(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ゲル状洗浄剤及び押出器具
(51)【国際特許分類】
C11D 17/08 20060101AFI20241202BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D17/04
(21)【出願番号】P 2020111627
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-05-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上西 加純
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-092064(JP,A)
【文献】特開2015-199936(JP,A)
【文献】特開2004-075791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄成分、水及びゲル化剤を含有する透明な洗浄剤組成物と、
前記洗浄剤組成物に不溶でありかつ前記洗浄剤組成物に混合される複数の不溶装飾物と、を備え、
前記不溶装飾物の平均粒子径が5μm以上200μm以下であり、
前記不溶装飾物がパール顔料であり、
硬質の表面に張り付けて使用される、
ことを特徴とするゲル状洗浄剤。
【請求項2】
前記不溶装飾物の平均粒子径が40μm以上200μm以下である、ことを特徴とする請求項
1に記載のゲル状洗浄剤。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のゲル状洗浄剤を収容しており、吐出口より内部の前記ゲル状洗浄剤を押し出し可能な押出器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水洗トイレの便器、洗面所の洗面器、台所のシンクの内面等に貼り付けて使用されるゲル状洗浄剤、及び、ゲル状洗浄剤を収容して便器の内面等にゲル状洗浄剤を貼り付けるための押出器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗トイレの便器の内面(ボウル面)等に付着する汚れを除去し、衛生的な環境を作り出すために、様々な洗浄剤が使用されている。例えば水洗トイレ用の洗浄剤としては、専用の薬剤供給器具に収容されていて、この薬剤供給器具を貯水タンクの給水受け皿の上面に設置することにより、水洗時に便器に供給されるフラッシュ水に予め洗浄剤を溶解又は混入させるように設計されたオンタンク用の固形状又は液体状の洗浄剤が知られている。
【0003】
また、近年はタンクレスの水洗トイレが普及していることから、専用の薬剤押出器具に収容されていて、この薬剤押出器具の吐出口から押し出して便器の内面等に貼り付けるように設計されたゲル状洗浄剤も知られている(例えば特許文献1を参照)。このゲル状洗浄剤は、所定の厚み・形状を有して便器の内面等に貼り付けられており、水洗のたびに便器に供給されるフラッシュ水と接触することで、フラッシュ水に洗浄剤が溶出して次第に消失する。ゲル状洗浄剤が完全に消失して使い終わると、再びゲル状洗浄剤を薬剤押出器具から押し出して便器の内面等に貼り付けることで、引き続き便器の洗浄が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したゲル状洗浄剤は、無色透明である場合には、ユーザが便器の内面等に綺麗に洗浄剤を貼り付けできたかどうか、更には、使用に伴って徐々に消失していく(例えば厚みが薄くなる及び/又は形が小さくなる)と洗浄剤がどれぐらい残存しているかどうか、等を目視で容易には確認し難い。また、ゲル状洗浄剤が有色であっても透明である場合には、使用に伴って徐々に消失していくと見え難くなり、洗浄剤が少し残存していても消失しているように見えるため、使い終わっているかどうかの把握を目視で容易に行うことが難しい場合もある。
【0006】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、便器の内面等の貼り付けられた後、目視で容易にその状態を確認できるゲル状浄剤、及び、ゲル状洗浄剤を収容した押出器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様は、例えば水洗トイレの便器、洗面所の洗面器、台所のシンクの内面等に貼り付けて使用されるゲル状洗浄剤に関する。本発明のゲル状洗浄剤は、洗浄成分、水及びゲル化剤を含有する透明な洗浄剤組成物と、前記洗浄剤組成物に不溶でありかつ前記洗浄剤組成物に混合される複数の不溶装飾物と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
本発明のゲル状洗浄剤において好ましくは、前記不溶装飾物は光の反射により光沢を発する、ことを特徴とするように構成することができ、更に好ましくは、前記不溶装飾物がパール顔料である、ことを特徴とするように構成することができる。
【0009】
また本発明のゲル状洗浄剤において好ましくは、前記不溶装飾物の平均粒子径が40μm以上200μm以下である、ことを特徴とするように構成することができる。
【0010】
本発明の第二態様は、例えば水洗トイレの便器、洗面所の洗面器、台所のシンクの内面等にゲル状洗浄剤を貼り付けるための押出器具に関する。本発明の押出器具は、上述した構成のゲル状洗浄剤を収容しており、吐出口より内部の前記ゲル状洗浄剤を押し出し可能である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば水洗トイレの便器の内面等に貼り付けられたゲル状洗浄剤について、その状態を目視で容易に確認することができる。よって、ユーザは、便器の内面等に綺麗に洗浄剤を貼り付けできたかどうかや、使用に伴って洗浄剤が徐々に消失しても洗浄剤がどれぐらい残存しているかどうか(使い終わっているかどうか)の把握を目視で容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のゲル状洗浄剤及び押出器具の実施形態について説明する。
