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特許7597131はんだペースト、はんだバンプの形成方法及びはんだバンプ付き部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】はんだペースト、はんだバンプの形成方法及びはんだバンプ付き部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241203BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01L21/92 604A
H05K3/34 505E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022579219
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003966
(87)【国際公開番号】W WO2022168209
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】江尻 芳則
(72)【発明者】
【氏名】須方 振一郎
(72)【発明者】
【氏名】赤井 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真澄
(72)【発明者】
【氏名】清水 千晶
(72)【発明者】
【氏名】欠畑 純一
(72)【発明者】
【氏名】葭葉 歩未
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-4347(JP,A)
【文献】特開2007-123558(JP,A)
【文献】特開2020-198394(JP,A)
【文献】特表2008-545257(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0368643(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ粒子、フラックス及び揮発性の分散媒を含有するはんだペーストを用いたはんだバンプの形成方法であって、
表面に複数の電極を有する部材の前記電極が配置されている領域に前記はんだペーストを塗布する工程と、
前記部材及び前記はんだペーストを、前記はんだ粒子を構成するはんだの融点未満の温度Tで加熱することで、前記はんだペースト中の前記分散媒を揮発させ、前記部材上にはんだ粒子含有層を形成する工程と、
前記部材及び前記はんだ粒子含有層を、前記はんだ粒子を構成するはんだの融点以上の温度Tで加熱することで、前記はんだ粒子含有層中の前記はんだ粒子を溶融させ、前記部材の前記電極上にはんだバンプを形成する工程と、
隣り合う前記はんだバンプ間に残留する前記はんだ粒子含有層の残渣を洗浄により除去する工程と、を備え、
前記はんだ粒子の平均粒径が10μm以下であり、
前記はんだペースト中の前記分散媒の含有量が30質量%以上である、はんだバンプの形成方法。
【請求項2】
前記はんだ粒子を構成するはんだの融点が180℃以下である、請求項1に記載のはんだバンプの形成方法。
【請求項3】
前記はんだ粒子の含有量が50質量%以下である、請求項1又は2に記載のはんだバンプの形成方法。
【請求項4】
前記フラックスの含有量が、前記はんだ粒子100質量部に対して、10質量部以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のはんだバンプの形成方法。
【請求項5】
前記はんだ粒子の平均粒径が、前記複数の電極における隣り合う電極間の距離の3分の1以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のはんだバンプの形成方法。
【請求項6】
前記温度Tが50℃以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のはんだバンプの形成方法。
【請求項7】
前記はんだ粒子含有層の厚さが、前記複数の電極における隣り合う電極間の距離の3分の2以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のはんだバンプの形成方法。
【請求項8】
前記部材が、表面に複数の電極を有する半導体基板である、請求項1~7のいずれか一項に記載のはんだバンプの形成方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によりはんだバンプを形成する工程を備える、はんだバンプ付き部材の製造方法。
【請求項10】
はんだ粒子と、フラックスと、揮発性の分散媒と、を含有し、
前記はんだ粒子の平均粒径が10μm以下であり、
前記分散媒の含有量が30質量%以上である、はんだペースト。
【請求項11】
前記はんだ粒子を構成するはんだの融点が180℃以下である、請求項10に記載のはんだペースト。
【請求項12】
前記はんだ粒子の含有量が50質量%以下である、請求項10又は11に記載のはんだペースト。
【請求項13】
前記フラックスの含有量が、前記はんだ粒子100質量部に対して、10質量部以下である、請求項10~12のいずれか一項に記載のはんだペースト。
【請求項14】
はんだプリコート法によって、表面に複数の電極を有する部材の前記電極上にはんだバンプを形成するために用いられる、請求項10~13のいずれか一項に記載のはんだペースト。
【請求項15】
前記はんだ粒子の平均粒径が、前記複数の電極における隣り合う電極間の距離の3分の1以下である、請求項14に記載のはんだペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだペースト、はんだバンプの形成方法及びはんだバンプ付き部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部材上に電子部品を実装する方法として、予め電極表面をはんだで被覆しておき、その後、電子部材上に電子部品を搭載して接合を行う工法(はんだプリコート法)が知られている。
【0003】
はんだプリコート法としては、例えば、はんだペーストを、電子部材上の電極が配列されている領域(例えば電子部材の全面)に塗布して加熱することで、個々の電極上にはんだバンプを形成する方法が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-4347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器の小型軽量化に伴い、電子部品が実装される部材(例えば電子回路基板等の電子部材)上の電極間ピッチが狭くなってきており、例えば、電極間の間隙が25μmを下回るようになってきている。
【0006】
本発明者らの検討の結果、上記のような電極間の間隙が狭い部材に対して、上記特許文献1に記載の方法ではんだバンプを形成すると、電極間の間隙で溶融したはんだにより隣り合う電極同士が接続されてしまう「ブリッジ」と呼ばれる現象が発生して短絡が発生したり、電極表面がはんだで充分に被覆されない「はんだ不濡れ」と呼ばれる現象が発生してはんだバンプの形状不良が発生したりすることが明らかになった。
【0007】
