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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】洗浄液、半導体基板の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241129BHJP
   C11D 7/18 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 7/08 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 7/36 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20241129BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
H01L21/304 647B
C11D7/18
C11D7/08
C11D7/32
C11D7/26
C11D7/36
C11D3/04
C11D3/30
C11D3/20
C11D3/36
C11D7/22
C11D3/37
C11D17/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022521815
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016639
(87)【国際公開番号】W WO2021230063
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2020086035
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/138814(WO,A1)
【文献】特開2014-093407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 7/18
C11D 7/08
C11D 7/32
C11D 7/26
C11D 7/36
C11D 3/04
C11D 3/30
C11D 3/20
C11D 3/36
C11D 7/22
C11D 3/37
C11D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨処理が施された、Ru含有物及びRuO 含有物を含む半導体基板用の洗浄液であって、
過ハロゲン酸と、ハロゲン酸とを含み、
前記ハロゲン酸の含有量に対する前記過ハロゲン酸の含有量の質量比の値が、0.00001~0.9である、洗浄液。
【請求項2】
前記洗浄液のpH値が2.0~12.0である、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
前記ハロゲン酸の含有量に対する前記過ハロゲン酸の含有量の質量比の値が、0.00001~0.25である、請求項1又は2に記載の洗浄液。
【請求項4】
有機塩基化合物を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項5】
前記有機塩基化合物が、式(1)で表される第1のアミン化合物、第4級アンモニウム化合物、及び第4級ホスホニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載の洗浄液。
【化1】
式(1)中、R、R、及びRはいずれも有機基を表す。R、R、及びRのうち複数が互いに結合して置換基を有してもよい非芳香環を形成してもよい。
【請求項6】
有機酸を更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項7】
前記有機酸が、カルボキシル基及びホスホン酸基からなる群より選択される少なくとも1種を有する、請求項6に記載の洗浄液。
【請求項8】
防食剤、界面活性剤、重量平均分子量500以上2000未満の重合体A、及び重量平均分子量2000以上の重合体Bからなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項9】
防食剤を更に含み、
前記防食剤がヘテロ環式化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項10】
前記防食剤が、テトラゾール化合物、トリアゾール化合物、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項9に記載の洗浄液。
【請求項11】
界面活性剤を更に含み、
前記界面活性剤が、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤である、請求項1~10のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項12】
分子量2000以上の重合体Bを更に含み、
前記重合体Bが、カルボキシル基又は酸無水物基を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の洗浄液を用いて、化学機械研磨処理が施された、Ru含有物及びRuO 含有物を含む半導体基板を洗浄する工程を含む、半導体基板の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液、及び半導体基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、金属配線膜、バリアメタル、及び絶縁膜等を有する基板表面を、研磨微粒子(例えば、シリカ及びアルミナ等)を含む研磨スラリーを用いて平坦化する化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことがある。CMP処理では、CMP処理で使用する研磨微粒子、研磨された配線金属膜、及び/又はバリアメタル等に由来する金属成分が、研磨後の半導体基板表面に残存しやすい。
これらの残渣物は、配線間を短絡し、半導体の電気的な特性に影響を及ぼし得ることから、半導体基板の表面からこれらの残渣物を除去する洗浄工程が一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Ru金属に対するエッチング処理用の処理液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-240985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、更なる半導体の高集積化及び高速化等に向けて、Ru配線を有する半導体基板について検討されている。Ru配線を有する半導体基板の製造工程において、CMP後の洗浄の際に、RuOを選択的に除去できることが求められている。具体的には、CMP後の洗浄工程における洗浄液について、最終的に配線となるRuの除去速度を抑制しつつ、CMPの際にRu表面上に形成されるRuOの除去速度を維持又は向上させることが望ましい。つまり、Ruの除去速度に対するRuOの除去速度の速度比の値が高いことが求められている。以後、Ruの除去速度に対するRuOの除去速度の速度比を、RuOの除去性能の選択性ともいう。
【0006】
一方で、本発明者は、Ruを含む半導体基板に対して、特許文献1に記載のエッチング処理用の処理液について検討したところ、CMP後の洗浄工程におけるRuOの除去性能の選択性について、更なる改善の余地があることを知見した。
【0007】
本発明は、CMPが施された半導体基板用の洗浄液であって、RuOの除去性能の選択性に優れた洗浄液を提供することを課題とする。
また、本発明は、CMPが施された半導体基板の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
〔1〕
化学機械研磨処理が施された半導体基板用の洗浄液であって、
過ハロゲン酸と、ハロゲン酸とを含む、洗浄液。
〔2〕
洗浄液のpH値が2.0~12.0である、〔1〕に記載の洗浄液。
〔3〕
ハロゲン酸の含有量に対する過ハロゲン酸の含有量の質量比の値が、0.00001~50である、〔1〕又は〔2〕に記載の洗浄液。
〔4〕
有機塩基化合物を更に含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の洗浄液。
〔5〕
有機塩基化合物が、後述する式(1)で表される第1のアミン化合物、第4級アンモニウム化合物、及び第4級ホスホニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔4〕に記載の洗浄液。
〔6〕
有機酸を更に含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の洗浄液。
〔7〕
有機酸がカルボキシル基及びホスホン酸基からなる群より選択される少なくとも1種を有する、〔6〕に記載の洗浄液。
〔8〕
防食剤、界面活性剤、重量平均分子量500以上2000未満の重合体A、及び重量平均分子量2000以上の重合体Bからなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の洗浄液。
〔9〕
防食剤を更に含み、
防食剤がヘテロ環式化合物である、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の洗浄液。
〔10〕
防食剤が、テトラゾール化合物、トリアゾール化合物、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔9〕に記載の洗浄液。
〔11〕
界面活性剤を更に含み、
界面活性剤が、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤である、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の洗浄液。
〔12〕
分子量2000以上の重合体Bを更に含み、
重合体Bが、カルボキシル基又は酸無水物基を有する、〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の洗浄液。
〔13〕
〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の洗浄液を用いて、化学機械研磨処理が施された半導体基板を洗浄する工程を含む、半導体基板の洗浄方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、CMPが施された半導体基板用の洗浄液であって、RuOの除去性能の選択性に優れた洗浄液を提供できる。
また、本発明によれば、CMPが施された半導体基板の洗浄方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態の一例を説明する。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本明細書において、ある成分が2種以上存在する場合、その成分の「含有量」は、それら2種以上の成分の合計含有量を意味する。
本明細書において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味する。
本明細書に記載の化合物において、特に制限されない場合は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)、光学異性体、及び同位体が含まれていてもよい。また、異性体及び同位体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0013】
本明細書においてpsiとは、pound-force per square inch;重量ポンド毎平方インチを意図し、1psi=6894.76Paを意図する。
【0014】
本発明の洗浄液(以下、単に「洗浄液」とも記載する。)は、化学機械研磨処理(CMP)が施された半導体基板用の洗浄液であって、過ハロゲン酸と、ハロゲン酸とを含む洗浄液である。
【0015】
本発明者は、洗浄液が、過ハロゲン酸と、ハロゲン酸とを含むことにより、CMPが施されたRuを含む半導体基板の洗浄工程に使用される洗浄液において、RuOの除去性能の選択性(以下「本発明の効果」とも記載する)が向上することを知見し、本発明を完成させた。
【0016】
このような洗浄液により本発明の効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、過ハロゲン酸と、ハロゲン酸とを含むことで、過ハロゲン酸がRuOの除去性能を向上させ、かつ、ハロゲン酸によってRuの除去性能が抑制されることで、RuOの高い選択性が発現すると、推測している。
【0017】
[洗浄液]
洗浄液は、過ハロゲン酸と、ハロゲン酸とを含む。
以下、洗浄液に含まれる各成分について、説明する。
【0018】
〔過ハロゲン酸〕
本発明の洗浄液は、過ハロゲン酸を含む。
過ハロゲン酸とは、ハロゲン原子を含む過酸化物を意味する。
過ハロゲン酸としては、例えば、過ヨウ素酸、過塩素酸、過臭素酸、及びこれらの塩が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、過ハロゲン酸としては、過ヨウ素酸又は過塩素酸が好ましく、過ヨウ素酸がより好ましい。
【0019】
過ヨウ素酸としては、特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、オルト過ヨウ素酸(HIO)、メタ過ヨウ素酸(HIO)、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、オルト過ヨウ素酸又はメタ過ヨウ素酸がより好ましい。ナトリウム(Na)等のアルカリ金属を含まない点、及び組成が安定している点から、オルト過ヨウ素酸が更に好ましい。
【0020】
過ハロゲン酸の塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩が挙げられる。
【0021】
過ハロゲン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
過ハロゲン酸の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液の全質量に対して、0.00001~5質量%が好ましく、0.0001~3質量%がより好ましく、0.0001~2.5質量%が更に好ましい。
また、過ハロゲン酸の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.0001~80質量%が好ましく、0.001~75質量%がより好ましく、0.001~70質量%が更に好ましい。
なお、上記洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量とは、洗浄液中の水などの溶媒以外の成分(例えば、過ハロゲン酸、および、ハロゲン酸など)の質量の合計を意味する。
【0022】
〔ハロゲン酸〕
本発明の洗浄液は、ハロゲン酸を含む。
ハロゲン酸とは、上述した過ハロゲン酸より酸素原子が1個少ないハロゲン原子を含む酸化物を意味する。つまり、ハロゲン酸は過ハロゲン酸及び次亜ハロゲン酸を含まない。
【0023】
ハロゲン酸としては、例えば、ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、及びこれらの塩が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、ハロゲン酸としては、ヨウ素酸又は塩素酸が好ましく、ヨウ素酸がより好ましい。
【0024】
ハロゲン酸の塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等のアルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0025】
ハロゲン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ハロゲン酸の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液の全質量に対して、0.0005~4.5質量%が好ましく、0.05~4.5質量%がより好ましく、3~4.5量%が更に好ましい。
また、ハロゲン酸の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.01~99.99質量%が好ましく、1.0~85質量%がより好ましく、40~85量%が更に好ましい。
【0026】
ハロゲン酸の含有量に対する過ハロゲン酸の含有量の質量比〔過ハロゲン酸の含有量/ハロゲン酸の含有量〕の値は、0.00001~5000が好ましく、0.00001~50がより好ましく、0.00001~0.9が更に好ましく、0.0001~0.9が特に好ましく、0.0003~0.5が最も好ましい。
【0027】
〔pH値〕
洗浄液のpH値は、25℃において、1~14が好ましい。
