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  • 特許-吸収性物品 図1
  • 特許-吸収性物品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20241129BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61F13/511 500
A61F13/53 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022122342
(22)【出願日】2022-07-29
(65)【公開番号】P2024018798
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】木下 章恵
(72)【発明者】
【氏名】菊池 響
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-097953(JP,A)
【文献】特開2004-346130(JP,A)
【文献】特開2001-049249(JP,A)
【文献】特開2021-090676(JP,A)
【文献】特開2014-068681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/53
A61F 13/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿の臭いと色を吸着する吸着剤を含む吸収性物品であって、
前記吸着剤は、L*a*b*表色系のL*値が10以上であり、
孔径1.5~2.0nmの細孔を0.006mL/g以上の容積で有し、且つ
孔径0.3~0.8nmの微細孔を0.050mL/g以上の容積で有し、
前記吸収性物品は、吸収体を含み、
前記吸着剤は、前記吸収体の表面及び内部のうちの少なくとも一方に配置されており、
前記吸収体は、高吸収ポリマーを含む吸収コアを含み、
前記吸着剤は、前記高吸収ポリマーに接触しながら配置されていることを特徴とする、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記吸着剤が粒径500μm以下の複数の粒子からなることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸着剤は、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、合成ゼオライト、合成高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の多孔質物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸着剤は、前記多孔質物質が酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化マグネシム、カオリン及びタルクから選択される少なくとも1種の白色系無機物質によって覆われていることを特徴とする、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記白色系無機物質が複数の粒子であることを特徴とする、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸着剤は、前記吸収性物品の全質量に対して0.1質量%以上の質量割合で含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項7】
吸収性物品において、尿の臭いと色を吸着する吸着剤を尿に接触させることを含む、尿の処理方法であって、
前記吸着剤は、L*a*b*表色系のL*値が10以上であり、
孔径1.5~2.0nmの細孔を0.006mL/g以上の容積で有し、且つ
孔径0.3~0.8nmの微細孔を0.050mL/g以上の容積で有し、
前記吸収性物品は、吸収体を含み、
前記吸着剤は、前記吸収体の表面及び内部のうちの少なくとも一方に配置されており、
前記吸収体は、高吸収ポリマーを含む吸収コアを含み、
前記吸着剤は、前記高吸収ポリマーに接触しながら配置されていることを特徴とする、前記処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失禁パッドや使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の、少なくとも尿を吸収対象とする吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
失禁パッドや使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品は、着用者から排出される尿や便、経血などの排泄物を吸収して保持するために使用されている。そのため、吸収性物品は、排泄物の臭いを低減することが求められている。
【0003】
吸収性物品内の排泄物の臭いを低減する方法の一つとして、活性炭等の物理吸着型消臭剤を用いた吸着法が知られている。例えば、特許文献1には、黒色炭素粒子からなる制臭剤と、白色制臭剤及び白色マスキング物質からなる群から選ばれる白色の粒子と、水溶性又は水分散性バインダー物質と、の凝集混合物からなる、結合粒子の形態の組成物が開示されている。この特許文献1の組成物は、吸収性物品の制臭剤として用いられる。かかる組成物によれば、悪臭分子を吸着するだけでなく、黒色炭素粒子の色を目立たなくすることができる。
【0004】
また、特許文献2には、吸収体を具備する吸収性物品であって、吸収体が、吸水性ポリマーを含有する吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面側に配された内側シートと、該内側シートの肌対向面側に配された外側シートと、を有する吸収性物品が開示されている。この特許文献2の吸収性物品では、内側シートが活性炭粒子を担持して灰色に着色されており、外側シートが灰色に着色されており、さらに、外側シートのL*a*b*表色系におけるL*値が内側シートのL*値よりも大きくなっている。かかる吸収性物品によれば、尿の臭いを抑制するとともに、尿の色を目立ちにくくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表平5-503452号公報
