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特許7595473締結構造、プラズマ処理装置及び締結方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】締結構造、プラズマ処理装置及び締結方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241129BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241129BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L21/302 101C
H05H1/46 L
H01L21/31 C
C23C16/44 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021010996
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114629
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中川 太一
(72)【発明者】
【氏名】天野 健次
(72)【発明者】
【氏名】末木 英人
(72)【発明者】
【氏名】大森 貴史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 健一
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-137228(JP,A)
【文献】特開2009-135108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0139372(US,A1)
【文献】国際公開第2020/145190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
H01L 21/31
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置を構成する第1の部材と第2の部材とを締結ネジにより締結する締結構造であって、
前記第1の部材は、雌ネジ部を有し、
前記締結ネジは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部が形成されたネジ軸部と、ネジ頭部とを有し、
前記第2の部材は、前記ネジ軸部が貫通する貫通孔を有し、
前記ネジ頭部と前記第2の部材との間において重ねて配置され、前記ネジ軸部が貫通し、直径の差が2mm以内であり、厚みが2mm以上であるステンレス素材からなる第1の座金及び第2の座金とを備え、
前記貫通孔は断面が長丸形状であり、
前記第1の座金は前記ネジ頭部の側に配置されるとともに、前記ネジ軸部が貫通する穴を有し、
前記第2の座金は前記第2の部材の側に配置されるとともに、前記ネジ軸部が貫通する長丸形状の穴と、前記貫通孔に挿入され前記長丸形状の穴の長径方向に沿ってのみ形成される突出部とを有する、部材の締結構造。
【請求項2】
前記第1の座金における前記第2の座金と接触する第1の接触面と、前記第2の座金における前記第1の座金と接触する第2の接触面の、いずれか一方若しくは両方が潤滑性被覆膜で覆われている、請求項1に記載の締結構造。
【請求項3】
前記潤滑性被覆膜は、導電性を有するテフロン潤滑メッキ膜である、請求項2に記載の締結構造。
【請求項4】
基板に対しプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
雌ネジ部を有する第1の部材と、
前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部が形成されたネジ軸部と、ネジ頭部とを有する締結ネジと、
前記締結ネジにより前記第1の部材と締結され、前記ネジ軸部が貫通する貫通孔を有する第2の部材と、
前記ネジ頭部と前記第2の部材との間において重ねて配置され、前記ネジ軸部が貫通し、直径の差が2mm以内であり、厚みが2mm以上であるステンレス素材からなる第1の座金及び第2の座金とを備え、
前記貫通孔は断面が長丸形状であり、
前記第1の座金は前記ネジ頭部の側に配置されるとともに、前記ネジ軸部が貫通する穴を有し、
前記第2の座金は前記第2の部材の側に配置されるとともに、前記ネジ軸部が貫通する長丸形状の穴と、前記貫通孔に挿入され前記長丸形状の穴の長径方向に沿ってのみ形成される突出部とを有する、プラズマ処理装置。
【請求項5】
プラズマ処理の処理対象の基板が載置される載置台と、
前記載置台が内部に設けられた処理容器と、
前記載置台の側面を覆い、前記処理容器の底壁を介して接地される接地部材と、を備え、
前記第1の部材は、前記処理容器の底壁であり、
前記第2の部材は、前記接地部材である、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
基板処理装置を構成する、雌ネジ部を有する第1の部材と、断面が長丸形状の貫通孔を有する第2の部材とを用意する工程と、
雄ネジ部が形成されたネジ軸部と、ネジ頭部とを有する締結ネジを用意する工程と、
