(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241129BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20241129BHJP
C08K 3/105 20180101ALI20241129BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241129BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20241129BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241129BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20241129BHJP
C08G 59/50 20060101ALN20241129BHJP
C08F 290/14 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K9/04
C08K3/105
C08K3/36
C08L51/04
B32B27/20
H05K3/28 D
H05K3/28 F
C08G59/50
C08F290/14
(21)【出願番号】P 2023173218
(22)【出願日】2023-10-04
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2022160507
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】川田 早良
(72)【発明者】
【氏名】志村 優之
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 沙和子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勉
(72)【発明者】
【氏名】濱島 喬介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大介
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194669(JP,A)
【文献】特開2017-116652(JP,A)
【文献】特開2018-169440(JP,A)
【文献】特開2016-066006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性樹脂と、
(B)表面処理されたバリウム化合物と、
(C)表面処理されたシリカと、
(D)ゴム粒子と
を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(B)表面処理されたバリウム化合物と前記(C)表面処理されたシリカとの含有量の合計が、前記硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して、固形分基準で20~80質量%であり、
前記(B)表面処理されたバリウム化合物と前記(C)表面処理されたシリカとの固形分基準の質量比が1:1~1:4であ
り、
前記(B)表面処理されたバリウム化合物が、表面に反応性官能基を化学吸着または物理吸着させたバリウム化合物であり、
前記(C)表面処理されたシリカが、表面に反応性官能基を化学吸着または物理吸着させたシリカであることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)硬化性樹脂が(A-1)光硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)硬化性樹脂が(A-2)熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)ゴム粒子がコアシェルゴム粒子を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(E)光重合開始剤をさらに含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
第一のフィルムと、該第一のフィルムの少なくとも一方の面に形成された請求項1に記載の硬化性樹脂組成物からなる樹脂層とを有する、ドライフィルム。
【請求項7】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物、または請求項6に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させた、硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を備える、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関し、特にソルダーレジスト層の形成に好適に用いられる硬化性樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、該硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を有するドライフィルム、該硬化性樹脂組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および該硬化物を備えるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、プリント配線板のパターンの微細化、実装面積の縮小化、部品実装の高密度化の必要性が増している。そのため、プリント配線板におけるソルダーレジストを形成するための硬化性樹脂組成物には、高い解像性が要求される。一方で、プリント配線板の製造および使用においては様々な段階において高熱がかかるため、プリント配線板上のソルダーレジストには、熱応力に対する耐性も要求される。
【0003】
従来、このような熱応力に対する耐性を高めるために、硬化性樹脂組成物に高耐熱性の樹脂や無機材料を添加することにより、硬化性樹脂組成物の熱線膨張率(CTE)を制御する試みがなされている。特に、硬化性樹脂組成物の低CTE化だけでなく、クラック耐性等の物性面やコストや取り扱いの容易さから、硬化性樹脂組成物にシリカを添加することが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、硬化性樹脂組成物中にシリカ、特に球状シリカのような光透過性の低い無機フィラーを添加すると、硬化性樹脂組成物の塗膜を光照射により硬化させて開口パターン形成する際に、シリカが光の透過を阻害して塗膜深部の硬化性樹脂組成物の硬化性を低下させる。その結果、現像時にソルダーレジストの開口パターンの底部が過剰に溶解する現象(いわゆるアンダーカット)が発生し、細線パターンの形成不良を招くといった解像性の低下の問題があった。
【0005】
このように硬化性樹脂組成物中にシリカを添加した場合の解像性の向上を目的として、シリカに加えて硫酸バリウムを添加する方法が知られている。例えば、特許文献1には、球状シリカと硫酸バリウムとを体積比で1:(0.5~5)で含有する硬化性樹脂組成物により形成されたソルダーレジストが、温度サイクル試験(TCT:Temperture Cycling Test)に対して優れた耐性を示すことが開示されている。
【0006】
