(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】カロテノイド分解物を有効成分とする高甘味度甘味料の呈味改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20241129BHJP
A23L 5/20 20160101ALI20241129BHJP
【FI】
A23L27/00 F
A23L5/20
(21)【出願番号】P 2021554202
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2020036683
(87)【国際公開番号】W WO2021079693
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019193157
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松澤 俊
(72)【発明者】
【氏名】境野 眞善
(72)【発明者】
【氏名】徳地 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴士
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-018542(JP,A)
【文献】特開昭61-212243(JP,A)
【文献】特開2014-108104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00-27/60
A23L 5/00-5/49
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイド
加熱酸化分解物を有効成分とする、高甘味度甘味料の呈味改善剤。
【請求項2】
前記カロテノイド
加熱酸化分解物は、カロテン及びキサントフィルからなる群から選ばれた1種又は2種以上の分解物である、請求項1に記載の呈味改善剤。
【請求項3】
前記呈味改善剤は、前記カロテノイド
加熱酸化分解物を、分解前のカロテノイド量に換算して1質量ppm以上40000質量ppm以下含有する、請求項1又は2に記載の呈味改善剤。
【請求項4】
油脂組成物の形態である、請求項1乃至
3いずれか一項に記載の呈味改善剤。
【請求項5】
前記カロテノイド
加熱酸化分解物を含有する粉末油脂の形態である、請求項
4に記載の呈味改善剤。
【請求項6】
前記カロテノイド
加熱酸化分解物を含有する水溶液の形態である、請求項1乃至
3いずれか一項に記載の呈味改善剤。
【請求項7】
油脂中のカロテノイドを
加熱酸化処理し、カロテノイド
加熱酸化分解物を得る工程を含む、高甘味度甘味料の呈味改善剤の製造方法。
【請求項8】
前記油脂は、原料油脂にカロテノイドを添加する工程により得られた油脂である請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記油脂は、β-カロテン及びα-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂である、請求項
7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記油脂は、ヨウ素価が0以上140以下の油脂である、請求項
7乃至
9いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記
加熱酸化処理が、過酸化物価が3以上250以下となるよう前記油脂を酸化する、請求項
7乃至
10いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記
加熱酸化処理は、50℃以上220℃以下で0.1時間以上240時間以下加熱処理することにより行う、請求項
7乃至
11いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記
加熱酸化処理は、酸素を供給して行う、請求項
7乃至
12いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記カロテノイド
加熱酸化分解物を、油脂と混合する工程を含む、請求項
7乃至
13いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記呈味改善剤中に前記カロテノイド
加熱酸化分解物が分解前のカロテノイド量に換算して1質量ppm以上40000質量ppm以下含まれる、請求項
7乃至
14いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記酸化処理は、加熱温度(℃)と加熱時間(時間)の積が20以上20000以下である条件下に加熱処理することにより行う、請求項
7乃至
15いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記カロテノイド
加熱酸化分解物を固形脂とともに粉末化させる工程を含む、請求項
7乃至
16いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記カロテノイド
加熱酸化分解物を水と混合し、水相を採取してカロテノイド
加熱酸化分解物の水溶液を得る工程を含む、請求項
7乃至
16いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記水溶液に賦形剤を添加して噴霧乾燥し、カロテノイド
加熱酸化分解物を含有する粉末を得る工程を含む、請求項
18に記載の製造方法。
【請求項20】
高甘味度甘味料を含む食品にカロテノイド
加熱酸化分解物を含有せしめる、前記食品の呈味改善方法。
【請求項21】
前記食品中に、前記カロテノイド
加熱酸化分解物を、分解前のカロテノイド量に換算して1×10
-5質量ppm以上1質量ppm以下含有せしめる、請求項
20に記載の呈味改善方法。
【請求項22】
食品にカロテノイド
加熱酸化分解物を添加する工程を含む、高甘味度甘味料を含む食品の製造方法。
【請求項23】
高甘味度甘味料及びカロテノイド
加熱酸化分解物を含む、高甘味度甘味料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高甘味度甘味料の呈味を改善する効果に優れたカロテノイド分解物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、アドバンテーム、ネオテームなどの高甘味度甘味料は、ショ糖の数十倍から数千倍の甘味を有するため、少ない添加量でショ糖と同等の甘味を付与できることが知られている。そのため、近年の健康指向の高まりから、砂糖等の甘味料に代えて、高甘味度甘味料を使うことで低カロリーとすることができ、そのような食品が増えている。一方で、高甘味度甘味料は、特有のえぐ味、不自然な甘さ等の呈味の点での改善が大きな課題となっている。すなわち、高甘味度甘味料は少量で甘味を付与できる点で有用である一方、砂糖等の一般の甘味料にはない異風味を有しており、それが食品の価値を損ねる要因となることもある。
【0003】
