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特許7597029車両用外装部材、及び遠赤外カメラ付き車両用外装部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】車両用外装部材、及び遠赤外カメラ付き車両用外装部材
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/02 20060101AFI20241203BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20241203BHJP
   C03C 4/10 20060101ALI20241203BHJP
   C03C 3/32 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B60J1/02 Z
B60J1/00 G
C03C4/10
C03C3/32
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021533875
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2020024384
(87)【国際公開番号】W WO2021014857
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2019136326
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 達雄
(72)【発明者】
【氏名】北岡 賢治
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0216768(US,A1)
【文献】国際公開第2015/137518(WO,A1)
【文献】特開2016-001870(JP,A)
【文献】特開2018-119856(JP,A)
【文献】特開2015-175745(JP,A)
【文献】特開2008-236062(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/02
B60J 1/00
C03C 4/10
C03C 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠赤外カメラを備える車両に取り付けられる、遮光領域を備える車両用外装部材であって、
前記遮光領域内に、開口部と、前記開口部内に配置された遠赤外線透過部材とを有する遠赤外線透過領域をさらに備え、
前記遠赤外線透過部材は、波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率が25%以上であり、前記遠赤外線透過部材の車外側の面内の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さが80mm以下であり、
前記遠赤外カメラの光軸方向に前記遠赤外線透過部材を投影して得られる投影図の内側に形成される円の内最も大きい円の直径が12mm以上であり、前記遠赤外線透過部材の平均厚みが1.5mm以上であり、
前記遠赤外線透過部材と前記開口部との間には、0.2mm以上1.5mm以下のギャップがある、
車両用外装部材。
【請求項2】
車両用窓部材である請求項1に記載の車両用外装部材。
【請求項3】
車両のピラー用外装部材である請求項1に記載の車両用外装部材。
【請求項4】
前記遠赤外線透過部材は、ZnS、Ge、Si、カルコゲナイドガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用外装部材。
【請求項5】
前記遠赤外線透過部材の車外側の面及び車内側の面の少なくとも一方は1~12層の反射防止膜を備え、前記反射防止膜のうち最も車外側の層は、ダイヤモンドライクカーボン膜である請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用外装部材。
【請求項6】
前記遠赤外線透過部材の車外側の面は、前記遮光領域の車外側の面と面一に形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用外装部材。
【請求項7】
前記遠赤外線透過部材はウレタン系接着剤及び/又はアクリル系接着剤により取り付けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用外装部材。
【請求項8】
車内側の面における前記開口部の面積が、車外側の面における前記開口部の面積より小さい、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用外装部材。
【請求項9】
前記遮光領域内に、可視光透過率が70%以上である可視光透過領域をさらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用外装部材。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用外装部材と、遠赤外カメラとを備え、
