IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ イー アイ カンパニの特許一覧

特許7597287透過型電子顕微鏡のための自動データ取得方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】透過型電子顕微鏡のための自動データ取得方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20241203BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01J37/22 501Z
H01J37/26
H01J37/22 501A
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023168965
(22)【出願日】2023-09-29
(65)【公開番号】P2024052619
(43)【公開日】2024-04-11
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】22199178
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】トン ユイチェン
(72)【発明者】
【氏名】コール ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ファン クニッペンベルフ バルト
(72)【発明者】
【氏名】ティーメイエル ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】ユイ リンポー
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145499(JP,A)
【文献】特開2016-017966(JP,A)
【文献】特開2006-286578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型電子顕微鏡のための自動データ取得方法であって、
第1の倍率で試料の基準画像を取得することと、
前記基準画像内で識別された第1の複数のターゲット地点の各々について、
前記透過型電子顕微鏡の電子ビームを前記ターゲット地点に誘導することと、
前記第1の倍率よりも高い第2の倍率で前記試料の較正画像を取得することと、
画像処理技術を使用して、前記較正画像内の前記ターゲット地点の予想位置と前記較正画像内の前記ターゲット地点の観察位置との間の見かけのシフトを識別することと、
前記第1の複数のターゲット地点及び対応する見かけのシフトを使用して非線形モデルを訓練することと、
前記非線形モデルに基づいて、次のターゲット地点に対する較正ターゲット地点を計算することと、
前記電子ビームを前記較正ターゲット地点に誘導し、前記第1の倍率よりも高い第3の倍率で画像を取得することとを含む方法。
【請求項2】
前記第1の複数のターゲット地点を、前記基準画像の中心から前記ターゲット地点の各々までのベクトルの長さが最初から最後へと増加するように順序付けること、及び/又は
前記第1の複数のターゲット地点を、前記基準画像の前記中心から前記ターゲット地点の各々までのベクトルの偏角が最初から最後へと滑らかに変化するように順序付けることを更に含み、
前記基準画像内で識別された前記第1の複数のターゲット地点の各々について、前記方法は、前記非線形モデルに基づいて、較正ターゲット地点を計算することを更に含み、
前記電子ビームを前記ターゲット地点に誘導することは、前記較正ターゲット地点をビーム誘導プロセスに入力することを含み、
前記方法は、前記較正ターゲット地点及び前記対応する見かけのシフトに基づいて、各見かけのシフトを識別した後に、前記非線形モデルを更新することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記次のターゲット地点は、第2の複数のターゲット地点のうちの1つであり、前記方法は、前記第2の複数のターゲット地点の各々について、
前記非線形モデルに基づいて、較正ターゲット地点を計算することと、
前記電子ビームを前記較正ターゲット地点に誘導することと、
前記第3の倍率で前記試料の画像を取得することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の複数のターゲット地点の各々について、
1つ以上の所定の基準に基づいて、前記非線形モデルが依然として有効であるかどうかを判定することと、
再較正が必要な場合、前記第2の倍率で前記試料の画像を取得し、画像処理技術を使用して、前記画像内の前記ターゲット地点の予想位置と前記画像内の前記ターゲット地点の観察位置との間の見かけのシフトを識別し、前記見かけのシフトに基づいて前記非線形モデルを更新することとを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の複数のターゲット地点の各々について、
1つ以上の所定の基準に基づいて、前記非線形モデルが依然として有効であるかどうかを判定することと、
再較正が必要な場合、画像処理技術を使用して、前記第3の倍率で取得された前記対応する画像内の前記第2の複数のターゲット地点からの直前のターゲット地点の予想位置と観察位置との間の見かけのシフトを識別し、前記較正ターゲット地点及び前記対応する見かけのシフトに基づいて前記非線形モデルを更新することとを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の複数のターゲット地点は、前記非線形モデルが前記第2の複数のターゲット地点において正確であるように、前記ターゲット地点及び識別された見かけのシフトが前記非線形モデルを訓練するのに十分であるように選択される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記基準画像内の関連する第3の複数のターゲット地点を識別することと、
前記第1の複数のターゲット地点を前記第3の複数のターゲット地点のサブセットとして選択することとを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の複数のターゲット地点、前記次のターゲット地点、前記第2の複数のターゲット地点、及び/又は前記第3の複数のターゲット地点の各々について、
前記試料は、各ターゲット地点に近接して画像登録に適した1つ以上の特徴を含み、前記特徴のうちの1つ以上は、前記ターゲット地点で取得された画像において可視である、及び/又は
各ターゲット地点は、前記ターゲット地点が画像シフトによって到達可能であるように、顕微鏡の光軸から閾値距離内に位置する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の倍率で前記試料の第2の基準画像を取得することと、
前記第2の基準画像内の第2の複数のターゲット地点を識別することとを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記非線形モデルは、前記電子ビームを前記ターゲット地点に誘導することによって取得される画像内の前記試料の特徴の見かけのシフトを推定するように構成される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記電子ビームを誘導することは、前記電子ビームの傾斜及び/又はシフトを、好ましくは
入射電子ビームを調整すること、及び/又は
透過電子ビームを調整することによって調整することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
画像処理技術を使用して、前記較正画像内の前記ターゲット地点の前記予想位置と前記較正画像内の前記ターゲット地点の前記観察位置との間の見かけのシフトを識別することは、
誘導モデルを使用して、前記較正画像内の特徴の前記予想位置を判定することと、
観察位置での前記較正画像内の特徴を識別することと、
前記予想位置と前記観察位置との間の差として前記見かけのシフトを判定することとを含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の較正画像について焦点ずれ測定値を取得することと、
前記焦点ずれ測定値に基づいて前記非線形モデルを更新することとを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された透過型電子顕微鏡装置。
【請求項15】
命令を含むコンピュータソフトウェアであって、前記命令が、コンピュータのプロセッサによって実行されると、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を前記コンピュータに実行させる、コンピュータソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温電子顕微鏡(cryo-EM)上で単一粒子分析(SPA)のための自動データ取得を実行するために、透過型電子顕微鏡を制御するターゲティング方法に関する。具体的には、本発明は、画像シフトプロセスを介して高倍率画像を収集する改善された技術を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、SPAデータ取得においてターゲット領域を撮像する間のビーム制御精度を改善することに関する。
【0003】
SPA試料の説明:
典型的なSPA試料は、グリッド(大部分は約3ミリメートル径の銅又は金で製造される)上で凍結された同じタイプの多くの生体高分子を含有する。そのようなグリッドは、通常、約500メッシュ(「グリッド正方形」、辺の長さが約75マイクロメートルの正方形)を含む。このような正方形の各々は、直径約1マイクロメートル(通常0.2~2マイクロメートルの範囲)の規則的に分布した数百の穴を有する薄い炭素箔を含む。1つの適切な凍結方法は、プランジ凍結であり、このような各穴が、複数の生体高分子を含有する非晶質氷の薄層によって覆われることを確実にする。他の凍結方法、例えばジェット凍結及び印刷ベースの凍結も可能である。
