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特許7596393感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法
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  • 特許-感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241202BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20241202BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/004 502
G03F7/029
G03F7/031
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022550420
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2021030437
(87)【国際公開番号】W WO2022059417
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-10-27
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2020156353
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 晃男
(72)【発明者】
【氏名】有冨 隆志
(72)【発明者】
【氏名】望月 英宏
【合議体】
【審判長】橿本 英吾
【審判官】宮澤 浩
【審判官】里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105713(JP,A)
【文献】特表2018-517169(JP,A)
【文献】特開2001-356493(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066351(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/066000(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/105523(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/187364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G03F7/004-7/06, 7/075-7/115, 7/16-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、
アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、重合禁止剤、及び、光重合開始剤を含む感光性樹脂層とを有し、
前記感光性樹脂層における前記光重合開始剤の含有量をRc、前記重合禁止剤の含有量をRdとした場合、質量比Rd/Rcの値が、0.02以上0.1以下であり、
前記感光性樹脂層を、mJ/cmを単位とする露光量Epで10μm/10μmのラインアンドスペースパターンを露光した後、3時間経過した際の二重結合反応領域幅Wと、24時間経過した際の二重結合反応領域幅W24とが、W24/W≦1.05を満たす
感光性転写材料。
及びW24は、露光された感光性転写材料を臭素染色した後、二次イオン質量分析法によって得られる二重結合反応領域幅とし、
前記Epは、Ep=2×Ebを満たし、
前記Ebは、前記感光性樹脂層を基板に貼り付けた後、15段ステップウェッジ越しに照度20mW/cmの高圧水銀灯により露光量180mJ/cmで露光し、現像した後の感光性樹脂層の層厚±1%となる残存層厚を与える段数を示す露光量とする。
【請求項2】
前記感光性樹脂層を前記露光量Epで10μm/10μmのラインアンドスペースパターンで露光した後、3時間経過した際の二重結合反応領域幅Wと、72時間経過した際の二重結合反応領域幅W72とが、W72/W≦1.10を満たす請求項1に記載の感光性転写材料。
72は、露光された感光性転写材料を臭素染色した後、二次イオン質量分析法によって得られる二重結合反応領域幅とする。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和化合物が、ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項4】
前記光重合開始剤が、ビイミダゾール化合物、及び、ベンゾフェノン化合物を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項5】
前記重合禁止剤が、フェノチアジン、フェノキサジン、及び、ヒンダードフェノール構造を有する化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項6】
前記質量比Rd/Rcの値が、0.03以上0.05以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料における、前記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
露光された前記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、をこの順に含む
樹脂パターンの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂パターンの少なくとも一部にラインアンドスペースパターンを含み、前記ラインアンドスペースパターンにおける少なくとも1組のライン及びスペースの幅が、合計で20μm以下である請求項に記載の樹脂パターンの製造方法。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料における、前記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
露光された前記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、
前記樹脂パターンが配置されていない領域における前記基板をエッチング処理する工程と、をこの順に含む
回路配線の製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料における、前記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
露光された前記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、
前記樹脂パターンが配置されていない領域における前記基板をエッチング処理する工程と、をこの順に含む
タッチパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型入力装置などのタッチパネルを備えた表示装置(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置など)では、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線などの導電層パターンがタッチパネル内部に設けられている。
一般的にパターン化した層の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないといったことから、感光性転写材料を用いて任意の基板上に設けた感光性樹脂組成物の層に対して、所望のパターンを有するマスクを介して露光した後に現像する方法が広く使用されている。
【0003】
また、従来の感光性樹脂組成物としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1には、露光面における感光成分として含まれるエチレン性不飽和化合物の反応率が70%になるように露光硬化反応を進めた後、暗所に保存したとき、実質的に版全体の不飽和化合物の反応率は変化しないとともに、露光面と非露光面における局部反応率の差が24時間後においても20%以上保持することを特徴とする感光性樹脂組成物が記載されている。
【0004】
特許文献1:特開2001-356493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感光性転写材料を用いた配線形成プロセスにおいては、導電層を有する基板に貼り合わせた感光性樹脂層を露光する際に、個々の感光性樹脂層において、露光完了から現像を行うまでの経過時間に差異が生じ、場合によってはこれが数時間程度になることがある。また、露光された感光性樹脂層はすぐに現像されずに一定時間引き置かれる場合もあり、この場合は更に露光完了からの経過時間が延びることになる。上記のような露光後の引き置き時間は、特に、ロール・トゥ・ロールプロセスを行う場合、ロールの巻き出し部から巻芯部までの搬送に時間を要するために大きくなる傾向にある。
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、露光後の引き置き時間の経過に伴う樹脂パターンの線幅変化が小さい感光性転写材料を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記感光性転写材料を用いた樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体と、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含む感光性樹脂層とを有し、上記感光性樹脂層を、mJ/cmを単位とする露光量Epで10μm/10μmのラインアンドスペースパターンを露光した後、3時間経過した際の二重結合反応領域幅Wと、24時間経過した際の二重結合反応領域幅W24とが、W24/W≦1.05を満たす感光性転写材料。
及びW24は、露光された感光性転写材料を臭素染色した後、二次イオン質量分析法によって得られる二重結合反応領域幅とし、
上記Epは、Ep=2×Ebを満たし、
上記Ebは、上記感光性樹脂層を基板に貼り付けた後、15段ステップウェッジ越しに照度20mW/cmの高圧水銀灯により露光量180mJ/cmで露光し、現像した後の感光性樹脂層の層厚±1%となる残存層厚を与える段数を示す露光量とする。
<2> 上記感光性樹脂層を上記露光量Epで10μm/10μmのラインアンドスペースパターンで露光した後、3時間経過した際の二重結合反応領域幅Wと、72時間経過した際の二重結合反応領域幅W72とが、W72/W≦1.10を満たす<1>に記載の感光性転写材料。
72は、露光された感光性転写材料を臭素染色した後、二次イオン質量分析法によって得られる二重結合反応領域幅とする。
<3> 上記エチレン性不飽和化合物が、ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物を含む<1>又は<2>に記載の感光性転写材料。
<4> 上記光重合開始剤が、ビイミダゾール化合物、及び、ベンゾフェノン化合物を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<5> 上記感光性樹脂層が、重合禁止剤を更に含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<6> 上記重合禁止剤が、フェノチアジン、フェノキサジン、及び、ヒンダードフェノール構造を有する化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む<5>に記載の感光性転写材料。
<7> 上記感光性樹脂層における上記光重合開始剤の含有量をRc、上記重合禁止剤の含有量をRdとした場合、これらの質量比Rd/Rcの値が、0.02以上0.1以下である<5>又は<6>に記載の感光性転写材料。
<8> 上記質量比Rd/Rcの値が、0.03以上0.05以下である<7>に記載の感光性転写材料。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料における、上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、をこの順に含む樹脂パターンの製造方法。
<10> 上記樹脂パターンの少なくとも一部にラインアンドスペースパターンを含み、上記ラインアンドスペースパターンにおける少なくとも1組のライン及びスペースの幅が、合計で20μm以下である<9>に記載の樹脂パターンの製造方法。
<11> <1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料における、上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程と、をこの順に含む回路配線の製造方法。
<12> <1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料における、上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程と、をこの順に含むタッチパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、露光後の引き置き時間の経過に伴う樹脂パターンの線幅変化が小さい感光性転写材料を提供することができる。
また、本発明の他の実施形態によれば、上記感光性転写材料を用いた樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の感光性転写材料の構成の一例を示す概略図である。
図2】第2実施形態の感光性転写材料の構成の一例を示す概略図である。
図3】パターンAを示す概略平面図である。
図4】パターンBを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の内容について説明する。なお、添付の図面を参照しながら説明するが、符号は省略する場合がある。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイルの双方、又は、いずれかを表す。
更に、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線(活性エネルギー線)が挙げられる。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
【0011】
(感光性転写材料)
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含む感光性樹脂層とを有し、上記感光性樹脂層を、mJ/cmを単位とする露光量Epで10μm/10μmのラインアンドスペースパターンを露光した後、3時間経過した際の二重結合反応領域幅Wと、24時間経過した際の二重結合反応領域幅W24とが、W24/W≦1.05を満たす。
及びW24は、露光された感光性転写材料を臭素染色した後、二次イオン質量分析法によって得られる二重結合反応領域幅とし、
上記Epは、Ep=2×Ebを満たし、
上記Ebは、上記感光性樹脂層を基板に貼り付けた後、15段ステップウェッジ越しに照度20mW/cmの高圧水銀灯により露光量180mJ/cmで露光し、現像した後の感光性樹脂層の層厚±1%となる残存層厚を与える段数を示す露光量とする。
【0012】
本発明者らが詳細に検討した結果、特許文献1に記載の感光性樹脂組成物から形成される、従来のネガ型の感光性樹脂層を有する感光性転写材料では、露光後の引き置き時間の経過に伴う樹脂パターンの線幅変化が大きいという問題があることを本発明者らは見出した。
本開示に係る感光性転写材料では、感光性樹脂層を、mJ/cmを単位とする露光量Epで10μm/10μmのラインアンドスペースパターンを露光した後、3時間経過した際の二重結合反応領域幅Wと、24時間経過した際の二重結合反応領域幅W24とが、W24/W≦1.05を満たすことにより、上記のような二重結合反応領域幅の時間変化が小さい感光性樹脂層は、露光領域端部のハーフ露光部において反応が十分抑制されており、露光領域の重合反応度と未露光領域の重合反応度との差が大きくなっている。そのため、露光後の引き置き時間等の多少の現像条件の変動があったとしても、重合反応が十分に進行している領域の現像時における溶解を抑制し、露光後の引き置き時間の経過に伴う樹脂パターンの線幅変化(「引き置き時間線幅変化」ともいう。)が小さいと推定している。
【0013】
本開示に係る感光性転写材料は、上記感光性樹脂層を、mJ/cmを単位とする露光量Epで10μm/10μmのラインアンドスペースパターンを露光した後、3時間経過した際の二重結合反応領域幅Wと、24時間経過した際の二重結合反応領域幅W24とが、W24/W≦1.05を満たす。
及びW24は、露光された感光性転写材料を臭素染色した後、二次イオン質量分析法によって得られる二重結合反応領域幅とし、
上記Epは、Ep=2×Ebを満たし、
上記Ebは、上記感光性樹脂層を基板に貼り付けた後、15段ステップウェッジ越しに照度20mW/cmの高圧水銀灯により露光量180mJ/cmで露光し、現像した後の感光性樹脂層の層厚±1%となる残存層厚を与える段数を示す露光量とする。
【0014】
本開示に係る感光性転写材料は、引き置き時間線幅変化、現像温度の変化に伴う樹脂パターンの線幅変化(「現像温度線幅変化」ともいう。)、及び、感度の観点から、W24/W≦1.04を満たすことが好ましく、W24/W≦1.03を満たすことがより好ましく、1.00≦W24/W≦1.03を満たすことが特に好ましい。
【0015】
また、本開示に係る感光性転写材料は、引き置き時間線幅変化、及び、現像温度線幅変化の観点から、上記感光性樹脂層を上記露光量Epで10μm/10μmのラインアンドスペースパターンで露光した後、3時間経過した際の二重結合反応領域幅Wと、72時間経過した際の二重結合反応領域幅W72とが、W72/W≦1.15を満たすことが好ましく、W72/W≦1.10を満たすことがより好ましく、1.00≦W72/W≦1.10を満たすことが特に好ましい。
なお、W72は、露光された感光性転写材料を臭素染色した後、二次イオン質量分析法によって得られる二重結合反応領域幅とする。
【0016】
本開示におけるEbの測定方法、及び、Epの算出方法を以下に示す。
感光性転写材料を基板(100μmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、200nm厚の銅層をスパッタで作製したもの)にシートラミネーターでラミネートする。ラミネート条件は、ロール温度100℃、ラミネート速度2m/min、ラミネート圧力0.5MPaとする。
ラミネートした感光性転写材料の仮支持体上に15段ステップウェッジ(富士フイルム(株)製)を配置し、20mW/cmの高圧水銀灯で180mJ/cmの露光を行う。露光後、支持体を剥離し、25℃の0.9質量%炭酸ナトリウム水溶液にて30秒現像し、各ステップごとの残存膜厚からEb(上記感光性樹脂層を基板に貼り付けた後、15段ステップウェッジ越しに照度20mW/cmの高圧水銀灯により露光量180mJ/cmで露光し、現像した後の感光性樹脂層の層厚±1%となる残存層厚を与える段数を示す露光量)を求める。
また、求めたEb(mJ/cm)より、下記式によりEp(mJ/cm)を算出する。
Ep=2×Eb
【0017】
本開示における露光された感光性転写材料を臭素染色した後、二次イオン質量分析法によって得られる二重結合反応領域幅W、W24及びW72の測定方法を以下に示す。
感光性転写材料を基板(100μmPETフィルム上に、200nm厚の銅層をスパッタで作製したもの)にシートラミネーターでラミネートする。ラミネート条件は、ロール温度100℃、ラミネート速度2m/min、ラミネート圧力0.5MPaとする。
上記基板上にラミネートした感光性転写材料を、ラインアンドスペース=10μm/10μmのフォトマスクを仮支持体上にコンタクトさせ、Ep=2×Eb(mJ/cm)で露光する。露光後、3時間、24時間又は72時間経過した後、仮支持体、熱可塑性樹脂層、及び、中間層をテープで剥離し、臭素水(0.2%)を50mL容器に5mL分取し、分取液に接触しないように容器内に試料を固定し、室温(25℃)で5min静置する。その後、高真空下で半日保管して残留臭素を脱気する。これにより、炭素-炭素二重結合部を臭素修飾した試料を作製する。
この試料を二次イオン質量分析法(ION-TOF社SIMS 5、一次イオン源:Bi3+(30kV)、測定範囲:50mm、面分解能:512×512pixel、積算:32回、測定モード:高空間分解能モード(Fast Imaging)、帯電補正:電子銃使用)を用いて、CHBr領域部の広さを評価する。CHBr強度が小さい部分の幅を3点測定し、3点の測定値の平均値をとり、重合が進行した領域幅W、W24又はW72とする。
【0018】
本開示に係る感光性転写材料における上記Ebの値は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、20mJ/cm~200mJ/cmであることが好ましく、30mJ/cm~150mJ/cmであることがより好ましく、35mJ/cm~100mJ/cmであることが好ましく、35mJ/cm~70mJ/cmであることが特に好ましい。
【0019】
また、本開示に係る感光性転写材料におけるWの値は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、9.0μm~10.5μmであることが好ましく、9.2μm~10.3μmであることがより好ましく、9.5μm~10.2μmであることが特に好ましい。
本開示に係る感光性転写材料におけるW24の値は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、9.0μm~11.0μmであることが好ましく、9.3μm~10.7μmであることがより好ましく、9.5μm~10.5μmであることが特に好ましい。
本開示に係る感光性転写材料におけるW72の値は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、9.0μm~12.0μmであることが好ましく、9.5μm~11.5μmであることがより好ましく、9.7μm~11.0μmであることが特に好ましい。
【0020】
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含む感光性樹脂層とを有する。
感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層とが他の層を介さずに直接積層されていてもよいし、他の層を介して積層されていてもよい。また、感光性樹脂層の仮支持体に対向する面とは反対側の面に他の層が積層していてもよい。
仮支持体及び感光性樹脂層以外の他の層としては、例えば、熱可塑性樹脂層、中間層及び保護フィルムが挙げられる。
【0021】
本開示に係る感光性転写材料の態様の一例を以下に示すが、これに制限されない。
(1)「仮支持体/感光性樹脂層/屈折率調整層/保護フィルム」
(2)「仮支持体/感光性樹脂層/保護フィルム」
(3)「仮支持体/中間層/感光性樹脂層/保護フィルム」
(4)「仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層/保護フィルム」
なお、上記各構成において、感光性樹脂層は、ネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。また、感光性樹脂層が着色樹脂層であることも好ましい。本開示に係る感光性転写材料は、後述するように配線保護膜用感光性転写材料として使用されてもよいし、エッチングレジスト用感光性転写材料として使用されてもよい。
配線保護膜用感光性転写材料とする場合、感光性転写材料の構成としては、例えば、上述した(1)又は(2)の構成であることが好ましい。
また、エッチングレジスト用感光性転写材料とする場合、感光性転写材料の構成としては、例えば、上述した(2)~(4)の構成であることが好ましい。
【0022】
感光性転写材料において、感光性樹脂層の仮支持体側とは反対側にその他の層を更に有する構成の場合、感光性樹脂層の仮支持体側とは反対側に配置されるその他の層の合計厚みは、感光性樹脂層の層厚に対して、0.1%~30%であることが好ましく、0.1%~20%であることがより好ましい。
【0023】
以下において、具体的な実施形態の一例を挙げて、本開示に係る感光性転写材料について説明する。なお、以下の第1実施形態の感光性転写材料は、エッチングレジスト用感光性転写材料に好適に使用できる構成であり、以下の第2実施形態の感光性転写材料は、配線保護膜用感光性転写材料に好適に使用できる構成である。
【0024】
〔〔第1実施形態の感光性転写材料〕〕
以下において、第1実施形態の感光性転写材料について、一例を挙げて説明する。
図1に示す感光性転写材料20は、仮支持体11と、熱可塑性樹脂層13、中間層15、及び、感光性樹脂層17を含む転写層12と、保護フィルム19とを、この順に有する。
なお、図1で示す感光性転写材料320は、保護フィルム19を配置した形態であるが、保護フィルム19は、配置されなくてもよい。
また、図1で示す感光性転写材料20は熱可塑性樹脂層13及び中間層15を配置した形態であるが、熱可塑性樹脂層13及び中間層15は、配置されなくてもよい。
以下において、第1実施形態の感光性転写材料を構成する各要素について説明する。
【0025】
〔仮支持体〕
本開示に用いられる感光性転写材料は、仮支持体を有する。
仮支持体は、感光性樹脂層又は感光性樹脂層を含む積層体を支持し、且つ、剥離可能な支持体である。
【0026】
仮支持体は、感光性樹脂層をパターン露光する際に、仮支持体を介した感光性樹脂層の露光が可能になる観点から、光透過性を有することが好ましい。なお、本明細書において「光透過性を有する」とは、パターン露光に使用する波長の光の透過率が50%以上であることを意味する。
仮支持体は、感光性樹脂層の露光感度向上の観点から、パターン露光に使用する波長(より好ましくは波長365nm)の光の透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
なお、感光性転写材料が備える層の透過率とは、層の主面に垂直な方向(厚さ方向)に光を入射させたときの、入射光の強度に対する層を通過して出射した出射光の強度の比率であり、大塚電子(株)製MCPD Seriesを用いて測定される。
【0027】
仮支持体を構成する材料としては、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム及び紙が挙げられ、強度、可撓性及び光透過性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)フィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。中でも、PETフィルムが好ましく、2軸延伸PETフィルムがより好ましい。
【0028】
仮支持体の厚さ(層厚)は、特に制限されず、支持体としての強度、回路配線形成用基板との貼り合わせに求められる可撓性、及び、最初の露光工程で要求される光透過性の観点から、材質に応じて選択すればよい。
仮支持体の厚さは、5μm~100μmの範囲が好ましく、取扱い易さ及び汎用性の点から、10μm~50μmの範囲がより好ましく、10μm~20μmの範囲が更に好ましく、10μm~16μmの範囲が特に好ましい。
また、仮支持体の厚さは、仮支持体を介して露光する場合における解像度及び直線性の観点から、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましい。
【0029】
また、仮支持体として使用するフィルムには、シワ等の変形、傷、欠陥などがないことが好ましい。
仮支持体を介するパターン露光時のパターン形成性、及び、仮支持体の透明性の観点から、仮支持体に含まれる微粒子、異物、欠陥、析出物などの数は少ない方が好ましい。直径1μm以上の微粒子や異物や欠陥の数は、50個/10mm以下であることが好ましく、10個/10mm以下であることがより好ましく、3個/10mm以下であることが更に好ましく、0個/10mmであることが特に好ましい。
【0030】
仮支持体の好ましい態様としては、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018、特開2016-27363号公報の段落0019~0026、国際公開第2012/081680号の段落0041~0057、国際公開第2018/179370号の段落0029~0040、特開2019-101405号公報の段落0012~段落0032に記載があり、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0031】
〔感光性樹脂層〕
本開示に係る感光性転写材料は、感光性樹脂層を有する。
感光性樹脂層は、露光により露光部の現像液に対する溶解性が低下し、非露光部が現像により除去されるネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。
【0032】
感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含有し、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、ビイミダゾール化合物、及び、ベンゾフェノン化合物を含有することが好ましく、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、及び、ベンゾフェノン化合物を含有することがより好ましい。
また、感光性樹脂層は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、重合禁止剤を更に含むことが好ましい。
感光性樹脂層は、上記感光性樹脂層の全質量に対し、アルカリ可溶性樹脂:10質量%~90質量%;エチレン性不飽和化合物:5質量%~70質量%;及び光重合開始剤:0.01質量%~20質量%を含むことが好ましい。
以下、各成分を順に説明する。
【0033】
<アルカリ可溶性樹脂>
感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含む。
なお、本明細書において、「アルカリ可溶性」とは、22℃において炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
アルカリ可溶性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、エッチングレジストに用いられる公知のアルカリ可溶性樹脂が好適に挙げられる。
また、アルカリ可溶性樹脂は、バインダーポリマーであることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、酸基を有するアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
中でも、アルカリ可溶性樹脂としては、後述する重合体Aが好ましい。
【0034】
-重合体A-
アルカリ可溶性樹脂としては、重合体Aを含むことが好ましい。
重合体Aの酸価は、現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制することにより、解像性がより優れる点から、220mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g未満がより好ましく、190mgKOH/g未満が更に好ましい。
重合体Aの酸価の下限は特に制限されないが、現像性がより優れる点から、60mgKOH/g以上が好ましく、120mgKOH/g以上がより好ましく、150mgKOH/g以上が更に好ましく、170mgKOH/g以上が特に好ましい。
【0035】
なお、酸価は、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg]であり、
本明細書においては、単位をmgKOH/gと記載する。酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。
重合体Aの酸価は、重合体Aを構成する構成単位の種類及び酸基を含有する構成単位の含有量により調整すればよい。
【0036】
重合体Aの重量平均分子量は、5,000~500,000であることが好ましい。重量平均分子量を500,000以下にすることは、解像性及び現像性を向上させる観点から好ましい。重量平均分子量を100,000以下にすることがより好ましく、60,000以下にすることが更に好ましく、50,000以下にすることが特に好ましい。一方で、重量平均分子量を5,000以上にすることは、現像凝集物の性状、並びに感光性樹脂積層体とした場合のエッジフューズ性及びカットチップ性等の未露光膜の性状を制御する観点から好ましい。重量平均分子量を10,000以上にすることがより好ましく、20,000以上にすることが更に好ましく、30,000以上にすることが特に好ましい。エッジフューズ性とは、感光性転写材料をロール状に巻き取った場合に、ロールの端面からの、感光性樹脂層のはみ出し易さの程度をいう。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合に、チップの飛び易さの程度をいう。このチップが感光性樹脂積層体の上面等に付着すると、後の露光工程等でマスクに転写して、不良品の原因となる。重合体Aの分散度は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~4.0であることが更に好ましく、1.0~3.0であることが特に好ましい。本開示で、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される値である。また分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)である。