【文献】特開2014-68681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の組成物を用いた吸収性物品では、白色の粒子によって黒色炭素粒子の色を目立たなくすることができても、白色との視覚的なコントラストによって尿の色が目立ってしまい、清潔感に欠ける等の不快感を使用者に与えるおそれがあった。
【0007】
また、特許文献2の吸収性物品では、尿の色を目立ちにくくすることができても、特定の色に着色された内側シートと外側シートとが不可欠であるため、吸収性物品に構造上の制約が生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、構造上の制約が生じにくく、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、L*a*b*表色系のL*値が10以上であり且つ特定孔径の細孔及び微細孔をそれぞれ特定容積以上で有する吸着剤が、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、以下の各態様を含む。
【0010】
(態様1)
本発明の一態様(態様1)は、尿の臭いと色を吸着する吸着剤を含む吸収性物品であって、
上記吸着剤は、L*a*b*表色系のL*値が10以上であり、
孔径1.5~2.0nmの細孔を0.006mL/g以上の容積で有し、且つ
孔径0.3~0.8nmの微細孔を0.050mL/g以上の容積で有することを特徴とする、上記吸収性物品である。
【0011】
本態様1の吸収性物品は、尿の臭いと色を吸着する吸着剤を含む。この吸着剤は、尿の色素成分(例えば、ウロビリン等)を孔径1.5~2.0nmの細孔に吸着保持することができる。そして、この細孔に保持された色素成分は、L*a*b*表色系のL*値が10以上(灰色系~白色系)の色を有する細孔以外の部分(非細孔部)で囲まれて隠蔽されるため、外部から視認されにくくなる。吸着剤は、上記細孔を0.006mL/g以上の容積で有していることで、十分な量の色素成分を吸着保持することができる。
【0012】
さらに、この吸着剤は、尿の臭いの原因となる臭気成分を孔径0.3~0.8nmの微細孔に吸着保持することができる。吸着剤は、上記微細孔を0.050mL/g以上の容積で有していることで、十分な量の臭気成分を吸着保持することができる。
【0013】
以上より、この吸着剤は、該吸着剤以外の他の構成要素(例えば、隠蔽用のシートやマスキング部材等)を要することなく、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。
【0014】
したがって、このような吸着剤を含む本態様1の吸収性物品は、構造上の制約が生じにくい上、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。なお、「白い」ことは清潔感を印象付ける効果が高いため、このような吸収性物品は、使用前において白く使用後においても変わらないという点で、使用者に、清潔感に関してポジティブな印象を与えることができるという利点もある。
【0015】
(態様2)
本発明の別の態様(態様2)では、上記態様1の吸収性物品において、上記吸着剤が粒径500μm以下の複数の粒子からなることを特徴とする。
【0016】
本態様2は、吸着剤が粒径500μm以下の複数の粒子によって構成されている。これにより、本態様2の吸収性物品は、尿が接触し得る吸着剤の表面積が大きく、尿の臭い及び色をより優れた吸着速度で吸着することができる。
【0017】
(態様3)
本発明の更に別の態様(態様3)では、上記態様1又は2の吸収性物品において、上記吸着剤は、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、合成ゼオライト、合成高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の多孔質物質を含むことを特徴とする。
【0018】
上記の多孔質物質は、吸着作用を安定的に発揮することができる上、細孔及び微細孔の孔径を制御しやすいという利点がある。したがって、本態様3の吸収性物品は、尿の臭い及び尿の色をより確実に吸着することができる。
【0019】
(態様4)
本発明の更に別の態様(態様4)では、上記態様3の吸収性物品において、上記吸着剤は、上記多孔質物質が酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化マグネシム、カオリン及びタルクから選択される少なくとも1種の白色系無機物質によって覆われていることを特徴とする。
【0020】
本態様4は、吸着剤が上記多孔質物質と、該多孔質物質を覆う上記白色系無機物質と、によって構成されている。上記の白色系無機物質は、隠蔽力に優れるため、吸着剤の細孔(すなわち、上記多孔質物質の細孔)に保持された色素成分を、外部からより視認されにくくすることができる。これにより、本態様4の吸収性物品は、尿の色をより一層目立ちにくくすることができる。なお、かかる吸収性物品は、より一層使用者に、清潔感に関してポジティブな印象を与えることができるという利点もある。
【0021】
(態様5)
本発明の更に別の態様(態様5)では、上記態様4の吸収性物品において、上記白色系無機物質が複数の粒子であることを特徴とする。
【0022】
本態様5は、多孔質物質を覆う上記白色系無機物質が複数の粒子である。これにより、吸着剤は、臭気成分や色素成分を、白色系無機物質の粒子間の隙間を通って多孔質物質の細孔や微細孔に吸着保持することができる。すなわち、吸着剤は、臭気成分や色素成分の吸着阻害を生ずることなく、多孔質物質の細孔内に吸着保持された色素成分を、外部からより視認されにくくすることができる。したがって、本態様5の吸収性物品は、尿の臭いをより確実に抑制しつつ、尿の色をより一層目立ちにくくすることができる。
