(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】離型用油脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20241129BHJP
A21D 8/08 20060101ALI20241129BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20241129BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20241129BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20241129BHJP
【FI】
A23D9/00 508
A21D8/08
A23L15/00 Z
A23L7/10 E
A23L7/109 Z
(21)【出願番号】P 2021536966
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2020028126
(87)【国際公開番号】W WO2021020216
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019140310
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 正博
(72)【発明者】
【氏名】石田 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 利佳
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-081475(JP,A)
【文献】特開2018-172459(JP,A)
【文献】特開2000-279092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂に以下の調製油を0.5質量%以上100質量%以下含有
させることを含む、離型用油脂組成物の製造方法であって、
前記調製油は、油糧原料から得られる粗原油の精製工程において、脱酸工程を省き、順に、
(1)脱ガム工程、
(2)実施または未実施の脱色工程、および
(3)脱臭工程
を経たものであ
り、
前記調製油のホスファチジルコリンが0質量ppm以上5質量ppm以下である、前記離型用油脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記調製油のリン分が30質量ppm以上300質量ppm以下である、請求項1に記載の離型用油脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記調製油の前記(2)の工程後の、イソオクタンを対照とした波長660nmの吸光度から波長750nmの吸光度を引いた吸光度差が、0.005以上3以下であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の離型用油脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記油糧原料は、大豆、菜種、及びパーム果肉から選ばれる1種または2種以上である、請求項1
~3のいずれかに記載の離型用油脂組成物の製造方法。
【請求項5】
食品の製造に際し、請求項1
~4のいずれかに記載の製造方法で得られた離型用油脂組成物を食品の離型剤として使用することを含む、食品の製造方法。
【請求項6】
前記食品が、米飯、麺類、卵焼きまたはパン類である、請求項
5に記載の食品の製造方法。
【請求項7】
食品の製造に際し、請求項1
~4のいずれかに記載の製造方法で得られた離型用油脂組成物を食品の離型剤として使用することを特徴とする、食品製造時の作業性向上の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型用油脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば加熱調理の際、食品素材と、調理器具、焼き型、天板等との付着を防止する目的で離型油が用いられている。また、茹でた麺のバケットやネットコンベヤーからの剥がれ、麺線同士のほぐれ性などを改善するのも離型油の一態様である。
離型油としては、合成添加物である乳化剤(特許文献1)や、天然添加物であるレシチンを食用油脂に添加したもの(特許文献2)が一般的である。しかしながら近年の健康志向の高まりから、離型油だけでなく食品全般に添加物不使用の製品へのニーズが増している。さらに、乳化剤やレシチンは添加量によっては好ましくない独特の異味、異臭を呈する場合があった。
【0003】
また、精製工程を特定の条件とすることで得られる中間的油脂を用いる先行技術として以下のものがある。特許文献3では、精製された食用油脂に圧搾油および/または抽出油、脱ガム油を添加することにより、揚げ物用油脂組成物の加熱時に起こる着色および加熱臭を長期にわたって抑制することができるとされる。
【0004】
