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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20241203BHJP
   G03G 15/36 20060101ALI20241203BHJP
   G03G 21/04 20060101ALI20241203BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G03G15/01 Y
G03G15/01 J
G03G15/36
G03G21/04
B41J21/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021063535
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022073893
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2020181468
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 泰宏
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082517(JP,A)
【文献】特開2015-225105(JP,A)
【文献】特開2016-158161(JP,A)
【文献】特開2020-140123(JP,A)
【文献】特開2019-117372(JP,A)
【文献】特開2013-070221(JP,A)
【文献】特開2007-078981(JP,A)
【文献】特開2008-035448(JP,A)
【文献】特開2006-227294(JP,A)
【文献】特開2007-299096(JP,A)
【文献】特開2020-034593(JP,A)
【文献】特開2004-181787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0160435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 15/36
G03G 21/04
B41J 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部を制御する制御部と、を有する画像形成装置であって、
前記画像形成部は、前記記録媒体上に、不可視材料による不可視画像と、該不可視画像上に可視材料による可視画像とを順に重ねた画像を形成し、前記不可視画像が前記可視画像よりも前記記録媒体側に位置し、
前記不可視画像と前記可視画像を重ねた部分における所定の画像の単位面積当たりの前記可視材料及び前記不可視材料の付着量を第1の付着量とし、
前記第1の付着量よりも少ない付着量であって、前記不可視画像と前記可視画像を重ねた部分における所定の画像の単位面積当たりの前記可視材料及び前記不可視材料の付着量を第2の付着量としたとき、
前記制御部は、前記可視画像の情報に応じて、前記不可視画像が形成される位置を変更するとともに、前記第2の付着量で画像を形成する場合、前記第2の付着量における前記不可視材料の量を前記第1の付着量における前記不可視材料の量よりも少なくする制御を行い、前記第1の付着量で前記不可視画像を形成するときよりも前記不可視画像の大きさを大きくする制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体と、
該像担持体を帯電させる帯電部と、
前記像担持体を露光して静電潜像を形成する露光部と、
前記像担持体に形成された静電潜像を現像剤により可視化して可視像を形成する現像部と、
前記像担持体に形成された可視像を中間転写体に転写し、前記中間転写体に転写された前記可視像を前記記録媒体に転写する転写部と、を有する電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、
前記画像形成部は、前記像担持体、前記帯電部、前記露光部、前記現像部及び前記転写部を有し、
前記現像部は、前記可視材料としての可視現像剤による前記可視像と、前記不可視材料としての不可視現像剤による前記可視像とを形成し、
前記記録媒体上に転写された前記可視現像剤による可視像を前記可視画像とし、前記記録媒体上に転写された前記不可視現像剤による可視像を前記不可視画像としたとき、
前記現像部及び前記転写部は、前記記録媒体上に、前記不可視画像と、該不可視画像上に前記可視画像とを順に重ねるように前記可視化及び前記転写を行い、
前記制御部は、前記第2の付着量で前記不可視画像を形成するときは、前記第1の付着量で前記不可視画像を形成するときよりも前記中間転写体上の前記不可視現像剤の量を少なくする制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体、前記帯電部及び前記現像部を有する作像ステーションを複数備え、
前記中間転写体の搬送方向の最下流側に、前記不可視現像剤を用いて前記可視化を行う現像部を有する作像ステーションが配置されていることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の作像ステーションは、それぞれ前記可視現像剤としてブラック現像剤、シアン現像剤、マゼンタ現像剤又はイエロー現像剤を用いる作像ステーションであり、
前記ブラック現像剤を用いる作像ステーションは、前記搬送方向の最下流側に配置され、前記ブラック現像剤と前記不可視現像剤とが交換可能であることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録媒体に前記不可視材料としての不可視インクを吐出する第1の吐出部と、
前記不可視材料が吐出された前記記録媒体に前記可視材料としての可視インクを吐出する第2の吐出部と、を有するインクジェット方式により画像を形成する画像形成装置であって、
前記画像形成部は、前記第1の吐出部及び前記第2の吐出部を有し、
前記記録媒体上に、前記不可視インクにより形成される前記不可視画像と、該不可視画像上に前記可視インクによる前記可視画像とを順に重ねた画像を形成し、前記不可視画像が前記可視画像よりも前記記録媒体側に位置し、
前記制御部は、前記第2の付着量で前記不可視画像を形成するときは、前記第1の付着量で前記不可視画像を形成するときよりも前記第1の吐出部が吐出する不可視インクの量を少なくする制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記可視画像の明度又は前記可視画像と前記不可視画像の色差に応じて、前記記録媒体上の前記不可視画像における単位面積当たりの前記不可視材料の量を変更することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記可視画像の明度が基準値よりも高い場合、又は、前記可視画像と前記不可視画像の色差が基準値よりも小さい場合、前記第2の付着量における前記不可視材料の量を前記第1の付着量における前記不可視材料の量よりも少なくする制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記記録媒体に前記不可視画像が形成される前において、前記不可視画像の位置情報及び画像サイズをユーザーに示す提示部を有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記不可視材料は、近赤外線吸収材を含み、透明であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記不可視材料は、近赤外線吸収材を含み、黒色であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記画像形成部よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体を前記画像形成部に再搬送する再搬送手段を有し、
前記画像形成部により前記記録媒体上に前記不可視画像を含む画像を形成する第1ステップと、
前記再搬送手段により前記記録媒体の前記不可視画像を含む画像が形成された面を前記画像形成部に再搬送する第2ステップと、
前記画像形成部により前記記録媒体上に前記可視画像を形成する第3ステップと、
を実行する画像形成モードを有し、
前記画像形成モードは、前記第1のステップ、前記第2のステップ及び前記第3のステップの順に実行することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成部は、第1の不可視材料を有する第1の作像ステーションと、第2の不可視材料を有する第2の作像ステーションとを有し、
前記第1の不可視材料は、近赤外線吸収材を含み、透明であり、
前記第2の不可視材料は、近赤外線吸収材を含み、黒色であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記画像形成部よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体を前記画像形成部に再搬送する再搬送手段を有し、
前記画像形成部により前記記録媒体上に、前記第1の不可視材料による第1の不可視画像及び前記第2の不可視材料による第2の不可視画像のうちの少なくとも一方を含む画像を形成する第1ステップと、
前記再搬送手段により前記記録媒体の前記不可視画像を含む画像が形成された面を前記画像形成部に再搬送する第2ステップと、
前記画像形成部により前記記録媒体上に前記可視画像を形成する第3ステップと、
を実行する画像形成モードを有し、