【0004】
SPAデータ取得及びビーム制御スキーム:
SPAデータ取得は、典型的には以下のように実行される。
(1)顕微鏡を低倍率(LM)モード(典型的には200~500倍)に設定する、
(2)(1)の条件下でナビゲーション画像(「グリッド正方形画像」)を取得する、典型的には、そのようなナビゲーション画像は約10~100マイクロメートルに及ぶ、
(3)ナビゲーション画像を使用して、箔穴のサブセットをデータ取得のためのターゲット領域として識別及び選択する、
(4)高倍率(HM)モード(典型的には20,000~100,000倍)に切り替える、
(5)箔穴の位置における氷シート内の生体分子のHM画像を順次取得する、典型的には、そのようなHM画像は約100~1000ナノメートルに及ぶ。箔がHM画像の範囲よりも大きく、HM画像を記録するために使用される照射が次のHM画像と重複しない(さもなければ、重複する照射が次のHM画像に放射線損傷を引き起こす)という条件で、複数のHM画像を単一の箔穴で記録することができる。
【0005】
ここで、「ターゲット領域」は、HMにおいてカメラ上で取り込むことができる領域(典型的には、選択された氷箔又は箔穴の一部)を意味する。「ターゲット位置」又は「ターゲット地点」は、ターゲット領域内の中心位置を意味する。
【0006】
適切なステージ移動によって、又は電子顕微鏡のビーム偏向ユニットを使用して電子ビームを適切に偏向させることによって、これらの地点を訪れることができる。ナビゲーション画像を使用して、箔穴の選択されたサブセットでHM画像を中心合わせするために必要なステージ移動及び/又は電子ビーム偏向の大きさ及び方向が判定される。
【0007】
通常、このような電子ビーム偏向は、試料上方での偏向と試料下方での偏向の2つの同時かつ同期動作からなる。これら2つの偏向の組み合わされた効果は、カメラ上に撮像される試料の部分が光軸から離れるようにシフトされる(したがって、試料の機械的移動を効果的に模倣する)ことであり、したがって、そのような電子ビーム偏向は、通常、「画像シフト」と呼ばれる。しかしながら、現在の顕微鏡では、電子ビームの偏向範囲が光軸から数十マイクロメートル(「軸外」)に制限されているので、より大きな移動を行うためには試料ステージの移動が必要である。
【0008】
試料ステージを機械的に移動させることは、はるかに遅く、記録された画像の解像度の損失につながり得る望ましくない機械的ドリフトを導入するため、可能なときはいつでも、ビーム偏向が通常、好ましい。
【0009】
SPA画像の大きなセットを取得するための既存の方法の一例は、画像シフト技術を含むThermo Fisher Scientific製のEPU(「E Pluribus Unum」)ソフトウェアである。これらの画像シフト技術は、ステージを移動させて箔穴を対物レンズの光軸に近づけることなく、軸外箔穴からの画像データの取得を可能にする。その結果、グリッド正方形上の所定の地点を撮像するのに必要なステージ移動の数を低減することができる。これらの画像シフト技術から生じる光学収差は、対物レンズの同時再焦点合わせ、画像の同時再無非点収差、及び照射ビームの適切な傾斜の同時適用によって最小化することができる。
【0010】
上述の画像シフトは、顕微鏡カラム内の偏向器(ビーム偏向を達成する光学モジュール)の電流を調整することによって達成される。設定電流と試料で観察された画像シフトとの間の関係は、理論的に線形であり、画像シフト制御論理においてモデル化される。
【0011】
しかしながら、この制御論理によって適用される画像シフトは、ビームを予め選択された氷穴に正確にシフトしない場合がある。言い換えれば、ナビゲーション画像から測定される氷穴の位置と、偏向器コイルに印加される電流で表される氷穴の位置との間に不一致が存在し得る。これらの不一致は、通常、「ターゲティング誤差」と呼ばれる。特に、必要とされる画像シフトが比較的大きい(例えば、12マイクロメートルより大きい)場合に、ターゲティング誤差が生じる可能性がある。発明者らは、そのような誤差が、ナビゲーション画像及び試料で観察されるシフトに対する以下の線形及び/又は非線形の寄与から生じ得ると仮定し、特定した。
(1)ナビゲーション画像又はHM画像における歪み。これらの歪みは、三次像歪みなどの電子顕微鏡のレンズに固有の光学収差に起因し得るが、これらの歪みは、電子顕微鏡のレンズのわずかな非真円度又はわずかなシフトなどの機械的不完全性の結果である光学収差にも起因する可能性がある。
(2)顕微鏡が画像検出器上に撮像する光学面からの試料高さの局所偏差。そのような偏差は、特に照射ビームの傾斜と組み合わされて、カメラ上に撮像されることが意図された試料の位置と、カメラ上に実際に撮像される試料の位置との間の差をもたらす可能性がある。
【0012】
そのようなターゲティング誤差がHM画像の範囲と比較してかなり大きくなる場合(例えば、HM画像が200nmに及び、ターゲティング誤差が50nmを超える場合)、HM画像はもはやターゲット氷箔を適切に捕捉せず、SPAデータ取得は非効率的になる。したがって、SPA画像の大きなセットを取得するための既存の方法は、画像シフトの較正のためのプロセスを使用して、SPAデータ取得におけるターゲティング誤差を低減することができる。最新技術の画像シフト較正プロセスは、典型的には、
1)中倍率(MM、約5000倍)で、高倍率で記録されるべき箔又は箔穴のターゲット位置の所定のサブセット{u}を中心とする所定数の補助画像又は「較正画像」又は「箔穴画像」を撮影する(ここで、uは、適用された画像シフトを示す2次元ベクトルである)、
(2)画像処理アルゴリズムを使用して、(1)で取得された較正画像内の穴の中心を正確に位置決めし、カメラ上に撮像された試料上の実際の位置のセット{u’}を導出する(ここで、u’は、実際に観察された画像シフトを示す2次元ベクトルである)、ターゲティング誤差Δは、ターゲット位置と実際に撮像された位置との間の差Δ=u’-uによって与えられる、
(3)線形モデルu’ fit=M∙u+Sをデータセット{u,u’}に当てはめる、2×2行列Mは、可能なスケーリング、回転、及びせん断に相当し、ベクトルSは、可能なシフトに相当し、代替的かつ等価的に、線形モデルはまた、モデルΔ fit=(M-1)∙u+S(ここで、1は2×2単位行列を表す)を用いて、データセット{u,Δ}に当てはめることもできる、
(4)(3)で当てはめられたモデルを適用して、較正位置でHM画像を取得する。
cal=M-1(u-S)。
【0013】
しかしながら、上述した最新の較正プロセスには、以下のようないくつかの欠点がある。
(1)ターゲット誤差は、モデル化されない非線形成分を有する。
(2)ターゲット領域の所定のサブセット及び取得順序は、較正中に調整することができない。これは、箔穴パターンの周期性に起因して、箔穴の中心を位置決めする間に測定誤差をもたらす可能性がある。
(3)試料高さ変動に関する知識が使用されない。
(4)箔穴中心発見アルゴリズムは、特定の予め定義された幾何学的形状のみを認識するため、不規則な穴を含む試料では機能することができない。
(5)較正ターゲットが適切に選択されない場合、当てはめに方向バイアスが導入され得る。
【0014】
この理由のために、SPA取得プロトコルの現在の実施態様は、そうでなければSPA取得プロセスの有効性を損なうであろう過剰なターゲティング誤差を防止するために、画像シフトを典型的には約12マイクロメートル未満に制限する。したがって、SPA取得の現在の実施態様は、画像シフトを試料の機械的移動と組み合わせ、後者は、典型的には12マイクロメートルより大きいシフトを行うために使用される。
【0015】
本発明の意図は、ターゲティング誤差を低減して、より長い範囲の画像シフトを可能にし、それによって、必要なステージ移動の数を低減し、SPA取得の完全な実行に必要な時間を低減することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したSPAデータ取得における最新の画像シフト較正プロセスは、線形モデルのみでは説明できないターゲティング誤差を被る可能性がある。更に、このプロセスでは、較正手順全体を再実行することなく、所定の地点をその場で調整することができない。また、試料の高さを考慮に入れていない。したがって、本発明は、改良された較正プロセスを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
提案される方法は、試料の非平坦性及び傾斜(試料高さ変動をもたらす)、並びにLMモードとHMモードとの間の高次の不一致を考慮することによって、既存の方法を改良する。この方法はまた、所定の補助画像のその場での調整を可能にする(詳細は後述する)。これらの要因は、(収差を補正するための既存の技術と組み合わせて適用されるように)LMモードとHMモードとの間の線形シフト、スケーリング、回転、及びせん断の不一致に加えて考慮され得る。
【0018】
改善された画像シフト較正のための以下の方法が提案される(「較正方法1」)。
(1)低倍率でグリッド正方形画像を取得する、
(2)グリッド正方形画像におけるデータ取得のためのターゲット地点のセットを識別する、
(3)画像シフト較正のために、ターゲット地点のセットからターゲット地点のサブセット{u}を選択する、
(4)このターゲット地点のサブセット内の各ターゲット地点uについて、
a.画像シフトを使用して電子ビームをターゲット地点に誘導する、
b.中間倍率で較正画像を取得する、