前記遠赤外カメラは前記遠赤外線透過領域を通して外部の熱画像を撮像できるように前記車両用外装部材に取り付けられている、遠赤外カメラ付き車両用外装部材。
【請求項11】
請求項9に記載の車両用外装部材と、遠赤外カメラと、可視光カメラとを備え、前記遠赤外カメラは前記遠赤外線透過部材を通して外部の熱画像を撮像できるように前記車両用外装部材に取り付けられており、前記可視光カメラは前記可視光透過領域を通して外部の画像を撮像できるように前記車両用外装部材に取り付けられている、遠赤外カメラ付き車両用外装部材。
【請求項12】
前記遠赤外カメラの光軸と前記可視光カメラの光軸とが略平行であり、これらの光軸間の距離が20cm以下である、請求項11に記載の遠赤外カメラ付き車両用外装部材。
【請求項13】
前記可視光カメラは第1カメラと第2カメラとを備えるステレオカメラであり、前記遠赤外カメラは前記第1カメラと前記第2カメラの間に位置する請求項11に記載の遠赤外カメラ付き車両用外装部材。
【請求項14】
前記遠赤外カメラはブラケットを介して前記車両用外装部材に取り付けられており、前記ブラケット内部は真空に保たれている、又は、断熱材が充填されている、請求項10に記載の遠赤外カメラ付き車両用外装部材。
【請求項15】
前記遠赤外カメラはブラケットを介して前記車両用外装部材に取り付けられており、前記ブラケット内の温度を調節するための温度調節器をさらに備える、請求項10に記載の遠赤外カメラ付き車両用外装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用外装部材、及び遠赤外カメラ付き車両用外装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の安全性向上を目的に、自動的各種センサが取り付けられる場合がある。自動車に取り付けられるセンサとしては、カメラ、LiDAR(Light Detecting and Ranging)、ミリ波レーダー、赤外線センサ等が挙げられる。
【0003】
赤外線は、その波長帯域により、近赤外(例えば、波長0.7μm~2μm)、中赤外(例えば、波長3μm~5μm)、及び遠赤外(例えば、波長8μm~13μm)に分類される。これらの赤外線を検出する赤外線センサとしては、近赤外ではタッチセンサ、近赤外線カメラやLiDAR、中赤外ではガス分析や中赤外分光分析(官能基分析)、遠赤外ではナイトビジョンやサーモビュワー(以降、遠赤外カメラ)などが挙げられる。
【0004】
自動車の窓ガラスは通常、波長8μm~13μmといった遠赤外線は透過しないため、遠赤外カメラは従来、例えば特許文献1のように、車室外、フロントグリルに設置される場合が多かった。しかし、遠赤外カメラを車室外に設置する場合、堅牢性、耐水性、防塵性等を確保するために、より構造が複雑になり、高コストに繋がっていた。遠赤外カメラを車室内、しかもワイパーの稼働エリアに設置することで、窓ガラスにより遠赤外カメラが保護されるため、このような課題を解決することができるが、上記のとおり窓ガラスの遠赤外線透過率の問題がある為、従来遠赤外カメラを車室内に配置することはできなかった。
【0005】
特許文献2においては上記の要請に応えるため、窓ガラスの一部に貫通孔を開けて当該貫通孔に赤外線透過性の部材を充填した窓部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2003/0169491号明細書
【文献】英国特許出願公開第2271139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に示すような窓部材においては、貫通孔が大きすぎると窓部材の強度の低下を招き、また、充填する赤外線透過部材の使用量が増加するためコストの増加を招く。一方、貫通孔が小さすぎると遠赤外カメラに届く遠赤外線放射量が減少し、得られる熱画像に輝度低下とボケが生じる。すなわち、熱画像の鮮明度が低下する。しかしながら特許文献2では貫通孔のサイズの検討は十分になされておらず、したがって未だ実用上十分な強度、コスト及び遠赤外カメラの視野を備える窓部材の具体的な構成は明らかになっていなかった。
【0008】
本発明は上記に鑑み、強度及びコストに優れ、さらに遠赤外カメラにより得られる熱画像の鮮明度が十分に確保された窓部材等の車両用外装部材を提供することを目的とする。
また、当該車両用外装部材に遠赤外カメラが取り付けられた遠赤外カメラ付き車両用外装部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の車両用外装部材は、遠赤外カメラを備える車両に取り付けられる、遮光領域を備える車両用外装部材であって、遮光領域内に、開口部と、開口部内に配置された遠赤外線透過部材とを有する遠赤外線透過領域をさらに備え、遠赤外線透過部材は、波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率が25%以上であり、遠赤外線透過部材の車外側の面内の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さが80mm以下であり、遠赤外カメラの光軸方向に遠赤外線透過部材を投影して得られる投影図の内側に形成される円の内最も大きい円の直径が12mm以上であり、遠赤外線透過部材の平均厚みが1.5mm以上である。
