(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】自動分析装置およびその傾斜調整方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01N35/00 F
(21)【出願番号】P 2023536639
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2022022317
(87)【国際公開番号】W WO2023002761
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2021119196
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂田 健士郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】嘉部 好洋
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/053858(WO,A1)
【文献】特開平03-285170(JP,A)
【文献】特開2007-248413(JP,A)
【文献】中国実用新案第213161338(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111701731(CN,A)
【文献】特開2016-183913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00~35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のフレーム上面及びフレーム底面を備えるフレームと、
前記フレーム底面に設置され、前記フレームを支持する複数のアジャスタフットと、
前記フレーム上面によって支持される機構ベースと、
前記機構ベース上に配置され、試薬とサンプルとの混合液を収容する反応容器が配置される反応槽と、
前記機構ベース上に配置される傾斜センサと、
前記傾斜センサからのセンシングデータに基づく前記機構ベースの傾斜量が許容量を超えるかどうかを判定する解析部と、
前記傾斜センサからのセンシングデータと当該センシングデータの取得時とを蓄積するデータ格納部とを有し、
前記傾斜センサは、上面視において、前記アジャスタフットと重ならない位置に配置され、
前記解析部は、前記データ格納部に蓄積された前記傾斜センサからのセンシングデータの時系列データに基づき、前記機構ベースの将来の傾斜量を予測する自動分析装置。
【請求項5】
矩形状のフレーム上面及びフレーム底面を備えるフレームと、
前記フレーム底面に設置され、前記フレームを支持する複数のアジャスタフットと、
前記フレーム上面によって支持される機構ベースと、
前記機構ベース上に配置され、試薬とサンプルとの混合液を収容する反応容器が配置される反応槽と、
前記機構ベース上に配置される傾斜センサと、
前記傾斜センサからのセンシングデータに基づく前記機構ベースの傾斜量が許容量を超えるかどうかを判定する解析部とを有し、
前記傾斜センサは、上面視において、前記アジャスタフットと重ならない位置に配置され、
前記傾斜センサは給電と通信とを行う外部端子を備える自動分析装置。
【請求項6】
矩形状のフレーム上面及びフレーム底面を備えるフレームと、
前記フレーム底面に設置され、前記フレームを支持する複数のアジャスタフットと、
前記フレーム上面によって支持される機構ベースと、
前記機構ベース上に配置され、試薬とサンプルとの混合液を収容する反応容器が配置される反応槽と、
前記機構ベース上に配置される傾斜センサと、
前記傾斜センサからのセンシングデータに基づく前記機構ベースの傾斜量が許容量を超えるかどうかを判定する解析部と、
前記反応槽の水位を検知する水位センサと、
前記反応容器内の混合液を攪拌する攪拌機構とを有し、
前記傾斜センサは、上面視において、前記アジャスタフットと重ならない位置に配置され、
前記許容量は、前記水位センサによって検知した前記反応槽の水位が、前記反応槽及び前記攪拌機構が適正に動作可能な範囲として決定されている自動分析装置。
【請求項7】
矩形状のフレーム上面及びフレーム底面を備えるフレームと、前記フレーム底面に設置され、前記フレームを支持する複数のアジャスタフットと、前記フレーム上面によって支持される機構ベースと、前記機構ベース上に配置され、試薬とサンプルとの混合液を収容する反応容器が配置される反応槽と、前記機構ベース上の、上面視において前記アジャスタフットと重ならない位置に配置される2軸の傾斜センサとを備える自動分析装置の高さ調整方法であって、
