(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ネットワーク分析方法、ネットワーク分析システム及びサーバ
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20241202BHJP
【FI】
G06Q10/0639
(21)【出願番号】P 2022009334
(22)【出願日】2022-01-25
【審査請求日】2024-01-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「乳幼児からの健やかな脳の育成による積極的自立社会創成拠点」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】合田 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅
(72)【発明者】
【氏名】八木 健
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081406(JP,A)
【文献】特開2017-000481(JP,A)
【文献】特開2021-064018(JP,A)
【文献】特開2015-153133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとメモリを含む計算機が集団における個体間のネットワークを分析するネットワーク分析方法であって、
前記計算機が、集団を構成する個体の活動に関する時系列の情報を収集してセンサデータに格納するセンシングデータ収集ステップと、
前記計算機が、前記センサデータから活性化された前記個体をクリークとして抽出し、前記クリークで構成されるネットワークを時系列で生成するネットワーク分析ステップと、
前記計算機が、前記クリークの出現確率と前記クリークの情報エントロピーを算出して、前記集団の活性度と前記集団の多様性を示す指標を集団意識指標として算出する集団意識分析ステップと、を含むことを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク分析方法であって、
前記集団意識分析ステップは、
指定された時間間隔毎に前記クリークの出現確率の総和を個体の活性度として算出するステップと、
前記個体がランダムな状態のネットワークの情報エントロピーを第1の情報エントロピーとして算出するステップと、
前記指定された時間間隔毎に前記個体のネットワークの情報エントロピーを第2の情報エントロピーとして算出するステップと、
前記第1の情報エントロピーと前記第2の情報エントロピーの比率に基づく値を多様性指標として指定された時間間隔毎に算出するステップと、
前記活性度と前記多様性指標のペアを指定された時間間隔毎の集団意識指標として算出するステップと、
を含むことを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワーク分析方法であって、
前記計算機が、前記集団意識指標を可視化する可視化ステップをさらに含み、
前記集団意識分析ステップは、
前記指定された時間間隔毎の集団意識指標を所定の空間にプロットしたプロット図を生成するステップをさらに含み、
前記可視化ステップは、
前記プロット図を出力することを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項4】
請求項1に記載のネットワーク分析方法であって、
前記集団意識分析ステップは、
前記クリークの数毎に前記集団意識指標を算出することを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項5】
請求項2に記載のネットワーク分析方法であって、
前記集団意識分析ステップは、
1-第2の情報エントロピー/第1の情報エントロピー
を前記多様性指標として指定された時間間隔毎に算出することを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項6】
請求項1に記載のネットワーク分析方法であって、
前記センシングデータ収集ステップは、
前記個体の活動に関する時系列の情報として前記個体の加速度データを含むセンサデータを収集し、
前記ネットワーク分析ステップは、
前記加速度データから個体間の関係性を算出して前記クリークで構成されるネットワークを時系列で生成することを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項7】
請求項1に記載のネットワーク分析方法であって、
前記センシングデータ収集ステップは、
前記個体の活動に関する時系列の情報として前記個体間の対面情報を含むセンサデータを収集し、
前記ネットワーク分析ステップは、
前記対面情報から個体間の関係性を算出して前記クリークで構成されるネットワークを時系列で生成することを特徴とするネットワーク分析方法。
【請求項8】
プロセッサとメモリを含むサーバと、
個体の活動に関する時系列の情報を取得するセンシング装置と、を含むネットワーク分析システムであって、
前記センシング装置は、集団で活動を行う個体に関する時系列の情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記センシング装置から受信した前記個体に関する時系列の情報を収集してセンサデータに格納するセンシングデータ収集部と、
前記センサデータから活性化された前記個体をクリークとして抽出し、前記クリークで構成されるネットワークを時系列で生成するネットワーク分析部と、
前記クリークの出現確率と前記クリークの情報エントロピーを算出して、前記集団の活性度と前記集団の多様性を示す指標を集団意識指標として算出する集団意識分析部と、
を有することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項9】
請求項8に記載のネットワーク分析システムであって、
前記集団意識分析部は、
指定された時間間隔毎に前記クリークの出現確率の総和を個体の活性度として算出し、
前記個体がランダムな状態のネットワークの情報エントロピーを第1の情報エントロピーとして算出し、
前記指定された時間間隔毎に前記個体のネットワークの情報エントロピーを第2の情報エントロピーとして算出し、
前記第1の情報エントロピーと前記第2の情報エントロピーの比率に基づく値を多様性指標として指定された時間間隔毎に算出し、
前記活性度と前記多様性指標のペアを指定された時間間隔毎の集団意識指標として算出することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項10】
請求項9に記載のネットワーク分析システムであって、
前記集団意識指標を可視化する可視化部をさらに含み、
前記集団意識分析部は、
前記指定された時間間隔毎の集団意識指標を所定の空間にプロットしたプロット図を生成し、
前記可視化部は、
前記プロット図を出力することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項11】
請求項8に記載のネットワーク分析システムであって、
前記集団意識分析部は、
前記クリークの数毎に前記集団意識指標を算出することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項12】
請求項9に記載のネットワーク分析システムであって、
前記集団意識分析部は、
1-第2の情報エントロピー/第1の情報エントロピー
を前記多様性指標として指定された時間間隔毎に算出することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項13】
請求項8に記載のネットワーク分析システムであって、
前記センシングデータ収集部は、
前記個体の活動に関する時系列の情報として前記個体の加速度データを含むセンサデータを収集し、
前記ネットワーク分析部は、
前記加速度データから個体間の関係性を算出して前記クリークで構成されるネットワークを時系列で生成することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項14】
請求項8に記載のネットワーク分析システムであって、
前記センシングデータ収集部は、
前記個体の活動に関する時系列の情報として前記個体間の対面情報を含むセンサデータを収集し、
前記ネットワーク分析部は、
前記対面情報から個体間の関係性を算出して前記クリークで構成されるネットワークを時系列で生成することを特徴とするネットワーク分析システム。
【請求項15】
