(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241129BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2021067843
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2020189771
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹元 啓一
(72)【発明者】
【氏名】原山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】浅川 浩行
(72)【発明者】
【氏名】六川 貴博
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-079774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0359859(US,A1)
【文献】国際公開第2018/143288(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/029876(WO,A1)
【文献】特開昭58-087845(JP,A)
【文献】実開平02-063542(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
H05B 3/02
H05B 3/03
H05B 3/06
H05B 3/18
H05B 3/20
H01L 21/31
H01L 21/31
H01L 21/3065
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに固定され、静電力によって基板を吸着する静電チャックとを有し、
前記静電チャックは、
セラミックを用いて形成され、前記基板に接触して前記基板を吸着保持する吸着層と、
前記吸着層に積層され、発熱する第1電極を備える第1発熱層と、
前記第1発熱層に積層され、発熱する第2電極を備える第2発熱層と、
両端がそれぞれ前記第1電極及び前記第2電極に接続するとともに、少なくとも一端が前記第1電極又は前記第2電極を貫通し、貫通する部分の径よりも大径の端部を前記一端に有するビアと
を有することを特徴とする基板固定装置。
【請求項2】
前記吸着層は、
電圧を印加可能な電極と、
前記電極を囲むセラミックと
を有することを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記第1発熱層は、
前記第1電極を被覆する絶縁樹脂を備えることを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記第2発熱層は、
前記第2電極を被覆する絶縁樹脂を備えることを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記ビアは、
前記第1電極及び前記第2電極と平面視で重なる位置に形成されることを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記ベースプレートは、
冷媒を通過させる冷媒通路を有することを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記第1発熱層は、
前記第2電極と平面視で重なる前記第1電極上の位置に形成される第1電極パッドを備えることを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項8】
前記第1電極パッドは、
前記ビアの他端に接触することを特徴とする請求項7記載の基板固定装置。
【請求項9】
前記第2発熱層は、
前記第1電極と平面視で重なる前記第2電極上の位置に形成される第2電極パッドを備えることを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項10】
前記第2電極パッドは、
前記ベースプレートからの給電部に接触することを特徴とする請求項9記載の基板固定装置。
【請求項11】
セラミックを用いて形成され、静電力によって対象物を吸着保持する吸着層と、
前記吸着層に積層され、発熱する第1電極を備える第1発熱層と、
前記第1発熱層に積層され、発熱する第2電極を備える第2発熱層と、
両端がそれぞれ前記第1電極及び前記第2電極に接続するとともに、少なくとも一端が前記第1電極又は前記第2電極を貫通し、貫通する部分の径よりも大径の端部を前記一端に有するビアと
を有することを特徴とする静電チャック。
【請求項12】
電極と当該電極を囲むセラミックからなるセラミック層を形成し、
発熱する第1電極と当該第1電極を被覆する絶縁樹脂とを備える発熱層を前記セラミック層に積層し、
前記発熱層が備える前記絶縁樹脂の表面に、開口部を有し発熱する第2電極を形成し、
前記開口部の位置において前記絶縁樹脂を貫通し、前記第1電極を露出させるビアホールを形成し、