しかしながら特許文献3の発明は中間的油脂を含む揚げ物用途の油脂組成物の加熱耐性に関するものであり、中間的油脂の離型効果については開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-170910号公報
【文献】特開2007-306840号公報
【文献】特開2009-050234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は離型効果に優れた離型用油脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、油糧原料から得られる粗原油の精製工程において、脱酸工程を省き、かつ所定の精製工程を経て得られる調製油を含む油脂組成物に離型効果があることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の離型用油脂組成物の製造方法、離型用油脂組成物を使用した食品の製造方法、離型用油脂組成物を使用した食品製造時の作業性向上の方法が提供される。
[1] 以下の調製油を0.5質量%以上100質量%以下含有する、離型用油脂組成物の製造方法であって、
前記調製油は、油糧原料から得られる粗原油の精製工程において、脱酸工程を省き、順に、
(1)脱ガム工程、
(2)実施または未実施の脱色工程、および
(3)脱臭工程
を経たものである、前記離型用油脂組成物の製造方法。
[2] 前記調製油のリン分が30質量ppm以上300質量ppm以下である、前記[1]項に記載の離型用油脂組成物の製造方法。
[3] 前記調製油のホスファチジルコリンが0質量ppm以上5質量ppm以下である、前記[1]または[2]項に記載の離型用油脂組成物の製造方法。
[4] 前記調製油の前記(2)の工程後の、イソオクタンを対照とした波長660nmの吸光度から波長750nmの吸光度を引いた吸光度差が、0.005以上1.5以下であることを特徴とする、前記[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の離型用油脂組成物の製造方法。
[5] 前記油糧原料は、大豆、菜種、及びパーム果肉から選ばれる少なくとも一種である、前記[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の離型用油脂組成物の製造方法。
[6] 食品の製造に際し、前記[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の離型用油脂組成物の製造方法で得られた離型用油脂組成物を食品の離型剤として使用することを含む、食品の製造方法。
[7] 前記食品が、米飯、麺類、卵焼きまたはパンである、前記[6]項に記載の食品の製造方法。
[8] 食品の製造に際し、前記[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の製造方法で得られた離型用油脂組成物を食品の離型剤として使用することを特徴とする、食品製造時の作業性向上の方法。
【0009】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の離型用油脂組成物の製造方法によれば、優れた離型効果を有する離型用油脂組成物を得ることができる。
【0011】
また食品の製造に際し、本発明の製造方法で得られた離型用油脂組成物を食品の離型剤として使用する作業性向上の方法によれば、食品の製造時の作業の労力軽減や時間短縮が可能となり、作業性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の離型用油脂組成物の製造方法、離型用油脂組成物を使用してなる食品の製造方法、離型用油脂組成物を使用する、作業性向上の方法の具体的な実施形態について説明する。
【0013】
ここで、本発明の離型用油脂組成物とは、加熱調理の際であれば、食品素材と、フライパン、鉄板、天板、焼き型等の調理器具との付着を防ぐ目的で、また、加熱調理時以外でも、食品と、バッドのような調理器具等や包装容器等との付着を防止する目的で食品の離型剤として使用される油脂組成物のことである。また、茹でた麺のバケットやネットコンベヤーからの剥がれ、麺のほぐれ性などを改善することも、本発明の離型用油脂組成物の一態様である。
【0014】
[1.離型用油脂組成物]
本発明の離型用油脂組成物は、以下の調製油を0.5質量%以上100質量%以下含有する。調製油は、油糧原料から得られる粗原油の精製工程において、脱酸工程を省き、順に、
(1)脱ガム工程、
(2)実施または未実施の脱色工程、および
(3)脱臭工程
を経たものである。以下、調製油についてさらに具体的に説明する。
【0015】
[1-1.調製油]
調製油を製造する際の、粗原油の油糧原料例としては、大豆、菜種、パーム果肉、コーン、オリーブ、ゴマ、紅花、ひまわり、綿実、米、落花生、パーム核、ヤシ、亜麻仁等が挙げられる。油糧原料は、大豆、菜種、及びパーム果肉から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、菜種及び大豆から選ばれる1種又は2種がより好ましく、菜種がさらに好ましい。