プロセッサとメモリを含むサーバであって、
集団で活動を行う個体に関する時系列の情報を収集してセンサデータに格納するセンシングデータ収集部と、
前記センサデータから活性化された前記個体をクリークとして抽出し、前記クリークで構成されるネットワークを時系列で生成するネットワーク分析部と、
前記クリークの出現確率と前記クリークの情報エントロピーを算出して、前記集団の活性度と前記集団の多様性を示す指標を集団意識指標として算出する集団意識分析部と、
を有することを特徴とするサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集団のネットワークを分析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
センシングデバイスや通信技術の進歩に伴い、スポーツ分野やビジネス分野あるいは教育分野において、集団の行動を分析する技術が注目されている。集団の分析結果を用いて集団を活性化する事例が多く知られている。
【0003】
集団の分析は、個体間の対面や会話などの意識的なコミュニケーションのみならず、個体間の体動の同期性などを無意識的なコミュニケーションと見なすことで、コミュニケーションを有する集団を広く定義することも行われている。また、集団内のコミュニケーションの状況はネットワーク図で表現されることが知られている。
【0004】
集団内のネットワークを分析する技術としてスポーツ分野では、競技中の個体同士の関連性を分析する技術が特許文献1として知られている。また、ビジネス分野では、組織内のコミュニティを抽出する技術が特許文献2として知られている。
【0005】
特許文献1には、集団と同期して活動する個体を抽出して集団のネットワークを可視化する技術が開示されている。特許文献2には、組織内のコミュニティを抽出し、抽出したコミュニティの質を計測して可視化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-81406号公報
【文献】特開2012-27589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
集団のネットワークの時系列変化は非常に複雑であり、個体間のネットワークの構造変化を容易に把握することが難しいという問題があった。すなわち、上記従来の技術では、ある時刻における個体間の関係性や活性度を算出したり、個体間の関係の多寡など把握することはできる。しかしながら、上記従来技術では、集団のコミュニケーションの活性度や多様性の変化については容易に表すことができない、という問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、目的を持って活動している集団の活性度とネットワーク構造の変化を可視化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プロセッサとメモリを含む計算機が集団における個体間のネットワークを分析するネットワーク分析方法であって、前記計算機が、集団を構成する個体の活動に関する時系列の情報を収集してセンサデータに格納するセンシングデータ収集ステップと、前記計算機が、前記センサデータから活性化された前記個体をクリークとして抽出し、前記クリークで構成されるネットワークを時系列で生成するネットワーク分析ステップと、前記計算機が、前記クリークの出現確率と前記クリークの情報エントロピーを算出して、前記集団の活性度と前記集団の多様性を示す指標を集団意識指標として算出する集団意識分析ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本発明は、集団の活性度と集団の多様性を示す指標を定量化することにより、目的を持って活動している集団のネットワーク構造の時系列的な変化を可視化することが可能となって、集団の意識を容易に把握することが可能となる。
【0011】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1を示し、運動分野に適用したネットワーク分析システムの一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1を示し、サーバが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例1を示し、センサデータの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1を示し、特徴量情報の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1を示し、ネットワーク分析部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例1を示し、同期ネットワーク時系列データの一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例1を示し、センサデータと同期ネットワーク時系列データの関係の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施例1を示し、同期ネットワーク時系列データからクリークを抽出する一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施例1を示し、クリークの種別に応じた出現確率データの一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例1を示し、集団意識分析部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例1を示し、集団の意識の領域を示すプロット図である。
【
図12】本発明の実施例1を示し、集団の意識の傾向を示すプロット図である。
【
図13】本発明の実施例1を示し、運動分野の集団を分析した3クリークのプロット図である。
【
図14】本発明の実施例2を示し、教育分野に適用したネットワーク分析システムの一例を示す図である。
【
図15】本発明の実施例2を示し、時刻T1の対面マトリクスとコミュニケーションネットワーク時系列データの関係の一例を示す図である。
【
図16】本発明の実施例2を示し、時刻T2の対面マトリクスとコミュニケーションネットワーク時系列データの関係の一例を示す図である。
【
図17】本発明の実施例2を示し、教育分野の集団を分析した1クリークのプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、ネットワーク分析システムを集団で行うスポーツに適用した例を示す図である。実施例1のネットワーク分析システムは、集団を構成する個体(プレイヤー)60の動きから関係性を分析し、ネットワーク(個人間の連携)を抽出して時系列データを生成し、集団の活性度と多様性(構造)の変化を可視化する計算機システムである。
【0015】
なお、以下においては、人のネットワークを可視化する計算機システムについて説明するが、動物等、動きのある個体間のネットワークを分析、可視化するシステムであれば、いかなるシステムに適用してもよい。
【0016】
ネットワーク可視化システムは、センシング装置1と、ネットワーク4及びサーバ5を含む。
【0017】
実施例1でネットワーク分析システムが分析対象とする集団の一例は、サッカーを行う集団である。なお、運動の種類は、2つ以上の個体が参加する競技であればいずれの競技であってもよく、実施例1のネットワーク分析システムは、ラグビー、バスケットボール、バレーボール、ゴールボール、野球、テニス、ハンドボール、ラクロス、陸上競技、スピードスケート等の集団競技に適用されてもよい。
【0018】
また、実施例1のネットワーク分析システムは、個体間のネットワークに限らず、センシング装置1でボールやバット、ラケット等の器具や道具等の物体の動きを測定することで、人体と物体間や、物体間のネットワークの表示に使用されてもよい。
【0019】
実施例1において、センシング装置1は、運動を行う個体60の体に一つ以上装着される。実施例1における個体60は、3軸加速度センサを搭載した腕時計型ウェアラブルデバイスをセンシング装置1として、直接人体に装着する例を示す。個体60は、フィールド上で運動を行う個体であるが、運動を行う場所はフィールドに限らず、いかなる場所であってよい。
【0020】
また、運動を行う場所を指定することによって、センシング装置1を装着した個体が複数の場所にいる場合においても、指定した場所にいる個体のみのネットワークを表示することができる。本実施例において、個体60はネットワークに表示される個体であり、かつ、センシング装置1によって測定される個体である。