このような課題に関連して、例えば、特許文献1には、L-アスパラギン等の特定のアミノ酸により、高甘味度甘味料の苦味を低減することが開示されている。また、特許文献2には、リンゴ酸等の特定の有機酸により、スクラロース含有飲料での後味を改善することが開示されている。またさらに、特許文献3には、グルコサミンまたはN-アセチルグルコサミンにより、高甘味度甘味料の不快な異味等を改善できることが開示されている。しかしながら、消費者の嗜好や食品等事業者からのニーズの多様化に鑑みれば、従来とは由来の異なる新たな素材の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-270804号公報
【文献】特開2003-210147号公報
【文献】特開2015-142521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高甘味度甘味料の甘味の改善、えぐ味のマスキングにより呈味改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カロテノイド分解物を用いれば、高甘味度甘味料の呈味を改善できることを見出し、本発明を完成した。
[1] カロテノイド分解物を有効成分とする、高甘味度甘味料の呈味改善剤。
[2] 前記カロテノイド分解物は、カロテン及びキサントフィルからなる群から選ばれた1種又は2種以上の分解物である、[1]に記載の呈味改善剤。
[3] 前記呈味改善剤は、前記カロテノイド分解物を、分解前のカロテノイド量に換算して1質量ppm以上40000質量ppm以下含有する、[1]又は[2]に記載の呈味改善剤。
[4] 前記カロテノイド分解物がカロテノイド加熱酸化分解物である、[1]乃至[3]いずれか一項に記載の呈味改善剤。
[5] 油脂組成物の形態である、[1]乃至[4]いずれか一項に記載の呈味改善剤。
[6] 前記カロテノイド分解物を含有する粉末油脂の形態である、[5]に記載の呈味改善剤。
[7] 前記カロテノイド分解物を含有する水溶液の形態である、[1]乃至[4]いずれか一項に記載の呈味改善剤。
[8] 油脂中のカロテノイドを酸化処理し、カロテノイド分解物を得る工程を含む、高甘味度甘味料の呈味改善剤の製造方法。
[9] 前記油脂は、原料油脂にカロテノイドを添加する工程により得られた油脂である[8]に記載の製造方法。
[10] 前記油脂は、β-カロテン及びα-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下のパーム系油脂である、[8]に記載の製造方法。
[11] 前記油脂は、ヨウ素価が0以上140以下の油脂である、[8]乃至[10]いずれか一項に記載の製造方法。
[12] 前記酸化処理が、過酸化物価が3以上250以下となるよう前記油脂を酸化する、[8]乃至[11]いずれか一項に記載の製造方法。
[13] 前記酸化処理は、50℃以上220℃以下で0.1時間以上240時間以下加熱処理することにより行う、[8]乃至[12]いずれか一項に記載の製造方法。
[14] 前記酸化処理は、酸素を供給して行う、[8]乃至[13]いずれか一項に記載の製造方法。
[15] 前記カロテノイド分解物を、油脂と混合する工程を含む、[8]乃至[14]いずれか一項に記載の製造方法。
[16] 前記呈味改善剤中に前記カロテノイド分解物が分解前のカロテノイド量に換算して1質量ppm以上40000質量ppm以下含まれる、[8]乃至[15]いずれか一項に記載の製造方法。
[17] 前記酸化処理は、加熱温度(℃)と加熱時間(時間)の積が20以上20000以下である条件下に加熱処理することにより行う、[8]乃至[16]いずれか一項に記載の製造方法。
[18] 前記カロテノイド分解物を固形脂とともに粉末化させる工程を含む、[8]乃至[17]いずれか一項に記載の製造方法。
[19] 前記カロテノイド分解物を水と混合し、水相を採取してカロテノイド分解物の水溶液を得る工程を含む、[8]乃至[17]いずれか一項に記載の製造方法。
[20] 前記水溶液に賦形剤を添加して噴霧乾燥し、カロテノイド分解物を含有する粉末を得る工程を含む、[19]に記載の製造方法。
[21] 高甘味度甘味料を含む食品にカロテノイド分解物を含有せしめる、前記食品の呈味改善方法。
[22] 前記食品中に、前記カロテノイド分解物を、分解前のカロテノイド量に換算して1×10-5質量ppm以上1質量ppm以下含有せしめる、[21]に記載の呈味改善方法。
[23] 食品にカロテノイド分解物を添加する工程を含む、高甘味度甘味料を含む食品の製造方法。
[24] 高甘味度甘味料及びカロテノイド分解物を含む、高甘味度甘味料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カロテノイド分解物を有効成分として用いることで、高甘味度甘味料の呈味を改善する効果に優れた呈味改善剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、カロテノイド分解物を有効成分とする、高甘味度甘味料の呈味改善剤である。前記呈味改善剤は、高甘味度甘味料の特有のえぐ味を抑制する等の呈味を改善でき、砂糖に近い甘味に感じられる機能性を有している。
【0009】
本発明に用いられるカロテノイド分解物は、カロテノイドを分解したものである。前記カロテノイドとしては、例えば、β-カロテン、α-カロテン、リコピン等のカロテン;ルテイン、カンタキサンチン、β-クリプトキサンチン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、フコキサンチン、ビオラキサンチン、リコピン、クロシン、カプサンチン等のキサントフィル;レチノール、ビキシン、ノルビキシン、クロセチン等のアポカロテノイドなどが挙げられる。そのうち、カロテン及びキサントフィルよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、β-カロテン、α-カロテン及びアスタキサンチンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましく、β-カロテン及びアスタキサンチンよりなる群から選ばれる1種又は2種であることが更に好ましく、β-カロテンであることが更により好ましい。
なお、カロテノイド分解物としては、食品添加物として認可・承認された食用色素等であれば、一般に食用としての安全性が確認されているので、より好ましく利用され得る。カロテノイド分解物は、1種類を単品で用いても、2種類以上を併用して用いてもよく、あるいは2種類以上のカロテノイドを併用し、混合状態で分解してもよい。
【0010】
前記カロテノイド分解物は、特に限定されないが、油脂中のカロテノイドを酸化処理して得ることが好ましく、油脂中のカロテノイドを加熱酸化処理して得ることがより好ましい。前記加熱酸化処理の方法は、特に制限はないが、工業的スケールで生産する観点からは、タンク等の適当な容器に収容したうえ、容器に備わる電熱式、直火バーナー式、マイクロ波式、蒸気式、熱風式などの加熱手段で行うことが好ましい。
【0011】
前記呈味改善剤は、前記カロテノイド分解物を、分解前の状態のカロテノイド量に換算して1質量ppm以上40000質量ppm以下の含有量となるようにすることが好ましく、10質量ppm以上30000質量ppm以下の含有量となるようにすることがより好ましく、30質量ppm以上20000質量ppm以下の含有量となるようにすることが更に好ましい。
【0012】
