂に含まれる重合性基の重合が進行する場合がある。
このように、粉体状、粒体状又はペレット状の組成物において重合が進行してしまうため、上記粉体状、粒体状又はペレット状の組成物を溶剤に再溶解した場合に、ろ過性が低下してしまう場合があった。
特に、ポリイミド前駆体、又は、ポリベンゾオキサゾール前駆体(特に、ポリイミド前駆体)は溶剤への溶解性が低く、上述のように樹脂の重合が進行してしまうと、再溶解後の組成物のろ過性が大きく低下してしまう場合がある。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、上記組成物に酸化防止剤を上記特定樹脂の含有量に対して0.1質量ppm以上の含有量で含有させることにより、ろ過性が向上することを見出した。
これは、酸化防止剤が0.1質量ppm以上であれば、上述の重合性基の重合が抑制されるためであると推測される。
また、上記酸化防止剤の含有量を、上記樹脂の含有量に対して10,000質量ppm以下とすることにより、上記粉体状、粒体状又はペレット状の組成物を溶剤に溶解してパターン形成用組成物を調製した場合であっても、パターン形成性に優れることを見出した。
これは、上記酸化防止剤の含有量を上記範囲内とすることにより、パターン形成用組成物における重合が過度に抑制されることが防がれるためであると推測される。
【0013】
ここで、特許文献1及び2には、粉体状、粒体状又はペレット状の樹脂組成物において、酸化防止剤を特定の含有量で含有させることについては記載も示唆もない。
【0014】
本発明において、樹脂組成物が粉体状であるとは、樹脂組成物が微細な固体粒子であり、その長径方向における長さの平均値が30μm未満であることをいう。
また、本発明において、樹脂組成物が粒体状であるとは、樹脂組成物が微細な固体粒子であり、その長径方向における長さの平均値が30μm以上1mm以下であることをいう。
また、上記粒子状である樹脂同士が接触して集合体となり、より大きな粒子が形成されていてもよいし、上記粒子状である樹脂を含む塊である集合体が形成されていてもよい。
また、樹脂組成物がペレット状であるとは、樹脂組成物が塊状に成型されたものであることをいう。ペレットの大きさは特に限定されず、樹脂組成物の用途に応じて大きさを決定すればよい。
以下、本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる成分について詳細に説明する。
【0015】
<特定樹脂>
本発明の樹脂組成物は、ポリイミド前駆体、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂であって、重合性基を有する樹脂(特定樹脂)を含む。
上記ポリイミド前駆体、上記ポリベンゾオキサゾール前駆体は、例えば加熱又は化学処理により環化され、それぞれポリイミド、ポリベンゾオキサゾールとなる。
ポリイミド又はポリベンゾオキサゾールは、耐熱性及び絶縁性等に優れるため、本発明の樹脂組成物が特定樹脂を含むことにより、本発明の樹脂組成物を溶剤に再溶解して得られるパターン形成用組成物を様々な用途に適用することができる。
上記用途としては特に限定されないが、実装用の半導体デバイスを例に挙げると、絶縁膜や封止材の材料、又は、保護膜としての利用が挙げられる。また、フレキシブル基板のベースフィルムやカバーレイなどとしても用いることができる。
【0016】
重合性基としては、ラジカル重合性基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基、アルコキシメチル基等の公知の重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましい。
上記ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基等の芳香環に直接結合した、置換されていてもよいビニル基を有する基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられ、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、特定樹脂として、ポリイミド前駆体を含むことがより好ましい。
また、本発明の樹脂は、後述する式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を含むことが好ましく、式(2)で表される繰り返し単位を含むことが更に好ましい。
【0018】
〔ポリイミド前駆体〕
本発明で用いられるポリイミド前駆体は、その種類等特に定めるものではないが、下記式(2)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
また、本発明で用いられるポリイミド前駆体は、重合性基を有する。
重合性基は、下記式(2)で表される繰り返し単位に含まれていてもよいし、他の繰り返し単位に含まれていてもよいし、ポリイミド前駆体の末端に含まれていてもよい。
本発明の好ましい態様の一つは、重合性基が下記式(2)で表される繰り返し単位に含まれる態様である。具体的には、下記式(2)中のR
111、R
113又はR
114の少なくとも1つが重合性基である態様が好ましく、R
113又はR
114の少なくとも1つが重合性基である態様がより好ましく、R
113及びR
114が重合性基である態様が更に好ましい。
式(2)
【化3】
式(2)中、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、酸素原子又はNHを表し、R
111は、2価の有機基を表し、R
115は、4価の有機基を表し、R
113及びR
114は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0019】
式(2)におけるA1及びA2は、それぞれ独立に、酸素原子又はNHを表し、酸素原子が好ましい。
式(2)におけるR111は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、直鎖又は分岐の脂肪族基、環状の脂肪族基及び芳香族基を含む基が例示され、炭素数2~20の直鎖又は分岐の脂肪族基、炭素数6~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含む基がより好ましい。本発明の特に好ましい実施形態として、-Ar-L-Ar-で表される基であることが例示される。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族基であり、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO2-又はNHCO-、あるいは、上記の2つ以上の組み合わせからなる基である。これらの好ましい範囲は、上述のとおりである。
【0020】
R111は、ジアミンから誘導されることが好ましい。ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミンとしては、直鎖又は分岐の脂肪族、環状の脂肪族又は芳香族ジアミンなどが挙げられる。ジアミンは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
具体的には、炭素数2~20の直鎖又は分岐の脂肪族基、炭素数6~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、又は、これらの組み合わせからなる基を含むジアミンであることが好ましく、炭素数6~20の芳香族基からなる基を含むジアミンであることがより好ましい。芳香族基の例としては、下記が挙げられる。
【0021】
【化4】
式中、Aは、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO
2-、NHCO-、又は、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-、又は、-SO
2-から選択される基であることがより好ましく、-CH
2-、-O-、-S-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-、又は、-C(CH
3)
2-であることが更に好ましい。
式中、*は他の構造との結合部位を表す。
【0022】
ジアミンとしては、具体的には、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン及び1,6-ジアミノヘキサン;1,2-又は1,3-ジアミノシクロペンタン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(3-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルシクロヘキシルメタン及びイソホロンジアミン;m-又はp-フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、4,4’-又は3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-及び3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-及び3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-及び3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-又は3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノパラテルフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-10-ヒドロアントラセン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテル、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、3,3-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-ジメチル-3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4-及び2,5-ジアミノクメン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、アセトグアナミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-m-フェニレンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、2,7-ジアミノフルオレン、2,5-ジアミノピリジン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノ安息香酸のエステル、1,5-ジアミノナフタレン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(4-アミノフェニル)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(4-アミノフェニル)テトラデカフルオロヘプタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、p-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ビス(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロトリジン及び4,4’-ジアミノクアテルフェニルから選ばれる少なくとも1種のジアミンが挙げられる。
【0023】
また、国際公開第2017/038598号の段落0030~0031に記載のジアミン(DA-1)~(DA-18)も好ましい。
【0024】
その他に以下のジアミンも好適に使用できる。
【化5】
【0025】
また、国際公開第2017/038598号の段落0032~0034に記載の2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖にもつジアミンも好ましく用いられる。
【0026】
R111は、得られる有機膜の柔軟性の観点から、-Ar-L-Ar-で表されることが好ましい。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族基であり、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO2-又はNHCO-、あるいは、上記の2つ以上の組み合わせからなる基である。Arは、フェニレン基が好ましく、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1又は2の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-又はSO2-が好ましい。ここでの脂肪族炭化水素基は、アルキレン基が好ましい。
【0027】
また、R
111は、i線透過率の観点から、下記式(51)又は式(61)で表される2価の有機基であることが好ましい。特に、i線透過率、入手のし易さの観点から、式(61)で表される2価の有機基であることがより好ましい。
式(51)
【化6】
式(51)中、R
50~R
57は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基であり、R
50~R
57の少なくとも1つは、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
50~R
57の1価の有機基としては、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)の無置換のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のフッ化アルキル基等が挙げられる。
【化7】
式(61)中、R
58及びR
59は、それぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
式(51)又は(61)の構造を与えるジアミン化合物としては、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等が挙げられる。これらは1種で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また、R111は重合性基を含む構造であってもよい。
例えば、R111は重合性基を有するジアミン化合物に由来する構造とすることもできる。
重合性基を有するジアミン化合物は、特に限定されないが、芳香環構造を含む化合物であることが好ましく、芳香環構造に、アミノ基及び重合性基を含む構造が直結した構造を有する化合物であることがより好ましい。
重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基又はアルコキシメチル基を含む基が好ましく、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基又はアルコキシメチル基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基又はアルコキシメチル基が更に好ましい。
【0029】
式(2)におけるR
115は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、芳香環を含む4価の有機基が好ましく、下記式(5)又は式(6)で表される基がより好ましい。
式(5)又は式(6)中、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【化8】
式(5)中、R
112は、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、及びNHCO-、ならびに、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-CO-、-S-及びSO
2-から選択される基であることがより好ましく、-CH
2-、-C(CF
3)
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、-CO-、-S-及びSO
2-からなる群から選択される2価の基であることが更に好ましい。
【0030】
R
115は、具体的には、テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
テトラカルボン酸二無水物は、下記式(O)で表されることが好ましい。
【化9】
式(O)中、R
115は、4価の有機基を表す。R
115の好ましい範囲は式(2)におけるR
115と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0031】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジフェニルヘキサフルオロプロパン-3,3,4,4-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、これらの炭素数1~6のアルキル及び炭素数1~6のアルコキシ誘導体が挙げられる。
【0032】
また、国際公開第2017/038598号の段落0038に記載のテトラカルボン酸二無水物(DAA-1)~(DAA-5)も好ましい例として挙げられる。
【0033】
R111とR115の少なくとも一方がOH基を有することも好ましい。より具体的には、R111として、ビスアミノフェノール誘導体の残基が挙げられる。
【0034】
R113及びR114は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R113及びR114の少なくとも一方が重合性基を含むことが好ましく、両方が重合性基を含むことがより好ましい。重合性基としては、熱、ラジカル等の作用により、架橋反応することが可能な基であって、ラジカル重合性基が好ましい。特定樹脂における重合性基の具体例としては、エチレン性不飽和結合を有する基、アルコキシメチル基、ヒドロキシメチル基、アシルオキシメチル基、エポキシ基、オキセタニル基、ベンゾオキサゾリル基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アミノ基が挙げられる。ポリイミド前駆体等が有するラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、下記式(III)で表される基などが挙げられ、下記式(III)で表される基が好ましい。
【0035】
【0036】
式(III)において、R200は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子が好ましい。
式(III)において、*は他の構造との結合部位を表す。
式(III)において、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CH2CH(OH)CH2-又はポリアルキレンオキシ基を表す。
好適なR201の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、-CH2CH(OH)CH2-、ポリアルキレンオキシ基が挙げられ、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、-CH2CH(OH)CH2-、ポリアルキレンオキシ基がより好ましく、ポリアルキレンオキシ基が更に好ましい。
本発明において、ポリアルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基が2以上直接結合した基をいう。ポリアルキレンオキシ基に含まれる複数のアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ポリアルキレンオキシ基が、アルキレン基が異なる複数種のアルキレンオキシ基を含む場合、ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシ基の配列は、ランダムな配列であってもよいし、ブロックを有する配列であってもよいし、交互等のパターンを有する配列であってもよい。
上記アルキレン基の炭素数(アルキレン基が置換基を有する場合、置換基の炭素数を含む)は、2以上であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~6であることがより好ましく、2~5であることが更に好ましく、2~4であることが一層好ましく、2又は3であることが特に好ましく、2であることが最も好ましい。
また、上記アルキレン基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、ポリアルキレンオキシ基に含まれるアルキレンオキシ基の数(ポリアルキレンオキシ基の繰り返し数)は、2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~6が更に好ましい。
ポリアルキレンオキシ基としては、溶剤溶解性及び耐溶剤性の観点からは、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリトリメチレンオキシ基、ポリテトラメチレンオキシ基、又は、複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基が好ましく、ポリエチレンオキシ基又はポリプロピレンオキシ基がより好ましく、ポリエチレンオキシ基が更に好ましい。上記複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基において、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とはランダムに配列していてもよいし、ブロックを形成して配列していてもよいし、交互等のパターン状に配列していてもよい。これらの基におけるエチレンオキシ基等の繰り返し数の好ましい態様は上述の通りである。
【0037】
R113及びR114は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基である。1価の有機基としては、アリール基を構成する炭素の1つ、2つ又は3つに、好ましくは1つに酸性基を結合している、芳香族基及びアラルキル基などが挙げられる。具体的には、酸性基を有する炭素数6~20の芳香族基、酸性基を有する炭素数7~25のアラルキル基が挙げられる。より具体的には、酸性基を有するフェニル基及び酸性基を有するベンジル基が挙げられる。酸性基は、OH基が好ましい。
R113又はR114が、水素原子、2-ヒドロキシベンジル、3-ヒドロキシベンジル及び4-ヒドロキシベンジルであることもより好ましい。
【0038】
有機溶剤への溶解度の観点からは、R113又はR114は、1価の有機基であることが好ましい。1価の有機基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、環状アルキル基、芳香族基を含むことが好ましく、芳香族基で置換されたアルキル基がより好ましい。
アルキル基の炭素数は1~30が好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルヘキシル基2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ基、2-(2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ基、2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ基、及び2-(2-(2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ基が挙げられる。環状のアルキル基は、単環の環状のアルキル基であってもよく、多環の環状のアルキル基であってもよい。単環の環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。多環の環状のアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基及びピネニル基が挙げられる。中でも、高感度化との両立の観点から、シクロヘキシル基が最も好ましい。また、芳香族基で置換されたアルキル基としては、後述する芳香族基で置換された直鎖アルキル基が好ましい。
芳香族基としては、具体的には、置換又は無置換のベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環又はフェナジン環である。ベンゼン環が最も好ましい。
【0039】
式(2)において、R113が水素原子である場合、又は、R114が水素原子である場合、ポリイミド前駆体はエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物と対塩を形成していてもよい。このようなエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物の例としては、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレートが挙げられる。
【0040】
また、ポリイミド前駆体は、構造単位中にフッ素原子を有することも好ましい。ポリイミド前駆体中のフッ素原子含有量は、10質量%以上が好ましく、また、20質量%以下が好ましい。
【0041】
また、基板との密着性を向上させる目的で、ポリイミド前駆体は、シロキサン構造を有する脂肪族基と共重合していてもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどが挙げられる。
【0042】
式(2)で表される繰り返し単位は、式(2-A)で表される繰り返し単位であることが好ましい。すなわち、本発明で用いるポリイミド前駆体等の少なくとも1種が、式(2-A)で表される繰り返し単位を有する前駆体であることが好ましい。このような構造とすることにより、露光ラチチュードの幅をより広げることが可能になる。