【0016】
上記粗原油は、上記油糧原料を圧搾抽出および/または溶剤抽出にかけることにより得られる。圧搾抽出は、油糧原料に高圧を加えて細胞中の油分を搾り取ることにより行うものである。圧搾抽出は、ゴマのような比較的油分の高い油糧原料に向いている。溶剤抽出は、油糧原料を圧扁もしくは圧搾抽出後の残渣に溶剤を接触させ、油分を溶剤溶液として抽出し、得られる溶液から溶剤を留去して油分を得ることにより行う。溶剤抽出は、大豆のような油分の少ない油糧原料に向いている。溶剤には、ヘキサン等の有機溶剤が使用される。
【0017】
(1)の脱ガム工程とは、油分中に含まれるリン脂質を主成分とするガム質を水和除去する工程である。具体的には、粗原油に水蒸気又は水を加えて撹拌し、ガム質を水和して水層へ移した後、該水層を分離除去して脱ガム油を得る。本実施形態における調製油は脱ガム工程を経ることが必須である。調製油における脱ガム工程の処理条件は、一般的な精製油脂の製造工程に用いられる条件を採用することが可能であるが、例えば、以下の(i)乃至(iv)を満たす処理条件を採用することが好ましい。
(i) 水の使用量:粗原油に対して1質量%以上5質量%以下、好ましくは1.5質量%以上3質量%以下
(ii) 脱ガム助剤:必要に応じて用いることが可能であり、シュウ酸、クエン酸及びリン酸から選ばれる1種又は2種以上の酸の水溶液が好ましい。
(iii) 脱ガム温度:30℃以上95℃以下、好ましくは35℃以上60℃以下
(iv) 撹拌時間:0秒超60分以下が好ましく、ラインミキサーを用いる場合には、1秒以上10秒以下が好ましく、タンク内で撹拌する場合には、10分以上60分以下が好ましい。
【0018】
(2)の脱色工程とは、減圧下において油分中に含まれる色素を活性白土、活性炭等へ吸着させて除去する工程である。具体的には、脱ガム油に活性白土又は活性炭を接触させた後、減圧濾過などにより色素を吸着した活性白土又は活性炭を除去して脱色油を得る。本実施形態における調製油は脱色工程を実施してもしなくとも良いが、実施することが好ましい。脱色工程を実施する場合、調製油における脱色工程の処理条件は、一般的な精製油脂の製造工程に用いられる条件を採用することが可能であるが、例えば、以下の(v)乃至(vii)を満たす処理条件を採用することが好ましい。
(v) 活性白土の使用量:脱ガム油に対して0.05質量%以上5質量%以下、好ましくは0.05質量%以上4質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上2.5質量%以下
(vi) 脱色温度:60℃以上120℃以下、好ましくは65℃以上120℃以下、より好ましくは70℃以上115℃以下、さらに好ましくは70℃以上110℃以下
(vii) 脱色時間:5分以上120分以下、好ましくは5分以上80分以下、より好ましくは5分以上60分以下、さらに好ましくは10分以上50分以下
【0019】
(3)の脱臭工程とは、減圧下で水蒸気蒸留することによって油分中に含まれる有臭成分を除去する工程である。具体的には、脱色油に対して減圧下において水蒸気を吹き込んで有臭成分を除去して脱臭油を得る。本実施形態における調製油は脱臭工程を経ることが必須である。調製油における脱臭工程の処理条件は、一般的な精製油脂の製造工程に用いられる条件を採用することが可能であるが、例えば、以下の(viii)乃至(xi)を満たす処理条件を採用することが好ましい。
(viii) 水蒸気の使用量:脱色油に対して0.1質量%以上10質量%以下、好ましくは0.3質量%以上8質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上5質量%以下
(ix) 脱臭温度:180℃以上300℃以下、好ましくは190℃以上300℃以下、より好ましくは200℃以上300℃以下、さらに好ましくは220℃以上290℃以下、さらにより好ましくは240℃以上280℃以下
(x) 脱臭時間:10分以上240分以下、好ましくは20分以上240分以下、より好ましくは50分以上240分以下
(xi) 減圧度:150Pa以上1000Pa以下、好ましくは200Pa以上800Pa以下
なお、脱色工程を実施しなかった場合には脱色油を脱ガム油に読み替える。
【0020】
また、本実施形態における調製油は、脱酸工程を省くことが特徴である。ここで、脱酸工程とは、炭酸ナトリウムや苛性ソーダといったアルカリの水溶液で処理することにより油分中に含まれる遊離脂肪酸をセッケン分として除去する工程である。
【0021】
そして、本実施形態における調製油の精製工程は、脱ガム工程、実施または未実施の脱色工程、脱臭工程の順でおこなう。
【0022】
調製油中のリン分は、好ましくは30質量ppm以上300質量ppm以下、より好ましくは50質量ppm以上250質量ppm以下、さらに好ましくは70質量ppm以上250ppm以下、さらにより好ましくは100質量ppm以上220質量ppm以下である。
【0023】