【0021】
本実施例におけるセンシング装置1は、個体の活動を測定する様々なセンサのうち少なくとも一つ以上のセンサを搭載する。様々なセンサとは、加速度センサ、ジャイロセンサ、歩数計、心拍数モニター、位置センサ、衝撃センサ、磁力計、温度センサ、湿度センサ、風センサ、音センサ、気圧センサ、測位センサ及び、赤外線センサ、位置情報センサを含むが、これらに限定されない。そして、これらの様々なセンサによって測定された結果を、センシングデータとしてサーバ5に送信してもよい。
【0022】
また、個体60は、例えば、頭、首、肩、背中、腕、手首、手、指、ウエスト、ヒップ、脚、足首、足、かかと、及び、つま先などの個体60の体の部分に物理的に連結するように、センシング装置1を装着してもよい。また、センシング装置1と個体60の体との間に、1枚以上の衣類、履物、又は、運動保護具が存在する場合、個体60は、センシング装置1と衣類、履物、運動活動に使用する運動保護具と一体化する状態で、ストラップ、接着剤、ポケット、及び、クリップなどの様々な取り外し可能又は不可能な連結手段によって、センシング装置1を装着してもよい。また、センシング装置1はボールやバット、ラケット等の器具や道具等の物体に装着もしくは埋め込まれてもよい。
【0023】
また、センシング装置1は、装着型のウェアラブルセンサに限らず、映像解析により個体や物体の動きを測定する機器や、レーザ光の反射にて物体の位置を検出することのできるレーザレーダや、圧力や衝撃を測定可能なフォースプレートや、他にも音波センサや磁気センサ、RGBカメラ、深度センサ、マルチアレイマイクロフォン等の設置型のセンサであってもよく、個体や物体の動きを測定できるものであればいかなる装置であってもよい。
【0024】
センシング装置1によって測定された動きに関するセンシングデータは、ネットワーク4を介してサーバ5に送信され、サーバ5で分析処理などが行われ、分析結果は入出力装置56のディスプレイ等に表示される。
【0025】
本実施例のサーバ5は、センシング装置1から受信したセンシングデータを分析して個体60間の連携又は関係を示す同期ネットワーク時系列データ(後述)を生成し、同期ネットワーク時系列データから集団の活性度と多様性(構造)の時系列上の変化を集団意識指標として算出する。サーバ5は、集団意識指標をプロット図としてディスプレイ等に出力することで集団の活性度と構造の変化を時系列で可視化する。
【0026】
サーバ5は、CPU51と、メモリ54と、補助記憶装置(ストレージ装置)55と、通信部52と、入出力装置56を有する計算機である。なお、以下の説明では、個人間の連携を示す場合に符号の無いネットワークを使用し、計算機を接続するネットワーク4と区別する。
【0027】
サーバ5は、補助記憶装置55からメモリ54にロードされたプログラムをCPU51で実行することによって、解析部10、情報入力部53の機能を実現する。サーバ5のメモリ54は、不揮発性の記憶素子であるROM又は揮発性の記憶素子であるRAMで構成することができる。
【0028】
ROMはプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、補助記憶装置55に格納されたプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0029】
データベース20は、補助記憶装置55に格納される。補助記憶装置55は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶装置である。また、補助記憶装置55は、CPU51が実行するプログラム及びプログラムが利用するデータを格納する。すなわち、プログラムは、補助記憶装置55から読み出されて、メモリ54にロードされて、CPU51によって実行される。
【0030】
サーバ5は、センシング装置1から受信したセンシングデータをデータベース20のセンサデータ22に格納する情報入力部53を有し、所定の周期で送信されるセンシングデータを収集する。
【0031】
解析部10は、センサデータ22に基づいて各個体60の加速度センサや位置情報を時系列で算出し、加速度センサ情報や位置情報から検出した個体の動態や軌跡に基づいて個体間のネットワークを算出し、ネットワークから集団意識指標Wを算出する機能部である。なお、競技等における個体間の連携又は関係をエッジ(辺)で表現したとき、1以上のエッジを含むノードをクリークとする。なお、1つのノードが活性化している場合も、クリークとして扱うことができる。なお、クリークは完全部分結合ネットワークとして扱うことができる。
【0032】
解析部10は、特徴量算出部11と、ネットワーク分析部12と、集団意識分析部13と、表示部14の機能部を主に有する。なお、個体の位置の測定は、個体に装着したセンシング装置1の加速度の他にGNSS35等で検出した位置情報を用いるようにしてもよい。
【0033】
表示部14は、データベース20に記録されたデータを、ネットワーク4を介して接続された計算機又はデバイスあるいは入出力装置56へ出力することにより、集団を評価するユーザ(分析システムの利用者)に提供する。入出力装置56は、キーボードやマウス及びディスプレイなどから構成される。
【0034】
CPU51は、各機能部のプログラムに従って処理することによって、所定の機能を提供する機能部として稼働する。例えば、CPU51は、解析プログラムに従って処理することで解析部10として機能する。他のプログラムについても同様である。さらに、CPU51は、各プログラムが実行する複数の処理のそれぞれの機能を提供する機能部としても稼働する。計算機及び計算機システムは、これらの機能部を含む装置及びシステムである。
【0035】
通信部52は、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェースである。通信部52は、ネットワーク4を介して他の装置と通信し、データを送受信することができる。
【0036】
情報入力部53は、センシング装置1から送信されたセンシングデータを受け付けて、データベース20のセンサデータ22へ格納するセンシングデータ収集部として機能する。なお、情報入力部53は、入出力装置56からの入力を受け付けてデータベース20へ反映させることができる。
【0037】
解析部10及び情報入力部53は、プログラムによって実装されてもよく、また、物理的な集積回路によって実装されてもよい。特に解析部10は、解析部10に含まれる機能部を実行するための複数のプログラム又は複数の集積回路によって実装されてもよい。また、特徴量算出部11と、ネットワーク分析部12と、集団意識分析部13、表示部14は、各々が実行する処理毎に複数のプログラム又は複数の集積回路によって実装されてもよい。
【0038】
CPU51が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介してサーバ5に提供され、非一時的記憶媒体である補助記憶装置55に格納される。このため、サーバ5は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0039】
サーバ5は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に複数の計算機上で構成される計算機システムであり、前述したプログラムが、同一の計算機上で別のスレッドで実行されてもよく、複数の物理的計算機上に構築された仮想計算機上で実行されてもよい。
【0040】
データベース20は、センサデータ22と、特徴量情報21と、同期ネットワーク時系列データ24と、出現確率データ25と、エントロピーデータ30と、集団意識グラフ40を格納する。
【0041】
各個体60のセンシング装置1で測定されたセンシングデータは、情報入力部53によって収集されてセンサデータ22として格納される。本実施例におけるセンサデータ22は、各個体60に関する運動の測定結果を示す。
【0042】
特徴量情報21は、センサデータ22について特徴量算出部11を実行することにより算出された、各個体60の運動に関する特徴量を示す。詳細は後述する。
【0043】
同期ネットワーク時系列データ24は、ネットワーク分析部12で算出された個体60間のネットワークに関する情報を示す。詳細は後述する。
【0044】
出現確率データ25は、ネットワークを構成するクリークが出現する確率を時系列で算出したデータである。エントロピーデータ30は、出現確率データ25を用いて集団の情報エントロピーを算出した時系列のデータであり、詳細については後述する。