【0037】
感光性樹脂層は、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制する観点から、重合体Aとして、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含むものであることが好ましい。なお、このような芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基や、置換又は非置換のアラルキル基が挙げられる。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体成分の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、45質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。上限としては特に限定されないが、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。なお、重合体Aを複数種類含有する場合における、芳香族炭化水素基を有する単量体成分の含有割合は、重量平均値として求めた。
【0038】
上記芳香族炭化水素基を有する単量体としては、例えば、アラルキル基を有するモノマー、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、スチレントリマー等)が挙げられる。中でも、アラルキル基を有するモノマー、又はスチレンが好ましい。一態様において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体成分がスチレンである場合、スチレン単量体成分の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、20質量%~50質量%であることが好ましく、25質量%~45質量%であることがより好ましく、30質量%~40質量%であることが更に好ましく、30質量%~35質量%であることが特に好ましい。
【0039】
アラルキル基としては、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ベンジル基を除く)や、置換又は非置換のベンジル基等が挙げられ、置換又は非置換のベンジル基が好ましい。
【0040】
フェニルアルキル基を有する単量体としては、フェニルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
ベンジル基を有する単量体としては、ベンジル基を有する(メタ)アクリレート、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等;ベンジル基を有するビニルモノマー、例えば、ビニルベンジルクロライド、ビニルベンジルアルコール等が挙げられる。中でもベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。一態様において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体成分がベンジル(メタ)アクリレートである場合、ベンジル(メタ)アクリレート単量体成分の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、50質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることが更に好ましく、75質量%~90質量%であることが特に好ましい。
【0042】
芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含有する重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体と、後述する第一の単量体の少なくとも1種及び/又は後述する第二の単量体の少なくとも1種とを重合することにより得られることが好ましい。
【0043】
芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含有しない重合体Aは、後述する第一の単量体の少なくとも1種を重合することにより得られることが好ましく、第一の単量体の少なくとも1種と後述する第二の単量体の少なくとも1種とを共重合することにより得られることがより好ましい。
【0044】
第一の単量体は、分子中にカルボキシ基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
重合体Aにおける第一の単量体の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、15質量%~30質量%であることが更に好ましい。
【0045】
第一の単量体の共重合割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、10質量%~50質量%であることが好ましい。上記共重合割合を10質量%以上にすることは、良好な現像性を発現させる観点、エッジフューズ性を制御するなどの観点から好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。上記共重合割合を50質量%以下にすることは、レジストパターンの高解像性及びスソ形状の観点から、更にはレジストパターンの耐薬品性の観点から好ましく、これらの観点においては、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、27質量%以下が特に好ましい。
【0046】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;並びに(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
重合体Aにおける第二の単量体の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、5質量%~60質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~45質量%であることが更に好ましい。
【0047】
アラルキル基を有する単量体、及び/又はスチレンを単量体として含有することが、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制する観点から好ましい。例えば、メタクリル酸とベンジルメタクリレートとスチレンを含む共重合体、メタクリル酸とメチルメタクリレートとベンジルメタクリレートとスチレンを含む共重合体等が好ましい。
一態様において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を25質量%~40質量%、第一の単量体成分を20質量%~35質量%、第二の単量体成分を30質量%~45質量%含む重合体であることが好ましい。また、別の態様において、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を70質量%~90質量%、第一の単量体成分を10質量%~25質量%含む重合体であることが好ましい。
【0048】
重合体Aは、1種単独で使用することができ、或いは2種以上を混合して使用してもよい。2種以上を混合して使用する場合には、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含む重合体Aを2種類混合使用すること、又は芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含む重合体Aと、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含まない重合体Aと、を混合使用することが好ましい。後者の場合、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含む重合体Aの使用割合は、重合体Aの全部に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0049】
重合体Aは、側鎖に分岐構造又は脂環構造を有してもよい。また、重合体Aは、側鎖に直鎖構造を有してもよい。例えば、側鎖に分岐構造を有する基を含む単量体又は側鎖に脂環構造を有する基を含む単量体を使用することによって、重合体(A)の側鎖に分岐構造又は脂環構造を導入することができる。脂環構造を有する基は単環又は多環であってもよい。
【0050】
側鎖に分岐構造を有する基を含む単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸tert-アミル、(メタ)アクリル酸sec-アミル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸3-オクチル及び(メタ)アクリル酸tert-オクチルが挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチルが好ましく、メタクリル酸イソプロピル又はメタクリル酸tert-ブチルであることがより好ましい。
【0051】
側鎖に脂環構造を有する基を含む単量体の具体例としては、単環の脂肪族炭化水素基を有するモノマー、多環の脂肪族炭化水素基を有するモノマーが挙げられる。また、炭素原子数が5~20の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。側鎖に脂環構造を有する基を含む単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1]ヘプチル-2)、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-5-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5,8-トリエチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-8-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-5-イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-1-イルメチル、(メタ)アクリル酸-1-メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸-3,7,7-トリメチル-4-ヒドロキシ-ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸-2,2,5-トリメチルシクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸1-メンチル及び(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル及び(メタ)アクリル酸トリシクロデカンがより好ましい。
【0052】
重合体Aの合成は、上記で説明された単数又は複数の単量体を、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱撹拌することにより行われることが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0053】
重合体Aのガラス転移温度Tgは、30℃以上135℃以下であることが好ましい。感光性樹脂層において、135℃以下のTgを有する重合体Aを使用することによって、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制することができる。この観点から、重合体AのTgは、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが更に好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。また、30℃以上のTgを有する重合体Aを使用することは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。この観点から、重合体AのTgは、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、60℃以上であることが特に好ましく、70℃以上であることが最も好ましい。
【0054】
感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
アルカリ可溶性樹脂以外の樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体(但し、スチレン含有率が40質量%以下であるもの)、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及び、ポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0055】
アルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用することができ、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
アルカリ可溶性樹脂の、感光性樹脂層の全質量に対する割合は、好ましくは10質量%~90質量%の範囲であり、より好ましくは30質量%~70質量%であり、更に好ましくは40質量%~60質量%である。感光性樹脂層に対するアルカリ可溶性樹脂の割合を90質量%以下にすることは、現像時間を制御する観点から好ましい。一方で、感光性樹脂層に対するアルカリ可溶性樹脂の割合を10質量%以上にすることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。
【0056】
(エチレン性不飽和化合物)
感光性樹脂層は、エチレン性不飽和化合物を含有する。
本明細書において「エチレン性不飽和化合物」とは、後述する光重合開始剤の作用を受けて重合する化合物であって、上述したアルカリ可溶性樹脂とは異なる化合物を意味する。
【0057】
エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和化合物が好ましい。
エチレン性不飽和化合物は、ネガ型感光性樹脂層の感光性(すなわち、光硬化性)及び硬化膜の強度に寄与する成分である。
また、エチレン性不飽和化合物は、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
感光性樹脂層は、エチレン性不飽和化合物として、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
ここで、2官能以上のエチレン性不飽和化合物とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
また、エチレン性不飽和化合物は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物としては、後述するビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物B1が好ましく例示できる。
【0058】
感光性樹脂層は、重合性基を有するエチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。
エチレン性不飽和化合物が有する重合性基としては、重合反応に関与する基であれば特に制限されず、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、マレイミド基等のエチレン性不飽和基を有する基;並びに、エポキシ基及びオキセタン基等のカチオン性重合性基を有する基が挙げられる。
重合性基としては、エチレン性不飽和基を有する基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。
【0059】
エチレン性不飽和化合物としては、感光性樹脂層の感光性がより優れる点で、一分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(多官能エチレン性不飽和化合物)を含むことが好ましい。
また、解像性及び剥離性により優れる点で、エチレン性不飽和化合物が一分子中に有するエチレン性不飽和基の数は、6つ以下が好ましく、3つ以下がより好ましく、2つ以下が更に好ましい。
【0060】
感光性樹脂層は、感光性樹脂層の感光性と解像性及び剥離性とのバランスがより優れる点で、一分子中に2つ又は3つのエチレン性不飽和基を有する2官能又は3官能エチレン性不飽和化合物を含有することが好ましく、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する2官能エチレン性不飽和化合物を含有することがより好ましい。
感光性樹脂層における、エチレン性不飽和化合物の含有量に対する2官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、剥離性に優れる点から、60質量%以上が好ましく、70質量%超がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されず、100質量%であってもよい。即ち、感光性樹脂層に含まれるエチレン性不飽和化合物が全て2官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
また、エチレン性不飽和化合物としては、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0061】
-エチレン性不飽和化合物B1-
感光性樹脂層は、芳香環及び2つのエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物B1を含有することが好ましい。エチレン性不飽和化合物B1は、上述したエチレン性不飽和化合物のうち、一分子中に1つ以上の芳香環を有する2官能エチレン性不飽和化合物である。
【0062】
感光性樹脂層中、エチレン性不飽和化合物の含有量に対するエチレン性不飽和化合物B1の含有量の質量比は、解像性がより優れる点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、剥離性の点から、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0063】
エチレン性不飽和化合物B1が有する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の芳香族炭化水素環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環及びピリジン環等の芳香族複素環、並びに、それらの縮合環が挙げられ、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。なお、上記芳香環は、置換基を有してもよい。
エチレン性不飽和化合物B1は、芳香環を1つのみ有してもよく、2つ以上の芳香環を有してもよい。
【0064】
エチレン性不飽和化合物B1は、現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制することにより、解像性が向上する点から、ビスフェノール構造を有することが好ましい。
ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA構造、ビスフェノールF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF構造、及び、ビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB構造が挙げられ、ビスフェノールA構造が好ましい。
【0065】
ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物B1としては、例えば、ビスフェノール構造と、そのビスフェノール構造の両端に結合した2つの重合性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)とを有する化合物が挙げられる。
ビスフェノール構造の両端と2つの重合性基とは、直接結合してもよく、1つ以上のアルキレンオキシ基を介して結合してもよい。ビスフェノール構造の両端に付加するアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。ビスフェノール構造に付加するアルキレンオキシ基の付加数は特に制限されないが、1分子あたり4~16個が好ましく、6~14個がより好ましい。
ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物B1については、特開2016-224162号公報の段落0072~0080に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0066】
エチレン性不飽和化合物B1としては、ビスフェノールA構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物が好ましく、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンがより好ましい。
2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(FA-324M、日立化成(株)製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-500、新中村化学工業(株)製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(FA-3200MY、日立化成(株)製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-1300、新中村化学工業(株)製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業(株)製)、及び、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-10、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0067】
エチレン性不飽和化合物B1としては、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、下記式(Bis)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0068】
【化1】
【0069】
式(Bis)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、AはCであり、BはCであり、n及びnはそれぞれ独立に、1~39の整数であり、かつn+nは2~40の整数であり、n及びnはそれぞれ独立に、0~29の整数であり、かつn+nは0~30の整数であり、-(A-O)-及び-(B-O)-の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。そして、ブロックの場合、-(A-O)-と-(B-O)-とのいずれがビスフェノール構造側でもよい。
一態様において、n+n+n+nは、2~20の整数が好ましく、2~16の整数がより好ましく、4~12の整数が更に好ましい。また、n+nは、0~10の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましく、0~2の整数が更に好ましく、0が特に好ましい。
【0070】
エチレン性不飽和化合物B1は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
感光性樹脂層における、エチレン性不飽和化合物B1の含有量は、解像性がより優れる点から、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、転写性及びエッジフュージョン(感光性転写材料の端部から感光性樹脂層中の成分が滲み出す現象)の点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0071】
感光性樹脂層は、上述したエチレン性不飽和化合物B1以外のエチレン性不飽和化合物を含有してもよい。
エチレン性不飽和化合物B1以外のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。例えば、一分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する化合物(単官能エチレン性不飽和化合物)、芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物、及び、3官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0072】
単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及び、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0073】
芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、及び、トリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業(株)製)、エチレングリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及び、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。の市販品としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、及び、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0074】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、並びに、これらのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。一態様において、感光性樹脂層は、上述したエチレン性不飽和化合物B1及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、上述したエチレン性不飽和化合物B1及び2種以上の3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。この場合、エチレン性不飽和化合物B1と3官能以上のエチレン性不飽和化合物の質量比は、(エチレン性不飽和化合物B1の合計質量):(3官能以上のエチレン性不飽和化合物の合計質量)=1:1~5:1が好ましく、1.2:1~4:1がより好ましく、1.5:1~3:1が更に好ましい。
また、一態様において、感光性樹脂層は、上述したエチレン性不飽和化合物B1及び2種以上の3官能のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
【0075】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E及びA-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックスM-520(東亞合成(株)製)、並びに、アロニックスM-510(東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0076】
また、エチレン性不飽和化合物B1以外のエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有するエチレン性不飽和化合物を用いてもよい。
【0077】
感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量Mmとアルカリ可溶性樹脂の含有量Mbとの比Mm/Mbの値は、解像性及び直線性の観点から、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
また、感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、及び、解像性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましい。
更に、感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、解像性及び直線性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含み、かつ感光性樹脂層に含まれる上記(メタ)アクリル化合物の全質量に対するアクリル化合物の含有量が、60質量%以下であることがより好ましい。
【0078】
エチレン性不飽和化合物B1を含むエチレン性不飽和化合物の分子量(分布を有する場合は、重量平均分子量(Mw))としては、200~3,000が好ましく、280~2,200がより好ましく、300~2,200が更に好ましい。
【0079】
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、10質量%~70質量%が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましく、20質量%~50質量%が更に好ましい。
【0080】
<光重合開始剤>
感光性樹脂層は、光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤は、紫外線、可視光線及びX線等の活性光線を受けて、エチレン性不飽和化合物の重合を開始する化合物である。光重合開始剤としては、特に制限されず、公知の光重合開始剤を用いることができる。また、本開示における光重合開始剤には、増感剤も含まれるものとする。
光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が挙げられ、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0081】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤、N-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤、及び、ビイミダゾール化合物が挙げられる。
【0082】
中でも、光重合開始剤は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、ビイミダゾール化合物を含むことが好ましく、ビイミダゾール化合物、及び、ベンゾフェノン化合物を含むことがより好ましい。
また、ビイミダゾール化合物としては、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が好ましく挙げられる。
ビイミダゾール化合物としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
【0083】
感光性樹脂層は、光重合開始剤として、ビイミダゾール化合物を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
上記ビイミダゾール化合物の含有量は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、上記感光性樹脂層の全質量に対し、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%~10質量%であることが更に好ましく、5質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0084】
光重合開始剤は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、ベンゾフェノン化合物を含むことが好ましく、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物を含むことがより好ましい。
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン、2-エトキシカルボニルベンゾフェノン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタロフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0085】
感光性樹脂層は、光重合開始剤として、ベンゾフェノン化合物を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
上記ベンゾフェノン化合物の含有量は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、上記感光性樹脂層の全質量に対し、0.05質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~2質量%であることがより好ましく、0.2質量%~1.5質量%であることが更に好ましく、0.4質量%~0.8質量%であることが特に好ましい。
また、光重合開始剤として、ビイミダゾール化合物、及び、ベンゾフェノン化合物を含む場合、上記ベンゾフェノン化合物の含有量は、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、上記ビイミダゾール化合物の含有量よりも少ないことが好ましい。