前記ネジ軸部が貫通し、直径の差が2mm以内であり、厚みが2mm以上であるステンレス素材からなる第1の座金及び第2の座金とを用意する工程と、を含み、前記第1の座金は、前記ネジ軸部が貫通する穴を有し、前記第2の座金は、前記ネジ軸部が貫通する長丸形状の穴と、前記貫通孔に挿入され前記長丸形状の穴に長径方向に沿ってのみ形成される突出部と、を有し、
前記雌ネジ部と前記貫通孔が連通するように前記第1の部材と前記第2の部材を重ね合わせる工程と、
前記第2の座金の前記突出部を前記貫通孔に挿入させる工程と、
前記締結ネジの前記ネジ軸部を、前記第1の座金の穴、前記突出部が前記貫通孔に挿入された前記第2の座金の穴、及び、前記貫通孔を貫通させ、前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に螺合させて前記第1の部材と前記第2の部材とを締結する工程と、を含む、部材の締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、締結構造、プラズマ処理装置及び締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空排気された処理空間内のガラス基板に対し、プラズマ化された処理ガスによるプラズマ処理を実行するプラズマ処理装置が開示されている。このプラズマ処理装置は、ガラス基板が載置される載置台を備え、当該載置台に対向する上面が開口すると共に、電気的に接地された金属製の処理容器と、当該処理容器の開口を塞いで処理空間を形成するように並べられた複数の導電性の部分窓からなる金属窓と、当該金属窓の上方側に、当該金属窓と対向するように設けられ、誘導結合により処理ガスをプラズマ化するためのプラズマアンテナと、備える。特許文献1のプラズマ処理装置において、金属窓の各部分窓は、処理ガス供給用のシャワーヘッドを兼ねている。また、各部分窓は、処理空間に対して処理ガスを供給するための多数の処理ガス吐出孔が形成されたシャワープレートと、当該シャワープレートとの間に、処理ガスを拡散させる処理ガス拡散室を形成するための金属窓本体とを、下からこの順に重ねた構成となっている。さらに、特許文献1のプラズマ処理装置では、ネジによってシャワープレートを金属窓本体に締結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-27775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板処理装置を構成する部材同士を締結ネジにより締結する締結構造において、部材間の熱膨張差により締結ネジが変形することを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は基板処理装置を構成する第1の部材と第2の部材とを締結ネジにより締結する締結構造であって、前記第1の部材は、雌ネジ部を有し、前記締結ネジは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部が形成されたネジ軸部と、ネジ頭部とを有し、前記第2の部材は、前記ネジ軸部が貫通する貫通孔を有し、前記ネジ頭部と前記第2の部材との間において重ねて配置され、前記ネジ軸部が貫通し、直径の差が2mm以内であり、厚みが2mm以上であるステンレス素材からなる第1の座金及び第2の座金とを備え、前記貫通孔は断面が長丸形状であり、前記第1の座金は前記ネジ頭部の側に配置されるとともに、前記ネジ軸部が貫通する穴を有し、前記第2の座金は前記第2の部材の側に配置されるとともに、前記ネジ軸部が貫通する長丸形状の穴と、前記貫通孔に挿入され前記長丸形状の穴の長径方向に沿ってのみ形成される突出部とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板処理装置を構成する部材同士を締結ネジにより締結する締結構造において、部材間の熱膨張差により締結ネジが変形するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示にかかる技術の課題を説明するための図である。
図2】本開示にかかる技術の課題を説明するための図である。
図3】本実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図4】本実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成の概略を示す横断面図である。
図5】接地部材の構成の概略を示す部分拡大平面図である。
図6】プラズマ処理装置が備える締結構造の構成の概略を示す縦断面図である。
図7】プラズマ処理装置が備える締結構造の構成の概略を示す縦断面図である。
図8】第2の座金の下面図である。
図9】第2の座金の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造工程では、ガラス基板等の基板に対し、エッチング処理や成膜処理等の基板処理が行われる。これらの基板処理には、処理対象の基板が収容される処理容器等を有する基板処理装置が用いられる。また、基板処理装置としては、処理ガスのプラズマを用いて基板処理を行うプラズマ処理装置がある。
【0009】
