(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】N-ビニルアセトアミドの製造方法及び熱分解装置
(51)【国際特許分類】
C07C 231/12 20060101AFI20241203BHJP
C07C 233/05 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C07C231/12
C07C233/05
(21)【出願番号】P 2021563938
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045398
(87)【国際公開番号】W WO2021117658
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2019223157
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 周平
(72)【発明者】
【氏名】山中 卓也
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/084177(WO,A1)
【文献】特開2012-140392(JP,A)
【文献】特開平5-301851(JP,A)
【文献】特開平3-181451(JP,A)
【文献】特開平3-181452(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(1-メトキシエチル)アセトアミド(MEA)を含む原料を蒸発器に供給する供給工程と、
前記蒸発器で前記原料を蒸発させ、気化原料とする蒸発工程と、
前記気化原料を過熱器に供給し、前記気化原料の過熱温度が前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点より5℃高い温度(前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点+5℃)以上200℃以下となるように過熱する過熱工程と、
前記過熱された気化原料を熱分解反応器に供給し、熱分解する熱分解工程とを含み、
前記原料中における前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの含有量が80~100質量%である、N-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項2】
N-(1-メトキシエチル)アセトアミド(MEA)を含む原料を蒸発器に供給する供給工程と、
前記蒸発器で前記原料を蒸発させ、気化原料とする蒸発工程と、
前記気化原料を過熱器に供給し、前記気化原料に対して1.0kJ/moL以上の熱量を付与して過熱する過熱工程と、
前記過熱された気化原料を熱分解反応器に供給し、熱分解する熱分解工程とを含み、
前記原料中における前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの含有量が80~100質量%である、N-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項3】
前記蒸発工程は、減圧下にて行う、請求項1又は2に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項4】
前記熱分解工程は、減圧下にて行う、請求項1~3のいずれか1項に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項5】
前記蒸発器は、流下液膜式である、請求項1~4のいずれか1項に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項6】
前記蒸発器は、強制液膜式である、請求項1~4のいずれか1項に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項7】
前記蒸発器の下流端と前記過熱器の上流端とが、第1配管を介して接続されており、
前記第1配管の下流端が、前記第1配管中で最も高位である、請求項1~6のいずれか1項に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項8】
前記過熱器の下流端と前記熱分解反応器の上流端とが、第2配管を介して接続されており、
前記第2配管の上流端が、前記第2配管中で最も高位である、請求項1~7のいずれか1項に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項9】
前記蒸発工程と前記熱分解工程との間に、前記蒸発器に供給された前記原料のうち気化しなかった液体原料及び前記気化原料の一部が液化してなる液体原料を回収する回収工程をさらに含み、
前記回収工程は、前記蒸発器と前記熱分解反応器との間に備える原料回収装置によって、前記液体原料を回収する工程である、請求項1~8のいずれか1項に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項10】
前記蒸発器の下流端と前記原料回収装置の上流端とが接合されている、請求項9に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項11】
前記原料回収装置の下流端と前記過熱器の上流端とが接合されている、請求項9又は10に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項12】
