(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電極一体型セパレータ用液体組成物、粒子層の製造方法、電極の製造方法、及び電気化学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20241203BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20241203BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20241203BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20241203BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20241203BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20241203BHJP
H01G 9/02 20060101ALI20241203BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20241203BHJP
C09D 11/00 20140101ALN20241203BHJP
C09D 5/25 20060101ALN20241203BHJP
C09D 201/00 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M50/46
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/403 D
H01M50/446
H01G9/02
H01G11/52
C09D11/00
C09D5/25
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2019215743
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019012588
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康司
(72)【発明者】
【氏名】東 隆司
(72)【発明者】
【氏名】升澤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】柳田 英雄
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/126675(WO,A1)
【文献】特開2006-299117(JP,A)
【文献】特開2014-222649(JP,A)
【文献】特開2017-130399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 50/40-50/497
H01G 9/02
H01G 11/52
C09D 11/00
C09D 5/25
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性粒子と、
分散性基と吸着性基とを有する樹脂と、溶剤Aと、前記溶剤Aとは異なる溶剤Bと、を含有する
電極一体型セパレータ用液体組成物であって、
前記溶剤Aは、ラクタム、アルコール、スルホキシド、エステル又はケトンであり、
前記溶剤Bは、エーテル、グリコール、エステル、アルコール又はラクタムであり、
25℃における空気に対する表面張力が25mN/m以上50mN/m未満であり、
90%径が2.5μm以下であり、
メジアン径が1μm以下であることを特徴とする
電極一体型セパレータ用液体組成物。
【請求項2】
前記絶縁性粒子は、無機粒子である、請求項
1に記載の
電極一体型セパレータ用液体組成物。
【請求項3】
絶縁性粒子と、
分散性基と吸着性基とを有する樹脂と、溶剤Aと、前記溶剤Aとは異なる溶剤Bと、を含有する
電極一体型セパレータ用液体組成物であって、
前記溶剤Aは、ラクタム、アルコール、スルホキシド、エステル又はケトンであり、
前記溶剤Bは、エーテル、グリコール、エステル、アルコール又はラクタムであり、
メジアン径をD
50A+B[μm]、90%径をD
90A+B[μm]、当該
電極一体型セパレータ用液体組成物から前記溶剤Bを除いた分散液のメジアン径をD
50A[μm]、当該
電極一体型セパレータ用液体組成物から前記溶剤Aを除いた分散液のメジアン径をD
50B[μm]とすると、式
1<D
50B/D
50A
1<D
50A+B/D
50A<1.1
D
90A+B<5
を満たすことを特徴とする
電極一体型セパレータ用液体組成物。
【請求項4】
絶縁性粒子と、
分散性基と吸着性基とを有する樹脂と、溶剤Aと、を含有する分散液に、前記溶剤Aとは異なる溶剤Bを加えて製造されている
電極一体型セパレータ用液体組成物であって、
前記溶剤Aは、ラクタム、アルコール、スルホキシド、エステル又はケトンであり、
前記溶剤Bは、エーテル、グリコール、エステル、アルコール又はラクタムであり、
25℃における空気に対する表面張力が25mN/m以上50mN/m未満であり、
90%径が2.5μm以下であり、
前記分散液は、メジアン径が1μm以下であることを特徴とする
電極一体型セパレータ用液体組成物。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の
