(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】端子付電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/048 20060101AFI20241203BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20241203BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20241203BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
H01B7/00 306
H01B13/00 521
H01B7/00
H01R4/18 A
(21)【出願番号】P 2021064834
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲朗
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007067(JP,A)
【文献】特開2017-224396(JP,A)
【文献】特開2020-119865(JP,A)
【文献】米国特許第09196971(US,B2)
【文献】特表2007-503083(JP,A)
【文献】特開2004-055475(JP,A)
【文献】特開2000-21543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00- 4/22
H01R43/027-43/28
H01B 7/00
H01B13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を有する電線と、前記導体を挿入する端子と、を準備する
第1工程と、
前記端子に前記導体を挿入させた状態で、
6角ダイスを用いて、前記導体の長手方向に沿って前記端子を3
回圧縮して、前記端子に
第1、第2及び第3圧縮部を形成することにより、前記端子を前記導体に接続する
第2工程と、
前記第1~第3圧縮部の圧縮した順番を調べる第3工程と、
を有し、
前記第3工程は、前記第1~第3圧縮部におけるそれぞれの突出形状部の突出量を確認し、当該確認結果から前記順番を調べる工程を含む、
端子付電線の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記第1及び第2圧縮部を形成した後に、当該第1及び第2圧縮部の間に前記第3圧縮部を形成する工程を含み、
前記第3工程は、前記第1及び第2圧縮部における前記突出形状部の突出量よりも、前記第3圧縮部における前記突出形状部の突出量の方が大きいかを確認して、前記第3圧縮部が前記第1及び第2圧縮部を形成した後に形成されたことを調べる工程を含む、
請求項1に記載の端子付電線の製造方法。
【請求項3】
複数の前記突出形状部は、それぞれ、前記
6角ダイスの圧縮方向に対して直交する方向に形成されており、
前記導体の長手方向に垂直な断面視において、
前記
第1及び第2圧縮部における、前記突出形状部の突出部分を含む前記端子の断面幅寸法を、それぞれA、Cとし、
前記第3圧縮部における、前記突出形状部の突出部分を含む前記端子の断面幅寸法をBとした場合に、{(2×B-(A+C))/(2×B)}×100の式で算出される突出比率(%)が4.2%より大きい、
請求項2に記載の端子付電線
の製造方法。
【請求項4】
前記6角ダイスは、前記第1~第3圧縮部を形成する際に生じる前記突出形状部を収容する収容溝を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の端子付電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付電線及び端子付電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、端子に導体を挿入させた状態で、端子を複数回圧縮して複数個の圧縮部を形成することにより、端子を導体に接続させる端子付電線が開示されている。このとき、例えば、既に形成した隣り合う圧縮部の間に新たな圧縮部を形成した場合は、圧縮後長時間経過しても、導体と端子との間の電気抵抗を低く維持できることが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の端子付電線では、製造後に、複数の圧縮部が所望の圧縮順で圧縮されたかを容易に確認することができなかった。
【0005】
本発明は、製造後に、複数の圧縮部が所望の圧縮順で圧縮されたかを容易に確認することができる端子付電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