本発明の一態様において、車両用外装部材は車両用窓部材であってもよい。
本発明の一態様において、車両用外装部材は車両のピラー用外装部材であってもよい。
本発明の車両用外装部材の一態様において、遠赤外線透過部材は、ZnS、Ge、Si、カルコゲナイガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料からなってもよい。
本発明の車両用外装部材の一態様において、遠赤外線透過部材の車外側の面は3~12層の反射防止膜を備え、反射防止膜のうち最も車外側の層は、ダイヤモンドライクカーボン膜であってもよい。
本発明の車両用外装部材の一態様において、遠赤外線透過部材の車外側の面は、遮光領域の車外側の面と面一に形成されていてもよい。
本発明の車両用外装部材の一態様において、遠赤外線透過部材はウレタン系接着剤及び/又はアクリル系接着剤により取り付けられていてもよい。
本発明の車両用外装部材の一態様において、車内側の面における開口部の面積が、車外側の面における開口部の面積より小さくてもよい。
本発明の車両用外装部材の一態様において、遮光領域内に、可視光透過率が70%以上である可視光透過領域をさらに備えてもよい。
また、本発明の遠赤外カメラ付き車両用外装部材は、本発明の車両用外装部材と、遠赤外カメラとを備え、遠赤外カメラは遠赤外線透過領域を通して外部の熱画像を撮像できるように車両用外装部材に取り付けられている。
本発明の遠赤外カメラ付き車両用外装部材の一態様は、本発明の車両用外装部材と、遠赤外カメラと、可視光カメラとを備え、遠赤外カメラは遠赤外線透過部材を通して外部の熱画像を撮像できるように車両用外装部材に取り付けられており、可視光カメラは可視光透過領域を通して外部の画像を撮像できるように車両用外装部材に取り付けられていてもよい。
本発明の遠赤外カメラ付き車両用外装部材の一態様において、遠赤外カメラの光軸と可視光カメラの光軸とが略平行であり、これらの光軸間の距離が20cm以下であってもよい。
本発明の遠赤外カメラ付き車両用外装部材の一態様において、可視光カメラは第1カメラと第2カメラとを備えるステレオカメラであり、遠赤外カメラは第1カメラと第2カメラの間に位置してもよい。
本発明の遠赤外カメラ付き車両用外装部材の一態様において、遠赤外カメラはブラケットを介して車両用外装部材に取り付けられており、ブラケット内部は真空に保たれていてもよく、又は、断熱材が充填されていてもよい。
本発明の遠赤外カメラ付き車両用外装部材の一態様において、遠赤外カメラはブラケットを介して車両用外装部材に取り付けられており、ブラケット内の温度を調節するための温度調節器をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強度及びコストに優れ、さらに遠赤外カメラにより得られる熱画像の鮮明度が十分に確保された窓部材等の車両用外装部材が提供される。また、当該車両用外装部材に遠赤外カメラが取り付けられた遠赤外カメラ付き車両用外装部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の車両用外装部材の一実施形態の概略平面図である。
図2図2は、図1のA-A線に沿った断面図である。
図3図3は、本発明の車両用外装部材の一実施形態の概略断面図である。
図4図4は、本発明の車両用外装部材の一実施形態の概略断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る車両用外装部材と遠赤外カメラの位置関係を説明する概略断面図である。
図6図6は、図5における投影図を説明する概略図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る車両用外装部材と遠赤外カメラの位置関係を説明する概略断面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る車両用外装部材と遠赤外カメラの位置関係を説明する概略断面図である。
図9図9は、本発明の遠赤外カメラ付き車両用外装部材の一実施形態の概略断面図である。
図10図10は、実施例における遠赤外線透過部材B、D、F、H、I、Jの赤外線透過スペクトルである。
図11図11は、実施例において実施した試験(熱画像視認評価)における、歩行者との位置関係を示す熱画像である。
図12図12は、実施例において実施した試験(熱画像視認評価)における、例1(α=30°及び60°)、例5(α=30°)、例10(α=30°及び45°)、例12(α=30°)、例13(α=30°)、例15(α=30°)で得られた歩行者を切り出した熱画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0013】
図1に本発明の車両用外装部材の一実施形態の概略平面図を、図2図1のA-A線に沿った断面図をそれぞれ示す。本実施形態に係る車両用外装部材は、車両のフロントガラスに適用される窓部材であり、特に遠赤外カメラを備える車両に取り付けられる窓部材である。
なお、本発明の車両用外装部材の実施形態は、車両のフロントガラスに適用される窓部材に限定されない。例えばリアガラスやサイドガラスに適用される窓部材であってもよく、また、窓部材以外であってもよく、例えばピラー用の外装部材であってもよい。