なかでも、pH値は、本発明の効果がより優れる点で、2.0~12.0が好ましく、4.0~12.0がより好ましい。
洗浄液のpH値は、後述するpH調整剤、有機塩基化合物、有機酸、防食剤、及び界面活性剤等のpH調整剤の機能を有する成分を使用することにより、調整できる。
なお、洗浄液のpH値は、公知のpHメーターを用いて、JIS Z8802-1984に準拠した方法により測定できる。
後述するように、洗浄液が希釈されて使用される場合には、希釈時のpHが上記範囲内であることが好ましい。
【0028】
〔任意成分〕
洗浄液は、上述した成分以外に、他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、有機塩基化合物、有機酸、防食剤、界面活性剤、pH調整剤、各種添加剤、及び水が挙げられる。
洗浄液は、有機塩基化合物、有機酸、界面活性剤(より好ましくはアニオン性界面活性剤)、pH調整剤、及び重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
任意成分は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
以下、任意成分について説明する。
【0030】
<有機塩基化合物>
洗浄液は、有機塩基化合物(以下「特定有機塩基化合物」とも記載する。)を含んでいてもよい。
特定有機塩基化合物とは溶媒に溶解した際に、塩基性を示す有機化合物を意味する。
特定有機塩基化合物としては、後述する第1のアミン化合物、第2のアミン化合物、及び第4級ホスホニウム塩が挙げられる。
【0031】
(第1のアミン化合物)
本発明の洗浄液は、下記式(1)で表される第1のアミン化合物(以下「第1アミン」とも記載する。)を含んでいてもよい。
【0032】
【化1】
【0033】
式(1)中、R、R、及びRはいずれも有機基を表す。R、R、及びRのうち複数が互いに結合して置換基を有してもよい非芳香環を形成してもよい。
【0034】
、R、及びRで表される有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、及びアリール基が挙げられる。これらの基は置換基を有してもよい。置換基としては、ヒドロキシル基及びアミノ基が挙げられる。また、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基はいずれも、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。
、R、及びRで表される有機基の炭素数は、特に制限されないが、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
【0035】
、R、及びRのうち複数が互いに結合して形成する、置換基を有してもよい非芳香環としては、特に制限されないが、例えば、炭素数5~10であるシクロアルカン環が挙げられ、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はシクロヘプタン環が好ましい。
上記の非芳香環が有してもよい置換基としては、例えば、炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。
【0036】
、R、及びRで表される有機基としては、ヒドロキシル基を有してもよいアルキル基が好ましく、ヒドロキシル基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、ヒドロキシル基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基が更に好ましく、ヒドロキシル基を有してもよいメチル基又はエチル基が特に好ましい。
なかでも、R、R、及びRのうち、0~2個がヒドロキシル基を有するアルキル基であり、残りの1~3個がヒドロキシル基を有さないアルキル基である組合せがより好ましい。
【0037】
第1アミンは、洗浄液の経時安定性により優れる点で、第1級アミノアルコールを含むことが好ましい。即ち、上記式(1)においてR、R、及びRで表される有機基の少なくとも1つがヒドロキシル基を有することが好ましい。
第1級アミノアルコールとしては、R、R、及びRで表される有機基のうち1つ又は2つがヒドロキシル基を有することが好ましく、R、R、及びRで表される有機基のうち1つのみがヒドロキシル基を有することがより好ましい。
【0038】
第1アミンの共役酸の第1酸解離定数(以下「pKa1」とも記載する)は、8.5以上が好ましい。第1アミンのpKa1が8.5以上であることにより、洗浄液のpHがより安定し、洗浄液の洗浄性能及び腐食防止性能が向上する。
第1アミンのpKa1は、洗浄性能及び腐食防止性能がより優れる点で、8.8以上が好ましく、9.0以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、12.0以下が好ましい。
【0039】
第1級アミノアルコールとしては、例えば、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)(pKa1:9.72)、2-アミノ-2-メチル-1,3-ジプロパノール(AMPD)(pKa1:8.80)、及び2-アミノ-2-エチル-1,3-ジプロパノール(AEPD)(pKa1:8.80)が挙げられる。
第1アミンとしては、AMP、AMPD、又はAEPDが好ましく、AMPがより好ましい。
【0040】
第1アミンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液における第1アミンの含有量は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、腐食防止性能がより優れる点で、洗浄液の全質量に対して、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
また、第1アミンの含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0041】
(第2のアミン化合物)
洗浄液は、第1アミンとは異なる第2のアミン化合物(以下「第2アミン」とも記載する。)を含んでいてもよい。
第2アミンとしては、例えば、分子内に第1級アミノ基(-NH)を有する第1級脂肪族アミン、分子内に第2級アミノ基(>NH)を有する第2級脂肪族アミン、分子内に第3級アミノ基(>N-)を有する第3級脂肪族アミン、及び第4級アンモニウムカチオンを有する化合物又はその塩である第4級アンモニウム化合物が挙げられ、第4級アンモニウム化合物が好ましい。
【0042】
-第4級アンモニウム化合物-
第4級アンモニウム化合物は、窒素原子に4つの炭化水素基(好ましくはアルキル基)が置換してなる第4級アンモニウムカチオンを有する化合物又はその塩であれば、特に制限されない。第4級アンモニウム化合物としては、例えば、第4級アンモニウム水酸化物、第4級アンモニウムフッ化物、第4級アンモニウム臭化物、第4級アンモニウムヨウ化物、第4級アンモニウムの酢酸塩、及び第4級アンモニウムの炭酸塩が挙げられる。なかでも、第4級アンモニウム水酸化物が好ましい。
【0043】
第4級アンモニウム化合物としては、下記式(2)で表される第4級アンモニウム水酸化物が好ましい。
【0044】
(ROH (2)
【0045】
式中、Rは、置換基としてヒドロキシル基又はフェニル基を有していてもよいアルキル基を表す。4つのRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
で表されるアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、プロピル基又はブチル基が好ましい。
で表されるヒドロキシル基又はフェニル基を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2-ヒドロキシエチル基、又はベンジル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又は2-ヒドロキシエチル基がより好ましく、プロピル基、ブチル基、又は2-ヒドロキシエチル基が更に好ましい。
【0047】
第4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド(TMEAH)、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DEDMAH)、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(MTEAH)、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、トリ(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)、及びセチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
上記の具体例以外の第4級アンモニウム化合物としては、例えば、特開2018-107353号公報の段落[0021]に記載の化合物が援用でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0048】
洗浄液に使用する第4級アンモニウム化合物としては、例えば、TEAH、TPAH、TBAH、TMAH、TMEAH、DEDMAH、MTEAH、コリン、又はビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく、DEDMAH、MTEAH、TEAH、TPAH、又はTBAHがより好ましく、TEAH、TPAH、又はTBAHが更に好ましい。
【0049】
-第1級~第3級脂肪族アミン-
第1級~第3級脂肪族アミンとしては、分子内に第1級アミノ基、第2級アミノ基、及び第3級アミノ基(以下、これらを「第1級~第3級アミノ基」と総称する場合がある)からなる群より選択される基を有する化合物又はその塩であって、芳香環を有さず、かつ、上記の第1アミンに含まれない化合物であれば、特に制限されない。
第1級~第3級脂肪族アミンの塩としては、例えば、Cl、S、N、及びPからなる群より選択される少なくとも1種の非金属が水素と結合してなる無機酸との塩が挙げられ、塩酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩が好ましい。
【0050】
第1級~第3級脂肪族アミンとしては、例えば、アミノアルコール、脂環式アミン化合物、並びに、アミノアルコール及び脂環式アミン以外の脂肪族モノアミン化合物、及び脂肪族ポリアミン化合物が挙げられる。
【0051】
=アミノアルコール=
アミノアルコールは、第1級~第3級脂肪族アミンのうち、分子内に少なくとも1つのヒドロキシルアルキル基を更に有する化合物である。アミノアルコールは、第1級~第3級アミノ基のいずれを有していてもよいが、第1級アミノ基を有することが好ましい。
【0052】
第1級~第3級脂肪族アミンに含まれるアミノアルコールとしては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジエチレングリコールアミン(DEGA)、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、2-(メチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(N-MAMP)、2-(アミノエトキシ)エタノール(AEE)、及び2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(AAE)が挙げられる。
なかでも、N-MAMP、MEA、DEA、AEE又はAAEが好ましく、N-MAMP、MEA又はAEEがより好ましい。また、洗浄性能に優れる点では、MEA、DEA、AEE又はAAEがより好ましい。
【0053】
=脂環式アミン化合物=
脂環式アミン化合物は、環を構成する原子の少なくとも1つが窒素原子である非芳香性のヘテロ環を有する化合物であれば、特に制限されない。
脂環式アミン化合物としては、例えば、環状アミジン化合物、及びピペラジン化合物が挙げられる。
【0054】
環状アミジン化合物は、環内にアミジン構造(>N-C=N-)を含むヘテロ環を有する化合物である。
環状アミジン化合物が有する上記のヘテロ環の環員数は、特に制限されないが、5又は6個が好ましく、6個がより好ましい。
環状アミジン化合物としては、例えば、ジアザビシクロウンデセン(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン:DBU)、ジアザビシクロノネン(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン:DBN)、3,4,6,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-2H-ピリミド[1.2-a]アゾシン、3,4,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[1.2-a]ピリミジン、2,5,6,7-テトラヒドロ-3H-ピロロ[1.2-a]イミダゾール、3-エチル-2,3,4,6,7,8,9,10-オクタヒドロピリミド[1.2-a]アゼピン、及びクレアチニンが挙げられ、DBUが好ましい。
【0055】
ピペラジン化合物は、シクロヘキサン環の対向する-CH-基が窒素原子に置き換わったヘテロ6員環(ピペラジン環)を有する化合物である。
ピペラジン化合物は、ピペラジン環上に置換基を有してもよい。そのような置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、及び炭素数6~10のアリール基が挙げられる。
【0056】
ピペラジン化合物としては、例えば、ピペラジン、1-メチルピペラジン、1-エチルピペラジン、1-プロピルピペラジン、1-ブチルピペラジン、2-メチルピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、1-フェニルピペラジン、2-ヒドロキシピペラジン、2-ヒドロキシメチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(HEP)、N-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEP)、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(BHEP)、1,4―ビス(2-アミノエチル)ピペラジン(BAEP)、及び1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン(BAPP)が挙げられ、ピペラジン、1-メチルピペラジン、2-メチルピペラジン、HEP、AEP、BHEP、BAEP、又はBAPPが好ましい。
【0057】
脂環式アミン化合物としては、上記以外に、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びイミダゾリジンチオン等の芳香族性を有さないヘテロ5員環を有する化合物、並びに窒素原子を含む7員環を有する化合物が挙げられる。
【0058】
=脂肪族モノアミン化合物=
アミノアルコール及び脂環式アミン以外の脂肪族モノアミン化合物としては、第1アミンに含まれない化合物であれば特に制限されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、n-ブチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、tert-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、及び4-(2-アミノエチル)モルホリン(AEM)が挙げられる。
【0059】
=脂肪族ポリアミン化合物=
アミノアルコール及び脂環式アミン以外の脂肪族ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン(EDA)、1,3-プロパンジアミン(PDA)、1,2-プロパンジアミン、1,3-ブタンジアミン、及び1,4-ブタンジアミン等のアルキレンジアミン、並びに、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ビス(アミノプロピル)エチレンジアミン(BAPEDA)、及びテトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミンが挙げられる。
【0060】
また、第1級~第3級脂肪族アミンとしては、国際公開第2013/162020号明細書の段落[0034]~[0056]に記載の化合物のうち、第1アミンに含まれない化合物が援用でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0061】