【0086】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~0042、特開2015-14783号公報の段落0064~0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0087】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル(DBE、CAS No.10287-53-3)、ベンゾインメチルエーテル、アニシル(p,p’-ジメトキシベンジル)、TAZ-110(商品名:みどり化学(株)製)、ベンゾフェノン、TAZ-111(商品名:みどり化学(株)製)、IrgacureOXE01、OXE02、OXE03、OXE04(BASF社製)、Omnirad651及び369(商品名:IGM Resins B.V.社製)、及び、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(東京化成工業(株)製)が挙げられる。
【0088】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社製)、IRGACURE OXE-03(BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.製)、2,4,6-トリメチルベンゾリル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾリル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad 819、IGM Resins B.V.製)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体)(商品名:B-CIM、Hampford社製)、及び、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業(株)製)が挙げられる。
【0089】
光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)は、活性光線を受けて酸を発生する化合物である。光カチオン重合開始剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光カチオン重合開始剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
光カチオン重合開始剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めないが、例えば、-10.0以上が好ましい。
【0090】
光カチオン重合開始剤としては、イオン性光カチオン重合開始剤及び非イオン性光カチオン重合開始剤が挙げられる。
イオン性光カチオン重合開始剤として、例えば、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、並びに、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。
イオン性光カチオン重合開始剤としては、特開2014-85643号公報の段落0114~0133に記載のイオン性光カチオン重合開始剤を用いてもよい。
【0091】
非イオン性光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物が挙げられる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物及びイミドスルホネート化合物としては、特開2011-221494号公報の段落0083~0088に記載の化合物を用いてもよい。また、オキシムスルホネート化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0084~0088に記載された化合物を用いてもよい。
【0092】
増感剤は、特に制限されず、公知の増感剤、染料及び顔料を用いることができる。
増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物(例えば、1,2,4-トリアゾール)、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及び、アミノアクリジン化合物が挙げられる。
【0093】
感光性樹脂層は、光重合開始剤を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
感光性樹脂層における光重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、感光性樹脂層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、感光性樹脂層の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0094】
<色素>
感光性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、色素を含有することが好ましく、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(単に「色素N」ともいう。)を含有することがより好ましい。色素Nを含有すると、詳細なメカニズムは不明であるが、隣接する層(例えば仮支持体及び中間層)との密着性が向上し、解像性により優れる。
【0095】
本明細書において、色素が「酸、塩基又はラジカルにより極大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が酸、塩基又はラジカルにより消色する態様、消色状態にある色素が酸、塩基又はラジカルにより発色する態様、及び、発色状態にある色素が他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を意味してもよい。
具体的には、色素Nは、露光により消色状態から変化して発色する化合物であってもよいし、露光により発色状態から変化して消色する化合物であってもよい。この場合、露光により酸、塩基又はラジカルが感光性樹脂層内において発生し作用することにより、発色又は消色の状態が変化する色素でもよく、酸、塩基又はラジカルにより感光性樹脂層内の状態(例えばpH)が変化することで発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。また、露光を介さずに、酸、塩基又はラジカルを刺激として直接受けて発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。
【0096】
中でも、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nは、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素が好ましく、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素がより好ましい。
感光性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nとしてラジカルにより最大吸収波長が変化する色素、及び、光ラジカル重合開始剤の両者を含有することが好ましい。
また、露光部及び非露光部の視認性の観点から、色素Nは、酸、塩基、又はラジカルにより発色する色素であることが好ましい。
【0097】
本開示における色素Nの発色機構の例としては、感光性樹脂層に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)又は光塩基発生剤を添加して、露光後に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤又は光塩基発生剤から発生するラジカル、酸又は塩基によって、ラジカル反応性色素、酸反応性色素又は塩基反応性色素(例えばロイコ色素)が発色する態様が挙げられる。
【0098】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性の観点から、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長が、550nm以上であることが好ましく、550nm~700nmであることがより好ましく、550nm~650nmであることが更に好ましい。
また、色素Nは、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長を1つのみ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。色素Nが発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長を2つ以上有する場合は、2つ以上の極大吸収波長のうち吸光度が最も高い極大吸収波長が450nm以上であればよい。
【0099】
色素Nの極大吸収波長は、大気雰囲気下で、分光光度計:UV3100((株)島津製作所製)を用いて、400nm~780nmの範囲で色素Nを含有する溶液(液温25℃)の透過スペクトルを測定し、光の強度が極小となる波長(極大吸収波長)を検出することにより、得られる。
【0100】
露光により発色又は消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物が挙げられる。
露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素及びアントラキノン系色素が挙げられる。
色素Nとしては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ化合物が好ましい。
【0101】
ロイコ化合物としては、例えば、トリアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(トリアリールメタン系色素)、スピロピラン骨格を有するロイコ化合物(スピロピラン系色素)、フルオラン骨格を有するロイコ化合物(フルオラン系色素)、ジアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(ジアリールメタン系色素)、ローダミンラクタム骨格を有するロイコ化合物(ローダミンラクタム系色素)、インドリルフタリド骨格を有するロイコ化合物(インドリルフタリド系色素)、及び、ロイコオーラミン骨格を有するロイコ化合物(ロイコオーラミン系色素)が挙げられる。
中でも、トリアリールメタン系色素又はフルオラン系色素が好ましく、トリフェニルメタン骨格を有するロイコ化合物(トリフェニルメタン系色素)又はフルオラン系色素がより好ましい。
【0102】
ロイコ化合物としては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有することが好ましい。これにより、ロイコ化合物が有するラクトン環、スルチン環又はスルトン環を、光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル又は光カチオン重合開始剤から発生する酸と反応させて、ロイコ化合物を閉環状態に変化させて消色させるか、又は、ロイコ化合物を開環状態に変化させて発色させることができる。ロイコ化合物としては、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有し、ラジカル又は酸によりラクトン環、スルチン環又はスルトン環が開環して発色する化合物が好ましく、ラクトン環を有し、ラジカル又は酸によりラクトン環が開環して発色する化合物がより好ましい。
【0103】
色素Nとしては、例えば、以下の染料及びロイコ化合物が挙げられる。
色素Nのうち染料の具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業(株)製)、オイルブルー#603(オリヱント化学工業(株)製)、オイルピンク#312(オリヱント化学工業(株)製)、オイルレッド5B(オリヱント化学工業(株)製)、オイルスカーレット#308(オリヱント化学工業(株)製)、オイルレッドOG(オリヱント化学工業(株)製)、オイルレッドRR(オリヱント化学工業(株)製)、オイルグリーン#502(オリヱント化学工業(株)製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業(株)製)、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン、及び、1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロンが挙げられる。
【0104】
色素Nのうちロイコ化合物の具体例としては、p,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2-(N-フェニル-N-メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチル)アミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メトキシ-7-アミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-ベンジルアミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7,8-ベンゾフロオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-ザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、及び、3’,6’-ビス(ジフェニルアミノ)スピロイソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン-3-オンが挙げられる。
【0105】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより発色する色素であることがより好ましい。
色素Nとしては、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ブリリアントグリーン、又は、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩が好ましい。
【0106】
色素は、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
色素の含有量は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましく、0.1質量%~5質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
また、色素Nの含有量は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましく、0.1質量%~5質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0107】
色素Nの含有量は、感光性樹脂層に含まれる色素Nの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Nの含有量の定量方法を説明する。
メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g又は0.01gを溶かした2種類の溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤Irgacure OXE01(商品名、BASFジャパン株式会社)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。
次に、色素に代えて感光性樹脂層3gをメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた感光性樹脂層を含有する溶液の吸光度から、検量線に基づいて感光性樹脂層に含まれる色素の含有量を算出する。
【0108】
<重合禁止剤>
感光性樹脂層は、保存安定性、引き置き時間線幅変化、及び、現像温度線幅変化の観点から、重合禁止剤を更に含むことが好ましい。
重合禁止剤としては、ラジカル重合禁止剤を含むことが好ましい。
重合禁止剤としては、特に限定されず、公知の重合禁止剤を用いることができる。
重合禁止剤としては、フェノチアジン、フェノキサジン、ヒドロキノン、クロルアニル、フェノールインドフェノールナトリウム、m-アミノフェノール、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等が挙げられる。なお、重合禁止剤は、酸化防止剤として機能することもある。
【0109】
また、重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤が挙げられる。
その他の重合禁止剤としては、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。感光性樹脂層の感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩をラジカル重合禁止剤として使用することが好ましい。
【0110】
中でも、重合禁止剤としては、保存安定性、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、フェノチアジン、フェノキサジン、及び、ヒンダードフェノール構造を有する化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、フェノチアジン、及び、フェノキサジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましく、フェノチアジンを含むことが特に好ましい。
【0111】
重合禁止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
重合禁止剤の含有量は、保存安定性、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、感光性樹脂層の全質量に対し、0.005質量%~2質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましく、0.05質量%~0.5質量%が更に好ましく、0.2質量%~0.4質量%が特に好ましい。
【0112】
また、上記感光性樹脂層における上記光重合開始剤の含有量をRc、上記重合禁止剤の含有量をRdとした場合、これらの質量比Rd/Rcの値が、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、0.01以上0.2以下であることが好ましく、0.02以上0.1以下であることがより好ましく、0.03以上0.05以下であることが特に好ましい。
【0113】
<熱架橋性化合物>
感光性樹脂層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、本明細書においては、後述するエチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、エチレン性不飽和化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
熱架橋性化合物としては、メチロール化合物、及びブロックイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、アルカリ可溶性樹脂及び/又はエチレン性不飽和化合物等が、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、感光性樹脂層を硬化した膜を保護膜として使用する場合の機能が強化される傾向がある。
なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
【0114】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、特に制限されないが、100℃~160℃が好ましく、130℃~150℃がより好ましい。
ブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計を用いて、DSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合における、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」を意味する。
示差走査熱量計としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量計(型式:DSC6200)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量計は、これに限定されない。
【0115】
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、活性メチレン化合物〔マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル等)〕、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシム等の分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)が挙げられる。
これらの中でも、解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、例えば、保存安定性の観点から、オキシム化合物を含むことが好ましい。
【0116】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、且つ、現像残渣を少なくしやすいという観点から好ましい。
【0117】
ブロックイソシアネート化合物は、重合性基を有していてもよい。
重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、ラジカル重合性基が好ましい。
重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基及びスチリル基等のエチレン性不飽和基、並びに、グリシジル基等のエポキシ基を有する基が挙げられる。
中でも、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましく、アクリロキシ基が更に好ましい。
【0118】
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BP等(以上、昭和電工(株)製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、デュラネート(登録商標) WT32-B75P等、旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
また、ブロックイソシアネート化合物として、下記の構造の化合物を用いることもできる。
【0119】
【化2】
【0120】
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
【0121】
<その他の成分>
感光性樹脂層は、上述したアルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、色素、重合禁止剤及び熱架橋性化合物以外の成分を含有してもよい。
【0122】
-界面活性剤-
感光性樹脂層は、厚さ均一性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、及び、両性界面活性剤が挙げられ、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017、及び、特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0123】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(商品名)F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-444、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、EXP.MFS-578、EXP.MFS-578-2、EXP.MFS-579、EXP.MFS-586、EXP.MFS-587、EXP.MFS-628、EXP.MFS-631、EXP.MFS-603、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC(株)製)、フロラード(商品名)FC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロン(商品名)S-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox(商品名)PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント(商品名)710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F(以上、(株)NEOS製)、U-120E(ユニケム(株)製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファック(商品名)DSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファック(商品名)DS-21が挙げられる。
【0124】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。
フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。メガファック(商品名)RS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。
【0125】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニック(商品名)L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(以上、BASF社製)、テトロニック(商品名)304、701、704、901、904、150R1、HYDROPALAT WE 3323(以上、BASF社製)、ソルスパース(商品名)20000(以上、日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(以上、富士フイルム和光純薬(株)製)、パイオニン(商品名)D-1105、D-6112、D-6112-W、D-6315(以上、竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(以上、日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、環境適性向上の観点から、パーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物の代替材料に由来する界面活性剤であることが好ましい。
【0126】
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、及び、側鎖や末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマーが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、EXP.S-309-2、EXP.S-315、EXP.S-503-2、EXP.S-505-2(以上、DIC(株)製)
、DOWSIL(商品名)8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)並びに、X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KP-341、KF-6001、KF-6002、KP-101KP-103、KP-104、KP-105、KP-106、KP-109、KP-109、KP-112、KP-120、KP-121、KP-124、KP-125、KP-301、KP-306、KP-310、KP-322、KP-323、KP-327、KP-341、KP-368、KP-369、KP-611、KP-620、KP-621、KP-626、KP-652(以上、信越化学工業(株)製)、F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK300、BYK306、BYK307、BYK310、BYK320、BYK323、BYK325、BYK330、BYK313、BYK315N、BYK331、BYK333、BYK345、BYK347、BYK348、BYK349、BYK370、BYK377、BYK378、BYK323(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
また、近年、炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物は、環境適性が懸念されるため、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、及び、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の代替材料を使用した界面活性剤を用いることが好ましい。
【0127】
感光性樹脂層は、界面活性剤を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~3質量%がより好ましい。
【0128】
-添加剤-
感光性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、例えば、可塑剤、ヘテロ環状化合物、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、ピリジン類(イソニコチンアミド等)、プリン塩基(アデニン等)、及び、溶剤が挙げられる。感光性樹脂層は、各添加剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0129】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、ビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0130】
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、CBT-1(城北化学工業株式会社、商品名)などの市販品を用いることができる。
【0131】
ベンゾトリアゾ-ル類及びカルボキシベンゾトリアゾ-ル類の合計含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。上記含有量を0.01質量%以上にすることは、感光性樹脂層に保存安定性を付与するという観点から好ましい。一方で、上記含有量を3質量%以下にすることは、感度を維持し、染料の脱色を抑える観点から好ましい。
【0132】
感光性樹脂層は、可塑剤及びヘテロ環状化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
可塑剤及びヘテロ環状化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0097~0103及び0111~0118に記載された化合物が挙げられる。
【0133】
感光性樹脂層は、溶剤を含有してもよい。溶剤を含む感光性樹脂組成物により感光性樹脂層を形成した場合、感光性樹脂層に溶剤が残留することがある。
【0134】
また、感光性樹脂層は、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤等の公知の添加剤を更に含有してもよい。
感光性樹脂層に含有される添加剤については特開2014-85643号公報の段落0165~0184に記載されており、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0135】
<不純物等>
感光性樹脂層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。
不純物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン及びこれらのイオンが挙げられる。中でも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが好ましい。
【0136】
感光性樹脂層における不純物の含有量は、質量基準で、80ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、2ppm以下が更に好ましい。不純物の含有量は、質量基準で、1ppb以上とすることができ、0.1ppm以上としてもよい。
【0137】
不純物を上記範囲にする方法としては、組成物の原料として不純物の含有量が少ないものを選択すること、感光性樹脂層の作製時に不純物の混入を防ぐこと、及び洗浄して除去することが挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
【0138】
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、及びイオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量できる。
【0139】
感光性樹脂層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサン等の化合物の含有量は、少ないことが好ましい。これら化合物の感光性樹脂層の全質量に対する含有量としては、質量基準で、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、4ppm以下が更に好ましい。
