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特許7595529送風ユニット、乾燥装置、液体付与システム及び印刷システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】送風ユニット、乾燥装置、液体付与システム及び印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
B41J2/01 125
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021103380
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002248
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】毎田 憲亮
(72)【発明者】
【氏名】浜本 貴紀
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147370(JP,A)
【文献】特開2011-051131(JP,A)
【文献】特開2011-051123(JP,A)
【文献】特開平08-011299(JP,A)
【文献】米国特許第9440459(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有し、第一面に配置される複数の噴射口から送風する送風ユニットであって、
気体供給源から供給される気体を流入させる気体流入口が、前記第一面と交差する第二面であり、前記噴射口が非配置とされる第二面に形成され、
前記気体流入口の開口面積に対する複数の前記噴射口の開口面積の合計の比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する送風ユニット。
【請求項2】
前記第二面を前記気体供給源の気体供給口が配置される気体供給口配置面へ接触させて、前記気体流入口を前記気体供給口へ接合させる構造を有する請求項1に記載の送風ユニット。
【請求項3】
1.5ミリメートル以上3.5ミリメートル未満の厚みを有する一種類の金属板を用いて形成される請求項1又は2に記載の送風ユニット。
【請求項4】
複数の前記第一面を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の送風ユニット。
【請求項5】
前記第一面における複数の前記噴射口の配置は二次元配置が適用される請求項1から4のいずれか一項に記載の送風ユニット。
【請求項6】
送風対象の基材における任意の一辺の長さに対応する、長手方向の長さを有する請求項1から5のいずれか一項に記載の送風ユニット。
【請求項7】
中空構造を有し、第一面に配置される複数の噴射口から送風する送風ユニットと、
前記送風ユニットへ気体を供給する気体供給ユニットと、
を備え、
前記送風ユニットは、
気体供給源から供給される気体を流入させる気体流入口が、前記第一面と交差する第二面であり、前記噴射口が非配置とされる第二面に形成され、
前記気体流入口の開口面積に対する複数の前記噴射口の開口面積の合計の比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する乾燥装置。
【請求項8】
前記気体供給ユニットは、
熱源と、
前記熱源へ向けて気流を発生させるファンモータと、
を備える請求項7に記載の乾燥装置。
【請求項9】
基材へ液体を付与する液体付与装置と、
基材搬送経路における基材搬送面に対して送風し、前記液体が付与された基材を乾燥させる乾燥装置と、
を備え、
前記乾燥装置は、
中空構造を有し、第一面に配置される複数の噴射口から送風する送風ユニットと、
前記送風ユニットへ気体を供給する気体供給ユニットと、
を備え、
前記送風ユニットは、
気体供給源から供給される気体を流入させる気体流入口が、前記第一面と交差する第二面であり、前記噴射口が非配置とされる第二面に形成され、
前記気体流入口の開口面積に対する複数の前記噴射口の開口面積の合計の比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する液体付与システム。
【請求項10】
基材へ画像を印刷する印刷装置と、
基材搬送経路における基材搬送面に対して送風し、前記画像が印刷された基材を乾燥させる乾燥装置と、
を備え、
前記乾燥装置は、
中空構造を有し、第一面に配置される複数の噴射口から送風する送風ユニットと、
前記送風ユニットへ気体を供給する気体供給ユニットと、
を備え、
前記送風ユニットは、
気体供給源から供給される気体を流入させる気体流入口が、前記第一面と交差する第二面であり、前記噴射口が非配置とされる第二面に形成され、
前記気体流入口の開口面積に対する複数の前記噴射口の開口面積の合計の比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送風ユニット、乾燥装置、液体付与システム及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像が印刷された用紙及びフィルム基材等に対して乾燥処理を施す乾燥装置を備えるインクジェット印刷装置が知られている。特許文献1は、温風を用いて受像紙に着弾したインクを乾燥させる乾燥手段を備えるインクジェットプリンタが記載される。同文献に記載の乾燥手段は、中空の直方体形状を有するケーシングの内部へ空気を導入し、ケーシングに形成された複数の噴射口から温風を噴射させる。ケーシングの底面に形成される複数の噴射口は、円形状が適用され、二次元配置が適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-292841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、ケーシングについて噴射する温風に対して十分な耐熱性を有する全ての材料が利用可能である旨が記載されているが、複数の噴射口のそれぞれから均一に温風を噴射させるケーシングの構造に関する記載はない。また、特許文献1には、乾燥の均一性について、特開平9-133998号公報に記載の二次元スリット板等を適用可能である旨が記載されているが、具体的なケーシングの構造に関する記載はない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、複数の噴射口から均一な送風を実現し得る、送風ユニット、乾燥装置、液体付与システム及び印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0007】
本開示に係る送風ユニットは、中空構造を有し、第一面に配置される複数の噴射口から送風する送風ユニットであって、気体供給源から供給される気体を流入させる気体流入口が、第一面と交差する第二面であり、噴射口が非配置とされる第二面に形成され、気体流入口の開口面積に対する複数の噴射口の開口面積の合計の比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する送風ユニットである。
【0008】
本開示に係る送風ユニットによれば、気体供給源から気体の供給を受ける気体流入口の開口面積と複数の噴射口の開口面積の合計との比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する。これにより、複数の噴射口から均一な送風を実現し得る。
【0009】
送風ユニットは、直方体など、底面が多角形の平面形状を有する角柱構造を採用し得る。
【0010】
気体流入口の開口面積に対する複数の噴射口の開口面積の合計の比率は、0.4以上0.7以下がより好ましい。
【0011】
噴射口は、平らな第一面へ形成される貫通穴を適用し得る。噴射口の開口形状は円を適用し得る。
【0012】
他の態様に係る送風ユニットにおいて、第二面を気体供給源の気体供給口が配置される気体供給口配置面へ接触させて、気体流入口を気体供給口へ接合させる構造を有する。
【0013】
かかる態様によれば、気体供給源を送風ユニットの近接位置へ配置し得る。
【0014】
他の態様に係る送風ユニットにおいて、1.5ミリメートル以上3.5ミリメートル未満の厚みを有する一種類の金属板を用いて形成される。
【0015】
かかる態様によれば、送風ユニットを形成する際の金属板の加工性、送風ユニットの圧力損失及び送風ユニットの熱応答性について、好ましい送風ユニットを形成し得る。
【0016】
他の態様に係る送風ユニットにおいて、複数の第一面を備える。
【0017】
かかる態様によれば、一つの送風ユニットから複数の方向に対して送風し得る。これにより、複数の方向のそれぞれに送風する複数の送風ユニットを備える場合と比較して、送風ユニットが収容される乾燥ユニットをコンパクトに構成し得る。
【0018】
他の態様に係る送風ユニットにおいて、第一面における複数の噴射口の配置は二次元配置が適用される。
【0019】
かかる態様によれば、第一面から二次元状に送風し得る。
【0020】
他の態様に係る送風ユニットにおいて、送風対象の基材における任意の一辺の長さに対応する、長手方向の長さを有する。
【0021】
かかる態様によれば、送風ユニットと送風対象の基材とを相対的に一回走査させて、基材の全面への送風を実施し得る。
【0022】