【0023】
(態様6)
本発明の更に別の態様(態様6)では、上記態様1~5のいずれかの吸収性物品において、上記吸収性物品は、吸収体を含み、上記吸着剤は、上記吸収体の表面及び内部のうちの少なくとも一方に配置されていることを特徴とする。
【0024】
本態様6の吸収性物品は、吸着剤が尿に接触しやすい位置に配置されているため、当該吸着剤によって、より確実に尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。
【0025】
(態様7)
本発明の更に別の態様(態様7)では、上記態様6の吸収性物品において、上記吸収体は、高吸収ポリマーを含む吸収コアを含み、上記吸着剤は、上記高吸収ポリマーに接触しながら配置されていることを特徴とする。
【0026】
本態様7の吸収性物品は、吸着剤がより一層尿に接触しやすい位置に配置されているため、当該吸着剤によって、更に確実に尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。
【0027】
(態様8)
本発明の更に別の態様(態様8)では、上記態様1~7のいずれかの吸収性物品において、上記吸着剤は、上記吸収性物品の全質量に対して0.1質量%以上の質量割合で含まれていることを特徴とする。
【0028】
本態様8の吸収性物品は、上記吸着剤を所定量以上含むものであるため、当該吸着剤によって、より確実に尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。
【0029】
(態様9)
本発明の更に別の態様(態様9)は、尿の臭いと色を吸着する吸着剤を尿に接触させることを含む、尿の処理方法であって、
上記吸着剤は、L*a*b*表色系のL*値が10以上であり、
孔径1.5~2.0nmの細孔を0.006mL/g以上の容積で有し、且つ
孔径0.3~0.8nmの微細孔を0.050mL/g以上の容積で有することを特徴とする、上記処理方法である。
【0030】
本態様9の尿の処理方法は、尿の臭いと色を吸着する吸着剤を尿に接触させることを含む。この吸着剤は、上述のとおり、他の構成要素を要することなく、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。
【0031】
したがって、このような吸着剤を用いた本態様9の尿の処理方法は、構造上の制約が生じにくく、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができるので、吸収性物品等の尿の処理を必要とする幅広い用途に適用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、構造上の制約が生じにくく、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る失禁パッド1の平面図である。
図2図2は、図1における失禁パッド1のII-II’線に沿った端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
なお、本明細書では、「平坦に展開した状態で水平面上に置いた対象物(例えば、失禁パッド等)を、垂直方向の上方側から(特に、対象物が失禁パッドの場合は表面シート側から)対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」という。
【0036】
また、本明細書では、吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に近位側」を「肌対向面側」という。同様に、吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に遠位側」を「非肌対向面側」という。
【0037】
[失禁パッド]
本発明の吸収性物品の一実施形態は、失禁パッド1である。失禁パッド1は、図1に示すように、平面視にて、長手方向L及び幅方向Wを有し、長手方向Lの両端部が長手方向Lの外方側に向かって円弧状に突出する長円状の外形形状を有している。なお、本発明の吸収性物品の外形形状は、このような態様のものに限定されず、各種用途や使用態様等に応じた任意の形状(例えば、長方形、楕円形、砂時計形など)及びサイズのものを採用することができる。
【0038】
失禁パッド1は、図2に示すように、厚さ方向Tにおいて、肌対向面側に位置する液透過性の表面シート2と、非肌対向面側に位置する液不透過性の裏面シート3と、これらの間に位置する吸液性の吸収体4とを、主な構成部材として備えている。なお、本実施形態では、失禁パッド1は、表面シート2の肌対向面側に位置し且つ幅方向Wの両端部において長手方向Lに延在する一対のサイドシート5、5等を更に備えている。
【0039】
そして、失禁パッド1は、尿の臭いと色を吸着する吸着剤を含んでいる。本実施形態では、吸着剤は、失禁パッド1の吸収体4の内部に配置されている。吸着剤は、L*a*b*表色系のL*値が10以上であり、灰色系から白色系の色を有している。さらに、吸着剤は、孔径1.5~2.0nmの細孔を0.006mL/g以上の容積で有し、且つ孔径0.3~0.8nmの微細孔を0.050mL/g以上の容積で有している。
【0040】
この吸着剤は、失禁パッド1に排出される着用者の尿の色素成分(例えば、ウロビリン等)を、孔径1.5~2.0nmの細孔に吸着保持することができる。そして、この細孔に保持された色素成分は、L*a*b*表色系のL*値が10以上という灰色系から白色系の色を有する細孔以外の部分(非細孔部)によって囲まれて隠蔽されるため、外部から視認されにくい。また、吸着剤は、上記細孔を0.006mL/g以上の容積で有していることで、十分な量の色素成分を吸着保持することができる。
【0041】
さらに、この吸着剤は、尿の臭いの原因となる臭気成分(例えば、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等)を孔径0.3~0.8nmの微細孔に吸着保持することができる。また、吸着剤は、上記微細孔を0.050mL/g以上の容積で有していることで、十分な量の臭気成分を吸着保持することができる。