導体を有する電線と、
前記導体が挿入された状態で圧縮されることにより、前記導体に接続される端子と、
を備える端子付電線であって、
前記端子は、前記導体の長手方向に沿って3つ以上の圧縮部を有し、
前記3つ以上の圧縮部には、それぞれ、圧縮された順番に応じて突出量が異なる突出形状部が、前記端子の一部として形成されている、
端子付電線が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、
導体を有する電線と、前記導体を挿入する端子と、を準備する工程と、
前記端子に前記導体を挿入させた状態で、前記導体の長手方向に沿って前記端子を3回以上圧縮して、前記端子に3つ以上の圧縮部を形成することにより、前記端子を前記導体に接続する工程と、
を有する端子付電線の製造方法であって、
前記端子を前記導体に接続する工程は、前記3つ以上の圧縮部に、それぞれ、圧縮した順番に応じて突出量が異なる突出形状部を形成する工程を有する、
端子付電線の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造後に、複数の圧縮部が所望の圧縮順で圧縮されたかを容易に確認することができる端子付電線を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る端子付電線1が有する端子5及び導体3であり、端子5の中空部7内に導体が挿入される前の状態を例示する斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る端子付電線1が有する端子5の中空部7内に導体3が挿入された後で、中空部7が圧縮される前の状態を例示する断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る端子付電線1が有する端子5を3回圧縮するときの端子付電線1の断面図である。
【
図4】
図4(a)は、導体3の長手方向に垂直な断面視において、端子5が6角ダイス50により圧縮される前の状態を示す図である。
図4(b)は、導体3の長手方向に垂直な断面視において、端子5が6角ダイス50により圧縮された後の状態を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、圧縮部10における導体3の長手方向に垂直な断面視において、端子5が6角ダイス50により圧縮された後の状態を示している。
図5(b)は、圧縮部12における導体3の長手方向に垂直な断面視において、端子5が6角ダイス50により圧縮された後の状態を示している。
図5(c)は、圧縮部11における導体3の長手方向に垂直な断面視において、端子5が6角ダイス50により圧縮された後の状態を示している。
【
図6】
図6(a)は、断面積が50スケア(sq)の導体3を用いたときの、圧縮部位P1,P2,P3における端子5の断面幅寸法を示した図である。
図6(b)は、断面積が200スケア(sq)の導体3を用いたときの、圧縮部位P1,P2,P3における端子5の断面幅寸法を示した図である。
図6(c)は、断面積が250スケア(sq)の導体3を用いたときの、圧縮部位P1,P2,P3における端子5の断面幅寸法を示した図である。
【
図7】
図7(a)は、断面積が50スケア(sq)の導体3を用いたときの圧縮部位P2における端子5の突出比率を示した図である。
図7(b)は、断面積が200スケア(sq)の導体3を用いたときの圧縮部位P2における端子5の突出比率を示した図である。
図7(c)は、断面積が250スケア(sq)の導体3を用いたときの圧縮部位P2における端子5の突出比率を示した図である。
【
図8】
図8は、圧縮部11における導体3の長手方向に垂直な断面視において、端子5が6角ダイス50により圧縮された後の状態を示している。
【
図9】
図9(a)は、断面積が50スケア(sq)の導体3を用いたときの圧縮部位P2における端子5の規格値を示した図である。
図9(b)は、断面積が200スケア(sq)の導体3を用いたときの圧縮部位P2における端子5の規格値を示した図である。
図9(c)は、断面積が250スケア(sq)の導体3を用いたときの圧縮部位P2における端子5の規格値を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の一実施形態>
(1)端子付電線1の製造方法例
本実施形態では、例えば、導体3を挿入した端子5に3つの圧縮部10,11,12を形成することにより、端子5を導体3に接続させる端子付電線1を製造する。以下、端子付電線1の製造方法例について説明する。
【0011】
本実施形態に係る端子付電線1は、電線2と端子5とを準備する工程、導体3を挿入させた状態で端子5を圧縮して、端子5を導体3に接続する工程を順次行うことにより製造する。