第1級~第3級脂肪族アミンとしては、第1級~第3級のうち1つのアミノ基に加えて、1つ以上の親水性基を更に有することが好ましい。親水性基としては、例えば、第1級~第3級アミノ基及びヒドロキシル基が挙げられる。第1級~第3級のうち1つのアミノ基に加えて、1つ以上の親水性基を更に有する第1級~第3級脂肪族アミンとしては、アミノアルコール、脂肪族ポリアミン化合物、及び脂環式アミン化合物のうち2つ以上の親水性基を有する化合物が挙げられ、アミノアルコール、又は環状アミジン化合物が好ましい。
第1級~第3級脂肪族アミンが有する親水性基の総数の上限は特に制限されないが、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0062】
第1級~第3級脂肪族アミンが有する第1級~第3級アミノ基の数は特に制限されないが、1~4個が好ましく、1~3個がより好ましい。
また、第1級~第3級脂肪族アミンの分子量は、特に制限されないが、200以下が好ましく、150以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、60以上が好ましい。
【0063】
第2アミンの共役酸の第1酸解離定数(pKa1)は、洗浄液の経時安定性がより優れる点で、8.5以上が好ましく、8.6以上がより好ましく、8.7以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、20.0以下が好ましい。
【0064】
第2アミンとしては、第4級アンモニウム化合物、アミノアルコール、又は環状アミジン化合物に該当する第1級~第3級脂肪族アミンが好ましく、TEAH(pKa1:>14.0)、TPAH(pKa1:>14.0)、TBAH(pKa1:>14.0)、N-MAMP(pKa1:9.72)、MEA(pKa1:9.50)、DEA(pKa1:8.70)、AEE(pKa1:10.60)、AAE(pKa1:10.80)、DEDMAH(pKa1:>14.0)、MTEAH(pKa1:>14.0)、又はDBUがより好ましく、TEAH、TPAH、TBAH、N-MAMP、MEA、AEE、MTEAH、又はDBUが更に好ましく、TEAH、TPAH、TBAH、又はDBUが特に好ましい。
【0065】
第2アミンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。洗浄液は、第2アミンを2種以上含むことが好ましい。
洗浄液が、第2アミンを2種以上含む場合、1つ以上のアミノアルコール又は脂環式アミン化合物に該当する第1級~第3級脂肪族アミンと、1つ以上の第4級アンモニウム化合物とを含むことが好ましく、それぞれの好ましい具体例として記載した化合物同士の組合せを含むことがより好ましい。
【0066】
洗浄液における第2アミンの含有量は、洗浄液の全質量に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、第2アミンの含有量の上限は、金属膜の腐食防止性に優れる点で、洗浄液の全質量に対して、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
また、第2アミンの含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0067】
(第4級ホスホニウム塩)
第4級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラアルキルホスホニウム塩、トリアルキルアリールホスホニウム塩、ジアルキルジアリールホスホニウム塩、アルキルトリアリールホスホニウム塩、及びテトラアリールホスホニウム塩が挙げられる。
【0068】
第4級ホスホニウム塩が有するアニオンとしては、例えば、ハロゲンイオン(例えば、F、Cl、Br、及びI)、水酸化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、及び炭酸イオンが挙げられる。
【0069】
第4級ホスホニウム塩としては、例えば、メチルトリフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルプロピルホスホニウム塩、イソプロピルトリフェニルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、ペンチルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、n-ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニル(テトラデシル)ホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、(2-ヒドロキシベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(2-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(4-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、(2,4-ジクロロベンジル)フェニルホスホニウム塩、(4-ニトロベンジル)トリフェニルホスホニウム塩、4-エトキシベンジルトリフェニルホスホニウム塩、(1-ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(シアノメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム塩、(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウム塩、アセトニルトリフェニルホスホニウム塩、フェナシルトリフェニルホスホニウム塩、メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム塩、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム塩、(3-カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウム塩、(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウム塩、2-ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウム塩、トリフェニルビニルホスホニウム塩、アリルトリフェニルホスホニウム塩、及びトリフェニルプロパルギルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0070】
第4級ホスホニウム塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液における第4級ホスホニウム塩の含有量は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、腐食防止性能がより優れる点で、洗浄液の全質量に対して、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
また、第4ホスホニウム塩の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0071】
特定有機塩基化合物としては、第1アミン、第2アミン、及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、AMP、TEAH、TPAH、TBAH、又はDBUがより好ましい。
【0072】
特定有機塩基化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特定有機塩基化合物の含有量は、特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%超がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液の全質量に対して、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
また、特定有機塩基化合物の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0073】
<有機酸>
有機酸は、酸性の官能基を有し、水溶液中で酸性(pHが7.0未満)を示す有機化合物である。酸性の官能基としては、例えば、カルボキシル基、ホスホン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシル基、及びメルカプト基が挙げられ、カルボン酸又はホスホン酸が好ましい。
なお、本明細書では、後述するアニオン性界面活性剤として機能する化合物は、有機酸に含まれないものとする。
【0074】
有機酸としては、特に制限されないが、分子内にカルボキシル基を有するカルボン酸(カルボン酸)、分子内にホスホン酸基を有するホスホン酸(ホスホン酸)、及び分子内にスルホ基を有するスルホン酸(スルホン酸)が挙げられ、カルボン酸又はホスホン酸が好ましい。
【0075】
有機酸が有する酸性の官能基の数は特に制限されないが、1~10個が好ましく、2~9個がより好ましく、3~8個が更に好ましい。
また、有機酸は、洗浄性能により優れる点で、残渣物に含まれる金属とキレート化する機能を有する化合物であることが好ましく、分子内に金属イオンと配位結合する官能基(配位基)を2つ以上有する化合物がより好ましい。配位基としては、上記酸性の官能基が挙げられ、カルボン酸基又はホスホン酸基が好ましい。
【0076】
(カルボン酸)
カルボン酸は、カルボキシル基を1個有するモノカルボン酸であってもよく、カルボキシル基を2個以上有するポリカルボン酸であってもよい。洗浄性能により優れる点で、カルボン酸は、カルボキシル基を2個以上有することが好ましく、2~7個有することがより好ましく、3~6個有することが更に好ましい。
【0077】
カルボン酸としては、例えば、アミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、及び脂肪族カルボン酸が挙げられる。
【0078】
-アミノポリカルボン酸-
アミノポリカルボン酸は、分子内に配位基として1つ以上のアミノ基と2つ以上のカルボキシル基とを有する化合物である。
アミノポリカルボン酸としては、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アスパラギン酸、グルタミン酸、ブチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CyDTA)、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミンジプロピオン酸、1,6-ヘキサメチレン-ジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-四酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、及びイミノジ酢酸(IDA)が挙げられる。
なかでも、DTPA、EDTA、CyDTA、又はIDAが好ましく、DTPA又はEDTAがより好ましい。
【0079】
-ヒドロキシカルボン酸-
ヒドロキシカルボン酸は、分子内に1つ以上のヒドロキシル基と1つ以上のカルボキシル基とを有する化合物である。
洗浄液は、本発明の効果がより優れる点で、ヒドロキシカルボン酸を含むことが好ましい。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルコン酸、ヘプトン酸、酒石酸、及び乳酸が挙げられ、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、又は酒石酸が好ましく、クエン酸又はグルコン酸がより好ましく、クエン酸が更に好ましい。
【0080】
-アミノ酸-
アミノ酸は、分子内に1つのカルボキシル基と1つ以上のアミノ基とを有する化合物である。
アミノ酸としては、例えば、グリシン、セリン、α-アラニン(2-アミノプロピオン酸)、β-アラニン(3-アミノプロピオン酸)、リジン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、エチオニン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ヒスチジン、ヒスチジン誘導体、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、プロリン、フェニルアラニン、特開2016-086094号公報の段落[0021]~[0023]に記載の化合物、及びこれらの塩が挙げられる。なお、ヒスチジン誘導体としては、特開2015-165561号公報、及び特開2015-165562号公報等に記載の化合物が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、塩としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、炭酸塩、並びに酢酸塩が挙げられる。
なかでも、硫黄原子を含む含硫アミノ酸が好ましい。含硫アミノ酸としては、例えば、シスチン、システイン、エチオニン、及びメチオニンが挙げられ、シスチン又はシステインが好ましい。
【0081】
-脂肪族カルボン酸-
脂肪族カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、及びマレイン酸が挙げられ、アジピン酸が好ましい。特に、アジピン酸の使用により、他のキレート剤に比較して洗浄液の性能(洗浄性能及び腐食防止性)を大幅に向上できる。アジピン酸のこのような特異的な効果について詳細なメカニズムは不明であるが、アルキレン基の炭素鎖数が2つのカルボキシル基との関係において親水性及び疎水性に特に優れ、金属との錯形成時に安定な環構造を形成することに由来すると予想される。
【0082】
上記のアミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、及び脂肪族カルボン酸以外のカルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸等の低級(炭素数1~4)脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
【0083】
カルボン酸としては、アミノポリカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸が好ましく、DTPA、EDTA、又はクエン酸がより好ましい。
【0084】
カルボン酸は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液におけるカルボン酸の含有量は、特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。
また、カルボン酸の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、40質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。
【0085】
(ホスホン酸)
ホスホン酸は、ホスホン酸を1個有するモノホスホン酸であってもよく、ホスホン酸基を2個以上有するポリホスホン酸であってもよい。洗浄性能により優れる点で、ホスホン酸基を2個以上有するポリホスホン酸が好ましい。
【0086】
ポリホスホン酸としては、例えば、下記式(P1)で表される化合物、式(P2)で表される化合物、及び式(P3)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
【化2】
【0088】
式中、Xは、水素原子又はヒドロキシル基を表し、R11は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0089】
式(P1)におけるR11で表される炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
式(P1)におけるR11としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基がより好ましい。
なお、本明細書に記載するアルキル基の具体例において、n-はnormal-体を表す。
式(P1)におけるXとしては、ヒドロキシル基が好ましい。
【0090】
式(P1)で表される化合物としては、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸(HEDP)、エチリデンジホスホン酸、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1’-ジホスホン酸、又は1-ヒドロキシブチリデン-1,1’-ジホスホン酸が好ましく、HEDPがより好ましい。