前記カロテノイド分解物は、所望する高甘味度甘味料の呈味を改善する機能性を損なわない範囲で、適宜適当な他の食用油脂(以下、「油脂」ともいう)に添加して、カロテノイド分解物を含有してなる油脂組成物となしてもよい。他の食用油脂としては、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。これらの食用油脂は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよい。なお、前記油脂組成物は、1種類のカロテノイド分解物を単品で他の食用油脂に含有せしめてもよく、あるいは2種類以上のカロテノイド分解物を併用してもよい。2種類以上のカロテノイド分解物を併用した場合、前記含有量は、その2種以上のものの合計含有量である。
【0013】
食用油脂へのカロテノイド分解物の添加量を、分解前の状態のカロテノイド量に換算して1質量ppm以上40000質量ppm以下の含有量となるようにすることが好ましく、10質量ppm以上30000質量ppm以下の含有量となるようにすることがより好ましく、30質量ppm以上20000質量ppm以下の含有量となるようにすることが更に好ましい。
【0014】
本発明においては、油脂中のカロテノイドを酸化処理し、カロテノイド分解物を得る工程を含む、高甘味度甘味料の呈味改善剤の製造方法を提供するものである。
【0015】
カロテノイド分解物は、任意に酸素(空気)を吹き込みながら行う、所定の加熱処理などで得ることができる。また、前記カロテノイド由来物を含有する油脂組成物からカロテノイド分解物を適宜抽出又は濃縮して用いてもよい。抽出及び濃縮の方法は、特に限定するものではないが、例えば、有機溶剤を用いた抽出法、カラムクロマトグラフィー、分子蒸留又は水蒸気蒸留による濃縮法を採用することができる。
【0016】
前記酸化処理に用いられる油脂は、原料油脂に前記カロテノイドを添加する工程により得ることができる。前記原料油脂としては、中鎖脂肪酸トリグリセリド及び植物油脂からなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることが好ましく、中鎖脂肪酸トリグリセリド及び菜種油からなる群から選ばれた1種又は2種を用いることがより好ましく、中鎖脂肪酸トリグリセリドを用いることが更に好ましい。また、前記酸化処理に用いられる油脂は、ヨウ素価(以下、「IV」ともいう)が0以上140以下であることが好ましく、0以上130以下であることがより好ましく、0以上120以下であることが更に好ましい。前記酸化処理に用いられる油脂中のカロテノイドの含有量は1質量ppm以上40000質量ppm以下の含有量となるようにすることが好ましく、10質量ppm以上30000質量ppm以下の含有量となるようにすることがより好ましく、30質量ppm以上20000質量ppm以下の含有量となるようにすることが更に好ましい。
【0017】
また、前記酸化処理に用いられる油脂は、β-カロテン及びα-カロテンの合計含有量が、50質量ppm以上2000質量ppm以下であるパーム系油脂であってもよい。本発明に用いるパーム系油脂は、アブラヤシの果実から得られる油脂であればよく、分子蒸留、分別、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭等の処理を施してなるものであってもよい。各処理の方法は、特に限定するものではなく、通常、油脂の加工・精製処理に用いられる方法を採用することができる。例えば、分別は、溶剤分別、低温濾過により行なうことができる。
【0018】
前記パーム系油脂に含まれるβ-カロテン及びα-カロテンの合計含有量は、50質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、80質量ppm以上500質量ppm以下であることがより好ましく、120質量ppm以上500質量ppm以下であることが更に好ましい。パーム系油脂は、β-カロテン及びα-カロテンの合計含量が上記範囲内となる、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用して上記範囲内になるように混合してもよい。
【0019】
前記パーム系油脂のIVは、20以上90以下であることが好ましく、40以上80以下であることがより好ましく、50以上70以下であることが更に好ましい。
【0020】
前記パーム系油脂の前記酸化処理は、前記パーム系油脂の過酸化物価(以下、「POV」ともいう)を3以上250以下となるように酸化することが好ましく、10以上200以下となるように酸化することがより好ましく、50以上120以下となるように酸化することが更に好ましく、50以上100以下となるように酸化することが更により好ましい。前記パーム系油脂は酸化をすることで、所定範囲のPOVとすることができるが、酸化の方法は特に限定されない。所定範囲のPOVにすることで、前記パーム系油脂中のカロテノイドを分解できる。
【0021】
前記酸化処理は、工業的スケールで生産する観点からは、タンク等の適当な容器に収容したうえ、容器に備わる電熱式、直火バーナー式、マイクロ波式、蒸気式、熱風式などの加熱手段で、所定の加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の条件は、適宜、所望量の結果物(例えばカロテノイド分解物)が得られるように設定すればよい。カロテノイドの種類やベース油として使用する原料油脂の種類等によっても異なり、一概ではないが、典型的に、例えば加熱温度50℃以上220℃以下で、加熱時間が0.1時間以上240時間以下で行うなどであり、より典型的には、例えば加熱温度60℃以上160℃以下で、加熱時間が1時間以上100時間以下で行うなどである。加熱温度(℃)と加熱時間(時間)の積(以下、「温度×時間」ともいう)の条件としては、典型的に、例えば200以上20000以下で加熱処理を行うなどであり、より典型的には、例えば300以上16000以下で加熱処理を行うなどであり、更に典型的には、例えば400以上14000以下で加熱処理を行うなどであり、所望量の結果物(例えばカロテノイド分解物)が得られるように適宜に設定すればよい。
【0022】
また、酸化処理に際しては、撹拌により容器の開放スペースから酸素を取り入れたり、酸素を吹き込んだりして、酸素(空気)を供給してもよい。なお、酸素源は空気などを用いてもよい。これにより、カロテノイドの分解が促進される。その場合、酸素の供給量としては、前記酸化処理に用いられる油脂1kgあたり0.001~2L/分となるようにすることが好ましい。例えば、空気の場合は、前記酸化処理に用いられる油脂1kgあたり0.005~10L/分であることが好ましく、0.01~5L/分であることがより好ましい。
【0023】
上記のようにして得られたカロテノイド分解物を含有する酸化処理物は、更に他の油脂と混合して、油脂組成物となしてもよい。その油脂組成物の製造のための他の食用油脂としては、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂等の動物脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。他の食用油脂は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよい。
【0024】