プラズマ処理装置は、基板が載置される載置台と、載置台が内部に設けられた処理容器と、を備える。また、プラズマ処理装置は、載置台の側面を覆うように接地部材を備えることがある。図1に示すように、接地部材501は、処理容器の底壁500に固定され、当該底壁500を介して電気的に接地される。接地部材501は、当該接地部材501または当該接地部材501に接続された部材(図示せず)を、後述の、バイアス用の高周波電力が印加され下部電極として機能する載置台に対する対向電極の一部として機能させること等を目的として設けられる。また、処理容器の底壁500と接地部材501との固定は、特許文献1に開示のプラズマ処理装置におけるシャワープレートと金属窓本体との固定と同様、ネジ502を用いた締結で行われる。
【0010】
ところで、接地部材501には処理ガスのプラズマからの熱が入りやすいため、接地部材501と処理容器の底壁500との間に温度差が生じ、これにより、両者の間に熱膨張差が生じることがある。
【0011】
そのため、例えば、接地部材501の貫通孔501aを、その断面が、接地部材501が主に熱膨張する方向すなわち接地部材501が延在する方向(図1の左右方向)に長い長丸形状となるように形成している。これにより、上述の熱膨張差が生じても、貫通孔501a内をネジ502の軸部502aが相対的に移動するため、接地部材501の内壁面がネジ502の軸部502aに接触しないので、ネジ502の変形を防ぐことができる。なお、ネジ502が変形すると、締結力の低下や、処理容器の底壁500を介して接地部材502を適切に電気的に接地できなくなってしまう等、問題がある。
【0012】
しかし、接地部材501の貫通孔501aの断面を上述のように長丸形状としても、ネジ502が変形してしまうことがある。例えば、図2に示すように、接地部材501がその延在方向(図の左右方向)だけでなくネジ502の軸方向(図の上下方向)にも膨張することによってネジ頭502bに対向する接地部材501の座面側が陥没すること等により、接地部材501の延在方向への熱膨張にネジ502のネジ頭502bが追従してしまう。これにより、ネジ502が変形してしまうこと、具体的には、ネジ502の軸部502aが曲がってしまうことがある。
【0013】
プラズマ処理装置を構成する構成部材同士を締結する他の締結構造や、プラズマ処理装置以外の基板処理装置を構成する部材同士を締結する締結構造でも、上述と同様にネジが変形するおそれがあり、変形すると基板処理等に悪影響が及ぶことがある。
【0014】
そこで、本開示にかかる技術は、基板処理装置を構成する部材同士を締結ネジにより締結する締結構造において、部材間の熱膨張差による締結ネジの変形を抑制する。
【0015】
以下、本実施形態にかかる締結構造、プラズマ処理装置及び締結方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<プラズマ処理装置1>
図3及び図4はそれぞれ、本実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図及び横断面図である。図5は、後述の接地部材の構成の概略を示す部分拡大平面図である。
図3のプラズマ処理装置1は、基板としての、矩形のガラス基板G(以下、「基板G」という)に対し、処理ガスのプラズマを用いた基板処理すなわちプラズマ処理を行う。プラズマ処理装置1が行うプラズマ処理は、例えばFPD用の成膜処理、エッチング処理、アッシング処理等である。これらの処理により、基板G上に、発光素子や発光素子の駆動回路などの電子デバイスが形成される。
【0017】
プラズマ処理装置1は、有底の角筒形状の容器本体10を備える。容器本体10は、導電性材料、例えばアルミニウムから形成され、電気的に接地されている。プラズマ処理にはしばしば腐食性のガスが用いられるため、容器本体10の内壁面は、耐腐食性を向上させる目的で、陽極酸化処理等の耐腐食コーティング処理が施されている。また、容器本体10の上面には開口が形成されている。この開口は、容器本体10と絶縁されて設けられた矩形状の金属窓20によって気密に塞がれ、具体的には、金属窓20及び後述の金属枠14によって気密に塞がれる。容器本体10及び金属窓20によって囲まれた空間は、プラズマ処理の処理対象の基板Gがプラズマ処理時に位置する処理空間S1となり、金属窓20の上方側の空間は、後述の高周波アンテナ(プラズマアンテナ)90が配置されるアンテナ室S2となる。容器本体10のX方向負側(図1の左側)の側壁には、処理空間S1内に基板Gを搬入出するための搬入出口11及び搬入出口11を開閉するゲートバルブ12が設けられている。
【0018】
容器本体10の底壁10a上には、金属窓20と対向するように、基板Gが載置される載置台30が設けられている。載置台30は例えば平面視矩形状に形成されている。
載置台30は、その上面31aが基板Gの載置面となる台本体31を有し、台本体31が、絶縁性の材料で構成された脚部32を介して、容器本体10の底壁10a上に設置されている。なお、本実施形態では絶縁性の脚部32により台本体31を支持しつつ当該台本体31の側面も覆っているが、台本体31の側面を覆う絶縁性の部材を台本体31を支持する部材と分離可能に設けてもよい。いずれの場合においても、台本体31の側面は絶縁性の部材で覆われている。