下限は、質量基準で、感光性樹脂層の全質量に対して、10ppb以上とすることができ、100ppb以上とすることができる。これら化合物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制できる。また、公知の測定法により定量できる。
【0140】
感光性樹脂層における水の含有量は、信頼性及びラミネート性を向上させる観点から、0.01質量%~1.0質量%が好ましく、0.05質量%~0.5質量%がより好ましい。
【0141】
<残存モノマー>
感光性樹脂層は、上述したアルカリ可溶性樹脂の各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。
残存モノマーの含有量は、パターニング性、及び、信頼性の点から、アルカリ可溶性樹脂全質量に対して、5,000質量ppm以下が好ましく、2,000質量ppm以下がより好ましく、500質量ppm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、1質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の各構成単位の残存モノマーは、パターニング性、及び、信頼性の点から、感光性樹脂層の全質量に対して、3,000質量ppm以下が好ましく、600質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、0.1質量ppm以上が好ましく、1質量ppm以上がより好ましい。
【0142】
高分子反応でアルカリ可溶性樹脂を合成する際のモノマーの残存モノマー量も、上記範囲とすることが好ましい。例えば、カルボン酸側鎖にアクリル酸グリシジルを反応させてアルカリ可溶性樹脂を合成する場合には、アクリル酸グリシジルの含有量を上記範囲にすることが好ましい。
残存モノマーの量は、液体クロマトグラフィー、及び、ガスクロマトグラフィー等の公知の方法で測定できる。
【0143】
<物性等>
感光性樹脂層の層厚は、現像性、及び、解像性の観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることが更に好ましく、1μm以上5μm以下であることが特に好ましい。
感光性転写材料が備える各層の層厚は、感光性転写材料の主面に対し垂直な方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察し、得られた観察画像に基づいて各層の厚さを10点以上計測し、その平均値を算出することにより、測定される。
【0144】
また、密着性により優れる点から、感光性樹脂層の波長365nmの光の透過率は、10%以上が好ましく、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、99.9%以下が好ましい。
【0145】
<形成方法>
感光性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含有する層を形成可能な方法であれば特に制限されない。
感光性樹脂層の形成方法としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤及び溶剤等を含有する感光性樹脂組成物を調製し、仮支持体等の表面に感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥することにより形成する方法が挙げられる。
【0146】
感光性樹脂層の形成に使用される感光性樹脂組成物としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、上記の任意成分及び溶剤を含有する組成物が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の粘度を調節し、感光性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含有することが好ましい。
【0147】
-溶剤-
感光性樹脂組成物に含有される溶剤としては、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤及び上記の任意成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、公知の溶剤を使用できる。
溶剤としては、例えば、アルキレングリコールエーテル溶剤、アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤、アルコール溶剤(メタノール及びエタノール等)、ケトン溶剤(アセトン及びメチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン等)、非プロトン性極性溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド等)、環状エーテル溶剤(テトラヒドロフラン等)、エステル溶剤、アミド溶剤、ラクトン溶剤、並びにこれらの2種以上を含む混合溶剤が挙げられる。
仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層及び感光性樹脂層を備える感光性転写材料を作製する場合、感光性樹脂組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。中でも、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤及び環状エーテル溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種とを含む混合溶剤がより好ましく、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種、ケトン溶剤、並びに環状エーテル溶剤の3種を少なくとも含む混合溶剤が更に好ましい。
【0148】
アルキレングリコールエーテル溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル及びジプロピレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
溶剤としては、国際公開第2018/179640号の段落0092~0094に記載された溶剤、及び、特開2018-177889公報の段落0014に記載された溶剤を用いてもよく、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0149】
感光性樹脂組成物は、溶剤を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
感光性樹脂組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対し、50質量部~1,900質量部が好ましく、100質量部~900質量部がより好ましい。
【0150】
感光性樹脂組成物の調製方法は特に制限されず、例えば、各成分を上記溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた溶液を所定の割合で混合することにより、感光性樹脂組成物を調製する方法が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、感光性樹脂層を形成する前に、孔径0.2μm~30μmのフィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0151】
感光性樹脂組成物の塗布方法は特に制限されず、公知の方法で塗布すればよい。塗布方法としては、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、及び、ダイコート法(すなわち、スリットコート法)が挙げられる。
また、感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物を後述する保護フィルム上に塗布し、乾燥することにより形成してもよい。
【0152】
感光性樹脂組成物の塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥及び減圧乾燥が好ましい。
乾燥温度としては、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、その上限値としては130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。温度を連続的に変化させて乾燥させることもできる。
また、乾燥時間としては、20秒以上が好ましく、40秒以上がより好ましく、60秒以上が更に好ましい。また、その上限値としては特に制限されないが、600秒以下が好ましく、300秒以下がより好ましい。
【0153】
〔熱可塑性樹脂層〕
感光性転写材料は、熱可塑性樹脂層を備えていてもよい。
感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層との間に熱可塑性樹脂層を備えることが好ましい。感光性転写材料が仮支持体と感光性樹脂層との間に熱可塑性樹脂層を備えることにより、基板との貼り合わせ工程における基板への追従性が向上して、基板と感光性転写材料との間の気泡の混入が抑制され、隣接する層(例えば仮支持体)との密着性が向上するためである。
【0154】
<アルカリ可溶性樹脂>
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂として、アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0155】
アルカリ可溶性樹脂としては、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。
ここで、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を有する樹脂を意味する。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して50質量%以上であることが好ましい。
中でも、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0156】
また、アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する重合体であることが好ましい。
酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基及びホスホン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂がより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の酸価の上限は、特に制限されないが、200mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以下がより好ましい。
【0157】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。
例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂であるアルカリ可溶性樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、及び、特開2016-224162号公報の段落0053~0068に記載のアルカリ可溶性樹脂のうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂が挙げられる。
上記カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位の共重合比は、アクリル樹脂の全質量に対して、5質量%~50質量%が好ましく、10質量%~40質量%がより好ましく、12質量%~30質量%が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するアクリル樹脂が特に好ましい。
【0158】
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有していてもよい。反応性基としては、付加重合可能な基であればよく、エチレン性不飽和基;ヒドロキシ基及びカルボキシ基等の重縮合性基;エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基等の重付加反応性基が挙げられる。
【0159】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上が好ましく、1万~10万がより好ましく、2万~5万が更に好ましい。
【0160】
熱可塑性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、10質量%~99質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~80質量%が更に好ましく、50質量%~70質量%が特に好ましい。
【0161】
<色素>
熱可塑性樹脂層は、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(単に「色素B」ともいう。)を含有することが好ましい。
色素Bの好ましい態様は、後述する点以外は、色素Nの好ましい態様と同様である。
【0162】
色素Bは、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素が好ましく、酸により最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Bとしての酸により最大吸収波長が変化する色素、及び、後述する光により酸を発生する化合物の両者を含有することが好ましい。
【0163】
色素Bは、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
色素Bの含有量は、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.2質量%以上が好ましく、0.2質量%~6質量%がより好ましく、0.2質量%~5質量%が更に好ましく、0.25質量%~3.0質量%が特に好ましい。
【0164】
ここで、色素Bの含有量は、熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Bの含有量の定量方法を説明する。
メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g及び0.01gを溶かした溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤Irgacure OXE01(商品名、BASFジャパン株式会社)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。
次に、色素に代えて熱可塑性樹脂層0.1gをメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた熱可塑性樹脂層を含有する溶液の吸光度から、検量線に基づいて熱可塑性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
【0165】
<光により酸、塩基又はラジカルを発生する化合物>
熱可塑性樹脂層は、光により酸、塩基又はラジカルを発生する化合物(単に「化合物C」ともいう。)を含有してもよい。
化合物Cとしては、紫外線及び可視光線等の活性光線を受けて、酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物が好ましい。
化合物Cとしては、公知の、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び、光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)を用いることができる。中でも、光酸発生剤が好ましい。
【0166】
-光酸発生剤-
熱可塑性樹脂層は、解像性の観点から、光酸発生剤を含有することが好ましい。
光酸発生剤としては、上述した感光性樹脂層が含有してもよい光カチオン重合開始剤が挙げられ、後述する点以外は好ましい態様も同じである。
【0167】
光酸発生剤としては、感度及び解像性の観点から、オニウム塩化合物、及び、オキシムスルホネート化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有することが好ましく、感度、解像性及び密着性の観点から、オキシムスルホネート化合物を含有することがより好ましい。
また、光酸発生剤としては、以下の構造を有する光酸発生剤も好ましい。
【0168】
【化3】
【0169】
-光ラジカル重合開始剤-
熱可塑性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤(光ラジカル重合開始剤)を含有してもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、上述した感光性樹脂層が含有してもよい光ラジカル重合開始剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0170】
-光塩基発生剤-
熱可塑性樹脂層は、光塩基発生剤を含有してもよい。
光塩基発生剤としては、公知の光塩基発生剤であれば特に制限されず、例えば、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、{[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル}シクロヘキシルアミン、ビス{[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}ヘキサン-1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、及び、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2,4-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0171】
熱可塑性樹脂層は、化合物Cを、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
化合物Cの含有量は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.5質量%~5質量%がより好ましい。
【0172】
<可塑剤>
熱可塑性樹脂層は、解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、可塑剤を含有することが好ましい。
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂よりも分子量(オリゴマー又はポリマーである場合は重量平均分子量(Mw))が小さいことが好ましい。可塑剤の分子量(重量平均分子量(Mw))は、200~2,000が好ましい。
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に制限されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物がより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造又はポリプロピレンオキシ構造を有することがより好ましい。
【0173】
また、可塑剤は、解像性及び保存安定性の観点から、(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。相溶性、解像性及び隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂がアクリル樹脂であり、かつ、可塑剤が(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましい。
可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、上述した感光性樹脂層に含有されるエチレン性不飽和化合物として記載した(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
感光性転写材料において、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層とが直接接触して積層される場合、熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層がいずれも同じ(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。同じ(メタ)アクリレート化合物を熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層がそれぞれ含有することで、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上するためである。
【0174】
熱可塑性樹脂層が可塑剤として(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、隣接する層との密着性の観点から、露光後の露光部においても(メタ)アクリレート化合物が重合しないことが好ましい。
また、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
更に、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、又は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物も好ましい。
【0175】
熱可塑性樹脂層は、可塑剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
可塑剤の含有量は、解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対し、1質量%~70質量%が好ましく、10質量%~60質量%がより好ましく、20質量%~50質量%が特に好ましい。
【0176】
<界面活性剤>
熱可塑性樹脂層は、厚さ均一性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、上述した感光性樹脂層が含有してもよい界面活性剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0177】
熱可塑性樹脂層は、界面活性剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
界面活性剤の含有量は、熱可塑性樹脂層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~3質量%がより好ましい。
【0178】
<増感剤>
熱可塑性樹脂層は、増感剤を含有してもよい。
増感剤としては、特に制限されず、上述した感光性樹脂層が含有してもよい増感剤が挙げられる。
【0179】
熱可塑性樹脂層は、増感剤を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
増感剤の含有量は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、及び、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~5質量%の範囲が好ましく、0.05質量%~1質量%の範囲がより好ましい。
【0180】
<添加剤等>
熱可塑性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含有してもよい。
また、熱可塑性樹脂層については、特開2014-85643号公報の段落0189~0193に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0181】
<物性等>
熱可塑性樹脂層の層厚は、特に制限されないが、隣接する層との密着性の観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、現像性及び解像性の観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。
【0182】
<形成方法>
熱可塑性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含有する層を形成可能な方法であれば特に制限されない。
熱可塑性樹脂層の形成方法としては、例えば、上記の成分と溶剤とを含有する熱可塑性樹脂組成物を調製し、仮支持体等の表面に熱可塑性樹脂組成物を塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥することにより形成する方法が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の粘度を調節し、熱可塑性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含有することが好ましい。
【0183】
-溶剤-
熱可塑性樹脂組成物に含有される溶剤としては、熱可塑性樹脂層に含有される上記成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されない。
熱可塑性樹脂組成物に含有される溶剤としては、上述した感光性樹脂組成物が含有してもよい溶剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0184】
熱可塑性樹脂組成物に含有される溶剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
熱可塑性樹脂組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対し、50質量部~1,900質量部が好ましく、100質量部~900質量部がより好ましい。
【0185】
熱可塑性樹脂組成物の調製及び熱可塑性樹脂層の形成は、上述した感光性樹脂組成物の調製方法及び感光性樹脂層の形成方法に準じて行えばよい。
例えば、熱可塑性樹脂層に含有される各成分を上記溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた溶液を所定の割合で混合することにより、熱可塑性樹脂組成物が調製した後、
得られた熱可塑性樹脂組成物を仮支持体の表面に塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層が形成される。
また、後述する保護フィルム上に、感光性樹脂層及び中間層を形成した後、中間層の表面に熱可塑性樹脂層を形成してもよい。
【0186】
〔中間層〕
感光性転写材料は、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層との間に、中間層を備えることが好ましい。中間層を備えることにより、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制できる。
中間層は、現像性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、水溶性の層であることが好ましい。
なお、本明細書において「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0187】
中間層としては、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断層が挙げられる。中間層が酸素遮断層であると、露光時の感度が向上し、露光機の時間負荷が低減し、生産性が向上するため、好ましい。
中間層として用いられる酸素遮断層は、上記公報等に記載された公知の層から適宜選択すればよい。中でも、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液(22℃の炭酸ナトリウムの1質量%水溶液)に分散又は溶解する酸素遮断層が好ましい。
【0188】
中間層は、樹脂を含有することが好ましい。
中間層に含有される樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及び、これらの共重合体等の樹脂が挙げられる。
中間層に含有される樹脂としては、水溶性樹脂が好ましい。
また、中間層に含有される樹脂は、複数層間の成分の混合を抑制する観点から、感光性樹脂層に含有される重合体A、及び、熱可塑性樹脂層に含有され熱可塑性樹脂(例えば、アルカリ可溶性樹脂)のいずれとも異なる樹脂であることが好ましい。
【0189】
中間層は、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、ポリビニルアルコールを含有することが好ましく、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの両者を含有することがより好ましい。
【0190】
中間層は、上記樹脂を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
中間層における樹脂の含有量は、特に制限されないが、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、中間層の全質量に対し、50質量%~100質量%が好ましく、70質量%~100質量%がより好ましく、80質量%~100質量%が更に好ましく、90質量%~100質量%が特に好ましい。
また、中間層は、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。
【0191】
中間層の層厚は、特に制限されないが、0.1μm~5μmが好ましく、0.5μm~3μmがより好ましい。
中間層の厚みが上記の範囲内であると、酸素遮断性を低下させることがなく、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制でき、また、現像時の中間層除去時間の増大を抑制できるためである。
【0192】
中間層の形成方法は、特に制限されず、例えば、上記樹脂及び任意の添加剤を含有する中間層組成物を調製し、熱可塑性樹脂層又は感光性樹脂層の表面に塗布し、中間層組成物の塗膜を乾燥することにより、中間層を形成する方法が挙げられる。
中間層組成物は、中間層組成物の粘度を調節し、中間層の形成を容易にするため、溶剤を含有することが好ましい。
【0193】
中間層組成物に含有される溶剤としては、上記樹脂を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
【0194】
〔保護フィルム〕
感光性転写材料は、感光性樹脂層の仮支持体に対向していない面に接する保護フィルムを備えることが好ましい。
【0195】
保護フィルムを構成する材料としては、樹脂フィルム及び紙が挙げられ、強度及び可撓性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及び、ポリカーボネートフィルムが挙げられる。中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0196】
保護フィルムの厚さ(層厚)は、特に制限されないが、5μm~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。
また、保護フィルムの感光性樹脂層に接する面(以下単に「保護フィルムの表面」ともいう)の算術平均粗さRa値は、解像性により優れる点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましく、0.05μm以下が更に好ましい。保護フィルムの表面のRa値が上記範囲であることにより、感光性樹脂層及び形成される樹脂パターンの層厚の均一性が向上するためと考えられる。
保護フィルムの表面のRa値の下限は特に制限されないが、0.001μm以上が好ましい。
【0197】
保護フィルムの表面のRa値は、以下の方法で測定される。
3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、以下の条件にて保護フィルムの表面を測定し、光学フィルムの表面プロファイルを得る。
測定・解析ソフトとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記解析ソフトにてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、算術平均粗さを算出し、保護フィルムの表面のRa値を得る。
保護フィルムが感光性転写材料に貼り合わされている場合は、感光性転写材料から保護フィルムを剥離して、剥離した側の表面のRa値を測定すればよい。
【0198】
保護フィルムを感光性樹脂層等に貼り合わせる方法は、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
保護フィルムを感光性樹脂層等に貼り合わせる装置としては、真空ラミネーター、及び、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターが挙げられる。
ラミネーターは、ゴムローラー等の任意の加熱可能なローラーを備え、加圧及び加熱ができるものであることが好ましい。
【0199】
感光性転写材料は、上述した層以外の層(以下「その他の層」ともいう。)を備えてもよい。その他の層としては、例えば、コントラストエンハンスメント層が挙げられる。
コントラストエンハンスメント層については、国際公開第2018/179640号の段落0134に記載されている。また、その他の層については特開2014-85643号公報の段落0194~0196に記載されている。これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0200】
