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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】変性炭化物粒子の製造方法、組成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/956 20170101AFI20241129BHJP
   C01B 32/921 20170101ALI20241129BHJP
   C01B 32/949 20170101ALI20241129BHJP
   C01B 32/991 20170101ALI20241129BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241129BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20241129BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C01B32/956
C01B32/921
C01B32/949
C01B32/991
C08L101/00
C08K3/00
C08K9/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021037952
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138208
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-090261(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104610780(CN,A)
【文献】特表2010-503232(JP,A)
【文献】特開2015-119170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0279506(US,A1)
【文献】特開昭62-113800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中で、炭化物粒子と酸化剤とを接触させて、酸化炭化物粒子である変性炭化物粒子を得る変性工程を含む、変性炭化物粒子の製造方法であって、
前記水溶液が、アルカリ源を含み、
前記水溶液のpHが、12以上であり、
前記炭化物粒子が、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、炭化チタン粒子、炭化タングステン粒子、炭化鉄粒子、炭化バナジウム粒子、炭化タンタル粒子、炭化ジルコニウム粒子、炭化ニッケル粒子、炭化モリブデン粒子、炭化ニオブ粒子、炭化クロム粒子、及び、炭化ハフニウム粒子からなる群から選択される1種以上である、
変性炭化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記酸化剤の標準酸化還元電位が1.50V以上である、請求項1に記載の変性炭化物粒子の製造方法。
【請求項3】
前記酸化剤が過硫酸塩である、請求項1又は2に記載の変性炭化物粒子の製造方法。
【請求項4】
水及び有機溶媒の少なくとも一方の存在下で、前記変性工程で得られた前記変性炭化物粒子と表面修飾剤と、を接触させて、
前記表面修飾剤が吸着して表面修飾された変性炭化物粒子を得る吸着工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の変性炭化物粒子の製造方法。
【請求項5】
前記炭化物粒子が、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、炭化チタン粒子、及び、炭化タングステン粒子からなる群から選択される1種以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の変性炭化物粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性炭化物粒子の製造方法、及び、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化物粒子の産業上の使用用途はさまざまであり、例えば、樹脂をバインダーとして炭化物粒子を分散させた材料がある。
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂、液状硬化剤、炭化ケイ素などを含む熱伝導性フィラー、及び、分散剤、を含有する、ペースト状樹脂組成物が開示されている(請求項1、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/181737号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、炭化ケイ素を組成物から形成される硬化物の熱伝導性を向上させるために使用しているが、炭化物粒子には、その他にも様々な用途がある。
本発明者が、特許文献1に記載される組成物を用いて製造される材料のような、炭化物粒子を含む材料(例えば炭化物粒子と樹脂バインダーとを含む材料)を検討したところ、炭化物粒子は、材料中に分散して存在する場合における充填性に改善の余地があり、炭化物粒子に期待される機能を十全に発揮できない場合も多いことが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、充填性に優れる変性炭化物粒子の製造方法を提供することを課題とする。更に、上記変性炭化物粒子の製造方法に関連する組成物を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
〔1〕
水溶液中で、炭化物粒子と酸化剤とを接触させて、変性炭化物粒子を得る変性工程を含む、変性炭化物粒子の製造方法。
〔2〕
上記酸化剤の標準酸化還元電位が1.50V以上である、〔1〕に記載の変性炭化物粒子の製造方法。
〔3〕
上記酸化剤が過硫酸塩である、〔1〕又は〔2〕に記載の変性炭化物粒子の製造方法。
〔4〕
上記水溶液のpHが12以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の変性炭化物粒子の製造方法。
〔5〕
水及び有機溶媒の少なくとも一方の存在下で、上記変性工程で得られた上記変性炭化物粒子と表面修飾剤と、を接触させて、
上記表面修飾剤で修飾された変性炭化物粒子を得る吸着工程を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の変性炭化物粒子の製造方法。
〔6〕
上記炭化物粒子が、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、炭化チタン粒子、及び、炭化タングステン粒子からなる群から選択される1種以上である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の変性炭化物粒子の製造方法。
〔7〕
〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の変性炭化物粒子の製造方法で製造された変性炭化物粒子と、樹脂バインダー又はその前駆体と、を含む、組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充填性に優れる変性炭化物粒子の製造方法熱を提供できる。更に、上記変性炭化物粒子の製造方法に関連する組成物も提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の変性炭化物粒子の製造方法について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
【0010】
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本明細書において、温度によって値が変化し得る事項(例えば、標準酸化還元電位、pH等)の値について言及する場合、特段の断りがない限り、その値は25℃における値を意図する。例えば、水の容量について述べる場合、特段の断りがない限り、その容量は25℃における容量を意図する。
本明細書において、「pH」は、公知のpHメーターを用いて、JIS Z8802-1984に準拠した方法により測定されるpHである。pHの測定温度は25℃とする。
本明細書において「室温」は、特段の断りがない限り、25℃である。
【0012】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」との記載は、「アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれか一方又は双方」の意味を表す。また、「(メタ)アクリルアミド基」との記載は、「アクリルアミド基及びメタクリルアミド基のいずれか一方又は双方」の意味を表す。
【0013】
本明細書において、酸無水物基は、1価の基であってもよく、2価の基であってもよい。なお、酸無水物基が1価の基を表す場合、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び、無水トリメリット酸等の酸無水物から任意の水素原子を除いて得られる置換基が挙げられる。また、酸無水物基が2価の基を表す場合、*-CO-O-CO-*で表される基を意図する(*は結合位置を表す)。
【0014】
なお、本明細書において、置換又は無置換を明記していない置換基等については、可能な場合、目的とする効果を損なわない範囲で、その基に更に置換基(例えば、後述する置換基群Y)を有していてもよい。例えば、「アルキル基」という表記は、目的とする効果を損なわない範囲で、置換又は無置換のアルキル基(置換基を有してもよいアルキル基)を意味する。
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」という場合の置換基の種類、置換基の位置、及び置換基の数は特に制限されない。置換基の数としては、例えば、1個、又は、2個以上が挙げられる。置換基としては、例えば、水素原子を除く1価の非金属原子団が挙げられ、以下の置換基群Yから選択される基が好ましい。
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
【0015】
置換基群Y:
ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、-I等)、水酸基、アミノ基、カルボン酸基及びその共役塩基基、無水カルボン酸基、シアネートエステル基、不飽和重合性基、エポキシ基、オキセタニル基、アジリジニル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アルデヒド基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N-アルキルカルバモイルオキシ基、N-アリールカルバモイルオキシ基、N,N-ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N-ジアリールカルバモイルオキシ基、N-アルキル-N-アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N-アルキルアシルアミノ基、N-アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキルウレイド基、N’-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリールウレイド基、N-アルキルウレイド基、N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アリールウレイド基、N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アリール-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N-アルキルカルバモイル基、N,N-ジアルキルカルバモイル基、N-アリールカルバモイル基、N,N-ジアリールカルバモイル基、N-アルキル-N-アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(-SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N-アルキルスルフィナモイル基、N,N-ジアルキルスルフィナモイル基、N-アリールスルフィナモイル基、N,N-ジアリールスルフィナモイル基、N-アルキル-N-アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N-アルキルスルファモイル基、N,N-ジアルキルスルファモイル基、N-アリールスルファモイル基、N,N-ジアリールスルファモイル基、N-アルキル-N-アリールスルファモイル基、N-アