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特許7596358潤滑油組成物、内燃機関、及び潤滑油組成物の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】潤滑油組成物、内燃機関、及び潤滑油組成物の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 145/02 20060101AFI20241202BHJP
   C10M 143/00 20060101ALI20241202BHJP
   C10M 133/16 20060101ALI20241202BHJP
   C10M 133/56 20060101ALI20241202BHJP
   C10M 139/00 20060101ALI20241202BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20241202BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20241202BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
C10M145/02
C10M143/00
C10M133/16
C10M133/56
C10M139/00 A
C10N20:04
C10N30:00 Z
C10N40:25
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022508320
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021010103
(87)【国際公開番号】W WO2021187372
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2020045634
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】蓬田 知行
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094473(JP,A)
【文献】特表2017-508053(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043333(WO,A1)
【文献】特開2019-178296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 20/02,20/04,
30/00,40/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)、櫛形ポリマー(B)、及び、星形ポリマー(C1)を含むオレフィン系共重合体(C)を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.80質量%超であり、
成分(C)の重量平均分子量が、50万以上であり、
前記潤滑油組成物の粘度指数が200以上であり、且つ、100℃における動粘度が9.3~11.0mm/sである、
潤滑油組成物。
【請求項2】
成分(B)に対する成分(C)の含有量比〔(C)/(B)〕が、質量比で、0.90以下である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
成分(B)の重量平均分子量が、20万以上である、請求項1又は2の記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
成分(C)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.10~2.00質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
成分(B)と成分(C)の合計含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.90~8.00質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
さらに、コハク酸イミド及びコハク酸イミドのホウ素変性物から選ばれる少なくとも1種を含む無灰系分散剤(D)を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
ポリメタクリレート系粘度指数向上剤の含有量が、成分(B)及び(C)の合計量100質量部に対して、10質量部未満である、請求項1~のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記潤滑油組成物のSAE粘度グレードが、0W-30又は5W-30である、請求項1~のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
JPI-5S-29の低出力法に準拠して30分間の超音波照射をした後の前記潤滑油組成物の100℃動粘度が9.3mm/s以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
内燃機関の潤滑に用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を適用した、内燃機関。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を内燃機関の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物、及び当該潤滑油組成物を適用した内燃機関、並びに当該潤滑油組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやガソリンエンジンのような内燃機関に用いられるエンジン油には、省燃費性能が求められており、そのためエンジン油の低粘度化が進められている。しかしながら、低粘度化したエンジン油は、ミスト化し易いという問題を有する。内燃機関の内部に浮遊するミストは、ピストン表面へのデポジットの堆積や、エンジン油の消費量にも影響する。
このような問題に対応すべく、ミスト化の抑制効果を向上させた低粘度化したエンジン油について様々な検討がされている。
例えば、特許文献1には、ミスト化の抑制効果及び耐コーキング性に優れ、更に省燃費性にも優れる内燃機関用潤滑油組成物の提供を目的として、所定の動粘度、CCS粘度、及びNOACK値を有するポリαオレフィンと、所定の粘度指数の鉱油との混合基油に、ポリイソブチレンを配合してなる内燃機関用潤滑油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/125881号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況下、内燃機関の潤滑に好適に適用し得る新たな潤滑油組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基油、櫛形ポリマー、及びオレフィン系共重合体を含有し、櫛形ポリマーの含有量、及び、オレフィン系共重合体の重量平均分子量を所定の範囲とし、所定の粘度指数及び動粘度となるように調整した潤滑油組成物を提供する。
具体的な本発明の態様としては、下記[1]~[13]のとおりである。
[1]基油(A)、櫛形ポリマー(B)、及び、オレフィン系共重合体(C)を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.80質量%超であり、
成分(C)の重量平均分子量が、50万以上であり、
前記潤滑油組成物の粘度指数が200以上であり、且つ、100℃における動粘度が9.3~11.0mm/sである、
潤滑油組成物。
[2]成分(B)に対する成分(C)の含有量比〔(C)/(B)〕が、質量比で、0.90以下である、上記[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]成分(B)の重量平均分子量が、20万以上である、上記[1]又は[2]の記載の潤滑油組成物。