【0013】
[ゲル状洗浄剤]
ゲル状洗浄剤は、透明な洗浄剤組成物、及び、洗浄剤組成物に不溶でありかつ洗浄剤組成物に混合される複数の不溶装飾物を備える。ゲル状洗浄剤は、例えば水洗トイレの便器、洗面所の洗面器、台所のシンクの内面等の硬質表面の洗浄のために使用される。具体的に、ゲル状洗浄剤は、便器の内面等に貼り付けられ、例えば水洗時に便器に供給されるフラッシュ水等の流水と接触することで流水に洗浄剤の含有成分が溶出し、これにより、便器の内面等に付着する汚れを除去し、衛生的な環境を作り出すように設計されている。なお、その他の用途としては、例えば水洗トイレの貯水タンクの給水受け皿の他、浴室の壁やドア、窓、鏡等の洗浄を挙げることができる。ゲル状洗浄剤を便器の内面等に貼り付けるには、例えばゲル状洗浄剤を収容した容器の吐出口から容器内のゲル状洗浄剤を押し出して便器の内面等に直接くっつければよい。
【0014】
[洗浄剤組成物]
洗浄剤組成物は、流動性を有する半固体状(ゲル状)である。洗浄剤組成物は、透明(半透明も含む)であり、無色透明及び着色された有色透明のいずれであってもよい。洗浄剤組成物は、洗浄成分、水及びゲル化剤を少なくとも含有する。洗浄剤組成物は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。洗浄剤組成物は、ゲル状洗浄剤の用途に応じて、配合する成分(含有成分)の種類と含有量、配合する成分の組み合わせ等を適宜調整すればよい。なお、以下に示す洗浄剤組成物の含有成分はあくまでも一例であり、本発明に係る洗浄剤組成物の含有成分は以下に示す例に限定されない。
【0015】
[洗浄剤組成物の含有成分]
・ポリオキシアルキレンブロックポリマー
洗浄剤組成物は、ゲル化剤として、特に限定されないが、ポリオキシアルキレンブロックポリマーを含んでいることが好ましい。ポリオキシアルキレンブロックポリマーは、洗浄剤組成物をゲル状とするためのゲル化剤としての役割とともに、界面活性作用による洗浄成分としての役割も果たす。
【0016】
ポリオキシアルキレンブロックポリマーとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンのうち、2種以上のポリオキシアルキレンを含むブロックポリマーであればよいが、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーであることが好ましい。
【0017】
一般式(1):
HO-(A1O)j-(A2O)k-(A3O)l-(A2O)m-(A1O)n-H
【0018】
一般式(1)中、j、k、l、m及びnはそれぞれ付加モル数を示す。j+nは1以上であり、kは0以上であり、lは1以上であり、mは0以上である。A1Oは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを示す。A2Oは、炭素数は2以上4以下であって、A1Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。A3Oは、炭素数は2以上4以下であって、A2Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。A1O、A2O及びA3Oの少なくとも1つは、エチレンオキサイドである。
【0019】
一般式(1)において、A1Oは炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド、すなわち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドを示す。A1Oとしては、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点から、エチレンオキサイドであることが好ましい。
【0020】
一般式(1)において、j+nはアルキレンオキサイド(A1O)の付加モル数の合計を表す。j+nは1以上であればよく、j又はnの一方は0であってもよい。洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、j及びnはそれぞれ1以上であることが好ましい。また、j及びnは略同数であることが好ましい。更に洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、j+nは好ましくは30以上であり、更に好ましくは30以上350以下であり、特に好ましくは70以上350以下である。なお、j+nの上限値については、特に限定されないが、例えば400を挙げることができる。j及びnはそれぞれ具体的に、jは好ましくは15以上、更に好ましくは15以上175以下、特に好ましくは35以上175以下であり、nは好ましくは15以上、更に好ましくは15以上175以下、特に好ましくは35以上175以下である。
【0021】
一般式(1)において、A2Oは炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド、すなわち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドを示す。ただし、A2OはA1Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドになる。すなわち、A1Oがエチレンオキサイドの場合には、A2Oはプロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドになり、A1Oがプロピレンオキサイドの場合には、A2Oはエチレンオキサイド又はブチレンオキサイドになり、A1Oがブチレンオキサイドの場合には、A2Oはエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドになる。洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、A2Oとして、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドであることが好ましく、ブチレンオキサイドであることが更に好ましい。