形成されたビアホールに導電部材を充填することにより前記第1電極及び前記第2電極を接続するビアを形成し、
形成されたビア及び前記第2電極を絶縁樹脂によって被覆する工程を有し、
前記ビアを形成する工程は、
前記第2電極を貫通する一端に、前記開口部の径よりも大径の端部を有するビアを形成する
ことを特徴とする静電チャックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば半導体部品を製造する場合などにウエハを吸着して保持する基板固定装置には、電極を内蔵するセラミック板を用いて構成される静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)が備えられている。基板固定装置は、静電チャックがベースプレートに固定された構造を有し、セラミック板に内蔵された電極に電圧を印加することにより、静電力を利用して静電チャックにウエハを吸着する。静電チャックにウエハを吸着して保持することにより、ウエハに対する例えば微細加工やエッチングなどのプロセスが効率的に行われる。
【0003】
このような静電チャックには、ウエハの温度を調節する温度調節機能が付与されることがある。具体的には、例えばタングステンなどの金属ペーストのスクリーン印刷によってヒーター電極が形成され、このヒーター電極がセラミック板の形成時に同時に焼成されることがある。また、ウエハ載置面において高い均熱性を得るために、絶縁樹脂上の金属圧延箔にフォトリソグラフィを用いたエッチングを施し、外付けのヒーター電極を形成する技術も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-136611号公報
【文献】特開2016-100474号公報
【文献】特開2014-112672号公報
【文献】特開2018-26427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、ウエハに対する加工の微細化が進んでおり、ウエハを吸着する静電チャックにもより高い均熱性能が要求されている。すなわち、静電チャックの吸着面全体を等しい温度に制御することが求められている。
【0006】
しかしながら、高い均熱性が得られる外付けのヒーター電極が用いられる場合でも、ヒーター電極の配置の自由度には一定の制限があり、ヒーターゾーン間の温度傾斜が発生するという問題がある。具体的には、例えばヒーター電極へ給電する給電部においてはヒーター電極の面積が広くなるなど、ヒーター電極の配置を完全に均等にすることが困難であり、静電チャックの吸着面全体における均熱性の向上には限界がある。
【0007】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、十分に高い均熱性を得ることができる基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願が開示する基板固定装置は、1つの態様において、ベースプレートと、前記ベースプレートに固定され、静電力によって基板を吸着する静電チャックとを有し、前記静電チャックは、セラミックを用いて形成され、前記基板に接触して前記基板を吸着保持する吸着層と、前記吸着層に積層され、発熱する第1電極を備える第1発熱層と、前記第1発熱層に積層され、発熱する第2電極を備える第2発熱層と、両端がそれぞれ前記第1電極及び前記第2電極に接続するとともに、少なくとも一端が前記第1電極又は前記第2電極を貫通し、貫通する部分の径よりも大径の端部を前記一端に有するビアとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本願が開示する基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法の1つの態様によれば、十分に高い均熱性を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る基板固定装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、セラミック層形成工程の具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、金属箔層積層工程の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1ヒーターパターン形成工程の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、絶縁樹脂積層工程の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、金属箔層積層工程の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2ヒーターパターン形成工程の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、ビアホール形成工程の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、ビアホール充填工程の具体例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1ヒーターパターンの具体例を示す図である。