c.画像処理技術を使用して、グリッド正方形画像内のターゲット地点と較正画像内の実際に撮像された地点との間のシフトΔを発見する、
(5)非線形モデルΔ(u)をデータ対(u,Δ)に当てはめる、
(6)モデルをターゲット地点の完全なセットに適用して、予測ターゲティング誤差ucal=(Δ+1)-1(u)を説明する補正ターゲット地点を生成する。
(7)これらの補正ターゲティング地点を使用して、高倍率でデータ取得を進める。
【0019】
(5)のモデルは、滑らかに変化するグローバルターゲティング誤差挙動を捕捉するために、平滑関数、例えばゼルニケ多項式に基づき得る。そのような多項式ベースのモデルは、一般式
【0020】
【数1】
を有し得、ここで、Kは多項式の次数であり、u=(u,u)はターゲット地点であり、cmk=(cmk,x,cmk,y)は係数ベクトルである。
【0021】
モデルは、例えば、ガウス過程回帰(「クリギング」)又はスプライン補間のようなパラメトリックアプローチを含むことによって、ターゲティング誤差の局所変動を更に考慮し得る。
【0022】
例えば、閉形式逆行列(Δ+1)-1が存在しない場合、逆行列(6)を実行することは実行不可能であり得る。この場合、逆モデルΔ-1(u’)をデータ対
【0023】
【数2】
に直接当てはめることができ、実際に撮像された地点
【0024】
【数3】
は、上記の(2)で定義されている通りである。このように当てはめられた逆モデルは、次に、ucal=u+Δ-1(u)に従って使用されることができ、撮像のための較正位置を計算する。
【0025】
あるいは、以下の関係u’=u+Δ(u)≒u+Δ(u’)⇒u=u’-Δ(u’)を使用し、較正位置ucal=u-Δ(u)を計算する、すなわち、逆行列(1+Δ)-1の一次近似として1-Δを使用することができる。
【0026】
(4)cで言及される画像処理技術は、特徴認識及びマッチング、例えば、円検出に基づき得る。あるいは、画像登録のための画素ベースの方法、例えば、相互情報画像登録が、画像間のシフトを発見するために使用され得る。後者の種類の方法は、特定のタイプの特徴が画像内に存在すると仮定しないという利点を有し、特定の画像特徴を認識することを目的とした(前節の最新のアプローチによる落とし穴のリストの項目(4)として言及された特徴ベースの方法の欠点)方法よりも一般的になる。
【0027】
箔穴パターンは典型的に周期的であり、他の大きな及び/又は高コントラストの特徴は通常視野内にないので、画像登録又は他のシフト測定技術は、ターゲティング誤差が大きすぎる場合に失敗する傾向がある。例えば、ターゲティング誤差が箔穴間の距離に匹敵する場合、画像登録又は特徴マッチング技術は、通常、1箔穴の距離だけオフセットされた特徴を位置合わせし、不正確なターゲティング誤差測定をもたらす。この問題に対処するために、第2の方法が提案され、ここでは、連続的なモデル当てはめ及び位置補正が残りのターゲティング誤差を制限する(「較正方法2」)。
(1)低倍率で試料のグリッド正方形画像を取得する、
(2)グリッド正方形画像におけるデータ取得のためのターゲット地点のセットを識別する、
(3)画像シフト較正のために、ターゲット地点のセットからターゲット地点のサブセット{u}を選択する、
(4)ターゲティング誤差がサブセットの最初から最後まで増大すると予想されるように、ターゲット地点のサブセットを順序付けする、
(5)較正ターゲット地点のセット{u cal}を初期化し、ここで、各較正ターゲット地点の初期値は元のターゲット地点に等しい、すなわち、全ての位置iについて当初はu cal=u
(6)ターゲット地点のサブセットにおける各ターゲット地点uについて、
a.画像シフトを使用して、電子ビームを補正ターゲット地点u calへ誘導する、
b.中間倍率で較正画像を取得する、
c.画像処理技術を使用して、グリッド正方形画像内のターゲット地点と較正画像内の実際に撮像された地点との間のシフトΔを発見する、
d.非線形モデルをこれまで利用可能なデータ対(u,Δ)に当てはめる、
e.dにおけるモデルをターゲット地点のサブセットに適用して、較正ターゲット地点のセット{u cal}を更新する、
(7)モデルをターゲット地点の完全なセットに適用して、(前述の方法のうちの1つを使用して)予測ターゲティング誤差を考慮する補正ターゲット地点ucalを生成する、
(8)これらの補正ターゲット地点を使用して、高倍率でデータ取得を進める。
【0028】
(3)における選択は、箔穴の領域(例えば、全てのターゲット地点の凸包)が選択された点で覆われるように行われ、小さいモデリング誤差(例えば、任意の箔穴位置において30nm未満)を有するモデルが、可能な限り少ない選択点で当てはめられ得る。典型的には、平滑なターゲティング誤差場の場合、これは、50μm辺長のグリッド正方形内の12個の地点を使用して、空間的に均一なカバレッジによって達成されることができる。ターゲティング誤差Δは通常、光軸からの距離が増加するにつれて大きくなるため、式(4)における順序付けを実行する1つの可能性は、光軸からの距離を小さい順にすることである。
【0029】
方法1及び2の両方について、ターゲティングの較正のために選択されたターゲット位置のサブセットは、最終的にデータ取得のために使用されるターゲット地点と一致する必要はないことに留意されたい。ターゲティング誤差較正のために選択されたターゲット位置は、以下の限り、グリッド正方形画像の視野内に任意に配置することができる。
・ これらのターゲット位置は、ターゲット位置における視野内の画像登録に適した特徴を含む(例えば、ターゲット地点は、電子ビームに不透過な領域内にあるべきではない)。
・ このターゲット位置のサブセットは、このサブセットは、全てのデータ取得地点に対して正確であるターゲティング誤差モデルを当てはめることを可能にする(しかし、データ獲得に使用されない領域では不正確であり得る)。
・ これらのターゲット位置は画像シフトによって到達可能である。
【0030】
ターゲット誤差較正を実行するためのこのターゲット位置のセットの自然な選択は、データ取得のためのターゲット地点のセット(又はサブセット)である(病理学的状況を除いて、例えば、全ての地点が直線上にある)。しかしながら、他の選択も可能であり、例えば、画像シフト範囲内で選択された濃度を有する一様に離間した地点のセットも可能である。地点毎の電子線量を最小化し、それによって地点毎の放射線損傷を最小化するために、これらの2つのセット間の重複を意図的に最小化することが有利であり得ることに留意されたい。加えて、2つのセットを独立して選択することは、撮像のためのターゲット地点の方向バイアスされたセットによって導入され得るモデル当てはめにおける方向バイアスを回避するのを助けることができる(前のセクションにおける現在の最新の方法の落とし穴リストにおける項目(5)として言及される)。
【0031】
較正後のデータ取得は、画像シフトが排他的に使用される場合であっても、グリッド平方当たり相当の時間を要する。これは、試料ドリフトがある場合、較正にとって問題となる可能性がある。例えば、グリッド正方形内に500個の箔穴があり、箔穴当たりの取得時間が2秒である場合、グリッド正方形の処理時間は約16分である。2ナノメートル/分の線形ドリフトでは、このドリフトは、最後に取得された箔穴において30ナノメートルを超える追加のターゲティング誤差を導入し、これはデータ取得にとって許容不能な場合がある。更に、データ取得中に、例えばコントラスト伝達関数(CTF)測定を介して、試料高さに関するより多くの情報が利用可能になり、これにより、試料高さ変動に起因するターゲット誤差成分を明示的にモデル化することが可能になる。
【0032】
したがって、取得中にターゲティングモデルを更新するための動的手順が提案される(「較正方法3」)。
(1)ターゲティングモデルΔに当てはめて、補正ターゲット地点のセットucalを生成するために較正方法1又は2を実行する、
(2)取得中に、ターゲティングモデルを再較正する必要があるかどうかを決定するために再較正基準を選択する、
(3)ターゲット地点のセット内の各ターゲット地点について、
a.(2)の再較正基準を使用して、ターゲティングモデルを再較正するかどうかを判定し、いいえの場合、gに進む、
b.画像シフトを使用して、補正ターゲット地点
【0033】
【数4】
のうちの1つ以上に電子ビームを誘導する、
c.中間倍率で較正画像を取得する、
d.画像処理技術を使用して、グリッド正方形画像内のターゲット地点uと較正画像内の実際に撮像された地点u’との間の見かけのシフトΔ’を発見する、
e.非線形モデルをこれまで利用可能なデータ対(u,Δ)=(u,Δ(u)+Δ’)に当てはめる、
f.eのモデルをターゲット地点のサブセットに適用して、較正モデルを更新し、予測ターゲティング誤差を考慮する改善された補正ターゲット地点ucalを生成する、
g.改善された補正ターゲット地点を使用して、画像シフトを用いて高倍率でデータ取得を実行する。
【0034】
再較正をトリガするために使用される(2)における再較正基準は、以下に基づき得る。
i.前回の較正からの取得数が、ある所定の取得数を超えている、又は
ii.前回の較正から経過した時間が、ある所定の時間間隔を超えている、又は
iii.測定ターゲティング誤差Δが、ある所定の最大ターゲティング誤差Δmaxを超えている、
又はそれらの組み合わせ。再較正基準は、最後の較正以降に光学設定が変化したかどうかを更に考慮に入れてもよい。
【0035】
eのモデルは、方法1又は方法2と同じ形式を使用し得る。それは更に、理想的な試料平面からの(符号付き)距離をターゲット誤差寄与に関連付ける明示的なモデルを使用して試料高さ変動を説明し得る。この関係は、以下で更に詳述する。
【0036】