配合比に特に制限はないが、前記カロテノイド分解物を含有する酸化処理物と他の食用油脂との合計質量に対する前記カロテノイド分解物の含有量が、カロテノイド量に換算して1質量ppm以上40000質量ppm以下の含有量となるようにすることが好ましく、10質量ppm以上30000質量ppm以下の含有量となるようにすることがより好ましく、30質量ppm以上20000質量ppm以下の含有量となるようにすることが更に好ましい。なお、前記油脂組成物は、カロテノイド分解物を含有する酸化処理物の1種類を単品で他の食用油脂に含有せしめてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0025】
本発明によれば、高甘味度甘味料を含む食品等に上述した呈味改善剤を含有せしめることで、その高甘味度甘味料の呈味を改善することができる。より詳細には、高甘味度甘味料による異風味等に対する改善効果に優れる。ここで、「異風味」とは、当該食品等を食したときのえぐ味等の異風味、あるいは、不自然な甘さ等の、高甘味度甘味料に特有の呈味のことである。また、「改善する」とは、その異風味が低減され、抑制され、ひいては感じられなくなったり、あるいは、砂糖等の一般的な甘味料が呈する甘味に近づいたりすることを含む。特には、本発明によると、食したときの後味に残るえぐ味を抑制する効果や、砂糖の甘味に近づける効果に優れている。このような高甘味度甘味料の異風味の有無や、その高甘味度甘味料による呈味を改善する効果は、例えば、公正な水準を満たす専門パネラーによる官能評価などによって、客観的に判定し得る。
【0026】
本発明が適用される高甘味度甘味料は、特に限定されず、ショ糖の十倍以上、より好ましくは百倍以上の甘味を有する天然及び合成の化合物である。例えば、ステビア、ラカンカ抽出物、グリチルリチン、グリチルリチン酸塩類、ソーマチン等の天然甘味料;スクラロース、アセスルファムカリウム、アミノ酸系甘味料(アスパルテーム、アドバンテーム、アリテーム、ネオテーム等)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ズルチン等の合成甘味料である。そのうち、ステビア、スクラロース、アセスルファムカリウム及びアスパルテームよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、ステビア及びアセスルファムカリウムよりなる群から選ばれる1種又は2種であることがより好ましく、ステビアであることが更に好ましい。また、食したときの後味に残るえぐ味をマスキングする効果の点で、ステビア及びアセスルファムカリウムよりなる群から選ばれる1種又は2種であることが好ましく、ステビアであることがより好ましい。
【0027】
本発明の呈味改善剤の食品等への配合量に特に制限はないが、前記カロテノイド分解物を指標にしていえば、前記カロテノイド及びその分解物の合計含有量が前記分解する工程の前の該カロテノイド量に換算した量として1×10-5質量ppm以上1質量ppm以下となるように前記カロテノイド分解物を含有する油脂組成物を食品等に含有せしめることが好ましく、1×10-4質量ppm以上1質量ppm以下となるように含有せしめることがより好ましく、1×10-3質量ppm以上1質量ppm以下となるように含有せしめることが更に好ましく、1×10-2質量ppm以上1質量ppm以下となるように含有せしめることが更により好ましい。
【0028】
本発明が適用される食品等としては、前記高甘味度甘味料を含んでいれば、特に限定されない。また、砂糖等の高甘味度甘味料以外の甘味料を含んでいてもよい。また、ヒトや動物が経口で摂取するものであり、経口医薬、エサや飼料も含まれる。より具体的には、例えば、果実類、野菜類、魚介類等の加工品;練製品;調理食品;総菜類;スナック類;加工食品;栄養食品;茶飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料、機能性飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク等の飲料;アイスクリーム、シャーベット等の冷菓類;ゼリー、キャンディー、グミ、ガム、プリン、羊かん等のデザート類;クッキー、ケーキ、チョコレート、チューイングガム、饅頭等の菓子類;菓子パン、食パン等のパン類;ジャム類;ラムネ、タブレット等の錠菓類;インスタントコーヒー、インスタントスープ等のインスタント食品;ガムシロップ、スティックシュガー等の甘味製剤;調味料;ドレッシング類;経口医薬;ペットフード;飼料などである。食品に含まれる高甘味度甘味料の含有量は特に限定されないが、例えば、0.00001~5質量%であり、好ましくは0.00005~4質量%である。
【0029】
前記カロテノイド分解物を食品等に用いるときの形態としては、その食品等に利用可能な形態であって、カロテノイド分解物を良好な分散状態に、あるいは安定に保つことができる形態であればよく、その製剤的形態に特に制限はない。通常当業者に周知の製剤的技術により、例えば、油脂成分を主体とした、液体油脂、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、粉末油脂等に調製されてもよく、あるいは、油脂成分の配合量が少ない溶液状、粉末状、ゲル状、顆粒状等に調製されてもよく、それら形態は任意に採用し得る。なお、前記カロテノイド分解物を含有する酸化処理物やそれを含有してなる油脂組成物は、それをそのまま、カロテノイドの分解物を食品の呈味改善用に用いるための一形態としてもよい。また、前記カロテノイド分解物を含有する粉末油脂は、固形脂とともに噴霧乾燥するといった、一般的な粉末油脂の調製方法により調製することができる。
【0030】
前記カロテノイド分解物を食品等に用いるときの別の形態としては、前記カロテノイド分解物を含有する水溶液の形態であってもよい。これによれば、水溶性の素材に相性よく混合して利用することができる。このような水溶液の形態は、例えば、上記した酸化処理により油相中で調製されたカロテノイド分解物を、一般的な液液抽出の手段により水相に移行させて、その水相を回収することにより調製することができる。採取した水相には、適宜選択された賦形剤を添加して、噴霧乾燥して、粉末化してもよい。そのための賦形剤としてはデキストリンが好ましい。
【0031】
前記カロテノイド分解物を食品等に用いる場合、その食品等に含まれる高甘味度甘味料1質量部に対する前記カロテノイド分解物の量は、分解前のカロテノイド量に換算して1×10-10質量部以上1×10-3質量部以下が好ましく、1×10-9質量部以上1×10-4質量部以下がより好ましく、1×10-8質量部以上1×10-5質量部以下が更に好ましく、1×10-7質量部以上1×10-6質量部以下が更により好ましい。
【0032】
一方、本発明は、別の観点では、高甘味度甘味料及びカロテノイド分解物を含む、高甘味度甘味料組成物を提供する。この組成物によれば、食品等に添加することで高甘味度甘味料により甘味を付与することができるとともに、加えて、カロテノイド分解物によりその呈味が改善される。本発明による高甘味度甘味料組成物においては、前記高甘味度甘味料1質量部に対する前記カロテノイド分解物の量が、分解前のカロテノイド量に換算して1×10-10質量部以上1×10-3質量部以下が好ましく、1×10-9質量部以上1×10-4質量部以下がより好ましく、1×10-8質量部以上1×10-5質量部以下が更に好ましく、1×10-7質量部以上1×10-6質量部以下が更により好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0034】
