(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ベークド製品のための起泡剤
(51)【国際特許分類】
A21D 2/26 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
A21D2/26
(21)【出願番号】P 2021560848
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020060596
(87)【国際公開番号】W WO2020212425
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-14
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒリッツァー,ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】クッチャー,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルガソン,スランドゥル
(72)【発明者】
【氏名】マルツ,セリーナ
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-210030(JP,A)
【文献】米国特許第03653917(US,A)
【文献】米国特許第03814816(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0175407(US,A1)
【文献】特開2003-333997(JP,A)
【文献】国際公開第1998/043498(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
b)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物の、起泡剤としての使用であって、
少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られ
、ここで、糖はキシロース、グルコース、リボース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース及びマンノースからなる群から選択され、
少なくとも1種の酸及びその塩と、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートとのモル比が、0.3:1.0以上~10:1.0以下の範囲である、
使用。
【請求項2】
炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる方法であって、
空気を抱き込ませる前に
、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む少なくとも1種の組成物を、炭水化物含有食品に添加するステップを含
み、
少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w
)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w
)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られ、ここで、糖はキシロース、グルコース、リボース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース及びマンノースからなる群から選択され、
少なくとも1種の酸及びその塩と少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートとが、0.3:1.0以上~10:1.0以下の範囲のモル比で使用される、
方法。
【請求項3】
少なくとも1種の酸が、乳酸、リン酸、塩酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸及び硫酸からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の使用又は方法。
【請求項4】
少なくとも1種の酸が、乳酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項5】
少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、植物又は動物のタンパク質加水分解物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項6】
少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、小麦、大豆、米、ジャガイモ、エンドウ豆、ヒマワリ、菜種、ルピナス及び乳のタンパク質加水分解物からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項7】
少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、酵素的に加水分解されたタンパク質加水分解物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項8】
少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、750Da以上~1800Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解
物のアミノ-カルボニル結合によって得られる、請求項1から
7のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項9】
組成物が、ベーキングパウダーを含まない、請求項1から
8のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項10】
ベークド製品を作製するための、請求項1から
9のいずれか一項に定義される組成物の使用。
【請求項11】
A)少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート
であって、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w
)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w
)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られ、ここで、糖はキシロース、グルコース、リボース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース及びマンノースからなる群から選択される、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、
並びに
B)乳酸
を、
0.3:1.0以上~10:1.0以下の範囲の乳酸と少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートとのモル比で含む、組成物。
【請求項12】
ベーキングパウダーを含まない、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも
i)乳酸とタンパク質加水分解物コンジュゲートとを接触させて、pHを4.5以上~6.5以下の範囲に調整して、混合物を得るステップと、
ii)混合物の噴霧乾燥、低温殺菌及び凍結乾燥からなる群から選択される加工ステップと
を含む、請求項
11又は
12に記載の組成物を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許請求される本発明は、タンパク質加水分解物又はタンパク質加水分解物コンジュゲート及び少なくとも1種の酸を含む組成物の、起泡剤(whipping agent)としての使用に関する。本発明は更に、タンパク質加水分解物又はタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を添加することによって、炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる(aerating)方法に関する。本発明はまた、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
あらゆるベーカリー製品の作製中、ベーカリー製品に軽くて軟らかいクラム構造(crumb structure)を付与するために、膨張剤又は系が必要とされる。19世紀には、ベーキングパウダーが開発された。ベーキングパウダーは、かなり速く作用し、その粉末の一貫性に起因して、保存しやすく取り扱いやすい。ベーキングパウダーは、二酸化炭素源と酸性化剤との反応によって、二酸化炭素を生じる。
【0003】
