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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】搬送装置及びキャリア
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20241129BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20241129BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G54/02
C23C14/50 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021002375
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107427
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡部 俊介
(72)【発明者】
【氏名】江澤 光晴
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507870(JP,A)
【文献】特開平05-004717(JP,A)
【文献】特表2020-533781(JP,A)
【文献】特表2020-500257(JP,A)
【文献】特開2020-094262(JP,A)
【文献】特開2010-135049(JP,A)
【文献】特開昭62-266132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 54/02
C23C 14/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が搭載されるキャリアと、
前記キャリアを磁力により搬送する搬送手段と、
前記キャリアの搬送方向の位置を検知する磁気式の検知手段と、
を備えた搬送装置であって、
前記キャリアは、
前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部の端部に接続部を介して接続され、前記搬送手段の磁気が作用する永久磁石を支持する磁石支持部と、を備え、
前記検知手段は、前記接続部よりも前記基板支持部の側に配置され、
前記接続部が磁性材料で形成されている、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記検知手段は、
前記キャリアに支持された磁気スケールと、
前記キャリアの搬送経路上に配置され、前記磁気スケールを読み取る磁気センサと、を備える、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記接続部には、前記永久磁石と前記検知手段との間に配置された磁気シールド部材が設けられている、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記搬送手段は、第一の方向と、前記第一の方向と交差する第二の方向に前記キャリアを搬送可能であり、
前記磁石支持部は、
前記第一の方向に沿って配置された第一の磁石支持部と、
前記第二の方向に沿って配置された第二の磁石支持部と、を含む、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記磁石支持部には、
前記搬送手段からの第一の磁気によって、前記キャリアに浮上力を生じさせる第一の永久磁石と、
前記搬送手段からの第二の磁気によって、前記キャリアに前記搬送方向の移動力を生じさせる第二の永久磁石と、が支持される、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記キャリアは、前記基板と重なるようにマスクを支持するマスク支持部を備える、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記基板支持部は、矩形の板状であり、
前記磁石支持部は、
前記基板支持部の対向する二辺に沿って配置された一対の第一の磁石支持部を含む、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項4に記載の搬送装置であって、
前記第一の方向と前記第二の方向は直交し、
前記基板支持部は、矩形の板状であり、
前記磁石支持部は、
前記基板支持部の対向する二辺に沿って配置された一対の第一の磁石支持部と、
前記基板支持部の、前記二辺と異なる対向する二辺に沿って配置された一対の第二の磁石支持部と、を含む、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記搬送方向と交差する方向での前記キャリアの移動範囲を規制する自由回転体を備え、