電極一体型セパレータ用液体組成物を、多孔質構造を有する吸収媒体上に塗布する塗布工程を含むことを特徴とする粒子層の製造方法。
【請求項6】
前記吸収媒体は、活物質を含有する電極合材層が形成されている電極基体である、請求項
5に記載の粒子層の製造方法。
【請求項7】
前記塗布工程は、液体吐出方法によって行われる、請求項
5又は
6に記載の粒子層の製造方法。
【請求項8】
請求項
5乃至
7のいずれか一項に記載の粒子層の製造方法を含むことを特徴とする電極の製造方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の電極の製造方法を含むことを特徴とする電気化学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極一体型セパレータ用液体組成物、粒子層の製造方法、電極の製造方法、及び電気化学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学素子においては、正極と負極の短絡を防止することを目的として、紙、不織布、多孔質フィルムがセパレータとして使用されている。
【0003】
近年、電極基体上に、電極合材層と、粒子層が順次形成されている電極一体型セパレータが用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
電極一体型セパレータは、一般に、粒子を含有する液体組成物を電極合材層上に塗布することにより、製造されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電極合材層は、多孔質構造を有する吸収媒体であるため、電極合材層上に液体組成物を塗布すると、液体組成物が電極合材層に吸収されることに伴い、液体組成物に含まれる粒子が電極合材層に侵入し、その結果、粒子層の厚さが小さくなる。このため、電極基体と、粒子層との間の電気的絶縁抵抗、即ち、電極一体型セパレータの電気的絶縁抵抗が低くなる。
【0006】
一方、液体組成物の電極合材層に対する接触角を大きくすることで、電極合材層への粒子の侵入が抑制されるため、電極一体型セパレータの抵抗が高くなるが、この場合、コーヒーリングが発生し、その結果、電極一体型セパレータの抵抗のムラが大きくなる。
【0007】
本発明の一態様は、電極一体型セパレータの電気的絶縁抵抗を向上させると共に、コーヒーリングの発生を抑制することが可能な液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、粒子と、樹脂と、溶剤Aと、前記溶剤Aとは異なる溶剤Bを含有する液体組成物であって、25℃における空気に対する表面張力が25mN/m以上50mN/m未満であり、90%径が2.5μm以下であり、メジアン径が1μm以下である。
【0009】
本発明の他の一態様は、粒子と、樹脂と、溶剤Aと、前記溶剤Aとは異なる溶剤Bを含有する液体組成物であって、メジアン径をD50A+B[μm]、90%径をD90A+B[μm]、当該インクから前記溶剤Bを除いた分散液のメジアン径をD50A[μm]、当該インクから前記溶剤Aを除いた分散液のメジアン径をD50B[μm]とすると、式
1<D50B/D50A
1<D50A+B/D50A<1.1
D90A+B<5
を満たす。
【0010】
本発明の他の一態様は、粒子と、樹脂と、溶剤Aを含有する分散液に、前記溶剤Aとは異なる溶剤Bを加えて製造されている液体組成物であって、25℃における空気に対する表面張力が25mN/m以上50mN/m未満であり、90%径が2.5μm以下であり、前記分散液は、メジアン径が1μm以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、電極一体型セパレータの電気的絶縁抵抗を向上させると共に、コーヒーリングの発生を抑制することが可能な液体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】液体吐出装置の一例を示す概略構成斜視図である。
【
図2】セパレータ一体型電極の一例を示す概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
[液体組成物の性状1]
本実施形態の液体組成物は、粒子と、樹脂と、溶剤Aと、溶剤Aとは異なる溶剤Bを含有する。
【0015】
溶剤Aは、液体組成物中の粒子を分散させる機能を有する溶剤である。
【0016】
溶剤Bとは、溶剤Aで不足する機能を補うことを目的とする溶剤である。
【0017】
溶剤Bとしては、例えば、粒子を分散させる機能を有する溶剤以外には、液体吐出ヘッドのノズルの乾燥を防止することを目的とする沸点が高い溶剤や、液体吐出ヘッドから吐出するのに適切な粘度や表面張力に調整することを目的とする溶剤、電極合材層への粒子の吸収を抑えることを目的とする溶剤等が挙げられる。
【0018】
本実施形態の液体組成物の25℃における空気に対する表面張力は、25mN/m以上50mN/m未満であることが好ましい。液体組成物の25℃における空気に対する表面張力が25mN/m未満であると、電極一体型セパレータの抵抗が低くなり、50mN/m以上であると、コーヒーリングが発生する。
【0019】
本実施形態の液体組成物の90%径は、2.5μm以下であり、2.0μm以下であることが好ましい。液体組成物の90%径が2.5μmを超えると、液体組成物の分散性が低下する。