【0019】
台本体31は、導電性材料、例えばアルミニウムから形成されている。台本体31の処理空間S1側の表面は、絶縁性及び耐腐食性を向上させるため、陽極酸化処理若しくはセラミック溶射処理等のコーティング処理が施されている。また、台本体31には、基板Gを吸着保持する静電チャック(図示せず)が設けられている。
【0020】
さらに、台本体31には、整合器40を介して高周波電源41が接続されている。高周波電源41は、バイアス用の高周波電力、例えば周波数が3.2MHzの高周波電力を台本体31に供給する。これにより、処理空間S1内に生成されたプラズマ中のイオンを基板Gに引き込むことができる。
【0021】
また、容器本体10の底壁10a(「第1の部材」の一例)上には、図4に示すように、電気的に接地される接地部材50(「第2の部材」の一例)が複数設けられており、具体的には、例えば、電気的に接地される接地部材50~50が設けられている。
【0022】
接地部材50はそれぞれ、導電性材料、例えばアルミニウムから形成されている。また、接地部材50はそれぞれ、載置台30の側面を、絶縁性の部材(具体的には脚部32)を介して覆うように設けられている。具体的には、接地部材50は、X方向(図4の左右方向)に沿って延び、載置台30のY方向正側(図4の上側)の側壁を覆うように設けられている。接地部材50は、X方向に沿って延び、載置台30のY方向負側(図4の下側)の側壁を覆うように設けられている。接地部材50は、Y方向(図4の上下方向)に沿って延び、載置台30のX方向正側(図4の右側)の側壁を覆うように設けられている。接地部材50は、Y方向(図4の上下方向)に沿って延び、載置台30のX方向負側(図4の左側)の側壁を覆うように設けられている。
【0023】
接地部材50は、例えば断面視L字状に形成され、容器本体10の底壁10aに沿って延びる水平部51と、載置台30の側面に沿って延び容器本体10の底壁10aと垂直となる垂直部52と、を有する。
また、接地部材50はそれぞれ、台本体31とは電気的に絶縁され、容器本体10の底壁10aを介して電気的に接地される。
【0024】
また、接地部材50はそれぞれ、締結ネジ53によって、容器本体10の底壁10aに締結されている。具体的には、各接地部材50は、図5に示すように、水平部51に、当該水平部51を上下方向(厚み方向)に貫通する貫通孔51aが形成されており、当該貫通孔51aに挿通された締結ネジ53によって締結されている。なお、締結ネジ53には、当該締結ネジ53のネジ頭と、後述の第1の座金及び第2の座金とを一括して覆うカバー(図示せず)が設けられている。これにより、締結ネジ53、第1の座金及び第2の座金を耐腐食性ガス等から保護している。
【0025】
締結ネジ53が挿通される貫通孔51aは、接地部材50毎に、当該接地部材50が延びる方向すなわち当該接地部材50の長手方向に沿って、複数設けられている。また、各貫通孔51aは、その断面(貫通孔51aの中心軸に直交する断面)が、当該貫通孔51aが設けられた接地部材50の長手方向に長い長丸形状(すなわち長円形状)である。
接地部材50の処理空間S1側の表面は、耐腐食性を向上させるため、陽極酸化処理若しくはセラミック溶射処理等のコーティング処理が施されている。ただし、接地部材50の処理空間S1側の表面は、上記コーティング処理が施され絶縁性の領域である被覆領域R1(図5において灰色で示す。)と、上記コーティング処理が施されず導電性の領域である非被覆領域R2とを有する。例えば、貫通孔51aの周囲の、後述の第2の座金が120接触する領域は、非被覆領域R2とされる。
【0026】
接地部材50には、バッフルプレート(図示せず)が接続されていてもよい。プラズマ処理装置1において、接地部材50及び上記バッフルプレートは、載置台30に印加されるバイアス用の高周波電力に対して対向電極として機能し、プラズマが不用意に異常放電を引き起こすことを抑制する。また、後述の排気口13を覆い接地電位となる網部材を設けてもよい。当該網部材により、プラズマ化した処理ガスは失活する。これにより、プラズマ化した処理ガスが排気されることが抑制され、排気口13、排気部60において放電が生じることが抑制される。
【0027】
また、容器本体10の底壁10aには、図4に示すように、排気口13が形成されている。排気口13は、平面視矩形状の載置台30の各辺に、当該辺に沿って複数設けられている。排気口13には、図3に示すように、真空ポンプ等を有する排気部60が接続されている。処理空間S1は、この排気部60によって減圧される。排気部60は、複数の排気口13のそれぞれに設けられてもよいし、複数の排気口13に共通に設けられてもよい。
【0028】
容器本体10の側壁の上面側には、アルミニウム等の金属材料から形成された矩形状の枠体である金属枠14が設けられている。容器本体10と金属枠14との間には、処理空間S1を気密に保つためのシール部材15が設けられている。また、容器本体10と金属枠14と金属窓20とが、載置台30が内部に設けられた処理容器を構成する。
【0029】
金属窓20は、複数の部分窓21に分割され、これらの部分窓21が金属枠14の内側に配置され、全体として矩形状の金属窓20を構成している。
【0030】