【0091】
【化3】
【0092】
式中、Qは、水素原子又はR13-POを表し、R12及びR13は、それぞれ独立して、アルキレン基を表し、Yは、水素原子、-R13-PO、又は下記式(P4)で表される基を表す。
【0093】
【化4】
【0094】
式中、Q及びR13は、式(P2)におけるQ及びR13と同じである。
【0095】
式(P2)においてR12で表されるアルキレン基としては、例えば、炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
12で表されるアルキレン基としては、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、エチレン基が更に好ましい。
式(P2)及び(P4)においてR13で表されるアルキレン基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられ、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基又はエチレン基がより好ましく、メチレン基が更に好ましい。
式(P2)及び(P4)におけるQとしては、-R13-POが好ましい。
式(P2)におけるYとしては、-R13-PO又は式(P4)で表される基が好ましく、式(P4)で表される基がより好ましい。
【0096】
式(P2)で表される化合物としては、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTPO)、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)(EDDPO)、1,3-プロピレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、エチレンジアミンテトラ(エチレンホスホン酸)、1,3-プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(PDTMP)、1,2-ジアミノプロパンテトラ(メチレンホスホン酸)、又は1,6-ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)が好ましい。
【0097】
【化5】
【0098】
式中、R14及びR15はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキレン基を表し、nは1~4の整数を表し、Z~Z及びn個のZのうち少なくとも4つは、ホスホン酸基を有するアルキル基を表し、残りはアルキル基を表す。
【0099】
式(P3)においてR14及びR15で表される炭素数1~4のアルキレン基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。R14及びR15で表される炭素数1~4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基、2-メチルプロピレン基、2-メチルトリメチレン基、及びエチルエチレン基が挙げられ、エチレン基が好ましい。
式(P3)におけるnとしては、1又は2が好ましい。
【0100】
式(P3)におけるZ~Zで表されるアルキル基及びホスホン酸基を有するアルキル基におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
~Zで表されるホスホン酸基を有するアルキル基におけるホスホン酸基の数としては、1つ又は2つが好ましく、1つがより好ましい。
~Zで表されるホスホン酸基を有するアルキル基としては、例えば、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状であって、ホスホン酸基を1つ又は2つ有するアルキル基が挙げられ、(モノ)ホスホノメチル基、又は(モノ)ホスホノエチル基が好ましく、(モノ)ホスホノメチル基がより好ましい。
式(P3)におけるZ~Zとしては、Z~Z及びn個のZのすべてが、上記のホスホン酸基を有するアルキル基であることが好ましい。
【0101】
式(P3)で表される化合物としては、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DEPPO)、ジエチレントリアミンペンタ(エチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、又はトリエチレンテトラミンヘキサ(エチレンホスホン酸)が好ましい。
【0102】
洗浄液に使用するポリホスホン酸としては、上記の式(P1)で表される化合物、式(P2)で表される化合物、及び式(P3)で表される化合物だけでなく、国際公開第2018/020878号明細書の段落[0026]~[0036]に記載の化合物、及び国際公開第2018/030006号明細書の段落[0031]~[0046]に記載の化合物((共)重合体)が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0103】
ホスホン酸が有するホスホン酸基の個数は、2~5が好ましく、2~4がより好ましく、2又は3が更に好ましい。
また、ホスホン酸の炭素数は、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、1以上が好ましい。
ホスホン酸としては、上記の式(P1)で表される化合物、式(P2)で表される化合物、及び式(P3)で表される化合物のそれぞれにおいて好適な具体例として挙げた化合物が好ましく、HEDPがより好ましい。
【0104】
ホスホン酸は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液におけるホスホン酸の含有量は、特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。
また、ホスホン酸の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、40質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。
【0105】
有機酸としては、アミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及びホスホン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、DTPA、EDTA、クエン酸、又はHEDPがより好ましい。
【0106】
有機酸は、低分子量であることが好ましい。具体的には、有機酸の分子量は、600以下が好ましく、450以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、85以上が好ましい。
また、有機酸の炭素数は、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、2以上が好ましい。
【0107】
有機酸は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。洗浄液は、洗浄性能に優れる点で、有機酸を2種以上含むことが好ましい。
洗浄液における有機酸の含有量は、特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。
また、有機酸の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、40質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。
【0108】
<防食剤>
洗浄液は、防食剤を含んでいてもよい。
なお、防食剤としては、上述の成分とは異なる成分が好ましい。
防食剤としては、例えば、ヘテロ環構造を有するヘテロ環式化合物、及びリン酸エステル系界面活性剤等の還元作用を有さない防食剤;ビグアニド化合物、アスコルビン酸化合物、ヒドロキシルアミン化合物、カテコール化合物、ヒドラジド化合物、還元性硫黄化合物、及びヒドロキシカルボン酸等の還元作用を有する防食剤、並びにそれらの誘導体が挙げられる。なかでも、防食剤としては、還元作用を有さない防食剤が好ましく、ヘテロ環式化合物又はリン酸エステル系界面活性剤がより好ましい。
還元作用を有する防食剤とは、酸化作用を有し、洗浄液に含まれるOHイオン又は溶存酸素を酸化する機能を有する化合物であり、脱酸素剤とも称される。
【0109】
-ヘテロ環式化合物-
ヘテロ環式化合物は、分子内にヘテロ環構造を有する化合物である。ヘテロ環式化合物が有するヘテロ環構造は、特に制限されず、例えば、環を構成する原子の少なくとも1つが窒素原子であるヘテロ環(含窒素ヘテロ環)であって、上述した成分以外の化合物が挙げられる。
上記の含窒素ヘテロ環を有するヘテロ環式化合物としては、例えば、アゾール化合物等の含窒素へテロ芳香族化合物が挙げられる。
【0110】
アゾール化合物は、窒素原子を少なくとも1つ含み、芳香族性を有するヘテロ5員環を有する化合物である。
アゾール化合物が有するヘテロ5員環に含まれる窒素原子の個数は、特に制限されず、1~4個が好ましく、1~3個がより好ましい。
また、アゾール化合物は、ヘテロ5員環上に置換基を有してもよい。そのような置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、アミノ基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、及び2-イミダゾリル基が挙げられる。
【0111】
アゾール化合物としては、例えば、アゾール環を構成する原子のうち1つが窒素原子であるイミダゾール化合物、アゾール環を構成する原子のうち2つが窒素原子であるピラゾール化合物、アゾール環を構成する原子のうち1つが窒素原子であり、他の1つが硫黄原子であるチアゾール化合物、アゾール環を構成する原子のうち3つが窒素原子であるトリアゾール化合物、及びアゾール環を構成する原子のうち4つが窒素原子であるテトラゾール化合物が挙げられる。
【0112】
イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、4,5-ジメチル-2-メルカプトイミダゾール、4-ヒドロキシイミダゾール、2,2’-ビイミダゾール、4-イミダゾールカルボン酸、ヒスタミン、ベンゾイミダゾール、及びプリン塩基(アデニン等)が挙げられる。
【0113】
ピラゾール化合物としては、例えば、3-アミノ-5-メチルピラゾール、ピラゾール、4-ピラゾールカルボン酸、1-メチルピラゾール、3-メチルピラゾール、3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール、3-アミノピラゾール、及び4-アミノピラゾールが挙げられる。
【0114】
チアゾール化合物としては、例えば、2,4-ジメチルチアゾール、ベンゾチアゾール、及び2-メルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。
【0115】
トリアゾール化合物としては、例えば、1,2,4-トリアゾ-ル、1-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチル-5-メチル-1Hベンゾトリアゾール、1-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチル-4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、3-メチル-1,2,4-トリアゾ-ル、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾ-ル、1-メチル-1,2,3-トリアゾ-ル、ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3-ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4-ヒドロキシベンゾトリアゾール、4-カルボキシベンゾトリアゾール、及び5-メチルベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0116】
テトラゾール化合物としては、例えば、1H-テトラゾール(1,2,3,4-テトラゾ-ル)、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾ-ル、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾ-ル、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、及び1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾールが挙げられる。
【0117】
アゾール化合物としては、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、又はテトラゾール化合物が好ましく、ピラゾール化合物又はトリアゾール化合物がより好ましく、3-アミノ-5-メチルピラゾール、1,2,4-トリアゾ-ル、1-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチル-5-メチル-1Hベンゾトリアゾール、又は1-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチル-4-メチル-1H-ベンゾトリアゾールが更に好ましい。
【0118】
-リン酸エステル系界面活性剤-
リン酸エステル系界面活性剤としては、例えば、リン酸エステル(アルキルエーテルリン酸エステル及びアリールエーテルリン酸エステル)、ポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステル(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル及びポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸エステル)、並びにこれらの塩が挙げられる。リン酸エステル及びポリオキシアルキレンエーテルリン酸は、通常モノエステル及びジエステルの両者を含むが、モノエステル又はジエステルを単独で使用できる。
リン酸エステル系界面活性剤の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及び有機アミン塩が挙げられる。
リン酸エステル及びポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステルが有するアルキル基としては、特に制限されないが、炭素数2~24のアルキル基が好ましく、炭素数6~22のアルキル基がより好ましく、炭素数10~20のアルキル基が更に好ましい。
リン酸エステル及びポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステルが有するアリール基としては、特に制限されないが、アルキル基を有してもよい炭素数6~14のアリールが好ましく、アルキル基を有してもよいフェニル基がより好ましい。
ポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステルが有する2価のアルキレン基としては、特に制限されないが、炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。また、ポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステルにおけるオキシアルキレン基の繰返し数は、1~12が好ましく、3~10がより好ましい。
【0119】
リン酸エステル系界面活性剤としては、オクチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、トリデシルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、セチルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、及びポリオキシエチレンジメチルフェニルエーテルリン酸エステルが挙げられる。なかでも、リン酸エステル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンジメチルフェニルエーテルリン酸エステルが好ましい。
【0120】
リン酸エステル系界面活性剤としては、特開2011-040502号公報の段落[0012]~[0019]に記載の化合物も援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0121】
-ビグアニド化合物-