【0014】
本実施形態の窓部材1を構成するガラス基体2は、単板のガラスであってもよく、合わせガラスであってもよい。また、ガラス基体2には物理強化や化学強化等の強化処理が施されていてもよい。
【0015】
本実施形態の窓部材1は、遮光領域3を備える。通常、窓部材1は、中央部にドライバーの視野を確保するための透光領域4を備え、その周囲を囲うように遮光領域3を備える。また、遠赤外カメラやその他のセンサは通常窓部材1の上部に取り付けられるが、図1に示すようにこれらの取り付けられる部位の周辺にも遮光領域3が設けられる。このように遮光領域3が設けられることにより各種センサが太陽光から保護されるため好ましい。また、各種センサの配線が車外から見えなくなるので、意匠性の観点からも好ましい。
【0016】
遮光領域3は、窓部材1を構成するガラス基体2に遮光層5を設けることにより形成される。すなわち、遮光領域3は、窓部材1の平面視において、ガラス基体2が遮光層5を備える領域である。
遮光層5としては、例えばセラミックス遮光層や遮光フィルムを用いることができる。セラミックス遮光層としては、例えば黒色セラミックス層等の従来公知の材料からなるセラミックス層を用いることができる。遮光フィルムとしては、例えば遮光ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、遮光ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、遮光ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム等を用いることができる。
遮光層5は、通常ガラス基体2の車内側の面に形成されるが、車外側の面に形成されてもよく、また、ガラス基体2が合わせガラスである場合には、合わせガラスを形成する2枚のガラスの中間に形成されてもよい。
【0017】
また、本実施形態の窓部材1は、遮光領域3内に、遠赤外線透過領域6を備える。
遠赤外線透過領域6は、遮光領域3内に形成された開口部7と、開口部7内に配置された遠赤外線透過部材8とを有する領域である。
【0018】
遠赤外線透過部材8の波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率が15%未満であると、遠赤外線透過領域6の遠赤外線透過率が不足し、遠赤外カメラの性能が十分に発揮されない。したがって、本実施形態における遠赤外線透過部材8の波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率は25%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上とする。なお、遠赤外線の平均透過率を85%以上に向上させるためには反射防止膜が必須となる。
【0019】
遠赤外線透過部材の材料は、上記の透過率を満足すれば特に限定はされないが、例えばZnS、Ge、Si、カルコゲナイガラス等が挙げられる。
カルコゲナイガラスの好ましい組成としては、
原子%表示で、
Ge+Ga;7%~25%、
Sb;0%~35%、
Bi;0%~20%、
Zn;0%~20%、
Sn;0%~20%、
Si;0%~20%、
La;0%~20%、
S+Se+Te;55%~80%、
Ti;0.005%~0.3%、
Li+Na+K+Cs;0%~20%、
F+Cl+Br+I;0%~20%含有する組成である。そして、このガラスは、140℃~550℃のガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。
【0020】
遠赤外線透過部材8を開口部7に取り付ける方法は特に限定されないが、例えばウレタン系接着剤及び/又はアクリル系接着剤等の接着剤により取り付けることができる。一般的に、自動車の窓ガラスと遠赤外線透過部材の熱膨張差は大きいため、これを緩和でき、さらに接着強度、耐衝撃性、耐環境特性に優れる接着剤を選択することが好ましい。耐環境特性を向上させるために、車外側の接着面を樹脂等で保護しても良い。
【0021】
遠赤外線透過部材8と開口部7の間には、0.2~1.5mmのギャップがあることが好ましい。当該ギャップが0.2mm未満では、自動車の窓ガラスと遠赤外線透過部材の熱膨張差により、窓ガラスが光学的に歪む、もしくは窓ガラス及び/又は遠赤外線透過部材が破損するおそれがある。当該ギャップはより好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。一方で、当該ギャップが1.5mm超では接着強度や耐衝撃性が損なわれるおそれがある。当該ギャップはより好ましくは1.2mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
【0022】