ところで、近年の半導体パッケージには、その高速化、多機能化等の観点から、FC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)基板が用いられることが増えている。さらに、半導体パッケージには、同じく高速化、多機能化等の観点から、パターンの微細化およびチップの大型化が要求されている。一方で、チップ面積の増大に伴い駆動時の発熱量が大きくなるため、半導体パッケージにはこれまで以上に過酷な温度変化に対する信頼性が要求されている。したがって、FC-BGA基板の製造に用いられるソルダーレジストにも、より高い信頼性が要求されている。従来、ソルダーレジストの信頼性の評価にはTCTが用いられてきたが、近年、ソルダーレジストが高い信頼性を有するようになり、TCTではその差を見極めづらくなっており、ソルダーレジストの信頼性の評価が困難になっている。そこで、FC-BGA基板用のソルダーレジストの信頼性の評価においては、従来のTCTに代わり、より条件が過酷な熱衝撃試験(TST:Thermal Shock Test)が行われるのが一般的である。TCTは気槽で行われる冷熱サイクル試験であるのに対し、TSTは液槽で行われる冷熱サイクル試験である。気体よりも液体の方が熱伝導効率が高いため、TSTではTCTよりも基板が急激な温度変化にさらされることになり、結果として、TSTではTCTよりも基板上に形成されたソルダーレジストにおけるクラックが発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況下、良好な解像性と、従来のTCTよりも過酷な条件下における良好なクラック耐性とを両立した硬化物を形成することができる硬化性樹脂組成物を提供することが技術的課題として存在する。
【0009】
したがって、本発明の目的は、良好な解像性と、従来のTCTよりも過酷な条件下における良好なクラック耐性とを両立した硬化物を形成することができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を有するドライフィルム、該硬化性樹脂組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および該硬化物を備えるプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究した結果、(A)硬化性樹脂と、(B)表面処理されたバリウム化合物と、(C)表面処理されたシリカとを含む硬化性樹脂組成物において、(D)ゴム粒子をさらに配合し、(B)表面処理されたバリウム化合物と(C)表面処理されたシリカの含有量との合計を硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して固形分基準で20~80質量%に調整し、(B)表面処理されたバリウム化合物と(C)表面処理されたシリカとの固形分基準の質量比を1:1~1:4に調整することにより、上述した課題を解決できるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
[1](A)硬化性樹脂と、
(B)表面処理されたバリウム化合物と、
(C)表面処理されたシリカと、
(D)ゴム粒子と
を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(B)表面処理されたバリウム化合物と前記(C)表面処理されたシリカとの含有量の合計が、前記硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して、固形分基準で20~80質量%であり、
前記(B)表面処理されたバリウム化合物と前記(C)表面処理されたシリカとの固形分基準の質量比が1:1~1:4であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
[2]前記(A)硬化性樹脂が(A-1)光硬化性樹脂を含む、[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3]前記(A)硬化性樹脂が(A-2)熱硬化性樹脂を含む、[1]または[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]前記(D)ゴム粒子がコアシェルゴム粒子を含む、[1]~[3]いずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[5](E)光重合開始剤をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[6]第一のフィルムと、該第一のフィルムの少なくとも一方の面に形成された[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなる樹脂層とを有する、ドライフィルム。
[7][1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物、または[6]に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させた、硬化物。
[8][7]に記載の硬化物を備える、プリント配線板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な解像性と、従来のTCTよりも過酷な条件下における良好なクラック耐性とを両立した硬化物を形成することができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を有するドライフィルム、該硬化性樹脂組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および該硬化物を備えるプリント配線板が提供される。特に、本発明によれば、硬化性樹脂組成物の硬化物において、良好な解像性と、TCTよりも過酷なTSTにおける良好なクラック耐性とを両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)硬化性樹脂と、(B)表面処理されたバリウム化合物と、(C)表面処理されたシリカと、(D)ゴム粒子とを必須成分として含み、(B)表面処理されたバリウム化合物と(C)表面処理されたシリカとの含有量の合計が、硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して固形分基準で20~80質量%に調整され、(B)表面処理されたバリウム化合物と(C)表面処理されたシリカとの固形分基準の質量比(表面処理されたバリウム化合物の質量:表面処理されたシリカの質量)が1:1~1:4に調整されていることを特徴とする。本発明の硬化性樹脂組成物は、特に(D)ゴム粒子を含むこと、(B)表面処理されたバリウム化合物と(C)表面処理されたシリカとの含有量の合計が硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して固形分基準で20~80質量%に調整されること、および(B)表面処理されたバリウム化合物と(C)表面処理されたシリカとの固形分基準の質量比が1:1~1:4に調整されることにより、良好な解像性と、TCTよりも過酷なTSTにおける良好なクラック耐性とが両立した硬化物を形成することができる。このように、硬化性樹脂組成物において、ゴム粒子を配合し、表面処理されたバリウム化合物と表面処理されたシリカとの含有量の合計を硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して固形分基準で20~80質量%に調整し、表面処理されたバリウム化合物と表面処理されたシリカとの固形分基準の質量比を1:1~1:4に調整した場合に、良好な解像性と、従来のTCTよりも過酷な条件下における良好なクラック耐性とを両立することができる理由は定かではないが、以下のように推論される。シリカやバリウムのようなフィラーは熱線膨張率(CTE)が低いため、表面処理されたシリカやバリウムを硬化性樹脂組成物に配合することによって、冷熱サイクルにおける硬化性樹脂組成物の寸法変化が小さくなり、応力の発生が抑制され、その結果、硬化性樹脂組成物のクラック耐性を向上させることができると考えられる。特にシリカはCTEが低いため、硬化性樹脂組成物に配合することによるクラック耐性を向上させる効果が大きい一方、表面処理されたシリカの配合量を増大させることにより硬化性樹脂組成物のクラック耐性を向上させることができるが、その配合量が大きすぎると解像性が低下するという問題を生じ得る。これに対し、表面処理されたシリカの一部を表面処理されたバリウム化合物に代えて配合すると、小径のパターン形成における解像性を向上させることができる。これは、硫酸バリウムと樹脂成分との屈折率の差が小さいため、露光工程において光が硬化性樹脂組成物中を直進しやすくなり、その結果、解像性を向上させることができると考えられる。しかしながら、硫酸バリウムよりもシリカの方がCTEが低いため、クラック耐性向上のためにはシリカを多く配合することが好ましいと考えられる。一方、硬化性樹脂組成物にゴム粒子を配合すると、冷熱サイクルにおいて発生する応力が緩和され、良好なクラック耐性を維持しつつ表面処理されたシリカの配合量を減らすことができ、高い解像性を得ることができると考えられる。すなわち、ゴム粒子を配合して冷熱サイクルにおいて発生する応力を緩和することにより、クラック耐性の向上に必要な表面処理されたシリカの配合量を低減し、さらに、表面処理されたバリウム化合物および表面処理されたシリカの含有量の合計、ならびにそれらの固形分基準の質量比を上述した特定の範囲とすることにより、表面処理されたシリカによるクラック耐性の向上効果と表面処理されたバリウムによる解像性の向上効果とを同時に得ることができると考えられる。以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。なお、各成分は市販のものを用いてもよく、適宜合成されたものを用いてもよい。