【0022】
一般式(1)において、k及びmはアルキレンオキサイド(A2O)の付加モル数を示す。k及びmはそれぞれ0以上である。kが0の場合には、mも0であることが好ましいが、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、k及びmは1以上であることが更に好ましい。また、k及びmは略同数であることが好ましい。更に洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、k+mは好ましくは0以上60以下であり、更に好ましくは0以上40以下であり、特に好ましくは10以上40以下である。なお、k及びmの上限値については、特に限定されないが、kの上限値としては例えば30を挙げることができ、mの上限値としては例えば30を挙げることができる。k+mの上限値についても、特に限定されないが、例えば60を挙げることができる。k及びmはそれぞれ具体的に、kは0以上30以下であり、好ましくは0以上20以下であり、更に好ましくは5以上20以下であり、mは0以上30以下であり、好ましくは0以上20以下であり、更に好ましくは5以上20以下である。
【0023】
一般式(1)において、A3Oは炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド、すなわち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドを示す。ただし、A3OはA2Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドになる。すなわち、k及びmが0の場合(A2Oがない場合)には、A3Oはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドになる。また、k及び/又はmが1以上の場合に、A2Oがエチレンオキサイドであれば、A3Oはプロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドになり、A2Oがプロピレンオキサイドであれば、A3Oはエチレンオキサイド又はブチレンオキサイドになり、A2Oがブチレンオキサイドであれば、A3Oはエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドになる。洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、A3Oとして、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドであることが好ましく、プロピレンオキサイドであることが更に好ましい。
【0024】
一般式(1)において、lはアルキレンオキサイド(A3O)の付加モル数を示す。lは1以上である。洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、lは好ましくは1以上60以下であり、更に好ましくは15以上60以下である。より具体的に、k及びmが0の場合であれば、lは、好ましくは1以上60以下、更に好ましくは15以上60以下、特に好ましくは30以上60以下である。また、k及びmが1以上の場合であれば、lは、好ましくは1以上60以下、更に好ましくは15以上60以下、特に好ましくは15以上30以下である。
【0025】
一般式(1)において、A1O、A2O及びA3Oの少なくとも1つは、エチレンオキサイドになる。洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、少なくともA1Oはエチレンオキサイドであることが好ましい。A1Oがエチレンオキサイドの場合の一般式(1)のブロックポリマーは下記一般式(1a)に示す構造になる。
【0026】
一般式(1a):
HO-(EO)j-(A2O)k-(A3O)l-(A2O)m-(EO)n-H
【0027】
一般式(1a)中、j、k、l、m及びnは、前記と同様である。EOは、エチレンオキサイドを示す。A2Oは炭素数3又は4のアルキレンオキサイドを示す。A3Oは炭素数2以上4以下であって、A2Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。
【0028】
一般式(1)のブロックポリマーにおいて、炭素数3以上4以下のアルキレンオキサイドが占める部分の分子量については、上述した一般式(1)の条件を充足する範囲であればよいが、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、好ましくは1400以上であり、更に好ましくは1700以上であり、特に好ましくは1700以上3500以下である。
【0029】
一般式(1)のブロックポリマーの分子量については、上述した一般式(1)の条件を充足する範囲であればよいが、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、好ましくは4600以上であり、更に好ましくは6500以上であり、特に好ましくは6500以上20000以下である。
【0030】
一般式(1)のブロックポリマーの中でも、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、好適な具体例として、以下の一般式(1a-1)~(1a-3)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーを挙げることができる。
【0031】
一般式(1a-1):
HO-(EO)j1-(BO)k1-(PO)l1-(BO)m1-(EO)n1-H
【0032】