[4]成分(C)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.10~2.00質量%である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[5]成分(C)が、星形ポリマー(C1)を含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[6]成分(B)と成分(C)の合計含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.90~8.00質量%である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[7]さらに、コハク酸イミド及びコハク酸イミドのホウ素変性物選ばれる少なくとも1種を含む無灰系分散剤(D)を含有する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[8]ポリメタクリレート系粘度指数向上剤の含有量が、成分(B)及び(C)の合計量100質量部に対して、10質量部未満である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[9]前記潤滑油組成物のSAE粘度グレードが、0W-30又は5W-30である、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[10]JPI-5S-29の低出力法に準拠して30分間の超音波照射をした後の前記潤滑油組成物の100℃動粘度が9.3mm/s以上である、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[11]内燃機関の潤滑に用いられる、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[12]上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を適用した、内燃機関。
[13]上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を内燃機関の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様の潤滑油組成物は、省燃費性、せん断安定性、及びミスト化の抑制効果の少なくとも1つに優れ、より好適な一態様の潤滑油組成物においては、省燃費性、せん断安定性、及びミスト化の抑制効果に優れる。そのため、これらの本発明の一態様の潤滑油組成物は、内燃機関の潤滑に好適に適用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において、動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出された値を意味する。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0008】
〔潤滑油組成物の構成〕
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)、櫛形ポリマー(B)、及びオレフィン系共重合体(C)を含有し、粘度指数が200以上であり、且つ、100℃における動粘度が9.3~11.0mm/sに調整されたものである。
本発明の潤滑油組成物の粘度指数及び動粘度は、主として、重合体成分である、成分(B)及び成分(C)を併用することで調整している。
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、粘度指数が200以上に調整されているため、温度変化による粘度変化が小さく、省燃費性に優れた潤滑油組成物となり得る。
本発明の一態様の潤滑油組成物の粘度指数としては、温度変化による粘度変化が小さく、省燃費性により優れた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは205以上、より好ましくは208以上、更に好ましくは210以上、より更に好ましくは214以上である。
【0010】
また、本発明の潤滑油組成物は、100℃における動粘度が9.3~11.0mm/sである。そのため、本発明の潤滑油組成物のSAE粘度グレードは、0W-30又は5W-30に該当する。
一般的に低粘度化した潤滑油組成物は、良好な省燃費性を有するが、ミスト化し易い。例えば、内燃機関の内部にミストが浮遊すると、ピストン表面へのデポジットの堆積の増加や、潤滑油組成物の消費量の増加といった弊害が生じる要因となる。このような問題点に対して、本発明の潤滑油組成物では、重合体成分として、櫛形ポリマー(B)を所定量含有することで、ミスト化の抑制効果を向上させている。
一方で、成分(B)を配合することで、せん断安定性が低下してしまうという問題も生じ得ることが分かった。このせん断安定性の低下という問題に対して、本発明の潤滑油組成物では、重合体成分として、成分(B)と共に、所定の重量平均分子量を有するオレフィン系共重合体(C)を含有することで、ミスト化の抑制効果を向上させつつ、更にせん断安定性も良好とした潤滑油組成物としている。
【0011】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)に対する成分(C)の含有量比〔(C)/(B)〕は、質量比で、ミスト化の抑制効果をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.80以下、より更に好ましくは0.70以下であり、さらに、0.65以下、0.60以下、0.55以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、又は0.35以下としてもよく、また、せん断安定性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.15以上、より更に好ましくは0.20以上であり、さらに、0.23以上、0.25以上、0.27以上、又は0.30以上としてもよい。
つまり、以上の観点から、成分(B)に対する成分(C)の含有量比〔(C)/(B)〕は、質量比で、好ましくは0.05~0.90、より好ましくは0.10~0.85、更に好ましくは0.15~0.80、より更に好ましくは0.20~0.70である。
【0012】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、潤滑油組成物の粘度指数及び動粘度を上述の範囲に調整する観点から、成分(B)と成分(C)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.90~8.00質量%、より好ましくは1.10~6.00質量%、更に好ましくは1.30~5.00質量%、より更に好ましくは1.50~4.00質量%、特に好ましくは1.70~3.00質量%である。
【0013】
なお、成分(B)及び(C)は、ハンドリング性や成分(A)との溶解性を考慮し、希釈油に溶解された溶液の形態で市販されていることが多い。
本明細書において、成分(B)及び(C)のそれぞれの含有量は、希釈油で希釈された溶液においては、希釈油の質量を除外した、成分(B)及び(C)を構成する樹脂分に換算した含有量である。
【0014】
本発明の一態様の潤滑油組成物は、無灰系分散剤(D)、金属系清浄剤(E)、酸化防止剤(F)、及び耐摩耗剤(G)から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することが好ましい。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(B)~(G)以外の他の潤滑油用添加剤をさらに含有してもよい。
【0015】
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、さらに、72質量%以上、又は75質量%以上としてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、さらに、82質量%以上、85質量%以上、87質量%以上、又は90質量%以上としてもよい。
以下、本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0017】
<成分(A):基油>