調製油中のホスファチジルコリン(PC)は、離型性を高める観点から、好ましくは0質量ppm以上5質量ppm以下であり、より好ましくは0質量ppm以上3質量ppm以下、さらに好ましくは0質量ppm以上2質量ppm以下であり、さらにより好ましくは0質量ppm以上1質量ppm以下である。また、調製油中のホスファチジルエタノールアミン(PE)は、好ましくは0質量ppm以上1質量ppm以下であり、調製油中のホスファチジルイノシトール(PI)は、好ましくは0質量ppm以上1質量ppm以下である。ここで、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールはいずれも、リン脂質であり、動植物レシチンの主要成分である。
【0024】
調製油の(2)の工程後の、イソオクタンを対照とした波長660nmの吸光度から波長750nmの吸光度を引いた吸光度差(以下、単に吸光度差とも言う)は、離型性を高める観点から、0.005以上であることが好ましく、0.020以上であることがより好ましく、0.025以上であることがさらに好ましく、0.030以上であることがさらにより好ましい。同様の観点から、吸光度差の上限は、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.3以下であり、さらに好ましくは1.0以下であり、さらにより好ましくは0.5以下である。なお、(2)の工程を行わない場合には、上記「(2)の工程」を「(1)の工程」に読み替える。
【0025】
ここで、吸光度差の求め方について説明する。まず、対照用及び測定用石英セル(1cm)にイソオクタン(分光分析用試薬、和光純薬工業株式会社製)を入れ、紫外可視分光光度計(製品名:SHIMADZU UV-2450、株式会社島津製作所製)を用いて600~750nmの範囲でベースライン補正を行う。次に、測定用石英セルにサンプルを入れて吸光度を測定する。750nmにおける吸光度をゼロとしたときの660nmにおける吸光度を吸光度差として得る。
【0026】
[1-2.食用油脂]
離型用油脂組成物は調製油以外の食用油脂を含むことができる。ここでいう食用油脂とは、油糧原料から得られる粗原油に対して、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程及び脱臭工程を経たものである。各精製工程の精製方法及び精製条件は、特に限定するものではなく、一般的に行われる方法及び条件を適用することができる。
【0027】
食用油脂の例としては、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、綿実油、紅花油、亜麻仁油、ゴマ油、米油、落花生油、ヤシ油等の植物油脂、豚脂、牛脂、鶏脂、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド並びにこれらに分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂が挙げられる。これらの食用油脂は、一種単独でも二種以上の併用でもよい。食用油脂は、大豆油、菜種油、パーム系油脂、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、綿実油、米油及び紅花油から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、大豆油、菜種油及びパーム系油脂から選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。食用油脂は、大豆油、菜種油、パーム系油脂、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、綿実油、米油及び紅花油の含有量の合計が、60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、75質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。ここでいうパーム系油脂とは、パーム油およびパーム油の加工油脂を意味する。
【0028】
食用油脂は、好ましくは融点が10℃以下、より好ましくは0℃以下である。なお、本明細書で、融点は、上昇融点を意味する。上昇融点は、基準油脂分析試験法2.2.4.2-1996に則って測定することができる。
【0029】
本発明の離型用油脂組成物は、食品と調理器具や容器等との間の付着を抑制し、剥がれを改善する。このような例として、例えば炒め物等の加熱料理時の、食材と、フライパンや鉄板等との付着抑制、パン類や焼菓子類の加熱調理後の焼き型からの離脱などが挙げられる。
一方、本発明の離型用油脂組成物は、食品同士の好ましくない付着を抑制することもできる。このような例として、麺類の加熱調理後等の麺線のほぐしへの使用が挙げられる。
【0030】
炒め物等に使用する場合、本発明の離型用油脂組成物中の調製油の含有量は、0.5質量%以上100質量%以下であり、好ましくは3質量%以上90質量%以下、より好ましくは5質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは8質量%以上60質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以上55質量%以下である。