式(2-A)
【化11】
式(2-A)中、A
1及びA
2は、酸素原子を表し、R
111及びR
112は、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R
113及びR
114は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R
113及びR
114の少なくとも一方は、重合性基を含む基であり、両方が重合性基であることが好ましい。
【0043】
A1、A2、R111、R113及びR114は、それぞれ独立に、式(2)におけるA1、A2、R111、R113及びR114と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R112は、式(5)におけるR112と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0044】
ポリイミド前駆体は、式(2)で表される繰り返し構造単位を1種含んでいてもよいが、2種以上で含んでいてもよい。また、式(2)で表される繰り返し単位の構造異性体を含んでいてもよい。また、ポリイミド前駆体は、上記式(2)の繰り返し単位のほかに、他の種類の繰り返し構造単位をも含んでよいことはいうまでもない。
【0045】
本発明におけるポリイミド前駆体の一実施形態として、全繰り返し単位の50モル%以上、更には70モル%以上、特に90モル%以上が式(2)で表される繰り返し単位であるポリイミド前駆体が例示される。
【0046】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは18,000~30,000であり、より好ましくは20,000~27,000であり、更に好ましくは22,000~25,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは7,200~14,000であり、より好ましくは8,000~12,000であり、更に好ましくは9,200~11,200である。
上記ポリイミド前駆体の分子量の分散度は、2.5以上が好ましく、2.7以上がより好ましく、2.8以上であることが更に好ましい。ポリイミド前駆体の分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、4.5以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.8以下が更に好ましく、3.2以下が一層好ましく、3.1以下がより一層好ましく、3.0以下が更に一層好ましく、2.95以下が特に好ましい。
本明細書において、分子量の分散度とは、重量平均分子量/数平均分子量により算出される値である。
【0047】
〔ポリベンゾオキサゾール前駆体〕
本発明で用いるポリベンゾオキサゾール前駆体は、その構造等について特に定めるものではないが、好ましくは下記式(3)で表される繰り返し単位を含む。
また、本発明で用いられるポリベンゾオキサゾール前駆体は、重合性基を有する。
重合性基は、下記式(3)で表される繰り返し単位に含まれていてもよいし、他の繰り返し単位に含まれていてもよいし、ポリベンゾオキサゾール前駆体の末端に含まれていてもよい。
本発明の好ましい態様の一つは、重合性基が下記式(3)で表される繰り返し単位に含まれる態様である。具体的には、下記式(3)中のR
123又はR
124の少なくとも1つが重合性基である態様がより好ましく、R
123及びR
124が重合性基である態様が更に好ましい。
式(3)
【化12】
式(3)中、R
121は、2価の有機基を表し、R
122は、4価の有機基を表し、R
123及びR
124は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0048】
式(3)において、R123及びR124は、それぞれ、式(2)におけるR113と同義であり、好ましい範囲も同様である。すなわち、少なくとも一方は、重合性基であることが好ましい。
式(3)において、R121は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を含む基が好ましい。脂肪族基としては、直鎖の脂肪族基が好ましい。R121は、ジカルボン酸残基が好ましい。ジカルボン酸残基は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0049】
ジカルボン酸残基としては、脂肪族基を含むジカルボン酸及び芳香族基を含むジカルボン酸残基が好ましく、芳香族基を含むジカルボン酸残基がより好ましい。
脂肪族基を含むジカルボン酸としては、直鎖又は分岐(好ましくは直鎖)の脂肪族基を含むジカルボン酸が好ましく、直鎖又は分岐(好ましくは直鎖)の脂肪族基と2つの-COOHからなるジカルボン酸がより好ましい。直鎖又は分岐(好ましくは直鎖)の脂肪族基の炭素数は、2~30であることが好ましく、2~25であることがより好ましく、3~20であることが更に好ましく、4~15であることが一層好ましく、5~10であることが特に好ましい。直鎖の脂肪族基はアルキレン基であることが好ましい。
直鎖の脂肪族基を含むジカルボン酸としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ-n-ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2-ジメチルスクシン酸、2,3-ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、3-エチル-3-メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3-メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6-テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9-ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸、更に下記式で表されるジカルボン酸等が挙げられる。
【0050】
【化13】
(式中、Zは炭素数1~6の炭化水素基であり、nは1~6の整数である。)
【0051】
芳香族基を含むジカルボン酸としては、以下の芳香族基を有するジカルボン酸が好ましく、以下の芳香族基と2つの-COOHのみからなるジカルボン酸がより好ましい。
【0052】
【化14】
式中、Aは-CH
2-、-O-、-S-、-SO
2-、-CO-、-NHCO-、-C(CF
3)
2-、及び、-C(CH
3)
2-からなる群から選択される2価の基を表し、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【0053】
芳香族基を含むジカルボン酸の具体例としては、4,4’-カルボニル二安息香酸及び4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、テレフタル酸が挙げられる。
【0054】
式(3)において、R122は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、上記式(2)におけるR115と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R122は、また、ビスアミノフェノール誘導体由来の基であることが好ましく、ビスアミノフェノール誘導体由来の基としては、例えば、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス-(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス-(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4-ジアミノ-2,5-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジアミノ-2,4-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジアミノ-4,6-ジヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。これらのビスアミノフェノールは、単独にて、あるいは混合して使用してもよい。
【0055】
ビスアミノフェノール誘導体のうち、下記芳香族基を有するビスアミノフェノール誘導体が好ましい。
【0056】
【化15】
式中、X
1は、-O-、-S-、-C(CF
3)
2-、-CH
2-、-SO
2-、-NHCO-を表し、*及び#はそれぞれ、他の構造との結合部位を表す。Rは水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましい。また、R
122は、上記式により表される構造であることも好ましい。R
122が、上記式により表される構造である場合、計4つの*及び#のうち、いずれか2つが式(3)中のR
122が結合する窒素原子との結合部位であり、かつ、別の2つが式(3)中のR
122が結合する酸素原子との結合部位であることが好ましく、2つの*が式(3)中のR
122が結合する酸素原子との結合部位であり、かつ、2つの#が式(3)中のR
122が結合する窒素原子との結合部位であるか、又は、2つの*が式(3)中のR
122が結合する窒素原子との結合部位であり、かつ、2つの#が式(3)中のR
122が結合する酸素原子との結合部位であることがより好ましく、2つの*が式(3)中のR
122が結合する酸素原子との結合部位であり、かつ、2つの#が式(3)中のR
122が結合する窒素原子との結合部位であることが更に好ましい。
【0057】
【0058】
式(A-s)中、R1は、水素原子、アルキレン、置換アルキレン、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-NHCO-、単結合、又は下記式(A-sc)の群から選ばれる有機基である。R2は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、環状のアルキル基のいずれかであり、同一でも異なってもよい。R3は水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、環状のアルキル基のいずれかであり、同一でも異なってもよい。
【0059】
【化17】
(式(A-sc)中、*は上記式(A-s)で示されるビスアミノフェノール誘導体のアミノフェノール基の芳香環に結合することを示す。)
【0060】
上記式(A-s)中、フェノール性ヒドロキシ基基のオルソ位、すなわち、R3にも置換基を有することが、アミド結合のカルボニル炭素とヒドロキシ基基の距離をより接近させると考えられ、低温で硬化した際に高環化率になる効果が更に高まる点で、特に好ましい。
【0061】
また、上記式(A-s)中、R2がアルキル基であり、かつR3がアルキル基であることが、i線に対する高透明性と低温で硬化した際に高環化率であるという効果を維持することができ、好ましい。
【0062】
また、上記式(A-s)中、R1がアルキレン又は置換アルキレンであることが、更に好ましい。R1に係るアルキレン及び置換アルキレンの具体的な例としては、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられるが、その中でも-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-が、i線に対する高透明性と低温で硬化した際の高環化率であるという効果を維持しながら、溶剤に対して十分な溶解性を持つ、バランスに優れるポリベンゾオキサゾール前駆体を得ることができる点で、より好ましい。
【0063】
上記式(A-s)で示されるビスアミノフェノール誘導体の製造方法としては、例えば、特開2013-256506号公報の段落番号0085~0094及び実施例1(段落番号0189~0190)を参考にすることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0064】
上記式(A-s)で示されるビスアミノフェノール誘導体の構造の具体例としては、特開2013-256506号公報の段落番号0070~0080に記載のものが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。もちろん、これらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0065】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は上記式(3)の繰り返し単位のほかに、他の種類の繰り返し構造単位も含んでよい。
閉環に伴う反りの発生を抑制できる点で、下記式(SL)で表されるジアミン残基を他の種類の繰り返し構造単位として含むことが好ましい。
【0066】
【化18】
式(SL)中、Zは、a構造とb構造を有し、R
1sは、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基であり、R
2sは炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3s、R
4s、R
5s、R
6sのうち少なくとも1つは芳香族基で、残りは水素原子又は炭素数1~30の有機基で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。a構造及びb構造の重合は、ブロック重合でもランダム重合でもよい。Z部分のモル%は、a構造は5~95モル%、b構造は95~5モル%であり、a+bは100モル%である。
【0067】
式(SL)において、好ましいZとしては、b構造中のR5s及びR6sがフェニル基であるものが挙げられる。また、式(SL)で示される構造の分子量は、400~4,000であることが好ましく、500~3,000がより好ましい。上記分子量を上記範囲とすることで、より効果的に、ポリベンゾオキサゾール前駆体の脱水閉環後の弾性率を下げ、反りを抑制できる効果と溶剤溶解性を向上させる効果を両立することができる。
【0068】
他の種類の繰り返し構造単位として式(SL)で表されるジアミン残基を含む場合、更に、テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基を繰り返し構造単位として含むことも好ましい。このようなテトラカルボン酸残基の例としては、式(2)中のR115の例が挙げられる。
【0069】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量(Mw)は、例えば、後述する組成物に用いる場合、好ましくは18,000~30,000であり、より好ましくは20,000~29,000であり、更に好ましくは22,000~28,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは7,200~14,000であり、より好ましくは8,000~12,000であり、更に好ましくは9,200~11,200である。
上記ポリベンゾオキサゾール前駆体の分子量の分散度は、1.4以上であることが好ましく、1.5以上がより好ましく、1.6以上であることが更に好ましい。ポリベンゾオキサゾール前駆体の分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、2.6以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.4以下が更に好ましく、2.3以下が一層好ましく、2.2以下がより一層好ましい。
【0070】
-末端封止剤-
ポリイミド前駆体等の製造方法に際し、組成物の保存安定性をより向上させるため、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で、ポリイミド前駆体等の末端を封止することが好ましい。末端封止剤としては、モノアミンを用いることがより好ましく、モノアミンの好ましい化合物としては、アニリン、2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール、4-アミノスチレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよく、複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0071】
〔含有量〕
本発明の樹脂組成物における特定樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。また、本発明の樹脂組成物における樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以下であることが一層好ましい。
本発明の組成物は、特定樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0072】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含む。
酸化防止剤の含有量は、上記樹脂の含有量に対して、0.1質量ppm~10,000質量ppmであり、10~1,000質量ppmであることが好ましく、50~500質量ppmであることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を1種単独で含んでもよいし、2種以上含んでもよい。2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0073】
また、溶剤に再溶解した場合のろ過性の観点からは、酸化防止剤の酸化還元電位は、0.91V以下であることが好ましく、0.65V以下であることがより好ましく、0.45V以下であることが更に好ましい。
また、上記酸化還元電位の下限は、特に限定されないが、-2.00V以上であることが好ましい。
上記酸化還元電位は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
酸化還元電位が上記範囲内であれば、上述の過酸化物の還元性に優れ、溶剤に再溶解した場合のろ過性が向上すると考えられる。
【0074】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、アルコール系化合物、アルデヒド系化合物、アミン系化合物、ニトロソ系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、及び、ケトン系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0075】
フェノール系化合物としては、ハイドロキノン、o-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-メトキシフェノール、ピロガロール等が挙げられる。
【0076】
アルコール系化合物としては、アスコルビン酸、グルコース等が挙げられる。
【0077】
アルデヒド系化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-メトキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0078】
アミン系化合物としては、2-メトキシアニリン、4-メトキシアニリン、4-ヒドロキシアニリン、p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0079】
ニトロソ系化合物としては、4-ニトロソアニソール、4-ニトロソジメチルアニリン等が挙げられる。
【0080】
リン系化合物としては、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0081】
イオウ系化合物としては、チオフェノール、4-ヒドロキシチオフェノール、システイン等が挙げられる。
【0082】
ケトン系化合物としては、3-ブロモ-β-ラパコン等が挙げられる。
【0083】
これらの中でも、溶剤に再溶解した場合のろ過性の観点からは不飽和度が1以上のフェノール系化合物、又は、不飽和度が1以上のアルコール系化合物が好ましい。
不飽和度とは、(2C+2-H-X+N)/2で表される数であり、Cは炭素原子の数、Hは水素原子の数、Xはハロゲン原子の数、Nは窒素原子の数である。
上記不飽和度は、1~5であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
【0084】
<有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は有機溶剤を含む。
有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の全質量に対して、0を超え10質量%以下であることが好ましく、0.1~8質量%以下であることがより好ましく、1~6質量%以下であることが更に好ましい。
有機溶剤が10質量%以下(好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下)であれば、樹脂組成物内で、有機溶剤が存在する部分と存在しない部分とで酸化防止剤の存在が偏ることが抑制され、再溶解後のろ過性がより向上しやすいと考えられる。
本発明の樹脂組成物は有機溶剤を1種単独で含んでもよいし、2種以上含んでもよい。2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内となることが好ましい。
【0085】
有機溶剤は、炭化水素化合物、アルコール系化合物、カルボン酸、ケトン系化合物、エステル系化合物、エーテル系化合物、ニトリル系化合物、アミド系化合物、アミン系化合物、スルホン系化合物及びスルホキシド系化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0086】
炭化水素化合物としては、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類、リモネン等の環式テルペン類が挙げられる。
【0087】
アルコール系化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0088】
カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸等が挙げられる。
【0089】
ケトン系化合物としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が挙げられる。
【0090】
エステル系化合物としては、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等が挙げられる。
【0091】
エーテル系化合物としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0092】
ニトリル系化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
【0093】
アミド系化合物としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0094】
アミン系化合物としては、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミン等が挙げられる。
【0095】
スルホン系化合物としては、スルホラン等が挙げられる。
【0096】
スルホキシド系化合物としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0097】
本発明の樹脂組成物は、これらの中でも、アミド系化合物、エーテル系化合物、ケトン系化合物、又は、エステル系化合物を含むことが好ましく、ラクタム系化合物、環状エーテル系化合物、環状ケトン系化合物、又は、ラクトン系溶剤を含むことがより好ましい。
【0098】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、特定樹脂、酸化防止剤、及び、有機溶剤以外のその他の成分を更に含んでもよい。
本発明の樹脂組成物は、その他の成分を実質的に含まない態様とすることもできる。
具体的には、樹脂組成物の全質量に対する、特定樹脂、酸化防止剤、及び、有機溶剤の合計含有量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0099】
その他の成分としては、含窒素化合物、重合性基を有する化合物等が挙げられる。
【0100】
〔含窒素化合物〕
含窒素化合物としては、ウレア構造を含む化合物、カルボジイミド構造を含む化合物、又は、イソウレア構造を含む化合物が好ましく挙げられる。
具体的には、含窒素化合物としては、下記式(1-1)で表される化合物、下記式(1-2)で表される化合物、下記式(1-3)で表される化合物等が挙げられる。
【化19】
式(1-1)、式(1-2)又は式(1-3)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を表し、R
21及びR
22はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を表し、R
31及びR
32はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を表し、R
33は置換基を有してもよい炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を表す。
式(1-1)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基、又は、置換基として第一級アミン塩構造、第二級アミン塩構造、第三級アミノ基、第三級アミン塩構造、及び、第四級アンモニウム基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の置換基を有する炭素数1~7の脂肪族炭化水素基が好ましく、無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