そこで、本発明の一側面は、電極間の間隙が狭い(例えば25μmを下回る)場合であっても、ブリッジ及びはんだ不濡れの発生を抑制しながらはんだバンプを形成する方法、当該方法に使用されるはんだペースト及び当該方法を用いたはんだバンプ付き部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、非常に微細なはんだ粒子とフラックスとを組み合わせ、且つ、従来のはんだペーストと比較して、多量の分散媒を含有させたはんだペーストを用い、はんだを溶融させるための加熱の前に、上記分散媒を揮発させるための加熱を行ってはんだ粒子を含有する層(はんだ粒子含有層)を形成する方法ではんだバンプを形成することで、ブリッジの発生及びはんだ不濡れの発生を抑えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の一側面は、下記[1]に記載のバンプの形成方法に関する。
【0010】
[1]はんだ粒子、フラックス及び揮発性の分散媒を含有するはんだペーストを用いたはんだバンプの形成方法であって、表面に複数の電極を有する部材の前記電極が配置されている領域に前記はんだペーストを塗布する工程と、前記部材及び前記はんだペーストを、前記はんだ粒子を構成するはんだの融点未満の温度Tで加熱することで、前記はんだペースト中の前記分散媒を揮発させ、前記部材上にはんだ粒子含有層を形成する工程と、前記部材及び前記はんだ粒子含有層を、前記はんだ粒子を構成するはんだの融点以上の温度Tで加熱することで、前記はんだ粒子含有層中の前記はんだ粒子を溶融させ、前記部材の前記電極上にはんだバンプを形成する工程と、隣り合う前記はんだバンプ間に残留する前記はんだ粒子含有層の残渣を洗浄により除去する工程と、を備え、前記はんだ粒子の平均粒径が10μm以下であり、前記はんだペースト中の前記分散媒の含有量が30質量%以上である、はんだバンプの形成方法。
【0011】
上記側面のはんだバンプの形成方法によれば、電極間の間隙が狭い(例えば25μmを下回る)場合であっても、ブリッジ及びはんだ不濡れの発生を抑制しながらはんだバンプを形成することができる。
【0012】
上記側面のはんだバンプの形成方法は、下記[2]~[8]に記載の方法であってもよい。
【0013】
[2]前記はんだ粒子を構成するはんだの融点が180℃以下である、[1]に記載のはんだバンプの形成方法。
【0014】
[3]前記はんだ粒子の含有量が50質量%以下である、[1]又は[2]に記載のはんだバンプの形成方法。
【0015】
[4]前記フラックスの含有量が、前記はんだ粒子100質量部に対して、10質量部以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のはんだバンプの形成方法。
【0016】
[5]前記はんだ粒子の平均粒径が、前記複数の電極における隣り合う電極間の距離の3分の1以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のはんだバンプの形成方法。
【0017】
[6]前記温度Tが50℃以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のはんだバンプの形成方法。
【0018】
[7]前記はんだ粒子含有層の厚さが、前記複数の電極における隣り合う電極間の距離の3分の2以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のはんだバンプの形成方法。
【0019】
[8]前記部材が、表面に複数の電極を有する半導体基板である、[1]~[7]のいずれかに記載のはんだバンプの形成方法。
【0020】
本発明の他の一側面は、下記[9]に記載のはんだバンプ付き部材の製造方法に関する。
【0021】
[9][1]~[8]のいずれかに記載の方法によりはんだバンプを形成する工程を備える、はんだバンプ付き部材の製造方法。
【0022】
本発明の他の一側面は、下記[10]に記載のはんだペーストに関する。
【0023】
[10]はんだ粒子と、フラックスと、揮発性の分散媒と、を含有し、前記はんだ粒子の平均粒径が10μm以下であり、前記分散媒の含有量が30質量%以上である、はんだペーストに関する。
【0024】
上記側面のはんだペーストによれば、はんだを溶融させるための加熱の前に、分散媒を揮発させるための加熱を行ってはんだ粒子を含有する層(はんだ粒子含有層)を形成する方法ではんだバンプを形成することで、電極間の間隙が狭い(例えば25μmを下回る)場合であっても、ブリッジ及びはんだ不濡れの発生を抑制しながらはんだバンプを形成することができる。
【0025】
上記側面のはんだペーストは、下記[11]~[15]に記載のはんだペーストであってもよい。
【0026】
[11]前記はんだ粒子を構成するはんだの融点が180℃以下である、[10]に記載のはんだペースト。
【0027】
[12]前記はんだ粒子の含有量が50質量%以下である、[10]又は[11]に記載のはんだペースト。
【0028】
[13]前記フラックスの含有量が、前記はんだ粒子100質量部に対して、10質量部以下である、[10]~[12]のいずれかに記載のはんだペースト。
【0029】
[14]はんだプリコート法によって、表面に複数の電極を有する部材の前記電極上にはんだバンプを形成するために用いられる、[10]~[13]のいずれかに記載のはんだペースト。
【0030】
[15]前記はんだ粒子の平均粒径が、前記複数の電極における隣り合う電極間の距離の3分の1以下である、[14]に記載のはんだペースト。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一側面によれば、電極間の間隙が狭い(例えば25μmを下回る)場合であっても、ブリッジ及びはんだ不濡れの発生を抑制しながらはんだバンプを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、一実施形態のはんだバンプの形成方法が適用される部材の一例を示す模式平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った模式断面図である。
図3図3は、一実施形態のはんだバンプの形成方法を説明するための模式断面図である。
図4図4は、一実施形態の接続構造体の製造方法を説明するための模式断面図である。
図5図5は、実施例及び比較例で用いた半導体チップの外観写真である。
図6図6は、リフロー工程後における実施例1の半導体チップの外観写真である。
図7図7は、洗浄工程後における実施例1の半導体チップの外観写真である。
図8図8は、実施例及び比較例で用いた半導体チップの断面写真及び洗浄工程後における実施例1の半導体チップの断面写真である。
図9図9は、ブリッジ抑制性評価で観察されるブリッジ発生箇所の一例を示す写真である。
図10図10は、はんだ不濡れ抑制性評価で観察されるはんだバンプの一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、及び、それに対応するメタクリルの少なくとも一方を意味する。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、融点及び沸点は、1気圧での値を意味する。
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0035】
<はんだペースト>
一実施形態のはんだペーストは、例えば、はんだプリコート法によって、表面に複数の電極を有する部材(例えば回路部材等の電子部材)の当該電極上にはんだバンプを形成するために用いられるはんだペーストであり、はんだ粒子と、フラックスと、揮発性の分散媒と、を含有する。
【0036】