【0020】
本実施形態の液体組成物のメジアン径は、1μm以下であり、0.8μm以下であることが好ましい。液体組成物のメジアン径が1μmを超えると、粒子のブラウン運動が小さくなり、液体組成物の分散安定性が低下する。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲において、90%径及びメジアン径は、それぞれレーザー回折法により測定される、体積基準の90%累積粒径の最小値(最小90%径)及び体積基準の50%累積粒径の最小値(最小メジアン径)を意味する。
【0022】
ここで、90%径は、分散不良による粗大粒子の有無や分散過多による再凝集の指標、即ち、分散性の指標として用いている。
【0023】
一方、メジアン径は、微小な分散環境に対して鋭敏に反応するため、分散安定性の指標として用いている。即ち、メジアン径が大きいと、粒子が沈降しやすく、分散を維持しにくいといえる。
【0024】
本実施形態の液体組成物は、粒子と、樹脂と、溶剤Aを含有する分散液に、溶剤Bを加えることにより、製造することができる。
【0025】
本実施形態の液体組成物は、粘度の調整、表面張力の調整、溶剤の蒸発制御、添加剤の溶解性向上、粒子の分散性向上、殺菌等を目的として、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等をさらに含有していてもよい。
【0026】
本実施形態の液体組成物は、公知の分散装置を用いて、製造することができる。
【0027】
分散装置の具体例としては、例えば、攪拌機、ボールミル、ビーズミル、リング式ミル、高圧式分散機、回転式高速せん断装置、超音波分散機等が挙げられる。
【0028】
[粒子]
粒子は、有機粒子及び無機粒子のいずれであってもよいが、耐熱性の点で、無機粒子であることが好ましい。
【0029】
また、粒子は、絶縁性の点で、絶縁性粒子であることが好ましい。
【0030】
無機粒子を構成する材料の具体例としては、例えば、酸化アルミニウム、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、絶縁性及び耐熱性が高いことから、セパレータ一体型電極の製造に使用する場合、酸化アルミニウム、シリカ等の無機酸化物が好ましい。さらに、「ジャンク」化学種、即ち、リチウムイオン二次電池内で容量フェードを引き起こす化学種に対するスカベンジャとして機能することから、酸化アルミニウムがさらに好ましい。加えて、酸化アルミニウムは、電解質に対する濡れ性が優れるため、電解質の吸収率が高くなり、リチウムイオン二次電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0031】
有機粒子を構成する材料の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、キチン、キトサン、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0032】
[樹脂]
樹脂の数平均分子量は、通常、1000~100000であり、液体組成物の粘度の上昇を抑制する点から、1000~10000であることが好ましく、1000~5000であることがさらに好ましい。
【0033】
樹脂は、分散性基と吸着性基を有する高分子分散剤であることが好ましい。特に、粒子が帯電している場合、粒子との吸着強度の点で、吸着性基として、粒子が帯電している極性とは逆の極性のイオン性基を有する高分子分散剤が好ましい。
【0034】
イオン性基としては、例えば、スルホン酸基及びその塩(例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルボキシル基及びその塩(例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩)、1級、2級、3級アミノ基及びその塩等が挙げられる。
【0035】
イオン性基は、アニオン性基及びカチオン性基のいずれであってもよいが、無機粒子の分散性の面で、アニオン性基であることが好ましい。
【0036】
アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基の塩、スルホン酸基の塩、リン酸基の塩等が挙げられる。
【0037】
イオン性基は、通常、高分子分散剤の側鎖又は両末端に存在するが、液体組成物の粘度の上昇を抑制する点で、高分子分散剤の側鎖にイオン性基が存在することが好ましい。
【0038】
分散性基としては、溶剤A及び溶剤Bに対して溶解性を有する構造であればよいが、リチウムイオン二次電池として使用する場合、イオン伝導性の観点から、オリゴエーテル基が好ましい。
【0039】
オリゴエーテル基とは、エチレングリコール又はプロピレングリコールの重合体の末端からヒドロキシル基を除いた基である。
【0040】
エチレングリコール又はプロピレングリコールの重合体の分子量は、100~10000であることが好ましく、100~5000であることがさらに好ましい。エチレングリコール又はプロピレングリコールの重合体の分子量が100以上であると、粒子の分散性が向上し、10000以下であると、液体組成物の粘度の上昇を抑制することができる。
【0041】
オリゴエーテル基の結合していない側の末端は、水酸基であってもよいし、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等であってもよい。
