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特許7597197ネットワーク管理装置、方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ネットワーク管理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/06 20220101AFI20241203BHJP
   H04L 41/044 20220101ALI20241203BHJP
【FI】
H04L41/06
H04L41/044
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023218040
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2022501560の分割
【原出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2024026502
(43)【公開日】2024-02-28
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正崇
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 健司
(72)【発明者】
【氏名】深見 公彦
(72)【発明者】
【氏名】田山 健一
【審査官】長谷川 未貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072668(JP,A)
【文献】特開2012-038028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク構成における、複数の通信装置と通信パスとの接続関係を示す情報と、複数の前記通信装置の階梯を示す階梯情報と、(1)物理レイヤでの各オブジェクトの関係、(2)論理レイヤでの各オブジェクトの関係、および(3)前記物理レイヤでの各オブジェクトと前記論理レイヤでの各オブジェクトとの関係が定義される情報とが格納される格納装置と、
前記通信装置に障害が発生したときに、前記階梯情報、ならびに(1)前記物理レイヤでの各オブジェクトの関係、(2)前記論理レイヤでの各オブジェクトの関係、および(3)前記物理レイヤでの各オブジェクトと前記論理レイヤでの各オブジェクトとの関係が定義される情報を含む、前記格納装置に格納される情報に基づいて、前記発生した障害の影響が及ぶ通信装置を、障害影響範囲として判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、
前記通信装置に障害が発生したときに、前記格納装置に格納される情報に基づいて、前記障害が発生した通信装置に接続される通信パスを示す情報を取得し、
前記障害が発生した通信装置の階梯情報と、前記取得した情報で示される通信パスに接続される他の通信装置の階梯情報とを比較し、
前記比較の結果が、前記他の通信装置が、前記障害が発生した通信装置の下位階梯の通信装置であることを示すときは、前記取得した情報で示される通信パスと前記他の通信装置とを前記障害影響範囲として判定し、
前記ネットワーク構成は、前記障害影響範囲として判定された下位階梯の通信装置に、前記障害が発生した通信装置を含む上位階梯である複数の通信装置が通信パスを介して接続される冗長構成を含み、
前記判定部は、
前記冗長構成における前記上位階梯の一部の通信装置が、前記障害が発生した通信装置であって、前記冗長構成における前記障害影響範囲として判定された前記下位階梯の通信装置と、前記冗長構成における上位階梯の他の通信装置との間の通信が可能であるときは、前記冗長構成における前記障害影響範囲として判定された前記下位階梯の通信装置を、片系断としての前記障害影響範囲として判定する、
ネットワーク管理装置。
【請求項2】
ネットワーク構成における、複数の通信装置と通信パスとの接続関係を示す情報と、複数の前記通信装置の階梯を示す階梯情報と、(1)物理レイヤでの各オブジェクトの関係、(2)論理レイヤでの各オブジェクトの関係、および(3)前記物理レイヤでの各オブジェクトと前記論理レイヤでの各オブジェクトとの関係が定義される情報とが格納される格納装置を有するネットワーク管理装置により行なわれる方法であって、
前記通信装置に障害が発生したときに、前記階梯情報、ならびに(1)前記物理レイヤでの各オブジェクトの関係、(2)前記論理レイヤでの各オブジェクトの関係、および(3)前記物理レイヤでの各オブジェクトと前記論理レイヤでの各オブジェクトとの関係が定義される情報を含む、前記格納装置に格納される情報に基づいて、前記発生した障害の影響が及ぶ通信装置を、障害影響範囲として前記ネットワーク管理装置の判定部により判定することを備え、
前記判定することは、
前記通信装置に障害が発生したときに、前記格納装置に格納される情報に基づいて、前記障害が発生した通信装置に接続される通信パスを示す情報を取得することと、
前記障害が発生した通信装置の階梯情報と、前記取得した情報で示される通信パスに接続される他の通信装置の階梯情報とを比較することと、
前記比較の結果が、前記他の通信装置が、前記障害が発生した通信装置の下位階梯の通信装置であることを示すときは、前記取得した情報で示される通信パスと前記他の通信装置とを前記障害影響範囲として判定することと、を含み、
前記ネットワーク構成は、前記障害影響範囲として判定された下位階梯の通信装置に、前記障害が発生した通信装置を含む上位階梯である複数の通信装置が通信パスを介して接続される冗長構成を含み、
前記判定することは、
前記冗長構成における前記上位階梯の一部の通信装置が、前記障害が発生した通信装置であって、前記冗長構成における前記障害影響範囲として判定された前記下位階梯の通信装置と、前記冗長構成における上位階梯の他の通信装置との間の通信が可能であるときは、前記冗長構成における前記障害影響範囲として判定された前記下位階梯の通信装置を、片系断としての前記障害影響範囲として判定することを含む、
ネットワーク管理方法。
【請求項3】
請求項1に記載のネットワーク管理装置の各部としてプロセッサを機能させるネットワーク管理処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ネットワーク管理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のネットワーク(network(NW))装置で実現された、NWの物理レイヤ(layer)および論理レイヤの構成を保持および表示する際に、NW装置の種別およびプロトコル(protocol)の変更に依らずに共通した方法で表示する技術(例えば特許文献1および非特許文献1を参照)を用い、障害箇所に関連するNWサービス(service)の関連範囲の特定と障害に伴う影響を受ける影響ユーザ(user)の把握とを、物理レイヤおよび論理レイヤの種別に依らずに共通な方法で実現する技術(例えば非特許文献2参照)がある。
【0003】
例えば、従来技術によるサービスへの影響を判定する方式では、障害に伴う影響があるNC(Network Connection)の両端に接続される装置を、一律に影響がある装置と判定している。NCは、2つの装置間のEnd-Endの接続性を示す。
【0004】
言い換えると、障害に伴う影響があるNCの両端に接続される装置の双方のみを、影響がある装置と判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2018-078523号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】佐藤正崇(Masataka SATO)、明石和陽(Kazuaki AKASHI)、堀内信吾(Shingo HORIUCHI)、小谷忠司(Tadashi KOTANI)、「多様なNWへ適応可能なNW管理アーキテクチャの検討(Study of Variable Management Architecture for Diverse Networks)」、信学技報(IEICE Technical Report), vol. 116, no. 324, ICM2016-31, pp. 37-42, 2016年11月.