感光性転写材料における仮支持体及び保護フィルムを除く各層の総厚さは、本開示における効果をより発揮する観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることが更に好ましく、2μm以上8μm以下であることが特に好ましい。
また、感光性転写材料における感光性樹脂層、中間層及び熱可塑性樹脂層の総厚さは、本開示における効果をより発揮する観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることが更に好ましく、2μm以上8μm以下であることが特に好ましい。
【0201】
本開示に係る感光性転写材料は、フォトリソグラフィによる精密微細加工が必要な各種用途に好適に用いることができる。感光性樹脂層をパターニング後に、感光性樹脂層を被膜としてエッチングをしてもよいし、電気めっきを主体とするエレクトロフォーミングを行ってもよい。また、パターニングによって得られた硬化膜は、永久膜として使用してもよく、例えば、層間絶縁膜、配線保護膜、インデックスマッチング層を有する配線保護膜などとして用いてもよい。また、本開示に係る感光性転写材料は、半導体パッケージ、プリント基板、センサー基板の各種配線形成用途、タッチパネル、電磁波シールド材、フィルムヒーターのような導電性フィルム、液晶シール材、マイクロマシンやマイクロエレクトロニクス分野における構造物の形成等の用途に好適に使用し得る。
【0202】
〔感光性転写材料の製造方法〕
本開示に用いられる感光性転写材料の製造方法は、特に制限されず、公知の製造方法、例えば、公知の各層の形成方法を用いることができる。
以下、図1を参照しながら、本開示に係る感光性転写材料の製造方法について説明する。但し、本開示に係る感光性転写材料は、図1に示す構成を有するものに制限されない。
図1は、本開示に係る感光性転写材料の一実施態様における層構成の一例を示す概略断面図である。図1に示す感光性転写材料20は、仮支持体11と、熱可塑性樹脂層13と、水溶性樹脂層15と、感光性樹脂層17と、保護フィルム19とがこの順に積層された構成を有する。
【0203】
上記の感光性転写材料20の製造方法としては、例えば、仮支持体11の表面に熱可塑性樹脂組成物を塗布した後、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層13を形成する工程と、熱可塑性樹脂層13の表面に水溶性樹脂層組成物を塗布した後、水溶性樹脂層組成物の塗膜を乾燥させて水溶性樹脂層15を形成する工程と、水溶性樹脂層15の表面にアルカリ可溶性樹脂及びエチレン性不飽和化合物を含有する感光性樹脂組成物を塗布した後、感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥させて感光性樹脂層17を形成する工程とを含む方法が挙げられる。
上記の製造方法において、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する熱可塑性樹脂組成物と、水及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する水溶性樹脂層組成物と、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、並びに、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する感光性樹脂組成物とを使用することが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂層13の表面への水溶性樹脂層組成物の塗布、及び/又は、水溶性樹脂層組成物の塗膜を有する積層体の保存期間における、熱可塑性樹脂層13に含有される成分と水溶性樹脂層15に含有される成分との混合を抑制でき、なお且つ、水溶性樹脂層15の表面への感光性樹脂組成物の塗布、及び/又は、感光性樹脂組成物の塗膜を有する積層体の保存期間における、水溶性樹脂層15に含有される成分と感光性樹脂層17に含有される成分との混合を抑制できる。
【0204】
上記の製造方法により製造された積層体の感光性樹脂層17に、保護フィルム19を圧着させることにより、感光性転写材料20が製造される。
本開示に用いられる感光性転写材料の製造方法としては、感光性樹脂層17の第2面に接するように保護フィルム19を設ける工程を含むことにより、仮支持体11、熱可塑性樹脂層13、水溶性樹脂層15、感光性樹脂層17及び保護フィルム19を備える感光性転写材料20を製造することが好ましい。
上記の製造方法により感光性転写材料20を製造した後、感光性転写材料20を巻き取ることにより、ロール形態の感光性転写材料を作製及び保管してもよい。ロール形態の感光性転写材料は、後述するロールツーロール方式での基板との貼り合わせ工程にそのままの形態で提供できる。
【0205】
本開示に係る感光性転写材料は、フォトリソグラフィによる精密微細加工が必要な各種用途に好適に用いることができる。感光性樹脂層をパターニング後に、感光性樹脂層を被膜としてエッチングをしてもよいし、電気めっきを主体とするエレクトロフォーミングを行ってもよい。また、パターニングによって得られた硬化膜は、永久膜として使用してもよく、例えば、層間絶縁膜、配線保護膜、インデックスマッチング層を有する配線保護膜などとして用いてもよい。また、本開示に係る感光性転写材料は、半導体パッケージ、プリント基板、センサー基板の各種配線形成用途、タッチパネル、電磁波シールド材、フィルムヒーターのような導電性フィルム、液晶シール材、マイクロマシン又はマイクロエレクトロニクス分野における構造物の形成等の用途に好適に使用し得る。
【0206】
また、第1の実施態様の感光性転写材料は、感光性樹脂層が顔料を含む着色樹脂層である態様も好ましく挙げられる。
着色樹脂層の用途としては、上述した以外に、例えば、液晶表示装置(LCD)、並びに、固体撮像素子〔例えば、CCD(charge-coupled device)及びCMOS(complementary metal oxide semiconductor)〕に用いられるカラーフィルタ等の着色画素又はブラックマトリクスを形成する用途に好適である。
着色樹脂層における顔料以外の態様については、上述した態様と同様である。
【0207】
<顔料>
感光性樹脂層は、顔料を含む着色樹脂層となっていてもよい。
近年の電子機器が有する液晶表示窓には、液晶表示窓を保護するために、透明なガラス基板等の裏面周縁部に黒色の枠状遮光層が形成されたカバーガラスが取り付けられている場合がある。このような遮光層を形成するために着色樹脂層が使用し得る。
顔料としては、所望とする色相に合わせて適宜選択すればよく、黒色顔料、白色顔料、黒色及び白色以外の有彩色の顔料の中から選択できる。中でも、黒色系のパターンを形成する場合には、顔料として黒色顔料が好適に選択される。
【0208】
黒色顔料としては、本開示における効果を損なわない範囲であれば、公知の黒色顔料(有機顔料又は無機顔料等)を適宜選択することができる。中でも、光学濃度の観点から、黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、チタンカーバイド、酸化鉄、酸化チタン及び黒鉛等が好適に挙げられ、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックとしては、表面抵抗の観点から、表面の少なくとも一部が樹脂で被覆されたカーボンブラックが好ましい。
【0209】
黒色顔料の粒径は、分散安定性の観点から、数平均粒径で0.001μm~0.1μmが好ましく、0.01μm~0.08μmがより好ましい。
ここで、粒径とは、電子顕微鏡で撮影した顔料粒子の写真像から顔料粒子の面積を求め、顔料粒子の面積と同面積の円を考えた場合の円の直径を指し、数平均粒径は、任意の100個の粒子について上記の粒径を求め、求められた100個の粒径を平均して得られる平均値である。
【0210】
黒色顔料以外の顔料として、白色顔料については、特開2005-007765号公報の段落0015及び0114に記載の白色顔料を使用できる。具体的には、白色顔料のうち、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は硫酸バリウムが好ましく、酸化チタン又は酸化亜鉛がより好ましく、酸化チタンが更に好ましい。無機顔料としては、ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタンが更に好ましく、ルチル型の酸化チタンが特に好ましい。
また、酸化チタンの表面は、シリカ処理、アルミナ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、又は有機物処理が施されていてもよく、二つ以上の処理が施されてもよい。これにより、酸化チタンの触媒活性が抑制され、耐熱性及び褪光性等が改善される。
加熱後の感光性樹脂層の厚みを薄くする観点から、酸化チタンの表面への表面処理としては、アルミナ処理及びジルコニア処理の少なくとも一方が好ましく、アルミナ処理及びジルコニア処理の両方が特に好ましい。
【0211】
また、感光性樹脂層が着色樹脂層である場合、転写性の観点から、感光性樹脂層は、黒色顔料及び白色顔料以外の有彩色の顔料を更に含んでいることも好ましい。有彩色の顔料を含む場合、有彩色の顔料の粒径としては、分散性がより優れる点で、0.1μm以下が好ましく、0.08μm以下がより好ましい。
有彩色の顔料としては、例えば、ビクトリア・ピュアーブルーBO(Color Index(以下C.I.)42595)、オーラミン(C.I.41000)、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・エローGT(C.I.ピグメント・エロー12)、パーマネント・エローGR(C.I.ピグメント・エロー17)、パーマネント・エローHR(C.I.ピグメント・エロー83)、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメント・レッド146)、ホスターバームレッドESB(C.I.ピグメント・バイオレット19)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメント・レッド11)、ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメント・レッド81)、モナストラル・ファースト・ブルー(C.I.ピグメント・ブルー15)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)及びカーボン、C.I.ピグメント・レッド97、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド168、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド180、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド215、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー22、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・ブルー64、及びC.I.ピグメント・バイオレット23等が挙げられる。中でも、C.I.ピグメント・レッド177が好ましい。
【0212】
感光性樹脂層が顔料を含む場合、顔料の含有量としては、感光性樹脂層の全質量に対して、3質量%超40質量%以下が好ましく、3質量%超35質量%以下がより好ましく、5質量%超35質量%以下が更に好ましく、10質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0213】
感光性樹脂層が黒色顔料以外の顔料(白色顔料及び有彩色の顔料)を含む場合、黒色顔料以外の顔料の含有量は、黒色顔料に対して、30質量%以下が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、3質量%~15質量%が更に好ましい。
【0214】
なお、感光性樹脂層が黒色顔料を含み、且つ、感光性樹脂層が感光性樹脂組成物で形成される場合、黒色顔料(好ましくはカーボンブラック)は、顔料分散液の形態で感光性樹脂組成物に導入されることが好ましい。
分散液は、黒色顔料と顔料分散剤とをあらかじめ混合して得られる混合物を、有機溶剤(又はビヒクル)に加えて分散機で分散させることによって調製されるものでもよい。顔料分散剤は、顔料及び溶剤に応じて選択すればよく、例えば市販の分散剤を使用することができる。なお、ビヒクルとは、顔料分散液とした場合に顔料を分散させている媒質の部分を指し、液状であり、黒色顔料を分散状態で保持するバインダー成分と、バインダー成分を溶解及び希釈する溶剤成分(有機溶剤)と、を含む。
【0215】
分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライター、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、及びサンドミル等の公知の分散機が挙げられる。更に、機械的摩砕により摩擦力を利用して微粉砕してもよい。分散機及び微粉砕については、「顔料の事典」(朝倉邦造著、第一版、朝倉書店、2000年、438頁、310頁)の記載を参照することができる。
【0216】
〔〔第2実施形態の感光性転写材料〕〕
以下において、第2実施形態の感光性転写材料について、一例を挙げて説明する。
図2に示す感光性転写材料10は、仮支持体1と、感光性樹脂層3及び屈折率調整層5を含む転写層2と、保護フィルム7とを、この順に有する。
また、図2で示す感光性転写材料10は屈折率調整層5を配置した形態であるが、屈折率調整層5は、配置されなくてもよい。
以下において、第2実施形態の感光性転写材料を構成する各要素について説明する。
第2実施形態の感光性転写材料に用いられる仮支持体及び保護フィルムは、第1実施形態の感光性転写材料における仮支持体及び保護フィルムと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0217】
〔感光性樹脂層〕
感光性転写材料は、感光性樹脂層を有する。
感光性樹脂層を被転写体上に転写した後、露光及び現像を行うことにより、被転写体上にパターンを形成できる。
以下、感光性樹脂層に含まれ得る成分について詳述する。
【0218】
<アルカリ可溶性樹脂>
感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含む。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、及び、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物との反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂が挙げられる。
【0219】
アルカリ可溶性樹脂の好適態様の一つとして、アルカリ現像性及びフィルム形成性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位を有する樹脂を意味する。(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位のみで構成されていてもよく、(メタ)アクリル化合物以外の重合性単量体に由来する構成単位を有していてもよい。すなわち、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量の上限は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、100質量%以下である。
【0220】
(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、及び、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレートが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミドが挙げられる。
【0221】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、及び、(メタ)アクリル酸ドデシル等の炭素数が1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチルがより好ましい。
【0222】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位以外の構成単位を有していてもよい。
上記構成単位を形成する重合性単量体としては、(メタ)アクリル化合物と共重合可能な(メタ)アクリル化合物以外の化合物であれば特に制限されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及び、α-メチルスチレン等のα位又は芳香族環に置換基を有してもよいスチレン化合物、アクリロニトリル及びビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールエステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及び、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマル酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、並びに、クロトン酸が挙げられる。
これらの重合性単量体は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0223】
また、(メタ)アクリル樹脂は、アルカリ現像性をより良好にする点から、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及び、ホスホン酸基が挙げられる。
中でも、(メタ)アクリル樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位を有することがより好ましく、上記の(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有することが更に好ましい。
【0224】
(メタ)アクリル樹脂における酸基を有する構成単位(好ましくは(メタ)アクリル酸に由来する構成単位)の含有量は、現像性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂の全質量に対して、10質量%以上が好ましい。また、上限値は特に制限されないが、アルカリ耐性に優れる点で、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0225】
また、(メタ)アクリル樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有することがより好ましい。
(メタ)アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、50質量%~90質量%が好ましく、60質量%~90質量%がより好ましく、65質量%~90質量%が更に好ましい。
【0226】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有する樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位のみで構成されている樹脂がより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂としては、メタクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸メチルに由来する構成単位、及び、アクリル酸エチルに由来する構成単位を有するアクリル樹脂も好ましい。
【0227】
また、(メタ)アクリル樹脂は、本開示における効果がより優れる点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましく、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有することが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂におけるメタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量は、本開示における効果がより優れる点から、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されず、100質量%以下であってもよく、80質量%以下が好ましい。
【0228】
また、(メタ)アクリル樹脂は、本開示における効果がより優れる点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種と、アクリル酸に由来する構成単位及びアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種とを有することも好ましい。
本開示における効果がより優れる点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量は、アクリル酸に由来する構成単位及びアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量に対して、質量比で60/40~80/20が好ましい。
【0229】
(メタ)アクリル樹脂は、転写後の感光性樹脂層の現像性に優れる点で、末端にエステル基を有することが好ましい。
なお、(メタ)アクリル樹脂の末端部は、合成に用いた重合開始剤に由来する部位により構成される。末端にエステル基を有する(メタ)アクリル樹脂は、エステル基を有するラジカルを発生する重合開始剤を用いることにより合成できる。
【0230】
また、アルカリ可溶性樹脂は、例えば、現像性の点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂は、例えば、加熱により架橋成分と熱架橋し、強固な膜を形成しやすいという点から、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有樹脂)であることがより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂)であることが更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂がカルボキシ基を有する樹脂であると、例えば、ブロックイソシアネート化合物等の熱架橋性化合物を添加して熱架橋することで、3次元架橋密度を高めることができる。また、カルボキシ基を有する樹脂のカルボキシ基が無水化され、疎水化すると、湿熱耐性が改善し得る。
【0231】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて、特に制限はなく、公知の(メタ)アクリル樹脂から適宜選択できる。
例えば、特開2011-095716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂等を好ましく使用できる。
【0232】
アルカリ可溶性樹脂の他の好適態様としては、スチレン-アクリル共重合体が挙げられる。なお、本明細書において、スチレン-アクリル共重合体とは、スチレン化合物に由来する構成単位と、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位とを有する樹脂を指し、上記スチレン化合物に由来する構成単位、及び、上記(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の合計含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
また、スチレン化合物に由来する構成単位の含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、5質量%~80質量%が更に好ましい。
また、上記(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%~95質量%が更に好ましい。
【0233】
アルカリ可溶性樹脂は、本開示における効果がより優れる点から、芳香環構造を有することが好ましく、芳香環構造を有する構成単位を有することがより好ましい。
芳香環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、及び、α-メチルスチレン等のスチレン化合物、並びに、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでも、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂は、本開示における効果がより優れる点から、下記式(S)で表される構成単位(スチレンに由来する構成単位)を有することがより好ましい。
【0234】
【化4】
【0235】
アルカリ可溶性樹脂が芳香環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~70質量%より好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における芳香環構造を有する構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~60モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における上記式(S)で表される構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~60モル%が更に好ましく、20モル%~50モル%が特に好ましい。
なお、本明細書において、「構成単位」の含有量をモル比で規定する場合、上記「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、本明細書において、上記「モノマー単位」は、高分子反応等により重合後に修飾されていてもよい。以下においても同様である。
【0236】
アルカリ可溶性樹脂は、本開示における効果がより優れる点から、脂肪族炭化水素環構造を有することが好ましい。つまり、アルカリ可溶性樹脂は、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有することが好ましい。中でも、アルカリ可溶性樹脂は、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有することがより好ましい。
【0237】
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位における脂肪族炭化水素環構造を構成する環としては、トリシクロデカン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ノルボルナン環、及び、イソボロン環が挙げられる。
中でも、本開示における効果がより優れる点から、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環が好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環)がより好ましい。
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、アルカリ可溶性樹脂は、本開示における効果がより優れる点から、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましく、上記式(S)で表される構成単位、及び、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましい。
【0238】
【化5】
【0239】
式(Cy)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、RCyは脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基を表す。
【0240】
式(Cy)におけるRは、メチル基であることが好ましい。
式(Cy)におけるRCyは、本開示における効果がより優れる点から、炭素数5~20の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることが好ましく、炭素数6~16の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることがより好ましく、炭素数8~14の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることが更に好ましい。
式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、単環構造であっても、多環構造であってもよい。
また、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、本開示における効果がより優れる点から、シクロペンタン環構造、シクロヘキサン環構造、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造、ノルボルナン環構造、又は、イソボロン環構造であることが好ましく、シクロヘキサン環構造、又は、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることがより好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることが更に好ましい。
更に、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、本開示における効果がより優れる点から、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造であることが好ましく、2~4環の脂肪族炭化水素環が縮環した環であることがより好ましい。
更に、式(Cy)におけるRCyは、本開示における効果がより優れる点から、式(Cy)における-C(=O)O-の酸素原子と脂肪族炭化水素環構造とが直接結合する基、すなわち、脂肪族炭化水素環基であることが好ましく、シクロヘキシル基、又は、ジシクロペンタニル基であることがより好ましく、ジシクロペンタニル基であることが更に好ましい。
【0241】
アルカリ可溶性樹脂は、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
アルカリ可溶性樹脂が脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における上記式(Cy)で表される構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が更に好ましい。
【0242】
アルカリ可溶性樹脂が芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の総含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、40質量%~75質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の総含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、10モル%~80モル%が好ましく、20モル%~70モル%がより好ましく、40モル%~60モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における上記式(S)で表される構成単位及び上記式(Cy)で表される構成単位の総含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、10モル%~80モル%が好ましく、20モル%~70モル%がより好ましく、40モル%~60モル%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における上記式(S)で表される構成単位のモル量nSと上記式(Cy)で表される構成単位のモル量nCyは、本開示における効果がより優れる点から、
下記式(SCy)に示す関係を満たすことが好ましく、下記式(SCy-1)を満たすことがより好ましく、下記式(SCy-2)を満たすことが更に好ましい。
0.2≦nS/(nS+nCy)≦0.8 式(SCy)
0.30≦nS/(nS+nCy)≦0.75 式(SCy-1)
0.40≦nS/(nS+nCy)≦0.70 式(SCy-2)
【0243】
アルカリ可溶性樹脂は、本開示における効果がより優れる点から、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、及び、リン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
上記酸基を有する構成単位としては、下記に示す、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が好ましく、メタクリル酸由来の構成単位がより好ましい。
【0244】
【化6】
【0245】
アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