まず、以下に、本実施例において用いたパーム系油脂、ベース油及びカロテノイドを挙げるとともに、β-カロテン、α-カロテン及びアスタキサンチンの定量方法、ならびに過酸化物価(POV)の測定及びヨウ素価(IV)の測定について説明する。
【0035】
〔パーム系油脂〕
・レッドパーム油1(分子蒸留、1回分別):IV=58、β-カロテン及びα-カロテンの合計含有量373質量ppm、商品名「カロチーノ ピュアオレイン」(カロチーノ社製)
・レッドパーム油2(分子蒸留、1回分別):IV=58、β-カロテン及びα-カロテンの合計含有量444質量ppm、商品名「カロチーノ ピュアオレイン」(カロチーノ社製)
・レッドパーム油3(分子蒸留、1回分別):IV=58、β-カロテン及びα-カロテンの合計含有量457質量ppm、商品名「カロチーノ ピュアオレイン」(カロチーノ社製)
・レッドパーム油4(精製無し、低温濾過):IV=57、β-カロテン及びα-カロテンの合計含有量341質量ppm、商品名「EV REDPALM OIL」(レインフォレストハーブ社製)
・調合レッドパーム油:IV=58、上記レッドパーム油1とパームオレイン(株式会社J-オイルミルズ製(社内調製品))を1:2の割合で調合したもの。β-カロテン及びα-カロテンの合計含有量115質量ppm
【0036】
〔ベース油及びカロテノイド〕
・MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド):IV=0、商品名「ココナードMT」(花王株式会社製)
・菜種油:IV=115、商品名「AJINOMOTOさらさらキャノーラ油」(株式会社J-オイルミルズ社製)
・β-カロテン:β-カロテン30%懸濁液(DSM製)
・アスタキサンチン:アスタキサンチンオイルAstabio AR5(バイオジェニック株式会社製)
【0037】
〔β-カロテン及びα-カロテンの定量〕
β-カロテン及びα-カロテンの定量は、高速液体クロマトグラフィーによる分析(以下、「HPLC分析」ともいう)にて行った。具体的には、パーム系油脂、又は酸化処理物を0.5g秤量し、アセトン:テトラヒドロフラン=1:1で10mLにそれぞれメスアップし、HPLC分析に供し、検量線からβ-カロテン及びα-カロテンの含有量を定量した。なお、検量線は定量標品としてβ-カロテン(型番035-05531)及びα-カロテン(型番035-17981)の試薬(和光純薬工業株式会社製)を使用して、所定濃度ごとにHPLC分析に供したときのピーク面積から作成した。以下には主な分析条件を示す。
【0038】
(HPLC条件)
・検出器:フォトダイオドアレイ検出器「2996 PHOTODIODE ARRAY DETECTOR」(Waters社)、300~600nmで検出
・カラム:Shim-pack VP-ODS、4.6mmID×250mm、4.6μm(株式会社島津製作所)
・カラム温度:50℃
・注入量:5μL
・流速:1.2mL/分
・移動相A:アセトニトリル
・移動相B:エタノール
・移動相C:アセトン
・グラジエント条件:表1に示す
【0039】
【0040】
〔アスタキサンチンの定量〕
以下に、アスタキサンチンの定量方法を説明する。定量は、HPLC分析にて行った。具体的には、カロテノイド、カロテノイドを添加した食用油脂、又は酸化処理した油脂組成物を2g秤量し、アセトンで10mLにそれぞれメスアップし、溶かしてHPLC分析に供し、検量線からアスタキサンチンの含有量を定量した。なお、検量線は定量標品としてアスタキサンチン(型番600113)(MedKoo Biosciences社製)の試薬を使用して、所定濃度ごとにHPLC分析に供したときのピーク面積から作成した。以下に、主な分析条件を示す。
【0041】
(HPLC条件)
・検出器:フォトダイオドアレイ検出器「2996 PHOTODIODE ARRAY DETECTOR」(Waters社)、400~600nmで検出
・カラム:YMC Carotenoid、4.6mmID×250mm、5μm(株式会社ワイエムシィ)
・カラム温度:25℃
・注入量:10μL
・流速:1.0mL/分
・移動相A:メタノール
・移動相B:tert-ブチルメチルエーテル
・移動相C:水
・グラジエント条件:表2に示す
【0042】
【0043】
〔過酸化物価(POV)の測定〕
「基準油脂分析試験法 2.5.2 過酸化物価」(日本油化学会)に則って測定した。
【0044】
〔ヨウ素価(IV)の測定〕
「基準油脂分析試験法2.3.4ヨウ素価」(日本油化学会)に準拠して測定した。
【0045】
以下に、本実施例において用いた高甘味度甘味料、グラニュ糖及びヨーグルトを挙げる。
【0046】
〔高甘味度甘味料、グラニュ糖及びヨーグルト〕
・ステビア:池田糖化株式会社製
・アセスルファムカリウム:北大貿易株式会社製
・アスパルテーム:和光純薬株式会社製
・スクラロース:和光純薬株式会社製
・エリスリトール及びスクラロース含有する甘味料:商品名「シュガーカットゼロ顆粒」(株式会社浅田飴製)(以下、「シュガーカット」という)
・グラニュ糖:株式会社パールエース製
・ヨーグルト:商品名「明治ブルガリアヨーグルトLB81低糖」(株式会社明治製)
【0047】
[試験例1](ヨーグルトでの評価 その1)
<食用油脂の酸化処理物の調製>
表3に示す各種のパーム系油脂を使用し、その酸化処理物を調製した。具体的には、β-カロテン及びα-カロテンを所定含有量(質量ppm)で含有するレッドパーム油を準備し、これを撹拌しながら表3に示される各加熱処理条件で加熱処理して、実施例1~6の酸化処理物を得た。なお、表3に示すとおり空気を所定量で吹き込みながら加熱処理した。また、加熱処理を行わない原料レッドパーム油の1つを、対照として比較例1とした。
【0048】
表3には、使用したレッドパーム油、そのレッドパーム油中のβ-カロテン及びα-カロテンの含有量及びそれらの合計含有量、加熱処理条件、加熱処理後のβ-カロテン及びα-カロテンの残存量及びそれらの合計残存量、加熱処理前後に測定したPOVの値、温度×時間の値をそれぞれ示す。なお、実施例5については、レッドパーム油を120℃で5時間加熱した後、更に80℃で5時間加熱した。
【0049】
【0050】
表3に示すように、加熱処理によりパーム系油脂中に含まれるβ-カロテン及びα-カロテンの含有量が減少し、より長時間加熱したり温度を高くしたりすることにより、パーム系油脂中のβ-カロテン及びα-カロテンのすべてを分解することができた。一方、加熱処理によりPOVの値は上昇した。また、実施例3でのβ-カロテン及びα-カロテンの合計残存量は265質量ppmであったのに対して、実施例5でのβ-カロテン及びα-カロテンの合計残存量は198質量ppmであり、温度×時間の値の増大によりβ-カロテン及びα-カロテンの分解が促進された。また、実施例1、2、4、6にみられるように、温度×時間の値が4000以上でレッドパーム油中のβ-カロテン及びα-カロテンを99%以上分解することができた。
【0051】
<食用油脂組成物の調製>
レッドパーム油を加熱処理することにより調製した、カロテノイド分解物を含む実施例1~6の油脂組成物を菜種油に1質量%含有させて、カロテノイド分解物を酸化処理前の該カロテノイド量に換算した量として1.08~4.57質量ppm含有する食用油脂組成物を調製した。また、加熱処理しない原料レッドパーム油の1つである比較例1についても、対照として菜種油に1質量%含有させて、食用油脂組成物を調製した。
【0052】
