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  • 特許-電子顕微鏡用光ガイドアセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電子顕微鏡用光ガイドアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20241203BHJP
   H01J 37/18 20060101ALI20241203BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/18
H01J37/16
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020154942
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2021048129
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】19197530.9
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マレク ウンコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ゲリーク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ラスコ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093465(WO,A1)
【文献】特開2007-010392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡システムのための光ガイドアセンブリであって、
1つ以上の検出器と、電子源からの電子ビームが通過する圧力制限アパーチャを含むミラーと、を有する光ガイドアセンブリ、
を備え、
前記ミラーは、光を反射して後方散乱電子と二次電子とを収集し、前記後方散乱電子を二次電子に変換するように構成されており
前記ミラーは、サンプルからの光を光検出器に反射するように構成されており、
前記ミラーは、光源からの光を前記サンプルに反射するように構成されている、光ガイドアセンブリ。
【請求項2】
電子顕微鏡システムのための光ガイドアセンブリであって、
1つ以上の検出器と、電子源からの電子ビームが通過する圧力制限アパーチャを含むミラーと、を有する光ガイドアセンブリ、
を備え、
前記ミラーは、光を反射して後方散乱電子と二次電子とを収集し、前記後方散乱電子を二次電子に変換するように構成されており、
前記光ガイドアセンブリは、変換された前記二次電子を収集するように構成された収集電極をさらに含む、
ガイドアセンブリ。
【請求項3】
前記収集電極は、前面板を含み、前記前面板は、アパーチャを備え、前記後方散乱電子および前記二次電子がそれを通って前記ミラーへ移動する、
請求項に記載の光ガイドアセンブリ。
【請求項4】
前記光ガイドアセンブリは、二次電子を収集するように構成された電極をさらに含む、
請求項1に記載の光ガイドアセンブリ。
【請求項5】
前記1つ以上の検出器は、後方散乱電子を検出するように構成されてる、
請求項1~のいずれか一項に記載の光ガイドアセンブリ。
【請求項6】
前記1つ以上の検出器は、1つ以上の固体ダイオード検出器を備える、
請求項5に記載の光ガイドアセンブリ。
【請求項7】
電子磁極片、および
前記電子磁極片に動作可能に結合された、請求項1~のいずれか一項に記載の光ガイドアセンブリ、
を備える、
電子顕微鏡システム。
【請求項8】
低真空環境であるチャンバーを更に備え、前記電子磁極片および前記光ガイドアセンブリが前記チャンバー内に配置されている、
請求項に記載の電子顕微鏡システム。
【請求項9】
前記電子ビームは、前記チャンバー内に配置されたサンプルに進み、
前記サンプルは、前記電子ビームに応じて前記後方散乱電子と前記二次電子を生成する、
請求項に記載の電子顕微鏡システム。
【請求項10】
前記光ガイドアセンブリは、前記電子磁極片の最終レンズに動作可能に結合されている、
請求項7~9のいずれか一項に記載の電子顕微鏡システム。
【請求項11】
前記光ガイドアセンブリと前記電子磁極片は、耐圧シールと動作可能に結合するように構成されている、
請求項7~10のいずれか一項に記載の電子顕微鏡システム。
【請求項12】