【0031】
パン類や焼菓子類の、焼き型からの離脱を目的として使用する場合、本発明の離型用油脂組成物中の調製油の含有量は、0.5質量%以上100質量%以下であり、好ましくは1質量%以上60質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上15質量%以下、さらにより好ましくは4質量%以上13質量%以下である。
【0032】
また、麺類のほぐし用に使用する場合、本発明の離型用油脂組成物中の調製油の含有量は、0.5質量%以上100質量%以下であり、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは35質量%以上65質量%以下、さらにより好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
【0033】
本発明の離型用油脂組成物が食用油脂を含む場合、離型用油脂組成物中の食用油脂と調製油の合計量は80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、85質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の離型用油脂組成物は、食用油脂及び調製油以外にも発明の効果を損ねない範囲において、例えば、シリコーン;酸化防止剤;香料;着色料等を含んでもよい。また、本発明の離型用油脂組成物は乳化剤を使用しなくても離型効果を有するが、必要に応じて乳化剤を併用しても良い。
【0035】
本発明の離型用油脂組成物が使用される食品は、特に制限されない。前記離型用油脂組成物が使用される食品の例として、(1)チャーハン・ソースご飯・ケチャップライス等の米飯類、(2)焼きそば・パスタ等の麺類、(3)肉類・野菜類・魚介類・卵類を用いた炒め物類・焼き物類、(4)たこ焼き、お好み焼き等の粉もの類、(5)食パン・コッペパン等のパン類およびスポンジケーキ・パウンドケーキ・クッキー等の焼菓子類、が挙げられ、(3)にはハンバーグ、餃子、卵焼きなどが含まれる。前記離型用油脂組成物が使用される食品は好ましくは米飯類、麺類、炒め物・焼き物類、パン類であり、より好ましくは米飯、麺類、卵焼き、パン類である。ここで、前記離型用油脂組成物は、パン類・焼菓子類においては焼成時の焼き型からの離脱用、焼きそば・パスタ等の麺類においては、麺線のほぐし用としても使用可能である。
【0036】
以上のような本発明の離型用油脂組成物を用いることにより、乳化剤を添加しなくても、優れた離型効果を得ることができる。
【0037】
[2.食品の製造方法]
本発明の食品の製造方法において、食品と調理器具や容器等との間の付着を抑制する場合には、前記調製油を所定量含む離型用油脂組成物を、食品の離型剤として調理器具や容器の表面および食品の表面のいずれか一方または両方に付着させることが重要である。また食品同士の好ましくない付着を抑制する場合には、麺ほぐし油のように、食品全体に付着させることが好ましい。なお、調製油、食品の説明は、上述の[1.離型用油脂組成物]で述べた内容と同じであるので省略する。
【0038】
本発明の食品の製造方法において、前記離型用油脂組成物を調理器具や容器の表面、又は食品の表面に付着させる方法は、特に限定されず、例えば、滴下、噴霧、浸漬、塗布等から、適宜選択して行うことができる。
前記離型用油脂組成物を使用して食品と調理器具や容器等との間の付着を抑制する場合、例えば炒め物等やパン類に使用する際には、前記離型用油脂組成物を1回付着させることで繰り返し使用することも可能であることから、前記離型用油脂組成物を調理器具や容器へ付着させることが好ましい。また、食品同士の付着を防ぐ場合、例えば麺類のほぐしに使用する際は、前記離型用油脂組成物を食品の表面へ付着させることが好ましい。
前記離型用油脂組成物を調理器具や容器の表面および食品の表面に付着させる場合、それらの全体又は部分的に付着させてもよいが、離型効果をより効果的に発揮する観点から、食品と調理器具や容器の接する面、あるいは食品と食品の接する面全体に付着させることが好ましい。
【0039】
前記離型用油脂組成物を食品と調理器具や容器等に付着させる量は、用途に応じて調整すればよいが、例えば炒め物等の場合、フライパン底面や鉄板100cm2あたり好ましくは0.02g以上5g以下であり、より好ましくは0.05g以上3g以下、さらに好ましくは0.1g以上2g以下である。前記離型用油脂組成物をパン類の焼き型等へ付着させる場合の量は、焼き型の内側の面積100cm2あたり好ましくは0.02g以上5g以下であり、より好ましくは0.04g以上2g以下、さらに好ましくは0.09g以上1.5g以下である。
さらに、食品同士の付着を防ぐ場合、例えば麺類のほぐしに使用する際に、前記離型用油脂組成物を付着させる量は、食品100gあたり0.3g以上6g以下であり、好ましくは0.5g以上4g以下、より好ましくは0.8g以上3g以下である。
【0040】