前記画像形成モードは、前記第1のステップ、前記第2のステップ及び前記第3のステップの順に実行することを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置は複写性能が向上し、正規の複写物と不正に複写された複写物との区別がつきにくくなるまでに至っている。そこで、不正複写を防止し、著作権を保護するなどの目的から、肉眼によって視認できる可視画像の他に、肉眼によっては視認しにくい不可視画像を記録媒体に画像形成する技術が提案されてきた。
【0003】
例えば特許文献1では、カラートナーと、近赤外線吸収材料を含む不可視トナーを有するトナーセットが開示されており、カラートナー像の画質の視認性と不可視トナー像の読み取り精度を良好にする試みがなされている。特許文献1では、不可視トナーのベタ画像の60度光沢度30以上であり、かつカラートナーのベタ画像の60度光沢度より10以上高いことを特徴としている。
なお、カラートナーを可視トナーとも称し、カラートナー像を可視画像とも称し、不可視トナー像を不可視画像とも称する。
【0004】
特許文献1に開示されている不可視トナーと可視トナーを用い、可視画像の下に不可視画像を形成することで、不可視画像の不可視性、すなわち不可視画像が視認されないことを確保できると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、可視トナーの色味が不可視トナーに含まれる可視波長成分に近い場合、不可視画像は可視画像に遮蔽されず、視認されてしまう。そのため、不可視画像の不可視性については、いまだ向上が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、不可視画像の不可視性を向上できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部を制御する制御部と、を有する画像形成装置であって、前記画像形成部は、前記記録媒体上に、不可視材料による不可視画像と、該不可視画像上に可視材料による可視画像とを順に重ねた画像を形成し、前記不可視画像が前記可視画像よりも前記記録媒体側に位置し、前記不可視画像と前記可視画像を重ねた部分における所定の画像の単位面積当たりの前記可視材料及び前記不可視材料の付着量を第1の付着量とし、前記第1の付着量よりも少ない付着量であって、前記不可視画像と前記可視画像を重ねた部分における所定の画像の単位面積当たりの前記可視材料及び前記不可視材料の付着量を第2の付着量としたとき、前記制御部は、前記可視画像の情報に応じて、前記不可視画像が形成される位置を変更するとともに、前記第2の付着量で画像を形成する場合、前記第2の付着量における前記不可視材料の量を前記第1の付着量における前記不可視材料の量よりも少なくする制御を行い、前記第1の付着量で前記不可視画像を形成するときよりも前記不可視画像の大きさを大きくする制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不可視画像の不可視性を向上できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す全体概略図である。
図2】記録媒体上の画像の一例を示す断面模式図である。
図3】本発明に係る画像形成装置の一例を示す要部概略図である。
図4】記録媒体上の画像の他の例を示す断面模式図(A)及び(B)である。
図5】記録媒体上の不可視現像剤の付着量と不可視性の関係の一例を示す図である。
図6】記録媒体上の不可視現像剤の付着量と読取性の関係の一例を示す図である。
図7】記録媒体上の不可視現像剤の付着量の制御の一例を示す図である。
図8】記録媒体上の画像の他の例を示す平面模式図(A)~(D)である。
図9】記録媒体上の画像の他の例を示す断面模式図である。
図10】本発明に係る画像形成装置の他の例を示す全体概略図である。
図11】本発明に係る画像形成装置の他の例を示す要部概略図である。
図12】本発明に係る画像形成装置の他の例を示す要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明の画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部を制御する制御部と、を有する画像形成装置であって、前記画像形成部は、前記記録媒体上に、不可視材料による不可視画像と、該不可視画像上に可視材料による可視画像とを順に重ねた画像を形成し、前記不可視画像が前記可視画像よりも前記記録媒体側に位置し、前記不可視画像と前記可視画像を重ねた部分における所定の画像の単位面積当たりの前記可視材料及び前記不可視材料の付着量を第1の付着量とし、前記第1の付着量よりも少ない付着量であって、前記不可視画像と前記可視画像を重ねた部分における所定の画像の単位面積当たりの前記可視材料及び前記不可視材料の付着量を第2の付着量としたとき、前記制御部は、前記第2の付着量で画像を形成する場合、前記第2の付着量における前記不可視材料の量を前記第1の付着量における前記不可視材料の量よりも少なくする制御を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の画像形成装置に係る一実施形態について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、像担持体と、該像担持体を帯電させる帯電部と、前記像担持体を露光して静電潜像を形成する露光部と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像剤により可視化して可視像を形成する現像部と、前記像担持体に形成された可視像を中間転写体に転写し、前記中間転写体に転写された前記可視像を前記記録媒体に転写する転写部と、を有する電子写真方式により画像を形成する画像形成装置である。
前記画像形成部は、前記像担持体、前記帯電部、前記露光部、前記現像部及び前記転写部を有する。
前記現像部は、前記可視材料としての可視現像剤による前記可視像と、前記不可視材料としての不可視現像剤による前記可視像とを形成する。
前記記録媒体上に転写された前記可視現像剤による可視像を前記可視画像とし、前記記録媒体上に転写された前記不可視現像剤による可視像を前記不可視画像としたとき、前記現像部及び前記転写部は、前記記録媒体上に、前記不可視画像と、該不可視画像上に前記可視画像とを順に重ねるように前記可視化及び前記転写を行う。
また、前記制御部は、前記第2の付着量で前記不可視画像を形成するときは、前記第1の付着量で前記不可視画像を形成するときよりも前記中間転写体上の前記不可視現像剤の量を少なくする制御を行う。
【0013】
図1は、本実施形態の画像形成装置(以下、単にプリンタとも称する)の概略構成を示す断面図である。この図に示すプリンタは、中間転写体としての無端状ベルト(中間転写ベルト11)を有している。
【0014】
中間転写ベルト11の上部走行辺に沿って、4つの作像ステーション(画像形成ユニット、作像ユニットなどとも称される)10A、10B、10C、10Dが並設されている。本実施形態のプリンタは、作像ステーション10A、10B、10C、10Dが並設されたタンデム作像部を構成している。
【0015】
作像ステーション10A、10B、10C、10Dは、例えば扱うトナーの色が異なり、その他の構成は同一とすることができる。そのため、図1では、中間転写ベルト11の搬送方向における最下流の作像ステーション、すなわち作像ステーション10Dについてのみ符号を付している。
【0016】
本実施形態において、作像ステーション10A、10B、10C、10Dは、例えば順にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーを用いた作像ステーションとすることができる。制限されるものではないが、ブラックの作像ステーションを最下流にすることが好ましい。これら作像ステーションの配置は、適宜変更することが可能であり、上記に限られるものではない。
【0017】
作像ステーション10Dは、感光体ドラム2d(像担持体)、帯電器7d、現像器4d、一次転写ローラ12d、クリーニング部材6d等を有している。作像ステーション10A、10B、10Cも同様にこれらの部材を有している。
【0018】
以下、作像ステーション10A、10B、10C、10Dを区別なく説明する場合、単に作像ステーション10と称する。帯電器7、現像器4、一次転写ローラ12、クリーニング部材6についても同様とする。
【0019】
図示するように、作像ステーション10は、感光体ドラム2を中心として、その周囲に配置された帯電器7、現像器4、一次転写ローラ12、クリーニング部材6等により構成される。
【0020】
像担持体としての感光体ドラム2は、本実施形態ではφ30の円筒形の感光体ドラムとしている。感光体ドラム2は、例えば周速50~200mm/sで回転する。
【0021】
感光体ドラム2の表面には帯電部であるローラ形状の帯電器7が圧接されており、感光体ドラム2の回転により従動回転する。帯電器7には、高圧電源によりDCあるいはDCにACが重畳されたバイアスが印加され、これにより感光体ドラム2は一様に帯電される。帯電における表面電位としては、特に制限されるものではないが、例えば、表面電位-500V等に帯電される。
【0022】
感光体ドラム2は、露光部からの露光光3により画像情報が露光され、静電潜像が形成される。この露光工程では、例えばレーザーダイオードを用いたレーザービームスキャナやLEDなどを用いることができる。特に制限されるものではないが、露光工程により、感光体ドラム2の露光部の表面電位は例えば-50V等に落ちる。
【0023】
現像部である現像器4は、現像剤を用いて感光体ドラム2に形成された静電潜像を可視像(トナー像などとも称する)として現像する。この現像工程は、特に制限されるものではないが、例えば高圧電源から供給される-200V等の所定の現像バイアスを用いて行うことができる。