前記自動分析装置に電源を投入することなく、前記傾斜センサの外部端子から前記傾斜センサに電源を供給し、
前記傾斜センサからのセンシングデータを取得し、前記傾斜センサの前記2軸の傾斜量の正負の組み合わせに基づき、高さを調整する前記アジャスタフットを選択する自動分析装置の傾斜調整方法。
【請求項8】
請求項7において、
あらかじめ前記アジャスタフットの高さを変更することによる前記傾斜センサの前記2軸の傾斜量の変化量を記憶しておき、
前記傾斜センサの前記2軸の傾斜量を相殺するように、選択された前記アジャスタフットの高さの調整量を算出する自動分析装置の傾斜調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置およびその傾斜調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液、尿などのサンプル中の測定対象成分に応じて、分注する試薬を決定し、一定温度に保たれた液体を収容する反応槽内に配置された反応容器に、分注機構を用いてサンプルおよび試薬を分注する。サンプルおよび試薬は、反応容器内で攪拌子を用いて攪拌され、反応液となる。比色分析では、例えば、反応液に複数波長の光を透過させ、その吸光度変化を測定することで、測定対象成分の濃度を定性・定量分析を行う。
【0003】
反応槽には液面を検知することのできる水位センサが配置されており、水位センサの検知有無に応じて水を供給するか排水するかの判定を行うことで水位を一定に保っている。しかしながら、反応槽が傾斜すると、水位センサで検知している位置とそうでない位置とで水位に差が出てしまう。このため、装置最下部に配置されている4つのアジャスタフットを調整し、反応槽の水平出しが行われている。
【0004】
反応槽の水平出しでは、アジャスタフットの調整と水準器などの計測器による傾き計測を複数個所で繰り返し行うことが必要であるため、作業に時間と手間がかかってしまう。
【0005】
このため、特許文献1には、分注プローブの備える液面検出手段を利用し、反応槽の予め定められた少なくとも3つの位置で分注プローブを用いて液面を検知し、反応槽の水平出しを行うための高さ調整量を算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では水準器などの計測器を用いる代わりに、分注機構を用いて反応槽の傾きを検出しているため、反応槽の傾きを検出している期間においては分析動作を行うことができないといった制約が生じる。
【0008】
本発明では、分析を実行する各機構を支える機構ベース上に傾斜センサを設置し、分析動作に干渉することなく、短時間で自動的に反応槽の傾斜確認可能な自動分析装置およびその傾き調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の態様である自動分析装置は、矩形状のフレーム上面及びフレーム底面を備えるフレームと、フレーム底面に設置され、フレームを支持する複数のアジャスタフットと、フレーム上面によって支持される機構ベースと、機構ベース上に配置され、試薬とサンプルとの混合液を収容する反応容器が配置される反応槽と、機構ベース上に配置される傾斜センサと、傾斜センサからのセンシングデータに基づく機構ベースの傾斜量が許容量を超えるかどうかを判定する解析部とを有し、傾斜センサは、上面視において、アジャスタフットと重ならない位置に配置される。
【発明の効果】
【0010】
分析動作に影響を与えることなく、自動分析装置の傾斜量を継続的にモニタすることが可能になる。上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1B】機構ベースの支持構造の一例を示す図である。
【
図1C】機構ベース上面に配置された傾斜センサの例である。
【
図2A】傾斜した自動分析装置の様子を示す図である。
【
図3A】傾斜した自動分析装置の様子を示す図である。
【
図4A】水平状態の自動分析装置の様子を示す図である。
【
図6】センシングデータの時系列データの例である。
【
図8】傾斜量の時間依存性を示す曲線近似の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は一例に過ぎず、その構成要素、要素ステップは、特に明示した、あるいは原理的に明らかであるような場合を除いて必須のものではない。
【0013】