本発明の食品の製造方法において、食品と調理器具や容器等との間の付着を抑制する場合、離型用油脂組成物が適用される調理器具や容器等は特に限定されないが、調理器具例としてはフライパン、鉄板、天板、パン類の焼き型等が挙げられる。また、コンベアを用いる連続式焼成機等にも適用可能である。容器の例としてはバット、包装容器、保存容器等が挙げられる。本発明の離型用油脂組成物が適用される調理器具や容器等としては、好ましくは調理器具であり、より好ましくはフライパン、鉄板、天板、パン類の焼き型である。
【0041】
本発明の食品の製造方法において、離型用油脂組成物を調理器具や容器の表面および食品の表面に付着させるタイミングは特に限定されないが、食品と調理器具や容器等との間の付着を抑制する目的での使用の場合、例えば炒めものやパン類であれば、加熱調理の前に付着させることが好ましい。ただし、前記離型用油脂組成物を調理器具等に一度付着させた後、効果が持続している間は、必ずしも加熱調理のたびに付着させなくても良い。
また、食品同士の付着を防ぐ抑制する目的での使用の場合、例えば麺類のほぐしに使用する際などは、茹でまたは蒸し調理後に付着させることが好ましい。
【0042】
[3.作業性向上の方法]
本発明の作業性の向上方法は、食品の製造に際し、前記調製油を所定量含む離型用油脂組成物を使用することを特徴とする。調製油、食品の種類は上述の[1.離型用油脂組成物]で、食品や調理器具等への付着方法やタイミング等は上述の[2.食品の製造方法]で述べたのと同じであるので省略する。
【0043】
なお、本発明における作業性とは具体的には、炒め調理時の調理器具への食品の付着抑制;パン類などの食品の焼き型からの離脱の容易性;離型油の適用回数の低減(前記離型用油脂組成物は調理器具や容器への1回の付着による反復利用が可能であること);食品に付着させることによるほぐれ性向上、等が挙げられる。
【0044】
本発明の作業性向上方法においては、離型用油脂組成物を食品の離型剤として使用することで離型性が向上することにより、食品製造の際の食品の、調理器具や容器へのこびりつきによるロスや焦げ付きを抑制でき、さらにそれらの後処理にかかる時間を短縮でき、作業性が向上する。たとえばパン類においては、食品が型にこびりつくことによる損失を抑制でき、さらに型からスピーディに食品が離れることで、作業時間の短縮も期待できる。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を示すことにより、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
〔調製油の調製例1〕
菜種の粗原油を用い、表1に示す精製工程に従って調製油を調製した。脱ガム工程、脱色工程及び脱臭工程の詳細な条件は以下の通りである。ただし、脱色工程および脱臭工程では、通常条件と緩和な条件の2通りの条件で行った。
また、精製菜種油は通常の精製工程を経た市販品(製品名:さらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製、上昇融点0℃以下)を使用した。
(脱ガム工程の条件)
水の使用量:粗原油に対して2質量%
脱ガム助剤:添加なし
脱ガム温度:40℃
撹拌時間:3秒
(脱色工程の条件)
1.通常条件
活性白土の使用量:脱ガム油に対して2質量%
脱色温度:100℃
脱色時間:20分
2.緩和な条件
活性白土の使用量:脱ガム油に対して0.3質量%
脱色温度:100℃
脱色時間:20分
(脱臭工程の条件)
1.通常条件
水蒸気の使用量:脱色油に対して4質量%(脱色していない場合は脱ガム油)
脱臭温度:255℃
脱臭時間:120分
減圧度:4Torr(533Pa)
2.緩和な条件
水蒸気の使用量:脱色油に対して2質量%(脱色していない場合は脱ガム油)
脱臭温度:200℃
脱臭時間:45分
減圧度:4Torr(533Pa)
【0046】
【0047】
〔調製油の調製例2〕
大豆脱ガム油に、脱酸工程を行わず、通常の精製条件で脱色工程および脱臭工程を行い、調製油4を得た(リン分:198質量ppm、PE、PC、PIはいずれも検出されず)。
【0048】
上記精製菜種油及び調製油の吸光度、リン分、リン脂質は、以下の方法により測定した。表1に結果を合わせて示す。
【0049】
(吸光度差)
対照用石英セル(1cm)と測定用石英セル(1cm)にイソオクタン(分光分析用試薬、和光純薬工業株式会社製)を入れ、紫外可視分光光度計(製品名「SHIMAZU UV-2450」、株式会社島津製作所製)を用いて600~750nmの範囲でベースライン補正を行った。次に、測定用石英セルに測定する油脂を入れ吸光度を測定した。750nmにおける吸光度をゼロとしたときの660nmにおける吸光度を記載し、これをイソオクタンを対照とした波長660nmの吸光度から波長750nmの吸光度を引いた吸光度差とした。
【0050】
(リン分)
測定する油脂をキシレンで希釈し、ICP発光分光分析機(日立ハイテクサイエンス社製)で分析した。また、定量にあたっては、CONOSTAN(登録商標) Oil Analysis Standard(scp science)を使用した。
【0051】