【0042】
したがって、この吸着剤は、失禁パッド1に吸着剤以外の他の構成要素(例えば、隠蔽用のシートやマスキング部材等)を配置しなくても、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。
【0043】
これにより、かかる吸着剤を含む失禁パッド1は、構造上の制約が生じにくい上、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。なお、「白い」ことは清潔感を印象付ける効果が高いため、このような失禁パッド1は、使用前において白く使用後においても変わらないという点で、使用者に、清潔感に関してポジティブな印象を与えることができるという利点もある。
【0044】
以下、本発明に用いられる、尿の臭いと色を吸着する吸着剤の一実施形態について、更に詳細に説明する。
【0045】
[吸着剤]
本発明の一実施形態では、吸着剤は、尿の臭いと色を吸着する吸着剤であり、L*a*b*表色系のL*値が10以上の色、すなわち灰色系から白色系の色を有している。さらに、この吸着剤は、孔径1.5~2.0nmの細孔を0.006mL/g以上の容積で有し、且つ孔径0.3~0.8nmの微細孔を0.050mL/g以上の容積で有している。吸着剤は、このような外観色、細孔及び微細孔以外の構造については特に限定されない。例えば、吸着剤は、複数の多孔質粒子又は多孔質繊維によって構成されていてもよいし、所定形状を有する多孔質の成形物によって構成されていてもよい。
【0046】
(外観色)
吸着剤の外観色は、L*a*b*表色系のL*値が10以上となる色であれば特に制限されないが、L*値が40以上の色が好ましく、L*値が70以上の色がより好ましく、L*値が80以上の色(白色系の色)が特に好ましい。
【0047】
また、吸着剤が吸収性物品の厚さ方向において表面シートよりも非肌対向面側の位置(例えば、吸収体の表面や内部等)に配置される場合、吸着剤の外観色は、表面シートの肌対向面側の表面のL*値が75以上となるような外観色であることが好ましい。表面シートの肌対向面側の表面のL*値が75以上であると、吸収性物品の使用開始時に、着用者に対して清潔な印象を与えることができる。
【0048】
<L*a*b*表色系のL*値の測定方法>
吸着剤及び表面シートの表面のL*a*b*表色系のL*値は、市販の色彩計を用い、JIS Z 8722に準拠して測定することができる。市販の色彩計としては、例えば、日本電色工業株式会社製の測色色差計ZE6000(標準白板[X=93.19、Y=95.20、Z=112.28]、反射測定径30mm)が挙げられる。なお、L*値の測定は、サンプルごとに5回行い、その平均値を採用する。
【0049】
(細孔)
吸着剤の細孔(孔径1.5~2.0nm)は、0.006mL/g以上の容積であれば、十分に尿の色素成分を吸着保持することができる。但し、尿の色素成分をより確実に吸着保持する観点から、孔径1.5~2.0nmの細孔の容積は、0.008mL/g以上であることが好ましく、0.010mL/g以上であることが更に好ましく、0.040mL/g以上であることが特に好ましい。なお、孔径1.5~2.0nmの細孔の容積の上限は特に制限されないが、製造のしやすさ等の点から、例えば1.5mL/g以下の容積とすることができる。
【0050】
(微細孔)
吸着剤の微細孔(孔径0.3~0.8nm)は、0.050mL/g以上の容積であれば、十分に尿の臭気成分を吸着保持することができる。但し、尿の臭気成分をより確実に吸着保持する観点から、孔径0.3~0.8nmの微細孔の容積は、0.060mL/g以上であることが好ましく、0.070mL/g以上であることが更に好ましく、0.080mL/g以上であることが特に好ましい。なお、孔径0.3~0.8nmの細孔の容積の上限は特に制限されないが、製造のしやすさ等の点から、例えば1.5mL/g以下の容積とすることができる。
【0051】
また、吸着剤は、上記細孔及び微細孔のほかに、孔径4.0~15nmの細孔(大細孔)を更に有していることが好ましい。このような孔径の大細孔は、尿に含まれるタンパク質成分(例えば、アルブミン等)を吸着保持することができる。したがって、このような大細孔を更に有する吸着剤は、尿に含まれる臭気成分だけでなく、タンパク質成分に由来する臭いを根本から除去することができる。
【0052】
<細孔の孔径及び容積の測定方法>
吸着剤の各種細孔の孔径及び容積は、JIS Z 8831-2(粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性-第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法)及びJIS Z 8831-3(粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性-第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法)に従って測定することができる。なお、ガス吸着に用いる吸着質ガスは、測定対象となる細孔の孔径に応じて次のように選択する。すなわち、孔径1.5~2.0nmの細孔及びそれ以上の孔径の細孔を測定する場合はアルゴン(測定範囲0.4~100nm)を使用し、孔径0.3~0.8nmの微細孔を測定する場合は二酸化炭素ガス(測定範囲0.3~1.5nm)を使用する。なお、本測定方法は、市販の全自動ガス吸着量測定装置を用いて実施することができる。
【0053】
上述のとおり、吸着剤は、外観色、細孔及び微細孔以外の構造については特に限定されないが、複数の多孔質粒子によって構成されていることが好ましい。吸着剤が複数の粒子によって構成されていると、一定以上の比表面積を確保しやすく、取り扱いやすさにも優れるという利点がある。
【0054】
(粒径)
吸着剤がこのような複数の粒子からなる場合、吸着剤は、粒径500μm以下の複数の粒子からなることが更に好ましい。吸着剤が粒径500μm以下の複数の粒子によって構成されていると、尿が接触し得る吸着剤の表面積が大きく、尿の臭い及び色をより優れた吸着速度で吸着することができる。