一般式(1a-1)中、EOはエチレンオキサイド、BOはブチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。また、一般式(1a-1)中、j1、k1、l1、m1及びn1はそれぞれ付加モル数を示す。j1及びn1は、それぞれ、1以上、好ましくは15以上、更に好ましくは15以上175以下、特に好ましくは35以上175以下である。j1及びn1は略同数であることが好ましい。また、j1+n1(エチレンオキサイドの付加モル数)は好ましくは30以上であり、更に好ましくは30以上350以下であり、特に好ましくは70以上350以下である。k1及びm1は、それぞれ、0以上であり、好ましくは0以上30以下であり、更に好ましくは0以上20以下であり、特に好ましくは5以上20以下である。k1及びm1は略同数であることが好ましい。また、k1+m1(ブチレンオキサイドの付加モル数)は0以上であり、好ましくは0以上60以下であり、更に好ましくは0以上40以下であり、特に好ましくは10以上40以下である。l1は1以上であり、好ましくは1以上60以下であり、更に好ましくは15以上60以下であり、特に好ましくは15以上30以下である。
【0033】
一般式(1a-2):
HO-(EO)j2-(PO)l2-(EO)n2-H
【0034】
一般式(1a-2)中、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。また、一般式(1a-2)中、j2、l2及びn2はそれぞれ付加モル数を示す。j2及びn2は、それぞれ、1以上であり、好ましくは15以上150以下であり、更に好ましくは35以上150以下である。j2及びn2は略同数であることが好ましい。また、j2+n2(エチレンオキサイドの付加モル数)は2以上であり、好ましくは30以上300以下であり、更に好ましくは70以上300以下である。l2は1以上であり、好ましくは1以上60以下であり、更に好ましくは15以上60以下であり、特に好ましくは30以上60以下である。
【0035】
一般式(1a-3):
HO-(EO)j3-(BO)l3-(EO)n3-H
【0036】
一般式(1a-3)中、EOはエチレンオキサイド、BOはブチレンオキサイドを示す。また、一般式(1a-3)中、j3、l3及びn3はそれぞれ付加モル数を示す。j3及びn3は、それぞれ、1以上であり、好ましくは15以上150以下であり、更に好ましくは35以上150以下である。j3及びn3は略同数であることが好ましい。また、j3+n3(エチレンオキサイドの付加モル数)は2以上であり、好ましくは30以上300以下であり、更に好ましくは70以上300以下である。l3は1以上であり、好ましくは1以上50以下であり、更に好ましくは20以上50以下である。
【0037】
一般式(1a-1)~(1a-3)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーの中でも、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、好ましくは一般式(1a-1)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーを挙げることができる。
【0038】
洗浄剤組成物に含まれる一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーとしては、1種の構造のものを単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0039】
洗浄剤組成物中のポリオキシアルキレンブロックポリマーの含有量については、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる範囲で適宜設定すればよいが、例えば10重量%以上50重量%以下、好ましくは12重量%以上40重量%以下、更に好ましくは15重量%以上25重量%以下を挙げることができる。
【0040】
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
洗浄剤組成物は、上述したポリオキシアルキレンブロックポリマーとともに、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含んでいることが好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルをポリオキシアルキレンブロックポリマーと併用することによって、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにする役割を果たす。また、洗浄剤組成物に高い透明性を備えつつ、便器の内面等に対する付着性を良好にする。更に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが含まれることによって、洗浄作用も向上する。
【0041】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン基の種類については、特に限定されないが、例えば、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド、すなわち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドを挙げることができる。これらのオキシアルキレン基の中でも、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる観点からは、好ましくはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド、更に好ましくはエチレンオキサイドを挙げることができる。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいては、1種の構造のオキシアルキレン基が単独で含まれていてもよく、2種以上の構造のオキシアルキレン基が組み合わされて含まれていてもよい。
【0042】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン基の付加モル数については、特に限定されないが、例えば10以上100以下であり、好ましくは25以上75以下であり、更に好ましくは40以上60以下である。
