(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】環状シラザン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
C07F7/18 T
(21)【出願番号】P 2021158830
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅人
(72)【発明者】
【氏名】市位 駿
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110862408(CN,A)
【文献】特開2011-102267(JP,A)
【文献】特開2011-162500(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112430245(CN,A)
【文献】特表平07-504211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して炭素数1~10の非置換の1価炭化水素基を表し、R
3は、アミノ基またはアルコキシシリル基を有していてもよい炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、mは0、1または2である。)
で表される2級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物を、当量以上の有機金属化合物および有機金属アミド化合物より選ばれる塩基性化合物の存在下で、分子内環化させるとともに、分子内環化によって生じたアルコールを金属アルコキシドへ変換する、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1~R
3およびmは、前記と同じ意味を表す。)
で表される環状シラザン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムから選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の環状シラザン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記塩基性化合物が、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム、イソプロピルマグネシウムクロリド、sec-ブチルマグネシウムクロリド、tert-ブチルマグネシウムクロリド、テキシルマグネシウムクロリド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムイソプロピルtert-ブチルアミド、リチウムジ(tert-ブチル)アミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムジイソプロピルアミド、ナトリウムイソプロピルtert-ブチルアミド、ナトリウムジ(tert-ブチル)アミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、クロロマグネシウムジイソプロピルアミド、クロロマグネシウムヘキサメチルジシラジドおよびブロモマグネシウムヘキサメチルジシラジドから選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の環状シラザン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状シラザン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含窒素オルガノキシシラン化合物は、シランカップリング剤、表面処理剤、樹脂添加剤または塗料添加剤等として有用である。
このような含窒素オルガノキシシラン化合物としては、アミノプロピルトリメトキシシラン等の1級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等の2級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等の3級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物等が知られている。これらの中でも、特に2級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物(以下、「2級アミノシラン化合物」ともいう。)は、分子内のアミノ基とアルコキシシラン部位で分子内環化させることにより、環状シラザン化合物へと誘導できる。
【0003】
環状シラザン化合物は、対応する2級アミノシラン化合物と比べて、加水分解の際に生成するアルコールの量を低減できる。また、窒素上の活性水素を持たないため、アルコールや水分と接触しない限り、アミノ基と反応可能な官能基を持つ樹脂等と混合しても、安定な組成物が得られるため、環状シラザン化合物は有用である。
また、環状シラザン化合物中のSi-N構造は反応性に富んでおり、空気中の水分や化合物中のヒドロキシ基と速やかに反応し、開環することが知られている。このため、例えば、金属表面の反応性ヒドロキシ基等と速やかに反応させることにより、表面処理剤等としても使用できる。
【0004】
環状シラザン化合物を表面処理剤として利用する場合、窒素上の置換基の種類により、処理対象物に対して様々な機能を付与できる。例えば、ブチル、オクチル、フェニル基等の炭化水素基を有する環状シラザン化合物の場合には疎水性を、アミノ基等の親水性官能基を有する環状シラザン化合物の場合には親水性を、アルコキシシリル基を有する環状シラザン化合物の場合には架橋性を、それぞれ付与することができる。
また、環状シラザン化合物は空気中の水分と速やかに反応することから、加水分解性にも優れており、加水分解縮合の進行により、硬化被膜を作成することもできる。
【0005】
このような環状シラザン化合物の合成方法として、触媒量の酸または塩基性化合物存在下、2級アミノシラン化合物を蒸留し、分子内環化によって生じたアルコールを減圧下で系外から除去する方法が提案されている(特許文献1,2)。
例えば、特許文献1では塩基性物質のナトリウムメトキシドの存在下で、特許文献2では塩基性物質のナトリウムアミドやナトリウムメトキシドの存在下で、分子内環化反応を行っている。
また、触媒量の酸性化合物とヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物の存在下、2級アミノシラン化合物を分子内環化させる方法も提案されている(特許文献3)。この方法は、分子内環化によって生じたアルコールをシリルアミン化合物によって捕捉することにより、逆反応を抑制できる効率的な合成方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-102267号公報
【文献】中国特許第110862408号明細書