R
11及びR
12における無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基としては、無置換の炭素数1~7の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、無置換の炭素数2~7の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基又はシクロへキシル基がより好ましい。
【0101】
式(1-1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、及び、アルキルチオ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の置換基を有する炭素数2~7の脂肪族炭化水素基であってもよい。
上記炭素数2~7の脂肪族炭化水素基は、上記置換基を2以上有してもよいが、上記置換基を1つのみ有する態様も、本発明の好ましい態様の1つである。
【0102】
式(1-2)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を表す。
式(1-2)中、R21及びR22は、無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基、又は、置換基としてアミノ基又は第四級アンモニウム基を有する炭素数1~7の脂肪族炭化水素基が好ましく、無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
式(1-2)中、R21及びR22における上記無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基、又は、上記置換基を有する炭素数1~7の脂肪族炭化水素基の好ましい態様は、それぞれ、R11及びR12の説明において示したものと同様である。
【0103】
式(1-3)中、R31及びR32は、無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基、又は、置換基としてアミノ基又は第四級アンモニウム基を有する炭素数1~7の脂肪族炭化水素基が好ましく、無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
式(1-3)中、R31及びR32における上記無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基、又は、上記置換基を有する炭素数1~7の脂肪族炭化水素基の好ましい態様は、それぞれ、R11及びR12の説明において示したものと同様である。
【0104】
式(1-3)中、R33は置換基を有してもよい炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を表し、無置換の炭素数1~7の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、無置換の炭素数1~7の飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
式(1-3)中、R33としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基又はt-ブチル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0105】
〔重合性基を有する化合物〕
本発明の樹脂組成物は、その他の成分として、重合性基を有する化合物を含んでもよい。
重合性基としては、上述の特定樹脂における重合性基と同様の基が挙げられ、好ましい態様も同様である。
重合性基を有する化合物は、例えば、上述のポリイミド又はポリベンゾオキサゾールに重合性基を導入する際の原料のうち、未反応の成分として含まれる場合がある。
重合性基を有する化合物としては、重合性基及びヒドロキシ基を有する化合物が好ましく、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0106】
〔含有量〕
その他の成分の含有量は、特に限定されないが、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、その他の成分を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0107】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記有機溶剤、及び、上記特定樹脂を含む製造用組成物に対して、上記酸化防止剤を添加する添加工程を含む。
上記酸化防止剤の添加量は、樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量が上述の範囲内となる量であればよい。
【0108】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、溶剤中で原料を反応させて特定樹脂を含む反応液を得る合成工程を含むことが好ましい。
上記合成工程は、公知の方法により行われればよい。
例えば、特定樹脂がポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体である場合、ジカルボン酸又はジカルボン酸誘導体とジアミンとを反応させて特定樹脂を得る工程であることが好ましい。
合成条件等は公知の方法を特に限定なく用いることができる。
例えば、ジカルボン酸又はジカルボン酸誘導体を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化させた後、ジアミンと反応させて特定樹脂を得る方法が挙げられる。
また、上記ハロゲン化剤を用いず、非ハロゲン系触媒を用いて合成することも好ましい。上記非ハロゲン系触媒としては、ハロゲン原子を含まない公知のアミド化触媒を特に制限なく使用することが可能であるが、例えば、ボロキシン化合物、N-ヒドロキシ化合物、3級アミン、リン酸エステル、アミン塩、ウレア化合物等、カルボジイミド化合物が挙げられる。上記カルボジイミド化合物としては、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-ジシクロへキシルカルボジイミド等が挙げられる。
上記合成工程において用いられる溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、ピリジン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、N-メチルピロリドン及びN-エチルピロリドンが例示される。また、上述の樹脂組成物における有機溶剤を用いてもよい。
また、合成工程において、反応液に生じる析出物をろ過により取り除くことも好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記反応液を上述の製造用組成物として用いてもよいが、後述の再沈再溶解工程後の特定樹脂溶液を上述の製造用組成物として用いることが好ましい。
すなわち、本発明の樹脂組成物の製造方法の好ましい態様の一つとして、合成工程及び再沈再溶解工程を含み、再沈再溶解工程により得られた特定樹脂溶液を、前記製造用組成物として用いて前記添加工程を行う態様が挙げられる。
【0109】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記反応液中の特定樹脂を再沈し、上記再沈された特定樹脂を上記有機溶剤に再溶解し、特定樹脂溶液を得る再沈再溶解工程を含むことが好ましい。
再沈方法としては、具体的には、ポリイミド前駆体等の特定樹脂及び上記溶剤を含む反応液を、水、アルコール等の貧溶媒(特定樹脂の溶解度が低い溶媒)に供給することによって、再沈することができる。
再沈された特定樹脂は、例えばろ過等の方法により得ることができる。
再溶解に用いられる有機溶剤は、樹脂に対する良溶媒(特定樹脂の溶解度が高い溶媒)であればよく、上記樹脂組成物において説明した有機溶剤であることが好ましい。
再沈時、又は、再溶解時の温度等の条件は特に限定されず、公知の方法に従えばよい。
【0110】
また、上記添加工程後に、特定樹脂を再沈する再沈工程を含むことが好ましい。
上記再沈工程は、上述の再沈再溶解工程における再沈と同様の方法により行うことができる。
再沈工程において、再沈された特定樹脂は、例えばろ過等の方法により得ることができる。すなわち、上記再沈工程により、特定樹脂が上記有機溶剤をわずかに含む形態で得られる。
【0111】
また、上記再沈工程後に、上記有機溶剤を除去する乾燥工程を含むことが好ましい。
乾燥条件は特に限定されないが、例えば、減圧下で25~45℃、1時間~7日間の乾燥とすることができる。
乾燥手段は特に限定されず、例えば、公知の減圧乾燥機を用いることができる。
乾燥の度合いは、特に限定されないが、上記有機溶剤の少なくとも一部が除去される乾燥であればよく、上記有機溶剤の含有量が、樹脂組成物の全質量に対して上述の範囲内となるよう乾燥することが好ましい。
【0112】
(パターン形成用組成物の製造方法)
本発明のパターン形成用組成物の製造方法は、本発明の樹脂組成物と、溶剤とを混合する混合工程を含むことが好ましい。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。
また、本発明のパターン形成用組成物の製造方法は、上記混合工程において、感光剤を更に混合することが好ましい。
また、本発明のパターン形成用組成物の製造方法は、上記混合工程において、さらに他の成分を混合してもよい。
本発明のパターン形成用組成物における特定樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが一層好ましい。また、本発明の組成物における樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以下であることが一層好ましく、95質量%以下であることがより一層好ましい。
本発明のパターン形成用組成物は、特定樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、パターン形成用組成物が特定樹脂を2種以上含む場合、特定樹脂を2種以上含む樹脂組成物を用いてもよいし、ある特定樹脂を含む樹脂組成物と、別の特定樹脂を含む樹脂組成物とを併用してもよい。
【0113】
また、パターン形成用組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下が更に好ましい。一方、生産性の観点では、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下が好ましい。一方、生産性の観点では、0.01MPa以上1.0MPa以下が好ましく、0.03MPa以上0.9MPa以下がより好ましく、0.05MPa以上0.7MPa以下が更に好ましい。
フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
以下、本発明のパターン形成用組成物の製造方法により得られるパターン形成用組成物に含まれる、溶剤、感光剤、及び他の成分について、パターン形成用組成物に含まれる成分として説明する。本発明のパターン形成用組成物の製造方法においては、必要に応じてこれらの成分を混合することにより、パターン形成用組成物が得られる。
【0114】
<溶剤>
本発明のパターン形成用組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、環式炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、ウレア類、アルコール類などの化合物が挙げられる。
【0115】
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸へキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が好適なものとして挙げられる。
【0116】
エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が好適なものとして挙げられる。
【0117】
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、3-メチルシクロヘキサノン、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノン等が好適なものとして挙げられる。
【0118】
環状炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類、リモネン等の環式テルペン類が好適なものとして挙げられる。
【0119】
スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。
【0120】
アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-ホルミルモルホリン、N-アセチルモルホリン等が好適なものとして挙げられる。
【0121】
ウレア類として、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が好適なものとして挙げられる。
【0122】
アルコール類として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール、および、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
【0123】
溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
【0124】
本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される1種の溶剤、又は、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用が特に好ましい。また、N-メチル-2-ピロリドンと乳酸エチル、N-メチル-2-ピロリドンと乳酸エチル、ジアセトンアルコールと乳酸エチル、シクロペンタノンとγ-ブチロラクトン、の組み合わせも好ましい。
【0125】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、パターン形成用組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることが更に好ましく、40~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、塗膜の所望の厚さと塗布方法に応じて調節すればよい。
【0126】
溶剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。溶剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0127】
<感光剤>
パターン形成用組成物は、感光剤を含むことが好ましい。
感光剤としては、光重合開始剤が好ましい。
【0128】
〔光重合開始剤〕
パターン形成用組成物は、感光剤として、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
また、上記光ラジカル重合開始剤としては、後述のオキシム化合物が好ましい。
【0129】
光ラジカル重合開始剤は、約300~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0130】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182、国際公開第2015/199219号の段落0138~0151の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0131】
ケトン化合物としては、例えば、特開2015-087611号公報の段落0087に記載の化合物が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製)も好適に用いられる。
【0132】
本発明の一実施態様において、光ラジカル重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤を用いることができる。
【0133】
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE 184(IRGACUREは登録商標)、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE-2959、IRGACURE 127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0134】
アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE 907、IRGACURE 369、及び、IRGACURE 379(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0135】
アミノアセトフェノン系開始剤として、365nm又は405nm等の波長光源に吸収極大波長がマッチングされた特開2009-191179号公報に記載の化合物も用いることができる。
【0136】
アシルホスフィン系開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、市販品であるIRGACURE-819やIRGACURE-TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0137】
メタロセン化合物としては、IRGACURE-784、IRGACURE-784EG(いずれもBASF社製)などが例示される。
【0138】
光ラジカル重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物を用いることにより、露光ラチチュードをより効果的に向上させることが可能になる。オキシム化合物は、露光ラチチュード(露光マージン)が広く、かつ、光硬化促進剤としても働くため、特に好ましい。
【0139】
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物を用いることができる。
【0140】
好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。パターン形成用組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物(オキシム系の光重合開始剤)を用いることが好ましい。オキシム系の光重合開始剤は、分子内に >C=N-O-C(=O)- の連結基を有する。
【0141】
【0142】
市販品ではIRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)も好適に用いられる。また、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-831及びアデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)も用いることができる。また、DFI-091(ダイトーケミックス(株)製)を用いることができる。また、下記の構造のオキシム化合物を用いることもできる。
【化21】
【0143】
光重合開始剤としては、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物、特許06636081号に記載の化合物が挙げられる。
【0144】
光重合開始剤としては、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0145】
また、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることも可能である。そのようなオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載されている化合物、特表2014-500852号公報の段落0345に記載されている化合物24、36~40、特開2013-164471号公報の段落0101に記載されている化合物(C-3)などが挙げられる。
【0146】
最も好ましいオキシム化合物としては、特開2007-269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009-191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物などが挙げられる。
【0147】
光ラジカル重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3-アリール置換クマリン化合物よりなる群から選択される化合物が好ましい。
【0148】
更に好ましい光ラジカル重合開始剤は、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が一層好ましく、メタロセン化合物又はオキシム化合物を用いるのがより一層好ましく、オキシム化合物が更に一層好ましい。
【0149】
また、光ラジカル重合開始剤は、ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等の芳香環と縮環したキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体などを用いることもできる。また、下記式(I)で表される化合物を用いることもできる。
【0150】
【0151】
式(I)中、RI00は、炭素数1~20のアルキル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、フェニル基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素数2~12のアルケニル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~18のアルキル基及び炭素数1~4のアルキル基の少なくとも1つで置換されたフェニル基、又はビフェニルであり、RI01は、式(II)で表される基であるか、RI00と同じ基であり、RI02~RI04は各々独立に炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシ基又はハロゲンである。
【0152】
【0153】
式中、RI05~RI07は、上記式(I)のRI02~RI04と同じである。
【0154】
また、光ラジカル重合開始剤は、国際公開第2015/125469号の段落0048~0055に記載の化合物を用いることもできる。
【0155】
光重合開始剤を含む場合、その含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、更に好ましくは0.5~15質量%であり、一層好ましくは1.0~10質量%である。光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0156】
〔光酸発生剤〕
また、パターン形成用組成物は、感光剤として、光酸発生剤を含むことも好ましい。
光酸発生剤を含有することで、例えば、感光膜の露光部に酸が発生して、上記露光部の現像液(例えば、アルカリ水溶液)に対する溶解性が増大し、露光部が現像液により除去されるポジ型のパターンを得ることができる。
また、パターン形成用組成物が、光酸発生剤と、後述するラジカル架橋剤以外の架橋剤とを含有することにより、例えば、露光部に発生した酸により上記架橋剤の架橋反応が促進され、露光部が非露光部よりも現像液により除去されにくくなる態様とすることもできる。このような態様によれば、ネガ型のパターンを得ることができる。
【0157】
光酸発生剤としては、露光により酸を発生するものであれば特に限定されるものではないが、キノンジアジド化合物、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o-ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。
【0158】
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合及びスルホンアミド結合の少なくとも一方により結合したものなどが挙げられる。本発明においては、例えば、これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。
【0159】
本発明において、キノンジアジドは5-ナフトキノンジアジドスルホニル基、4-ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。本発明においては、露光する波長によって4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4-ナフトキノンジアジドスルホニル基、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよいし、4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよい。
【0160】
上記ナフトキノンジアジド化合物は、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物と、キノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって合成可能であり、公知の方法により合成することができる。これらのナフトキノンジアジド化合物を使用することで解像度、感度、残膜率がより向上する。
上記ナフトキノンジアジド化合物としては、例えば、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸又は1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸、これらの化合物の塩又はエステル化合物等が挙げられる。