【0055】
なお、吸着剤の粒径は、200μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましく、50μm以下が特に好ましい。吸着剤の粒径の下限は特に制限されないが、取り扱いやすさ等の点から、例えば0.1μm以上であり、好ましくは0.5μm以上である。
【0056】
<粒径の測定方法>
吸着剤の粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所社製、LA-920)を用いて、例えば以下のような所定の条件下で測定することができる。
・測定セル :フローセル
・粒子径基準:体積
・分散媒体 :90質量%のエタノール水溶液
・透過率 :70~90%
・試料濃度 :0.1%
【0057】
(構成材料)
吸着剤を構成する材料は、孔径1.5~2.0nmの細孔を0.006mL/g以上の容積で有し、且つ孔径0.3~0.8nmの微細孔を0.050mL/g以上の容積で有するものであれば特に制限されず、任意の多孔質物質を用いることができる。そのような多孔質物質としては、例えば、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、酸性白土、合成ゼオライト、多孔質の合成高分子などの多孔質物質が挙げられる。
【0058】
吸着剤に用い得る活性炭としては、特に限定されないが、例えば、薬品賦活活性炭、水蒸気賦活活性炭などが挙げられる。さらに、薬品賦活活性炭としては、例えば、塩化亜鉛賦活活性炭、リン酸賦活活性炭などが挙げられる。
【0059】
吸着剤に用い得る合成高分子としては、特に限定されないが、例えば、2,6-ジフェニル-p-フェニレンオキシド系ポリマー、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体などの合成高分子が挙げられる。
【0060】
上記の多孔質物質の中でも、吸着剤は、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、合成ゼオライト、合成高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の多孔質物質を含んでいることが好ましい。これらの多孔質物質は、吸着作用を安定的に発揮することができる上、上述の細孔及び微細孔の孔径を制御しやすいという利点がある。したがって、このような吸着剤を含む吸収性物品は、尿の臭い及び尿の色をより確実に吸着することができる。なお、上記多孔質物質は、汎用性や細孔の孔径制御のしやすさ等の点から、活性炭であることが更に好ましい。
【0061】
また、孔径1.5~2.0nmの細孔を0.006mL/g以上の容積で有し、且つ孔径0.3~0.8nmの微細孔を0.050mL/g以上の容積で有する多孔質物質の製造方法は、特に制限されない。例えば、このような細孔及び微細孔を有する活性炭は、植物由来原料等の原料を800℃~1400℃の温度で炭素化する炭素化工程と、炭素化した活性炭前駆体を酸(例えば、フッ化水素、フッ化水素酸等のフッ素化合物など)又はアルカリ(例えば、水酸化ナトリウムなど)で処理する工程と、酸素や水蒸気等のガスを賦活剤として用いた加熱処理又は塩化亜鉛、リン酸、硫酸等の薬品を賦活剤として用いた薬品処理により賦活化する賦活処理工程と、を含む活性炭の製造方法において、原料の種類や炭素化温度、賦活処理条件等の各種製造条件を適宜選択して細孔の孔径及び容積を制御することにより、得ることができる。
【0062】
なお、活性炭の原料として用い得る植物由来原料は、特に制限されず、例えば、米や小麦、大麦、稗、粟、藁、籾殻、ヤシ殻、茎わかめ、針葉樹、維管束植物、シダ植物、苔植物、藻類、海草類などの植物が挙げられる。これらの植物由来原料は単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。
【0063】
上述の細孔及び微細孔を有すること以外の多孔質物質の構造は特に制限されず、多孔質物質は、粉状や粒状、顆粒状等の粒子状構造を有していても、繊維状構造を有していてもよい。
【0064】
また、吸着剤の外観色をL*a*b*表色系のL*値が10以上となる色にする手段は、特に制限されない。例えば、活性炭等の多孔質物質の表面を白色系無機物質で覆うことにより、吸着剤のL*値が10以上となるように調整してもよいし、白色系の色を有する多孔質物質のみを用いて吸着剤を形成することにより、吸着剤のL*値が10以上なるように調整してもよい。なお、白色系の色を有する多孔質物質としては、例えば、合成ゼオライトや酸性白土などが挙げられる。
【0065】
本実施形態においては、吸着剤は、上記多孔質物質が酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化マグネシム、カオリン及びタルクから選択される少なくとも1種の白色系無機物質によって覆われていることが好ましい。これらの白色系無機物質は隠蔽力に優れるため、吸着剤が上記多孔質物質と、該多孔質物質を覆う白色系無機物質と、によって構成されていると、多孔質物質の細孔に吸着保持された尿の色素成分を、外部から更に視認されにくくすることができる。なお、このような吸着剤を含む吸収性物品は、より一層使用者に、清潔感に関してポジティブな印象を与えることができるという利点もある。
【0066】
上記白色系無機物質は、複数の粒子であることが更に好ましい。吸着剤が上記多孔質物質と、該多孔質物質を覆う複数の白色系無機物質粒子と、によって構成されていると、尿の臭気成分や色素成分を、白色系無機物質の粒子間の隙間を通って多孔質物質の細孔や微細孔に吸着保持することができる。すなわち、吸着剤は、尿の臭気成分や色素成分の吸着阻害を生ずることなく、多孔質物質の細孔内に吸着保持された色素成分を、外部からより視認されにくくすることができる。したがって、このような吸着剤を含む吸収性物品は、尿の臭いをより確実に抑制しつつ、尿の色をより一層目立ちにくくすることができる。
【0067】
ここで、多孔質物質の表面を白色系無機物質で覆う手段は特に制限されず、例えば、多孔質物質の表面に、任意のバインダー等の接着手段を介して白色系無機物質を付着させてもよい。