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(-Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(-Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(-Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(-PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(-PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(-PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(-PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(-POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(-POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(-OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(-OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(-OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(-OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(-OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(-OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルキル基。また、上述の各基は、可能な場合、更に置換基(例えば、上述の各基のうちの1以上の基)を有してもよい。例えば、置換基を有してもよいアリール基も、置換基群Yから選択可能な基として含まれる。
置換基群Yから選択される基が炭素原子を有する場合、上記基が有する炭素数としては、例えば、1~20である。
置換基群Yから選択される基が有する水素原子以外の原子の数としては、例えば、1~30である。
また、これらの置換基は、可能であるならば置換基同士、又は置換している基と結合して環を形成してもよいし、していなくてもよい。例えば、アルキル基(又は、アルコキシ基のように、アルキル基を部分構造として含む基におけるアルキル基部分)は、環状のアルキル基(シクロアルキル基)でもよく、部分構造として1以上の環状構造を有するアルキル基でもよい。
【0016】
[変性炭化物粒子の製造方法]
本発明における変性炭化物粒子の製造方法(以下、「本発明の方法」とも言う)は、水溶液中で、炭化物粒子と酸化剤とを接触させて、変性炭化物粒子を得る変性工程を含む。
このような構成をとることで本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
炭化物粒子は、様々な面で優れた特性を有するものの、通常の炭化物粒子は充填性が不十分であることが多い。すなわち、例えば、通常の炭化物粒子を含む材料の実測比重は、上記材料を形成するために使用した組成物に含まれる各成分の含有量比から計算的に想定される理想的な比重と比べて、有意に低く、その差も大きかった。
これは、通常の炭化物粒子が、炭化物粒子を含む材料を構成する他の成分又はその前駆体(樹脂バインダー又はその前駆体等)との親和性が不十分であることに起因すると考えられる。すなわち、このような親和性の不十分さに起因し、通常の炭化物粒子を含む材料では、材料中の炭化物粒子と他の材料との間等に、微小な空隙(マイクロボイド)が多く生じていると考えられた。このようなマイクロボイドの存在は、炭化物粒子及び炭化物粒子を含む材料に期待される諸性能の実現を阻害する恐れがある。
そこで、本発明の方法では、水溶液中で、炭化物粒子と酸化剤とを接触させることで炭化物粒子に対して表面改質を行っている。本発明の方法で得られた変性炭化物粒子は、変性炭化物粒子を含む材料を構成する他の成分又はその前駆体との親和性が改善されていて、充填性が良好であり、形成される材料中におけるマイクロボイドの存在を低減できている、と考えられている。その結果、本発明の方法で得られた変性炭化物粒子を含む組成物を用いて製造された材料は高比重化しており、炭化物粒子及び炭化物粒子を含む材料に期待される諸性能をより高度に実現できると考えられている。
以下、本発明の方法で製造される変性炭化物粒子の充填性がより優れることを、本発明の効果がより優れるともいう。
【0017】
〔製造方法〕
本発明の製造方法は、少なくとも、変性工程を含む。
本発明の方法は、更に、吸着工程を含むことも好ましい。
【0018】
<変性工程>
変性工程は、水溶液中で、炭化物粒子と酸化剤とを接触させて、変性炭化物粒子を得る工程である。
上記水溶液のpHは、例えば7超であり、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、12超が更に好ましく、13以上が特に好ましく、13超が最も好ましい。
上記水溶液のpHの上限に制限はなく、例えば、14以下である。
上記水溶液のpHは、上記炭化物粒子と上記酸化剤とを含んでいる状態における上記水溶液のpHを意味する。つまり、上記水溶液は、水と、炭化物粒子と、酸化剤とを少なくとも含む。
【0019】
上記水溶液中で、炭化物粒子と酸化剤とを接触させる時間は、0.1~24時間が好ましく、0.5~10時間がより好ましく、1.5~6時間が更に好ましい。
また、炭化物粒子と酸化剤とを接触させる際の上記水溶液の温度は、1~95℃が好ましく、25~80℃がより好ましく、45~65℃が更に好ましい。
【0020】
上記水溶液中で、炭化物粒子と酸化剤とを接触させる方法に制限はなく、例えば、ロッキングミル、ピースミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、ジェットミル、スターバースト、又は、ペイントコンディショナー等の粉砕機又は解砕機を用いた処理で混合して接触させる方法、スリーワンモーター等のメカニカルスターラー又はマグネチックスターラー等を用いて攪拌処理しながら接触させる方法、及び、炭化物粒子を充填したカートリッジに酸化剤等を含む酸化剤水溶液をポンプで循環させながら接触させる方法が挙げられる。
また、上記水溶液中で、炭化物粒子と酸化剤とを接触させる方法として、上記水溶液中で炭化物粒子又は変性炭化物粒子を可能な限り破壊しない方法を選択してもよい。ここでいう破壊とは、例えば、処理対象の炭化物粒子が凝集状の炭化物粒子である場合に、その凝集形態が破壊されることが挙げられる。
【0021】
上記水溶液中で、炭化物粒子と酸化剤とを接触させた後、得られた変性炭化物粒子を上記水溶液中から取り出すことが好ましい。
上記水溶液から変性炭化物粒子を取り出す方法に制限はなく、例えば、上記水溶液をろ過して、ろ物として変性炭化物粒子を分取(ろ取)する方法が挙げられる。
取り出された変性炭化物粒子を、水及び/又は有機溶媒等で洗浄することも好ましい。
【0022】
(炭化物粒子)
上記水溶液は、炭化物粒子を含む。
上記炭化物粒子は、実質的に炭化物からなる粒子であればよい。例えば、炭化物粒子中の炭化物の含有量は、炭化物粒子の全質量に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。上記含有量上限は、特に制限されないが、例えば、100質量%以下である。
上記炭化物とは、炭素と炭素よりも陽性の強い元素との化合物であり、炭素と金属(ケイ素及びホウ素等の半金属元素を含む)との化合物であることが好ましく、炭素と遷移金属又は半金属との化合物であることがより好ましく、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化鉄、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ジルコニウム、炭化ニッケル、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化クロム、及び、炭化ハフニウムからなる群から選択される1種以上が更に好ましく、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、及び、炭化タングステンからなる群から選択される1種以上が特に好ましい。
上記炭化物は、侵入型炭化物でも、共有結合性炭化物でも、イオン性炭化物でもよく、侵入型炭化物でも、共有結合性炭化物が好ましい。
炭化物粒子は、上記炭化物を1種単独で含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
炭化物粒子は、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、炭化チタン粒子、炭化タングステン粒子、炭化鉄粒子、炭化バナジウム粒子、炭化タンタル粒子、炭化ジルコニウム粒子、炭化ニッケル粒子、炭化モリブデン粒子、炭化ニオブ粒子、炭化クロム粒子、及び、炭化ハフニウム粒子からなる群から選択される1種以上が好ましく、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、炭化チタン粒子、及び、炭化タングステン粒子からなる群から選択される1種以上がより好ましい。これら炭化物粒子は、所定の炭化物(例えば、炭化ケイ素粒子における炭化ケイ素)が粒子の主成分(最も多い成分)となっている粒子であることが好ましい。例えば、上記所定の炭化物の含有量は、粒子の全質量に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。上記含有量上限は、特に制限されないが、例えば、100質量%以下である。
炭化物粒子は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0023】
上記炭化物粒子の形状は、特に制限されず、鱗片状、平板状、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、及び、不定形状のいずれであってもよい。また、炭化物粒子は、これらの形状の微粒子が凝集して形成する、凝集状の粒子(二次粒子)であってもよい。
凝集状の粒子は、全体として、例えば、球形であってもよく不定形であってもよい。
【0024】
上記炭化物粒子の大きさ(炭化物粒子が二次粒子である場合、二次粒子としての大きさ)は特に制限されない。中でも、上記炭化物粒子の分散性がより優れる点で、炭化物粒子の粒子径(通常は平均一次粒子径、炭化物粒子が二次粒子の場合は二次粒子としての平均粒子径)は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下が更に好ましい。上記粒子径の下限は特に制限されないが、取り扱い性の点で、100nm以上が好ましく、500nm以上がより好ましく、1μm以上が更に好ましい。
本明細書において粒子径は、市販品を用いる場合、カタログ値を採用する。カタログ値が無い場合、上記粒子径の測定方法としては、電子顕微鏡を用いて、100個の無機物を無作為に選択して、それぞれの無機物の粒径(長径)を測定し、それらを算術平均して求める。
【0025】
上記水溶液中、炭化物粒子の含有量に制限はなく、例えば、上記水溶液における水100質量部に対して、例えば0.1~10000質量部であり、0.1~100質量部が好ましく、1~30質量部がより好ましく、3~20質量部が更に好ましい。
炭化物粒子は、一種単独で使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0026】
(水)
上記水溶液は、水を含む。
上記水溶液中、水の含有量は、上記水溶液の全質量に対して、20~99質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましく、65~90質量%が更に好ましい。
【0027】
(酸化剤)
上記水溶液は、酸化剤を含む。
酸化剤に制限はなく、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、及び、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩;硝酸セリウムアンモニウム、硝酸ナトリウム、及び、硝酸アンモニウムのような硝酸塩;過酸化水素、及び、tert-ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物;過マンガン酸カリウムのような過マンガン酸塩;二価の銅化合物、及び、遷移金属化合物;過ヨウ素酸カリウム、及び、過ヨウ素酸ナトリウムのような超原子価ヨウ素化合物;ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、及び、クロラニルのようなキノン化合物;並びに、次亜塩素酸ナトリウム、及び、亜塩素酸ナトリウムのようなハロゲンオキソ酸の塩が挙げられる。