【0161】
オニウム塩化合物、又は、スルホネート化合物としては、特開2008-013646号公報の段落0064~0122に記載の化合物等が挙げられる。
【0162】
光酸発生剤は、オキシムスルホネート基を含む化合物(以下、単に「オキシムスルホネート化合物」ともいう)であることも好ましい。
オキシムスルホネート化合物は、オキシムスルホネート基を有していれば特に制限はないが、下記式(OS-1)、後述する式(OS-103)、式(OS-104)、又は、式(OS-105)で表されるオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。
【0163】
【0164】
式(OS-1)中、X3は、アルキル基、アルコキシル基、又は、ハロゲン原子を表す。X3が複数存在する場合は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記X3におけるアルキル基及びアルコキシル基は、置換基を有していてもよい。上記X3におけるアルキル基としては、炭素数1~4の、直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。上記X3におけるアルコキシル基としては、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルコキシル基が好ましい。上記X3におけるハロゲン原子としては、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。
式(OS-1)中、m3は、0~3の整数を表し、0又は1が好ましい。m3が2又は3であるとき、複数のX3は同一でも異なっていてもよい。
式(OS-1)中、R34は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルコキシル基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基又はWで置換されていてもよいアントラニル基であることが好ましい。Wは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルコキシル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基を表す。
【0165】
式(OS-1)中、m3が3であり、X3がメチル基であり、X3の置換位置がオルト位であり、R34が炭素数1~10の直鎖状アルキル基、7,7-ジメチル-2-オキソノルボルニルメチル基、又は、p-トリル基である化合物が特に好ましい。
【0166】
式(OS-1)で表されるオキシムスルホネート化合物の具体例としては、特開2011-209692号公報の段落番号0064~0068、特開2015-194674号公報の段落番号0158~0167に記載された以下の化合物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0167】
【0168】
式(OS-103)~式(OS-105)中、Rs1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、複数存在する場合のあるRs2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表し、複数存在する場合のあるRs6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基又はアルコキシスルホニル基を表し、XsはO又はSを表し、nsは1又は2を表し、msは0~6の整数を表す。
式(OS-103)~式(OS-105)中、Rs1で表されるアルキル基(炭素数1~30が好ましい)、アリール基(炭素数6~30が好ましい)又はヘテロアリール基(炭素数4~30が好ましい)は、置換基Tを有していてもよい。
【0169】
式(OS-103)~式(OS-105)中、Rs2は、水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましい)又はアリール基(炭素数6~30が好ましい)であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。化合物中に2以上存在する場合のあるRs2のうち、1つ又は2つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることが好ましく、1つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることがより好ましく、1つがアルキル基であり、かつ残りが水素原子であることが特に好ましい。Rs2で表されるアルキル基又はアリール基は、置換基Tを有していてもよい。
式(OS-103)、式(OS-104)、又は、式(OS-105)中、XsはO又はSを表し、Oであることが好ましい。上記式(OS-103)~(OS-105)において、Xsを環員として含む環は、5員環又は6員環である。
【0170】
式(OS-103)~式(OS-105)中、nsは1又は2を表し、XsがOである場合、nsは1であることが好ましく、また、XsがSである場合、nsは2であることが好ましい。
式(OS-103)~式(OS-105)中、Rs6で表されるアルキル基(炭素数1~30が好ましい)及びアルキルオキシ基(炭素数1~30が好ましい)は、置換基を有していてもよい。
式(OS-103)~式(OS-105)中、msは0~6の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0171】
また、上記式(OS-103)で表される化合物は、下記式(OS-106)、式(OS-110)又は式(OS-111)で表される化合物であることが特に好ましく、上記式(OS-104)で表される化合物は、下記式(OS-107)で表される化合物であることが特に好ましく、上記式(OS-105)で表される化合物は、下記式(OS-108)又は式(OS-109)で表される化合物であることが特に好ましい。
【化26】
【0172】
式(OS-106)~式(OS-111)中、Rt1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Rt7は、水素原子又は臭素原子を表し、Rt8は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はクロロフェニル基を表し、Rt9は水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基を表し、Rt2は水素原子又はメチル基を表す。
式(OS-106)~式(OS-111)中、Rt7は、水素原子又は臭素原子を表し、水素原子であることが好ましい。
【0173】
式(OS-106)~式(OS-111)中、Rt8は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はクロロフェニル基を表し、炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0174】
式(OS-106)~式(OS-111)中、Rt9は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基を表し、水素原子であることが好ましい。
Rt2は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
また、上記オキシムスルホネート化合物において、オキシムの立体構造(E,Z)については、いずれか一方であっても、混合物であってもよい。
上記式(OS-103)~式(OS-105)で表されるオキシムスルホネート化合物の具体例としては、特開2011-209692号公報の段落番号0088~0095、特開2015-194674号公報の段落番号0168~0194に記載の化合物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0175】
オキシムスルホネート基を少なくとも1つを含むオキシムスルホネート化合物の好適な他の態様としては、下記式(OS-101)、式(OS-102)で表される化合物が挙げられる。
【0176】
【0177】
式(OS-101)又は式(OS-102)中、Ru9は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、シアノ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Ru9がシアノ基又はアリール基である態様がより好ましく、Ru9がシアノ基、フェニル基又はナフチル基である態様が更に好ましい。
式(OS-101)又は式(OS-102)中、Ru2aは、アルキル基又はアリール基を表す。
式(OS-101)又は式(OS-102)中、Xuは、-O-、-S-、-NH-、-NRu5-、-CH2-、-CRu6H-又はCRu6Ru7-を表し、Ru5~Ru7はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す。
【0178】
式(OS-101)又は式(OS-102)中、Ru1~Ru4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド基、スルホ基、シアノ基又はアリール基を表す。Ru1~Ru4のうちの2つがそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。このとき、環が縮環してベンゼン環ともに縮合環を形成していてもよい。Ru1~Ru4としては、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基が好ましく、また、Ru1~Ru4のうちの少なくとも2つが互いに結合してアリール基を形成する態様も好ましい。中でも、Ru1~Ru4がいずれも水素原子である態様が好ましい。上記した置換基は、いずれも、更に置換基を有していてもよい。
【0179】
上記式(OS-101)で表される化合物は、式(OS-102)で表される化合物であることがより好ましい。
また、上記オキシムスルホネート化合物において、オキシムやベンゾチアゾール環の立体構造(E,Z等)についてはそれぞれ、いずれか一方であっても、混合物であってもよい。
式(OS-101)で表される化合物の具体例としては、特開2011-209692号公報の段落番号0102~0106、特開2015-194674号公報の段落番号0195~0207に記載の化合物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
上記化合物の中でも、b-9、b-16、b-31、b-33が好ましい。
【0180】
その他、光酸発生剤としては市販品を使用してもよい。市販品としては、WPAG-145、WPAG-149、WPAG-170、WPAG-199、WPAG-336、WPAG-367、WPAG-370、WPAG-443、WPAG-469、WPAG-638、WPAG-699(いずれも富士フイルム和光純薬(株)製)、Omnicat 250、Omnicat 270(いずれもIGM Resins B.V.社製)、Irgacure 250、Irgacure 270、Irgacure 290(いずれもBASF社製)、MBZ-101(みどり化学(株)製)等が挙げられる。
【0181】
また、下記構造式で表される化合物も好ましい例として挙げられる。
【化28】
【0182】
光酸発生剤としては、有機ハロゲン化化合物も適用できる。有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46-4605号、特開昭48-36281号、特開昭55-32070号、特開昭60-239736号、特開昭61-169835号、特開昭61-169837号、特開昭62-58241号、特開昭62-212401号、特開昭63-70243号、特開昭63-298339号、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)などに記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S-トリアジン化合物が挙げられる。
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs-トリアジン環に結合したs-トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6-トリス(モノクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2―n-プロピル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(α,α,β-トリクロロエチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3,4-エポキシフェニル)-4、6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-〔1-(p-メトキシフェニル)-2,4-ブタジエニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-i-プロピルオキシスチリル)-4、6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-ナトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ベンジルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジブロモメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-メトキシ-4,6-ビス(トリブロモメチル)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0183】
光酸発生剤としては、有機ホウ酸塩化合物も適用できる。有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62-143044号、特開昭62-150242号、特開平9-188685号、特開平9-188686号、特開平9-188710号、特開2000-131837、特開2002-107916、特許第2764769号、特願2000-310808号、等の各公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech'98.Proceeding April 19-22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6-157623号公報、特開平6-175564号公報、特開平6-175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6-175554号公報、特開平6-175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9-188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6-348011号公報、特開平7-128785号公報、特開平7-140589号公報、特開平7-306527号公報、特開平7-292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0184】
光酸発生剤としては、ジスルホン化合物も適用できる。ジスルホン化合物としては、特開昭61-166544号、特願2001-132318公報等に記載されている化合物およびジアゾジスルホン化合物が挙げられる。
【0185】
上記オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4-365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2-150848号、特開平2-296514号に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0186】
オニウム塩としては、下記一般式(RI-I)~(RI-III)で表されるオニウム塩が挙げられる。
【化29】
式(RI-I)中、Ar11は置換基を1~6有していても良い炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のアルキニル基、炭素数1~12のアリール基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキルアミノ基、炭素数1~12のジアルキルアミノ基、炭素数1~12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1~12のチオアルキル基、炭素数1~12のチオアリール基が挙げられる。Z11
-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。式(RI-II)中、Ar21、Ar22は各々独立に置換基を1~6有していても良い炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のアルキニル基、炭素数1~12のアリール基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキルアミノ基、炭素数1~12のジアルキルアミノ基、炭素数1~12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1~12のチオアルキル基、炭素数1~12のチオアリール基が挙げられる。Z21
-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。式(RI-III)中、R31、R32、R33は各々独立に置換基を1~6有していても良い炭素数20以下のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のアルキニル基、炭素数1~12のアリール基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキルアミノ基、炭素数1~12のジアルキルアミノ基、炭素数1~12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1~12のチオアルキル基、炭素数1~12のチオアリール基が挙げられる。Z31
-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0187】
具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【0188】
光酸発生剤を含む場合、その含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、2~15質量%であることが更に好ましい。光酸発生剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光酸発生剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0189】
〔光塩基発生剤〕
パターン形成用組成物は、感光剤として、光塩基発生剤を含んでもよい。
パターン形成用組成物が、光塩基発生剤と、後述する架橋剤とを含有することにより、例えば、露光部に発生した塩基により特定樹脂の環化が促進される、架橋剤の架橋反応が促進される等の作用により、露光部が非露光部よりも現像液により除去されにくくなる態様とすることもできる。このような態様によれば、ネガ型のレリーフパターンを得ることができる。
【0190】
光塩基発生剤としては、露光により塩基を発生するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることが出来る。
例えば、M.Shirai,and M.Tsunooka, Prog.Polym.Sci.,21,1(1996);角岡正弘,高分子加工,46,2(1997);C.Kutal,Coord.Chem.Rev.,211,353(2001);Y.Kaneko,A.Sarker, and D.Neckers,Chem.Mater.,11,170(1999);H.Tachi,M.Shirai, and M.Tsunooka,J.Photopolym.Sci.Technol.,13,153(2000);M.Winkle, and K.Graziano,J.Photopolym.Sci.Technol.,3,419(1990);M.Tsunooka,H.Tachi, and S.Yoshitaka,J.Photopolym.Sci.Technol.,9,13(1996);K.Suyama,H.Araki,M.Shirai,J.Photopolym.Sci.Technol.,19,81(2006)に記載されているように、遷移金属化合物錯体や、アンモニウム塩などの構造を有するものや、アミジン部分がカルボン酸と塩形成することで潜在化されたもののように、塩基成分が塩を形成することにより中和されたイオン性の化合物や、カルバメート誘導体、オキシムエステル誘導体、アシル化合物などのウレタン結合やオキシム結合などにより塩基成分が潜在化された非イオン性の化合物を挙げることができる。
本発明では、光塩基発生剤として、カルバメート誘導体、アミド誘導体、イミド誘導体、αコバルト錯体類、イミダゾール誘導体、桂皮酸アミド誘導体、オキシム誘導体等がより好ましい例として挙げられる。
【0191】
光塩基発生剤から発生する塩基性物質としては、特に限定されないが、アミノ基を有する化合物、特にモノアミンや、ジアミンなどのポリアミン、また、アミジンなどが挙げられる。
イミド化率の観点からは、上記塩基性物質は、共役酸のDMSO(ジメチルスルホキシド)中のpKaが大きいものであることが好ましい。上記pKaは、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。上記pKaの上限は特に限定されないが、20以下であることが好ましい。
ここで、上記pKaとは、酸の第一解離定数の逆数の対数を表し、Determination of Organic Structures by Physical Methods(著者:Brown, H. C., McDaniel, D. H., Hafliger, O., Nachod, F. C.; 編纂:Braude, E. A., Nachod, F. C.; Academic Press, New York, 1955)や、Data for Biochemical Research(著者:Dawson, R.M.C.et al; Oxford, Clarendon Press, 1959)に記載の値を参照することができる。これらの文献に記載の無い化合物については、ACD/pKa(ACD/Labs製)のソフトを用いて構造式より算出した値をpKaとして用いることとする。
【0192】
パターン形成用組成物の保存安定性の観点からは、光塩基発生剤としては、構造中に塩を含まない光塩基発生剤であることが好ましく、光塩基発生剤において発生する塩基部分の窒素原子上に電荷がないことが好ましい。光塩基発生剤としては、発生する塩基が共有結合を用いて潜在化されていることが好ましく、塩基の発生機構が、発生する塩基部分の窒素原子と隣接する原子との間の共有結合が切断されて塩基が発生するものであることが好ましい。構造中に塩を含まない光塩基発生剤であると、光塩基発生剤を中性にすることができるため、溶剤溶解性がより良好であり、ポットライフが向上する。このような理由から、本発明で用いられる光塩基発生剤から発生するアミンは、1級アミン又は2級アミンが好ましい。
また、パターンの耐薬品性の観点からは、光塩基発生剤としては、構造中に塩を含む光塩基発生剤であることが好ましい。
【0193】
また、上記のような理由から光塩基発生剤としては、上述のように発生する塩基が共有結合を用いて潜在化されていることが好ましく、発生する塩基がアミド結合、カルバメート結合、オキシム結合を用いて潜在化されていることが好ましい。
本発明に係る光塩基発生剤としては、例えば、特開2009-080452号公報及び国際公開第2009/123122号で開示されたような桂皮酸アミド構造を有する光塩基発生剤、特開2006-189591号公報及び特開2008-247747号公報で開示されたようなカルバメート構造を有する光塩基発生剤、特開2007-249013号公報及び特開2008-003581号公報で開示されたようなオキシム構造、カルバモイルオキシム構造を有する光塩基発生剤等が挙げられるが、これらに限定されず、その他にも公知の光塩基発生剤の構造を用いることができる。
【0194】
その他、光塩基発生剤としては、特開2012-093746号公報の段落番号0185~0188、0199~0200及び0202に記載の化合物、特開2013-194205号公報の段落番号0022~0069に記載の化合物、特開2013-204019号公報の段落番号0026~0074に記載の化合物、及び、国際公開第2010/064631号の段落番号0052に記載の化合物が例として挙げられる。
【0195】
その他、光塩基発生剤としては市販品を使用してもよい。市販品としては、WPBG-266、WPBG-300、WPGB-345、WPGB-140、WPBG-165、WPBG-027、WPBG-018、WPGB-015、WPBG-041、WPGB-172、WPGB-174、WPBG-166、WPGB-158、WPGB-025、WPGB-168、WPGB-167、WPBG-082(いずれも富士フイルム和光純薬(株)製)、A2502、B5085、N0528、N1052、O0396、O0447、O0448(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0196】