【文献】特開2015-160811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2記載の方法は、物理的にアルコールを除去することにより、2級アミノシラン化合物と環状シラザン化合物の平衡関係を変化させている。しかし、これらの方法では、スケールアップに伴ってアルコールの除去効率が下がり、環状シラザン化合物の生成に時間がかかるという課題がある上、2級アミノシラン化合物からの環状シラザン化合物への転換率も十分ではない。加えて、目的物の環状シラザン化合物を単離するには、蒸留精製により環状シラザン化合物と原料の2級アミノシラン化合物を分離する必要があるため、単離収率が十分でなく、また蒸留精製にも時間がかかるという課題がある上、酸または塩基性触媒存在下で長時間加熱するため、酸または塩基性条件下で不安定な化合物には、適用できないという課題もある。
【0008】
特に、特許文献2記載の方法は、反応性が高く、取り扱いに注意を要する固体の金属アミド化合物(ナトリウムアミド、カリウムアミド等)を用いている。これらの試薬は、一般的な有機溶媒への溶解性に乏しく、短時間で十分な反応率に到達しない可能性が考えられる。また、金属アミド化合物は空気中の水分と容易に反応して、金属水酸化物とアンモニアに分解される。この金属水酸化物は環状シラザン化合物を分解する一方、アンモニアは環状シラザン化合物や2級アミノシラン化合物と反応して高分子化し得るため、収率や純度を低下する可能性が考えられる。さらに、金属アミド化合物は反応の環状シラザンの生成に伴って生じるアルコールと反応することにより、金属アルコキシドとアンモニアへ分解され、アンモニアの生成は同様に収率や純度の低下を招く可能性がある。
【0009】
特許文献3記載の方法では、アルコールをシリルアミン化合物と反応させて化学的に変換させることによって、2級アミノシラン化合物と環状シラザン化合物の平衡関係を変化させている。しかし、環状シラザン化合物の生成率を上げるには、生じたシリルアミン化合物とアルコールの反応物を反応液中から取り除く必要があるため、特許文献1と同様の課題を有する。
また、酸性条件下で長時間加熱するため、酸性条件下で不安定な化合物には適用できず、反応の進行に伴って生じるシリルアミン化合物とアルコールの反応物が環状シラザン化合物と反応してしまい、目的の環状シラザン化合物が得られないあるいは純度が低下してしまうという課題もある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、短時間で高い反応率に到達する環状シラザン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、2級アミノシラン化合物を、当量以上の有機金属化合物および有機金属アミド化合物より得らばれる塩基性化合物の存在下で分子内環化させることにより、短時間で効率的に環状シラザン化合物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
1. 下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して炭素数1~10の非置換の1価炭化水素基を表し、R
3は、アミノ基またはアルコキシシリル基を有していてもよい炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、mは0、1または2である。)
で表される2級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物を、当量以上の有機金属化合物および有機金属アミド化合物より選ばれる塩基性化合物の存在下で、分子内環化させる下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1~R
3およびmは、前記と同じ意味を表す。)
で表される環状シラザン化合物の製造方法、
2. 前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムから選ばれる少なくとも一種である1の環状シラザン化合物の製造方法、
3. 下記一般式(3)で表されるアルコキシシリル基を有する環状シラザン化合物
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して炭素数1~10の非置換の1価炭化水素基を表し、R
4およびR
5は、それぞれ独立して炭素数1~6の非置換の1価炭化水素基表し、mは0、1または2であり、nは0、1または2である。)
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の環状シラザン化合物の製造方法によれば、簡便かつ短時間、そして高い反応率で環状シラザン化合物を得ることができるのみならず、従来の方法では合成することが困難な構造を有する環状シラザン化合物を合成することもできる。
また、得られる環状シラザン化合物は、窒素上の置換基に応じて様々な用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例7で得られた2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンのIRスペクトルを示す図である。
【
図2】実施例7で得られた2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの
1H-NMRスペクトルを示す図である。
【
図3】実施例9で得られた2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンのIRスペクトルを示す図である。
【
図4】実施例9で得られた2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの
1H-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の下記一般式(2)で示される環状シラザン化合物(以下、「化合物(2)」という。)の製造方法は、下記一般式(1)で表される2級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物(以下、「化合物(1)」という。)を、当量以上の有機金属化合物および有機金属アミド化合物より選ばれる塩基性化合物の存在下で、分子内環化させるものである。
【0016】
【0017】
一般的に、化合物(1)が化合物(2)へ変換される際には、アルコールが発生するが、発生したアルコールが系中にそのまま残存すると、化合物(2)と反応して化合物(1)が生じてしまう。つまり、下記スキームに示されるように、化合物(1)と化合物(2)は、平衡関係にある。
そこで、本発明では、塩基性化合物の存在下で化合物(2)を分子内環化させることにより、化合物(2)から生じたアルコールを金属アルコキシド(R1O-)へ変換し、化合物(2)から化合物(1)への逆反応を起こりにくくしている。これにより、化合物(2)が生成する方向へ平衡が偏り、化合物(2)を得ることができる。
【0018】
【0019】
上記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して炭素数1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3の非置換の1価炭化水素基である。