図1Aに自動分析装置の全体構成例を示す。自動分析装置は、主要な構成として、試料搬送機構19、試薬ボトル12が搭載される試薬ディスク11、反応容器2が搭載される反応ディスク1、試料分注機構13, 14、試薬分注機構7, 8, 9, 10、攪拌機構5, 6、分光光度計4、洗浄機構3、洗浄槽15, 16, 30, 31, 32, 33、試薬用ポンプ20、試料用ポンプ21、洗浄用ポンプ22を有し、アジャスタフット37により支えられる機構ベース35の上部または下部へ配置されている。なお、
図1Aにおいてアジャスタフット37が機構ベース35に直接取り付けられているように表示しているのは作図の都合であり、機構ベース35の支持構造については後述する。また、自動分析装置各部を制御する制御部41、各種データを蓄えるデータ格納部42、外部より必要なデータをデータ格納部42に入力する入力部43、分光光度計4で得られる光量から吸光度を算出する測定部44、吸光度から成分量を割り出す解析部45、解析した成分量データなどを外部に表示、出力する出力部46を備えている。なお、解析部45は、後述するように、自動分析装置の傾斜状態の判定等も実行する。
【0014】
試料搬送機構19は、分析対象の試料(液体)を収容した試料容器17を1つ以上搭載可能なラック(搬送部材)18を搬送する。試薬ディスク11上には、試料の分析に用いる試薬(液体)を収容する複数の試薬ボトル12が周方向に並べて配置されている。反応ディスク1上には、試料と試薬とを混合して反応させる複数の反応容器2が反応槽36中に周方向に並べて配置されている。反応容器2内の反応液は、反応槽36内に満たされた液体によって一定温度に保たれる。また、反応槽36の水位は、水位センサ38により一定に保たれている。
【0015】
試料分注機構13, 14はそれぞれ、試料搬送機構19により試料分注位置に搬送された試料容器17から反応容器2に試料を分注する。試薬分注機構7, 8, 9, 10はそれぞれ、試薬ボトル12から反応容器2に試薬を分注する。攪拌機構5, 6は、反応容器2に分注された試料と試薬との混合液(反応液)を攪拌する。分光光度計4は、図示しない光源から反応容器2の反応液を介して得られる透過光あるいは散乱光を受光する。洗浄機構3は、使用済みの反応容器2を洗浄する。試料ノズル洗浄槽15, 16はそれぞれ、試料分注機構13, 14の稼動範囲に配置されており、試料ノズル13a, 14aを洗浄水により洗浄する。同様に、試薬ノズル洗浄槽30, 31, 32, 33はそれぞれ、試薬分注機構7, 8, 9, 10の稼動範囲に配置されており、試薬ノズル7a, 8a, 9a, 10aを洗浄水により洗浄する。加えて、試薬分注機構7,8の間には、機構ベース35の傾斜量を測定する傾斜センサ60が配置されている。
【0016】
図1Bに自動分析装置における機構ベース35の支持構造の一例を示す。自動分析装置の筐体のフレーム70は、底板(フレーム底面)72a及び上板(フレーム上面)72bは柱71a, bに固定されている。XY平面に平行な底板72a及び上板72b、Z方向に伸びる柱71による構造体であるフレーム70によって区画される空間74には、上述したポンプ20, 21, 22の他、給水機構、排水機構や電源、制御部41として機能する計算機などの機構が収容される。上述した4つのアジャスタフット37は、底板72aに設けられている。機構ベース35は上板72b上に設けられた支柱73によって支えられている。支柱73の位置は、機構ベース35上に配置される各機構の配置に影響を受けるものの、機構ベース35及び機構ベース35上に配置される機構の重量ができるだけ均等に上板72bに分散されるように配置される。
【0017】
試料の成分量の分析は、次のような手順で行われる。まず、試料搬送機構19によって反応ディスク1近くに搬送されたラック18上に載置された試料容器17内の試料を、試料分注機構13 (14) の試料ノズル13a (14a) により反応ディスク1上の反応容器2に分注する。次に、分析に使用する試薬を試薬ディスク11上の試薬ボトル12から、試薬分注機構7 (8, 9, 10) の試薬ノズル7a (8a, 9a, 10a) により先に試料を分注した反応容器2に対して分注する。続いて、攪拌機構5 (6) で反応容器2内の試料と試薬との混合液を攪拌する。その後、測定部44は、光源から発生させた光を攪拌後の混合液の入った反応容器2に照射し、透過光あるいは散乱光の光度を分光光度計4により測定し、得られた吸光度データをデータ格納部42に蓄積する。解析部45は、蓄積された吸光度データを検量線データおよびランベルト・ベアーの法則に基づき解析する。この解析により、試料に含まれる成分量を分析できる。自動分析装置各部の制御や分析に必要なデータは、入力部43からデータ格納部42に入力され、また、各種データや解析結果は、出力部46から表示及び/または出力される。