ビグアニド化合物は、ビグアニド基を有する化合物又はその塩であるビグアニド化合物である。ビグアニド化合物が有するビグアニド基の数は特に制限されず、複数のビグアニド基を有していてもよい。
ビグアニド化合物としては、特表2017-504190号公報の段落[0034]~[0055]に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0122】
ビグアニド基を有する化合物としては、エチレンジビグアニド、プロピレンジビグアニド、テトラメチレンジビグアニド、ペンタメチレンジビグアニド、ヘキサメチレンジビグアニド、ヘプタメチレンジビグアニド、オクタメチレンジビグアニド、1,1’-ヘキサメチレンビス(5-(p-クロロフェニル)ビグアニド)(クロルヘキシジン)、2-(ベンジルオキシメチル)ペンタン-1,5-ビス(5-ヘキシルビグアニド)、2-(フェニルチオメチル)ペンタン-1,5-ビス(5-フェネチルビグアニド)、3-(フェニルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-ヘキシルビグアニド)、3-(フェニルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-シクロヘキシルビグアニド)、3-(ベンジルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-ヘキシルビグアニド)、又は3-(ベンジルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-シクロヘキシルビグアニド)が好ましく、クロルヘキシジンがより好ましい。
ビグアニド基を有する化合物の塩としては、塩酸塩、酢酸塩、又はグルコン酸塩が好ましく、グルコン酸塩がより好ましい。
ビグアニド化合物としては、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)が好ましい。
【0123】
-アスコルビン酸化合物-
アスコルビン酸化合物は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を意味する。
アスコルビン酸誘導体としては、例えば、アスコルビン酸リン酸エステル、及びアスコルビン酸硫酸エステルが挙げられる。
アスコルビン酸化合物としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、又はアスコルビン酸硫酸エステルが好ましく、アスコルビン酸がより好ましい。
【0124】
-ヒドロキシルアミン化合物-
ヒドロキシルアミン化合物は、ヒドロキシルアミン(NHOH)、ヒドロキシルアミン誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を意味する。また、ヒドロキシルアミン誘導体とは、ヒドロキシルアミン(NHOH)に少なくとも1つの有機基が置換されてなる化合物を意味する。
ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン誘導体の塩は、ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン誘導体の無機酸塩又は有機酸塩であってもよい。ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン誘導体の塩としては、Cl、S、N、及びPからなる群より選択される少なくとも1種の非金属が水素と結合してなる無機酸との塩が好ましく、塩酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩がより好ましい。
【0125】
ヒドロキシルアミン化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0126】
【化6】
【0127】
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表す。
【0128】
及びRで表される有機基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。炭素数1~6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
また、R及びRの少なくとも一方が有機基(より好ましくは炭素数1~6のアルキル基)であることが好ましい。
炭素数1~6のアルキル基としては、エチル基又はn-プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0129】
ヒドロキシルアミン化合物としては、例えば、ヒドロキシルアミン、O-メチルヒドロキシルアミン、O-エチルヒドロキシルアミン、N-メチルヒドロキシルアミン、N,N-ジメチルヒドロキシルアミン、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン、N-エチルヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N,O-ジエチルヒドロキシルアミン、O,N,N-トリメチルヒドロキシルアミン、N,N-ジカルボキシエチルヒドロキシルアミン、及びN,N-ジスルホエチルヒドロキシルアミンが挙げられる。
なかでも、N-エチルヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)、又はN-n-プロピルヒドロキシルアミンが好ましく、DEHAがより好ましい。
【0130】
-カテコール化合物-
カテコール化合物は、ピロカテコール(ベンゼン-1,2-ジオール)、及びカテコール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を意味する。
カテコール誘導体とは、ピロカテコールに少なくとも1つの置換基が置換されてなる化合物を意味する。カテコール誘導体が有する置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホ基、スルホン酸エステル基、アルキル基(炭素数1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましい)、及びアリール基(フェニル基が好ましい)が挙げられる。カテコール誘導体が置換基として有するカルボキシル基、及びスルホ基は、カチオンとの塩であってもよい。また、カテコール誘導体が置換基として有するアルキル基、及びアリール基は、更に置換基を有していてもよい。
カテコール化合物としては、例えば、ピロカテコール、4-tert-ブチルカテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸メチル、1,2,4-ベンゼントリオール、及びタイロンが挙げられる。
【0131】
-ヒドラジド化合物-
ヒドラジド化合物は、酸のヒドロキシル基をヒドラジノ基(-NH-NH)で置換してなる化合物、及びその誘導体(ヒドラジノ基に少なくとも1つの置換基が置換されてなる化合物)を意味する。
ヒドラジド化合物は、2つ以上のヒドラジノ基を有していてもよい。
ヒドラジド化合物としては、例えば、カルボン酸ヒドラジド及びスルホン酸ヒドラジドが挙げられ、カルボヒドラジド(CHZ)が好ましい。
【0132】
-還元性硫黄化合物-
還元性硫黄化合物としては、硫黄原子を含み、還元剤としての機能を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、システイン、メルカプトコハク酸、ジチオジグリセロール、ビス(2,3-ジヒドロキシプロピルチオ)エチレン、3-(2,3-ジヒドロキシプロピルチオ)-2-メチル-プロピルスルホン酸ナトリウム、1-チオグリセロール、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、及び3-メルカプト-1-プロパノールが挙げられる。
なかでも、SH基を有する化合物(メルカプト化合物)が好ましく、システイン、1-チオグリセロール、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1-プロパノール、又はチオグリコール酸がより好ましく、システインが更に好ましい。
【0133】
-他の防食剤-
洗浄液は、上述した各成分を除く他の防食剤を含んでいてもよい。
他の防食剤としては、例えば、フルクトース、グルコース、及びリボース等の糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン等のポリオール類:ポリビニルピロリドン、シアヌル酸、バルビツール酸及びその誘導体、グルクロン酸、スクアリン酸、α-ケト酸、アデノシン、及びその誘導体、フェナントロリン、レゾルシノール、ヒドロキノン、ニコチンアミド、及びその誘導体、フラボノ-ル及びその誘導体、アントシアニン及びその誘導体、並びにこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0134】
防食剤としては、ヘテロ環式化合物又はリン酸エステル系界面活性剤を含むことが好ましく、テトラゾール化合物、トリアゾール化合物、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0135】
防食剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
腐食防止性能により優れる点で、洗浄液は、2種以上の防食剤を含むことが好ましく、3種以上の防食剤を含むことがより好ましい。
防食剤の含有量は、洗浄液の全質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましく、0.3~5質量%が更に好ましい。
また、防食剤の含有量は、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.1~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましい。
【0136】
<界面活性剤>
洗浄液は、上記成分以外の界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、分子内に親水基と疎水基(親油基)とを有する化合物であれば特に制限されず、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられ、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0137】
界面活性剤は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びそれらの組合せから選択される疎水基を有する場合が多い。界面活性剤が有する疎水基としては、特に制限されない。なかでも、疎水基が芳香族炭化水素基を含む場合、芳香族炭化水素基の炭素数は、6以上が好ましく、10以上がより好ましい。芳香族炭化水素基の炭素数の上限は特に制限されないが、20以下が好ましく、18以下がより好ましい。
また、疎水基が芳香族炭化水素基を含まず、脂肪族炭化水素基のみから構成される場合、脂肪族炭化水素基の炭素数は、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、16以上が更に好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数の上限は特に制限されないが、20以下が好ましく、18以下がより好ましい。
【0138】
(アニオン性界面活性剤)
洗浄液に含まれるアニオン性界面活性剤としては、例えば、それぞれが親水基(酸基)として、ホスホン酸基を有するホスホン酸系界面活性剤、スルホ基を有するスルホン酸系界面活性剤、カルボキシル基を有するカルボン酸系界面活性剤、及び硫酸エステル基を有する硫酸エステル系界面活性剤が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液はアニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
【0139】
-ホスホン酸系界面活性剤-
ホスホン酸系界面活性剤としては、例えば、アルキルホスホン酸、及びポリビニルホスホン酸が挙げられる。また、例えば、特開2012-057108号公報等に記載のアミノメチルホスホン酸等も挙げられる。
【0140】
-スルホン酸系界面活性剤-
スルホン酸系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、アルキルメチルタウリン、スルホコハク酸ジエステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸、及びこれらの塩が挙げられる。
【0141】
上記のスルホン酸系界面活性剤が有する1価のアルキル基としては、特に制限されないが、炭素数10以上のアルキル基が好ましく、炭素数12以上のアルキル基がより好ましい。上記アルキル基の炭素数の上限は特に制限されないが、24以下が好ましい。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸が有するアルキレン基としては、特に制限されないが、エチレン基、又は1,2-プロパンジイル基が好ましい。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸におけるオキシアルキレン基の繰返し数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましい。
【0142】
スルホン酸系界面活性剤の具体例としては、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、ジニトロベンゼンスルホン酸(DNBSA)、及びラウリルドデシルフェニルエーテルジスルホン酸(LDPEDSA)が挙げられる。
なかでも、炭素数10以上のアルキル基を有するスルホン酸系界面活性剤が好ましく、炭素数12以上のアルキル基を有するスルホン酸系界面活性剤がより好ましく、DBSAが更に好ましい。
【0143】
-カルボン酸系界面活性剤-
カルボン酸系界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸、アルキルベンゼンカルボン酸、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸、並びにこれらの塩が挙げられる。
上記のカルボン酸系界面活性剤が有するアルキル基としては、特に制限されないが、炭素数7~25のアルキル基が好ましく、炭素数11~17のアルキル基がより好ましい。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸が有するアルキレン基としては、特に制限されないが、エチレン基、又は1,2-プロパンジイル基が好ましい。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸におけるオキシアルキレン基の繰返し数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましい。
【0144】
カルボン酸系界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、及びポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸が挙げられる。
【0145】
-硫酸エステル系界面活性剤-
硫酸エステル系界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル(アルキルエーテル硫酸エステル)、及びポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステル、並びにこれらの塩が挙げられる。
硫酸エステル及びポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステルが有するアルキル基としては、特に制限されないが、炭素数2~24のアルキル基が好ましく、炭素数6~18のアルキル基がより好ましい。
ポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステルが有するアルキレン基としては、特に制限されないが、エチレン基、又は1,2-プロパンジイル基が好ましい。また、ポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステルにおけるオキシアルキレン基の繰返し数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましい。
硫酸エステル系界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸が挙げられる。
【0146】