【文献】深見公彦(Kimihiko FUKAMI)、村瀬健司(Kenji MURASE)、佐藤正崇(Masataka SATO)、田山健一(Kenichi TAYAMA)、「ネットワーク障害が及ぼすサービス影響把握方式の検討(Study on Method of Identifying Service Influence Occurred by Network Fault)」、信学技報, vol. 118, no. 483, ICM2018-51, pp. 13-18, 2019年3月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1に、上記の技術では、装置の上下関係(以後、装置階梯と称する)が考慮されておらず、影響があるNCの両端に接続される装置の双方が、一律に影響がある装置と判定される。しかし、実際はNCの両端に接続される装置の内、上位階梯の装置(以下、上位装置と称することがある)に必ずしも影響があるとは限らない。
【0008】
第2に、影響があると判定された装置に、当該装置の下位階梯の装置(以下、下位装置と称することがある)または同位階梯の装置(以下、同位装置と称することがある)が接続される場合、この装置にも影響が波及する。
第3に、従来技術では、装置階梯による冗長構成が考慮されずに影響が判定される。
しかし実際には、下位装置は2つの上位装置との間で冗長構成が組まれることが多く、片方の上位装置が障害を受けても、下位装置は、もう片方の上位装置との通信が可能なため、下位装置は片系運用となるため片系断と判定されるべきである。しかし、従来技術では、冗長構成が考慮された影響が判定できないため、全断と判定される。
そのため、正確な影響把握ができず、監視保守業務における影響把握作業に時間を要すると共に、災害発生時の復旧の迅速化が実現できていない。
【0009】
この発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、発生した障害に伴う影響を適切に判定することができるようにしたネットワーク管理装置、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るネットワーク管理装置は、ネットワーク構成における、複数の通信装置と通信パスとの接続関係を示す情報と、複数の前記通信装置の階梯を示す階梯情報と、(1)物理レイヤでの各オブジェクトの関係、(2)論理レイヤでの各オブジェクトの関係、および(3)前記物理レイヤでの各オブジェクトと前記論理レイヤでの各オブジェクトとの関係が定義される情報とが格納される格納装置と、前記通信装置に障害が発生したときに、前記階梯情報、ならびに(1)前記物理レイヤでの各オブジェクトの関係、(2)前記論理レイヤでの各オブジェクトの関係、および(3)前記物理レイヤでの各オブジェクトと前記論理レイヤでの各オブジェクトとの関係が定義される情報を含む、前記格納装置に格納される情報に基づいて、前記発生した障害の影響が及ぶ通信装置を、障害影響範囲として判定する判定部とを備え、前記判定部は、前記通信装置に障害が発生したときに、前記格納装置に格納される情報に基づいて、前記障害が発生した通信装置に接続される通信パスを示す情報を取得し、前記障害が発生した通信装置の階梯情報と、前記取得した情報で示される通信パスに接続される他の通信装置の階梯情報とを比較し、前記比較の結果が、前記他の通信装置が、前記障害が発生した通信装置の下位階梯の通信装置であることを示すときは、前記取得した情報で示される通信パスと前記他の通信装置とを前記障害影響範囲として判定し、前記ネットワーク構成は、前記障害影響範囲として判定された下位階梯の通信装置に、前記障害が発生した通信装置を含む上位階梯である複数の通信装置が通信パスを介して接続される冗長構成を含み、前記判定部は、前記冗長構成における前記上位階梯の一部の通信装置が、前記障害が発生した通信装置であって、前記冗長構成における前記障害影響範囲として判定された前記下位階梯の通信装置と、前記冗長構成における上位階梯の他の通信装置との間の通信が可能であるときは、前記冗長構成における前記障害影響範囲として判定された前記下位階梯の通信装置を、片系断としての前記障害影響範囲として判定する。
【0011】
本発明の一態様に係るネットワーク管理方法は、ネットワーク構成における、複数の通信装置と通信パスとの接続関係を示す情報と、複数の前記通信装置の階梯を示す階梯情報と、(1)物理レイヤでの各オブジェクトの関係、(2)論理レイヤでの各オブジェクトの関係、および(3)前記物理レイヤでの各オブジェクトと前記論理レイヤでの各オブジェクトとの関係が定義される情報とが格納される格納装置を有するネットワーク管理装置により行なわれる方法であって、前記通信装置に障害が発生したときに、前記階梯情報、ならびに(1)前記物理レイヤでの各オブジェクトの関係、(2)前記論理レイヤでの各オブジェクトの関係、および(3)前記物理レイヤでの各オブジェクトと前記論理レイヤでの各オブジェクトとの関係が定義される情報を含む、前記格納装置に格納される情報に基づいて、前記発生した障害の影響が及ぶ通信装置を、障害影響範囲として前記ネットワーク管理装置の判定部により判定することを備え、前記判定することは、前記通信装置に障害が発生したときに、前記格納装置に格納される情報に基づいて、前記障害が発生した通信装置に接続される通信パスを示す情報を取得することと、前記障害が発生した通信装置の階梯情報と、前記取得した情報で示される通信パスに接続される他の通信装置の階梯情報とを比較することと、前記比較の結果が、前記他の通信装置が、前記障害が発生した通信装置の下位階梯の通信装置であることを示すときは、前記取得した情報で示される通信パスと前記他の通信装置とを前記障害影響範囲として判定することと、を含み、前記ネットワーク構成は、前記障害影響範囲として判定された下位階梯の通信装置に、前記障害が発生した通信装置を含む上位階梯である複数の通信装置が通信パスを介して接続される冗長構成を含み、前記判定することは、前記冗長構成における前記上位階梯の一部の通信装置が、前記障害が発生した通信装置であって、前記冗長構成における前記障害影響範囲として判定された前記下位階梯の通信装置と、前記冗長構成における上位階梯の他の通信装置との間の通信が可能であるときは、前記冗長構成における前記障害影響範囲として判定された前記下位階梯の通信装置を、片系断としての前記障害影響範囲として判定することを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ネットワークで発生した障害に伴う影響を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
