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特許7596871シールド付き絶縁電線の製造方法および多芯ケーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】シールド付き絶縁電線の製造方法および多芯ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/08 20060101AFI20241203BHJP
   H01B 13/26 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01B13/08
H01B13/26 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021043096
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022142861
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】先▲崎▼ 清
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-058915(JP,A)
【文献】特開平08-138457(JP,A)
【文献】特開昭60-127616(JP,A)
【文献】特開2002-172702(JP,A)
【文献】特開昭56-093215(JP,A)
【文献】特開平08-241632(JP,A)
【文献】特開2016-207503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/08
H01B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を絶縁体で被覆する絶縁電線と、前記絶縁電線を被覆する第1絶縁テープと、前記第1絶縁テープを被覆する第1シールド線と、前記第1シールド線を被覆する第2絶縁テープと、からなるシールド付き絶縁電線の製造方法であって、
前記絶縁電線に前記第1絶縁テープを巻き、該第1絶縁テープを第1の石英管を介して第1近赤外線ランプで加熱して前記絶縁電線に融着させる第1加工と、
前記第1加工を実施した後、前記第1絶縁テープ上に前記第1シールド線を巻く第2加工と、
前記第2加工を実施した後、前記第1シールド線上に前記第2絶縁テープを巻き、該第2絶縁テープを第2の石英管を介して第2近赤外線ランプで加熱して前記第1シールド線に融着させる第3加工と、
を有し、
前記第1加工において、前記第1の石英管の軸方向の周りに、第1近赤外線ランプと第1の反射板が前記第1の石英管を囲むように設けられ、
前記第2加工において、前記第2の石英管の軸方向の周りに、第2近赤外線ランプと第2の反射板が前記第2の石英管を囲むように設けられている
シールド付き絶縁電線の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシールド付き絶縁電線の製造方法において、
前記第1加工は、前記第1近赤外線ランプが設けられた第1容器内で実施され、
前記第3加工は、前記第2近赤外線ランプが設けられた第2容器内で実施され、
前記第1容器内および前記第2容器内の温度は、前記第1容器内および前記第2容器内の温度を実測し、この実測結果に基づいて制御される、シールド付き絶縁電線の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシールド付き絶縁電線の製造方法において、
前記第1容器内および前記第2容器内に空気を送り込むブロワが設けられ、
前記第1容器内および前記第2容器内は、前記ブロワから送り込まれる前記空気によって冷却される、シールド付き絶縁電線の製造方法。
【請求項4】
請求項1,2または3に記載のシールド付き絶縁電線の製造方法において、
前記第1加工、前記第2加工および前記第3加工を同時に実施する、シールド付き絶縁電線の製造方法。
【請求項5】
請求項1,2,3または4に記載のシールド付き絶縁電線の製造方法によって製造された複数のシールド付き絶縁電線を備える多芯ケーブルの製造方法において、
前記複数のシールド付き絶縁電線を撚り合わせる第4加工と、
前記第4加工を実施した後、各々が撚り合わされた前記複数のシールド付き絶縁電線からなる複数の集合電線を第2シールド線で被覆する第5加工と、