今日、ベーキングパウダーは、二酸化炭素源として、重炭酸ナトリウム、又は頻度は低いものの重炭酸カリウムを含み、酸性化剤として、酒石酸、酸性ピロリン酸ナトリウム、又はリン酸一カルシウム及び硫酸アルミニウムナトリウムを含む。リン酸塩を含まない組成物が望ましい場合、グルコノデルタラクトン及びクエン酸カルシウムも、酸性化剤として使用される。
【0004】
現在の工業規模の焼成(ベーキング)では、起泡(泡立て)及び焼成中にフォーム(泡)をかなり速く生成し、次にフォームを安定化させるのを助ける乳化剤が使用される(Bennion & Bemford、1997)。更に、乳化剤を使用することによって、悪影響を与えることなくレシピ全体(即ち、卵白、卵黄、砂糖、デンプン、小麦粉及びベーキングパウダー)を泡立てることが可能である。しかし、このような乳化剤は、ベーキングパウダーと組み合わせて使用される。
【0005】
EP0,362,181A2は、安定化されたX線非晶質炭酸カルシウム及び膨張剤の組合せを含有する、ナトリウムを含まないベーキングパウダーを記載している。膨張酸として、酸性ピロリン酸ナトリウム、硫酸アルミニウムナトリウム、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸アルミニウムナトリウム、フマル酸及びクエン酸が開示されている。
【0006】
EP0,588,496A1は、電子レンジのために企図された、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの少なくとも1種と組み合わされたクエン酸を、酵母で膨らんだ生地に添加することに関する。
【0007】
US7,250,187B2は、被包された化学膨張剤を低減されたせん断を用いて生地に混ぜ込んで焼成中のある時点まで膨張剤の反応を制御するために適用される分解性バリア材料による被包を保護することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】EP0,362,181A2
【文献】EP0,588,496A1
【文献】US7,250,187B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近では、ベーキング業界は、ケーキの品質を落とすことなく、同じ量のバッターを基にしてケーキの体積を増量し、又は成分の量を低減して、したがってコストを低減して同じ体積のケーキを製造することに関心を抱いている。更に、より天然由来の製品であること、及び製品のラベル上の成分の数がより少ないことを求める消費者の動向によって、化学的ベーキングパウダー及び合成乳化剤、例えば脂肪酸のモノ及びジグリセリド並びに合成脂肪酸エステルに代わるものに対する需要が創出されている。
【0010】
更にはかなり以前から、食品におけるナトリウムが懸念となっている。過度のナトリウム摂取は、高血圧を誘発又は悪化させると思われている。したがって、ナトリウムを置き換えるための努力が行われている。重炭酸ナトリウムを重炭酸カリウムで置き換えることは、ベーキングパウダーにとって問題はないが、酸性化剤が、より重要になってくる。特に工業用バッターにおいては、多くのバッターが、他の酸性化剤による酸性ピロリン酸ナトリウムの交換に対して敏感に反応する。
【0011】
したがって、従来技術では、最も一般的に使用される起泡剤/空気抱き込み剤(aerating agent)、例えば乳化剤と同じ膨張効果、及び良好な保存安定性を有する、工業的用途に適した起泡剤/空気抱き込み剤が提供されていない。
【0012】
したがって、目的は依然として、ベーキングパウダー及び化学乳化剤を含まないが、きめ細かいフォームを生成し、負担がかかる環境、例えば焼成下でフォームを安定化させることができる、空気抱き込み剤又は起泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、ベークド製品におけるタンパク質加水分解物又はタンパク質加水分解物コンジュゲート及び酸、例えば乳酸の使用は、ベーキングパウダー及び化学乳化剤と比較して、優れたケーキの体積及び弾力をもたらすことが、特許請求される本発明に関して、本明細書に示され例示される通り見出された。タンパク質加水分解物又はタンパク質加水分解物コンジュゲート及び酸の使用によって、ベーキングパウダー及び化学乳化剤の使用が不要になるが、同じ好ましい均一なケーキクラム構造がもたらされる。
【0014】
したがって一態様では、特許請求される本発明は、
a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
b)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物の、起泡剤としての使用を提供する。
【0015】
別の態様では、特許請求される本発明は、
a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
b)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物の、起泡剤としての使用であって、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる、使用を提供する。
【0016】
別の態様では、特許請求される本発明は、炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる方法であって、空気を抱き込ませる前に、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む少なくとも1種の組成物を、炭水化物含有食品に添加するステップを含む、方法を提供する。
【0017】
更に別の態様では、特許請求される本発明は、
A)少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
B)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明は、単に例示的な性質を有し、特許請求される本発明、又は特許請求される本発明の適用及び使用を制限することを企図しない。更に、前述の技術分野、背景技術、発明の概要又は以下の詳細な説明に提示されるいかなる理論にも拘泥するものではない。
【0020】
「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」という用語は、本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、列挙されていない追加の部材、要素又は方法ステップを除外しない。「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」という用語は、本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」、「からなる(consists)」及び「からなる(consists of)」という用語を含むことが認識されよう。
【0021】
更に、本説明及び特許請求の範囲における「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等の用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも逐次的又は時間的順序を説明するために使用されるものではない。そのように使用されるそれらの用語は、適切な環境下で交換可能であり、本明細書に記載される主題の実施形態は、本明細書に記載又は例示されるもの以外の順序で操作することができると理解されるべきである。「(A)」、「(B)」及び「(C)」、又はAA)、BB)及びCC)、又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「(i)」、「(ii)」等の用語が、方法又は使用又はアッセイのステップに関する場合、それらのステップの間に一貫した時間又は時間間隔はなく、即ちそれらのステップは、本明細書で先又は以下に記載される適用において別段指定されない限り、同時に行うことができ、又はこのようなステップの間に数秒、数分、数時間、数日、数週、数カ月若しくは更には数年の時間間隔が存在してもよい。
【0022】
以下の文では、主題の様々な態様が、より詳細に定義される。そのように定義された各態様は、明らかに矛盾が示されない限り、任意の他の1つ以上の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であるとして示される任意の特色は、好ましい又は有利であるとして示される任意の他の1つ以上の特色と組み合わせることができる。
【0023】