本発明の一態様で用いる成分(A)である基油としては、鉱油及び合成油から選ばれる1種以上が挙げられる。
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる精製油;等が挙げられる。
【0018】
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリアルキレングリコール;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油;ポリフェニルエーテル等のエーテル系油;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(GTL)等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、本発明の一態様で用いる成分(A)としては、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループ2及びグループ3に分類される鉱油、並びに合成油から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の一態様で用いる成分(A)の100℃における動粘度としては、好ましくは2.0~20.0mm/s、より好ましくは2.0~15.0mm/s、更に好ましくは3.0~12.0mm/s、より更に好ましくは3.2~9.0mm/s、特に好ましくは3.5~7.0mm/sである。
【0021】
また、本発明の一態様で用いる成分(A)の粘度指数としては、潤滑油組成物の用途に応じて適宜設定されるが、好ましくは70以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは90以上、より更に好ましくは100以上、特に好ましくは110以上である。
なお、本発明の一態様において、成分(A)として、2種以上の基油を組み合わせた混合油を用いる場合、当該混合油の動粘度及び粘度指数が上記範囲であることが好ましい。
【0022】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは30~99.0質量%、より好ましくは40~98.5質量%、更に好ましくは50~98.0質量%、より更に好ましくは60~97.0質量%、特に好ましくは65~95.0質量%である。
なお、成分(A)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、さらに、67質量%以上、70質量%以上、又は72質量%以上としてもよく、また、93.0質量%以下、90.0質量%以下、87.0質量%以下、85.0質量%以下、83.0質量%以下、又は80.0質量%以下としてもよい。
【0023】
<成分(B):櫛形ポリマー>
本発明の一態様で用いる成分(B)である櫛形ポリマーとしては、高分子量の側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多くもつ構造を有する重合体であればよい。
本発明の潤滑油組成物では、成分(B)を含有することで、潤滑油組成物の粘度指数を調整して省燃費性を向上させると共に、ミスト化の抑制効果も向上させている。
【0024】
ミスト化の抑制効果をより向上させつつ、省燃費性に優れた潤滑油組成物とする観点から、本発明の潤滑油組成物において、成分(B)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、0.80質量%超であるが、好ましくは0.85質量%以上、より好ましくは0.88質量%以上、更に好ましくは1.00質量%以上、より更に好ましくは1.20質量%以上、特に好ましくは1.35質量%以上であり、さらに、1.40質量%以上、1.45質量%以上、1.47質量%以上、又は1.50質量%以上としてもよく、また、好ましくは6.00質量%以下、より好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは4.00質量%以下、更に好ましくは3.50質量%以下、より更に好ましくは3.00質量%以下、特に好ましくは2.50質量%以下であり、さらに、2.20質量%以下、2.00質量%以下、1.90質量%以下、1.80質量%以下、又は1.70質量%以下としてもよい。
つまり、本発明の潤滑油組成物において、成分(B)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.80質量%超6.00質量%以下、より好ましくは0.85~5.00質量%、より好ましくは0.88~4.00質量%、更に好ましくは1.00~3.50質量%、より更に好ましくは1.20~3.00質量%、特に好ましくは1.35~2.50質量%である。
【0025】
本発明の一態様で用いる成分(B)の重量平均分子量(Mw)としては、ミスト化の抑制効果をより向上させつつ、省燃費性に優れた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは20万以上、より好ましくは25万以上、更に好ましくは30万以上、より更に好ましくは35万以上、特に好ましくは45万以上であり、さらに、50万以上、55万以上、又は60万以上としてもよく、また、好ましくは100万以下、より好ましくは90万以下、更に好ましくは80万以下、より更に好ましくは75万以下、特に好ましくは70万以下である。
つまり、成分(B)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万~100万、より好ましくは25万~90万、更に好ましくは30万~80万、より更に好ましくは35万~75万、特に好ましくは45万~70万である。
【0026】
また、本発明の一態様で用いる成分(B)の分子量分布(Mw/Mn)(但し、Mnは成分(B)の数平均分子量を示す)は、ミスト化の抑制効果をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは8.00以下、より好ましくは7.00以下、更に好ましくは6.00以下、より更に好ましくは4.00以下、特に好ましくは3.00以下であり、さらに、2.80以下、2.60以下、2.50以下、又は2.40以下としてもよく、また、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.02以上、更に好ましくは1.05以上、より更に好ましくは1.07以上、特に好ましくは1.10以上である。
つまり、成分(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.01~8.00、より好ましくは1.02~7.00、更に好ましくは1.05~6.00、より更に好ましくは1.07~4.00、特に好ましくは1.10~3.00である。
【0027】
本発明の一態様で用いる成分(B)のSSI(せん断安定性指数)としては、ミスト化の抑制効果をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、特に好ましくは50以下である。
また、成分(B)のSSIは、下限値の制限は特に無いが、通常0.1以上である。
【0028】
なお、本明細書において、SSI(せん断安定性指数)とは、重合体成分に由来するせん断による粘度低下をパーセンテージで示すものであり、JPI-5S-29-06に準拠して測定された値であって、より具体的には、下記計算式(1)より算出された値である。
計算式(1):SSI(%)=(Kv-Kv)/(Kv-Kvoil)×100
【0029】
上記式(1)中、Kvは、重合体成分を鉱油に希釈した試料油の100℃における動粘度の値であり、Kvは、重合体成分を鉱油に希釈した試料油を、JPI-5S-29-06の手順にしたがって、出力法に準拠し、超音波を30分間照射した後の100℃における動粘度の値である。また、Kvoilは、重合体成分を希釈する際に用いた鉱油の100℃における動粘度の値である。
【0030】
なお、成分(B)のSSIの値は、櫛形ポリマーの構造によって変化するものである。具体的には、以下に示す傾向があり、これらの事項を考慮することで、成分(B)のSSIの値は容易に調整できる。なお、以下の事項は、あくまで一例であって、これら以外の事項を考慮することによっても調整可能である。