【0042】
なお、オリゴエーテル基を有する樹脂を使用すると、溶剤A及び溶剤Bとして、極性が高い溶剤を用いても、粒子の分散性を向上させることができる。
【0043】
高分子分散剤の市販品としては、例えば、DISPERBYK-103、DISPERBYK-118、DISPERBYK-2155(以上、ビッグケミー製)、NOPCOSPERSE-092、SN-SPERSE-2190、SN-DISPERSANT-9228(以上、サンノプコ製)、エスリームAD-3172M、エスリーム2093、マリアリムAKM-0513、マリアリムHKM-50A、マリアリムHKM-150A、マリアリムSC-0505K、マリアリムSC-1015F、マリアリムSC-0708A(以上、日油製)等が挙げられる。
【0044】
粒子に対する高分子分散剤の質量比は、通常、0.01%~10%であるが、粒子の分散性を考慮すると、0.1%~10%であることが好ましい。
【0045】
なお、樹脂として、高分子分散剤と、バインダを併用してもよい。
【0046】
バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0047】
バインダは、液体組成物中に溶解していてもよいし、分散していてもよい。
【0048】
なお、バインダの代わりに、バインダの前駆体を用いてもよい。
【0049】
バインダの前駆体としては、例えば、モノマー等が挙げられる。
【0050】
例えば、モノマーを含有し、必要に応じて、重合開始剤をさらに含有する液体組成物を吸収媒体上に塗布した後、加熱する、又は、光を照射することにより、モノマーが重合し、バインダが生成する。
【0051】
[溶剤A]
溶剤Aは、ラクタム、アルコール、スルホキシド、エステル又はケトンであることが好ましい。
【0052】
ラクタムの具体例としては、例えば、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン等が挙げられる。
【0053】
アルコールの具体例としては、例えば、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0054】
スルホキシドの具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0055】
エステルの具体例としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールジアセタート等が挙げられる。
【0056】
ケトンの具体例としては、例えば、ジイソブチルケトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0057】
[溶剤B]
溶剤Bは、エーテル、グリコール、エステル、アルコール又はラクタムであることが好ましい。
【0058】
エーテルの具体例としては、例えば、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0059】
グリコールの具体例としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
【0060】
エステルの具体例としては、例えば、乳酸エチル、エチレンカーボネート、エチレングリコールジアセタート等が挙げられる。
【0061】
アルコールの具体例としては、例えば、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0062】
ラクタムの具体例としては、例えば、2-ピロリドン等が挙げられる。
【0063】
[液体組成物の性状2]
本実施形態の液体組成物は、粒子、樹脂、溶剤A、溶剤Aとは異なる溶剤Bを含有する。
【0064】
本実施形態の液体組成物のメジアン径をD50A+B[μm]、本実施形態の液体組成物の90%径をD90A+B[μm]、本実施形態の液体組成物から溶剤Aを除いた分散液のメジアン径をD50B[μm]、本実施形態の液体組成物から溶剤Bを除いた分散液のメジアン径をD50A[μm]とすると、
式
1<D50B/D50A
1<D50A+B/D50A<1.1
D90A+B<5
を満たす。
【0065】
D50B/D50Aが1以下であると、溶剤Aと溶剤Bの間で、粒子の分散性の差が小さくなり、粒子が電極合材層に侵入しやすくなる。
【0066】
D50A+B/D50Aが1以下であると、溶剤Aと溶剤Bの間で、粒子の分散性の差が小さくなり、粒子が電極合材層に侵入しやすくなり、1.1以上であると、液体組成物の分散性が劣り、粒子が凝集する傾向にあり、液体吐出ヘッドのノズル径と、粒子の粒径との差が小さくなり、ノズル詰まりが発生しやすくなる。
【0067】
D90A+Bが5以上であると、液体吐出ヘッドのノズル径と粒子の粒径の差が小さくなり、ノズル詰まりが発生しやすくなる。
【0068】
本明細書及び特許請求の範囲において、液体組成物から溶剤A(溶剤B)を除いた分散液とは、樹脂により、粒子が溶剤B(溶剤A)と樹脂が存在する溶液中に粒子が分散している分散液を意味する。
【0069】
なお、粒子、樹脂、溶剤A、溶剤Bは、[液体組成物の性情1]で記載したものと同様である。
【0070】
本実施形態の液体組成物は、粘度の調整、表面張力の調整、溶剤の蒸発制御、添加剤の溶解性向上、粒子の分散性向上、殺菌等を目的として、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等をさらに含有していてもよい。