部分窓21はそれぞれ、処理空間S1に処理ガスを供給するシャワーヘッドとして機能する。例えば、各部分窓21には、処理ガスを下方に吐出する多数のガス吐出孔21aと、処理ガスを拡散させる拡散室21bが形成されており、ガス吐出孔21aと拡散室21bとが連通している。
【0031】
各部分窓21の拡散室21bは、ガス供給管70を介して処理ガス供給部71に接続されている。処理ガス供給部71は、流量調整弁(図示せず)や開閉弁(図示せず)等を備え、成膜処理、エッチング処理、アッシング処理等に必要な処理ガスを拡散室21bに供給する。なお、図示の便宜上、図3には、1つの部分窓21に処理ガス供給部71が接続された状態を示しているが、実際には各部分窓21の拡散室21bに処理ガス供給部71が接続される。
【0032】
また、部分窓21は、絶縁部材22によって金属枠14から電気的に絶縁されると共に、隣り合う部分窓21同士も絶縁部材22によって互いに電気的に絶縁されている。
絶縁部材22には、当該絶縁部材22を保護するため、当該絶縁部材22の処理空間S1側の面を覆う絶縁部材カバー23が設けられている。
【0033】
さらに、金属窓20の上方側には天板部80が配置されている。天板部80は、金属枠14上に設けられた側壁部81によって支持されている。
なお、金属窓20を構成する部分窓21は、吊り下げ部材(図示せず)を介して天板部80から吊り下げられている。
【0034】
上述の金属窓20、側壁部81及び天板部80にて囲まれた空間はアンテナ室S2を構成し、アンテナ室S2の内部には、部分窓21に面するように高周波アンテナ90が配置されている。
【0035】
高周波アンテナ90は、例えば、絶縁材料から形成されるスペーサ(図示せず)を介して部分窓21から離間して配置される。高周波アンテナ90は、各部分窓21に対応する面に沿い、矩形状の金属窓20の周方向に沿って周回するように、例えば渦巻状に、同心状に複数形成され多環状のアンテナを構成する。
【0036】
各高周波アンテナ90には、整合器42を介して高周波電源43が接続されている。各高周波アンテナ90には、高周波電源43から整合器42を介して、例えば13.56MHzの高周波電力が供給される。これにより、プラズマ処理の間、部分窓21それぞれの表面の上面から下面を循環する渦電流が誘起され、この渦電流によって処理空間S1の内部に誘導電界が形成される。ガス吐出孔21aから吐出された処理ガスは、誘導電界によって処理空間S1の内部においてプラズマ化される。
【0037】
さらに、プラズマ処理装置1には制御部Uが設けられている。制御部Uは、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、プラズマ処理装置1における基板Gの処理を制御するプログラムが格納されている。上述のプログラムは、コンピュータに読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部Uにインストールされたものであってもよい。プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。
【0038】
<基板処理>
次に、プラズマ処理装置1における基板処理について説明する。なお、以下の基板処理は、制御部Uの制御の下、行われる。
まず、ゲートバルブ12が開かれ、基板Gが、搬入出口11を介して処理空間S1内に搬入され、載置台30上に載置される。その後、ゲートバルブ12が閉じられる。
【0039】
続いて、処理ガス供給部71から、各部分窓21の拡散室21bを介して処理空間S1内に処理ガスが供給される。また、排気部60による処理空間S1の排気が行われ、処理空間S1内が所望の圧力に調節される。
【0040】
次いで、高周波電源43から高周波アンテナ90に高周波電力が供給され、これにより金属窓20を介して処理空間S1内に均一な誘導電界が生じる。その結果、誘導電界により、処理空間S1内の処理ガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成される。そして、高周波電源41から載置台30の台本体31に供給されたバイアス用の高周波電力により、プラズマ中のイオンが基板Gに引き込まれ、基板Gに対しプラズマ処理が行われる。
【0041】
プラズマ処理の終了後、高周波電源41、43からの電力供給、処理ガス供給部71からの処理ガス供給が停止され、搬入時とは逆の順序で基板Gが搬出される。
これにより一連の基板処理が終了する。
【0042】
<締結構造K>
前述のように、接地部材50はそれぞれ、締結ネジ53によって、容器本体10の底壁10aに締結されている。言い換えると、プラズマ処理装置1は、接地部材50毎に、接地部材50と容器本体10の底壁10aとを締結ネジ53によって締結する締結構造を備える。具体的には、プラズマ処理装置1は、接地部材50毎に、当該接地部材50の長手方向に沿って、上記締結構造を複数備える。
また、前述のように、従来、接地部材と処理容器の底壁とを締結ネジにより締結する場合、部材間の熱膨張差により締結ネジが変形することがある。そこで、本実施形態にかかるプラズマ処理装置1では、部材間の熱膨張差による締結ネジ53の変形を抑制するため、以下の締結構造Kを備える。
【0043】
