(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】金属含有膜および金属含有膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3205 20060101AFI20241129BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20241129BHJP
H01L 23/532 20060101ALI20241129BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20241129BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20241129BHJP
C23C 16/08 20060101ALI20241129BHJP
C23C 16/16 20060101ALI20241129BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20241129BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20241129BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20241129BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241129BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20241129BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L21/88 R
C23C14/06 A
C23C14/06 N
C23C14/14 G
C23C16/08
C23C16/16
C23C16/34
H01L21/28 301R
H01L21/285 C
H01L21/285 S
H01L27/04 C
H10B12/00 661
(21)【出願番号】P 2021101521
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】田村 知大
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 宏明
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0070097(US,A1)
【文献】特開2002-329680(JP,A)
【文献】特開2005-294321(JP,A)
【文献】特開2003-324148(JP,A)
【文献】特開平04-061125(JP,A)
【文献】特開昭63-155743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/768
H01L 23/52
H01L 23/522-23/532
H01L 21/28-21/288
H01L 21/44-21/445
H01L 29/40-29/51
H01L 27/04
H10B 12/00
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶核形成臨界直径未満の膜厚を有する第1の金属含有単位膜と、結晶核形成臨界直径未満の膜厚を有し、前記第1の金属含有単位膜とは異なる第2の金属含有単位膜とが、交互に積層されてなり、結晶粒界を含まないラミネート構造を有
し、
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜の少なくとも一方に、過冷度を増加させる元素が添加される、金属含有膜。
【請求項2】
前記過冷度を増加させる元素は、それが添加される母相材料との間の相互作用パラメータが0以上である、請求項
1に記載の金属含有膜。
【請求項3】
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜のうち、前記過冷度を増加させる元素が添加されるものがAl膜の場合は、前記過冷度を増加させる元素はSiであり、
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜のうち、前記過冷度を増加させる元素が添加されるものがRu膜の場合は、前記過冷度を増加させる元素はIr、Pd、Ni、Co、Mnから選択されたものであり、
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜のうち、前記過冷度を増加させる元素が添加されるものがCo膜の場合は、前記過冷度を増加させる元素はNi、Cu、Pd、Ruから選択されたものであり、
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜のうち、前記過冷度を増加させる元素が添加されるものがW膜の場合は、前記過冷度を増加させる元素はMo、Ta、Nb、Ti、Mnから選択されたものであり、
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜のうち、前記過冷度を増加させる元素が添加されるものがMo膜の場合は、前記過冷度を増加させる元素はW、Ta、Nb、Ti、Mnから選択されたものであり、
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜のうち、前記過冷度を増加させる元素が添加されるものがTi膜の場合は、前記過冷度を増加させる元素はZr、Hf、V、W、Mo、Nb、Taから選択されたものであり、
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜のうち、前記過冷度を増加させる元素が添加されるものがMn膜の場合は、前記過冷度を増加させる元素はRu、Fe、Mo、Wから選択されたものである、請求項
2に記載の金属含有膜。
【請求項4】
メタルピラー構造またはシリンダ構造の電極として用いられる、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の金属含有膜。
【請求項5】
バリア膜として用いられる、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の金属含有膜。
【請求項6】
配線金属として用いられる、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の金属含有膜。
【請求項7】
メタルハードマスクとして用いられる、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の金属含有膜。
【請求項8】
結晶核形成臨界直径未満の膜厚を有する第1の金属含有単位膜と、結晶核形成臨界直径未満の膜厚を有し、前記第1の金属含有単位膜とは異なる第2の金属含有単位膜とが、交互に積層されてなり、結晶粒界を含まないラミネート構造を有し、
メタルピラー構造またはシリンダ構造の電極として用いられる、金属含有膜。
【請求項9】
結晶核形成臨界直径未満の膜厚を有する第1の金属含有単位膜と、結晶核形成臨界直径未満の膜厚を有し、前記第1の金属含有単位膜とは異なる第2の金属含有単位膜とが、交互に積層されてなり、結晶粒界を含まないラミネート構造を有し、
メタルハードマスクとして用いられる、金属含有膜。
【請求項10】
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜は、金属窒化膜または金属膜である、請求項1
から請求項9のいずれか一項に記載の金属含有膜。
【請求項11】