【0071】
本実施形態の液体組成物は、公知の分散装置を用いて、製造することができる。
【0072】
分散装置の具体例としては、例えば、攪拌機、ボールミル、ビーズミル、リング式ミル、高圧式分散機、回転式高速せん断装置、超音波分散機等が挙げられる。
【0073】
[液体組成物の塗布方法]
液体組成物の塗布方法の具体例としては、例えば、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、バーコーティング法、スロットダイコーティング法、ドクターブレードコーティング法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、活版印刷法、スクリーン印刷法、液体吐出方法、液体現像方式による電子写真印刷法等が挙げられる。これらの中でも、吐出位置を制御することが可能である点で、液体吐出方法が好ましい。
【0074】
液体吐出方法における液体組成物を吐出する方式としては、例えば、液体組成物に力学的エネルギーを付与する方式、液体組成物に熱エネルギーを付与する方式等が挙げられる。中でも、液体組成物に力学的エネルギーを付与する方式が好ましい。
【0075】
なお、液体吐出方法を用いる場合は、公知の液体吐出装置の液体吐出原理を用いた技術を応用すればよいが、液体吐出装置に設置される流路及び液体吐出ヘッドのノズルの耐性がある溶剤を、液体組成物に含まれる溶剤A、Bとして用いることが好ましい。
【0076】
【0077】
液体吐出装置11において、液体組成物が収容されているカートリッジ20は、本体筐体12内のキャリッジ18に収納されている。このような状態で、液体組成物が、カートリッジ20から、キャリッジ18に搭載されている記録ヘッド18aに供給される。記録ヘッド18aは、液体組成物を吐出することができる。
【0078】
キャリッジ18に搭載されている記録ヘッド18aは、主走査モータ24で駆動されるタイミングベルト23によって、ガイドシャフト21、22に案内されて移動する。一方、吸収媒体は、プラテン19によって記録ヘッド18aと対面する位置に配置される。なお、図中、16はギア機構、17は副走査モータ、26は主走査モータを示す。
【0079】
[液体組成物の使用方法]
液体組成物の使用方法は、液体組成物を吸収媒体上に塗布する。
【0080】
なお、吸収媒体とは、液体組成物を吸収することが可能な媒体を意味する。
【0081】
吸収媒体の具体例としては、例えば、多孔質膜が挙げられる。
【0082】
多孔質膜として、活物質を含有する電極合材層が形成されている電極基体を用いると、電極一体型セパレータを製造することができる。
【0083】
負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム合金、カーボン、グラファイト等のリチウムイオンを放出又は吸蔵することが可能な炭素材料、リチウムイオンをドーピングした導電性高分子等が挙げられる。
【0084】
正極活物質としては、例えば、一般式
(CFx)n
で表されるフッ化黒鉛、CoLiO2、MnO2、V2O5、CuO、Ag2CrO4、TiO2等の金属酸化物、CuS等の金属硫化物等が挙げられる。
【0085】
電極基体としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0086】
上記以外の吸収媒体としては、例えば、反射型表示素子に用いられる下地、プリンテッドエレクトロニクスに用いられる電極層等が挙げられる。
【0087】
[セパレータ一体型電極]
セパレータ一体型電極とは、電極基体上に、電極合材層と、粒子層が順次形成されている電極を意味する。
【0088】
図2に、セパレータ一体型電極の一例を示す。なお、
図2(a)及び(b)は、それぞれ断面図及び上面図である。
【0089】
セパレータ一体型電極30は、電極基体31上に、電極合材層32及び粒子層33が順次形成されており、粒子層33を形成する際に、本実施形態の液体組成物が使用される。
【0090】
セパレータ一体型電極30を用いると、電気化学素子を製造する際に、電極とセパレータを別々に繰り出して巻回したり、積層したりする工程が不要になり、電気化学素子の製造効率が格段に向上することが予想される。
【0091】
電気化学素子としては、例えば、リチウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、ナトリウムイオン二次電池、ナトリウム二次電池等が挙げられる。
【0092】
電気化学素子は、例えば、車載電池搭載車両、スマートフォン等に適用することができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例によって限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0094】
[樹脂により、粒子を溶剤中に十分に分散させる方法]
ビーズミル分散装置としての、冷却ナノ粉砕機NP-100(シンキー製)のジルコニア製の容器に、粒子と、溶剤と、樹脂を所定量投入した後、粒径0.2mmのビーズを適宜投入して、分散させた。このとき、粒子と、溶剤と、樹脂の組み合わせに応じて、分散時間を適宜選定した。
【0095】
[液体組成物又は分散液の粒度分布]