前記磁石支持部は、
前記接続部と接続される第一の端部と、
前記第一の端部と反対側の第二の端部と、を備え、
前記第二の端部には、前記自由回転体と当接可能な当接部が接続されている、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
基板が搭載され、搬送手段により磁力により搬送され、搬送方向の位置が磁気式の検知手段で検知されるキャリアであって、
前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部の端部に接続部を介して接続され、前記搬送手段の磁気が作用する永久磁石を支持する磁石支持部と、を備え、
前記検知手段は、前記接続部よりも前記基板支持部の側に配置され、
前記接続部が磁性材料で形成されている、
ことを特徴とするキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の搬送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)は、スマートフォン、テレビ、自動車用ディスプレイだけでなく、VR-HMD(Virtual Reality-Head Mount Display)などにその応用分野が広がっており、特に、VR-HMDに用いられるディスプレイは画素パターンを高精度で形成することが求められる。有機EL表示装置の製造においては、有機EL表示装置を構成する有機発光素子(有機EL素子:OLED)を形成する際に、成膜装置の蒸着源から放出された成膜材料を、画素パターンが形成されたマスクを介して基板に成膜することで、有機物層や金属層を形成する。
【0003】
このような成膜装置においては、成膜中に基板の上にコンタミが付着することを防止する必要があるが、基板の搬送機構がコンタミの発生源となり得る。比較的コンタミの発生が少ない搬送機構として磁石を利用して搬送キャリアを搬送する磁気搬送がある。特に磁気浮上搬送は、基板とマスクを保持して搬送するキャリアと搬送機構の構成部品との接触を少なくして搬送される非接触搬送であり、コンタミの発生を抑制することができる。
【0004】
この磁気浮上搬送おいて搬送キャリアを制御するためには、キャリアの位置を計測し制御情報として取得する必要があるが、その手法の一つとして磁気式の位置検知技術が知られている。これは磁気検出ヘッド(磁気センサ)と磁気パターンを記録した磁気スケールとを使用して非接触かつ高精度に位置を検出できる手法である(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-56892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キャリアの搬送に磁気搬送を採用し、かつ、キャリアの位置検知に磁気式の位置検知技術を採用した場合、磁気搬送における磁気が磁気センサによる位置検知に影響を与える場合がある。
【0007】
本発明は、磁気搬送における磁気が磁気式の位置検知に与える影響を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
基板が搭載されるキャリアと、
前記キャリアを磁力により搬送する搬送手段と、
前記キャリアの搬送方向の位置を検知する磁気式の検知手段と、
を備えた搬送装置であって、
前記キャリアは、
前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部の端部に接続部を介して接続され、前記搬送手段の磁気が作用する永久磁石を支持する磁石支持部と、を備え、
前記検知手段は、前記接続部よりも前記基板支持部の側に配置され、
前記接続部が磁性材料で形成されている、
ことを特徴とする搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁気搬送における磁気が磁気式の位置検知に与える影響を低減する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る搬送装置を適用した成膜装置を模式的に示す概略図。
図2図1のA-A線に沿うキャリア及び搬送装置の断面図。
図3】キャリアの平面図。
図4】(A)は比較例における磁束線を示す図、(B)は実施形態における磁束線を示す図。
図5】(A)は搬送装置における磁束線を示す図、(B)は別実施形態の構成例を示す図。
図6】別実施形態の構成例を示す図。
図7】(A)及び(B)は別実施形態の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第一実施形態>
<成膜装置の概要>