【0024】
本実施形態における現像工程では、主に一成分現像方式(一成分接触現像方式などとも称される)を用い、現像器4には一成分トナーが収納される。特に制限されるものではないが、帯電極性が負の一成分トナーを用いることができる。また、本実施形態では、一成分について説明しているが、二成分現像方式でもよい。
【0025】
このように、感光体ドラム2が図中の矢印方向に回転しながら、帯電器7により感光体ドラム2を帯電させ、露光光3により感光体ドラム2に静電潜像を形成し、現像器4により静電潜像を可視像にする。
【0026】
次いで、一次転写ローラ12もあわせて用いて、感光体ドラム2上の可視像を中間転写ベルト11に転写する(一次転写)。中間転写ベルト11は、ベルト搬送ローラ35、二次転写対向ローラ13によって図中の矢印方向に搬送され回転する。
【0027】
一方、給紙カセット15中の記録媒体は、給紙手段16(給紙ローラ)、搬送ローラ対17によって搬送、供給される。なお、手差しトレイ60により記録媒体を供給してもよい。記録媒体は、二次転写対向ローラ13と二次転写ローラ19の間を通過する際に、中間転写ベルト11上の可視像が転写される(二次転写)。
【0028】
なお、本実施形態において、転写部は、像担持体に形成された可視像を中間転写体に転写し、中間転写体に転写された可視像を記録媒体に転写する。本実施形態の転写部は、一次転写ローラ12、二次転写ローラ19等を有し、像担持体に形成された可視像を中間転写体に転写した後、記録媒体に転写する。
【0029】
次いで、定着装置20により記録媒体上の可視像が定着される。定着装置20を通過した記録媒体は、排紙トレイ30に排紙される。このような例により画像が形成される。
【0030】
なお、必要に応じて、中間転写ベルト11のクリーニングを行うベルトクリーニングブレード37及び対向部材38を有していてもよい。
また、必要に応じて、廃トナーボトル33を有していてもよい。廃トナーボトル33は、感光体上、転写ベルト上に転写されずクリーニングブレードで書き取られたトナーの回収を行う。
【0031】
また図1には、制御部34が模式的に図示されている。制御部34は、特に制限されるものではないが、例えばCPU等からなり、現像部や転写部等の制御を行う。例えば、記録媒体上の可視画像における単位面積当たりの可視現像剤の量に応じて、不可視画像における単位面積当たりの不可視現像剤の量を変更する。
【0032】
ここで、作像ステーションについて補足説明する。
適宜変更することが可能であるが、フルカラー画像を形成するときは、一次転写においては、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に中間転写ベルト11上に可視像が転写される。この場合、二次転写を行うと、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順に記録媒体上に可視像が転写される。図示する例では、中間転写ベルト11の搬送方向の最下流に配置された作像ステーション(本例では作像ステーション10D)の現像剤によって可視化された可視像が記録媒体上の最下層になる。
【0033】
本実施形態における現像部は、可視材料としての可視現像剤による可視像と、不可視材料としての不可視現像剤による可視像とを形成する。例えば一次転写ローラ12を用いることにより、可視現像剤による可視像と不可視現像剤による可視像はともに中間転写ベルト11に転写される。次いで、二次転写ローラ19を用いることにより、中間転写ベルト11に転写された可視現像剤による可視像と不可視現像剤による可視像はともに記録媒体に転写される。
【0034】
本実施形態では、記録媒体上に、不可視現像剤による画像(不可視画像とも称する)と、該不可視画像上に可視現像剤による画像(可視画像とも称する)とを順に重ねるよう可視化及び転写を行う。このようにするには、例えば、中間転写ベルト11の搬送方向において、不可視現像剤により現像を行う作像ステーションを他の作像ステーションよりも最下流側に配置する。例えば、作像ステーション10Dよりも下流側に、不可視現像剤を用いる作像ステーションを設ける。これにより、記録媒体上に、不可視現像剤による画像、可視現像剤による画像の順に積層することができる。この場合の装置構成としては、5つの作像ステーションを用いた構成になる。
【0035】
本例の構成を再度述べると、本例のプリンタは、像担持体、帯電部及び現像部を有する作像ステーションを複数備える。そして、中間転写体の搬送方向の最下流側に、不可視現像剤を用いて可視化を行う現像部を有する作像ステーションが配置されている。
【0036】
上記の他にも、例えば、ブラックの作像ステーション10Dを、不可視現像剤を用いる作像ステーションにしてもよい。この場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)により可視画像を形成し、不可視現像剤(K、Bk)により不可視画像を形成することができる。
【0037】
この場合の例について図2を用いて説明する。図2は、記録媒体上の画像の一例を模式的に示す図である。ここで示す例では、記録媒体45上に、不可視画像500、可視画像600が積層した画像が形成されている。可視画像600は、シアン画像601、マゼンタ画像602、イエロー画像603を有している。本実施形態において、記録媒体45上に不可視画像501が最下層に位置することになる。なお、ブラックの作像ステーションを不可視現像剤の作像ステーションとする例については他の実施形態として更に例を挙げて後述する。
【0038】
不可視画像500が可視画像600の下に形成されていることから、不可視画像500を可視画像600に埋め込むなどと表現してもよい。不可視画像500は、可視画像600の下に形成されており、視認されない、もしくは視認されにくい画像である。
【0039】
記録媒体上の不可視画像と可視画像の配置を考慮すると、中間転写ベルト11の搬送方向における最下流側の位置に不可視現像剤を用いる作像ステーションを配置することが好ましいが、これに制限されるものではない。例えば、図1に示す例における作像ステーション10A、10B、10Cのいずれかの作像ステーションを、不可視現像剤を用いた作像ステーションにすることができる。ただし、不可視画像が記録媒体上の画像における最下層となるように留意する。
【0040】
記録媒体上に不可視画像、可視画像の順に積層させた画像を形成することにより、画像中に付加情報を埋め込むことができる。例えば、目視できない不可視画像を埋め込むことで、不正にコピーが行われた場合に判別することができる。また本実施形態では、記録媒体上において不可視画像が最下層となっているため、不可視画像の不可視性を高めることができる。すなわち、不可視画像を目視されにくくすることができる。
【0041】
本実施形態における現像部では、主に一成分現像方式を用いる。そのため、現像剤と称する場合、主にトナーをいうものとする。従って、可視現像剤と称する場合、可視トナーを意味し、不可視現像剤と称する場合、不可視トナーを意味する。また、本実施形態では、一成分について説明しているが、二成分現像方式でもよい。
【0042】
本実施形態において、可視現像剤と不可視現像剤との違いとしては、例えば、可視光の吸収の度合いによる違い、赤外線の吸収の度合いによる違い等が挙げられる。
【0043】
上記の他にも、可視現像剤と不可視現像剤との違いとしては、材料の違いが挙げられる。例えば、赤外光吸収材料の有無が挙げられ、不可視現像剤は赤外光吸収材料を含み、可視現像剤は赤外光吸収材料を含まない、もしくは実質的に含まないといった違いが挙げられる。
【0044】
不可視現像剤は、色材を含んでいてもよく、色味を有していてもよい。
また、不可視現像剤は、紫外線を吸収してもよい。紫外線の吸収の度合いの違いにより、可視現像剤と不可視現像剤とを区別することもできる。
【0045】
上述したように、不可視現像剤を用いた作像ステーションの構成は適宜選択することができる。更に他の例について、図3を用いて説明する。図3図1と同様の図であるが、本実施形態の画像形成装置の要部のみを模式的に図示するものである。
【0046】
図3に示す例において、最下流側の作像ステーションを作像ステーション10Dとし、この作像ステーション10Dは、ブラックの現像剤と不可視現像剤の両方を搭載している。本例によれば、不可視現像剤を使用する必要がない場合にブラックの現像剤を使用するなどの態様が可能になる。
【0047】
本例において、複数の作像ステーションは、それぞれ可視現像剤としてブラック現像剤、シアン現像剤、マゼンタ現像剤又はイエロー現像剤を用いる作像ステーションである。そして、ブラック現像剤を用いる作像ステーションは、前記搬送方向の最下流側に配置され、ブラック現像剤と不可視現像剤とが交換可能である。
【0048】
交換とあるのは、適宜変更することが可能であるが、例えば、作像ステーション単位で交換してもよい。また、不可視現像剤を有する交換可能ユニット、ブラック現像剤を有する交換可能ユニットとして、これらを交換するようにしてもよい。また、ブラック現像剤を有する収容器(トナーボトルなどと称してもよい)と不可視現像剤を有する収容器とを別々にし、更にブラック現像剤用の現像器と不可視現像剤の現像器とを別々にし、収容器と現像器の両方を交換するようにしてもよい。またこの他にも、1つの感光体ドラム2dに対して、現像器4dをブラック用の現像器と不可視現像剤用の現像器の2つを有するようにし、適宜切り替えて現像工程を行うようにしてもよい。
【0049】
このように、不可視現像剤とブラック現像剤とが同一の作像ステーションで交換可能であることにより、装置の大型化を抑制することができる。