前記気化原料は、前記原料回収装置を経た後に前記熱分解反応器に供給される、請求項9から11のいずれか1項に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項13】
前記原料回収装置は、
前記気化原料を流通させる筒部と、
前記筒部内を流れる前記気化原料の流れの一部又は全部を衝突させ、前記蒸発器に供給された前記原料のうち気化しなかった液体原料及び前記気化原料の一部が液化してなる液体原料を回収する回収部と、
前記回収部によって回収された前記液体原料を前記筒部の外部に排出させる排出配管とを有する、請求項9から12のいずれか1項に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
【請求項14】
原料を蒸発して気化原料を生成可能な蒸発器と、
前記蒸発器に接続され、前記気化原料をN-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点より5℃高い温度(前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点+5℃)以上200℃以下まで過熱可能な過熱器と、
前記過熱器に接続され、前記過熱された気化原料を熱分解可能な熱分解反応器と、を備える、熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-ビニルアセトアミドの製造方法及び熱分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
N-ビニルカルボン酸アミドの製造方法に関して、これまで多くの方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の製造方法では、N-(2-アルコキシエチル)カルボン酸アミド原料を蒸発させて熱分解するN-ビニルカルボン酸アミドの製造方法が開示されている。このように、熱分解によってN-ビニルカルボン酸アミドを製造する方法においては、例えば、大気への放熱、熱分解反応器(熱分解工程)での吸熱、機械的なトラブルによる圧力の変化、熱源の供給停止等の要因によって、原料ガス(気化原料)が、蒸発器、蒸発器と熱分解反応器を接続する配管内、又は、熱分解反応器内で、再凝縮により液化し、液化した原料が高温の熱分解反応器に流入することがある。その結果、(i)液化原料が熱分解反応器のチューブ内壁を流れたり、(ii)液化原料が熱分解反応器のチューブ内壁で再蒸発する前に高分子化することでタール状又は固体状の凝集物(ハルツとも言う)が生成し、熱分解反応器のチューブの閉塞問題を引き起こし、安定運転が困難になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題を解決し、原料ガス(気化原料)が再凝縮により液化することを防止して、熱分解反応器のハルツによる閉塞問題を抑制し、長期間安定に連続運転することができるN-ビニルアセトアミドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、蒸発器(蒸発工程)と熱分解反応器(熱分解工程)との間に過熱器(過熱工程)を設け、当該過熱器(過熱工程)にて、(i)原料ガス(気化原料)の過熱温度が、N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点よりも所定温度(5℃)高い温度(N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点+5℃)以上200℃以下となるように過熱すること、及び、(ii)原料ガス(気化原料)に対して所定熱量を付与すること、の少なくともいずれかを満たすことで、原料ガス(気化原料)が再凝縮により液化することを防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)~(15)を提供するものである。
(1)N-(1-メトキシエチル)アセトアミド(MEA)を含む原料を蒸発器に供給する供給工程と、前記蒸発器で前記原料を蒸発させ、気化原料とする蒸発工程と、 前記気化原料を過熱器に供給し、前記気化原料の過熱温度が前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点より5℃高い温度(前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点+5℃)以上200℃以下となるように過熱する過熱工程と、前記過熱された気化原料を熱分解反応器に供給し、熱分解する熱分解工程とを含み、前記原料中における前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの含有量が80~100質量%である、N-ビニルアセトアミドの製造方法。
(2)N-(1-メトキシエチル)アセトアミド(MEA)を含む原料を蒸発器に供給する供給工程と、前記蒸発器で前記原料を蒸発させ、気化原料とする蒸発工程と、前記気化原料を過熱器に供給し、前記気化原料に対して1.0kJ/moL以上の熱量を付与して過熱する過熱工程と、前記過熱された気化原料を熱分解反応器に供給し、熱分解する熱分解工程とを含み、前記原料中における前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの含有量が80~100質量%である、N-ビニルアセトアミドの製造方法。