中でも酸化剤は、過硫酸塩を含むことが好ましく、過硫酸塩であることがより好ましい。
また、酸化剤の作用を補助するために、酸化剤とは別に触媒を使用してもよい。上記触媒としては、例えば、二価の鉄化合物(FeSO等)、及び、三価の鉄化合物が挙げられる。
なお、酸化剤及び/又は触媒は水和物であってもよい。
【0028】
また、酸化剤は、標準酸化還元電位が、0.30V以上であることが好ましく、1.50V以上であることがより好ましく、1.70以上であることが更に好ましく、1.80V以上が特に好ましい。酸化剤の、標準酸化還元電位の上限に制限はなく、例えば、4.00V以下であることが好ましく、2.50V以下であることがより好ましい。
上記標準酸化還元電位は、標準水素電極を基準とする。
【0029】
上記水溶液中、酸化剤の含有量は、上記水溶液における水100質量部に対して、0.05~20質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましく、1~20質量部が更に好ましい。
酸化剤は、一種単独で使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
上記水溶液が触媒を含む場合、その含有量は、上記水溶液における水100質量部に対して、0.005~2質量部が好ましく、0.01~2質量部がより好ましく、0.1~2質量部が更に好ましい。
上記水溶液中、触媒の含有量は、上記水溶液における酸化剤100質量部に対して、0.1~80質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましく、5~20質量部が更に好ましい。
触媒は、一種単独で使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
また、炭化物粒子と接触させる酸化剤の量は、炭化物粒子の100質量部に対して、0.1~1000質量部が好ましく、1~250質量部がより好ましく、15~120質量部が更に好ましい。
【0030】
(アルカリ源)
上記水溶液は、上記水溶液のpHを調製するために、上述の成分以外にアルカリ源を含むことも好ましい。
上記アルカリ源としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム等)、及び、アルカリ土類金属水酸化物のような無機塩基;並びに、有機塩基が挙げられる。
上記水溶液中、アルカリ源の含有量は、上記水溶液のpHを所望の温度に調整できるように適宜調整すればよく、例えば、上記水溶液における水100質量部に対して、0.1~10質量部である。
【0031】
<吸着工程>
吸着工程は、水及び有機溶媒の少なくとも一方の存在下で、上記変性工程で得られた上記変性炭化物粒子と表面修飾剤と、を接触させて、表面修飾剤で修飾された変性炭化物粒子を得る工程である。
ここで、表面修飾剤で修飾された変性炭化物粒子を指して、特に、表面修飾炭化物粒子ともいう。
なお、表面修飾炭化物粒子とは、表面修飾剤が吸着して表面修飾された状態の変性炭化物粒子を指し、表面修飾炭化物粒子も変性炭化物粒子に含める。
また、表面修飾されていない変性炭化物粒子、及び、表面修飾炭化物粒子における表面修飾剤以外の部分を指して、酸化炭化物粒子ともいう。
つまり、表面修飾炭化物粒子は、酸化炭化物粒子と、酸化炭化物粒子の表面上に吸着した表面修飾剤とを含む材料である。
【0032】
吸着工程は、上記水及び有機溶媒の少なくとも一方、上記変性工程で得られた上記変性炭化物粒子、及び、上記表面修飾剤を含む混合液中で実施される。
上記混合液中で、上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)と表面修飾剤とを接触させる時間は、0.1~24時間が好ましく、0.5~10時間がより好ましく、1.5~6時間が更に好ましい。
また、上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)と表面修飾剤とを接触させる際の上記混合液の温度は、表面修飾剤の種類にもよるが、例えば、1~200℃が好ましく、10~160℃がより好ましく、15~140℃が更に好ましい。
【0033】
上記混合液中で、上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)と表面修飾剤とを接触させる方法に制限はなく、例えば、スリーワンモーター等のメカニカルスターラー又はマグネチックスターラー等を用いて攪拌処理しながら接触させる方法、及び、変性炭化物粒子を充填したカートリッジに表面修飾剤の溶液をポンプ等で循環させながら接触させる方法が挙げられる。なお、上記循環させながら接触させる方法の最中において、上記表面修飾剤の溶液の一部が上記カートリッジに充填された変性炭化物粒子と接触していて、上記表面修飾剤の溶液の他の一部がポンプ中に存在する等していて変性炭化物粒子とは接触していなかったとしても、吸着工程に供される全ての変性炭化物粒子及び上記表面修飾剤の溶液を、全体として、上記混合液であるとみなす。
また、上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)と表面修飾剤とを接触させる方法として、上記混合液中で変性炭化物粒子を可能な限り破壊しない方法を選択してもよい。
【0034】
上記混合液中で、上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)と表面修飾剤とを接触させた後、得られた表面修飾炭化物粒子を上記混合液中から取り出してもよい。
上記混合液から表面修飾炭化物粒子を取り出す方法に制限はなく、例えば、上記混合液をろ過して、ろ物として表面修飾炭化物粒子を分取(ろ取)する方法が挙げられる。
取り出された表面修飾炭化物粒子を、水及び/又は有機溶媒等で洗浄することも好ましい。
洗浄された表面修飾炭化物粒子は、オーブン等を用いて乾燥処理されることも好ましい。
なお、上記混合液には、後述するような組成物を構成する変性炭化物粒子以外の固形分成分(後述するエポキシ化合物のような樹脂バインダー又はその前駆体の全部又は一部等)を添加してもよく、例えば、組成物を製造するのと同時に、その中で表面修飾炭化物粒子を作製してもよい。
【0035】
(有機溶媒)
吸着工程で使用される有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトニトリル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、及び、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
吸着工程で有機溶媒を用いる場合、上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)と表面修飾剤とを接触させる際の上記混合液の全質量に対して、上記有機溶媒の含有量は、5~99質量%が好ましく、20~90質量%がより好ましく、30~80質量%が更に好ましい。
有機溶媒は、一種単独で使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0036】
(水)
吸着工程で水を用いる場合、上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)と表面修飾剤とを接触させる際の上記混合液の全質量に対して、水の含有量は、5~99質量%が好ましく、20~90質量%がより好ましく、30~80質量%が更に好ましい。
【0037】
上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)と表面修飾剤とを接触させる際の上記混合液の全質量に対して、水と有機溶媒との合計含有量は、5~99質量%が好ましく、20~90質量%がより好ましく、30~80質量%が更に好ましい。
【0038】
(変性工程で得られた変性炭化物粒子)
吸着工程では、上記変性工程で得られた変性炭化物粒子を用いる。
上記変性工程で得られた変性炭化物粒子は、通常、酸化炭化物粒子である。
上記変性工程で得られた変性炭化物粒子の使用量は、例えば、水と有機溶媒との合計含有量の100質量部に対して、例えば、1~100質量部が好ましく、10~80質量部がより好ましく、30~70質量部が更に好ましい。
【0039】
(表面修飾剤)
吸着工程では、表面修飾剤を用いる。
表面修飾剤は、無機成分(特に酸化炭化物粒子)を表面修飾できる化合物である。
なお、本明細書において、「表面修飾」とは無機成分(酸化炭化物粒子等)の表面の少なくとも一部に有機物が吸着している状態を意味する。吸着の形態は特に限定されず、結合している状態であればよい。すなわち、表面修飾は、有機物の一部が脱離して得られる有機基が無機成分(酸化炭化物粒子等)の表面に結合している状態も含む。結合は、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び、金属結合等、いずれの結合であってもよい。表面修飾は、表面の少なくとも一部に単分子膜を形成するようになされていてもよい。単分子膜は、有機分子の化学吸着によって形成される単層膜であり、Self-AssembledMonoLayer(SAM)として知られている。なお、本明細書において、表面修飾は、無機物(酸化炭化物粒子等)の表面の一部のみであっても、全体であってもよい。
【0040】
表面修飾剤としては、例えば、金属カップリング剤、樹脂、長鎖アルキル脂肪酸等のカルボン酸、及び、有機ホスホン酸、有機リン酸エステル等従来公知の表面修飾剤を使用できる。その他、例えば、特開2009-502529号公報、特開2001-192500号公報、特許4694929号、国際公開第2018/004660号の段落[0021]~[0093]、国際公開第2019/013325号の段落[0020]~[0065]、国際公開第2019/013261号の段落[0020]~[0067]、及び、国際公開第2019/013323号の段落[0020]~[0087]に記載の表面修飾剤を使用してもよい。
【0041】
・金属カップリング剤
表面修飾剤は、金属カップリング剤が好ましい。
金属カップリング剤は、金属原子に直接結合した加水分解性基を有する化合物である。
上記金属原子としては、例えば、Si、Ti、Zr、及び、Al等が挙げられる。
上記加水分解性基としては、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~10)、及び、塩素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
金属カップリング剤が有する、金属原子に直接結合した加水分解性基の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更により好ましい。上記数に上限はなく、例えば、10000である。
【0042】
金属カップリング剤は、反応性基を有することも好ましい。
上記反応性基は、例えば、後述するような樹脂バインダー又はその前駆体と架橋可能な基であることが好ましい。
上記反応性基の具体例としては、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基、(メタ)クリル基、スチリル基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、及び、酸無水物基(カルボン酸無水物又はリン酸無水物等)が挙げられる。
金属カップリング剤が有する、反応性基の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更により好ましい。上記数に上限はなく、例えば、10000である。
【0043】
金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、及び、アルミン酸ジルコニウムカップリング剤が挙げられる。
中でも金属カップリング剤はシランカップリング剤又はチタンカップリング剤が好ましい。
【0044】
シランカップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシラン、及び、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シランのようなアミノシラン系シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシシラン系シランカップリング剤;トリエトキシビニルシラン、及び、ビニル-トリ(β-メトキシエトキシ)シランのようなビニルシラン系シランカップリング剤;N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩のようなカチオニックシラン系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、及び、フェニルトリエトキシシランのようなフェニルシラン系シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなメタクリルシラン系シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなアクリルシラン系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランのようなイソシアネートシラン系シランカップリング剤;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートのようなイソシアヌレートシラン系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプトシラン系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリアルコシシシランのようなウレイドシラン系シランカップリング剤;並びに、p-スチリルトリメトキシシランのようなスチリルシラン系シランカップリング剤、が挙げられる。
【0045】
チタン系カップリング剤としては、例えば、プレンアクト38S、プレンアクトTTS、プレンアクト46B、プレンアクト55、プレンアクト41B、プレンアクト138S、プレンアクト238S、プレンアクト338X、プレンアクト44、プレンアクト9SA、プレンアクトET(いずれも味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、プレンアクトAL-M(味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。
ジルコニアカップリング剤としては、例えば、ケンリアクトNZ01(ケンリッチ社製)が挙げられる。
【0046】
また、金属カップリング剤は、ポリマータイプの金属カップリング剤であってもよい。
分子量は1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。上限は100000以下が好ましく、10000以下がより好ましい。また樹脂バインダー又はその前駆体と架橋可能な反応性官能基当量は1000g/mol以下が好ましく、500g/mol以下がより好ましい。
【0047】
金属カップリング剤を、上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)を接触させる際、金属カップリング剤における加水分解性基を事前に加水分解させた状態で接触させてもよい。
この際、金属カップリング剤における加水分解性基を事前に加水分解させたことで生じる、ヒドロキシ金属基(水酸基が金属原子と直接結合する基)で、金属カップリング剤を上記変性工程で得られた変性炭化物粒子(酸化炭化物粒子等)と架橋反応させることも好ましい。
【0048】
・硬化性化合物
表面修飾剤としては、硬化性化合物も使用できる。
なお、ここでいう硬化性化合物は、上述の金属カップリング剤とは異なる成分を意図する。
【0049】
硬化性化合物は、上記有機溶剤に溶解可能な化合物であることが好ましい。
硬化性化合物は、高分子化合物(樹脂)であってもよいし、低分子化合物であってもよい。
硬化性化合物の分子量は、例えば300~1000000である。
【0050】
樹脂である硬化性化合物は、熱可塑性を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0051】
硬化性化合物は、架橋性基を有する。
上記架橋性基は、後述の樹脂バインダー又はその前駆体(好ましくは樹脂バインダーの前駆体)と、架橋反応できる基であることも好ましい。
上記架橋性基は、水酸基と架橋反応できる基であることも好ましい。
上記架橋性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、シアネート基、イソシアネート基、エチレン性二重結合含有基((メタ)アクリロイル基等)、及び、カルボキシ基等が挙げられる。硬化性化合物が有する、上記架橋性基の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。上記数に上限はなく、例えば、10000である。
【0052】
樹脂である硬化性化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、及び、メラミン樹脂が挙げられる。
中でも、樹脂は、エポキシ樹脂、又は、シアネート樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0053】
上記エポキシ樹脂は、1分子中に1以上(好ましくは2以上)のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
なお、本明細書において、フェノキシ樹脂も、エポキシ樹脂に含まれる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチルカテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、及び、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0054】
シアネート樹脂としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及び、これらの一部がトリアジン化されたプレポリマーが挙げられる。
【0055】
また、表面修飾剤(例えば硬化性化合物である表面修飾剤)としては、後述する樹脂バインダー又はその前駆体(好ましくは樹脂バインダーの前駆体)を使用してもよいし、それ以外を使用してもよい。
【0056】
上記表面修飾剤の使用量は、例えば、上記有機溶媒及び上記水の合計含有量100質量部に対して、例えば、0.0001~20質量部が好ましく、0.01~15質量部がより好ましく、0.05~5質量部が更に好ましい。
表面修飾剤は、一種単独で使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0057】
<粒子径の変化>
本発明の方法において、一連の製造方法を経る前後において、製造方法に用いられた炭化物粒子と、得られる変性炭化物粒子と、の粒子径の変化率が小さいことが好ましい。また、本発明の用いられた炭化物粒子が凝集状の粒子である場合、一連の製造方法を経る中で、粒子の凝集状態が破壊されずに維持されていてもよい。
具体的には、下記式で求められる粒子径の変化率が、10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましい。上記粒子径の変化率の下限に特に制限はなく、例えば、上記粒子径の変化率は-5%以上でもよく、0%以上であることも好ましい。
式:粒子径の変化率(%)=〔1-(製造される変性炭化物粒子の粒子径)/(変性炭化物粒子の製造に用いられる炭化物粒子の粒子径)〕×100
粒子径の変化率を調整する方法としては、例えば、本発明の方法中で上記水溶液及び/又は混合液の混合及び/又は撹拌を行う際の剪断力を調整する方法が挙げられる。
【0058】
本発明の方法で製造される変性炭化物粒子の粒子径(通常は平均一次粒子径、変性炭化物粒子が二次粒子の場合は二次粒子としての平均粒子径)は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下が更に好ましい。上記粒子径の下限は特に制限されないが、取り扱い性の点で、100nm以上が好ましく、500nm以上がより好ましく、1μm以上が更に好ましい。
【0059】
[組成物]
本発明は組成物にも関する。
本発明の組成物は、本発明の方法で製造された変性炭化物粒子と、樹脂バインダー又はその前駆体と、を含む。
本発明の組成物に含まれる変性炭化物粒子は、物性及び/又は構造からその特徴を把握することが不可能又は非現実的ではあるが、上述のとおり充填性に優れる粒子である。そのため、本発明の組成物を用いれば、炭化物粒子(変性炭化物粒子)に期待される性能を十全に実現できる材料を得られる。
組成物は、特定の材料を形成するための組成物であることも好ましい。
組成物は、加熱、乾燥、露光、冷却、及び/又は、経時等で硬化する、硬化性組成物であることも好ましい。
【0060】
〔変性炭化物粒子〕
組成物が含む変性炭化物粒子は、本発明の方法で製造された変性炭化物粒子である。
以下、本発明の方法で製造された変性炭化物粒子を、単に「変性炭化物粒子」ともいう。
組成物中における、変性炭化物粒子及びその他の成分の含有量は、組成物の用途に応じて適宜調整すればよい。
例えば、変性炭化物粒子の含有量は、組成物の全固形分に対して、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましく、35体積%以上が更に好ましい。上限は100体積%未満であり、85体積%以下が好ましい。
変性炭化物粒子は、1種のみを使用していてもよいし、2種以上を使用してもよい。
なお、全固形分とは、組成物に含まれる溶媒以外の成分を意図し、溶媒以外であれば、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。例えば、組成物が、特定の材料を形成するための組成物である場合、固形分は、材料を形成する際に反応(重合)して化学構造が変化する成分でもよい。
【0061】
〔樹脂バインダー又はその前駆体(バインダー成分)〕
組成物は、樹脂バインダー又はその前駆体を含む。
以下、樹脂バインダー又はその前駆体を総称して、バインダー成分ともいう。
バインダー成分は、樹脂バインダーそのものであってもよいし、樹脂バインダーの前駆体であってもよい。
【0062】
樹脂バインダーそのものを使用する組成物としては、例えば、溶媒と、上記溶媒中に溶解したポリマー(樹脂)である樹脂バインダーとを含む組成物が挙げられる。この組成物の溶媒が蒸発することで、上記樹脂バインダーが析出し、上記樹脂バインダーがバインダー(結合剤)として機能する材料が得られる。
また、組成物が樹脂バインダーとして熱可塑性樹脂を含む場合、組成物は、例えば、熱可塑性樹脂である樹脂バインダーを含み、溶媒を含まない組成物であってもよい。この組成物を加熱溶融させてから所望の形態で冷却固化して、上記熱可塑性樹脂である樹脂バインダーがバインダー(結合剤)として機能する材料を得てもよい。
【0063】
樹脂バインダーの前駆体は、例えば、組成物から材料が形成される過程で、所定の条件で重合及び/又は架橋して、樹脂バインダー(重合体及び/又は架橋体)となる成分である。このように形成された樹脂バインダーが、材料中でバインダー(結合剤)として機能する。
樹脂バインダーの前駆体としては、例えば、硬化性化合物が挙げられる。
硬化性化合物としては、熱又は光(紫外光等)等によって重合及び/又は架橋が進行して硬化する化合物が挙げられる。つまり、熱硬化性化合物及び光硬化性化合物が挙げられる。これらの化合物は、ポリマーでもよいしモノマーでもよい。硬化性化合物は、2種以上の化合物(例えば主剤と硬化剤)の混合物であってもよい。なお、樹脂バインダーの前駆体は、表面修飾剤と化学反応してもよい。
【0064】
樹脂バインダー(樹脂バインダーの前駆体から形成される樹脂バインダーを含む)としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート系樹脂(ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂等)、及び、ラジカル重合体((メタ)アクリル樹脂等)のように重合性二重結合を有する2以上のモノマーが連鎖重合してなる樹脂が挙げられる。
【0065】
また、樹脂バインダー(樹脂バインダーの前駆体から形成される樹脂バインダーを含む)は、例えば、異なるモノマー間における下記(官能基1/官能基2)の1種以上の組み合わせが反応して形成される樹脂であってもよい。
(官能基1/官能基2)=(重合性二重結合/重合性二重結合)、(重合性二重結合/チオール基)、(カルボン酸ハロゲン化物基(カルボン酸塩化物基等)/一級又は二級アミノ基)、(カルボキシル基/一級又は二級アミノ基)(カルボン酸無水物基/一級又は二級アミノ基)、(カルボキシル基/アジリジン基)、(カルボキシル基/イソシアネート基)、(カルボキシル基/エポキシ基)、(カルボキシル基/ハロゲン化ベンジル基)、(一級又は二級アミノ基/イソシアネート基)、(一級、二級、又は三級アミノ基/ハロゲン化ベンジル基)、(一級アミノ基/アルデヒド類)、(イソシアネート基/イソシアネート基)、(イソシアネート基/水酸基)、(イソシアネート基/エポキシ基)、(水酸基/ハロゲン化ベンジル基)、(水酸基/カルボン酸無水物基)、(水酸基/アルコキシシリル基)、(エポキシ基/一級又は二級アミノ基)、(エポキシ基/カルボン酸無水物基)、(エポキシ基/水酸基)、(エポキシ基/エポキシ基)、(オキセタニル基/エポキシ基)、(アルコキシシリル基/アルコキシシリル基)等。
なお、重合性二重結合は、ラジカル重合等の重合が可能な炭素同士の二重結合を意図し、例えば、(メタ)アクリロイル基、及び、ビニル基における炭素同士の二重結合が挙げられる。