図2図2は、ネットワーク設備情報の定義の一例を表形式で示す図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係るネットワーク管理装置による処理動作の一例を示すフローチャート(flow chart)である。
図4図4は、装置および通信パスの接続関係の一例を示す図である。
図5図5は、各装置における階梯情報の一例を示す図である。
図6図6は、影響パスの一例を示す図である。
図7図7は、障害に伴う影響がある装置の一例を示す図である。
図8図8は、障害に伴う影響の判定結果の一例を示す図である。
図9図9は、本発明の第2の実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
図10図10は、本発明の第2の実施形態に係るネットワーク管理装置の障害波及判定部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、装置および通信パスの接続関係の一例を示す図である。
図12図12は、障害に伴う影響がある装置の一例を示す図である。
図13図13は、障害に伴う影響が波及した通信パスの一例を示す図である。
図14図14は、障害に伴う影響がある装置の一例を示す図である。
図15図15は、障害に伴う影響の判定結果の一例を示す図である。
図16図16は、本発明の第3の実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
図17図17は、本発明の第3の実施形態に係るネットワーク管理装置の冗長構成取得部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
図18図18は、本発明の第3の実施形態に係るネットワーク管理装置の冗長構成判定処理部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
図19図19は、装置および通信パスの接続関係の一例を示す図である。
図20図20は、障害に伴う影響があるパスの一例を示す図である。
図21図21は、片系断を示す装置の一例を示す図である。
図22図22は、障害に伴う影響の判定結果の一例を示す図である。
図23図23は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置のハードウエア(hardware)構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、この発明に係わる一実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
図1に示されるように、本発明の第1の実施形態に係るネットワーク管理装置100は、障害影響判定処理部10、Spec(Specification) DB(database(データベース))20、およびEntity DB30を有する。
障害影響判定処理部10は、影響パス算出処理部11および装置障害判定処理部12を有する。装置障害判定処理部12は、影響パス取得処理部12a、装置情報取得処理部12b、および装置階梯判定処理部12cを有する。
【0015】
Spec DB20には、ネットワークの設備情報(Spec(Specification(仕様))が格納される。
Entity DB30には、ネットワークの設備情報(Entity(実体))が格納される。この設備情報では、(1)物理レイヤでの各オブジェクト(object)の関係、(2)論理レイヤでの各オブジェクトの関係、および(3)物理レイヤでのオブジェクトと論理レイヤでのオブジェクトとの関係、がそれぞれ定義される。
【0016】
物理レイヤの構成としては、PS(Physical Structure), PD(Physical Device), PP(Physical Port), AS(Aggregate Section), PL(Physical Link)およびPC(Physical Connector)でなるEntity(情報オブジェクト)が適用され得る。また、論理レイヤの構成としては、TL(Topological Link), NFD(Network Forwarding Domain), TPE(Termination Point Encapsulation), NC(Network Connection),LC(Link Connect)およびXC(Cross(X) Connect)でなるEntityが適用され得る。このような適用により、物理レイヤおよび論理レイヤの構成が統一した形式で保持可能である。
【0017】
物理レイヤにおけるEntity名は、上記PS, PD, PP, AS, PL, PCに区分され得る。それぞれのEntity名における「Entity名:意味:対応関係」は以下のとおりである。
・PS:収容ビル(building)、マンホール(manhole)などの設備:装置オブジェクト
・PD:装置:装置オブジェクト
・PP:装置が持つ通信ポート(port):ポートオブジェクト
・AS:ケーブル(cable):媒体オブジェクト
・PL:ケーブルの心線:媒体オブジェクト
・PC:ケーブルの接続用コネクタ(connector):媒体オブジェクト
【0018】
論理レイヤにおけるEntity名は、上記TL, NFD, TPE, NC, LC, XCに区分され得る。それぞれのEntity名における「Entity名:意味:対応関係」は以下のとおりである。
・TL:装置間の接続性(Logical Deviceレイヤ(LDレイヤと呼ぶこともある)内):線オブジェクト
・NFD:装置内の転送可能な範囲(Logical Deviceレイヤ内):線または面オブジェクト
・TPE:通信の終端点:点オブジェクト
・NC:LC(Link Connect)、XC(Cross(X) Connect)によって形成されるEnd-Endの接続性(通信レイヤ内):通信オブジェクト
・LC:装置間の接続性(通信レイヤ内):線または面オブジェクト
・XC:装置内の接続性(通信レイヤ内):線または面オブジェクト
【0019】
次に設備情報のSpec(物理レイヤ)について説明する。物理レイヤにおいて、装置名又はケーブル種別のような固有な情報である属性は、Specクラス(class)(特性を示す属性が定義される)がインスタンス(instance)化された情報としてSpec DB20に保持される。具体的には以下のSpecクラスが定義される。
【0020】
物理レイヤにおけるSpecクラスの「Spec名:意味」は以下のとおりである。
・PS Spec (Physical Structure Specification):PS毎に固有な属性を定義
