(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241203BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20241203BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 501
B41J2/01 127
B41J2/01 305
C09D11/38
(21)【出願番号】P 2021083612
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】杉田 健人
(72)【発明者】
【氏名】横濱 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】黒羽 みずき
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-000508(JP,A)
【文献】特開2019-162796(JP,A)
【文献】特開2019-155753(JP,A)
【文献】特開2019-051647(JP,A)
【文献】特開2019-059872(JP,A)
【文献】特開2018-165314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
C09D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材、有機溶剤及び水を含み、沸点が210℃以上280℃以下の有機溶剤をインク中3.0質量%以上15.0質量%以下含むインクと、
前記インクを記録媒体に吐出する吐出手段と、
前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記インクが付与された前記記録媒体に光を照射して加熱する加熱手段と、
筐体内の空気を排気する排気手段と、を有し、
前記加熱手段により加熱されて生じた蒸気が前記排気手段から排気されるとき、加熱される前の記録媒体に、加熱されて生じた蒸気が接触するような気流が生じることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記インクは、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を該インク中3.0質量%以上15.0質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記有機溶剤は、ジエタノールアミンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記排気手段は、筐体内の空気を吸引する吸引口を有し、
前記加熱手段と前記吸引口の間に、前記加熱手段に到達する前の前記記録媒体が搬送される経路が存在することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体に温風を送風する温風送風手段を有し、
前記記録媒体の搬送方向において、上流側から前記吐出手段、前記排気手段、前記加熱手段、前記温風送風手段の順に配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有し、デジタル信号の出力機器として広く普及している。インクジェットプリンタに用いる被印刷物として、普通紙等の吸収性媒体からコート紙等の低吸収性記録媒体およびプラスチックフィルム等の非吸収性記録媒体などが使用されている。近年では、特に商用印刷の分野においてより高速で印字できることが求められており、より短時間で乾燥可能なインクおよび装置の開発が行われてきている。
【0003】
特許文献1では、顔料、顔料分散樹脂、有機溶剤、水を含有し、前記有機溶剤として(A)沸点が100℃以上180℃以下である水溶性の有機溶剤と、(B)沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤とを含む水性インクジェット用インキが開示されている。特許文献1によれば、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの光沢度の高い基材への印刷適性に優れ、高い品質の画像を得ることが可能であるとしている。
【0004】
特許文献2では、移動する記録媒体に光を照射し、記録媒体に付着した液滴の水分を蒸発させる光照射部と、記録媒体移動方向において、光照射部よりも下流側に位置し、記録媒体に供給される空気を排出する排出口であり、記録媒体移動方向における下流側に下流側端部を有する排出口と、記録媒体のうち、下流側端部よりも上流側に位置する部分を加熱する加熱部と、を備える乾燥装置が開示されている。特許文献2によれば、記録媒体を加熱する加熱部を設けない場合に比べ、記録媒体に空気を供給することによる、記録媒体の温度の低下を抑制できるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、沸点が200℃以上280℃以下の有機溶剤を含むことで耐カール性が向上すると予想されるが、乾燥工程によっては乾燥性が不十分となる場合がある。また、厚紙に対して良好な乾燥性が得られにくい。
特許文献2では、加熱されて生じた蒸気が記録媒体に接触することで、加熱による紙のしわ寄り等のカールを抑制できるとも思える。しかし、特許文献2では、光照射部と排出口が記録媒体に対して同じ側にあるため、これでは十分に吸湿させることができない。このため、加熱されて生じた蒸気は記録媒体の表面を撫でるだけに留まると考えられ、光照射による加熱効率を上げるためには、記録媒体に対する吸湿が不十分である。
従来技術では、厚紙に対して乾燥性を良くしようとすると、薄紙でカールが発生してしまい、一方、薄紙でカールを防ごうとすると、厚紙で十分に乾燥できないといった問題があった。
【0006】
そこで本発明は、薄紙においてカールが発生せず、厚紙での乾燥性に優れる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の記録装置は、色材、有機溶剤及び水を含み、沸点が210℃以上280℃以下の有機溶剤をインク中3.0質量%以上15.0質量%以下含むインクと、前記インクを記録媒体に吐出する吐出手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記インクが付与された前記記録媒体に光を照射して加熱する加熱手段と、筐体内の空気を排気する排気手段と、を有し、前記加熱手段により加熱されて生じた蒸気が前記排気手段から排気されるとき、加熱される前の記録媒体に、加熱されて生じた蒸気が接触するような気流が生じることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄紙においてカールが発生せず、厚紙での乾燥性に優れる記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明における記録装置の一例を示す概略図である。