・櫛形ポリマーの側鎖がマクロモノマー(x1)で構成され、当該マクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)の含有量が、構成単位の全量(100モル%)基準で、0.5モル%以上である櫛形ポリマーは、SSIの値が低くなる傾向にある。
・櫛形ポリマーの側鎖を構成するマクロモノマー(x1)の分子量が大きくなるほど、SSIの値が低くなる傾向にある。
【0031】
本発明の一態様で用いる成分(B)としては、マクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)を少なくとも有する重合体が好ましい。この構成単位(X1)が、上述の「高分子量の側鎖」に該当する。
なお、本発明において、上記の「マクロモノマー(x1)」とは、重合性官能基を有する高分子量モノマーのことを意味し、末端に重合性官能基を有する高分子量モノマーであることが好ましい。
【0032】
本発明の一態様で用いる成分(B)において、構成単位(X1)の含有量は、成分(B)の構成単位の全量(100モル%)基準で、好ましくは0.5~20モル%、より好ましくは0.7~10モル%、更に好ましくは0.9~5モル%である。
なお、本明細書において、成分(B)や成分(C)における各構成単位の含有量は、13C-NMR定量スペクトルを解析して算出した値を意味する。
【0033】
マクロモノマー(x1)の数平均分子量(Mn)としては、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは500以上であり、また、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは20,000以下である。
つまり、マクロモノマー(x1)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは300~100,000、より好ましくは400~50,000、更に好ましくは500~20,000である。
【0034】
マクロモノマー(x1)が有する重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基(CH=CH-COO-)、メタクリロイル基(CH=CCH-COO-)、エテニル基(CH=CH-)、ビニルエーテル基(CH=CH-O-)、アリル基(CH=CH-CH-)、アリルエーテル基(CH=CH-CH-O-)、CH=CH-CONH-で表される基、CH=CCH3-CONH-で表される基等が挙げられる。
【0035】
マクロモノマー(x1)は、上記重合性官能基以外に、例えば、以下の一般式(i)~(iii)で表される繰り返し単位を1種以上有していてもよい。
【化1】
【0036】
上記一般式(i)中、Rb1は、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。
上記一般式(ii)中、Rb2は、炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。
上記一般式(iii)中、Rb3は、水素原子又はメチル基である。Rb4は、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
なお、上記一般式(i)~(iii)で表される繰り返し単位をそれぞれ複数有する場合には、複数のRb1、Rb2、Rb3、及びRb4は、それぞれ同一であってもよく、互いに異なるものであってもよい。
【0037】
本発明の一態様において、マクロモノマー(x1)は、前記一般式(i)で表される繰り返し単位を有する重合体であることが好ましく、前記一般式(i)中のRb1が1,2-ブチレン基及び1,4-ブチレン基の少なくとも一方である繰り返し単位(X1-1)を有する重合体であることがより好ましい。
【0038】
繰り返し単位(X1-1)の含有量としては、マクロモノマー(x1)の構成単位の全量(100モル%)基準で、好ましくは1~100モル%、より好ましくは20~95モル%、更に好ましくは40~90モル%、より更に好ましくは50~80モル%である。
【0039】
なお、マクロモノマー(x1)が、前記一般式(i)~(iii)から選ばれる2種以上の繰り返し単位を有する共重合体である場合、共重合の形態としては、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0040】
本発明の一態様で用いる成分(B)は、1種類のマクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)のみからなる単独重合体でもよく、2種類以上のマクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)を有する共重合体であってもよい。
また、本発明の一態様で用いる成分(B)は、マクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)と共に、マクロモノマー(x1)以外の他のモノマーに由来する構成単位(X2)を有する共重合体であってもよい。
このような櫛形ポリマーの具体的な構造としては、モノマー(x2)に由来する構成単位(X2)を含む主鎖に対して、マクロモノマー(x1)に由来する構成単位(X1)を含む側鎖を有する共重合体が好ましい。
【0041】
モノマー(x2)としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、窒素原子含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体、リン原子含有単量体、脂肪族炭化水素系ビニル単量体、脂環式炭化水素系ビニル単量体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、エポキシ基含有ビニル単量体、ハロゲン元素含有ビニル単量体、不飽和ポリカルボン酸のエステル、(ジ)アルキルフマレート、(ジ)アルキルマレエート、芳香族炭化水素系ビニル単量体等が挙げられる。
【0042】
なお、モノマー(x2)としては、リン原子含有単量体及び芳香族炭化水素系ビニル単量体以外の単量体が好ましく、下記一般式(a1)で表される単量体、アルキル(メタ)アクリレート、及び水酸基含有ビニル単量体から選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、水酸基含有ビニル単量体(x2-d)を少なくとも含むことが更に好ましい。
【化2】
【0043】
上記一般式(a1)中、Rb11は、水素原子又はメチル基である。
b12は、単結合、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、-O-、又は-NH-である。
b13は、炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。また、nは1以上の整数(好ましくは1~20の整数、より好ましくは1~5の整数)を示す。なお、nが2以上の整数の場合、複数のRb13は、同一であってもよく、異なっていてもよく、さらに、(Rb13O)部分は、ランダム結合でもブロック結合でもよい。
b14は、炭素数1~60(好ましくは10~50、より好ましくは20~40)の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0044】
<成分(C):オレフィン系共重合体>
本発明の潤滑油組成物は、成分(C)として、重量平均分子量(Mw)が50万以上のオレフィン系共重合体を含有する。本発明の潤滑油組成物では、50万以上のオレフィン系共重合体を含有することで、潤滑油組成物の粘度指数を調整して省燃費性を向上させると共に、ミスト化の抑制効果を良好としつつ、せん断安定性を向上させている。
省燃費性に優れると共に、ミスト化の抑制効果を良好としつつ、せん断安定性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、本発明の一態様で用いる成分(C)の重量平均分子量(Mw)は、50万以上であるが、好ましくは52万以上、より好ましくは55万以上、更に好ましくは57万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは90万以下、更に好ましくは80万以下、より更に好ましくは75万以下であり、さらに、70万以下、又は65万以下としてもよい。