前記ミラーは、前記電子磁極片に前記耐圧シールを提供する、
請求項11に記載の電子顕微鏡システム。
【請求項13】
前記光ガイドアセンブリおよび中間要素は、前記耐圧シールと動作可能に結合するように構成されており、
前記中間要素および前記電子磁極片は、前記耐圧シールと動作可能に結合するように構成されている、
請求項11に記載の電子顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ラマン分光法および/またはカソードルミネッセンス検出が可能な電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラマン分光法またはカソードルミネッセンス検出を電子顕微鏡法と組み合わせると、特に環境走査型電子顕微鏡(ESEM)技術と呼ばれるものを使用する場合に、多くの利点があることが認識されている。例えば、ラマン顕微鏡法は材料の識別に役立ち、走査型電子顕微鏡法と組み合わせると、組成および/または構造の異なる特性を持ち得るサンプルの特徴を明確に識別することができる。ESEM技術は、画像の解像度を低下させるサンプルの動きを生成するサンプルの乾燥を減らす、低真空で比較的湿度の高い環境で、イメージングが可能なモードで動作できる。しかしながら、一般に低真空、高湿度の環境は、電子顕微鏡の結像性能に悪影響を及ぼすことが認識されている。ここで説明する例では、圧力制限アパーチャ(PLA)と呼ばれるものを使用して、ESEM技術に有益な低真空環境と電子顕微鏡法に有益な高真空環境とを分離する。
【0003】
電子顕微鏡とラマン分光法またはカソードルミネッセンス検出用の光学素子とPLAの組み合わせはよく知られており、その例は、「粒子と光子でサンプルを同時に観察するための粒子光学装置」という発明の名称の米国特許第7,718,979号に記載されている。その開示は、様々な目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれている。例えば、‘979特許には、電子柱磁極片とサンプルとの間の中央に穴のあるミラーが記載されている。電子ビームはソースから移動してミラーの穴を通過し、サンプルと相互作用する。また、ミラーは、光源からの光を反射してサンプルに向け直し、サンプルからの光を収集して光検出器に向けるように配置されている表面を有する。
【0004】
しかしながら、前述の実施形態には、いくつかの重大な欠点がある。まず、ミラーは高真空環境での使用に限定されており、光を反射するために使用されるミラーはサンプルと電子柱磁極片との間に配置されるため、ミラーは電子がサンプルから電子柱磁極片に到達する能力を大幅に低下させる。これにより、電子顕微鏡検出器の効率が大幅に低下する。さらに、電子ビーム経路の作動距離をできるだけ短く維持することが非常に望ましい。しかし、前述のPLA構成では作動距離が増加し、電子顕微鏡の結像性能が低下する。
【0005】
したがって、信号の遮断や作動距離の増加による悪影響なしに、低真空環境でラマン分光法が可能になるように構成された電子顕微鏡の設計は、以前の実施形態に比べて大きな利点がある。
【発明の概要】
【0006】
これらおよび他の必要性に対処するシステム、方法、および製品は、例示的、非限定的な実装に関して本明細書に説明される。様々な代替、変更および等価物が可能である。
【0007】
電子顕微鏡システムの実施形態は、電子柱磁極片と、電子柱磁極片に動作可能に結合される光ガイドアセンブリとを備えることが記載されている。また、光ガイドアセンブリは、1つ以上の検出器と、電子源からの電子ビームが通過する圧力制限アパーチャを含むミラーとを備える。また、ミラーは、光を反射するよう、かつ後方散乱電子と二次電子を収集するように構成されている。
【0008】
電子顕微鏡システムの一部の実装では、電子柱磁極片と光ガイドアセンブリが低真空環境のチャンバー内に配置され、電子ビームは、電子ビームに応じて後方散乱電子と二次電子を生成するサンプルに進む。また、場合によっては、光ガイドアセンブリは、電子柱磁極片の電子レンズに動作可能に結合される。
【0009】
また、光ガイドアセンブリおよび電子柱磁極片は、耐圧シールと動作可能に結合するように構成されてもよい。より具体的には、ミラーは、電子柱磁極片に耐圧シールを提供することができる。あるいは、光ガイドアセンブリおよび中間要素は、耐圧シールと動作可能に結合するように構成されてもよく、中間要素および電子柱磁極片は、耐圧シールと動作可能に結合するように構成されてもよい。
【0010】