(3)前記蒸発工程は、減圧下にて行う、上記(1)又は(2)に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(4)前記熱分解工程は、減圧下にて行う、上記(1)~(3)のいずれかに記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(5)前記蒸発器は、流下液膜式である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(6)前記蒸発器は、強制液膜式である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(7)前記蒸発器の下流端と前記過熱器の上流端とが、第1配管を介して接続されており、前記第1配管の下流端が、前記第1配管中で最も高位である、上記(1)~(6)のいずれかに記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(8)前記過熱器の下流端と前記熱分解反応器の上流端とが、第2配管を介して接続されており、前記第2配管の上流端が、前記第2配管中で最も高位である、上記(1)~(7)のいずれかに記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(9)前記蒸発工程と前記熱分解工程との間に、前記蒸発器に供給された前記原料のうち気化しなかった液体原料及び前記気化原料の一部が液化してなる液体原料を回収する回収工程をさらに含み、前記回収工程は、前記蒸発器と前記熱分解反応器との間に備える原料回収装置によって、前記液体原料を回収する工程である、上記(1)~(8)のいずれかに記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(10)前記蒸発器の下流端と前記原料回収装置の上流端とが接合されている、上記(9)に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(11)前記原料回収装置の下流端と前記過熱器の上流端とが接合されている、上記(9)又は(10)に記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(12)前記気化原料は、前記原料回収装置を経た後に前記熱分解反応器に供給される、上記(9)から(11)のいずれかに記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(13)前記原料回収装置は、前記気化原料を流通させる筒部と、前記筒部内を流れる前記気化原料の流れの一部又は全部を衝突させ、前記蒸発器に供給された前記原料のうち気化しなかった液体原料及び前記気化原料の一部が液化してなる液体原料を回収する回収部と、前記回収部によって回収された前記液体原料を前記筒部の外部に排出させる排出配管とを有する、上記(9)から(12)のいずれかに記載のN-ビニルアセトアミドの製造方法。
(14)原料を蒸発して気化原料を生成可能な蒸発器と、前記蒸発器に接続され、前記気化原料を前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点より5℃高い温度(前記N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点+5℃)以上200℃以下まで過熱可能な過熱器と、前記過熱器に接続され、前記過熱された気化原料を熱分解可能な熱分解反応器と、を備える、熱分解装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、原料ガス(気化原料)が再凝縮により液化することを防止して、熱分解反応器のハルツによる閉塞問題を抑制し、長期間安定に連続運転することができるN-ビニルアセトアミドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のN-ビニルアセトアミドの製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明のN-ビニルアセトアミドの製造方法において、蒸発器が流下液膜式蒸発器である場合の模式的全体図である。
【
図3】本発明のN-ビニルアセトアミドの製造方法において、蒸発器が強制液膜式蒸発器である場合の模式的全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、好ましいとする規定は任意に選択でき、好ましいとする規定同士の組み合わせはより好ましいといえる。
本明細書において、「XX~YY」との記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0009】
〔N-ビニルアセトアミドの製造方法〕
本発明の実施の形態に係るN-ビニルアセトアミドの製造方法は、
図1に示すように、供給工程S1と、蒸発工程S2と、任意の回収工程S3と、過熱工程S4と、熱分解工程S5とを含む。以下に、本発明の実施の形態に係るN-ビニルアセトアミドの製造方法の詳細について説明する。
【0010】
(供給工程S1)
供給工程S1は、N-(1-メトキシエチル)アセトアミド(MEA)を含む原料を蒸発器に供給する工程である。
【0011】
本発明の実施の形態に係るN-ビニルアセトアミドの製造方法は、原料の一部又は全部として、下記構造式(1)で表されるN-(1-メトキシエチル)アセトアミドを用いる。
【化1】
原料中におけるN-(1-メトキシエチル)アセトアミドの含有量としては、80~100質量%である限り、特に制限はないが、90~100質量%が好ましく、95~100質量%がより好ましい。
原料中におけるN-(1-メトキシエチル)アセトアミド以外のその他の成分としては、特に制限はなく、例えば、アセトアミド、メタノール、などが挙げられる。
【0012】
供給工程S1において、蒸発器への原料の供給速度は、蒸発器のサイズ及び能力にもよるが、原料を安定して蒸発させる観点から、5~350kg/hであることが好ましく、10~150kg/hであることがより好ましく、15~80kg/hであることがさらに好ましい。