本明細書を通して、「一実施形態(one embodiment)」又は「一実施形態(an embodiment)」又は「好ましい実施形態(preferred embodiment)」への言及は、実施形態と関連して記載される特定の特色、構造又は特徴が、特許請求される本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して、様々な場所における「一実施形態では(in one embodiment)」又は「好ましい一実施形態では(In a preferred embodiment)」又は「好ましい一実施形態では(in a preferred embodiment)」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではないが、言及していてもよい。更に、特色、構造又は特徴は、本開示から当業者に明らかになり得る通り、1つ以上の実施形態において任意の適切な方式で組み合わせることができる。更に、本明細書に記載される一部の実施形態は、他の実施形態に含まれる一部の特色を含むが、他の特色を含まない一方、当業者によって理解され得る通り、様々な実施形態の特色の組合せは、主題の範囲に含まれ、様々な実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれも、任意の組合せで使用される。
【0024】
更に、本明細書を通して定義された範囲は、両端の値も同様に含み、即ち1~10の範囲は、1及び10の両方がその範囲に含まれることを暗示する。誤解を避けるために、本出願人は、適用できる法律に従っていかなる均等物も得る権利を有する。
【0025】
特許請求される本発明によるベークド製品は、好ましくはバッターを膨らませること(lifting of batter)が、酵母又はサワードウ又は任意のベーキングパウダーの存在なしに行われるが、基本的にバッターに機械的に空気を抱き込ませることによってなされる製品である。換言すると、本明細書に記載される組成物は、好ましくはいかなるベーキングパウダーも含まない。ベーキングパウダーは、典型的に重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウムからなるベークド製品の作製における膨張剤として使用される粉末である。したがって、好ましい一実施形態では、本明細書に記載される組成物は、重炭酸ナトリウム及び重炭酸カリウムを含まない。
【0026】
好ましいベークド製品は、スポンジケーキ、スイスロール又はエンゼルケーキのようなケーキである。
【0027】
一実施形態では、特許請求される本発明は、
a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
b)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物の、起泡剤としての使用を提供する。
【0028】
更に別の態様では、特許請求される本発明は、
a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
b)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物の、起泡剤としての使用であって、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる、使用を提供する。
【0029】
更に別の態様では、特許請求される本発明は、
a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
b)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物の、起泡剤としての使用であって、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、750Da以上~1800Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~1000Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる、使用を提供する。
【0030】
別の態様では、特許請求される本発明は、炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる方法であって、空気を抱き込ませる前に、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む少なくとも1種の組成物を、炭水化物含有食品に添加するステップを含む、方法を提供する。
【0031】
別の態様では、特許請求される本発明は、
A)少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
B)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物に関する。
【0032】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種の酸は、乳酸、リン酸、塩酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸及び硫酸からなる群から選択される。より好ましい一実施形態では、少なくとも1種の酸は、乳酸である。
【0033】
タンパク質加水分解物(タンパク加水分解物)
タンパク質加水分解物は、少なくとも1種のタンパク質を酵素で分解することによって、又は化学的処理によって調製されたアミノ酸の混合物として定義される。
【0034】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物は、植物又は動物のタンパク質加水分解物である。少なくとも1種のタンパク質は、小麦、大豆、米、ジャガイモ、エンドウ豆、ヒマワリ、菜種、ルピナス(lupin)及び乳のタンパク質加水分解物からなる群から選択される。少なくとも1種の乳タンパク質は、カゼイン、乳清タンパク質及びベータ-ラクトグロブリンの加水分解物からなる群から選択される。より好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質は、小麦加水分解物及びカゼイン加水分解物からなる群、より好ましくはカゼイン加水分解物から選択される。
【0035】
各タンパク質は異なる重量平均分子量(Mw)及び構造を有し、したがって様々なタンパク質加水分解物の最適な範囲は、個々のタンパク質に依存する。
【0036】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物は、酵素的に加水分解されたタンパク質加水分解物である。更に別の好ましい実施形態では、酵素は、エンドペプチダーゼである。エンドペプチダーゼ酵素の例は、アルカラーゼ(Alkalase)及びニュートラーゼ(Neutrase)である。
【0037】
更に別の好ましい実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物は、化学的に加水分解されたタンパク質加水分解物である。化学的に加水分解されたタンパク質加水分解物は、酸又はアルカリ性水酸化物によるタンパク質の加水分解によって得られる。好ましい一実施形態では、アルカリ性水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される。好ましい一実施形態では、酸は、塩酸、硫酸及びリン酸からなる群から選択される。条件及びプロセスは、所望のMw範囲内のタンパク質加水分解物を得るために注意深く制御されなければならない。
【0038】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物は、加水分解後にろ過されない。加水分解後の溶解度が低過ぎて、より高い溶解度、より低いバッター密度、より高い弾力、及びより大きいケーキ体積を得るために溶解度を増大させる必要がある場合、ろ過ステップを追加することも可能である。
【0039】
別の実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物は、加水分解後に、食品成分に適した任意の酸を適用することによって、約pH7.0に中和される。食品成分に適した酸は、乳酸、リン酸、塩酸、クエン酸及び硫酸からなる群から選択される。pHが中性のこのタンパク質加水分解物は、噴霧乾燥される。噴霧乾燥された製品は、その他のバッター成分に応じて利点を有する。
【0040】
好ましい一実施形態では、タンパク質加水分解物の最大重量平均分子量(Mw)は、2300Da、より好ましくは2200Da、更により好ましくは2100Da、最も好ましくは2000Da、特に1800Da又は1700Daである。重量平均分子量が小さくなると、焼成後に得られるケーキ構造が、ケーキ中の気孔に関してきめ細かくなる。しかし、Mwが小さ過ぎると、泡立て又は焼成中の安定性が失われ、バッターは、より高い密度を有するようになるか、又は焼成中にバッターが壊れる。したがって、好ましい一実施形態では、タンパク質加水分解物の最小重量平均分子量(Mw)は、600Da又は650Da、より好ましくは660Da、更により好ましくは670Da、最も好ましくは680Da、特に750Da又は800Daである。