光塩基発生剤を含む場合、その含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、2~15質量%であることが更に好ましい。光塩基発生剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光塩基発生剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0197】
<熱重合開始剤>
パターン形成用組成物は、熱重合開始剤を含んでもよく、特に熱ラジカル重合開始剤を含んでもよい。熱ラジカル重合開始剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性を有する化合物の重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル重合開始剤を添加することによって、硬化物を得るための加熱工程において、樹脂及び架橋剤の重合反応を進行させることもできるので、より耐溶剤性を向上できる。
【0198】
熱ラジカル重合開始剤として、具体的には、特開2008-063554号公報の段落0074~0118に記載されている化合物が挙げられる。
【0199】
熱重合開始剤を含む場合、その含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、更に好ましくは5~15質量%である。熱重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。熱重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0200】
<熱酸発生剤>
パターン形成用組成物は、熱酸発生剤を含んでもよい。
熱酸発生剤は、加熱により酸を発生し、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基を有する化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びベンゾオキサジン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物の架橋反応を促進させる効果がある。
【0201】
熱酸発生剤の熱分解開始温度は、50℃~270℃が好ましく、50℃~250℃がより好ましい。また、パターン形成用組成物を基板に塗布した後の乾燥(プリベーク:約70~140℃)時には酸を発生せず、その後の露光、現像でパターニングした後の最終加熱(キュア:約100~400℃)時に酸を発生するものを熱酸発生剤として選択すると、現像時の感度低下を抑制できるため好ましい。
熱分解開始温度は、熱酸発生剤を耐圧カプセル中5℃/分で500℃まで加熱した場合に、最も温度が低い発熱ピークのピーク温度として求められる。
熱分解開始温度を測定する際に用いられる機器としては、Q2000(TAインスツルメント社製)等が挙げられる。
【0202】
熱酸発生剤から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、あるいはトリフルオロメタンスルホン酸などのハロアルキルスルホン酸などが好ましい。このような熱酸発生剤の例としては、特開2013-072935号公報の段落0055に記載のものが挙げられる。
【0203】
中でも、有機膜中の残留が少なく有機膜物性を低下させにくいという観点から、炭素数1~4のアルキルスルホン酸や炭素数1~4のハロアルキルスルホン酸を発生するものがより好ましく、メタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、メタンスルホン酸(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)ジメチルスルホニウム、メタンスルホン酸ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム、メタンスルホン酸ベンジル(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)メチルスルホニウム、メタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)メチル((2-メチルフェニル)メチル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)ジメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ベンジル(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)メチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)メチル((2-メチルフェニル)メチル)スルホニウム、3-(5-(((プロピルスルホニル)オキシ)イミノ)チオフェン-2(5H)-イリデン)-2-(o-トリル)プロパンニトリル、2,2-ビス(3-(メタンスルホニルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが、熱酸発生剤として好ましい。
【0204】
また、特開2013-167742号公報の段落0059に記載の化合物も熱酸発生剤として好ましい。
【0205】
熱酸発生剤の含有量は、特定樹脂100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。0.01質量部以上含有することで、架橋反応が促進されるため、有機膜の機械特性及び耐溶剤性をより向上させることができる。また、有機膜の電気絶縁性の観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
【0206】
<オニウム塩>
パターン形成用組成物は、オニウム塩を更に含んでもよい。
特に、パターン形成用組成物が特定樹脂としてポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体を含む場合、オニウム塩を含むことが好ましい。
オニウム塩の種類等は特に定めるものではないが、アンモニウム塩、イミニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩又はホスホニウム塩が好ましく挙げられる。
これらの中でも、熱安定性が高い観点からはアンモニウム塩又はイミニウム塩が好ましく、ポリマーとの相溶性の観点からはスルホニウム塩、ヨードニウム塩又はホスホニウム塩が好ましい。
【0207】
また、オニウム塩はオニウム構造を有するカチオンとアニオンとの塩であり、上記カチオンとアニオンとは、共有結合を介して結合していてもよいし、共有結合を介して結合していなくてもよい。
すなわち、オニウム塩は、同一の分子構造内に、カチオン部と、アニオン部と、を有する分子内塩であってもよいし、それぞれ別分子であるカチオン分子と、アニオン分子と、がイオン結合した分子間塩であってもよいが、分子間塩であることが好ましい。また、パターン形成用組成物において、上記カチオン部又はカチオン分子と、上記アニオン部又はアニオン分子と、はイオン結合により結合されていてもよいし、解離していてもよい。
オニウム塩におけるカチオンとしては、アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はホスホニウムカチオンが好ましく、テトラアルキルアンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンよりなる群から選択される少なくとも1種のカチオンがより好ましい。
【0208】
本発明において用いられるオニウム塩は、後述する熱塩基発生剤であってもよい。
熱塩基発生剤とは、加熱により塩基を発生する化合物をいい、例えば、40℃以上に加熱すると塩基を発生する化合物等が挙げられる。
オニウム塩としては、例えば、国際公開第2018/043262号の段落0122~0138に記載のオニウム塩等が挙げられる。また、その他、ポリイミド前駆体の分野で使用されるオニウム塩を、特に制限なく使用することが可能である。
【0209】
パターン形成用組成物がオニウム塩を含む場合、オニウム塩の含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対し、0.1~50質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、0.85質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が一層好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が一層好ましく、5質量%以下であってもよく、4質量%以下であってもよい。
オニウム塩は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0210】
<熱塩基発生剤>
パターン形成用組成物は、熱塩基発生剤を更に含んでもよい。
特に、パターン形成用組成物が特定樹脂としてポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体を含む場合、熱塩基発生剤を含むことが好ましい。
他の熱塩基発生剤は、上述のオニウム塩に該当する化合物であってもよいし、上述のオニウム塩以外の熱塩基発生剤であってもよい。
上述のオニウム塩以外の熱塩基発生剤としては、ノニオン系熱塩基発生剤が挙げられる。
ノニオン系熱塩基発生剤としては、式(B1)又は式(B2)で表される化合物が挙げられる。
【化34】
【0211】
式(B1)及び式(B2)中、Rb1、Rb2及びRb3はそれぞれ独立に、第3級アミン構造を有しない有機基、ハロゲン原子又は水素原子である。ただし、Rb1及びRb2が同時に水素原子となることはない。また、Rb1、Rb2及びRb3はいずれもカルボキシ基を有することはない。なお、本明細書で第三級アミン構造とは、3価の窒素原子の3つの結合手がいずれも炭化水素系の炭素原子と共有結合している構造を指す。したがって、結合した炭素原子がカルボニル基をなす炭素原子の場合、つまり窒素原子とともにアミド基を形成する場合はこの限りではない。
【0212】
式(B1)、(B2)中、Rb1、Rb2及びRb3は、これらのうち少なくとも1つが環状構造を含むことが好ましく、少なくとも2つが環状構造を含むことがより好ましい。環状構造としては、単環及び縮合環のいずれであってもよく、単環又は単環が2つ縮合した縮合環が好ましい。単環は、5員環又は6員環が好ましく、6員環が好ましい。単環は、シクロヘキサン環及びベンゼン環が好ましく、シクロヘキサン環がより好ましい。
【0213】
より具体的にRb1及びRb2は、水素原子、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、又はアリールアルキル基(炭素数7~25が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であることが好ましい。これらの基は、本発明の効果を奏する範囲で置換基を有していてもよい。Rb1とRb2とは互いに結合して環を形成していてもよい。形成される環としては、4~7員の含窒素複素環が好ましい。Rb1及びRb2は特に、置換基を有してもよい直鎖、分岐、又は環状のアルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)であることが好ましく、置換基を有してもよいシクロアルキル基(炭素数3~24が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)であることがより好ましく、置換基を有してもよいシクロヘキシル基が更に好ましい。
【0214】
Rb3としては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)、アリールアルケニル基(炭素数8~24が好ましく、8~20がより好ましく、8~16が更に好ましい)、アルコキシル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリールオキシ基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、又はアリールアルキルオキシ基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)が挙げられる。中でも、シクロアルキル基(炭素数3~24が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリールアルケニル基、アリールアルキルオキシ基が好ましい。Rb3には更に本発明の効果を奏する範囲で置換基を有していてもよい。
【0215】
式(B1)で表される化合物は、下記式(B1-1)又は下記式(B1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化35】
【0216】
式中、Rb11及びRb12、並びに、Rb31及びRb32は、それぞれ、式(B1)におけるRb1及びRb2と同じである。
Rb13はアルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、本発明の効果を奏する範囲で置換基を有していてもよい。中でも、Rb13はアリールアルキル基が好ましい。
【0217】
Rb33及びRb34は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~3が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~8がより好ましく、2~3が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が更に好ましい)であり、水素原子が好ましい。
【0218】
Rb35は、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~10がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、アリール基が好ましい。
【0219】
式(B1-1)で表される化合物は、式(B1-1a)で表される化合物もまた好ましい。
【化36】
【0220】
Rb11及びRb12は式(B1-1)におけるRb11及びRb12と同義である。
Rb15及びRb16は水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が更に好ましい)であり、水素原子又はメチル基が好ましい。
Rb17はアルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~10がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、中でもアリール基が好ましい。
【0221】
ノニオン系熱塩基発生剤の分子量は、800以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。下限としては、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、300以上であることが更に好ましい。
【0222】
上述のオニウム塩のうち、熱塩基発生剤である化合物の具体例、又は、上述のオニウム塩以外の熱塩基発生剤の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
他の熱塩基発生剤の含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対し、0.1~50質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。熱塩基発生剤は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0227】
<架橋剤>
パターン形成用組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。
架橋剤としては、ラジカル架橋剤、又は、他の架橋剤が挙げられる。
【0228】
<ラジカル架橋剤>
パターン形成用組成物は、ラジカル架橋剤を更に含むことが好ましい。
ラジカル架橋剤は、ラジカル重合性基を有する化合物である。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基が好ましい。上記エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。
これらの中でも、上記エチレン性不飽和結合を含む基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましく、反応性の観点からは、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0229】
ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を1個以上有する化合物であればよいが、2以上有する化合物であることがより好ましい。
エチレン性不飽和結合を2個有する化合物は、上記エチレン性不飽和結合を含む基を2個有する化合物であることが好ましい。
また、得られるパターンの膜強度の観点からは、パターン形成用組成物は、ラジカル架橋剤として、エチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物を含むことが好ましい。上記エチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を3~15個有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を3~10個有する化合物がより好ましく、3~6個有する化合物が更に好ましい。
また、上記エチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物は、上記エチレン性不飽和結合を含む基を3個以上有する化合物であることが好ましく、3~15個有する化合物であることがより好ましく、3~10個有する化合物であることが更に好ましく、3~6個有する化合物であることが特に好ましい。
また、得られるパターンの膜強度の観点からは、パターン形成用組成物は、エチレン性不飽和結合を2個有する化合物と、上記エチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物とを含むことも好ましい。
【0230】
ラジカル架橋剤の分子量は、2,000以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、900以下が更に好ましい。ラジカル架橋剤の分子量の下限は、100以上が好ましい。
【0231】
ラジカル架橋剤の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類である。また、ヒドロキシ基やアミノ基、スルファニル基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲノ基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0113~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0232】
また、ラジカル架橋剤は、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後、(メタ)アクリレート化した化合物、特公昭48-041708号公報、特公昭50-006034号公報、特開昭51-037193号各公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48-064183号、特公昭49-043191号、特公昭52-030490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。また、特開2008-292970号公報の段落0254~0257に記載の化合物も好適である。また、多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基とエチレン性不飽和結合を有する化合物を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレートなども挙げることができる。
【0233】
また、上述以外の好ましいラジカル架橋剤として、特開2010-160418号公報、特開2010-129825号公報、特許第4364216号公報等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物や、カルド樹脂も使用することが可能である。
【0234】
更に、その他の例としては、特公昭46-043946号公報、特公平01-040337号公報、特公平01-040336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平02-025493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、特開昭61-022048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含む化合物を用いることもできる。更に日本接着協会誌 vol.20、No.7、300~308ページ(1984年)に光重合性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0235】
上記のほか、特開2015-034964号公報の段落0048~0051に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0087~0131に記載の化合物も好ましく用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0236】
また、特開平10-062986号公報において式(1)及び式(2)としてその具体例と共に記載の、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、ラジカル架橋剤として用いることができる。
【0237】
更に、特開2015-187211号公報の段落0104~0131に記載の化合物もラジカル架橋剤として用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0238】
ラジカル架橋剤としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320;日本化薬(株)製、A-TMMT:新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH;新中村化学工業社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0239】
ラジカル架橋剤の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、エチレンオキシ鎖を4個有する2官能メタクリレートであるサートマー社製のSR-209、231、239、日本化薬(株)製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330、ウレタンオリゴマーUAS-10、UAB-140(日本製紙社製)、NKエステルM-40G、NKエステル4G、NKエステルM-9300、NKエステルA-9300、UA-7200(新中村化学工業社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学社製)、ブレンマーPME400(日油(株)製)などが挙げられる。
【0240】
ラジカル架橋剤としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、ラジカル架橋剤として、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する化合物を用いることもできる。
【0241】
ラジカル架橋剤は、カルボキシ基、リン酸基等の酸基を有するラジカル架橋剤であってもよい。酸基を有するラジカル架橋剤は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤がより好ましい。特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤において、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールである化合物である。市販品としては、例えば、東亞合成(株)製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M-510、M-520などが挙げられる。
【0242】
酸基を有するラジカル架橋剤の好ましい酸価は、0.1~40mgKOH/gであり、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。ラジカル架橋剤の酸価が上記範囲であれば、製造上の取扱性に優れ、更には、現像性に優れる。また、重合性が良好である。一方、アルカリ現像する場合の現像速度の観点では、酸基を有するラジカル架橋剤の好ましい酸価は、0.1~300mgKOH/gであり、特に好ましくは1~100mgKOH/gである。上記酸価は、JIS K 0070:1992の記載に準拠して測定される。
【0243】
パターン形成用組成物は、パターンの解像性と膜の伸縮性の観点から、2官能のメタアクリレート又はアクリレートを用いることが好ましい。具体的な化合物としては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、PEG200ジアクリレート、PEG200ジメタクリレート、PEG600ジアクリレート、PEG600ジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジメタクリレート、2-ヒドロキシー3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸変性ジメタクリレート、その他ウレタン結合を有する2官能アクリレート、ウレタン結合を有する2官能メタクリレートを使用することができる。これらは必要に応じ、2種以上を混合し使用することができる。