方法1及び2におけるように、(3)b~fにおけるモデルを較正するために使用されるターゲット位置は、データ取得のために意図された地点のセットから選ぶ必要はない。例えば、再較正がドリフトを補正することのみを目的とする場合、ループ(3)の各反復において同じ領域が較正に使用されてもよい。この場合、(3)eで当てはめるモデルは、(1)で取得された元のモデルであってもよく、新たに取得された測定値に当てはめるシフトパラメータを除いて、全てのパラメータが固定される。
【0037】
(3)cにおける中間倍率への切り替えのオーバーヘッドを回避するために、シフト測定は、(3)gにおいて取得された高倍率画像を使用して実行されて、以下の手順(「較正方法4」)をもたらし得る。
(1)較正方法1又は2を実行して、ターゲティングモデルΔを当てはめ、補正ターゲット地点のセットucalを生成する、
(2)取得中に、ターゲティングモデルを再較正する必要があるかどうかを決定するために再較正基準を選択する、
(3)ターゲット地点のセット内の各ターゲット地点について、
a.(2)の再較正基準を使用して、ターゲティングモデルを再較正するかどうかを判定し、いいえの場合、cに進む、
b.非線形モデルをこれまで利用可能なデータ対(u,Δ)=(u,Δ(u)+Δ’)に当てはめる、
c.bにおけるモデルをターゲット地点のサブセットに適用して、予測ターゲティング誤差を考慮に入れる補正ターゲット地点のセット{u cal}を更新する、
d.補正ターゲット地点を使用して、画像シフトを用いて高倍率でデータ取得を実行する。
e.画像処理技術を使用して、グリッド正方形画像内のターゲット地点uと、(3)dで取得された画像内の撮像地点との間のシフトΔ’を発見する。
【0038】
概して、透過型電子顕微鏡のための自動データ取得方法が提供される。本方法は、
第1の倍率で試料の基準画像を取得することと、
基準画像内で識別された第1の複数のターゲット地点の各々について、
透過型電子顕微鏡の電子ビームをターゲット地点に誘導することと、
第1の倍率よりも高い第2の倍率で試料の較正画像を取得することと、
画像処理技術を使用して、較正画像内のターゲット地点の予想位置と較正画像内のターゲット地点の観察位置との間の見かけのシフトを識別することと、
第1の複数のターゲット地点及び対応する見かけのシフトを使用して非線形モデルを訓練することと、
非線形モデルに基づいて、次のターゲット地点に対する較正ターゲット地点を計算することと、
電子ビームを較正ターゲット地点に誘導し、第1の倍率よりも高い第3の倍率で(試料の)画像を取得することとを含む。
【0039】
提案された方法が既知の方法と異なる1つの方法は、特徴の見かけのシフトを説明するために非線形モデルを訓練することによるものである。ここで、「非線形」という用語は、「必ずしも線形ではない」という意味で理解されるべきである。言い換えれば、非線形モデルは、線形成分及び非線形成分を含む。既存の方法は、線形効果(レンズの一次光学特性によってもたらされるものなど)を考慮し得る。しかしながら、それらは高次の不一致を考慮していない。
【0040】
次のターゲット地点に対する較正ターゲット地点を計算することは、較正ビームシフトを計算することと等価であるとみなされ得る。較正「ターゲット地点」を計算することは、概念的には、ビーム誘導中に試料の移動を予測し、補正することとみなされ得る(したがって、ビームは異なる位置に誘導される)。較正「ビームシフト」は、概念的には、試料は静止したままであるが、ビームシフト動作は正確ではない(したがって、ビーム誘導動作自体は較正を必要とする)と考えられ得る。いずれにしても、モデルの構成は同じであるが、誤差の符号は反転される。言い換えれば、シフト動作中に試料が移動するように見える場合、更なるビームシフトを使用して試料を追跡し得る。ビームシフトを誘導するためのターゲティングモデルが(不正確な位置が撮像されるために)不正確に見える場合、これが検出され、「照準を外す」ために補正が適用されて、ターゲティング誤差が修正される。これらの2つの効果及びプロセスは逆の符号を有する。しかしながら、各々は数学的に類似している。したがって、真の誤差源を無視され得、両方に対処するために上述の手法が使用され得る。試料ドリフトは、ターゲティング誤差として誤って解釈される可能性があり、補正はドリフトを追跡することと同じになる。
【0041】
第1の倍率で試料の基準画像を取得することは、より高倍率の画像のモンタージュを取得することを含み得る。このようにして、基準画像は、単一のより高い倍率の画像よりも広い範囲又は視野(FOV)を有する。
【0042】
画像を取得することは、(例えば、第3の倍率で)1つ以上の画像を取得することを含み得る。言い換えれば、ターゲット地点毎に複数の画像を取得し得る。
【0043】
いくつかの従来技術の方法は、物理的効果の事前設定された選択から生じる不一致を予測するために、ターゲティングモデルを制約する。言い換えれば、それらは、不一致のいくつかの物理的原因を説明する制約パラメータ化モデルを作成し、次いで、いくつかの測定を行うことによってモデルのパラメータを較正する。これらの方法は、モデルを開発するときに考慮されない物理的原因(例えば、いくつかの高次光学歪みを含む)を有する不一致を無視する場合がある。そのような従来技術の方法とは対照的に、本出願で提案される方法の例は、このようにモデルを制約しない。代わりに、提案される方法は、それらの不一致の数学的成分がモデルに具体的に追加されることを必要とせずに、不一致(不確定な原因を伴う高次不一致など)を説明するためのより多くの自由度を伴う非線形モデルを提供する。このようにして、提案された方法は、画像処理を使用して取り込まれ、分析された実際の画像から取得されたデータがモデルを定義することを可能にすることによって、より信頼性の高いモデルを提供し得る。有利なことに、取り込まれた実際の画像の分析からより多くの測定値が得られるにつれて、モデルを継続的に精緻化し得る。
【0044】
第2の倍率で較正画像又は第3の倍率で画像を取得することは、ビームが誘導された直後に画像を取得することを含み得る。言い換えれば、ビームはターゲット地点に誘導され、次に画像がターゲット地点で取り込まれる。
【0045】
較正画像内のターゲット地点の予想位置と較正画像内のターゲット地点の観察位置との間の見かけのシフトを識別することは、基準画像内のターゲット地点又はその周囲の試料の1つ以上の特徴を識別することと、較正画像内の位置におけるそれらの同じ特徴を識別することとを含み得る。「予想」位置に言及するとき、これは、ビーム誘導プロセスが完全に機能した場合に生じるであろう較正画像内のターゲット地点の位置であり得る。したがって、ビームをターゲット地点に誘導した後、較正画像内のターゲット地点の予想位置は、較正画像の中心にあり得る。ターゲット地点とは異なる較正ターゲット地点に誘導するとき、予想位置は、予測される見かけのシフトだけ較正画像の中心からオフセットされ得る。
【0046】
ターゲット地点についての較正ターゲット地点を計算することは、ターゲット地点での予測される見かけのシフトをターゲット地点に加算することを含み得る。これにより、予測ターゲティング誤差を予測し、補償し得る。
【0047】
図2A図2Dに示されるように、オフセットdをターゲット地点に加算することにより、較正画像において、特徴を-dだけ移動させるべきである。画像2Bは、較正及びオフセットを伴わずに、ターゲット地点において取得され、予想地点からの特徴のオフセットdが、較正画像内で観察される(図2B内の矢印によって図示される)。ターゲティング誤差はΔ=-dであり、見かけのシフトはS=dである。この誤差を(近似的に)補償するために、較正ターゲット地点(図2Cにおいて矢印によって示される)は、ターゲット地点からΔを減算する(又は予測される見かけのシフトをターゲット地点に加算することによって)取得される。予測ターゲティング誤差及び測定ターゲティング誤差は、同じ符号規則に従う。
【0048】
あるいは、所与のターゲット地点について較正ターゲット地点を計算することは、予測される見かけのシフトが、較正ターゲット地点で取り込まれた画像の中心にあるターゲット地点をもたらす較正ターゲット地点を識別することを含み得る。言い換えれば、較正ターゲット地点における予測される見かけのシフトをターゲット地点に加算する。これにより、ターゲット地点を画像の中心により正確に配置する較正ターゲット地点を提供することができる。
【0049】
したがって、この方法に従って較正ターゲット地点を計算することは、ターゲット誤差を予測するモデルを反転させること、すなわち、予測ターゲット誤差を考慮に入れて、所望のターゲット地点がこのようにして取得された画像の中心に配置されるように、ビームを誘導する(「照準をオフにする」)場所を予測するモデルを生成することに相当する。
【0050】
地点及びシフトは、基準画像によって定義される座標系に関して表されてもよく、又は別の座標系で決定されてもよい。加算及び減算するとき、地点及びシフトは同じ座標系にあるべきである。
【0051】
特に、ターゲット地点は、低倍率(LM)画像の座標系において、LM画像における中心位置からの変位として表現され得る。このように選択された座標系の原点は、典型的には、(LM画像を取得するときに適用されたものを超える)更なる画像シフトが適用されない場合に撮像される位置と一致するため、この表現は数学的に便利である。
【0052】
第3の倍率は、氷に埋め込まれた生体分子の画像を取得するのに有用なレベルであり得る。試料分析の目的のために第3の倍率で取得された画像は、「データ取得」画像と称され得る。
【0053】