【
図13】
図13は、第2ヒーターパターンの具体例を示す図である。
【
図14】
図14は、絶縁樹脂積層工程の具体例を示す図である。
【
図16】
図16は、第1ヒーターパターンの具体例を示す図である。
【
図17】
図17は、第2ヒーターパターンの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願が開示する基板固定装置、静電チャック及び静電チャックの製造方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、一実施の形態に係る基板固定装置100の構成を示す斜視図である。
図1に示す基板固定装置100は、ベースプレート110に静電チャック120が接着された構造を有する。
【0013】
ベースプレート110は、例えばアルミニウムなどの金属製の円形部材である。ベースプレート110は、静電チャック120を固定する基材である。ベースプレート110は、例えば半導体製造装置などに取り付けられ、基板固定装置100を、ウエハを保持する半導体保持装置として機能させる。
【0014】
静電チャック120は、静電力を利用して例えばウエハなどの対象物を吸着しつつ、対象物の温度を調節する。すなわち、静電チャック120は、対象物を吸着するセラミック層と、対象物を加熱するヒーター層とを積層して形成されている。静電チャック120の径は、ベースプレート110の径よりも小さく、ベースプレート110の中央に固定される。このとき、静電チャック120のヒーター層がベースプレート110に接着されることにより、静電チャック120がベースプレート110に固定される。ヒーター層の上面にはセラミック層が積層され、対象物を吸着する吸着面が露出する。
【0015】
図2は、
図1のI-I線断面を示す模式図である。
図2に示すように、基板固定装置100は、ベースプレート110に静電チャック120が接着されて構成される。
【0016】
ベースプレート110は、内部に冷却水の流路となる冷却水路111を有する、例えば厚さ20~50mm程度の金属製の部材である。ベースプレート110は、基板固定装置100の外部から冷却水路111へ流入する冷却水によって、静電チャック120を冷却する。静電チャック120が冷却される結果、静電チャック120に吸着される例えばウエハなどの対象物が冷却される。
【0017】
なお、ベースプレート110は、冷却水路111の代わりに、冷却ガスの流路となる冷却ガス路を有していても良い。要するに、ベースプレート110は、例えば冷却水及び冷却ガスなどの冷媒を通過させる冷媒通路を有していれば良い。
【0018】
静電チャック120は、セラミック層130と、絶縁樹脂層140と、第1発熱層150と、第2発熱層160とを有し、第2発熱層160がベースプレート110に接着される。
【0019】
セラミック層130は、内部に導電性の電極131を有し、セラミックからなる例えば厚さ4.5mm程度の層である。セラミックは、例えば酸化アルミニウムを用いて作製されたグリーンシートを焼成することにより得られる。セラミック層130の電極131に電圧が印加されると、セラミック層130は、静電力によって例えばウエハなどの対象物を吸着する。すなわち、
図2においては、セラミック層130の上面が吸着面となり、電極131への電圧印加時には、対象物が吸着面に吸着される。
【0020】
絶縁樹脂層140は、セラミック層130に積層され、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の高熱伝導率及び高耐熱性を有する絶縁樹脂からなる層である。絶縁樹脂層140の厚さは、例えば40~100μm程度である。
【0021】
第1発熱層150は、絶縁樹脂層140に積層され、ヒーター電極151とヒーター電極151を被覆する絶縁樹脂152とからなる層である。ヒーター電極151は、絶縁樹脂層140の表面に形成され、電圧が印加されることにより発熱する。ヒーター電極151は、絶縁樹脂152によって被覆される。絶縁樹脂152は、絶縁樹脂層140と同様に、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の高熱伝導率及び高耐熱性を有する絶縁樹脂である。絶縁樹脂152の厚さは、例えば40~300μm程度である。
【0022】