【0043】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基の炭素数については、特に限定されないが、例えば10以上22以下であり、好ましくは14以上20以下であり、更に好ましくは16以上18以下である。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状を挙げることができる。
【0044】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中でも、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる、より高い透明性を備えさせる、あるいは便器の内面等に対する付着性をより一層向上させるという観点からは、好ましくはポリオキシエチレン(付加モル数10以上100以下)アルキル(炭素数10以上22以下)エーテル、更に好ましくはポリオキシエチレン(付加モル数40以上60以下)アルキル(炭素数16以上18以下)エーテルを挙げることができる。
【0045】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、1種の構造のものを単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0046】
洗浄剤組成物にポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有させる場合のその含有量は、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる範囲で適宜設定すればよいが、例えば1重量%以上40重量%以下、好ましくは2重量%以上15重量%、更に好ましくは3重量%以上7重量%以下を挙げることができる。
【0047】
洗浄剤組成物において、ポリオキシアルキレンブロックポリマーとポリオキシアルキレンアルキルエーテルの比率については、例えばポリオキシアルキレンブロックポリマーの総量100重量部当たり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの総量が1重量部以上100重量部以下、好ましくは3重量部以上70重量部以下、更に好ましくは4重量部以上60重量部以下となる比率を挙げることができる。
【0048】
・両性界面活性剤
洗浄剤組成物は、上述したポリオキシアルキレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルに加えて、両性界面活性剤が含まれていてもよい。ポリオキシアルキレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルに加えて両性界面活性剤が含まれていることによって、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにしつつ、押出器具の吐出口からの糸引き抑制効果、及び便器の内面等に対して複雑な形状での貼り付けが可能になる。更に、両性界面活性剤が含まれるが含まれることによって、洗浄作用も向上する。
【0049】
両性界面活性剤の種類については、特に限定されないが、例えばヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン型両性界面活性剤;β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤;デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0050】
これらの両性界面活性剤の中でも、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにしつつ、押出器具の吐出口からの糸引き抑制効果、及び便器の内面等に対して複雑な形状での貼り付けを可能にするとの効果を一層向上させるという観点からは、好ましくはベタイン型両性界面活性剤、更に好ましくはヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを挙げることができる。
【0051】
両性界面活性剤としては、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
洗浄剤組成物に両性界面活性剤を含有させる場合のその含有量は、洗浄剤組成物のゲル強度を適度な大きさにできる範囲で適宜設定すればよいが、例えば1重量%以上30重量%以下、好ましくは5重量%以上25重量%以下、更に好ましくは9重量%以上20重量%以下を挙げることができる。
【0053】
洗浄剤組成物において、ポリオキシアルキレンブロックポリマーと両性界面活性剤の比率については、例えばポリオキシアルキレンブロックポリマーの総量100重量部当たり、両性界面活性剤の総量が15重量部以上200重量部以下、好ましくは20重量部以上175重量部以下、更に好ましくは25重量部以上150重量部以下となる比率を挙げることができる。
【0054】
・水
洗浄剤組成物は、ゲル状にするために水を含んでいる。洗浄剤組成物において、水の含有量については、洗浄剤組成物をゲル状にできる範囲で適宜設定すればよいが、例えば20重量%以上80重量%以下、好ましくは30重量%以上70重量%以下、更に好ましくは40重量%以上60重量%以下を挙げることができる。
【0055】
・水以外の溶剤
洗浄剤組成物は、水以外の溶剤を必要に応じて含んでいてもよい。このように水以外の溶剤を含有させることによって、香料等の他の添加剤や後述する不溶装飾物に対して分散性や溶解性を付与することが可能になる。
【0056】