アルカリ可溶性樹脂が酸基を有する構成単位を有する場合、酸基を有する構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~50質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、10質量%~30質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における酸基を有する構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~50モル%がより好ましく、20モル%~40モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~50モル%がより好ましく、20モル%~40モル%が更に好ましい。
【0246】
アルカリ可溶性樹脂は、本開示における効果がより優れる点から、反応性基を有することが好ましく、反応性基を有する構成単位を有することがより好ましい。
反応性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性不飽和基がより好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂がエチレン性不飽和基を有している場合、アルカリ可溶性樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましい。
本明細書において、「主鎖」とは、樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている原子団を表す。
エチレン性不飽和基としては、アリル基又は(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
反応性基を有する構成単位の一例としては、下記に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0247】
【化7】
【0248】
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
アルカリ可溶性樹脂が反応性基を有する構成単位を有する場合、反応性基を有する構成単位の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~70質量%が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましく、20質量%~40質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における反応性基を有する構成単位の含有量は、本発明の効果がより優れる点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が更に好ましい。
【0249】
反応性基をアルカリ可溶性樹脂に導入する手段としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アセトアセチル基、及び、スルホ基等の官能基に、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート化合物、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、及び、カルボン酸無水物等の化合物を反応させる方法が挙げられる。
反応性基をアルカリ可溶性樹脂に導入する手段の好ましい例としては、カルボキシ基を有するポリマーを重合反応により合成した後、高分子反応により、得られた樹脂のカルボキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて、(メタ)アクリロキシ基をポリマーに導入する手段が挙げられる。この手段により、側鎖に(メタ)アクリロキシ基を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
上記重合反応は、70℃~100℃の温度条件で行うことが好ましく、80℃~90℃の温度条件で行うことがより好ましい。上記重合反応に用いる重合開始剤としては、アゾ系開始剤が好ましく、例えば、富士フイルム和光純薬(株)製のV-601(商品名)又はV-65(商品名)がより好ましい。上記高分子反応は、80℃~110℃の温度条件で行うことが好ましい。上記高分子反応においては、アンモニウム塩等の触媒を用いることが好ましい。
【0250】
アルカリ可溶性樹脂としては、本開示における効果がより優れる点から、以下に示す樹脂が好ましい。なお、以下に示す各構成単位の含有比率(a~d)及び重量平均分子量Mw等は目的に応じて適宜変更できる。
【0251】
【化8】
【0252】
【化9】
【0253】
また、アルカリ可溶性樹脂は、カルボン酸無水物構造を有する構成単位を有する重合体(以下、「重合体X」ともいう。)を含んでいてもよい。
カルボン酸無水物構造は、鎖状カルボン酸無水物構造、及び、環状カルボン酸無水物構造のいずれであってもよいが、環状カルボン酸無水物構造であることが好ましい。
環状カルボン酸無水物構造の環としては、5員環~7員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましく、5員環が更に好ましい。
【0254】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を2つ除いた2価の基を主鎖中に含む構成単位、又は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を1つ除いた1価の基が主鎖に対して直接又は2価の連結基を介して結合している構成単位であることが好ましい。
【0255】
【化10】
【0256】
式P-1中、RA1aは、置換基を表し、n1a個のRA1aは、同一でも異なっていてもよく、Z1aは、-C(=O)-O-C(=O)-を含む環を形成する2価の基を表し、n1aは、0以上の整数を表す。
【0257】
A1aで表される置換基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。
1aとしては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基が更に好ましい。
1aは、0以上の整数を表す。Z1aが炭素数2~4のアルキレン基を表す場合、n1aは、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
1aが2以上の整数を表す場合、複数存在するRA1aは、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在するRA1aは、互いに結合して環を形成してもよいが、互いに結合して環を形成していないことが好ましい。
【0258】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位としては、不飽和カルボン酸無水物に由来する構成単位が好ましく、不飽和環式カルボン酸無水物に由来する構成単位がより好ましく、不飽和脂肪族環式カルボン酸無水物に由来する構成単位が更に好ましく、無水マレイン酸又は無水イタコン酸に由来する構成単位が特に好ましく、無水マレイン酸に由来する構成単位が最も好ましい。
【0259】
以下、カルボン酸無水物構造を有する構成単位の具体例を挙げるが、カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、これらの具体例に限定されるものではない。下記の構成単位中、Rxは、水素原子、メチル基、CHOH基、又は、CF基を表し、Meは、メチル基を表す。
【0260】
【化11】
【0261】
【化12】
【0262】
重合体Xにおけるカルボン酸無水物構造を有する構成単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0263】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位の総含有量は、重合体Xの全構成単位に対して、0モル%~60モル%が好ましく、5モル%~40モル%がより好ましく、10モル%~35モル%が更に好ましい。
【0264】
感光性樹脂層は、重合体Xを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
感光性樹脂層が重合体Xを含む場合、本開示における効果がより優れる点から、重合体Xの含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~30質量%が好ましく、0.2質量%~20質量%がより好ましく、0.5質量%~20質量%が更に好ましく、1質量%~20質量%が更に好ましい。
【0265】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本開示における効果がより優れる点から、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、10,000~50,000が更に好ましく、20,000~30,000が特に好ましい。
【0266】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、10mgKOH/g~200mgKOH/gが好ましく、60mgKOH/g~200mgKOH/gがより好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gが更に好ましく、60mgKOH/g~110mgKOH/gが特に好ましい。
なお、アルカリ可溶性樹脂の酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法に従って、測定される値である。
【0267】
感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、本開示における効果がより優れる点から、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、30質量%~70質量%が更に好ましい。
【0268】
<エチレン性不飽和化合物>
感光性樹脂層は、エチレン性不飽和化合物を含む。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロキシ基が好ましい。
なお、本明細書におけるエチレン性不飽和化合物は、上記アルカリ可溶性樹脂以外の化合物であり、分子量5,000未満であることが好ましい。
また、第2の実施形態に用いられるエチレン性不飽和化合物の好ましい態様としては、上述した第1の実施形態に用いられるエチレン性不飽和化合物の好ましい態様が挙げられる。
【0269】
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、下記式(M)で表される化合物(単に、「化合物M」ともいう。)が挙げられる。
-R-Q 式(M)
式(M)中、Q及びQはそれぞれ独立に、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、Rは鎖状構造を有する二価の連結基を表す。
【0270】
式(M)におけるQ及びQは、合成容易性の点から、Q及びQは同じ基であることが好ましい。
また、式(M)におけるQ及びQは、反応性の点から、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
式(M)におけるRとしては、本開示における効果がより優れる点から、アルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基(-L-O-L-)、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基(-(L-O)-L-)が好ましく、炭素数2~20の炭化水素基、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基がより好ましく、炭素数4~20のアルキレン基が更に好ましく、炭素数6~18の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
上記炭化水素基は、少なくとも一部に鎖状構造を有していればよく、上記鎖状構造以外の部分としては、特に制限はなく、例えば、分岐鎖状、環状、又は、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、及び、それらの組み合わせのいずれであってもよく、アルキレン基、又は、2以上のアルキレン基と1以上のアリーレン基とを組み合わせた基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、直鎖アルキレン基が更に好ましい。
なお、上記Lは、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、エチレン基、プロピレン基、又は、ブチレン基が好ましく、エチレン基又は1,2-プロピレン基がより好ましい。
pは2以上の整数を表し、2~10の整数であることが好ましい。
【0271】
また、化合物MにおけるQとQとの間を連結する最短の連結鎖の原子数は、本開示における効果がより優れる点から、3個~50個が好ましく、4個~40個がより好ましく、6個~20個が更に好ましく、8個~12個が特に好ましい。
本明細書において、「QとQの間を連結する最短の連結鎖の原子数」とは、Qに連結するRにおける原子からQに連結するRにおける原子までを連結する最短の原子数である。
【0272】
化合物Mの具体例としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、及び、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。上記エステルモノマーは混合物としても使用できる。
上記化合物の中でも、本開示における効果がより優れる点から、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが更に好ましい。
【0273】
また、エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
本明細書において、「2官能以上のエチレン性不飽和化合物」とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0274】
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
上記化合物M以外の2官能のエチレン性不飽和化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、トリシクロデカンジメナノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0275】
2官能のエチレン性不飽和化合物の市販品としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名:NKエステル A-DCP、新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメナノールジメタクリレート(商品名:NKエステル DCP、新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-NOD-N、新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-HD-N、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0276】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、及び、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0277】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及び、ヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0278】
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標) DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標) RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社のEBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステル A-GLY-9E等)も挙げられる。
【0279】
エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物も挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートも挙げられる。官能基数の下限としては、6官能以上がより好ましく、8官能以上が更に好ましい。なお、官能基数の上限としては、20官能以下が好ましい。3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)、共栄社化学(株)製のAH-600(商品名)、並びに、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、及びUX-5000(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0280】
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、酸基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
酸基としては、リン酸基、スルホ基、及び、カルボキシ基が挙げられる。
これらの中でも、酸基としては、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、酸基を有する3官能~4官能のエチレン性不飽和化合物〔ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価:80mgKOH/g~120mgKOH/g)〕、酸基を有する5官能~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの〔酸価:25mgKOH/g~70mgKOH/g)〕等が挙げられる。
これら酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
【0281】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物が、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であると、現像性及び膜強度がより高まる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックス(登録商標)M-520(東亞合成(株)製)、アロニックス(登録商標)M-510(東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0282】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物が好ましく、この公報に記載の内容は、本明細書に組み込まれる。
【0283】
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、及び、β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート等のフタル酸系化合物、並びに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルも挙げられる。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0284】
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、及び、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、エチレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が2~14であり、かつ、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、並びに、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
中でも、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
【0285】
エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和化合物のカプロラクトン変性化合物(例えば、日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、エチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(例えば、日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製 EBECRYL(登録商標)135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
【0286】
エチレン性不飽和化合物としては、転写後の感光性樹脂層の現像性に優れる点で、なかでも、エステル結合を含むものも好ましい。
エステル結合を含むエチレン性不飽和化合物としては、分子内にエステル結合を含むものであれば特に制限されないが、本開示における効果が優れる点で、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
信頼性付与の点からは、エチレン性不飽和化合物としては、炭素数6~20の脂肪族基を有するエチレン性不飽和化合物と、上記のテトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物と、を含むことが好ましい。
炭素数6以上の脂肪族構造を有するエチレン性不飽和化合物としては、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0287】
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとしては、脂肪族炭化水素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能エチレン性不飽和化合物)が挙げられる。
上記エチレン性不飽和化合物としては、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造(好ましくは、トリシクロデカン構造及びトリシクロデセン構造よりなる群から選択される構造)を有するエチレン性不飽和化合物が好ましく、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物がより好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
上記脂肪族炭化水素環構造としては、本開示における効果がより優れる点から、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、トリシクロデカン構造、トリシクロデセン構造、ノルボルナン構造、又は、イソボロン構造が好ましい。
【0288】
エチレン性不飽和化合物の分子量は、200~3,000が好ましく、250~2,600がより好ましく、280~2,200が更に好ましく、300~2,200が特に好ましい。
感光性樹脂層に含まれるエチレン性不飽和化合物のうち、分子量300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の含有量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0289】
感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましく、3官能又は4官能のエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましい。
【0290】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物と、脂肪族炭化水素環を有する構成単位を有するアルカリ可溶性樹脂とを含むことが好ましい。
【0291】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物とを含むことがより好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸変性体とを含むことが更に好ましい。
【0292】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、後述する熱架橋性化合物とを含むことが好ましく、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、後述するブロックイソシアネート化合物とを含むことがより好ましい。
【0293】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含むこと好ましい。
【0294】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、防錆性の点から、化合物M、及び、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、基板密着性、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、化合物M、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、3官能以上のエチレン性不飽和化合物、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、3官能以上のエチレン性不飽和化合物、酸基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、感光性樹脂層は、基板密着性、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、1,9-ノナンジオールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、カルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、カルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、ウレタンアクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
【0295】
感光性樹脂層は、エチレン性不飽和化合物として、単官能エチレン性不飽和化合物を含んでいてもよい。
上記エチレン性不飽和化合物における2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が更に好ましい。
【0296】
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%が好ましく、5質量%~70質量%がより好ましく、5質量%~60質量%が更に好ましく、5質量%~50質量%が特に好ましい。
【0297】
<光重合開始剤>
感光性樹脂層は、光重合開始剤を含む。
第2の実施形態に用いられる光重合開始剤の好ましい態様としては、上述した第1の実施形態に用いられる光重合開始剤の好ましい態様が挙げられる。
光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましい。また、その上限値としては、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることより好ましい。
【0298】
<複素環化合物>
感光性樹脂層は、複素環化合物を含んでいてもよい。
複素環化合物が有する複素環は、単環及び多環のいずれの複素環でもよい。
複素環化合物が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。複素環化合物は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を有することが好ましく、窒素原子を有することがより好ましい。
【0299】
複素環化合物としては、例えば、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、及び、ピリミジン化合物が挙げられる。
上記の中でも、複素環化合物としては、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。
【0300】
複素環化合物の好ましい具体例を以下に示す。トリアゾール化合物及びベンゾトリアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0301】
【化13】
【0302】
【化14】
【0303】
テトラゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0304】
【化15】
【0305】
【化16】
【0306】
チアジアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0307】
【化17】
【0308】
トリアジン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0309】
【化18】
【0310】
ローダニン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0311】
【化19】
【0312】
チアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0313】
【化20】
【0314】
ベンゾチアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0315】
【化21】
【0316】
ベンゾイミダゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0317】
【化22】
【0318】
【化23】
【0319】
ベンゾオキサゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0320】
【化24】
【0321】
複素環化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が複素環化合物を含む場合、複素環化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~20.0質量%が好ましく、0.10質量%~10.0質量%がより好ましく、0.30質量%~8.0質量%が更に好ましく、0.50質量%~5.0質量%が特に好ましい。
【0322】
<脂肪族チオール化合物>
感光性樹脂層は、脂肪族チオール化合物を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が脂肪族チオール化合物を含むことで、脂肪族チオール化合物がエチレン性不飽和化合物との間でエン-チオール反応することで、形成される膜の硬化収縮が抑えられ、応力が緩和される。
【0323】
脂肪族チオール化合物としては、単官能の脂肪族チオール化合物、又は、多官能の脂肪族チオール化合物(すなわち、2官能以上の脂肪族チオール化合物)が好ましい。
上記の中でも、脂肪族チオール化合物としては、形成されるパターンの密着性(特に、露光後における密着性)の点から、多官能の脂肪族チオール化合物がより好ましい。
本明細書において、「多官能の脂肪族チオール化合物」とは、チオール基(「メルカプト基」ともいう。)を分子内に2個以上有する脂肪族化合物を意味する。
【0324】
多官能の脂肪族チオール化合物としては、分子量が100以上の低分子化合物が好ましい。具体的には、多官能の脂肪族チオール化合物の分子量は、100~1,500がより好ましく、150~1,000が更に好ましい。
【0325】
多官能の脂肪族チオール化合物の官能基数としては、例えば、形成されるパターンの密着性の点から、2官能~10官能が好ましく、2官能~8官能がより好ましく、2官能~6官能が更に好ましい。
【0326】
多官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオプロピオネート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサメチレンジチオール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso-2,3-ジメルカプトコハク酸、及び、ジ(メルカプトエチル)エーテルが挙げられる。
【0327】
上記の中でも、多官能の脂肪族チオール化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、及び、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0328】
単官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、及び、ステアリル-3-メルカプトプロピオネートが挙げられる。
【0329】
感光性樹脂層は、1種単独の脂肪族チオール化合物を含んでいてもよく、2種以上の脂肪族チオール化合物を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が脂肪族チオール化合物を含む場合、脂肪族チオール化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、5質量%以上が好ましく、5質量%~50質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が更に好ましく、8質量%~20質量%が特に好ましい。