レーザー回折式粒度分布計マスターサイザー3000(マルバーン製)を用いて、液体組成物又は分散液の粒度分布を計測した。
【0096】
ここで、液体組成物から溶媒Bを除いた分散液のメジアン径、90%径を、それぞれD50A、D90Aとし、液体組成物から溶媒Aを除いた分散液のメジアン径、90%径を、それぞれD50B、D90Bとし、液体組成物のメジアン径、90%径を、それぞれD50A+B、D90A+Bとする。
【0097】
なお、液体組成物又は分散液の粒度分布を計測する際に、0.1μm以下の粒径の累積値が存在する場合は、信憑性が低いと判断し、0.1μm以下の粒径の累積値を除いた上で、メジアン径、90%径を求めた。
【0098】
[液体組成物の空気に対する表面張力]
接触角計pocketDyne(KRuSS製)を用いて、25℃において、液体組成物の空気に対する表面張力を測定した。
【0099】
[実施例1-1]
(分散液の作製)
フマル酸アンモニウムと、主鎖にイオン性基、グラフト鎖にポリオキシアルキレン鎖を有する多官能櫛型の機能性ポリマー(樹脂)HKM-150A(日油製)1.5%により、中心粒径0.8μmのアルミナ粒子AKP3000(住友化学製)50%を、1-メチル-2-ピロリドン(溶剤A)48.5%中に十分に分散させ、固形分50%の分散液を得た。分散液は、D50Aが1μm以下であり、D90Aが2μm以下であった。
【0100】
(液体組成物の作製)
分散液60%、1-メチル-2-ピロリドン(溶剤A)30%、プロピレングリコール(溶剤B)10%を混合して、固形分30%の液体組成物を得た。液体組成物は、D50A+Bが1μm以下であり、D90A+Bが2μm以下であった。
【0101】
[実施例1-2]
(液体組成物の作製)において、1-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールの添加量を、それぞれ20%、20%に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、液体組成物を得た(表1参照)。
【0102】
[実施例1-3]
(液体組成物の作製)において、1-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールの添加量を、それぞれ10%、30%に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、液体組成物を得た(表1参照)。
【0103】
[実施例1-4]
(液体組成物の作製)において、1-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールの添加量を、それぞれ0%、40%に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、液体組成物を得た(表1参照)。
【0104】
[実施例2-1~2-4]
溶剤Aとして、ジメチルスルホキシドを用いた以外は、実施例1-1~1-4と同様にして、液体組成物を得た(表1参照)。
【0105】
[実施例3-1~3-4]
溶剤Aとして、乳酸エチルを用いた以外は、実施例1-1~1-4と同様にして、インクを得た(表1参照)。
【0106】
[実施例4-1~4-4]
溶剤Aとして、ジイソブチルケトンを用い、溶剤Bとして、2-ピロリドンを用い、樹脂として、主鎖にイオン性基、グラフト鎖にポリオキシアルキレン鎖を有する多官能櫛型の機能性ポリマーSC-0708A(日油製)を用いた以外は、実施例1-1~1-4と同様にして、液体組成物を得た(表1参照)。
【0107】
[比較例5-1、実施例5-2~5-4]
溶剤Aとして、イソプロピルアルコールを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表1参照)。
【0108】
[実施例6-1~6-4]
溶剤Bとして、エチレングリコールを用いた以外は、実施例1-1~1-4と同様にして、液体組成物を得た(表1参照)。
【0109】
[実施例7-1~7-4]
溶剤Bとして、エチレングリコールを用いた以外は、実施例2-1~2-4と同様にして、液体組成物を得た(表1参照)。
【0110】
[実施例8-1~8-4]
溶剤Bとして、エチレングリコールを用いた以外は、実施例3-1~3-4と同様にして、液体組成物を得た(表1参照)。
【0111】
[実施例9-1~9-4]
溶剤Aとして、乳酸エチルを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、インクを得た(表1参照)。
【0112】
[実施例10-1~10-4]
溶剤Aとして、ジアセトンアルコールを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表2参照)。
【0113】
[実施例11-1~11-4]
溶剤Aとして、シクロヘキサノンを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表2参照)。
【0114】
[比較例12-1~12-4]
溶剤Bとして、エチレングリコールを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表2参照)。
【0115】
[比較例13-1~13-4]
溶剤Bとして、プロピレングリコールを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表2参照)。