・PD Spec (Physical Device Specification):PD毎に固有な属性を定義
・PP Spec (Physical Port Specification):PP毎に固有な属性を定義
・AS Spec (Aggregate Section Specification):AS毎に固有な属性を定義
・PL Spec (Physical Link Specification):PL毎に固有な属性を定義
・PC Spec (Physical Connector Specification):PC毎に固有な属性を定義
【0021】
次に設備情報のSpec(論理レイヤ)について説明する。
論理レイヤにおいて、レイヤの層毎に固有な属性(VLANID,IPアドレス(address),波長番号等)は、それぞれのSpecクラスがインスタンス化された情報としてSpec DB20に保持される。具体的には以下のSpecクラスが定義される。
【0022】
論理レイヤにおけるSpecクラスの「Spec名:意味」は以下のとおりである。
・TL Spec (Topological Link Specification):TL毎に固有な属性を定義
・NFD Spec (Network Forwarding Domain Specification):NFD毎に固有な属性を定義
・TPE Spec (Termination Point Encapsulation Specification):TPE毎に固有な属性を定義
・NC Spec (Network Connection Specification):NC毎に固有な属性を定義
・LC Spec (Link Connect Specification):LC毎に固有な属性を定義
・XC Spec (Cross(X) Connect Specification):XC毎に固有な属性を定義
また、レイヤに共通する属性と、その値は、Entityクラスがインスタンス化された情報がEntity DB30に保持される。
【0023】
図2は、ネットワーク設備情報の定義の一例を表形式で示す図である。
Spec DB20に格納される設備情報の項目名、および値は、図2に示されるように定義される。
図2に示された例では、同じ通信パスにおける複数の装置(PD)の階梯情報(skuNumber)を表す属性が定義される。
この装置階梯情報は、ユーザにより任意に付与および修正が可能である。
【0024】
階梯情報では、数値が小さい装置は上位階梯の装置(以下、上位の装置と称することがある)で、数値が大きい装置は下位階梯の装置(以下、下位の装置と称することがある)であることが定義される。つまり、本実施形態におけるネットワークの設備情報は、通信パスを介して通信可能である複数の通信装置の階梯情報を含む。
【0025】
本実施形態では、装置の階梯情報が考慮され、NCの両端に対応する装置のうち、下位の装置のみについて障害発生に伴う影響があり、上位装置には当該影響が及ばないとするロジック(logic)が、サービスおよびNW構成に依らずに統一的に実現される。
【0026】
これにより、NCの両端に対応する装置に上位と下位の関係がある構成において、障害発生に伴う影響が、より正確に算出され、監視保守業務における影響把握の作業が低減されるとともに、災害発生時の復旧の迅速化が実現される。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るネットワーク管理装置による処理動作の一例を示すフローチャートである。
図3に示される処理に先立ち、障害影響判定処理部10の影響パス算出処理部11は、Entity DB30に格納される設備情報に基づいて、物理レイヤにおける障害発生箇所に関するオブジェクトに対応する、論理レイヤにおけるオブジェクトを、障害に伴う影響がある基本パスとして算出する。ここでは、物理レイヤにおける1つの装置に障害(故障)が発生したときに、この装置に論理レイヤ上で対応する複数のNCが、障害に伴う影響がある基本パスとして算出される。以下、装置と、この装置に論理レイヤ上で対応するNCとは接続関係を有するとして説明する。
【0028】
次に、影響パス取得処理として、以下のS11が実行される。影響パス取得処理部12aは、上記算出された、障害に伴う影響がある基本パスの一覧をネットワークの設備情報から配列で取得する(S11)。
【0029】
次に、装置取得処理として、以下のS21,22が実行される。S11で取得された配列の要素である各NCのうち以降の処理における未処理の要素があれば(S21のYes)、装置情報取得処理部12bは、未処理の要素の1つである、基本パスの一端に接続される装置を始点装置の情報としてネットワークの設備情報から取得し、当該基本パスの他端に接続される装置の情報を終点装置の情報としてネットワークの設備情報から取得する(S22)。
【0030】
次に、装置階梯判定処理として、以下のS31~S35が実行される。装置階梯判定処理部12cは、S22で取得された情報で示される始点装置の階梯情報と終点装置の階梯情報とをネットワークの設備情報から取得する(S31)。
【0031】
上記始点装置の階梯情報の値が、上記終点装置の階梯情報の値以上であれば(S32のYes)、装置階梯判定処理部12cは、S22で取得された情報で示される始点装置を、障害発生に伴う影響がある装置と判定する(S33)。
【0032】
S32でNoのとき、またはS33の後で、上記終点装置の階梯情報の値が、上記始点装置の階梯情報の値以上であれば(S34のYes)、装置階梯判定処理部12cは、S22で取得された情報で示される終点装置を、障害発生に伴う影響がある装置と判定する(S35)。
【0033】
S34でNoのとき、またはS35の後は、S21に戻る。そして、S22以降での他の未処理の要素があれば、この要素であるNCについてS22以降の処理がなされる。
S21でNoのとき、つまりS11で取得された配列の全ての要素についてS22以降の処理がなされたときは一連の処理が終了する。
【0034】
次に、具体的な構成に対する処理の一例を説明する。図4は、装置および通信パスの接続関係の一例を示す図である。
ここでは、図4に示されるように、建物「Aビル」に収容される装置A、建物「Bビル」に収容される装置B、建物「Cビル」に収容される装置C、および建物「Dビル」に収容される装置Dが設けられるとする。
そして、装置Aに論理レイヤのオブジェクトNC1の一端が接続され、このオブジェクトNC1の他端に装置Bが接続され、この装置Bに論理レイヤのオブジェクトNC2の一端が接続され、このオブジェクトNC2の他端に装置Cが接続され、この装置Cに論理レイヤのオブジェクトNC3の一端が接続され、このオブジェクトNC3の他端に装置Dが接続されるとする。