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜は、一方が金属窒化膜で他方が金属膜の組み合わせ、両方が金属窒化膜の組み合わせ、両方が金属膜の組み合わせのいずれかである、請求項
10に記載の金属含有膜。
【請求項12】
前記金属窒化膜は、TiN、NbN、VN、WN、TaN、MoN、W
2N
3から選択されたものであり、前記金属膜は、Ru、Co、Ni、Mo、W、Al、Ti、V、Mn、Si、Mgから選択されたものである、請求項
11に記載の金属含有膜。
【請求項13】
前記一方が金属窒化膜で他方が金属膜の組み合わせは、TiN-W、TiN-Mo、TiN-Ru、TaN-W、TaN-Mo、TaN-Ruから選択されたものである、請求項
11または請求項
12に記載の金属含有膜。
【請求項14】
前記両方が金属窒化膜の組み合わせは、TiN-TaN、TiN-NbN、TiN-MoN、TiN-W
2N
3、TaN-NbN、TaN-W
2N
3から選択されたものである、請求項
11または請求項
12に記載の金属含有膜。
【請求項15】
前記両方が金属膜の組み合わせは、Si-Al、W-Al、Mg-Al、W-Ti、V-Ti、Mg-Tiから選択されたものである、請求項
11または請求項
12に記載の金属含有膜。
【請求項16】
基板上に、第1の金属含有単位膜を結晶核形成臨界直径未満の膜厚で成膜する工程と、前記第1の金属含有単位膜とは異なる第2の金属含有単位膜を結晶核形成臨界直径未満の膜厚で成膜する工程とを交互に行い、
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜の少なくとも一方に、過冷度を増加させる元素を添加し、結晶粒界を含まないラミネート構造の金属含有膜を製造する、金属含有膜の製造方法。
【請求項17】
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜を、PVD、ALD、およびCVDのいずれかで成膜する、請求項
16に記載の金属含有膜の製造方法。
【請求項18】
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜は、金属窒化膜または金属膜である、請求項
16または請求項
17に記載の金属含有膜の製造方法。
【請求項19】
前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜は、一方が金属窒化膜で他方が金属膜の組み合わせ、両方が金属窒化膜の組み合わせ、両方が金属膜の組み合わせのいずれかである、請求項
18に記載の金属含有膜の製造方法。
【請求項20】
前記過冷度を増加させる元素は、それが添加される母相材料との間の相互作用パラメータが0以上である、請求項
16から請求項19のいずれか一項に記載の金属含有膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属含有膜および金属含有膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際には、配線、電極、バリア膜、メタルハードマスク等として金属含有膜が多用される。このような金属含有膜には、それぞれの用途に応じて、低抵抗であること、機械的強度が高いこと、原子の拡散が小さいこと等の特性が要求され、そのために種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、タングステン(W)を主成分とする金属配線層のシード層としてCoWを用いることにより、金属配線層の結晶を微細化して、金属配線層の堆積抵抗値を小さく抑えることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、用途に応じた良好な特性を有する金属含有膜および金属含有膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る金属含有膜は、結晶核形成臨界直径未満の膜厚を有する第1の金属含有単位膜と、結晶核形成臨界直径未満の膜厚を有し、前記第1の金属含有単位膜とは異なる第2の金属含有単位膜とが、交互に積層されてなり、結晶粒界を含まないラミネート構造を有し、前記第1の金属含有単位膜および前記第2の金属含有単位膜の少なくとも一方に、過冷度を増加させる元素が添加される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、用途に応じた良好な特性を有する金属含有膜および金属含有膜の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る金属含有膜を模式的に示す断面図である。
【
図2】主な金属の結晶核形成臨界直径D
*の計算値を示す図である。
【
図3】Al-Tiラミネート構造の金属含有膜をスパッタリングで製造するにあたり、Al膜の膜厚を1.7nm未満にしたサンプルAのSEM写真である。
【
図4】Al-Tiラミネート構造の金属含有膜をスパッタリングで製造するにあたり、Al膜の膜厚を1.7nm以上にしたサンプルBのSEM写真である。
【
図5】トータル膜厚を1000nmとした以外は、サンプルAと同様の条件で製造したサンプルCのSEM写真である。
【
図6】サンプルCの断面を拡大して示すSEM写真である。
【
図7】準安定状態である非晶質状態から安定状態である結晶状態に相転移する際の自由エネルギーの推移を示す図である。
【
図8】種々の金属の過冷度と臨界核半径r
*との関係(計算値)を示す図である。
【
図9】Al-Si合金における過冷度と冷却速度との関係を示す図である。
【
図10】Al-Tiラミネート構造の金属含有膜と(AlSi)-Tiラミネート構造の金属含有膜をスパッタリングにより膜厚500nmおよび1000nmで形成した際の状態を示すSEM写真である。
【
図11】Al-Mg合金における過冷度と冷却速度との関係を示す図である。
【
図12】(AlSi)-Tiラミネート構造の金属含有膜と(AlMg)-Tiラミネート構造の金属含有膜のSEM写真である。
【
図15】一実施形態の金属含有膜を微細配線に適用した微細配線構造の例を示す断面図である。
【
図16】一実施形態の金属膜をバリア膜に適用した微細配線構造の例を示す断面図である。
【
図17】一実施形態の金属含有膜をピラー構造の電極に適用したキャパシタの例を示す断面図である。
【
図18】一実施形態の金属含有膜をシリンダ構造の電極に適用したキャパシタの例を示す断面図である。
【
図19】一実施形態の金属含有膜をハードマスクに適用した構造体の例を示す断面図である。
【
図20】PVDによる成膜を行うためのプラズマスパッタ装置の一例を示す断面図である。
【
図21】ALDまたはCVDによる成膜を行うための成膜装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0009】
<金属含有膜>
図1は、一実施形態に係る金属含有膜を模式的に示す断面図である。金属含有膜1は、第1の金属含有単位膜2と第1の金属含有単位膜とは異なる第2の金属含有単位膜3とを交互に積層してなるラミネート構造を有しており、基板W上に形成されている。第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3は、いずれもその膜厚が結晶核形成臨界直径未満であり、金属含有膜1は、結晶粒界を含まない。基板Wとしては半導体基板やFPD基板等が例示される。
【0010】