R1およびR2の1価炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-へプチル、n-オクチル、デシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、テキシル、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、オクテニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、原料の調達容易性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
【0020】
R3は、アミノ基またはアルコキシシリル基を有していてもよい炭素数1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3の1価炭化水素基であり、この1価炭化水素基としては、R1と同様の置換基が挙げられる。これらの中でも、原料の調達容易性の観点から、プロピル基、ブチル基、オクチル基、オクテニル基、フェニル基が好ましい。
【0021】
R3がアミノ基を含む場合の1価炭化水素基としては、アミノエチル、アミノプロピル、アミノオクチル基等のアミノアルキル基;メチルアミノエチル、エチルアミノエチル、ブチルアミノエチル、tert-ブチルアミノエチル基等のアルキルアミノアルキル基;ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、モルホリノエチル、ピペラジノエチル、メチルピペラジノエチル基等ジアルキルアミノアルキル基;アミノエチルアミノエチル基等のアミノアルキルアミノアルキル基;ビス(トリメチルシリル)アミノエチル基等のビス(トリアルキルシリル)アミノアルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、原料調達容易性の観点から、アミノアルキル基が好ましく、アミノエチル基がより好ましい。
【0022】
R3がアルコキシシリル基を含む場合の1価炭化水素基としては、トリメトキシシリルプロピル、トリエトキシシリルプロピル、トリメトキシシリルメチル、トリエトキシシリルメチル、トリメトキシシリルオクチル、トリエトキシシリルオクチル、トリメトキシシリルエチルフェニルメチル、トリエトキシシリルエチルフェニルメチル基等のトリアルコキシシリルアルキル基;メチルジメトキシシリルプロピル、メチルジエトキシシリルプロピル基等のアルキルジアルコキシシリルアルキル基;ジメチルメトキシシリルプロピル、ジメチルエトキシシリルプロピル基等のジアルキルアルコキシシリル基等が挙げられる。
これらの中でも、原料調達容易性の観点から、トリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基が好ましく、生成物の有用性の観点から、トリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基、トリメトキシシリルメチル基、トリエトキシシリルメチル基が好ましい。
【0023】
化合物(1)の具体例としては、ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、オクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、オクテニルアミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、オクチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アリルアミノプロピルトリエトキシシラン、オクテニルアミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン等のアルキルアミノプロピルトリアルコキシシラン化合物;ブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アリルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクテニルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、フェニルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ブチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、オクチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アリルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、オクテニルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、フェニルアミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアルキルアミノプロピルアルキルジアルコキシシラン化合物;ブチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、オクチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、アリルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、オクテニルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、フェニルアミノプロピルジメチルメトキシシラン等のアルキルアミノプロピルジアルキルアルコキシシラン化合物;アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モルホリノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ピペラジノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、メチルピペラジノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノアルキルアルコキシシラン化合物;ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、(トリメトキシシリルプロピル)(トリメトキシシリルメチル)アミン、(トリメトキシシリルプロピル)(ジメチルメトキシシリルメチル)アミン、(トリエトキシシリルプロピル)(トリエトキシシリルメチル)アミン、(トリエトキシシリルプロピル)(ジメチルエトキシリルメチル)アミン、(トリメトキシシリルプロピル)(トリメトキシシリルオクチル)アミン、(トリエトキシシリルプロピル)(トリエトキシシリルオクチル)アミン等のビス(アルコキシシリルアルキル)アミン等が挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法で用いられる塩基性化合物は、有機金属化合物および有機金属アミド化合物より選ばれる。