第3の倍率は、第2の倍率より高くてもよい。したがって、第3の倍率(「高倍率」、HMとも呼ばれ得る)でのデータ取得画像は、第2の倍率(「中倍率」、MMとも呼ばれ得る)での較正画像よりも詳細に示すことができる。このことは、データ取得画像について、試料を非常に詳細に撮像するために高倍率設定が必要とされ得るため、有利であり得る。較正のために、視野(FOV)がより大きくなるように、より低い倍率を有することが有利であり得る。これにより、画像内に見える特徴の数を増加させ、したがって、画像シフトをより正確に、又はより明確に判定することができる。更に、(例えば、画像の見かけのシフトが画像FOVよりも大きいために)箔穴縁部などの特定の特徴が較正画像内において可視でない場合、画像は較正に有用でない場合がある。これは、較正画像がより低い倍率で取り込まれる場合には起こりにくい(なぜなら、FOVはより大きいが、ターゲット誤差は不変のままだからである)。
【0054】
いくつかの例では、第3の倍率及び第2の倍率は同じであってもよい。較正画像はデータ取得画像として使用されてもよく、逆もまた同様である。
【0055】
試料は、複数の穴を含む穿穴箔を含んでもよく、ターゲット地点は、複数の穴のうちの第1の穴内の地点であり、次のターゲット地点は、複数の穴のうちの第2の穴に位置する。任意選択的に、第2の穴は、第1の穴に直接隣接してもよい。言い換えれば、次のターゲット地点に隣接する穴を使用して較正を実行し得る。次のターゲット地点の近傍の穴について較正データが取得されれば、ターゲット誤差をより正確に予測し得る。
【0056】
第1の例では、再較正は全ての穴について実行され得る。したがって、モデル精度を高く維持することができる。別の例では、再較正は、N個の穴毎(例えば、10個の穴毎)にのみ実行されてもよい。これにより、効率を改善しながら、モデル精度が維持され得る。別の例では、較正は、データ取得中に取り込まれた画像を使用してバックグラウンドで非同期的に実行され得る。別の例では、再較正は、モデル予測誤差が閾値レベルを超えるときにトリガされ得る。これにより、処理効率を更に改善しながら、必要なレベルでモデル精度を保ち得る。別の例では、本方法は、モデルが有効である位置のマップを維持し得る。再較正は、取得順序における次のターゲット地点(又は後のターゲット地点)が有効地点のマップの外側にあるという判定に基づいて実行され得る。
【0057】
箔穴毎に複数のターゲット地点があってもよい。氷中に懸濁された生体分子を撮像し、箔穴の外側にあるFOVの割合を低減するために、箔穴の中心にターゲット地点を選択することができる。
【0058】
場合によっては、試料は本質的に周期的であってもよい(例えば、試料が穴のグリッドを含む)。このような場合、箔穴間の距離の半分より大きい見かけのシフトを補正することは不可能であり得る。これは、画像処理技術が、隣接する穴の特徴を、撮像されることが意図される穴と間違える可能性があるためである。ターゲティング誤差は、ビームが誘導される光軸からの距離が増加するにつれて増加する傾向がある。したがって、モデルが画像シフトのより大きな値で動作することを確実にするために、光軸に近い穴を使用してモデルを較正し、次いで、較正モデルを使用して更に離れた穴を撮像し、それらの穴を使用してモデルを再較正することが有利である。次に、更に離れた穴を撮像し、以下同様である。このようにして、モデルを反復的に精緻化して、ビーム画像シフトの大きな値を有する領域を正確にターゲットとすることができる。
【0059】
電子ビームをターゲット地点に誘導することは、ターゲット地点を(線形ビーム誘導モデルによって判定された量だけ電子ビームを調整するように構成された)ビーム誘導プロセスに入力することを含み得る。
【0060】
非線形モデルは、所与のターゲット地点がビーム誘導プロセスに入力されるときに見かけのシフトを予測するように構成され得る。
【0061】
非線形モデルは、ターゲット地点に基づく見かけのシフト(言い換えれば、線形誘導モデルを使用して電子ビームをターゲット地点に誘導するときに取り込まれた画像の見かけのシフト)を推定するように構成され得る。非線形モデルは、推定された見かけのシフト(「予測ターゲティング誤差」の負である)を考慮するために、ターゲット地点に基づいて較正ターゲット地点を判定するために使用され得る。次いで、電子ビームは、ターゲット地点ではなく、(線形誘導モデルを使用して)較正ターゲット地点に誘導することができる。このようにして、見かけのシフトが考慮され、ターゲット地点は、ビームをターゲット地点に誘導した後に取り込まれた画像よりも、ビームを較正ターゲット地点に誘導した後に取り込まれた画像の中心に近く見える。
【0062】
本方法は、各ターゲット地点についての対応する見かけのシフトの大きさが、最初から最後まで増加することが予想されるように、(例えば、光軸からの距離が増加する順に、又は光軸から外へ螺旋状にターゲット地点を順序付けることによって)第1の複数のターゲット地点を順序付けることを更に含み得る。
【0063】
本方法は、
(好ましくは、基準画像中心からのベクトルとしての)各ターゲット地点の大きさが最初から最後まで増加するように(例えば、光軸からの距離が増加する順にターゲット地点を順序付けることによって)、第1の複数のターゲット地点を順序付けること、及び/又は
ターゲット地点の角度が最初から最後まで滑らかに変化するように第1の複数のターゲット地点を順序付けること(例えば、光軸から外向きに螺旋状になる螺旋形状を形成するようにターゲット地点を順序付けることによって)とを更に含み得、
基準画像内で識別された第1の複数のターゲット地点の各々について、本方法は、(前の較正画像を処理した後に更新された)非線形モデルに基づいて、(次のターゲット地点についての)較正ターゲット地点を計算することを更に含み、
電子ビームをターゲット地点に誘導することは、較正ターゲット地点をビーム誘導プロセスに入力することを含み、
本方法は、較正ターゲット地点及び対応する見かけのシフトに基づいて、各見かけのシフトを識別した後に、非線形モデルを更新することを更に含む。
【0064】
2πラジアンの角度は0ラジアンの角度と等価であるので、当業者であれば、ターゲット地点の角度(基準画像の中心に対するベクトルとして表される)が完全な円の周りをループし得ることを理解するであろう。したがって、角度の絶対値は、角度が測定される軸を通過するとき、順序付けられたリストを通して移動するときに、ジャンプするように見え得る。それにもかかわらず、角度は、ターゲット地点の順序付けられたリスト内の隣接する地点間に比較的小さい角度を有するという点で、順序付けられたリストを移動するときに滑らかに変化している可能性がある。
【0065】
上記の例示的な方法のいくつかにおいて、較正画像は、ターゲット地点ではなく、較正ターゲット地点に電子ビームを誘導した後に取得される。この場合、ターゲット地点の予想位置は、(予測される見かけのシフトが、較正ターゲット地点を使用することによって説明されているため)較正ターゲット地点で取得された較正画像の中心にあり得る。したがって、元のターゲット地点における特徴は、画像中心にあると予想される。特徴が画像の中心にない場合、観察された特徴間のシフト測定を実行して、残余誤差を取得し得る。残余誤差は、ターゲット地点についての予測誤差に加算されて、総ターゲット誤差を取得し得る。有利なことに、撮像のために較正ターゲット地点を使用することは、画像シフトがより小さくなると予想されるので、測定プロセスをより容易にする。
【0066】
別の例では、見かけのシフトは、(元のターゲット地点ではなく)較正ターゲット地点の予想位置と較正画像内の較正ターゲット地点の観察位置との間の見かけのシフトとして計算され得る。この場合、較正ターゲット地点は、(「予想」位置が誘導モデルに基づき、予測される見かけのシフトを考慮しないため)較正画像の中心にあると予想され得る。
【0067】
本方法は、元のターゲット地点を使用して較正ターゲット地点のセットを初期化することと、それぞれのターゲット地点を、非線形モデルに基づいて次のターゲット地点について計算された較正ターゲット地点で置き換えることによって、較正ターゲット地点のセットを更新することとを更に含み得る。
【0068】
非線形モデルを訓練することは、非線形モデルをデータ対(u,u’)に当てはめることを含み得、第1の複数のターゲット地点におけるi番目のターゲット地点について、uεRは、基準画像内で識別されたターゲット地点であり、u’εRは、画像処理技術を使用して識別された試料上の実際の位置であり、Δ=u’-uは、画像処理技術を使用して識別される、対応する見かけのシフト(又は「ターゲティング誤差」)である。
【0069】
次のターゲット地点は、第2の複数のターゲット地点のうちの1つであってもよく、本方法は、第2の複数のターゲット地点の各々について、
非線形モデルに基づいて、較正ターゲット地点を計算することと、
電子ビームを較正ターゲット地点に誘導することと、
第3の倍率で試料の画像を取得することとを含み得る。
【0070】
第2の複数のターゲット地点は、基準画像又は第2の基準画像内で識別され得る。第2の基準画像は、試料又は第2の試料の画像であってもよい。
【0071】
本方法は、
第2の複数のターゲット地点の各々について、
1つ以上の所定の基準に基づいて、非線形モデルが依然として有効であるか否かを判定すること(モデルが有効であるか否かの判定は、較正ターゲット地点を計算するために非線形モデルを使用する前に実行される)と、
再較正が必要とされる場合、第2の倍率で(第2の複数のターゲット地点のうちの現在の1つにおいて)試料の画像を取得し、画像処理技術を使用して、画像内のターゲット地点の予想位置と画像内のターゲット地点の観察位置との間の見かけのシフトを識別し、見かけのシフトに基づいて非線形モデルを更新することを更に含み得る。
【0072】
再較正が必要とされる場合、本方法は、
非線形モデル(再較正を必要とする古い非線形モデル)に基づいて、予備較正ターゲット地点を計算することと、
電子ビームを予備較正ターゲット地点に誘導することとを更に含み得る。
【0073】