【0041】
好ましい一実施形態では、カゼイン加水分解物の重量平均分子量(Mw)は、600若しくは650~1000Daの間、より好ましくは600若しくは670~900Daの間、又は690~900Daの間、特に680~870Da又は720~870Daの間である。
【0042】
タンパク質加水分解物コンジュゲート
好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートは、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる。更に別の好ましい実施形態では、アミノ-カルボニル結合は、40℃以上~75℃以下の範囲の温度で行われる。
【0043】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートは、カゼイン加水分解物コンジュゲート又は小麦加水分解物コンジュゲートである。カゼイン加水分解物コンジュゲートでは、加水分解物のMwは、好ましくは700~1000Daの間、より好ましくは720又は750~900Daの間である。小麦加水分解物コンジュゲートでは、加水分解物のMwは、好ましくは1300~2200Daの間、より好ましくは1500~2000Daの間である。
【0044】
タンパク質加水分解物の分子量(Mw)決定
好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートの重量平均分子量は、チオール構成成分としてN,N-ジメチル-2-メルカプトエチルアンモニウムクロリドを使用することによって改変された、Frister H.、Meisel H.、Schlimme E. (1988)のOPA法(Anal. Chem. V 330, pp 631-633)に従ってOPA-Nを測定し、デュマ法1826に従って全Nを測定し、次式によって重量平均分子量を算出することによって決定される:
(全N/OPA-N)*100=Mw
【0045】
より好ましい一実施形態では、少なくとも1種の糖は、還元糖である。還元糖は、単糖、二糖及び多糖からなる群から選択される。
【0046】
更に別の好ましい実施形態では、単糖は、キシロース、グルコース、リボース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース及びマンノースからなる群から選択され、より好ましくは少なくとも1種の単糖は、グルコースである。
【0047】
更に別の好ましい実施形態では、二糖は、ラクトース及びマルトースからなる群から選択される。更に別の好ましい実施形態では、多糖は、デキストリン、デキストラン、マンナン、ガラクトマンナン、プルラン、キサンタンガム、カラゲニン、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、グアーガム、ガラクトオリゴ糖、モノオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ペクチン、キチン、キトサン、及びアルギン酸からなる群から選択される。
【0048】
一実施形態では、少なくとも1種の糖は、100Da以上~20000Da以下、好ましくは100Da以上~10000Da以下、より好ましくは100Da以上~2000Da以下、更により好ましくは100Da以上~1000Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0049】
糖の分子量の決定
一実施形態では、単糖又は二糖の分子量は、当技術分野で公知の方法によって決定される。
【0050】
一実施形態では、多糖の分子量は、クロマトグラフィー技術(ゲル浸透クロマトグラフィー、高速クロマトグラフィー)によって決定される。
【0051】
一実施形態では、少なくとも1種の糖は、単糖又は二糖である。
【0052】
好ましい一実施形態では、組成物は、
a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
b)少なくとも1種の酸及びその塩
を含み、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートは、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(MW)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物、並びに少なくとも1種の単糖及び/又は少なくとも1種の二糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる。
【0053】
より好ましい一実施形態では、組成物は、
a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
b)少なくとも1種の酸及びその塩
を含み、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートは、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(MW)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物、並びに少なくとも1種の単糖及び/又は少なくとも1種の二糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる。
【0054】
更により好ましい一実施形態では、組成物は、
a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、及び
fb)乳酸
を含み、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートは、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(MW)を有する少なくとも1種のカゼイン加水分解物、並びに少なくとも1種の単糖及び/又は少なくとも1種の二糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる。
【0055】
更に別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の糖と少なくとも1種のタンパク質加水分解物とのモル比は、0.5:1.0以上~2.0:1.0以下の範囲である。
【0056】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物は、少なくとも1種の還元糖とコンジュゲートしている。このコンジュゲーションの利点は、加水分解物の焼成性能に影響を与えること又はそれを低減することなく、幾つかのタンパク質加水分解物の苦味を低減することである。本出願の文脈におけるコンジュゲーションとは、加水分解物と糖との単なる混合だけではなく、高温でメイラード反応を行うことを意味する。このコンジュゲーションは、タンパク質加水分解物のアミノ基と還元糖のカルボニル基との縮合によって開始されて、シッフ塩基が形成され、アマドリ及びヘインズの生成物へ転位する。このコンジュゲーションは、溶液/分散液中で行われても、又は乾燥状態で行われてもよく、好ましくは、高濃度のペプチド及び還元末端を有する糖を含む溶液中で行われる。このコンジュゲーションによって処理された加水分解物を「コンジュゲートされた加水分解物」と呼ぶ。コンジュゲーションのプロセスは、それぞれのタンパク質加水分解物及びそのMWに応じて、例えば、pH、温度、及び反応時間を選択することによって制御される。糖の量が多くなると苦さが少なくなり、pHが高くなると苦さが少なくなり、また反応時間が長くなると苦さが更に低減する。温度は約65℃であることが好ましく、何故なら、より高い温度では、白色の粉末が好まれる幾つかの用途に望ましくないコンジュゲートの色の変化を回避するために、プロセスを極めて正確に制御することが必要になるからである。コンジュゲーションのレベルは、コンジュゲーションの程度を決定することによって特徴付けされる。
【0057】
好ましい一実施形態では、以下に説明される方法に従って測定されるコンジュゲーションの程度は、10.0%以上~45.0%以下、より好ましくは15.0%以上~40.0%以下の範囲である。苦味をより多く生じる基が、還元糖と反応することができるので、糖の量が多くなると、コンジュゲートされた加水分解物の苦さが少なくなると理解されるべきである。したがって、糖の量は、苦さの多い加水分解物、例えばカゼイン加水分解物の方が、苦さの少ないペプチド、例えば小麦タンパク質加水分解物よりも多く、個々の苦さに応じて調整されることになる。
【0058】