【0013】
(蒸発工程S2)
蒸発工程S2は、蒸発器で原料を蒸発させ、気化原料とする工程である。
蒸発工程S2で用いる蒸発器としては、特に制限されないが、原料の蒸発を効率よく実施する観点から、流下液膜式蒸発器及び強制液膜式蒸発器のいずれかであることが好ましい。
【0014】
蒸発工程S2は、減圧下又は常圧下で行うことができるが、減圧下にて行うことが好ましい。蒸発工程S2における反応圧力は、具体的には、1~30kPaで行うことが好ましく、3~25kPaで行うことがより好ましく、5~22kPaで行うことがさらに好ましい。
蒸発工程S2は、加熱蒸発して気化原料とする温度で行うことを要し、具体的には、100~200℃で行うことが好ましく、110~190℃で行うことがより好ましく、120~180℃で行うことがさらに好ましい。
【0015】
蒸発工程S2においては、蒸発器の伝熱面積をより小さくして蒸発器をより小型化する観点からは、原料を蒸発させるのに最低限必要な熱量を付与することが好ましい。
蒸発工程S2で付与された熱量が原料を蒸発させるのに最低限必要な熱量を超過した場合は、大気への放熱や熱分解反応工程における吸熱に備えて、より十分な熱量が付与されることとなる。
【0016】
(回収工程S3)
回収工程S3は、蒸発工程S2と熱分解工程S5との間に、蒸発器に供給された原料のうち気化しなかった液体原料及び気化原料の一部が液化してなる液体原料を回収する任意の工程である。気化した状態の気化原料は熱分解工程へ供される。なお、この回収工程S3は、蒸発器と熱分解反応器との間に備える原料回収装置によって行われることが好ましい。
図1では、蒸発工程S2、回収工程S3、過熱工程S4の順であるが、これに限定されるものではなく、例えば、蒸発工程S2、過熱工程S4、回収工程S3の順であってもよい。
【0017】
液体原料が少量でも熱分解反応器に導入されるとハルツが発生し、ハルツが熱分解反応器を閉塞し運転継続できなくなる。ハルツが熱分解反応器の全容積を閉塞しなくとも、熱分解反応器の原料導入側の僅かな容積を閉塞することで運転継続はできなくなる。回収工程S3で液体原料を製造装置の系外の回収ポットに回収することで、液体原料を熱分解反応器へ導入することをより確実に抑制することができ、結果としてより長期間の運転継続が可能となる。
製造装置運転時に、液体原料が生じる要因の例としては、大気への放熱によるもの、熱分解反応器(熱分解工程)での吸熱によるもの、機械故障及び操作ミスによる運転圧力の変動によるもの、機械故障及び操作ミスによる蒸発器の熱源の停止又は不足によるもの、蒸発器にスケール(黒皮)が発生し伝熱面積が減少して蒸発不良により発生するもの、並びに、運転開始時の装置の加熱が充分でない時に原料を導入したもの等が挙げられる。
【0018】
(過熱工程S4)
過熱工程S4は、気化原料を過熱器に供給し、過熱する工程であって、(i)気化原料の過熱温度がN-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器圧力における沸点より5℃高い温度(N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点+5℃)以上200℃以下となること、及び、(ii)気化原料に対して1.0kJ/moL以上の熱量を付与すること、の少なくともいずれかを満たす工程である。
過熱工程S4における気化原料の過熱温度としては、N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点より5℃高い温度(N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点+5℃)以上200℃以下である限り、特に制限はないが、165~200℃であることが好ましく、170~195℃であることがより好ましく、173~190℃であることがさらに好ましい。なお、気化原料の過熱温度の上限は、沸点温度にその温度を足した温度ではなく、単純にその上限の温度を表す。
【0019】
ここで、本明細書において、「気化原料の過熱温度」とは、「気化原料の過熱器内での最高温度」を意味し、通常、過熱器の下流端における気化原料の温度(出口ガス温度)である。
【0020】
なお、2.0MPaG(ゲージ圧)(工業的な蒸気上限圧力)における熱媒飽和蒸気温度が215℃であることから、コストの観点からも、過熱温度の上限が200℃であることが好ましい。
【0021】
過熱工程S4において気化原料に対して付与される熱量としては、1.0kJ/moL以上である限り、特に制限はなく、1.0~9.0kJ/moLであることが好ましく、1.5~8.0kJ/moLであることがより好ましく、2.0~7.0kJ/moLであることがさらに好ましい。
【0022】
上述した気化原料の過熱温度及び気化原料に対して付与される熱量の下限値は以下のようにして決定される。
過熱器の出口から熱分解装置内のチューブまでは、入熱することができない箇所(例えば、ジャケットの継ぎ目、熱分解装置のチャンネル部分)が存在し、これらの入熱することができない箇所においても熱分解工程での吸熱により温度が低下する。この熱分解工程での吸熱による温度低下は、放熱量、反応速度、反応熱、滞留時間により算出可能である。算出された温度低下と温度誤差(マージン)とを考慮して、気化原料の過熱温度および気化原料に対して付与される熱量の下限値が決定される。
【0023】
一方、上述した気化原料の過熱温度及び気化原料に対して付与される熱量の上限値は以下のようにして決定される。