有機金属化合物の具体例としては、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム試薬;イソプロピルマグネシウムクロリド、sec-ブチルマグネシウムクロリド、tert-ブチルマグネシウムクロリド、テキシルマグネシウムクロリド等のグリニャール試薬等を含む有機マグネシウム試薬等が挙げられる。
【0025】
有機金属アミド化合物の具体例としては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムイソプロピルtert-ブチルアミド、リチウムジ(tert-ブチル)アミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等のリチウムアミド;ナトリウムジイソプロピルアミド、ナトリウムイソプロピルtert-ブチルアミド、ナトリウムジ(tert-ブチル)アミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等のナトリウムアミド;カリウムヘキサメチルジシラジド等のカリウムアミド;クロロマグネシウムジイソプロピルアミド、クロロマグネシウムヘキサメチルジシラジド、ブロモマグネシウムヘキサメチルジシラジド等のマグネシウムアミド等が挙げられる。
これら有機金属化合物および有機金属アミド化合物は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。なお、塩基性化合物は、有機金属化合物および有機金属アミド化合物をそれぞれ単独で用いても、両者を混合して用いてもよい。
【0026】
これらの塩基性化合物のうち、反応性や取り扱いの容易性の点から、tert-ブチルマグネシウムクロリド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、クロロマグネシウムヘキサメチルジシラジドが好ましい。
【0027】
塩基性化合物は、市販品をそのまま用いてもよく、反応の直前に調製したものを用いてもよいが、これらの化合物の失活を防ぐために、反応の直前に調製したものを使用することが好ましい。この場合、塩基性化合物の調製方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、有機金属化合物の場合は、リチウムまたはマグネシウム等の金属とアルキルハライドを混合し、金属-ハロゲン交換反応を起こすことにより調製することができる。一方、有機金属アミド化合物の場合は、金属、金属水素化物、有機金属化合物等とアミン化合物を混合することにより調製することができる。
【0028】
本発明の製造方法においては、塩基性化合物は溶液として用いてもよい。この場合に用いられる溶媒は、化合物(1)および化合物(2)と反応せず、塩基性化合物を失活させない溶媒であれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、メチル-tert-ブチルエーテル等のエーテル系溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。特に、反応性および収率の点から、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピランが好ましい。
溶媒の使用量は特に限定されないが、化合物(1)1.0モルに対して、好ましくは100~3000g、経済性および反応性の点から、より好ましくは300~1000gである。
【0029】
また、上記溶媒と併用して、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン等の(イソ)パラフィン化合物を用いてもよい。これらの化合物を用いることによって、反応液の極性が下がり、反応の進行に伴って生じる塩が析出しやすくなる。
【0030】
本発明の製造方法における塩基性化合物の使用量は、化合物(1)1.0モルに対して、好ましくは1.0~2.0モル、反応性の点から、より好ましくは1.0~1.5モル、より一層好ましくは1.0~1.2モルである。
【0031】
反応温度は特に限定されないが、好ましくは-10~150℃、より好ましくは0~100℃である。
反応時間も特に限定されないが、好ましくは1~40時間、より好ましくは1~20時間である。
なお、上記反応は、化合物(1)、化合物(2)および塩基性化合物の加水分解を防ぐために、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0032】
また、反応過程で生じる金属アルコキシド(R1O-)をさらに反応させることにより、より効率的に反応を進行させることもできる。
金属アルコキシドと反応できる化合物の具体例としては、2-クロロピリジン、2-ブロモピリジン、2-クロロピラジン、2-ブロモピラジン、2-クロロ安息香酸メチル、2-クロロ安息香酸エチル、2-クロロニトロベンゼン、4-クロロニトロベンゼン、2-ブロモニトロベンゼン、4-ブロモニトロベンゼン等が挙げられる。
【0033】
金属アルコキシドと反応できる化合物を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、発生したアルコキシドに対して、好ましくは1~1.5モル、より好ましくは1.05~1.2モルである。
【0034】
上述した本発明の製造方法では、下記式(3)で示されるアルコキシシリル基を有する環状シラザン化合物(以下、「化合物(3)」という。)を得ることができる。この化合物(3)は、分子内にアミノメチルアルコキシシリル構造を有しており、アミノプロピルアルコキシシリル構造よりも反応性が非常に高いため、加水分解性が極めて高く、速硬化性材料等への応用が期待される化合物である。
【0035】
【化6】
(式中、R
1、R
2およびmは、上記と同じ意味を表し、nは、0、1または2である。)
【0036】
式(3)において、R4およびR5は、それぞれ独立して炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3の非置換の1価炭化水素基表し、この1価炭化水素基の具体例としては、上記R1で例示した基のうち、炭素数1~6のものが挙げられるが、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0037】