本実施形態では、はんだ粒子の平均粒径が10μm以下であり、分散媒の含有量(はんだペーストの全質量を基準とする含有量)が30質量%以上である。このような構成を有する本実施形態のはんだペーストによれば、後述するように、部材上で分散媒を除去した後にはんだ粒子の溶融温度以上の温度で加熱する方法により、電極間の間隙が狭い(例えば25μmを下回る)場合であっても、ブリッジ及びはんだ不濡れの発生を抑制しながらはんだバンプを形成することができる。
【0037】
上記効果が得られる理由を本発明者らは以下のように推察している。
【0038】
まず、はんだ粒子において、スズはバルクで存在して粒子表面に露出するが、粒子表面に露出したスズは酸化されやすいため、はんだ粒子の表面の少なくとも一部(バルクのスズの上部)には酸化スズが形成されることが知られている。このようなバルクのスズが酸化スズで被覆された構造を有するはんだ粒子をはんだの融点以上に加熱した場合、はんだ粒子の内部は溶融するが、最表面の酸化スズが溶融しづらいために、はんだ粒子同士の溶融結合によるはんだ粒子の成長が起こりづらいと推測される。そのため、はんだ粒子の平均粒径が10μm以下のように小さくなると、比表面積の増加によって酸化スズの割合が多くなることで、より一層はんだ粒子の成長が起こりづらくなり、はんだバンプ間に残存するはんだ粒子同士の溶融によるブリッジが抑制されやすくなると推測される。なお、電極上のはんだ粒子は、はんだ粒子表面のスズが酸化されていたとしても、フラックスの効果により電極表面の金属と反応しやすく、電極表面上にスズが容易に濡れ広がることができる。例えば電極がAu電極の場合は、Au電極の最表層にAuSn合金層が形成されることで、Au電極表面上にスズが容易に濡れ広がることができる。濡れ広がったスズの表面は、フラックスの効果によって酸化されていないため、電極上或いはその近傍に存在するはんだ粒子の表面の酸化膜を溶融する効果が得られ、電極近傍のはんだ粒子から選択的に溶融する。その結果、電極上或いは電極近傍のはんだ粒子を選択的に溶融することが可能であり、ブリッジの発生を抑制して、はんだバンプを形成することができると考えられる。
【0039】
また、はんだ粒子含有層の厚さが不均一となり、部分的に厚い箇所が発生すると、当該箇所においてブリッジの発生が起こり易くなり、電極表面におけるはんだの濡れ広がりもが阻害されやすくなると考えられるのに対し、分散媒の含有量が30質量%以上であると、電極上及び電極間に堆積するはんだ粒子含有層の厚みが均一になりやすくなり、結果として、ブリッジ及びはんだ不濡れの発生が抑制されると推察される。
【0040】
(はんだ粒子)
はんだ粒子はスズを含む。はんだ粒子は、スズ単体を含んでいてよく、スズ合金を含んでいてもよい。スズ合金としては、例えば、In-Sn、In-Sn-Ag、Sn-Bi、Sn-Bi-Ag、Sn-Ag-Cu、Sn-Cu系の合金が挙げられる。はんだ粒子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0041】
スズ合金の具体例を以下に示す。
・In-Sn(In:52質量%、Sn:48質量%、融点:118℃)
・In-Sn-Ag(In:20質量%、Sn:77.2質量%、Ag:2.8質量%、融点:175℃)
・Sn-Bi(Sn:42質量%、Bi:58質量%、融点:138℃)
・Sn-Bi-Ag(Sn:42質量%、Bi:57質量%、Ag:1質量%、融点:139℃)
・Sn-Ag-Cu(Sn:96.5質量%、Ag:3質量%、Cu:0.5質量%、融点:217℃)
・Sn-Cu(Sn:99.3質量%、Cu:0.7質量%、融点:227℃)
【0042】
はんだ粒子中のスズの含有量は、例えば、40質量%以上、60質量%以上又は80質量%以上であってよく、99.5質量%以下、80質量%以下又は60質量%以下であってよい。
【0043】
はんだ粒子中のスズは、例えば、バルク(純度99.9%以上)で存在している。スズは酸化されやすい金属であるため、通常、はんだ粒子は、その表面の少なくとも一部(例えばバルクのスズの上部)に酸化スズを含む。
【0044】
はんだの融点(はんだ粒子を構成するはんだの融点)は、250℃以下又は220℃以下であってよく、低温ではんだバンプを形成可能であり、はんだバンプが形成される部材への負荷を低減できる観点では、180℃以下、160℃以下又は140℃以下であってよい。はんだの融点は、分散媒を揮発させる際に溶融しないように、例えば、100℃以上であってよい。なお、はんだの融点は、酸化前のはんだ粒子の融点といいかえることもできる。
【0045】
はんだ粒子の平均粒径は、ブリッジの発生をより一層抑制する観点では、9.0μm以下、8.0μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下又は2.0μm以下であってよい。はんだ粒子の平均粒径が小さいほど、ブリッジの発生が抑制される傾向がある。
【0046】
はんだ粒子の平均粒径は、例えば、はんだの融点以上に加熱した際に、はんだ粒子を均一に溶融させることができる観点から、0.1μm以上であってよく、0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上又は2.0μm以上であってもよい。
【0047】
はんだ粒子の平均粒径は、はんだペーストが塗布される部材における、隣り合う電極間の距離に応じて設定してもよい。具体的には、はんだ粒子の平均粒径が、隣り合う電極間の距離の3分の1以下である場合、ブリッジの発生がより一層抑制される傾向がある。この傾向がより顕著に得られる観点では、はんだ粒子の平均粒径は、隣り合う電極間の距離の4分の1以下又は5分の1以下であってもよい。
【0048】
はんだ粒子の最大径は、1.0μm以上又は2.0μm以上であってよく、10μm以下、9.0μm以下、8.0μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下又は2.0μm以下であってよい。はんだ粒子の粒径のばらつきが少ないほど、部材の電極上にあるはんだ粒子を均一に溶融させやすくなり、バンプ形状がより良好になりやすい。また、はんだ粒子の粒径のばらつきが少ないほど、はんだバンプ間に残留するはんだ粒子が溶融してブリッジが発生することを抑制しやくなり、また、大きいサイズのはんだ粒子が起因となってブリッジが発生することを抑制しやすくなる。これらの観点から、上記最大径を有するはんだ粒子の割合は、80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってよい。
【0049】
はんだ粒子の最大径及び平均粒径は、例えば、以下の手順でSEM像から算出することができる。はんだ粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとする。このSEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察し、SEM像を得る。得られたSEM像から、はんだ粒子に外接する長方形を画像処理ソフトにより作図し、長方形の長辺をその粒子の最大径とする。複数のSEM像を用いて、この測定を50個以上のはんだ粒子に対して行い、これらのはんだ粒子の最大径の平均値を算出し、これを平均粒径(平均最大径)とする。はんだペースト中のはんだ粒子の最大径及び平均粒径は、アセトン等の有機溶剤により洗浄して、ろ過を行い、常温(例えば25℃)にて乾燥した後、上記方法により求めることができる。
【0050】