第2発熱層160は、第1発熱層150に積層され、ヒーター電極161とヒーター電極161を被覆する絶縁樹脂162と給電部163とからなる層である。ヒーター電極161は、第1発熱層150を構成する絶縁樹脂152の表面に形成され、電圧が印加されることにより発熱する。ヒーター電極161は、絶縁樹脂162によって被覆される。絶縁樹脂162は、絶縁樹脂層140及び絶縁樹脂152と同様に、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の高熱伝導率及び高耐熱性を有する絶縁樹脂である。絶縁樹脂162の厚さは、例えば40~300μm程度である。給電部163は、ベースプレート110からヒーター電極161へ給電する導電性の部材である。すなわち、給電部163は、ベースプレート110及びヒーター電極161と電気的に接続され、ヒーター電極161に電圧を印加する。
【0023】
第1発熱層150のヒーター電極151及び第2発熱層160のヒーター電極161に電圧が印加されると、ヒーター電極151、161が発熱することによりセラミック層130が加熱され、セラミック層130に吸着される対象物が加熱される。そして、第1発熱層150及び第2発熱層160は、ヒーター電極151、161による加熱と、ベースプレート110による冷却とによってセラミック層130の温度を調整し、セラミック層130に吸着される対象物の温度を所望の温度に調節する。なお、第2発熱層160のヒーター電極161は、発熱するヒーター電極として機能させる代わりに、第1発熱層150のヒーター電極151間を電気的に接続したり、ヒーター電極151と給電部163とを電気的に接続したりするバイパス電極として機能させても良い。
【0024】
ヒーター電極151、161としては、例えば、CN49(コンスタンタン)(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン(Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等の合金を用いることができる。また、ヒーター電極161をバイパス電極として機能させる場合には、ヒーター電極161として、例えば銅又は銅合金を用いることができる。これらの金属を用いるヒーター電極151、161の厚さは、例えば25~50μm程度であり、15~200μmの範囲に含まれる。
【0025】
また、絶縁樹脂層140、絶縁樹脂152及び絶縁樹脂162にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁樹脂層140、第1発熱層150及び第2発熱層160の熱伝導率を向上させても良い。
【0026】
ビア170は、第1発熱層150の絶縁樹脂152及び第2発熱層160のヒーター電極161を貫通するビアホールに金属ペースト又ははんだ等の導電性部材を充填して形成されており、第1発熱層150のヒーター電極151と第2発熱層160のヒーター電極161とを電気的に接続する。したがって、ビア170は、給電部163からヒーター電極161に電圧が印加されると、このヒーター電極161に接続されるヒーター電極151にも電圧を印加する。ビア170の絶縁樹脂152及びヒーター電極161を貫通する部分は、ヒーター電極161からヒーター電極151へ向かうにつれて径が小さくなるテーパー形状を有していても良い。
【0027】
ビア170の絶縁樹脂152及びヒーター電極161を貫通する部分の径(すなわち、ビアホールの径)は、例えば100μmから3mmまでの範囲に含まれる。そして、ビア170のヒーター電極161の表面における頂部171は、ビアホールの径よりも大径であり、ビアホールの周囲に広がっている。具体的には、頂部171は、ビアホールの外周から少なくとも50μm以上周囲に広がっている。このため、頂部171がヒーター電極161の表面に確実に接触し、ヒーター電極151とヒーター電極161との接続信頼性を向上することができる。なお、ビア170の頂部171の厚さは、例えば50~300μmの範囲に含まれ、絶縁樹脂162の厚さを超えることはない。換言すれば、頂部171は、絶縁樹脂162によって被覆される。
【0028】
次いで、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図3に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0029】
まず、対象物を吸着するセラミック層130が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば酸化アルミニウムを主材料とする複数のグリーンシートが作製され、適宜、グリーンシートの一面に電極131が形成される。電極131は、例えばグリーンシートの表面に金属ペーストをスクリーン印刷することにより、形成することができる。そして、複数のグリーンシートが積層され焼成されることにより、セラミック層130が形成される。セラミック層130は、例えば
図4に示すように、内部に電極131の層を有する。
【0030】
セラミック層130が形成されると、セラミック層130の表面に絶縁樹脂層140が積層され(ステップS102)、絶縁樹脂層140の表面に第1発熱層150のヒーター電極151となる金属箔層が積層される(ステップS103)。具体的には、例えば