【0012】
(準備工程)
まず、電線2と端子5とを用意する。以下、電線2と端子5とについて説明し、その後、各工程について説明する。
【0013】
(電線)
電線2は、例えば、絶縁電線として構成されており、導体3と、導体3の外周を被覆する絶縁層4とを備えている。
【0014】
導体3は、電線2の芯線を構成するものである。導体3は、単一の金属線、もしくは複数の金属素線を撚り合わせた撚り線により構成されている。導体3は、例えば、純アルミニウムあるいはアルミニウム合金(以下、これらを「アルミニウム材料」という)により構成されている。
【0015】
絶縁層4は、導体3の側方周囲、すなわち、外周を被覆するように設けられている。絶縁層4は、例えば、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、又はシリコーン系樹脂により構成されている。
【0016】
(端子)
端子5は、筒状部6と延在部8とを備え、これらが一体的に形成されている。端子5は、例えば、パイプの一端側をプレス加工したものである。この一端側は、延在部8に相当する。あるいは、端子5は、例えば、円柱の母材の一端側を穴あけ加工し、他端側をプレス加工したものである。穴あけ加工された一端側は中空部7に相当する。プレス加工された他端側は延在部8に相当する。中空部7は一方において開口した円筒形状を有する。端子5は、例えば、アルミニウム材料により構成されている。
【0017】
筒状部6は、電線2の端末から露出する導体3に接続される部分として構成されている。本実施形態では、筒状部6は、断面円形の筒状に形成されており、内部は、電線2の端部で露出する導体3を挿入可能な中空部7を形成している。
【0018】
延在部8は、外部の接続相手側の端子やボルト等に接続される部分として構成されている。本実施形態では、延在部8は、板状に形成され、外部の端子やボルト等が挿入されるボルト孔9が設けられている。
【0019】
電線2と端子5とを用意したら、
図1に示すように、絶縁層4を電線2の長さ方向の端末から所定の長さだけ取り除いて、導体3の一部を露出させる。その後、
図2に示すように、端子5の筒状部6に形成された中空部7内に電線2の導体3の露出した一部を挿入する。
【0020】
(圧縮・接続工程)
続いて、
図3に示すように、端子5の中空部7内に電線2の導体3の露出した一部を挿入した状態で、圧縮部位P1を圧縮して、圧縮部10を形成する。その後、圧縮部位P3を圧縮して、圧縮部12を形成する。最後に、圧縮部位P1と圧縮部位P3との間の圧縮部位P2を圧縮して、圧縮部11を形成することにより、端子5を導体3に接続する。なお、圧縮部10~12を形成する際に用いられる圧縮治具(6角ダイス50)は、導体3の圧縮比が50%以上95%以下となるようなサイズ・形状であることが好ましい。ここで、圧縮比とは、中空部7内に導体3が挿入された端子5が圧縮されたときの、導体3の長手方向に垂直な断面における、端子5の非圧縮部に対応する導体3の断面積と圧縮部に対応する導体3の断面積の比である。端子5の非圧縮部に対応する導体3の断面積及び圧縮部に対応する導体3の断面積をそれぞれC1(mm
2)、C2(mm
2)とした場合に、(C2/C1)×100の式で算出される。
【0021】
これらの圧縮は、例えば、圧縮冶具を用いて、圧縮部位P1~P3に筒状部6の周方向の全周にわたって所定の圧力を加え、筒状部6を圧縮変形(塑性変形)させることにより行う。なお、圧縮部10~12を形成する際に用いる圧縮治具は同一である。
【0022】
このように、既に形成された隣り合う圧縮部10と圧縮部12との間に、最後(3つ目)の圧縮部12を形成することにより、圧縮後長時間にわたり、導体3と端子5との間の電気抵抗を低く維持することができる。
【0023】
しかしながら、このような順番で端子を圧縮しても、従来の端子付電線では、圧縮後に、圧縮部が所望の圧縮順で圧縮されたかを容易に確認することが困難な場合があった。そこで、本実施形態では、例えば、
図4(a),(b)に示すように、収容溝50A,50Bが設けられた6角ダイス50により、端子5の圧縮を行うものとする。
【0024】
以下、6角ダイス50の構成について説明し、6角ダイス50を用いた端子5の圧縮・接続工程についてより具体的に説明する。
【0025】
図4(a)は、導体3の長手方向に垂直な断面視において、端子5が6角ダイス50により圧縮される前の状態を示している。6角ダイス50は、相互に向かい合う一対のダイス本体20,30により構成されている。ダイス本体20,30の間に端子5の筒状部6を配置し、ダイス本体20,30を相互に突き合わせて、圧縮部位P1~P3を圧縮することにより、圧縮部10~12を形成する。ダイス本体20,30を突き合わせたときに、ダイス本体20とダイス本体30とが接触する2つの面を、それぞれ、ダイス本体20,30の突き合わせ面41,42という。