核の半径が臨界核半径r*未満の場合、体積増加によるエネルギーが表面エネルギーを上回ることができず、核生成は促進されず結晶核は形成されないが、核の半径が臨界核半径r*以上になると核生成が促進され結晶核が形成される。つまり、臨界核半径r*とは、それ以上で結晶核が形成される臨界的な結晶核サイズであり、結晶核形成臨界半径と言い換えることができる。そして、その時の核の直径が結晶核形成臨界直径D*である。したがって、第1の金属含有単位膜2と第2の金属含有単位膜3の膜厚を結晶核形成臨界直径D*未満に抑えることにより、核の直径は結晶核形成臨界直径D*未満となり、理論上、第1の金属含有単位膜2と第2の金属含有単位膜3の結晶化を抑制することができる。これにより、結果的に金属含有膜1を、結晶粒界を含まない膜とすることができる。
【0011】
臨界核半径r
*は、金属ごとに、最大過冷度ΔTmaxと融点Tmを用いて、Tm/TΔmaxに比例する関係式により算出することができる。結晶核形成臨界直径D
*は、このようにして算出した臨界核半径r
*の2倍の値である。主な金属の結晶核形成臨界直径D
*の計算値は
図2に示す通りである。
図2に示すように、多くの金属は結晶核形成臨界直径D
*の計算値が1.4~2.6nmであり、第1の金属含有単位膜2と第2の金属含有単位膜3の膜厚をこの値未満とすることで結晶化を抑制することができる。
【0012】
このような膜厚の、第1の金属含有単位膜2と第2の金属含有単位膜3を形成する手法としては、スパッタリングに代表されるPVDや、ガスを用いた化学的な成膜手法であるALDおよびCVDのような一般的な薄膜形成技術を用いることができる。
【0013】
第1の金属含有単位膜2と第2の金属含有単位膜3とは、反応性が極力小さな組み合わせ、または2相共存関係にある組み合わせを選択することが好ましい。これらの層間で界面反応が生じて化学ポテンシャル差ができると、拡散(原子の移動)が生じ、準安定状態から安定状態に相転移しやすくなり、結晶化しやすくなってしまう。
【0014】
第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3としては、金属窒化膜であっても、金属膜であってもよい。第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3の組み合わせとしては、これらの一方が金属窒化膜、他方が金属膜の組み合わせ、両方が金属窒化膜の組み合わせ、両方が金属膜の組み合わせを挙げることができる。
【0015】
第1の金属含有単位膜2または第2の金属含有単位膜3を構成する金属窒化膜としては、TiN、NbN、VN、WN、TaN、MoN、W2N3のいずれかを挙げることができ、金属膜としては、Ru、Co、Ni、Mo、W、Al、Ti、V、Mn、Si、Mgのいずれかを挙げることができる。
【0016】
第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3の好ましい組み合わせとしては、以下のようなものを挙げることができる。
・金属窒化膜同士の組み合わせ
TiN-TaN、TiN-NbN、TiN-MoN、TiN-W2N3、TaN-NbN、TaN-W2N3
・金属窒化膜と金属膜との組み合わせ
TiN-W、TiN-Mo、TiN-Ru、TaN-W、TaN-Mo、TaN-Ru
・金属膜同士の組み合わせ
Si-Al、W-Al、Mg-Al、W-Ti、V-Ti、Mg-Ti
【0017】
以上の好ましい組み合わせは、反応性が極力小さな組み合わせ、または2相共存関係にある組み合わせであり、界面反応による拡散(原子の移動)が生じ難く、結晶化し難い。
【0018】
ただし、第1の金属含有単位膜2と第2の金属含有単位膜3との組み合わせが反応性を有するものであっても、結晶粒界を含まない金属含有膜を形成することは可能である。例えば、Al-Tiの組み合わせは、AlとTiとが反応性を有する組み合わせである。Al-Tiは、これに加え、純金属系のため、結合が金属結合であり結合が弱い。このためAl-Tiの組み合わせは、準安定状態である非晶質状態を維持しにくい組み合わせである。このような組み合わせであっても、以下の条件でラミネート構造の金属含有膜を形成した結果、実際に結晶粒界を含まない金属含有膜を得ることができた。
Al膜の膜厚:1.6nm(D*の計算値である1.7nm未満)
Ti膜の膜厚:0.8nm(D*の計算値である2.7nm未満)
成膜手法:スパッタリング
AlとTiの膜厚比率(Al:Ti): 77:23、66:34、55:45
トータル膜厚(目標値):35nm
【0019】
また、Al-Tiラミネート構造の金属含有膜をスパッタリングで製造するにあたり、Al膜の膜厚を1.7nm未満の1.6nmにしたサンプルAと、1.7nm以上の1.8nmにしたサンプルBを比較した。なお、成膜にあたっては、AlとTiの膜厚比率を2:1とし、トータル膜厚を100nmとした。
【0020】
その結果、Al膜の膜厚がD
*の計算値である1.7nm未満のサンプルAでは
図3のSEM写真に示すように結晶粒界を含まない非晶質状態の膜となったが、Al膜の膜厚がD
*の計算値である1.7nm以上のサンプルBでは
図4のSEM写真に示すように結晶化が見られた。
【0021】
次に、トータル膜厚を1000nmとした以外は、サンプルAと同様の条件でサンプルCを製造した。その結果、
図5のSEM写真に示すように結晶化した。
図6はサンプルCの断面を拡大して示すSEM写真であるが、基板側の結晶粒径が小さいのに対し、表面側の結晶粒径が大きくなっている。このことから、結晶化したのは、スパッタリング成膜する際に、表面側から入熱し、膜厚が厚くなることにより入熱の影響が大きくなったためと考えられる。また、基板側と表面側で結晶粒径が異なるのは、基板側は冷却側であり、表面側は入熱側であって、過冷度が異なるためと考えられる。
【0022】
このように、第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3は、膜厚が結晶核形成臨界直径D
*未満であっても、入熱により結晶化する場合がある。
図7は、準安定状態である非晶質状態から安定状態である結晶状態に相転移する際の自由エネルギーの推移を示す図である。この図に示すように、準安定状態である非晶質状態から、安定状態の結晶状態に相転移するためには、活性化エネルギーΔEaが必要である。しかし、入熱がある場合、入熱により活性化障壁(ΔEa)を乗り越えると、結晶状態に至る。したがって、入熱があっても結晶化させずに非晶質状態を維持するためには、非晶質状態の自由エネルギーGαを小さくして非晶質状態をより安定化すること、活性化エネルギーΔEaを大きくして相転移の障壁を上げることのいずれか、または両方が必要である。
【0023】
非晶質は過冷液体がそのまま凝固したものであるため、最大過冷度が大きいほど、準安定な非晶質状態を維持しやすいと考えられる。つまり、最大過冷度が大きいほどGαが小さくなり非晶質状態が安定化すると考えられる。したがって、非晶質状態を安定化させるためには、過冷度を増加させる元素の添加が有効である。
【0024】
図8は、種々の金属の過冷度と臨界核半径r
*との関係(計算値)を示す図であり、各金属の過冷度曲線の右端が最大過冷度である。この図から、AlおよびTiはいずれも最大過冷度が小さく、非晶質状態を維持し難い材料であることがわかる。
【0025】
そこで、Al-Tiのラミネート構造の金属含有膜を製造する際に、Al膜に過冷度を増加させる元素を添加して非晶質状態を安定化させることを試みた。
図9はAl-Si合金における過冷度と冷却速度との関係を示す図である(出典:市川ら,鋳物vol.46(1973)、1,25の
図8)。この図から、Siが純Alの過冷度を増加させることがわかる。
【0026】
実際に、Al-Tiラミネート構造の金属含有膜と(AlSi)-Tiラミネート構造の金属含有膜をスパッタリングにより膜厚500nmおよび1000nmで形成した。AlSi膜のSiの添加量は6at%とし、Al膜およびAlSi膜の膜厚は1.6nmとした。