【
図2】気流の一例を模式的に説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る記録装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明の記録装置は、色材、有機溶剤及び水を含み、沸点が210℃以上280℃以下の有機溶剤をインク中3.0質量%以上15.0質量%以下含むインクと、前記インクを記録媒体に吐出する吐出手段と、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記インクが付与された前記記録媒体に光を照射して加熱する加熱手段と、筐体内の空気を排気する排気手段と、を有し、前記加熱手段により加熱されて生じた蒸気が前記排気手段から排気されるとき、加熱される前の記録媒体に、加熱されて生じた蒸気が接触するような気流が生じることを特徴とする。
本発明の記録装置は、画像形成装置、インクジェット記録装置、インクジェットプリンタ、造形装置などと称されてもよい。
【0012】
記録装置の一実施形態について
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の記録装置の要部概略図である。
【0013】
本実施形態における搬送手段は、例えば給紙装置1、巻取り装置2、ローラー7を有している。記録媒体(連帳紙P)は、給紙装置1と巻取り装置2の間で搬送され、搬送部材であるローラー7と接触し、矢印の方向に搬送される。なお、ローラー7については、1つのみ符号を付し、その他のものについては符号の表示を省略している。また、ローラー7の構成は図示されるものに限られず、適宜変更でき、例えば数や配置等を適宜変更できる。
【0014】
インクジェットヘッド3は、吐出手段の一例であり、記録媒体にインクを吐出する。吐出するインクやインクジェットヘッドの構成等は、適宜選択できる。図示する例では、例えば4つのインクジェットヘッドを有しており、それぞれ色の異なるインク(KCMY)を吐出する。
【0015】
IRヒーター4は、加熱手段の一例であり、インクが吐出された記録媒体に光を照射する。光を照射して加熱することにより、水性インクを良好に乾燥させることができる。光としては、水が吸収する波長領域であるIR光であることが好ましく、この場合、素早く乾燥させることができる。
【0016】
排気手段は、筐体内の空気を排気する。本実施形態における排気手段は、例えば、排気ダクト6、ファンなどを有する。排気ダクト6は、筐体内の空気を吸引する吸引口、空気を排出する排出口等を有する。
【0017】
本実施形態の記録装置によれば、加熱手段により加熱されて生じた蒸気が排気手段から排気されるとき、加熱される前の記録媒体に、加熱されて生じた蒸気が接触するような気流が生じる。本実施形態では、IRヒーター4による加熱時に画像から発生する高湿度の空気が排気ダクト6で吸引されることにより、加熱前かつ搬送中の記録媒体に蒸気を吸湿させることができる。そして、蒸気を吸湿した記録媒体がIRヒーター4の加熱位置まで搬送されて、IRヒーター4により加熱されることで、吸湿した水分が自己発熱し、記録媒体の内部からしっかり乾燥させることができる。このため、記録媒体に蒸気を吸湿させることで、記録媒体が厚紙であっても乾燥性を向上させることができる。
【0018】
一方、記録媒体が薄紙の場合、加熱により用紙中の水分が飛びきってしまい、カールが発生してしまう問題があった。そこで、本発明者らは鋭意検討を行い、インクの成分としてカール抑制効果のある有機溶剤を採用する必要があると考えた。更に検討した結果、沸点が210℃以上280℃以下の有機溶剤をインク中3.0質量%以上15.0質量%以下含むインクを用いることにより、カールの発生を抑制できるとして本発明に至った。このようなインクを用いた場合、有機溶剤分子同士の親和力を低くでき、記録媒体への浸透性を高めることができる。また、紙の水分が失われた分、有機溶剤が記録媒体に浸み込むことでカールの発生が抑えられていると考えられる。従って、本実施形態によれば、このような記録装置及びインクを用いることで、薄紙においてカールが発生せず、厚紙での乾燥性に優れる記録装置を提供することができる。
【0019】
温風装置5は、温風送風手段の一例であり、インクが吐出された記録媒体に温風を送風する。本実施形態では、記録媒体の搬送方向において、上流側から吐出手段、排気手段、加熱手段、温風送風手段の順に配置されている。このような配置にすることで、特に加熱手段よりも下流側に温風送風手段を配置することで、加熱手段により加熱されて生じた蒸気が加熱される前の記録媒体に接触するような気流に対して、温風が阻害することを抑制できる。
【0020】
IRヒーター4や排気ダクト6の配置は、適宜変更することができる。IRヒーター4と排気ダクト6の吸引口の間に、IRヒーター4に到達する前の記録媒体が搬送される経路が存在することが好ましい。この場合、IRヒーター4で加熱された蒸気に記録媒体をより確実に通過させることができ、記録媒体に対して吸湿させやすくなる。
なお、IRヒーター4と排気ダクト6の吸引口の間とあるのは、IRヒーター4と排気ダクト6を結んだ直線上などとも称することができ、このような直線上に記録媒体の搬送経路が存在するかどうかを考慮する。
【0021】
本実施形態において、加熱手段により加熱されて生じた蒸気が加熱される前の記録媒体に接触するような気流が生じているかどうかについては、例えば以下のようにして判断することができる。例えば、加熱手段の光照射を行う位置や記録媒体における光が照射される位置と、排気手段における空気を吸引する吸引口の位置と、記録媒体の搬送経路との関係を考慮して判断することができる。その他にも、KANOMAX製、アネモマスターライト Model 6006-D0などの風速計により実際に測定することもできる。
【0022】
図2は、本実施形態の記録装置における気流の流れの一例を模式的に説明するための図である。なお、上記と同様の事項については、説明を省略する。
【0023】
本例において、IRヒーター4は、図示する方向にIR光4aを記録媒体に照射する。ただし、IR光4aを照射する方向や照射面積等については適宜変更することができ、本例に限られない。