図1は本発明の実施形態に係る搬送装置2を適用した成膜装置100を模式的に示す概略図である。成膜装置100は、基板110に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク111を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。成膜装置100で成膜が行われる基板110の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、ガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが好適に用いられる。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置100は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置100が真空蒸着によって基板110に成膜を行う例を想定するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。なお、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。
【0013】
成膜装置100は、基板110を搬送しながら蒸着物質を蒸着するインライン式の成膜装置であり、X方向に配列された基板搬入室101、マスク搬入室102、アライメント室103、成膜室104、マスク搬出室105及び基板搬出室110を備える。基板110及びマスク111はキャリア1を介して搬送装置2によってX方向に搬送される。図示の例では基板110は矩形である。
【0014】
キャリア1と未成膜の基板5は、基板搬入室101に投入され、基板搬入室101において基板5がキャリア1に搭載される。基板110を搭載したキャリア1がマスク搬入室102へ搬送され、ここでマスク111もキャリア1に搭載される。基板110及びマスク111を搭載したキャリア1はアライメント室103へ搬送され、ここで基板110とマスク111との位置合わせが行われる。マスク111は基板110の下に重なるように保持される。その後、基板110及びマスク111を搭載したキャリア1は成膜室104へ搬送される。成膜室104においては、蒸着源上を通過する際に、マスク111を介して蒸着物質が蒸着される。成膜室104は複数の蒸着室を含み、各蒸着室で蒸着材料を基板110に蒸着可能である。
【0015】
成膜済みの基板110及びマスク111を搭載したキャリア1は、マスク搬出室105に搬送され、キャリア1からマスク111が分離されて搬出される。その後、成膜済みの基板110を搭載したキャリア1は、基板搬出室106へ搬送され、キャリア1から基板110が分離されて搬出される。また、キャリア1も搬出される。
【0016】
搬送装置2及びキャリア1の構成について、図1に加えて、図2及び図3を参照して説明する。図2図1のA-A線に沿う搬送装置2の断面図であり、図3はキャリア1の平面図である。
【0017】
搬送装置2は、基板110の幅方向に離間した一対の搬送ユニットCUを備える。各搬送ユニットCUはX方向に延設されキャリア1のX方向の搬送経路を形成している。搬送ユニットCUは、キャリア1を磁力により浮上搬送するユニットである。搬送ユニットCUは、X方向に配列された複数の電磁石(コイル)21及び永久磁石23を備え、これらはフレーム20に、Z方向に離間して配置されている。電磁石21のY方向の両側には磁気シールド22が設けられている。磁気シールド22は例えば磁性材料からなる板状の部材である。
【0018】
搬送装置2は、また、キャリア1の移動範囲を規制する規制ユニット24を備える。規制ユニット24はフレーム20に支持されてX方向に延設されている。規制ユニット24は、キャリア1のY方向の移動範囲をローラR1と、キャリア1のZ方向の移動範囲を規制するローラR2及びR3を備える。ローラR1は、Z方向の回転軸の周りに自由回転可能に設けられた自由回転体であり、キャリア1のY方向の最端部に位置する当接部13のY方向の端面に対向している。キャリア1が搬送経路からY方向に逸脱しようとすると、当接部13にローラR1が当接して逸脱を防止する。ローラR2及びR3は、Y方向の回転軸の周りに自由回転可能に設けられた自由回転体であり、Z方向に離間して配置されている。ローラR2は当接部13の上面に、ローラR3は当接部13の下面に、それぞれ対向しており、キャリア1が上限位置又は下限位置に達すると、当接部13にローラR2又はR3が当接してそれ以上のキャリア1のZ方向の移動を規制する。ローラR1~R3はキャリア1の非浮上時(非浮上位置)においてキャリア1を支持する部材としても利用できる。
【0019】
キャリア1は、平面視で矩形状を有しており、基板110を支持する基板支持部10と、一対の磁石支持部11と、マスク支持部14とを備える。基板支持部10はY方向の中央部に位置している。一対の磁石支持部11は、接続部12を介して基板支持部10のY方向の各端部に接続されており、基板支持部10のY方向に対向する二辺に沿って配置されている。基板支持部10及び磁石支持部11はいずれも矩形で板状の部材である。