はんだ粒子の形状は、例えば、球状、塊状、針状、扁平状(フレーク状)、略球状等であってよい。はんだ粒子は、これらの形状を有するはんだ粒子の凝集体であってもよい。これらの中でも、はんだ粒子が球状である場合、はんだ粒子が部材の電極上及び電極間(特に部材の電極上)に均一に分散されやすくなる。その結果、はんだペーストを乾燥させて得られるはんだ粒子含有層が部材の電極上及び電極間に均一に形成され、当該はんだ粒子含有層をはんだの融点以上に加熱した際に、電極上部に位置するはんだ粒子が、フラックスの効果によって、電極間に位置するはんだ粒子と比較して、優先的に溶融しやすくなる。これにより、ブリッジの発生がより一層抑制されやすくなる、より良好な形状のはんだバンプが形成されやすくなるといった効果が奏される。ここで、球状のはんだ粒子とは、上記SEM画像から求められる、アスペクト比(「粒子の長辺/粒子の短辺」)が1.3以下である粒子をいう。
【0051】
はんだペースト中のはんだ粒子の含有量は、はんだペーストの全質量を基準として、70質量%未満である。はんだ粒子の含有量は、はんだ粒子含有層を部材の電極上及び電極間に均一に形成しやすくなることで、電極上部のバンプ形状が均一化され、バンプ高さ及び形状が揃いやすくなる観点、及び、はんだ粒子を電極間に均一に分散させやすくなり、電極間のはんだ粒子が溶融しづらくなることで、電極間でのブリッジの発生がより一層抑制される観点では、65質量%以下、60質量%以下又は50質量%以下であってもよい。はんだペースト中のはんだ粒子の含有量は、ペースト中におけるはんだ粒子の沈降を抑え、塗布時におけるはんだペーストの均一性を向上させる観点から、はんだペーストの全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上又は50質量%以上であってよい。
【0052】
(フラックス)
フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているものを使用できる。具体例としては、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、松脂、有機酸、アミノ酸、アミン、及び、アミンのハロゲン化水素酸塩等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0053】
溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。有機酸としては、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、グルタミン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、安息香酸、リンゴ酸等が挙げられる。松脂としては、活性化松脂及び非活性化松脂等が挙げられる。松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。アミノ酸としては、グリシン、アラニン、グルタミン酸等が挙げられる。アミンとしては、一般的なものを用いることができ、例えば、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等を用いてよい。アミンのハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン元素を組み合わせたものであってよい。
【0054】
フラックスとして、カルボキシ基を二個以上有する有機酸又は松脂を使用することにより、電極間の導通信頼性がより一層高くなるという効果が奏される。特に、フラックスとして、カルボキシ基を二個以上有する有機酸を使用することにより、はんだ粒子表面の酸化スズを除去してバルクのスズを露出させて電極との濡れ性を向上させることで、はんだ不濡れの発生を防ぐとともに、良好な形状のはんだバンプを形成する効果が顕著に得られる。例えば、フラックスのベース樹脂として知られている、アビエチン酸を主成分とするロジン類を用いた場合、再酸化防止作用或いは粘度調整としての機能は高いが、はんだ粒子表面の酸化スズを除去し、電極表面へのはんだの濡れ広がりを促進する効果は低い。一方、カルボキシ基を二個以上有する有機酸では、アビエチン酸を主成分とするロジン類と比較して、はんだ粒子表面の酸化スズを除去してバルクのスズを露出させて、電極との濡れ性を向上する効果が高い。また、カルボキシ基を二個以上有する有機酸によれば、上記ロジン類と比較して少量(例えば、はんだ粒子100質量部に対して5質量部以下)で効果が得られるため、電極上及び電極間に均一な厚みで塗布することが容易となる。そのため、はんだバンプの形状をより均一化できるとともに、ブリッジの発生をより一層抑制することができる。
【0055】
フラックスは、分散媒に溶解させやすく、はんだペーストが塗布しやすくなる観点から、分子量が200以下の低分子化合物であってよい。フラックスの分子量は、上記効果がより顕著に得られる観点から、180以下又は150以下であってもよい。フラックスの分子量は、100以上、150以上、180以上又は200以上であってよい。本実施形態では、はんだペーストが、フラックスとして、樹脂等の高分子化合物(例えば重量平均分子量が300以上の化合物)を含有してもよいが、はんだ粒子表面の酸化スズを除去してバルクのスズを露出させ、電極との濡れ性をより一層向上させる観点では、当該高分子化合物の含有量は、はんだ粒子100質量部に対して、10質量部以下であってよく、0質量部であってもよい。
【0056】
フラックスの融点は、50℃以上、70℃以上又は80℃以上であってよく、200℃以下、160℃以下、150℃以下又は140℃以下であってよい。フラックスの融点が上記範囲であると、フラックス効果がより一層効果的に発揮され、はんだ粒子を電極上により一層効率的に配置することができる。かかる効果がより顕著に得られる観点では、フラックスの融点は、80~190℃又は80~140℃であってよい。
【0057】
融点が80~190℃の範囲にあるフラックスとしては、コハク酸(融点:186℃)、グルタル酸(融点:96℃)、アジピン酸(融点:152℃)、ピメリン酸(融点:104℃)、スベリン酸(融点:142℃)等のジカルボン酸、安息香酸(融点:122℃)、リンゴ酸(融点:130℃)等が挙げられる。
【0058】
フラックスの含有量は、電極上にはんだバンプを形成する工程の後、隣り合うはんだバンプ間に残留するはんだ粒子含有層の残渣を洗浄により除去する工程における洗浄性を向上させる観点から、はんだ粒子100質量部に対して、10質量部以下、8質量部以下、6質量部以下又は5質量部以下であってよい。フラックスの含有量は、フラックス効果がより一層効果的に発揮される観点では、はんだ粒子100質量部に対して、0.1質量部以上、0.2質量部以上又は0.3質量部以上であってよい。これらの観点から、フラックスの含有量は、はんだ粒子100質量部に対して、0.1~10質量部、0.2~8質量部、0.3~6質量部又は0.3~5質量部であってよい。
【0059】
(分散媒)
分散媒は、揮発性を有し、はんだ粒子を分散可能な媒体(例えば液体)であればよく、特に限定されない。分散媒は、例えば、20℃における蒸気圧が0.1~500Paの有機化合物であってよい。なお、フラックス性を有する化合物は分散媒には含まれず、熱硬化性を有する化合物も分散媒には含まれない。
【0060】