【0116】
[比較例14-1~14-4]
溶剤Bとして、エチレングリコールを用いた以外は、実施例10-1~10-4と同様にして、液体組成物を得た(表2参照)。
【0117】
[比較例15-1~15-4]
溶剤Bとして、プロピレングリコールを用いた以外は、実施例10-1~10-4と同様にして、液体組成物を得た(表2参照)。
【0118】
[実施例16-1~16-4]
溶剤Aとして、1-メチル-2-ピロリドンを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表2参照)。
【0119】
[実施例17-1~17-4]
溶剤Aとして、ジメチルスルホキシドを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表2参照)。
【0120】
[実施例18-1~18-4]
溶剤Bとして、2-ピロリドンを用いた以外は、実施例1-1~1-4と同様にして、液体組成物を得た(表2参照)。
【0121】
[実施例19-1~19-4]
溶剤Bとして、2-ピロリドンを用いた以外は、実施例2-1~2-4と同様にして、液体組成物を得た(表3参照)。
【0122】
[実施例20-1~20-4]
溶剤Aとして、酢酸ブチルを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、インクを得た(表3参照)。
【0123】
[実施例21-1~21-4]
溶剤Aとして、2-ブタノンを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、インクを得た(表3参照)。
【0124】
[比較例22-1~22-4]
溶剤Aとして、水を用い、樹脂として、主鎖にイオン性基、グラフト鎖にポリオキシアルキレン鎖を有する多官能櫛型の機能性ポリマーHKM-50A(日油製)を用いた以外は、実施例6-1~6-4と同様にして、液体組成物を得た(表3参照)。
【0125】
[比較例23-1~23-4]
溶剤Bとして、プロピレングリコールを用いた以外は、実施例6-1~6-4と同様にして、液体組成物を得た(表3参照)。
【0126】
[実施例24-4]
HKM-150A(日油製)1.5%の代わりに、HKM-50A(日油製)1.4%、フッ素系界面活性剤F-444(DIC製)0.1%を用いた以外は、比較例22-4と同様にして、液体組成物を得た(表3参照)。
【0127】
[実施例25-1~25-4]
溶剤Bとして、シクロヘキサノールを用いた以外は、実施例9-1~9-4と同様にして、液体組成物を得た(表3参照)。
【0128】
[実施例26-1~26-4]
溶剤Bとして、シクロヘキサノールを用いた以外は、実施例10-1~10-4と同様にして、液体組成物を得た(表3参照)。
【0129】
[実施例27-1~27-4]
溶剤Bとして、シクロヘキサノールを用いた以外は、実施例11-1~11-4と同様にして、液体組成物を得た(表3参照)。
【0130】
[比較例28-1、28-2、実施例28-3、28-4]
溶剤Bとして、シクロヘキサノールを用いた以外は、比較例5-1、実施例5-2~5-4と同様にして、液体組成物を得た(表3参照)。
【0131】
[実施例29-1~29-4]
溶剤Bとして、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを用いた以外は、実施例1-1~1-4と同様にして、液体組成物を得た(表4参照)。
【0132】
[実施例30-1~30-4]
溶剤Bとして、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを用いた以外は、実施例10-1~10-4と同様にして、液体組成物を得た(表4参照)。
【0133】
[実施例31-1~31-4]
溶剤Bとして、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを用いた以外は、実施例20-1~20-4と同様にして、液体組成物を得た(表4参照)。
【0134】
[実施例32-1~32-4]
溶剤Bとして、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表4参照)。
【0135】
[実施例33-1~33-4]
溶剤Bとして、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを用いた以外は、実施例9-1~9-4と同様にして、液体組成物を得た(表4参照)。
【0136】
[実施例34-1~34-4]
溶剤Aとして、乳酸エチルを、溶剤Bとして、ヘキシレングリコールを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表5参照)。
【0137】
[実施例35-1~35-4]
溶剤Bとして、エチレングリコールジアセタートを用いた以外は、実施例34-1~34-4と同様にして、液体組成物を得た(表5参照)。
【0138】
[実施例36-1~35-4]
溶剤Bとして、フルフリルアルコールを用いた以外は、実施例34-1~34-4と同様にして、液体組成物を得た(表5参照)。
【0139】
[実施例37-1~37-4]
溶剤Aとして、2-ペンタノンを、溶媒Bとして、ヘキシレングリコールを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表5参照)。