【0050】
ここで、不可視画像が視認されるメカニズムの一例について、図4を用いて説明する。図4(A)は、記録媒体45上に、不可視画像500とシアン画像601が形成されている場合の模式図である。図中の矢印は、可視光を模式的に示すものである。不可視画像500が形成されていることにより、シアン画像601(可視画像600)の光沢度が変化する場合がある。シアン画像601の光沢度が変化すると、シアン画像601の反射光も変化するため、不可視画像500の位置が認識されてしまうと考えられる。
【0051】
このような場合、従来例においては、シアン画像601等のカラー画像の光沢度を小さくすることでカラー画像の反射光の変化を低減することが提案されている。これにより、不可視画像500の位置が認識されることを低減しようとしている。すなわち不可視性を高めようとしている。しかし、下記のように、不可視画像501が可視波長域の波長を含む場合、カラー画像の光沢度を小さくする方法を用いても不可視性を高めることが難しくなる。
【0052】
図4(B)は、記録媒体45上に、不可視画像501とイエロー画像603が形成されている場合の模式図である。これは、不可視画像501に可視波長域の波長がわずかに含まれる場合の例である。可視波長域を反射する材料(例えばイエローの色材)が不可視画像501に含まれる場合、カラー画像を調整する等の対応では不可視画像501の不可視性を高めることが難しい。このような不可視画像501の場合、カラー画像の光沢度を小さくしても、不可視画像501の視認性を改善することが難しいと考えられる。
【0053】
これらの例においては、不可視画像の不可視性、すなわち目視されないことに関して改善が求められる。そこで、本発明者は上記の内容も含めて鋭意検討を行った。例えば図4(B)に示す例では、不可視画像を形成するための不可視現像剤の量を減らし、カラー画像を形成するための可視現像剤の量を増やすことが対応の一つとして考えられる。しかし、単純に不可視現像剤の量を減らす場合、不可視画像の不可視性は高まるが、機械式の読取機器の読取性が低下すると考えられる。この場合、例えば不正コピーの防止などの利点が得られにくくなると考えられる。
【0054】
これとは別に、不可視現像剤の色味や濃度を調整することにより、不可視画像の不可視性を高める対応も考えられる。しかし、ユーザーによって、可視画像の情報は異なるため、不可視現像剤の色味や濃度を調整することは難しい。
【0055】
そこで、本発明者は更に検討を行い、可視画像の情報に応じて不可視画像を形成するための不可視現像剤の量を制御することで良好な結果が得られることを見出し、本発明に至った。より詳細には、記録媒体上の可視画像における単位面積当たりの可視現像剤の量に応じて、不可視画像における単位面積当たりの不可視現像剤の量を変更する。これにより、不可視画像の不可視性を向上させることができる。更に、記録媒体上の可視画像における単位面積当たりの可視現像剤の量に応じて、不可視画像の画像サイズ(不可視画像の大きさ、不可視画像の面積などと称してもよい)を変更する。これにより、不可視現像剤の量が少ない場合に、例えば画像サイズを大きくして機械の読取性を確保することができる。
【0056】
本実施形態において、不可視画像における単位面積当たりの不可視現像剤の量を変更する方法としては、適宜選択することができる。不可視現像剤の単位面積当たりの量を大きくするもしくは小さくする場合、一例として単位面積あたりのドット形成する面積を制御する方法が挙げられる。この場合、例えば制御部が、装置の書き込みユニットが感光体上に露光する面積を変化させることで制御する。この他にも、現像ローラへ印可する電圧を変化させることで、感光体上のトナー量を変化させて記録媒体上の不可視現像剤の単面積当たりの量を変更することができる。このように制御部34が制御を行うことにより、中間転写ベルト11上又は感光体ドラム2上の不可視現像剤の量が変更され、記録媒体上の不可視現像剤の量が変更される。
【0057】
なお、記録媒体上の可視現像剤の量もしくは不可視現像剤の量と称する場合、特に断りがない限り、記録媒体上に形成された可視画像における可視現像剤の単位面積当たりの量もしくは記録媒体上に形成された不可視画像における不可視現像剤の単位面積当たりの量をいうものとする。
不可視画像における単位面積当たりの不可視現像剤の量をどのような量に変更するかについては、以下説明する。
【0058】
図5に、記録媒体上の不可視現像剤の付着量と不可視性の関係を説明するための図を示す。横軸は記録媒体上の不可視現像剤の付着量であり、単位面積当たりの不可視現像剤の量を示す。縦軸は不可視性の官能ランク(不可視性ランクとも称する)を示している。
【0059】
不可視性ランクは、評価者の目視による官能評価により、不可視画像の見えにくさを1~5の数値でランク付けしたものである。数値が小さいほど不可視画像が見えやすいことを示している。不可視性ランクは、3以上が好ましく、3.5以上がより好ましく、更に数値が高い方が好ましい。不可視性ランクが3以上である場合、目視で認識することが困難であるといえ、不可視画像の秘匿性が確保されているといえる。
【0060】
不可視性ランクを評価するにあたり、以下のように画像を形成した。
図1に示す画像形成装置を用い、作像ステーションとしては図3に示す構成とした。記録媒体としてはマイペーパ(リコー社製)を使用し、記録媒体に不可視画像として15mm×15mmのバーコード画像を形成した。この不可視画像上に、以下の可視画像が形成されるよう現像、転写を行い、評価画像を形成した。評価画像は以下の可視画像に従い3種とした。
【0061】
可視画像としては、以下の3つとした。なお、(2)、(4)、(6)とあるのは、後述の図7と対応させている。
(2)シアン単色、記録媒体上の付着量を0.32mg/cm
(4)シアンとマゼンタの2色、記録媒体上の付着量を0.70mg/cm
(6)シアンとイエローとマゼンタの3色、記録媒体上の付着量を1.10mg/cm
【0062】
なお、上記記録媒体上の付着量は、各色の画像をあわせて考慮したものとする。例えば、(6)においては、シアン、イエロー、マゼンタの現像剤によって形成されたそれぞれの可視画像における可視現像剤をあわせた量が上記の数値であることを示している。数値の単位からもわかるように、付着量とあるのは単位面積当たりの量を示している。上記における記録媒体上の可視現像剤の付着量は、不可視画像が形成された領域における可視現像剤の付着量を測定したものである。
【0063】
上記それぞれの可視画像を有する評価画像において、図中の横軸に示すように、単位面積当たりの不可視現像剤の量を変化させながらバーコード画像を形成した。不可視現像剤の量は、可視画像の下に形成された領域における不可視現像剤の量を測定したものである。
【0064】
評価結果を図に示す。図からわかるように、可視画像における可視現像剤の量により不可視性ランクが変化している。記録媒体上の不可視現像剤の付着量が同一である場合、可視画像における可視現像剤の量が多いほど不可視性が高まる。例えば、記録媒体上の不可視現像剤の付着量が0.50mg/cmの箇所を見てみると、(2)、(4)、(6)の順に不可視性ランクが1、2、4のように高くなっている。これは、不可視画像上の可視現像剤の量が増えるからである。
【0065】
また、記録媒体上の不可視現像剤の付着量により不可視性ランクが変化していることがわかる。記録媒体上の不可視現像剤の付着量が少なくなるほど不可視性ランクが高くなり、記録媒体上の不可視現像剤の付着量が多くなるほど不可視性ランクが低くなる。すなわち、不可視現像剤の量が多くなると不可視画像が見えやすくなる。
【0066】
このように、記録媒体上において、可視現像剤の単位面積当たりの量が多いほど、または不可視現像剤の単位面積当たりの量が少ないほど、不可視性ランクが高くなる。不可視性ランクが高い場合、不可視画像が目視されにくいことを示しており、不可視画像の秘匿性が確保されていることを示している。このため、可視現像剤の単位面積当たりの量が多い場合、不可視現像剤の量を多くしても十分な秘匿性が確保された画像を得ることができる。一方、可視現像剤の単位面積当たりの量が少ない場合、不可視現像剤の量が多いと十分な秘匿性が確保されないため、不可視現像剤の量を少なくする制御が必要になる。
【0067】
本実施形態では、上記を考慮して、下記第2の付着量で画像を形成する場合、前記第2の付着量における前記不可視材料の量を下記第1の付着量における前記不可視材料の量よりも少なくする制御を行う。これにより、不可視画像の不可視性を向上させることができる。また、不可視画像と可視画像を重ねた部分における単位面積当たりの不可視材料の量及び単位面積あたりの可視材料の量を測定したとき、下記第2の付着量で不可視画像を形成するときは、下記第1の付着量で不可視画像を形成するときよりも不可視材料の量を少なくする制御としてもよい。
【0068】
本実施形態において、不可視画像と可視画像を重ねた部分における所定の画像の単位面積当たりの可視材料及び不可視材料の付着量を第1の付着量としている。また、第1の付着量よりも少ない付着量であって、不可視画像と可視画像を重ねた部分における所定の画像の単位面積当たりの可視材料及び不可視材料の付着量を第2の付着量としている。
【0069】
図6に、記録媒体上の不可視現像剤の付着量と機械式リーダーの読取性の関係を説明するための図を示す。横軸は上記図5と同様に、記録媒体上の不可視現像剤の付着量であり、単位面積当たりの不可視現像剤の量を示す。縦軸は、不可視画像を機械式リーダーにより読み取ることができた場合のリーダーと記録媒体との距離(可読距離)を示す。距離が小さいほどリーダーと記録媒体を近づける必要があるため、読取性が低いことを示している。ここでは、可読距離が68mm以上である場合を読取性OKとした。