遠赤外線透過部材8の車外側の面は、図2に示すように遮光領域3の、車外側の面と面一に形成されていることが好ましい。車外側の面と面一に形成されていないと、例えば車両のフロントガラスに適用される場合、ワイパーの拭き取り効果が損なわれるおそれがある。また、フロントガラス以外に適用される場合も、段差があることで車両としてのデザイン性が損なわれる、段差に砂埃等が堆積する等のおそれがある。さらに遠赤外線透過部材は、適用される車両用外装部材の曲面形状に合わせて成形されていることが好ましい。遠赤外線透過部材の成形方法は特に限定されないが、曲面形状や部材に応じて、研磨もしくはモールド成形が選択される。
【0023】
遠赤外線透過部材8は、車外側の面や車内側の面にコーティングがなされていてもよい。例えば、車外側もしくは車内側、または両側の面に、すなわち車外側の面と車内側の面との少なくとも一方に、反射防止膜を備えてもよい。反射防止膜としては、1~12層の反射防止膜が好ましく、材質は特に限定されないが、Ge、Si、ZnS、ZnSe、As、AsSe、金属酸化物(Al、Bi、CeO、CuO、HfO、MgO、SiO、SiO、TiO、TiO、Ti、Y、ZrO)、水素化炭素、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、フッ化金属(MgF、CaF、SrF、BaF、PbF、LaF、YF)が好ましい。最も車外側の層は耐擦傷性の観点から、モース硬度7以上、かつ遠赤外線の透過率が高い膜が好ましい。最も車外側の層はダイヤモンドライクカーボン膜であることが特に好ましい。
【0024】
遠赤外線透過部材8の形状は特に限定されないが、開口部7の形状にあわせた板状の形状であることが好ましい。すなわち、例えば開口部7が円形である場合は、遠赤外線透過部材8は円板状(円柱状)であることが好ましい。
また、図3に示すように、本実施形態の窓部材1においては、車内側の面における開口部7の面積が、車外側の面における開口部7の面積より小さい構成とし、遠赤外線透過部材8の形状もこれにあわせて車内側の面における面積が車外側の面における面積より小さくすることが好ましい。このような構成とすることにより、車外側からの衝撃に対する強度が向上する。図4に示すように本実施形態の窓部材のガラス基板が第1のガラス2a(車外側)と第2のガラス2b(車内側)とを備える合わせガラスである場合は、第1のガラス2aの開口部7aの面積を、第2のガラス2bの開口部7bの面積より大きくし、第1のガラス2aの開口部7aのサイズに合わせた遠赤外線透過部材8を第1のガラス2aの開口部7a内に配置すればよい。
また、強度の観点から遠赤外線透過部材8の厚みは1.5mm以上とし、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上とする。波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率が確保される限りは遠赤外線透過部材8の厚みの上限は特に限定されないが、通常は5.0mm以下である。
なお、遠赤外カメラの視野角の広角化と、機械的特性の向上との両立を図る等の理由から、遠赤外線透過部材をレンズ形状にしてもよい。このような構成とすると、遠赤外線透過部材の面積が小さくても効率的に遠赤外光を集光することができるため好ましい。この場合、レンズ形状の遠赤外線透過部材の個数は1~3個が好ましく、典型的には2個が好ましい。さらにレンズ形状の遠赤外線透過部材は、予め調芯されモジュール化され、遠赤外カメラを車両用外装部材に接着させる筐体、もしくはブラケットと一体化されていることが特に好ましい。
【0025】
遠赤外線透過部材8の車外側の面が大きすぎると、窓部材の強度が不足する。したがって、本実施形態における遠赤外線透過部材8の車外側の面内の任意の2点を結ぶ直線のうち最長の直線の長さは80mm以下とし、好ましくは70mm以下、より好ましくは65mm以下とする。なお、当該長さは、遠赤外線透過部材8の車外側の面の形状が円形である場合は、直径にあたる長さである。
【0026】
また、本実施形態の窓部材1に取り付けられた遠赤外カメラに届く遠赤外線放射量は、遠赤外カメラの光軸方向に遠赤外線透過部材8を投影して得られる投影図の内側に形成される円のうち最も大きい円のサイズに依存する。以下に、図面を参照して詳細に説明する。
図5は、窓部材1における遠赤外線透過領域6の周辺の拡大断面図である。窓部材1は、通常水平方向Hに対して所定の角度α傾いた状態で車両に取り付けられる。一方、遠赤外カメラ9は通常光軸Xがほぼ水平となるように取り付けられる。したがって、遠赤外カメラ9に届く遠赤外線放射量は、遠赤外線透過部材8のサイズのみならず、この傾斜角αにも依存することとなる。このことを考慮すると、遠赤外カメラ9に届く遠赤外線放射量を検討する際には、遠赤外カメラ9の光軸X方向に遠赤外線透過部材8を光軸Xに垂直な投影面10に投影して得られる投影図11の大きさを検討することが妥当である。また、遠赤外カメラ9の視野は通常円形であることから、当該投影図11の内側に形成される円のうち最も大きい円12のサイズを検討することが妥当である。図6に、図5における投影面10に投影された投影図11、及び当該投影図11の内側に形成される円のうち最も大きい円12を説明する概略図を示す。
本発明者らは実験を繰り返し、当該投影図11の内側に形成される円のうち最も大きい円12の直径が12mm未満であると遠赤外カメラ9に届く遠赤外線放射量が減少し、得られる熱画像に輝度低下とボケが生じ、熱画像の鮮明度が十分に確保できないことを見出した。