【0330】
<熱架橋性化合物>
感光性樹脂層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。
第2の実施形態の感光性樹脂層に用いられる熱架橋性化合物としては、第1の実施形態の感光性樹脂層において上述した熱架橋性化合物が好適に用いられる。
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
【0331】
<界面活性剤>
感光性樹脂層は、界面活性剤を含んでいてもよい。
第2の実施形態の感光性樹脂層に用いられる界面活性剤としては、第1の実施形態の感光性樹脂層において上述した界面活性剤が好適に用いられる。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3.0質量%が好ましく、0.01質量%~1.0質量%がより好ましく、0.05質量%~0.80質量%が更に好ましい。
【0332】
<重合禁止剤>
感光性樹脂層は、重合禁止剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤とは、重合反応を遅延又は禁止させる機能を有する化合物を意味する。重合禁止剤としては、例えば、重合禁止剤として用いられる公知の化合物を使用できる。
【0333】
重合禁止剤としては、例えば、フェノチアジン、ビス-(1-ジメチルベンジル)フェノチアジン、及び、3,7-ジオクチルフェノチアジン等のフェノチアジン化合物;ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]2,4-ビス〔(ラウリルチオ)メチル〕-o-クレゾール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、及び、ペンタエリスリトールテトラキス3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール化合物;4-ニトロソフェノール、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミン、及び、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン等のニトロソ化合物又はその塩;メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、及び、4-ベンゾキノン等のキノン化合物;4-メトキシフェノール、4-メトキシ-1-ナフトール、及び、t-ブチルカテコール等のフェノール化合物;ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸マンガン、及び、ジフェニルジチオカルバミン酸マンガン等の金属塩化合物が挙げられる。
中でも、本開示における効果がより優れる点で、重合禁止剤としては、フェノチアジン化合物、ニトロソ化合物又はその塩、及び、ヒンダードフェノール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、フェノチアジン、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]2,4-ビス〔(ラウリルチオ)メチル〕-o-クレゾール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)、及び、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩がより好ましい。
【0334】
重合禁止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~10.0質量%が好ましく、0.01~5.0質量%がより好ましく、0.04質量%~3.0質量%が更に好ましい。
【0335】
<水素供与性化合物>
感光性樹脂層は、水素供与性化合物を含んでいてもよい。
水素供与性化合物は、光重合開始剤の活性光線に対する感度を一層向上させる、及び、酸素によるエチレン性不飽和化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
水素供与性化合物としては、例えば、アミン類、及び、アミノ酸化合物が挙げられる。
【0336】
アミン類としては、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44-020189号公報、特開昭51-082102号公報、特開昭52-134692号公報、特開昭59-138205号公報、特開昭60-084305号公報、特開昭62-018537号公報、特開昭64-033104号公報、及び、Research Disclosure 33825号等に記載の化合物が挙げられる。より具体的には、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタン(別名:ロイコクリスタルバイオレット)、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、及び、p-メチルチオジメチルアニリンが挙げられる。
中でも、本開示における効果がより優れる点で、アミン類としては、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0337】
アミノ酸化合物としては、例えば、N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、N-エチル-N-フェニルグリシンが挙げられる。
中でも、本開示における効果がより優れる点で、アミノ酸化合物としては、N-フェニルグリシンが好ましい。
【0338】
また、水素供与性化合物としては、例えば、特公昭48-042965号公報に記載の有機金属化合物(トリブチル錫アセテート等)、特公昭55-034414号公報に記載の水素供与体、及び、特開平6-308727号公報に記載のイオウ化合物(トリチアン等)も挙げられる。
【0339】
水素供与性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が水素供与性化合物を含む場合、水素供与性化合物の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスとによる硬化速度の向上の点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~10.0質量%が好ましく、0.01質量%~8.0質量%がより好ましく、0.03質量%~5.0質量%が更に好ましい。
【0340】
<不純物等>
感光性樹脂層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。
第2の実施形態の感光性樹脂層における不純物については、第1の実施形態の感光性樹脂層において上述した不純物の好ましい態様と同様である。
【0341】
<残存モノマー>
感光性樹脂層は、上述したアルカリ可溶性樹脂の各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。
第2の実施形態の感光性樹脂層におけるアルカリ可溶性樹脂の各構成単位に対応する残存モノマーについては、第1の実施形態の感光性樹脂層において上述したアルカリ可溶性樹脂の各構成単位に対応する残存モノマーの好ましい態様と同様である。
【0342】
<他の成分>
感光性樹脂層は、既述の成分以外の成分(以下、「他の成分」ともいう。)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、及び、粒子(例えば、金属酸化物粒子)が挙げられる。また、他の成分としては、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤も挙げられる。
【0343】
-粒子-
粒子としては、金属酸化物粒子が好ましい。
金属酸化物粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及び、Te等の半金属も含まれる。
粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の点から、1nm~200nmが好ましく、3nm~80nmがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0344】
感光性樹脂層が粒子を含む場合、金属種、及び、大きさ等の異なる粒子を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
感光性樹脂層は、粒子を含まないか、あるいは、感光性樹脂層が粒子を含む場合には、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%超35質量%以下が好ましく、粒子を含まないか、あるいは、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%超10質量%以下がより好ましく、粒子を含まないか、或いは、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して0質量%超5質量%以下が更に好ましく、粒子を含まないか、あるいは、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して0質量%超1質量%以下が更に好ましく、粒子を含まないことが特に好ましい。
【0345】
-着色剤-
感光性樹脂層は、着色剤(顔料、染料等)を含んでいてもよいが、例えば、透明性の点からは、着色剤を実質的に含まないことが好ましい。
感光性樹脂層が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
【0346】
-酸化防止剤-
酸化防止剤としては、例えば、1-フェニル-3-ピラゾリドン(別名:フェニドン)、1-フェニル-4,4-ジメチル-3-ピラゾリドン、及び、1-フェニル-4-メチル-4-ヒドロキシメチル-3-ピラゾリドン等の3-ピラゾリドン類;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、及び、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類;パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、及び、パラフェニレンジアミンが挙げられる。
中でも、本開示における効果がより優れる点で、酸化防止剤としては、3-ピラゾリドン類が好ましく、1-フェニル-3-ピラゾリドンがより好ましい。
【0347】
感光性樹脂層が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、1質量%以下が好ましい。
【0348】
<感光性樹脂層の層厚>
感光性樹脂層の層厚は、特に制限されないが30μm以下の場合が多く、本開示における効果がより優れる点で、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましく、5.0μm以下が特に好ましい。下限としては、感光性樹脂層を硬化して得られる膜の強度が優れる点で、0.60μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。
感光性樹脂層の厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出できる。
【0349】
<感光性樹脂層の屈折率>
感光性樹脂層の屈折率は、1.47~1.56が好ましく、1.49~1.54がより好ましい。
【0350】
<感光性樹脂層の色>
感光性樹脂層は無彩色であることが好ましい。具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L,a,b)色空間において、L値は10~90であることが好ましく、a値は-1.0~1.0であることが好ましく、b値は-1.0~1.0であることが好ましい。
【0351】
なお、感光性樹脂層を硬化して得られるパターン(感光性樹脂層の硬化膜)は、無彩色であることが好ましい。
具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L,a,b)色空間において、パターンのL値は10~90であることが好ましく、パターンのa値は-1.0~1.0であることが好ましく、パターンのb値は-1.0~1.0であることが好ましい。
【0352】
〔屈折率調整層〕
感光性転写材料は、屈折率調整層を有していることが好ましい。
屈折率調整層としては、公知の屈折率調整層を適用できる。屈折率調整層に含まれる材料としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、金属塩、及び、粒子が挙げられる。
屈折率調整層の屈折率を制御する方法は、特に制限されず、例えば、所定の屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と粒子とを用いる方法、及び、金属塩と樹脂との複合体を用いる方法が挙げられる。
【0353】
アルカリ可溶性樹脂及びエチレン性不飽和化合物としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明したアルカリ可溶性樹脂及びエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0354】
粒子としては、例えば、金属酸化物粒子、及び、金属粒子が挙げられる。
金属酸化物粒子の種類は特に制限はなく、公知の金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及び、Te等の半金属も含まれる。
【0355】
粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の点から、1nm~200nmが好ましく、3nm~80nmがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0356】
金属酸化物粒子としては、具体的には、酸化ジルコニウム粒子(ZrO粒子)、Nb粒子、酸化チタン粒子(TiO粒子)、二酸化珪素粒子(SiO粒子)、及び、これらの複合粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらのなかでも、金属酸化物粒子としては、例えば、屈折率を調整しやすいという点から、酸化ジルコニウム粒子及び酸化チタン粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0357】
金属酸化物粒子の市販品としては、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック(株)製、製品名:ZRPGM15WT%-F04)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック(株)製、製品名:ZRPGM15WT%-F74)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック(株)製、製品名:ZRPGM15WT%-F75)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック(株)製、製品名:ZRPGM15WT%-F76)、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30M、日産化学工業(株)製)、及び、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30K、日産化学工業(株)製)が挙げられる。
【0358】
粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
屈折率調整層における粒子の含有量は、屈折率調整層の全質量に対し、1質量%~95質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%が更に好ましい。
金属酸化物粒子として酸化チタンを用いる場合、酸化チタン粒子の含有量は、屈折率調整層の全質量に対して、1質量%~95質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%が更に好ましい。
【0359】
屈折率調整層の屈折率は、感光性樹脂層の屈折率よりも高いことが好ましい。
屈折率調整層の屈折率は、1.50以上が好ましく、1.55以上がより好ましく、1.60以上が更に好ましく、1.65以上が特に好ましい。屈折率調整層の屈折率の上限は、2.10以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が更に好ましく、1.74以下が特に好ましい。
【0360】
屈折率調整層の層厚は、50nm~500nmが好ましく、55nm~110nmがより好ましく、60nm~100nmが更に好ましい。
【0361】
<第2実施形態の感光性転写材料の製造方法>
第2実施形態の感光性転写材料の製造方法は特に制限されず、公知の方法を使用できる。
図2に示す感光性転写材料10の製造方法としては、例えば、仮支持体1の表面に感光性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥して感光性樹脂層3を形成する工程と、感光性樹脂層3の表面に屈折率調整層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥して屈折率調整層5を形成する工程と、を含む方法が挙げられる。
【0362】
上述の製造方法により製造された積層体の屈折率調整層5上に、保護フィルム7を圧着させることにより、感光性転写材料10が製造される。
第1実施形態の感光性転写材料の製造方法としては、屈折率調整層5の仮支持体1を有する側とは反対側の面に接するように保護フィルム7を設ける工程を含むことにより、仮支持体1、感光性樹脂層3、屈折率調整層5、及び保護フィルム7を備える感光性転写材料10を製造することが好ましい。
上記の製造方法により感光性転写材料10を製造した後、感光性転写材料10を巻き取ることにより、ロール形態の感光性転写材料を作製及び保管してもよい。ロール形態の感光性転写材料は、後述するロールツーロール方式での基板との貼合工程にそのままの形態で提供できる。
【0363】
また、上記の感光性転写材料10の製造方法としては、保護フィルム7上に、屈折率調整層5を形成した後、屈折率調整層5の表面に感光性樹脂層3を形成する方法であってもよい。
また、上記の感光性転写材料10の製造方法としては、仮支持体1上に感光性樹脂層3を形成し、別途、保護フィルム7上に屈折率調整層5を形成し、感光性樹脂層3とに屈折率調整層5とを貼り合わせて形成する方法であってもよい。
【0364】
第2の実施形態における感光性樹脂組成物及び感光性樹脂層の形成方法については、第1の実施形態において上述した感光性樹脂組成物及び感光性樹脂層の形成方法と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0365】
<屈折率調整層形成用組成物及び屈折率調整層の形成方法>
屈折率調整層形成用組成物としては、上述した屈折率調整層を形成する各種成分と溶剤とを含むことが好ましい。なお、屈折率調整層形成用組成物において、組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した屈折率調整層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
溶剤としては、屈折率調整層に含まれる成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対して、50質量部~2,500質量部が好ましく、50質量部~1,900質量部がより好ましく、100質量部~900質量部が更に好ましい。
【0366】
屈折率調整層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0367】
また、保護フィルムを屈折率調整層に貼り合わせることにより、第2実施形態の感光性転写材料を製造できる。
保護フィルムを屈折率調整層に貼り合わせる方法は、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
保護フィルムを屈折率調整層に貼り合わせる装置としては、真空ラミネーター、及び、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターが挙げられる。
ラミネーターはゴムローラー等の任意の加熱可能なローラーを備え、加圧及び加熱ができるものであることが好ましい。
【0368】
(樹脂パターンの製造方法、及び、積層体の製造方法)
本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、仮支持体及び感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用いて基板上に樹脂パターンを形成する樹脂パターンの製造方法である。
樹脂パターンの製造方法としては、本開示に係る感光性転写材料における、上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、基板に接触させて貼り合わせる工程(以下「貼り合わせ工程」ともいう。)と、感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下「露光工程」ともいう。)と、露光された感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(以下「現像工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が好ましい。
また、本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、本開示における効果をより発揮する観点から、上記樹脂パターンの少なくとも一部にラインアンドスペースパターンを含むことが好ましく、上記樹脂パターンの少なくとも一部にラインアンドスペースパターンを含み、上記ラインアンドスペースパターンにおける少なくとも1組のライン及びスペースの幅が、合計で20μm以下であることがより好ましい。
【0369】
本開示に係る積層体の製造方法は、本開示に係る感光性転写材料を用いて基板上に樹脂パターンを有する積層体の製造方法である。
積層体の製造方法としては、上記保護フィルム剥離工程と、上記貼り合わせ工程と、上記露光工程と、上記現像工程と、をこの順に含む方法が好ましい。
【0370】
<貼り合わせ工程>
樹脂パターンの製造方法又は積層体の製造方法は、貼り合わせ工程を含むことが好ましい。
貼り合わせ工程においては、感光性転写材料における上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層に基板(基板の表面に導電層が設けられている場合は導電層)を接触させ、感光性転写材料と基板とを圧着させることが好ましい。上記態様であると、感光性転写材料における上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層と基板との密着性が向上するため、露光及び現像後のパターン形成された感光性樹脂層導電層をエッチングする際のエッチングレジストとして好適に用いることができる。
【0371】
なお、感光性転写材料が保護フィルムを備える場合は、感光性樹脂層の表面から保護フィルムを除去した後、貼り合わせればよい。
また、貼り合わせ工程は、感光性転写材料が感光性樹脂層の仮支持体と対向していない側の表面に保護フィルム以外の層(例えば高屈折率層及び/又は低屈折率層)を更に備える場合、感光性樹脂層の仮支持体を有していない側の表面と基板とがその層を介して貼り合わされる態様となる。
【0372】
基板と感光性転写材料とを圧着する方法としては、特に制限されず、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を用いることができる。
感光性転写材料の基板への貼り合わせは、感光性転写材料における上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層と基板と重ね、ロール等の手段を用いて加圧及び加熱を施すことにより、行われることが好ましい。貼り合わせには、ラミネーター、真空ラミネーター、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネーターが使用できる。
ラミネート温度としては、特に制限されないが、例えば、70℃~130℃であることが好ましい。
【0373】
貼り合わせ工程を含む樹脂パターンの製造方法及び回路配線の製造方法は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。
以下、ロールツーロール方式について説明する。
ロールツーロール方式とは、基板として、巻き取り及び巻き出しが可能な基板を用い、樹脂パターンの製造方法又は回路配線の製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、基板又は基板を含む構造体を巻き出す工程(「巻き出し工程」ともいう。)と、いずれかの工程の後に、基板又は基板を含む構造体を巻き取る工程(「巻き取り工程」ともいう。)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程、又は加熱工程以外の全ての工程)を、基板又は基板を含む構造体を搬送しながら行う方式をいう。
巻き出し工程における巻き出し方法、及び巻き取り工程における巻取り方法としては、特に制限されず、ロールツーロール方式を適用する製造方法において、公知の方法を用いればよい。
【0374】
<基板>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法又は積層体の製造方法に用いられる基板としては、公知の基板を用いればよいが、導電層を有する基板が好ましく、基板の表面に導電層を有することがより好ましい。
基板は、必要に応じて導電層以外の任意の層を有してもよい。
基板としては、例えば、樹脂基板、ガラス基板、及び、半導体基板が挙げられる。
基板の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落0140に記載が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0375】
基板を構成する基材としては、例えば、ガラス、シリコン及びフィルムが挙げられる。
基板を構成する基材は、透明であることが好ましい。本明細書において「透明である」とは、波長400nm~700nmの光の透過率が80%以上であることを意味する。
また、基板を構成する基板の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
【0376】
透明なガラス基板としては、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスが挙げられる。また、透明なガラス基板としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を用いることができる。
【0377】
基板としてフィルム基板を用いる場合は、光学的に歪みが小さく、かつ/又は、透明度が高いフィルム基板を用いることが好ましい。そのようなフィルム基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース及びシクロオレフィンポリマーが挙げられる。
【0378】
基板としては、ロールツーロール方式で製造する場合、フィルム基板が好ましい。また、ロールツーロール方式によりタッチパネル用の回路配線を製造する場合、基板がシート状樹脂組成物であることが好ましい。
【0379】
基板が有する導電層としては、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる導電層が挙げられる。
導電層としては、導電性及び細線形成性の観点から、金属層、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層及び導電ポリマー層よりなる群から選ばれた少なくとも1種の層が好ましく、金属層がより好ましく、銅層又は銀層が更に好ましい。
基板は、導電層を1層単独で有してよく、2層以上有してもよい。2層以上の導電層を有する場合は、異なる材質の導電層を有することが好ましい。
【0380】
導電層の材料としては、金属及び導電性金属酸化物が挙げられる。
金属としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo、Ag及びAuが挙げられる。
導電性金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)及びSiOが挙げられる。
なお、本明細書において「導電性」とは、体積抵抗率が1×10Ωcm未満であることをいう。導電性金属酸化物の体積抵抗率は、1×10Ωcm未満が好ましい。
【0381】
複数の導電層を有する基板を用いて樹脂パターンを製造する場合、複数の導電層のうち少なくとも一つの導電層は導電性金属酸化物を含有することが好ましい。
導電層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線が好ましい。
導電層の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落0141に記載が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0382】
導電層を有する基板としては、透明電極及び引き回し配線の少なくとも一方を有する基板が好ましい。上記のような基板は、タッチパネル用基板として好適に使用できる。
透明電極は、タッチパネル用電極として好適に機能し得る。透明電極は、ITO(酸化インジウムスズ)、及び、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の金属酸化膜、並びに、金属メッシュ、及び、銀ナノワイヤー等の金属細線により構成されることが好ましい。
金属細線としては、銀、銅等の細線が挙げられる。なかでも、銀メッシュ、銀ナノワイヤー等の銀導電性材料が好ましい。
【0383】
引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。
引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、及び、マンガン、並びに、これらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム、又は、チタンが好ましく、銅が特に好ましい。
【0384】
本開示に係る感光性転写材料を用いて形成されたタッチパネル用電極保護膜は、電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)を保護する目的で、電極等を直接又は他の層を介して覆うように設けられることが好ましい。
【0385】
<露光工程>
樹脂パターンの製造方法又は積層体の製造方法は、上記貼り合わせ工程の後、感光性樹脂層をパターン露光する工程(露光工程)を含むことが好ましい。
なお、ここで、「パターン露光」とは、パターン状に露光する形態、すなわち、露光部と非露光部とが存在する形態の露光を指す。
パターン露光における露光領域と未露光領域との位置関係は特に制限されず、適宜調整される。
【0386】
パターン露光におけるパターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に制限されない。例えば、回路配線の製造方法により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積が小さくなるように、パターンの少なくとも一部(好ましくはタッチパネルの電極パターン及び/又は取り出し配線の部分)は幅が20μm以下である細線を含むことが好ましく、幅が10μm以下の細線を含むことがより好ましい。
【0387】
露光に使用する光源は、感光性樹脂層を露光可能な波長の光(例えば、365nm又は405nm)を照射する光源であれば、適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
露光量としては、5mJ/cm~200mJ/cmが好ましく、10mJ/cm~100mJ/cmがより好ましい。
露光に使用する光源、露光量及び露光方法の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落0146~0147に記載が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0388】
露光工程においては、感光性樹脂層から仮支持体を剥離した後にパターン露光してもよく、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介してパターン露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。マスクは、露光前に仮支持体を剥離した場合には、感光性樹脂層と接触させて露光してもよいし、接触せずに近接させて露光してもよい。仮支持体を剥離せずに露光する場合には、マスクは、仮支持体と接触させて露光してもよいし、接触せずに近接させて露光してもよい。感光性樹脂層とマスクとの接触によるマスク汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずにパターン露光することが好ましい。なお、露光方式は、接触露光の場合は、コンタクト露光方式、非接触露光方式の場合は、プロキシミティ露光方式、レンズ系又はミラー系のプロジェクション露光方式、露光レーザー等を用いたダイレクト露光方式を適宜選択して用いることができる。レンズ系又はミラー系のプロジェクション露光の場合、必要な解像力、焦点深度に応じて、適当なレンズの開口数(NA)を有する露光機を用いることができる。ダイレクト露光方式の場合は、直接感光性樹脂層に描画を行ってもよいし、レンズを介して感光性樹脂層に縮小投影露光をしてもよい。また、露光は大気下で行うだけでなく、減圧、真空下で行ってもよく、また、光源と感光性樹脂層との間に水等の液体を介在させて露光してもよい。