【0070】
機械の読取性を評価するにあたり、以下のように画像を形成した。
上記図5と同様に、上記の画像形成装置を用い、マイペーパ(リコー社製)を使用した。記録媒体上に形成する不可視画像は以下とした。
(a)18mm×18mmのバーコード画像
(b)22mm×22mmのバーコード画像
【0071】
この不可視画像上に、シアン単色の可視画像が形成されるよう現像、転写を行い、評価画像を形成した。シアン単色の可視画像としては、記録媒体上の付着量を0.32mg/cmとし、シアン単色のベタ画像とした。
【0072】
また、図中の横軸に示すように、機械の読取性の評価画像においては、単位面積当たりの不可視現像剤の量を変化させながらバーコード画像を形成した。なお、機械式リーダーとしては、不可視画像を認識できるものであればよく、適宜選択することができる。
【0073】
評価結果を図に示す。図からわかるように、記録媒体上の不可視現像剤の付着量により読取性が変化していることがわかる。記録媒体上の不可視現像剤の付着量が多くなるほど読取性が高くなり、記録媒体上の不可視現像剤の付着量が少なくなるほど読取性が低くなる。すなわち、不可視現像剤の単位面積当たりの量が多くなると不可視画像が機械式リーダーにより認識されやすくなる。
【0074】
また、図中の(a)と(b)との比較からわかるように、不可視画像、すなわちバーコード画像のサイズを大きくすると読取性が高くなることがわかる。例えば、図中のAの箇所では、画像サイズが小さい場合(a)は読取性NGであり、画像サイズが大きい場合(b)は読取性OKになっている。
【0075】
このため、可視現像剤の量に応じて不可視画像の画像サイズを制御することが好ましい。例えば可視現像剤の量が少ない場合、これに応じて不可視現像剤の量が少なくなるため、不可視画像の画像サイズを大きくすることが好ましい。これにより、不可視現像剤の量が少ない場合であっても機械による読取性を確保することができる。
【0076】
図6のみを考慮すると機械による読取性を確保するには、単純に不可視現像剤の量を多くすればよいとも考えられる。しかし、図5図6をあわせて考慮すると、単純に不可視現像剤の量を多くした場合、不可視性が低くなり、十分な秘匿性が確保されない。そのため、不可視性が確保するために不可視現像剤の量を少なくする場合があり、この点も考慮し、可視画像における可視現像剤の量に応じて不可視現像剤の量を制御しつつ、不可視現像剤の量が少ない場合に不可視画像の画像サイズを大きくする等の制御を行う。これにより、人間の不可視性と機械の読取性を両立することができる。
【0077】
図7は、制御例の一例を示す図である。上記と同様に、図中、可視現像剤の付着量とあるのは、記録媒体上の可視画像における単位面積当たりの可視現像剤の量を示し、不可視現像剤の付着量とあるのは、記録媒体上の不可視画像における単位面積当たりの不可視現像剤の量を示す。
【0078】
図示するように、本実施形態では、可視現像剤の付着量に応じて不可視現像剤の付着量を制御する。例えば、可視現像剤の付着量が少ない場合、不可視画像の不可視性を確保するために不可視現像剤の付着量を少なくする。また、不可視現像剤の付着量が少ない場合、機械の読取性が低下するため、不可視画像の画像サイズを大きくする。このように、本実施形態によれば、不可視画像の不可視性を確保することに加えて、機械の読取性を確保することができる。
【0079】
本実施形態における制御部は、下記のように例えば第1の付着量、第2の付着量、第3の付着量として制御を行うことができる。ある可視画像の下に形成される不可視画像における単位面積当たりの不可視現像剤の量を第1の付着量とし、前記ある可視画像よりも可視現像剤の単位当たりの量が少ない可視画像を形成するときの不可視現像剤の量を第2の付着量とする。第2の付着量で不可視画像を形成するときは、第1の付着量で不可視画像を形成するときよりも不可視現像剤の量を少なくする制御を行う。
【0080】
また、ある可視画像の下に形成される不可視画像における単位面積当たりの不可視現像剤の量を第1の付着量とし、前記ある可視画像よりも可視現像剤の単位当たりの量が多い可視画像を形成するときの不可視現像剤の量を第3の付着量としてもよい。第3の付着量で不可視画像を形成するときは、第1の付着量で不可視画像を形成するときよりも不可視現像剤の量を多くする制御を行うことが好ましい。
【0081】
上述したように、本実施形態における制御部は、不可視材料の量を少なくする場合又は多くする場合、像担持体上のトナー量を調整し、中間転写体(中間転写ベルト)上のトナー付着量を調整するように制御を行うことが好ましく、本実施形態でもそのようにしている。中間転写体から記録媒体上へのトナーの転写率は、紙種や環境によりばらつきが生じることがある。そのため、上記のように不可視現像剤の量を制御することで、紙種や環境によるばらつきの影響を低減することができる。なお、記録媒体上の可視現像剤や不可視現像剤の付着量により秘匿性(見えにくさ)が決まるため、上記の説明では記録媒体上の付着量を用いて説明している。
【0082】
本実施形態では、記録媒体上の不可視現像剤の量を調節するように制御を行ってもよい。ただし、この場合、中間転写体上又は像担持体上における不可視現像剤の量を制御する場合に比べて、不可視現像剤の量の精度が劣る場合があることに留意する。
【0083】
また、上述のように、本実施形態における制御部は、不可視画像の画像サイズ(大きさ)を変更可能であり、下記のように例えば第1の方式、第2の方式、第3の方式として制御を行うことができる。例えば、ある可視画像の下に形成される不可視画像における単位面積当たりの不可視現像剤の量及び不可視画像の画像サイズで画像を形成する方式を第1の方式とする。このとき、制御部は、第1の方式における不可視現像剤の量よりも不可視現像剤の量が少ない不可視画像を形成するときは、第1の方式における画像サイズよりも大きい画像サイズで不可視画像を形成する第2の方式とすることが好ましい。
【0084】
また、制御部は、第1の方式における不可視現像剤の量よりも不可視現像剤の量が多い不可視画像を形成するときは、第1の方式における画像サイズよりも小さい画像サイズで不可視画像を形成する第3の方式とすることが好ましい。このように、第1の方式、第2の方式、第3の方式を適宜選択して制御を行うことが好ましい。
【0085】
また、本実施形態では、可視画像の明度又は可視画像と不可視画像の色差に応じた制御を行うことが好ましい。例えば、可視画像の明度又は可視画像と不可視画像の色差に応じて記録媒体上の不可視現像剤の付着量を制御することが好ましい。これにより、不可視画像の不可視性を確保しつつ、機械の読取性を向上させることができる等の利点が得られる。また、可視画像の違いによって可視画像の下に形成された不可視画像の視認性が異なるため、より適切に不可視現像剤の付着量を制御することができ、不可視画像の不可視性をより確保することができる。
【0086】
この例における制御の方法としては、例えば、可視画像の明度が高い場合、不可視現像剤の付着量を少なくし、可視画像の明度が低い場合、不可視現像剤の付着量を多くするよう制御する。また、可視画像と不可視画像の色差が小さい場合、不可視現像剤の付着量を少なくし、可視画像と不可視画像の色差が大きい場合、不可視現像剤の付着量を多くするよう制御する。また、これに伴い、不可視画像の画像サイズを変更するよう制御することが好ましい。
【0087】
なお、上記述べた通り、ここでいう不可視現像剤の付着量とは、記録媒体上に形成された不可視画像における不可視現像剤の単位面積当たりの量をいう。特に制限されるものではないが、色差は例えばL*a*b*色空間により求める。
【0088】
次に、図8を用いて図7の補足説明を行う。上記図7に示すように、可視画像の種類によって、記録媒体上の可視現像剤の付着量、すなわち単位面積当たりの可視現像剤の量が異なる。例えば、図7中の(1)シアン ハッチング、(4)ブルー ベタ、(6)ブラック ベタの順に可視現像剤の量が大きくなる。(1)シアン ハッチングは、単位面積当たりの可視現像剤の量が小さいため、可視画像の下に形成されている不可視画像500が視認されやすい。一方、(6)ブラック ベタは、単位面積当たりの可視現像剤の量が大きいため、可視画像の下に形成されている不可視画像500が視認されにくい。
【0089】
そのため、図7に示すように、可視画像における可視現像剤の付着量が少ない場合、不可視性を確保するため、不可視現像剤の量を少なくする制御を行っている。そして、不可視現像剤の量が少ない場合、機械の読取性を確保するため、不可視画像の画像サイズを大きくする。
【0090】
図8は、このような制御を説明するためのイメージ図である。図8(A)~(C)は、図7における(1)シアン ハッチング、(4)ブルー ベタ、(6)ブラック ベタで可視画像を形成する際に、不可視画像を形成する場合の画像サイズを模式的に示すものである。
【0091】
図8(A)は、不可視画像500上に可視画像600としてのシアン画像601が形成されている場合の模式図である。図8(B)は、不可視画像500上に可視画像600としてのブルー画像604が形成されている場合の模式図である。図8(C)は、不可視画像500上に可視画像600としてのブラック画像605が形成されている場合の模式図である。
なお、図8(A)~(C)に示す図は、可視画像と不可視画像を上から見た場合の模式図であり、不可視画像500上に形成されている可視画像600は図示を省略している。
【0092】
図示するように、可視画像600の種類によって不可視画像500の画像サイズを変えている。このように制御することで、不可視画像の不可視性と機械の読取性を両立することができる。
【0093】