【0014】
(硬化性樹脂)
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)硬化性樹脂を含む。硬化性樹脂としては、熱や光等が作用することにより硬化する樹脂であれば特に限定されることなく用いることができる。具体的には、硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂をそれぞれ単独で用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。硬化性樹脂組成物は、好ましくは光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂を含む。
【0015】
硬化性樹脂組成物には、硬化性樹脂として(A-1)光硬化性樹脂を配合することができる。光硬化性樹脂としては、公知慣用の光硬化性樹脂を用いることができる。その中でも、光硬化性や耐現像性の面から、好ましくは活性エネルギー線によってラジカル性の付加重合反応により硬化し得る光硬化性樹脂、より好ましくは分子中にエチレン性不飽和基を有する光硬化性樹脂が用いられる。なお、エチレン性不飽和基は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。光硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光硬化性樹脂としては、好ましくは後述するカルボキシル基含有感光性樹脂が用いられる。
【0016】
分子中にエチレン性不飽和基を有する光硬化性樹脂としては、公知慣用の光重合性オリゴマー、および光重合性モノマー等が用いられる。このうち光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
一方、光重合性モノマーとしては、好ましくはエチレン性不飽和基を有するモノマーが用いられる。このような光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート類;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキサイド誘導体のモノまたはジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加物あるいはε-カプロラクトン付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等のフェノール類またはこれらのアルキレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルのアクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオール等のポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくともいずれか1種から適宜選択して用いることができる。光重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。なお、「光重合性モノマー」とは、光硬化性樹脂の中でも特にモノマーである化合物を指す。光重合性モノマーとしては、好ましくは2官能~6官能の光重合性モノマーが用いられる。2官能~6官能の光重合性モノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールトリプロパントリアクリレート等が挙げられる。
【0018】
硬化性樹脂組成物における光硬化性樹脂の含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対し、固形分基準で、10~50質量%等とすることができる。
【0019】
硬化性樹脂は、硬化性樹脂組成物に対しアルカリ現像性を付与するために、好ましくはカルボキシル基含有樹脂を配合することができる。カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種樹脂を用いることができる。
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0020】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0021】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0022】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0023】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0024】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0025】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0026】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0027】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0028】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0030】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0031】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0032】
カルボキシル基含有樹脂の酸価は、30~150mgKOH/gの範囲が適当であり、より好ましくは50~120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が30mgKOH/g以上であるとアルカリ現像を適切に行うことができ、一方、150mgKOH/g以下であると現像液による露光部の溶解が進まないために、現像液により露光部と未露光部とを区別して溶解剥離することができ、正常なレジストパターンの描画が容易となるので好ましい。
【0033】
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上であると、露光後の塗膜の耐湿性が良好であり、現像時に膜減りが生じず、優れた解像度が得られやすい。一方、重量平均分子量が150,000以下であると、良好な現像性が得られやすく、また良好な貯蔵安定性が得られやすい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0034】
これらカルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したものに限らず用いることができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、HAST耐性、PCT耐性に優れることから、上述したカルボキシル基含有樹脂(10)、(11)のようなフェノール性水酸基を有する化合物を出発原料と用いて合成されるカルボキシル基含有樹脂が好適に用いられる。
【0035】
硬化性樹脂組成物には、硬化性樹脂として(A-2)熱硬化性樹脂を配合することができる。硬化性樹脂組成物に熱硬化性樹脂を配合することにより、硬化性樹脂組成物の耐熱性、耐薬品性、密着性が向上することが期待できる。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、公知のものをいずれも用いることができる。例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、オキサゾリン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。これらの各熱硬化性樹脂は、単官能であってもよく、多官能であってもよい。
【0036】
エポキシ化合物としては、エポキシ化植物油;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂;チオエーテル型エポキシ樹脂;ブロム化エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート樹脂;テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;ナフタレン基含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体;CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
オキセタン化合物としては、1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物が好ましく用いられる。多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0038】
オキサゾリン化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のオキサゾリン基を有する可能な化合物が挙げられる。そのようなオキサゾリン化合物としては、例えば、オキサゾリン基含有モノマーの重合体、オキサゾリン基含有モノマーと他のモノマーとの共重合体等のオキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。オキサゾリン基含有モノマーとしては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0039】
エピスルフィド樹脂としては、例えば、任意のエポキシ化合物におけるエポキシ基を構成する酸素原子が硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。エポキシ化合物としては、上述したのと同様のものが挙げられる。また、エポキシ化合物におけるエポキシ基を構成する酸素原子を硫黄原子に置換する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
【0040】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0041】
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;ならびに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0042】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0043】
硬化性樹脂組成物における熱硬化性樹脂の含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対し、固形分基準で、3~50質量%とすることができる。
【0044】
(フィラー)
本発明の硬化性樹脂組成物は、フィラーとして(B)表面処理されたバリウム化合物および(C)表面処理されたシリカを含む。硬化性樹脂組成物における表面処理されたバリウム化合物と表面処理されたシリカとの含有量の合計は、硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して、固形分基準で20~80質量%であり、好ましくは20~50質量%、より好ましくは30~40質量%である。また、硬化性樹脂組成物における表面処理されたバリウム化合物と表面処理されたシリカとの固形分基準の質量比は1:1~1:4であり、好ましくは1:1~1:3であり、より好ましくは1:1.5~1:2である。表面処理されたバリウム化合物と表面処理されたシリカとの含有量の合計、およびそれらの固形分基準の質量比をこのような範囲とすることにより、良好な解像性とクラック耐性とを両立することができる。
【0045】
表面処理されたバリウム化合物について、バリウム化合物とは、バリウム単体およびバリウムを含む各種の化合物を包含する概念である。すなわち、表面処理されたバリウム化合物には、バリウム単体を表面処理した化合物、およびバリウムを含む化合物を表面処理した化合物が包含される。表面処理されたバリウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
バリウムを含む化合物としては、フィラーとして用いられる化合物であれば特に制限されず、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム等が挙げられる。バリウムを含む化合物としては、好ましくは硫酸バリウムが用いられる。硫酸バリウムの市販品としては、例えば、堺化学工業株式会社製のB-30、B-33等が挙げられる。
【0047】
バリウム化合物の表面処理としては、バリウム化合物の表面に反応性官能基を付与する処理であれば特に限定されず、従来公知のフィラーの表面処理を行うことができる。バリウム化合物の表面に付与される反応性官能基としては、例えば、メタクリル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、酸無水物等が挙げられる。表面処理されたバリウム化合物は、1種の反応性官能基を有していてもよく、2種以上の反応性官能基を有していてもよい。また、表面処理されたバリウム化合物を2種以上用いる場合、それらは互いに同じ反応性官能基を有していてもよく、異なる反応性官能基を有していてもよい。表面処理されたバリウム化合物としては、好ましくはその表面にメタクリル基を有するバリウム化合物が用いられる。
【0048】
表面処理されたバリウム化合物を得るための方法、すなわちバリウム化合物の表面に反応性官能基を付与する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、反応性官能基を有する各種カップリング剤(例えば、シラン化合物(いわゆるシラン系カップリング剤))とバリウム化合物とを結合させる(カップリング剤を介してバリウム化合物と反応性官能基とを結合させる)方法等が挙げられる。なお、本明細書において、カップリング剤とバリウム化合物との「結合」とは、カップリング剤とバリウム化合物との間の化学反応を伴う結合(化学吸着)だけでなく、そのような化学反応を伴わない結合(物理吸着)のいずれも含む概念である。
【0049】
カップリング剤としては、例えば、シラン系、アルミネート系、チタネート系、ジルコアルミネート系等が挙げられる。これらのうち、好ましくはシラン系カップリング剤が用いられる。シラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。カップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