好ましい一実施形態では、特許請求される本発明に従って使用される組成物は、レシチン(E322);ポリソルベート(E432~436);アンモニウムリン脂質(E442);脂肪酸のナトリウム、カリウム及びカルシウム塩(E470);脂肪酸のモノ及びジグリセリド(E471);モノ及びジグリセリドの酢酸エステル(E472a);モノ及びジグリセリドの乳酸エステル(E472b);モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル(E472c);モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(E472e);脂肪酸のスクロースエステル(E473);スクログリセリド(E474);脂肪酸のプロピレングリコールエステル(E477);脂肪酸のポリグリセロールエステル(E475);ヒマシ油脂肪酸のポリグリセロールエステル(E476);脂肪酸のモノ及びジグリセリドと相互作用させた熱的酸化大豆油(E479)、並びにステアリル乳酸ナトリウム及びカルシウム(E481及びE482)からなる群から選択される、単離された乳化剤を含まない。何故なら、全てのこれらの乳化剤は、それらのEナンバーと共に製品ラベル上に列挙しなければならないからである。本出願の文脈における単離された乳化剤とは、バッターに対して、別個の構成成分として調製され、添加される乳化剤を意味しており、成分の天然に存在する一部分、例えば卵黄中に存在するレシチンとしてのものを意味しない。
【0059】
別の好ましい実施形態では、特許請求される本発明に従って使用される組成物は、ベーキングパウダーを含まない。
【0060】
使用、方法及び組成物
一実施形態では、特許請求される本発明は、炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる方法であって、空気を抱き込ませる前に、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む少なくとも1種の組成物を、炭水化物含有食品に添加するステップを含む、方法を提供する。より好ましい一実施形態では、炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる、特許請求される本発明の方法は、ベークド製品の作製のために行われる。
【0061】
好ましい一実施形態では、特許請求される本発明は、ベークド製品における、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む組成物の使用を提供する。
【0062】
好ましい一実施形態では、特許請求される本発明は、ベークド製品における、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む組成物の使用を提供する。
【0063】
好ましい一実施形態では、特許請求される本発明は、ベークド製品における、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに乳酸及びその塩を含む組成物の使用を提供する。
【0064】
特許請求される本発明による使用又は方法のための少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートの量は、バッター中の粉の含有量に依存する。
【0065】
好ましい一実施形態では、酸及びその塩と、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートとのモル比は、0.3:1.0以上~10:1.0以下の範囲である。
【0066】
好ましい一実施形態では、酸及びその塩と、少なくとも1種のタンパク質加水分解物とのモル比は、0.3:1.0以上~10:1.0以下の範囲である。
【0067】
きめ細かく安定なフォームを作るための、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート及び少なくとも1種の酸を有する組成物の質は、バッター密度によって決定される。バッター密度が低いということは、バッターがより多くの気泡を含んでおり、焼成中にも十分な安定化が存在する場合、最終的なケーキ体積が大きくなることを意味している。好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む組成物を含む標準のケーキレシピの、泡立て後及び焼成前のバッター密度は、320g/L以下、より好ましくは300g/L以下である。泡立ては、例の部の「泡立て」に従って行われる。
【0068】
好ましい一実施形態では、デンプンのみを含むバッターについて、バッター中のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートの量は、0.8%(w/w)以上~10.0%(w/w)以下の範囲である。最適な配合量は、個々のタンパク質加水分解物又はタンパク質加水分解物コンジュゲート、各ベーカーが作製するバッターの差異及び追加成分に依存する。
【0069】
好ましい一実施形態では、デンプンのみを含むバッターについて、バッター中のカゼイン加水分解物又はカゼイン加水分解物コンジュゲートの量は、4.0%(w/w)、より好ましくは3.0%(w/w)、特に2.5%(w/w)である。
【0070】
更に別の好ましい実施形態では、バッター中の小麦タンパク質加水分解物又は小麦タンパク質加水分解物コンジュゲートの最大量は、7.0%(w/w)、より好ましくは6.0%(w/w)、特に5.0%(w/w)である。
【0071】
好ましい一実施形態では、特許請求される本発明は、炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる方法であって、空気を抱き込ませる前に、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む組成物を、炭水化物含有食品に添加するステップを含む方法を提供し、ここで、炭水化物含有食品は、レシチン(E322);ポリソルベート(E432~436);アンモニウムリン脂質(E442);脂肪酸のナトリウム、カリウム及びカルシウム塩(E470);脂肪酸のモノ及びジグリセリド(E471);モノ及びジグリセリドの酢酸エステル(E472a);モノ及びジグリセリドの乳酸エステル(E472b);モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル(E472c);モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(E472e);脂肪酸のスクロースエステル(E473);スクログリセリド(E474);脂肪酸のプロピレングリコールエステル(E477);脂肪酸のポリグリセロールエステル(E475);ヒマシ油脂肪酸のポリグリセロールエステル(E476);脂肪酸のモノ及びジグリセリドと相互作用させた熱的酸化大豆油(E479)、並びにステアリル乳酸ナトリウム及びカルシウム(E481及びE482)からなる群から選択される、単離された乳化剤を含まない。何故なら、全てのこれらの乳化剤は、それらのEナンバーと共に製品ラベル上に列挙しなければならないからである。本出願の文脈における単離された乳化剤とは、バッターに対して、別個の構成成分として調製され、添加される乳化剤を意味しており、成分の天然に存在する一部分、例えば卵黄中に存在するレシチンとしてのものを意味しない。
【0072】
好ましい一実施形態では、特許請求される本発明は、炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる方法であって、空気を抱き込ませる前に、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む少なくとも1種の組成物を、炭水化物含有食品に添加するステップを含み、炭水化物含有食品が、ベーキングパウダーを含まない、方法を提供する。
【0073】
好ましい一実施形態では、粉/デンプン又はデンプンレシピに従う500g~550gのバッターから焼成したケーキである、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む組成物を含む標準ケーキの体積は、3000mL~3300mLの粉である。焼成後の体積は、ケーキのクラム構造と共に重要な品質パラメータである。体積は、様々な方法、例えば、レーザースキャニング又は菜種置換法によって決定することができる。スポンジケーキは、軽く、均一な構造を有していることが期待される。体積が大きいと、大きい気孔が生じ、不規則な構造になることが多い。
【0074】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む組成物は、凍結乾燥又は噴霧乾燥させた粉末として使用される。組成物を、液体又は濃縮物として加水分解後に直接適用することも可能であるが、タンパク質の液体は、一般に、とりわけ食品用途では、乾燥粉末より安定化及び保存が困難である。
【0075】
方法
一実施形態では、特許請求される本発明は、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む組成物を調製する方法であって、少なくとも、