【0018】
図1Aの構成は自動分析装置が生化学分析を行う場合の構成例であり、自動分析装置が実行する解析内容によって測定機構は異なる。自動分析装置で用いられる測定方法としては、試料中の分析対象成分と反応することによって反応液の色が変わるような試薬を用いる分析方法(比色分析)や、試料中の分析対象成分と直接あるいは間接的に特異的に結合する物質に標識体を付加した試薬を用い、標識体をカウントする分析方法(免疫分析)などが知られているが、いずれも試料容器に収容された試料、あるいは試薬ボトルに収容された試薬を分注機構で反応容器に分注し、混合させる工程を含む。分注工程を含む分析を実行可能な自動分析装置においては、本実施例が適用可能である。
【0019】
図2Aに、自動分析装置が設置される床の沈み込み、もしくはアジャスタフットの調整不良により、装置全体の水平が保たれていない(向かって右側が下がっている)場合の機構ベース35と機構ベース35に搭載されている傾斜センサ60、試薬分注機構7, 8、反応ディスク1、試薬ディスク11、反応槽36の状態を示す。
【0020】
この場合、
図2Bに示す反応槽36は右下がりに傾いている一方で、反応槽内の液体は水平(XY面に平行)を保つ。
図2Bには、反応槽36の傾きの影響が最も強く表れる例として、水位センサ38が反応槽36の右側に、攪拌機構5が水位センサ38と対向して反応槽36の左側に配置されている配置例を示している。水位センサ38は長さの異なる検知部38aを備え、反応槽36の水位を検知する。この例では反応槽36の水位を2段階で検知できる。攪拌機構5は攪拌素子5aと反射板5bとを備え、攪拌素子5aを超音波発振させることにより超音波を発生させ、攪拌素子5aと反射板5bとの間に挟まれるように位置する反応容器2(図示せず)内の反応液を攪拌する。反応槽36が右下がりに傾いていることにより、水位センサ38が反応槽36の水位が適切であると検知した場合であっても、攪拌素子5aが反応槽36の水面から一部露出してことが生じ得る。攪拌素子5aは水中で振動させるように設計されているため、この場合、攪拌素子5aを抵抗の小さい空気中で振動させると過剰に振動し、攪拌機構5の故障原因となる。
【0021】
これに対して、
図3Aは、装置全体が向かって左側に下がっている場合の機構ベース35と機構ベース35に搭載されている傾斜センサ60、試薬分注機構7, 8、反応ディスク1、試薬ディスク11、反応槽36の状態を示す。この場合、
図3Bに示されるように反応槽36は左下がりに傾いている一方で、反応槽内の液体は水平(XY面に平行)を保つ。そのため、水位センサ38が反応槽36の水位が適切であると検知した場合であっても、反応槽36から周囲に液体があふれ、装置故障の原因となる。
【0022】
図4Aにアジャスタフット37a, 37b, 37c, 37dが正常な高さに調整され、装置全体が水平に保たれている場合の機構ベース35と機構ベース35に搭載されている傾斜センサ60、試薬分注機構7, 8、反応ディスク1、試薬ディスク11、反応槽36の状態を示す。この場合、
図4Bに示されるように、反応槽36および反応槽36内の液体は水平に保たれており、水位センサ38により、攪拌素子5a全体が正しく液中に位置する。
【0023】
図1Cに機構ベース35上面に配置された傾斜センサ60を示す。傾斜センサ60は小型、高感度であることが望ましく、この観点からはMEMSセンサが好適である。傾斜センサの被測定物が傾くと重力加速度によって2つの加速度センサの出力に違いが生じる。傾斜センサは加速度センサの差分から被測定物の傾斜を検出する。傾斜センサ60はX軸方向とY軸方向の2軸の傾き検出が可能な傾斜センサであって、軸方向に向かって時計回りを正方向とし、軸方向に向かって反時計回りを負方向とする。例えば、
図2Aの例では傾斜センサ60はY軸周り正方向への傾きを検知し、
図3Aの例では傾斜センサ60はY軸周り負方向への傾きを検知し、
図4Aの例では傾斜センサ60はX軸、Y軸ともに傾きを検知しない。
【0024】