【0066】
中でも、組成物は、バインダー成分として、樹脂バインダーの前駆体を含むことが好ましく、エポキシ樹脂を形成可能な樹脂バインダーの前駆体を含むことがより好ましい。
樹脂バインダーは、一種単独で使用してもよく二種以上を使用してもよい。
【0067】
<エポキシ樹脂>
樹脂バインダー(特に、樹脂バインダーの前駆体から形成される樹脂バインダー)はエポキシ樹脂も好ましい。
つまり、組成物は、エポキシ樹脂を形成可能なバインダー成分(つまりエポキシ化合物等)を含むことも好ましい。
エポキシ樹脂は、エポキシ化合物単独で、又は、エポキシ化合物と他の化合物(フェノール化合物及びアミン化合物等の活性水素基含有化合物、及び/又は、酸無水物等)と重合させて形成できる。
中でも、エポキシ樹脂は、エポキシ化合物と他の化合物(好ましくはフェノール化合物)とを反応して形成されることが好ましい。
【0068】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物は、1分子中に、少なくとも1つのエポキシ基(オキシラニル基)を有する化合物である。
上記エポキシ基は、オキシラン環から1以上の水素原子(好ましくは1の水素原子)を除いてなる基である。上記エポキシ基は、可能な場合、更に置換基(直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~5のアルキル基等)を有していてもよい。
【0069】
エポキシ化合物が有するエポキシ基の数は、1分子中、2以上が好ましく、2~40がより好ましく、2~10が更に好ましく、2が特に好ましい。
エポキシ化合物の分子量は、150~10000が好ましく、150~1000がより好ましく、200~290が更に好ましい。
【0070】
エポキシ化合物のエポキシ基含有量は、2.0~20.0mmol/gが好ましく、5.0~15.0mmol/gがより好ましく、5.5~14.0mmol/gが更に好ましい。
なお、上記エポキシ基含有量は、エポキシ化合物1gが有する、エポキシ基の数を意図する。
エポキシ化合物は、芳香環基(好ましくは芳香族炭化水素環基)を有するのも好ましい。
【0071】
エポキシ化合物は、液晶性を示してもよく示さなくてもよい。
つまり、エポキシ化合物は、液晶化合物であってよい。言い換えれば、エポキシ基を有する液晶化合物であってもよい。
【0072】
エポキシ化合物としては、例えば、少なくとも部分的に棒状構造を含む化合物(棒状化合物)、及び、少なくとも部分的に円盤状構造を含む化合物円盤状化合物が挙げられる。
以下、棒状化合物及び円盤状化合物について詳述する。
【0073】
・棒状化合物
棒状化合物であるエポキシ化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及び、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が挙げられる。以上のような低分子化合物だけではなく、高分子化合物も使用できる。上記高分子化合物は、低分子の反応性基を有する棒状化合物が重合した高分子化合物である。
【0074】
棒状化合物は、ビフェニル骨格を有してもよい。
言い換えると、エポキシ化合物は、ビフェニル骨格を有するのも好ましく、この場合のエポキシ化合物は棒状化合物であるのも好ましい。
【0075】
・円盤状化合物
円盤状化合物であるエポキシ化合物は、少なくとも部分的に円盤状構造を有する。
円盤状構造は、少なくとも、脂環又は芳香族環を有する。特に、円盤状構造が、芳香族環を有する場合、円盤状化合物は、分子間のπ-π相互作用によるスタッキング構造の形成により柱状構造を形成しうる。
円盤状構造として、具体的には、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993又は特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに、特開2007-2220号公報及び特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造等が挙げられる。
【0076】
上記円盤状化合物は、エポキシ基を3つ以上有するのが好ましい。3つ以上のエポキシ基を有する円盤状化合物を含む組成物の硬化物はガラス転移温度が高く、耐熱性が高い傾向がある。
円盤状化合物が有するエポキシ基の数は、8以下が好ましく、6以下より好ましい。
【0077】
円盤状化合物の具体例としては、C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994)、及び特許第4592225号に記載されている化合物等において末端の少なくとも1つ(好ましくは3つ以上)をエポキシ基とした化合物が挙げられる。
円盤状化合物としては、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993、及び特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに特開2007-2220号公報、及び、特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造において末端の少なくとも1つ(好ましくは3つ以上)をエポキシ基とした化合物等が挙げられる。
【0078】
エポキシ化合物としては、他にも、例えば、ビスフェノールA、F、S、AD等のグリシジルエーテルであるビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物等;水素添加したビスフェノールA型エポキシ化合物、水素添加したビスフェノールAD型エポキシ化合物等;フェノールノボラック型のグリシジルエーテル(フェノールノボラック型エポキシ化合物)、クレゾールノボラック型のグリシジルエーテル(クレゾールノボラック型エポキシ化合物)、ビスフェノールAノボラック型のグリシジルエーテル等;ジシクロペンタジエン型のグリシジルエーテル(ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物);ジヒドロキシペンタジエン型のグリシジルエーテル(ジヒドロキシペンタジエン型エポキシ化合物);トリスフェノールメタン型エポキシ化合物;フェノキシ樹脂等;及び、側鎖にエポキシ基を有するアクリル樹脂、が挙げられる。上述の各化合物におけるグリシジルエーテル基及び/又はグリシジルエステル基の1個又は2個以上が、ジグリシジルアミノ基又はジグリシジルアミノアルキレン基(ジグリシジルアミノメチレン基等)に置き換わった化合物をエポキシ化合物として使用してもよい。
上述の各化合物は、置換基を有していてもよい。例えば、上述の各化合物に含まれる芳香環基、シクロアルカン環基、及び/又は、アルキレン基等が、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、ジグリシジルアミノ基、及び/又は、ジグリシジルアミノアルキレン基以外の置換基を有していてもよい。
【0079】
エポキシ化合物としては、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼンのグリシジルエーテルのようなポリヒドロキシ芳香環型のグリシジルエーテル(ポリヒドロキシ芳香環型エポキシ化合物)、及び、ポリカルボキシ芳香環型のグリシジルエステル(ポリカルボキシ芳香環型エポキシ化合物)も挙げられる。
上記ポリヒドロキシ芳香環型のグリジジルエーテルは、置換基として2以上(好ましくは2~6、より好ましくは2~3、更に好ましくは2)の水酸基を有する芳香環における、上記2以上の水酸基を、グリシジルエーテル化してなる構造の化合物である。
上記ポリカルボキシ芳香環型のグリシジルエステルは、置換基として2以上(好ましくは2~6、より好ましくは2~3、更に好ましくは2)のカルボキシ基を有する芳香環における、上記2以上の水酸基を、グリシジルエステル化してなる構造の化合物である。
上記芳香環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよく、芳香族炭化水素環が好ましい。上記芳香環は多環でも単環でもよい。上記芳香環の環員数は5~15が好ましく、6~12がより好ましく、6がより好ましい。
上記芳香環は、水酸基以外の置換基を有していても有していなくてもよい。
上記ポリヒドロキシ芳香環型のグリジジルエーテルとしては、例えば、1,3-フェニレンビス(グリシジルエーテル)が挙げられる。
上記ポリヒドロキシ芳香環型のグリシジルエーテル、及び、上記ポリカルボキシ芳香環型のグリシジルエステルにおける、グリシジルエーテル基又はグリシジルエステル基の1個又は2個以上が、ジグリシジルアミノ基又はジグリシジルアミノアルキレン基(ジグリシジルアミノメチレン基等)に置き換わった化合物をエポキシ化合物として使用してもよい。
【0080】
エポキシ化合物としては、エポキシ基が、縮環している化合物も挙げられる。このような化合物としては、例えば、3,4:8,9-ジエポキシビシクロ[4.3.0]ノナン等が挙げられる。
【0081】
その他にもエポキシ化合物としては、国際公開第2020/067364号の段落[0051]~[0134]に記載のエポキシ化合物も使用できる。
【0082】
組成物がエポキシ化合物を含む場合、その含有量は、組成物の全固形分に対して、1~40体積%が好ましく、3~30体積%がより好ましく、6~20体積%が更に好ましい。
エポキシ化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0083】
(活性水素基含有化合物)
エポキシ樹脂は、エポキシ化合物と活性水素基含有化合物とを反応させて形成することが好ましい。
活性水素基含有化合物は、活性水素を有する基(活性水素基)を、1個以上(好ましくは2個以上、より好ましくは2~10個)有する化合物である。
活性水素基としては、例えば、水酸基、一級又は二級アミノ基、及び、メルカプト基等が挙げられ、中でも、水酸基が好ましい。
活性水素基含有化合物は水酸基を2個以上(好ましくは3個以上、より好ましくは3~6個)有するポリオールであることが好ましい。
【0084】
中でも、エポキシ化合物と組み合わせて使用される活性水素基含有化合物は、フェノール化合物が好ましい。
つまり、本発明の組成物は、上記樹脂バインダー又はその前駆体として、エポキシ化合物及びフェノール化合物を含むことが好ましい。
フェノール化合物は、フェノール性水酸基を1個以上(好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、更に好ましくは3~6個)有する化合物である。
【0085】
活性水素基含有化合物としては、例えば、ベンゼントリオールなどのベンゼンポリオール、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドとから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールフェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトールクレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、又は、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂等も好ましい。
【0086】
活性水素基含有化合物としては、国際公開第2020/158259号の段落[0037]~[0059]に記載のフェノール化合物も使用できる。
【0087】
活性水素基含有化合物の水酸基含有量の下限値は、3.0mmol/g以上が好ましく、4.0mmol/g以上がより好ましい。上限値は、25.0mmol/g以下が好ましく、20.0mmol/g以下がより好ましい。
なお、上記水酸基含有量は、活性水素基含有化合物1gが有する、水酸基(好ましくはフェノール性水酸基)の数を意図する。
また、活性水素基含有化合物は、水酸基以外にも、エポキシ化合物と重合反応できる活性水素含有基(カルボン酸基等)を有していてもよい。活性水素基含有化合物の活性水素の含有量(水酸基及びカルボン酸基等における水素原子の合計含有量)の下限値は、3.0mmol/g以上が好ましく、4.0mmol/g以上がより好ましい。上限値は、25.0mmol/g以下が好ましく、20.0mmol/g以下がより好ましい。
なお、上記活性水素の含有量は、活性水素基含有化合物1gが有する、活性水素原子の数を意図する。
【0088】
活性水素基含有化合物の分子量の上限値は、2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。下限値は、110以上が好ましく、300以上がより好ましい。
【0089】
組成物が活性水素基含有化合物を含む場合、その含有量は、組成物の全固形分に対して、1~40体積%が好ましく、3~30体積%がより好ましく、5~20体積%が更に好ましい。