図6及び図7はそれぞれ、プラズマ処理装置1が備える締結構造Kの構成の概略を示す縦断面図であり、図6は熱膨張前の様子を示し、図7は熱膨張後の様子を示している。また、図8及び図9はそれぞれ、後述の第2の座金の下面図及び断面図である。
【0044】
締結構造Kにおいて、容器本体10の底壁10aは、図6及び図7に示すように、雌ネジ部100を有する。
【0045】
また、締結構造Kにおいて、締結ネジ53は、雌ネジ部100に螺合する雄ネジ部53aを有するネジ軸部53bと、該ネジ軸部53bの基端部に接続されたネジ頭部53cとを有する。締結ネジ53は例えばステンレスから形成される。
【0046】
さらに、締結構造Kにおいて、接地部材50は、締結ネジ53のネジ軸部53bが貫通する貫通孔51aを有する。貫通孔51aは、接地部材50の水平部51(図4等参照)における、雌ネジ部100に対応する位置に形成されている。貫通孔51aは、前述のように、その中心軸に直交する断面が、当該貫通孔51aが設けられた接地部材50の長手方向(図6及び図7の左右方向)に長い長丸形状(すなわち長円形状)である。言い換えると、貫通孔51aは、対応する接地部材50の長手方向に長径を有し、上記接地部材50の長手方向と直交する方向(図6及び図7の紙面に垂直方向)すなわち短手方向に短径を有する長穴である。貫通孔51aの短径L1(図5参照)は、締結ネジ53のネジ軸部53bのみ当該貫通孔51aに挿入でき第2の座金120等は挿入できないように設定されている。また、貫通孔51aの長径L2(図5参照)は、底壁10aと接地部材50との間に接地部材50の長手方向にかかる熱膨張差が生じたときに、接地部材50における貫通孔51aの形成部分の底壁10aに対する相対的な移動が締結ネジ53に妨げられないように設定されている。なお、貫通孔51aの短径L1は例えば4mm~8mmであり、長径L2は例えば10mm~20mmである。
【0047】
そして、締結構造Kは、締結ネジ53のネジ頭部53cと接地部材50との間において配置され、締結ネジ53のネジ軸部53bが貫通する第1の座金110及び第2の座金120を備える。第1の座金110は、締結ネジ53のネジ頭部53c側(「ネジ頭部の側」の一例)に配置され、第2の座金120は、接地部材50側(「第2の部材の側」の一例)に配置される。
【0048】
第1の座金110は、締結ネジ53のネジ軸部53bが貫通する穴111を有する。具体的には、第1の座金110は、例えば平座金であり、締結ネジ53のうちネジ軸部53bのみが通過可能な円形の穴111を中央に有する。
【0049】
第2の座金120は、図8及び図9に示すように、座金本体121と突出部122とを有する。
座金本体121は、例えば、円板状に形成され、締結ネジ53のネジ軸部53bが貫通する、長丸形状の穴である長穴121aを中央に有する。
突出部122は、座金本体121の下面から突出するように形成されている。突出部122は、座金本体121の長穴121aの長径方向と接地部材50の貫通孔51aの長径方向とが一致した状態で、当該貫通孔51aと係合するように当該貫通孔51aに挿入され、具体的には、当該貫通孔51aに嵌入される。突出部122は、座金本体121の下面において、接地部材50の貫通孔51aと係合可能な位置に設けられればよく、例えば、長穴121aの短径方向の端部に、長径方向に沿って設けられるとよい。これにより、第2の座金120は、接地部材50に対し固定される。
【0050】
第1の座金110及び第2の座金120は、剛性が高い導電性材料、例えばステンレスで形成される。また、第1の座金110及び第2の座金120は、接地部材50が締結ネジ53の軸方向に膨張したときに当該第1の座金110及び第2の座金120が変形することを抑制するため、厚い方が好ましい。市場に流通している一般的な座金の厚みが、約1mmであるのに対し、第1の座金110及び第2の座金120の厚みは、例えばそれぞれ2mm~4mmである。
【0051】
第1の座金110及び座金本体121の直径は、例えば、互いに略等しく、10mm~12mmである。
また、第2の座金120の長穴121aの長径は、例えば、接地部材50の貫通孔51aの長径L2と等しく、10mm~20mmである。第2の座金120の長穴121aの短径に関する寸法は以下の通りである。すなわち、例えば、突出部122が長穴121aの端部に設けられる場合においては、突出部122を含めた長穴121aの短径は、接地部材50の貫通孔51aの短径L1と等しく、4mm~8mmであり、両端の突出部122の間の寸法は、貫通孔51aの短径L1より、突出部122の分、小さく、3mm~7mmである。
なお、第1の座金110の、円形の穴111の直径は、例えば、第2の座金120の長穴121aの短径と等しく、4mm~8mm、若しくは突出部122の間の寸法と等しく、3mm~7mmである。
【0052】
また、締結構造Kでは、第1の座金110における第2の座金120と接触する第1の接触面112と、第2の座金120における第1の座金110と接触する第2の接触面(具体的には、座金本体121の上面)121bの、いずれか一方若しくは両方が、潤滑性被覆膜で覆われている。これにより、第1の座金110と第2の座金120との間の摩擦力を低減することができる。なお、潤滑性被覆膜とは、摩擦力を低減するための潤滑材料により被覆することにより形成される膜である。
