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  • 特許-回分式濃縮装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】回分式濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20241203BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023050164
(22)【出願日】2023-03-27
(65)【公開番号】P2024139289
(43)【公開日】2024-10-09
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】石井 一輝
(72)【発明者】
【氏名】中馬 高明
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-043552(JP,A)
【文献】特開2019-126767(JP,A)
【文献】特開2016-128142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が導入される原水槽と、該原水槽内の水が通水される逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置からの濃縮水を該原水槽に返送する濃縮水ラインと、該濃縮水ラインに設けられた背圧制御バルブとを有する回分式濃縮装置において、
前記原水がCMPスラリー廃液又は含油廃水であり、
該濃縮水ラインの該背圧制御バルブの上流側にオリフィスを設置した回分式濃縮装置であって、
前記逆浸透膜装置からの濃縮水を前記原水槽に返送する前記濃縮水ラインにおける該逆浸透膜装置と前記オリフィスとの間、及び前記オリフィスと前記背圧制御バルブとの間に圧力計を設置したことを特徴とする回分式濃縮装置。
【請求項2】
前記オリフィスを2~5段設けた、請求項1の回分式濃縮装置。
【請求項3】
前記逆浸透膜装置を直列に2~5段設置した、請求項1又は2の回分式濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜装置(RO装置)を用いた回分式濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水を回分式に濃縮する回分式濃縮装置として、特許文献1に、複数の逆浸透膜モジュールを直列に接続し、汚染水タンク内の汚染水を順次に逆浸透膜モジュールに通水し、最終段の逆浸透膜モジュールからの濃縮水を汚染水タンクに返送し、各段の逆浸透膜モジュールの透過水を取り出すようにした濾過処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-126767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直列に配置した膜モジュールに対し高線速の流速で通水した場合、モジュール差圧が大きくなり、後段モジュールの有効圧力が低下する。すなわち、被処理水の水圧は、上流側の逆浸透モジュールの方が高く、下流側の逆浸透膜モジュールの方が低くなる。そのため、下流側の逆浸透膜モジュールの方が、膜面が汚れで詰まりやすくなるとともに、有効圧力の低下による除去率の低下を招く。特に、廃液を回分濃縮する場合においては、濃縮に伴い廃液の浸透圧が増加することで、濃縮到達時の膜にかかる有効圧力は運転初期と比べて小さくなり、有効圧力の低下によって除去率がさらに低下する。そのため、濃縮に伴い透過水水質が悪化する。
【0005】
また、高濃度のSS(懸濁固形物)を含む排水を循環処理する場合においては、配管やバルブ(例えば背圧制御バルブ)内においてSSが滞留しないような構造を有することが望ましい。
【0006】
本発明は、濃縮水ラインに設けられた背圧をかけるための背圧制御バルブにおける閉塞を防止することができる回分式濃縮装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下を要旨とする。
【0008】
[1] 原水槽と、該原水槽内の水が通水される逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置からの濃縮水を該原水槽に返送する濃縮水ラインと、該濃縮水ラインに設けられた背圧制御バルブとを有する回分式濃縮装置において、
該濃縮水ラインの該制御バルブの上流側にオリフィスを設置したことを特徴とする回分式濃縮装置。
【0009】
[2] 前記オリフィスを2~5段設けた、[1]の回分式濃縮装置。
【0010】