本発明の製造方法で得られる化合物(2)(化合物(3)を含む。)の具体例としては、2,2-ジメトキシ-N-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-オクチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-アリル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-オクテニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-スチリル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-オクチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-アリル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-オクテニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-スチリル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-オクチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-アリル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-オクテニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-スチリル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-オクチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-アリル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-オクテニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-スチリル-1-アザ-2-シラシクロペンタン等の炭化水素基を有する環状シラザン化合物;2,2-ジメトキシ-N-(アミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-(アミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-(アミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-(アミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(アミノプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(アミノエチルアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(ジメチルアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(ジエチルアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(モルホリノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン等のアミノ基を有する環状シラザン化合物;2,2-ジメトキシ-N-(トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(トリメトキシシリルメチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(トリメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-(トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-(トリメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-(トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-(トリエトキシシリルメチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-(トリエトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-(トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-(トリエトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(トリメトキシシリルチオエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-(トリメトキシシリルチオエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン等のトリアルコキシシリルアルキル基を有する環状シラザン化合物;2,2-ジメトキシ-N-(メチルジメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(メチルジメトキシシリルメチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(メチルジメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-(メチルジメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-(メチルジエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-(メチルジエトキシシリルメチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-(メチルジエトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-N-(メチルジエトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(メチルジメトキシシリルチオエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-(メチルジメトキシシリルチオエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン等のアルキルジアルコキシシリルアルキル基を有する環状シラザン化合物;2,2-ジメトキシ-N-(ジメチルメトキシシリルメチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(ジメチルメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-(ジメチルメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(ジエチルメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-(ジエチルメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(ジフェニルメトキシシリルヘキシル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-N-(ジフェニルメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-N-(ジフェニルメトキシシリルオクチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-N-(ジメチルエトキシシリルメチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン等のジアルキルアルコキシシリルアルキル基を有する環状シラザン化合物等が挙げられる。