図10はこれらのSEM写真である。SEM写真から明らかなように、Al-Tiラミネート構造においては、膜厚500nmでは結晶化しなかったが、膜厚1000nmで結晶化した。これに対し、(AlSi)-Tiラミネート構造においては、膜厚1000nmでも結晶化しなかった。このことから、AlにSiを添加して純Alの過冷度を増加させることによりGαが小さくなり準安定状態である非晶質状態が維持できたと考えられる。また、元素添加を行うこと自体がエントロピーの増大につながり、Gαを小さくするために有利に作用する。
【0027】
Al膜の過冷度を増加させる元素としては、Siの他にMgも知られている。
図11はAl-Mg合金における過冷度と冷却速度との関係を示す図である(出典:市川ら,鋳物vol.46(1973)、1,25の
図4)。この図から、Mgが純Alの過冷度を増加させる添加元素となり得ることがわかる。
【0028】
また、実際に、(AlMg)-Tiラミネート構造の金属含有膜をスパッタリングにより膜厚1000nmで形成した。AlMg膜のMgの添加量は6at%とし、膜厚は1000nmとした。
図12は上述の(AlSi)-Tiラミネート構造の金属含有膜とこの(AlMg)-Tiラミネート構造の金属含有膜のSEM写真である。SEM写真から明らかなように、(AlSi)-Tiラミネート構造は、膜厚1000nmで結晶化しなかったのに対し、(AlMg)-Tiラミネート構造は、膜厚1000nmで結晶化した。
【0029】
このように、SiとMgはいずれもAlの過冷度を増加させる添加元素であるにもかかわらず、Mgには非晶質状態を安定化させる効果がみられなかった。この違いを状態図に基づいて検討した。
図13はAl-Si状態図であり、
図14はAl-Mg状態図である。これらの図から明らかなように、Al-Siは相分離系(共晶系)であるのに対し、Al-Mgは金属間化合物形成系である。すなわち、SiとMgはAlに対する相互作用が大きく異なり、Al-Siは互いに反発し合いAlを主成分とする相とSiを主成分とする相に分離するのに対し、Al-Mgは互いに引き合い、Al-Mg-Alと配列(オーダリング)しやすい。
【0030】
このような相互作用は、2元系の混合エンタルピーの相互作用パラメータにより把握することができる(西澤、須藤ら,金属組織学,丸善(昭和47年8月31日発行))。純物質A、Bの2元系の0Kにおける混合エンタルピー
0H
mixは、以下の(1)式で表すことができる。(1)式中、
0H
A、
0H
Bは、0Kにおける純物質A、Bのエンタルピー、X
Bは純物質Bの原子分率、
0Ω
ABは相互作用パラメータである。相互作用パラメータ
0Ω
ABは、以下の(2)式で表される。(2)式中、NはAとBを合わせた原子の総個数、zは配位数、e
AB、e
AA、e
BBは、それぞれA-B、A-A、B-Bの結合エネルギーである。
【数1】
【0031】
相互作用パラメータ0ΩABの値がもつ物理的意味は、以下の通りである。
(1)0ΩAB>0:
この場合は、eAB>(eAA+eBB)/2であり、A-B対のエネルギーがA-A対およびB-B対の平均エネルギーよりも高くて不安定であるから、A、Bは反発的でAを主成分とする相とBを主成分とする相に分離する傾向にあることを意味する。このため、非晶質を形成しやすい組み合わせとなる。上述のAl-Si系はこのケースである。
(2)0ΩAB<0:
この場合は、eAB<(eAA+eBB)/2であり、A-B対のエネルギーがA-A対およびB-B対の平均エネルギーよりも低くて安定であるから、A、Bは互いに引き合うような傾向があり、A-B-A-Bと並ぶ規則化(ordering)が生じやすいことを意味する。このため、非晶質になりにくくなる。上述のAl-Mg系はこのケースである。
(2)0ΩAB=0:
この場合は、eAB=(eAA+eBB)/2であり、A-B対のエネルギーがA-A対およびB-B対の平均エネルギーと等しいから、AとBとの間には相互作用が存在せず、A、Bの配置は無秩序となる。このような固溶体は理想溶体(ideal Solution)と称され、非晶質を形成しやすい組み合わせである。
【0032】
以上のような2元系の混合エンタルピー0Hmixが非晶質状態から結晶状態に相転移する際の活性化エネルギーΔEaと関係しており、0ΩABの値(正負)でΔEaが変化すると考えられる。上述したAlに対してSiとMgを添加した際のふるまいの違いは、このような0ΩABの正負によるΔEaの違いで説明できる。すなわち、Al-Si系では0ΩAB>0であるため、添加したSiが母相であるAlと反発してΔEaが上昇する。一方、Al-Mg系では0ΩAB<0であるため、添加したMgが母相であるAlと結合して規則化することによりΔEaが低下する。
【0033】
以上のように、第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3のいずれか、または両方に、過冷度を増加させる元素を添加することにより、Gαを低下させて非晶質状態を安定化させることができ、入熱による結晶化を抑制することができる。また、その過冷度を増加させる元素としては、その元素と母相との相互作用パラメータ0ΩABが、0ΩAB≧0となるものを選択することが好ましい。
【0034】
このような過冷度を増加させる添加元素は、第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3が金属膜である場合に有効であり、これらの材料に応じて適宜なものを選択することができる。例えば、上述したように材料がAlの場合は添加元素としてSiが好適である他、Ruの場合は添加元素としてIr、Pd、Ni、Co、Mnが好適であり、Coの場合はNi、Cu、Pd、Ruが好適である。また、材料がWの場合は、添加元素としてMo、Ta、Nb、Ti、Mnが好適であり、Moの場合は、W、Ta、Nb、Ti、Mnが好適であり、Tiの場合は、Zr、Hf、V、W、Mo、Nb、Taが好適であり、Mnの場合はRu、Fe、Mo、Wが好適である。
【0035】
<ラミネート構造の金属含有膜に至った経緯>
次に、本実施形態におけるラミネート構造の金属含有膜に至った経緯について説明する。
半導体デバイスには、例えば、微細配線の配線金属、キャパシタ等に用いるピラー構造やシリンダ構造の電極、バリア膜、メタルハードマスク等、種々の用途で、W、Cu、TiN、TaN等の金属含有膜が用いられている。このような金属含有膜は、一般的に結晶構造を有しており、結晶粒界が半導体デバイスそのものや半導体デバイスの製造プロセスに問題を生じさせる原因となる。
【0036】
例えば、微細配線においては、粒界散乱や、粒界に基づく凹凸による界面散乱により配線抵抗の増加が生じる。また、微細加工に用いられるメタルハードマスクにおいては、結晶粒界が存在すると、その粒界部分の形状がそのまま被加工物に転写されてしまうことや、粒界すべりによる膜応力による変形(wiggling)が生じる。さらに、微細配線では、粒界すべりによる応力集中により捩じれが生じ、界面抵抗の増大や、隣接する配線同士の干渉によるミスアライメントを誘発するおそれがある。ピラー構造やシリンダ構造の電極においては、粒界すべりにより機械的強度が低下し、粒界にせん断応力が加わることにより製造過程においてリーニング(倒れ、倒壊)等の塑性変形が生じる。さらにまた、バリア膜は、ハロゲン系不純物等の拡散バリアとして用いられるが、結晶粒界が存在すると粒界を介したバイパス拡散によりそのバリア性が著しく低下してしまう。
【0037】