前記第5加工を実施した後、前記第2シールド線をシースで被覆する第6加工と、
を有する、多芯ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド付き絶縁電線の製造方法および多芯ケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多芯ケーブルの一例として、プローブケーブルが知られている。このプローブケーブルの製造工程は、複数の製造工程からなるが、これら複数の製造工程には、テープ融着工程とシールド工程が含まれている。このテープ融着工程とシールド工程は、具体的には、絶縁体にスキンテープを巻き融着させる工程、横巻シールド線を巻き付ける工程、ジャケットテープを巻き融着させる工程などである。そして、スキンテープやジャケットテープなどのテープを巻き付ける工程では、テープの融着に、鋳込みヒータが用いられている。
【0003】
ここで、多芯ケーブルおよびその製造方法の一例が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-241632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記多芯ケーブルの製造においては、工程数が多く、また、工程間の移動頻度も高い。さらに、生産設備の設置スペースも広い。したがって、上記多芯ケーブルの製造においてその生産性が低下している。
【0006】
本発明の目的は、生産性を高めることができるシールド付き絶縁電線の製造方法および多芯ケーブルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシールド付き絶縁電線の製造方法は、導体を絶縁体で被覆する絶縁電線と、前記絶縁電線を被覆する第1絶縁テープと、前記第1絶縁テープを被覆する第1シールド線と、前記第1シールド線を被覆する第2絶縁テープと、からなるシールド付き絶縁電線の製造方法であって、前記絶縁電線に前記第1絶縁テープを巻き、該第1絶縁テープを第1近赤外線ランプで加熱して前記絶縁電線に融着させる第1加工と、前記第1加工を実施した後、前記第1絶縁テープ上に前記第1シールド線を巻く第2加工と、前記第2加工を実施した後、前記第1シールド線上に前記第2絶縁テープを巻き、該第2絶縁テープを第2近赤外線ランプで加熱して前記第1シールド線に融着させる第3加工と、を有する。
【0008】
本発明の一態様では、前記第1加工は、前記第1近赤外線ランプが設けられた第1容器内で実施され、前記第3加工は、前記第2近赤外線ランプが設けられた第2容器内で実施され、前記第1容器内および前記第2容器内の温度は、前記第1容器内および前記第2容器内の温度を実測し、この実測結果に基づいて制御される。
【0009】
本発明の他の一態様では、前記第1容器内および前記第2容器内に空気を送り込むブロワが設けられ、前記第1容器内および前記第2容器内は、前記ブロワから送り込まれる前記空気によって冷却される。
【0010】
本発明のさらに他の一態様では、前記第1加工、前記第2加工および前記第3加工を同時に実施する。
【0011】
本発明のさらに他の一態様では、前記複数のシールド付き絶縁電線を撚り合わせる第4加工と、前記第4加工を実施した後、各々が撚り合わされた前記複数のシールド付き絶縁電線からなる複数の集合電線を第2シールド線で被覆する第5加工と、前記第5加工を実施した後、前記第2シールド線をシースで被覆する第6加工と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シールド付き絶縁電線の製造および多芯ケーブルの製造において、シールド付き絶縁電線および多芯ケーブルの生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のシールド付き絶縁電線の製造方法によって使用される絶縁電線を示す断面図である。
図2図1の絶縁電線にスキンテープを被覆した電線構造を示す断面図ある。
図3図2の電線構造に第1シールド線を被覆した電線構造を示す断面図である。
図4図3の電線構造にジャケットテープを被覆してなるシールド付き絶縁電線を示す断面図である。
図5図4のシールド付き絶縁電線を複数本束ねて撚り合わせた集合電線を示す断面図である。
図6図5の集合電線を複数本束ねてテープで被覆した線材を示す断面図である。
図7図6の集合電線に第2シールド線を被覆した電線構造を示す断面図である。