【0020】
基板支持部10はその下面に基板110を支持する。基板支持部10は、基板110を保持する保持部を有し、保持部は例えば粘着材料を用いた粘着部、或いは、エアの吸引等による吸着部である。保持部は機械的に基板を挟持するクランプ機構部であってもよい。基板110はX-Y平面上で水平姿勢で支持される。
【0021】
マスク支持部14は、基板支持部10に指示された基板110と重なるように基板110の下方にマスク111を支持する。マスク支持部14は、マスク111を保持する保持部を有し、保持部は例えば粘着材料を用いた粘着部、或いは、エアの吸引等による吸着部である。保持部は機械的に基板を挟持するクランプ機構部であってもよい。マスク111はX-Y平面上で水平姿勢で支持される。
【0022】
各磁石支持部11は、Y方向で接続部12側の端部と反対側の端部とを有する。規制ユニット24と当接する当接部13は、この反対側の端部に接続された板状の部材でありX方向に延設されている。
【0023】
各磁石支持部11には、複数の永久磁石M1及びM2が支持されている。複数の永久磁石M1及びM2はX方向に配列され、不図示のヨークが設けられている。永久磁石M1は、搬送ユニットCUの永久磁石23とZ方向に対向するように磁石支持部11の下面に固定されている。永久磁石23と永久磁石M1との反発力によってキャリア1に浮上力が生じる。永久磁石M2は、搬送ユニットCUの電磁石21とZ方向に対向するように磁石支持部11の上面に固定されている。磁力を発生させる電磁石21を順次切り替えることにより、電磁石21と永久磁石M2との吸引力によってキャリア1にX方向の移動力を生じさせることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、電磁石21及び永久磁石23が、成膜装置100の各室(101~106)の内部(チャンバ内部)に配置された構成を想定しているが、チャンバ外部に配置された構成であってもよい。また、キャリア1の浮上搬送のために、永久磁石23と永久磁石M1との反発力によってキャリア1に浮上力が生じさせる構成としたが、これらの永久磁石が無く、永久磁石M2と電磁石21のみの構成においても、キャリア1の浮上搬送は可能である。
【0025】
各接続部12は磁性材料で形成されている。磁性材料は、例えば、鉄等の軟磁性材料である。キャリア1の他の構成(基板支持部10、磁石支持部11及び当接部13)は例えばアルミニウム或いはアルミ合金などの非磁性材料で形成される。接続部12を磁性材料で形成することで、永久磁石M1及びM2が生じる磁気の作用範囲を制限する。詳細は後述する。
【0026】
次に、搬送装置2はキャリア1の搬送方向(X方向)の位置を検知する磁気式の検知ユニット3を備える。検知ユニット3は、磁気スケール31と、磁気センサ32とを備える。本実施形態の場合、磁気スケール31は移動側であるキャリア1に設けられ、磁気センサ32は固定側であるフレーム20に設けられている。
【0027】
磁気スケール31はX方向に延設された帯状の部材であり、X方向に磁気パターンが記録されている。本実施形態の場合、磁気スケール31は基板支持部10のYの一端部に設けられている。磁気センサ32は、磁気スケール31の磁気パターンを読み取るセンサ(磁気検出ヘッド)であり、磁気スケール31に対向する位置に配置されている。磁気センサ32の検知結果によりキャリア1のX方向の位置を特定することができ、特定した位置に基づくフィードバック制御により電磁石21を駆動して、キャリア1の搬送制御を行うことができる。図1に示すように磁気センサ32は成膜装置1において搬送経路の複数個所に配置されている。なお、本実施形態では磁気スケール31と磁気センサ32とを、基板支持部10のY方向の一端部側のみに配置したが、両端部に配置する構成も採用可能である。
【0028】
検知ユニット3は、Y方向において、接続部12よりも基板支持部10の側に配置されている。接続部12を上記の通り磁性材料で形成したことにより、磁石支持部11に支持された永久磁石M1及びM2の磁気が検知ユニット3の位置検知に与える影響を低減することができる。図4(A)及び図4(B)はその説明図である。
【0029】
図4(A)は比較例として、接続部12に相当する構成がなく、基板支持部10と磁石支持部11とが接続されている構成例を示す。図示の例は、永久磁石M1及びM2が生じる磁束の磁束線F1を模式的に示している。永久磁石M1及びM2からは互いの磁石が影響しあい、キャリア1の移動や浮上に寄与しない漏れ磁束が発生する。図4(A)はこの漏れ磁束のみの磁束線を示している。この磁束が、磁気スケール31や磁気センサ32に及ぶことにより、その位置検出精度を低下させる場合がある。
【0030】