【0024】
IRヒーター4により加熱されて生じた蒸気が排気ダクト6に吸引されるときに生じる気流を模式的に矢印A1~A3(気流A1~A3などとも称する)で示している。排気ダクト6の吸引口6aから吸引された空気は排気ダクト6を通り、排出口6bから排出(排気とも称する)される。排出される空気の流れの一例を模式的に矢印Bで示している。
【0025】
本例において、例えば気流A1及び気流A3は、加熱されて生じた蒸気が加熱される前の記録媒体に接触する気流となる。このような気流が生じることにより、上述の効果が得られる。
【0026】
図中の破線の円Cは、IRヒーター4と排気ダクト6の吸引口の間における、IRヒーター4に到達する前の記録媒体が搬送される経路について、このような経路が存在する領域をおおまかに示すものである。このような経路が存在することで、上述の効果が得られる。
【0027】
本例における温風装置5は、IRヒーター4の下流側において図示する方向に温風を送風し、記録媒体を乾燥させる。このように乾燥させることで、加熱されて生じた蒸気が記録媒体に接触するような気流に対して、温風が阻害することを抑制できる。
【0028】
なお、本発明の記録装置は立体造形装置として用いられてもよい。本発明における立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知の構成を採用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0029】
(インク)
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
本発明に用いられるインクは、色材、有機溶剤及び水を含み、必要に応じてその他の成分を含む。
【0030】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0031】
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0032】
上述したように、本発明では、沸点が210℃以上280℃以下の有機溶剤をインク中3.0質量%以上15.0質量%以下含む。これにより、厚紙での乾燥性と薄紙での耐カール性を良好にすることができる。上記の有機溶剤が3.0質量%未満である場合、薄紙での耐カール性が悪化し、15.0質量%を超える場合、厚紙での乾燥性が悪化する。
【0033】
また、薄紙での耐カール性を向上させる観点から、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を該インク中3.0質量%以上15.0質量%以下含むことが好ましい。
【0034】
また、薄紙での耐カール性を向上させる観点から、有機溶剤がジエタノールアミンを含むことがより好ましい。理由は定かではないが、耐カール性が向上することから、ジエタノールアミンの記録媒体への浸透性が他の溶剤よりも優れているためと予想される。ジエタノールアミンは、有機溶剤の全体に対して10質量%以上であることが好ましく、45質量%以下であることが好ましい。
【0035】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0036】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0037】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0039】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0040】
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
【0041】
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
【0044】
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0045】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、インク中の固形分の粒径の最大頻度が最大個数換算で20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0046】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0047】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0048】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
【0049】
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0050】
【0051】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0052】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0053】
【0054】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0055】
【0056】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCH2CH(OH)CH2-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0057】
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0058】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0059】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0060】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0061】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0062】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
【0063】
<インクの物性>