図8図7の集合電線にシースを被覆してなるプローブケーブルを示す断面図である。
図9】本発明のシールド付き絶縁電線の製造方法で用いられるシールド付き絶縁電線の製造装置の概略構成を示す模式図である。
図10図9のシールド付き絶縁電線の製造装置に設けられたヒータ装置の構成を示す正面図である。
図11図10のA-A線に沿って切断した断面図である。
図12図10のヒータ装置の制御系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のシールド付き絶縁電線の製造方法および多芯ケーブルの製造方法の実施形態の一例について説明する。まず、図1図8を用いて本実施形態のシールド付き絶縁電線および多芯ケーブルの構造について説明する。
【0015】
図1は、上記シールド付き絶縁電線の内部に設けられる絶縁電線30の構造を示す図である。絶縁電線30は、複数本の素線を撚り合わせた撚線からなる導体31の周囲が発泡絶縁層32で覆われた構造となっている。すなわち、発泡絶縁層32の内部には導体31が配置されている。なお、発泡絶縁層32は、例えば、樹脂からなり、気泡28を含んでいる。
【0016】
図2は、内部に導体31が設けられた発泡絶縁層32をスキンテープ(第1絶縁テープ)33で被覆した電線構造を示している。スキンテープ33は、絶縁性のテープであり、例えば、ポリエチレン系のテープである。このスキンテープ33を巻いて発泡絶縁層32に融着させることで、発泡絶縁層32の絶縁能力を高めることができる。
【0017】
図3は、スキンテープ33上に複数の第1シールド線34を被覆した電線構造を示している。第1シールド線34は、例えば、銅線であり、横巻式シールド工法によって複数の第1シールド線34がスキンテープ33上に巻かれている。横巻式シールド工法は、絶縁電線に第1シールド線34を1列にぐるぐる巻き付けてシールドを形成する工法である。そして、第1シールド線34は、絶縁電線に対してスパイラル状に巻き付けられる。
【0018】
図4は、第1シールド線34をジャケットテープ(第2絶縁テープ)35で被覆した電線構造を示している。ジャケットテープ35は、絶縁性のテープである。このジャケットテープ35を2層(ジャケットテープ35と図9に示すジャケットテープ35a)に巻いて第1シールド線34に融着させることで、第1シールド線34に対する絶縁性を確保することができる。図4に示す電線構造が本実施形態のシールド付き絶縁電線36である。
【0019】
図5は、複数のシールド付き絶縁電線36を撚り合わせた電線構造を示している。複数のシールド付き絶縁電線36を束ねて撚り合わせることで第1集合電線37が形成されている。
【0020】
図6は、介在29の周りに複数の第1集合電線37を配置し、これら複数の第1集合電線37を束ねた電線材にテープ38を巻いて融着させた電線構造を示している。これにより、第2集合電線39が形成される。ただし、テープ38は、必ずしも巻かなくてもよい。なお、介在29は、ケーブル外形を丸く保つための機能を有している。
【0021】
図7は、図6に示すテープ38を巻かなかった場合の電線構造として、介在29の周りに複数の第1集合電線37を配置し、これら複数の第1集合電線37を束ねた電線材に銅線等の第2シールド線40を巻いた電線構造が示されている。複数の第1集合電線37を束ねた電線材に第2シールド線40を編組工法で巻くことにより、第3集合電線41が形成される。編組工法は、電線材に第2シールド線40を交差させながら編み上げるように巻いてシールドを形成する工法である。
【0022】
図8は、上記編組工法で巻かれた第2シールド線40をシース42で被覆した電線構造を示している。この図8に示す電線構造が本実施形態のプローブケーブル(多芯ケーブル)43である。
【0023】
次に、図9に示す本実施形態のシールド付き絶縁電線の製造装置50およびシールド付き絶縁電線36の製造方法について説明する。シールド付き絶縁電線の製造装置50は、送出機54から送り出された絶縁電線30にスキンテープ33を巻いて近赤外線ランプ(集光型ヒータ)で加熱融着する第1加工と、該第1加工によりスキンテープ33が融着された絶縁電線30に第1シールド線34を巻き付ける第2加工と、該第2加工により第1シールド線34が巻き付けられた絶縁電線30にジャケットテープ35,35aを巻いて近赤外線ランプで加熱融着する第3加工と、を連続して実施する製造装置である。