【0035】
図5は、各装置における階梯情報の一例を示す図である。図5に示されるように、上記の構成における、各装置の階梯情報の値は以下のように定義される。
・装置A:10
・装置B:20
・装置C:30
・装置D:40
つまり、この階梯情報では装置Aが最上位階梯の装置で、装置Bが上位階梯の装置で、装置Cが中位階梯の装置で、装置Dが最下位階梯の装置であることが示される。
【0036】
S11として、装置Bの故障による影響パス取得処理が実施され、障害に伴う影響がある基本パス一覧である影響パスが以下のように配列で取得される。
影響パス:NC2,NC1
【0037】
図6は、影響パスの一例を示す図である。図6における太字で示される装置Bが故障発生元の装置に対応し、太線で示されるNC1とNC2が影響パスに対応する。
S22として、1つ目の影響パスNC2について、始点装置と終点装置とが以下のように取得される。
始点装置:装置B
終点装置:装置C
【0038】
S31として、始点装置の階梯情報の値と終点装置の階梯情報の値とが以下のように取得される。
始点装置:装置B(階梯情報:20)
終点装置:装置C(階梯情報:30)
【0039】
始点装置である装置Bの階梯情報の値「20」は、終点装置である装置Cの階梯情報の値「30」以上ではないので(S32のNo)、S34に移る。
【0040】
終点装置である装置Cの階梯情報の値「30」は、始点装置である装置Bの階梯情報の値「20」以上であるので(S34のYes)、S35として、終点装置である装置Cが障害に伴う影響がある装置と判定される。
図7は、障害に伴う影響がある装置の一例を示す図である。図7における太字で示される装置Cは、障害に伴う影響がある装置に対応する。
S11で取得された残りのNCであるNC1についても、S22以降の処理がなされる。
この処理の結果、NC1に接続される装置Bは、障害に伴う影響がある装置と判定される。
【0041】
この装置Bは故障が発生した装置自体であるので、影響があると判定された他の装置Cが、装置Bで発生した障害に伴う影響がある装置の最終的判定結果である。また、その他の装置A,Dは障害に伴う影響がない装置として判定される。
【0042】
つまり装置A,B,CおよびDにおける障害発生箇所と障害に伴う影響の有無は以下のとおりである。
装置A:障害に伴う影響なし
装置B:障害発生
装置C:障害に伴う影響あり
装置D:障害に伴う影響なし
図8は、障害に伴う影響の判定結果の一例を示す図である。この図8では、上記のように、装置A,B,CおよびDにおける、上記の障害に伴う影響の有無が判定されたことが示される。
【0043】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態について説明する。この実施形態における、第1の実施形態と重複する部分については詳細な説明を省略する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
図9に示されるように、本発明の第2の実施形態に係るネットワーク管理装置100は、第1の実施形態で説明した構成と比較して、障害影響判定処理部10の装置障害判定処理部12は、障害波及判定処理部12dをさらに有する。
【0044】
第2の実施形態では、装置の階梯情報が考慮され、第1の実施形態で障害に伴う影響があると判定された装置に、さらに下位の装置または同位の装置が接続されているときに、この接続される装置も、障害に伴う影響があると判定するロジックが、サービスおよびNW構成に依らず統一的に実現される。
【0045】
これにより、影響パスであるNCの両端に接続される装置に、さらに別の装置が接続されている構成において、障害発生に伴う影響が、より正確に判定され、監視保守業務における影響把握の作業がさらに低減できる。
【0046】
第2の実施形態では、上位装置の故障に伴う影響が、配下の下位装置に波及するロジックを実現し、故障した装置に直接接続されない装置についても、障害に伴う影響があると判定できる。
【0047】
図10は、本発明の第2の実施形態に係るネットワーク管理装置の障害波及判定部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
第1の実施形態で示された処理の後で、障害波及判定処理部12dは、障害が発生した装置、および障害に伴う影響があると判定された装置の情報をネットワークの設備情報から取得する(S41)。
この取得した情報で示される配列の要素である装置のうち以降の処理における未処理の要素があれば(S42のYes)、障害波及判定処理部12dは、この要素に対応する装置毎に、当該装置に接続されるNCの情報をネットワークの設備情報から配列で取得する(S43)。
【0048】
S43で取得した情報で示される配列の要素であるNCのうち、以降の処理にて未処理の要素があれば(S44のYes)、S43で取得された情報で示されるNCのうちS47以降で一度処理されたNCについては以降の処理の対象外とし(S45→S46)、S45に戻る。
【0049】
S43で取得された情報で示されるNCのうち上記処理されたNC以外については、障害波及判定処理部12dは、NC毎に、当該NCに接続される対向先の装置の情報を取得する(S47)。この対向先の装置とは、S41で取得された情報で示される装置にS43で取得された情報で示されるNCの一端が接続されるときに、このNCの他端に接続される装置である。
【0050】
障害波及判定処理部12dは、両方の装置、つまりS41で取得された情報で示される装置の階梯情報と、この装置に対する対向先装置の階梯情報とをそれぞれ取得し「対向先装置に比べ、影響あり装置の方が上位(同位含む)であるときに、これらの装置が接続されるNC」があれば、このNCをS43で取得した情報で示されるNCから選択して、このNCを示す情報を内部メモリに保持する(S48)。
S48で保持したNCがあるときは(S49のYes)、障害波及判定処理部12dは、S48で保持したNCを障害に伴う影響が波及したNCであると判定する(S50)。
【0051】
そして、障害波及判定処理部12dは、このNCに接続される対向先の装置を、障害に伴う影響がある装置であると新たに判定する(S51)。
障害波及判定処理部12dは、S51で影響があると判定した装置をS43以降の処理の対象に設定し(S52)、S43に戻る。この設定された装置に対してS43以降の処理がなされる。
【0052】
次に、具体的な構成に対する処理の一例を説明する。図11は、装置および通信パスの接続関係の一例を示す図である。