【0026】
ダイス本体20は、筒状部6の全外周面を構成する2つの半周面部のうちの一方の半周面部を圧縮する押圧部21を有している。同様に、ダイス本体30は、筒状部6の他方の半周面部を圧縮する押圧部31を有している。押圧部21は、ダイス本体20,30を突き合わせたときに、筒状部6の一方の半周面に接触する3つの押圧面21a,21b,21cを備えている。同様に、押圧部31は、ダイス本体20,30を突き合わせたときに、筒状部6の他方の半周面に接触する3つの押圧面31a,31b,31cを備えている。ダイス本体20における3つの押圧面21a,21b,21cは、配置される端子5の周方向(
図4(a)の矢印A参照)に沿って連続して設けられており、隣り合う押圧面は、所要の角度(例えば120°)を有して構成されている。同様に、ダイス本体30における3つの押圧面31a,31b,31cは、配置される端子5の周方向(
図4(a)の矢印A参照)に沿って連続して設けられており、隣り合う押圧面は、所要の角度(例えば120°)を有して構成されている。以下では、押圧面21aと押圧面31c、押圧面21bと押圧面31b、押圧面21cと押圧面31a、をそれぞれ一対の押圧面という。
【0027】
図4(b)に示すように、6角ダイス50におけるダイス本体20,30の突き合わせ面41と、一対の押圧面21a,31cとの間には、圧縮部を形成する際に生じる突出形状部5aを収容する収容溝50Aが設けられている。同様に、6角ダイス50におけるダイス本体20,30の突き合わせ面42と、一対の押圧面21c,31aとの間には、圧縮部10~12を形成する際に生じる突出形状部5bを収容する収容溝50Bが設けられている。収容溝50A,50Bは、突出形状部5a,5bを収容できる充分な大きさに構成されている。突出形状部5a,5bの詳細については後述する。
【0028】
上述した6角ダイス50を用いた端子5の圧縮・接続工程について説明する。所定の距離をとった状態で対向配置されているダイス本体20とダイス本体30との間に端子5(筒状部6)をセットする。その後、例えば、
図4(a)に示す白抜き矢印の方向(圧縮方向)に、ダイス本体20を移動させ、ダイス本体20とダイス本体30とを突き合わせる。これにより、6つの押圧面21a,21b,21c,31a,31b,31cが端子5の外周面を押圧し、端子5を径方向の内側に塑性変形させ、端子5と導体3とを圧着接続させる。このとき、端子5の一部が径方向の外側へ突出し、突出形状部5a,5bを形成する。突出形状部5a,5bは、それぞれ、収容溝50A,50B内に収容される。突出形状部5a,5bは、ダイス本体20,30によって端子5が加締められる(圧縮される)際、圧縮方向に対して略直交する方向に端子5の一部が塑性変形したものである。
【0029】
圧縮部位P1~P3において、このような圧縮を行うことにより、端子5を導体3に圧着接続させ、端子付電線1を得ることができる。
【0030】
(2)端子付電線1の構成例
以下、上述した製造方法で得られた端子付電線1の構成例について説明する。
【0031】
端子5には、3つの圧縮部10~12が、筒状部6の軸方向(中空部7内に挿入されている導体3の長さ方向)に対して位置をずらして、それぞれ重ならないように形成されている。圧縮部10~12は、導体3の長手方向(軸方向)に垂直な断面において略6角形の断面形状を有している。圧縮部11は、筒状部6の軸方向の中央付近に形成されており、圧縮部10,12は、圧縮部11を両側から挟むように形成されている。
【0032】
図5(a),(b),(c)は、それぞれ、圧縮部位P1,P3,P2における導体3の長手方向に垂直な断面視において、端子5が6角ダイス50により圧縮された後の状態を示している。端子5が圧縮されるときは、端子5(導体3)の径方向の内側だけでなく、長手方向(軸方向)にも力が生じる。3つ目の圧縮部11が形成されるときに生じる端子5が長手方向へ伸びる力は、既に形成されている2つの圧縮部10,12によって抑制される。このため、抑制されて端子5の長手方向へと伸びる力は、端子5の径方向の外側へ変換され、突出形状部5a,5bの突出量として反映される。具体的には、
図5(a)~(c)に示すように、圧縮時に端子5の長手方向へと伸びる力があまり規制されない、1番目、2番目に形成される圧縮部10,12における突出形状部5a,5bの突出量よりも、圧縮部10,12の間に3番目に形成される圧縮部11における突出形状部5a,5bの突出量の方が大きくなっている。
【0033】