【0045】
集団意識グラフ40は、情報エントロピーに基づいて算出した集団の活性度と構造を時系列でプロットしたプロット図で構成される。集団意識グラフ40には、クリーク数毎のプロット図を格納することができる。サーバ5の表示部14は集団意識グラフ40から読み込んだプロット図を入出力装置56のディスプレイ等に表示することで、集団の活性度とネットワーク構造の変化からなる集団の意識を時系列で可視化する可視化部として機能する。
【0046】
センシング装置1は、ネットワークを分析する対象の個体の運動を測定する装置である。本実施例では、対象の個体が装着するウェアラブルデバイスを例に挙げる。なお、センシング装置1は、ユーザによる動きの結果、値が変化する内容であれば、いかなる内容をセンシングデータとして測定してもよい。
【0047】
センシング装置1は、加速度センサ31と、GNSS(Global Navigation Satellite System)35と、メモリ32と、マイコン(図中MCU)33、及び、通信部34を含む。
【0048】
加速度センサ31は、例えば、1秒間に20~1000回程度の回数でユーザの加速度を測定する。GNSS35は、例えば、GPS(Global Positioning System)やQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)等の位置情報システムで構成することができ、個体の位置情報を測定する。本実施例では、競技の開始時の個体60の位置情報としてGNSS35からの位置情報を用い、競技中の個体60の動きは加速度センサ31のセンシングデータを用いる例を示す。
【0049】
マイコン33は、加速度センサ31とGNSS35によって測定された測定結果を、センシングデータとしてメモリ32に記録する。ここで、マイコン33は、ユーザ毎に一意な識別子(ユーザID)と測定結果とを、センシングデータとして記録する。
【0050】
マイコン33は、メモリ32に記録したセンシングデータや位置情報を、通信部34を介してサーバ5に送信する。通信部34は、無線又は有線を用いて、通信可能なタイミングで、又は、利用者や管理者が設定した所定のタイミングで、センシングデータをサーバ5に送信する。
【0051】
<処理の概要>
図2は、サーバ5の解析部10で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【0052】
まず、特徴量算出部11は、処理対象のセンシングデータをセンサデータ22から取得し、対象のセンサデータ22から個体60毎に運動に関する特徴量情報21を算出する(S101)。
【0053】
特徴量情報21は、例えば、又は体動量等の個体60の動きの強さ(又は、動きのエネルギーの大きさ)に従って値が変化する特徴量を示し、さらに、特徴量の変化を時系列で示す。
【0054】
本実施例においては、特徴量として身体活動強度を算出するが、運動量や体動量、移動速度、活動頻度、ピッチ、歩数等の運動に関する特徴量であれば、いかなるものでもよい。また、特徴量として運動に伴って変化する消費カロリや心拍数、脈拍数、発汗量等の特徴量を算出してもよい。
【0055】
次に、ネットワーク分析部12は、算出した特徴量情報21を用いて、個体60間のネットワーク分析を実施して同期ネットワーク時系列データ24を生成する(S102)。そして、集団意識分析部13は、ステップS21~S23の処理を実行して生成された個体60間のネットワークからクリークを抽出して、後述するようにクリークの種類毎に情報エントロピーを算出して集団意識指標W(Index of group consciousness)を算出してプロット図を生成する(S103)。
【0056】
集団意識分析部13は、まず、ステップS102で生成された同期ネットワーク時系列データ24から活性化したノードであるクリークを抽出し、クリークの種類毎に出現確率を算出して、各時刻の出現確率総和kiを出現確率データ25として生成する(S21)。後述するように、出現確率総和kiは、集団の活性度を示す指標である。なお、出現確率総和kの添え字iはクリークの数を示す。
【0057】
次に、集団意識分析部13は、出現確率データ25から各時刻の情報エントロピーHiをクリークの種別毎に算出する。集団意識分析部13は、クリークの種類毎に算出しておいたランダムな状態のネットワークの情報エントロピーHi(max)と各時刻の情報エントロピーHiの比率を集団の多様性(構成)を示す指標として算出する(S22)。
【0058】
集団意識分析部13は、ステップS21で算出した各時刻の出現確率総和k
iと、ステップS22で算出した情報エントロピーHiの比率の組を集団意識指標Wとし、
図11、
図13で示すプロット
図400をクリーク数毎に生成して集団意識グラフ40に格納する(S23)。
【0059】
表示部14は、集団意識グラフ40に格納されたプロット図を入出力装置56のディスプレイへ出力し、ネットワーク分析システムの利用者に目的を持って活動している集団の活性度とネットワーク構造の変化を時系列で提供する。
【0060】
図2に示す処理を実行することによって、解析部10は、センサデータ22を用いて、分析対象の個体60間におけるネットワークを分析し、同期ネットワーク時系列データ24を生成してクリークを抽出する。
【0061】
集団意識分析部13は、クリークの種別毎に算出した出現確率総和kiと、各時刻の情報エントロピーHiとランダムな状態のネットワークの状態の情報エントロピーHi(max)の比率(又は差分)のペアを集団意識指標Wとして算出し、集団意識指標Wを空間にプロットしてプロット図を生成する。プロット図により、目的を持って活動している集団の活性度とネットワーク構造の変化を時系列で可視化することができる。
【0062】
<ネットワーク分析の詳細>
図3~
図6は、特徴量算出部11とネットワーク分析部12で行う処理に用いるデータと処理の内容を示す。
図3は、実施例1のセンサデータ22を示す図である。
【0063】
センサデータ22は、センシング装置1を装着した個体60の情報を格納するユーザ情報テーブル201と、各個体60の活動量情報を記録する動き情報テーブル202とを含む。
【0064】
ユーザ情報テーブル201は、予め設定された情報であり、ユーザID2011と、ユーザ名2012及びユーザ種別2013をひとつのエントリに含む。ユーザID2011は、センシング装置1を装着した個体60を認識するユニークな識別子を格納する。
【0065】
ユーザ名2012は、センシング装置1を装着した個体60の名前又はニックネームを格納する。ユーザ種別2013は、ユーザ情報として、年齢及び性別等を記録してもよく、また、これらに限らない個体60の様々な情報を記録する。
【0066】
動き情報テーブル202は、センシング装置1から受信した時刻毎のセンシングデータを格納する。動き情報テーブル202は、ユーザID2021と、測定日時2022と、加速度X軸2023と、加速度Y軸2024、加速度Z軸2025と、緯度2026と、経度2027をひとつのエントリに含む。
【0067】
ユーザID2021は、個体60を認識するためのユーザIDを格納し、ユーザID2011に対応する。測定日時2022は、センシングデータが測定された日時を格納する。加速度X軸2023、加速度Y軸2024、及び、加速度Z軸2025は、3軸加速度センサの各軸の測定結果を格納する。緯度2026と経度2027は、GNSS35の測定値を格納する。なお、動き情報テーブル202には、加速度データから算出した体動周波数(図示省略)を格納しておくことができる。体動周波数は、サーバ5で算出することができるが、センシング装置1で算出してもよい。
【0068】
図4は、特徴量情報21に格納されるデータの一例を示す図である。特徴量算出部11は、集団を構成する全ての個体60のセンサデータ22について運動強度を示すMETs(Metabolic Equivalents)を特徴量として算出する。特徴量の算出については、前記特許文献1と同様である。
【0069】
特徴量情報21には、ネットワーク分析を行った全個体223の各日時222における特徴量が格納される。本実施例では、所定のサンプリング周波数20Hzで測定されたセンサデータ22から特徴量としてMETsを算出し、1秒毎に集計した値を記憶している。
【0070】
図5は、実施例1のネットワーク分析部12による
図2のステップS102の詳細を示すフローチャートである。ネットワーク分析部12は、ステップS101で算出した特徴量から集団を構成する個体間の関係性を分析する。
【0071】