<1%ステビア入りヨーグルトの調製と評価>
1質量%ステビアをヨーグルトに含有せしめて高甘味度甘味料入りヨーグルトを作製し(以下、「1%ステビア入りヨーグルト」ともいう)、更に、上記で調製した食用油脂組成物を表4に示す配合で含有させて調製したヨーグルトについて、官能評価を行った。具体的には、得られたヨーグルトを食したときの甘味の質と後味のえぐ味マスキングを、比較例1として加熱処理しない原料レッドパーム油の1つを含有せしめた食用油脂組成物を添加した1%ステビア入りヨーグルトを対照1、グラニュ糖を5%添加したヨーグルトを対照2として、評価した。官能評価は5名の専門パネルで行い、以下の基準で示す0、1、2、3の評点が1cm間隔で6cmの線分上に描かれた評価用紙を使用して行なった。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした以下の基準で点数付けして平均値を求めた。
【0053】
(基準)
(甘味の質)
3 砂糖の甘さに非常に近い(対照2と同等)
2 砂糖の甘さに近い
1 砂糖の甘味とやや近い
0 砂糖の甘味と異なる(対照1と同等)
【0054】
(後味のえぐ味マスキング)
3 後味のえぐ味が対照1に比べて非常に弱い、もしくは無い(対照2と同等)
2 後味のえぐ味が対照1に比べて弱い
1 後味のえぐ味が対照1に比べてやや弱い
0 後味のえぐ味が対照1と同等もしくは強い
【0055】
【0056】
その結果、表4に示すように、比較例1として加熱処理しない原料レッドパーム油の1つを含有せしめた食用油脂組成物に比べ、カロテノイド分解物を含む実施例1~6の油脂組成物を含有せしめた食用油脂組成物により、1%ステビア入りヨーグルトの甘味の質が改善され、後味のえぐ味マスキング効果が得られることが明らかになった。特に、POVの値が17~115を示した実施例1、2、5、6の油脂組成物(表3参照)を含有せしめた食用油脂組成物を含む調製例1-2、1-3、1-6、1-7では、1%ステビア入りヨーグルトの甘味の質の改善効果及び後味のえぐ味マスキング効果が高かった。更に、実施例6の油脂組成物を含有せしめた食用油脂組成物を含む調製例1-7では、甘味の質を改善する効果と後味のえぐ味をマスキングする効果が特に高かった。なお、本官能評価で効果が認められた調製例1-7のヨーグルトに使用した実施例6について、ステビア1質量部に対するカロテノイド分解物の量は、分解前のカロテノイド量に換算して3.7×10-6質量部であった。
【0057】
[試験例2](ヨーグルトでの評価 その2)
表3で調製した実施例2、6の油脂組成物を菜種油に0.1質量%含有せしめて食用油脂組成物を調製し、これを表5に示す配合で1%ステビア入りヨーグルトに含有せしめて試験例1と同様の方法で官能評価を行った。なお、表5に示すとおり、官能評価は3名の専門パネルで行い、試験例1での対照1に替え、表3の比較例1を菜種油に0.1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む調製例2-1の1%ステビア入りヨーグルトを対照1に設定した。
【0058】
【0059】
その結果、表5に示すように、比較例1として加熱処理しない原料レッドパーム油の1つを含有せしめた食用油脂組成物に比べ、カロテノイド分解物を含む実施例2、6の油脂組成物を含有せしめた食用油脂組成物により、1%ステビア入りヨーグルトの甘味の質が改善され、後味のえぐ味マスキング効果が得られた。よって、レッドパーム油を加熱処理することにより調製した、カロテノイド分解物を含む油脂組成物は、その含有量をヨーグルト中10質量ppmまで低減させても、高甘味度甘味料の呈味改善効果を呈することが明らかになった。なお、本官能評価で効果が認められた調製例2-3のヨーグルトに使用した実施例6について、ステビア1質量部に対するカロテノイド分解物の量は、分解前のカロテノイド量に換算して3.7×10-7質量部であった。
【0060】
[試験例3](ヨーグルトでの評価 その3)
<その他高甘味度甘味料入りヨーグルトの調製と評価>
0.5%アセスルファムカリウム、0.1%アスパルテーム、0.05%スクラロース、3.5%シュガーカットをヨーグルトにそれぞれ含有せしめた表6に示すヨーグルトを作製した(以下、「0.5%アセスルファムカリウム入りヨーグルト」、「0.1%アスパルテーム入りヨーグルト」、「0.05%スクラロース入りヨーグルト」、「3.5%シュガーカット入りヨーグルト」ともいう)。表3で調製した実施例2、6の油脂組成物を菜種油に1質量%含有せしめて食用油脂組成物を調製し、これを表6に示す配合でそれぞれの高甘味度甘味料入りヨーグルトに含有せしめて、試験例1と同様の方法で官能評価を行った。なお、表6に示すとおり、官能評価は3名の専門パネルで行い、試験例1での対照1に替え、以下の高甘味度甘味料入りヨーグルトをそれぞれ対照1に設定した;調製例3-1:表3の比較例1を菜種油に1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む0.5%アセスルファムカリウム入りヨーグルト、調製例3-4:表3の比較例1を菜種油に1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む0.1%アスパルテーム入りヨーグルト、調製例3-7:表3の比較例1を菜種油に1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む0.05%スクラロース入りヨーグルト、調製例3-10:表3の比較例1を菜種油に1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む3.5%シュガーカット入りヨーグルト。なお、アセスルファムカリウムを含む調製例3-1~3-3のみ後味のえぐ味の評価を行なった。
【0061】
【0062】
その結果、表6に示すように、カロテノイド分解物を含む食用油脂組成物では、表6に示す高甘味度甘味料入りヨーグルトすべてに対していずれも甘味の質の改善効果があった。また、表6に示す高甘味度甘味料のうち、特にえぐ味の強い0.5%アセスルファムカリウム入りヨーグルトに限っては、後味のえぐ味を評価した。その結果、カロテノイド分解物を含む食用油脂組成物により、後味のえぐ味マスキング効果が得られることが明らかになった。なお、本官能評価で効果が認められた調製例3-3、3-6、3-9のヨーグルトに使用した実施例6について、高甘味度甘味料それぞれ1質量部に対するカロテノイド分解物の量は、分解前のカロテノイド量に換算して、アセスルファムカリウムでは7.4×10-6質量部、アスパルテームでは3.7×10-5質量部、スクラロースでは7.4×10-5質量部であった。
【0063】
[試験例4](コーラでの評価 その1)
<食用粉末油脂の調製>
レッドパーム油を加熱処理することにより調製したカロテノイド分解物を含む実施例6の油脂組成物を用いて、表7に記載の原材料を混合し、噴霧乾燥して、実施例7の食用粉末油脂を得た。また、対照として、実施例6の油脂組成物を用いずに、他は同様にして、比較例2の食用粉末油脂を得た。
【0064】
【0065】
<コーラの調製と評価>
コーラ(キリンビバレッジ株式会社製「キリン メッツ コーラ」)を60℃程度に加熱後、表8に示す配合で、上記で調製した実施例7又は比較例2の粉末油脂を添加して十分に攪拌し、4℃に冷却した。得られた粉末油脂含有コーラを専門パネル2名で甘味の質を評価した。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした以下の基準で点数付けして平均値を求めた。