上述したように、突出形状部5a,5bの突出量は、圧縮部10~12の圧縮部位、圧縮順により相違する。収容溝50A,50Bは、突出形状部5a,5bを収容できる充分な大きさに構成されているので、端子5(導体3)の長手方向に垂直な断面視において、突出形状部5a,5bの突出部分を含む端子5の断面幅寸法(以下、単に「断面幅寸法」という。)は、突出形状部5a,5bの突出量が反映される。具体的には、
図5(a)~(c)に示すように、突出形状部5a,5bの突出量が小さい圧縮部位P1(圧縮部10)、圧縮部位P3(圧縮部12)の断面幅寸法よりも、突出形状部5a,5bの突出量が大きい圧縮部位P2(圧縮部11)の断面幅寸法の方が大きくなっている。
【0034】
(3)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に述べる一つ又は複数の効果を奏する。
【0035】
(a)3つの圧縮部10~12における端子5には、それぞれ、圧縮された順番に応じて突出量が異なる突出形状部5a,5bが形成されることにより、圧縮部10~12の突出形状部5a,5bの突出量を確認するだけで、所望の圧縮順で圧縮されたか容易に調べることが可能となる。
【0036】
(b)端子5が所望の圧縮順で圧縮された場合、すなわち、端子5が圧縮部位P1,P3,P2の順で圧縮された場合は、圧縮部11を両側から挟むように形成される圧縮部10,12における突出形状部5a,5bの突出量よりも、圧縮部11における突出形状部5a,5bの突出量の方が大きく形成されることにより、これらの突出形状部5a,5bの突出量を視認、計測するだけで、容易にかつ確実に所望の圧縮順で圧縮されたか容易に調べることが可能となる。
【0037】
(4)変形例
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0038】
上述の実施形態では、圧縮部10~12を形成するにあたり、圧縮部位P1を最初に圧縮し、次に圧縮部位P3を圧縮したが、これに限定されるものではなく、圧縮部位P1と圧縮部位P3の間のP2を最後に圧縮するのであれば、圧縮部位P3を最初に圧縮し、次に圧縮部位P1を圧縮してもよい。この場合でも、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
上述の実施形態では、圧縮部が3つ(圧縮箇所が3か所)である場合を例に挙げたが、これに限定されることはなく、例えば、端子5が4か所、または5か所圧縮されてもよい。4か所圧縮する場合には、4番目に形成される圧縮部は、既に形成された複数の圧縮部のうちの隣り合う2つの圧縮部の間に形成されることが好ましい。また、端子5を5か所圧縮する場合には、5番目に形成される圧縮部は、既に形成された複数の圧縮部のうちの隣り合う2つの圧縮部の間に形成されることが好ましい。これらの場合でも、上述した実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0040】
上述の実施形態では特に限定されていないが、圧縮部10~12はそれぞれ等間隔で設けられていることが好ましい。
【0041】
上述の実施形態では、圧縮部10~12は、導体3の長手方向(軸方向)に垂直な断面において略6角形の断面形状を有している場合を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、他の多角形状を有していてもよいし、円形状を有していてもよい。
【0042】
上述の実施形態では、端子付電線を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、例えば端子付きケーブルにも適用可能である。
【0043】
上述の実施形態では、電線2は、導体3と、導体3の外周を被覆する絶縁層4とを備える絶縁電線を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、例えば導体3の外周を被覆する絶縁層4を有さない、いわゆる裸電線を使用してもよい。この場合でも、上述した実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明について実験例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されない。
【0045】
(実験例1)
実験例1では、導体3を挿入した端子5を複数用意して、一対のダイス本体20,30により、圧縮部位P1,P3,P2、圧縮部位P3,P1,P2、圧縮部位P2,P1,P3、圧縮部位P2,P3,P1の順でそれぞれ圧縮し、サンプル1,2,3,4とした。端子5及び導体3は、同組成のアルミニウム材料を使用した。サンプル1~4を作製した後、端子5(導体3)の長手方向に垂直な断面視において、圧縮部位P1,P2,P3における断面幅寸法を計測した。圧縮部位P1,P2,P3を形成する際に使用する圧縮治具は同じであり、導体3の圧縮比が80~90%となるような6角ダイスとした。