さらに、ミラーは、サンプルからの光を光検出器に反射し、光源からの光をサンプルに反射するように構成されてもよい。光源は、レーザーまたは発光ダイオード(LED)を含んでもよい。ミラーはまた、後方散乱電子を二次電子に変換するように構成されてもよく、光ガイドアセンブリはまた、変換された二次電子を収集するように構成された収集電極をさらに含んでもよい。特に、収集電極は、アパーチャを備えた前面板を含んでもよく、後方散乱電子および二次電子がそれを通ってミラーへ移動する。
【0011】
最後に、いくつかの実装では、光ガイドアセンブリは、二次電子を収集するように構成された電極をさらに含んでもよく、場合によっては、1つ以上の検出器は、1つ以上の固体ダイオード検出器を含む。
【0012】
また、電子源からの電子ビームが通過する圧力制限アパーチャを含むミラーを備える光ガイドアセンブリの実施形態が記載されている。また、ミラーは、光を反射するよう、かつ後方散乱電子および二次電子を収集するように構成される。
【0013】
場合によっては、ミラーと電子柱磁極片は、耐圧シールと動作可能に結合するように構成される。ミラーは、電子磁極片の電子レンズと動作可能に結合するように構成されることがある。あるいは、ミラーおよび中間要素は、耐圧シールと動作可能に結合するように構成され、中間要素および電子柱磁極片は、耐圧シールと動作可能に結合するように構成される。また、電子ビームは、チャンバー内に配置されたサンプルに進み、サンプルは、電子ビームに応じて後方散乱電子および二次電子を生成する。
【0014】
さらに、ミラーは、サンプルからの光を光検出器に反射し、光源からの光をサンプルに反射するように構成されてもよい。場合によっては、光源は、レーザーまたは発光ダイオード(LED)である。また、ミラーは、後方散乱電子を二次電子に変換するように構成されてもよい。
【0015】
場合によっては、光ガイドアセンブリは、ミラーによって後方散乱電子から変換された二次電子を収集するように構成された収集電極をさらに含み、収集電極は、アパーチャを備えた前面板を含んでもよく、後方散乱電子および二次電子がそれを通ってミラーへ移動する。また、光ガイドアセンブリは、後方散乱電子を検出するように構成された1つ以上の検出器と、二次電子を収集するように構成された他の電極とを含んでもよい。特に、1つ以上の検出器は、固体ダイオード検出器であってもよい。
【0016】
上記の実施形態および実装は、必ずしも互いに包含的または排他的ではなく、それらが、同一または異なる、実施形態または実装と関連して提示されているか否かにかかわらず、矛盾せず、かつ別様に可能な任意の様式で組み合わせられ得る。一実施形態または実装の説明は、他の実施形態および/または実装に関して限定することを意図するものではない。また、本明細書の他の箇所に説明されている任意の1つ以上の機能、ステップ、動作、または技術は、代替的な実装において、発明の概要に説明された任意の1つ以上の機能、ステップ、動作、または技術と組み合わせられ得る。したがって、上記の実施形態および実装は、限定ではなく例示的である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
上記およびさらなる特徴は、添付の図面と併せて読まれたときに、以下の詳細な説明からより明確に理解されよう。図面において、類似の参照番号は、類似の構造、要素、または方法ステップを示し、参照番号の左端の数字は、参照要素が最初に現れる図の番号を示す(例えば、要素110は、図1の最初に現れる)。しかしながら、これらの規則の全ては、限定ではなく、典型的または例示的であることを意図している。
図1図1は、コンピュータと通信する走査型電子顕微鏡の一実施形態を簡略化した図である。
図2図2は、光ガイドアセンブリを備えた図1の走査型電子顕微鏡の一実施形態を簡略化した図である。
図3A図3Aは、約1ミリバールを超える圧力で、ミラーが二次電子を収集するモードで動作する図2の光ガイドアセンブリの側面図の一実施形態を簡略化した図である。
図3B図3Bは、約1ミリバール未満の圧力で、電極が二次電子を収集するモードで動作する図2の光ガイドアセンブリの側面図の一実施形態を簡略化した図である。
図4A図4Aは、約1ミリバールを超える圧力で、ミラーが後方散乱電子を収集し、それらを前面板電極により収集された二次電子に変換するモードで動作する図2の光ガイドアセンブリの側面図の一実施形態を簡略化した図である。