(リン脂質)
各試験油脂をクロロホルム:メタノール=2:1で希釈したものを下記条件で分析した。
機器:HPLC (製品名:Thermo SCIENTIFIC社製)
検出器:荷電化粒子検出器 Corona Veo
移動相:
A n-ヘキサン:2-プロパノール:酢酸:トリエチルアミン= 814.2:170:15:0.8(体積比)
B 2-プロパノール:水:酢酸:トリエチルアミン= 844.2:140:15:0.8(体積比)
カラム:LiChrospher 100 Diol(5μm) 内径4.0×125mm [merck]
カラム温度:55℃
サンプル温度:20℃
グラジエント(流速=1ml/min) ※リニアグラジエント(表2参照)
【0052】
【0053】
標品はクルードレシチン(製品名:レシチンCL、株式会社J-オイルミルズ製)とPAレシチン(製品名:ベネコート、花王株式会社製)を適宜混合したものを日本食品分析センターにてリン脂質類を定量し、これを真の値として標品に用いた。
【0054】
〔実施例1〕
本例では、ソースご飯を調理し、フライパンからの食品の離型性を試験した。
【0055】
(ソースご飯の製造方法)
1. 電子レンジで2分間加温したご飯(製品名:サトウのごはん、佐藤食品工業株式会社製)60gに、ソース(Bull-Dog中濃ソース、ブルドック株式会社製)6gを絡め、混合物を準備した。
2. ステンレス製のフライパン(直径22cm)に、表3の組成の各試験油または対照油1.5gを投入し、油を万遍なく広げて、IH調理器(製品名:National KZ-PH8)にて、火力「強」で中心部が200℃になるまで加熱した。
3. 上記1.の工程で準備した混合物を上記2.のフライパンに加え、1分30秒間かけてフライパン表面を覆うように広げた。
4. 混合物を加えてから1分30秒後に、加熱終了し、ソースご飯を得た。
【0056】
(離型性および官能評価)
加熱終了後直ちにフライパンを裏返し、焦げ付いていないソースご飯を落とし、表面に付いた質量を測定した。さらに調理時のフライパンから立ち上る臭いと、得られたソースご飯の風味についてパネラー2名で評価した。結果を表3に示す。
【0057】
【0058】
上記結果より、本発明の離型用油脂組成物である試験油1~試験油5を用いた実施例はいずれも、優れた離型効果を示し、作業性が良好であった。
試験油1~3を用いた実施例1-1~3を比較すると、調製油中のリン分が133質量ppm以上198質量ppm以下の時、焦げ付きが少なく離型性が良好であった。また、吸光度差が0.033以上1.314以下の時、離型性が良好であり、0.033以上0.173以下の時、さらに良好であった。また、調製油中のPC(ホスファチジルコリン)の含有量が1.4質量ppm未満の実施例1-1、1-2、1-4及び1-5の場合に焦げ付きが少ない点でより良好であった。
対照例と比較した場合の調理時の臭いについては、実施例1-3では試験油3に微かに青っぽい臭さが感じられたが、実施例1-1~2ではそれぞれ用いた試験油1および2には、臭いはほとんど気にならなかった。さらに、実施例1-4~5の試験油4および5のように、調製油2を20質量%以上40質量%以下含有する場合、臭いは全く気にならなかった。
また、各ソースご飯を喫食し評価したところ、対照油1で調理した対照例1は、ソースご飯の味が薄めだったのと比べ、試験油2で調理した実施例1-2は、ソースの香り立ちが良い点で好ましかった。
【0059】
〔実施例2〕
本例では、薄焼き卵(卵焼き)を調理し、フライパンからの食品の離型性を試験した。
【0060】
(薄焼き卵の製造方法および評価)
1. 卵10個をボウルに溶き、溶き卵を調製した。
2. ステンレス製のフライパン(直径22cm)に、表7の組成の各試験油または対照油(製品名:コクとうまみの大豆油、株式会社J-オイルミルズ製、上昇融点0℃以下)1.5gを投入し、油を万遍なく広げて、IH調理器にて、火力「強」で中心部が200℃になるまで加熱した。
3. 上記1.の工程で準備した溶き卵25gを、上記フライパンに加え、フライパン表面を覆うように広げた。
4. 溶き卵を加えてから20秒後に加熱終了し、そして卵の周縁部が乾いてきたら、薄焼き卵をフライパンから取り出した。
5. 試験油は追加せずに、上記2.~4.の工程を最大10回繰り返し、フライパンの焦げ付きが何枚目の薄焼き卵の調理後に発生するかを調べた。
結果を表4に示す。
【0061】
【0062】
上記結果より、本発明の離型用油脂組成物である試験油2および試験油6は、卵焼き調理において、優れた離型性を示し、作業性が良好であった。
驚くべきことに、対照例2および実施例2-1でそれぞれ対照油2および試験油2を単独で使用した場合には、焦げ付きが発生したにもかかわらずこれらを50:50で混合した試験油6を使用した実施例2-2では、卵焼き10枚目でも焦げ付きが発生せず、非常に優れた離型性を示した。
試験油2を用いた実施例2-1、および試験油6を用いた実施例2-2の結果を総合すると、離型性の観点から、離型用油脂組成物中の調製油の含有量は、50質量%以上100質量%以下で良好であり、50質量%の場合にさらに良好であった。