図11に示されるように、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した上記の装置A~Dに加え、建物「Eビル」に収容される装置Eが設けられるとする。
そして、上記の装置A、NC1、装置B、NC2、装置C、NC3、および装置Dが、第1の実施形態で説明したように接続される上で、装置Dに論理レイヤのオブジェクトNC4の一端が接続され、このオブジェクトNC4の他端に装置Eが接続されるとする。
また、装置A~Dの階梯情報の値は第1の実施形態で説明した値と同じで、装置Eの階梯情報の値は装置Dの階梯情報の値と同じ40であるとする。
【0053】
この構成において、第1の実施形態で説明した各処理により、装置A,B,C,D,Eにおける障害発生箇所と障害に伴う影響の有無は以下のように判定される。
装置A:障害に伴う影響なし
装置B:障害発生
装置C:障害に伴う影響あり
装置D,E:障害に伴う影響なし
【0054】
図12は、障害に伴う影響がある装置の一例を示す図である。図12における太字で示される装置Bは、障害が発生した装置に対応し、図12における太字で示される装置Cは、第1の実施形態にて障害に伴う影響があると判定された装置に対応する。
【0055】
S41として、障害波及判定処理部12dは、障害が発生した装置の情報、および障害に伴う影響があると判定された装置の情報を以下のように取得する。
障害が発生した装置:装置B
障害に伴う影響がある装置:装置C
【0056】
S43として、障害波及判定処理部12dは、上記取得された情報で示される装置毎に、この装置に接続されるNCを示す情報を取得する。
ここでは装置Cに係る処理を例として説明する。
S43では、障害波及判定処理部12dは、S41で取得した情報で示される装置Cに接続されるNCであるNC2およびNC3を示す情報を取得する。
【0057】
S47では、障害波及判定処理部12dは、S41で取得した情報で示される1つ目の装置である装置Cからみた、S43で取得した情報で示されるNC2を介した対向先の装置である装置Bを示す情報を取得する。
【0058】
また、同じくS47では、障害波及判定処理部12dは、S41で取得した情報で示される2つ目の装置である装置Cからみた、S43で取得した情報で示されるNC3を介した対向先の装置である装置Dを示す情報を取得する。
【0059】
S48として、障害波及判定処理部12dは、S41で取得した情報で示される装置Cの階梯情報の値30と、この装置Cからみた、S43で取得した情報で示されるNC2を介した対向先の装置Bの階梯情報の値20とを比較すると、対向先の装置Bに比べて、障害に伴う影響がある装置Cが下位階梯であるため、NC2を示す情報はS48では保持されない。
【0060】
一方で、障害波及判定処理部12dは、S41で取得した情報で示される装置Cの階梯情報の値30と、この装置Cからみた、S43で取得した情報で示されるNC3を介した対向先の装置Dの階梯情報の値40とを比較すると、対向先の装置Dに比べて、障害に伴う影響がある装置Cは上位階梯であるため、NC3を示す情報はS48で保持される。
【0061】
S50として、障害波及判定処理部12dは、S48で保持した情報で示されるNC3を障害に伴う影響が波及したNCであると判定する。図13は、障害に伴う影響が波及した通信パスの一例を示す図である。図13では、障害に伴う影響が波及したNCであるNC3が太線で示される。
【0062】
S51として、障害波及判定処理部12dは、S41で取得した情報で示される装置Cからみた、S48で保持した情報で示されるNC3を介した対向先の装置Dを障害に伴う影響がある装置と判定する。図14は、障害に伴う影響がある装置の一例を示す図である。図14では、障害に伴う影響がある装置Dが太字で示される。
S52として、障害波及判定処理部12dは、S48で障害に伴う影響があると判定した装置DをS43以降の処理の対象に設定する。
【0063】
この設定により、S43として、障害波及判定処理部12dは、S48で設定した装置Dに接続されるNC3,NC4を示す情報を取得する。
【0064】
S45の判定で、S43で取得された情報で示されるNCのうち、1つ目のNCであるNC3はS47以降の処理がなされたNCであるため、以降の処理の対象外である。一方、S43で取得された情報で示される2つ目のNCであるNC4は、S47以降の処理がなされたNCでない。このため、S47として、障害波及判定処理部12dは、S52で設定された装置Dからみた、S43で取得された情報で示されるNC4を介した対向先の装置Eを示す情報を取得する。
【0065】
S52で設定した装置Dの階梯情報の値40に対し、この装置Dからみた、S43で取得された情報で示されるNC4を介した対向先の装置Eの階梯情報の値40は同じである。つまり、装置Dは対向先の装置Eと同位階梯であるため、S48では、障害波及判定処理部12dは、上記NC4を示す情報を保持する。
【0066】
S50では、障害波及判定処理部12dは、S48で保持した情報で示されるNC4を、障害に伴う影響がある装置であると判定する。
S51にて、障害波及判定処理部12dは、S52で設定した装置Dからみた、S48で保持した情報で示されるNC4を介した対向先の装置Eを、障害発生に伴う影響がある装置と判定する。
【0067】
また、S41で取得された他の全ての装置、ここでは装置Bについても、S42以降の処理が実施されることで、障害に伴う影響の最終的な判定結果は以下のようになる。図15は、障害に伴う影響の判定結果の一例を示す図である。この図15で示される判定結果では、第1の実施形態で説明した各処理が実施されたときと比較して、装置D,Eについては、障害に伴う影響がある装置と判定されることが相違する。つまり、第1の実施形態と比較して、より下位の装置への影響の波及が判定される。
装置A:障害に伴う影響なし
装置B:障害発生
装置C,D,E:障害に伴う影響あり
【0068】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態について説明する。この実施形態における、第2の実施形態と重複する部分については詳細な説明を省略する。
図16は、本発明の第3の実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
図16に示されるように、本発明の第3の実施形態に係るネットワーク管理装置100は、第2の実施形態で説明した構成と比較して、障害影響判定処理部10は、冗長構成判定処理部13を有し、ネットワーク管理装置100は、障害影響判定処理部10とは別に、事前データ処理部40を備える。事前データ処理部40は、冗長構成取得処理部41を有する。
【0069】