したがって、本実施形態の窓部材1においては、遠赤外カメラ9の光軸X方向に遠赤外線透過部材8を投影して得られる投影図11の内側に形成される円のうち最も大きい円12の直径を12mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上とする。
なお、遠赤外カメラ9の光軸X方向に遠赤外線透過部材8を投影して得られる投影図11とは、遠赤外線透過部材8の車外側の面の形状を、光軸Xに垂直な平面に対して光軸X方向に投影して得られる図形をいうものとする。
【0027】
なお、遠赤外線透過部材8の大きさやガラス基体2の厚みにも依存するが、本実施形態の窓部材1を車両に取り付ける際の水平方向に対する傾きの角度αが小さすぎると以下に示すような不都合が生じる。すなわち、角度αが小さすぎる場合、窓部材1を光軸Xと平行な方向に観察した場合において、遠赤外線透過部材8のみを備える領域、すなわち、ガラス基体や遮光層を備えない領域(図7における領域Y)が小さくなる。この領域Yが小さすぎると、遠赤外カメラにより得られる熱画像の鮮明度を十分に確保できなくなるおそれがある。したがって、角度αは、この領域Yが小さすぎないような角度を適宜選択する。
また、ガラス基板が第1のガラス2a(車外側)と第2のガラス2b(車内側)とを備える合わせガラスである場合は、図8に示すように、第1のガラス2aの開口部7aの中心と第2のガラス2bの開口部7b中心を適宜ずらしてもよい。このような構成とすることにより、特に角度αが小さい場合でも領域Yの大きさを確保するために開口部7aや開口部7bを過度に大きくする必要がなくなるため、特に高い強度と高い鮮明度を両立できる。
【0028】
また、本実施形態の窓部材1は、遮光領域3内に可視光透過率が70%以上である可視光透過領域13を更に備えることが好ましい。可視光透過領域13を備えることにより、当該領域から外部を撮像するように可視光カメラを取り付けることができる。
遠赤外カメラに加えて更に可視光カメラを取り付けることにより、これら2つのカメラにより得られる情報をあわせて車外の情報を認識できるようになり、物体認識の精度向上に寄与できる。また、遮光領域3内に遠赤外線透過領域6と可視光透過領域13とを設けることにより、遠赤外カメラと可視光カメラを近い位置に取り付けることができるため、それぞれのカメラから得られるデータを演算処理する際の負荷が軽減され、また電源や信号ケーブルの取り廻しも好適となる。
可視光透過領域13は遮光領域3内において部分的に遮光層5を備えない領域である。
また、本実施形態の窓部材1は、可視光カメラ以外にも、例えばLiDARやミリ波レーダーをさらに備えてもよい。
【0029】
<遠赤外カメラ付き車両用外装部材>
次に、本発明の遠赤外カメラ付き車両用外装部材について説明する。
図9に、本発明の遠赤外カメラ付き車両用外装部材の一実施形態の概略断面図を示す。本実施形態に係る遠赤外カメラ付き車両用外装部材100は、車両のフロントガラスに適用される窓部材1に遠赤外カメラ9が取り付けられた、遠赤外カメラ付き窓部材である。
なお、本実施形態における車両用外装部材は、先述と同様に車両のフロントガラスに適用される窓部材に限定されない。
【0030】
本実施形態の遠赤外カメラ付き窓部材100は、窓部材1と、遠赤外カメラ9とを備える。窓部材1については、先述のとおりである。遠赤外カメラ9は、窓部材1の遠赤外線透過領域を通して外部の熱画像を撮像できるように窓部材1に取り付けられている。
遠赤外カメラ9の種類は特に限定されず、公知の遠赤外カメラを用いることができる。遠赤外カメラ9は、例えばブラケット14により窓部材1に取り付けられる。遠赤外カメラ9は、通常光軸Xが略水平となるように取り付けられる。
【0031】
遠赤外カメラ9により得られる画像(熱画像)を鮮明にするには、遠赤外カメラ9の温度が一定に保たれることが好ましい。
遠赤外カメラ9の温度を一定に保つ手段として、ブラケット14内の断熱性を高くすることが挙げられる。ブラケット14内の断熱性を高くするには、ブラケット14の内部を真空に保ったり、ブラケット14の内部に断熱材を充填したりすればよい。すなわち、本実施形態の遠赤外カメラ付き窓部材100においては、遠赤外カメラ9はブラケット14を介して窓部材1に取り付けられており、ブラケット14の内部は真空に保たれている、又は、断熱材が充填されていることが好ましい。
また、遠赤外カメラ9の温度を一定に保つ手段として、温度調節器によりブラケット14内の温度を調整することが挙げられる。すなわち、本実施形態の遠赤外カメラ付き窓部材100においては、遠赤外カメラ9はブラケット14を介して窓部材に取り付けられており、ブラケット14内の温度を調節するための温度調節器をさらに備えることが好ましい。
【0032】
また、窓部材1が可視光透過領域13を有する場合は、本実施形態の遠赤外カメラ付き窓部材100は、さらに当該可視光透過領域13を通して外部の画像を撮像できるように窓部材1に取り付けられている可視光カメラを備えることが好ましい。
遠赤外カメラに加えて更に可視光カメラを備えることにより、先述のとおりこれら2つのカメラにより得られる情報をあわせて車外の情報を認識できるようになる。