図4B図4Bは、約1ミリバール未満の圧力で、ミラーが後方散乱電子を収集し、それらを電極により収集された二次電子に変換するモードで動作する図2の光ガイドアセンブリの側面図の一実施形態を簡略化した図である。
図4C図4Cは、高真空環境で、検出器が後方散乱電子を収集するモードで動作する図2の光ガイドアセンブリの側面図の一実施形態を簡略化した図である。
図5図5は、1つ以上の検出器を備えた、図2の光ガイドアセンブリを底部からみた図(例えば、電子柱磁極片に向かって見た図)の一実施形態を簡略化した図である。
【0018】
同じ参照番号は、図面のいくつかの図全体にわたって、対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下でより詳細に説明するように、説明した発明の実施形態は、ラマン分光法またはカソードルミネッセンス検出が可能な走査型電子顕微鏡を有する。より具体的には、走査型電子顕微鏡は、短い作動距離で後方散乱電子および二次電子を検出する光ガイドアセンブリで構成されている。
【0020】
図1は、コンピュータ110および走査型電子顕微鏡120と相互作用することができるユーザ101の例を簡略化して示す。走査型電子顕微鏡120の実施形態は、様々な市販の走査型電子顕微鏡を含んでもよい。例えば、走査型電子顕微鏡120は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社より入手可能なQuattroまたはPrisma走査型電子顕微鏡を含んでもよい。図1はまた、コンピュータ110と走査型電子顕微鏡120との間のネットワーク接続を示しているが、図1は例示であることが意図され、追加またはより少ないネットワーク接続が含まれ得ることが理解されるであろう。さらに、要素間のネットワーク接続には、有線または無線データの「直接」送信(例えば、稲妻形で表される)や、他のデバイス(例えば、スイッチ、ルーター、コントローラ、コンピュータ等)を介した「間接」通信が含まれ得る。したがって、図1の例は限定的なものと見なされるべきではない。
【0021】
コンピュータ110は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、タブレット、「スマートフォン」、1つ以上のサーバ、コンピュートクラスタ(ローカルまたはリモート)、または他の現在もしくは将来のコンピュータもしくはコンピュータのクラスタ等の、任意のタイプのコンピューティングプラットフォームを含んでもよい。コンピュータは、典型的には、1つ以上のプロセッサ、オペレーティングシステム、システムメモリ、メモリ記憶デバイス、入出力コントローラ、入出力デバイス、およびディスプレイデバイス等の既知の構成要素を含む。コンピュータ110の1つよりも多い実装が、異なる実施形態において様々な動作を実行するために使用されてもよく、したがって、図1のコンピュータ110の表現が、限定と見なされるべきではないこともまた理解されよう。
【0022】
いくつかの実施形態において、コンピュータ110は、制御ロジック(例えば、プログラムコードを含むコンピュータソフトウェアプログラム)をその中に記憶しているコンピュータ使用可能媒体を備えるコンピュータプログラム製品を採用し得る。制御ロジックは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに本明細書に説明されている一部または全ての機能を実施させる。他の実施形態において、いくつかの機能は、例えば、ハードウェアステートマシンを使用して、主にハードウェアに実装される。本明細書に説明されている機能を実施するためのハードウェアステートマシンの実装は、当業者にとって明らかであろう。また同一または他の実施形態において、コンピュータ110は、ネットワークを介してリモート情報にアクセスすることを可能にされた専用ソフトウェアアプリケーションを含んでもよいインターネットクライアントを採用してもよい。ネットワークは、当業者に周知の様々なタイプのネットワークのうちの1つ以上を含んでもよい。例えば、ネットワークは、通信するために一般にTCP/IPプロトコルスイートと呼ばれるものを採用し得るローカルまたはワイドエリアネットワークを含んでもよい。ネットワークは、一般にインターネットと呼ばれる相互接続されたコンピュータネットワークのワールドワイドシステムを含んでもよく、または様々なイントラネットアーキテクチャを含んでもよい。当業者はまた、ネットワーク環境内の一部のユーザが、一般的に「ファイアウォール」(パケットフィルタ、または境界保護デバイスとも呼ばれる)と呼ばれるものを採用して、ハードウェアおよび/またはソフトウェアシステムに出入りする情報トラフィックを制御することを好み得ることを理解するであろう。例えば、ファイアウォールは、ハードウェアもしくはソフトウェア要素、またはそれらの組み合わせを含んでもよく、典型的には、例えば、ネットワーク管理者等のユーザによって設定されたセキュリティポリシーを執行するように設計されている。