第3の実施形態では、装置の階梯情報が考慮され、冗長構成を判断するロジックと、冗長構成における下位装置が片系断であるか全断であるかを判定するロジックが、サービスおよびNW構成に依らず統一的に実現される。
【0070】
これにより、上位装置と下位装置との間で冗長構成が組まれている構成において、障害に伴う影響が、より正確に判定され、監視保守業務における影響把握の作業をさらに低減できる。
【0071】
図17は、本発明の第3の実施形態に係るネットワーク管理装置の冗長構成取得部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
まず、冗長構成取得処理部41は、基本パス一覧におけるNCに対する接続先機器である複数の装置の情報をネットワーク設備情報から取得する(S61)。
【0072】
冗長構成取得処理部41は、S61取得した情報で示される各装置の階梯情報の値を比較し、下位の装置があれば、この装置の情報をEntity DB30から取得する(S62)。
S62で下位の装置の情報が取得されていれば(S63のYes)、冗長構成取得処理部41は、S62で取得した情報で示される下位の装置に接続される、他のNCの情報をネットワーク設備情報から取得する(S64)。
【0073】
以降の処理で未処理のNCがあれば(S65のYes)、冗長構成取得処理部41は、S63で取得した情報で示されるNCについて、S62で取得した情報で示される装置の階梯情報の値と、この装置に対する当該NCを介した対向先の装置の階梯情報の値とを比較する(S66)。
【0074】
この比較の結果、対向先の装置が、S62で取得した情報で示される装置より上位の装置であれば(S67のYes)、冗長構成取得処理部41は、S61で取得された情報で示されるNCとS63で取得された情報で示されるNCは、冗長構成を組むと判定し、それぞれのNCに係るネットワーク設備情報の定義である外部定義に冗長構成を組むNCを保持する(S68)。
S68の後、またはS67でNoのときは、S65の判定に戻る。S63またはS65でNoのときは一連の冗長構成取得処理が終了する。
【0075】
図18は、本発明の第3の実施形態に係るネットワーク管理装置の冗長構成判定処理部による処理動作の一例を示すフローチャートである。
冗長構成判定処理部13は、装置の障害に伴う影響が及ぶNCを示す情報をEntity DB30から取得する(S71)。
【0076】
冗長構成判定処理部13は、S71で取得した情報で示されるNCと、このNCとの間で冗長構成を組むと冗長構成取得処理で判定されたNCを外部定義から取得し、冗長構成リストとして取得する(S72)。
【0077】
S72で取得された冗長構成リストで示される各NCの全てが「全断」である、との条件が満たされない場合、つまり、冗長構成リストで示される各NCに全断でないNCが含まれる場合、冗長構成判定処理部13は、冗長構成を組むNCが片系断であると判定し、このNCを示す情報を、障害に伴う影響がある基本パス一覧に追加する(S73)。
【0078】
冗長構成判定処理部13は、S72で取得された冗長構成リストで示される各NCのうち、「全断」であるNCを示す情報を、障害に伴う影響がある基本パスの一覧から削除する(S74)。以上で冗長構成判定処理が終了する。
【0079】
次に、具体的な構成に対する処理の一例を説明する。図19は、装置および通信パスの接続関係の一例を示す図である。
図19に示されるように、第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した装置A,BおよびCが設けられるとする。
そして、上記の装置A、NC1、装置B、NC2、および装置Cが、第1の実施形態で説明したように接続されるとする。
また、装置Aの階梯情報の値およびBの階梯情報の値は第1の実施形態で説明した値と同じであるが、装置Cの階梯情報の値は装置Aの階梯情報の値と同じ10であるとする。
【0080】
冗長構成取得処理のS61として、冗長構成取得処理部41は、基本パスで示されるNC1の接続先機器である装置Aおよび装置Bを示す情報を取得する。
S62として、冗長構成取得処理部41は、S61取得した情報で示される一方の装置Aの階梯情報の値「10」と、他方の装置Bの階梯情報の値「20」とを比較し、この値が大きい下位の装置Bを示す情報を取得する。
【0081】
S64として、冗長構成取得処理部41は、S62で取得した情報で示される下位の装置Bに接続される他のNC2を示す情報を取得する。
S66として、冗長構成取得処理部41は、S64で取得した情報で示されるNC2について、S62で取得した情報で示される装置Bの階梯情報の値「20」と、この装置BからNC2を介した対向先の装置Cの階梯情報の値「10」とを比較する。
【0082】
この比較では、S62で取得した情報で示される装置Bに対して、対向先の装置Cが上位の装置であるので、S68として、冗長構成取得処理部41は、S61で取得した情報で示されるNC1と、S63で取得した情報で示されるNC2とは冗長構成を組むと判定し、NC1の外部定義に当該NC1との間で冗長構成を組むNC2を示す情報を保持し、NC2の外部定義に当該NC2との間で冗長構成を組むNC1を示す情報を保持する。
【0083】
冗長構成判定処理のS71として、冗長構成判定処理部13は、基本パスで示される装置Aが故障したときの、障害に伴う影響がある通信パスであるNC1を示す情報を取得する。図20は、障害に伴う影響があるパスの一例を示す図である。この図20では、上記のように、装置Aが故障したことと、上記のNC1が、障害に伴う影響がある通信パスであることが示される。
【0084】
S72として、冗長構成判定処理部13は、S71で取得した情報で示されるNC1と、このNC1との間で冗長構成を組むNC2とを示す情報を外部定義から取得し、この取得結果で示される冗長構成リストとして取得する。
【0085】
S72で取得された冗長構成リストで示される全てのNC1,NC2が「全断」である、との条件が満たされない場合、S73として、冗長構成判定処理部13は、NC1との間で冗長構成を組むNC2を片系断と判定する、このNCを示す情報を、障害に伴う影響がある基本パス一覧に追加する。図21は、片系断を示す装置の一例を示す図である。この図21では、上記のようにNC2が片系断と判定されたことが示される。
【0086】
S74として、冗長構成判定処理部13は、S72で取得された冗長構成リストで示される各NCのうち「全断」であるNC1を示す情報を、障害に伴う影響がる基本パスの一覧から削除する。この削除後の結果に対し、第1の実施形態、第2の実施形態で説明した処理を行うことができる。
【0087】