溶剤の種類については、特に限定されないが、例えばグリセリンポリオキシエチレン付加物(例えば付加モル数が5以上80以下、好ましくは10以上40以下、更に好ましくは15以上30以下のエチレンオキサイド3つが、グリセリンにエステル結合しているグリセリンポリオキシエチレン付加物);エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価の低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等を挙げることができる。これらの溶剤の中でも、好ましくはグリセリンポリオキシエチレン付加物を挙げることができる。
【0057】
これらの溶剤は、1種を単独で使用していてもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
洗浄剤組成物に水以外の溶剤を含有させる場合のその含有量は、特に限定されないが、例えば0重量%より大きく30重量%以下、好ましくは3重量%以上20重量%以下、更に好ましくは5重量%以上10重量%以下を挙げることができる。
【0059】
・香料
洗浄剤組成物には、使用する空間に芳香を付与するために、必要に応じて香料が含まれていてもよい。香料は、洗浄剤組成物の用途に応じて所望の芳香を呈する香料成分を適宜選択すればよい。香料は、例えば天然香料の他、炭化水素系香料、エーテル系香料、エステル系香料、アルコール系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料等の合成香料を挙げることができる。
【0060】
天然香料としては、例えば、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、イランイラン油、パチュリ油、シトロネラ油、レモングラス油、ボアドローズ油、チョウジ油、ユーカリ油、セダー油、ラベンダー油、ビャクダン油、ベチバー油、ゼラニウム油、ラブダナム油、ミント油、ペパーミント油、ローズ油、ジャスミン油、リッツアキュベバ油等を挙げることができる。
【0061】
炭化水素系香料としては、例えば、リモネン、α-ピネン、カンフェン、p-サイメン、フェンチェン等を挙げることができる。
【0062】
エーテル系香料としては、例えば、テトラヒドロ-2,4-ジメチル-4-フェニルフラン、1,8-シネオール、ローズオキサイド、セドロールメチルエーテル(セドランバー)、p-クレジルメチルエーテル、イソアミルフエェニルエチルエーテル、4-フェニル-2,4,6-トリメチル-1,3-ジオキサン、アネトール等を挙げることができる。
【0063】
エステル系香料としては、例えば、ゲラニルアセテート、エチルアセテート、エチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、ブチルアセテート、エチル2-メチルブチレート、イソアミルアセテート、エチル2-メチルペンタノエート(マンザネート)、ヘキシルアセテート、アリルヘキサノエート、トリシクロデセニルプロピオネート(VERTOPRO;フロロシクレン)、アリルヘプタノエート、イソボルニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、2-ter-ブチルシクロヘキシルアセテート(ナルシドール)等を挙げることができる。
【0064】
アルコール系香料としては、例えば、リナノール、3-オクタノール、2,6-ジメチル-ヘプタノール、10-ウンデセノール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、テトラヒドロリナロール、ターピネオール、セドロール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキサン-1-メタノール、4-イソプロピルシクロヘキサノール、ネロリドール、9-デセノール、シス-3-ヘキセノール、トランス-2-ヘキセノール、オイゲノール等を挙げることができる。
【0065】
アルデヒド系香料としては、例えば、シトロネラール、オクタナール、パラアルデハイド、ベンズアルデヒド、アルデヒドC-6、アルデヒドC-7、 アルデヒドC-8、アルデヒドC-9、アルデヒドC-10、トリプラール、p-エチルジメチルヒドロシンナミックアルデヒド(フローラゾン)、2-トリデセナール、アルデヒドC11等を挙げることができる。
【0066】
ケトン系香料としては、例えば、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、アセトイン、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メチルヘプテノン、コアボン、カンファー、カルボン、メントン、d-プレゴン、ピペリトン、フェンチョン、ゲラニルアセトン、マルトール、エチルマルトール、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフラノン、プリカトン、アセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、ベンジルケトン等を挙げることができる。
【0067】
これらの香料は、単品香料として1種を単独で使用してもよく、また調合香料として2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
洗浄剤組成物に香料を含有させる場合のその含有量については、特に限定されないが、例えば0重量%より大きく15重量%以下、好ましくは1重量%以上12重量%以下、更に好ましくは3重量%以上10重量%以下を挙げることができる。
【0069】
・その他の添加剤
洗浄剤組成物は、上述した成分の他に、必要に応じて、非イオン性界面活性剤(ポリオキシアルキレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル以外)、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤(テトラアルキルアンモニウム塩以外)、酵素、殺菌剤、キレート剤、着色剤(顔料)、消臭剤、乳化剤、可溶化剤、増量剤、溶解性調整剤、漂白剤、撥水剤、親水剤、充填剤、pH調整剤、増粘剤、緩衝剤、消泡剤等の添加剤を適量含むことができる。