【0023】
ここで説明するように、本発明の実施形態は、PLAで構成されたミラーを備える光ガイドアセンブリで構成され、短い作動距離で後方散乱電子および二次電子を収集する走査型電子顕微鏡を含む。
【0024】
図2は、チャンバー203および電子柱磁極片202を含む走査型電子顕微鏡120の実施形態の例を示す。電子柱磁極片202の実施形態は、走査型電子顕微鏡120の実施形態で典型的に見られる任意のタイプの電子柱磁極片(電子柱または磁極片と呼ばれることもある)を含み、一般に1つ以上のコイル、および/または、電子源204からの電子ビーム207を集束する最終レンズ206等の1つ以上の電磁レンズ等の要素を含む。また、図2は例示を目的としたものであり、限定と見なされるべきではないことが理解されよう。例えば、図2は、最終レンズ206を楕円状のものとして示しているが、電磁レンズは、様々な構成および形状を含む。
【0025】
チャンバー203内の環境は、高真空環境を含み得る、上述のようにチャンバー203は低真空またはESEM環境で動作することが望ましい場合もある。例えば、チャンバー203は、電子ビームによって照射された非導電性サンプルの表面からの電荷を取り除くために十分な約1ミリバールの圧力を含んでもよい。場合によっては、チャンバー203は、水の平衡圧力(相対湿度100%)を達成するために冷却機能を備えたサンプルホルダー210の実施形態と組み合わせて使用できる約6ミリバールの水蒸気と実質的に等しい圧力を有してもよい。チャンバー203は、約25℃以上の室温で水蒸気平衡圧力を達成するために、最大約40ミリバールの圧力を有してもよい。しかしながら、水の平衡圧力は環境の温度に依存しており、異なる圧力が使用されてもよいことが理解される。
【0026】
サンプルホルダー210は、典型的には、電子ビーム207の経路内ならびにミラー220の視野内にサンプル211を配置するために使用される。サンプル211が、例えば、生物学的サンプル等の任意のタイプのサンプルを含んでよいことは、当業者によって理解されるであろう。図2はまた、電子ビーム207が通過できるように配置された圧力制限アパーチャ225を備えたミラー220を含む光ガイドアセンブリ250の例を示す。当業者は、ESEM顕微鏡が典型的に2つの圧力制限アパーチャを使用することが理解されよう。例えば、一つの圧力制限アパーチャは、視野への影響がより弱く、直径が小さい対物レンズ(例えば、最終レンズ206)の内側に配置されてもよく、圧力制限アパーチャ225等の他の圧力制限アパーチャは、サンプルに近く、視野を制限する位置に配置されてもよい。したがって、圧力制限アパーチャ225の直径は、より低い倍率でサンプル211に対する視野が良好な配向に最適化される。ここで説明する実施形態では、圧力制限アパーチャ225の直径は、チャンバー203と電子源205を含む環境との間で圧力差を維持できるほどに十分に小さい。例えば、圧力制限アパーチャ225の直径は、500μm~1mmの範囲であり得るが、典型的には、約300μmを超える。上述のように、チャンバー203内の圧力は、圧力制限アパーチャ225によって、約0.1ミリバール未満の高真空圧を含んでもよい電子源205を含む環境と分離された約30ミリバールの低真空圧を含んでもよい(例えば、低真空圧で発生する電子散乱の発生度合いを制限するため)。ここで説明する例では、真空圧は、周知の技術(例えば、真空ポンプ等)を使用して維持することができる。
【0027】