一方で、不可視画像の画像サイズを変える場合、不可視画像の画像サイズが可視画像の画像サイズよりも大きくなる場合が想定される。図8(A)~(C)に示す例では、不可視画像500の画像サイズは可視画像600の画像サイズよりも小さいため、不可視画像500が表面に露出することが防止され、不可視画像500が視認されにくい。しかし、不可視画像500の画像サイズが可視画像600の画像サイズよりも大きい場合、不可視画像500が表面に露出し、視認される可能性がある。
【0094】
図8(D)に、不可視画像500の画像サイズが可視画像600の画像サイズよりも大きい場合の模式図を示す。図では表現しにくいが、可視画像600の下に不可視画像500が形成されている。図示されるように、不可視画像500における可視画像600が形成されていない箇所は、表面に露出している。換言すると、不可視画像500が白紙部(可視画像600が形成されていない箇所)にまたがっているともいえる。
【0095】
そこで、本実施形態では、可視画像の情報に応じて不可視画像が形成される位置を変更することが好ましい。例えば不可視画像が可視画像の下に形成されるように不可視画像が形成される位置を変更する。これにより、記録媒体上において不可視画像が表面に露出することを抑制することができ、不可視画像が視認される可能性を低減できる。
【0096】
不可視画像が形成される位置を変更するには、適宜変更することができる。例えば可視画像の情報及び不可視画像の画像サイズを用い、画像情報中の不可視画像をピクセル単位で移動させ、不可視画像が表面に露出しない位置、もしくは表面に露出する箇所が少ない位置を探す。このようにして探した不可視画像の位置情報を用い、記録媒体上に不可視画像を形成する。
【0097】
また、本実施形態の画像形成装置は、記録媒体に不可視画像が形成される前において、不可視画像の位置情報及び画像サイズをユーザーに示す提示部を有することが好ましい。提示部を用いることにより、画像を形成する前にユーザーがあらかじめ不可視画像の適否を確認することができる。これにより、不可視画像の位置や画像サイズが適当でない場合などに不可視画像の位置や画像サイズを変更することができる等の対応が可能になり、無駄な印刷を抑制することができる。
【0098】
提示部としては、適宜選択することが可能であり、例えばパネル等が挙げられる。不可視画像が形成される前に、パネルに不可視画像が形成される位置情報と画像サイズを表示する。この他にも、画像形成装置と別体として設けられた表示部に表示するようにしてもよい。
【0099】
図4でも述べたように、不可視現像剤に色材が含まれる場合、可視波長域の波長を反射し、不可視画像が視認されやすくなる。例えば、不可視現像剤が黄色味(イエロー色)を有する場合、不可視画像が視認されやすくなってしまう。そこで、本実施形態では、不可視画像の明度、光沢度等に応じて記録媒体上の不可視現像剤の付着量を制御することが好ましい。これにより、不可視現像剤に色材が含まれる場合であっても、不可視画像の不可視性を確保することができる。また、これに伴い、不可視画像の画像サイズを変更するよう制御することが好ましい。
【0100】
本発明において、不可視材料としては適宜選択することができる。例えば、不可視材料として、近赤外線吸収材を含み、透明である不可視材料を用いることができる。上記実施形態では、主に透明(略透明も含む)な不可視現像剤を用いる例について説明している。
本発明でいう透明な不可視現像剤(トナー)とは、光吸収や光散乱の作用により着色を示す着色剤(例えば、着色顔料、着色染料、黒色カーボン粒子、黒色磁性粉等)の含有量が黒、イエロー、シアン、マゼンタトナーと比べて十分に少ない(例えば10分の1以下)、或いは、全く含有しないトナーのことである。本実施例における透明な不可視現像剤は、トナーを構成する結着樹脂やワックス、外添剤の種類や添加量によっては透明度が若干黄みがかっているが、マゼンタなどの有色トナーと比較して実質的には透明と言える。以下の説明では、赤外線吸収材料を含み、透明なトナーをIRトナーと称することがある。
【0101】
不可視材料としては上記の他にも、近赤外線吸収材を含み、黒色である不可視材料を用いることができる。このような不可視材料としては、例えば黒トナー(ブラックトナーなどと称してもよい)が挙げられる。黒トナーは、黒色の色材、例えばカーボンブラックを含んでいる。このため、黒トナーは、赤外線を吸収するカーボンブラック等を含んでいる点で、他のカラートナー(イエロー、マゼンタ、シアン等)と異なり、赤外線リーダー(スキャナ)により読み取ることが可能である。この特性を用いることにより、通常は視認できず、赤外線リーダーで読み取ることが可能な不可視画像(黒色の不可視画像)を形成することができる。
【0102】
上記の例で説明したように、黒トナーを有するブラックの作像ステーション10Dを、不可視現像剤を用いる作像ステーションにすることもできる。換言すると、ブラック(K)の画像の上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)により可視画像を重ねて画像形成することで、ブラック(K)の画像を不可視とすることができる。すなわち、ブラック(K)の画像を不可視画像とすることができる。なお、この場合、不可視材料は黒トナーである。
【0103】
以下、本発明の他の実施形態として、不可視材料として黒トナーを用いる場合の例を用いて詳細を説明する。
不可視材料として黒トナーを用いる場合、例えば図2に示す画像を形成でき、図2に示す画像においては、不可視画像500がブラック(K)の画像となる。なお、以下の説明では、ブラック(K)の不可視画像500を不可視画像500(K)と称することがある。また、ブラック(K)の不可視画像を不可視画像(K)と称することがある。
【0104】
本実施形態では、不可視画像500(K)が可視画像600の下に形成されていることから、不可視画像500(K)を可視画像600に埋め込むなどと表現してもよい。不可視画像500(K)は、可視画像600の下に形成されており、視認されない、もしくは視認されにくい画像である。ただし、本実施形態では、上記実施形態における不可視現像剤(IRトナー)により形成される不可視画像500と異なり、不可視画像が黒色であるため、可視画像600の割合は上記実施形態のときよりも高める必要がある。
【0105】
記録媒体上の不可視画像(K)と可視画像の配置を考慮すると、中間転写ベルトの搬送方向における最下流側の位置にブラックの作像ステーションを配置することが好ましいが、これに制限されるものではない。例えば、図1に示す例における作像ステーション10A、10B、10Cのいずれかの作像ステーションを、ブラックの作像ステーションにすることができる。ただし、不可視画像(K)が記録媒体上の画像における最下層となるように留意する。
【0106】
本実施形態において、可視画像600の割合を高める方法としては、適宜選択することができる。例えば、可視画像600を積層させる方法が挙げられる。
図9に、可視画像600を積層させた画像の模式図を示す。図示するように、記録媒体45上に、不可視画像500、可視画像600、可視画像600’がこの順に形成されている。
【0107】
本実施形態の画像形成装置の一例を説明する。
本例の画像形成装置は、画像形成部よりも記録媒体の搬送方向下流側に配置され、記録媒体を画像形成部に再搬送する再搬送手段を有している。また、本例の画像形成装置は、画像形成部により記録媒体上に不可視画像を含む画像を形成する第1ステップと、再搬送手段により記録媒体の不可視画像を含む画像が形成された面を画像形成部に再搬送する第2ステップと、画像形成部により記録媒体上に可視画像を形成する第3ステップと、を実行する画像形成モードを有している。画像形成モードは、例えば第1のステップ、第2のステップ及び第3のステップの順に実行する。
【0108】
前記再搬送手段としては、例えば両面ユニットを用いることができる。以下、両面ユニットを用いた例について説明する。画像形成装置が両面ユニットを有する場合、例えば両面ユニットを複数回通し、複数回転写及び定着を繰り返す方法がある。
【0109】
両面ユニットを有する本例の画像形成装置について、図10を用いて説明する。
本例の画像形成装置は、装置本体1のほぼ中央部に、複数のローラに掛け渡された像担持体としての中間転写体である中間転写ベルト11を備えている。そして、この中間転写ベルト11の鉛直方向下方に向いたベルト面に沿って4個の作像ユニット10M,10C,10Y,10Bkが設けられている。
【0110】
各作像ユニット10M,10C,10Y,10Bkは、潜像担持体としての感光体ドラム2を具備している。これらの感光体ドラム2の周りには、それぞれ、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等が配置されている。また、各感光体ドラム2に対向する位置には、中間転写ベルト11の内側に一次転写手段としての一次転写ローラ12がそれぞれ設けられている。
【0111】
また、各作像ユニット10M,10C,10Y,10Bkの下方には、光書込装置14が設けられている。この光書込装置14は、図示はしないがポリゴンミラーやミラー群等を有しており、光変調されたレーザ光を各色作像ユニットの感光体ドラム2の表面に照射する。
【0112】
また、装置本体1の下部には、2段の給紙カセット15がセットされており、各給紙カセットに対応する給紙手段16が設けられている。その給紙手段16によって給送される転写紙等の画像記録シート(以下、「用紙」ともいう。)を搬送するために、搬送ローラ対17が設けられている。この搬送ローラ対17の上方(用紙搬送方向の下流側)にはレジストローラ対18が設けられている。そのレジストローラ対18の上方には、二次転写手段として機能する二次転写ローラ19が配置されており、その二次転写ローラ19は中間転写ベルト11を張架しているローラの一つである二次転写対向ローラ13に対向するように設けられている。