表面処理されたバリウム化合物が、反応性官能基を有するカップリング剤とバリウム化合物とを結合させる方法によって得られるものである場合、その方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応性官能基を有するカップリング剤を溶媒に溶解した溶液中に粉体のバリウム化合物を分散させて(必要に応じて溶媒を除去して)両者を接触させる方法、反応性官能基を有するカップリング剤に粉体のバリウム化合物を直接添加、混合して両者を接触させる方法等が挙げられる。また、必要に応じて、反応性官能基を有するカップリング剤と粉体のバリウム化合物とを接触させた後に加熱する工程を含んでもよい。粉体のバリウム化合物と接触させる反応性官能基を有するカップリング剤の量(カップリング剤の処理量)は、反応性官能基を有するカップリング剤とバリウム化合物とを結合させる方法、反応性官能基の種類、カップリング剤の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0051】
表面処理されたバリウム化合物の粒子径は特に制限されず、適宜設定することができるが、平均粒子径として、好ましくは0.1~1μm、より好ましくは0.1~0.5μmである。表面処理されたバリウム化合物の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、良好な解像性を得ることができる。なお、本明細書において、フィラーの平均粒子径とは、硬化性樹脂組成物に配合される前の平均粒子径であり、レーザー回折法により測定されるD50の値である。レーザー回折法による平均粒子径(D50)の測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社製のMicrotrac MT3300EXIIが用いられる。
【0052】
硬化性樹脂組成物における表面処理されたバリウム化合物の含有量は、上述した表面処理されたバリウム化合物と表面処理されたシリカとの固形分基準の含有量の合計、およびそれらの固形分基準の質量比の範囲を満たす限り特に制限されないが、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して、固形分基準で7~28質量%である。なお、表面処理されたバリウム化合物を2種以上組み合わせて用いる場合、上述した表面処理されたバリウム化合物の含有量は、すべての表面処理されたバリウム化合物の合計の含有量を言う。
【0053】
表面処理されたシリカを構成するシリカとしては、無定形シリカ、非晶質シリカ、結晶質シリカ、溶融シリカ、球状シリカ等のいずれのシリカも用いることができる。シリカは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリカとしては、好ましくは球状シリカが用いられる。球状シリカの市販品としては、例えば、株式会社アドマテックス製のSO-C2、SO-E2、デンカ株式会社製SFP-20M等が挙げられる。
【0054】
シリカの表面処理の種類およびその方法は特に制限されず、例えば、上述したバリウム化合物の表面処理と同様とすることができる。
【0055】
表面処理されたシリカの粒子径は特に制限されず、適宜設定することができるが、例えば、平均粒子径として0.01~1μm等とすることができる。表面処理されたシリカの平均粒子径をこのような範囲とすることにより、良好な解像性を得ることができる。
【0056】
硬化性樹脂組成物における表面処理されたシリカの含有量は、上述した表面処理されたバリウム化合物と表面処理されたシリカとの固形分基準の含有量の合計、およびそれらの固形分基準の質量比の範囲を満たす限り特に制限されないが、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して、固形分基準で13~52質量%である。なお、表面処理されたシリカを2種以上組み合わせて用いる場合、上述した表面処理されたシリカの含有量は、すべての表面処理されたシリカの合計の含有量を言う。
【0057】
硬化性樹脂組成物は、上述した表面処理されたバリウム化合物および表面処理されたシリカに加えて、他のフィラーをさらに含んでもよい。他のフィラーとしては、公知の無機または有機フィラーを用いることができ、例えば、ハイドロタルサイト、タルク、さらに、白色の外観や難燃性を得るための酸化チタン等の金属酸化物、水酸化アルミ等の金属水酸化物等が挙げられる。
【0058】
(ゴム粒子)
本発明の硬化性樹脂組成物は、(D)ゴム粒子を含む。ゴム粒子を構成する材料としては、柔軟性に優れた材料であれば特に制限されず、例えば、ブタジエン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、シリコーン/アクリル系複合系エラストマー等の各種エラストマーが挙げられる。ゴム粒子を構成する材料としては、好ましくはブタジエン系エラストマーが用いられる。ゴム粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
ゴム粒子は、好ましくはコアシェル構造を有し、より好ましくは柔軟性に優れた材料で構成されるコア層と、他の成分に対する親和性に優れた材料で構成されるシェル層とを有するコアシェル構造を有する(コアシェルゴム粒子)。ゴム粒子がコアシェル構造を有することにより、コア層が衝撃耐性に寄与し、シェル層が硬化性樹脂組成物における分散性に寄与し、その結果、硬化性樹脂組成物の高い応力緩和効果を得ることができる。
【0060】
コア層を構成する材料としては、柔軟性に優れた材料であれば特に制限されず、例えば、上述した各種エラストマー等が挙げられる。
【0061】
シェル層を構成する材料としては、他の成分に対する親和性に優れた材料が用いられ、硬化性樹脂組成物に配合されるゴム粒子以外の成分との関係で適宜設定することができる。例えば、硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合には、シェル層は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の、エポキシ樹脂に対する親和性に優れた材料で構成される。
【0062】
ゴム粒子は、その表面に硬化性樹脂と硬化反応する硬化性反応基を有していてもよい。硬化性反応基は、光硬化性反応基であってもよく熱硬化性反応基であってもよい。ゴム粒子は、1種の硬化性反応基を単独で有していてもよく、2種以上の硬化性反応基を組み合わせて有していてもよい。
【0063】
光硬化性反応基としては、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基等が挙げられる。
【0064】
熱硬化性反応基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、イミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。
【0065】
ゴム粒子の表面に硬化性反応基を導入する方法は特に制限されず、公知慣用の方法が用いられる。例えば、コア層の周囲にシェル層を形成する際に、シェル層を構成する材料として、コア層と重合反応するための官能基とは異なる硬化性反応基を有する材料をコア層に重合することによって導入することができる。
【0066】
ゴム粒子の粒子径は特に制限されず、適宜設定することができるが、例えば、平均粒子径として0.001~0.5μm等とすることができる。ゴム粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、良好な解像性を得ることができる。なお、本明細書において、ゴム粒子の平均粒子径とは、硬化性樹脂組成物に配合される前の平均粒子径であり、レーザー回折法により測定されるD50の値である。レーザー回折法による平均粒子径(D50)の測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社製のレーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置マイクロトラックMT3300が用いられる。
【0067】