熱分解装置以外での反応が進行し過ぎるのを抑制すべく、反応速度が熱分解装置内の反応速度と比較して十分に遅くなるように熱分解反応を制御する必要がある。よって、通常、熱分解反応を制御する観点で、気化原料の過熱温度及び気化原料に対して付与される熱量の上限値が設定されるが、使用可能な熱媒温度によって、気化原料の過熱温度及び気化原料に対して付与される熱量の上限値が設定される場合もある。
【0024】
過熱工程S4は、減圧下又は常圧下で行うことができるが、減圧下にて行うことが好ましい。過熱工程S4における圧力は、具体的には、1~30kPaで行うことが好ましく、3~25kPaで行うことがより好ましく、5~22kPaで行うことがさらに好ましい。
【0025】
(熱分解工程S5)
熱分解工程S5は、過熱された気化原料を熱分解反応器に供給し、熱分解する工程である。熱分解反応器に供給する気化原料の流れは、熱分解反応器に流入する流れであれば特に制限はなく、上昇流であってもよく、下降流であってもよい。
【0026】
熱分解工程S5は、減圧下又は常圧下で行うことができるが、減圧下にて行うことが好ましい。熱分解工程S5における反応圧力は、具体的には、1~30kPaで行うことが好ましく、3~25kPaで行うことがより好ましく、5~22kPaで行うことがさらに好ましい。
熱分解工程S5は、熱分解を効率よく行う観点から、250~500℃で行うことが好ましく、300~480℃で行うことがより好ましく、350~450℃で行うことがさらに好ましい。
熱分解工程S5における滞留時間は、熱分解を確実に行う観点から、0.1~10秒であることが好ましく、0.2~9秒であることがより好ましく、0.3~8秒であることがさらに好ましい。
熱分解反応器としては、熱分解を効率よく行う観点から、多管式構造であることが好ましい。
【0027】
熱分解反応器に供給される原料は、回収工程を経た後の気化原料であることが好ましい。回収工程を経た後の気化原料を熱分解反応器に供給することで、液体原料を熱分解反応器に導入することをより確実に抑制することができ、ハルツの発生をより抑制することができる。
【0028】
以上の工程によって得られるN-ビニルアセトアミドは、下記構造式(2)で表されるものであり、原料に含まれる構造式(1)で表されるN-(1-メトキシエチル)アセトアミドから得られる。
【化2】
【0029】
(第1の製造装置)
本発明の実施の形態に係るN-ビニルアセトアミドの製造方法を実施する第1の製造装置は、
図2に示すように、供給工程S1を実施する原料供給装置10と、蒸発工程S2を実施する蒸発器(流下液膜式蒸発器)20Aと、回収工程S3を実施する原料回収装置30Aと、過熱工程S4を実施する過熱器40Aと、熱分解工程S5を実施する熱分解反応器50と、熱分解工程S5で熱分解された反応物を冷却して液化する冷却器60と、冷却部60で液化した反応物を貯める反応液受器70とを備える。
原料供給装置10の下流端が配管12を介して蒸発器20Aの上流端に接続され、蒸発器20Aの下流端が原料回収装置30Aの上流端に接続され、原料回収装置30Aの下流端が過熱器40Aの上流端に接続され、過熱器40Aの下流端が熱分解反応器50の上流端に接続され、熱分解反応器50の下流端が冷却器60の上流端に接続され、冷却器60の下流端が反応液受器70の上流端に接続される。
流下液膜式蒸発器は、液状の原料を、蒸発管内面を伝うように膜状に流下させることで蒸発させる蒸発器であり、例えば、シェル内部に多数のチューブが設置され、これらのチューブの内壁に液体を流下させる構造を有する蒸発器である。過熱器40Aは、蒸留器20Aと同様の構造を有する。
原料回収装置30Aには、回収した液体原料を回収する回収ポット42が配置されている。
反応液受器70には、圧力ポンプ71が設けられており、圧力ポンプ71によって、製造装置全体の圧力を調整することができる。製造装置全体の圧力は、反応液受器70に設けられた圧力計PIによって確認することができる。
【0030】
原料回収装置30Aは、液体原料を過熱器40A及び熱分解反応器50に導入させない構造となっていればよい。
原料回収装置30Aとしては、例えば、
図2に示すように、気化原料を流通させる筒部32と、筒部32内を流れる気化原料の流れの一部又は全部を衝突させ、蒸発器に供給された原料のうち気化しなかった液体原料及び気化原料の一部が液化してなる液体原料を回収する回収部33と、回収部33によって回収された液体原料を筒部32の外部に排出させる排出配管34とを有する構成であることが好ましい。原料回収装置30Aは、筒部32内を流れる気化原料を回収部33に全て衝突させるために、流通抑制部31をさらに有する構成であることが好ましい。
流通抑制部31は、下流に向かって気化原料の流れを絞るテーパ形状であることが好ましい。
回収部33は、気化原料の流れ受ける皿状の形状であり、液体原料を集積する集積部を有する形状であることが好ましい。
原料回収装置30Aが上記構成であることで、蒸発器に供給された原料のうち気化しなかった液体原料及び気化原料の一部が液化してなる液体原料は、回収部33に衝突することで回収され、排出配管34によって筒部32の外部に液体原料が排出される。回収部33に衝突した気化原料は、回収部33と流通抑制部31の間隙を通り、過熱器40Aおよび熱分解反応器50へ向かう。つまり、原料回収装置30Aが上記構成であることで、回収部33に衝突して液体原料が回収された気化原料が過熱器40Aおよび熱分解反応器50に導入されるようになる。
【0031】
原料回収装置30Aで回収された液体原料は、回収ポット42に送られる。回収ポット42は、仕切弁35a、35bによって、液体原料を制することができる。また、回収ポット42は、圧力ポンプ36及び仕切弁35a~35dによって、回収ポット42の圧力を調整することができる。回収ポット42の圧力は、圧力計PIによって確認することができる。