本開示に係る乾燥装置は、中空構造を有し、第一面に配置される複数の噴射口から送風する送風ユニットと、送風ユニットへ気体を供給する気体供給ユニットと、を備え、送風ユニットは、気体供給源から供給される気体を流入させる気体流入口が、第一面と交差する第二面であり、噴射口が非配置とされる第二面に形成され、気体流入口の開口面積に対する複数の噴射口の開口面積の合計の比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する乾燥装置である。
【0023】
本開示に係る乾燥装置によれば、本開示に係る送風ユニットと同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る送風ユニットの構成要件は、他の態様に係る液体付与システム置の乾燥装置へ適用し得る。
【0024】
他の態様に係る乾燥装置において、気体供給ユニットは、熱源と、熱源へ向けて気流を発生させるファンモータと、を備える。
【0025】
かかる態様によれば、加熱気体が適用される乾燥処理を実施し得る。
【0026】
本開示に係る液体付与システムは、基材へ液体を付与する液体付与装置と、基材搬送経路における基材搬送面に対して送風し、液体が付与された基材を乾燥させる乾燥装置と、を備え、乾燥装置は、中空構造を有し、第一面に配置される複数の噴射口から送風する送風ユニットと、送風ユニットへ気体を供給する気体供給ユニットと、を備え、送風ユニットは、気体供給源から供給される気体を流入させる気体流入口が、第一面と交差する第二面であり、噴射口が非配置とされる第二面に形成され、気体流入口の開口面積に対する複数の噴射口の開口面積の合計の比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する液体付与システムである。
【0027】
本開示に係る液体付与システムによれば、本開示に係る送風ユニットと同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る送風ユニットの構成要件は、他の態様に係る液体付与システム置の構成要件へ適用し得る。
【0028】
本開示に係る印刷システムは、基材へ画像を印刷する印刷装置と、基材搬送経路における基材搬送面に対して送風し、画像が印刷された基材を乾燥させる乾燥装置と、を備え、乾燥装置は、中空構造を有し、第一面に配置される複数の噴射口から送風する送風ユニットと、送風ユニットへ気体を供給する気体供給ユニットと、を備え、送風ユニットは、気体供給源から供給される気体を流入させる気体流入口が、第一面と交差する第二面であり、噴射口が非配置とされる第二面に形成され、気体流入口の開口面積に対する複数の噴射口の開口面積の合計の比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する印刷システムである。
【0029】
本開示に係る印刷システムによれば、本開示に係る送風ユニットと同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る送風ユニットの構成要件は、他の態様に係る印刷システムの構成要件へ適用し得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、気体供給源から気体の供給を受ける気体流入口の開口面積と複数の噴射口の開口面積の合計との比率が0.1以上1.0以下となる構造を有する。これにより、複数の噴射口から均一な送風を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は実施形態に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。
図2図2図1に示すインクジェット印刷システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。
図3図3図2に示す電気的構成のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
図4図4は第一実施形態に係る乾燥モジュールの構成例を示す正面図である。
図5図5図4に示す乾燥モジュールの変形例を示す正面図である。
図6図6は第二実施形態に係る乾燥モジュールの構成例を示す平面図である。
図7図7は第三実施形態に係る乾燥モジュールの構成例を示す底面図である。
図8図8図7に示す乾燥モジュールの内部構造例を示す斜視図である。
図9図9は第四実施形態に係る乾燥モジュールの構成例を示す底面図である。
図10図10は第五実施形態に係る乾燥装置の構成例を示す乾燥装置の側面図である。
図11図11は乾燥モジュールの配置例を示す乾燥装置の側面図である。
図12図12は乾燥モジュールの変形例を示す乾燥装置の側面図である。
図13図13はノズルユニットに適用される金属板の厚みの評価結果を示す表である。
図14図14はノズルユニットに適用される構造の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0033】
[インクジェット印刷システムの全体構成]
図1は実施形態に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。なお、同図に示す矢印線は、インクジェット印刷システム10に具備される各装置におけるフィルム基材1の搬送方向である基材搬送方向を示す。基材搬送方向はフィルム基材1が進行する方向を示す。
【0034】
インクジェット印刷システム10は、シングルパス方式が適用される印刷システムであり、水性カラーインクを用いて、フィルム基材1へカラー画像を印刷する。フィルム基材1は、軟包装に用いられる透明の媒体であり、非浸透媒体である。
【0035】
フィルム基材1の例として、ONY(Oriented Nylon)、OPP(Oriented PolyPropylene)及びPET(PolyEthylene Terephthalate)などが挙げられる。インクジェット印刷システム10は、フィルム基材1に対して印刷面1Aとは反対側の基材支持面1Bから視認される裏刷りの印刷物を作成する。インクジェット印刷システム10は、印刷面1Aから視認される表刷りの印刷物の作成も可能である。
【0036】
非浸透とは、後述する水性プライマー及び水性インクに対して非浸透性を有することをいう。軟包装とは、包装される物品の形状により変形する材料による包装をいう。透明とは、可視光の透過率が30%以上100%以下であることをいい、好ましくは70%以上100%以下であることをいう。
【0037】
インクジェット印刷システム10は、給紙装置12、プレコート装置14、ジェッティング装置16、乾燥装置18、検査装置20、回収装置22及び搬送装置24を備える。以下、各部について詳細に説明する。
【0038】
〔給紙装置〕
インクジェット印刷システム10は、ロールトゥロール方式の搬送方式が適用される。給紙装置12は、画像が印刷される前のフィルム基材1が巻かれた送り出しロールを備える。送り出しロールは、回転自在に支持されたリールを備える。
【0039】
給紙装置12は、フィルム基材1の印刷面1Aに対して改質処理を施すコロナ処理装置を備え得る。改質処理がされたフィルム基材1の印刷面1Aは、水性プライマーと水性インクとの水性混合物に適した表面自由エネルギーを有し、水性混合物に適した濡れ性を確保し得る。フィルム基材1は、プレコート装置14へ搬送される。
【0040】
〔プレコート装置〕
プレコート装置14は、基材搬送方向における給紙装置12の下流側の位置であり、ジェッティング装置16の上流側の位置に配置される。プレコート装置14は、フィルム基材1の印刷面1Aへプレコート液を塗布する。
【0041】
プレコート装置14は、プレコート乾燥装置を備え得る。プレコート乾燥装置は、フィルム基材1へ塗布されたプレコート液を乾燥させる。プレコート液は、水性プライマー液など、水性インクを不溶化又は増粘させる成分を含有する液体を適用し得る。プレコート液が塗布され、プレコート液を乾燥させたフィルム基材1はジェッティング装置16へ搬送される。プレコート乾燥装置は、後述する乾燥装置と同様の構成を適用し得る。
【0042】
〔ジェッティング装置〕
ジェッティング装置16は、インクジェットヘッド30K、インクジェットヘッド30C、インクジェットヘッド30M、インクジェットヘッド30Y及びインクジェットヘッド30Wを備える。
【0043】
インクジェットヘッド30K、インクジェットヘッド30C、インクジェットヘッド30M、インクジェットヘッド30Y及びインクジェットヘッド30Wのそれぞれは、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びホワイトインクを吐出させる。以下、インクジェットヘッド30K等を区別する必要がない場合は、インクジェットヘッド30と記載する。
【0044】
インクジェットヘッド30から吐出させる水性インクは、水に対して可溶な溶媒に顔料等の色材を溶解又は分散させたインクをいう。水性インクの顔料は、有機系の顔料が用いられる。水性インクの粘度は、0.5センチポアズ以上5.0センチポアズ以下である。
【0045】
インクジェットヘッド30は、搬送装置24を用いて搬送されるフィルム基材1の印刷面1Aに対してカラーインクを吐出させ、フィルム基材1にカラー画像を印刷する。ホワイトインクは、フィルム基材1へ白色背景画像を形成する。なお、水性ホワイトインクを吐出させるインクジェットヘッド30Wを複数備えてもよい。
【0046】