図5に示すように、セラミック層130の表面に、厚さが例えば40~100μm程度の絶縁樹脂層140が積層され、絶縁樹脂層140の表面に、厚さが例えば25~50μm程度の金属箔層151aが積層される。絶縁樹脂層140及び金属箔層151aは、真空ラミネート及びプレスによる真空加熱加圧接合により、セラミック層130に密着する。
【0031】
絶縁樹脂層140は、例えばエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の高熱伝導率及び高耐熱性を有する絶縁樹脂を用いて形成されている。また、絶縁樹脂層140に例えばアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、熱伝導率を向上しても良い。一方、金属箔層151aの材料としては、ヒーター電極151、161の材料として例示した圧延合金を用いることができる。すなわち、金属箔層151aは、例えば、CN49(コンスタンタン)(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン(Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等の合金からなる。
【0032】
金属箔層151aに例えばフォトリソグラフィを用いたエッチングが施されることにより、所望のパターンを有する第1ヒーターパターンが形成される(ステップS104)。すなわち、金属箔層151aの上面にレジストが形成され、レジストが露光及び現像されることにより、ヒーター電極151として残す部分を被覆するレジストパターンが形成される。そして、レジストパターンに被覆されずに露出する金属箔層151aがエッチングにより除去されることにより、例えば
図6に示すように、所望のパターンのヒーター電極151が形成される。
図6に示す例では、例えば二重の同心円パターンを有するヒーター電極151が形成されている。
【0033】
そして、ヒーター電極151を被覆する絶縁樹脂152が積層される(ステップS105)。具体的には、半硬化状態の絶縁樹脂152が絶縁樹脂層140及びヒーター電極151を被覆するように積層され、加熱及び加圧されることにより、ヒーター電極151を被覆する絶縁樹脂152が硬化する。この結果、例えば
図7に示すように、絶縁樹脂層140に積層された第1発熱層150が形成される。
【0034】
第1発熱層150が形成されると、第1発熱層150を構成する絶縁樹脂152の表面に第2発熱層160のヒーター電極161となる金属箔層が積層される(ステップS106)。具体的には、例えば
図8に示すように、第1発熱層150の表面に、厚さが例えば25~50μm程度の金属箔層161aが積層される。金属箔層161aは、真空ラミネート及びプレスによる真空加熱加圧接合により、第1発熱層150に密着する。
【0035】
金属箔層161aの材料としては、金属箔層151aと同様に、ヒーター電極151、161の材料として例示した圧延合金を用いることができる。すなわち、金属箔層161aは、例えば、CN49(コンスタンタン)(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン(Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等の合金からなる。なお、ヒーター電極161は、発熱するヒーター電極として機能させる代わりに、第1発熱層150のヒーター電極151間を電気的に接続したり、ヒーター電極151と給電部163とを電気的に接続したりするバイパス電極として機能させても良い。ヒーター電極161をバイパス電極として機能させる場合には、金属箔層161aの材料として、例えば銅又は銅合金などの電気抵抗が小さい金属を用いても良い。
【0036】
金属箔層161aに例えばフォトリソグラフィを用いたエッチングが施されることにより、所望のパターンを有する第2ヒーターパターンが形成される(ステップS107)。すなわち、金属箔層161aの上面にレジストが形成され、レジストが露光及び現像されることにより、ヒーター電極161として残す部分を被覆するレジストパターンが形成される。そして、レジストパターンに被覆されずに露出する金属箔層161aがエッチングにより除去されることにより、例えば
図9に示すように、所望のパターンのヒーター電極161が形成される。ヒーター電極161は、少なくとも一部がヒーター電極151と重ならない位置に配置される。すなわち、ヒーター電極161は、例えば第1発熱層150のヒーター電極151が形成されていない領域と平面視で重なる位置に形成される。また、ヒーター電極161には、ビア170が形成される位置に開口部161bが形成される。開口部161bは、ヒーター電極161のヒーター電極151と重なる位置に形成される。
【0037】
そして、開口部161bの位置にビアホールが形成される(ステップS108)。具体的には、例えば