原料回収装置30Aで回収された液体原料は、仕切弁35a、35bを通じて回収ポット42に常時流入している。回収ポット42への回収量は、回収ポット42に設置された液面確認窓等の液面計LIにより確認することができる。回収ポット42に貯まった液体原料を回収する場合は、仕切弁35b、35cを閉止してから、窒素弁37aを開けて回収ポット42内に窒素供給装置37から窒素を導入して常圧まで戻し、抜出弁41を開放する。回収後は抜出弁41、窒素弁37aを閉止し、仕切弁36aを開放して圧力ポンプ36で製造装置全体と同圧力に調整してから仕切弁35cを開放し、次いで仕切弁35bを開放することで液体原料を回収可能な状態となる。
原料回収装置30Aの温度は、蒸発器20Aで発生した気化原料が凝縮しないような温度範囲から適宜選択される。回収ポット42の温度は、回収した液体原料が凝固しない温度であればよい。
【0032】
原料回収装置30Aで回収した液体原料は、蒸発器20Aに供給することが好ましい。
図2に示す第1の製造装置においては、回収ポット42で回収した液体原料を蒸発器20Aに供給する。回収した液体原料を蒸発器20Aに再度供給することで、原料の効率的利用を実現することができる。
【0033】
図2に示すように、蒸発器20Aの下流端と原料回収装置30Aの上流端とが接合されている構成であることが好ましい。蒸発器20Aの下流端と原料回収装置30Aの上流端とが接合されている構成とすることで、蒸発器20Aで加熱蒸発された気化原料を、原料回収装置30Aに直接送ることができる。つまり、蒸発器20Aと原料回収装置30Aとの間で、気化原料の一部が液化することを防ぐことができる。
【0034】
図2に示すように、原料回収装置30Aの下流端と過熱器40Aの上流端とが接合されている構成であることが好ましい。原料回収装置30Aの下流端と過熱器40Aの上流端とが接合されている構成とすることで、原料回収装置30Aで回収した気化原料を、過熱器40Aに直接送ることができる。つまり、原料回収装置30Aと過熱器40Aとの間で、気化原料の一部が液化することを防ぐことができる。
【0035】
図2に示すように、過熱器40Aの下流端と熱分解反応器50の上流端とが接合されている構成であることが好ましい。過熱器40Aの下流端と熱分解反応器50の上流端とが接合されている構成とすることで、過熱器40Aで過熱された気化原料を、熱分解反応器50に直接送ることができる。つまり、過熱器40Aと熱分解反応器50との間で、気化原料の一部が液化することを防ぐことができる。
【0036】
図2に示すように、熱分解反応器50の下流端と冷却器60の上流端とが接合されている構成であることが好ましい。熱分解反応器50の下流端と冷却器60の上流端とが接合されている構成とすることで、熱分解反応器50で熱分解されて得られた目的物を、冷却器60に直接送ることができる。
【0037】
図2に示すように、冷却器60の下流端と反応液受器70の上流端とが接合されている構成であることが好ましい。冷却器60の下流端と反応液受器70の上流端とが接合されている構成とすることで、冷却器60で冷却された目的物を、反応液受器70に直接送ることができる。
【0038】
(第2の製造装置)
本発明の実施の形態に係るN-ビニルアセトアミドの製造方法を実施する第2の製造装置は、
図3に示すように、供給工程S1を実施する原料供給装置10と、蒸発工程S2を実施する蒸発器(強制液膜式蒸発器)20Bと、過熱工程S4を実施する過熱器40Bと、回収工程S3を実施する原料回収装置30Bと、熱分解工程S5を実施する熱分解反応器50と、熱分解工程S5で熱分解された反応物を冷却して液化する冷却器60と、冷却部60で液化した反応物を貯める反応液受器70とを備える。
原料供給装置10の下流端が配管12を介して蒸発器20Bの上流端に接続され、蒸発器20Bの下流端が第1配管90を介して過熱器40Bの上流端に接続され、過熱器40Bの下流端が第2配管前段部100aを介して原料回収装置30Bの上流端に接続され、原料回収装置30Bの下流端が第2配管後段部100bを介して熱分解反応器50の上流端に接続され、熱分解反応器50の下流端が配管13を介して冷却器60の上流端に接続され、冷却器60の下流端が配管14を介して反応液受器70の上流端に接続される。
強制液膜式蒸発器は、液状の原料を、蒸発管内面を伝うように膜状に流入させると共に、ファン等をモータ(例えば、
図3におけるモータM)で回転させることによって蒸発管内に空気の流れによる推進力を生じさせ、当該推進力で蒸発管内の膜状の原料を強制的に進行させることで蒸発させる蒸発器である。
過熱器40B内では第1配管90と第2配管100とを接続する配管95が蛇行することによって配管95内の気体原料に所定熱量が付与されて、気体原料が所定温度となる。
原料回収装置30Bには、回収した液体原料を回収する回収ポット42が配置されている。
反応液受器70には、圧力ポンプ71が設けられており、圧力ポンプ71によって、製造装置全体の圧力を調整することができる。製造装置全体の圧力は、反応液受器70に設けられた圧力計PIによって確認することができる。
【0039】