i)少なくとも1種の酸及びその塩とタンパク質加水分解物コンジュゲートとを接触させて、pHを4.5以上~6.5以下の範囲に調整して、混合物を得るステップと、
ii)混合物の噴霧乾燥、低温殺菌及び凍結乾燥からなる群から選択される加工ステップと
を含む方法を提供する。
【0076】
好ましい一実施形態では、タンパク質加水分解物コンジュゲートは、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる。
【0077】
更に別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の酸は、乳酸、リン酸、塩酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸及び硫酸からなる群から選択され、より好ましくは少なくとも1種の酸は、乳酸である。
【0078】
より好ましい一実施形態では、少なくとも1種の酸及びその塩は、固体形態又は溶液形態、好ましくは水溶液で存在する。更に別の好ましい実施形態では、乳酸及びその塩は、溶液形態で存在する。
【0079】
更に別の好ましい実施形態では、ステップi)のpHは、5.0以上~6.0以下の範囲である。
【0080】
一実施形態では、本発明において特許請求される方法は更に、混合物の噴霧乾燥、低温殺菌及び凍結乾燥、より好ましくは噴霧乾燥及び凍結乾燥からなる群から選択される少なくとも1つの加工ステップを含む。
【0081】
以下では、本開示を更に例示するために、本開示を以下に列挙される具体的な実施形態に限定することを企図することなく、実施形態の一覧を提供する。
【0082】
1.a)少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
b)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物の、起泡剤としての使用。
【0083】
2.炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる方法であって、空気を抱き込ませる前に、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む少なくとも1種の組成物を、炭水化物含有食品に添加するステップを含む、方法。
【0084】
3.少なくとも1種の酸が、乳酸、リン酸、塩酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸及び硫酸からなる群から選択される、実施形態1又は2に記載の使用又は方法。
【0085】
4.少なくとも1種の酸が、乳酸である、先の実施形態のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0086】
5.少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、600Da以上~2400Da以下の範囲の分子量(Mw)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の分子量(Mw)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる、先の実施形態のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0087】
6.少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、植物又は動物のタンパク質加水分解物である、先の実施形態のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0088】
7.少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、小麦、大豆、米、ジャガイモ、エンドウ豆、ヒマワリ、菜種、ルピナス及び乳のタンパク質加水分解物からなる群から選択される、先の実施形態のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0089】
8.少なくとも1種の乳タンパク質加水分解物が、カゼイン、乳清タンパク質及びベータ-ラクトグロブリンの加水分解物からなる群から選択される、実施形態7に記載の使用又は方法。
【0090】
9.少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、小麦加水分解物及びカゼイン加水分解物からなる群から選択される、実施形態6~8のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0091】
10.少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、酵素的に加水分解されたタンパク質加水分解物である、先の実施形態のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0092】
11.酵素的に加水分解されたタンパク質加水分解物が、少なくとも1種のエンドペプチダーゼによるタンパク質の加水分解によって得られる、実施形態10に記載の使用又は方法。
【0093】
12.少なくとも1種のエンドペプチダーゼが、アルカラーゼ及びニュートラーゼからなる群から選択される、実施形態11に記載の使用又は方法。
【0094】
13.少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、化学的に加水分解されたタンパク質加水分解物である、実施形態1又は2に記載の使用又は方法。
【0095】
14.化学的に加水分解されたタンパク質加水分解物が、酸又はアルカリ性水酸化物によるタンパク質の加水分解によって得られる、実施形態13に記載の使用又は方法。
【0096】
15.アルカリ性水酸化物が、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される、実施形態14に記載の使用又は方法。
【0097】
16.少なくとも1種の糖が、還元糖である、実施形態5に記載の使用又は方法。
【0098】
17.還元糖が、単糖、二糖及び多糖からなる群から選択される、実施形態16に記載の使用又は方法。
【0099】
18.単糖が、キシロース、グルコース、リボース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース及びマンノースからなる群から選択される、実施形態17に記載の使用又は方法。
【0100】
19.単糖が、グルコースである、実施形態17又は18に記載の使用又は方法。
【0101】
20.二糖が、ラクトース及びマルトースからなる群から選択される、実施形態17に記載の使用又は方法。
【0102】
21.多糖が、デキストリン、デキストラン、マンナン、ガラクトマンナン、プルラン、キサンタンガム、カラゲニン、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、グアーガム、ガラクトオリゴ糖、モノオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ペクチン、キチン、キトサン、及びアルギン酸からなる群から選択される、実施形態17に記載の使用又は方法。
【0103】
22.アミノ-カルボニル結合が、メイラード反応によって行われる、実施形態5に記載の使用又は方法。
【0104】
23.アミノ-カルボニル結合が、40℃以上~75℃以下の範囲の温度で行われる、実施形態5又は22のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0105】
24.少なくとも1種の糖と、少なくとも1種のタンパク質加水分解物とのモル比が、0.5:1.0以上~2.0:1.0以下の範囲である、先の実施形態のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0106】
25.コンジュゲーションの程度が、10.0%以上~45.0%以下の範囲である、先の実施形態のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0107】
26.酸及びその塩と、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートとのモル比が、0.3:1.0以上~10:1.0以下の範囲である、先の実施形態のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0108】
27.乳酸及びその塩と、少なくとも1種のタンパク質加水分解物とのモル比が、0.3:1.0以上~10:1.0以下の範囲である、先の実施形態のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0109】