ここで説明する実施形態では、光ガイドアセンブリ250のミラー220は、耐圧シールで電子柱磁極片202に結合される。場合によっては、光ガイドアセンブリ250は、耐圧シールで電子柱磁極片202の最終レンズ206に結合される。また、いくつかの実施形態では、望ましい材料で構成され、ギャップなしで電子柱磁極片202または最終レンズ206およびミラー220に干渉するように構成された中間要素230を使用することにより、耐圧シールの形成を改善することができる(例えば、ミラー220と中間要素230との間、中間要素230と電子柱磁極片202または最終レンズ206との間に耐圧シールがある)。また、いくつかの実施形態では、圧力制限アパーチャ225は、ミラー220ではなく中間要素230に関連付けられてもよいが、チャンバー203の環境で電子ビーム207の経路を短くするために、圧力制限アパーチャ225をサンプル211にできるだけ近く配置することが望ましい。例えば、中間要素230は、電子ビーム207で劣化しないように非磁性材料で構築されてもよい。ミラー220が電荷でバイアスされると、中間要素230は、ミラー220と磁極片204の対物レンズとのガルバニック絶縁(例えば、電流の流れを防ぐための分離)を施す。場合によっては、光ガイドアセンブリ250がガルバニック絶縁を施すように構成されてもよい。ここで説明する例では、中間要素230は、中間要素230を帯電させ、電子ビーム207の品質を劣化させる可能性がある電子ビーム207によって照射されない。
【0028】
また、上述のように、本発明ではビームの広がりを制限するために、電子柱磁極片202とサンプル211との間の作動距離をできるだけ短く維持することが重要であるが、二次電子の「カスケード増幅」と呼ばれるものが形成されることを見込み、検出素子との十分な距離を置く。例えば、「カスケード増幅」は、水蒸気が存在する作動モードで発生し得る。二次電子は水分子と相互作用して追加の二次電子を生成し、さらに隣接する水分子と相互作用してより多くの二次電子を生成し、それによって二次電子の数を「増幅」させる。しかしながら、カスケード増幅の発生に水蒸気は必要でないことが理解されよう。上述したように、サンプルホルダー210を光ガイドアセンブリ250の近くに最適に配置させることは非常に望ましい。例えば、低真空環境では、圧力制限アパーチャ225とサンプル211との間の望ましい作動距離は、約10~20mmの範囲の距離を含んでもよい。
【0029】
図2はまた、ラマン分光法について、当業者に知られている任意のタイプの光源(例えば、レーザー、LED、または他のタイプの光源)を含んでもよい光源255を示す。同様に、図2は、ラマン分光法について、当業者に知られている任意のタイプの検出器(例えば、CCD、光電子増倍管、または他のタイプの検出器)を含んでもよい検出器257を示す。典型的には、当業者に知られている様々な光学素子は、ミラー220を介して光源255/検出器257とサンプル211との間の光路260に沿って、光を向けることができ(図示せず。例えば、ミラー、ビーム調整要素、および/またはレンズ)、望ましいラマン分光性能を得るために光の特性を調整し得ることが理解されるであろう。
【0030】
図3Aは、気体二次電子検出器(GSED)として機能し、走査型電子顕微鏡120が、チャンバー203内の圧力が約1~2ミリバールより高いモードで動作するときに、電子ビーム207に応じてサンプル211の表面から放出される二次電子305を収集するミラー220を備えた光ガイドアセンブリ250の側面図の例を示す。例えば、電子ビーム207は、サンプル211の表面と相互作用して、サンプル211から離れ、動作モードで正の電荷(例えば、約600Vの正のバイアス)を有するミラー220に向かって移動する二次電子305を生成する一次電子を含む。本実施例では、電極330および/または前面板315は、二次電子がミラー220に効率的に移動するように実質的に中性の電荷を含んでもよい(前面板315は非常に小さな正のバイアスを含んでもよい)。
【0031】
図3Bは、走査型電子顕微鏡120が、チャンバー203が1ミリバール未満の圧力を含むモードで動作するときの光ガイドアセンブリ250の側面図の例を示す。例えば、チャンバー203は約0.5ミリバールの圧力を含んでもよく、カスケード増幅でより大きな信号を生成するために、サンプル211と検出器との間の距離を延ばすことが望ましい。このようなモードでは、二次電子305はミラー220によっては収集されず、二次電子305は、実質的に中性のバイアスを含む(非常に小さな負のバイアスを含んでもよい)ミラー220の代わりに正にバイアスされる電極330によって収集および検出される。ここで説明する例では、電極330は、カスケード増幅が発生するための追加の時間および空間を提供するミラー220からある程度の距離を置いて配置されてもよい。さらに、光ガイドアセンブリ250は、電子ビーム207およびサンプル211からの二次電子305が通過するアパーチャ317を備えた実質的に中性のバイアスを含む(非常に小さな負のバイアスを含んでもよい)前面板315を含んでもよい。
【0032】