図10に示すように、開口部161bの底面に露出する第1発熱層150の絶縁樹脂152に例えばレーザー加工によって貫通孔が形成され、第1発熱層150のヒーター電極151まで到達するビアホール170aが形成される。このとき、開口部161bの位置にビアホール170aが形成されるため、ヒーター電極161がレーザー加工のマスクとして機能し、ビアホール170aの位置精度を確保することができるとともに、ビアホール170aのテーパー角度を0度に近づけることができる。ビアホール170aの底面には、ヒーター電極151の上面が露出する。ビアホール170aは、ヒーター電極161からヒーター電極151へ向かうにつれて径が小さくなるテーパー形状を有していても良い。このとき、ビアホール170aのテーパー角度は、垂直方向に対して20度以下であるのが望ましい。
【0038】
ヒアホール170aが形成されると、ビアホール170aに例えば金属ペースト又ははんだなどが充填され(ステップS109)、ビア170が形成される。具体的には、例えば
図11に示すように、ビアホール170aに半硬化状態の銀ペーストや溶融した錫・銀・銅はんだなどの導電部材が充填され、この導電部材が硬化されてビア170が形成される。このとき、ヒーター電極161の上面には、ビアホール170aの径よりも大径の頂部171が形成される。すなわち、ヒーター電極161の上面においては、半硬化状態の導電部材がビアホール170aの周囲にまで広がった状態で硬化され、ヒーター電極161の上面に確実に接触する頂部171が形成される。これにより、ヒーター電極151とヒーター電極161との接続信頼性を向上することができる。なお、導電部材の充填方法としては、例えば無電解めっきの厚付けであっても良い。
【0039】
ビア170は、第1発熱層150のヒーター電極151と第2発熱層160のヒーター電極161とを電気的に接続する。このため、ビア170は、第1発熱層150のヒーター電極151と平面視で重なるとともに、第2発熱層160のヒーター電極161と平面視で重なる位置に形成される。例えば
図12に示すように、第1発熱層150のヒーター電極151が二重の同心円パターンを有する場合、ビア170は、同心円パターンを形成するヒーター電極151それぞれに接触する位置に形成される。また、例えば
図13に示すように、第2発熱層160のヒーター電極161がヒーター電極151と平面視で一部が重なり他の一部が重ならない位置に形成される場合、ビア170は、ヒーター電極151と平面視で重なる一部に形成される。
【0040】
このように、ビア170によってヒーター電極151、161が接続されるため、第1発熱層150及び第2発熱層160において、ヒーター電極151、161の配置の自由度が比較的高くなる。すなわち、例えばセラミック層130から遠い第2発熱層160のヒーター電極161によって、第1発熱層150のヒーター電極151のヒーターパターンに制約を課すことなく柔軟に配線を引き回すことができる。このため、例えば負極側の配線をまとめて配置したり、給電部163に接触する電極パッドを静電チャック120の外周に配置したりするなど、均熱性を十分に考慮したヒーターパターンの実現が可能となる。結果として、平面視での温度分布を一様にすることができ、十分に高い均熱性を得ることができる。
【0041】
ビア170によってヒーター電極151、161が接続されると、ヒーター電極161を被覆する絶縁樹脂162が積層される(ステップS110)。具体的には、半硬化状態の絶縁樹脂162が第1発熱層150及びヒーター電極161を被覆するように積層され、加熱及び加圧されることにより、ヒーター電極161を被覆する絶縁樹脂162が硬化する。この結果、例えば
図14に示すように、第1発熱層150に積層された第2発熱層160が形成される。
【0042】
そして、第2発熱層160のヒーター電極161のうち電極パッドに相当する位置において、絶縁樹脂162に開口が形成される(ステップS111)。すなわち、給電部163に接触する電極パッドとなる位置においてヒーター電極161を露出させるため、例えば
図15に示すように、絶縁樹脂162に開口162aが形成される。これにより、ビア170によって接続される2層のヒーター電極151、161を有する静電チャック120が得られる。
【0043】
静電チャック120は、接着剤によってベースプレート110に接着される(ステップS112)。具体的には、開口162aが形成された第2発熱層160の絶縁樹脂162の面が、例えばシランカップリング剤及び接着剤によってベースプレート110に接着される。このとき、開口162aの位置を給電部163の位置に合わせて接着することにより、給電部163とヒーター電極161とが接触し、ヒーター電極161への給電が可能となる。さらに、ヒーター電極161がビア170を介してヒーター電極151と接続されているため、ヒーター電極151への給電も可能となる。ベースプレート110に静電チャック120が接着されることにより、基板固定装置100が完成する。