[3] 前記逆浸透膜装置を直列に2~5段設置した、[1]又は[2]の回分式濃縮装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の回分式濃縮装置は、濃縮水ラインに設けたバルブの上流側にオリフィスを備えているので、背圧制御バルブの弁リフトを過度に小さくすることなく、RO装置に十分に背圧をかけることができる。このように背圧制御バルブの弁リフトを過度に小さくすることが不要であるので、背圧制御バルブの閉塞が防止される。複数のバルブを用いることで単段のバルブを設けることよりも弁リフトを過度に小さくすることを抑制する方法もあるが、オリフィスを用いることの方が開度100%のバルブと捉えることができるため、バルブを複数もうけることよりもオリフィスを設けることの方が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る回分式濃縮装置の構成を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0014】
原水(被処理水)は、配管1から原水槽2に導入され、原水槽2内に所定量の原水が貯留される。
【0015】
原水槽2内の水は、底部の配管3からバルブ4を経てポンプ5により送出され、バルブ6及び配管7を介して第1の逆浸透膜装置(以下、RO装置ということがある。)11に供給される。
【0016】
第1のRO装置の濃縮水は配管11aを介して第2のRO装置12に供給され、第2のRO装置12の濃縮水は配管12aを介して第3のRO装置13に供給され、第3のRO装置13の濃縮水は配管13aを介して第4のRO装置14に供給される。第4のRO装置14の濃縮水は、配管15、オリフィス16、背圧制御バルブ17及び配管18を介して原水槽2に送水される。
【0017】
背圧制御バルブ17としては、ピストン式、ダイヤフラム式など各種のものが利用可能である。また、図1には示していないが、RO装置の最後段(図1では第4のRO装置14)の濃縮水とオリフィス16との間、及びオリフィス16と背圧制御バルブ17の間、に圧力計を設置し、圧力管理または閉塞箇所の特定(オリフィスと背圧制御バルブのいずれか)することも可能である。
【0018】
この実施の形態では、オリフィス16が2段に設置されているが、1段又は3段以上(最大で5段程度)であってもよい。5段以上になると逆浸透膜の最後尾及びオリフィスと制御バルブの間に設置の圧力計から読み取った、オリフィス間の圧力管理が煩雑となることから1~3段であることが望ましい。オリフィスとしては市販のオリフィスを用いることができるが、流路を絞る機能を有していればよく、特に限定されない。濃縮水中に粒径が10mmを超える懸濁物質が含まれる場合には、パンチングメタルのような流入防止部材を設けてもよい。
【0019】
各RO装置11~14のRO膜を透過した透過水は、各透過水配管11b、12b、13b、14bと合流透過水配管20を介して透過水槽21に導入される。透過水槽21内の透過水は、バルブ22及び配管23を介して取り出される。
【0020】
前記配管3からは配管8が分岐しており、該配管8にバルブ9が設けられている。バルブ9は原水槽2内から水(例えば、濃縮処理済みの液)を排出するときだけ開とされ、その他のときはバルブ9は閉とされている。
【0021】
逆浸透膜の材質には、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリアクリロニトル、複合膜などがあり、いずれのものも用いることができるが、原水が油分や界面活性剤を含む場合には、酢酸セルロースであることが望ましい。また逆浸透膜モジュールには管状型(チューブラー型)、ディスク型、平膜型、中空糸型、スパイラル型などがあり、いずれでもよい。なお、膜線流速が高く設定できる逆浸透膜としては、チューブラー型やディスク型があげられる。
【0022】
この回分式濃縮装置においては、原水槽2に所定量の原水を貯留させた後、バルブ4、6を開とし、ポンプ5を作動させる。原水槽2内の水は、配管3、7を介して第1~第4RO装置11~14に順次に通水され、第4RO装置14からの濃縮水が配管15、オリフィス16、背圧制御バルブ17及び配管18を介して原水槽2に返送される。透過水は透過水配管11b~14b,20及び透過水槽21へ取り出される。
【0023】
この実施の形態では、オリフィス16を設けているので、背圧制御バルブ17の弁リフトを過度に小さくすることなく、RO装置14を含む各RO装置11~14に十分に背圧をかけることができる。そのため、背圧制御バルブ17の閉塞を防止することができる。
【0024】
本発明では、処理対象とする原水は、特に限定されない。本発明は、CMPスラリー廃液、含油廃水など従来の回分式濃縮装置では処理が容易でなかった廃水も処理することができる。
【0025】
本発明では、RO濃縮水が、界面活性剤濃度1500mg/L以上、SS濃度14000mg/L以上、CODmn濃度10000mg/L以上となる場合であっても十分に処理することができる。
【符号の説明】
【0026】
2 原水槽
11~14 逆浸透膜装置
16 オリフィス
17 背圧制御バルブ
21 透過水槽
図1