見かけのシフトに基づいて非線形モデルを更新することは、予備較正ターゲット地点及び対応する見かけのシフトを使用して、非線形モデルを更新することを含み得る。
【0074】
第3の倍率で試料の画像を取得することは、較正ターゲット地点を使用して画像シフトを用いて高倍率でデータ取得を実行することを含み得る。
【0075】
本方法は、
第2の複数のターゲット地点の各々について、
(非線形モデルに基づいて較正ターゲット地点を計算する前に)1つ以上の所定の基準に基づいて、非線形モデルが依然として有効であるかどうかを判定することと、
再較正が必要な場合、画像処理技術を使用して、第3の倍率で取得された(前のサイクル中に取得された)対応する画像内の第2の複数のターゲット地点からの直前のターゲット地点の予想位置と観察位置との間の見かけのシフトを識別し、較正ターゲット地点及び対応する見かけのシフトに基づいて非線形モデルを更新することとを更に含み得る。
【0076】
言い換えれば、再較正が必要とされる場合、本方法は、
画像処理技術を使用して、第3の倍率で取得された第2の複数のターゲット地点からの直前のターゲット地点の画像において、直前のターゲット地点の予想位置と観察位置との間の見かけのシフトを識別することと、
直前のターゲット地点に対する較正ターゲット地点と、対応する見かけのシフトとに基づいて、非線形モデルを更新することとを更に含み得る。
【0077】
直前のターゲット地点で取得された以前の画像は、第3の倍率で取得された試料の画像であってもよい。有利なことに、中間倍率での別個の較正画像は必要とされなくてもよい。
【0078】
第2の複数のターゲット地点のうちの第1のターゲット地点については、直前のターゲット地点はない。しかしながら、モデルは訓練されたばかりであり、したがって、有効であると仮定し得る。
【0079】
更新モデルは、モデル品質チェックの対象となり得る。例えば、パラメータが有効なパラメータの選択された範囲外である場合、新しいモデルを拒否し得る。新しいモデルはまた、品質メトリック(例えば、選択された誤差メトリックに対する測定ターゲティング誤差に対する当てはめの品質)に基づいて拒否され得る。
【0080】
更新モデルはまた、これまでに取得された全ての以前のデータ対を考慮してもよい。
【0081】
非線形モデルを更新することは、非線形モデルをデータ対(u,u’)に当てはめることを含み得、第2の複数のターゲット地点におけるj番目のターゲット地点について、uεRは、較正ターゲット地点であり、u’εRは、画像処理技術を使用して識別された試料上の実際の位置であり、Δ=u’-uは、見かけのターゲティング誤差である。
【0082】
非線形モデルに基づいて較正ターゲット地点を計算することは、更新モデル(ターゲット誤差をより正確に予測する)をターゲット地点に適用して、較正ターゲット地点を提供することを含み得る。
【0083】
本方法は、データ取得中に、ターゲットモデルが再較正される必要があるかどうかを決定するために、再較正基準を選択することを更に含み得る。再較正基準は、非線形モデルが依然として有効であるかどうかを判定するときに使用され得る。
【0084】
非線形モデルが依然として有効であるかどうかを判定することは、再較正基準を使用して、ターゲティングモデルを再較正するかどうかを判定することを含み得る。
【0085】
本方法は、第2の複数のターゲット地点のそれぞれについて、画像処理技術を使用して、第3の倍率で取得された試料の画像内の予想位置と撮像地点との間の(グリッド正方形画像からの)ターゲット地点の見かけのシフトを発見することを更に含み得る。
【0086】
非線形モデルは、複数のモデル成分を含んでもよく、各成分は、1つ以上の別個の妥当性基準を有してもよい。例えば、ステージを新しいグリッド正方形に移動させることは、モデルの特定の成分を無効にし得るが、他の成分は無効にしない。新しい基準画像を撮影することは、モデルの特定の成分を無効にし得るが、他の成分は無効にしない。前よりも更にビームをシフトすることは、モデルのある部分を無効にし得るが、他の部分は無効にしない。モデルが依然として有効であるかどうかを判定することは、各モデル成分が依然として有効であるかどうかを判定することを含み得る。非線形モデルを更新することは、依然として有効ではないと判定されたモデル成分を更新することと、依然として有効であると判定されたモデル成分を更新せずに保持することとを含み得る。有利なことに、このように選択的にモデルを更新することは、より効率的であり、より信頼性のあるモデルをもたらし得る。
【0087】
1つ以上の所定の基準に基づいてモデルが依然として有効であるかどうかを判定することは、光学設定が、現在のモデルを当てはめるために使用される画像の取得中の光学設定と比較して変化したかどうかを評価することを含み得る。評価は更に、現在のモデルが当てはめられたグリッド正方形と比較した現在のグリッド正方形に関する事前の知識に基づいてもよい。例えば、この事前知識は、高さ偏差、汚染レベル、亀裂などの推定値を含み得る。評価は、最後の較正からの時間、総ドリフト推定値、又はそれらの組み合わせに更に基づき得る。
【0088】
一般に、モデルを較正するために使用される地点(第1の複数のターゲット地点)は、データ取得のために意図される地点のセット(第2のターゲット地点のセット)と重複する必要はない。しかしながら、状況によっては、以下に説明するように、それらは可能である。
【0089】
第1の複数のターゲット地点は、非線形モデルが第2の複数のターゲット地点において正確であるように、ターゲット地点及び識別された見かけのシフトが非線形モデルを訓練するのに十分であるように選択され得る。
【0090】
本方法は、
基準画像内の関連する第3の複数の地点を識別する(受信する/判定する)ことと、
第1の複数のターゲット地点を第3の複数のターゲット地点のサブセットとして選択することとを更に含み得る。
【0091】
言い換えれば、ターゲット地点の選択は、モデルを較正するために使用され得る。
【0092】
第2の複数のターゲット地点は、第3の複数のターゲット地点と同一であってもよい。言い換えれば、第3の倍率での「データ取得」画像は、関連する各ターゲット地点について取り込まれ得る。あるいは、第2の倍率での較正画像が許容可能である場合、較正画像が取得されたターゲット地点に対して、第3の倍率でのデータ取得画像が必要とされなくてもよい。したがって、第2の複数のターゲット地点は、第3の複数のターゲット地点のサブセットであり得る。
【0093】
第1の複数のターゲット地点、次のターゲット地点、第2の複数のターゲット地点、及び/又は第3の複数のターゲット地点の各々は、
試料が、各ターゲット地点に近接して画像登録に適した1つ以上の特徴を含み、特徴のうちの1つ以上が、ターゲット地点で取得された画像において可視である、及び/又は
各ターゲット地点が、ターゲット地点が画像シフトによって到達可能であるように、顕微鏡の光軸から閾値距離内に位置するように選択され得る。
【0094】
本方法は、(例えば、いずれの位置においても見かけのシフトがないと予測する「同一性」モデルを用いて)モデルを初期化することを更に含み得る。モデルを訓練することは、データ対を使用してモデルを更新することを含み得る。
【0095】
透過型電子顕微鏡の電子ビームをターゲット地点に誘導することは、基準画像内のターゲット地点の位置に基づいて、線形誘導モデルを使用して電子ビームを移動させることを含み得る。
【0096】
「ターゲット地点」は、試料(関連する特徴)上の地点であり、基準画像内の点でもある(関連する特徴が基準画像内に現れる)。基準画像内で識別されたターゲット地点にビームを誘導することは、
基準画像内のターゲット地点の位置に基づいて、顕微鏡内の試料のターゲット地点の物理的位置を推定することと、
線形誘導モデルを使用して、電子ビームを物理的位置に誘導することとを含み得る。
【0097】
較正ターゲット地点を計算することは、線形誘導モデルを使用してビームが誘導されるべき地点を決定することを含むことができ、その結果、ターゲット誤差が較正ターゲット地点に加えられると、所望のターゲット地点が画像の中心の近くに現れる。
【0098】
第3の倍率は、第2の倍率と同じであってもよいし、第2の倍率よりも大きくてもよい。
【0099】
同じ線形誘導モデル(ターゲット誤差をもたらすことが分かっている)を使用し、予想される誤差を考慮するために画像を補正位置に誘導するのではなく、誘導モデルを更新して非線形挙動を考慮することができ、補正モデルを使用してビームをターゲット地点に誘導することができる。言い換えれば、非線形ターゲットモデルは、誘導モデルに組み込むことができる。非線形モデルは上述のように再較正されるが、線形誘導モデルは同じままであってもよい。これは、線形誘導モデルが、変化しない顕微鏡の物理的特性に基づくためであり得る。
【0100】
本方法は、第1の倍率で試料(又は異なる試料)の第2の基準画像を取得することを更に含んでもよい。第2の基準画像は、異なるグリッド正方形など、同じ試料の異なる地点を示すことができる。あるいは、第2の基準画像は、異なる試料を完全に示すことができる。
【0101】
本方法は、第2の基準画像内の第2の複数のターゲット地点を識別することを更に含み得る。
【0102】
非線形モデルは、(線形誘導モデルを使用して)電子ビームをターゲット地点に誘導することによって取得された画像内の試料の特徴(基準画像内で識別されたターゲット地点に位置する特徴)の見かけのシフトを推定するように構成され得る。言い換えれば、非線形モデルは、所与のターゲット地点に対する見かけのシフトを予測するように構成され、見かけのシフトは、線形誘導モデルが完全であった場合に予想される位置(画像の中心)と、誘導モデルが不完全である場合に特徴を観察することが実際に予想される画像内の位置との間の差である。
【0103】