これに対し、本実施形態では、第1の金属含有単位膜2と第2の金属含有単位膜3とのラミネート構造で、結晶粒界を含まない金属含有膜1を得る。このため、粒界散乱や、粒界に基づく凹凸による界面散乱による抵抗の増加がなく、また、加工の際に形状をトレースしやすい、平坦な断面を出しやすいといった利点があり、さらに、粒界すべりによる応力集中や強度低下が生じず、粒界を介したバイパス拡散も生じない。このため、微細配線の配線金属、ピラー構造やシリンダ構造の電極、バリア膜、メタルハードマスク等の用途に適したものとなる。
【0038】
結晶粒界が存在しない金属含有膜としては、従来から、アモルファスメタルやガラスメタルと称される非晶質構造や単結晶が知られている。しかし、従来の非晶質構造の金属含有膜は、複数の金属を組み合わせて合金化したものが多く、金属元素の組み合わせの自由度が小さいため、半導体デバイスの性能や半導体デバイスの製造プロセスにおいて大きな制約となる。また、単結晶を得るためには、高温プロセスが必要であり、工程が限定的で、かつプロセスが複雑であり、製造に困難性をともなう。また、成長可能な材料も限られる。
【0039】
これに対し、本実施形態では第1の金属含有単位膜2と第2の金属含有単位膜3とのラミネート構造を形成すればよいため、既存の成膜プロセスの組み合わせで製造することができ、製造の困難性をともなうことはない。また、材料の選択の自由度が高く、デバイスの要求性能やプロセスからの要請や制約に応じて第1の金属含有単位膜2と第2の金属含有単位膜3の材料の組み合わせを選択することができる。さらに、既存のプロセスの組み合わせのみで、新たな機能性材料が得られる可能性もある。
【0040】
<金属含有膜の用途>
次に、本実施形態に係る金属含有膜の用途についてより詳しく説明する。
本実施形態の金属含有膜の用途としては、微細配線の配線金属、バリア膜、ピラー構造やシリンダ構造の電極、メタルハードマスク等を挙げることができる。
【0041】
本実施形態に係る金属含有膜を用いた配線金属は、例えば、既存の微細配線に用いられるW膜、Cu膜、TiN膜の代替として用いることができる。
【0042】
図15は、一実施形態の金属含有膜を配線金属に適用した微細配線の例を示す断面図である。
図15の微細配線110においては、図示しない下部構造を有する基板101の上に設けられたトレンチやホール等の凹部を有する絶縁膜102が形成され、その凹部内にバリア膜104を介して配線金属となる本実施形態の金属含有膜105が埋め込まれている。配線金属を構成する金属含有膜が結晶粒界を有する場合、上述したように、粒界散乱や、粒界に基づく凹凸による界面散乱により配線抵抗の増加が生じたり、粒界すべりによる捩じれが生じたりするが、本実施形態の金属含有膜105は結晶粒界を含まないのでそのような不都合は生じない。
【0043】
配線金属となる金属含有膜105を構成する第1の金属含有単位膜および第2の金属含有単位膜としては、要求される抵抗値等の特性に応じて適宜の組み合わせを選択することができる。例えば、上述のような、一方が金属窒化膜、他方が金属膜の組み合わせ、両方が金属窒化膜の組み合わせ、両方が金属膜の組み合わせのいずれも用いることができる。代表的な組み合わせの例としては、TiN膜(膜厚1~2nm)とWN膜(膜厚1~2nm)の組み合わせを挙げることができる。また、TiN膜(膜厚1~2nm)とRu膜(膜厚1.3nm以下)、TiN膜(膜厚1~2nm)とMn膜(膜厚2.2nm以下)、TiN膜(膜厚1~2nm)とAl膜(膜厚1.6nm以下)、TiN膜(膜厚1~2nm)とTi膜(膜厚2.6nm以下)の組み合わせを挙げることができる。
【0044】
一実施形態に係る金属含有膜を用いたバリア膜は、例えば、既存のバリア膜に用いられるTaN膜、TiN膜の代替として用いることができる。
【0045】
図16は、一実施形態の金属膜をバリア膜に適用した微細配線構造の例を示す断面図である。
図16の微細配線構造111では、
図15と同様の図示しない下部構造を有する基板101の上に設けられたトレンチやホール等の凹部を有する絶縁膜102が形成された構造において、その凹部内にバリア膜として本実施形態の金属含有膜114が形成され、凹部内に微細配線115が埋め込まれている。バリア膜を構成する金属含有膜が結晶粒界を有する場合、上述したように、結晶粒界が存在すると粒界を介したバイパス拡散によりそのバリア性が著しく低下してしまうが、本実施形態の金属含有膜114は結晶粒界を含まないのでそのような不都合は生じない。
【0046】
バリア膜となる金属含有膜114を構成する第1の金属含有単位膜および第2の金属含有単位膜としては、要求されるバリア性に応じて適宜の組み合わせを選択することができる。例えば、上述のような、一方が金属窒化膜、他方が金属膜の組み合わせ、両方が金属窒化膜の組み合わせ、両方が金属膜の組み合わせのいずれも用いることができる。代表的な組み合わせの例としては、TiN膜(膜厚1nm)とWN膜またはVN膜またはNbN膜(いずれも膜厚1nm)の組み合わせを挙げることができる。
【0047】
一実施形態に係る金属含有膜を用いたピラー構造やシリンダ構造の電極は、例えば、既存の電極に用いられるTiN膜等の代替として用いることができる。
【0048】
図17は、一実施形態の金属含有膜をピラー構造の電極に適用したキャパシタの例を示す断面図である。本例はキャパシタ120の下部電極がピラー構造を有する例であり、基板121に形成されたコンタクト121aの上にピラー構造を有する下部電極となる本実施形態の金属含有膜122が形成されている。金属含有膜122の上には誘電体膜として、例えば、第1のTiO
2膜123、ZrO
2膜124、第2のTiO
2膜125が形成され、第2のTiO
2膜125の上に上部電極126が形成されている。ただし、誘電体膜の材料や層数はこの例に限るものではない。
図17のキャパシタの製造過程においては、ピラー構造の下部電極を支持していた絶縁膜を除去し、下部電極を自立させて、その後の誘電体膜等の成膜を行う。この際に、下部電極に結晶粒界が存在すると、粒界すべりにより機械的強度が低下し、粒界にせん断応力が加わることによりリーニング(倒れ、倒壊)等の塑性変形が生じるおそれがある。これに対して、本例では、ピラー構造の下部電極として、結晶粒界を含まない本実施形態の金属含有膜122を用いるので、粒界すべりによる機械的強度低下が生じず、強度低下によるリーニング等の塑性変形は生じ難い。
【0049】
図18は、一実施形態の金属含有膜をシリンダ構造の電極に適用したキャパシタの例を示す断面図である。本例はキャパシタ130の下部電極がシリンダ構造を有する例であり、基板131に形成されたコンタクト131aの上にシリンダ構造を有する下部電極となる本実施形態の金属含有膜132が形成されている。金属含有膜132の上には誘電体膜として、例えば、第1のTiO
2膜133、ZrO
2膜134、第2のTiO
2膜135が形成され、第2のTiO
2膜135の上に上部電極136が形成されている。ただし、誘電体膜の材料や層数はこの例に限るものではない。
図18のキャパシタの製造過程においては、シリンダ構造の下部電極を支持していた絶縁膜を除去し、下部電極を自立させて、その後の誘電体膜等の成膜を行う。シリンダ構造の場合にも結晶粒界が存在することによりリーニング(倒れ、倒壊)等の塑性変形が生じるおそれがあるが、下部電極として結晶粒界を含まない金属含有膜132を用いるので、粒界すべりによる機械的強度低下が生じず、強度低下によるリーニング等の塑性変形は生じ難い。
【0050】
ピラー構造やシリンダ構造の電極となる金属含有膜122,132を構成する第1の金属含有単位膜および第2の金属含有単位膜としては、要求される抵抗値等の特性に応じて適宜の組み合わせを選択することができる。例えば、上述のような、一方が金属窒化膜、他方が金属膜の組み合わせ、両方が金属窒化膜の組み合わせ、両方が金属膜の組み合わせのいずれも用いることができる。代表的な組み合わせの例としては、TiN膜(膜厚1~2nm)とWN膜またはVN膜またはNbN膜(いずれも膜厚1~2nm)の組み合わせを挙げることができる。