【0113】
二次転写ローラ19の用紙搬送方向下流側には定着装置20が設けられている。定着装置20の上方には、用紙搬送方向を切り替えるための切替爪21が配置されている。切替爪21は、図示しないソレノイド等のアクチュエータにより切り替えられる。
【0114】
また、装置本体1の上面は2段の排紙トレイ30が構成されており、その排紙トレイ下段30aに用紙を排出するための排紙ローラ対29が、定着装置20の図中左上方に位置して設けられている。また、排紙ローラ対29の上方には、排紙トレイ上段30bに用紙を排出するための排紙ローラ対31が正逆回転可能に設けられている。
【0115】
また、再搬送手段としての両面ユニット50が装置本体1の側部に設けられている。この両面ユニット50には、反転した用紙を再給紙するための再給紙路52の一部が形成されている。この再給紙路52は、排紙トレイ上段30bに用紙を排出するための排紙ローラ対31を始点とし、レジストローラ対18の手前で用紙搬送路に合流した地点を終点として設けられている。そして、両面ユニット内の再給紙路52をほぼ四等分する位置に、搬送ローラ対26,27,28が配置されている。
【0116】
また、両面ユニット50は手差し給紙装置を備えており、この両面ユニット50の側面に、手差し給紙装置の用紙積載手段としての手差しトレイ60が回動軸61を支点として両面ユニット50に対して開閉可能に設けられている。ただし、本例においては開閉可能であることは必須ではない。
【0117】
給紙カセット15あるいは手差しトレイ60から用紙が選択的に給送され、レジストローラ対18によって、中間転写ベルト11上に担持されたトナー像とのタイミングを取って二次転写部に向けて送出される。二次転写部でトナー像を転写された用紙は、定着装置20を通過するとき、熱と圧力によってトナー像が用紙に溶融定着される。定着された転写材は、排紙ローラ対29により装置本体1の上面に構成された排紙トレイ30に排出される。
【0118】
用紙両面にプリントを行う場合は、用紙片面にトナー像を定着した用紙を、切替爪21を適切に切り替えることにより、正逆回転可能な排紙ローラ対31に向けて搬送する。このとき、前記排紙ローラ対31は正方向(図10で時計回り)に回転される。この排紙ローラ対31によって排紙トレイ上段30bに向けて搬送された用紙の後端をセンサ40で検知したら、前記排紙ローラ対31を逆方向(図10で逆時計回り)に回転させ、用紙を再給紙路52へ送り込む。用紙は再給紙路52内を搬送ローラ対26,27,28によって搬送され、さらに、レジストローラ対18へと送られる。
【0119】
このように、正逆回転可能な排紙ローラ対31で切替された用紙が、再給紙路52を搬送されることで用紙の表裏が逆にされ(表面→裏面になり)、この動作をもう一度繰り返すことにより、再度用紙の表裏が逆にされ(裏面→表面に戻り)、一度画像が形成された表面が再度画像形成部に搬送される。そして、その表面に中間転写ベルト11からトナー像が転写され、定着装置20で定着することにより、更に画像を積層させることができる。次いで、用紙を排紙トレイ30に排出する。
【0120】
次に、制御の一例について説明する。
本例では、まず記録媒体に不可視現像剤による可視像(トナー像)と可視現像剤による可視像を転写して定着させ、不可視画像500(K)と可視画像600を形成する。次いで、両面ユニットに記録媒体を2度通過させ、画像形成部に記録媒体を再搬送する。次いで、可視画像600上に可視現像剤による可視像を転写して定着させ、可視画像600’を形成する。このようにすることで、可視画像600上に更に可視画像600’を形成することができ、可視画像の割合を増やすことができる。
【0121】
この際、可視画像600と可視画像600’は、異なる色、濃度であってもよい。例えば、可視画像600はマゼンタのベタ画像とし、可視画像600’はシアンとイエローのハーフトーン画像というようにしてもよい。
【0122】
本例では、ブラックの作像ステーションがどの位置であっても記録媒体上の最下層に不可視画像500(K)を形成することができる。一方、最短で必要な可視画像600を乗せるためには、中間転写ベルト11の搬送方向における最下流側の位置にブラックの作像ステーションを配置することが好ましい。なお、中間転写方式ではなく直転方式の場合においては、ブラックの作像ステーションを最上流に配置することが好ましい。
【0123】
上記構成はブラックの作像ステーションを不可視現像剤の作像ステーションにする場合に限らず、IRトナー等の不可視現像剤の作像ステーションであってもよい。また、可視画像の積層数は特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。可視画像の積層数を増やす場合、両面ユニット50に記録媒体を通す回数を増やし、例えば4回、6回、8回と増やすことができる。可視画像の積層数を増やすことで、可視画像の割合を高めることができる。
【0124】
上記制御例では、可視画像600と可視画像600’とを別の定着工程としており、一回目に定着装置20を通過させる際に可視画像600を形成し、2回目に定着装置20を通過させる際に可視画像600’を形成している。このように複数回に分けてトナーを記録媒体に定着することで、従来と同等の定着性能の定着装置(定着ユニット)でも定着不良を起こさずに定着できるというメリットもある。
【0125】
上記のように両面ユニットに記録媒体を2回通して記録媒体の不可視画像を含む画像が形成された面を画像形成部に再搬送することで、可視画像の積層数を増やすことができる。
【0126】
次に、制御の他の例について説明する。
本例では、まず記録媒体に不可視現像剤による可視像(トナー像)を転写して定着させ、不可視画像500(K)を形成する。次いで、両面ユニットに記録媒体を2度通過させる。次いで、不可視画像500(K)上に可視現像剤による可視像を転写して定着させ、可視画像600を形成する。次いで、両面ユニットに記録媒体を2度通過させる。次いで、可視画像600上に可視現像剤による可視像を転写して定着させ、可視画像600’を形成する。このようにすることで、可視画像600上に更に可視画像600’を形成することができ、可視画像の割合を増やすことができる。
【0127】
上記のように、本実施形態においても記録媒体上に不可視画像(K)、可視画像の順に積層させた画像を形成することで、画像中に付加情報を埋め込むことができる。例えば、目視できない不可視画像(K)を埋め込むことで、不正にコピーが行われた場合に判別することができる。また本実施形態では、記録媒体上において不可視画像(K)が最下層となっているため、不可視画像(K)の不可視性を高めることができる。すなわち、不可視画像(K)を目視されにくくすることができる。
【0128】
なお、両面ユニットを用いて複数回転写及び定着を繰り返す方法を用いる場合には、不可視画像(K)が最下層でなくとも不可視画像(K)の上に可視画像を形成できるため同様の効果を得ることができる。
【0129】
上記の例は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4つの作像ステーションを有する画像形成装置について説明する例であるが、本実施形態はこれに限られない。例えば、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の他にIRトナー等を有する5つ以上の作像ステーションを有する画像形成装置であってもよい。ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、IRトナーを有する5つ以上の作像ステーションを有する画像形成装置の場合、不可視画像(K)、不可視画像(IR)の2種類の不可視画像を形成することができる。特にIRトナーと黒トナーで吸収する赤外線の波長を異ならせることにより、非常にセキュリティレベルの高い印刷物を印刷することができ、高度な真贋判定が必要な印刷物などに適用できる。
【0130】
このように、本実施形態では、不可視画像を形成するために用いる作像ステーションを2つ以上とすることができる。上述のように、例えば、画像形成部は、第1の不可視材料を有する第1の作像ステーションと、第2の不可視材料を有する第2の作像ステーションとを有し、第1の不可視材料は近赤外線吸収材を含み、透明であり、第2の不可視材料は近赤外線吸収材を含み、黒色である構成にすることができる。
【0131】
上記のように、本実施形態によれば、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部を制御する制御部と、前記画像形成部よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に配置され、前記記録媒体を前記画像形成部に再搬送する再搬送手段と、を有する画像形成装置が提供され、前記画像形成部は、前記記録媒体上に、不可視材料による不可視画像と、該不可視画像上に可視材料による可視画像とを重ねた画像を形成可能である。また、本実施形態の画像形成装置は、前記画像形成部により前記記録媒体上に前記不可視画像を含む画像を形成する第1ステップと、前記再搬送手段により前記記録媒体の前記不可視画像を含む画像が形成された面を前記画像形成部に再搬送する第2ステップと、前記画像形成部により前記記録媒体上に前記可視画像を形成する第3ステップと、を実行する画像形成モードを有し、前記画像形成モードは、前記第1のステップ、前記第2のステップ及び前記第3のステップの順に実行する。
【0132】