【0038】
上記一連の反応により、化合物(2)、塩基性化合物由来の塩および溶媒の混合物の他、場合によっては、化合物(1)をさらに含んだ混合物が得られる。
この混合物から目的の化合物(2)を単離精製するには、ろ過、蒸留、減圧ストリップや各種クロマトグラフィー、吸着剤を用いた処理等の通常の有機合成における精製方法から適宜選択して用いることができる。
これらの中でも、目的物を高純度化できることから蒸留による精製が好ましく、特に金属化合物由来の塩をろ過してから蒸留することが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例および比較例において、反応率とはガスクロマトグラフィー分析(以下、GC分析ともいう)により、原料と生成物の面積値から、以下の計算で求めたものである。
(化合物3の面積値)/(化合物1の面積値+化合物3の面積値)×100
【0040】
[実施例1]2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルプロピル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
【化7】
(式中、Meは、メチル基を表す。以下、同様である。)
【0041】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、ナトリウムヘキサメチルジシラジド24.1g(40質量%テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する。)溶液、0.0526モル)を仕込み5℃に冷却した。ここに、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン17.1g(0.0500モル)を20分で滴下し、同じ温度で5分間攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー分析(以下、「GC分析」という。)すると、2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルプロピル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが反応率99%で生成していた。
【0042】
[実施例2]2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルプロピル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、クロロマグネシウムヘキサメチルジシラジド85.7g(30質量%メチルテトラヒドロピラン(以下、「MTHP」と略す。)溶液、0.116モル)を仕込み、60℃に加温した。ここに、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン34.1g(0.100モル)を1時間で滴下し、同じ温度で1時間熟成した。その後、100℃で1時間熟成した。反応液をGC分析すると、2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルプロピル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが反応率93%で生成していた。
【0043】
[実施例3]2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルプロピル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、tert-ブチルマグネシウムクロリド76.2g(18質量%THF溶液、0.117モル)を仕込み、60℃に加温した。ここに、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン34.1g(0.100モル)を1時間で滴下し、同じ温度で1時間熟成した。その後、還流下で1時間熟成した。反応液をGC分析すると、2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルプロピル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが反応率85%で生成していた。
【0044】
[実施例4]2,2-ジメトキシ-N-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
【化8】
【0045】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、ナトリウムヘキサメチルジシラジド58.1g(40質量%THF溶液、0.0127モル)を仕込んだ。ここに、N-ブチル(トリメトキシシリルプロピル)アミン31.0g(0.124モル)を1時間で滴下した。その後、60℃で2時間攪拌した。反応液をGC分析すると、2,2-ジメトキシ-N-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが反応率92%で生成していた。
【0046】
[実施例5]2,2-ジメトキシ-N-(アミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
【化9】
【0047】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、ナトリウムヘキサメチルジシラジド58.1g(40質量%THF溶液、0.0127モル)を仕込んだ。ここにアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン22.4g(0.100モル)を1時間で滴下した。その後、60℃で2時間攪拌した。反応液をGC分析すると、2,2-ジメトキシ-N-(アミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンが反応率60%で生成していた。
【0048】
[実施例6]2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルオクチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
【化10】
(式中、Etは、エチル基を表す、以下同様である。)
【0049】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、ナトリウムヘキサメチルジシラジド73.0g(40質量%THF溶液、0.159モル)を仕込み5℃に冷却した。ここに、(トリエトキシシリルオクチル)(トリエトキシシリルプロピル)アミン72.1g(0.145モル)を1時間で滴下し、同じ温度で1時間攪拌した。反応液をGC分析すると、2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルオクチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが反応率88%で生成していた。
【0050】