すなわち、シールド付き絶縁電線の製造装置50は、第1加工が実施される第1加工部51と、第2加工が実施される第2加工部52と、第3加工が実施される第3加工部53と、を備えており、上記第1加工開始から上記第3加工終了までの間、絶縁電線30を巻き取ることなく絶縁電線30に第1加工、第2加工および第3加工を実施する製造装置である。言い換えれば、シールド付き絶縁電線の製造装置50は、送出機54から送り出された絶縁電線30に第1加工、第2加工および第3加工を連続的に実施する一貫装置である。そして、第3加工部53で第3加工が実施された電線構造が、図4に示す本実施形態のシールド付き絶縁電線36であり、製造されたシールド付き絶縁電線36は巻取機55によって巻き取られる。つまり、シールド付き絶縁電線の製造装置50を用いた本実施形態のシールド付き絶縁電線36の製造方法では、送出機54から送り出された絶縁電線30は、第1加工、第2加工および第3加工が実施されるまで巻き取られることはなく、第3加工終了後に巻取機55によって巻き取られる。したがって、シールド付き絶縁電線の製造装置50の製造方法では、送出機54から送り出された絶縁電線30は、最終的に巻取機55によって巻き取られるまで繋がったインライン状態である。
【0024】
さらに、シールド付き絶縁電線の製造装置50の製造方法では、絶縁電線30に対して、第1加工、第2加工および第3加工を、それぞれ第1加工部51、第2加工部52および第3加工部53において同時に実施することが可能である。
【0025】
ここで、シールド付き絶縁電線の製造装置50を用いた製造では、送出機54が設置された側を上流側と呼び、巻取機55が配置された側を下流側と呼ぶ。したがって、送出機54から送り出された絶縁電線30は下流側の巻取機55に向かって進行し、絶縁電線30に対して第1加工、第2加工および第3加工が順番に実施される。なお、送出機54から送り出された絶縁電線30は、進行軸に対してその周りに回転しながら進行していく。
【0026】
シールド付き絶縁電線の製造装置50の第1加工部51には、絶縁電線30に対して供給されるスキンテープ33が巻かれたボビン51aおよびフライヤ51bと、ヒータ装置21と、が設けられている。なお、第1加工部51におけるスキンテープ33のテーピング方式として、中心式テーピング方式が採用されている。したがって、ボビン51aの中心に絶縁電線30が通っており、ボビン51aに巻かれたスキンテープ33を、回転している絶縁電線30に対してフライヤ51bを介して供給し、これによって、絶縁電線30にスパイラル状にスキンテープ33を巻き付ける。
【0027】
また、ヒータ装置21は、第1容器であるヒータ格納ボックス10と、ヒータ格納ボックス10内に設けられた第1ハロゲンランプ(第1近赤外線ランプ)1と、ヒータ格納ボックス10内に空気を送り込むブロワ7と、を備えている。このヒータ格納ボックス10内で絶縁電線30へのスキンテープ33の融着が実施される。すなわち、第1ハロゲンランプ1によってスキンテープ33が加熱され、スキンテープ33が絶縁電線30に融着される。
【0028】
また、ボビン51aの下流側にはトーションキャッチャー56が配置されている。トーションキャッチャー56は、ボビン51aの下流側の位置で、絶縁電線30の回転数と合わせることでスキンテープ33の撚り度合を合わせるものである。
【0029】
シールド付き絶縁電線の製造装置50の第2加工部52には、第1シールド線34が巻かれた複数の横向きのボビン52bを支持するボビン配置板52aと、ボビン配置板52aに配置されたボビン52bからスキンテープ33が融着された絶縁電線30に対して供給される第1シールド線34をガイドするガイド板52cと、が設けられている。そして、第1シールド線34は、横巻式シールド工法によって、絶縁電線に1列にぐるぐる巻かれてスパイラル状に巻き付けられる。
【0030】
なお、ボビン配置板52aおよびガイド板52cの上流側にはトーションキャッチャー57が配置され、さらに、ボビン配置板52aおよびガイド板52cの下流側にはトーションキャッチャー58が配置されている。トーションキャッチャー57,58は、ボビン配置板52aとガイド板52cの上流側および下流側の位置で、絶縁電線30の回転数と合わせることで第1シールド線34の撚り度合を合わせるものである。
【0031】
シールド付き絶縁電線の製造装置50の第3加工部53には、第1シールド線34が巻かれた絶縁電線に対して供給されるジャケットテープ35aが巻かれたボビン52dおよびフライヤ52eと、ジャケットテープ35が巻かれた固定式のボビン53aと、ヒータ装置27と、が設けられている。