上記の処理の結果、障害に伴う影響の最終的な判定結果は以下のようになる。図22は、障害に伴う影響の判定結果の一例を示す図である。この結果では、NC2について、上位側の装置Aは、装置Aの故障(障害)に伴う影響がなく、下位側の装置Bには障害に伴う影響があることが第1の実施形態により判定され、第2の実施形態により、この影響の波及は特にないことが判定される。
装置A:障害発生
装置B:障害に伴う影響あり(片系断)
装置C:障害に伴う影響なし
【0088】
図23は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図23に示された例では、上記の実施形態に係るネットワーク管理装置100は、例えばサーバコンピュータ(server computer)またはパーソナルコンピュータ(personal computer)により構成され、CPU等のハードウエアプロセッサ(hardware processor)111Aを有する。そして、このハードウエアプロセッサ111Aに対し、プログラムメモリ(program memory)111B、データメモリ(data memory)112、入出力インタフェース(interface)113及び通信インタフェース114が、バス(bus)120を介して接続される。
【0089】
通信インタフェース114は、例えば1つ以上の無線の通信インタフェースユニットを含んでおり、通信ネットワークNWとの間で情報の送受信を可能にする。無線インタフェースとしては、例えば無線LAN(Local Area Network)などの小電力無線データ通信規格が採用されたインタフェースが使用される。
【0090】
入出力インタフェース113には、ネットワーク管理装置100に付設される、オペレータ(operator)用の入力デバイス50(device)および出力デバイス60が接続される。
入出力インタフェース113は、キーボード、タッチパネル(touch panel)、タッチパッド(touchpad)、マウス(mouse)等の入力デバイス50を通じてオペレータにより入力された操作データを取り込むとともに、出力データを液晶または有機EL(Electro Luminescence)等が用いられた表示デバイスを含む出力デバイス60へ出力して表示させる処理を行なう。なお、入力デバイス50および出力デバイス60には、ネットワーク管理装置100に内蔵されたデバイスが使用されてもよく、また、ネットワーク(network)NWを介してネットワーク管理装置100と通信可能である他の情報端末の入力デバイスおよび出力デバイスが使用されてもよい。
【0091】
プログラムメモリ111Bは、非一時的な有形の記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリ(non-volatile memory)と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとが組み合わせて使用されたもので、一実施形態に係る各種制御処理を実行する為に必要なプログラムが格納されている。
【0092】
データメモリ112は、有形の記憶媒体として、例えば、上記の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ(volatile memory)とが組み合わせて使用されたもので、各種処理が行なわれる過程で取得および作成された各種データが記憶される為に用いられる。
【0093】
本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置100は、ソフトウエア(software)による処理機能部として、図1または図9に示される障害影響判定処理部10、Spec DB20、およびEntity DB30を有するデータ処理装置、または図16に示される障害影響判定処理部10、Spec DB20、Entity DB30、および事前データ処理部40を有するデータ処理装置として構成され得る。
【0094】
Spec DB20およびEntity DB30は、図23に示されたデータメモリ112が用いられることで構成され得る。ただし、これらの領域はネットワーク管理装置100内に必須の構成ではなく、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの外付け記憶媒体、又はクラウド(cloud)に配置されたデータベースサーバ(database server)等の記憶装置に設けられた領域であってもよい。
【0095】
上記の障害影響判定処理部10、および事前データ処理部40の各部における処理機能部は、いずれも、プログラムメモリ111Bに格納されたプログラムを上記ハードウエアプロセッサ111Aにより読み出させて実行させることにより実現され得る。なお、これらの処理機能部の一部または全部は、特定用途向け集積回路(ASIC(Application Specific Integrated Circuit))またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路を含む、他の多様な形式によって実現されてもよい。
【0096】
また、各実施形態に記載された手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウエア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク(Floppy disk)、ハードディスク等)、光ディスク(optical disc)(CD-ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ(Flash memory)等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布され得る。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウエア手段(実行プログラムのみならずテーブル、データ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウエア手段を構築し、このソフトウエア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0098】
10…障害影響判定処理部
11…影響パス算出処理部
12…装置障害判定処理部
12a…影響パス取得処理部
12b…装置情報取得処理部
12c…装置階梯判定処理部
12d…障害波及判定処理部
13…冗長構成判定処理部
40…事前データ処理部
41…冗長構成取得処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23