つまり、成分(C)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50万~100万、より好ましくは52万~90万、更に好ましくは55万~80万、より更に好ましくは57万~75万である。
【0045】
また、本発明の一態様で用いる成分(C)の分子量分布(Mw/Mn)(但し、Mnは成分(C)の数平均分子量を示す)は、省燃費性に優れると共に、ミスト化の抑制効果を良好としつつ、せん断安定性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは8.00以下、より好ましくは7.00以下、更に好ましくは6.00以下、より更に好ましくは3.00以下、特に好ましくは2.00以下であり、さらに1.80以下、1.60以下、1.50以下、1.40以下、又は1.30以下としてもよく、また、好ましくは1.001以上、好ましくは1.005以上、より好ましくは1.01以上、更に好ましくは1.02以上、より更に好ましくは1.03以上である。
つまり、成分(C)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.001~8.00、より好ましくは1.005~7.00、更に好ましくは1.01~6.00、より更に好ましくは1.02~3.00、特に好ましくは1.03~2.00である。
【0046】
本発明の一態様で用いる成分(C)のSSI(せん断安定性指数)としては、せん断安定性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは60以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは20以下、特に好ましくは15以下である。
また、成分(C)のSSIは、下限値の制限は特に無いが、通常0.1以上である。
【0047】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ミスト化の抑制効果及びせん断安定性をより良好とした潤滑油組成物とする観点から、成分(C)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.10~2.00質量%、より好ましくは0.12~1.80質量%、より好ましくは0.15~1.70質量%、更に好ましくは0.17~1.50質量%、更に好ましくは0.20~1.20質量%、より更に好ましくは0.23~1.00質量%、より更に好ましくは0.25~0.80質量%、特に好ましくは0.27~0.50質量%である。
【0048】
本発明の一態様で用いる成分(C)としては、アルケニル基を有するモノマーに由来の構成単位を有する共重合体であって、例えば、炭素数2~20(好ましくは2~16、より好ましくは2~14)のα-オレフィンの共重合体が挙げられ、より具体的には、エチレン-α-オレフィン共重合体、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0049】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ミスト化の抑制効果及びせん断安定性をより良好とした潤滑油組成物とする観点から、成分(C)が、星形ポリマー(C1)を含むことが好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)中の成分(C1)の含有割合としては、当該潤滑油組成物に含まれる成分(C)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0050】
本発明の一態様で用いる成分(C1)である星形ポリマーとしては、1点で3本以上の鎖状高分子が結合している構造を有する重合体であればよい。
また、成分(C1)を構成する鎖状高分子としては、例えば、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合体やその水素化物等が挙げられる。
ビニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、炭素数8~16のアルキル置換スチレン、炭素数8~16のアルコキシ置換スチレン、ビニルナフタレン、炭素数8~16のアルキル置換ビニルナフタレン等が挙げられる。
共役ジエンモノマーとしては、炭素数4~12の共役ジエンが挙げられ、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、4-メチルペンタ-1,3-ジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン等が挙げられる。
【0051】
<成分(B)及び(C)以外の粘度指数向上剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)及び(C)以外の他の粘度指数向上剤を含有してもよい。
ただし、成分(B)及び(C)以外の他の粘度指数向上剤の含有量としては、潤滑油組成物に含まれる成分(B)及び(C)の合計量100質量部に対して、好ましくは0~50質量部、より好ましくは0~30質量部、更に好ましくは0~10質量部、より更に好ましくは0~1質量部である。
【0052】
なお、ミスト化の抑制効果及びせん断安定性をより良好とした潤滑油組成物とする観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物は、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤を実質的に含有しないことが好ましい。
本明細書において、「ポリメタクリレート系粘度指数向上剤を実質的に含有しない」とは、所定の意図を持ってポリメタクリレート系粘度指数向上剤を配合して、潤滑油組成物中に含有させるような態様を除外した規定である。つまり、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤が、潤滑油組成物の調製時に不可避的に混入した場合や、潤滑油組成物を使用している過程で、成分(B)及び(C)がせん断されて分離したこれらの成分の一部が、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤に該当する重合体に該当し、潤滑油組成物に含まれるような態様となった場合までも除外するわけではない。
【0053】
具体的なポリメタクリレート系粘度指数向上剤の含有量としては、潤滑油組成物に含まれる成分(B)及び(C)の合計量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは5質量部未満、更に好ましくは1質量部未満、より更に好ましくは0.1質量部未満、特に好ましくは0.01質量部未満である。
【0054】
なお、本明細書において、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤とは、成分(B)及び(C)には該当しない、アルキルメタクリレートに由来する構成単位を少なくとも有する重合体を意味する。
【0055】
<成分(D):無灰系分散剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに無灰系分散剤(D)を含有することが好ましい。成分(D)である無灰系分散剤を含有することで、潤滑油組成物に含まれる添加剤を均一に分散させることができ、それぞれの添加剤が有する性能を効果的に発現させることができる。
なお、成分(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明の一態様で用いる成分(D)としては、例えば、コハク酸モノイミド、コハク酸ビスイミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル、及びこれらのホウ素変性物等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の一態様で用いる成分(D)としては、コハク酸イミド及びコハク酸イミドのホウ素変性物選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、コハク酸イミドと、コハク酸イミドのホウ素変性物とを共に含むことがより好ましい。