また、この場合、遠赤外カメラの光軸と可視光カメラとの光軸とを略平行にし、また、これらの光軸間の距離が20cm以下にすることが好ましい。なお、略平行とは、これらの光軸が完全な平行である場合のみならず、誤差程度にわずかに平行からずれる場合も含む概念である。このようにすることで、遠赤外カメラの光軸と可視光カメラの視野の中心がほぼ一致するため、これらのカメラから得られた画像を組み合わせて情報処理する際に好ましい。
【0033】
また、可視光カメラは第1カメラと第2カメラとを備えるステレオカメラであってもよい。この場合、遠赤外カメラは第1カメラと第2カメラとの間に配置することが好ましい。また、この場合、遠赤外カメラ、第1カメラ及び第2カメラの全ての光軸を略平行にし、またいずれのカメラの光軸間の距離も20cm以下とすることが好ましい。
さらに、可視光カメラ以外にも、例えばLiDAR、ミリ波レーダーをさらに備えてもよい。この場合も、それぞれのセンサは信号の干渉を抑制した上で近接配置することが好ましい。
【実施例
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0035】
<遠赤外線透過部材の準備>
Si、Ge、ZnS、またはカルコゲナイドガラスからなる、サイズの異なる円柱状の遠赤外線透過部材(遠赤外線透過部材A~Q)を準備した。各遠赤外線透過部材の材料、直径L及び厚みtを表1~3に示す。
なお、遠赤外線透過部材Jは、以下のようにして作製した。まず、原子%表記でGa 6.0%、Sb 24.0%、Sn 4.0%、S 62.0%、Cs 2.0%、Cl 2.0%となるようにガラス原料を混合し、内径25mmの石英ガラス管に封入して750℃まで昇温して4時間溶解させた。その後、溶解させたガラスを急冷、徐冷して得られたインゴットを石英ガラス管ごと切断し、研磨して、遠赤外線透過部材Jを得た。
さらに、遠赤外線透過部材Oは、車外側の面にGe、Si、YFからなる5層の反射防止膜を、遠赤外線透過部材Pは、車外側の面にDLC、Siの2層、車内側の面にZnS、Geの5層からなる反射防止膜を、遠赤外線透過部材Qは、車外側の面にDLCの1層、車内側の面にZnS、Geの2層からなる反射防止膜をそれぞれ蒸着法により付与した。
【0036】
<波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率の測定>
各遠赤外線透過部材の赤外線透過スペクトルを、フーリエ変換型赤外分光装置(ThermoScientific社製、商品名:Nicolet iS10)を用いて測定し、得られた赤外線透過スペクトルから、波長8~13μmにおける平均透過率を求めた。結果を表1及び表2に示す。また、図10に遠赤外線透過部材B、D、F、H、I、Jの赤外線透過スペクトルを示す。
【0037】
<窓部材の製造>
(例1)
まず、300mm×300mm、厚み2.0mmのソーダライムガラスの間に厚み0.76mmのPVBを配置した合わせガラスを準備した。次いで、合わせガラスの中心から、辺の方向に100mm離れた点を中心として、直径14mmの貫通孔を形成した。
次いで、ウレタン系接着剤を用いて、貫通孔に遠赤外線透過部材Aを外側の面と面一になるように取り付けて、例1の窓部材を得た。なお、ウレタン系接着剤は常温で5日間乾燥させることにより硬化させた。
【0038】
(例2、3)
貫通孔の直径を26.5mmとしたこと、及び、それぞれ遠赤外線透過部材B、Cを取り付けたこと以外は例1と同様にして、例2、3の窓部材を得た。
【0039】
(例4)
アクリル系接着剤を用いたこと以外は例3と同様にして、例4の窓部材を得た。なお、アクリル系接着剤は120℃で1時間乾燥後、常温で5日間乾燥させることにより硬化させた。
【0040】
(例5~8)
それぞれ遠赤外線透過部材D~Gを取り付けたこと以外は例2と同様にして、例5~8の窓部材を得た。
【0041】
(例9)
アクリル系接着剤を用いたこと以外は例8と同様にして、例9の窓部材を得た。なお、アクリル系接着剤は120℃で1時間乾燥後、常温で5日間乾燥させることにより硬化させた。
【0042】
(例10~13)
それぞれ遠赤外線透過部材H~Kを取り付けたこと以外は例2と同様にして、例10~13の窓部材を得た。
【0043】
(例14、15)
貫通孔の直径を51.5mmとしたこと、及び、それぞれ遠赤外線透過部材L、Mを取り付けたこと以外は例1と同様にして、例14、15の窓部材を得た。
【0044】
(例16)
貫通孔の直径を91.5mmとしたこと、及び、遠赤外線透過部材Nを取り付けたこと以外は例1と同様にして、例16の窓部材を得た。
【0045】
(例17~19)
貫通孔の直径を51.5mmとしたこと、及び、それぞれ遠赤外線透過部材O、P、Qを取り付けたこと以外は例1と同様にして、例17~19の窓部材を得た。
【0046】
<落球強度評価>
例1~19の窓部材を用いて、以下に示す落球強度評価1及び2を行った。いずれの試験も合格したものを「○」と、いずれか一方の試験でも不合格となったものを「×」と評価した。評価結果を表1及び表2に示す。(落球強度評価1)
JIS R3211,3212-2015における耐衝撃性試験に準拠した落球装置及び支持枠を用いて評価を行った。