【0051】
一実施形態に係る金属含有膜を用いたメタルハードマスクは、例えば、既存のメタルハードマスク用いられるTiN膜等の代替として用いることができる。
【0052】
図19は、一実施形態の金属含有膜をハードマスクに適用した構造体の例を示す断面図である。本例の構造体140は、基板141上にエッチング対象膜142が形成され、その上にメタルハードマスクとなる本実施形態の金属含有膜143が形成されて構成されている。エッチング対象膜142は、特に限定されないが、例えば、タングステン膜、GST(GeSbTe)膜、Poly-Si膜、カーボン膜、SiO
2膜、SiON膜等が例示される。また、エッチング対象膜142は、複数以上の膜が積層された積層膜であってもよい。メタルハードマスクを構成する金属含有膜が結晶粒界を有する場合、上述したように、その粒界部分の形状がそのまま被加工物であるエッチング対象膜142に転写されてしまうことや、粒界すべりによる膜応力による変形(wiggling)が生じる。これに対して、本例の金属含有膜143は結晶粒界を含まないのでそのような不都合は生じない。
【0053】
ハードマスクとなる金属含有膜143を構成する第1の金属含有単位膜および第2の金属含有単位膜としては、上述のような、一方が金属窒化膜、他方が金属膜の組み合わせ、両方が金属窒化膜の組み合わせ、両方が金属膜の組み合わせのいずれも用いることができる。それらの中で、エッチング対象膜142の材料に応じて適宜の組み合わせを選択すればよい。
【0054】
<金属含有膜の製造方法>
次に、一実施形態に係る金属含有膜の製造方法について説明する。
本実施形態に係る成膜方法は、第1の金属含有単位膜2を結晶核形成臨界直径未満の膜厚で成膜する工程と、第1の金属含有単位膜2とは異なる第2の金属含有単位膜3を結晶核形成臨界直径未満の膜厚で成膜する工程とを交互に行い、結晶粒界を含まないラミネート構造の金属含有膜1を製造する。
【0055】
第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3の成膜は、スパッタリングに代表されるPVDや、ガスを用いた化学的な成膜手法であるALDおよびCVDのような一般的な薄膜形成技術で成膜することができる。これらを組み合わせて用いてもよい。例えば、第1の金属含有単位膜2の成膜および第2の金属含有単位膜3の成膜を、PVDとALDの組み合わせ、PVDとCVDの組み合わせ、ALDとCVDの組み合わせで行ってもよい。以下、これらについて説明する。
【0056】
[PVDによる成膜]
図20は、PVDによる成膜を行うためのプラズマスパッタ装置の一例を示す断面図である。
図20の装置は、イオン化PVD装置の一種であるICP型プラズマスパッタ装置を示している。
【0057】
図20に示すように、このプラズマスパッタ装置200は、金属からなる接地された処理容器201を有しており、処理容器201の底部202には排気口203およびガス導入口207が設けられている。排気口203には排気管204が接続されており、排気管204には圧力調整を行うスロットルバルブ205および真空ポンプ206が接続されている。また、ガス導入口207にはガス供給配管208が接続されており、ガス供給配管208には、Arガス等のプラズマ励起用ガスや他の必要なガス例えばN
2ガス等を供給するためのガス供給源209が接続されている。また、ガス供給配管208には、ガス流量制御器、バルブ等よりなるガス制御部210が介装されている。
【0058】
処理容器201内には、基板Wを載置するための載置機構212が設けられる。この載置機構212は、円板状に成形された載置台213と、この載置台213を支持する中空筒体状の支柱214とを有している。載置台213は、導電性材料よりなり、支柱214を介して接地されている。載置台213の中には冷却ジャケット215が設けられており、その中に冷媒が供給されて載置台を冷却するようになっている。また、載置台213内には冷却ジャケット215の上に絶縁材料で被覆された抵抗ヒータ237が埋め込まれている。そして、冷却ジャケット215への冷媒の供給および抵抗ヒータ237への給電を制御することにより、基板温度を所定の温度に制御できるようになっている。
【0059】
載置台213の上面側には、誘電体部材216aの中に電極216bが埋め込まれて構成された基板Wを静電吸着するための静電チャック216が設けられている。また、支柱214の下部は、処理容器201の底部202の中心部に形成された挿通孔217を貫通して下方へ延びている。支柱214は昇降機構(図示せず)により昇降可能となっており、これにより載置機構212の全体が昇降される。
【0060】
支柱214を囲むように、伸縮可能な金属ベローズ218が設けられている。金属ベローズ218の上端は載置台213の下面に接合され、また下端は処理容器201の底部202の上面に接合されており、処理容器201内の気密性を維持しつつ載置機構212の昇降移動を許容するようになっている。
【0061】
底部202には、上方に向けて例えば3本(2本のみ図示)の支持ピン219が垂直に設けられている。載置台213にはこの支持ピン219に対応するピン挿通孔220が形成されており、載置台213を降下させた際に、ピン挿通孔220を貫通した支持ピン219の上端部で基板Wを受けて、その基板Wを外部より侵入する搬送アーム(図示せず)との間で移載することが可能となっている。処理容器201の下部側壁には、搬送アームを侵入させるために搬出入口221が設けられ、この搬出入口221には、開閉可能になされたゲートバルブ238が設けられている。
【0062】
上述した静電チャック216の電極216bには、給電ライン222を介してチャック用電源223が接続されており、このチャック用電源223から電極216bに直流電圧を印加することにより、基板Wが静電力により吸着保持される。また給電ライン222にはバイアス用高周波電源224が接続されており、給電ライン222を介して静電チャック216の電極216bに対してバイアス用の高周波電力を供給し、基板Wにバイアス電力が印加されるようになっている。この高周波電力の周波数は、400kHz~60MHzが好ましく、例えば13.56MHzが採用される。
【0063】
一方、処理容器201の天井部には、誘電体からなる透過板226がシール部材227を介して気密に設けられている。そして、この透過板226の上部に、処理容器201内の処理空間Sにプラズマ励起用ガスをプラズマ化してプラズマを発生するためのプラズマ発生源228が設けられる。
【0064】
プラズマ発生源228は、透過板226に対応して設けられた誘導コイル230を有しており、この誘導コイル230には、プラズマ発生用の例えば13.56MHzの高周波電源231が接続されて、透過板226を介して処理空間Sに高周波電力が導入され誘導電界を形成するようになっている。
【0065】
透過板226の直下には、導入された高周波電力を拡散させる金属製のバッフルプレート232が設けられる。このバッフルプレート232の下方には、上記処理空間Sの上部側方を囲むようにして例えば断面が内側に向けて傾斜したターゲット233が設けられている。ターゲット233は、成膜しようとする膜の材料で構成されている。第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3の両方を成膜する際には、これらの材料にそれぞれ対応するようにターゲット233を複数設けてもよい。また、複数のターゲットを用いたコスパッタを行ってもよい。ターゲット233にはArイオンを引きつけるための直流電力を印加するターゲット用の電圧可変の直流電源234が接続されている。なお、直流電源に代えて交流電源を用いてもよい。