硬化性樹脂組成物におけるゴム粒子の含有量は特に制限されず、適宜設定することができるが、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分の全質量に対して、固形分基準で0.3~5質量%である。ゴム粒子の含有量をこのような範囲とすることにより、良好なクラック耐性を得ることができる。
【0068】
(光重合開始剤)
本発明の硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂を含む場合、硬化性樹脂組成物は、好ましくは(E)光重合開始剤をさらに含む。光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン等のアルキルフェノン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。光重合開始剤の市販品としては、例えば、IGM Resins B.V.製のOmnirad TPO H(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE OXE02(エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム))、Omnirad 369E(2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン)、Omnirad 907(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン)、Omnirad 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド)等が挙げられる。
【0070】
上述した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物等を挙げることができる。特に、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは硬化性樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
【0072】
(熱硬化触媒)
本発明の硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含む場合、硬化性樹脂組成物は、好ましくは熱硬化触媒をさらに含む。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2PHZ-PW、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)等が挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくともいずれか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。熱硬化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性触媒としては、好ましくはメラミン、ジシアンジアミド(DICY)が用いられ、より好ましくはメラミンとジシアンジアミドとが組み合わせて用いられる。
【0073】
(有機溶剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、その調製や、基板やフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を配合することができる。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等、公知慣用の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
硬化性樹脂組成物における有機溶剤の配合量は、特に限定されず、硬化性樹脂組成物を構成する成分およびその量に応じ適宜変更することができる。
【0075】
本発明において、有機溶剤の揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0076】
(その他の添加成分)
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、光開始助剤、シアネート化合物、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤等の成分をさらに配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を用いることができる。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物は、液状として用いてもよく、後述するドライフィルム化して用いてもよい。また、液状として用いる場合は、1液性であってもよく、2液性以上であってもよい。
【0078】
[ドライフィルム]
本発明の硬化性樹脂組成物は、第一のフィルムと、この第一のフィルム上に形成される硬化性樹脂組成物からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。本発明における第一のフィルムとは、基板等の基材と、ドライフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物からなる層(樹脂層)側とが接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には、少なくとも樹脂層に接着しているものをいう。第一のフィルムはラミネート後の工程において、樹脂層から剥離しても良い。特に本発明においては露光後の工程において、樹脂層から剥離することが好ましい。ドライフィルム化に際しては、本発明の硬化性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第一のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1~150μm、好ましくは5~60μmの範囲で適宜選択される。
【0079】
第一のフィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に用いることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を第一のフィルムとして用いることもできる。
【0080】
また、上述したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0081】
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、5μm~150μmとすることができる。
【0082】
第一のフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐ等の目的で、樹脂層の表面に剥離可能な第二のフィルムを積層することが好ましい。第二のフィルムとは、基板等の基材と、ドライフィルム上に形成された硬化性樹脂組成物からなる層(樹脂層)側とが接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際に、ラミネート前に樹脂層から剥離されるものをいう。剥離可能な第二のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。第二のフィルムは、該第二のフィルムを剥離する際の樹脂層と第一のフィルムとの接着力よりも樹脂層と第二のフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0083】
第二のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5μm~150μmとすることができる。
【0084】