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール等)、ポリオキシアルキレンモノアルキレート(モノアルキル脂肪酸エステルポリオキシアルキレン)(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート、及びポリオキシエチレンモノオレート等のポリオキシエチレンモノアルキレート)、ポリオキシアルキレンジアルキレート(ジアルキル脂肪酸エステルポリオキシアルキレン)(例えば、ポリオキシエチレンジステアレート、及びポリオキシエチレンジオレート等のポリオキシエチレンジアルキレート)、ビスポリオキシアルキレンアルキルアミド(例えば、ビスポリオキシエチレンステアリルアミド等)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、アセチレングリコール系界面活性剤、及びアセチレン系ポリオキシエチレンオキシドが挙げられる。
【0147】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1級~第3級のアルキルアミン塩(例えば、モノステアリルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、及びトリステアリルアンモニウムクロライド等)、並びに変性脂肪族ポリアミン(例えば、ポリエチレンポリアミン等)が挙げられる。
【0148】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン(例えば、アルキル-N,N-ジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びアルキル-N,N-ジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン等)、スルホベタイン(例えば、アルキル-N,N-ジメチルスルホエチレンアンモニウムベタイン等)、並びにイミダゾリニウムベタイン(例えば、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダソリニウムベタイン等)が挙げられる。
【0149】
界面活性剤としては、特開2015-158662号公報の段落[0092]~[0096]、特開2012-151273号公報の段落[0045]~[0046]、及び特開2009-147389号公報の段落[0014]~[0020]に記載の化合物も援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0150】
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。洗浄液が界面活性剤を含む場合、その含有量は、洗浄液の全質量に対して、0.01~5.0質量%が好ましく、0.05~2.0質量%がより好ましい。
また、界面活性剤の含有量は、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.1~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0151】
<pH調整剤>
洗浄液は、洗浄液のpHを調整及び維持するためにpH調整剤を含んでいてもよい。
pH調整剤としては、例えば、上記成分以外の塩基性化合物、及び酸性化合物が挙げられる。
【0152】
-塩基性化合物-
塩基性化合物としては、例えば、上述した有機塩基化合物以外の無機塩基化合物が挙げられる。
無機塩基化合物としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、及びアンモニアが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化セシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、及び水酸化バリウムが挙げられる。
【0153】
これらの塩基性化合物は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法によって適宜合成したものを用いてもよい。
【0154】
-酸性化合物-
酸性化合物としては、例えば、無機酸が挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、ホウ酸、及び六フッ化リン酸が挙げられる。また、無機酸の塩を使用してもよく、例えば、無機酸のアンモニウム塩が挙げられ、より具体的には、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、及び六フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。
無機酸としては、硫酸、リン酸、又はリン酸塩が好ましく、硫酸、又はリン酸がより好ましい。
【0155】
酸性化合物としては、水溶液中で酸又は酸イオン(アニオン)となるものであれば、酸性化合物の塩を用いてもよい。
酸性化合物は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法によって適宜合成したものを用いてもよい。
【0156】
pH調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液がpH調整剤を含む場合、その含有量は、他の成分の種類及び量、並びに目的とする洗浄液のpHに応じて選択されるが、洗浄液の全質量に対して、0.01~3質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。
【0157】
<添加剤>
洗浄液は、上記成分以外の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、上記成分以外の重合体、キレート剤、フッ素化合物、及び有機溶媒が挙げられ、重合体が好ましい。
【0158】
-重合体-
洗浄液は、重合体を含んでいてもよい。
上記重合体は、上述の各成分とは異なる成分である。
重合体の重量平均分子量は、200以上が好ましく、1000以上がより好ましく、2000以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。
なかでも、重合体が後述の水溶性重合体である場合、水溶性重合体の重量平均分子量は、200以上が好ましく、1500以上がより好ましく、3000以上が更に好ましい。水溶性重合体の重量平均分子量の上限に制限はなく、例えば、1500000以下であり、1200000以下が好ましく、1000000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましい。
重合体としては、重量平均分子量500以上2000未満の重合体A、及び重量平均分子量2000以上の重合体Bからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。重合体Bの分子量の上限は特に制限されないが、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。
なお、本明細書中における「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
重合体は、カルボキシル基又は酸無水物基(-CO-O-CO-)を有することが好ましい。より具体的には、重合体は、カルボキシル基を有する繰り返し単位((メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位など)又は酸無水物基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。カルボキシル基を有する繰り返し単位又は酸無水物基を有する繰り返し単位の含有量は、重合体の全質量に対して、30~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、85~100質量%が更に好ましい。
なかでも、カルボキシル基又は酸無水物基を有する重合体Bが好ましい。
【0159】
重合体は、水溶性重合体であることも好ましい。
なお、「水溶性重合体」とは、2以上の繰り返し単位が線状又は網目状に共有結合を介して連なった化合物であって、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上である化合物を意図する。
【0160】
水溶性重合体としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、及び、これらの塩;スチレン、α-メチルスチレン、及び/又は4-メチルスチレン等のモノマーと、(メタ)アクリル酸、及び/又はマレイン酸等の酸モノマーとの共重合体、及びこれらの塩;ベンゼンスルホン酸、及び/又はナフタレンスルホン酸等をホルマリンで縮合させた芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を有する重合体、及びこれらの塩;ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリビニルホルムアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルオキサゾリン、ポリビニルイミダゾール、及びポリアリルアミン等のビニル系合成ポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及び加工澱粉等の天然多糖類の変性物が挙げられる。
【0161】
水溶性重合体は、ホモポリマーであっても、2種以上の単量体を共重合させた共重合体であってもよい。このような単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、ヒドロキシル基を有する単量体、ポリエチレンオキシド鎖を有する単量体、アミノ基を有する単量体、及び複素環を有する単量体からなる群から選択される単量体が挙げられる。
水溶性重合体は、実質的に、上記群から選択される単量体に由来する構造単位のみからなる重合体であることも好ましい。重合体が実質的に上記群から選択される単量体に由来する構造単位のみであるとは、例えば、重合体の質量に対して、上記群から選択される単量体に由来する構造単位の含有量が、95~100質量%であることが好ましく、99~100質量%であることがより好ましい。
【0162】
重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液が重合体を含む場合、その含有量は、洗浄液の全質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましく、0.3~5質量%が更に好ましい。
また、重合体の含有量は、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.1~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましい。
重合体の含有量が上記範囲内であると、基板の表面に重合体が適度に吸着して洗浄液の腐食防止性能の向上に寄与でき、かつ、洗浄液の粘度及び/又は洗浄性能のバランスも良好にできる。
【0163】
-分子量500以上のポリヒドロキシ化合物-
洗浄液は、分子量500以上のポリヒドロキシ化合物を含んでもよい。
上記ポリヒドロキシ化合物は、上述の各成分とは異なる成分である。
上記ポリヒドロキシ化合物は、一分子中に2個以上(例えば2~200個)のアルコール性水酸基を有する有機化合物である。
上記ポリヒドロキシ化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、500以上であり、500~3000が好ましい。
【0164】
上記ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングルコール、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース、及びスタキオース等のオリゴ糖;デンプン、グリコーゲン、セルロース、キシロース、キチン、及びキトサン等の多糖類及びその加水分解物が挙げられる。
【0165】
また、上記ポリヒドロキシ化合物としては、シクロデキストリンも好ましい。
シクロデキストリンは、複数のD-グルコースがグルコシド結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ糖の一種であり、グルコースが5個以上(例えば6~8個)結合した化合物である。
シクロデキストリンとしては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンが挙げられ、なかでも、γ-シクロデキストリンが好ましい。
【0166】
上記ポリヒドロキシ化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
洗浄液が上記ポリヒドロキシ化合物を含む場合、その含有量は、洗浄液の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%が更に好ましい。
また、ポリヒドロキシ化合物の含有量は、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.1~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましい。
【0167】
キレート剤としては、上述したキレート機能を有する有機酸以外であれば特に制限されない。他のキレート剤としては、縮合リン酸及びその塩等の無機酸系キレート剤が挙げられる。縮合リン酸及びその塩としては、例えば、ピロリン酸及びその塩、メタリン酸及びその塩、トリポリリン酸及びその塩、並びにヘキサメタリン酸及びその塩が挙げられる。
【0168】
フッ素化合物としては、例えば、特開2005-150236号公報の段落[0013]~[0015]に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0169】
有機溶媒(溶剤と呼ぶこともある)としては、公知の有機溶媒をいずれも使用できるが、アルコール、及びケトン等の親水性有機溶媒が好ましい。
【0170】
添加剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
添加剤の含有量は特に制限されないが、その含有量は、洗浄液の全質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましく、0.3~5質量%が更に好ましい。
また、添加剤の含有量は、洗浄液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.1~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましい。
【0171】
<水>
洗浄液は、溶媒として水を含むことが好ましい。
洗浄液に使用される水の種類は、半導体基板に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はなく、蒸留水、脱イオン水、及び純水(超純水)が使用できる。不純物をほとんど含まず、半導体基板の製造工程における半導体基板への影響がより少ない点で、純水(超純水)が好ましい。
洗浄液における水の含有量は、過ハロゲン酸、ハロゲン酸、上述した任意成分の残部であればよい。水の含有量は、例えば、洗浄液の全質量に対して、1質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましい。
【0172】
〔洗浄液の物性〕
<金属含有量>
洗浄液において、液中に不純物として含まれる金属(Fe、Co、Na、K、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Zn、Sn、及びAgの金属元素)の含有量(イオン濃度として測定される)がいずれも5質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以下であることがより好ましい。最先端の半導体素子の製造においては、更に高純度の洗浄液が求められることが想定されることから、その金属含有量が1質量ppmよりも低い値、すなわち、質量ppbオーダー以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが特に好ましく、10質量ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に制限されないが、0が好ましい。
【0173】
金属含有量の低減方法としては、例えば、洗浄液を製造する際に使用する原材料の段階、又は洗浄液の製造後の段階において、蒸留、及びイオン交換樹脂又はフィルタを用いたろ過等の精製処理を行うことが挙げられる。