また、パターンの弾性率制御に伴う反り抑制の観点から、ラジカル架橋剤として、単官能ラジカル架橋剤を好ましく用いることができる。単官能ラジカル架橋剤としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類等が好ましく用いられる。単官能ラジカル架橋剤としては、露光前の揮発を抑制するため、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。
【0244】
ラジカル架橋剤を含有する場合、その含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対して、0質量%超60質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0245】
ラジカル架橋剤は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0246】
<他の架橋剤>
パターン形成用組成物は、上述したラジカル架橋剤とは異なる、他の架橋剤を含むことが好ましい。
本発明において、他の架橋剤とは、上述したラジカル架橋剤以外の架橋剤をいい、上述の感光剤の感光により、パターン形成用組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が促進される基を分子内に複数個有する化合物であることが好ましく、パターン形成用組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が酸又は塩基の作用によって促進される基を分子内に複数個有する化合物が好ましい。
上記酸又は塩基は、露光工程において、感光剤である光酸発生剤又は光塩基発生剤から発生する酸又は塩基であることが好ましい。
他の架橋剤としては、メチロール基及びアルコキシメチル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物が好ましく、メチロール基及びアルコキシメチル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基が窒素原子に直接結合した構造を有する化合物がより好ましい。
他の架橋剤としては、例えば、メラミン、グリコールウリル、尿素、アルキレン尿素、ベンゾグアナミンなどのアミノ基含有化合物にホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドとアルコールを反応させ、上記アミノ基の水素原子をメチロール基又はアルコキシメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。これらの化合物の製造方法は特に限定されず、上記方法により製造された化合物と同様の構造を有する化合物であればよい。また、これらの化合物のメチロール基同士が自己縮合してなるオリゴマーであってもよい。
上記のアミノ基含有化合物として、メラミンを用いた架橋剤をメラミン系架橋剤、グリコールウリル、尿素又はアルキレン尿素を用いた架橋剤を尿素系架橋剤、アルキレン尿素を用いた架橋剤をアルキレン尿素系架橋剤、ベンゾグアナミンを用いた架橋剤をベンゾグアナミン系架橋剤という。
これらの中でも、パターン形成用組成物は、尿素系架橋剤及びメラミン系架橋剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、後述するグリコールウリル系架橋剤及びメラミン系架橋剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。
【0247】
メラミン系架橋剤の具体例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシブチルメラミンなどが挙げられる。
【0248】
尿素系架橋剤の具体例としては、例えばモノヒドロキシメチル化グリコールウリル、ジヒドロキシメチル化グリコールウリル、トリヒドロキシメチル化グリコールウリル、テトラヒドロキシメチル化グリコールウリル、モノメトキシメチル化グリコールウリル,ジメトキシメチル化グリコールウリル、トリメトキシメチル化グリコールウリル、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、モノメトキシメチル化グリコールウリル、ジメトキシメチル化グリコールウリル、トリメトキシメチル化グリコールウリル、テトラエトキシメチル化グリコールウリル、モノプロポキシメチル化グリコールウリル、ジプロポキシメチル化グリコールウリル、トリプロポキシメチル化グリコールウリル、テトラプロポキシメチル化グリコールウリル、モノブトキシメチル化グリコールウリル、ジブトキシメチル化グリコールウリル、トリブトキシメチル化グリコールウリル、又は、テトラブトキシメチル化グリコールウリルなどのグリコールウリル系架橋剤;
ビスメトキシメチル尿素、ビスエトキシメチル尿素、ビスプロポキシメチル尿素、ビスブトキシメチル尿素等の尿素系架橋剤、
モノヒドロキシメチル化エチレン尿素又はジヒドロキシメチル化エチレン尿素、モノメトキシメチル化エチレン尿素、ジメトキシメチル化エチレン尿素、モノエトキシメチル化エチレン尿素、ジエトキシメチル化エチレン尿素、モノプロポキシメチル化エチレン尿素、ジプロポキシメチル化エチレン尿素、モノブトキシメチル化エチレン尿素、又は、ジブトキシメチル化エチレン尿素などのエチレン尿素系架橋剤、
モノヒドロキシメチル化プロピレン尿素、ジヒドロキシメチル化プロピレン尿素、モノメトキシメチル化プロピレン尿素、ジメトキシメチル化プロピレン尿素、モノジエトキシメチル化プロピレン尿素、ジエトキシメチル化プロピレン尿素、モノプロポキシメチル化プロピレン尿素、ジプロポキシメチル化プロピレン尿素、モノブトキシメチル化プロピレン尿素、又は、ジブトキシメチル化プロピレン尿素などのプロピレン尿素系架橋剤、
1,3-ジ(メトキシメチル)4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン、1,3-ジ(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0249】
ベンゾグアナミン系架橋剤の具体例としては、例えばモノヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、ジヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、トリヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、モノメトキシメチル化ベンゾグアナミン、ジメトキシメチル化ベンゾグアナミン、トリメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、モノメトキシメチル化ベンゾグアナミン、ジメトキシメチル化ベンゾグアナミン、トリメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラエトキシメチル化ベンゾグアナミン、モノプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、ジプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、トリプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、モノブトキシメチル化ベンゾグアナミン、ジブトキシメチル化ベンゾグアナミン、トリブトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミンなどが挙げられる。
【0250】
その他、メチロール基及びアルコキシメチル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物としては、芳香環(好ましくはベンゼン環)にメチロール基及びアルコキシメチル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基が直接結合した化合物も好適に用いられる。
このような化合物の具体例としては、ベンゼンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)クレゾール、ビス(ヒドロキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシメチル安息香酸ヒドロキシメチルフェニル、ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ベンゼン、ビス(メトキシメチル)クレゾール、ビス(メトキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(メトキシメチル)ベンゾフェノン、メトキシメチル安息香酸メトキシメチルフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’,4’’-エチリデントリス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール]、5,5’-[2,2,2‐トリフルオロ‐1‐(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2‐ヒドロキシ‐1,3‐ベンゼンジメタノール]、3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジオール等が挙げられる。
【0251】
他の架橋剤としては市販品を用いてもよく、好適な市販品としては、46DMOC、46DMOEP(以上、旭有機材工業社製)、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-BPC、DMLBisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、本州化学工業社製)、ニカラック(登録商標、以下同様)MX-290、ニカラックMX-280、ニカラックMX-270、ニカラックMX-279、ニカラックMW-100LM、ニカラックMX-750LM(以上、三和ケミカル社製)などが挙げられる。
【0252】
また、パターン形成用組成物は、他の架橋剤として、エポキシ化合物、オキセタン化合物、及び、ベンゾオキサジン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことも好ましい。
【0253】
〔エポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物)〕
エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物であることが好ましい。エポキシ基は、200℃以下で架橋反応し、かつ、架橋に由来する脱水反応が起こらないため膜収縮が起きにくい。このため、エポキシ化合物を含有することは、パターン形成用組成物の低温硬化及び反りの抑制に効果的である。
【0254】
エポキシ化合物は、ポリエチレンオキサイド基を含有することが好ましい。これにより、より弾性率が低下し、また反りを抑制することができる。ポリエチレンオキサイド基は、エチレンオキサイドの繰返し単位数が2以上のものを意味し、繰返し単位数が2~15であることが好ましい。
【0255】
エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のアルキレングリコール型エポキシ樹脂又は多価アルコール炭化水素型エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ポリメチル(グリシジロキシプロピル)シロキサン等のエポキシ基含有シリコーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、エピクロン(登録商標)850-S、エピクロン(登録商標)HP-4032、エピクロン(登録商標)HP-7200、エピクロン(登録商標)HP-820、エピクロン(登録商標)HP-4700、エピクロン(登録商標)EXA-4710、エピクロン(登録商標)HP-4770、エピクロン(登録商標)EXA-859CRP、エピクロン(登録商標)EXA-1514、エピクロン(登録商標)EXA-4880、エピクロン(登録商標)EXA-4850-150、エピクロンEXA-4850-1000、エピクロン(登録商標)EXA-4816、エピクロン(登録商標)EXA-4822、エピクロン(登録商標)EXA-830LVP、エピクロン(登録商標)EXA-8183、エピクロン(登録商標)EXA-8169、エピクロン(登録商標)N-660、エピクロン(登録商標)N-665-EXP-S、エピクロン(登録商標)N-740、リカレジン(登録商標)BEO-20E(以上商品名、DIC(株)製)、リカレジン(登録商標)BEO-60E、リカレジン(登録商標)HBE-100、リカレジン(登録商標)DME-100、リカレジン(登録商標)L-200(商品名、新日本理化(株))、EP-4003S、EP-4000S、EP-4088S、EP-3950S(以上商品名、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、2081、2000、3000、EHPE3150、エポリードGT400、セルビナースB0134、B0177(以上商品名、(株)ダイセル製)、NC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3000-FH-75M、NC-3100、CER-3000-L、NC-2000-L、XD-1000、NC-7000L、NC-7300L、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、CER-1020、EPPN-201、BREN-S、BREN-10S(以上商品名、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0256】
〔オキセタン化合物(オキセタニル基を有する化合物)〕
オキセタン化合物としては、一分子中にオキセタン環を2つ以上有する化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルメチル)オキセタン、1,4-ベンゼンジカルボン酸-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル等を挙げることができる。具体的な例としては、東亞合成(株)製のアロンオキセタンシリーズ(例えば、OXT-121、OXT-221、OXT-191、OXT-223)が好適に使用することができ、これらは単独で、又は2種以上混合してもよい。
【0257】
〔ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサゾリル基を有する化合物)〕
ベンゾオキサジン化合物は、開環付加反応に由来する架橋反応のため、硬化時に脱ガスが発生せず、更に熱収縮を小さくして反りの発生が抑えられることから好ましい。
【0258】
ベンゾオキサジン化合物の好ましい例としては、B-a型ベンゾオキサジン、B-m型ベンゾオキサジン、P-d型ベンゾオキサジン、F-a型ベンゾオキサジン(以上、商品名、四国化成工業社製)、ポリヒドロキシスチレン樹脂のベンゾオキサジン付加物、フェノールノボラック型ジヒドロベンゾオキサジン化合物が挙げられる。これらは単独で用いるか、又は2種以上混合してもよい。
【0259】
他の架橋剤の含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.5~15質量%であることが更に好ましく、1.0~10質量%であることが特に好ましい。他の架橋剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。他の架橋剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0260】
<スルホンアミド構造を有する化合物、チオウレア構造を有する化合物>
得られるパターンの基材への密着性を向上する観点からは、パターン形成用組成物は、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を更に含むことが好ましい。
【0261】
〔スルホンアミド構造を有する化合物〕
スルホンアミド構造とは、下記式(S-1)で表される構造である。
【化40】
式(S-1)中、Rは水素原子又は有機基を表し、Rは他の構造と結合して環構造を形成してもよく、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
上記Rは、下記式(S-2)におけるR
2と同様の基であることが好ましい。
スルホンアミド構造を有する化合物は、スルホンアミド構造を2以上有する化合物であってもよいが、スルホンアミド構造を1つ有する化合物であることが好ましい。
【0262】
スルホンアミド構造を有する化合物は、下記式(S-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化41】
式(S-2)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R
1、R
2及びR
3のうち2つ以上が互いに結合して環構造を形成していてもよい。
R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、1価の有機基であることが好ましい。
R
1、R
2及びR
3の例としては、水素原子、又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、アリール基、アリールエーテル基、カルボキシ基、カルボニル基、アリル基、ビニル基、複素環基、若しくはこれらを2以上組み合わせた基などが挙げられる。
上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、2-エチルへキシル基等が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、炭素数5~10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数6~10のシクロアルキル基がより好ましい。上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましい。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基及びペントキシ基等が挙げられる。
上記アルコキシシリル基としては、炭素数1~10のアルコキシシリル基が好ましく、炭素数1~4のアルコキシシリル基がより好ましい。上記アルコキシシリル基としては、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基及びブトキシシリル基等が挙げられる。
上記アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~12のアリール基がより好ましい。上記アリール基は、アルキル基等の置換基を有していてもよい。上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基及びナフチル基等が挙げられる。
上記複素環基としては、トリアゾール環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペリジン、ピペラジン環、モルホリン環、ジヒドロピラン環、テトラヒドロピラン基、トリアジン環等の複素環構造から水素原子を1つ除いた基などが挙げられる。
【0263】
これらの中でも、R1がアリール基であり、かつ、R2及びR3がそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である化合物が好ましい。
【0264】
スルホンアミド構造を有する化合物の例としては、ベンゼンスルホンアミド、ジメチルベンゼンスルホンアミド、N-ブチルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、o-トルエンスルホンアミド、p-トルエンスルホンアミド、ヒドロキシナフタレンスルホンアミド、ナフタレン-1-スルホンアミド、ナフタレン-2-スルホンアミド、m-ニトロベンゼンスルホンアミド、p-クロロベンゼンスルホンアミド、メタンスルホンアミド、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジメチルエタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド、N-メトキシメタンスルホンアミド、N-ドデシルメタンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-1-ブタンスルホンアミド、2-アミノエタンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0265】
〔チオウレア構造を有する化合物〕
チオウレア構造とは、下記式(T-1)で表される構造である。
【化42】
式(T-1)中、R
4及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R
4及びR
5は結合して環構造を形成してもよく、R
4は*が結合する他の構造と結合して環構造を形成してもよく、R
5は*が結合する他の構造と結合して環構造を形成してもよく、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【0266】
R4及びR5はそれぞれ独立に、水素原子であることが好ましい。
R4及びR5の例としては、水素原子、又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、アリール基、アリールエーテル基、カルボキシ基、カルボニル基、アリル基、ビニル基、複素環基、若しくは、これらを2以上組み合わせた基などが挙げられる。
上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、2-エチルへキシル基等が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、炭素数5~10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数6~10のシクロアルキル基がより好ましい。上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましい。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基及びペントキシ基等が挙げられる。
上記アルコキシシリル基としては、炭素数1~10のアルコキシシリル基が好ましく、炭素数1~4のアルコキシシリル基がより好ましい。上記アルコキシシリル基としては、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基及びブトキシシリル基等が挙げられる。
上記アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~12のアリール基がより好ましい。上記アリール基は、アルキル基等の置換基を有していてもよい。上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基及びナフチル基等が挙げられる。
上記複素環基としては、トリアゾール環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペリジン、ピペラジン環、モルホリン環、ジヒドロピラン環、テトラヒドロピラン基、トリアジン環等の複素環構造から水素原子を1つ除いた基などが挙げられる。
チオウレア構造を有する化合物は、チオウレア構造を2以上有する化合物であってもよいが、チオウレア構造を1つ有する化合物であることが好ましい。
【0267】
チオウレア構造を有する化合物は、下記式(T-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化43】
式(T-2)中、R
4~R
7はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R
4~R
7のうち少なくとも2つは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0268】
式(T-2)中、R4及びR5は式(T-1)中のR4及びR5と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(T-2)中、R6及びR7はそれぞれ独立に、1価の有機基であることが好ましい。
式(T-2)中、R6及びR7における1価の有機基の好ましい態様は、式(T-1)中のR4及びR5における1価の有機基の好ましい態様と同様である。
【0269】
チオウレア構造を有する化合物の例としては、N-アセチルチオウレア、N-アリルチオウレア、N-アリル-N’-(2-ヒドロキシエチル)チオウレア、1-アダマンチルチオウレア、N-ベンゾイルチオウレア、N,N’-ジフェニルチオウレア、1-ベンジル-フェニルチオウレア、1,3-ジブチルチオウレア、1,3-ジイソプロピルチオウレア、1,3-ジシクロヘキシルチオウレア、1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-3-メチルチオウレア、トリメチルチオウレア、テトラメチルチオウレア、N,N-ジフェニルチオウレア、エチレンチオウレア(2-イミダゾリンチオン)、カルビマゾール、1,3-ジメチル-2-チオヒダントインなどが挙げられる。
【0270】
〔含有量〕