【0066】
また、ターゲット233の外周側には、磁石235が設けられている。ターゲット233はプラズマ中のArイオンによりスパッタされ、ターゲット233から粒子が放出され、粒子の多くはプラズマ中を通過する際にイオン化される。
【0067】
またこのターゲット233の下部には、処理空間Sを囲むようにして円筒状の保護カバー部材236が設けられている。この保護カバー部材236は接地されている。保護カバー部材236の内側の端部は、載置台213の外周側を囲むようにして設けられている。
【0068】
プラズマスパッタ装置200を構成する各構成部は、制御部240により制御される。制御部240は、各構成部を制御するコンピュータ(CPU)からなる主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、および記憶装置を有している。記憶装置には、プラズマスパッタ装置200で実行される各種処理のパラメータが記憶されている。また、記憶装置は、プラズマスパッタ装置200で実行される処理を制御するためのプログラム、すなわち処理レシピが格納された記憶媒体を有する。主制御部は、記憶媒体に記憶されている所定の処理レシピを呼び出し、その処理レシピに基づいて、プラズマスパッタ装置200に、所定の動作を実行させる。
【0069】
このように構成されるプラズマスパッタ装置200においては、基板Wを処理容器201内へ搬入し、この基板Wを載置台213上に載置して静電チャック216により吸着し、制御部240の制御下で以下の動作が行われる。このとき、載置台213は、熱電対(図示せず)で検出された温度に基づいて、冷却ジャケット215への冷媒の供給および抵抗ヒータ237への給電を制御することにより温度制御される。
【0070】
まず、真空ポンプ206を動作させることにより所定の真空状態にされた処理容器201内に、ガス制御部210を操作して所定流量でArガスを流しつつスロットルバルブ205を制御して処理容器201内を所定の真空度に維持する。その後、電圧可変の直流電源234から直流電力をターゲット233に印加し、さらにプラズマ発生源228の高周波電源231から誘導コイル230に高周波電力(プラズマ電力)を供給する。一方、バイアス用高周波電源224から静電チャック216の電極216bに対して所定のバイアス用の高周波電力を供給する。
【0071】
これにより、処理容器201内においては、誘導コイル230に供給された高周波電力によりアルゴンプラズマが形成されてアルゴンイオンが生成され、これらイオンはターゲット233に印加された直流電圧に引き寄せられてターゲット233に衝突し、このターゲット233がスパッタされて粒子が放出される。この際、ターゲット233に印加する直流電圧により放出される粒子の量が最適に制御される。
【0072】
また、スパッタされたターゲット233からの粒子はプラズマ中を通る際に多くはイオン化され下方向へ飛散して行く。
【0073】
イオンは、バイアス用高周波電源224から静電チャック216の電極216bに印加されたバイアス用の高周波電力により基板W面上に形成される厚さ数mm程度のイオンシースの領域に入ると、強い指向性をもって基板W側に加速するように引き付けられて基板Wに堆積する。これにより、基板W上に所望の膜が成膜される。
【0074】
第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3の両方をスパッタにより成膜する場合は、プラズマスパッタ装置200でターゲットの切り替えのみで連続してこれらの成膜を行って金属含有膜1を成膜することができる。
【0075】
成膜終了後、処理容器201内をパージし、載置台213を下降させ、ゲートバルブ238を開放し、基板Wを搬出する。
【0076】
[ALDまたはCVDによる成膜]
図21は、ALDまたはCVDによる成膜を行うための成膜装置の一例を示す断面図である。
図21に示すように、成膜装置300は、処理容器301と、サセプタ302と、シャワーヘッド303と、排気部304と、ガス供給機構305と、制御部307とを有している。
【0077】
処理容器301は、金属製であり、略円筒状を有している。処理容器301の側壁には基板Wを搬入出するための搬入出口311が形成され、搬入出口311はゲートバルブ312で開閉可能となっている。処理容器301の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト313が設けられている。排気ダクト313には、内周面に沿ってスリット313aが形成されている。また、排気ダクト313の外壁には排気口313bが形成されている。排気ダクト313の上面には処理容器301の上部開口を塞ぐように天壁314が設けられている。天壁314と排気ダクト313の間はシールリング315で気密にシールされている。
【0078】
サセプタ302は、処理容器301内で基板Wを水平に支持するためのものである。サセプタ302は、基板Wに対応した大きさの円板状をなし、支持部材323に支持されている。このサセプタ302は、セラミックス材料や金属材料で構成されており、内部に基板Wを加熱するためのヒータ321が埋め込まれている。ヒータ321はヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱するようになっている。そして、サセプタ302の上面の基板載置面近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ321の出力を制御することにより、基板Wを所定の温度に制御するようになっている。
【0079】
サセプタ302には、基板載置面の外周領域、およびサセプタ302の側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスからなるカバー部材322が設けられている。
【0080】
サセプタ302を支持する支持部材323は、サセプタ302の底面中央から処理容器301の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器301の下方に延び、その下端が昇降機構324に接続されている。昇降機構324によりサセプタ302が支持部材323を介して、
図21の実線で示す処理位置と、その下方の一点鎖線で示す基板Wの搬送が可能な搬送位置との間で昇降可能となっている。また、支持部材323の処理容器301の下方位置には、鍔部材325が取り付けられており、処理容器301の底面と鍔部材325の間には、処理容器301内の雰囲気を外気と区画し、サセプタ302の昇降動作にともなって伸縮するベローズ326が設けられている。
【0081】
処理容器301の底面近傍には、昇降板327aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)の支持ピン327が設けられている。支持ピン327は、処理容器301の下方に設けられた昇降機構328により昇降板327aを介して昇降可能になっており、搬送位置にあるサセプタ302に設けられた貫通孔302aに挿通されてサセプタ302の上面に対して突没可能となっている。このように支持ピン327を昇降させることにより、基板搬送機構(図示せず)とサセプタ302との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0082】