【0032】
なお、ジャケットテープ35aは、中心式テーピング方式によってテーピングされる。したがって、ボビン52dの中心に絶縁電線が通っており、ボビン52dに巻かれたジャケットテープ35aを、回転している絶縁電線に対してフライヤ52eを介して供給し、これによって、絶縁電線にスパイラル状にジャケットテープ35aを巻き付ける。
【0033】
一方、ジャケットテープ35は、横巻式テーピング方式によってテーピングされる。横巻式テーピング方式では、ジャケットテープ35aが巻かれた絶縁電線に対してジャケットテープ35を1列にぐるぐる巻き付けるものであり、絶縁電線に対してジャケットテープ35がスパイラル状に巻き付けられる。
【0034】
また、ヒータ装置27は、第2容器であるヒータ格納ボックス26と、ヒータ格納ボックス26内に設けられた第2ハロゲンランプ(第2近赤外線ランプ)24と、ヒータ格納ボックス26内に空気を送り込むブロワ25と、を備えている。このヒータ格納ボックス26内で絶縁電線へのジャケットテープ35,35aの融着が実施される。すなわち、第2ハロゲンランプ24によってジャケットテープ35,35aが加熱され、ジャケットテープ35,35aが絶縁電線に融着される。
【0035】
なお、ボビン52dの下流側にはトーションキャッチャー59が配置されており、トーションキャッチャー59は、ボビン52dの下流側の位置で絶縁電線の回転数と合わせることでジャケットテープ35aの撚り度合を合わせるものである。
【0036】
次に、ヒータ装置21について詳細に説明する。ここでは、ヒータ装置21を取り上げて説明するが、図9に示すヒータ装置27についてもヒータ装置21と同様の構造および機能が備えられている。
【0037】
図10に示すヒータ装置21は、内部に絶縁電線4(図9に示す絶縁電線30のこと)を加熱する第1ハロゲンランプ1が設けられたヒータ格納ボックス10を備えている。すなわち、ヒータ格納ボックス10内を絶縁電線4が通るようになっており、ヒータ格納ボックス10内で第1ハロゲンランプ1によって絶縁電線4が加熱され、図9に示すスキンテープ33の融着等が実施される。絶縁電線4は、ヒータ格納ボックス10に設けられた筒状の石英管5の内部に配置され、絶縁電線4は、筒状の石英管5の内部を進行する。
【0038】
また、ヒータ装置21は、ヒータ格納ボックス10内に空気を送り込むブロワ7を備えている。したがって、ヒータ装置21では、ヒータ格納ボックス10内の雰囲気が、第1ハロゲンランプ1による加熱とブロワ7による冷却との組み合わせにより温度制御される。
【0039】
図11に示すように、ヒータ格納ボックス10は、断熱材3によって形成されており、ヒータ格納ボックス10内の雰囲気温度が維持されるようになっている。
【0040】
また、石英管5の軸方向周りには、3つの第1ハロゲンランプ1が石英管5を囲むように設けられている。3つの第1ハロゲンランプ1のそれぞれは、ヒータブラケット9によって支持され、各ヒータブラケット9は、ヒータ格納ボックス10の内壁に取り付けられている。なお、石英管5の軸方向周りには、3つの第1ハロゲンランプ1それぞれの周りの隙間を囲うように3枚の反射板6が設けられている。これにより、ヒータ格納ボックス10内において絶縁電線4の近傍のみの温度を高くすることができる。
【0041】
また、ヒータ格納ボックス10には、該ヒータ格納ボックス10内の温度を計測するための熱電対8や保護管2等が取り付けられている。
【0042】
図12に示すように、図11の第1ハロゲンランプ1には、冷却水配管12,14が接続されており、それぞれの第1ハロゲンランプ1に対して常時冷却水を流している。冷却水配管12,14はチラー15に連結されており、チラー15によって冷却水が冷却水配管12,14を通って循環されている。図12に示す制御系では、冷却水配管14が冷却水を供給する配管であり、冷却水配管12が冷却水を戻す配管となっている。したがって、冷却水配管12には流量計11が取り付けられ、冷却水配管14には電磁弁13が取り付けられており、冷却水配管14に供給する冷却水の流量を電磁弁13で調節する。チラー15は、冷却水を循環させて絶縁電線4の温度制御を行う装置である。
【0043】