なお、ドライフィルムは、上記第二のフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面に第一のフィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明においてドライフィルムを製造する際に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布するフィルムとしては、第一のフィルムおよび第二のフィルムのいずれを用いてもよい。
【0085】
(硬化物)
本発明の硬化物は、上述した本発明の硬化性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層を硬化して得られるものであり、特にソルダーレジスト層に求められる高い誘電性と良好な解像性とを有する。
【0086】
(プリント配線板)
本発明のプリント配線板は、本発明の硬化性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、上述した有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネータ等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、第一のフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0087】
プリント配線板の基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0088】
ドライフィルムの基材上への貼合は、真空ラミネータ等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネータを用いることにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0089】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0090】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、基材上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像しても良い。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成する。一つの実施形態において、上述した露光および現像により、基板上における導電体の露出部(円形の開口部)が形成される。開口部の直径は特に限定されないが、例えば30~120μmとすることができる。
【0091】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm2、好ましくは20~800mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0092】
現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を用いることができる。
【0093】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化にあたっては、必要に応じて、上述した活性エネルギー線照射による露光および現像の後に紫外線を照射してさらなる硬化を促進してもよく(ポストUV)、加熱して熱硬化を促進させてもよい(ポストキュア)。ポストUV、ポストキュアを行うことにより、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性等の諸特性をさらに向上させることができる。ポストUVは、例えば、UVコンベア等を用いて1000mJ/cm2の積算露光量でUVを照射することにより行うことができる。また、ポストキュアは、例えば、上述した各種乾燥機を用いて150℃で60分間加熱することにより行うことができる。
【0094】
本発明の硬化性樹脂組成物またはドライフィルムは、プリント配線板等の電子部品製造において好適に用いられる。具体的には、電子部品における硬化被膜(永久被膜)を形成するために用いられ、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイ等の永久絶縁被膜を形成するために好適に用いられる。より具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物またはドライフィルムは、高度な信頼性が求められるプリント配線板、例えば半導体パッケージ用基板、特にFC-BGA基板に好適に用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、「部」および「%」の記載は、特に断りのない限りいずれも質量基準である。
【0096】
[硬化性樹脂組成物の調製]
(光硬化性樹脂の合成例)
硬化性樹脂組成物の調製前に、下記に示す手順に従って、本実施例で用いられる光硬化性樹脂を調製した。
まず、冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、ビスフェノールA 456部、水228部および37%ホルマリン649部を仕込み、40℃以下の温度を保ち、25%水酸化ナトリウム水溶液228部を添加し、添加終了後、50℃で10時間反応させた。反応終了後、40℃まで冷却し、40℃以下を保ちながら37.5%リン酸水溶液を添加してpH4まで中和し、静置して水層を分離した。水層の分離後、メチルイソブチルケトン300部を添加して均一に溶解し、次いで蒸留水500部で3回洗浄し、50℃以下の温度で減圧して、水、溶媒等を除去してポリメチロール化合物を得た。得られたポリメチロール化合物をメタノール550部に溶解し、ポリメチロール化合物のメタノール溶液1230部を得た。得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液の一部を真空乾燥機中室温で乾燥したところ、固形分が55.2%であった。次いで、得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液500部、2,6-キシレノール440部を仕込み、50℃で均一に溶解した。均一に溶解した後50℃以下の温度で減圧下メタノールを除去した。その後シュウ酸8部を添加し、100℃で10時間反応した。反応終了後180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂A 550部を得た。
【0097】
次いで、温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、上記の手順で得られたノボラック樹脂A 130部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次いで加熱昇温し、150℃、8kg/cm2でエチレンオキシド45部を徐々に導入し反応させた。ゲージ圧が0.0kg/cm2となるまで約4時間にわたり反応を続けた後、室温まで冷却した。得られた反応溶液に36%塩酸水溶液3.3部を添加、混合し、水酸化ナトリウムを中和した。得られた中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターを用いて脱溶剤して、水酸基価が175g/eq.であるノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物を得た。ノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物は、フェノール性水酸基1当量当りエチレンオキシドが平均1モル付加しているものであった。
【0098】
次いで、得られたノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物175部、アクリル酸50部、p-トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部およびトルエン130部を、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら撹拌し、115℃に昇温して反応させ、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた反応溶液を、5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去した後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加して、固形分68%のアクリレート樹脂溶液を得た。