図1Cには、上面視においてアジャスタフット37a~dと重なる位置77a~dを破線の丸で示している。自動分析装置は、アジャスタフット37で床面に接しているため、機構ベース35の傾きは位置77a~dでの高さで決定されることになる。一方、機構ベース35の位置77a~dでの高さにばらつきがあれば、機構ベース35は歪みを伴いながら傾斜する。上面視において、アジャスタフット37a~dと重なる位置77a~dでは機構ベース35の歪みの影響が支配的となり、傾斜センサ60を配置しても機構ベース35の傾斜を検知することができない。このため、傾斜センサ60は、上面視において、アジャスタフット37a~dと重ならない位置に配置する。さらに、フレーム上面72b及びフレーム底面72aは矩形状であり、アジャスタフット37a~dは少なくともフレーム底面72aの四隅に配置される。傾斜を検知する感度の観点から、傾斜センサ60は、上面視において、フレーム底面72aの四隅に配置されたアジャスタフット37a~dよりも内側に配置されることが望ましい。
【0025】
また、傾斜センサ60は自動分析装置に電源が供給されていない状態においても装置の傾きの検出が可能になるように、外部装置と接続され、給電と通信とが可能な外部端子61を備える。これにより、外部装置からの電源供給及び制御により傾斜センサ60はセンサ動作する。アジャスタフット37の調整を行う場合には、装置電源を遮断した状態で行うことになるが、装置電源を遮断した状態においても、傾斜センサ60により装置の傾きを確認することができる。
【0026】
図5に傾斜センサ60による傾斜チェックフローの一例を示す。傾斜チェックは制御部41が、例えばユーザが分析動作を開始した際の準備動作の一部として実行する、あるいは分析中においてバックグラウンドで自動的に実行する(S501)。傾斜センサから傾斜量を示すセンシングデータとその取得時をデータ格納部42へ格納する(S502)。続いて、出力部46に傾斜量と取得時とを表示し、ユーザから確認可能とする(S503)。解析部45は、傾斜量があらかじめ決められた許容量を超えているかどうかを判定する(S504)。許容量は、水位センサ38によって検知した反応槽36の水位が、反応槽36及び攪拌機構5が適正に動作可能な範囲としてあらかじめ決定されている。傾斜量が許容量を超えている場合はアラームを出力し、ユーザへ傾斜の異常発生を通知する(S507)。さらに、サービス部門へ連絡し、メンテナンス作業を促す(S508)。一方、傾斜量が許容量を超えていない場合には、解析部45は、更新されたデータ格納部42の時系列データに基づき、傾斜量予測の計算を行い(S505)、次回メンテナンス予定日までに許容量を超えるかどうかを判定する(S506)。次回メンテナンス予定日までに許容量を超えると判定された場合は、制御部41は予測した日程をサービス部門へ自動的に報告し、メンテナンス作業を促す(S508)。次回メンテナンス予定日までに許容量を超えないと判定された場合には、傾斜チェックを終了する(S509)。
【0027】
図5の例では、制御部41がネットワークを介して、サービス部門に接続されている場合の例を示しているが、そうでない場合には、ステップS508に代えて、出力部46にサービス部門への連絡をユーザに促すアラームを表示させるようにしてもよい。
【0028】
図6にデータ格納部42に格納される傾斜センサ60のセンシングデータの時系列データの例を示す。時系列データ80は、取得時81、項目82、判定結果83、センシングデータ84, 85を含んでいる。センシングデータ84, 85は、傾斜センサ60から出力される2軸の傾斜量を示しており、判定結果83にはステップS504における許容量との比較結果を格納している。取得時81は日付までとしているが、取得時刻まで含めてもよい。傾斜チェックフローにより、自動的に最新の装置の傾斜量がモニタされ、傾斜量が許容範囲内にあるかどうかの判定がなされることにより、装置が正しい水平度を保ちながら分析を行っていることを担保することができる。
【0029】
また、本チェックフローでは、現時点で許容量を超えていない場合であっても、傾斜量の解析を行い、許容量を超えるタイミングを予測する(S505)。
図7に、解析部45が、装置の傾斜量が許容量を超過する日を予測する超過日予測フローの一例を示す。解析部45は、今回取得した傾斜センサ60からのセンサデータと前回取得した傾斜センサ60からのセンサデータとを比較し、装置の傾斜量が変化しているかどうかを確認する(S701)。傾斜量が変化していなければそのまま終了する(S509)。傾斜量が変化している場合には、解析部45は傾斜の変化量を計算し、データ格納部42へ格納する(S702)。続いてデータ格納部42に既に傾斜の変化量が格納されているか判定を行う(S703)。傾斜の変化量が格納されるのが初めてである場合にはそのまま終了する(S509)。既に傾斜の変化量が格納されている場合には、解析部45は、前回の傾斜の変化量と今回の傾斜の変化量との差分を計算し、結果をデータ格納部42へ格納する(S704)。データ格納部42に格納されている、最初に傾斜の発生した時期、そのときの傾斜の変化量、その後の傾斜の変化量の差分といった情報に基づき、解析部45では、