まずステップS1021では、ネットワーク分析部12が個体60間のネットワークを分析するために使用するデータの時間間隔を取得する。データの時間間隔は、センシング装置1の測定間隔(サンプリング周期又は所定の時間間隔)以上であれば、予め設定された値を使用してよい。
【0072】
ステップS1022では、ネットワーク分析部12がネットワークの分析を行う2個体を選択する。本実施例では、2個体間の相関性の有無を、集団を構成する個体の全ての組み合わせで分析するため、順次2つの個体を選択していく。
【0073】
ステップS1023では、上記ステップS1022で選択した個体60について、
図2のステップS101で算出した特徴量を特徴量情報21から取得する。
【0074】
ステップS1024、S1025、S1026では、2個体間の関係性を分析し、ネットワークの有無を判定する。本実施例では、移動エントロピーを用いることで、個体60間で伝達された情報量を算出し、ネットワークの有無を判定する。
【0075】
移動エントロピーは情報量の一種であり、確率変数間の情報の流れを平均情報量として数値化したものである。変数間の相関のみを示して情報の流れを含まない相互情報量とは異なり、移動エントロピーは情報の流れを特定することができ、変数間の関係性を測る指標である。本実施例では、移動エントロピーを用いるが、相互情報量、相関分析、回帰分析、多変量解析等の複数変数間の関係性を測る指標及び当該指標を算出する手法であれば、いかなるものでもよい。
【0076】
ステップS1024では、ネットワーク分析部12が各個体60の特徴量の時系列データから、確率分布を算出する。確率分布はヒストグラムで近似するという手法を採用するが、ガウス分布や混合ガウス分布を仮定して推定する手法等を採用してもよく、またこれらに制限されない。ヒストグラムで近似する場合、ヒストグラムの分割数は、赤池情報量基準やスタージェスの公式を用いるが、これらに制限されない。
【0077】
ステップS1025では、ネットワーク分析部12が2つの個体60の変数間の情報伝達量を移動エントロピーから算出する。移動エントロピーの算出については前記特許文献1と同様である。
【0078】
ステップS1026では、ネットワーク分析部12が、上記ステップS1025で算出した移動エントロピーの値を用いて、2個体間でのネットワークの有無を判定する。ネットワーク分析部12は、移動エントロピーが所定の閾値以上の個体60間において、情報の伝達があり、ネットワークがあったと判定する。本実施例1において、上記閾値は所定の定数である。閾値は、x2分布やガンマ分布等を用いた閾値判定法を用いてもよく、使用するセンシング装置1や測定した環境等によって予め設定された値である。
【0079】
ステップS1027では、ネットワーク分析部12が、上記ステップS1026で判定したネットワークの有無を同期ネットワーク時系列データ24に格納する。
【0080】
本実施例において、2個体間でネットワークが存在した場合には同期ネットワーク時系列データ24に移動エントロピーに応じた値を設定し、存在しなかった場合は同期ネットワーク時系列データ24に1を設定する。移動エントロピーに応じた値は、閾値を複数個設定し、数段階でネットワークの強度を判定した値とする。
【0081】
ステップS1028では、集団を構成する個体の全組み合わせでの分析が終了するまで、上記ステップS1022~S1027を繰り返して実行する。
【0082】
上記処理により、個体60間の関係性の大きさが、移動エントロピーの大きさに基づいて算出され、ネットワークを構成する個体が特定されて、集団内のネットワークが生成される。
【0083】
図6は、実施例1の同期ネットワーク時系列データ24に格納されるデータを示す図である。同期ネットワーク時系列データ24は、ある時刻におけるネットワークの総当たり図であり、ネットワーク分析を行った全個体における、ある時刻tでのネットワークの有無(強弱)が記載されている。
【0084】
同期ネットワーク時系列データ24は、所定の時間間隔で生成された時系列のデータであり、図示の例では、時刻T1から所定の時間間隔ΔT毎に同期ネットワーク時系列データ24が生成される。
【0085】
同期ネットワーク時系列データ24の1列目は情報及び影響を与える個体のユーザID242であり、1行目は情報及び影響を受ける個体のユーザID243である。行と列で示される2個体間の値はネットワークの強弱を5段階で示す。
【0086】
個体60間での関係性が強い場合は「5」が設定され、個体60間での関係性が弱い場合は「1」が設定される。なお、本実施例では、5段階にて関係性の強弱を記載したが、任意の何段階数で表現してもよい。なお、個体60間の関係性の強弱については、前記特許文献1で開示されるように、次数中心性や近接中心性で表すことができる。
【0087】
また、同期ネットワーク時系列データ24は、個体60間の関係性の強弱に限定されるものではなく関係性の有無で表現することができる。例えば、個体60間での関係性がある場合は「1」を設定し、個体60の関係性が無い場合は「0」を設定するようにしてもよい。
【0088】
図7は、センサデータ22の動き情報テーブル202と同期ネットワーク時系列データ24の関係を示す図である。図示の例は、動き情報テーブル202から取得した加速度データから生成した同期ネットワーク時系列データ24の一部をグラフとして表示し、複数の個体60間の関係の時系列的変化を示す。
【0089】
時刻t1では、ID=「1」の個体60は、ID=「2」及び「4」の2つの個体60と関係を有し、ID=「3」の個体60は、ID=「6」の個体60と関係を有する。所定の時間間隔Δt(例えば、1分)が経過した時刻t2ではID=「1」は、関係先の個体60をID=「4」からID=「5」に変化させ、ID=「2」及び「5」の2つの個体60と関係を有する。時刻t3ではID=「1」が、関係先の個体60をID=「5」のみとする。
【0090】
同期ネットワーク時系列データ24は個体60間の同期によるネットワークであり、個体60間の同期ネットワークを時系列で比較することにより、サッカーやラグビーあるいはバスケットなどの集団による動きの激しい競技の分析を行うことができる。
【0091】
図8は、同期ネットワーク時系列データ24からクリークを抽出する例を示す。ネットワーク分析部12は、
図7で示したように、同期ネットワーク時系列データ24からグラフを生成して個体60の関係先の変化を時系列で抽出することができる。
【0092】
ネットワーク分析部12は、同期ネットワーク時系列データ24から所定の数のクリークを抽出して、各時刻のクリークを時系列で集計して出力する。本実施例では、図示のように、1つの個体60で構成される1クリークと、で2つの個体60で構成される2クリークと、3つの個体60で構成される3クリークを評価対象として抽出する。
【0093】
図7の時刻t1のグラフは、
図8に示す1クリークと2クリークと3クリークの関係に分解することができる。
図8において、ネットワーク分析部12は、グラフを構成するノードのうち活性化しているノードを1クリークとして抽出する。活性化しているノードとは、例えば、動き情報テーブル202から得られる体動周波数が所定の閾値(例えば、2Hz)以上のノードを1クリークとしてネットワーク分析部12で抽出することができる。
【0094】
次に、ネットワーク分析部12は、関係を有する個体60間を1つのエッジで接続し、エッジの両端のノードを頂点とするグラフを2クリークとして抽出する。すなわち、次数が1のノードの組み合わせが2クリークとなる。例えば、時刻t1のグラフでは、ID=「1」と「2」が2クリークであり、さらに、ID=「1」と「4」、ID=「2」と「4」、ID=「3」と「6」が2クリークとして抽出される。なお、本実施例ではエッジの向きは評価せず無向グラフとして扱う。
【0095】
ネットワーク分析部12は、2クリークの関係先のノードが第3のノードと関係し、関係元のノードも同じ第3のノードと関係を有する場合、これらの3つのノードを3クリークとして抽出する。
【0096】
3クリークの各ノードは次数が2で、3つのノードはそれぞれ相互に関係を有する。時刻t1のグラフでは、ID=「1」と「2」ノードの2クリークで「1」のノードを関係元とし、「2」ノードを「1」の関係先とすると、関係先のノード「2」は他の(第3の)ノード「4」と関係を有し、関係元のノード「1」は、同じ他のノード「4」と関係を有する。このように、3つのノードを接続するエッジが閉じた構成を3クリークとする。
【0097】
<集団の意識の定義>