活性水素基含有化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0090】
組成物が、エポキシ化合物と、活性水素基含有化合物とを含む場合、エポキシ化合物の含有量と、活性水素基含有化合物の含有量との比は、エポキシ化合物のエポキシ基と、活性水素基含有化合物の活性水素基(好ましくは水酸基、より好ましくはフェノール性水酸基)との当量比(「エポキシ基の数」/「活性水素基の数」)が、30/70~70/30となる量が好ましく、40/60~60/40となる量がより好ましく、45/55~55/45となる量が更に好ましい。
組成物が、エポキシ化合物及び/又は活性水素基含有化合物とを含む場合、エポキシ化合物と、活性水素基含有化合物との合計含有量は、全バインダー成分に対して、20~100体積%が好ましく、60~100体積%がより好ましく、90~100体積%が更に好ましい。
【0091】
<シリコーン樹脂>
樹脂バインダー(特に、樹脂バインダーの前駆体から形成される樹脂バインダー)はシリコーン樹脂であることも好ましい。
樹脂バインダーとしてのシリコーン樹脂は、熱伝導材料に柔軟性を付与しやすい点で好ましい。
シリコーン樹脂としては、例えば、付加反応硬化型シリコーン樹脂、及び、縮合硬化型シリコーン樹脂が挙げられる。
本明細書において、シリコーン樹脂を形成できる前駆体をシリコーン化合物ともいう。
すなわち、本発明の組成物は、バインダー成分として、シリコーン化合物を含むことも好ましい。また、シリコーン樹脂が2以上の樹脂バインダーの前駆体が化学結合することで形成される場合、それらの2以上の樹脂バインダーの前駆体をそれぞれシリコーン化合物ともいう。
【0092】
シリコーン樹脂は、バインダー成分としての以下に説明するシリコーン化合物Aとシリコーン化合物Bにより架橋させて硬化させたものが好ましい。
【0093】
シリコーン化合物Aとしては、アルケニル基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンを使用する。アルケニル基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンは、ビニル基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンであることが好ましく、両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンがより好ましい。
両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば、ビニル両末端ポリジメチルシロキサン、ビニル両末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニル両末端ジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、ビニル両末端ジメチルシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマー、及び、ビニル両末端ジメチルシロキサン-ジエチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
アルケニル基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、4000~50000が好ましく、7500~25000がより好ましい。
シリコーン化合物Aは、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0094】
シリコーン化合物Bとしては、上記シリコーン化合物Aを架橋できればよく、ヒドロシリル基(SiH)を2つ以上有する化合物が挙げられる、ヒドロシリル基を2つ以上有するポリオルガノシロキサン(以下、「ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン」ともいう)が好ましく。ヒドロシリル基を3つ以上(例えば3~1000)有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルヒドロシロキサン、ポリエチルヒドロシロキサン、及び、メチルヒドロシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。これらは、末端にヒドロシリル基を有していても有していなくてもよく、例えば、両末端がトリメチルシリル基又はトリエチルシリル基などによって封鎖されてもよい。
ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、800~5000が好ましく、1500~4000がより好ましい。
本発明の組成物中、シリコーン化合物Bの含有量は、シリコーン化合物Aの100質量部に対して、例えば0.1~250質量部であり、0.1~10質量部が好ましく、0.2~7質量部がより好ましく、0.3~3質量部が更に好ましい。
シリコーン化合物Bは、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
本発明の組成物中で、シリコーン化合物Aとシリコーン化合物Bとが部分的に反応していてもよい。
【0095】
組成物中、バインダー成分の含有量は、組成物の全固形分に対して、5~90体積%が好ましく、10~50体積%がより好ましく、15~40体積%が更に好ましい。
【0096】
〔硬化促進剤〕
組成物は、更に、硬化促進剤を含んでいてもよい。
特に組成物が、樹脂バインダーの前駆体を含む場合において、樹脂バインダーの前駆体から、樹脂バインダーを形成するための硬化促進剤を含むことが好ましい。
使用する硬化促進剤の種類は、樹脂バインダーの前駆体の種類等を考慮して、適宜決定すればよい。中でも、上記樹脂バインダー又はその前駆体がエポキシ化合物を含む場合に、組成物が更に硬化促進剤を含むことが好ましい。
硬化促進剤としては、例えば、トリスオルトトリルホスフィン、トリフェニルホスフィン、三フッ化ホウ素アミン錯体、及び、特開2012-67225号公報の段落0052に記載の化合物が挙げられる。
また、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPP-K)、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボラート(TPP-MK)、テトラ-n-ブチルホスホニウムラウレート(TBP-LA)、ビス(テトラ-n-ブチルホスホニウム)ピロメリテート、及び、テトラフェニルホスホニウムのビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート付加物のような四級ホスホニウム系化合物(ホスホニウム塩)等のオニウム塩系硬化促進剤も挙げられる。
その他にも、2-メチルイミダゾール(商品名;2MZ)、2-ウンデシルイミダゾール(商品名;C11-Z)、2-ヘプタデシルイミダゾール(商品名;C17Z)、1,2-ジメチルイミダゾール(商品名;1.2DMZ)、2-エチル-4-メチルイミダゾール(商品名;2E4MZ)、2-フェニルイミダゾール(商品名;2PZ)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(商品名;2P4MZ)、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(商品名;1B2MZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(商品名;1B2PZ)、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール(商品名;2MZ-CN)、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール(商品名;C11Z-CN)、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(商品名;2PZCNS-PW)、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;2MZ-A)、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;C11Z-A)、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;2E4MZ-A)、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MA-OK)、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ-PW)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2P4MHZ-PW)、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(商品名;2PZ-CN)、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;2MZA-PW)、及び、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MAOK-PW)などのイミダゾール系硬化促進剤等が挙げられる(いずれも四国化成工業(株)製)。更に、トリアリールホスフィン系の硬化促進剤として特開2004-43405号公報の段落0052に記載の化合物も挙げられる。トリアリールホスフィンにトリフェニルボランが付加したリン系硬化促進剤として、特開2014-5382の段落0024に記載の化合物も挙げられる。
中でも、より強固な硬化物を得られる点で、硬化促進剤は、リン原子を含む化合物を含むことが好ましく、ホスホニウム塩を含むことがより好ましい。
この理由は定かではないが、リン原子を含む化合物(特にホスホニウム塩)は、硬化を穏やかに進行させられるので、組成物の硬化開始から完全に硬化するまでの間に樹脂バインダー又はその前駆体が流動できる猶予があり、樹脂バインダーと変性炭化物粒子との密着性が向上して強度が向上したと推測している。
硬化促進剤は、リン原子を含む化合物又はホスホニウム塩そのものであってもよい。リン原子を含む化合物又はホスホニウム塩の含有量は、硬化促進剤の全体積に対して、10~100体積%が好ましく、50~100体積%がより好ましく、80~100体積%が更に好ましい。
硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく2種以上使用してもよい。
硬化促進剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.002体積%以上が好ましく、0.02体積%以上がより好ましく、0.07体積%以上が更に好ましい。硬化促進剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、5体積%以下が好ましく、2体積%以下がより好ましく、1体積%以下が更に好ましい。
例えば、組成物が、エポキシ化合物を含む場合において、硬化促進剤の含有量は、エポキシ化合物の全量に対して、0.01~10体積%が好ましく、0.1~5体積%がより好ましい。
【0097】
〔溶媒〕
組成物は、更に、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒の種類は特に制限されず、有機溶媒であるのが好ましい。有機溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、及び、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、組成物の固形分濃度を、20~95体積%とする量が好ましく、30~85体積%とする量がより好ましく、30~80体積%とする量が更に好ましく、30~60体積%とする量が特に好ましい。
つまり溶媒の含有量は、組成物の全体積に対して、5~80体積%が好ましく、15~70体積%がより好ましく、20~70体積%が更に好ましく、40~70体積%が特に好ましい。
【0098】
〔その他の成分〕
組成物は、上述した以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、変性炭化物粒子以外の粒子(無機粒子又は有機粒子等)、分散剤、表面修飾剤、及び、重合開始剤(光重合開始剤又は熱重合開始剤等)が挙げられる。
【0099】
〔組成物の製造方法〕
組成物の製造方法は特に制限されず、本発明の方法を含む上記組成物の製造方法であることが好ましい。
例えば、本発明の方法で変性炭化物粒子を得る粒子製造段階と、本発明の方法で得られた変性炭化物粒子、及び、樹脂バインダー又はその前駆体を少なくとも混合する混合段階と、を有する組成物の製造方法が挙げられる。
上記混合段階で変性炭化物粒子と混合される成分は、樹脂バインダー又はその前駆体のほかにも、本発明の組成物が含み得る他の成分が挙げられる。