インクジェットヘッド30は、インクを吐出させるノズル面がフィルム基材1の搬送経路である基材搬送経路の基材搬送面に対向する位置及び向きとなる、配置及び姿勢が適用される。インクジェットヘッド30は、基材搬送方向に沿って等間隔に配置される。
【0047】
インクジェットヘッド30は複数のノズルを備える。ノズルは、ノズル開口及びインク流路が含まれ得る。インクジェットヘッド30はノズルごとにエネルギー発生素子を備える。インクジェットヘッド30のノズル面は、ノズル開口が二次元配置される。インクジェットヘッド30のノズル面は、撥水膜が形成される。
【0048】
エネルギー発生素子は圧電素子を適用し得る。圧電素子を備えるインクジェットヘッド30は、圧電素子のたわみ変形を利用して、ノズル開口からインク液滴を吐出させる。エネルギー発生素子はヒータを適用し得る。ヒータを備えるインクジェットヘッド30は、インクの膜沸騰現象を利用して、ノズル開口からインク液滴を吐出させる。
【0049】
インクジェットヘッド30は、基材幅方向について、フィルム基材1の全長に渡って複数のノズルが配置されるライン型ヘッドが適用される。なお、インクジェットヘッド30は、シリアル型ヘッドを適用してもよい。
【0050】
ライン型のインクジェットヘッド30は、基材幅方向について、複数のヘッドモジュールを繋ぎ合わせた構造を適用し得る。基材幅方向は、基材搬送方向と直交する方向であり、フィルム基材1の印刷面に平行となる方向である。
【0051】
図1には四色のカラーの水性インクが適用される態様を示したが、インク色はブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの四色に限定されない。例えば、ライトマゼンタ及びライトシアン等の淡色インクが適用される態様、グリーン、オレンジ、バイオレット、クリア及びメタリック等の特色インクが適用される態様を適用可能である。また、各色のインクジェットヘッドの配置順序も、図1に示す例に限定されない。
【0052】
ジェッティング装置16は、スキャナ32を備える。スキャナ32は、フィルム基材1の印刷面に印刷されたテストパターン画像を撮像し、撮像画像を電気信号に変換する撮像デバイスを備える。
【0053】
撮像デバイスの例として、CCDイメージセンサ及びカラーCMOSイメージセンサが挙げられる。なお、CCDはCharge Coupled Deviceの省略語である。また、CMOSはComplementary Metal Oxide Semiconductorの省略語である。
【0054】
スキャナ32から出力される撮像データは、テストパターン判定部へ送信される。テストパターン判定部はテストパターンの撮像データに基づき、不良ノズルの特定等を実施する。なお、テストパターン判定部は符号172を付して図2に図示する。
【0055】
スキャナ32を用いてテストパターン画像が撮像されたフィルム基材1は、乾燥装置18へ搬送される。
【0056】
〔乾燥装置〕
乾燥装置18は、基材搬送方向におけるジェッティング装置16の下流側の位置であり、基材搬送方向における検査装置20の上流側の位置に配置される。乾燥装置18は、フィルム基材1の印刷面1Aへ付着した水性インクを乾燥させる乾燥モジュールを備える。水性インクを乾燥させたフィルム基材1は、検査装置20へ搬送される。なお、乾燥装置の詳細は後述する。
【0057】
〔検査装置〕
検査装置20は、基材搬送方向における乾燥装置18の下流側の位置であり、基材搬送方向における回収装置22の上流側の位置に配置される。検査装置20は、フィルム基材1へ印刷された画像の欠陥の有無を検査する。
【0058】
検査装置20は、フィルム基材1へ印刷された画像を撮像する撮像装置及びフィルム基材1へ照明光を照射する照明装置を備える。印刷画像の撮像データは印刷画像判定部へ送られる。印刷画像判定部は、印刷画像の撮像データに基づき、印刷画像の欠陥の有無を判定する。なお、印刷画像判定部は符号173を付して図2に図示する。
【0059】
検査装置20を用いて撮像画像の検査が実施されたフィルム基材1は、回収装置22へ搬送される。
【0060】
〔回収装置〕
回収装置22は、画像が印刷されたフィルム基材1を回収する。具体的には、画像が印刷されたフィルム基材1は、巻き取りロールへ巻き取られる。
【0061】
〔搬送装置〕
搬送装置24は、ロールトゥロール方式が適用される。搬送装置24は、給紙装置12から回収装置22まで、給紙装置12、プレコート装置14、ジェッティング装置16、乾燥装置18、検査装置20及び回収装置22の順に、基材搬送方向について基材搬送経路に沿ってフィルム基材1を搬送する。給紙装置12及び回収装置22は、搬送装置24に含まれてもよい。
【0062】
搬送装置24は、複数のパスローラ34を備える。パスローラ34は、給紙装置12、プレコート装置14、ジェッティング装置16、乾燥装置18、検査装置20及び回収装置22のそれぞれに、一つ以上配置される。
【0063】
搬送装置24は、給紙装置12、プレコート装置14、ジェッティング装置16、乾燥装置18、検査装置20及び回収装置22のそれぞれに一つ以上配置されるテンションピックアップ36を備える。テンションピックアップ36は、フィルム基材1へ付与されるテンションを検出する。テンションピックアップ36の検出信号は、搬送制御部へ送られる。なお、搬送制御部は符号162を用いて図2に図示する。図1では、ジェッティング装置16に具備されるテンションピックアップ36を図示し、給紙装置12等に具備されるテンションピックアップ36の図示を省略する。
【0064】
[インクジェット印刷システムの電気的構成]
図2図1に示すインクジェット印刷システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。インクジェット印刷システム10は、システム制御部160、搬送制御部162、プレコート制御部164、ジェッティング制御部166、乾燥制御部168、検査制御部170、テストパターン判定部172及び印刷画像判定部173を備える。
【0065】
システム制御部160は、インクジェット印刷システム10の全体動作を統括的に制御する。システム制御部160は、各種の制御部へ指令信号を送信する。システム制御部160は、メモリ174へのデータの記憶及びメモリ174からのデータの読み出しを制御するメモリコントローラとして機能する。
【0066】
システム制御部160は、センサ176から送信されるセンサ信号を取得し、センサ信号に基づく指令信号を各種の制御部へ送信する。図2に示すセンサ176は、図1に示すテンションピックアップ36が含まれる。また、センサ176はインクジェット印刷システム10の各部に具備される位置検出センサ及び温度センサ等が含まれる。
【0067】
搬送制御部162は、システム制御部160から送信される指令信号に基づき、搬送条件を設定し、設定された搬送条件に基づき搬送装置24の動作を制御する。例えば、搬送制御部162は、搬送装置24へ適用される搬送条件を適用して、搬送装置24に具備される駆動ローラ等と連結されるモータの動作を制御する。
【0068】
また、搬送制御部162は、インクジェット印刷システム10に具備されるプレコート装置14及びジェッティング装置16等の各セクションのそれぞれにおいて、フィルム基材1へ付与される搬送テンションを個別に制御する。すなわち、搬送制御部162は、給紙装置12から回収装置22までの各セクションにおけるフィルム基材1の搬送テンションを制御する。
【0069】
プレコート制御部164は、システム制御部160から送信される指令信号に基づきプレコート処理の処理条件を設定し、設定された処理条件に基づきプレコート装置14の動作を制御する。
【0070】
ジェッティング制御部166は、システム制御部160から送信される指令信号に基づき印刷条件を設定し、設定された印刷条件に基づきジェッティング装置16の動作を制御する。
【0071】
ジェッティング制御部166は、印刷データに対して、色分解処理、色変換処理、各処理の補正処理及びハーフトーン処理を実施して、印刷データに基づくハーフトーンデータを生成する画像処理部を備える。
【0072】
ジェッティング制御部166は、インクジェットヘッド30へ供給される駆動電圧を生成する駆動電圧生成部を備える。ジェッティング制御部166は、インクジェットヘッド30へ駆動電圧を供給する駆動電圧出力部を備える。
【0073】
乾燥制御部168は、システム制御部160から送信される指令信号に基づき、乾燥装置18に適用される乾燥処理の処理条件を設定し、設定された処理条件に基づき乾燥装置18の動作を制御する。
【0074】
検査制御部170は、システム制御部160から送信される指令信号に基づき、検査装置20へ適用される検査条件を設定し、設定された検査条件に基づき、検査装置20の動作を制御する。
【0075】
テストパターン判定部172は、テストパターンの撮像データを取得し、テストパターンの撮像データを解析する。テストパターン判定部172は、解析結果に基づきインクジェットヘッド30の吐出異常の有無を判定する。
【0076】
印刷画像判定部173は、印刷画像の撮像データを取得し、印刷画像の撮像データを解析する。印刷画像判定部173は、解析結果に基づき印刷画像における画像欠陥の有無を判定する。
【0077】
図3図2に示す電気的構成のハードウェアの構成例を示すブロック図である。インクジェット印刷システム10に具備される制御装置200は、プロセッサ202、非一時的な有体物であるコンピュータ可読媒体204、通信インターフェース206及び入出力インターフェース208を備える。