非線形モデルは、理想的な平坦な試料平面からの実際の試料の偏差を説明し得る。いくつかの例では、非線形モデルは、実際の試料が平滑であると仮定する。
【0104】
非線形モデルを使用して見かけのシフトを推定することは、特徴の物理的位置と顕微鏡の撮像平面上への特徴の投影との間の差を推定することを含み得る。言い換えれば、モデルは、ターゲット地点における試料のzオフセットを考慮に入れ得る。ターゲット地点におけるzオフセットは、試料が平滑であると仮定して(試料高さが試料の特徴間で滑らかに変化すると仮定して)、(他の近くの地点における)試料の他の特徴についての1つ以上の推定又は判定されたzオフセットに基づいて推定され得る。z軸の原点は、顕微鏡が画像検出器上に撮像する(試料における又は試料近くの)光学面(簡潔にするためにしばしば「画像面」と呼ばれる)と一致してもよく、z軸の方向は、ビーム伝搬の主方向(「光軸」)と一致してもよい。
【0105】
zオフセットを推定するとき、ステージ高さ及び傾斜を考慮に入れてもよい。したがって、zオフセットは、以下の2つの成分に分割され得る。
試料の傾斜によって、及び任意選択的に画像平面の上方のステージの高さのシフトによって引き起こされ得るような、理想化された平坦な試料平面と画像平面との間の差、及び
理想化された平坦な試料平面からの試料の特徴のオフセット。
【0106】
そのようなzオフセットは、いくつかの方法で推定され得る。zオフセットが測定され得る1つの方法は、撮像されたデータ取得地点における焦点ずれを判定することに基づく。この測定は、典型的には、取得された画像のパワースペクトルを分析し、焦点ずれが重要なパラメータである画像化システムのコントラスト伝達関数(CTF)のモデルを当てはめることによって実行される。焦点ずれは撮像地点の撮像面からのzオフセットに正比例するため、測定焦点ずれを使用してこのzオフセットを判定することができる。
【0107】
zオフセットが推定され得る1つの他の方法は、既に取得された測定値と、光学収差及び/又はステージ傾斜を考慮するモデルとを使用して、特徴の予想位置を判定し、任意の残留差が特徴の位置と理想的な平坦な試料平面との間の高さ不一致によるものであると仮定し、残余の見かけのシフトを使用してzオフセットを推定することである。
【0108】
電子ビームを誘導することは、電子ビームの傾斜及び/又はシフトを調整することを含み得る。電子ビームの傾斜及び/又はシフトを調整することは、
入射電子ビームを調整すること(照射ビームを移動させること)、及び/又は
透過電子ビームを調整すること(カメラFOVを移動させること)を含み得る。
【0109】
本方法は、変換演算を使用して、基準画像内で識別された1つ以上の特徴の位置(及び/又は配向)を較正画像内の対応する位置(及び/又は配向)にマッピングすることを更に含み得る。変換演算は、1つ以上の回転、平行移動、及び/又はスケーリング演算を含み得る。
【0110】
変換演算は、推定されたzオフセットを考慮に入れ得る。
【0111】
画像処理技術を使用して、較正画像内のターゲット地点の予想位置と較正画像内のターゲット地点の観察位置との間の見かけのシフトを識別することは、
(線形)誘導モデルを使用して、較正画像内の特徴の予想位置を判定することと、
(例えば、特徴検出及び特徴照合プロセスを使用して)観察位置における較正画像内の特徴を識別することと、
予想位置と観察位置との間の差として見かけのシフトを判定することとを含み得る。
【0112】
試料が複数の穴を含む穿孔箔を含む場合、ターゲット地点は、穴のうちの1つの穴内の地点であってもよい。第1の画像内の特徴/ターゲット地点を識別することは、第1の画像内の穴の縁部を識別することを含み得る。較正画像内の特徴を識別することは、較正画像内の同じ穴の縁部を識別することを含み得る。
【0113】
本方法は、
1つ以上の較正画像について焦点ずれ測定値を取得することと、
焦点ずれ測定値に基づいて非線形モデルを更新することとを更に含み得る。
【0114】
本方法は、
焦点ずれ測定値を使用して、特徴のzオフセット(特徴の物理的位置と顕微鏡の撮像平面上への特徴の投影との間の差)を推測することを更に含み得る。
【0115】
非線形モデルを訓練/更新することは、ターゲット地点、対応する見かけのシフト、及び対応する焦点ずれ測定値を使用することを含み得る。
【0116】
本方法は、第2の倍率で画像を反復的に取得することと、1つ以上のサイクルを実行することによって非線形モデルを精緻化することとを含み得る。各サイクルは、
基準画像内のターゲット地点を識別する工程、
電子ビームをターゲット地点に誘導する工程、
ターゲット地点で第2の倍率で較正画像を取得する工程、
較正画像内の観察位置における基準特徴を識別し、観察位置と(線形誘導モデルを使用して取得された)予想位置との間の差として見かけのシフトを判定し、見かけのシフトに基づいて非線形モデルを更新する工程、及び/又は
較正画像についての焦点ずれ測定値を取得し、焦点ずれ測定値を使用して特徴についてのzオフセットを推測し、zオフセットに基づいて非線形モデルを更新する工程を含み得る。
【0117】
ターゲットモデルを更新するために残余ターゲット誤差が使用される画像の第1の数が第1の閾値に達するまで、及び/又はターゲットモデルを更新するために焦点ずれ測定値が使用される画像の第2の数が第2の閾値に達するまで、モデルを更新するための反復サイクルが繰り返され得る。
【0118】
別の例では、透過型電子顕微鏡のための自動データ取得方法が提供され、本方法は、
第1の倍率で試料の基準画像を取得することと、
基準画像内で識別された第1の複数のターゲット地点の各々について、
(好ましくは、ターゲット地点を顕微鏡の光軸と位置合わせするために)透過型電子顕微鏡のステージをターゲット地点にシフトさせることと、
第1の倍率よりも高い第2の倍率で試料の較正画像を取得することと、
画像処理技術を使用して、較正画像内のターゲット地点の予想位置と較正画像内のターゲット地点の観察位置との間の見かけのシフトを識別することと、
第1の複数のターゲット地点及び対応する見かけのシフトを使用して非線形モデルを訓練することと、
非線形モデルに基づいて、次のターゲット地点に対する較正ターゲット地点を計算することと、
ステージを較正ターゲット地点にシフトさせ、第1の倍率よりも高い第3の倍率で画像を取得することとを含む。
【0119】
このようにして、提案された方法は、ステージシフトプロセスにおけるターゲティング誤差を較正及び補正するためにも使用され得る。上述した任意選択的な特徴は、この方法にも等しく適用され得る。
【0120】
上述した方法の1つ以上を実行するように構成された透過型電子顕微鏡装置も提供される。装置は、透過型電子顕微鏡、命令を実行するためのプロセッサ、及び命令を記憶するためのメモリを備え得る。
【0121】
コンピュータのプロセッサ上で実行されると、コンピュータに上述の方法のうちの1つ以上を実行させる命令を含むコンピュータソフトウェアも提供される。ソフトウェアは、電子顕微鏡に通信可能に結合された汎用コンピュータシステム上で実行され得る。あるいは、ソフトウェアは、顕微鏡に結合された専用ハードウェア上で実行され得る。
【図面の簡単な説明】
【0122】
次に、本発明の特定の非限定的な例を、いくつかの非限定的な例を参照して説明する。
図1A】荷電粒子顕微鏡の概略図を示す。
図1B】ターゲティングの不正確さを被る実際のSPA画像を示す。
図2A】1つの一般的な例示的実施態様中に取得された概略画像を示す。基準画像内のターゲット地点を示す基準画像を示す。
図2B】1つの一般的な例示的実施態様中に取得された概略画像を示す。電子ビームをターゲット地点に誘導することによって取得された較正画像と、ターゲット誤差によって引き起こされたターゲット地点の見かけのシフトとを示す。
図2C】1つの一般的な例示的実施態様中に取得された概略画像を示す。基準画像内の較正ターゲット地点を示す。
図2D】1つの一般的な例示的実施態様中に取得された概略画像を示す。電子ビームを較正ターゲット地点に誘導することによって取得された較正画像を示す。
図3A】較正方法1及び2を示す。
図3B】較正方法3を示す。
図3C】較正方法4を示す。
図4】試料高さの変化によって導入されるターゲティングの不正確さの幾何学的計算を示す。
図5】提案された方法の特定の例示的な実施態様のフロー図を示す。
図6】ライフサイエンス試料上のターゲティング誤差を示す。
図7】30度傾斜した金グリッド試料上のターゲティング誤差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0123】
図1A(原寸に比例して示されていない)は、本発明を実施することができる荷電粒子顕微鏡Mの例の非常に概略的な図である。一例では、荷電粒子顕微鏡Mは、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)などの透過型顕微鏡であってもよい。図1Aに示されるように、真空筐体2内で、電子源4は、電子光学軸B’に沿って伝播し、電子光学照明器6を横断する電子のビームBを生成し、(局所的に)薄くされ/平坦化され得る試料Sの選択された部分に電子を方向付ける/集束させるように機能する。また、偏向器8が図示されており、これは(とりわけ)、ビームBの走査運動を行うために使用され得る。
【0124】
試料Sは、試料ホルダH上に保持され、試料ホルダHは、位置決めデバイス/ステージAによって複数の自由度で位置決めすることができ、位置決めデバイス/ステージAは、ホルダHが(取り外し可能に)固定されたクレードルA’を移動させる。例えば、試料ホルダHは、(とりわけ)XY平面内で移動可能なフィンガを備え得る。デカルト座標系も図1Aに示されている。典型的には、Z軸に平行な運動及びX/Y軸を中心とする傾斜も可能である)。このような動きにより、試料Sの異なる部分が、軸B’(Z方向)に沿って進む電子ビームBによって照射/撮像/検査されることを可能にする、及び/又は、走査する動きがビーム走査の代替として実行されることを可能にする。所望される場合、任意選択的な冷却デバイス(描写せず)が、試料ホルダHとの密接な熱接触状態にされ、それによって試料ホルダH(及びその上の試料S)を例えば極低温に維持することができる。