【0099】
次いで、撹拌器および還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、得られたアクリレート樹脂溶液312部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部およびトリフェニルフォスフィン0.3部を仕込み、混合物を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸45部を添加し、4時間反応させ、冷却後、固形分70%、固形分酸価65mgKOH/gの光硬化性樹脂(カルボキシル基含有樹脂)の溶液を得た。
【0100】
(表面処理されたバリウム化合物の合成例)
硬化性樹脂組成物の調製前に、下記に示す手順に従って、本実施例で用いられる表面処理されたバリウム化合物を調製した。
まず、堺化学工業株式会社製の硫酸バリウムB-30(平均粒径0.3μm)700g、および溶剤としてのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)295g、および湿潤分散剤5gを混合撹拌し、ビーズミルを用いて平均粒子径が0.3μmになるまで分散処理を行った。分散処理後、得られた分散物を3μmのフィルターでろ過して異物や粗大粒子を取り除き、平均粒径0.3μmの硫酸バリウムスラリーを得た。得られた硫酸バリウムスラリーの固形分は70質量%であった。
【0101】
(表面処理されたシリカの合成例)
硬化性樹脂組成物の調製前に、下記に示す手順に従って、本実施例で用いられる表面処理されたシリカを調製した。
株式会社アドマテックス社製の球状シリカSO-C2 700g、および溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)300gを混合撹拌し、ビーズミルを用いて平均粒径0.7μmになるまで分散処理を行った。分散処理後、得られた分散物を3μmのフィルターでろ過して異物や粗大粒子を取り除き、平均粒径0.7μmのシリカスラリーを得た。得られたシリカスラリーの固形分は70質量%であった。次いで、得られたシリカスラリーに対して4質量%となるように、信越化学工業株式会社製のメタクリル基を有するシランカップリング剤KBM-503を添加し、ビーズミルで10分間分散処理し、メタクリルシランで表面処理された球状シリカスラリーを得た。得られた球状シリカスラリーの固形分は70質量%であった。
【0102】
下記表1に示す各成分を、同表に示す量(固形分量)で混合し、撹拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混錬し、実施例1~7および比較例1~5の各硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
(A-1)光硬化性樹脂:上述した光硬化性樹脂の合成例により得られたカルボキシル基含有樹脂
(A-2)熱硬化性樹脂:三菱ケミカル株式会社製のjER(登録商標)834
(B)表面処理されたバリウム化合物:上述した表面処理されたバリウム化合物の合成例により得られた表面処理された硫酸バリウムスラリー
(C)表面処理されたシリカ:上述した表面処理されたシリカの合成例により得られた表面処理された球状シリカスラリー
(D)ゴム粒子:三菱ケミカル株式会社製のブタジエン系ゴム メタブレン(登録商標)C-223A
(E)光重合開始剤:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド
光重合性モノマー:アクリレートモノマー(DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
熱硬化触媒1:メラミン
熱硬化触媒2:ジシアンジアミド
【表1】
【0103】
[積層構造体の調製]
上述した手順に従って得られた各硬化性樹脂組成物を用いて、下記に示す手順に従って各硬化性樹脂組成物に対応する積層構造体(ドライフィルム)を調製した。
まず、バーコーターを用いて、各硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトンで適宜希釈した後、アプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が18μmになるように東レ株式会社製のPETフィルムFB-50(厚み16μm)に塗布し、80℃で10分間乾燥させて、各硬化性樹脂組成物に対応するドライフィルムを得た。
【0104】
[解像性の評価]
上述した手順に従って作製した各ドライフィルムを、メック株式会社製のメックエッチボンドCZ-8101を用いて化学研磨して銅回路が形成された基板に、ニッコー・マテリアルズ株式会社製の真空ラミネータCVP-300を用いて、温度80℃、真空圧3hPaで、0.4MPaの加圧力で、80℃で1分間加熱ラミネートし、温度70℃、0.5MPaの加圧力で平板プレスして、未露光の各硬化性樹脂組成物の層(ドライフィルム)を有する基板を得た。得られた各基板を、φ50μmのフォトマスクを用い、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて、基準露光量で露光し、ドライフィルムからPETフィルムを剥離した。次いで、30℃、スプレー圧2kg/cm2の条件で1質量%Na2CO3水溶液を用いて、60秒間現像を行い、微細孔パターンが形成された硬化物を有する各サンプル基板を得た。得られた各サンプル基板に、UVコンベア炉を用いて積算露光量1000mJ/cm2の紫外線を照射した後、150℃で60分間加熱して、各サンプル基板上の硬化物を本硬化させた。
【0105】
上記の手順に従って作製された各サンプル基板にPtスパッタリング処理行った後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて各サンプル基板上の微細孔の底部の直径を測定し、解像性を下記の評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
◎:底部の直径が25μm以上50μm未満である。
〇:底部の直径が20μm以上25μm未満である。
△:底部の直径が15μm以上20μm未満である。
×:底部の直径が15μm未満である。
【0106】
[クラック耐性の評価]
φ50μmの微細孔パターンをSiチップの実装パターンに代えたこと以外は、上述した解像性の評価で用いた評価基板の作製と同様の手順で、Siチップの実装パターンを有する硬化物を有する基板を得た。次いで、Auめっき処理、はんだバンプ形成を行い、Siチップを実装して、熱衝撃試験(TST:Thermal Shock Test)のための各サンプル基板を得た。得られた各サンプル基板を、液層において-65℃と150℃との温度サイクルが行われる冷熱サイクル機に入れ、TSTを行った。TSTの間、600サイクル時、800サイクル時および1000サイクル時の各サンプル基板上の硬化物の表面を観察し、クラック耐性を下記の評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
◎:1000サイクルでも異常がない。
〇:750サイクルでは異常がないが、1000サイクルではクラックが観察される。
△:500サイクルでは異常がないが、750サイクルではクラックが観察される。
×:500サイクルでクラック発生が観察される。
【0107】
表1に示す評価結果から、実施例1~7の各硬化性樹脂組成物により形成される硬化物は、良好な現像性と、TSTでの良好なクラック耐性とを両立していることが分かる。一方、比較例1~5の各硬化性樹脂組成物により形成される硬化物は、良好な現像性と、TSTでの良好なクラック耐性とが両立しないことが分かる。