【0078】
制御装置200は、コンピュータが適用される。コンピュータの形態は、サーバであってもよいし、パーソナルコンピュータであってもよく、ワークステーションであってもよく、また、タブレット端末などであってもよい。
【0079】
プロセッサ202はCPU(Central Processing Unit)を含む。プロセッサ202はGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。プロセッサ202は、バス210を介してコンピュータ可読媒体204、通信インターフェース206及び入出力インターフェース208と接続される。入力装置214及びディスプレイ装置216は入出力インターフェース208を介してバス210に接続される。
【0080】
コンピュータ可読媒体204は、主記憶装置であるメモリ及び補助記憶装置であるストレージを含む。コンピュータ可読媒体204は、半導体メモリ、ハードディスク装置及びソリッドステートドライブ装置等を適用し得る。コンピュータ可読媒体204は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。
【0081】
なお、ハードディスク装置は、英語表記のHard Disk Driveの省略語であるHDDと称され得る。ソリッドステートドライブ装置は、英語表記のSolid State Driveの省略語であるSSDと称され得る。
【0082】
制御装置200は、通信インターフェース206を介してネットワークへ接続され、外部装置と通信可能に接続される。ネットワークは、LAN(Local Area Network)等を適用し得る。なお、ネットワークの図示は省略する。
【0083】
コンピュータ可読媒体204は、搬送制御プログラム220、プレコート制御プログラム222、ジェッティング制御プログラム224、乾燥制御プログラム226、検査制御プログラム228及びテストパターン判定プログラム230が記憶される。
【0084】
搬送制御プログラム220は、図2に示す搬送装置24に適用される搬送制御に対応する。プレコート制御プログラム222は、プレコート装置14に適用されるプレコート制御に対応する。
【0085】
ジェッティング制御プログラム224は、ジェッティング装置16に適用される印刷制御に対応する。乾燥制御プログラム226は、乾燥装置18に適用される乾燥制御に対応する。
【0086】
検査制御プログラム228は、検査装置20に適用される印刷画像の検査に対応する。テストパターン判定プログラム230は、テストパターンの撮像データに基づく吐出異常判定に適用される。
【0087】
コンピュータ可読媒体204へ記憶される各種のプログラムは、一つ以上の命令が含まれる。コンピュータ可読媒体204は、各種のデータ及び各種のパラメータ等が記憶される。なお、図2に示すメモリ174は、図3に示すコンピュータ可読媒体204に含まれる。
【0088】
インクジェット印刷システム10は、プロセッサ202がコンピュータ可読媒体204へ記憶される各種のプログラムを実行し、インクジェット印刷システム10における各種の機能を実現する。なお、プログラムという用語はソフトウェアという用語と同義である。
【0089】
制御装置200は、通信インターフェース206を介して外部装置とのデータ通信を実施する。通信インターフェース206は、USB(Universal Serial Bus)などの各種の規格を適用し得る。通信インターフェース206の通信形態は、有線通信及び無線通信のいずれを適用してもよい。
【0090】
制御装置200は、入出力インターフェース208を介して、入力装置214及びディスプレイ装置216が接続される。入力装置214はキーボード及びマウス等の入力デバイスが適用される。ディスプレイ装置216は、制御装置200に適用される各種の情報が表示される。
【0091】
ディスプレイ装置216は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプロジェクタ等を適用し得る。ディスプレイ装置216は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。なお、有機ELディスプレイのELは、Electro-Luminescenceの省略語である。
【0092】
ここで、プロセッサ202のハードウェア的な構造例として、CPU、GPU、PLD(Programmable Logic Device)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)が挙げられる。CPUは、プログラムを実行して各種の機能部として作用する汎用的なプロセッサである。GPUは、画像処理に特化したプロセッサである。
【0093】
PLDは、デバイスを製造した後に電気回路の構成を変更可能なプロセッサである。PLDの例として、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。ASICは、特定の処理を実行させるために専用に設計された専用電気回路を備えるプロセッサである。
【0094】
一つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの一つで構成されていてもよいし、同種又は異種の二つ以上のプロセッサで構成されてもよい。各種のプロセッサの組み合わせの例として、一以上のFPGAと一以上のCPUとの組み合わせ、一以上のFPGAと一以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。各種のプロセッサの組み合わせの他の例として、一以上のCPUと一以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。
【0095】
一つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成してもよい。一つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する例として、クライアント又はサーバ等のコンピュータに代表される、SoC(System On a Chip)などの一つ以上のCPUとソフトウェアの組合せを適用して一つのプロセッサを構成し、このプロセッサを複数の機能部として作用させる態様が挙げられる。
【0096】
一つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する他の例として、一つのICチップを用いて、複数の機能部を含むシステム全体の機能を実現するプロセッサを使用する態様が挙げられる。なお、ICはIntegrated Circuitの省略語である。
【0097】
このように、各種の機能部は、ハードウェア的な構造として、上記した各種のプロセッサを一つ以上用いて構成される。更に、上記した各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0098】
コンピュータ可読媒体204は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体素子を含み得る。コンピュータ可読媒体204は、ハードディスク等の磁気記憶媒体を含み得る。コンピュータ可読媒体204は、複数の種類の記憶媒体を具備し得る。
【0099】
なお、実施形態に記載のインクジェット印刷システム10は、液体付与システムの一例である。実施形態に記載のプレコート装置14及びジェッティング装置16は液体付与装置の一例である。
【0100】
[乾燥装置の詳細な説明]
〔第一実施形態〕
図4は第一実施形態に係る乾燥モジュールの構成例を示す正面図である。図4に示す符号Xは基材幅方向を示す。また、符号Zは鉛直上方向を示す。図5から図9に示す符号X及び符号Zについても同様である。
【0101】
乾燥モジュール1801は、ノズルユニット300及びヒータユニット320を備える。乾燥モジュール1801はノズルユニット300とは別の構成要素であるヒータユニット320において、予め規定される温度範囲の加熱気体を生成し、加熱気体をノズルユニット300へ供給する。加熱気体は空気を適用し得る。
【0102】
ヒータユニット320は、基材搬送経路と対向しない基材搬送経路の非対向位置に配置される。また、ヒータユニット320はノズルユニット300の近接位置に配置される。これにより、加熱気体の圧力損失の低減及び加熱気体の熱損失の低減が実現される。図4に示すヒータユニット320は、ノズルユニット300の基材幅方向の一方の端301である側面306に接合される。
【0103】
図4には、ノズルユニット300の側面306と、ヒータユニット320の基材幅方向の一方の端である気体供給口配置面327とが接合される態様を例示したが、加熱気体の流通に影響しない程度の長さを有するダクト等を介して、ノズルユニット300とヒータユニット320とが接合されてもよい。
【0104】
ノズルユニット300は、複数のノズル304への加熱気体の均一供給を実現する構造を有しており、複数のノズル304への熱量の均一供給が自動的に達成される。なお、ここでいう均一は、規定の誤算範囲内のバラつきが含まれ得る。
【0105】
ノズルユニット300は、直方体形状を有し、基材幅方向について、フィルム基材1の全長を超える長さを有する。ノズルユニット300は、基材搬送面と対向するノズル配置面302に複数のノズル304が配置される。複数のノズル304は、基材幅方向についてフィルム基材1の一辺の全長を超える長さに渡って配置される。ノズル配置面302における複数のノズル304の配置例として、二次元配置が挙げられる。複数のノズル304の二次元配置の例は、図7に図示する。