【0140】
[実施例38-1~38-4]
溶剤Bとして、エチレングリコールジアセタートを用いた以外は、実施例37-1~37-4と同様にして、液体組成物を得た(表5参照)。
【0141】
[実施例39-1~39-4]
溶剤Aとして、エチレングリコールジアセタートを、溶剤Bとして、ヘキシレングリコールを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表6参照)。
【0142】
[比較例29-1~29-4]
溶剤Aとして、シクロヘキサノンを、溶剤Bとして、ヘキシレングリコールを用いた以外は、実施例4-1~4-4と同様にして、液体組成物を得た(表6参照)。
【0143】
[実施例40-1~40-4]
溶剤Aとして、ジアセトンアルコールを用いた以外は、実施例39-1~39-4と同様にして、液体組成物を得た(表6参照)。
【0144】
[比較例30-1~30-2、実施例41-1~41-2]
溶剤Aとして、イソプロピルアルコールを用いた以外は、実施例39-1~39-4と同様にして、液体組成物を得た(表6参照)。
【0145】
[比較例31-1~31-4]
溶剤Aとして、1-メチル-2ピロリドンを用いた以外は、実施例39-1~39-4と同様にして、液体組成物を得た(表6参照)。
【0146】
[比較例32-1~32-4]
溶剤Aとして酢酸エチルを用いた以外は、実施例39-1~39-4と同様にして、液体組成物を得た(表7参照)。
【0147】
[比較例33-1~33-4]
溶剤Aとして酢酸ブチルを用いた以外は、実施例39-1~39-4と同様にして、液体組成物を得た(表7参照)。
【0148】
[比較例34-1~34-4]
溶剤Aとして2-ブタノンを用いた以外は、実施例39-1~39-4と同様にして、液体組成物を得た(表7参照)。
【0149】
[比較例35-1~35-4]
溶剤Aとしてジメチルスルホキシドを用いた以外は、実施例39-1~39-4と同様にして、液体組成物を得た(表7参照)。
【0150】
[比較例36-1~36-4]
溶剤Aとしてジイソブチルケトンを用いた以外は、実施例39-1~39-4と同様にして、液体組成物を得た(表7参照)。
【0151】
[吸収媒体の作製]
負極基体としての、銅箔上に、負極活物質SCMG-XRs(昭和電工製)、水及び樹脂を混錬して得た負極合材層用スラリーを塗布した後、乾燥させて、負極合材層を形成し、吸収媒体とした。
【0152】
[負極一体型セパレータの作製]
液体吐出装置EV2500及び液体吐出ヘッドMH5421F(以上、リコー製)を用いて、吸収媒体上に液体組成物を吐出した後、乾燥させて、粒子層を形成し、負極一体型セパレータを得た。このとき、目付量が1mg/cm2になるように、吐出条件を適宜設定した。
【0153】
ここで、目付量は、吸収媒体上に形成された粒子層の単位面積当たりの質量である。
【0154】
次に、粒子層の厚さ、負極一体型セパレータの電気的絶縁抵抗を測定すると共に、コーヒーリングを評価した。
【0155】
[粒子層の厚さ]
マイクロデプスゲージを用いて、粒子層を形成する前後の厚さを比較して、粒子層の厚さを算出した、このとき、必要に応じて、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。
【0156】
[負極一体型セパレータの電気的絶縁抵抗]
負極一体型セパレータを直径15mmに打ち抜いた後、銅箔の裏面(粒子層が形成されていない面)と、粒子層を、抵抗測定冶具HSフラットセル(宝泉製)で挟み込んで、2面間抵抗を測定し、電極一体型セパレータの電気的絶縁抵抗を得た。
【0157】
[コーヒーリング]
目視により、粒子層を観察し、コーヒーリングの発生の有無を確認した。
【0158】
表1~7に、粒子層の厚さ、負極一体型セパレータの電気的絶縁抵抗の測定結果、コーヒーリングの評価結果を示す。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【表7】
表1~7から、実施例のインクを用いると、電極一体型セパレータの電気的絶縁抵抗が高くなり、コーヒーリングが発生しないことがわかる。
【0166】
これに対して、比較例5-1、比較例28-1、28-2、比較例30-1、30-2の液体組成物は、空気に対する表面張力が25mN/m未満であるため、電極一体型セパレータの電気的絶縁抵抗が低くなる。
【0167】
比較例12-1~12-4、比較例13-1~13-4、比較例14-1~14-4、比較例15-1~15-4、比較例29-1~29-4、比較例31-1~31-4、比較例32-1~32-4、比較例33-1~33-4、比較例34-1~34-4、比較例35-1~35-4、比較例36-1~36-4の液体組成物は、D90A+Bが2μmを超えるため、分散性が低く、負極一体型セパレータを作製することができなかった。
【0168】
比較例22、23の液体組成物は、空気に対する表面張力が50mN/mを超えるため、コーヒーリングが発生した。
【符号の説明】
【0169】
30 セパレータ一体型電極
31 電極基体
32 電極合材層
33 粒子層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0170】
【文献】特開2000-277386号公報
【文献】特開2006-173001号公報