なお、各第1ハロゲンランプ1は、ランプコントローラ19を介してPLC18に接続されている。また、ブロワ7は、ブロワインバータであるINV20を介してPLC18に接続されている。そして、熱電対8、チラー15、流量計11および電磁弁13もPLC18に接続されている。PLC18は、第1ハロゲンランプ1による加熱、ブロワ7による冷却および冷却水の循環のシーケンスを制御するためのコントローラである。そして、PLC18は、操作盤であるGP17およびライン制御盤16に接続されている。
【0044】
以上により、本実施形態のシールド付き絶縁電線の製造では、ヒータ装置21において、加工中のヒータ格納ボックス10内の雰囲気温度を熱電対8によって実測することが可能であり、この実測結果に基づいて加工中のヒータ格納ボックス10内の雰囲気温度を、第1ハロゲンランプ1とブロワ7とを組み合わせて使用することで制御することができる。このことについては、ヒータ装置27についても同様である。
【0045】
本実施形態のシールド付き絶縁電線36の製造方法においては、高出力の集光型ヒータとして近赤外線ランプ(第1ハロゲンランプ1、第2ハロゲンランプ24)を採用したヒータ装置21,27が設けられたことで、このヒータ装置21,27でテープ融着を行うことが可能になる。そして、これらヒータ装置21,27が設けられたシールド付き絶縁電線の製造装置50において、第1シールド線34を巻く加工をヒータ装置21とヒータ装置27との間で行う。これにより、シールド付き絶縁電線36の製造方法においては、スキンテープ33を巻いて加熱融着する第1加工と、第1シールド線34を巻き付ける第2加工と、ジャケットテープ35,35aを巻いて加熱融着する第3加工と、からなる3つの加工を1つの工程内で連続的に、かつ、同時に実施することができる。
【0046】
その結果、シールド付き絶縁電線36の製造において、製造工程数を低減することができるとともに、工程間の移動頻度を低減することができる。また、近赤外線ランプの採用でヒータ長を短くすることができるため、設備の設置スペースも狭くすることができ、シールド付き絶縁電線36の生産性を高めることができる。
【0047】
なお、上記第1加工、第2加工および第3加工を1つの工程として実施する場合、ライン全長が長くなって絶縁電線30の伸縮や捻じれむらによるシールド巻き乱れやテープ巻き乱れが誘引され、テープ融着不良に至ることが懸念される。
【0048】
そこで、本実施形態のシールド付き絶縁電線36の製造方法では、近赤外線ランプの採用でヒータ長を短くすることができるとともに、高温融着が可能になるため、絶縁電線の伸縮や捻じれむらによるシールド巻き乱れやテープ巻き乱れの発生を抑制することができる。
【0049】
また、シールド巻き加工(第2加工)とテープ融着加工(第1,第3加工)とを同時に実施しようとすると、絶縁電線を回転させながらテープをその周りに巻いてそのままの状態で融着を実施しなければならない。したがって、シールド巻き加工とテープ融着加工とを同時に実施する場合には、シールド巻き加工とテープ融着加工とを別々の工程で行う場合と比較して周囲温度を高くしてテープ融着を実施する必要がある。本実施形態のシールド付き絶縁電線36の製造方法では、近赤外線ランプを採用しており、近赤外線ランプは、波長が短く、温度が高いため、絶縁電線の周囲温度を高くしてテープ融着を実施することができる。その結果、シールド付き絶縁電線の製造装置50を用いたシールド付き絶縁電線36の製造方法では、シールド巻き加工(第2加工)とテープ融着加工(第1,第3加工)とを同時に実施することができる。
【0050】
また、近赤外線ランプを採用したことで、テープ融着のための昇温を、ライン起動に同調させて早期に行うことができる。さらに、近赤外線ランプを採用したことで、ヒータ格納ボックス10,26内の絶縁電線4(絶縁電線30)の近傍温度を実測しながら近赤外線ランプを温調することにより、テープ融着部の温度を安定化することができ、テープ融着の不良の発生を低減することができる。
【0051】
また、ヒータ格納ボックス10,26内を冷却するブロワ7,25が設けられ、かつ、ブロワ7,25の制御と、近赤外線ランプ自体の温度を冷却水によって下げる制御とを行うチラー制御機構が設けられたことにより、ヒータ格納ボックス10,26内の冷却制御や近赤外線ランプ自体の急速冷却制御を行うことができる。さらに、チラー制御機構によって素早く絶縁電線4(絶縁電線30)の周囲温度を降温させることができ、これにより、絶縁電線4の送り速度減速中および停止時のテープ過昇温によるテープ焼けおよび融着不良の発生を低減することができる。
【0052】