【0106】
なお、実施形態に記載の基材幅方向は、送風ユニットの長手方向の一例である。実施形態に記載の基材幅方向におけるフィルム基材1の一辺の全長は、基材における任意の一辺の長さの一例である。実施形態に記載のフィルム基材1は、送風対象の基材の一例である。
【0107】
ノズル304は、ノズル配置面302から突出した凸形状を有し、先端にノズル開口が形成される。ノズル304はノズル開口を介して加熱された気体である加熱気体をフィルム基材1の印刷面1Aへ送風する。ノズル304に付した下向きの矢印線は、加熱気体の送風方向を示す。なお、加熱気体の送風は、加熱気体の噴射、吹き付け及び放射等と共通する概念である。
【0108】
図4には、ノズル配置面302から突出した凸形状を有するノズル304を例示したが、ノズル304は、平らなノズル配置面302に形成される開口を適用してもよい。ノズル開口の平面形状は、円及び四角形など任意の形状が適用される。
【0109】
ノズルユニット300は、ノズル配置面302と直交する面であり、基材搬送方向に対して平行となる側面306に、加熱気体の供給を受ける加熱気体流入口308となる貫通穴が形成される。ノズルユニット300は、加熱気体流入口308を介して、ヒータユニット320において生成された加熱気体を流入させる。加熱気体流入口308の平面形状は、円及び四角形など任意の形状が適用される。
【0110】
なお、実施形態に記載のノズル配置面302は第一面の一例である。実施形態に記載の側面306は第一面と交差する第二面の一例であり、噴射口が非配置とされる第二面の一例である。実施形態に記載のノズル304は噴射口の一例である。
【0111】
ヒータユニット320は、ヒータ322及び軸流ファン324を備える。ヒータ322及び軸流ファン324は、加熱気体流入口308から離れる方向について、ヒータ322及び軸流ファン324の順に配置される。
【0112】
ヒータ322は、規定の設定温度に基づき、ヒータ322の周囲の気体である空気を加熱する。ヒータ322は赤外線ヒータ等を適用し得る。軸流ファン324は、規定の送風条件に基づき、ヒータ322へ向けて送風し、加熱気体を生成する。図4に示す右向きの矢印線は軸流ファン324の送風方向を示す。
【0113】
ヒータユニット320は、ノズルユニット300の加熱気体流入口308に対応する位置に加熱気体供給口326を備える。加熱気体供給口326はヒータ322が具備されるヒータケース323における気体供給口配置面327に形成される。加熱気体供給口326は加熱気体流入口308に対応する開口形状及び開口面積を有する。例えば、加熱気体供給口326は加熱気体流入口308と同一形状及び同一サイズを適用し得る。
【0114】
乾燥モジュール1801は、ノズルユニット300の側面306とヒータユニット320の気体供給口配置面327とを接触させて、ノズルユニット300の加熱気体流入口308とヒータユニット320の加熱気体供給口326とを接合させる構造を有する。
【0115】
ノズルユニット300及びヒータユニット320を含む乾燥モジュール1801は、乾燥炉330の内部に配置される。乾燥炉330は、乾燥モジュール1801を用いて乾燥処理が施されるフィルム基材1の搬送経路が含まれる。
【0116】
かかる態様によれば、乾燥モジュール1801の全体における熱損失の削減を実現し得る。例えば、軸流ファン324の寿命等への影響を考慮して、相対的に低い加熱温度が適用される場合、乾燥モジュール1801は乾燥炉330の内部へ配置し得る。
【0117】
なお、実施形態に記載の乾燥炉330は乾燥ユニットの一例である。実施形態に記載のノズルユニット300は送風ユニットの一例である。実施形態に記載のヒータユニット320は加熱気体供給ユニットの一例であり、気体供給源及び気体供給ユニットの一例である。また、実施形態に記載のヒータ322は熱源の一例である。実施形態に記載の軸流ファン324はファンモータの一例である。
【0118】
図5図4に示す乾燥モジュールの変形例を示す正面図である。変形例に係る乾燥モジュール1801Aは、ノズルユニット300が乾燥炉330Aの内部に配置され、かつ、ヒータユニット320が乾燥炉330Aの外部に配置される。
【0119】
すなわち、乾燥炉330Aは、加熱気体流入口308に対応するサイズを有し、加熱気体流入口308に対応する配置を有する開口332が形成される。乾燥炉330Aの基材幅方向における一方の端面331は、開口332と加熱気体供給口326との位置が合わせられ、ヒータユニット320が接合される。
【0120】
変形例に係る乾燥モジュール1801Aによれば、ヒータユニット320の交換等のメンテナンスを効率よく実施し得る。なお、実施形態に記載の乾燥炉330Aは乾燥ユニットの一例である。
【0121】
〔第二実施形態〕
図6は第二実施形態に係る乾燥モジュールの構成例を示す平面図である。第二実施形態に係る乾燥モジュール1802は、ヒータユニット320において発生させた加熱気体をリサイクルさせる循環構造を有する。
【0122】
図6に示すヒータユニット320は、乾燥炉330Aの外部に配置される。ヒータユニット320を構成するヒータ322及び軸流ファン324は、加熱気体発生ボックス360の内部へ収容される。これにより、ヒータ322が発生させた熱エネルギーを加熱気体発生ボックス360の外部へ逃がさずに、軸流ファン324は、加熱気体発生ボックス360の内部の加熱気体をノズルユニット300へ送風し得る。
【0123】
加熱気体発生ボックス360は、外気を取り入れる第一吸気口362を備える。第一吸気口362は、加熱気体発生ボックス360を構成する任意の面に配置し得る。図6には、第一吸気口362が軸流ファン324の吸気面と対向する面に配置される態様を示す。
【0124】
〔第三実施形態〕
図7は第三実施形態に係る乾燥モジュールの構成例を示す底面図である。図8図7に示す乾燥モジュールの内部構造例を示す斜視図である。図7及び図8は、乾燥モジュール1803を鉛直方向の下側から上側へ見た図である。
【0125】
なお、図7及び図8では、ノズルユニット300が内蔵される乾燥炉の図示を省略する。また、図7及び図8に示す符号X、符号Y及び符号Zのそれぞれは、基材幅方向、乾燥モジュール1803における基材搬送方向及び鉛直上方向を示す。
【0126】
乾燥モジュール1803は、基材搬送方向におけるノズルユニット300の下流側の位置に加熱気体回収ユニット370が配置される。加熱気体回収ユニット370は、基材幅方向の一方の端面371に、加熱気体を排出させる加熱気体排出口372が形成される。なお、図8では加熱気体排出口372の図示を省略する。
【0127】
加熱気体回収ユニット370は、基材搬送面と対向する基材対向面374に加熱気体回収口376が形成される。加熱気体回収口376は、長方形形状の平面形状を有し、基材幅方向の長さは、ノズル304が配置される長さに対応する。
【0128】
加熱気体発生ボックス360Aは、基材幅方向における他方の端面361に第二吸気口364が形成される。第二吸気口364は、加熱気体排出口372に対応する位置に配置され、加熱気体排出口372に対応する開口形状及びサイズを有する。例えば、第二吸気口364は加熱気体排出口372と同一形状及び同一サイズを適用し得る。
【0129】
加熱気体回収ユニット370の一方の端面371と加熱気体発生ボックス360の他方の端面361とを接触させて接合させる際に、第二吸気口364と加熱気体排出口372との位置が合わせられる。
【0130】
かかる構造を有する乾燥モジュール1803は、ノズルユニット300から送風させた加熱気体が、加熱気体回収口376を介して加熱気体回収ユニット370へ回収される。加熱気体回収ユニット370へ回収された加熱気体は、加熱気体排出口372及び第二吸気口364を介して加熱気体発生ボックス360Aへ回収される。
【0131】
これにより、ノズルユニット300及び加熱気体回収ユニット370が内蔵される乾燥炉の内部に存在する高温の加熱気体を加熱気体発生ボックス360Aへ取り入れる熱エネルギーの循環が実現され、乾燥モジュール1803は省エネルギー効果が得られる。
【0132】
軸流ファン324は、加熱気体発生ボックス360Aからノズルユニット300及び加熱気体回収ユニット370を介して加熱気体発生ボックス360Aへ加熱気体を循環させる際の気流の発生源として機能する。
【0133】
図7には、加熱気体回収ユニット370の形状及び構造の例として、直方体形状及び中空構造を例示する。加熱気体回収ユニット370は、基材搬送方向におけるノズルユニット300の上流側の位置に配置されていてもよい。
【0134】
図7に示すように、加熱気体回収口376は、加熱気体回収ユニット370の長手方向である基材幅方向について三分割される。すなわち、加熱気体回収口376は第一吸気領域376A、第二吸気領域376B及び第三吸気領域376Cに分割される。
【0135】
加熱気体回収ユニット370は、第一吸気領域376Aと連通する第一吸気流路378A、第二吸気領域376Bと連通する第二吸気流路378B及び第三吸気領域376Cと連通する第三吸気流路378Cを備える。
【0136】
すなわち、加熱気体回収ユニット370は、第一吸気流路378Aと第二吸気流路378Bとを隔てる第一隔壁379A及び第二吸気流路378Bと第三吸気領域376Cとを隔てる第二隔壁379Bを備える。