【0068】
(配置位置)
このようにして構成される吸着剤は、吸収性物品の任意の位置に配置することができる。例えば、吸着剤は、裏面シートよりも肌対向面側の位置に配置することができる。具体的には、吸着剤は、吸収性物品の表面シートの表面及び/又は内部に配置されていてもよいし、表面シートと吸収体との間に配置される中間シートの表面及び/又は内部に配置されていてもよい。あるいは、吸着剤は、吸収体の表面及び内部のうちの少なくとも一方に配置されていてもよい。さらに、その場合、吸着剤は、吸収体を構成する吸収コア及びコアラップシートのうちの少なくとも一方の表面及び/又は内部に配置されていてもよい。
【0069】
これらの配置位置の中でも、吸着剤は、吸収体の表面及び内部のうちの少なくとも一方に配置されていることが好ましい。吸着剤がこのような尿に接触しやすい位置に配置されていると、当該吸着剤によって、より確実に尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。
【0070】
(含有量)
吸着剤を吸収性物品に配置する際の吸着剤の含有量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されないが、吸着剤は、吸収性物品の全質量に対して0.1質量%以上の質量割合で含まれていることが好ましい。吸着剤がこのような質量割合で吸収性物品に含まれていると、当該吸着剤によって、より確実に尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。
【0071】
なお、吸着剤は、吸収性物品の全質量に対して0.5質量%以上の質量割合で含まれていることが更に好ましく、1.0質量%以上の質量割合で含まれていることが特に好ましい。吸着剤の含有量の上限は特に制限されず、例えば吸着剤は、吸収性物品の全質量に対して15質量%以下の質量割合で含むことができる。なお、吸着剤の質量割合は、次のようにして測定することができる。
【0072】
<吸着剤の質量割合の測定方法>
(1)吸収性物品から吸着剤が配置された構成部材(例えば、吸収体の吸収コアやコアラップシート等)を取り出す。
(2)取り出した構成部材から、物理的手段(例えば、振動手段等)及び/又は化学的手段(例えば、バインダー成分を溶解し得る溶剤等)を用いて吸着剤を回収する。このとき、吸着剤以外の異物(例えば、繊維断片等)が混在している場合は、顕微鏡や簡易ルーペ等の拡大観察手段を使用しながら、ピンセット等を用いて異物を取り除き、吸着剤のみを回収する。
(3)回収した吸着剤の質量(g)を測定した後、これを吸収性物品の全質量(g)で除して100を乗ずることにより、吸着剤の質量割合(%)を算出することができる。
【0073】
以下、本発明の吸収性物品の各種構成部材について、上述の実施形態の失禁パッド1を用いて詳細に説明する。なお、吸収性物品の構成部材は、吸収性物品の種類や使用態様等に応じて異なるため、以下に説明する各種構成部材は、吸収性物品にとって必ずしも不可欠な構成部材ではない。
【0074】
(表面シート)
上述の失禁パッド1では、表面シート2は、図1に示すように、平面視にて、失禁パッド1の長手方向Lの前方側端縁から後方側端縁まで延在し、且つ失禁パッド1の幅方向Wの一方側端縁近傍から他方側端縁近傍まで延在する、縦長の外形形状を有している。表面シート2は、図2に示すように、失禁パッド1の厚さ方向Tにおいて肌対向面側の位置に配置されて、着用者の肌に当接し得る接触面を形成する、液透過性のシート状部材によって構成されている。液透過性のシート状部材としては、例えば、エアスルー不織布などが挙げられる。
【0075】
表面シート2の外形形状や各種寸法、坪量等は特に制限されず、所望の液透過性や肌触り、柔軟性、強度等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0076】
なお、上述のL*a*b*表色系のL*値が10以上であり、且つ上記特定の細孔及び微細孔を有する吸着剤は、表面シート2の肌対向面側及び/又は非肌対向面側の表面に配置されていてもよく、表面シート2の内部に配置されていてもよい。
【0077】
(裏面シート)
上述の失禁パッド1では、裏面シート3は、平面視にて、失禁パッド1の長手方向Lの前方側端縁から後方側端縁まで延在し、且つ失禁パッド1の幅方向Wの一方側端縁から他方側端縁まで延在する、縦長の外形形状を有している。裏面シート3は、図2に示すように、失禁パッド1の厚さ方向Tにおいて非肌対向面側の位置に配置されて、吸収体4を透過してきた尿などの排泄物が失禁パッド1の外部へ漏出するのを防ぐ、液不透過性のシート状部材によって構成されている。液不透過性のシート状部材としては、例えば、樹脂フィルムやSMS不織布などが挙げられる。
【0078】
裏面シート3の外形形状や各種寸法、坪量等は特に制限されず、所望の防漏性能や通気性、強度等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0079】
なお、上述のL*a*b*表色系のL*値が10以上であり、且つ上記特定の細孔及び微細孔を有する吸着剤は、裏面シート3の肌対向面側の表面及び/又は内部に配置されていてもよい。
【0080】
上述の失禁パッド1では、裏面シート3の非肌対向面側の表面に、失禁パッド1を着用者の下着の内面に粘着固定するための粘着部が配置されていてもよい。また、裏面シート3と吸収体4との間の位置に、液不透過性の防漏シートを更に備えていてもよい。なお、防漏シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の任意の熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0081】
(吸収体)
上述の失禁パッド1では、吸収体4は、図1に示すように、平面視にて、失禁パッド1の長手方向Lの一方側端縁近傍から他方側端縁近傍まで延在し、且つ失禁パッド1の幅方向Wの一方側端縁近傍から他方側端縁近傍まで延在する、縦長の外形形状を有している。より具体的には、吸収体4は、平面視にて、長手方向Lの中央部分が幅方向Wの内方側に向かって括れた、略瓢箪形の縦長の外形形状を有している。