【0070】
添加される消臭剤としては、従来公知のものから適宜選択して用いることができる。例えばイネ、松、ヒノキ、笹、緑茶等の植物の抽出物;アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩;セチルピリジニウム塩、ベンゾイソチアゾリンなどの複素環化合物;酸化銀、銀含有の水溶性ガラス、銀を担持させたゼオライト、銀ナノ粒子、銀イオン、硝酸銀、硫化銀等の銀化合物;酸化亜鉛、酸化銅、亜鉛イオン、銅イオン、金ナノ粒子等の金属化合物;シクロデキストリンやシクロファンなどの包接化合物;両性界面活性剤系消臭剤、アミノ酸系消臭剤などの両性化合物;シリカゲル、アルミナ、活性炭、ゼオライト等の吸着物質の微細粉末等を挙げることができる。
【0071】
[不溶装飾物]
不溶装飾物は、便器の内面等に貼り付けられた後のゲル状洗浄剤の状態をユーザが目視で容易に確認できるようにするために、洗浄剤組成物に混合される固形物質である。不溶装飾物は、ゲル状洗浄剤に、単なる洗浄剤組成物とは異なる見た目(色、表面の光沢や輝き等)を付与する物質であり、洗浄剤組成物中に複数が局所的に集中することなく一様に散らばっている、つまりは、ゲル状洗浄剤が便器の内面等の貼り付けられた際に、その面方向及び厚み方向に均等に散在していることが好ましい。
【0072】
不溶装飾物は、洗浄剤組成物に不溶である。具体的には、不溶装飾物は、洗浄剤組成物に含まれる水やその他の溶剤に対して溶解しない不溶解性の物質である。なお、不溶とは、全く溶解しない場合に限られず、ほとんど溶解しない場合も含まれる。例えば、不溶装飾物1gを、1気圧・25℃の環境下において10gの水(例えばイオン交換水)やその他の溶剤に浸漬し、24時間経過後、浸漬した不溶装飾物の1mg以上が溶解しない性質を有する場合も不溶に含まれる。
【0073】
不溶装飾物は、特に限定されないが、粒状、粉状、鱗片状、薄片状(フレーク状)、糸状、棒状、塊状等の種々の形状とすることができる。不溶装飾物は、ユーザが目視で視認可能な大きさを有しており、平均粒子径で5μm以上の物質である。つまり、不溶装飾物は、この種の洗浄剤組成物に含まれる一般的な着色剤(平均粒子径が100nm程度の顔料)のような平均粒子径が大きくても1μmに満たないナノメートルオーダーの顕微鏡で見える程度の微細粒子ではなく、洗浄剤組成物に懸濁してスラリーとなるような物質ではない。洗浄剤組成物にこのような大きな不溶装飾物が複数混ぜ合わされていることで、便器の内面等に貼り付けられた後のゲル状洗浄剤の状態をユーザが目視で容易に確認可能となる。不溶装飾物の平均粒子径は、押出器具の吐出口が不溶装飾物により詰まってゲル状洗浄剤が押し出されるのが妨げられない、ユーザが不溶装飾物の存在を一層目視で認識できるという観点からは、5μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上200m以下が更に好ましく、40μm以上200μm以下が特に好ましい。不溶装飾物の平均粒子径は、レーザー回折法で測定することができる。
【0074】
不溶装飾物は、無色透明であってもよいし、着色された有色であってもよい。また、不溶装飾物は、光を透過させる物質であってもよいし、光を透過させない(光を透過させ難い)物質であってもよい。また、不溶装飾物は、その表面で光を反射させる物質であってもよいし、光を反射させない(光を反射させ難い)物質であってもよい。
【0075】
不溶装飾物は、その存在をユーザが一層目視で認識できるという観点からは、光沢を発する物質であることが好ましい。光沢とは光の反射により物の表面で輝きを生じさせる性質のことであり、光沢としては例えば金属光沢やパール調の光沢(真珠光沢)を挙げることができ、その中でも美しい輝きを放つことで、便器の内面等の貼り付けられた後のゲル状浄剤の美観を一層向上できる観点からは、真珠光沢を発する不溶装飾物が好ましい。
【0076】
真珠光沢を発する不溶装飾物としては、特に限定されないが、例えばパール顔料を挙げることができる。パール顔料は、光透過性及び光反射性を有しており、洗浄剤組成物中に複数が上下に層状に配置されることで、光の多重反射により真珠と同じような光沢感を発現することができる。パール顔料の形状について限定されないが、上述した光沢感を一層発現するためには、薄片状や鱗片状が好ましい。
【0077】
パール顔料は、例えば天然又は人工のマイカ(雲母)、アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、ガラス、タルク等をコアとし、コアの表面を二酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化セリウム、フッ素化合物等の高屈折材料で被覆したものである。パール顔料としては、従来から公知のものを用いることができ、例えば白色パール顔料、干渉パール顔料(虹彩色パール顔料)、着色パール顔料等を用いることができる。
【0078】
金属光沢を発する不溶装飾物としては、特に限定されないが、アルミニウム、金、銀、銅、チタン、クロム、ニッケル、ステンレス等の金属片の他、金属箔を巻き付けた糸(ラメ)等の光沢を有さない粒子の表面を金属で被覆したもの等を挙げることができる。
【0079】
なお、不溶装飾物が発する光沢は、上述した例に限定されず、例えば金剛光沢、ガラス光沢、樹脂光沢、蝋光沢等であってもよい。
【0080】
不溶装飾物は必ずしも光沢を発する物質である必要はなく、表面が粗く光沢を発しない物質であってもよい。この場合には、不溶装飾物は、その存在をユーザが一層目視で認識できるという観点からは、その色が下地である洗浄剤組成物の色と異なることが好ましい。
【0081】
不溶装飾物の比重は、特に限定されないが、好ましくは1より大きく、更に好ましくは1.2以上9以下であり、特に好ましくは2以上9以下である。ゲル状洗浄剤がフラッシュ水等の流水と接触した場合には不溶装飾物は流水に溶解せずに残り、流水とともに下水として下水処理場に送られる。この際に、不溶装飾物の比重が1よりも大きい、すなわち、不溶装飾物が水よりも重い(密度が大きい)ことにより、例えば下水処理場の沈殿池において不溶装飾物が底に沈むので、不溶装飾物を下水から適切に取り除くことが可能になる。