「何の関係も持たない赤の他人がたまたま同じ場所に居合わせた集団」において、体動の同調性などによりネットワーク(同期ネットワーク又はコミュニケーションネットワーク)を生成すると、均一にランダムに結合するネットワークになると考えられる。何故なら、同調したように見えても、それは偶然だからと推察される。
【0098】
一方、集団が何らかの目的を持って行動していれば、「何の関係も持たない赤の他人がたまたま同じ場所に居合わせた集団」とはネットワークの構造が異なると考えられる。そこで、本実施例では「目的を持って行動している集団」のネットワーク構造が、均一にランダムに結合するネットワークとどの程度異なるかを数値化したものを“集団の意識”を表す指標とする。
【0099】
本実施例では、同期ネットワークに生じるクリーク(=属性)を用いて、“集団の意識”を表す集団意識指標Wを定義して、均一にランダムな集団との違いを可視化することで判別可能にする。
【0100】
1つの個体60を1ノードとして、集団内のノードがランダム、かつ等確率で活性化する場合、ノード数をnとし、ノードの識別子をjとした場合、1つのノードが活性化する確率pjの総和k1は、
【0101】
【0102】
であり、0≦k1≦nとする。ランダムな状態のネットワークで1つのノードが等確率で活性化する状態の情報エントロピーをH1(max)とすると、次の(2)式で表すことができる。
【0103】
【0104】
n個のノードで構成されるネットワーク構造がある場合、1つのノードが活性化する状態の情報エントロピーをH1とすると次の(3)式で表すことができる。
【0105】
【0106】
ランダムな状態のネットワークと、n個のノードが活性化する情報エントロピーの差I1は、
【0107】
I1=H1(max)-H1
【0108】
で表される。情報エントロピーの差I1は、各ノードがランダムに等確率で活性化する場合とどれだけ離れているかを示し、換言すれば情報エントロピーH1の集団がどれだけネットワーク化されているかを表している。
【0109】
差I1がゼロなるのは、「確率1で全てのノードが活性化する場合」と「確率1でノードが全く活性化しない場合」と「全てのノードの活性化確率が等しい場合」である。また、差I1が、最大になるのは活性化されるノードが固定された場合である。ノードが固定された場合とは、例えば、ノード間の関係が変化しない状態であり、多様性が低い状態を示す。以上が1つのノード活性化して1クリークが出現するネットワーク構造の例である。
【0110】
次に、2つのノードが活性化して関係性を有する2クリークのネットワーク構造について検討する。2つのノードが活性化して接続される確率pjqの総和k2は、以下の(4)式で表される。
【0111】
【0112】
ただし、j、qは接続されるノードの識別子を示す。ノードが活性化する確率を算出した結果は、
図9に示す出現確率データ25に格納される。
【0113】
出現確率データ25は、複数の時系列ネットワークを用いて算出される。出現確率データ25を算出する時系列ネットワークの個数は、計測対象に応じてパラメータとして調整される。また、出現確率データ25を更新する時間間隔も、計測対象に応じてパラメータとして調整される。そのため、出現確率データ25は、計測対象に応じて最適と判断された一定の時間間隔毎に生成されて、1クリーク、2クリーク、3クリークのそれぞれについて、構成要素251と、確率252が設定される。例えば、図示のように6個のノードで集団が構成される場合には、1クリークの出現確率pjは、p1からp6の6とおりである。また、2クリークの出現確率pjqは、p12からp56の15とおりである。また、3クリークの出現確率pjqrは、p123からp456の20とおりである。なお、j、q、rは接続されるノードの識別子を示す。
【0114】
活性化した2つのノードj、qがランダムに等確率で接続される状態(2クリーク)の情報エントロピーをH2(max)は最大値となり以下の(5)式で表される。
【0115】
【0116】
ただし、Nは接続されるノードの組み合わせの数を示す。n個のノードで構成されるネットワーク構造がある場合、2つのノードが接続される状態の情報エントロピーをH2とすると次の(6)式で表すことができる。
【0117】
【0118】
2つのノードj、qがランダムに等確率で接続される状態のネットワークの情報エントロピーH2(max)と、2つのノードが接続される情報エントロピーの差I2は、
【0119】
I2=H2(max)-H2
【0120】
で表される。情報エントロピーの差I2は、集団内の2クリークがランダムに等確率で接続される状態とどれだけ離れているか、すなわちどれだけ組織化されているかを表す。
【0121】
情報エントロピーの差I2がゼロになるのは、「確率1で全てのノードが接続される場合」と「確率1でノードが全くつながらない場合」と「全てのパスの出現確率が等しい場合」である。また、差I2が最大になるのは、ネットワーク構造が固定された場合である。
【0122】
次に、3つのノードが活性化して関係性を有する3クリークのネットワーク構造について検討する。3つのノードが活性化して接続される確率pjqrの総和k3は、以下の(7)式で表される。
【0123】
【0124】
ただし、j、q、rは接続されるノードの識別子を示す。 活性化した3つのノードj、q、rがランダムに等確率で接続される状態(3クリーク)の情報エントロピーをH3(max)は以下の(8)式で表される。
【0125】
【0126】
n個のノードで構成されるネットワーク構造がある場合、3つのノードj、q、rが接続される状態の情報エントロピーをH3とすると次の(9)式で表すことができる。
【0127】
【0128】
3つのノードj、q、rがランダムに等確率で接続される状態のネットワークの情報エントロピーH3(max)と、2つのノードが接続される情報エントロピーH3の差I3は、
【0129】
I3=H3(max)-H3
【0130】
で表される。情報エントロピーの差I3は、集団内の3クリークがランダムに等確率で接続される状態とどれだけ離れているか、すなわちどれだけ組織化されているかを表す。
【0131】
上記2クリークと同様に、差I3がゼロなるのは、「確率1で全ての3クリークが出現する場合」と「確率1で3クリークが全く出現しない場合」と「全ての3クリークの出現確率が等しい場合」である。また、差I3が最大になるのは、ネットワーク構造が固定された場合である。
【0132】
以上のように、ランダムな状態のネットワークを基準にしたエントロピーの差を集団の意識を示す指標として用いることができる。本実施例では、クリークの数をiとして、ランダムな状態の情報エントロピーHi(max)と情報エントロピーHiの比率を用いて、集団意識指標Wを以下の(10)式で定義する。
【0133】
【0134】
例えば、スポーツにおいて、チーム内のネットワークは完全結合に近づこうとするが、対戦チームがいるために実現できない。対戦相手も同様であり、完全結合に近づこうとするため、全くつながらない状態へのプレッシャーが常にある。ネットワーク構造を固定せず変化させて対応するため、集団意識指標Wのエントロピーの比率の要素は0にも1にもならない状態を遷移する。このような状態を集団に意識があると定義する。また、集団意識指標Wの出現確率総和kiの値は大きい方が集団の活性度は高くなる。
【0135】
なお、上記ではクリークの数を示すi=1~3の例を示したが、クリークの数iは4以上であってもよい。
【0136】
<集団意識分析処理>
図10は、集団意識分析部13で行われる処理の一例を示すフローチャートである。集団意識分析部13は、ネットワーク分析部12が生成した同期ネットワーク時系列データ24を取得する(S211)。
【0137】
集団意識分析部13は、同期ネットワーク時系列データ24から所定数(i)のクリークを抽出して各クリークの出現確率pjを算出し、出現確率データ25を指定された時間間隔毎に生成する(S212)。
【0138】
集団意識分析部13は、出現確率データ25から所定のクリーク数毎に出現確率pjの総和を算出して、出現確率総和kiを指定された時間間隔毎に算出する(S213)。クリーク数が1であれば上記(1)式で出現確率総和k1を算出し、クリーク数が2であれば上記(4)式で出現確率総和k2を算出し、クリーク数が3であれば上記(7)式で出現確率総和k3を算出する。
【0139】
次に、集団意識分析部13は、各クリーク数i毎の出現確率総和kiから指定された時間間隔毎の情報エントロピーHiを算出してエントロピーデータ30に格納する(S221)。エントロピーデータ30には、クリークの種別(数)i毎に指定された時間間隔毎の状態の情報エントロピーHiが格納される。
【0140】