図4Aは、ミラー220が後方散乱電子309の変換電極として機能する走査型電子顕微鏡120が、チャンバー203内の圧力が約1ミリバールよりも大きいモードで動作するときの光ガイドアセンブリ250の側面図の例を示す。例えば、後方散乱電子309は、負のバイアスを有し、ミラー220から解放される既知のプロセスによって変換された二次電子305を生成するミラー220によって収集される。次に、変換された二次電子305’は、気体後方散乱検出器(GBSD)収集電極(例えば、実質的に中性のバイアスであるが、非常に小さな負のバイアスを含んでもよい)として機能する前面板315によって収集および検出される。図4Aに示される例では、電極330は負のバイアスを含んでもよい。
【0033】
図4Bは、走査型電子顕微鏡120が、チャンバー203が約1ミリバール未満の圧力を含むモードで動作するときの光ガイドアセンブリ250の側面図の例を示す。図3Bの実施形態と同様に、チャンバー203は、カスケード増幅を使用してより大きな信号を生成することが望ましく、したがって、変換された二次電子305’は、実質的に正のバイアスを有する電極330によって収集および検出される(例えば、ミラー220は、実質的に負のバイアスを含んでもよく、前面板315は、非常に小さな負のバイアスである実質的に中性のバイアスを含んでもよい)。
【0034】
図4Aおよび4Bの両方の実施形態では、変換された二次電子305’は、光ガイドアセンブリ250の内部環境のカスケード増幅によってさらに増幅されてもよい。例えば、光ガイドアセンブリ250の内部環境は、チャンバー203内の環境と実質的に同じであってもよく、ESEMモードで動作されるとき、相対的に高湿度(例えば、約100%のRH)であってもよい。したがって、ミラー220から前面板315(図4Aのように)または電極330(図4Bのように)に移動する、変換された二次電子305’の数は、光ガイドアセンブリ250の内部環境のカスケード増幅によって増加する。
【0035】
いくつかの実施形態では、図4Cの例に示されているように、後方散乱電子309は、例えば、固体検出器と呼ばれるもの等の、既知の任意のタイプの検出器を含んでもよい検出器320によって検出することができる。これは、チャンバー203内および光ガイドアセンブリ250内の圧力がミラー220と前面板315との間の増幅には十分でない状況において、および/または高真空条件において望ましい。また、図5に示された光ガイドアセンブリ250の底部から見た二つの実施形態のように、光ガイドアセンブリ250に位置する検出器320は二つ以上の実施形態があることが理解できる(例えば、前面板315なしの電子柱磁極片202に向かって見た図)。特に、検出器320の実装は、サンプル211からミラー220への二次電子305および/または後方散乱電子309の経路が検出器320によって遮断されないように、ミラー220に対して横方向に配置されてもよい。また、後方散乱電子309の収集効率を高めるために、検出器320を前面板315の上方のある距離に配置することが望ましい。
【0036】
また、いくつかの実施形態では、図3A~B、4A~C、および5で説明されるように、動作モードで圧力がより高くまたはより低くなることから、チャンバー203内の圧力が変化し得ることが理解されよう。場合によっては、圧力の変動は性能に影響を与える可能性があるが、他の利点を提供する可能性もあるため、説明した発明の範囲内であると見なされる。さらに、図5の例では、ミラー220は実質的に楕円状のものとして示されているが、ミラー220は、光源255からサンプル211に光を効果的に向ける任意の形状を含んでもよい。ミラー220の形状が、サンプル211からの光(例えば、ラマン放出またはカソードルミネッセンス)を収集し、検出器257に向けるために有効であることも重要である。さらに、光ガイドアセンブリ250内の作動距離は、できるだけ短いことが望ましい。したがって、図2、3A~B、4A~C、および5の実施形態は、例示を目的としたものであり、限定と見なされるべきではないことが理解されるであろう。
【0037】
様々な実施形態および実装を説明してきたが、上述のものが例示的なものにすぎず、限定ではなく、単なる例として提示されたものであることが当業者に理解されるべきである。例示された実施形態の様々な機能要素間で機能を分散するための多くの他の体系が可能である。任意の要素の機能は、代替的な実施形態において様々な方式で実行され得る。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5