【0082】
ゲル状洗浄剤に占める不溶装飾物の占める割合は、特に限定されないが、押出器具の吐出口が不溶装飾物により詰まってゲル状洗浄剤が押し出されるのが妨げられない、ユーザが不溶装飾物の存在を一層目視で認識できる、ゲル状洗浄剤による洗浄効果を良好に発揮できる、という観点からは、不溶装飾物の大きさや重さにもよるが、例えば0.1重量%以上3重量%であることが好ましく、0.3重量%以上3重量%であることが更に好ましく、0.5重量%以上3重量%であることが特に好ましい。
【0083】
不溶装飾物としては、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
[ゲル状洗浄剤の製造方法]
ゲル状洗浄剤は、常温において、洗浄剤組成物の含有成分及び不溶装飾物を所定量混合することによって製造される。
【0085】
[押出器具]
押出器具は、上述したゲル状洗浄剤を例えば水洗トイレの便器、洗面所の洗面器、台所のシンクの内面等に貼り付けるための器具である。押出器具は、ゲル状洗浄剤を収容しており、吐出口より内部のゲル状洗浄剤を押し出し可能である。ゲル状洗浄剤を吐出する吐出口は、ゲル状洗浄剤が便器の内面等に貼り付けられた際に所望の形状をなすように、その形状が適宜設計される。
【0086】
このような押出器具としては、チューブ容器型の器具、ボトル容器型の器具、バレル(ゲル状洗浄剤の収容器)及びプランジャを備えたシリンジ型の器具等を挙げることができる。ボトル容器型の器具としては、例えば特開2015-193983号公報に記載の器具を例示することができる。また、シリンジ型の器具としては、例えば特開2019-112128号公報や特開2016-124597号公報に記載の器具を例示することができる。
【0087】
[ゲル状洗浄剤の作用・効果]
上述した本実施形態のゲル状洗浄剤は、透明な洗浄剤組成物に、ユーザが目視で視認可能である複数の不溶装飾物が混合されている。そのため、ユーザにより押出器具を用いてゲル状洗浄剤が便器の内面等に貼り付けられた後において、ゲル状洗浄剤の下地である洗浄剤組成物が無色透明である場合や、有色透明であっても使用に伴ってゲル状洗浄剤が徐々に消失する(例えば厚みが薄くなる及び/又は形が小さくなる)場合でも、不溶装飾物の存在によりゲル状洗浄剤が見やすくなり、ユーザはゲル状洗浄剤の状態を目視で容易に確認することができる。よって、ユーザは、便器の内面等にゲル状洗浄剤を綺麗に貼り付けることができたかどうか、あるいは、ゲル状洗浄剤がどれぐらい残存しているかどうか(使い終わっているかどうか)の把握を目視で容易に行うことができる。
【0088】
また本実施形態のゲル状洗浄剤では、不溶装飾物が光の反射により光沢を発することにより、便器の内面等の貼り付けられた後のゲル状浄剤の美観を向上することができる。特に不溶装飾物に美しい輝きを放つ真珠光沢を発するパール顔料を用いることで、便器の内面等の貼り付けられた後のゲル状浄剤の美観をより一層向上することができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は例示であって制限的なものではないため、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものであり、よって、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
実施例及び比較例で使用したゲル状洗浄剤に含まれる主な成分の構造、商品名等は、以下の通りである。
(1)ポリオキシアルキレンブロックポリマー
構造式:HO-(EO)j1-(BO)k1-(PO)l1-(BO)m1-(EO)n1-H
[j1及びn1は略同数、k1及びm1は略同数、EO付加モル数(j1+n1)は約330、BOの付加モル数(k1+m1)は約20、POの付加モル数(l1)は約20、分子量は約16800、疎水基部分((BO)k1-(PO)l1-(BO)m1)の分子量は約2200]
(2)両性界面活性剤
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン
[商品名「アモーゲンCB-H」、第一工業製薬株式会社製]
(3)香料
フラワー系香料
(4)着色剤
有機顔料
[商品名「EMF RED HFB」、トーヨーカラー株式会社製]
(5)消臭剤
アミノ酸系消臭剤
(6)不溶装飾物
パール顔料
[商品名「TwinclePearl500」、日本光研株式会社製]
【0092】
表1に示す各成分を所定量(重量%)混合することにより、ゲル状洗浄剤を調製した後、各ゲル状洗浄剤を「ブルーレット デコラル」(小林製薬株式会社製)の容器に充填し、水洗トイレの便器の内面(ボウル面)に3.5gを吐出して、花びらの形状となるように貼り付けた。貼り付け直後のゲル状洗浄剤の状態を観察するとともに、水洗を連続100回行い、複数回使用後のゲル状洗浄剤の状態を観察した。
【0093】
ゲル状洗浄剤の状態について、形状の見やすさ、及び美観を以下の基準に従って評点化した。なお、評点化に際して、例えば評点3と評点2の中間の状態の場合には評点2.5と判定し、小数点第1位の桁で評点化した。各評価は10名によって各項目について評点化し、各項目の評点の平均点を算出した。その結果を表1に示す。
【0094】
・ゲル状洗浄剤の形状の見やすさの判定基準
5点:非常に見やすい
4点:見やすい
3点:どちらともいえない
2点:見にくい
1点:非常に見にくい
【0095】
・ゲル状洗浄剤の美観の判定基準
5点:非常に美しい
4点:美しい
3点:どちらともいえない
2点:美しくない
1点:非常に美しくない
【0096】
【0097】
表1によると、ゲル状洗浄剤に不溶装飾物が含まれていることで、便器の内面等に貼り付けた後の状態をユーザが目視で容易に把握できることが確認された。また不溶装飾物としてパール顔料をゲル状洗浄剤に含めることで、良好な美観を呈することが確認された。