他の金属含有量の低減方法としては、原材料又は製造された洗浄液を収容する容器として、後述する不純物の溶出が少ない容器を用いることが挙げられる。また、洗浄液の製造時に配管等から金属成分が溶出しないように、配管内壁にフッ素系樹脂のライニングを施すことも挙げられる。
【0174】
<粗大粒子>
洗浄液は、粗大粒子を含んでいてもよいが、その含有量が低いことが好ましい。ここで、粗大粒子とは、粒子の形状を球体とみなした場合における直径(粒径)が0.4μm以上である粒子を意味する。
洗浄液における粗大粒子の含有量としては、粒径0.4μm以上の粒子の含有量が、洗浄液1mLあたり1000個以下であることが好ましく、500個以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、0が挙げられる。また、下記の測定方法で測定された粒径0.4μm以上の粒子の含有量が検出限界値以下であることがより好ましい。
洗浄液に含まれる粗大粒子は、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物、及び無機固形物等の粒子、並びに洗浄液の調製中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物、及び無機固形物等の粒子であって、最終的に洗浄液中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
洗浄液中に存在する粗大粒子の含有量は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して液相で測定できる。
粗大粒子の除去方法としては、例えば、後述するフィルタリング等の精製処理が挙げられる。
【0175】
洗浄液は、その原料を複数に分割したキットとしてもよい。
【0176】
〔洗浄液の製造〕
洗浄液は、公知の方法により製造できる。以下、洗浄液の製造方法について詳述する。
【0177】
<調液工程>
洗浄液の調液方法は特に制限されず、例えば、上述した各成分を混合することにより洗浄液を製造できる。上述した各成分を混合する順序、及び/又はタイミングは特に制限されず、例えば、精製した純水を入れた容器に、過ハロゲン酸及びハロゲン酸、並びに任意成分を順次添加した後、攪拌して混合するとともに、pH調整剤を添加して混合液のpHを調整することにより、調製する方法が挙げられる。また、水及び各成分を容器に添加する場合、一括して添加してもよいし、複数回にわたって分割して添加してもよい。
【0178】
洗浄液の調液に使用する攪拌装置及び攪拌方法は、特に制限されず、攪拌機又は分散機として公知の装置を使用すればよい。攪拌機としては、例えば、工業用ミキサー、可搬型攪拌器、メカニカルスターラー、及びマグネチックスターラーが挙げられる。分散機としては、例えば、工業用分散器、ホモジナイザー、超音波分散器、及びビーズミルが挙げられる。
【0179】
洗浄液の調液工程における各成分の混合、及び後述する精製処理、並びに製造された洗浄液の保管は、40℃以下で行うことが好ましく、30℃以下で行うことがより好ましい。また、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。上記の温度範囲で洗浄液の調液、処理及び/又は保管を行うことにより、長期間安定に性能を維持できる。
【0180】
(精製処理)
洗浄液を調製するための原料のいずれか1種以上に対して、事前に精製処理を行うことが好ましい。精製処理としては、特に制限されず、蒸留、イオン交換、及びろ過等の公知の方法が挙げられる。
精製の程度としては、特に制限されないが、原料の純度が99質量%以上となるまで精製することが好ましく、原液の純度が99.9質量%以上となるまで精製することがより好ましい。
【0181】
精製処理の具体的な方法としては、例えば、原料をイオン交換樹脂又はRO膜(Reverse Osmosis Membrane)等に通液する方法、原料の蒸留、及び後述するフィルタリングが挙げられる。
精製処理として、上述した精製方法を複数組み合わせて実施してもよい。例えば、原料に対して、RO膜に通液する1次精製を行った後、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、又は混床型イオン交換樹脂からなる精製装置に通液する2次精製を実施してもよい。
また、精製処理は、複数回実施してもよい。
【0182】
(フィルタリング)
フィルタリングに用いるフィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に制限されない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、並びにポリエチレン及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度又は超高分子量を含む)からなるフィルタが挙げられる。これらの材料のなかでもポリエチレン、ポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)、フッ素系樹脂(PTFE及びPFAを含む)、及びポリアミド系樹脂(ナイロンを含む)からなる群より選択される材料が好ましく、フッ素系樹脂のフィルタがより好ましい。これらの材料により形成されたフィルタを使用して原料のろ過を行うことで、欠陥の原因となり易い極性の高い異物を効果的に除去できる。
【0183】
フィルタの臨界表面張力としては、70~95mN/mが好ましく、75~85mN/mがより好ましい。なお、フィルタの臨界表面張力の値は、製造メーカーの公称値である。臨界表面張力が上記範囲のフィルタを使用することで、欠陥の原因となり易い極性の高い異物を効果的に除去できる。
【0184】
フィルタの孔径は、2~20nmであることが好ましく、2~15nmであることがより好ましい。この範囲とすることにより、ろ過詰まりを抑えつつ、原料中に含まれる不純物及び凝集物等の微細な異物を確実に除去することが可能となる。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照できる。
【0185】
フィルタリングは1回のみであってもよいし、2回以上行ってもよい。フィルタリングを2回以上行う場合、用いるフィルタは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0186】
また、フィルタリングは室温(25℃)以下で行うことが好ましく、23℃以下がより好ましく、20℃以下が更に好ましい。また、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。上記の温度範囲でフィルタリングを行うことにより、原料中に溶解する粒子性の異物及び不純物の量を低減し、異物及び不純物を効率的に除去できる。
【0187】
(容器)
洗浄液(キット又は後述する希釈液の態様を含む)は、腐食性等が問題とならない限り、任意の容器に充填して保管、運搬、及び使用できる。
【0188】
容器としては、半導体用途向けに、容器内のクリーン度が高く、容器の収容部の内壁から各液への不純物の溶出が抑制された容器が好ましい。そのような容器としては、半導体洗浄液用容器として市販されている各種容器が挙げられ、例えば、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、及びコダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」等が挙げられるが、これらに制限されない。
また、洗浄液を収容する容器としては、その収容部の内壁等の各液との接液部が、フッ素系樹脂(パーフルオロ樹脂)、又は防錆及び金属溶出防止処理が施された金属で形成された容器が好ましい。
容器の内壁は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂、もしくは、これとは異なる樹脂、又は、ステンレス、ハステロイ、インコネル、及びモネル等、防錆及び金属溶出防止処理が施された金属から形成されることが好ましい。
【0189】
上記の異なる樹脂としては、フッ素系樹脂(パーフルオロ樹脂)が好ましい。このように、内壁がフッ素系樹脂である容器を用いることで、内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はポリエチレン-ポリプロピレン樹脂である容器と比べて、エチレン又はプロピレンのオリゴマーの溶出という不具合の発生を抑制できる。
このような内壁がフッ素系樹脂である容器の具体例としては、例えば、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム等が挙げられる。また、特表平3-502677号公報の第4頁、国際公開第2004/016526号明細書の第3頁、並びに国際公開第99/46309号明細書の第9頁及び16頁等に記載の容器も使用できる。
【0190】
また、容器の内壁には、上述したフッ素系樹脂の他に、石英及び電解研磨された金属材料(すなわち、電解研磨済みの金属材料)も好ましく用いられる。
上記電解研磨された金属材料の製造に用いられる金属材料は、クロム及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種を含み、クロム及びニッケルの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料であることが好ましく、例えば、ステンレス鋼、及びニッケル-クロム合金等が挙げられる。
金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計は、金属材料全質量に対して30質量%以上がより好ましい。
なお、金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、一般的に90質量%以下が好ましい。
【0191】
金属材料を電解研磨する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、特開2015-227501号公報の段落[0011]-[0014]、及び特開2008-264929号公報の段落[0036]-[0042]等に記載された方法を使用できる。
【0192】
これらの容器は、洗浄液を充填する前にその内部が洗浄されることが好ましい。洗浄に使用される液体は、その液中における金属不純物量が低減されていることが好ましい。洗浄液は、製造後にガロン瓶又はコート瓶等の容器にボトリングし、輸送、保管されてもよい。
【0193】
保管における洗浄液中の成分の変化を防ぐ目的で、容器内を純度99.99995体積%以上の不活性ガス(窒素、又はアルゴン等)で置換しておいてもよい。特に、含水率が少ないガスが好ましい。また、輸送、及び保管に際しては、常温でもよいが、変質を防ぐため、-20℃~20℃の範囲に温度制御してもよい。
【0194】
(クリーンルーム)
洗浄液の製造、容器の開封及び洗浄、洗浄液の充填等を含めた取り扱い、処理分析、並びに測定は、全てクリーンルームで行うことが好ましい。クリーンルームは、14644-1クリーンルーム基準を満たすことが好ましい。ISO(国際標準化機構)クラス1、ISOクラス2、ISOクラス3、及びISOクラス4のいずれかを満たすことが好ましく、ISOクラス1又はISOクラス2を満たすことがより好ましく、ISOクラス1を満たすことが更に好ましい。
【0195】
<希釈工程>
上述した洗浄液は、水等の希釈剤を用いて希釈する希釈工程を経た後、半導体基板の洗浄に供されることが好ましい。
【0196】
希釈工程における洗浄液の希釈率は、各成分の種類、及び含有量、並びに洗浄対象である半導体基板等に応じて適宜調整すればよいが、希釈前の洗浄液に対する希釈洗浄液の比率は、体積比で10~10000倍が好ましく、20~3000倍がより好ましく、50~1000倍が更に好ましい。
また、本発明の効果がより優れる点で、洗浄液は水で希釈されることが好ましい。
【0197】
洗浄液を希釈する希釈工程の具体的方法は、特に制限されず、上記の洗浄液の調液工程に準じて行えばよい。希釈工程で使用する攪拌装置、及び攪拌方法もまた、特に制限されず、上記の洗浄液の調液工程において挙げた公知の攪拌装置を使用して行えばよい。
【0198】
希釈工程に用いる水に対しては、事前に精製処理を行うことが好ましい。また、希釈工程により得られた希釈洗浄液に対して、精製処理を行うことが好ましい。
精製処理としては、特に制限されず、上述した洗浄液に対する精製処理として記載した、イオン交換樹脂又はRO膜等を用いたイオン成分低減処理、及びフィルタリングを用いた異物除去が挙げられ、これらのうちいずれかの処理を行うことが好ましい。
【0199】
[洗浄液の用途]
洗浄液は、化学機械研磨(CMP)処理が施された半導体基板を洗浄する洗浄工程に使用される。また、洗浄液は、半導体基板の製造プロセスにおける半導体基板の洗浄に使用することもできる。
なかでも、半導体基板がRu含有物及びRuO含有物を含む場合、本処理方法が好適に用いられる。
半導体基板の洗浄には、洗浄液を希釈して得られる希釈洗浄液を使用してもよい。
【0200】
〔洗浄対象物〕
洗浄液の洗浄対象物としては、例えば、金属含有物を有する半導体基板が挙げられる。
なお、本明細書における「半導体基板上」とは、例えば、半導体基板の表裏、側面、及び、溝内等のいずれも含む。また、半導体基板上の金属含有物とは、半導体基板の表面上に直接金属含有物がある場合のみならず、半導体基板上に他の層を介して金属含有物がある場合も含む。
洗浄対象物としては、Ru含有物及びRuO含有物からなる群より選択される少なくとも1種を含む半導体基板が好ましい。上記の半導体基板としては、例えば、Ru含有物と、Ru含有物の表層に形成されたRuO含有層との積層体が挙げられる。
【0201】
金属含有物に含まれる金属は、例えば、Ru(ルテニウム)、Cu(銅)、Co(コバルト)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Cr(クロム)、Hf(ハフニウム)、Os(オスミウム)、Pt(白金)、Ni(ニッケル)、Mn(マンガン)、Zr(ジルコニウム)、Mo(モリブデン)、La(ランタン)、及びIr(イリジウム)からなる群より選択される少なくとも1種の金属Mが挙げられる。
【0202】
金属含有物は、金属(金属原子)を含む物質であればよく、例えば、金属Mの単体、金属Mを含む合金、金属Mの酸化物、金属Mの窒化物、及び金属Mの酸窒化物が挙げられる。
また、金属含有物は、これらの化合物のうちの2種以上を含む混合物でもよい。
なお、上記酸化物、窒化物、及び酸窒化物は、金属を含む、複合酸化物、複合窒化物、及び複合酸窒化物でもよい。
金属含有物中の金属原子の含有量は、金属含有物の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。上限は、金属含有物が金属そのものであってもよいことから、100質量%以下である。
【0203】
半導体基板は、金属Mを含む金属M含有物を有することが好ましく、Ru、Cu、Co、W、Ti、及びTaからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属含有物を有することがより好ましく、Ru、Cu、Co、Ti、Ta、及びWからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属含有物を有することが更に好ましく、Ruを含む金属含有物を有することが特に好ましい。
【0204】
洗浄液の洗浄対象物である半導体基板は、特に制限されず、例えば、半導体基板を構成するウエハの表面に、金属配線膜、バリアメタル、及び絶縁膜を有する基板が挙げられる。
【0205】
半導体基板を構成するウエハの具体例としては、シリコン(Si)ウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ、シリコンを含む樹脂系ウエハ(ガラスエポキシウエハ)等のシリコン系材料からなるウエハ、ガリウムリン(GaP)ウエハ、ガリウムヒ素(GaAs)ウエハ、及びインジウムリン(InP)ウエハが挙げられる。
シリコンウエハとしては、シリコンウエハに5価の原子(例えば、リン(P)、ヒ素(As)、及びアンチモン(Sb)等)をドープしたn型シリコンウエハ、並びにシリコンウエハに3価の原子(例えば、ホウ素(B)、及びガリウム(Ga)等)をドープしたp型シリコンウエハであってもよい。シリコンウエハのシリコンとしては、例えば、アモルファスシリコン、単結晶シリコン、多結晶シリコン、及びポリシリコンのいずれであってもよい。
なかでも、洗浄液は、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ、及びシリコンを含む樹脂系ウエハ(ガラスエポキシウエハ)等のシリコン系材料からなるウエハに有用である。
【0206】
半導体基板は、上記したウエハに絶縁膜を有していてもよい。