パターン形成用組成物の全質量に対する、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物の合計含有量は、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.2~3質量%であることが更に好ましい。
パターン形成用組成物は、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物よりなる群から選ばれる化合物を、1種のみ含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。1種のみ含む場合にはその化合物の含有量が、2種以上を含む場合にはその合計量が、上記の範囲となることが好ましい。
【0271】
<マイグレーション抑制剤>
パターン形成用組成物は、更にマイグレーション抑制剤を含むことが好ましい。マイグレーション抑制剤を含むことにより、金属層(金属配線)由来の金属イオンが感光膜内へ移動することを効果的に抑制可能となる。
【0272】
マイグレーション抑制剤としては、特に制限はないが、複素環(ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環及び6H-ピラン環、トリアジン環)を有する化合物、チオ尿素類及びスルファニル基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
【0273】
又はハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
【0274】
その他のマイグレーション抑制剤としては、特開2013-015701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-059656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116及び0118に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0166に記載の化合物などを使用することができる。
【0275】
マイグレーション抑制剤の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
【0276】
【0277】
パターン形成用組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。
【0278】
マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0279】
<重合禁止剤>
パターン形成用組成物は、重合禁止剤を含むことが好ましい。
【0280】
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、o-メトキシフェノール、メトキシヒドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、p-tert-ブチルカテコール(t-ブチルカテコール)、1,4-ベンゾキノン、ジフェニル-p-ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、フェノチアジン、N-ニトロソジフェニルアミン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、N-ニトロソ-N-(1-ナフチル)ヒドロキシアミンアンモニウム塩、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-tert-ブチル)フェニルメタン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン、1,4-ナフトキノン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、4‐ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、フェノチアジン、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル、ジブチルジチオカーバネート銅(II)、ニトロベンゼン、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩などが好適に用いられる。また、特開2015-127817号公報の段落0060に記載の重合禁止剤、及び、国際公開第2015/125469号の段落0031~0046に記載の化合物を用いることもできる。
【0281】
また、下記化合物を用いることができる。
【0282】
【0283】
パターン形成用組成物が重合禁止剤を有する場合、重合禁止剤の含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対して、0.01~20.0質量%が挙げられ、0.01~5質量%であることが好ましく、0.02~3質量%であることがより好ましく、0.05~2.5質量%であることが更に好ましい。
【0284】
重合禁止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。重合禁止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0285】
<金属接着性改良剤>
パターン形成用組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させるための金属接着性改良剤を含んでいることが好ましい。金属接着性改良剤としては、シランカップリング剤、アルミニウム系接着助剤、チタン系接着助剤、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物、リン酸誘導体化合物、βケトエステル化合物、アミノ化合物等などが挙げられる。
【0286】
シランカップリング剤の例としては、国際公開第2015/199219号の段落0167に記載の化合物、特開2014-191002号公報の段落0062~0073に記載の化合物、国際公開第2011/080992号の段落0063~0071に記載の化合物、特開2014-191252号公報の段落0060~0061に記載の化合物、特開2014-041264号公報の段落0045~0052に記載の化合物、国際公開第2014/097594号の段落0055に記載の化合物が挙げられる。また、特開2011-128358号公報の段落0050~0058に記載のように異なる2種以上のシランカップリング剤を用いることも好ましい。また、シランカップリング剤は、下記化合物を用いることも好ましい。以下の式中、Etはエチル基を表す。
【0287】
【化46】
他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレー、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0288】
〔アルミニウム系接着助剤〕
アルミニウム系接着助剤としては、例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等を挙げることができる。
【0289】
また、金属接着性改良剤としては、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもできる。
【0290】
金属接着性改良剤の含有量は特定樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部の範囲であり、更に好ましくは0.5~5質量部の範囲である。上記下限値以上とすることでパターンと金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることでパターンの耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0291】
<金属接着性改良剤>
パターン形成用組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させるための金属接着性改良剤を含んでいることが好ましい。金属接着性改良剤としては、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもできる。
【0292】
金属接着性改良剤の含有量は複素環含有ポリマー前駆体100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部の範囲であり、更に好ましくは0.5~5質量部の範囲である。上記下限値以上とすることで加熱工程後のパターンと金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることで加熱工程後の硬化物の耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0293】
<その他の添加剤>
パターン形成用組成物は、本発明の効果が得られる範囲で、必要に応じて、各種の添加物、例えば、増感剤、連鎖移動剤、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、無機粒子、硬化剤、硬化触媒、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤を配合する場合、その合計配合量はパターン形成用組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
【0294】
〔増感剤〕
パターン形成用組成物は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、熱硬化促進剤、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱硬化促進剤、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸又は塩基を生成する。
増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン、ジフェニルアセトアミド、ベンズアニリド、N-メチルアセトアニリド、3’,4’-ジメチルアセトアニリド等が挙げられる。
増感剤としては、増感色素を用いてもよい。
増感色素の詳細については、特開2016-027357号公報の段落0161~0163の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0295】
パターン形成用組成物が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましい。増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0296】
〔連鎖移動剤〕
パターン形成用組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、及びGeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物を好ましく用いることができる。
【0297】
また、連鎖移動剤は、国際公開第2015/199219号の段落0152~0153に記載の化合物を用いることもできる。
【0298】
パターン形成用組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、パターン形成用組成物の全固形分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0299】
〔界面活性剤〕
パターン形成用組成物には、塗布性をより向上させる観点から、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種類の界面活性剤を使用できる。また、下記界面活性剤も好ましい。下記式中、主鎖の繰返し単位を示す括弧は各繰返し単位の含有量(モル%)を、側鎖の繰返し単位を示す括弧は各繰返し単位の繰り返し数をそれぞれ表す。
【化47】
また、界面活性剤は、国際公開第2015/199219号の段落0159~0165に記載の化合物を用いることもできる。
フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落0050~0090および段落0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K等が挙げられる。
【0300】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0301】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP341、KF6001、KF6002(以上、信越シリコーン(株)製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー(株)製)等が挙げられる。
【0302】
炭化水素系界面活性剤としては、例えば、パイオニンA-76、ニューカルゲンFS-3PG、パイオニンB-709、パイオニンB-811-N、パイオニンD-1004、パイオニンD-3104、パイオニンD-3605、パイオニンD-6112、パイオニンD-2104-D、パイオニンD-212、パイオニンD-931、パイオニンD-941、パイオニンD-951、パイオニンE-5310、パイオニンP-1050-B、パイオニンP-1028-P、パイオニンP-4050-T等(以上、竹本油脂社製)、などが挙げられる。
【0303】
ノニオン型界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニック(登録商標)L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0304】
カチオン型界面活性剤として具体的には、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.77、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0305】
アニオン型界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)製)、サンデットBL(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0306】
パターン形成用組成物が界面活性剤を有する場合、界面活性剤の含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005~1.0質量%である。界面活性剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。界面活性剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0307】
〔高級脂肪酸誘導体〕
パターン形成用組成物は、酸素に起因する重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体を添加して、塗布後の乾燥の過程でパターン形成用組成物の表面に偏在させてもよい。
【0308】
また、高級脂肪酸誘導体は、国際公開第2015/199219号の段落0155に記載の化合物を用いることもできる。
【0309】
パターン形成用組成物が高級脂肪酸誘導体を有する場合、高級脂肪酸誘導体の含有量は、パターン形成用組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。高級脂肪酸誘導体は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。高級脂肪酸誘導体が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0310】
〔無機粒子〕
本発明の樹脂組成物は、無機粒子を含んでもよい。無機粒子として、具体的には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、ガラス等を含むことができる。
【0311】
上記無機粒子の平均粒子径としては、0.01~2.0μmが好ましく、0.02~1.5μmがより好ましく、0.03~1.0μmがさらに好ましく、0.04~0.5μmが特に好ましい。
上記平均粒子径の無機粒子を含有させることによって、硬化膜の機械特性と露光光の散乱抑制を両立することができる。
【0312】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系などの紫外線吸収剤を使用することができる。
サリシレート系紫外線吸収剤の例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、p-t-ブチルフェニルサリシレートなどが挙げられ、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-アミル-5’-イソブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-プロピルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0313】
置換アクリロニトリル系紫外線吸収剤の例としては、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシルなどが挙げられる。さらに、トリアジン系紫外線吸収剤の例としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのモノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物;2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロピルオキシフェニル)-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物;2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[2-ヒドロキシ-4-(3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジンなどのトリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物等が挙げられる。
【0314】
本発明においては、前記各種の紫外線吸収剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、紫外線吸収剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分質量に対して、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0315】
〔有機チタン化合物〕
本実施形態の樹脂組成物は、有機チタン化合物を含有してもよい。樹脂組成物が有機チタン化合物を含有することにより、低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる樹脂層を形成できる。
【0316】
使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機基が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
有機チタン化合物の具体例を、以下のI)~VII)に示す:
I)チタンキレート化合物:中でも、ネガ型感光性樹脂組成物の保存安定性がよく、良好な硬化パターンが得られることから、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレート化合物がより好ましい。具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
II)テトラアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等である。
III)チタノセン化合物:例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等である。
IV)モノアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等である。
V)チタニウムオキサイド化合物:例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等である。
VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物:例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等である。
VII)チタネートカップリング剤:例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等である。
【0317】
中でも、有機チタン化合物としては、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、より良好な耐薬品性を奏するという観点から好ましい。特に、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが好ましい。
【0318】
有機チタン化合物を配合する場合、その配合量は、環化樹脂の前駆体100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~2質量部である。配合量が0.05質量部以上である場合、得られる硬化パターンに良好な耐熱性及び耐薬品性が発現し、一方10質量部以下である場合、組成物の保存安定性に優れる。
【0319】
〔酸化防止剤〕
本発明の組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。添加剤として酸化防止剤を含有することで、硬化後の膜の伸度特性や、金属材料との密着性を向上させることができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。また、酸化防止剤は、特許第6268967号公報の段落番号0023~0048に記載された化合物を使用することもできる。また、本発明の組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。好ましい酸化防止剤の例としては、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチルフェノールおよび一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0320】
【0321】
一般式(3)中、R5は水素原子または炭素数2以上のアルキル基を表し、R6は炭素数2以上のアルキレン基を表す。R7は、炭素数2以上のアルキレン基、O原子、およびN原子のうち少なくともいずれかを含む1~4価の有機基を示す。kは1~4の整数を示す。
【0322】
一般式(3)で表される化合物は、樹脂の脂肪族基やフェノール性水酸基の酸化劣化を抑制する。また、金属材料への防錆作用により、金属酸化を抑制することができる。
【0323】
樹脂と金属材料に同時に作用できるため、kは2~4の整数がより好ましい。R7としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、アリール基、アリールエーテル基、カルボキシル基、カルボニル基、アリル基、ビニル基、複素環基、-O-、-NH-、-NHNH-、それらを組み合わせたものなどが挙げられ、さらに置換基を有していてもよい。この中でも、現像液への溶解性や金属密着性の点から、アルキルエーテル、-NH-を有することが好ましく、樹脂との相互作用と金属錯形成による金属密着性の点から-NH-がより好ましい。
【0324】
下記一般式(3)で表される化合物は、例としては以下のものが挙げられるが、下記構造に限らない。
【0325】
【0326】
【0327】
【0328】
【0329】
酸化防止剤の添加量は、樹脂に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。添加量が0.1質量部より少ない場合は、信頼性後の伸度特性や金属材料に対する密着性向上の効果が得られにくく、また10質量部より多い場合は、感光剤との相互作用により、樹脂組成物の感度低下を招く恐れがある。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0330】
<その他の含有物質についての制限>
パターン形成用組成物の水分含有量は、塗布面性状の観点から、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.6質量%未満が更に好ましい。水分の含有量を維持する方法としては、保管条件における湿度の調整、収容容器の空隙率低減などが挙げられる。
【0331】
パターン形成用組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、クロム、ニッケルなどが挙げられる。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。
【0332】
また、パターン形成用組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、パターン形成用組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、パターン形成用組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフルオロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
【0333】