分散媒としては、例えば、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テルピネオール、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH)等の一価及び多価アルコール類;エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の酸アミド;シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;炭素数1~18のアルキル基を有するメルカプタン類;炭素数5~7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類が挙げられる。炭素数1~18のアルキル基を有するメルカプタン類としては、例えば、エチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、i-プロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、i-ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン及びドデシルメルカプタンが挙げられる。炭素数5~7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類としては、例えば、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン及びシクロヘプチルメルカプタンが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0061】
分散媒の20℃における蒸気圧は、0.1~500Paであってよく、0.2~100Pa、0.3~50Pa又は0.5~10Paであってもよい。20℃における蒸気圧が0.1Pa以上である場合、塗工性と揮発性を両立しやすい。特に、低融点のはんだ粒子を用いる場合、はんだの融点未満の温度Tが低くなるため、蒸気圧が0.1Pa以上の分散媒を用いることで分散媒の残留量を低減できる。一方、20℃における蒸気圧が500Pa以下であると、塗工時において分散媒の揮発が起こり難く、連続使用時に分散媒の揮発によりはんだ粒子の濃度が高くなることが抑制される。そのため、連続塗工時における塗工厚みの制御が容易となりやすい。
【0062】
20℃における蒸気圧が0.3~50Paの分散媒(有機化合物)としては、1-ヘプタノール(蒸気圧28Pa)、1-オクタノール(蒸気圧8.7Pa)、1-デカノール(蒸気圧1Pa)、エチレングリコール(蒸気圧7Pa)、ジエチレングリコール(蒸気圧2.7Pa)、プロピレングリコール(蒸気圧10.6Pa)、1,3-ブチレングリコール(蒸気圧8Pa)、テルピネオール(蒸気圧3.1Pa)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(蒸気圧0.9Pa)、ジエチレングリコールメチルエーテル(エチルカルビトール)(蒸気圧13Pa)及びジエチレングリコールモノブチルエーテル(蒸気圧3Pa)が挙げられる。これらのうちの少なくとも一種の分散媒を用いる場合、塗工時における分散媒の揮発が抑制されやすくなり、連続塗工時における塗工厚みの制御が容易となる一方で、はんだの融点未満の温度Tで分散媒を容易に揮発させることができる。
【0063】
分散媒の含有量は、はんだペーストの全質量を基準として、30質量%以上であり、ブリッジ及びはんだ不濡れの発生をより一層抑制する観点では、35質量%以上又は38質量%以上であってよい。分散媒の含有量は、はんだ粒子の沈降を抑制して、塗布後の均一性を向上することができる観点では、はんだペーストの全質量を基準として、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってよい。これらの観点から、分散媒の含有量は、はんだペーストの全質量を基準として、30~80質量%、35~70質量%又は38~60質量%であってよい。
【0064】
(その他の成分)
はんだペーストは、上記成分以外の成分(その他の成分)を更に含有してもよい。その他の成分としては、例えば、熱硬化性を有する化合物(例えば熱硬化性樹脂)が挙げられる。熱硬化性を有する化合物としては、例えば、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物、ポリイミド化合物等が挙げられる。熱硬化性を有する化合物の含有量は、はんだペーストの全質量を基準として、例えば、0~10質量部であってよい。
【0065】
はんだペーストは、その他の成分として、チキソトロピー剤、酸化防止剤、防黴剤、つや消し剤等の添加剤を更に含有してもよい。
【0066】
<はんだバンプの形成方法>
一実施形態のはんだバンプの形成方法は、表面に複数の電極を有する部材の電極が配置されている領域に上記実施形態のはんだペーストを塗布する工程(塗布工程)と、部材及びはんだペーストを、はんだの融点(はんだ粒子を構成するはんだの融点)未満の温度Tで加熱することで、はんだペースト中の分散媒を揮発させ、部材上にはんだ粒子含有層を形成する工程(乾燥工程)と、部材及びはんだ粒子含有層を、はんだの融点以上の温度Tで加熱することで、はんだ粒子含有層中のはんだ粒子を溶融させ、部材の電極上にはんだバンプを形成する工程(リフロー工程)と、隣り合うはんだバンプ間に残留するはんだ粒子含有層の残渣を洗浄により除去する工程(洗浄工程)と、を備える。この方法によれば、電極上にはんだパンプを有するはんだバンプ付き部材が得られる。
【0067】
従来のはんだバンプの形成方法では、30質量%以上のような多量の分散媒を含有するはんだペーストを用いると、はんだ不濡れが生じやすく、はんだバンプの形状は不均一となりやすい。一方、上記方法では、はんだの融点以上の温度Tで加熱する前にはんだの融点未満の温度Tで加熱して分散媒を除去するため、はんだ不濡れが生じ難く、はんだバンプの形状は不均一となり難い。これは、はんだペースト中の分散媒が事前に除去されることで、フラックスの効果による電極表面での反応が起こりやすくなること、及び、電極上のはんだ粒子同士が近接することとなり、また、当該電極上のはんだ粒子間におけるフラックス濃度が高くなり、はんだ粒子同士の溶融が促進されることが理由と推察される。
【0068】
また、上記方法では、はんだの融点未満の温度Tで加熱することではんだ粒子表面の酸化が促進されるため、ブリッジの発生を抑制する効果が高くなる。前述のように、電極間では、はんだ粒子の表面の酸化によって、はんだ粒子同士の溶融結合によるはんだ粒子の成長が阻害されるが、はんだの融点未満の温度Tで加熱することではんだ粒子表面の酸化被膜が厚くなる、又は、はんだ粒子表面の酸化被膜が均一に形成されることによって、上記はんだ粒子の成長がより一層阻害されやすくなり、結果として、ブリッジの発生を抑制する効果が高くなると推察される。
【0069】
以下、図面を参照しつつ、上記実施形態のはんだバンプの形成方法について説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0070】
図1は、上記実施形態のはんだバンプの形成方法が適用される部材(表面に複数の電極を有する部材)の一例を示す平面図であり、図2は、図1のII-II線に沿った模式断面図である。図3は、上記実施形態のはんだバンプの形成方法を説明する模式断面図である。具体的には、図3の(a)が塗布工程を説明するための模式断面図であり、図3の(b)が乾燥工程を説明するための模式断面図であり、図3の(c)がリフロー工程を説明するための模式断面図であり、図3の(d)が洗浄工程を説明するための模式断面図である。
【0071】