また、上記のように、例えば前記第1のステップは、前記可視材料としての可視現像剤による可視像を前記記録媒体に転写する工程と、該可視像を前記記録媒体に定着させる工程とを有し、前記第3のステップは、前記不可視材料としての不可視現像剤による可視像を前記記録媒体に転写する工程と、該可視像を前記記録媒体に定着させる工程とを有する。
【0133】
次に、本発明の画像形成装置に係る他の実施形態について説明する。上記実施形態では、電子写真方式により画像を形成する画像形成装置について説明したが、本発明は、インクジェット方式により画像を形成する画像形成装置にも適用できる。そのため、本実施形態における説明は省略する。
【0134】
本実施形態の画像形成装置は、前記記録媒体に前記不可視材料としての不可視インクを吐出する第1の吐出部と、前記不可視材料が吐出された前記記録媒体に前記可視材料としての可視インクを吐出する第2の吐出部と、を有するインクジェット方式により画像を形成する画像形成装置である。
前記画像形成部は、前記第1の吐出部及び前記第2の吐出部を有し、前記記録媒体上に、前記不可視インクにより形成される前記不可視画像と、該不可視画像上に前記可視インクによる前記可視画像とを順に重ねた画像を形成し、前記不可視画像が前記可視画像よりも前記記録媒体側に位置する。
前記制御部は、前記第2の付着量で前記不可視画像を形成するときは、前記第1の付着量で前記不可視画像を形成するときよりも前記第1の吐出部が吐出する不可視インクの量を少なくする制御を行う。
【0135】
本実施形態においても、上記実施形態と同様の構成とすることができる。上記実施形態における可視現像剤とあるのは本実施形態における可視インクとし、上記実施形態における不可視現像剤とあるのは本実施形態における不可視インクとして上記の構成を適用することができる。そのため、上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0136】
本実施形態の画像形成装置の一例を図11に示す。図11では、制御部34、第1の吐出部101、第2の吐出部102、第1の乾燥部103、第2の乾燥部104、搬送ローラ105a、105b等が図示されている。図中の矢印は記録媒体45の搬送方向を示す。なお、第1の吐出部101と第2の吐出部102を区別せずに説明する場合、吐出部と称することがある。
【0137】
また、吐出部を作像ステーションなどと称してもよい。ただし、第1の不可視材料と第2の不可視材料を用いる構成の場合、第1の不可視材料を有する作像ステーションを第1の不可視作像ステーションと称し、第2の不可視材料を有する作像ステーションを第2の不可視作像ステーションと称して可視材料を有する作像ステーションと区別する。
【0138】
第1の吐出部101は、記録媒体45に不可視材料としての不可視インクを吐出する。第2の吐出部102は、記録媒体45に可視材料としての可視インクを吐出する。第1の吐出部101及び第2の吐出部102としては、例えばインクジェットヘッドを用いることができる。これらはライン型であってもよいし、シリアル型であってもよい。第1の吐出部101と第2の吐出部102は、別体として走査されてもよいし、例えばキャリッジ部材等を用いて一体として走査されてもよい。
【0139】
第1の吐出部101は、記録媒体の搬送方向において第2の吐出部102よりも上流側に配置される。これにより、記録媒体上に、不可視インクにより形成される不可視画像と、可視インクにより形成される可視画像とをこの順に積層させることができる。すなわち、不可視画像上に可視画像を形成することができる。
【0140】
本実施形態において、可視インクと不可視インクとの違いとしては、例えば、可視光の吸収の度合いによる違い、赤外線の吸収の度合いによる違い等が挙げられる。
【0141】
上記の他にも、可視インクと不可視インクとの違いとしては、材料の違いが挙げられる。例えば、赤外光吸収材料の有無が挙げられ、不可視インクは赤外光吸収材料を含み、可視インクは赤外光吸収材料を含まない、もしくは実質的に含まないといった違いが挙げられる。赤外光吸収材料としては、例えば近赤外光吸収材料が挙げられ、近赤外光吸収材料としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0142】
不可視インクは、色材を含んでいてもよく、色味を有していてもよい。本実施形態においても上記実施形態と同様に、不可視材料は、近赤外線吸収材を含み、透明である透明インク(IRインクとも称する)であってもよいし、近赤外線吸収材を含み、黒色である黒インクであってもよい。
【0143】
本実施形態では第1の乾燥部103、第2の乾燥部104を有しており、吐出部によって吐出されたインクを乾燥させる。乾燥部としては、公知のものを用いることができ、例えばヒーターや温風発生装置等が挙げられる。
【0144】
ただし、第1の乾燥部103は省くことができる。例えば、第1の吐出部101でインクを吐出した後、第2の吐出部102ではインクを吐出せずに第2の乾燥部104で乾燥を行う。次いで、再搬送手段により記録媒体を再度、画像形成部に搬送し、第2の吐出部102でインクを吐出し、乾燥を行うようにする。このようにすることで、インクの滲みを抑制できる。
【0145】
本実施形態においても上記実施形態と同様に、制御部34は、第2の付着量で不可視画像を形成するときは、第1の付着量で不可視画像を形成するときよりも第1の吐出部が吐出する不可視インクの量を少なくする制御を行う。これにより、不可視画像の不可視性を向上させることができる。
【0146】
また、本実施形態においても上記実施形態と同様に、制御部34は、第2の付着量で不可視画像を形成するときは、第1の付着量で不可視画像を形成するときよりも不可視画像の大きさを大きくする制御を行うことが好ましい。これにより、上記実施形態で述べたように、不可視画像の機械の読取性を確保することができ、不可視画像の不可視性と機械の読取性を両立することができる。
【0147】
本実施形態において、不可視画像と可視画像を重ねた部分における所定の画像の単位面積当たりの可視材料及び不可視材料の付着量を求める場合、例えば以下のようにして算出する。
単位面積当たりの付着量=画像形成に用いたインクの消費量÷画像面積
【0148】
本実施形態においても、制御部は、可視画像の明度又は可視画像と不可視画像の色差に応じて、記録媒体上の不可視画像における単位面積当たりの不可視材料の量を変更することが好ましい。例えば、可視画像の明度又は可視画像と不可視画像の色差に応じて記録媒体に吐出する不可視インクの吐出量を制御することが好ましい。これにより、不可視画像の不可視性を確保しつつ、機械の読取性を向上させることができる等の利点が得られる。また、可視画像の違いによって可視画像の下に形成された不可視画像の視認性が異なるため、より適切に不可視現像剤の付着量を制御することができ、不可視画像の不可視性をより確保することができる。
【0149】
次に、本実施形態のその他の例について図12を用いて説明する。
本実施形態においても、画像形成装置が上記画像形成モードを有することが好ましい。本例の画像形成装置は、画像形成部よりも記録媒体の搬送方向下流側に配置され、記録媒体を画像形成部に再搬送する再搬送手段を有している。また、本例の画像形成装置は、画像形成部により記録媒体上に不可視画像を形成する第1ステップと、再搬送手段により記録媒体を画像形成部に再搬送する第2ステップと、画像形成部により記録媒体上に可視画像を形成する第3ステップと、を実行する画像形成モードを有している。また、画像形成モードは、第1のステップ、第2のステップ及び第3のステップの順に実行し、可視画像上に更に可視画像を形成する場合、第2のステップ及び第3のステップを更に1回以上繰り返し実行する。
【0150】
図示する例について説明する。
本例では、第1の吐出部101により不可視インクを記録媒体45に吐出し、第1の乾燥部103又は第2の乾燥部104により乾燥し、不可視画像を形成する。次いで、搬送ローラ710を有する再搬送手段700により記録媒体45を画像形成部に再搬送する。次いで、第2の吐出部102により可視インクを記録媒体45に吐出し、第2の乾燥部104により乾燥し、不可視画像上に可視画像を形成する。これにより、不可視画像上に可視画像が形成された画像が得られる。
【0151】
ここで排紙してもよいし、可視画像上に更に可視画像を形成する場合、再搬送手段700により記録媒体45を画像形成部に搬送する。次いで、第2の吐出部102により可視インクを記録媒体45に吐出し、第2の乾燥部104により乾燥し、可視画像上に更に可視画像を形成する。このようにすることで、図9に示すように、可視画像600上に更に可視画像600’を形成することができ、可視画像の割合を増やすことができる。
この実施例では再搬送手段700として再搬送専用ユニットを用いたが、再搬送手段はこれに捉われず、他の実施例に示したように一般的な両面ユニットに複数回通す方法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0152】
2 感光体ドラム
3 露光光
4 現像器
5 一次転写ローラ
6 クリーニング部材
7 帯電器
10 作像ステーション
11 中間転写ベルト
19 二次転写ローラ
45 記録媒体
101 第1の吐出部
102 第2の吐出部
103 第1の乾燥部
104 第2の乾燥部
105 搬送ローラ
500、501 不可視画像
600 可視画像
601 シアン画像
602 マゼンタ画像
603 イエロー画像
604 ブルー画像
605 ブラック画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】
【文献】特開2018-060169号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12