クリークの数が1の場合には、上記(3)式で情報エントロピーH1を算出し、クリークの数が2の場合には、上記(6)式で情報エントロピーH2を算出し、クリークの数が3の場合には、上記(9)式で情報エントロピーH3を算出する。
【0141】
また、集団意識分析部13は、各クリーク数(i)毎にランダムな状態のネットワークの情報エントロピーHi(max)を算出しておく。クリークの数が1の場合には、上記(2)式でランダムな状態の情報エントロピーH1(max)を算出し、クリークの数が2の場合には、上記(5)式でランダムな状態の情報エントロピーH2(max)を算出し、クリークの数が3の場合には、上記(8)式でランダムな状態の情報エントロピーH3(max)を算出しておく。
【0142】
集団意識分析部13は、ランダムな状態のネットワークの情報エントロピーHi(max)と、指定された時間間隔毎の状態の情報エントロピーHiの比率Hi/Hi(max)の比率を1から差し引いた値(1-Hi/Hi(max))を多様性を表す指標(以下、多様性指標)として指定された時間間隔毎に算出する(S222)。
【0143】
集団意識分析部13は、クリークの種別i毎に、指定された時間間隔毎の出現確率総和kiと多様性指標のペアを集団意識指標Wとして、2次元空間にプロットしてプロット図を生成して集団意識グラフ40に格納する(S23)。生成されたプロット図は表示部14によって、入出力装置56のディスプレイに表示される。なお、サーバ5はネットワーク4を介して接続された他の計算機にプロット図を送信して表示させるようにしてもよい。
【0144】
上記処理によって、同期ネットワーク時系列データ24から算出されたクリークの種別i毎の状態の情報エントロピーHiとランダムな状態のネットワークの情報エントロピーHi(max)の比率に基づいて指定された時間間隔毎に多様性指標(index of diversity)として算出され、また、指定された時間間隔毎のクリークの出現確率総和kiが活性度(activity)として算出され、指定された時間間隔毎の多様性指標と活性度のペアが集団意識指標Wとして生成される。
【0145】
そして、集団意識分析部13が、指定された時間間隔毎の活性度と多様性指標のペアを2次元空間にプロットすることで、集団の意識を示すプロット図が生成される。
【0146】
なお、複数のクリーク数についてプロット図を生成する場合、上記ステップS211~S23の処理を並列的に実行してもよいし、あるいは、クリーク数毎に順次実行してもよい。
【0147】
<プロット図>
図11は、集団の意識を示すプロット
図400である。プロット
図400は、縦軸に多様性指標(1-H
i/H
i(max))、横軸に活性度(出現確率総和k
i)を同期ネットワーク時系列データ24の時系列でプロットしたグラフとなる。
【0148】
縦軸方向の特性は、多様性指標が1に近付くほど出現するクリークが固定される。一方、多様性指標が0に近付くほどクリークの出現確率が等しくなる。横軸方向の特性は、活性度(出現確率総和ki)が0に近付くほど集団の活動(コミュニケーション)は低調となり、活性度が増大するにつれて集団の活動は活発となる。なお、本実施例では、体動の同調を無意識のコミュニケーションとして扱う。
【0149】
プロット
図400の領域毎の特性は次のようになる。多様性指標が1に近く、活性度が0に近い領域401は、特定の個体60が活発か、全ての個体60が不活発な状態であり、集団内の活動(コミュニケーション)は低調で、個体60間の関係の多様性は低い。
【0150】
多様性指標が1に近く、活性度が大きい領域402は、全ての個体60が活発であり、集団内の活動(コミュニケーション)は活発であるが、個体60間の関係の多様性は低い。
【0151】
多様性指標が0に近く、活性度も0に近い領域403は、特定の個体60が活発か、全ての個体60が不活発な状態であり、集団内の活動(コミュニケーション)は低調であるが、個体60間の関係の多様性は高い。
【0152】
多様性指標が0に近く、活性度が大きい領域404は、全ての個体60が活発であり、集団内の活動(コミュニケーション)は活発であり、個体60間の関係の多様性も高い。
【0153】
図12は、集団の意識を示すプロット
図400である。
図11に示した領域401~404の特性から、意識を持つ集団についてプロット
図400を作成すると、図示の領域410に値がプロットされることが多い。
【0154】
これは、
図12において、領域401と領域404に跨がる領域であり、全体の個体60が不活発かつ多様性が低い状態(領域401)と、全体の個体60が活発かつ多様性が高い状態(領域404)の間でプロットされる位置が時系列で変化する。
【0155】
図13は、運動分野の集団を分析したプロット
図400である。図示の例は、運動を行う2つのチームの個体60の集団の意識を時系列で示す3クリークのプロット
図400である。
【0156】
チームで活動するスポーツにおいては、「対戦チームに押されると、組織的な動きが単調になる」と言われるが、図示の例においても劣勢のBチームが図中左上方の領域 、すなわち
図11の領域401に値が集まってしまい、全員が不活発でチーム内のコミュニケーション(多様性)は低調であることが可視化されている。対戦チームに押されている状況では、チーム内の情報伝達を維持するために、ネットワーク構造を単調にせざるを得ないと考えられる。
【0157】
なお、上記では、3クリークのプロット
図400の一例を示したが、2クリークのプロット図についても同様の傾向が見られ、集団の意識を時系列で可視化することが可能となる。
【0158】
以上のように、本実施例では完全結合部分ネットワーク(=クリーク)毎に出現確率総和kiと、情報エントロピーHiを指定された時間間隔毎に算出して集団意識指標Wのペアとすることで、分析対象の集団がランダムなネットワークからどの程度離れているかを定量化することが可能となる。
【0159】
そして、集団意識分析部13が、クリークの種別i毎に2次元平面に集団意識指標Wをプロットすることで、グラフの横軸に活性度(=集団の温度)と縦軸にネットワーク構造の複雑さ(=多様性)を表すことが可能となる。
【実施例2】
【0160】
図14は、実施例2を示し、教育分野に適用したネットワーク分析システムの一例を示す図である。前記実施例1では、体動の同期性などの無意識的なコミュニケーションに集団意識指標Wを適用した例を示した。実施例2では、対面や会話などの意識的なコミュニケーションに集団意識指標Wを適用した例を示す。
【0161】
実施例2では、前記実施例1のセンシング装置1に赤外線通信部36を加えたセンシング装置1Aを個体60に装着させて、個体60間の対面(面会)を検出してサーバ5へ送信してセンサデータ22に格納する。
【0162】
サーバ5では、ネットワーク分析部12がセンサデータ22から対面した個体60の対面マトリクス23を指定された時間間隔毎に生成し、対面マトリクス23からコミュニケーションネットワーク時系列データ24Aを生成する。
【0163】
サーバ5の集団意識指標Wは、前記実施例1と同様にして、コミュニケーションネットワーク時系列データ24Aからクリーク数毎に多様性指標と活性度のペアからなる集団意識指標Wを算出して、プロット図を生成する。
【0164】
本実施例では、ネットワーク分析部12が前記実施例1の同期ネットワーク時系列データ24に代わって対面マトリクス23からコミュニケーションネットワーク時系列データ24Aを生成する点が相違し、その他の構成は前記実施例1と同様である。
【0165】
センサデータ22には、前記実施例1の内容に加えて赤外線通信部36が検出した対面者(個体60)のIDが加えられる。体動周波数の算出などは前記実施例1と同様である。
【0166】
図15、
図16は、時刻T1、T2の対面マトリクス23とコミュニケーションネットワーク時系列データ24Aの関係の一例を示す図である。
【0167】
図15、
図16の対面マトリクス23は、ID231とID232が集団を構成する個体60の識別子(ユーザID)を示し、各個体60の体動周波数が格納される。ネットワーク分析部12は、体動周波数が所定の閾値(例えば、2Hz)以上の個体60は発話状態(活性化)であると判定することができる。
【0168】
図15の時刻T1では、ユーザID=1の個体60が発話状態であり、対面状態のユーザID=2、4と会話しており、ユーザID=4はユーザID=2へ発話している状態を示している。
【0169】
図16の時刻T2では、ユーザID=1の個体60が発話状態であり、対面状態のユーザID=2、5と会話しており、ユーザID=5はユーザID=4へ発話している状態を示している。