【0066】
(基準)
(甘味の質)
3 砂糖の甘さに非常に近い
2 砂糖の甘さに近い
1 砂糖の甘味とやや近い
0 砂糖の甘味と異なる(調製例4-1と同等)
【0067】
【0068】
その結果、表8に示すように、比較例2の粉末油脂では効果はみられなかったが、カロテノイド分解物を含む実施例7の粉末油脂により、コーラの甘味の質を改善する効果が得られることが明らかになった。
【0069】
[試験例5](ヨーグルトでの評価 その4)
<カロテノイドを添加した油脂の酸化処理物の調製>
表9に示す菜種油と中鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、「MCT」ともいう)をベース油として使用し、カロテノイドとしてβ-カロテンまたはアスタキサンチンを添加することでその酸化処理物を調製した。具体的には、β-カロテン又はアスタキサンチンを所定含有量(質量ppm)でベース油に添加し、これを撹拌しながら表9に示される各加熱処理条件で加熱処理して、実施例8~13の酸化処理物を得た。なお、表9に示すとおり、実施例9を除き、空気を所定量(0.2L/分)で吹き込みながら加熱処理した。また、加熱処理を行わないベース油の1つを、対照として比較例3とした。また、表9には、使用したベース油、そのベース油中のβ-カロテン又はアスタキサンチンの含有量、加熱処理条件、加熱処理後のβ-カロテン又はアスタキサンチンの残存量、温度×時間の値をそれぞれ示す。実施例8、12、13についてはベース油を120℃で5時間加熱した後、更に80℃で5時間加熱した。
【0070】
【0071】
表9に示すように、加熱処理によりベース油中に含まれるβ-カロテン又はアスタキサンチンの含有量が減少し、より長時間加熱したり温度を高くしたりすることにより、ベース油中のβ-カロテン又はアスタキサンチンのすべてを分解することができた。また、空気吹き込みしない実施例9でもベース油中のβ-カロテンのすべてを分解することができた。
【0072】
<食用油脂組成物の調製>
ベース油にカロテノイドを添加して酸化処理することにより調製した、カロテノイド分解物を含む実施例8~13の油脂組成物を菜種油に1質量%含有させて、カロテノイド分解物を酸化処理前の該カロテノイド量に換算した量として0.3~282.13質量ppm含有する食用油脂組成物を調製した。また、加熱処理しないベース油の1つである比較例3についても、対照として菜種油に1質量%含有させて、食用油脂組成物を調製した。
【0073】
<1%ステビア入りヨーグルトの調製と評価>
1%ステビア入りヨーグルトに、更に、上記で調製した食用油脂組成物を表10に示す配合で含有させて調製したヨーグルトについて、官能評価を行った。具体的には、得られたヨーグルトを食したときの甘味の質と後味のえぐ味マスキングを、加熱処理しないベース油の1つである比較例3を含有せしめた食用油脂組成物を添加した1%ステビア入りヨーグルトを対照1、グラニュ糖を5%添加したヨーグルトを対照2として、評価した。官能評価は4名の専門パネルで行い、以下の基準で示す0、1、2、3の評点が1cm間隔で6cmの線分上に描かれた評価用紙を使用して行なった。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした以下の基準で点数付けして平均値を求めた。
【0074】
(基準)
(甘味の質)
3 砂糖の甘さに非常に近い(対照2と同等)
2 砂糖の甘さに近い
1 砂糖の甘味とやや近い
0 砂糖の甘味と異なる(対照1と同等)
【0075】
(後味のえぐ味マスキング)
3 後味のえぐ味が対照1に比べて非常に弱い、もしくは無い(対照2と同等)
2 後味のえぐ味が対照1に比べて弱い
1 後味のえぐ味が対照1に比べてやや弱い
0 後味のえぐ味が対照1と同等もしくは強い
【0076】
【0077】
その結果、表10に示すように、比較例3を含有せしめた食用油脂組成物に比べ、カロテノイド分解物を含む実施例8~13の油脂組成物を含有せしめた食用油脂組成物により、1%ステビア入りヨーグルトの甘味の質が改善され、後味のえぐ味マスキング効果が得られることが明らかになった。特に、実施例13の油脂組成物を含有せしめた食用油脂組成物を含む調製例5-7では、1%ステビア入りヨーグルトの甘味の質の改善効果及び後味のえぐ味マスキング効果が高かった。なお、本官能評価で効果が認められた調製例5-7のヨーグルトに使用した実施例13について、ステビア1質量部に対するカロテノイド分解物の量は、分解前のカロテノイド量に換算して5.3×10-7質量部であった。
【0078】
[試験例6](ヨーグルトでの評価 その5)
1%ステビア入りヨーグルトに、表9で調製した実施例10、13の油脂組成物を菜種油に0.1質量%含有させて食用油脂組成物を調製し、表11に示す配合で含有せしめて調製したヨーグルトについて、試験例5と同様の方法で官能評価を行った。なお、表11に示すとおり、官能評価は2名の専門パネルで行い、試験例5での対照1に替え、表9の比較例3を菜種油に0.1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む調製例6-1の1%ステビア入りヨーグルトを対照1として設定した。
【0079】
【0080】
その結果、表11に示すように、加熱処理を行わないベース油の1つである比較例3を含有せしめた食用油脂組成物に比べ、カロテノイド分解物を含む実施例10、13の油脂組成物を含有せしめた食用油脂組成物により、1%ステビア入りヨーグルトの甘味の質の改善効果が得られることが明らかになった。なお、本官能評価で効果が認められた調製例6-3のヨーグルトに使用した実施例6について、ステビア1質量部に対するカロテノイド分解物の量は、分解前のカロテノイド量に換算して5.3×10-8質量部であった。
【0081】
[試験例7](ヨーグルトでの評価 その6)
<その他高甘味度甘味料入りヨーグルトでの評価>
0.5%アセスルファムカリウム入りヨーグルト、0.1%アスパルテーム入りヨーグルト、0.05%スクラロース入りヨーグルト、3.5%シュガーカット入りヨーグルトそれぞれに、表9で調製した実施例10、13の油脂組成物を菜種油に1質量%含有せしめて食用油脂組成物を調製して、表12に示す配合で含有せしめて調製したヨーグルトについて、試験例5と同様の方法で官能評価を行った。なお、表12に示すとおり、官能評価は3名の専門パネルで行い、試験例5での対照1に替え、以下の高甘味度甘味料入りヨーグルトをそれぞれ対照1に設定した;調製例7-1:表9の比較例3を菜種油に1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む0.5%アセスルファムカリウム入りヨーグルト、調製例7-4:表9の比較例3を菜種油に1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む0.1%アスパルテーム入りヨーグルト、調製例7-7:表9の比較例3を菜種油に1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む0.05%スクラロース入りヨーグルト、調製例7-10:表9の比較例3を菜種油に1質量%含有させて調製した食用油脂組成物を含む3.5%シュガーカット入りヨーグルト。なお、アセスルファムカリウムを含む調製例7-1~7-3のみ後味のえぐ味の評価を行なった。