【0057】
前記コハク酸イミドとしては、下記一般式(d-1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミド、及び、下記一般式(d-2)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミドが好ましい。
【0058】
【化3】
【0059】
上記一般式(d-1)及び(d-2)中、R、RA1及びRA2は、それぞれ独立して、質量平均分子量(Mw)が500~3000(好ましくは1000~3000)のアルケニル基である。当該アルケニル基としては、例えば、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられ、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が好ましい。
、RB1及びRB2は、それぞれ独立して、炭素数2~5のアルキレン基である。
及びRC1は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は-(AO)-Hで表される基(ただし、Aは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、nは1~10の整数である)である。
x1は、1~10の整数であり、好ましくは2~5の整数、より好ましくは3又は4である。
x2は、0~10の整数であり、好ましくは1~5の整数、より好ましくは2~4の整数である。
【0060】
なお、清浄性及び耐熱性を良好とした潤滑油組成物とする観点から、本発明で用いる成分(D)は、非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドを含むことが好ましい。
【0061】
また、本発明の一態様で成分(D)として用いる、コハク酸イミドのホウ素変性物としては、例えば、前記一般式(d-1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミドのホウ素変性物、及び、下記一般式(b-2)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミドのホウ素変性物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、下記一般式(b-1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミドのホウ素変性物がより好ましい。
【0062】
本発明の一態様において、コハク酸イミドのホウ素変性物を構成するホウ素原子と窒素原子の比率〔B/N〕としては、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上である。
【0063】
また、本発明の一態様において、コハク酸イミドのホウ素変性物に由来するホウ素原子と、コハク酸イミド(非ホウ素変性のコハク酸イミドとコハク酸イミドのホウ素変性物の双方を含む)に由来する窒素原子との含有量比〔B/N〕が、質量比で、好ましくは0.01~0.60、より好ましくは0.05~0.50、更に好ましくは0.10~0.45、より更に好ましくは0.15~0.40、特に好ましくは0.20~0.35である。
なお、本明細書において、ホウ素原子の含有量は、JPI-5S-38-2003に準拠して測定された値を意味する。
【0064】
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物において、コハク酸イミドの窒素原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.005~0.30質量%、より好ましくは0.01~0.25質量%、更に好ましくは0.02~0.20質量%、より更に好ましくは0.04~0.15質量%である。
なお、本明細書において、窒素原子の含有量は、JIS K2609に準拠して測定された値を意味する。
【0065】
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物において、コハク酸イミドのホウ素変性物に由来するホウ素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001~0.20質量%、より好ましくは0.005~0.15質量%、更に好ましくは0.01~0.10質量%、より更に好ましくは0.015~0.05質量%である。
【0066】
<成分(E):金属系清浄剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに金属系清浄剤(E)を含有することが好ましい。
成分(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明の一態様で用いる成分(E)としては、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する、金属サリシレート、金属フェネート、及び金属スルホネートから選ばれる1種以上であることが好ましい。
なお、前記金属原子としては、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。つまり、成分(E)は、カルシウム系清浄剤であることが好ましい。
【0068】
また、前記金属スルホネートとしては、下記一般式(e-1)で表される化合物が好ましく、前記金属サリシレートとしては、下記一般式(e-2)で表される化合物が好ましく、前記金属フェネートとしては、下記一般式(e-3)で表される化合物が好ましい。
【0069】
【化4】
【0070】
上記一般式(e-1)及び(e-2)中、Mは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子であり、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。
上記一般式(e-3)中、M’は、アルカリ土類金属であり、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。yは、0以上の整数であり、好ましくは0~3の整数である。
上記一般式(e-1)~(e-3)中、pはMの価数であり、1又は2である。Rは、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
Rとして選択し得る炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルケニル基、環形成炭素数3~18のシクロアルキル基、環形成炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18のアルキルアリール基、炭素数7~18のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0071】
成分(E)の塩基価としては、好ましくは0~600mgKOH/gである。
ただし、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E)が、塩基価が100mgKOH/g以上の過塩基性金属系清浄剤を含むことが好ましい。
過塩基性金属系清浄剤の塩基価としては、100mgKOH/g以上であるが、好ましくは150~500mgKOH/g、より好ましくは200~400mgKOH/gである。
なお、本明細書において、成分(E)の「塩基価」は、JIS K2501「石油製品および潤滑油-中和価試験方法」の7.に準拠して測定される「過塩素酸法」による塩基価を意味する。
【0072】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E)の金属原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは100~6000質量ppm、より好ましくは300~5000質量ppm、更に好ましくは600~4500質量ppm、より更に好ましくは1000~4000質量ppm、特に好ましくは1500~3500質量ppmである。