(部材)
図1に示す部材1は、例えば回路部材等の電子部材であり、絶縁性基材2と、絶縁性基材2の表面に設けられた電極3とを備える。絶縁性基材2は、例えば、基材4と、基材4の表面のうち、電極3が設けられていない領域を被覆する絶縁性の樹脂被膜5とを備える。
【0072】
部材1の具体例としては、表面に電極が形成された半導体基板(例えば、シリコンウエハ等の半導体ウエハ)、表面に電極が形成されたガラス基板、表面に電極が形成されたセラミック基板、プリント配線板、半導体パッケージ基板等が挙げられる。これらの中でも、半導体基板(例えばシリコン基板)は、電極との密着が良好なため、表面に電極が形成された半導体基板を用いる場合、はんだバンプ形成後であっても、基材と電極との良好な密着性が保たれる傾向がある。また、半導体基板は母材が平滑であることから、半導体基板の表面に電極を形成する際には電極の高さを容易に制御することができ、電極高さをより低くすることができる。そのため、半導体基板の表面に形成された電極は電極高さが低い傾向があり、電極間におけるはんだブリッジの発生が抑制されやすい。
【0073】
電極3としては、例えば、チタン、ニッケル、クロム、銅、アルミ、パラジウム、プラチナ、金等を含む電極が挙げられる。基材4との密着性の観点では、電極3は、チタン層、ニッケル層及び銅層がこの順に積層されてなる電極であってよい。基材4がシリコンウエハである場合、シリコンウエハの表面を酸化させ酸化ケイ素にし、酸化ケイ素の上にチタン層を形成させることで、接着性が向上する。また、チタン層の上にニッケル層を設け、その上に銅層を設けることで、チタン層の上に直接銅層を設けた場合と比較して、銅がシリコンウエハ内に拡散することを抑制できる。電極の表面は、スズがより濡れ広がりやすくなる観点では、金、パラジウム及び銅からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。特に、電極の表面に、パラジウム層及び/又は金層を形成することで、はんだの電極に対する濡れ性が向上する。
【0074】
電極3の平面視形状としては、部材1の大きさ等に応じて、正方形状、長方形状、円形状等の種々の形状を採用できる。電極3の平面視形状は、絶縁性基材2を小型化できる点では、正方形状であってよい。
【0075】
電極3は、例えば、図1に示すように、平面視で、絶縁性基材2の周縁部分(ペリフェラル部分)にドット状で配列されており、隣り合う電極3,3間が非常に狭くなっている。具体的には、隣り合う電極3,3間の距離pは、例えば、25μm未満である。隣り合う電極3,3間の距離pは、ブリッジがより一層発生しづらくなる観点では、3μm以上、5μm以上又は10μm以上であってよい。隣り合う電極3,3間の距離pは、図2に示すpで示す部分の長さであり、隣り合う電極間の距離が最も小さい箇所の値である。
【0076】
絶縁性基材2上から露出する電極3の高さd1は、ブリッジがより一層発生しづらくなる観点から、30μm以下、20μm以下又は10μm以下であってよい。ここで、電極3の高さd1とは、図2のd1で示す部分の長さであり、下記式(I)で求められる。
電極3の高さ=[電極3の表面から基材4までの最短距離d2]-[絶縁性基材2の表面(樹脂被膜5の表面)から基材4までの最短距離d3]・・・(I)
【0077】
上記電極3の高さd1は、負の値を取り得る。すなわち、電極3の表面から基材4までの最短距離d2が、絶縁性基材2の表面(樹脂被膜5の表面)から基材4までの最短距離d3よりも小さくてもよい。電極3の高さd1は、例えば、1μm以上であってよい。
【0078】
樹脂被膜5は、例えば、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物、ポリイミド化合物等の熱硬化性化合物を含む硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であってよい。熱硬化性化合物としてエポキシ化合物又はポリイミド化合物を用いる場合、硬化性樹脂組成物の硬化性及び粘度がより一層良好になり、樹脂被膜5の高温放置における特性及び絶縁信頼性に優れる。
【0079】
(塗布工程)
塗布工程では、図3の(a)に示されるように、部材1の電極3が配置されている領域にはんだ粒子6を含有する上記実施形態のはんだペーストを塗布し、部材1上にはんだペースト層7を形成する。これにより、はんだペースト付き部材8が得られる。
【0080】
はんだペーストは、はんだペースト層7が、少なくとも電極3上及び電極3,3間に形成されるように塗布される。はんだペーストは、部材1の電極全てを覆うように部材1上に塗布されてよく、例えば、部材1の全面(電極3が形成されている面の全体)に塗布されてよい。はんだペーストの塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、ジェットプリンティング法、ディスペンサー、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコート、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ソフトリソグラフ、バーコート、アプリケータ、粒子堆積法、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ等を用いて塗布する方法が挙げられる。
【0081】
はんだペースト層7の厚さD1は、乾燥後に得られるはんだ粒子含有層9の厚さに応じて適宜変更可能であり、例えば、1μm以上、2μm以上、3μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、又は20μm以上であってよく、120μm以下、100μm以下、80μm以下、又は50μm以下であってよい。なお、はんだペースト層7の厚さD1は、図3の(a)のD1で示す部分の長さあり、絶縁性基材2の表面(樹脂被膜5の表面)からはんだペースト層7の表面までの最短距離である。
【0082】
(乾燥工程)
乾燥工程では、図3の(b)に示されるように、はんだペースト付き部材8を、はんだの融点(はんだ粒子6を構成するはんだの融点)未満の温度Tで加熱することで、はんだペースト(はんだペースト層7)中の分散媒を揮発させ、部材1上にはんだ粒子含有層9を形成する。これにより、はんだ粒子含有層付き部材10が得られる。
【0083】
乾燥温度Tは、はんだの融点未満の温度であり、例えば、30~120℃である。乾燥温度Tは、はんだ粒子の表面を酸化させる観点では、はんだの融点に近い温度であってよく、例えば、50℃以上、70℃以上又は90℃以上であってよい。
【0084】
乾燥時間は、使用した分散媒の種類及び量に合わせて適宜調整してもよい。具体的には、例えば、1分間以上であってよく、120分間以下であってよい。
【0085】
乾燥時の雰囲気は、大気雰囲気であってよく、窒素雰囲気であってもよい。乾燥時の雰囲気を大気雰囲気とすることではんだ粒子の表面が酸化されやすくなる。これにより、はんだバンプを形成時(後述するリフロー工程時)に、電極3,3間に分散しているはんだ粒子同士が溶融結合することによるはんだ粒子の成長が阻害され、電極間でのブリッジの発生がより一層抑制される傾向がある。この効果は、乾燥温度Tがはんだの融点に近い温度である場合により一層得られやすくなる。
【0086】
乾燥工程で形成されるはんだ粒子含有層9は、はんだ粒子6と、フラックスとを含む。はんだ粒子含有層9中には、分散媒の一部が揮発されずに残留していてもよいが、はんだ粒子含有層9中の分散媒の含有量は、はんだ粒子含有層の全質量を基準として、5質量%以下、1質量%以下又は0.1質量%以下であってよい。