【0082】
【0083】
その結果、表12に示すように、カロテノイド分解物を含む食用油脂組成物では、表12に示す高甘味度甘味料入りヨーグルトすべてに対していずれも甘味の質の改善効果があった。また、表12に示す高甘味度甘味料のうち、特にえぐ味の強い0.5%アセスルファムカリウム入りヨーグルトに限っては、後味のえぐ味を評価した。その結果、カロテノイド分解物を含む食用油脂組成物により、後味のえぐ味マスキング効果を呈することが明らかになった。なお、本官能評価で効果が認められた調製例7-3、7-6、7-9のヨーグルトに使用した実施例13について、高甘味度甘味料それぞれ1質量部に対するカロテノイド分解物の量は、分解前のカロテノイド量に換算して、アセスルファムカリウムでは1.1×10-6質量部、アスパルテームでは5.3×10-6質量部、スクラロースでは1.1×10-5質量部であった。
【0084】
[試験例8](高甘味度甘味料を含有する水溶液での評価)
<カロテノイド分解物を含有する水溶液の調製>
レッドパーム油を加熱処理することにより調製したカロテノイド分解物を含む実施例6の油脂組成物を用い、液液抽出により、水溶性のカロテノイド分解物を抽出した。具体的には、実施例6の油脂組成物15mLと水15mLとを50mL容量チューブに入れ、30分間攪拌後、遠心分離により油相と水相とに分離し、油相を取り除いて、水相を回収した。以下、これを実施例14の油脂水抽出物として試験に用いた。
【0085】
<高甘味度甘味料を含有する水溶液の調製と評価>
1%ステビア、0.5%アセスルファムカリウム、0.1%アスパルテーム、0.05%スクラロースを水にそれぞれ含有せしめた表13に示す水溶液を作製した(以下、「1%ステビア入り水溶液」、「0.5%アセスルファムカリウム入り水溶液」、「0.1%アスパルテーム入り水溶液」、「0.05%スクラロース入り水溶液」ともいう)。表13に示す配合で、上記で調製した実施例14の油脂水抽出物を添加して得られた水溶液について、官能評価を行った。具体的には、得られた水溶液を食したときの甘味の質と後味のえぐ味マスキングを、各高甘味度甘味料入り水溶液に油脂水抽出物の替わりに比較例3として水を添加したものを対照1、グラニュ糖を5%添加したものを対照2として、評価した。官能評価は2名の専門パネルで行い、以下の基準で示す0、1、2、3の評点が1cm間隔で6cmの線分上に描かれた評価用紙を使用して行なった。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした以下の基準で点数付けして平均値を求めた。なお、ステビア又はアセスルファムカリウムを含む調製例8-1~8-4のみ後味のえぐ味の評価を行なった。
【0086】
(基準)
(甘味の質)
3 砂糖の甘さに非常に近い(対照2と同等)
2 砂糖の甘さに近い
1 砂糖の甘味とやや近い
0 砂糖の甘味と異なる(対照1と同等)
【0087】
(後味のえぐ味マスキング)
3 後味のえぐ味が対照1に比べて非常に弱い、もしくは無い(対照2と同等)
2 後味のえぐ味が対照1に比べて弱い
1 後味のえぐ味が対照1に比べてやや弱い
0 後味のえぐ味が対照1と同等もしくは強い
【0088】
【0089】
その結果、表13に示すように、比較例3の水のみでは効果はみられなかったが、カロテノイド分解物を含む水溶液の形態である実施例14の油脂水抽出物により、高甘味度甘味料を含有する水溶液の甘味の質を改善する効果が得られることが明らかになった。また、表13に示す高甘味度甘味料のうち、特にえぐ味の強い1%ステビア入り水溶液又は0.5%アセスルファムカリウム入り水溶液に限っては、後味のえぐ味を評価した。その結果、カロテノイド分解物を含む水溶液の形態である実施例14の油脂水抽出物により、後味のえぐ味マスキング効果が得られることが明らかになった。
【0090】
[試験例9](ヨーグルトでの評価 その7)
<カロテノイド分解物を含有する水溶液の粉末化>
試験例8で調製したカロテノイド分解物を含有する水溶液を粉末化した。具体的には、試験例8で調製した水溶液にデキストリンをその濃度が65%(w/w)となるように添加し、60℃でホモジナイザーにて攪拌して加温溶解後、噴霧乾燥した。以下、これを実施例15の油脂水抽出物粉末として試験に用いた。また、対照として、試験例8で調製した水溶液を添加しないでデキストリンのみで噴霧乾燥したものを調製し、以下、比較例4として試験に用いた。
【0091】
<高甘味度甘味料入りヨーグルトでの評価>
1%ステビア入りヨーグルト、0.5%アセスルファムカリウム入りヨーグルト、0.1%アスパルテーム入りヨーグルト、0.05%スクラロース入りヨーグルトそれぞれに、上記で調製した実施例15の油脂水抽出物粉末又は比較例4のデキストリン粉末を、表14に示す配合で含有せしめて調製したヨーグルトについて、試験例1と同様の方法で官能評価を行った。なお、表14に示すとおり、官能評価は2名の専門パネルで行い、試験例1での対照1に替え、以下の高甘味度甘味料入りヨーグルトをそれぞれ対照1に設定した;調製例9-1:比較例4としてデキストリン粉末を含む1%ステビア入りヨーグルト、調製例9-5:比較例4としてデキストリン粉末を含む0.5%アセスルファムカリウム入りヨーグルト、調製例9-9:比較例4としてデキストリン粉末を含む0.1%アスパルテーム入りヨーグルト、調製例9-13:比較例4としてデキストリン粉末を含む0.05%スクラロース入りヨーグルト。また、ステビア又はアセスルファムカリウムを含む調製例9-1~9-8のみ後味のえぐ味の評価を行なった。
【0092】
【0093】
【0094】
その結果、表14に示すように、比較例4のデキストリン粉末のみでは効果はみられなかったが、カロテノイド分解物を含む水溶液を粉末化した形態である実施例15の油脂水抽出物粉末により、高甘味度甘味料を含有するヨーグルトの甘味の質を改善する効果が得られることが明らかになった。また、表14に示す高甘味度甘味料のうち、特にえぐ味の強い1%ステビア入りヨーグルト又は0.5%アセスルファムカリウム入りヨーグルトに限っては、後味のえぐ味を評価した。その結果、カロテノイド分解物を含む水溶液を粉末化した形態である実施例15の油脂水抽出物粉末により、後味のえぐ味マスキング効果が得られることが明らかになった。
【0095】
[試験例10](コーラでの評価 その2)
ゼロカロリーコーラ(サントリーフーズ株式会社社製「ペプシ ジャパンコーラ ゼロ」)に、上記で調製した実施例15の油脂水抽出物粉末又は比較例4のデキストリン粉末を表15に示す配合で添加して十分に攪拌し、4℃に冷却し、試験例4と同様の方法で官能評価を行った。なお、表15に示すとおり、官能評価は2名の専門パネルで行い、試験例4での対照1に替え、比較例4のデキストリン粉末を含む調製例10-1のゼロカロリーコーラを対照1に設定した。
【0096】
【0097】
その結果、表15に示すように、比較例4のデキストリン粉末のみでは効果はみられなかったが、カロテノイド分解物を含む水溶液を粉末化した形態である実施例15の油脂水抽出物粉末により、ゼロカロリーコーラの甘味の質を改善する効果が得られることが明らかになった。
【0098】
[調製例1]
ステビア50gに、レッドパーム油を加熱処理することにより調製したカロテノイド分解物を含む実施例6の油脂組成物を0.5g混合し、高甘味度甘味料組成物を製造した。