蒸発器20Bには、蒸発器20Bに供給された原料のうち気化しなかった液体原料及び気化原料の一部が液化してなる液体原料を回収する回収ポット21が配置されていることが好ましい。回収ポット21は、液体原料の回収を容易にする観点から、蒸発器20Bより低位に配置することが好ましい。回収ポット21は、蒸発器20Bと回収ポット21とを仕切る仕切弁22aと、回収ポット21で回収した液体原料を系外へ抜き出す抜出弁22bとを備える。回収ポット21は、仕切弁22a及び抜出弁22bによって、液体原料を制することができる。蒸発器20Bに供給された原料のうち気化しなかった液体原料を回収する場合は、抜出弁22bを閉止し、仕切弁22aを開放する。回収ポット21に回収した液体原料を抜き出す場合は、仕切弁22aを閉止し、抜出弁22bを開放する。
【0040】
図3に示すように、蒸発器20Bの下流端と過熱器40Bの上流端とが、第1配管90を介して接続されており、第1配管90の下流端が、第1配管90中で最も高位である構成であることが好ましい。第1配管90の下流端が、第1配管90中で最も高位である構成とすることで、第1配管90を流れる原料のうち気化しなかった液体原料、及び、気化原料の一部が液化してなる液体原料が、過熱器40Bに入り、滞留することで、熱履歴を受けて、凝集物を生じることなく運転することができる。
【0041】
図3に示すように、過熱器40Bの下流端と原料回収装置30Bの上流端とが、第2配管の前段部100aを介して接続されており、第2配管の前段部100aの上流端が、第2配管の前段部100a中で最も高位である構成であることが好ましい。第2配管の前段部100aの上流端が、第2配管の前段部100a中で最も高位である構成とすることで、第2配管の前段部100aを流れる原料のうち気化原料の一部が液化してなる液体原料を原料回収装置30Bで効率よく回収することができる。
【0042】
図3に示すように、原料回収装置30Bの下流端と熱分解反応器50の上流端とが、第2配管の後段部100bを介して接続されており、第2配管の後段部100bの上流端が、第2配管の後段部100b中で最も低位である構成であることが好ましい。第2配管の後段部100bの上流端が、第2配管の後段部100b中で最も低位である構成とすることで、第2配管の後段部100bを流れる気化原料の一部が、仮に液化したとしても、液化してなる液体原料を原料回収装置30Bで効率よく回収することができる。
【0043】
図3に示すように、過熱器40Bの下流端と熱分解反応器50の上流端とが、第2配管100(第2配管の前段部100a及び後段部100b)を介して接続されており、第2配管100の上流端が、第2配管100中で最も高位である構成であることが好ましい。第2配管100の上流端が、第2配管100中で最も高位である構成とすることで、第2配管100を流れる気化原料の一部が、仮に液化したとしても、液化してなる液体原料を原料回収装置30Bで効率よく回収することができる。
【0044】
原料回収装置30Bで回収された液体原料は、回収ポット42に送られる。回収ポット42は、液体原料の回収を容易にする観点から、原料回収装置30Bより低位に配置することが好ましい。回収ポット42は、仕切弁35e、抜出弁41によって、液体原料を制することができる。また、回収ポット42は、圧力ポンプ36、仕切弁35e及び抜出弁41によって、回収ポット42の圧力を調整することができる。回収ポット42の圧力は、圧力計PIによって確認することができる。
原料回収装置30Bで回収された液体原料は、仕切弁35eを通じて回収ポット42に常時流入している。回収ポット42への回収量は、回収ポット42に設置された液面確認窓等の液面計LIにより確認することができる。回収ポット42に貯まった液体原料を回収する場合は、仕切弁35eを閉止してから、窒素弁37aを開けて回収ポット42内に窒素供給装置37から窒素を導入して常圧まで戻し、抜出弁41を開放する。回収後は抜出弁41、窒素弁37aを閉止し、仕切弁36aを開放して圧力ポンプ36で製造装置全体と同圧力に調整してから仕切弁35eを開放することで液体原料を回収可能な状態となる。
原料回収装置30Bの温度は、蒸発器20Bで発生し、過熱器40Bで過熱された気化原料が凝縮しないような温度範囲に適宜選択される。回収ポット42の温度は、回収した液体原料が凝固しない温度であればよい。
【0045】
原料回収装置30Bで回収した液体原料は、蒸発器20Bに供給することが好ましい。
図3に示す第2の製造装置においては、回収ポット42で回収した液体原料を蒸発器20Bに供給する。また、
図3に示す第2の製造装置においては、回収ポット21で回収した液体原料も蒸発器20Bに供給することが好ましい。回収した液体原料を蒸発器に再度供給することで、原料の効率的利用を実現することができる。
【0046】
図3に示す製造装置において、第2配管の後段部100bは、原料回収装置30Bの側面又は上面に接続されている構成であることが好ましい。第2配管の後段部100bが原料回収装置30Bの側面又は上面に接続されている構成であることよって、原料回収装置30Bで回収された液体原料が第2配管の後段部100bに流入することを抑制することができる。
【0047】
図3に示す第2の製造装置において、原料回収装置30Bの下流端と熱分解反応器50の上流端とが接合されている構成であってもよい。原料回収装置30Bの下流端と熱分解反応器50の上流端とが接合されている構成とすることで、原料回収装置30Bで液体原料を回収した気化原料を、熱分解反応器50に直接送ることができる。つまり、原料回収装置30Bと熱分解反応器50との間で、気化原料の一部が液化することを防ぐことができる。
【0048】
また、
図3に示す製造装置において、原料回収装置30B、仕切弁35e、圧力ポンプ36、回収ポット42、抜出弁41に代えて、
図2における原料回収装置30A、仕切弁35a~35d、圧力ポンプ36、回収ポット42、抜出弁41を設けた構成であってもよい。
【0049】
〔熱分解装置〕