【0046】
圧縮部位P1,P2,P3における断面幅寸法の計測結果を
図6(a)~(c)に示す。
図6(a)~(c)は、それぞれ、断面積が50スケア(sq)、200スケア(sq)、250スケア(sq)の導体3を使用したときの結果を示している。
図6(a)~(c)の横軸は、端子5の圧縮部位を示しており、左側は圧縮部位P1、真ん中は圧縮部位P2、右側は圧縮部位P3を示している。
図6(a)~(c)の縦軸は、それぞれの圧縮部位における断面幅寸法の長さを示している。サンプル1の断面幅寸法を点線、サンプル2の断面幅寸法を実線、サンプル3の断面幅寸法を破線、サンプル4の断面幅寸法を長破線で示した。
【0047】
サンプル番号と圧縮の順番との関係等を下記表1にまとめた。
【0048】
【0049】
図6(a)~(c)に示すように、いずれの太さの導体3を使用した場合でも、最後に形成する圧縮部11を、既に形成した隣り合う2つの圧縮部10,12の間に形成するサンプル1,2の圧縮部位P2における断面幅寸法は、圧縮部位P1,P3における断面幅寸法よりも顕著に大きくなることが確認された。
【0050】
(実験例2)
実験例2では、導体3を挿入した端子5を用意して、一対のダイス本体20,30により、圧縮部位P1,P3,P2、圧縮部位P3,P1,P2、圧縮部位P1,P2,P3、圧縮部位P3,P2,P1、圧縮部位P2,P1,P3、圧縮部位P2,P3,P1の順でそれぞれ圧縮し、サンプル5,6,7,8,9,10とした。サンプル5~10をそれぞれ4つずつ作製した。端子5及び導体3は、実験例1と同様に同組成のアルミニウム材料を使用した。また、圧縮治具及び圧縮比は、実験1と同じとした。
【0051】
サンプル番号と圧縮の順番との関係を下記表2にまとめた。
【0052】
【0053】
サンプル5~10を作製した後、端子5(導体3)の長手方向に垂直な断面視において、圧縮部位P1,P2,P3における断面幅寸法を、それぞれA,B,Cとした場合に(
図5(a)~(c)参照)、Bの突出比率(%)を計算した。Bの突出比率(%)は、具体的には、圧縮部位P1,P3における断面幅寸法に対する圧縮部位P2における断面幅寸法の突出比率のことであり、{(2×B-(A+C))/(2×B)}×100の式で算出した。
【0054】
算出結果を
図7(a)~(c)に示す。
図7(a)~(c)は、それぞれ、断面積が50スケア(sq)、200スケア(sq)、250スケア(sq)の導体3を使用したときの結果を示している。
図7(a)~(c)の横軸は、サンプル番号を示している。
図7(a)~(c)の縦軸は、Bの突出比率(%)を示している。
【0055】
図7(a)~(c)に示すように、いずれの太さの導体3を使用した場合でも、最後に形成する圧縮部11を、既に形成した隣り合う2つの圧縮部10,12の間に形成するサンプル5,6のBの突出比率(%)は、4.2%より大きいことが確認された。他のサンプル7~10におけるBの突出比率(%)は、4.2%以下であることが確認された。
【0056】
(実験例3)
実験例3では、導体3を挿入した端子5を用意して、一対のダイス本体20,30により、圧縮部位P1,P3,P2、圧縮部位P3,P1,P2、圧縮部位P1,P2,P3、圧縮部位P3,P2,P1、圧縮部位P2,P1,P3、圧縮部位P2,P3,P1の順でそれぞれ圧縮し、サンプル11,12,13,14,15,16とした。サンプル11~16をそれぞれ1つずつ作製した。端子5及び導体3は、実験例1と同様に同組成のアルミニウム材料を使用した。また、圧縮治具及び圧縮比は、実験1と同じとした。
【0057】
サンプル番号と圧縮の順番との関係を下記表3にまとめた。
【0058】
【0059】
Bの突出比率は、ダイス本体20の押圧面21bとダイス本体30の押圧面31b間の 距離や収容溝50A,50Bの大きさと相関関係を有している。端子5(導体3)の長手 方向に垂直な断面視において、圧縮部位P2における上端と下端間の距離である断面高さ 寸法X(
図8参照)が小さくなる(大きく圧縮させる)につれて、Bの突出比率も大きく なる。また、端子5(導体3)の長手方向に垂直な断面視において、突出形状部5a,5 bにおける突出形状部高さ寸法を、t1,t2とした場合に(
図8参照)、t1,t2が 小さくなるにつれて、Bの突出比率も大きくなる。そこで、Bの高さ比率
をX/T(ただし、T=(t1+t2)/2)で算出し、Bの突出比率/Bの高さ比率(以下、規格値という)を算出した。
【0060】
算出結果を
図9(a)~(c)に示す。
図9(a)~(c)は、それぞれ、断面積が50スケア(sq)、200スケア(sq)、250スケア(sq)の導体3を使用したときの結果を示している。