また、シールド付き絶縁電線の製造装置50には、絶縁電線を回転させるためにシングルツイスト型の送出機54と巻取機55が採用され、さらに、横巻式シールドが実施されるボビン配置板52aおよびガイド板52cの上流側と下流側にトーションキャッチャー57,58が配置され、かつ、中心式テーピングが行われるボビン51a,52dの下流側にトーションキャッチャー56,59が配置されている。これにより、長い絶縁電線30の撚り抑えを行うことができる。さらに、絶縁電線の撚り抜きピッチの安定性を向上させることができ、また、シールド巻きピッチの乱れを低減することができる。これにより、上巻きテープのテープ巻き乱れを低減することができる。
【0053】
また、ジャケットテープ35,35aのテーピングにおいて、中心式テーピングとテープ縦添え方式とを組み合わせることにより、テーピングの高速化を図ることができるとともに、巻きピッチ変更への対応が可能になる。さらに、テーピング構造を簡略化・小型化することができ、ライン全長を短くすることができる。その結果、絶縁電線の伸縮や捻じれむらによるシールド巻き乱れやテープ巻き乱れを低減することができる。
【0054】
次に、本実施形態のプローブケーブル(多芯ケーブル)43の製造方法について説明する。プローブケーブル43の製造方法は、シールド付き絶縁電線36の製造方法によって製造されたシールド付き絶縁電線36を用いるものである。まず、図5に示すように、複数のシールド付き絶縁電線36を撚り合わせて第1集合電線37を形成する第4加工を実施する。そして、上記第4加工を実施した後、各々が撚り合わされた複数のシールド付き絶縁電線36からなる複数の第1集合電線37を、図7に示すように第2シールド線40で被覆して第3集合電線41を形成する第5加工を実施する。さらに、上記第5加工を実施した後、第2シールド線40を、図8に示すようにシース42で被覆してプローブケーブル43を製造する第6加工を実施する。
【0055】
以上のように、シールド付き絶縁電線36の製造方法によって製造されたシールド付き絶縁電線36を用いて上記第4加工、上記第5加工および上記第6加工を実施することで、本実施形態のプローブケーブル43を製造することができる。したがって、本実施形態のプローブケーブル43の製造方法においても、シールド付き絶縁電線36の製造方法と同様に、近赤外線ランプの採用で製造工程数を低減することができるとともに、工程間の移動頻度を低減することができる。また、近赤外線ランプの採用でヒータ長を短くすることができるため、設備の設置スペースも狭くすることができ、プローブケーブル43の生産性を高めることができる。
【0056】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、各々が撚り合わされた複数のシールド付き絶縁電線36からなる複数の第1集合電線37(図6参照)にテープ38を巻いて第2集合電線39を形成する加工は、必ずしも実施しなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 第1ハロゲンランプ(第1近赤外線ランプ)
2 保護管
3 断熱材
4 絶縁電線
5 石英管
6 反射板
7 ブロワ
8 熱電対
9 ヒータブラケット
10 ヒータ格納ボックス(第1容器)
11 流量計
12 冷却水配管
13 電磁弁
14 冷却水配管
15 チラー
16 ライン制御盤
17 GP
18 PLC
19 ランプコントローラ
20 INV
21 ヒータ装置
24 第2ハロゲンランプ(第2近赤外線ランプ)
25 ブロワ
26 ヒータ格納ボックス(第2容器)
27 ヒータ装置
28 気泡
29 介在
30 絶縁電線
31 導体
32 発泡絶縁層
33 スキンテープ(第1絶縁テープ)
34 第1シールド線
35,35a ジャケットテープ(第2絶縁テープ)
36 シールド付き絶縁電線
37 第1集合電線
38 テープ
39 第2集合電線
40 第2シールド線
41 第3集合電線
42 シース
43 プローブケーブル(多芯ケーブル)
50 シールド付き絶縁電線の製造装置
51 第1加工部
51a ボビン
51b フライヤ
52 第2加工部
52a ボビン配置板
52b ボビン
52c ガイド板
52d ボビン
52e フライヤ
53 第3加工部
54 送出機
55 巻取機
56,57,58,59 トーションキャッチャー
図1
図2
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