【0044】
以上のように、本実施の形態によれば、静電チャックに2層のヒーター層を設け、各ヒーター層のヒーター電極をビアによって接続する。そして、ビアは、絶縁樹脂及びヒーター電極を貫通するビアホールを充填して形成され、ビアの頂部がビアホールよりも大径となっている。このため、ヒーター電極の配置の自由度を高くすることができ、均熱性を考慮したヒーターパターンを実現して十分に高い均熱性を得ることができるとともに、各層のヒーター電極のビアによる接続信頼性を向上することができる。
【0045】
なお、上記一実施の形態においては、第1発熱層150及び第2発熱層160の2層のヒーター層を静電チャック120に設けるものとしたが、3層以上のヒーター層を静電チャック120に設けることも可能である。3層以上のヒーター層を設ける場合でも、各ヒーター層のヒーター電極は、ビア170と同様の構成のビアによって電気的に接続される。これにより、ヒーター電極の配置の自由度を高くするとともに、各ヒーター層のヒーター電極の接続信頼性を向上することができる。
【0046】
ところで、第1発熱層150のヒーター電極151のうちビア170に接触する部分や、第2発熱層160のヒーター電極161のうち給電部163に接触する部分には、電極パッドが形成される。電極パッドは、ビア170や給電部163に確実に接続するために一定程度以上の径を有する領域であり、電極パッドの周辺は、ヒーターパターンの空白領域となりやすい。このため、電極パッド周辺の温度が低下しやすく、均熱性の低下を招くことがある。
【0047】
そこで、上記一実施の形態においては、一方の発熱層の電極パッドには、他方の発熱層のヒーターパターンが重なるようにすることで、電極パッド周辺の温度低下を防止し、均熱性を向上するようにしても良い。
【0048】
図16、17は、ヒーターパターンと電極パッドの位置関係の具体例を示す図である。
図16は、第1発熱層150のヒーター電極151による第1ヒーターパターンを示し、
図17は、第2発熱層160のヒーター電極161による第2ヒーターパターンを示す。
【0049】
図16に示すように、ヒーター電極151は、内側ヒーターパターン及び外側ヒーターパターンに分離しており、内側ヒーターパターンには電極パッド210が形成され、外側ヒーターパターンには電極パッド220が形成されている。これらの電極パッド210、220には、ヒーター電極151とヒーター電極161を接続するビア170の先端が接触する。
【0050】
すなわち、
図17に示すように、電極パッド210、220に対応する位置にはビア170が形成され、ビア170は、第2発熱層160のヒーター電極161によって囲まれている。ビア170の径は、電極パッド210、220の径よりも小さく、ビア170の周囲がヒーター電極161によって囲まれているため、ヒーター電極151の電極パッド210、220によるヒーターパターンの空白は、ヒーター電極161によって補完される。すなわち、第1発熱層150の電極パッド210、220の周囲においても、第2発熱層160のヒーター電極161により温度低下を防止することができる。
【0051】
第2発熱層160のヒーター電極161は、第1発熱層150のヒーター電極151に対応して、内側ヒーターパターン及び外側ヒーターパターンに分離している。そして、内側ヒーターパターンのビア170とは異なる位置に電極パッド215が形成され、外側ヒーターパターンのビア170とは異なる位置に電極パッド225が形成されている。これらの電極パッド215、225には、ヒーター電極161とベースプレート110を接続する給電部163が接触する。
【0052】
電極パッド215、225周辺はヒーターパターンの空白となるが、電極パッド215、225の位置が第1発熱層150のヒーター電極151と重なるため、このヒーターパターンの空白は、ヒーター電極151によって補完される。すなわち、第2発熱層160の電極パッド215、225の周囲においても、第1発熱層150のヒーター電極151により温度低下を防止することができる。
【0053】
このように、一方の発熱層の電極パッドには、他方の発熱層のヒーターパターンが重なるため、電極パッドによるヒーターパターンの空白が補完され、電極パッド周辺での温度低下に伴う均熱性の低下を抑制することができる。また、上述した例では、第2発熱層160のヒーター電極161を任意の形状とし、電極パッド215、225を柔軟に配置することができる。このため、ヒーター電極161及び電極パッド215、225による他の配線等との干渉を防止することができる。
【符号の説明】
【0054】
110 ベースプレート
111 冷却水路
120 静電チャック
130 セラミック層
131 電極
140 絶縁樹脂層
150 第1発熱層
151、161 ヒーター電極
152、162 絶縁樹脂
160 第2発熱層
163 給電部
170 ビア
170a ビアホール
171 頂部
210、215、220、225 電極パッド