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、3mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0064】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布など、吸湿性があるものを用いることができる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
また、連帳紙だけでなくカット紙も自由に選択可能である。
【0065】
なお、薄紙と厚紙の区別は、適宜選択することができ、例えば秤量(gsm)により区別する。
【0066】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0067】
<インクの使用方法>
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
【0068】
本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0070】
(実施例1~63、比較例1~25)
<顔料分散体の準備>
顔料分散体として以下に示す市販品を用いた。
・CAB-O-JET 400(キャボット製)
・CAB-O-JET 450C(キャボット製)
・CAB-O-JET 465M(キャボット製)
・CAB-O-JET 480M(キャボット製)
・CAB-O-JET 470Y(キャボット製)
【0071】
<樹脂エマルションの準備>
樹脂エマルションとして、以下に示す市販品を用いた。
・タケラック W5661(三井化学製)
・Neocryl BT-9(DSM Coating Resins社製)
・Lube190(MICHELMAN社製)
【0072】
<有機溶剤の準備>
有機溶剤として、以下に示す市販品を用いた。
・グリセリン(東京化成工業製、沸点290℃)
・トリメチロールプロパン(東京化成工業製、沸点287℃)
・トリエチレングリコール(東京化成工業製、沸点287℃)
・N-ブチルジエタノールアミン(東京化成工業製、沸点275℃)
・3-メチル-1,5-ペンタンジオール(東京化成工業製、沸点250℃)
・ジエチレングリコール(東京化成工業製、沸点240℃)
・3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東京化成工業製、沸点227℃)
・1,2-ヘキサンジオール(東京化成工業製、沸点223℃)
・1,3-プロパンジオール(東京化成工業製、沸点214℃)
【0073】
<界面活性剤の準備>
界面活性剤として、以下に示す市販品を用いた。
・SAG-503A(日信化学工業製)
・FS-300(DuPont社製)
・オレフィンE1004(日信化学工業製)
・オレフィンE1010(日信化学工業製)
【0074】
<防腐剤の準備>
防腐剤として、以下に示す市販品を用いた。
・プロキセルLV(ロンザジャパン社製)
【0075】
<記録媒体の準備>
以下の市販品を用いた。
・Snowbrite(Tiwn Rivers社製、坪量40gsm)
・NPiフォームNEXT-IJ 70(日本製紙製、坪量81.4gsm)
・NPiフォームNEXT-IJ 135(日本製紙製、坪量157gsm)
・Crown Letsgo Silk(Crown van Gelder社製、坪量250gsm)
【0076】
<インクの調製例>
下記表1~11に示すインク処方に基づいて各材料を調合後、混合撹拌し、平均孔径5μmのフィルター(ザルトリウス社製、ミニザルト)で濾過し、0.5μmポリプロピレンフィルターにて濾過することにより各インクを作製した。なお、表1~11中の各種材料の数値の単位は「質量%」である。また、表1~11の顔料分散体、樹脂の含有量を示す数値は、いずれも固形分量を表す。また、「COJ」とあるのは、「CAB-O-JET」を表す。
【0077】
(評価)
次に、各実施例及び各比較例において、以下の方法に基づいて乾燥性及び耐カール性を評価した。評価結果を下記表1~11に示す。
【0078】
<乾燥性>
作製したインクを
図1の装置を用いて、600dpi×600dpiの解像度でベタ画像を形成した。印字後2分以内に1.2cm四方に切った記録媒体の白紙部でベタ画像を20回擦り、コート紙の白紙部へのインク転写汚れを、反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)を用いて測定した。擦った白紙の地肌色を差し引くことで転写濃度を求め、下記評価基準に基づき、乾燥性を評価した。なお、AA及びAが許容範囲である。
【0079】
[評価基準]
AA:転写濃度が0.01未満
A:転写濃度が0.01以上0.03未満
B:転写濃度が0.03以上0.10未満
C:転写濃度が0.10以上
【0080】
<耐カール性>
作製したインクを
図1の装置を用いて600dpi×600dpiの解像度でベタ画像を形成した。印字後2分以内にA4サイズに切り出して印字面を裏にして平らな面においたとき、記録メディアの4スミの平らな面からの高さを測定し、下記評価基準により判定した。なお、AA及びAが許容範囲である。
【0081】
[評価基準]
AA:5mm未満
A:5mm以上10mm未満
B:10mm以上20mm未満
C:20mm以上
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
実施例1~63より、沸点が210℃以上280℃以下の有機溶剤をインク中3.0質量%以上15.0質量%以下含む場合に、薄紙の耐カール性と厚紙の乾燥性が両立することが分かる。
また、実施例1~30、34~36、40~51と実施例31~33、37~39、52~63との比較により、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤をインク中3.0質量%以上15.0質量%以下含む場合に、薄紙の耐カール性がより良好になることが分かる。
実施例1と実施例29、30との比較により、有機溶剤がジエタノールアミンを含む場合に、耐カール性がより良好になることが分かる。
実施例1と比較例1~25の比較より、沸点が210℃以上280℃以下の有機溶剤をインク中3.0質量%以上15.0質量%以下含むことを満たさない場合に、厚紙の乾燥性と薄紙の耐カール性が両立しないことが分かる。
【符号の説明】
【0094】
1 給紙装置
2 巻取り装置
3 インクジェットヘッド
4 IRヒーター
5 温風装置
6 排気ダクト
P 連帳紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【文献】特開2014-205769号公報
【文献】特開2019-162796号公報