【0053】
上記第1の接触面112及び第2の接触面121bの少なくともいずれか一方に形成する潤滑性被覆膜は、締結ネジ53と接地部材50との間で電気的導通を維持する必要があるため、導電性を有している。導電性を有する潤滑性被覆膜とは、例えば、導電性を有するテフロン潤滑メッキ膜であり、より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)含有無電解ニッケルメッキによる被覆によって形成される膜である。
【0054】
<締結構造Kにおける締結方法>
続いて、締結構造Kにおける締結方法の一例について説明する。
この締結方法ではまず、容器本体10(具体的にはその底壁10a)と、接地部材50とを用意し、第1の座金110と第2の座金120とを用意し、締結ネジ53を用意する。
【0055】
次いで、容器本体10の底壁10aの雌ネジ部100と、対応する接地部材50の貫通孔51aが連通するように、底壁10aと接地部材50を重ねわせる。
【0056】
また、第2の座金120の突出部122を、接地部材50の貫通孔51aに挿入させる。具体的には、第2の座金120の長穴121aの長径方向と接地部材50の貫通孔51aの長径方向とを一致させ、その状態で、第2の座金120の突出部122を、上記貫通孔51aに嵌入させる。
【0057】
そして、締結ネジ53のネジ軸部53bを、第1の座金110の穴111、突出部122が接地部材50の貫通孔51aに嵌入された第2の座金120の長穴121a、及び、接地部材50の貫通孔51aを貫通させ、雄ネジ部53aを容器本体10の底壁10aの雌ネジ部100に螺合させ、容器本体10の底壁10aと接地部材50とを締結する。
【0058】
<締結構造Kの作用及び効果>
続いて、プラズマ処理装置1における締結構造Kの作用及び効果について説明する。
プラズマ処理装置1において、接地部材50は、接地部材50が固定される容器本体10の底壁10aに比べ、処理ガスのプラズマからの直接的な入熱が多い。そのため、プラズマ処理中に、接地部材50と底壁10aとの間に温度差が生じ、両者の間に熱膨張差が生じ、具体的には、接地部材50が、容器本体10の底壁10aより高温となり且つより大きく膨張する。
【0059】
したがって、プラズマ処理中に、接地部材50における貫通孔51aの形成部分が、底壁10aに対して、接地部材50の長手方向に相対的に移動する。
また、接地部材50が厚い場合、プラズマ処理中に締結ネジ53の軸方向すなわち接地部材50の厚み方向にも、接地部材50が膨張し、この膨張によって接地部材50から締結ネジ53のネジ頭部53cを押し上げる力が作用することで、締結ネジ53の軸力が増加することがある。なお、締結ネジ53もその軸方向に膨張するが、本実施形態のように、接地部材50の材料がアルミニウムであり締結ネジ53の材料がステンレスである場合等、接地部材50の方が締結ネジ53より熱膨張率が高い場合、接地部材50の膨張により、締結ネジ53の軸力はより増加する。
【0060】
上述のように接地部材50の熱膨張により締結ネジ53の軸力が増加すると、図1を用いて説明した従来の座金を用いない締結構造では、接地部材50の座面側が陥没し、締結ネジ53のネジ頭部53cと接地部材50との間で滑りが生じなくなってしまう場合がある。この場合、接地部材50における貫通孔51aの形成部分が、熱膨張に伴って、底壁10aに対して、接地部材50の長手方向に相対的に移動すると、その移動に、ネジ頭部53cが追従してしまい、締結ネジ53が曲がってしまう。
【0061】
ここで、本実施形態にかかる締結構造と異なり、締結ネジ53のネジ頭部53cと接地部材50との間に1枚の平座金を用いる締結構造(以下、「比較の締結構造」という。)を考える。この比較の締結構造では、1枚の平座金が薄いと、接地部材50の熱膨張により締結ネジ53の軸力が増加すると、平座金が破損する場合がある。また、比較の締結構造では、接地部材50の熱膨張により締結ネジ53の軸力が増加すると、平座金の破損が生じなくても、接地部材50の座面側が、座金を用いない場合に比べて浅くではあるが、陥没する場合がある。いずれの場合も、接地部材50と平座金との間で滑りが生じなくなってしまう。そうすると、接地部材50における貫通孔51aの形成部分が、熱膨張に伴って、容器本体10の底壁10aに対して、接地部材50の長手方向に相対的に移動すると、その移動にネジ頭部53cが追従してしまい、締結ネジ53が曲がってしまう。
【0062】