【0389】
<剥離工程>
樹脂パターンの製造方法又は積層体の製造方法は、貼り合わせ工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、仮支持体を剥離する剥離工程を含んでいてもよい。
仮支持体の剥離方法は特に制限されず、特開2010-072589号公報の段落0161~0162に記載されたカバーフィルム剥離機構と同様の機構を使用できる。
【0390】
<現像工程>
樹脂パターンの製造方法は、上記露光工程の後、露光された感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(現像工程)を含むことが好ましい。
感光性転写材料が熱可塑性樹脂及び中間層を有する場合、現像工程において、非露光部の熱可塑性樹脂層及び中間層も、非露光部の感光性樹脂層とともに除去される。また、現像工程において、露光部の熱可塑性樹脂層及び中間層も現像液に溶解あるいは分散する形で除去されてもよい。
【0391】
現像工程における露光された感光性樹脂層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液としては、感光性樹脂層の非画像部(非露光部)を除去することができれば特に制限されず、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液等の公知の現像液が使用できる。
現像液としては、pKa=7~13の化合物を0.05mol/L~5mol/L(リットル)の濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液が好ましい。現像液は、水溶性の有機溶剤及び/又は界面活性剤を含有してもよい。
アルカリ性水溶液に含まれ得るアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、及び、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)が挙げられる。
現像液としては、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液も好ましく挙げられる。好適に用いられる現像方式としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0195に記載の現像方式が挙げられる。
【0392】
現像方式としては、特に制限されず、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、並びに、ディップ現像のいずれであってもよい。シャワー現像とは、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、非露光部を除去する現像処理である。
現像工程の後に、洗浄剤をシャワーにより吹き付け、ブラシで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温は特に制限されないが、20℃~40℃が好ましい。
【0393】
<保護フィルム剥離工程>
感光性転写材料が保護フィルムを備える場合、樹脂パターンの製造方法又は積層体の製造方法は、感光性転写材料から保護フィルムを剥離する工程を含むことが好ましい。保護フィルムを剥離する方法は、制限されず、公知の方法を適用することができる。
【0394】
<ポスト露光工程及びポストベーク工程>
樹脂パターンの製造方法又は積層体の製造方法は、上記現像工程によって得られた樹脂パターンを、露光する工程(ポスト露光工程)、及び/又は、加熱する工程(ポストベーク工程)を有していてもよい。
ポスト露光工程及びポストベーク工程の両方を含む場合、ポスト露光の後、ポストベークを実施することが好ましい。
【0395】
<その他の工程>
樹脂パターンの製造方法又は積層体の製造方法は、上述した工程以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。例えば、以下に示す回路配線の製造方法又はタッチパネルの製造方法に記載の工程等が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
【0396】
<用途>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法により製造された樹脂パターン、及び、本開示に係る積層体の製造方法により製造される積層体は、種々の装置に適用することができる。上記積層体を備えた装置としては、例えば、入力装置等が挙げられ、タッチパネルであることが好ましく、静電容量型タッチパネルであることがより好ましい。また、上記入力装置は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、液晶表示装置等の表示装置に適用することができる。
積層体がタッチパネルに適用される場合、形成された樹脂パターンは、タッチパネル用電極又はタッチパネル用配線の保護膜として用いられることが好ましい。つまり、本開示に係る感光性転写材料は、タッチパネル用電極保護膜又はタッチパネル用配線の形成に用いられることが好ましい。
【0397】
(回路配線の製造方法)
本開示に係る回路配線の製造方法は、本開示に係る感光性転写材料を用いる方法であれば、特に制限されない。
本開示に係る回路配線の製造方法としては、本開示に係る感光性転写材料における、上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程(以下「エッチング工程」ともいう。)と、をこの順に含むことが好ましい。
以下、回路配線の製造方法が含む各工程について説明するが、特に言及した場合を除き、樹脂パターンの製造方法に含まれる各工程について説明した内容は、回路配線の製造方法に含まれる各工程についても適用されるものとする。
【0398】
<エッチング工程>
回路配線の製造方法は、上記樹脂パターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程(エッチング工程)を含むことが好ましい。
【0399】
エッチング工程では、感光性樹脂層から形成された樹脂パターンを、エッチングレジストとして使用し、導電層のエッチング処理を行う。
エッチング処理の方法としては、公知の方法を適用でき、例えば、特開2017-120435号公報の段落0209~段落0210に記載の方法、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054に記載の方法、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法、及び、プラズマエッチング等のドライエッチングによる方法が挙げられる。
【0400】
ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性又はアルカリ性のエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性のエッチング液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸及びリン酸から選択される酸性成分単独の水溶液、並びに、酸性成分と、塩化第2鉄、フッ化アンモニウム及び過マンガン酸カリウムから選択される塩との混合水溶液が挙げられる。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分であってもよい。
アルカリ性のエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、及び、有機アミンの塩(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)から選択されるアルカリ成分単独の水溶液、並びに、アルカリ成分と塩(過マンガン酸カリウム等)との混合水溶液が挙げられる。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分であってもよい。
【0401】
<除去工程>
回路配線の製造方法においては、残存する樹脂パターンを除去する工程(除去工程)を行うことが好ましい。
除去工程は、特に制限されず、必要に応じて行うことができるが、エッチング工程の後に行うことが好ましい。
残存する樹脂パターンを除去する方法としては特に制限されないが、薬品処理により除去する方法が挙げられ、除去液を用いて除去する方法が好ましい。
感光性樹脂層の除去方法としては、液温が好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃である撹拌中の除去液に、残存する樹脂パターンを有する基板を、1分間~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0402】
除去液としては、例えば、無機アルカリ成分又は有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶液に溶解させた除去液が挙げられる。無機アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。有機アルカリ成分としては、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物及び第四級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
また、除去液を使用し、スプレー法、シャワー法及びパドル法等の公知の方法により除去してもよい。
【0403】
<その他の工程>
回路配線の製造方法は、上述した工程以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。例えば、以下の工程が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
また、回路配線の製造方法に適用可能な露光工程、現像工程、及びその他の工程としては、特開2006-23696号公報の段落0035~0051に記載の工程が挙げられる。
更に、その他の工程としては、例えば、国際公開第2019/022089号の段落0172に記載の可視光線反射率を低下させる工程、国際公開第2019/022089号の段落0172に記載の絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程等が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
【0404】
-可視光線反射率を低下させる工程-
回路配線の製造方法は、基板が有する複数の導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理を行う工程を含んでいてもよい。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理が挙げられる。基板が銅を含有する導電層を有する場合、銅を酸化処理して酸化銅とし、導電層を黒化することにより、導電層の可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理については、特開2014-150118号公報の段落0017~0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載されており、これらの公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0405】
-絶縁膜を形成する工程、絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程-
回路配線の製造方法は、回路配線の表面に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程と、を含むことも好ましい。
上記の工程により、第一の電極パターンと絶縁した第二の電極パターンを形成することができる。
絶縁膜を形成する工程としては、特に制限されず、公知の永久膜を形成する方法が挙げられる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程は、特に制限されず、例えば、導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電層を形成してもよい。
【0406】
回路配線の製造方法は、基板の両方の表面にそれぞれ複数の導電層を有する基板を用い、基板の両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、基板の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成できる。また、このような構成のタッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで基板の両面から形成することも好ましい。
【0407】
<回路配線の用途>
回路配線の製造方法により製造される回路配線は、種々の装置に適用することができる。上記の製造方法により製造される回路配線を備えた装置としては、例えば、入力装置が挙げられ、タッチパネルが好ましく、静電容量型タッチパネルがより好ましい。また、上記入力装置は、有機EL表示装置及び液晶表示装置等の表示装置に適用できる。
【0408】
(タッチパネルの製造方法)
本開示に係るタッチパネルの製造方法は、本開示に係る感光性転写材料を用いる方法であれば、特に制限されない。
本開示に係るタッチパネルの製造方法としては、本開示に係る感光性転写材料における、上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程と、をこの順に含むことが好ましい。
【0409】
タッチパネルの製造方法における、各工程の具体的な態様、及び、各工程を行う順序等の実施態様については、上述の「樹脂パターンの製造方法」及び「回路配線の製造方法」の項において説明した通りであり、好ましい態様も同様である。
タッチパネルの製造方法は、上記の方法によりタッチパネル用配線を形成すること以外は、公知のタッチパネルの製造方法を参照すればよい。
また、タッチパネルの製造方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。
【0410】
タッチパネルの製造に用いられるマスクのパターンの一例を、図3及び図4に示す。
図3に示されるパターンA、及び、図4に示されるパターンBにおいて、GRは非画像部(遮光部)であり、EXは画像部(露光部)であり、DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。タッチパネルの製造方法において、例えば、図3に示されるパターンAを有するマスクを介して上記感光性樹脂層を露光することで、EXに対応するパターンAを有する回路配線が形成されたタッチパネルを製造できる。具体的には、国際公開第2016/190405号の図1に記載の方法で作製できる。製造されたタッチパネルの一例においては、露光部EXの中央部(資格が連結したパターン部分)は透明電極(タッチパネル用電極)が形成される部分であり、露光部EXの周縁部(細線部分)は周辺取出し部の配線が形成される部分である。
【0411】
上記のタッチパネルの製造方法により、タッチパネル用配線を少なくとも有するタッチパネルが製造される。タッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを有することが好ましい。
タッチパネルにおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び、光学方式等の公知の方式が挙げられる。中でも、静電容量方式が好ましい。
【0412】
タッチパネル型としては、いわゆるインセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5図6図7及び図8に記載のもの)、いわゆるオンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載のもの、並びに、特開2012-89102号公報の図1及び図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の図2に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1及びG1F等)並びにその他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載のもの)が挙げられる。
タッチパネルとしては、例えば、特開2017-120435号公報の段落0229に記載のものが挙げられる。
【実施例
【0413】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0414】
実施例及び比較例で使用した化合物の略称の詳細を、以下に示す。
<アルカリ可溶性樹脂>
A-1:スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル=32/28/40(質量%)、Mw=40,000
A-2:スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル=52/29/19(質量%)、Mw=60,000
A-3:メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸=81/19(質量%)、Mw=40,000
A-4:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/アクリル酸=75/10/15の共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度30.0%、Mw=30,000、酸価153mgKOH/g)
A-5:クラレポバールPVA-205(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製)
A-6:ポリビニルピロリドンK-30((株)日本触媒製)
【0415】
<エチレン性不飽和化合物>
B-1:NKエステルBPE-500(2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、新中村化学工業(株)製)
B-2:NKエステルBPE-200(2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、新中村化学工業(株)製)
B-3:ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均15モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート
B-4:ライトアクリレートDPE-6A(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学(株)製)
B-5:アロニックスM-270(ポリプロピレングリコールジアクリレート、東亞合成(株)製)
B-6:NKエステルA-TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学工業(株)製)
B-7:サートマーSR-454(エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、アルケマ社製)
B-8:サートマーSR-502(エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、アルケマ社製)
B-9:NKエステルA-9300-CL1(ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、新中村化学工業(株)製)
B-10:NKエステルA-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業(株)製)
B-11:8UX-015A(ウレタンアクリレート、大成ファインケミカル(株)製)
B-12:アロニックスTO-2349(カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物、東亞合成(株)製)
【0416】
<光重合開始剤>
C-1:B-CIM(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、黒金化成(株)製)
C-2:SB-PI 701(4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、三洋貿易(株)より入手)
C-3:Omnirad 907(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、IGM Resins B.V.製)
C-4:Irgacure OXE02(1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)、BASF社製)
C-5:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(関東化学(株)製)
【0417】
<重合禁止剤>
D-1:TDP-G(フェノチアジン、川口化学工業(株)製)
D-2:フェノキサジン(東京化成工業(株)製)
D-3:Irganox245(ヒンダードフェノール系重合禁止剤、BASF社製)
D-4:N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(富士フイルム和光純薬(株)製)
D-5:MQ(4-メトキシフェノール、川口化学工業(株)製)
【0418】
<その他の添加剤>
E-1:ロイコクリスタルバイオレット(発色剤、東京化成工業(株)製)
E-2:N-フェニルカルバモイルメチル-N-カルボキシメチルアニリン(発色剤、富士フイルム和光純薬(株)製)
E-3:ブリリアントグリーン(発色剤、東京化成工業(株)製)
E-4:CBT-1(防錆剤、カルボキシベンゾトリアゾール、城北化学工業(株)製)
E-5:1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-5-カルボキシルベンゾトリアゾールと1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-6-カルボキシルベンゾトリアゾールの1:1(質量比)混合物、防錆剤
E-6:フェニドン(酸化防止剤、東京化成工業(株)製)
E-7:メガファックF-552(フッ素系界面活性剤、DIC(株)製)
E-8:メガファックF-444(フッ素系界面活性剤、DIC(株)製)
【0419】
<溶剤>
F-1:メチルエチルケトン(三協化学(株)製)
F-2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工(株)製)
F-3:イオン交換水
F-4:メタノール(三菱ガス化学(株)製)
【0420】
<熱可塑性樹脂組成物の調製>
以下の成分を混合して熱可塑性樹脂組成物を調製した。
・A-4:42.85部
・B-10:4.63部
・B-11:2.31部
・B-12:0.77部
・E-7:0.03部
・F-1:39.50部
・F-2:9.51部
・下記に示す構造の化合物(光酸発生剤、特開2013-47765号公報の段落0227に記載の方法に従って合成した化合物。):0.32部
【0421】
【化25】
【0422】
・下記に示す構造の化合物(酸により発色する色素):0.08部
【0423】
【化26】
【0424】
<中間層組成物の調製>
以下の成分を混合して中間層組成物を調製した。
・A-5:3.22部
・A-6:1.49部
・E-8:0.0015部
・F-3:38.12部
・F-4:57.17部
【0425】
<感光性樹脂組成物の調製>
後述する表1に記載の組成にて、実施例及び比較例で使用する各感光性樹脂組成物を調製した。
【0426】
(実施例1~16、及び、比較例1~3)
<感光性転写材料の作製>
仮支持体として厚さ30μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。仮支持体の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、且つ、乾燥後の層厚が4.0μmとなるように上記の熱可塑性樹脂組成物を塗布した。形成された熱可塑性樹脂組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥し、熱可塑性樹脂層を形成した。
形成された熱可塑性樹脂層の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、且つ、乾燥後の層厚が1.2μmとなるように上記の中間層組成物を塗布した。中間層組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥し、中間層を形成した。
形成された中間層の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、且つ、乾燥後の層厚が表1に記載の層厚となるように、表1に記載の組成の感光性樹脂組成物を塗布した。感光性樹脂組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥し、感光性樹脂層を形成した。
形成された感光性樹脂層の表面に、保護フィルムとしてPETフィルム(東レ(株)製、ルミラー16QS62)を圧着し、実施例及び比較例の感光性転写材料をそれぞれ作製した。
【0427】
<感光性転写材料の評価>
-ラミネート-
得られた感光性転写材料から保護フィルムを剥離し、剥離した感光性転写材料を基板(100μmPETフィルム上に、200nm厚の銅層をスパッタで作製したもの)にシートラミネーターでラミネートした。ラミネート条件は、ロール温度100℃、ラミネート速度2m/min、ラミネート圧力0.5MPaとした。
【0428】
-Ebの測定、及び、感度の評価-
ラミネートした感光性転写材料の仮支持体上に15段ステップウェッジ(富士フイルム(株)製)を配置し、20mW/cmの高圧水銀灯で180mJ/cmの露光を行った。露光後、支持体を剥離し、25℃の0.9質量%炭酸ナトリウム水溶液にて30秒現像し、各ステップごとの残存膜厚からEbを求めた。
なお、Ebの値としては、一般的なフォトリソグラフィプロセスへの適性観点から、好ましい値の範囲が存在する。Ebが25mJ/cm以上であると、感度が適度であり、装置の追随性に優れ、また、Ebが90mJ/cm以下であると、露光時間が短くでき、生産性に優れる。
感度について、Eb(mJ/cm)の値に基づき以下の基準で評価した。感光性転写材料としては、A~Cが好ましく、A又はBがより好ましい。
A:35≦Eb(mJ/cm)≦70
B:25≦Eb(mJ/cm)<35、又は、70<Eb(mJ/cm)≦90
C:90<Eb(mJ/cm
D:Eb(mJ/cm)<25
【0429】
-Wの測定-
上記基板上にラミネートした感光性転写材料を、ラインアンドスペース=10μm/10μmのフォトマスクを仮支持体上にコンタクトさせ、Ep=2×Eb(mJ/cm)で露光した。露光後、3時間経過した後、仮支持体、熱可塑性樹脂層、及び、中間層をテープで剥離し、臭素水(0.2%)を50mL容器に5mL分取し、分取液に接触しないように容器内に試料を固定し、室温(25℃)で5min静置した。その後、高真空下で半日保管して残留臭素を脱気した。これにより、炭素-炭素二重結合部を臭素修飾した試料を作製した。
この試料を二次イオン質量分析法(ION-TOF社SIMS 5、一次イオン源:Bi3+(30kV)、測定範囲:50mm、面分解能:512×512pixel、積算:32回、測定モード:高空間分解能モード(Fast Imaging)、帯電補正:電子銃使用)を用いて、CHBr領域部の広さを評価した。CHBr強度が小さい部分を、重合が進行した領域幅とした。3点について重合が進行した領域幅を測定し、その平均値をWとした。
【0430】
-W24の測定-
露光後の経過時間を変更した以外は、Wの測定と同様にして、パターン露光後24時間経過後の重合進行領域幅W24を求めた。また、W24/Wの値を算出した。
【0431】
-W72の測定-
露光後の経過時間を変更した以外は、Wの測定と同様にして、パターン露光後72時間経過後の重合進行領域幅W72を求めた。また、W72/Wの値を算出した。
【0432】
<露光後24時間引き置き時線幅変化>
上記基板上にラミネートした感光性転写材料を、ラインアンドスペース=10μm/10μmのフォトマスクを仮支持体上にコンタクトさせ、Ep=2×Eb(mJ/cm)で露光した。露光後、3時間、又は、24時間経過後、仮支持体を剥離して25℃の1%炭酸ナトリウム水溶液をシャワーリングし、未露光部を溶解してレジストパターンを得た。得られたレジストパターンの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像から、感光性樹脂層と基板とが接する部分の線幅を測定した。露光後3時間後に現像した線幅をWr、24時間後に現像した線幅をWr24とし、Wr24/Wrを求めた。この比が1に近いほど、露光後引き置き時の線幅変化が小さく、好ましい性能を持つと言える。Wr24/Wrを以下の基準で評価した。感光性転写材料としては、A又はBが好ましい。
A:Wr24/Wr<1.03
B:1.03≦Wr24/Wr<1.05
C:1.05≦Wr24/Wr<1.1
D:1.1≦Wr24/Wr
【0433】
<現像温度変化時線幅変化>
上記基板上にラミネートした感光性転写材料を、ラインアンドスペース=10μm/10μmのフォトマスクを仮支持体上にコンタクトさせ、Ep=2×Eb(mJ/cm)で露光した。露光後、3時間経過後、仮支持体を剥離して30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液をシャワーリングし、未露光部を溶解してレジストパターンを得た。得られたレジストパターンの断面SEM画像から線幅Wr3bを測定し、Wr3b/Wrを求めた。この比が1に近いほど、現像温度変動時の線幅変化が小さく、プロセスロバストネスが広く好ましいと言える。Wr3b/Wrを以下の基準で評価した。感光性転写材料としては、A又はBが好ましい。
A:Wr3b/Wr<1.03
B:1.03≦Wr3b/Wr<1.05
C:1.05≦Wr3b/Wr
【0434】
測定結果、及び、評価結果を表2にまとめて示す。
【0435】
【表1】
【0436】
【表2】
【0437】
上記表1及び表2に示すように、実施例1~16の感光性転写材料は、比較例1~3の感光性転写材料と比べ、露光後の引き置き時間の経過に伴う樹脂パターンの線幅変化が小さい。
また、実施例1~16の感光性転写材料は、現像温度変化に伴う樹脂パターンの線幅変化が小さく、また、感度にも優れる。
【0438】
(実施例101(2回目:PET剥離露光))
100ミクロン厚PET基材上に、第2層の導電層としてITOをスパッタリングで150nm厚にて成膜し、その上に第1層の導電層として銅を真空蒸着法で200nm厚にて成膜して、回路形成用基板とした。
銅層上に実施例1で得た感光性転写材料をラミネートした(ラミロール温度120℃、線圧0.8MPa、線速度1.0m/min.)。ラミネートした積層体を、仮支持体を剥離せずに一方向に導電層パッドが連結された構成を持つ図3に示すパターンAを設けたフォトマスクを用いてコンタクトパターン露光した。その後仮支持体を剥離し、現像、水洗を行ってパターンAを得た。次いで銅エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて銅層をエッチングした後、ITOエッチング液(関東化学(株)製ITO-02)を用いてITO層をエッチングすることで、銅とITOが共にパターンAで描画された基板を得た。
残った感光性樹脂層(パターンA)を剥離液(関東化学(株)製KP-301)を用いて剥離し、再度、銅層上に実施例1で得た感光性転写材料をラミネートした(ラミロール温度120℃、線圧0.8MPa、線速度1.0m/min.)。
次いで、アライメントを合わせた状態で図4に示すパターンBのフォトマスクを用いてパターン露光し、現像、水洗を行った。その後、Cu-02を用いて銅層をエッチングし、残った感光性樹脂層(パターンB)を剥離液(関東化学(株)製KP-301)を用いて剥離し、回路配線基板を得た。
得られた回路配線基板を、顕微鏡で観察したところ、剥がれや欠けなどは無く、きれいなパターンであった。
なお、図3に示すパターンAは、グレー部であるGRが遮光部であり、EXが露光部であり、点線部であるDLは、アライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。
また、図4に示すパターンBは、図3と同様に、グレー部であるGRが遮光部であり、EXが露光部であり、点線部であるDLは、アライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。
【0439】
2020年9月17日に出願された日本国特許出願第2020-156353号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0440】
1,11:仮支持体、2,12:転写層、3,17:感光性樹脂層、5:屈折率調整層、13:熱可塑性樹脂層、15:中間層、10,20:感光性転写材料、GR:遮光部(非画像部)、EX:露光部(画像部)、DL:アライメント合せの枠
図1
図2
図3
図4