シャワーヘッド303は、処理容器301内に処理ガスをシャワー状に供給するための金属製の部材であり、サセプタ302に対向するように設けられており、サセプタ302とほぼ同じ直径を有している。シャワーヘッド303は、処理容器301の天壁314に固定された本体部331と、本体部331の下に接続されたシャワープレート332とを有している。本体部331とシャワープレート332との間にはガス拡散空間333が形成されており、このガス拡散空間333には、本体部331および処理容器301の天壁314の中央を貫通するように設けられたガス導入孔336が接続されている。シャワープレート332の周縁部には下方に突出する環状突起部334が形成され、シャワープレート332の環状突起部334の内側の平坦面にはガス吐出孔335が形成されている。
【0083】
サセプタ302が処理位置に存在した状態では、シャワープレート332とサセプタ302との間に処理空間337が形成され、環状突起部334とサセプタ302のカバー部材322の上面が近接して環状隙間338が形成される。
【0084】
排気部304は、処理容器301の内部を排気するためのものであり、排気ダクト313の排気口313bに接続された排気配管341と、排気配管341に接続された、真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気機構342とを備えている。処理に際しては、処理容器301内のガスはスリット313aを介して排気ダクト313に至り、排気ダクト313から排気部304の排気機構342により排気配管341を通って排気される。
【0085】
ガス供給機構305は、シャワーヘッド303に成膜のための複数の処理ガスを供給するためのものであり、各処理ガスの供給源および供給配管を有している。処理ガスとしては、成膜原料ガス、反応ガス、および不活性ガス等が供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガスとして用いられる。ガス供給機構305の各処理ガスの供給配管は配管366に合流し、シャワーヘッド303に至る。
【0086】
成膜原料ガスとしては、成膜しようとする膜の金属に応じて種々のものを用いることができる。例えば、TiN膜およびTi膜の場合は、TiCl4ガス、TiI4ガス、TiBr4ガス、TiBr3ガス、TiI5ガス、TiF5ガスを用いることができる。NbN膜の場合は、NbCl4ガス、NbF4ガス、NbI4ガス、NbBr5ガス、NbF5ガス、NbOBr3ガス、NbOCl3ガス、NbOBr3ガス、NbO2Fガスを用いることができる。VN膜およびV膜の場合は、VOBr3ガス、VOCl3ガス、VOF3ガス、V(CO)6ガス、VCl4ガス、VF5ガス、VF4ガス、VOBrガス、VOClガス、VOBr2ガス、VOCl2ガス、VOF2ガスを用いることができる。WN膜およびW膜の場合は、W(CO)6ガス、WBr2ガス、WCl2ガス、WI2ガス、WBr3ガス、WCl3ガス、WBr5ガス、WCl5ガス、WF5ガス、WOBr3ガス、WO2Cl3ガス、WBr6ガス、WCl6ガス、WO2Br2ガス、WO2Cl2ガス、WO2I2ガス、WF6ガス、WOBr4ガス、WOBr4ガス、WOCl4ガス、WOF4ガスを用いることができる。TaN膜の場合は、TaBr5ガス、TaCl5ガス、TaF5ガス、TaI5ガスを用いることができる。MoN膜およびMo膜の場合は、Mo(CO)6ガス、MoCl5ガス、MoF5ガス、MoOCl3ガス、MoF5ガス、MoCl3ガス、MoF6ガス、MoOF4ガス、MoOCl4ガス、MoO2Cl2ガスを用いることができる。Ru膜の場合、Ru(CO)12ガス、RuBr3ガス、RuCl3ガス、RuF3ガス、RuI3ガス、RuF4ガス、RuF5ガスを用いることができる。Co膜、Ni膜の場合、コバルトアミジネート、ニッケルアミジネートを用いることができる。Al膜の場合、トリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いることができる。Mn膜の場合、MnOF3ガス、MnO3Clガスを用いることができる。
【0087】
なお、成膜原料ガスや反応ガスの種類によっては、例えば、シャワーヘッド303に高周波電力を印加する等によって、ガスをプラズマ化してもよい。
【0088】
制御部307は、成膜装置300を構成する各構成部を制御するコンピュータ(CPU)からなる主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、および記憶装置を有している。記憶装置には、成膜装置300で実行される各種処理のパラメータが記憶されている。また、記憶装置は、成膜装置300で実行される処理を制御するためのプログラム、すなわち処理レシピが格納された記憶媒体を有する。主制御部は、記憶媒体に記憶されている所定の処理レシピを呼び出し、その処理レシピに基づいて、成膜装置300に、所定の動作を実行させる。
【0089】
このように構成された成膜装置300においては、まず、ゲートバルブ312を開放して搬送装置(図示せず)により搬入出口311を介して処理容器301内に基板Wを搬入し、サセプタ302上に載置する。その後、搬送装置を退避させ、サセプタ302を処理位置まで上昇させる。そして、ゲートバルブ312を閉じ、処理容器301内を所定の減圧状態に保持するとともに、ヒータ321によりサセプタ302の温度を所望の温度に制御する。
【0090】
この状態で、ガス供給機構305から処理ガスを処理容器301内に供給してALDまたはCVDにより基板W上に所望の膜を形成する。
【0091】
ALDによる成膜においては、原料ガスと反応ガスとを、処理容器301内の不活性ガスによるパージを挟んで交互に処理容器301内に供給することにより成膜を行う。例えば、TiN膜を成膜する場合には、原料ガスとしてTiCl4ガス、反応ガスとしてNH3ガスを、パージを挟んで交互に供給する。また、CVDによる成膜においては、原料ガスと反応ガスとを同時に処理容器301に供給することにより行われる。成膜原料ガスによっては、例えばRu(CO)12ガスを用いたRu膜の成膜のように、反応ガスを用いずに成膜原料ガスの熱分解により成膜が進行する場合もある。
【0092】
第1の金属含有単位膜2および第2の金属含有単位膜3の両方をALDまたはCVDで成膜する場合は、成膜装置300で処理ガスの切り替えのみで連続してこれらの成膜を行って金属含有膜1を成膜することができる。
【0093】
成膜終了後、処理容器301内をパージし、サセプタ302を下降させ、ゲートバルブ312を開放し、基板Wを搬出する。
【0094】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0095】
例えば、上記実施形態において、第1の金属含有単位膜および第2の金属含有単位膜の材料を例示したが、これらは単なる例示であって他の金属含有膜であってもよい。また、PVDによる成膜を行う装置としてプラズマスパッタ装置200、およびALDまたはCVDによる成膜を行う装置として成膜装置300を例示したが、これらに限らず、種々の装置を用いることができる。さらに、上記実施形態では、成膜方法としてPVD、ALD、CVDを例示したが、薄膜形成技術であればこれらに限るものではない。
【0096】
また、金属含有膜の用途として、微細配線、ピラー構造やシリンダ構造の電極、バリア膜、メタルハードマスクを例示したが、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0097】
1;金属含有膜
2;第1の金属含有単位膜
3;第2の金属含有単位膜
101,121,131,141,W;基板
105;金属含有膜(微細配線)
110,111;微細配線構造
114;金属含有膜(バリア膜)
120,130;キャパシタ
122;金属含有膜(ピラー構造の下部電極)
132;金属含有膜(シリンダ構造の下部電極)
140;構造体
143;金属含有膜(メタルハードマスク)
200;プラズマスパッタ装置
300;成膜装置