図8のように曲線近似を行って、傾斜量の時間依存性を求める(S705)。近似曲線を将来に延長させて、予測傾斜量が許容量を上回るタイミングを算出し、次回メンテナンス予定日までに許容量を超えるかどうか判定を行う(S506)。
図8の例では予測傾斜量が許容量を上回るタイミングとなるのは40日目であるので、40日目と次回メンテナンス予定日との前後を比較する。このように、反応槽36の水平出しが必要になる時期を予測できるため、反応槽36に不具合が発生する前に水平出しを行い、問題の発生を事前に回避することができる。
【0030】
許容量を超えた傾斜が発生している場合には、アジャスタフットの高さを調整することで、傾斜を修正する必要がある。
図9に自動分析装置の傾斜調整フローを示す。傾斜調整フローはアジャスタフットの操作を除き、メンテナンス作業者の保持する端末が実行する。メンテナンス作業者は、端末と傾斜センサ60の外部端子61とを接続し、タッチパネルなどのユーザインターフェースを通して、メンテナンス開始の指令を行う(S901)。アジャスタフットの高さ調整を行うため、自動分析装置への電源は投入しない状態でメンテナンスは実施される。傾斜センサ60からセンシングデータを取得し、端末内のメモリに保存するとともに、メンテナンス作業者が確認できるよう傾斜量を端末のモニタに表示する。(S902)。端末は、傾斜センサ60が検知した傾斜量が許容量を超えているかを判断し(S903)、超えている場合には、装置の傾斜調整を行う。傾斜調整方法について
図10を参照しながら説明する。
【0031】
図10には、傾斜センサ60を中心に2軸(X軸、Y軸)によって機構ベース35を4つの領域に区分している。上面視において、左下の区画にアジャスタフット37aが、右下の区画にアジャスタフット37bが、左上の区画にアジャスタフット37cが、右上の区画にアジャスタフット37dが、位置している。
【0032】
まず、傾斜センサ60のX軸の傾き、Y軸の傾きの正負の符号の組み合わせにより、調整すべきアジャスタフットを特定する(S904)。
図10の例では、機構ベース35が左下下がりであれば、2軸(x,y)の傾きの符号は(+,-)となる。同様に、右下下がりであれば、(+、+)、左上下がりであれば(-,-)、右上下がりであれば(-,+)となる。したがって、傾きの符号の組み合わせに応じて、調整する(この場合は、高さを高くする)アジャスタフットを選択する。
【0033】
続いて、選択したアジャスタフットの調整量を算出する(S905)。例えば、端末はあらかじめ各アジャスタフットを調整することによる、傾斜センサ60のセンシングデータの変化量をあらかじめ記憶しておく。例えば、調整テーブル91~94は、アジャスタフットを1mm上昇させるごとのX軸、Y軸それぞれの傾きの変化量を格納している。調整対象のアジャスタフットの調整テーブルを参照し、ステップS902で取得した傾斜センサの2軸の傾斜量を相殺するように、当該アジャスタフットの高さの調整量を算出し、端末のモニタに表示する。
【0034】
メンテナンス作業者は表示結果に従い、アジャスタフットの高さ調整作業を実施する(S906)。作業後、再度ステップS902へ戻りフローを繰り返す。なおステップS903において、許容量以下となれば、傾斜調整フローを終了する(S907)。
【符号の説明】
【0035】
1…反応ディスク、2…反応容器、3…洗浄機構、4…分光光度計、5, 6…攪拌機構、5a…攪拌素子、5b…反射板、7, 8, 9, 10…試薬分注機構、7a, 8a, 9a, 10a…試薬ノズル、11…試薬ディスク、12…試薬ボトル、13, 14…試料分注機構、13a, 14a…試料ノズル、15, 16…試料ノズル洗浄槽、17…試料容器、18…ラック(搬送部材)、19…試料搬送機構、20…試薬用ポンプ、21…試料用ポンプ、22…洗浄用ポンプ、30, 31, 32, 33…試薬ノズル洗浄槽、35…機構ベース、36…反応槽、37a, 37b, 37c, 37d…アジャスタフット、38…水位センサ、38a…検知部、41…制御部、42…データ格納部、43…入力部、44…測定部、45…解析部、46…出力部、60…傾斜センサ、70…フレーム、71…柱、72a…底板(フレーム底面)、72b…上板(フレーム上面)、73…支柱、74…空間、77…位置、80…時系列データ、81…取得時、82…項目、83…判定結果、84, 85…センシングデータ、91, 92, 93, 94…調整テーブル。