なお、本明細書において、金属原子の含有量は、JPI-5S-38-2003に準拠して測定された値を意味する。
【0073】
<成分(F):酸化防止剤>
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物は、さらに酸化防止剤(F)を含有することが好ましい。成分(F)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
本発明の一態様で用いる成分(F)としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
これらの中でも、成分(F)が、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤を共に含むことがより好ましい。
【0075】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン、炭素数3~20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、炭素数3~20のアルキル基を有する置換フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;等が挙げられる。
【0076】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、C7~C9アルキル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)等のジフェノール系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;等を挙げられる。
【0077】
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物において、成分(F)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~6.0質量%、より好ましくは0.05~4.0質量%、更に好ましくは0.10~3.0質量%、より更に好ましくは0.50~2.0質量%である。
【0078】
<成分(G):耐摩耗剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに耐摩耗剤(G)を含有することが好ましい。
成分(G)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
本発明の一態様で用いる成分(G)としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
【0080】
これらの中でも、成分(G)としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を含むことが好ましい。ジチオリン酸亜鉛としては、例えば、下記一般式(g-1)で表される化合物等が挙げられる。
【化5】
【0081】
上記式(g-1)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
~Rとして選択し得る炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~16、更に好ましくは3~12、より更に好ましくは3~10である。
【0082】
~Rとして選択し得る、具体的な当該炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、R~Rとして選択し得る、当該炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、第1級アルキル基又は第2級アルキル基がより好ましい。
【0083】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(G)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~15.0質量%、より好ましくは0.05~12.0質量%、更に好ましくは0.10~10.0質量%、より更に好ましくは0.20~8.0質量%である。
【0084】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(G)として、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を含む場合、ZnDTPの亜鉛原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.03~0.80質量%、更に好ましくは0.05~0.60質量%、より更に好ましくは0.08~0.50質量%、特に好ましくは0.10~0.40質量%である。
また、ZnDTPのリン原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.02~0.70質量%、更に好ましくは0.03~0.50質量%、より更に好ましくは0.05~0.40質量%、特に好ましくは0.07~0.30質量%である。
なお、本明細書において、亜鉛原子及びリン原子の含有量は、JPI-5S-38-2003に準拠して測定された値を意味する。
【0085】
<潤滑油用添加剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、更に成分(B)~(G)以外の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
このような潤滑油用添加剤としては、例えば、流動点降下剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、防錆剤、帯電防止剤、消泡剤等が挙げられる。
これらの潤滑油用添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
これらの潤滑油用添加剤のそれぞれの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調整することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、それぞれの添加剤ごとに独立して、通常0.001~15質量%、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0087】
<潤滑油組成物の製造方法>
本発明の一態様の潤滑油組成物の製造方法としては、特に制限はないが、生産性の観点から、成分(A)に、成分(B)及び(C)、並びに必要に応じて、成分(D)~(G)及び他の潤滑油用添加剤を配合する工程を有する、方法であることが好ましい。
なお、成分(A)との相溶性の観点から、成分(B)及び(C)は、希釈油に溶解された溶液の形態とし、当該溶液を成分(A)に配合することが好ましい。
【0088】
〔潤滑油組成物の特性〕
本発明の一態様の潤滑油組成物のSAE粘度グレードは、0W-30又は5W-30であることが好ましい。これらのSAE粘度グレードにおいて、ミスト化の抑制効果、せん断安定性、及び省燃費性といった各種性能を十分に発現させることができる。
【0089】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物は、下記要件(I)及び(II)を満たすことが好ましい。
・要件(I):JPI-5S-29の低出力法に準拠して30分間の超音波照射をした後の前記潤滑油組成物の100℃動粘度が9.3mm/s以上である。
・要件(II):前記潤滑油組成物を後述の実施例に記載の方法に基づき劣化させた劣化油を圧縮空気と混合してミスト化して、ミスト化した油量(ミスト化質量)を測定して、下記計算式から算出されたミスト化率が2.00%未満である。
〔ミスト化率〕(%)=〔ミスト化質量〕/〔劣化油質量〕×100
【0090】
要件(I)は、潤滑油組成物のせん断安定性を規定したものである。