【0063】
〔実施例3〕
本例では、あらかじめ各試験油を焼き型に塗布した型にパン生地を置いて焼成後、パンの離型性を試験した。
(原材料)
本例では、原材料として、主に以下のものを使用した。
(粉体原料)
強力粉:製品名「イーグル」、日本製粉株式会社製
粉末還元麦芽糖水飴:製品名「アマルティ」、三菱商事フードテック株式会社
パン改良剤:製品名「マックスパワー」、株式会社J-オイルミルズ製
脱脂粉乳:製品名「脱脂粉乳」、北海道乳業株式会社製
砂糖:製品名「上白糖」、三井製糖株式会社製
(油脂製品)
加工油脂1:製品名「アトランタSS」、株式会社J-オイルミルズ製
加工油脂2:製品名「マイスターマイブロートEZ200」、株式会社J-オイルミルズ製
(その他)
生イースト:製品名「オリエンタルイーストFD-1」、形状:ペースト状、オリエンタル酵母株式会社製
【0064】
(離型用油脂組成物および型の準備)
1. 表5に記載の配合で各成分を混合することにより各試験油を調製した。ただし、試験油9は、クルードレシチン(製品名:レシチンCL、株式会社J-オイルミルズ製)を精製菜種油に加えて混合し、60℃に達温後5分攪拌して調製したものを使用した。
2. アルミの型(縦27cm×横8cm×高さ4cm)に、上記1.の工程で調製した各試験油を、型の内側の底面、側面に満遍なくスプレーした後、ペーパータオルで広げ、最終的に型1個につき試験油1.5gずつ塗布した。
【0065】
【0066】
(白コッペパンの製造方法)
表6に記載の配合で、以下のように生地を調製した。
1. 油脂以外の材料をミキサーボウルに入れ、パン用ミキサー(製品名:カントーミキサー HP-20M、関東混合機株式会社製)にて以下の条件でミキシングした。
ミキシング条件:フックにて1速で3分間、2速で4分後、油脂を投入し、3速で1分間、混捏後、さらに1速で2分間、2速で3分間、3速で5~9分間、混捏した。
2. ミキシング後、ミキサーから生地を出して、28℃で60分間、発酵させた。
3. 生地を50gに分割し丸めて20分間休ませた後、モルダーを通してコッペパン形に成形した。
4. 準備したアルミの型に上記3.の工程で成形した生地を置き、温度38℃相対湿度80%のホイロで50分間発酵させた。
5. 発酵後、オーブンにて以下の条件と時間で焼成した。
焼成条件:上段170℃/下段170℃
焼成時間:8分
6. 焼成したパンについて、以下の離型性評価を行った。
【0067】
【0068】
(離型性評価)
各試験油につき2個ずつ焼成したパンの粗熱を取り(25℃で約10分後)、アルミの型をひっくり返してパンを取り出す際の取り出しやすさを以下の基準で評価した。アルミの型は初回に各試験油を塗布した後は何も塗布せず続けて合計15回パンの焼成に用い、離型性を評価した。結果を表7に示す。
(基準)
○:2個とも、ひっくり返したときに直ちにパンが落ちる
×:2個のうちいずれかが、ひっくり返したときにパンが型から剥がれにくく、落ちるまでに2秒以上を要する。
【0069】
【0070】
上記結果より、調製油2をそれぞれ2質量%および10質量%含有する試験油7(実施例3-1)および試験油8(実施例3-2)の離型用油脂組成物を塗布したアルミの型は、パンの離型性、すなわち作業性が良好であった。特に10質量%含有する場合、一度も剥がれにくさが見られず、非常に作業性が良好であった。一方、対照油1を用いた対照例3と、試験油9を用いた比較例3では、焼成12回目より型からパンが剥がれにくくなった。
【0071】
〔実施例4〕
本例では、本発明の離型用油脂組成物の焼きそばほぐし油としてのほぐれ性を試験した。
【0072】
(焼きそばサンプル調製および評価)
1. 生中華麺(製品名:北海道発札幌生ラーメン、株式会社菊水製)を、800g/7kgの湯内で、製品に記載の時間通りに、茹でた。
2. 1.の工程で得られた茹で麺を流水にて冷却し、ざるに上げて5分間放置した。
3. 2.の工程で得られた茹で麺を上下混ぜながら200g測り取り、茹で麺200gに対し1.8%(3.6g)の試験油を加えて1分間和えた。
4. 上記3.の工程で得られた茹で麺を密着型の蓋付き容器(製品名:とうふづくり、サイズ:10×12.3×7.2cm、スケーター株式会社製)に入れ、蓋を置いた。
5. 上記蓋の上に麺質量の1.5倍(300g)の加重をした。
6. 5℃の冷蔵庫にて1日保存した。
【0073】
(ほぐれ性評価)
1日保存後の麺を、容器を逆さにして取り出し、四角に固まっている麺を箸で左右に動かしてほぐし、ほぐれるまでの秒数を記録した。結果を表8に示す。
【0074】
【0075】
上記結果より、調製油2を50質量%含有する本発明の離型用油脂組成物(実施例4-1)は、対照油2を用いた対照例4と比較して麺同士の離型性に優れていた。
【0076】
以上に述べたように、所定の精製工程を経て得られた調製油を、2~100質量%配合した本発明の離型用油脂組成物は、フライパンや焼き型等の調理器具への食品の付着を抑制でき、優れた離型効果を示した。
また、本発明の所定の精製工程を経て得られた調製油を、50質量%配合した本発明の離型用油脂組成物は、麺のほぐれ性に優れていた。