図4(B)は本実施形態における磁束線F1、F2を示している。接続部12を磁性材料で形成することで、磁束線F2で示されるように、永久磁石M1及びM2が生じる磁束を接続部12に引き付ける作用が生じる。この結果、漏れ磁束が磁気スケール31や磁気センサ32に及ぶことを防止できる。本実施形態の接続部12は、磁石支持部11よりもZ方向で上側に延びる部分12aを有している。部分12aは、永久磁石M2のZ方向と同じ高さか、それよりもの高い位置に延在するように構成される。また、接続部12は、磁石支持部11よりもZ方向で下側に延びる部分12bを有している。部分12bは、永久磁石M1のZ方向と同じ高さか、それよりも低い位置に延在するように構成される。これにより、永久磁石M1及びM2が生じる磁束を接続部12に引き付ける作用がより効果的に生じさせることができる。以上により、永久磁石M1及びM2の磁気が検知ユニット3の位置検知に与える影響を低減することができる。
【0031】
図5(A)は電磁石21が生じる磁束を磁気シールド22で遮る作用を示している。キャリア1の移動に寄与しない、電磁石21から生じる漏れ磁束F3は、磁気シールド14によって遮られ、電磁石21が生じる磁気が検知ユニット3の位置検知に与える影響も低減することができる。
【0032】
<第二実施形態>
第一実施形態では、永久磁石M1及びM2の磁気が検知ユニット3の位置検知に与える影響を、磁性材料である接続部12のみで低減したが、磁気シールドとの併用も可能である。図5(B)はその一例を示す。図示の例では、接続部12に対応する接続部12’が、部分12aを有しない構成である。これに代わって接続部12’には磁気シールド部材15が設けられている。磁気シールド部材15はL字形状で、X方向に延設された部材であり、磁性材料で形成される。磁気シールド15は、部分12aと同様に機能し、主に永久磁石M2が生じる磁束を引き付けて検知ユニット3に及ぼす影響を低減する。
【0033】
<第三実施形態>
第一実施形態では、キャリア1をX方向に浮上搬送する構成例を説明したが、互いに交差する二方向に浮上搬送する構成も採用可能である。図6は本実施形態のキャリア1の平面図、図7(A)は本実施形態の搬送装置2の平面図である。本実施形態ではキャリア1をX方向とY方向に搬送可能な例を説明する。
【0034】
キャリア1は、平面視で十字形状を有しており、第一実施形態と同様に基板支持部10のY方向の対向する二辺に沿って磁石支持部11が配置されていることに加えて、X方向の対向する二辺に沿って磁石支持部11’が配置されている。磁石支持部11’の構成は磁石支持部11と同じであり、また、磁石支持部11’は接続部12を介して基板支持部10に接続され、その端部には当接部13が設けられている。
【0035】
搬送装置2は、第一実施形態と同様の搬送ユニットCUを有すると共に、搬送ユニットCUと同様の構成の搬送ユニットCU’を有している。搬送ユニットCUはY方向に延設されている。
【0036】
検知ユニット3の磁気センサ32は、搬送ユニットCUの搬送経路上及び搬送ユニットCU’の搬送経路上にそれぞれ複数設けられている。また、検知ユニット3は、X方向に延設された磁気スケール31と、Y方向に延設された磁気スケール31とを有しており、これらは基板支持部10の端部に配置されている。
【0037】
係る構成からなる搬送装置2においては、搬送ユニットCUと磁石支持部11の永久磁石M1及びM2によってキャリア1をX方向に搬送し、また、搬送ユニットCUの終点から、搬送ユニットCU’と磁石支持部11’の永久磁石M1及びM2によってキャリア1をY方向に搬送することができる。この構成においても、磁性材料からなる接続部12によって、磁石支持部11及び11’の各永久磁石M1及びM2の磁気が、検知ユニット3に影響することを防止できる。なお、本実施形態では、キャリア1の搬送方向を変えるときに、その向きを変えずに搬送する形態を採用したが、キャリア1の姿勢を90度回転させる構成も採用可能である。
【0038】
<第四実施形態>
第一実施形態では、磁気スケール31を移動側であるキャリア1に設けられ、磁気センサ32を固定側であるフレーム20に設けたが、逆の配置も採用可能である。図7(B)はその一例を示す。図示の例では、磁気センサ32がキャリア1に搭載され、磁気スケール31がフレーム20に支持されている。磁気センサ32は、一つのキャリア1に対して少なくとも一つ設けることができる。磁気スケール31はキャリア1の搬送経路に沿って延設されるが、精密な位置精度が不要な区間においては設けられていなくてもよい。
【0039】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0040】
100 成膜装置、110 基板、111 マスク、1 キャリア、2 搬送装置、3 位置検知ユニット、10 基板支持部、11 磁石支持部、12 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7