【0082】
吸収体4は、図2に示すように、失禁パッド1の厚さ方向Tにおいて表面シート2と裏面シート3との間に配置されて、表面シート2を透過してきた尿などの排泄物を吸収して保持し得る、所定の吸水性部材によって構成されている。具体的には、吸収体4は、吸水性材料によって構成された吸収コアと、該吸収コアを包み込む、親水性の繊維シートからなるコアラップシートと、によって構成されている。
【0083】
吸収コアを構成する吸水性材料は、尿などの排泄物を吸収して保持し得るものであれば特に制限されず、当分野において公知の吸水性材料を用いることができる。そのような吸水性材料としては、例えば、高吸収ポリマーや親水性繊維などが挙げられる。
【0084】
高吸収ポリマーとしては、当分野において公知のアクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収ポリマーからなる粉状物又は粒状物、いわゆるSAP(Super Absorbent Polymer)と称されるものが挙げられる。高吸収ポリマーの具体的な例としては、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸ナトリウムの重合物又は共重合物が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0085】
一方、親水性繊維の具体的な例としては、パルプ繊維、コットン、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維などが挙げられる。
【0086】
なお、吸収コアは、高吸収ポリマー又は親水性繊維のいずれか一方のみを含むものであっても、高吸収ポリマー及び親水性繊維の両方を含むものであってもよい。
【0087】
上述の失禁パッド1では、吸収体4は、高吸収ポリマーを含む吸収コアと、親水性の繊維シートからなるコアラップシートと、によって構成されている。そして、上述のL*a*b*表色系のL*値が10以上であり、且つ上記特定の細孔及び微細孔を有する吸着剤が、吸収体4の内部に配置されている。より具体的には、吸着剤は、吸収コア内において、高吸収ポリマーとともに分散して配置されている。すなわち、上記吸着剤は、高吸収ポリマーに接触しながら配置されている。このように、吸着剤が、特に尿に接触しやすい位置に配置されていると、当該吸着剤によって、更に確実に尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができる。
【0088】
なお、吸着剤は、吸収コアの表面部分に配置されていてもよく、吸収コアと接触し得るコアラップシートの内側の表面に配置されていてもよい。さらに、吸着剤は、コアラップシートの外側の表面(特に、肌対向面側の表面)に配置されていてもよく、コアラップシートの内部に配置されていてもよい。
【0089】
コアラップシートを構成する親水性の繊維シートは、尿などの排泄物が透過し得るものであれば特に制限されず、当分野において公知の親水性の繊維シートを用いることができる。そのような親水性の繊維シートとしては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプを主原料として形成された、坪量が10.0g/m~20.0g/m程度のティッシュなどが挙げられる。
【0090】
吸収体4の外形形状や各種寸法、坪量等は特に制限されず、所望の吸水性や柔軟性、強度等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0091】
(サイドシート)
上述の失禁パッド1では、一対のサイドシート5、5は、図1に示すように、平面視にて、失禁パッド1の幅方向Wの両端部においてそれぞれ長手方向Lに延在する、一対の帯状の外形形状を有している。一対のサイドシート5、5は、図2に示すように、失禁パッド1の厚さ方向Tにおいて、表面シート2の肌対向面側の位置に配置されている。そして、一対のサイドシート5、5の各々は、幅方向Wの外方側の端部が裏面シート3の肌対向面側の表面に接合されて固定端部を形成している一方、幅方向Wの内方側の端部がいずれの構成部材とも接合されておらず、自由端部を形成している。
【0092】
一対のサイドシート5、5の各々は、着用時に失禁パッド1が長手方向Lに湾曲するように変形することで、自由端部である幅方向Wの内方側の端部が起立し、尿などの排泄物の漏洩を防止するための一対の防漏壁部を形成することができる。一対のサイドシート5、5は、親水性又は疎水性のシート状部材によって形成することができる。親水性又は疎水性のシート状部材としては、例えば、親水性又は疎水性の不織布、樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0093】
一対のサイドシート5、5の各々の外形形状や各種寸法、坪量等は特に制限されず、所望の防漏性能等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0094】
なお、上述のL*a*b*表色系のL*値が10以上であり、且つ上記特定の細孔及び微細孔を有する吸着剤は、一対のサイドシート5,5の肌対向面側及び/又は非肌対向面側の表面に配置されていてもよく、一対のサイドシート5,5の内部に配置されていてもよい。
【0095】
(用途)
本発明は、上述の実施形態の失禁パッドのほかに、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、吸収パッドなどの様々な吸収性物品に適用することができる。
【0096】
また、本発明の適用範囲は吸収性物品に限定されない。本発明は、尿の処理を必要とする幅広い用途に適用が可能である。
【0097】
[処理方法]
本発明の別の実施形態は、尿の臭いと色を吸着する吸着剤を尿に接触させることを含む、尿の処理方法である。本実施形態でも、吸着剤は、L*a*b*表色系のL*値が10以上であり、さらに、孔径1.5~2.0nmの細孔を0.006mL/g以上の容積で有し、且つ孔径0.3~0.8nmの微細孔を0.050mL/g以上の容積で有している。