【0137】
加熱気体排出口372は、第一吸気流路378Aと接続される第一排気領域372A、第二吸気流路378Bと接続される第二排気領域372B及び第三吸気流路378Cと接続される第三排気領域372Cに分割される。
【0138】
第一吸気領域376Aから吸引された加熱気体は、第一吸気流路378A及び第一排気領域372Aを介して加熱気体発生ボックス360Aへ回収される。また、第二吸気領域376Bから吸引された加熱気体は、第二吸気流路378B及び第二排気領域372Bを介して加熱気体発生ボックス360Aへ回収される。
【0139】
更に、第三吸気領域376Cから吸引された加熱気体は、第三吸気流路378C及び第三排気領域372Cを介して加熱気体発生ボックス360Aへ回収される。
【0140】
なお、図7において、第一吸気流路378A、第二吸気流路378B及び第三吸気流路378Cに図示した矢印線は、加熱気体回収口376を介して加熱気体発生ボックス360Aへ回収される加熱気体を模式的に表す。また、図8では、複数の曲線を用いて加熱気体の流れを模式的に図示し、矢印線を用いて加熱気体の全体としての流れ方向を表す。
【0141】
加熱気体回収口376を介して、加熱気体回収ユニット370へ吸気をする場合、軸流ファン324に近い側である第一吸気領域376Aの側は、軸流ファン324から遠い側である第二吸気領域376Bの側と比較して、単位期間あたりの吸引量が相対的に大きくなる傾向がある。そこで、加熱気体排出口372を複数の領域に分割し、領域ごとに加熱気体の流路である第一吸気流路378A等が具備される。
【0142】
これにより、加熱気体回収口376から吸気をする際に、基材幅方向における単位期間あたりの吸気量のバラつきが抑制され、同方向について均一な吸気が実現される。加熱気体回収口376及び加熱気体排出口372の分割数は、図7に示す例に限定されず任意の分割数を適用し得る。
【0143】
なお、実施形態に記載の第一吸気領域376A、第二吸気領域376B及び第三吸気領域376Cのそれぞれは、加熱気体回収口の長手方向に区画された複数の吸気領域の一例である。
【0144】
また、実施形態に記載の第一排気領域372A、第二排気領域372B及び第三排気領域372Cのそれぞれは、複数の吸気領域に対応して加熱気体排出口が区画された複数の排気領域の一例である。
【0145】
更に、実施形態に記載の第一吸気流路378A、第二吸気流路378B及び第三吸気流路378Cのそれぞれは、複数の吸気流路を構成する吸気流路の一例である。
【0146】
〔第四実施形態〕
図9は第四実施形態に係る乾燥モジュールの構成例を示す底面図である。第四実施形態に係る乾燥モジュール1804は、加熱気体回収ユニット370から加熱気体発生ボックス360Bへ循環させる加熱気体の単位期間あたりの体積が制御される。
【0147】
加熱気体回収ユニット370は、ノズル304からフィルム基材1へ吹き付けた全ての加熱気体が加熱気体回収口376を介して回収される完全循環が適用される。複数の乾燥モジュール1804を備え、基材搬送方向に沿って複数の乾燥モジュール1804が配置される場合、基材搬送方向の上流側の位置に配置される乾燥モジュール1804では、同方向の下流側の位置に配置される乾燥モジュール1804と比較して、蒸発する水分量が相対的に多くなり、湿度が相対的に上昇し得る。湿度の上昇は乾燥処理の効率を低下させる懸念がある。
【0148】
乾燥モジュール1804は、加熱気体発生ボックス360Bに第三吸気口380が具備される。加熱気体発生ボックス360Bは、第三吸気口380を介して乾燥モジュール1804の外部から新鮮な気体が取り入れられ、内部の湿度が調整される。
【0149】
第三吸気口380は、開口面積を調整する開口面積調整機構382を備える。開口面積調整機構382は、シャッター及びシャッターを駆動するシャッター駆動機構を備え得る。
【0150】
第三吸気口380は、複数の開口を備える態様を適用し得る。第三吸気口380として複数の開口を備える態様では、開口面積調整機構382は、選択的に複数の開口の一つ以上を遮蔽する遮蔽機構を適用し得る。
【0151】
第三吸気口380は、開口面積調整機構382に代わり又は開口面積調整機構382と併用して、第三吸気口380における圧力損失調整機構が具備されてもよい。なお、圧力損失調整機構の図示を省略する。図2に示す乾燥制御部168は、開口面積調整機構382及び圧力損失調整機構等における駆動制御等を実施する。
【0152】
乾燥モジュール1804は、温度センサ及び湿度センサの少なくともいずれかを具備し、加熱気体発生ボックス360Bの内部における温度及び湿度の少なくともいずれかを検出し、検出結果に基づき開口面積調整機構382等の動作を制御してもよい。
【0153】
温度センサ等は、第二吸気口364の近傍の位置に配置される態様が好ましい。第二吸気口364の近傍の位置の例として、第二吸気口364が形成される端面361の内部側の面366が挙げられる。図2に示すセンサ176は、加熱気体発生ボックス360Bに具備される温度センサ等が含まれる。
【0154】
なお、実施形態に記載の開口面積調整機構382は、第三吸気口を通過する気体の単位期間あたりの体積を調整する調整機構の一例である。
【0155】
〔第五実施形態〕
図10は第五実施形態に係る乾燥装置の構成例を示す乾燥装置の側面図である。なお、同図には、乾燥装置18に具備される乾燥炉330Aの内部構造の一例を模式的に図示する。また、同図では乾燥炉330Aの内部に配置されるノズルユニット300を図示し、乾燥炉330Aの外部に配置されるヒータユニット320の図示を省略する。同図に示す矢印線は基材搬送方向を示す。
【0156】
図10に示す乾燥装置18は、乾燥炉330Aの内部においてフィルム基材1を周回させる、周回状の基材搬送経路が規定される。乾燥炉330Aの内部は、基材搬送経路に沿って複数のパスローラ34が配置される。
【0157】
また、乾燥炉330Aの内部には、駆動ローラ38が配置される。基材搬送経路は、駆動ローラ38の位置で折り返される。これにより、フィルム基材1の乾燥に必要な基材搬送経路の長さが確保され、かつ、乾燥炉330Aのサイズをコンパクトにしている。
【0158】
図10には、乾燥炉330Aの内部において、32個のノズルユニット300が分散配置される態様を例示する。なお、乾燥炉330Aの内部に配置されるノズルユニット300の数は、基材搬送経路の長さ及びノズルユニット300のサイズ等に応じて適宜規定し得る。
【0159】
かかる構造を有する乾燥装置18は、非浸透媒体が適用されるフィルム基材1に印刷される印刷画像であり、四色の水性カラーインクを用いて印刷されるカラー画像を、水性ホワイトインクを用いて印刷される背景画像に重畳させた印刷画像の乾燥処理を実施する。
【0160】
カラー画像のみが印刷される場合と比較して、ホワイトインクを用いた背景画像が印刷される場合は、フィルム基材1へ塗布されるインク量が膨大となり、乾燥装置18における消費電力の低減化及び排気処理等の課題が存在する。
【0161】
図10に示す構造を有する乾燥装置18に対して、特許文献1に記載される基材搬送経路へヒータを対向させる構造が適用される場合、基材搬送面に対して直交する方向について乾燥モジュール1800が大型化し、乾燥炉330Aのサイズが大型化し得る。
【0162】
これに対して、本実施形態に係る乾燥装置18は、ヒータユニット320が基材搬送面と非対向の位置に配置される。これにより、基材搬送面に対して直交する方向について乾燥炉330Aの大型化が回避される。
【0163】
また、図10に示す乾燥モジュール1800は基材搬送方向についても乾燥モジュール1800の大型化が回避される。すなわち、乾燥モジュール1800はノズルユニット300の基材搬送方向における隣接位置へヒータユニット320が配置されず、隣り合う乾燥モジュール1804同士の距離を相対的に短くでき、基材搬送方向について乾燥炉330Aの大型化が回避される。
【0164】
なお、図10に示す乾燥モジュール1800は、図6に示す乾燥モジュール1802、図7に示す乾燥モジュール1803及び図9に示す乾燥モジュール1804のいずれかを適用し得る。
【0165】
図11は乾燥モジュールの他の配置例を示す乾燥装置の側面図である。なお、同図には、図10に示す乾燥炉330Aの内部における基材搬送経路の一部を図示する。同図に示す矢印線は、基材搬送方向を示す。
【0166】
図11に示す乾燥モジュール1800は、フィルム基材1の印刷面1Aの側の位置及び基材支持面1Bの側のそれぞれに配置される。これにより、フィルム基材1の印刷面1A及び基材支持面1Bに対して、一括して乾燥処理を実施し得る。
【0167】
かかる態様において、フィルム基材1の印刷面1Aの側に配置される乾燥モジュール1800と、フィルム基材1の基材支持面1Bの側に配置される乾燥モジュール1800とは、ノズルユニット300とヒータユニット320との配置が入れ替えられる態様が好ましい。これにより、乾燥炉330Aの基材幅方向について同じ側にヒータユニット320を配置し得る。
【0168】
図12は乾燥モジュールの変形例を示す乾燥装置の側面図である。なお、図12に示す矢印線は、基材搬送方向を示す。
【0169】
図12に示す乾燥モジュール1805に具備されるノズルユニット3001は、第一ノズル配置面302A及び第二ノズル配置面302Bを備える。第一ノズル配置面302A及び第二ノズル配置面302Bは、複数のノズル304が配置される。