【0087】
はんだ粒子含有層9の厚さD2は、ブリッジの発生をより一層抑制する観点では、隣り合う電極3,3間の距離pの3分の2以下であってよく、3分の1以下であってもよい。はんだ粒子含有層9の厚さD2は、具体的には、例えば、50μm以下、40μm以下、30μm以下、又は25μm以下であってよい。はんだ粒子含有層9の厚さD2は、はんだ不濡れの発生をより一層抑制する観点から、例えば、3μm以上、5μm以上、10μm以上、又は15μm以上であってよい。なお、はんだ粒子含有層9の厚さD2は、図3の(b)のD2で示す部分の長さであり、絶縁性基材2の表面(樹脂被膜5の表面)からはんだ粒子含有層9の表面までの最短距離である。
【0088】
(リフロー工程)
リフロー工程では、図3の(c)に示されるように、はんだ粒子含有層付き部材10(部材1及びはんだ粒子含有層9)を、はんだの融点以上の温度Tで加熱することで、はんだ粒子含有層9中のはんだ粒子6を溶融させ、部材1の電極3上にはんだバンプ11を形成する。この段階では、はんだバンプ11,11間(電極3,3間)にはんだ粒子含有層9の残渣が存在する。はんだ粒子含有層9の残渣は、例えば、はんだ粒子6、フラックス等の有機成分12などを含む。はんだ粒子6は、例えば、はんだ粒子同士が溶融結合することにより成長した粗大粒子13を含む。
【0089】
熱処理(はんだの融点以上の温度Tでの加熱)は、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉、熱板プレス装置等を用いて行うことができる。
【0090】
熱処理温度Tは、はんだの融点以上の温度であり、例えば、はんだの融点よりも、5℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上又は40℃以上高い温度であってよい。熱処理温度Tがはんだの融点より10℃以上高い場合、はんだ不濡れの発生がより一層抑制される傾向がある。熱処理温度Tとはんだの融点との差は、40℃以下、30℃以下又は20℃以下であってよい。熱処理温度Tとはんだの融点との差が40℃以下である高い場合、ブリッジの発生がより一層抑制される傾向がある。はんだ不濡れとブリッジの発生をより一層抑制する観点から、熱処理温度Tは、はんだの融点よりも10~40℃高い温度であってよい。熱処理時間は、例えば、1分間以上であってよく、120分間以下であってよい。
【0091】
はんだバンプの高さは、はんだペーストの組成及び塗布量等により調整可能であり、例えば、3~30μmとすることができる。
【0092】
(洗浄工程)
洗浄工程では、図3の(d)に示されるように、リフロー工程で得られた未洗浄のはんだバンプ付き部材14を洗浄することにより、隣り合うはんだバンプ11,11間に残留するはんだ粒子含有層9の残渣を除去する。これにより、はんだバンプ付き部材15が得られる。
【0093】
洗浄は、例えば、水による洗浄であってよく、溶剤洗浄であってもよい。洗浄に用いる洗浄液としては、水、アルコール系溶剤、テルペン系溶剤、石油系溶剤、炭化水素系溶剤、アルカリ系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、洗浄液には、洗浄剤(界面活性剤等)を含有させてもよい。
【0094】
<接続構造体の製造方法>
次に、上記実施形態のはんだバンプの形成方法により得られるはんだバンプ付き部材15を用いた、接続構造体(例えば半導体装置)の製造方法について説明する。
【0095】
図4は、はんだバンプ付き部材15を用いた接続構造体の製造方法を説明するための模式断面図である。接続構造体の製造方法では、まず、図4の(a)に示すように、第1の部材としてのはんだバンプ付き部材15と、第2の部材21とを用意し、互いの電極(第1の電極3及び第2の電極23)が対向するように配置する。次いで、図4の(b)に示すように、はんだバンプ付き部材15と第2の部材21とを、対向方向に押圧した状態で加熱することにより、をはんだバンプ11を介して、互いの電極(第1の電極3及び第2の電極23)を電気的に接続する。これにより、接続構造体30が得られる。
【0096】
第2の部材21は、例えば、インタポーザー基板であり、絶縁性基材22と、絶縁性基材22の表面に設けられた電極(第2の電極)23とを備える。絶縁性基材22は、例えば、基材24と、基材24の表面のうち、電極23が設けられていない領域を被覆する絶縁性の樹脂被膜25とを備える。第2の部材21としては、はんだバンプ付き部材15の製造に用いられる部材1として例示したものを用いることができる。第2の部材21は、はんだバンプ付き部材15の製造に用いられた部材1と同一であっても異なっていてもよい。また、第2の部材21の電極23上にはんだバンプが形成されていてもよい。
【実施例
【0097】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
<材料の用意>
[はんだ粒子]
Bi含有量が58質量%であり、Sn含有量が42質量%であるはんだ粒子(Bi58-Sn42はんだ粒子、融点:138℃)として、下記に示すはんだ粒子A1~A5を用意した。
・はんだ粒子A1(平均粒径:1.8μm以下(d90=1.8μm)、5N Plus社製、Type10)
・はんだ粒子A2(平均粒径:2.9μm以下(d90=2.9μm)、5N Plus社製、Type9)
・はんだ粒子A3(平均粒径:5.0μm以下(d90=5.0μm)、5N Plus社製、Type8)
・はんだ粒子A4(平均粒径:8.0μm以下(d90=8.0μm)、5N Plus社製、Type7)
・はんだ粒子A5(平均粒径:12.0μm以下(d90=12.0μm)、5N Plus社製、Type6)
【0099】
Sn含有量が96.5質量%であり、Ag含有量が3.0質量%であり、Cu含有量が0.5質量%であるはんだ粒子(Sn96.5-Ag3.0-Cu0.5はんだ粒子、融点:218℃)として、下記に示すはんだ粒子B1~B2を用意した。
・はんだ粒子B1(平均粒径:1.8μm以下(d90=1.8μm)、5N Plus社製、Type10)
・はんだ粒子B2(平均粒径:8.0μm以下(d90=8.0μm)、5N Plus社製、Type7)
【0100】
上記はんだ粒子A1~A5及びはんだ粒子B1~B2の平均粒径は、以下の方法で測定した。まず、はんだ粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとした。次いで、このSEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察し、SEM像を得た。得られたSEM像から、はんだ粒子に外接する長方形を画像処理ソフトにより作図し、長方形の長辺をその粒子の最大径とした。複数のSEM像を用いて、この測定を100個のはんだ粒子に対して行い、50個のはんだ粒子の最大径の平均値を算出し、これを平均粒径とした。
【0101】
[その他]
フラックスとして、アジピン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、融点:152℃)を用意し、揮発性の分散媒として、ジエチレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製、沸点:244℃、蒸気圧2.7Pa(20℃))を用意した。
【0102】
<実施例1~48、比較例1~10>