絶縁膜の具体例としては、シリコン酸化膜(例えば、二酸化ケイ素(SiO)膜、及びオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC)膜(TEOS膜)等)、シリコン窒化膜(例えば、窒化シリコン(Si)、及び窒化炭化シリコン(SiNC)等)、並びに、低誘電率(Low-k)膜(例えば、炭素ドープ酸化ケイ素(SiOC)膜、及びシリコンカーバイド(SiC)膜等)が挙げられる。
【0207】
半導体基板が有する金属膜としては、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、コバルト(Co)、及びタングステン(W)からなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属膜が挙げられる。
半導体基板は、ルテニウム、銅、及びコバルトからなる群より選択される少なくとも1種を含む金属膜を有することが好ましく、ルテニウムを含む金属膜を有することがより好ましい。また、半導体基板は、タングステンを含む金属膜を有することも好ましい。
【0208】
ルテニウム含有膜としては、例えば、金属ルテニウムのみからなる配線膜(ルテニウム配線膜)、及び金属ルテニウムと他の金属とからなる合金製の配線膜(ルテニウム合金配線膜)が挙げられる。
【0209】
銅含有膜としては、例えば、金属銅のみからなる配線膜(銅配線膜)、及び金属銅と他の金属とからなる合金製の配線膜(銅合金配線膜)が挙げられる。
銅合金配線膜の具体例としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)から選択される1種以上の金属と銅とからなる合金製の配線膜が挙げられる。より具体的には、銅-アルミニウム合金配線膜(CuAl合金配線膜)、銅-チタン合金配線膜(CuTi合金配線膜)、銅-クロム合金配線膜(CuCr合金配線膜)、銅-マンガン合金配線膜(CuMn合金配線膜)、銅-タンタル合金配線膜(CuTa合金配線膜)、及び銅-タングステン合金配線膜(CuW合金配線膜)等が挙げられる。
【0210】
コバルト含有膜(コバルトを主成分とする金属膜)としては、例えば、金属コバルトのみからなる金属膜(コバルト金属膜)、及び金属コバルトと他の金属とからなる合金製の金属膜(コバルト合金金属膜)が挙げられる。
コバルト合金金属膜の具体例としては、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)から選択される1種以上の金属とコバルトとからなる合金製の金属膜が挙げられる。より具体的には、コバルト-チタン合金金属膜(CoTi合金金属膜)、コバルト-クロム合金金属膜(CoCr合金金属膜)、コバルト-鉄合金金属膜(CoFe合金金属膜)、コバルト-ニッケル合金金属膜(CoNi合金金属膜)、コバルト-モリブデン合金金属膜(CoMo合金金属膜)、コバルト-パラジウム合金金属膜(CoPd合金金属膜)、コバルト-タンタル合金金属膜(CoTa合金金属膜)、及びコバルト-タングステン合金金属膜(CoW合金金属膜)等が挙げられる。
【0211】
タングステン含有膜(タングステンを主成分とする金属膜)としては、例えば、タングステンのみからなる金属膜(タングステン金属膜)、及びタングステンと他の金属とからなる合金製の金属膜(タングステン合金金属膜)が挙げられる。
タングステン合金金属膜の具体例としては、例えば、タングステン-チタン合金金属膜(WTi合金金属膜)、及びタングステン-コバルト合金金属膜(WCo合金金属膜)等が挙げられる。
タングステン含有膜は、一般的にはバリアメタルとして使用されることが多い。
【0212】
半導体基板を構成するウエハ上に、上記の絶縁膜、銅含有配線膜、コバルト含有膜、及びタングステン含有膜を形成する方法としては、通常この分野で行われる方法であれば特に制限はない。
絶縁膜の形成方法としては、例えば、半導体基板を構成するウエハに対して、酸素ガス存在下で熱処理を行うことによりシリコン酸化膜を形成し、次いで、シラン及びアンモニアのガスを流入して、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によりシリコン窒化膜を形成する方法が挙げられる。
ルテニウム含有配線膜、銅含有配線膜、コバルト含有膜、及びタングステン含有膜の形成方法としては、例えば、上記の絶縁膜を有するウエハ上に、レジスト等の公知の方法で回路を形成し、次いで、鍍金及びCVD法等の方法により、ルテニウム含有配線膜、銅含有配線膜、コバルト含有膜、及びタングステン含有膜を形成する方法が挙げられる。
【0213】
<CMP処理>
CMP処理は、例えば、金属配線膜、バリアメタル、及び絶縁膜を有する基板の表面を、研磨微粒子(砥粒)を含む研磨スラリーを用いる化学作用と機械的研磨の複合作用で平坦化する処理である。
CMP処理が施された半導体基板の表面には、CMP処理で使用した砥粒(例えば、シリカ及びアルミナ等)、研磨された金属配線膜、及びバリアメタルに由来する金属不純物(金属残渣)等の不純物が残存することがある。これらの不純物は、例えば、配線間を短絡させ、半導体基板の電気的特性を劣化させるおそれがあるため、CMP処理が施された半導体基板は、これらの不純物を表面から除去するための洗浄処理に供される。
CMP処理が施された半導体基板の具体例としては、精密工学会誌 Vol.84、No.3、2018に記載のCMP処理が施された基板が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0214】
〔半導体基板の洗浄方法〕
半導体基板の洗浄方法は、上記の洗浄液を用いて、CMP処理が施された半導体基板を洗浄する洗浄工程を含むものであれば特に制限されない。半導体基板の洗浄方法は、上記の希釈工程で得られる希釈洗浄液をCMP処理が施された半導体基板に適用して洗浄する工程を含むことが、好ましい。
【0215】
洗浄液を用いて半導体基板を洗浄する洗浄工程は、CMP処理された半導体基板に対して行われる公知の方法であれば特に制限されず、半導体基板に洗浄液を供給しながらブラシ等の洗浄部材を半導体基板の表面に物理的に接触させて残渣物等を除去するブラシスクラブ洗浄、洗浄液に半導体基板を浸漬する浸漬式、半導体基板を回転させながら洗浄液を滴下するスピン(滴下)式、及び洗浄液を噴霧する噴霧(スプレー)式等の通常この分野で行われる様式を適宜採用してもよい。浸漬式の洗浄では、半導体基板の表面に残存する不純物をより低減できる点で、半導体基板が浸漬している洗浄液に対して超音波処理を施すことが好ましい。
上記洗浄工程は、1回のみ実施してもよく、2回以上実施してもよい。2回以上洗浄する場合には同じ方法を繰り返してもよいし、異なる方法を組み合わせてもよい。
【0216】
半導体基板の洗浄方法としては、枚葉方式、及びバッチ方式のいずれを採用してもよい。枚葉方式とは、一般的に半導体基板を1枚ずつ処理する方式であり、バッチ方式とは、一般的に複数枚の半導体基板を同時に処理する方式である。
【0217】
半導体基板の洗浄に用いる洗浄液の温度は、通常この分野で行われる温度であれば特に制限はない。一般的には室温(25℃)で洗浄が行われるが、洗浄性の向上や部材への対ダメージ性を抑えるために、温度は任意に選択できる。洗浄液の温度としては、10~60℃が好ましく、15~50℃がより好ましい。
【0218】
半導体基板の洗浄における洗浄時間は、洗浄液に含まれる成分の種類及び含有量等に依存するため一概に言えるものではないが、実用的には、10秒間~2分間が好ましく、20秒間~1分30秒間がより好ましく、30秒間~1分間が更に好ましい。
【0219】
半導体基板の洗浄工程における洗浄液の供給量(供給速度)は特に制限されないが、50~5000mL/分が好ましく、500~2000mL/分がより好ましい。
【0220】
半導体基板の洗浄において、洗浄液の洗浄能力をより増進するために、機械的攪拌方法を用いてもよい。
機械的攪拌方法としては、例えば、半導体基板上で洗浄液を循環させる方法、半導体基板上で洗浄液を流過又は噴霧させる方法、及び超音波又はメガソニックにて洗浄液を攪拌する方法等が挙げられる。
【0221】
上記の半導体基板の洗浄の後に、半導体基板を溶媒ですすいで清浄する工程(以下「リンス工程」と称する。)を行ってもよい。
リンス工程は、半導体基板の洗浄工程の後に連続して行われ、リンス液を用いて5秒間~5分間にわたってすすぐ工程であることが好ましい。リンス工程は、上述の機械的攪拌方法を用いて行ってもよい。
【0222】
リンス液としては、例えば、水(好ましくは脱イオン(DI:De Ionize)水)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。また、pHが8超である水性リンス液(希釈した水性の水酸化アンモニウム等)を利用してもよい。
リンス液を半導体基板に接触させる方法としては、上述した洗浄液を半導体基板に接触させる方法を同様に適用できる。
【0223】
また、上記リンス工程の後に、半導体基板を乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。
乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、スピン乾燥法、半導体基板上に乾性ガスを流過させる方法、ホットプレート又は赤外線ランプのような加熱手段によって基板を加熱する方法、マランゴニ乾燥法、ロタゴニ乾燥法、IPA(イソプロピルアルコール)乾燥法、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【実施例
【0224】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、及び割合等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0225】
以下の実施例において、洗浄液のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、型式「F-74」)を用いて、JIS Z8802-1984に準拠して25℃において測定した。
また、実施例及び比較例の洗浄液の製造にあたって、容器の取り扱い、洗浄液の調液、充填、保管、及び分析測定は、全てISOクラス2以下を満たすレベルのクリーンルームで行った。
【0226】
[洗浄液の原料]
洗浄液を製造するために、以下の化合物を使用した。なお、実施例で使用した各種成分はいずれも、半導体グレードに分類されるもの、又はそれに準ずる高純度グレードに分類されるものを使用した。
【0227】
〔過ハロゲン酸〕
・ オルト過ヨウ素酸:富士フイルム和光純薬(株)製
〔ハロゲン酸〕
・ ヨウ素酸:富士フイルム和光純薬(株)製
〔有機酸〕
・ ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA):富士フイルム和光純薬(株)製
・ エチレンジアミン四酢酸(EDTA):キレスト社製
・ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP):サーモフォス社製「Dequest 2000」
・ クエン酸(CA):扶桑化学工業(株)製
〔防食剤〕
<リン酸エステル酸系界面活性剤>
・(CHPh-(OE)OPO:竹本油脂社製、商品名「フォスファノールFS-3PG」
<ヘテロ環式化合物>
・アゾール化合物1:2,2’-{[(5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ}ジエタノール
・ 3-amino-5-methyl-pyrazole:東京化成工業(株)製
・ 1,2,4-triazole:富士フイルム和光純薬(株)製
〔有機塩基化合物〕
<第1アミン>
・ 2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP):富士フイルム和光純薬(株)製
<第2アミン>
・ テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH):富士フイルム和光純薬(株)製
・ テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH):富士フイルム和光純薬(株)製
・ テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH):富士フイルム和光純薬(株)製
・ テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(TBPH):富士フイルム和光純薬(株)製
・ ジアザビシクロウンデセン(DBU):富士フイルム和光純薬(株)製
〔pH調整剤〕
・ 硫酸(HSO):富士フイルム和光純薬(株)製)
〔添加剤〕
<重合体>
・ ポリアクリル酸(Mw=700,000):東亞合成株式会社製、商品名「ジュリマーAC-10H」
・ ポリアクリル酸(Mw=55,000):東亞合成株式会社製、商品名「ジュリマーAC-10L」
・ ポリアクリル酸(Mw=6,000):東亞合成株式会社製、商品名「アロンA-10SL」
・ ポリアクリル酸(Mw=1000以上2000未満):Aldrich社製、商品名「ポリ(アクリル酸)」
・ ポリマレイン酸(Mw=2,000):日油株式会社製、商品名「ノンポールPWA-50W」
【0228】
[洗浄液の製造]
次に、洗浄液の製造方法について、実施例1を例に説明する。
超純水に、オルト過ヨウ素酸、ヨウ素酸、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、及びジアザビシクロウンデセン(DBU)を、表1及び表2に記載の含有量となる量でそれぞれ添加した後、調製される洗浄液のpHが11となるように、硫酸を添加した。得られた混合液を攪拌機によって十分に攪拌することにより、実施例1の洗浄液を得た。
【0229】
実施例1の製造方法に準じて、表1及び表2に示す組成を有する実施例2~51及び比較例1の洗浄液を、それぞれ製造した。
【0230】
表中、「質量(%)」欄は、各成分の、洗浄液の全質量に対する含有量(単位:質量%)を示す。
「比率」((A)/(B))欄の数値は、ハロゲン酸の含有量に対する過ハロゲン酸の含有量の質量比〔過ハロゲン酸の含有量/ハロゲン酸の含有量〕の値を表す。
「pH調整剤」欄の「*1」は、必要な場合、HSOを、調製される洗浄液のpHが「pH」欄の数値になる量で添加したことを意味する。
「水」欄の「残部」は、洗浄液中において表1及び表2に記載の各成分の以外の残りを水が構成していることを意味する。
「pH」欄の数値は、上記のpHメーターにより測定した洗浄液の25℃におけるpHを示す。
「希釈後pH」欄の数値は、上記のpHメーターにより測定した、超純水により体積比で100倍に希釈した洗浄液の25℃におけるpHを示す。
【0231】
[除去性能の評価]
上記の方法で製造した洗浄液を用いて、ルテニウム又は酸化ルテニウムを有する金属膜に対する除去性能を評価した。
各実施例及び各比較例の洗浄液2mLを分取し、超純水により体積比で100倍に希釈して、希釈洗浄液を調製した(200mL)。
表面に、ルテニウム、又は酸化ルテニウムを有する金属膜のウエハ(直径12インチ)をカットし、厚さ10nm、縦2cm×横2cmのウエハクーポンをそれぞれ準備した。
希釈洗浄液中に、ウエハクーポンを浸漬し、室温下、攪拌回転数250rpmにて各金属膜の30分間攪拌した。攪拌後の各金属膜を下記の方法で観察して、消失した膜厚の平均値を算出し、単位時間当たりの除去速度を算出した。そして、各金属膜に対する除去速度から、Ruの除去速度に対するRuOの除去速度の比(RuO/Ru)を算出した。
表面の観察は、Applied Materials technology社製Review SEM観察装置を用いて、ランダムに100箇所の厚さを測定した。
下記の評価基準により洗浄液の除去性能を評価した。なお、RuOの除去速度は速いほど好ましく、RuO/Ruの比は高いほど好ましい。
(RuO評価基準(RuO除去速度))
A:除去速度が2A/min以上
B:除去速度が1A/min以上2A/min未満
C:除去速度が1A/min未満
(RuO/Ru評価基準(RuO/Ru選択比))
A:RuO/Ruが5以上
B:RuO/Ruが3以上5未満
C:RuO/Ruが1以上3未満
D:RuO/Ruが1未満
【0232】
【表1】
【0233】
【表2】
【0234】
【表3】
【0235】
[結果]
表1及び表2から明らかなように、本発明の洗浄液はRuOの除去性能の選択性が優れることが確認された。
【0236】
実施例22~29、31との比較から、使用される洗浄液のpH値が2.0~12.0である場合、より効果が優れることが確認された。
実施例1~8、17~20との比較から、ハロゲン酸の含有量に対する過ハロゲン酸の含有量の質量比の値が、0.00001~50である場合、より効果が優れることが確認された。
実施例29と実施例30との比較から、有機塩基化合物を更に含む場合、より効果が優れることが確認された。
実施例47~51の比較より、重合体Bを含む場合、より効果が優れることが確認された。