【0170】
図12に示すノズルユニット3001は、直方体形状を有するノズルユニット3001の上面が第一ノズル配置面302Aとされ、底面が第二ノズル配置面302Bとされる。すなわち、図12に示すノズルユニット3001は、互いに平行となる二面の一方が第一ノズル配置面302Aとされ、他方の面が第二ノズル配置面302Bとされる。
【0171】
第一ノズル配置面302Aと第二ノズル配置面302Bとは、互いに平行となる面に限定されず、互いに直交する面が適用されてもよい。互いに直交する面が適用される例として、第一ノズル配置面302Aが直方体の上面とされ、第二ノズル配置面302Bが直方体の側面とされる態様が挙げられる。
【0172】
かかる変形例によれば、一つのノズルユニット3001から複数の方向に向けて加熱気体を吹き付け得る。なお、ノズル配置面は二つの面に限定されず、多面体の三つ以上の面をノズル配置面としてもよい。
【0173】
図10に戻り、基材搬送方向について複数の乾燥モジュール1800が配置される場合、基材搬送方向における上流側の領域は定率乾燥区間であり、水分蒸発量が相対的に大きく、湿度が上昇し易い。したがって、図9に示す第三吸気口380から加熱気体発生ボックス360Bの内部へ取り込まれる外気の体積が相対的に多くされる。
【0174】
一方、基材搬送方向における下流側の領域は減率乾燥区間であり、水分蒸発量が相対的に小さく、湿度が上昇し難い。したがって、第三吸気口380から加熱気体発生ボックス360Bの内部へ取り込まれる外気の体積が相対的に少なくされる。
【0175】
すなわち、基材搬送方向における下流側に位置に配置される乾燥モジュール1800において第三吸気口380を通過する気体の単位期間あたりの体積は、基材搬送方向における上流側に位置に配置される乾燥モジュール1800において第三吸気口380を通過する気体の単位期間あたりの体積未満とされる。
【0176】
基材搬送方向における上流側の領域の例として、乾燥装置18におけるフィルム基材1の搬送開始位置を起点とし、起点からの距離が基材搬送経路の全長に対して15パーセント以上20パーセント以下の位置までの領域が挙げられる。
【0177】
基材搬送方向における下流側の領域の例として、起点からの距離が基材搬送経路の全長に対して15パーセント以上20パーセント以下の位置から乾燥装置18におけるフィルム基材1の搬送終了位置までの領域が挙げられる。
【0178】
[実施形態に係る乾燥装置の作用効果]
実施形態に係る乾燥装置は以下の作用効果を得ることが可能である。
【0179】
〔1〕
フィルム基材1に対して加熱気体を吹き付けるノズルユニット300は、基材搬送面と対向する位置に配置される。ノズルユニット300へ加熱気体を供給するヒータユニット320は、基材搬送面と非対向の位置に配置される。これにより、基材搬送面と対向する方向における乾燥モジュールの大型化が抑制される。
【0180】
〔2〕
乾燥モジュール1801は、乾燥炉330の内部に配置される。これにより、熱損失の低減化を実現し得る。
【0181】
〔3〕
ノズルユニット300は乾燥炉330Aの内部に配置され、ヒータユニット320は乾燥炉330Aの外部に配置される。これにより、ヒータユニット320に具備される軸流ファン324等のメンテナンスの実施が容易となる。
【0182】
〔4〕
ヒータユニット320は、加熱気体発生ボックス360の内部に配置される。これにより、ヒータユニット320が発生させる熱エネルギーを加熱気体発生ボックス360の外部へ逃がさずに、軸流ファン324は、加熱気体発生ボックス360の内部の加熱気体をノズルユニット300へ送風し得る。
【0183】
〔5〕
加熱気体発生ボックス360は外気を取り込む第一吸気口362を備える。これにより、ヒータユニット320は加熱気体発生ボックス360の外気を用いて加熱気体を生成し得る。
【0184】
〔6〕
ノズルユニット300から放出された加熱気体を回収する加熱気体回収ユニット370を備える。加熱気体回収ユニット370へ回収された加熱気体は、加熱気体排出口372及び第二吸気口364を介して加熱気体を加熱気体発生ボックス360Aへ回収される。これにより、乾燥炉330Aの内部における高温の加熱気体を加熱気体発生ボックス360Aへ回収する熱エネルギーの循環が実現され、乾燥モジュール1803は省エネルギー効果が得られる。
【0185】
〔7〕
加熱気体回収口376は、媒体幅方向について複数の吸気領域に分割される。加熱気体回収ユニット370は、複数の吸気領域のそれぞれと接続される複数の吸気流路を備える。複数の吸気流路のそれぞれは、加熱気体排出口372が分割された複数の排気領域のそれぞれと接続される。これにより、加熱気体回収ユニット370は、基材幅方向について均一に加熱気体を吸気し得る。
【0186】
〔8〕
加熱気体発生ボックス360Bは、外気を取り入れる第三吸気口380を備える。これにより、乾燥モジュール1804は、加熱気体発生ボックス360Bの内部の湿度上昇に起因する乾燥効率の低下を抑制し得る。
【0187】
〔9〕
加熱気体発生ボックス360Bは、第三吸気口380の開口面積を調整する開口面積調整機構382を備える。これにより、加熱気体発生ボックス360Bは、外気の吸引体積を調整し得る。
【0188】
〔10〕
加熱気体発生ボックス360Bは、第二吸気口364の近傍に温度センサ及び湿度センサの少なくともいずれかを備える。これにより、第二吸気口364を介して加熱気体発生ボックス360Bの内部へ流入する気体の温度及び湿度の少なくともいずれいかに応じて、第三吸気口380の開口面積を調整し得る。
【0189】
〔11〕
基材搬送方向について、複数の乾燥モジュール1800が配置される場合、基材搬送方向の上流側の位置に配置される乾燥モジュール1800は、同方向の下流側の位置に配置される乾燥モジュール1800に対して、第三吸気口380から取り入れられる外気の体積が相対的に多くされる。これにより、乾燥装置18の全体としての乾燥効率を向上し得る。
【0190】
〔12〕
フィルム基材1の基材支持面1Bの側に乾燥モジュール1800が配置される。これにより、フィルム基材1の基材支持面1Bの側からフィルム基材1に対して乾燥処理を実施し得る。
【0191】
〔13〕
多面体として構成されるノズルユニット3001は、第一ノズル配置面302A及び第二ノズル配置面302B等の複数の面にノズル304が配置される。これにより、複数の方向について加熱気体の吹き付けが可能となる。
【0192】
[ノズルユニットに適用される材料の具体例]
乾燥装置18は、フィルム基材1の材料、フィルム基材1の厚み及びフィルム基材1へ印刷される画像に応じて、乾燥処理温度が変更される。図4等に図示されるノズルユニット300は、適用される材料の厚みが相対的に厚くされる場合及び適用される材料の熱容量が相対的に大きい場合は、熱応答性の低下が懸念される。
【0193】
図4等に図示されるノズルユニット300は、中空構造を有する直方体形状の金属製の筐体が適用される。これにより、乾燥処理温度が変更される際のノズルユニット300における一定の熱応答性が確保され、乾燥処理温度が変更される際の待機時間を低減化し得る。
【0194】
すなわち、ノズルユニット300に適用される材料は、一定の熱応答性を確保する観点から、熱容量がより小さい金属材料が好ましい。ノズルユニット300に適用される金属材料の例として、鉄及びステンレス等が挙げられる。
【0195】
ノズルユニット300は、一種類の金属材料を用いて形成され、加工の手法として金属板の折り曲げ加工及び溶接が適用される形成が好ましい。ノズルユニット300は、ノズル配置面302に複数のノズル304が二次元状に分散して配置される観点から、一定の厚みを有し、加工性及び剛性が両立する材料の適用が好ましい。
【0196】
ノズルユニット300は、熱容量をより小さくするという観点から筐体の容積をできる限り小さくすることがポイントとなる。一方、直方体形状のノズルユニット300において、ノズル配置面302に対して平行となる面から加熱気体が流入される場合、加熱気体流入口に対向する位置のノズル304に対して、加熱気体流入口から離れた位置のノズル304は、供給される加熱気体の単位期間あたりの体積が減少し、加熱気体の均一な送風が困難になり得る。ノズルユニット300の長手方向は、短手方向と比較して、送風分布の影響が大きい。
【0197】
加熱気体の送風分布を抑制するには、筐体の高さである、加熱気体の流入面とノズル配置面302との間の距離を相対的に大きくすればよいが、ノズルユニット300の全体の熱容量が相対的に増加してしまう。
【0198】
ノズルユニット300の内部に整流板等の規制部材を配置して、加熱気体の送風分布の抑制が可能であるが、ノズルユニット300の内部構造の複雑化及びノズルユニット300の内部の流路抵抗の増加が懸念される。
【0199】
これに対して、図4等に示すように、加熱気体流入口308は、ノズル配置面302に対して直交するノズルユニット300の側面306に配置される。これにより、ノズルユニット300の高さが低く抑えられ、ノズルユニット300の長手方向について、加熱気体の送風分布が抑制される。
【0200】
図13はノズルユニットに適用される金属板の厚みの評価結果を示す表である。図13には、金属板の厚みをパラメータとして、加工性、圧力損失及び熱応答性の観点について評価をした評価結果を示す。
【0201】
図13に示す表において、評価結果Aは最適を表す。評価結果Bは適正を表す。評価結果Cは条件付きの適正を表す。評価結果Dは不適正を表す。図14に示す表についても同様である。