28.組成物が、ベーキングパウダーを含まない、実施形態1~28のいずれか1つに記載の使用又は方法。
【0110】
29.ベークド製品を作製するための、先の実施形態のいずれか1つに定義される組成物の使用。
【0111】
30.A)少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
B)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む、組成物。
【0112】
31.ベーキングパウダーを含まない、実施形態30に記載の組成物。
【0113】
32.少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、600Da以上~2400Da以下の範囲の分子量(Mw)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の分子量(Mw)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる、実施形態30又は31に記載の組成物。
【0114】
33.少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、酵素的に加水分解されたタンパク質加水分解物である、実施形態30又は31に記載の組成物。
【0115】
34.少なくとも1種の酸と、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートとのモル比が、0.5:1.0以上~2.0:1.0以下の範囲である、実施形態30に記載の組成物。
【0116】
35.少なくとも
i)少なくとも1種の酸及びその塩とタンパク質加水分解物コンジュゲートとを接触させて、pHを4.5以上~6.5以下の範囲に調整して、混合物を得るステップと、
ii)混合物の噴霧乾燥、低温殺菌及び凍結乾燥からなる群から選択される加工ステップと
を含む、実施形態30~34のいずれかに記載の組成物を調製する方法。
【0117】
36.少なくとも1種の酸が、乳酸、リン酸、塩酸、クエン酸及び硫酸からなる群から選択される、実施形態35に記載の方法。
【0118】
37.ステップi)において、混合物を得るためのpHが5.0以上~6.0以下である、実施形態35に記載の方法。
【0119】
38.少なくとも1種の酸及びその塩が、固体形態又は溶液形態で存在する、実施形態35に記載の方法。
【0120】
39.少なくとも1種の酸が、溶液形態で存在する乳酸である、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
40.タンパク質加水分解物コンジュゲートが、600Da以上~2400Da以下の範囲の分子量(Mw)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の分子量(Mw)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる、実施形態35~39のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
特許請求される本発明を、その具体的な実施形態に関して記載してきたが、幾つかの修飾形態及び等価形態は、当業者に明らかであり、特許請求される本発明の範囲内に含まれることが企図される。
【実施例】
【0123】
[実施例]
特許請求される本発明を、以下の非制限的な実施例によって詳細に例示する。より具体的には、以下に特定される試験方法は、本出願の全般的開示の一部であり、特定の実施例に制限されない。
【0124】
分析装置
- 3つの速度設定、ステップ1、2、及び3を有するHobart N 50遊星型ミキサー
- Winklerデッキオーブン
- Stable Micro Systemsテクスチャアナライザー
- Volscan、Micro Stable Systems。
【0125】
溶解度
噴霧乾燥後のタンパク質加水分解物の粉末について、25℃で2.5gのClarcel DIC-Bをろ過助剤として含む92.5gの水道水中に5gのタンパク質加水分解物の粉末を分散させることによって、タンパク質加水分解物の溶解度を決定する。タンパク質加水分解物の粉末を水相にゆっくり添加することによって、それを水中に投入する際、タンパク質加水分解物の粉末が塊を形成しないように注意する必要がある。次いで、NaOH又はHClを使用して、分散液をpH8±0.5に調整する。分散液/溶液を、マグネチックスターラーにより、200rpmで1時間撹拌する。Seitz K 300 R001/4cmろ紙を使用して、試料を2.5barの圧力下でろ過する。タンパク質濃度をろ過前及びろ液中で測定した。溶解度は、次式によって算出した:
(ろ液中のタンパク質(g)/ろ過前のタンパク質(g))*100=タンパク質加水分解物の溶解度(%)。
【0126】
タンパク質濃度(デュマ)
タンパク質濃度は、ISO標準方法(ISO 16634)に従って分析する。試料をガス化する燃焼管内で加熱することによって、試料をガスに変換する。得られたガス混合物から、干渉する構成成分を除去する。ガス混合物又はそれらのうちの代表的な部分の中の窒素化合物を窒素分子に変換し、それを熱伝導度検出器によって定量的に決定する。窒素含有量は、マイクロプロセッサによって算出される。窒素に基づいてタンパク質含有量を評価するために、以下の係数を使用した:小麦タンパク質、5.7;カゼイン及び大豆、6.25;米、5.95。
【0127】
重量平均分子量
重量平均分子量Mw値は、OPA-Nを測定することによって測定した(チオール構成成分としてN,N-ジメチル-2-メルカプトエチルアンモニウムクロリドを使用することによって改変されたFrister H.、Meisel H.、Schlimme E. (1988) OPA法。Anal. Chem. V 330, pp 631-633)。OPA-Nは、MWを直接示すものではなく、試料当たりの末端アミン基の量を示すに過ぎない。Mw測定は、コンジュゲーションの前に行われる必要がある。Mw値は、次式を使用して、判明した窒素の総量(窒素の総量は、上述のデュマ法1826を用いて測定される)をOPA-N値で割ることによって得ることができる:
(全N/OPA-N)*100=Mw
【0128】
モノ-及びジグリセリド/糖
モノ-及びジグリセリドを定量化する方法については、Morrison, W. R. Mann, D. L. Soon, W. Conventry A. M. (1975)、「Selective extraction and quantitative analysis of non-starch and starch lipids from wheat flour」 Journal of the science of food and agriculture、v. 26 (4)、pp 507-521を参照されたい。
【0129】
コンジュゲーションの程度は、以下のように決定される。
最初にOPA-N値を窒素の総量で割り、即ち、遊離アミノ基を、全てのアミノ酸からの窒素の総量で割る。次いで、コンジュゲーション後のこの比の低減率(%)が算出される。
コンジュゲーションの程度=[(OPA-Nstart/窒素start)-(OPA-Nend/窒素end)]/(OPA-Nstart/窒素start)
OPA-Nstartは、コンジュゲーション反応していない加水分解されたタンパク質のOPA-N値であり、OPA-Nendは、コンジュゲーション反応後のOPA-N値である。同様に、窒素startは、コンジュゲーション反応していない加水分解されたタンパク質の総窒素含有量であるのに対して、窒素endは、コンジュゲーション反応後の総窒素含有量である。この比は、糖が系に添加され、したがって総窒素とOPA-Nの両方が希釈によって直接低減された場合に生じる希釈効果を考慮するために使用される。しかし、比を使用することによって、遊離アミノ基の絶対的低減だけが算出される。
【0130】
ベークド製品の硬さ及び弾力の決定
ベークド製品の硬さ及び弾力を、テクスチャプロファイル分析(TPA)(TA-XT2i、Stable Micro Systems、Surrey GU7 1YL、英国)によりテクスチャアナライザーで行って決定した。
【0131】
1.タンパク質加水分解物の調製のための一般的な方法
タンパク質を水中に分散させ、続いてpHを調整した。pHは、酵素ごとに最適なpH範囲に調整し、したがって、使用した酵素に応じて変わり得る。一般的な加工温度は、50~65℃であった。タンパク質分散液の温度及びpH条件が安定になったら、酵素を添加して、タンパク質加水分解反応を開始させた。反応時間によって、製造されるタンパク質加水分解物のMWが決まり、したがって、タンパク質加水分解物の特性は、反応時間によって制御することができる。所望のMWが達成されたら、温度を上げて酵素を変性させるか、又はpHを変化させることによって、反応を停止した。一般的な変性温度は、使用される酵素のタイプに応じて80~90℃である。変性後に、タンパク質加水分解物を、以下に限定されるものではないが、噴霧乾燥又は冷凍乾燥を使用して凍結乾燥させた。