本発明の実施の形態に係る熱分解装置は、原料を蒸発して気化原料を生成可能な蒸発器と、蒸発器に接続され、気化原料をN-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点より5℃高い温度(N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの過熱器内圧における沸点+5℃)以上200℃以下まで過熱可能な過熱器と、過熱器に接続され、過熱された気化原料を熱分解可能な熱分解反応器と、を備え、必要に応じて、上述した、原料回収装置、冷却器、反応液受器、回収ポット、窒素供給装置、圧力ポンプ、仕切弁、窒素弁、抜出弁、第1配管、第2配管、液面計、モータ、圧力計、などをさらに備える。
本発明の実施の形態に係る熱分解装置を用いて、上述した、本発明の実施の形態に係るN-ビニルアセトアミドの製造方法が好適に実施される。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
【0051】
(実施例1)
図2に示す製造装置を使用した。
蒸発器は、流下液膜式蒸発器であり、シェル内部に多数のチューブが設置され、これらチューブの内壁に液体を流下させる構造を有しているシェルアンドチューブ型蒸発器(チューブの径:25.4mm、チューブの長さ:2500mm、チューブの本数:22本)を使用した。
蒸発器のシェル側には0.7MPaG(ゲージ圧)(温度170℃)の飽和蒸気を導入し、チューブ側には、液体の原料であるN-(1-メトキシエチル)アセトアミドを、反応液受器に設置された減圧設備(圧力ポンプ)により、20kPa(絶対圧力)の減圧条件に設定し、20kg/hの供給速度で、チューブ内壁を流下するように供給し、蒸発させた。この時の蒸発器出口でのガス温度は160℃(N-(1-メトキシエチル)アセトアミドの20kPa(絶対圧力)における沸点)であった。
原料回収装置は、上下に外径267.4mmのフランジを設置し、蒸発器と過熱器にそれぞれ接合した。原料回収装置の筒部(ジャケット)には、0.7MPaG(ゲージ圧)の飽和蒸気を導入して気化原料が凝縮しないよう加熱した。
過熱器は、蒸発器同様にシェル内部に多数のチューブが設置されたシェルアンドチューブ型過熱器(チューブの径:25.4mm、チューブの長さ:390mm、チューブの本数:22本)を使用した。過熱器のシェル側には1.85MPaG(ゲージ圧)(温度211℃)の飽和蒸気を導入し、前記蒸発器で生成したプロセスガス(気化原料)に対して5.65kJ/moLの熱量を付与する過熱を行った。過熱器出口のガス温度は185℃(160℃+25℃)であった。
熱分解反応器のチューブは、電磁誘導加熱により440℃に加熱され、チューブの内部に導入された気化原料を減圧条件下で熱分解し、N-ビニルアセトアミドを得た。
上記条件にて、90日間の連続運転を実施したが、特に問題は発生しなかった。
【0052】
(実施例2)
実施例1と同じ
図2に示す製造装置を用いて、過熱器出口のプロセスガス温度が175℃(160℃+15℃)となるように、蒸発器で生成したプロセスガス(気化原料)に対して3.39kJ/moLの熱量を付与する過熱を行ったこと以外は、実施例1と同じ運転条件にて、継続して90日間の連続運転を実施したが、特に問題は発生しなかった。
【0053】
(実施例3)
実施例1と同じ
図2に示す製造装置を用いて、過熱器出口のプロセスガス温度が195℃(160℃+35℃)となるように、蒸発器で生成したプロセスガス(気化原料)に対して7.91kJ/moLの熱量を付与する過熱を行ったこと以外は、実施例1と同じ運転条件にて、継続して90日間の連続運転を実施したが、特に問題は発生しなかった。
【0054】
(比較例1)
実施例1の
図2に示す製造装置において過熱器を備えないこと以外は、実施例1と同じ製造装置及び運転条件にて、連続運転を実施したところ、運転開始から45日目に熱分解反応器の温度に乱れを確認し、制御不能となったため運転を停止した。製造装置を開放点検したところ、タール状および固形状のハルツが生成し熱分解反応器の入り口部を閉塞させていた。
【0055】
(比較例2)
実施例1と同じ
図2に示す製造装置を用いて、過熱器出口のプロセスガス温度が162℃(160℃+2℃)となるように、蒸発器で生成したプロセスガス(気化原料)に対して0.45kJ/moLの熱量を付与する過熱を行ったこと以外は、実施例1と同じ運転条件にて、連続運転を実施したところ、運転開始から54日目に熱分解反応器の温度に乱れを確認し、制御不能となったため運転を停止した。製造装置を開放点検したところ、タール状および固形状のハルツが生成し熱分解反応器の入り口部を閉塞させていた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の製造方法で得られるN-ビニルアセトアミドは、凝集剤、液体吸収剤及び増粘剤等に利用されるN-ビニルアセトアミド系ポリマーの製造に用いられる他、多方面の産業上の用途において有用なモノマーである。
【符号の説明】
【0057】
10:原料供給装置
11:仕切弁
12~14:配管
20A、20B:蒸発器
21:回収ポット
22a、22b:抜出弁
30A、30B:原料回収装置
31:流通抑制部
32:筒部
33:回収部
34:排出配管
35a~35e:仕切弁
36、71:圧力ポンプ
36a:仕切弁
37:窒素供給装置
37a:窒素弁
40A、40B:過熱器
41:抜出弁
42:回収ポット
50:熱分解反応器
60:冷却器
70:反応液受器
90:第1配管
95:配管
100:第2配管
100a:前段部
100b:後段部
LI:液面計
M: モータ
PI:圧力計
S1:供給工程
S2:蒸発工程
S3:回収工程
S4:過熱工程
S5:熱分解工程