(はんだペーストの作製)
表1~表4に示すはんだ粒子と、ジエチレングリコールと、場合によりアジピン酸とを、表1~表4に示す配合量(単位:質量部)で混合し、実施例1~48及び比較例1~10のはんだペーストを得た。
【0103】
(半導体チップの用意)
シリコン基板上に、ニッケル層、金層がこの順に積層されてなる電極が複数形成された半導体チップ(株式会社ウォルツ製、WALTS-TEG IP80-0101JY、商品名)を用意した。複数の電極は、平面視正方形状のシリコン基板の周縁部において、一つの電極を1端子として、39端子×40端子(計79端子)の二列で配列されている。より具体的には、39端子×40端子の電極群が、平面視正方形状のシリコン基板の四辺に沿うように、1辺あたり2箇所ずつ(合計8箇所)形成されている。図5の(a)及び(b)に示すように、電極間ピッチは80μmであり、電極サイズは58μm×58μmであり、電極間のスペース(隣り合う電極間の距離)は22μmであった。また、シリコン基板上から露出する電極の高さd1(シリコン基板の表面から電極の表面までの距離)は、3μmであった。
【0104】
(はんだバンプの形成)
[塗布工程]
上記で作製したはんだペーストを、上記で用意した半導体チップの電極が形成されている面上に、卓上ロールコーターにより塗布した。
【0105】
[乾燥工程]
次いで、はんだペーストが塗布された半導体チップを、表1~表4に示す温度(乾燥温度)に設定したホットプレートに置き、ジエチレングリコールを揮発させた。これにより、はんだ粒子含有層を形成し、はんだ粒子含有層付き半導体チップを得た。乾燥時間(載置時間)は、30℃の場合は60分間とし、50℃の場合は30分間とし、90℃の場合は1分間とした。
【0106】
[はんだ粒子含有層の厚さの測定]
乾燥工程により形成されたはんだ粒子含有層の厚さD2を、レーザー変位計(キーエンス株式会社製、LK-G5000、商品名)を用いて計測した。具体的には、電極間を合計5箇所測定し、その平均値をはんだ粒子含有層の厚さD2とした。
【0107】
[リフロー工程]
乾燥工程後の半導体チップ(はんだ粒子含有層付き半導体チップ)を、窒素を通気させた状態で、あらかじめ180℃又は240℃に加熱したホットプレートに載せて熱処理した。熱処理温度は、はんだ粒子A1~A5を用いた実施例1~32及び比較例1~10では180℃とし、はんだ粒子B1~B2を用いた実施例33~48では240℃とした。熱処理時間(載置時間)は10秒間とした。これにより、はんだ粒子を溶融させ、電極上にはんだバンプを形成した。
【0108】
参考までに、リフロー工程後における実施例1の半導体チップ(未洗浄のはんだバンプ付き半導体チップ)の外観写真を図6に示す。図6の(a)は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープ VHX-5000 キーエンス社製)を用いて観察した顕微鏡写真であり、図6の(b)及び(c)は、図6の(a)における電極間を拡大した写真である。図6の(a)に示されるように、実施例では電極上にはんだバンプが均一に形成されていることが確認された。また、図6の(b)及び(c)に示されるように、実施例では、電極間ではんだ粒子が微粒子のまま独立して存在しており、ブリッジが発生していないことが確認された。なお、上記外観写真は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープ VHX-5000 キーエンス社製)を用いて観察した。
【0109】
[洗浄工程]
リフロー工程後の半導体チップ(未洗浄のはんだバンプ付き半導体チップ)を、アセトン溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級)に浸漬し、超音波洗浄を10分間行った。これにより、はんだバンプ間に残留するはんだ粒子含有層の残渣を除去し、はんだバンプ付き半導体チップを得た。
【0110】
洗浄工程後における実施例1の半導体チップ(はんだバンプ付き半導体チップ)の外観写真を図7に示す。図7の(a)は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープ VHX-5000 キーエンス社製)を用いて観察した顕微鏡写真であり、図7の(b)は図7の(a)における電極間を拡大した写真である。図7の(a)及び(b)に示されるように、実施例では、電極上にバンプが形成され、電極間のはんだ粒子等の残渣が除去されていることが確認された。
【0111】
[断面観察]
顕微鏡(デジタルマイクロスコープ VHX-5000 キーエンス社製)を用いて、洗浄工程後の半導体チップ(はんだバンプ付き半導体チップ)の電極部分の断面を観察し、はんだバンプの高さを測定した。いずれの実施例においても、はんだバンプの高さは約10μmであった。
【0112】
参考までに、はんだペースト塗布前の半導体チップの電極部分の断面を上記と同様の方法で観察して得た顕微鏡写真を図8の(a)に示し、上記断面観察で得られた、実施例1の半導体チップ(はんだバンプ付き半導体チップ)の断面写真を図8の(b)に示す。
【0113】
(評価)
[ブリッジ抑制性(絶縁性)評価]
半導体チップ上の8つの電極群(39端子×40端子)を顕微鏡(デジタルマイクロスコープ VHX-5000 キーエンス社製)を用いて観察し、ブリッジが発生している箇所の数を確認した。参考までに、ブリッジの発生箇所の写真(一例)を図9に示す。
【0114】
ブリッジ抑制性を下記の基準で評価した。評価がC以上であれば、ブリッジの発生が抑制されていると判断した。結果を表1~表4に示す。
A:ブリッジの発生箇所:0箇所
B:ブリッジの発生箇所:1箇所以上5箇所以下
C:ブリッジの発生箇所:6箇所以上9箇所以下
D:ブリッジの発生箇所:10箇所以上19箇所以下
E:ブリッジの発生箇所:20箇所以上49箇所以下
F:ブリッジの発生箇所:50箇所以上
【0115】
[はんだ不濡れ抑制性(バンプ形成性)評価]
半導体チップ上の8つの電極群(39端子×40端子)を顕微鏡(デジタルマイクロスコープ VHX-5000 キーエンス社製)を用いて観察し、はんだ不濡れが発生している電極の数を確認した。図10の(a)に示されるように、表面全体(100面積%)がはんだで被覆されている電極を良品と判断し、図10の(b)に示されるように、表面の一部にはんだで被覆されていない箇所が存在する電極(金電極が部分的にでも露出している電極)をはんだ不濡れが発生している電極と判断した。
【0116】
はんだ不濡れ抑制性を下記の基準で評価した。評価がC以上であれば、はんだ不濡れの発生が抑制されていると判断した。結果を表1~表4に示す。
A:はんだ不濡れ発生電極数:0個
B:はんだ不濡れ発生電極数:1個以上5個以下
C:はんだ不濡れ発生電極数:6個以上9個以下
D:はんだ不濡れ発生電極数:10個以上19個以下
E:はんだ不濡れ発生電極数:20個以上49個以下
F:はんだ不濡れ発生電極数:50個以上
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【符号の説明】
【0121】
1…部材、2…絶縁性基材、3…電極(第1の電極)、4…基材、5…樹脂被膜、6…はんだ粒子、7…はんだペースト層、9…はんだ粒子含有層、11…はんだバンプ、15…はんだバンプ付き部材(第1の部材)、21…第2の部材、23…第2の電極、30…接続構造体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10