まず、窓部材を温度23℃、相対湿度50%に保った室内に4時間保持後、外側の面が上向きになるように支持枠で固定した。次いで、窓部材の中心に、226gの鋼球を10mの高さから落下させた。この際、鋼球が窓部材を貫通せず、かつ衝撃面の反対側からの剥離破片の総質量が15g以下であれば合格とした。(落球強度評価2)
509gの鋼球を用いたこと以外は落球強度評価1と同様にして試験を行った。遠赤外線透過部材が破損したり、窓部材から脱離したりすることなく、かつ衝撃面の反対側からの剥離破片の総質量が15g以下であれば合格とした。
【0047】
<熱画像視認評価>
例1~19の窓部材を用いて、以下に示す熱画像視認評価を行った。
まず、窓部材を水平面からの角度がαとなるように設置した。次に、光軸が水平となり、かつ遠赤外透過部材の中心に来るように遠赤外カメラ(Wuhan Guide Infrared社製、Cube417(解像度:400×300、水平画角:20°、垂直画角:15°、焦点距離:19mm))を筐体が窓部材に接触するまで近付けて配置した。
次いで、外気温26℃において、図11のように窓から100mの距離に配置された歩行者を遠赤外カメラにより撮影した。得られた熱画像から歩行者を中心に20×30ピクセルを切り出し、それぞれ画像解析により熱画像コントラストを「最高輝度/最低輝度」で評価した。当該熱画像コントラストの値が大きいほど、鮮明な画像が得られたことを意味する。当該熱画像コントラストの値が3.0以上であれば、100m先の歩行者を十分に認識可能である。
例1の窓部材は、α=30°、60°及び90°で試験を行った。
例2、5、7、10、12、13及び19の窓部材は、α=30°及び45°で試験を行った。
例3、6、8、11、及び14~18の窓部材は、α=30°で試験を行った。
なお、例4及び例9はそれぞれ例3及び例8と接着剤の種類のみが異なる例であり、熱画像視認評価の結果はこれらの結果と同じであると考えられるため、試験を行わなかった。
表1及び2に、αの値、光軸方向に遠赤外線透過部材を投影して得られる投影図の内側に形成される円の内最も大きい円の直径Rの値、及び熱画像コントラストの値を示す。
また、図12に例1(α=30°及び60°)、例5(α=30°)、例10(α=30°及び45°)、例12(α=30°)、例13(α=30°)、例15(α=30°)における歩行者を切り出した熱画像を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
各例についての落球強度評価の結果について、以下に説明する。
厚みtが1mmである遠赤外線透過部材B、F、及びLを使用した例2、7、及び14は、強度が不足した。
また、厚みtは3mmであるものの直径Lが90mmである遠赤外線透過部材Nを使用した例16も、強度が不足した。
一方、厚みtが1.5mm以上であり直径Lが80mm以下である遠赤外線透過部材A、C~E、G~K、M、O~Qを使用した例1、3~6、8~13、15及び17~19は、十分に高い強度を有した。
【0052】
また、各例についての熱画像視認評価の結果について、以下に説明する。
Rがそれぞれ6.3mm、10.8mmとなる例1のα=30°、60°の試験では、十分な熱画像コントラストが得られず、図12に示すように熱画像の鮮明度が低かった。一方、Rが12.5mmである例1のα=90°の試験では、十分な熱画像コントラストが得られた。
波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率が14%である遠赤外線透過部材Eを使用した例6の試験では、十分な熱画像コントラストが得られなかった。
Rが12mm以上、かつ遠赤外線透過部材の波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率が25%以上である例2、3、5、7、8、10~19の試験では、いずれも十分な熱画像コントラストが得られた。
【0053】
上記の結果からも明らかなように、遠赤外線透過部材の厚みtが1.5mm以上、直径Lが80mm以下、波長8~13μmの遠赤外線の平均透過率が25%以上であり、光軸方向に遠赤外線透過部材を投影して得られる投影図の内側に形成される円の内最も大きい円の直径Rが12mm以上であるものは、高い強度と十分な熱画像コントラストを兼ね備えた。
本国際出願は2019年7月24日に出願した日本国特許出願2019-136326号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2019-136326号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0054】
1 車両用外装部材(窓部材);2 ガラス基体;2a 第1のガラス;2b 第2のガラス;3 遮光領域;4 透光領域;5 遮光層;6 遠赤外線透過領域;7 開口部;7a 第1のガラスの開口部;7b 第2のガラスの開口部;8 遠赤外線透過部材;9 遠赤外カメラ;10 投影面;11 投影図;12 投影図の内側に形成される円のうち最も大きい円;13 可視光透過領域;14 ブラケット;15 中間層;100 遠赤外カメラ付き窓部材;X 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12