パターン形成用組成物は、半導体材料としての用途を考慮すると、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500質量ppm未満が好ましく、300質量ppm未満がより好ましく、200質量ppm未満が更に好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5質量ppm未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。塩素原子及び臭素原子、又は塩素イオン及び臭素イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
ハロゲン原子の含有量を調節する方法としては、イオン交換処理などが好ましく挙げられる。
【0334】
パターン形成用組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料やパターン形成用組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0335】
<パターン形成用組成物の用途>
パターン形成用組成物は、再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられることが好ましい。
また、その他、半導体デバイスの絶縁膜の形成、又は、ストレスバッファ膜の形成等にも用いることができる。
【実施例】
【0336】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0337】
(樹脂組成物の製造)
各実施例又は比較例において、以下の製造方法に従い、樹脂組成物又は比較用組成物を製造した。
得られた樹脂組成物又は比較用組成物に含まれる、特定樹脂、酸価防止剤、他含有物(その他の成分)の種類及び含有量、並びに、酸化防止剤の酸化還元電位は、後述の表に記載した。
酸化防止剤の酸化還元電位は、以下の方法により測定した。
WaveNanoポテンショスタット(Pine Research Instrumentation)を用いてサイクリックボルタンメトリー測定を行った。参照電極、カウンター電極、及び作用電極としては、以下の材料を用いた。
・参照電極:銀/硝酸銀(電解質としては0.1mol/Lテトラアルキルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩のアセトニトリル溶液を使用することを含む無水アセトニトリル中の5mmol/Lの硝酸銀の新たに調製された溶液中に浸された銀線)、
・カウンター電極:白金線
・作用電極:白金ディスク(直径1.6mm)
各酸化防止剤の酸化電位は、各酸化防止剤のテトラヒドロフラン(THF)溶液(5mmol/L)溶液を用いて測定した。支持電解質としては1mol/Lの過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)を使用した。
還元スキャンは、各酸化防止剤のTHF溶液(5mmol/L)に対して0.1mol/LのTBAPのアセトニトリル溶液により測定された。
典型的には、3サイクル(6区分)が20mV/秒の掃引速度で実施された。エネルギー準位は、真空準位に変換するために4.7Vのオフセットにより修正された。
以上の方法により、各酸化防止剤のテトラヒドロフラン(THF)溶液(5mmol/L)溶液についてボルタモグラムを測定し、これより得られる半波電位として酸化還元電位を求めた。
また、表中、「-」の記載は、該当する成分を含有しないことを意味している。
【0338】
<実施例1>
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、23.9gのピリジンと、0.10gの水と、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、ODPAとHEMAとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOCl
2を60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに12.6gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、3リットルの水の中で粗ポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体である粗ポリマーを濾別して380mlのN-メチルピロリドンに溶解させ、ハイドロキノン0.05gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-1は、重量平均分子量26,000であった。得られたポリマーA-1の構造は、下記式(A-1)で表される構造であると推定される。
【化53】
【0339】
<実施例2>
4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)134.0g及びγ-ブチロラクトン400mlを加えた。室温下で撹拌しながら、ピリジン79.1gを加えることにより、反応混合物を得た。反応による発熱の終了後、室温まで放冷し、更に16時間静置した。次に、氷冷下において、反応混合物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を、撹拌しながら40分かけて加えた。続いて、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン148.7gをγ-ブチロラクトン350mlに懸濁した懸濁液を、撹拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間撹拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間撹拌した。その後、γ-ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物を、ろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて、粗ポリマーを生成した。粗ポリマーを濾取し、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解後、p-メトキシフェノール0.3gを混合し粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-2は、重量平均分子量(Mw)20,000であった。得られたポリマーA-2の構造は、下記式(A-2)で表される構造であると推定される。
【化54】
【0340】
<実施例3>
14.9gのピロメリット酸無水物と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、23.9gのピリジンと、0.10gの水と、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、ピロメリット酸無水物とHEMAとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOCl
2を60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに20.2gの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、3リットルの水の中で粗ポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体である粗ポリマーを濾別して380mlのシクロヘキサノンに溶解させ、4-メトキシアニリン0.1gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-3は、重量平均分子量21,000であった。得られたポリマーA-3の構造は、下記式(A-3)で表される構造であると推定される。
【化55】
【0341】
<実施例4>
2,2’-ビフタル酸無水物147.1gを2リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)134.0g及びγ-ブチロラクトン400mlを加えた。室温下で撹拌しながら、ピリジン79.1gを加えることにより、反応混合物を得た。反応による発熱の終了後、室温まで放冷し、更に16時間静置した。次に、氷冷下において、反応混合物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を、撹拌しながら40分かけて加えた。続いて、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル93.0gをγ-ブチロラクトン350mlに懸濁した懸濁液を、撹拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間撹拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間撹拌した。その後、γ-ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物を、ろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて、粗ポリマーを生成した。粗ポリマーを濾取し、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解後、p-メトキシフェノール0.3gを混合し粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-4は、重量平均分子量(Mw)20,500であった。得られたポリマーA-4の構造は、下記式(A-4)で表される構造であると推定される。
【化56】
【0342】
<実施例5>
22.0gの3,3’, 4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、23.9gのピリジンと、0.10gの水と、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とHEMAとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOCl
2を60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに12.6gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、3リットルの水の中で粗ポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体である粗ポリマーを濾別して380mlのジメチルアセトアミドに溶解させ、トリフェニルホスフィン0.05gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-5は、重量平均分子量22,000であった。得られたポリマーA-5の構造は、下記式(A-5)で表される構造であると推定される。
【化57】
【0343】
<実施例6>
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、23.9gのピリジンと、0.10gの水と、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、ODPAとHEMAとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOCl
2を60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに6.8gの1,4-フェニレンジアミンを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、3リットルの水の中で粗ポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体である粗ポリマーを濾別して380mlのテトラヒドロフランに溶解させ、システイン0.3gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、得た粉体を乾式ペレット成形機に投入し圧砕押し出し方式にてペレット状に成型し、ペレット状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-6は、重量平均分子量20,000であった。得られたポリマーA-6の構造は、下記式(A-6)で表される構造であると推定される。
【化58】
【0344】
<実施例7>
30.4gの4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、23.9gのピリジンと、0.10gの水と、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物とHEMAとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOCl
2を60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに12.6gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、3リットルの水の中で粗ポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体である粗ポリマーを濾別して380mlのγ-ブチロラクトンに溶解させ、4-ニトロソアニソール0.05gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、得た粉体を乾式ペレット成形機に投入し圧砕押し出し方式にてペレット状に成型し、ペレット状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-7は、重量平均分子量20,000であった。得られたポリマーA-7の構造は、下記式(A-7)で表される構造であると推定される。
【化59】
【0345】
<実施例8>
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、23.9gのピリジンと、0.10gの水と、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、ODPAとHEMAとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOCl
2を60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに15.6gの4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、3リットルの水の中で粗ポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体である粗ポリマーを濾別して380mlのN-メチルピロリドンに溶解させ、3-ブロモーβ―ラパコン1.0gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-8は、重量平均分子量25,000であった。得られたポリマーA-8の構造は、下記式(A-8)で表される構造であると推定される。
【化60】
【0346】
<実施例9>
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、23.9gのピリジンと、0.10gの水と、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、ODPAとHEMAとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOCl
2を60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに21.0gの2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、3リットルの水の中で粗ポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体である粗ポリマーを濾別して380mlのシクロヘキサノンに溶解させ、アスコルビン酸0.5gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、得た粉体を乾式ペレット成形機に投入し圧砕押し出し方式にてペレット状に成型し、ペレット状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-9は、重量平均分子量20,000であった。得られたポリマーA-9の構造は、下記式(A-9)で表される構造であると推定される。
【化61】
【0347】
<実施例10>
14.9gのピロメリット酸無水物と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、23.9gのピリジンと、0.10gの水と、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、ピロメリット酸無水物とHEMAとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOCl
2を60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに12.6gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、3リットルの水の中で粗ポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体である粗ポリマーを濾別して380mlのシクロペンタノンに溶解させ、p-メトキシベンズアルデヒド0.03gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粒体状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-10は、重量平均分子量22,000であった。得られたポリマーA-10の構造は、下記式(A-10)で表される構造であると推定される。
【化62】
【0348】
<実施例11>
実施例2および4で合成した粉体状の樹脂組成物を同量混合し、2種の樹脂と酸化防止剤、溶剤が含まれる粉体状の樹脂組成物を得た。
【0349】
<実施例12>
実施例8と同様の操作で粗ポリマーを得た。粗ポリマーを380mlのN-メチルピロリドンに溶解させ、p-メトキシフェノール0.5gとアスコルビン酸0.5gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-8は、重量平均分子量25,000であった。得られたポリマーA-8の構造は、上述の式(A-8)で表される構造であると推定される。
【0350】
<実施例13>
実施例2と同様の操作で粗ポリマーを得た。粗ポリマーをテトラヒドロフラン1.5リットルに溶解後、p-メトキシフェノール0.3gとジエタノールアミン7.5gを混合し粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の樹脂組成物を得た。このポリマーA-2は、重量平均分子量(Mw)20,000であった。得られたポリマーA-2の構造は、上述の式(A-2)で表される構造であると推定される。
【0351】
<実施例14>
実施例1と同様の手順で粗ポリマーを合成した。粗ポリマーを380mlのテトラヒドロフランに溶解させ、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.1gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の樹脂組成物を得た。
【0352】
<実施例15>
実施例1と同様の手順で粗ポリマーを合成した。粗ポリマーを500mlのN-メチルピロリドンに溶解させ、p-メトキシフェノール0.05gを混合した。得られた溶液を2リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の比較用組成物を得た。
【0353】
<比較例1>
実施例1と同様の手順で粗ポリマーを合成した。粗ポリマーを380mlのテトラヒドロフランに溶解させた。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の比較用組成物を得た。
【0354】
<比較例2>
実施例1と同様の手順で粗ポリマーを合成した。粗ポリマーを380mlのテトラヒドロフランに溶解させ、ハイドロキノン5.0gを混合した。得られた溶液を3リットルの水に加えてポリマーを沈殿させ、水-ポリマー混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーを再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥し、粉体状の比較用組成物を得た。
【0355】
(評価方法)
<感光性樹脂組成物の調製>
各実施例又は比較例において、下記記載の成分を混合し、均一な溶液として、感光性樹脂組成物(塗布液)を調製した。
【0356】
〔感光性樹脂組成物の組成〕
各実施例又は比較例において調製した樹脂組成物又は比較用組成物 32質量部
光ラジカル重合開始剤:IRGACURE OXE 01(BASF社製)を1.2質量部
ラジカル重合性化合物:下記化合物(括弧の添え字は繰り返し数を表す)を5.6質量部
【化63】
重合禁止剤 :p-ベンゾキノン(東京化成工業(株)製)を0.08質量部
マイグレーション抑制剤:下記化合物を0.12質量部
【化64】
金属接着性改良剤:下記化合物(Etはエチル基を表す)を0.6質量部
【化65】
塩基発生剤:下記化合物(Etはエチル基を表す)を0.4質量部
【化66】
溶剤:γ-ブチロラクトン(三和油化工業(株)製)45質量部とジメチルスルホキシド(富士フイルム和光純薬(株)製)15質量部
【0357】
<ろ過性の評価>
各感光性樹脂組成物を、細孔の幅が0.8μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを通して0.3MPaの圧力で90分間加圧ろ過した。ろ過終了時の組成物質量と測定時間からろ過速度(min/g)を求め、下記評価基準に従い評価した。評価結果は、表の「ろ過性」の欄に記載した。数値が小さいほどろ過性が好ましい結果であるといえる。
〔評価基準〕
A:4.0min/g以上5.0min/g未満であった。
B:5.0min/g以上6.0min/g未満であった。
C:6.0min/g以上7.0min/g未満であった。
D:7.0min/g以上8.0min/g未満であった。
E:8.0min/g以上であった。
【0358】
<パターン形成性の評価>
各感光性樹脂組成物を、細孔の幅が0.8μmのフィルターを通して0.3MPaの圧力で加圧ろ過した後、シリコンウェハ上にスピンコート法により塗布した。感光性樹脂組成物層が塗布されたシリコンウェハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウェハ上に10μmの均一な膜厚の感光性樹脂組成物層を形成した。シリコンウェハ上の感光性樹脂組成物層を、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて露光した。露光はi線で行い、波長365nmにおいて、200、300、400、500、600、700、800mJ/cm2の各露光エネルギーで、5μmから25μmまで1μm刻みの1:1ラインアンドスペースパターンが形成されたフォトマスクを使用して、露光を行って樹脂層を得た。
上記で得られた樹脂層を、シクロペンタノンで60秒間ネガ型現像し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)を用いてリンスした。上記7種それぞれの露光エネルギーにおいて、上記パターン状の樹脂層の1:1ラインアンドスペースパターンが形成される最小の線幅を走査型電子顕微鏡を用いて測定した。上記7つの最小の線幅のうち、最も小さい線幅を指標値とした。
上記指標値を用いて、下記評価基準に従って評価を行い、評価結果を表の「パターン形成性」の欄に記載した。
得られた樹脂層(パターン)の線幅が小さければ小さいほど光照射部と光非照射部との現像液に対する溶解性の差が大きくなっていることを表し、好ましい結果となる。測定限界は5μmである。
〔評価基準〕
A:上記指標値が5μm以上6μm未満であった。
B:上記指標値が6μm以上7.5μm未満であった。
C:上記指標値が7.5μm以上10μm未満であった。
D:上記指標値が10μmを超えた。
【0359】
【0360】
以上の結果から、本発明の樹脂組成物は、溶剤に再溶解した場合のろ過性、及び、再溶解によりパターン形成用組成物を調製した場合のパターン形成性に優れることがわかる。
比較例1に係る比較用組成物は、酸化防止剤を含まない。このような組成物においては、溶剤に溶解した後にろ過性が低下することがわかる。
比較例2に係る比較用組成物は、酸化防止剤を特定樹脂の含有量に対して、10,000質量ppmを超える量で含む。このような組成物を用いてパターン形成用組成物(感光性樹脂組成物)を調製した場合においては、パターン形成性が低下することがわかる。
【0361】
<実施例101>
実施例1において使用した感光性樹脂組成物を、表面に銅薄層が形成された樹脂基材の銅薄層の表面にスピンコート法により層状に適用して、100℃で4分間乾燥し、膜厚20μmの硬化性樹脂組成物層を形成した後、ステッパー((株)ニコン製、NSR1505 i6)を用いて露光した。露光はマスク(パターンが1:1ラインアンドスペースであり、線幅が10μmであるバイナリマスク)を介して、波長365nmで行った。露光後、100℃で4分間加熱した。上記加熱後、シクロヘキサノンで2分間現像し、PGMEAで30秒間リンスし、層のパターンを得た。
次いで、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、230℃に達した後、230℃で3時間維持して、再配線層用層間絶縁膜を形成した。この再配線層用層間絶縁膜は、絶縁性に優れていた。
また、これらの再配線層用層間絶縁膜を使用して半導体デバイスを製造したところ、問題なく動作することを確認した。