[実施例7]2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
【化11】
【0051】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、ナトリウムヘキサメチルジシラジド126.1g(40質量%THF溶液、0.2752モル)を仕込み5℃に冷却した。ここに(トリエトキシシリルメチル)(トリエトキシシリルプロピル)アミン99.3g(0.250モル)を1時間で滴下し、同じ温度で1時間攪拌した。
反応液をGC-MS分析すると、2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが反応率97%で生成しているとわかった。また、得られた反応液を濾過した後に蒸留し、2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが沸点105℃/0.4kPaの留分として54.0g得られた。得られた化合物について、IR、
1H-NMR分析を行った。結果を
図1および2に示す。
【0052】
[実施例8]2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、クロロマグネシウムヘキサメチルジシラジド85.7g(30質量%MTHP溶液、0.116モル)を仕込み、60℃に加温した。ここに、(トリエトキシシリルプロピル)(トリエトキシシリルメチル)アミン39.7g(0.100モル)を1時間で滴下し、100℃で1時間熟成した。反応液をGC分析すると、2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが反応率98%で生成していた。
【0053】
[実施例9]2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
【化12】
【0054】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、クロロマグネシウムヘキサメチルジシラジド85.7g(30質量%MTHP溶液、0.116モル)を仕込み、60℃に加温した。ここに、(トリメトキシシリルプロピル)(トリメトキシシリルメチル)アミン31.3g(0.100モル)を1時間で滴下し、100℃で1時間熟成した。反応液をGC-MS分析すると、2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが反応率100%で生成しているとわかった。また、得られた反応液を濾過した後に蒸留し、2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンが沸点109℃/0.8kPaの留分として47.0g得られた。得られた化合物について、IR、
1H-NMR分析を行った。結果を
図3および4に示す。
【0055】
[比較例1]2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルプロピル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
温度計、還流冷却器、蒸留塔を備えた3つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン170.5g(0.500モル)、ナトリウムメトキシド0.27g(0.0050モル)を仕込んだ。次いで0.6kPaにて加熱し、メタノールを深冷トラップに捕集しながら5時間還流した。反応液をGC分析し、反応率を求めると51%であった。
【0056】
[比較例2]2,2-ジメトキシ-N-トリメトキシシリルプロピル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン170.5g(0.500モル)、ドデシルベンゼンスルホン酸0.82g(0.0025モル)を仕込み130℃に加温した。ここに、N-トリメチルシリル-N-メチルアニリン89.7g(0.500モル)を1時間かけて滴下し、同じ温度で2時間熟成した。この時点で反応液をGC分析し、反応率を求めると75%であった。
次いで、この反応液を温度計、還流冷却器、蒸留塔を備えた3つ口ガラスフラスコに移し、低沸点成分であるトリメチルメトキシシランを抜き出しながら2時間熟成した。反応液をGC分析し、反応率を求めると85%であった。
【0057】
[比較例3]2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
温度計、還流冷却器、蒸留塔を備えた3つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、(トリエトキシシリルメチル)(トリエトキシシリルプロピル)アミン99.3g(0.250モル)99.4g(0.250モル)、ナトリウムエトキシド0.17g(0.0025モル)を仕込んだ。次いで0.5kPaにて加熱し、エタノールを深冷トラップに捕集しながら5時間還流した。反応液をGC分析し、反応率を求めると33%であった。また、一部原料が分解し、低沸点化合物が生成していた。
【0058】
[比較例4]2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンの合成
撹拌機、温度計、還流冷却器、蒸留塔を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、(トリエトキシシリルメチル)(トリエトキシシリルプロピル)アミン39.7g(0.100モル)、ドデシルベンゼンスルホン酸0.33g(0.0010モル)、トルエン44gを仕込み130℃に加温して還流させた。ここに、N-トリメチルシリル-N-メチルアニリン17.9g(0.100モル)を1時間かけて滴下し、同時に生成するトリメチルエトキシシランをトルエンとともに抜き出した。反応液をGC分析し、反応率を求めると8%であった。また、反応の進行により生じたトリメチルエトキシシランと原料の(トリエトキシシリルメチル)(トリエトキシシリルプロピル)アミンまたは生成物である2,2-ジエトキシ-N-トリエトキシシリルメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンと反応したジシロキサン化合物が生じていた。
【0059】
実施例1~3と比較例1および2を比較すると、本発明の製造方法は短時間で高い反応率に到達していることがわかる。特に比較例1においては、環化率が十分でないため、蒸留精製により望みの環状シラザン化合物と原料を分離する必要がある。また、比較例2では、反応により生じた低沸点成分を除くという追加操作を行わないと、高い転換率に到達していない。
実施例7および8並びに比較例3および4を比較すると、本発明の製造方法では、良好な反応率で目的物が得られるのに対して、従来の方法では反応率が非常に低いまたは副反応が起きていることがわかる。
【0060】
特に実施例8および9で得られた環状シラザン化合物は、分子内にアミノメチルアルコキシシリル構造を有しており、アミノプロピルアルコキシシリル構造よりも反応性が非常に高いことが知られている。このため、加水分解性が極めて高く、速硬化性材料等への応用が期待される。