それに対し、本実施形態にかかる締結構造Kでは、締結ネジ53のネジ頭部53cと接地部材50との間に、第1の座金110と第2の座金120とを重ねて用いており、実質的に、締結ネジ53のネジ頭部53cと接地部材50との間に用いる座金を、上記比較の締結構造よりも厚くし剛性を高くしている。したがって、接地部材50の熱膨張により締結ネジ53の軸力が増加したときに、締結ネジ53のネジ頭部53cと接地部材50との間に用いる座金(第1の座金110と第2の座金120)が変形するのを抑制することができる。また、上述のように第1の座金110と第2の座金120とを重ねて用いているため、接地部材50の熱膨張により締結ネジ53の軸力が増加したときに、接地部材50の座面側が浅く陥没し接地部材50と第2の座金120との間で滑りが生じなくなっても、第1の座金110と第2の座金120との間で滑りが生じ得る。なぜならば、第1の座金110と第2の座金120との直径が略等しいこと、これらの材料に剛性が高いステンレスが用いられていること等から、第1の座金110と第2の座金120との間で陥没が生じないからである。したがって、接地部材50における貫通孔51aの形成部分が、熱膨張に伴って、容器本体10の底壁10aに対して、接地部材50の長手方向に相対的に移動したときに、第1の座金110と第2の座金120との間で滑りが生じるため、上記相対的な移動に、締結ネジ53のネジ頭部53cが追従するのを抑制することができる。その結果、締結ネジ53が曲がるのを抑制することができる。
つまり、本実施形態によれば、底壁10aと接地部材50とを締結ネジ53により締結する締結構造において、部材間の熱膨張差により締結ネジ53が変形するのを抑制することができる。
なお、第1の座金110と第2の座金120との間で滑りが生じるようにしたため、締結ネジ53のネジ頭部53cに偶発的にトルク力がかかることを防ぐことができ、締結ネジ53が意図せず緩むのを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態にかかる接触構造では、接地部材50の貫通孔51aに挿入される突出部122を第2の座金120に設け、意図的に、接地部材50と第2の座金120との間で滑りが生じないようにし、つまり、接地部材50に対し第2の座金120を固定している。接地部材50に対し第2の座金120が固定されていないと、第2の座金120が導電性の非被覆領域R2からはみ出し、絶縁性の被覆領域R1にかかり、第2の座金120と接地部材50との間の電気的導通が不良となるおそれがある。それに対し、上述のように接地部材50に対し第2の座金120を固定することで、第2の座金120を常に非被覆領域R2内に位置させることができるため、第2の座金120と接地部材50との間の電気的導通が不良となるのを防ぐことができる。その結果、接地部材50をより確実に電気的に接地させることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、第1の座金110における第2の座金120と接触する第1の接触面112と、第2の座金120における第1の座金110と接触する第2の接触面(具体的には、座金本体121の上面)121bの、いずれか一方若しくは両方が、潤滑性被覆膜で覆われている。そのため、第1の座金110と第2の座金120との間で滑りが簡単に生じる。したがって、接地部材50における貫通孔51aの形成部分が、熱膨張に伴って、容器本体10の底壁10aに対して、接地部材50の長手方向に相対的に移動したときに、その移動に、締結ネジ53のネジ頭部53cが追従するのをより確実に抑制することができる。その結果、締結ネジ53が曲がるのをより確実に抑制することができる。
さらに、潤滑性被覆膜が導電性を有するため、接地部材50と底壁10aとの電気的導通を損なわずに、締結ネジ53が曲がるのを抑制することができる。
なお、上記第1の接触面112と上記第2の接触面121bの両方を、潤滑性被覆膜で覆っておくことにより、第1の座金110と第2の座金120との間で滑りが生じたときに第1の座金110と第2の座金120との間に作用する摩擦力が低減される。したがって、潤滑性被覆膜が剥離されるのを抑制することができる。
【0065】
<変形例>
以上の例では、第1の座金110における第2の座金120と接触する第1の接触面112と、第2の座金120における第1の座金110と接触する第2の接触面121bの、いずれか一方若しくは両方が、潤滑性被覆膜で覆われていた。潤滑性被覆膜で覆われる部分は、これに限られず、例えば、第1の座金110の全体及び第2の座金120の全体のいずれか一方若しくは両方であってもよい。つまり、締結構造Kでは、少なくとも、上記第1の接触面112と上記第2の接触面121bのいずれか一方若しくは両方が潤滑性被覆膜で覆われていればよい。
【0066】
また、以上の例では、プラズマ処理の処理対象の基板はガラス基板であったが、半導体ウェハ等の他の基板であってもよい。
【0067】
以上の例では、プラズマ処理装置1を構成する容器本体10の底壁10aと接地部材50との、締結ネジ53を用いた締結構造に、本開示にかかる技術を用いていたが、本開示にかかる技術は、プラズマ処理装置1における締結ネジを用いた他の締結構造にも適用することができる。また、本開示にかかる技術は、プラズマ処理装置以外の基板処理装置における、締結ネジを用いる締結構造に適用することができる。
【0068】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 プラズマ処理装置
10 容器本体
10a 底壁
50、50、50、50、50 接地部材
51a 貫通孔
53 締結ネジ
53a 雄ネジ部
53b ネジ軸部
53c ネジ頭部
100 雌ネジ部
110 第1の座金
111 穴
120 第2の座金
121a 長穴
122 突出部
G ガラス基板
K 締結構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9