要件(I)で規定する100℃動粘度としては、9.3mm/s以上であるが、好ましくは9.35mm/s以上、より好ましくは9.4mm/s以上、更に好ましくは9.5mm/s以上、より更に好ましくは9.6mm/s以上、特に好ましくは9.7mm/s以上である。
なお、要件(I)で規定する100℃動粘度は、後述の実施例の記載の方法により潤滑油組成物を調製して、実施例に記載の測定条件にて算出された値である。
【0091】
要件(II)は、潤滑油組成物のミスト化の抑制効果を規定したものである。
要件(II)で規定するミスト化率としては、2.00%未満であるが、好ましくは1.98%以下、より好ましくは1.95%以下、更に好ましくは1.80%以下、より更に好ましくは1.50%以下、特に好ましくは1.30%以下である。
なお、要件(II)で規定するミスト化率は、後述の実施例の記載の方法により潤滑油組成物を調製して、実施例に記載の測定条件にて算出された値である。
【0092】
〔潤滑油組成物の用途〕
以上のとおり、本発明の一態様の潤滑油組成物は、ミスト化の抑制効果、せん断安定性、及び省燃費性といった各種性能に優れている。
そのため、本発明の一態様の潤滑油組成物は、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関の潤滑に用いられることが好ましく、特に、ディーゼルエンジンの潤滑に用いられることがより好ましい。
【0093】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物の上述の特性を考慮すると、本発明は、以下の[1]及び[2]も提供し得る。
[1]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を適用した、内燃機関。
[2]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を内燃機関の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用方法。
【実施例
【0094】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各種物性の測定法又は評価法は、下記のとおりである。
【0095】
(1)動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(アジレント社製、「1260型HPLC」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「Shodex LF404」を2本、順次連結したもの。
・カラム温度:35℃
・展開溶媒:クロロホルム
・流速:0.3mL/min
また、測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比〔Mw/Mn〕を分子量分布として算出した。
(3)SSI(せん断安定性指数)
測定対象となる重合体に希釈油である鉱油を加えて試料油を調製し、当該試料油及び当該鉱油を用いて、JPI-5S-29-06に準拠して測定した。
具体的には、対象となる重合体について、前記計算式(1)中のKv、Kv、Kvoilの各値を測定して、当該計算式(1)より算出した。
(4)ホウ素原子、カルシウム原子、亜鉛原子、リン原子の含有量
JPI-5S-38-2003に準拠して測定した。
(5)窒素原子の含有量
JIS K2609に準拠して測定した。
(6)塩基価
JIS K2501:2003の過塩素酸法に準拠して測定した。
【0096】
実施例1~4、比較例1~6
表1及び2に示す種類及び配合量にて、基油に、各種添加剤を配合し、潤滑油組成物をそれぞれ調製した。なお、表1及び2に記載された、重合体として配合される、櫛形ポリマー、星形ポリマー及びPMAの配合量は、希釈油で溶解された状態で配合した場合には、当該希釈油の質量を除いた有効成分換算(固形分(樹脂分)換算)での配合量である。
ここで、潤滑油組成物の調製に使用した、基油及び各種添加剤の詳細は以下のとおりである。
【0097】
<基油>
・100N鉱油:API基油カテゴリーのグループIIIに分類されるパラフィン系鉱油、40℃動粘度=18.4mm/s、100℃動粘度=4.1mm/s、粘度指数=125。
【0098】
<重合体成分>
・櫛形ポリマー(1):Mw=60万、Mw/Mn=2.4、SSI=49である櫛形ポリマー。
・櫛形ポリマー(2):Mw=37万、Mw/Mn=5.2、SSI=35である櫛形ポリマー。
・星形ポリマー(1):Mw=58万、Mw/Mn=1.1、SSI=14である星形ポリマー。
・星形ポリマー(2):Mw=62万、Mw/Mn=1.2、SSI=17である星形ポリマー。
・星形ポリマー(3):Mw=45万、Mw/Mn=1.1、SSI=6である星形ポリマー。
・PMA:Mw=40万、Mw/Mn=1.7、SSI=56であるポリアルキルメタクリレート。
【0099】
<各種添加剤>
・ホウ素変性コハク酸イミド:ホウ素変性コハク酸イミド、ホウ素原子(B)含有量=0.49質量%、窒素原子(N)含有量=1.5質量%、B/N=0.33。
・非ホウ素変性コハク酸イミド:非ホウ素変性コハク酸イミド、窒素原子(N)含有量=1.0質量%。
・金属系清浄剤:塩基価=226mgKOH/gの過塩基性カルシウムサリシレート、カルシウム原子(Ca)含有量=8.1質量%。
・アミン系酸化防止剤:4,4’-ジノニルフェニルアミン
・フェノール系酸化防止剤:C7~C9アルキル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
・ZnDTP:第2級アルキルジチオリン酸亜鉛、亜鉛原子(Zn)含有量=8.3質量%、リン原子(P)含有量=7.0質量%
・他の添加剤:摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、及び金属不活性化剤の混合添加剤。
【0100】
調製した潤滑油組成物について、上述の方法に準拠して、40℃動粘度、100℃動粘度、及び粘度指数を測定又は算出すると共に、以下の特性の測定を行った。これらの結果を表1及び2に示す。
【0101】
(1)低出力法による超音波照射後の動粘度の測定
JPI-5S-29の低出力法に準拠して30分間の超音波照射をした後の潤滑油組成物の40℃動粘度及び100℃動粘度を測定した。超音波照射後の潤滑油組成物の100℃動粘度が9.3mm/s以上であれば、せん断安定性に優れた潤滑油組成物であるといえる。
【0102】
(2)ミスト化率の測定
ガラス管に調製した潤滑油組成物を100g入れ、外径7.0mmの吹き込み管をガラス管内の潤滑油組成物に浸かるように差し込んだ。そして、油温140℃に加熱した上で、吹き込み管を介してNOガス及び空気をそれぞれ流量6L/hで24時間吹き込みを行った。そして、NOガス吹き込み後の潤滑油組成物に対して、JPI-5S-29の低出力法に準拠し、超音波を30分間照射して、劣化油を調整した。
このようにして調整した劣化油を40g(=劣化油質量)用いて、当該劣化油を圧縮空気と混合してミスト化して、ミスト化した油量(=ミスト化質量)を測定して、下記計算式からミスト化率を算出した。このミスト化率の値が低いほど、ミスト発生の抑制効果が高い潤滑油組成物であるといえる。
・〔ミスト化率〕(%)=〔ミスト化質量〕/〔劣化油質量〕×100
なお、劣化油をミスト化するために用いた試験装置及び試験条件は以下のとおりである。
・試験装置:TACOミスト測定装置(型式番号:C3-0807、アズビルTACO株式会社製)
・空気圧力:0.2MPa
・試料油量(劣化油質量):40g
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
表1より、実施例1~4で調製した潤滑油組成物は、低粘度でありつつも、ミスト化の抑制効果及びせん断安定性に優れた結果となった。そのため、実施例1~4で調製した潤滑油組成物は、内燃機関(特に、ディーゼルエンジン)の潤滑に好適に適用することができる。
一方で、表2より、比較例1で調製した潤滑油組成物は、ミスト化の抑制効果は良好であるものの、せん断安定性が劣る結果となった。また、比較例2~5で調製した潤滑油組成物は、いずれもミスト化の抑制効果が不十分であり、さらに比較例2~4の潤滑油組成物は、せん断安定性も劣る結果であった。