混合段階で各成分を混合する際には、各種成分を一括で混合しても、順次混合してもよい。
成分を混合する方法に特に制限はなく、公知の方法を使用できる。混合に使用する混合装置は、液中分散機が好ましく、例えば、自転公転ミキサー、高速回転せん断型撹拌機等の撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、超音波分散機、ビーズミル、及び、ホモジナイザーが挙げられる。混合装置は1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。混合の前後、及び/又は、同時に、脱気処理を行ってもよい。
【0100】
〔組成物の硬化方法〕
本発明の組成物は硬化性組成物であるのが好ましい。
本発明の組成物が硬化性組成物である場合、硬化処理して硬化物が得られる。
硬化性組成物の硬化方法は、特に制限されず、例えば、熱硬化反応、及び、光硬化反応が挙げられる。
【0101】
熱硬化反応の際の加熱温度は特に制限されない。例えば、50~250℃の範囲で適宜選択すればよい。また、熱硬化反応を行う際には、温度の異なる加熱処理を複数回にわたって実施してもよい。
硬化処理は、フィルム状又はシート状とした組成物について行ってもよい。具体的には、例えば、組成物を塗布成膜し硬化反応を行えばよい。
硬化処理を行う際は、基材上に組成物を塗布して塗膜を形成してから硬化させるのが好ましい。この際、基材上に形成した塗膜に、更に異なる基材を接触させてから硬化処理を行ってもよい。硬化後に得られた硬化物(材料)は、基材の一方又は両方と分離してもよいし分離しなくてもよい。
また、硬化処理を行う際に、別々の基材上に組成物を塗布して、それぞれ塗膜を形成し、得られた塗膜同士を接触させた状態で硬化処理を行ってもよい。硬化後に得られた硬化物(材料)は、基材の一方又は両方と分離してもよいし分離しなくてもよい。
【0102】
硬化処理は、組成物を半硬化状態にした時点で終了してもよい。また、組成物を半硬化状態にした後、更に硬化処理を実施して、硬化を完全にしてもよい。
組成物を半硬化状態にするための硬化処理(「半硬化処理」ともいう)と、硬化を完全にするための硬化処理(「本硬化処理」ともいう)とを、別々の工程に分けて行ってもよい。
【0103】
例えば、半硬化処理では、基材上に組成物を塗布して塗膜を形成した後、そのまま無加圧で基材上の塗膜を加熱等して半硬化状態の材料(「半硬化膜」ともいう)としてもよいし、プレス加工を併用しながら基材上の塗膜を加熱等して半硬化膜としてもよい。プレス加工をする場合、プレス加工は、上記加熱等の、前後に実施されてもよいし、最中に実施されてもよい。半硬化処理においてプレス加工を実施すると、得られる半硬化膜の膜厚の調整、及び/又は、半硬化膜中のボイド量の低減をしやすい場合がある。
半硬化処理において、別々の基材上に形成した塗膜同士を積層させた状態で半硬化処理を行ってもよいし、塗膜同士を積層させずに半硬化処理を行ってもよい。半硬化処理は、組成物から形成された塗膜と、更に、上記塗膜以外の材料とを接触させた状態で実施してもよい。
【0104】
得られた、半硬化膜は、可能な場合そのまま所望の用途の材料として使用してもよいし、半硬化膜に更に本硬化処理を施してから完全に硬化した材料として使用してもよい。
本硬化処理においては、半硬化膜を、そのまま無加圧で加熱等してもよいし、プレス加工を行ってから、又は、行いながら加熱等してもよい。この際、本硬化処理において、別々の半硬化膜同士を積層させた状態で本硬化処理を行ってもよいし、半硬化膜同士を積層させずに本硬化処理を行ってもよい。
また、本硬化処理は、半硬化膜を、使用されるデバイス等に接触するように配置した状態で実施してもよい。本硬化処理によって、デバイスと本発明の組成物から形成される材料とが接着するのも好ましい。
【0105】
半硬化処理及び/又は本硬化処理等における硬化処理の際に実施してもよいプレス加工に使用するプレスに制限はなく、例えば、平板プレスを使用してもよいしロールプレスを使用してもよい。
ロールプレスを使用する場合は、例えば、基材上に塗膜を形成して得た塗膜付き基材を、2本のロールが対向する1対のロールに挟持し、上記1対のロールを回転させて上記塗膜付き基材を通過させながら、上記塗膜付き基材の膜厚方向に圧力を付加するのが好ましい。上記塗膜付き基材は、塗膜の片面にのみ基材が存在していてもよいし、塗膜の両面に基材が存在していてもよい。上記塗膜付き基材は、ロールプレスに1回だけ通過させてもよいし複数回通過させてもよい。
半硬化処理及び/又は本硬化処理等における硬化処理の際に、平板プレスによる処理とロールプレスによる処理とは一方のみを実施してもよいし両方を実施してもよい。
【0106】
[用途]
本発明の方法で得られる変性炭化物粒子、及び、本発明の組成物の用途は特に制限されない。
変性炭化物粒子の用途としては、例えば、高熱伝導性を利用した熱伝導性フィラー;炭化物粒子の高い硬度を利用した研磨フィラー、耐摩耗性付与用フィラー、及び、材料補強用フィラー;音速の速さを利用した音響整合用フィラー;粒子が有する色味(例えば黒さ)を利用した着色フィラー(黒色フィラー等);電気に対する絶縁性を利用した絶縁フィラー;中性子吸収特性を利用した中性子吸収用フィラー;密度調製用フィラー;並びに、LED等の低配光特性を補うための光拡散用フィラー、としての用途が挙げられる。
本発明の組成物の用途としては、熱伝導材料形成用組成物、研磨ホイール等を製造するための砥粒含有樹脂組成物、耐摩耗性等を付与するための保護層形成用組成物、音響整合材料形成用組成物、絶縁材料形成用組成物、中性子遮蔽材料形成用組成物、遮光部材(例えばカラーフィルタにおけるブラックマトリックス)等を製造するための着色組成物、照明カバー又は透過型ディスプレイの光拡散板のような光拡散材料を製造するための光拡散材料形成用組成物、としての用途が挙げられる。
また、本発明の組成物は、変性炭化物粒子と導電性の金属粉末とを併用して、導電性材料形成用組成物、又は、導電性塗料形成用組成物としてもよい。このような組成物は、例えば、電磁波遮蔽、帯電防止、及び/又は、導電性付与のために使用できる。
【実施例
【0107】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0108】
[変性炭化物粒子の製造]
以下に示す方法で、実施例又は比較例の変性炭化物粒子を製造した。
【0109】
〔実施例1(実施例1A、実施例1B)〕
NaOH水(NaOH:40g/水:400ml)に炭化ケイ素粒子(50g)を添加して攪拌した。上記NaOH水に、更に、過硫酸ナトリウム水(過硫酸ナトリウム:9.6g/水:100ml)を添加した後、上記NaOH水を50℃に昇温し、更に3時間攪拌した(変性工程)。攪拌には新東科学株式会社製スリーワンモーターを用い、150rpmで行った。
上記NaOH水を室温まで冷却した後、上記NaOH水中の炭化ケイ素粒子をろ取し、ろ取された炭化ケイ素粒子を水(500ml)と、アセトニトリル(250ml)とで洗浄することで変性炭化ケイ素粒子A1(SiC-A1)を得た。ここまでを実施例1Aとする。
得られた炭化ケイ素粒子A1をアセトニトリル(100ml)中で攪拌し、シランカップリング剤(KBM-573、信越化学社製)の加水分解調整液(1.25g)を添加した。上記アセトニトリルを、室温で3時間攪拌して吸着処理(吸着工程)を行った。上記アセトニトリル中の変性炭化ケイ素粒子をろ取した後、ろ取された変性炭化ケイ素粒子をアセトニトリル(100ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、変性炭化ケイ素粒子B1(SiC-B1)を得た。ここまでを実施例1Bとする。
なお、シランカップリング剤の加水分解調整液は、シランカップリング剤(1g)と、エタノール(500μl)、2-プロパノール(500μl)、水(720μl)、酢酸(100μl)を混合し、1時間攪拌することで調整した。以降の実施例又は比較例においても、シランカップリング剤の加水分解調整液の配合は、特段の断りがない限り、同様である。
なお、実施例1Aでは、変性炭化ケイ素粒子A1(SiC-A1)を得た時点で、変性炭化物粒子の製造を終了した。
実施例1Bでは、実施例1Aとは別に、実施例1Aと同様の方法で変性炭化ケイ素粒子A1(SiC-A1)を作製し、更に、得られた変性炭化ケイ素粒子A1(SiC-A1)に対して吸着工程を施して、変性炭化ケイ素粒子B1(SiC-B1)を得て変性炭化物粒子の製造を終了した。
以降の実施例NA、NB(Nは整数)においても同様の方法で、それぞれ、吸着工程を施していない変性炭化物粒子と、吸着工程を施した変性炭化物粒子とを得ている。
【0110】
〔実施例2(実施例2A、実施例2B)〕
NaOH水(NaOH:40g/水:400ml)に炭化ケイ素粒子(50g)を添加して攪拌した。上記NaOH水に、更に、過硫酸ナトリウム水(過硫酸ナトリウム:9.6g/水:100ml)と硫酸鉄七水和物(1.1g)とを添加した後、上記NaOH水を50℃に昇温し、更に3時間攪拌した(変性工程)。攪拌には新東科学株式会社製スリーワンモーターを用い、150rpmで行った。
上記NaOH水を室温まで冷却した後、上記NaOH水中の炭化ケイ素粒子をろ取し、ろ取された炭化ケイ素粒子を、1N塩酸水(500ml)、水(500ml)、及び、アセトニトリル(250ml)で洗浄し、変性炭化ケイ素粒子A2(SiC-A2)を得た。ここまでを実施例2Aとする。
得られた変性炭化ケイ素粒子A2をアセトニトリル(100ml)中で攪拌し、上記アセトニトリル中に更に、シランカップリング剤(KBM-573)の加水分解調整液(1.25g)を添加した。上記アセトニトリルを室温で3時間攪拌して、吸着処理を行った(吸着工程)。
上記アセトニトリル中の変性炭化ケイ素粒子をろ取した後、ろ取された変性炭化ケイ素粒子を、アセトニトリル(100ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、変性炭化ケイ素粒子B2(SiC-B2)を得た。ここまでを実施例2Bとする。
【0111】
〔実施例3(実施例3A、実施例3B)〕
水(400ml)に炭化ケイ素粒子(50g)を添加して攪拌して混合液を得た。上記混合液に更に次亜塩素酸ナトリウム水(次亜塩素酸ナトリウム5水和物:48g/水:100ml)を添加した後、上記混合液を50℃に昇温し、更に3時間攪拌した(変性工程)。攪拌には新東科学株式会社製スリーワンモーターを用い、150rpmで行った。
上記混合液を室温まで冷却した後、上記混合液中の炭化ケイ素粒子をろ取し、ろ取された炭化ケイ素粒子を、水(500ml)、及び、アセトニトリル(250ml)で洗浄し、変性炭化ケイ素粒子A3(SiC-A3)を得た。ここまでを実施例3Aとする。
得られた変性炭化ケイ素粒子A3をアセトニトリル(100ml)中で攪拌し、上記アセトニトリル中に更に、シランカップリング剤(KBM-573)の加水分解調整液(1.25g)を添加した。上記アセトニトリルを室温で3時間攪拌して、吸着処理を行った(吸着工程)。
上記アセトニトリル中の変性炭化ケイ素粒子をろ取した後、ろ取された変性炭化ケイ素粒子を、アセトニトリル(100ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、変性炭化ケイ素粒子B3(SiC-B3)を得た。ここまでを実施例3Bとする。
【0112】
〔実施例4(実施例4A、実施例4B)〕
NaOH水(NaOH:40g/水:400ml)に炭化ケイ素粒子(50g)を添加して攪拌した。上記NaOH水に、更に、硝酸セリウムアンモニウム水(硝酸セリウムアンモニウム:9.6g/水:100ml)を添加した後、上記NaOH水を50℃に昇温し、更に3時間攪拌した(変性工程)。攪拌には新東科学株式会社製スリーワンモーターを用い、150rpmで行った。
上記NaOH水を室温まで冷却した後、上記NaOH水中の炭化ケイ素粒子をろ取し、ろ取された炭化ケイ素粒子を、1N塩酸水(500ml)、水(500ml)、及び、アセトニトリル(250ml)で洗浄し、変性炭化ケイ素粒子A4(SiC-A4)を得た。ここまでを実施例4Aとする。
得られた変性炭化ケイ素粒子A4をアセトニトリル(100ml)中で攪拌し、上記アセトニトリル中に更に、シランカップリング剤(KBM-573)の加水分解調整液(1.25g)を添加した。上記アセトニトリルを室温で3時間攪拌して、吸着処理を行った(吸着工程)。
上記アセトニトリル中の変性炭化ケイ素粒子をろ取した後、ろ取された変性炭化ケイ素粒子を、アセトニトリル(100ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、変性炭化ケイ素粒子B4(SiC-B4)を得た。ここまでを実施例4Bとする。
【0113】
〔実施例5(実施例5A、実施例5B)〕
実施例1における「過硫酸ナトリウム:9.6g/水:100ml」の配合の過硫酸ナトリウム水を、「過硫酸ナトリウム:48g/水:400ml」の配合の過硫酸ナトリウム水に変更した以外は実施例1と同様の製法で変性炭化ケイ素粒子A5(SiC-A5)、及び、変性炭化ケイ素粒子(SiC-B5)を得た。