図9(a)~(c)の横軸は、サンプル番号を示している。
図9(a)~(c)の縦軸は、規格値を示している。
【0061】
図9(a)~(c)に示すように、いずれの太さの導体3を使用した場合でも、最後に形成する圧縮部11を、既に形成した隣り合う2つの圧縮部10,12の間に形成するサンプル11,12の規格値は、0.7以上であることが確認された。他のサンプル13~16における規格値は、0.7未満であることが確認された
(5)本発明の好ましい態様
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0062】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
導体を有する電線と、
前記導体が挿入された状態で圧縮されることにより、前記導体に接続される端子と、
を備える端子付電線であって、
前記端子は、前記導体の長手方向に沿って3つ以上の圧縮部を有し、
前記3つ以上の圧縮部には、それぞれ、圧縮された順番に応じて突出量が異なる突出形状部が、前記端子の一部として形成されている、
端子付電線が提供される。
【0063】
(付記2)
好ましくは、
前記端子は、前記導体の長手方向に沿って3つの圧縮部を有する、
付記1に記載の端子付電線が提供される。
【0064】
(付記3)
好ましくは、
前記3つ以上の圧縮部のうち、1つの圧縮部と、前記1つの圧縮部を両側から挟む2つの圧縮部とについて、
前記2つの圧縮部における突出形状部の突出量よりも、前記1つの圧縮部における突出形状部の突出量の方が大きい、
付記1または2に記載の端子付電線が提供される。
【0065】
(付記4)
好ましくは、
前記3つ以上の圧縮部はそれぞれ、一対のダイスが向かい合う方向から前記端子を圧縮することにより形成されており、
複数の前記突出形状部は、それぞれ、前記一対のダイスの圧縮方向に対して直交する方向に形成されており、
前記導体の長手方向に垂直な断面視において、
前記2つの圧縮部における、前記突出形状部の突出部分を含む前記端子の断面幅寸法を、それぞれA、Cとし、前記2つの圧縮部の間に形成された圧縮部における、前記突出形状部の突出部分を含む前記端子の断面幅寸法をBとした場合に、{(2×B-(A+C))/(2×B)}×100の式で算出されるBの突出比率(%)が4.2%より大きい、
付記3に記載の端子付電線が提供される。
【0066】
(付記5)
好ましくは、
前記3つ以上の圧縮部はそれぞれ、一対のダイスが向かい合う方向から前記端子を圧縮することにより形成されており、
複数の前記突出形状部は、それぞれ、前記一対のダイスの圧縮方向に対して直交する方向に形成されており、
前記導体の長手方向に垂直な断面視において、
前記2つの圧縮部における、前記突出形状部の突出部分を含む前記端子の断面幅寸法を、それぞれA、Cとし、前記2つの圧縮部の間に形成された圧縮部における、前記突出形状部の突出部分を含む前記端子の断面幅寸法をBとした場合の突出比率、及び前記2つの圧縮部の間に形成された圧縮部における、前記突出形状部の突出部分の高さ寸法Tと前記端子の断面高さ寸法をXとした場合の高さ比率から算出される規格値が0.7以上である、
付記3に記載の端子付電線。
ただし、突出比率(%)={(2×B-(A+C))/(2×B)}×100であり、高さ比率=X/Tであり、規格値=突出比率/高さ比率である。
【0067】
(付記6)
本発明の他の一態様によれば、
導体を有する電線と、前記導体を挿入する端子と、を準備する工程と、
前記端子に前記導体を挿入させた状態で、前記導体の長手方向に沿って前記端子を3回以上圧縮して、前記端子に3つ以上の圧縮部を形成することにより、前記端子を前記導体に接続する工程と、
を有する端子付電線の製造方法であって、
前記端子を前記導体に接続する工程は、前記3つ以上の圧縮部に、それぞれ、圧縮した順番に応じて突出量が異なる突出形状部を形成する工程を有する、
端子付電線の製造方法が提供される。
【0068】
(付記7)
好ましくは、
前記端子を前記導体に接続する工程は、前記圧縮部を形成する際に生じる前記突出形状部を収容する収容溝を有する圧縮ダイスを用いて行う、
付記6に記載の端子付電線の製造方法が提供される。
【0069】
(付記8)
好ましくは、
前記端子を前記導体に接続する工程は、前記導体の長手方向における両端部に既に形成した圧縮部の間に、新たな圧縮部を形成する工程を有する、
付記6または7に記載の端子付電線の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0070】
1 端子付電線
2 電線
3 導体
5 端子
10,11,12 圧縮部
P1,P2,P3 圧縮部位