【0132】
1.2 タンパク質加水分解物コンジュゲートの調製のための一般法
タンパク質加水分解物を水中に溶解し、糖を65~85℃で溶液に添加し、NaOHでpHを8又は8.5に調整した。NaOHを使用してpHを一定に保ちながら、この系を撹拌した。30又は60分後に、この系を噴霧乾燥して粉末を形成した。
【0133】
2.カゼイン加水分解物コンジュゲート及び乳酸の組成物の調製
水(21.5kg)を55~65℃に加熱し(温度は全加水分解時間を通して保たれた)、それにNaOH(20%NaOH溶液、0~250g)を添加した。カゼイン(6~8kg)(分子量、およそ20KDa)を、温水中に添加し、20%NaOH溶液を使用してpHを8.5~9.5に調整した。それにアルカラーゼ(Alcalase)(40~100g)を添加し、材料を15~60分間撹拌しながら、カゼイン5~12kgをゆっくり添加した(pHは8.5~9.5に保たれた)。アルカラーゼ(40~100g)を添加し、20%NaOH溶液を使用してpHを10~120分間、pH8.0~9.0で一定に保った。場合によって、カゼイン5~7kgを添加し、pHを30~120分間、8.0~9.0に保った。混合物を30~120分間撹拌したが、pHは一定に保たれなかった。最終pHは7.5~8.5であった。80~84℃に加熱することによって酵素反応を停止し、温度を15分間一定に保った。カゼイン加水分解物の重量平均分子量は、600~750Daの間であった。
【0134】
混合物を65℃に冷却し、デキストロース(Mw-180g/mol)8~12kgを溶液に添加し、次にNaOH(20%NaOH溶液)を使用してpHを8.5~9.0に調整し、pHを1時間保った。カゼイン加水分解物コンジュゲートの重量平均分子量は、720~870Daの間であった。それに乳酸(88~90%溶液)を添加し、pHを5.5に調整した。混合物を噴霧乾燥して、粉末を形成した。
【0135】
3.泡立て
タンパク質加水分解物の焼成性能を、標準ケーキ用途で試験した(表1)。小麦粉36.8g、天然小麦デンプン147.2g、砂糖150g、塩化ナトリウム1g、並びに全卵230g、卵白30g及び水30g又は全卵250g及び 50gのいずれかのブレンドを、タンパク質加水分解物と共に、遊星型ミキサー(Hobart N 50、Dayton、オハイオ、米国)内で、ステップ3で5分間、更にステップ2で30秒間泡立てた。
【0136】
【0137】
3.1 バッター密度
泡立て後に、250mLのボウルを満たすバッターの量(g)を秤量することによって、バッター密度を決定した。重量に4を掛けて、1リットル当たりのグラム数でのバッター密度を得た。
例:250mLのボウル中バッター100g*4=バッター密度400g/L
【0138】
3.2 焼成及び標準ケーキの体積
バッター550gを秤量して丸型の焼成型(直径26cm、高さ5cm)に入れ、ドラフトを開いた状態でデッキオーブン(Wachtel、ヒルデン、ドイツ)内で、およそ29分間195℃で焼成した。レーザースキャナー(Volscan 600 VSP6000152 Stable Micro Systems、Surrey GU7 1YL、英国)を使用して、標準ケーキの体積を決定した。
【0139】
3.3 ケーキ構造の評価
ケーキを室温まで冷まし(室温で1時間保管する)、次いでケーキを中央で水平方向に切断してケーキ構造を調査することによって、ケーキ構造の評価を行った。ケーキ構造は、熟練のベーカー又は実験技術者によって触覚的及び視覚的に評価された。
【0140】
4.ケーキレシピ2(
図2)及びレシピ4(
図4)、レシピ5(
図5)、レシピ6(
図6)は、本発明によるものであり、レシピ1(
図1)及び3(
図3)は、本発明によるものではない(比較)。
【0141】
レシピ1~6を試験し、レシピ1~6について、硬さ及び弾力のパラメータでテクスチャプロファイル分析(TPA)を行った。
【0142】
【0143】
以下の観察は、レシピ2及び4における乳酸の添加時に得られた。
- バッターの粘稠度は安定しており、バッター密度は低かった。
- ケーキ体積が改善され、したがってクラムの硬さが減少した。
- ケーキは、より高い弾力を示した。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
c)少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに
d)少なくとも1種の酸及びその塩
を含む組成物の、起泡剤としての使用であって、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、600Da以上~2400Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w
)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~20000Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w
)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる、使用。
項2
炭水化物含有食品に空気を抱き込ませる方法であって、空気を抱き込ませる前に、少なくとも1種のタンパク質加水分解物又は少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、並びに少なくとも1種の酸及びその塩を含む少なくとも1種の組成物を、炭水化物含有食品に添加するステップを含む、方法。
項3
少なくとも1種の酸が、乳酸、リン酸、塩酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸及び硫酸からなる群から選択される、項1又は2に記載の使用又は方法。
項4
少なくとも1種の酸が、乳酸である、項1から3のいずれか一項に記載の使用又は方法。
項5
少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、植物又は動物のタンパク質加水分解物である、項1から4のいずれか一項に記載の使用又は方法。
項6
少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、小麦、大豆、米、ジャガイモ、エンドウ豆、ヒマワリ、菜種、ルピナス及び乳のタンパク質加水分解物からなる群から選択される、項1から5のいずれか一項に記載の使用又は方法。
項7
少なくとも1種のタンパク質加水分解物が、酵素的に加水分解されたタンパク質加水分解物である、項1から6のいずれか一項に記載の使用又は方法。
項8
少なくとも1種の糖が、還元糖である、項1に記載の使用。
項9
還元糖が、単糖、二糖及び多糖からなる群から選択される、項8に記載の使用。
項10
単糖が、キシロース、グルコース、リボース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース及びマンノースからなる群から選択される、項9に記載の使用。
項11
少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートが、750Da以上~1800Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w
)を有する少なくとも1種のタンパク質加水分解物及び100Da以上~1000Da以下の範囲の重量平均分子量(M
w
)を有する少なくとも1種の糖のアミノ-カルボニル結合によって得られる、項1から10のいずれか一項に記載の使用又は方法。
項12
少なくとも1種の酸及びその塩と、少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲートとのモル比が、0.3:1.0以上~10:1.0以下の範囲である、項1から11のいずれか一項に記載の使用又は方法。
項13
少なくとも1種の酸及びその塩と、少なくとも1種のタンパク質加水分解物とのモル比が、0.3:1.0以上~10:1.0以下の範囲である、項1から12のいずれか一項に記載の使用又は方法。
項14
組成物が、ベーキングパウダーを含まない、項1から13のいずれか一項に記載の使用又は方法。
項15
ベークド製品を作製するための、項1から14のいずれか一項に定義される組成物の使用。
項16
A)少なくとも1種のタンパク質加水分解物コンジュゲート、及び
B)乳酸
を含む、組成物。
項17
ベーキングパウダーを含まない、項16に記載の組成物。
項18
少なくとも
i)乳酸とタンパク質加水分解物コンジュゲートとを接触させて、pHを4.5以上~6.5以下の範囲に調整して、混合物を得るステップと、
ii)混合物の噴霧乾燥、低温殺菌及び凍結乾燥からなる群から選択される加工ステップとを含む、項16又は17に記載の組成物を調製する方法。