【0202】
加工性について、厚みが1.5ミリメートル未満の場合、金属板自体の剛性不足に起因して加工精度が低下し得る。したがって、加工性の観点から、金属板の厚みは1.5ミリメートル以上が好ましい。
【0203】
また、金属板の厚みが3.5ミリメートルを超える場合は、100マイクロメートル未満の直径を有するノズル304を形成する際に一定の加工精度を確保するには、加工の難易度が相対的に高くなり得る。したがって、金属板の厚みは3.5ミリメートル以下が好ましい。
【0204】
圧力損失は、ノズル304から送風される加熱気体の単位期間あたりの体積に基づき判定される。圧力損失の指標値として、ノズル304の位置から一定距離が離された位置に配置される風速計の測定値を適用し得る。金属板の厚みが相対的に大きい場合、各ノズル304における流路抵抗が相対的に増加し、ノズルユニット300の内部における圧力損失が相対的に増加する。
【0205】
例えば、軸流ファン324のデューティなどの出力を一定とし、ノズル配置面302における複数の位置について風速を測定し、各位置における測定値の算術平均値を圧力損失の指標値とし得る。複数の位置の例として、ノズル配置面302の四隅及びノズル配置面の中心などを採用し得る。
【0206】
すなわち、圧力損失ついて、金属板の厚みが3.5ミリメートル以上の場合、ノズル304における流路抵抗の増加に起因する加熱気体の吹き付け圧力の低下が懸念され、一定の乾燥条件において適正とされる。一方、金属板の厚みが3.5ミリメートル未満の場合は、最適又は適正とされる。
【0207】
熱応答性は、ヒータユニット320の温度設定を変更した場合に、ノズル304から送風される加熱気が規定の温度に達するまでの期間に基づき判定される。金属板の厚みが相対的に厚い場合、ノズルユニット300の熱容量が相対的に増加し、熱応答性の相対的な低下が懸念される。すなわち、熱応答性ついて、厚みが3.5ミリメートル以上の場合、ノズル304における熱容量の増加に起因する熱応答性の低下が懸念され、一定の乾燥条件において適正とされる。一方、金属板の厚みが3.5ミリメートル未満の場合は、最適又は適正とされる。
【0208】
図13に示す表における総合判断は、加工性、圧力損失及び熱応答性が、総合的に考察された評価結果を示す。厚みが1.5ミリメートル未満の場合の総合判断は不適であり、厚みが1.5ミリメートル以上2.0ミリメートル未満の場合の総合判断は最適である。
【0209】
また、厚みが2.0ミリメートル以上3.5ミリメートル未満の場合の総合判断は適正であり、厚みが3.5ミリメートル以上の場合の総合判断は条件付きで適正である。
【0210】
すなわち、ノズルユニット300に適用される金属板の厚みは、1.5ミリメートル以上が好ましく、1.5ミリメートル以上3.5ミリメートル未満がより好ましい。更に好ましい金属板の厚みは、1.5ミリメートル以上2.5ミリメートル未満である。
【0211】
[ノズルユニットに適用される構造の具体例]
ノズルユニット300は、全てのノズル304から均一に加熱気体を噴射させるには、ノズルユニット300の内部へ加熱気体を溜める必要がある。すなわち、ノズルユニット300は、全てのノズル304の開口面積の合計として算出されるノズル総面積に対して、加熱気体流入口308の開口面積が一倍以下となる構造を有する。
【0212】
図14はノズルユニットに適用される構造の評価結果を示す表である。図14には、圧力損失及び風速ムラの観点について評価をした評価結果を示す。なお、図14に示す表における面積比は、ノズル総面積に対する加熱気体流入口308の開口面積の比率を表す。
【0213】
圧力損失は、金属板の厚み評価と同様に、ノズル304から送風される加熱気体の単位期間あたりの体積に基づき判定され、圧力損失の指標値として、ノズル304の位置から一定距離が離された位置に配置される風速計の測定値を適用し得る。ノズル304の位置から一定距離が離された位置は、基材搬送面の位置を適用し得る。
【0214】
圧力損失について、面積比が0.1未満の場合、ノズル304ごとの開口面積が相対的に小さくなり、ノズル304ごとの流路抵抗の増加に起因して圧力損失が増加し、不適である。また、面積比が0.1以上0.4未満の場合は条件付きで適正である。更に、圧力損失について、面積比が0.4以上0.7未満の場合は適正であり、面積比が0.7以上の場合は最適である。
【0215】
風速ムラは、全てのノズル304から送風される加熱気体が、規定範囲の風速を有しているか否かに基づき判定される。例えば、風速ムラの指標値は、ノズルユニット300の長手方向における複数の位置における風速を指標値とし得る。複数の位置は、圧力損失の指標値の導出の際に用いられた複数の位置を採用し得る。
【0216】
風速ムラについて、面積比が0.1未満の場合は最適であり、面積比が0.1以上0.7未満の場合は適正である。また、風速ムラについて、面積比が0.7以上1.0以下の場合は、条件付きで適正である。一方、面積比が1.0を超える場合は不適正である。
【0217】
図14に示す総合判断は、圧力損失及び風速ムラが、総合的に考察された評価結果を示す。面積比が0.1未満の場合及び面積比が1.0を超える場合は不適正であり、面積比が0.1以上0.4未満の場合及び面積比が0.7以上1.0以下場合は適正である。また、面積比が0.4以上0.7未満の場合は最適である。
【0218】
すなわち、ノズルユニット300におけるノズル総面積に対する加熱気体流入口308の開口面積の比率は、0.1以上1.0以下が好ましく、0.4以上0.7未満がより好ましい。
【0219】
[用語について]
プレコート液という用語は、前処理液及び処理液などの用語と同義であり、印刷の前に塗布される液体の総称である。プレコート液は塗布液の一例である。
【0220】
印刷装置という用語は、印刷機、プリンタ、印字装置、画像記録装置、画像形成装置、画像出力装置及び描画装置等の用語と同義である。画像は広義に解釈するものとし、カラー画像、白黒画像、単一色画像、グラデーション画像及び均一濃度画像等も含まれる。
【0221】
印刷という用語は、画像の記録、画像の形成、印字、描画及びプリント等の用語の概念を含む。装置という用語は、システムの概念を含み得る。
【0222】
画像は、写真画像に限らず、図柄、文字、記号、線画、モザイクパターン、色の塗り分け模様及びその他の各種パターン等、並びにこれらの適宜の組み合わせを含む包括的な用語として用いる。また、画像という用語は、画像を表す画像信号及び画像データの意味を含み得る。
【0223】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。また、実施形態、変形例及び応用例は適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0224】
1 フィルム基材
1A 印刷面
1B 基材支持面
10 インクジェット印刷システム
12 給紙装置
14 プレコート装置
16 ジェッティング装置
18 乾燥装置
20 検査装置
22 回収装置
24 搬送装置
30 インクジェットヘッド
30C インクジェットヘッド
30K インクジェットヘッド
30M インクジェットヘッド
30W インクジェットヘッド
30Y インクジェットヘッド
32 スキャナ
34 パスローラ
36 テンションピックアップ
38 駆動ローラ
160 システム制御部
162 搬送制御部
164 プレコート制御部
166 ジェッティング制御部
168 乾燥制御部
170 検査制御部
172 テストパターン判定部
173 印刷画像判定部
174 メモリ
176 センサ
200 制御装置
202 プロセッサ
204 コンピュータ可読媒体
206 通信インターフェース
208 入出力インターフェース
210 バス
214 入力装置
216 ディスプレイ装置
220 搬送制御プログラム
222 プレコート制御プログラム
224 ジェッティング制御プログラム
226 乾燥制御プログラム
228 検査制御プログラム
230 テストパターン判定プログラム
300 ノズルユニット
301 一方の端
302 ノズル配置面
302A 第一ノズル配置面
302B 第二ノズル配置面
304 ノズル
306 側面
308 加熱気体流入口
320 ヒータユニット
322 ヒータ
323 ヒータケース
324 軸流ファン
326 加熱気体供給口
327 気体供給口配置面
330 乾燥炉
330A 乾燥炉
331 端面
332 開口
360 加熱気体発生ボックス
360A 加熱気体発生ボックス
360B 加熱気体発生ボックス
361 他方の端面
362 第一吸気口
364 第二吸気口
366 面
370 加熱気体回収ユニット
371 一方の端面
372 加熱気体排出口
372A 第一排気領域
372B 第二排気領域
372C 第三排気領域
376 加熱気体回収口
376A 第一吸気領域
376B 第二吸気領域
376C 第三吸気領域
378A 第一吸気流路
378B 第二吸気流路
378C 第三吸気流路
379A 第一隔壁
379B 第二隔壁
380 第三吸気口
382 開口面積調整機構
1801 乾燥モジュール
1801A 乾燥モジュール
1802 乾燥モジュール
1803 乾燥モジュール
1804 乾燥モジュール
1805 乾燥モジュール
3001 ノズルユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14