【0098】
本実施形態の尿の処理方法は、尿の臭いと色を吸着する吸着剤を尿に接触させることを含むものであり、吸着剤は、上述のとおり、他の構成要素を要することなく、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができるものである。したがって、このような吸着剤を用いた本実施形態の尿の処理方法は、構造上の制約が生じにくく、尿の臭いを抑制し且つ尿の色を目立ちにくくすることができるので、吸収性物品等の尿の処理を必要とする幅広い用途に適用することができる。
【0099】
なお、本発明は、上述の各実施形態や以下の実施例等に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。
【実施例
【0100】
以下、実施例及び比較例を例示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
多孔質物質として活性炭(薬品賦活活性炭、大阪ガスケミカル株式会社製、品番:強力白鷲、原材料:針葉樹、粒径(メジアン径):52μm)0.9gと、白色系無機物質として酸化チタン(粒径:0.25μm)5.4gと、バインダー成分(45%アクリル酸アルキル共重合体液0.05g、カルボキシメチルセルロース(CMC)0.01g及び水1.25gの混合物)1.31gと、を混合した後、混合物を115℃で2時間乾燥した。次いで、乾燥後の混合物を粉砕機にて粉砕することにより、活性炭粒子の表面が複数の酸化チタン粒子によって覆われてなる、実施例1の吸着剤を得た。
【0102】
(実施例2)
多孔質物質として各種細孔の容積等が異なる活性炭(水蒸気賦活活性炭、大阪ガスケミカル株式会社製、品番:白鷲M、原材料:針葉樹、粒径(メジアン径):45μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の吸着剤を得た。
【0103】
(実施例3)
多孔質物質として各種細孔の容積や原材料等が異なる多孔質カーボン素材(市販品(業務用)、原材料:籾殻、粒径:10μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の吸着剤を得た。
【0104】
(実施例4)
多孔質物質として各種細孔の容積や原材料等が異なる多孔質カーボン素材(市販品(業務用)、原材料:籾殻、粒径:80μm以下)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の吸着剤を得た。
【0105】
(実施例5)
多孔質物質として各種細孔の容積や原材料等が異なる多孔質カーボン素材(市販品(業務用)、原材料:籾殻、粒径:200~500μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の吸着剤を得た。
【0106】
(比較例1)
多孔質物質として各種細孔の容積や原材料等が異なる活性炭(水蒸気賦活活性炭、大阪ガスケミカル株式会社製、品番:白鷲WP、原材料:ヤシ殻、粒径(メジアン径):25μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の吸着剤を得た。
【0107】
実施例1~5及び比較例1の製造に用いた各種多孔質物質の、孔径1.5~2.0nmの細孔及び孔径0.3~0.8nmの微細孔の各容積を、Anton Paar社製 全自動ガス吸着量測定装置(AS-iQ-C)を用い、定容法で測定した。これらの測定結果を下記の表1に示す。
【0108】
また、実施例1~5及び比較例1の各吸着剤のL*a*b*表色系のL*値を上述の<L*a*b*表色系のL*値の測定方法>に従って測定し、さらに、各吸着剤の尿色及び尿臭の吸着評価を以下の<尿色吸着評価及び尿臭吸着評価方法>に従って実施した。これらの測定結果及び評価結果を下記の表1に示す。
【0109】
<尿色吸着評価及び尿臭評価方法>
(1)所定容積(例えば、50mL)のサンプル瓶に、評価対象の吸着剤0.2gを入れ、実際の成人の尿30mLを加えて、吸着剤を尿に浸漬する。
(2)サンプル瓶の蓋を閉めて密閉状態とし、そのまま15時間放置する。
(3)15時間経過後、サンプル瓶の蓋を開けて、内容物の臭いを嗅ぎ、尿臭の強度を官能評価する。なお、官能評価にあたっては、尿臭をほとんど認識できない場合を「良好」(記号「〇」で表す。)と判定し、尿臭を明確に認識できる場合を「不良」(記号「×」で表す。)と判定する。
(4)上記(3)の15時間経過後の内容物をろ過して、吸着剤とろ液を分ける。
(5)ろ液から所定量を石英セルに入れ、その石英セルの背面に標準白板を設置し、色彩計(コニカミノルタ社製 色彩色差計CR-400、標準白板[Y=93.0、x=0.3139、y=0.3202]、測定径/照明径=φ8/φ11mm)を用いて、ろ液のL*a*b*表色系のb*値を測定する。この測定したb*値を「吸着後のb*値」として記録する。
(6)ブランクとして、吸着剤を浸漬していない上記尿のL*a*b*表色系のb*値を、上記(5)の手順と同様にして測定する。この測定したb*値を「吸着前のb*値」として記録する。
(7)次式に基づいて、評価対象の吸着剤のb*値減少率(%)を算出し、これを「色素吸着率(%)」として記録する。
b*値減少率(%)=(吸着前のb*値-吸着後のb*値)/吸着前のb*値×100
(8)得られた色素吸着率から、尿色の減少の程度を次の判定基準に基づいて判定する。
◎(優良):色素吸着率が80%を超える
〇(良好):色素吸着率が80%以下且つ50%を超える
×(不良):色素吸着率が50%以下
【0110】
【表1】
【0111】
表1に示すように、本発明の実施例1~5の各吸着剤は、いずれも尿の色と臭いを良好に吸着できることがわかった。一方、比較例1の吸着剤は、尿の色を十分に吸着できないことがわかった。
【符号の説明】
【0112】
1 失禁パッド
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 サイドシート
図1
図2