【0170】
ネットワーク分析部12は、上記のような対面マトリクス23からコミュニケーションネットワーク時系列データ24Aを指定された時間間隔毎に生成する。なお、コミュニケーションネットワーク時系列データ24Aの生成については上記に限定されるものではなく、公知又は周知の技術を適用すればよい。例えば、前記特許文献2に開示されるように、ばねモデルによって、各個体60をノードとして対面時間をノード間の引力としてコミュニケーションネットワーク時系列データ24Aを作成することができる。
【0171】
図17は、教育運動分野の集団を分析したプロット
図400である。図示の例は、グループ学習を行う2つのグループの個体60の集団の意識を時系列で示す1クリークのプロット
図400である。
【0172】
図示の例は、AグループとBグループの2つがグループ学習を行った結果を示すプロット図である。Aグループはプロット
図400の中央から右側に分布しており、常に意識的なグループ活動ができている。
【0173】
これに対して、Bグループでは一時的にプロット
図400の右側に分布するが、大半がプロット
図400の左側の下部に分布するため、意識的なグループ活動が一時的であることが可視化される。
【0174】
以上のように、実施例2によれば、対面や会話などの意識的なコミュニケーションに集団意識指標Wを適用することで、集団の意識を定量化して可視化することが可能となり、集団のマネージメントなどに反映することができる。
【0175】
<結び>
以上のように、上記実施例1、2のネットワーク分析システムは以下のような構成とすることができる。
【0176】
(1)プロセッサ(CPU51)とメモリ(54)を含む計算機(サーバ5)が集団における個体(60)間のネットワークを分析するネットワーク分析方法であって、前記計算機(5)が、集団を構成する個体(60)の活動に関する時系列の情報を収集してセンサデータ(22)に格納するセンシングデータ収集ステップ(情報入力部53)と、前記計算機(5)が、前記センサデータ(22)から活性化された前記個体(60)をクリークとして抽出し、前記クリークで構成されるネットワーク(同期ネットワーク時系列データ24)を時系列で生成するネットワーク分析ステップ(ネットワーク分析部12)と、前記計算機(5)が、前記クリークの出現確率の総和kiと前記クリークの情報エントロピーHiを算出して、前記集団の活性度と前記集団の多様性を示す指標を集団意識指標(W)として算出する集団意識分析ステップ(集団意識分析部13)と、を含むことを特徴とするネットワーク分析方法。
【0177】
上記構成により、集団の活性度と集団の多様性を示す指標を集団意識指標Wとして定量化することにより、目的を持って活動している集団のネットワーク構造の時系列的な変化を可視化することが可能となって、集団の意識を容易に把握することが可能となる。
【0178】
(2)上記(1)に記載のネットワーク分析方法であって、前記集団意識分析ステップ(13)は、指定された時間間隔毎に前記クリークの出現確率(pj)の総和(ki)を個体の活性度として算出するステップと、前記個体(60)がランダムな状態のネットワークの情報エントロピーを第1の情報エントロピー(Hi(max))として算出するステップと、前記所定の時刻毎に前記個体(60)のネットワークの情報エントロピーを第2の情報エントロピー(Hi)として算出するステップと、前記第1の情報エントロピー(Hi(max))と前記第2の情報エントロピー(Hi)の比率に基づく値を多様性指標として各時刻毎に算出するステップと、前記活性度と前記多様性指標のペアを指定された時間間隔毎の集団意識指標(W)として算出するステップと、を含むことを特徴とするネットワーク分析方法。
【0179】
上記構成により、目的を持って行動している集団のネットワーク構造が、均一にランダムに結合するネットワークとどの程度異なるかを定量化した値を集団意識指標Wとして算出することができる。
【0180】
(3)上記(2)に記載のネットワーク分析方法であって、前記計算機(5)が、前記集団意識指標(W)を可視化する可視化ステップ(表示部14)をさらに含み、前記集団意識分析ステップ(13)は、前記指定された時間間隔毎の集団意識指標(W)を所定の空間にプロットしたプロット図(400)を生成するステップをさらに含み、前記可視化ステップ(14)は、前記プロット図(400)を出力することを特徴とするネットワーク分析方法。
【0181】
上記構成により、活性度と多様性指標のペアがプロットされたプロット図によって、集団の活性度と多様性からなる意識がどのように変化したのかを容易に把握することが可能となる。
【0182】
(4)上記(1)に記載のネットワーク分析方法であって、前記集団意識分析ステップ(13)は、前記クリークの数(i)毎に前記集団意識指標(W)を算出することを特徴とするネットワーク分析方法。
【0183】
上記構成により、分析対象の集団の特性に応じてプロット
図400のクリーク数(i)を選択することで、集団意識指標Wを容易に把握することができる。例えば、サッカーやラグビー等の集団で行うスポーツでは、2クリークや3クリークのプロット
図400によって集団意識指標Wを容易に把握することができる。また、教育分野やビジネス分野では、1クリークや2クリークのプロット
図400によって集団意識指標Wを容易に把握することができる。
【0184】
(5)上記(2)に記載のネットワーク分析方法であって、前記集団意識分析ステップ(13)は、1-第2の情報エントロピー(Hi)/第1の情報エントロピー(Hi(max))、を前記多様性指標として指定された時間間隔毎に算出することを特徴とするネットワーク分析方法。
【0185】
上記構成により、均一にランダムに結合するネットワークの情報エントロピー(Hi/Hi(max))と、所定の目的を持って行動している集団のネットワーク分の情報エントロピーHiから集団の多様性(構造)を示す指標を算出することが可能となる。
【0186】
(6)上記(1)に記載のネットワーク分析方法であって、前記センシングデータ収集ステップ(53)は、前記個体(60)の活動に関する時系列の情報として前記個体(60)の加速度データを含むセンサデータ(22)を収集し、前記ネットワーク分析ステップ(12)は、前記加速度データから個体(60)間の関係性を算出して前記クリークで構成されるネットワーク(24)を時系列で生成することを特徴とするネットワーク分析方法。
【0187】
上記構成により、スポーツ分野等の集団を分析する際には加速度データに基づいて同期ネットワーク時系列データ24を生成することで、集団の活動内容に応じた集団意識指標Wを算出することができる。
【0188】
(7)上記(1)に記載のネットワーク分析方法であって、前記センシングデータ収集ステップ(53)は、前記個体(60)の活動に関する時系列の情報として前記個体(60)間の対面情報を含むセンサデータ(22)を収集し、前記ネットワーク分析ステップ(12)は、前記対面情報から個体間の関係性(対面マトリクス23)を算出して前記クリークで構成されるネットワーク(コミュニケーションネットワーク時系列データ24A)を時系列で生成することを特徴とするネットワーク分析方法。
【0189】
上記構成により、教育やビジネス分野等の集団を分析する際には対面情報に基づいてコミュニケーションネットワーク時系列データ24Aを生成することで、集団の活動内容に応じた集団意識指標Wを算出することができる。
【0190】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を含むものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、又は置換のいずれもが、単独で、又は組み合わせても適用可能である。
【0191】
また、上記の各構成、機能、処理部、及び処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、及び機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0192】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0193】
1 センシング装置
5 サーバ
10 解析部
11 特徴量算出部
12 ネットワーク分析部
13 集団意識分析部
14 表示部
21 特徴量情報
22 センサデータ
24 同期ネットワーク時系列データ
25 出現確率データ
30 エントロピーデータ
40 集団意識グラフ
51 CPU
52 メモリ
55 補助記憶装置