【0114】
〔実施例6(実施例6A、実施例6B)〕
実施例1における「NaOH:40g/水:400ml」の配合のNaOH水を、「NaOH:2g/水:400ml」の配合のNaOH水に変更した以外は実施例1と同様の製法で変性炭化ケイ素粒子A6(SiC-A6)、及び、変性炭化ケイ素粒子B6(SiC-B6)を得た。
【0115】
〔実施例7(実施例7A、実施例7B)〕
実施例1における「過硫酸ナトリウム:9.6g/水:100ml」の配合の過硫酸ナトリウム水を、「ヨウ素酸カリウム:9.6g/水:100ml」の配合のヨウ素酸カリウム水に変更した以外は実施例1と同様の製法で変性炭化ケイ素粒子A7(SiC-A7)、及び、変性炭化ケイ素粒子B7(SiC-B7)を得た。
【0116】
〔実施例8(実施例8A、実施例8B)〕
実施例1における「NaOH:40g/水:400ml」の配合のNaOH水を、「NaOH:0.02g/水:400ml」の配合のNaOH水に変更した以外は実施例1と同様の製法で変性炭化ケイ素粒子A8(SiC-A8)、及び、変性炭化ケイ素粒子B8(SiC-B8)を得た。
【0117】
〔実施例9(実施例9A、実施例9B)〕
実施例1における「過硫酸ナトリウム:9.6g/水:100ml」の配合の過硫酸ナトリウム水を、「過硫酸カリウム:9.6g/水:400ml」の配合の過硫酸カリウム水に変更した以外は実施例1と同様の製法で変性炭化ケイ素粒子A9(SiC-A9)、及び、変性炭化ケイ素粒子B9(SiC-B9)を得た。
【0118】
〔実施例10(実施例10A、実施例10B)〕
実施例1における「過硫酸ナトリウム:9.6g/水:100ml」の配合の過硫酸ナトリウム水を、「過硫酸アンモニウム:9.6g/水:400ml」の配合の過硫酸アンモニウム水に変更した以外は実施例1と同様の製法で変性炭化ケイ素粒子A10(SiC-A10)、及び、変性炭化ケイ素粒子B10(SiC-B10)を得た。
【0119】
〔実施例11(実施例11A、実施例11B)〕
実施例1におけるシランカップリング剤を、チタンカップリング剤(プレンアクト-38S、味の素ファインテクノ社製)に変更した以外は実施例1と同様の製法で変性炭化ケイ素粒子A11(SiC-A11)、及び、変性炭化ケイ素粒子B10(SiC-B11)を得た。
なお、変性炭化ケイ素粒子A11(SiC-A11)は、変性炭化ケイ素粒子A1(SiC-A1)と同じである。
【0120】
〔実施例12(実施例12A、実施例12B)〕
実施例1における炭化ケイ素粒子を、炭化ホウ素粒子に変更した以外は実施例1と同様の条件で変性炭化ホウ素粒子A1(BC-A1)、及び、変性炭化ホウ素粒子B1(BC-B1)を得た。
【0121】
〔実施例13(実施例13A、実施例13B)〕
実施例1における炭化ケイ素粒子を、炭化チタン粒子に変更した以外は実施例1と同様の条件で変性炭化チタン粒子A1(TiC-A1)、及び、変性炭化チタン粒子B1(TiC-B1)を得た。
【0122】
〔実施例14(実施例14A、実施例14B)〕
実施例1における炭化ケイ素粒子を、炭化タングステン粒子に変更した以外は実施例1と同様の条件で変性炭化タングステン粒子A1(WC-A1)、及び、変性炭化タングステン粒子B1(WC-B1)を得た。
【0123】
〔比較例1〕
未処理の炭化ケイ素粒子(SiC)を、比較例1の炭化物粒子とした。
なお、上記未処理の炭化ケイ素粒子は、上述の実施例で作製した変性炭化ケイ素粒子、又は、次に説明する比較例2で作製した修飾炭化ケイ素粒子の原料として使用した炭化ケイ素粒子と同じである。
【0124】
〔比較例2〕
炭化ケイ素粒子をアセトニトリル(100ml)中で攪拌し、シランカップリング剤(KBM-573、信越化学社製)の加水分解調整液(1.25g)を添加した。上記アセトニトリルを、室温で3時間攪拌して吸着処理(吸着工程)を行った。上記アセトニトリル中の変性炭化ケイ素粒子A1をろ取した後、ろ取された変性炭化ケイ素粒子をアセトニトリル(100ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、修飾炭化ケイ素粒子C1(SiC-C1)を得た。
【0125】
〔比較例3〕
未処理の炭化ホウ素粒子(BC)を、比較例3の炭化物粒子とした。
なお、上記未処理の炭化ホウ素粒子は、上述の実施例で作製した変性炭化ホウ素粒子の原料として使用した炭化ホウ素粒子と同じである。
【0126】
〔比較例4〕
未処理の炭化チタン粒子(TiC)を、比較例4の炭化物粒子とした。
なお、上記未処理の炭化チタン粒子は、上述の実施例で作製した変性炭化チタン粒子の原料として使用した炭化チタン粒子と同じである。
【0127】
〔比較例5〕
未処理の炭化タングステン粒子(WC)を、比較例5の炭化物粒子とした。
なお、上記未処理の炭化タングステン粒子は、上述の実施例で作製した変性炭化タングステン粒子の原料として使用した炭化タングステン粒子と同じである。
【0128】
なお、一連の実施例又は実施例における炭化物粒子(未処理の炭化物粒子)の特徴は以下の通りである。
・炭化ケイ素粒子:粒子径25~33μm、信濃電気製錬社製、SSC-A30
・炭化ホウ素粒子:粒子径50μm、富士フイルム和光純薬社製
・炭化チタン粒子:粒子径1~2μm、富士フイルム和光純薬社製
・炭化タングステン粒子:粒子径14~16μm、アライドマテリアル社製、WC100S
各実施例の処理によって変性炭化物粒子となっても、変性炭化物粒子の粒径は、原料とした未処理の炭化物粒子から実質的に変わっていなかった。
【0129】
[試験]
上述の炭化物粒子(変性炭化物粒子を含む)を用いて各実施例又は比較例の組成物を調製し、各炭化物粒子(変性炭化物粒子を含む)の充填性を評価した。
以下に組成物の特徴、及び、組成物を用いて実施した試験方法などを示す。
【0130】
〔組成物の調製に用いた各種成分〕
・エポキシ化合物:ビスフェノールF型エポキシ化合物(EPICLON 830-S)
・フェノール化合物:ノボラック型フェノール化合物(MEH-7500)
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン
・溶媒:シクロペンタノン
・炭化物粒子:上述の各変性炭化物粒子のいずれか、修飾炭化ケイ素粒子C1(SiC-C1)、又は、変性工程を経ていない未処理の炭化物粒子(炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、炭化チタン粒子、若しくは、炭化タングステン粒子)
【0131】
〔組成物の調製〕
溶媒、フェノール化合物、エポキシ化合物、及び、硬化促進剤の順で混合した後、炭化物粒子を添加した。得られた混合物を自転公転ミキサー(THINKY社製、あわとり練太郎ARE-310)で5分間処理して、各実施例又は比較例の組成物(硬化性組成物)を得た。
【0132】
ここで、溶媒の添加量は、組成物の固形分濃度が30~60体積%になる量とした。
なお、組成物の固形分濃度は、組成物の粘度がそれぞれ同程度になるように、上記範囲内で組成物ごとに調整した。
組成物中の炭化物粒子の含有量は、組成物の全固形分に対して63体積%になるように調整した。
組成物中の硬化促進剤の含有量は、組成物の全固形分に対して0.6体積%になるように調整した。
組成物における残部は、エポキシ化合物及びフェノール化合物である。組成物中のエポキシ化合物とフェノール化合物とはそれぞれ当量(エポキシ化合物のエポキシ基の数と、フェノール化合物の水酸基の数とが等しくなる量)になるように添加量を調整した。
【0133】
〔評価〕
以下に示す方法で、炭化物粒子の充填性を評価した。
【0134】
<樹脂シートの作製>
アプリケーターを用いて、離型処理したポリエステルフィルム(NP-100A パナック社製、膜厚100μm)の離型面上に、上述の通り作製した各実施例又は比較例の組成物のいずれか均一に塗布し、120℃で5分間放置して半硬化シート(半硬化膜)を得た。
得られた半硬化シートを空気下で熱プレス(熱板温度180℃、圧力5MPaで5分間処理した後、更に、常圧下で180℃90分)で処理して塗膜を硬化し、シートを得た。上記シートからポリエステルフィルムを剥がし、平均膜厚120μmの樹脂シートを得た。
【0135】
<充填性の評価>
メトラー・トレド社製の天秤「XS204」を用いて、樹脂シートの比重をアルキメデス法(「固体比重測定キット」使用)で測定した。比重が大きいほど樹脂シート中のボイド量が少ないことになる。
炭化物として未処理の炭化物粒子を使用して作製された樹脂シートの比重を基準として、同種の炭化物粒子を用いて得られた変性炭化物粒子を炭化物として使用して作製された樹脂シートの比重の増加量を、下記区分に照らして分類し、各樹脂シートに使用された炭化物粒子の充填率の評価とした。
例えば、炭化物粒子として変性炭化ケイ素粒子A1(SiC-A1)を使用して作製した樹脂シート(樹脂シートXとする)については、炭化物粒子として炭化ケイ素粒子(未処理の炭化ケイ素粒子、SiC)を使用して作製した樹脂シート(樹脂シートYとする)と比重を比較し、「増加量=樹脂シートXの比重-樹脂シートYの比重」として比重の増加量をもとめ、下記区分に照らして分類し、充填率の評価とした。
また、例えば、炭化物粒子として修飾炭化ケイ素粒子C1(SiC-C1)を使用して作製した樹脂シートについても、炭化物粒子として炭化ケイ素粒子(未処理の炭化ケイ素粒子、SiC)を使用して作製した樹脂シートと比重を比較して、比重の増加量を求めた。
なお、比重1は、1g/cmである。
AA;増加量が0.05以上
A;増加量が、0.04以上0.05未満増加
B;増加量が、0.02以上0,04未満増加
C;増加量が、0.01以上0.02未満
D;増加量が、変化なし、又は、0.01未満
【0136】
[結果]
以下に、各実施例又は比較例にて製造し使用した炭化物粒子(変性炭化物粒子を含む)の種類と、その炭化物粒子を製造した際の製造手順の特徴、及び、評価結果を示す。
「炭化物量(g)」欄は、変性炭化物粒子の製造の際に使用した未処理の炭化物粒子の量(g)を示す。
「酸化剤」欄は、変性炭化物粒子の製造の際に使用した酸化剤の種類、標準酸化還元電位、及び、量(g)を示す。
「pH」欄は、炭化物粒子を酸化剤と水溶液中で接触させて変性させた際における、上記水溶液のpHを示す。例えば、実施例1Aで変性炭化物粒子A1(SiC-A1)を製造した場合については、NaOH水(NaOH:40g/水:400ml)、窒化ケイ素粒子(50g)、及び、過硫酸ナトリウム水(過硫酸ナトリウム:9.6g/水:100ml)が混合された液(水溶液)のpHの値を「pH」欄で示している。
【0137】
【表1】
【0138】
表に示す結果の通り、本発明の変性炭化物粒子を含む組成物を用いれば、形成される樹脂シートの比重が大きくなっており、本発明の変性炭化物粒子の充填性が良好であることが示された。
【0139】
また、炭化物粒子と酸化剤とを接触させる際の水溶液のpHが12以上であれば、本発明の効果がより優れることが確認された(実施例6Aと8Aとの結果の比較、実施例6Bと8Bとの結果の比較等を参照)。
【0140】
また、使用する酸化剤が過硫酸塩であれば、本発明の効果がより優れることが確認された(実施例1Aと4Aとの結果の比較、実施例1Bと4Bとの結果の比較等を参照)。
【0141】
使用する酸化剤の酸化還元電位が1.50V以上であれば、本発明の効果がより優れることが確認された。
(炭化物粒子と酸化剤とを接触させる際の水溶液のpHが14である実施例同士の結果の比較等を参照)
【0142】
また、本発明の方法において吸着工程を実施すれば、本発明の効果がより優れることが確認された。
【0143】
[追加試験]
追加試験として、樹脂バインダーとして、シリコーン樹脂を用いる組成物についても試験を行った。
すなわち、まず、上述の試験におけるエポキシ化合物、フェノール化合物、及び、硬化促進剤を、シリコーン樹脂バインダーの前駆体である「KE-1012 A/B(信越化学製)」のA剤とB剤との1:1(体積比)混合物に変更し、溶媒をトルエンに変更し、組成物の固形分濃度を55体積%になるように変更して、各実施例又は比較例の組成物(シリコーン樹脂組成物)を作製した。
アプリケーターを用いて、離型処理したポリエステルフィルムの離型面上に、各実施例又は各比較例のシリコーン樹脂組成物を、1mm厚になるように均一に塗布し、80℃で30分間放置して塗膜を得た。
このようにして得られた塗膜付きフィルムの塗膜上に、更に、新たな上記ポリエステルフィルムを、離型面が対向するように張り合わせて、「ポリエステルフィルム-塗膜-ポリエステルフィルム」の構成を有する積層体を得た。
上記積層体を、空気下で、得られる熱伝導シート(熱伝導材料)の厚さが500μmになるような条件で熱プレス(熱板温度100℃)した。上記積層体の両面のポリエステルフィルムを剥がし、各実施例又は比較例のシリコーン樹脂シート(硬化した塗膜、平均膜厚500μm)を得た。
得られた各実施例又は比較例のシリコーン樹脂シートを用いて、上述したのと同様の方法で炭化物粒子(変性炭化物粒子を含む)の充填率の評価を行ったところ、表1に示した結果と同様の結果となった。