【0125】
電子ビームBは、(例えば)二次電子、後方散乱電子、X線、及び光放射(カソードルミネッセンス)を含む様々なタイプの「誘導」放射線を試料Sから放出させるように、試料Sと相互作用する。必要に応じて、これらの放射線タイプのうちの1以上は、例えば、組み合わされたシンチレータ/光電子増倍管又はEDX(エネルギー分散型X線分光法)モジュールとすることができる分析デバイス22を用いて検出することができる。このような場合、SEMと基本的に同じ原理を使用して画像を構築することができる。しかしながら、代替的に又は補足的に、試料Sを横断(通過)し、試料Sから出射/放出され、軸B’に沿って(実質的には、とはいえ、概して、ある程度偏向/散乱しながら)伝搬し続ける電子を調査することができる。このような透過電子束は、多種多様な静電レンズ/磁気レンズ、偏向器、補正器(非点収差補正装置のような)などを広く含む画像化システム(投影レンズ)24に入射する。通常の(非走査)TEMモードでは、この画像化システム24は、透過電子束を蛍光スクリーン26に集束させることができ、蛍光スクリーン26は、必要に応じて、軸B’の邪魔にならないように格納/回収することができる(矢印26’によって概略的に示される)。試料Sの(一部の)画像(又は、ディフラクトグラム)は、画像化システム24によりスクリーン26上に形成され、この画像は、筐体2の壁の好適な部分に設けられた視認ポート28を介して視認され得る。スクリーン26の引き込み機構は、例えば本質的に機械的及び/又は電気的な機構であり得、ここには図示されていない。
【0126】
スクリーン26上の画像を視認することの代替として、画像化システム24から出ていく電子束の焦点深度が一般的に、極めて深い(例えば、約1メートル)という事実を代わりに利用することができる。その結果、以下より詳細に説明するように、スクリーン26の下流には、以下のような種々の他のタイプの分析装置を使用することができる。
【0127】
スクリーン26の下流で使用することができる1つの他のタイプの分析装置は、TEMカメラ30である。カメラ30の位置に、電子束は、静止画像(又は、フーリエ変換図形)を形成することができ、静止画像は、コントローラ/プロセッサ20により処理することができ、例えばフラットパネルディスプレイのような表示デバイス(図示せず)に表示することができる。必要ではない場合、カメラ30は、後退/回収(矢印30’で概略的に示すように)されて、カメラを軸B’から外れるようにすることができる。
【0128】
スクリーン26の下流で使用することができる別のタイプの分析装置は、STEMカメラ32である。カメラ32からの出力は、試料S上のビームBの(X、Y)走査位置の関数として記録することができ、(X、Y)の関数としてのカメラ32からの出力の「マップ」である画像を構築することができる。カメラ32は、カメラ30に特徴的に存在する画素のマトリックスとは対照的に、例えば、20mmの直径を有する単一の画素を含むことができる。更に、カメラ32は、一般的に、カメラ30(例えば、10画像/秒)よりも非常に高い取得速度(例えば、10ポイント/秒)を有することになる。再び、必要とされないとき、カメラ32は、軸B’から外れるように、(矢印32’によって概略的に示されるように)後退/後退され得る(しかしながら、かかる後退は、例えば、ドーナツ形状の環状暗視野カメラ32の場合、必要ではないであろう。このようなカメラでは、中央の穴は、カメラが使用されていないときに光束の通過を可能にする)。
【0129】
カメラ30又は32を使用して撮像を行うことの代替として、例えば、EELSモジュールとすることができる分光装置34を実行することもできる。
【0130】
部品30、32、及び34の順序/位置は厳密ではなく、多くの可能な変形が考えられることに留意されたい。例えば、分光装置34は、画像化システム24と一体化することもできる。
【0131】
コントローラ(コンピュータプロセッサ)20は、制御ライン(バス)20’を介して種々の図示された構成要素に接続されていることに留意されたい。このコントローラ20は、アクションを同期させる、設定値を提供する、信号を処理する、計算を実行する、及びメッセージ/情報を表示デバイス(図示せず)に表示するなどの様々な機能を提供することができる。言うまでもなく、(模式的に描かれる)コントローラ20は、筐体2の内側又は外側に(部分的に)位置させることができ、所望に応じて、単体構造又は複合構造を有することができる。
【0132】
当業者であれば、筐体2の内部が厳密な真空に維持される必要がないことを理解するであろう。例えば、いわゆる「環境TEM/STEM」では、所与のガスの背景雰囲気が筐体2内に意図的に導入/維持される。当業者はまた、実際には、可能であれば、筐体2が軸B’を本質的に包み込むように筐体2の容積を限定して、使用された電子ビームが通過する(例えば、直径約1cmの)小径管の形態をとるが、源4、試料ホルダH、スクリーン26、カメラ30、カメラ32、分光装置34などのような構造を収容するように広がることが有利となり得ることを理解するであろう。
【0133】
試料の異なる部分は、試料の特定の部分を光軸に機械的にシフトさせることによって、又は電子顕微鏡の電子ビーム偏向器を使用して電子ビームをこれらの特定の部分に向かってシフトさせることによって、カメラ30の視野に入れることができる。しかしながら、そのような偏向は収差を引き起こす可能性があり、それによって、これらの引き起こされた収差が適切に補償されない場合、解像度の損失を引き起こす可能性がある。これを以下の段落で説明する。
【0134】
走査型電子顕微鏡、電子ビームマイクロプローブ、及び電子ビームリソグラフィ機械などの電子ビーム機器で得られる解像度及び視野は、光学系の収差によって制限される。これらの収差は、寄生収差と固有収差とに分類することができる。寄生収差は、レンズの不完全性、例えば不完全な真円度又はレンズの磁場を生成する材料の磁気特性の不均一性によって引き起こされる。最もよく知られているレンズの寄生収差は、(2倍)非点収差である。固有収差は、レンズに固有のものであり、したがって、注意深い機械加工によって回避することができない。固有収差は、従来、純粋に幾何学的なもの(最もよく知られている収差は球面収差である)又はエネルギー依存的なもの(最もよく知られている収差は(一次)色収差である)として分類される。レンズの三次の固有幾何収差には、以下の8つのタイプ:等方性及び異方性の歪み、像面湾曲、等方性及び異方性の軸外非点収差、等方性及び異方性の軸外コマ収差、並びに球面収差がある。「軸外」という用語は、軸外非点収差及び軸外コマ収差(これらは固有収差であり、三次である)を軸上非点収差及び軸上コマ収差(これらはそれぞれ寄生収差であり、一次及び二次である)と区別するために使用される。用語「軸外」及び「軸上」は、非点収差又はコマ収差のいずれの形態を意味するかが文脈から明らかである場合には、しばしば省略されることに留意されたい。
【0135】
システムの光軸上の画像点については、球面収差のみが発生する。電子ビームが更に軸から離れた画像点に集束されると、残りの7つの収差は、達成可能な集束スポットサイズ及び像に存在する歪みの程度を決定する際に重要になる。
【0136】
これらの光学収差のいくつかは、一般的に知られている技術で補正することができる。ある種の同時補正が提供されていない視野を制限する唯一の収差は、等方性及び異方性コマ収差である。一般に知られているように、ビーム画定開口の適切な配置は、従来の電子顕微鏡のような非走査型電子ビーム機器においてさえ、等方性コマ収差が相殺されることを可能にする。しかしながら、異方性コマ収差を完全に補正する手段はなかった。更に、異方性コマ収差と等方性コマ収差を同時に補正しつつ、像面湾曲を最小限に抑えることが課題である。
【0137】
例示的な例では、300kVのSTEM顕微鏡(内蔵の球面収差補正器なし)が与えることができる最良の解像度は、約0.10nmである。典型的には、これは、試料を約0.04×0.04nmの画素で走査することによって取得される。現代のSTEM制御は、8000×8000画素の大きさの画像を収集することができる。これは、320×320nmの視野及びu=320nm/√2=226nmの最大軸外距離に対応する。軸外コマ収差によるぼけは、以下のように計算することができる。
【0138】
【数5】
ここで、Kは軸外コマ収差の係数であり、vは試料におけるSTEMビームの半収束角である。ここで、距離及び角度及びコマ収差は、複素数u=x+iy及びv=α+iαであり、それらの複素共役は追加された上部バーによって示される。Kは典型的に約1(無次元)であり、vは典型的に0.012radであるため、画像の角における軸外ぼけは、この例では約0.098nmに達し、解像度を低下させる。
【0139】
軸外収差の性質を理解するために、無限に薄いレンズであるように対物レンズを簡略化することが有用であり得る。理想的には、レンズの屈折強度は、レンズの中心までのビームの距離と共に線形に増加し、関連する比例定数は、対物レンズの焦点距離の逆数に等しい。しかしながら、実際には、高次収差は、屈折強度が線形依存性から逸脱することを引き起こす。しかしながら、無限に薄いレンズの場合、レンズの中心を通って導かれるビームは、レンズの屈折力がその中心で0であるため、これらの高次収差を被らない。したがって、走査ビームが対物レンズの中心を通って進むように傾けられる(又は方向付けられる)という条件で、ビームに高次収差を課すことなく、軸外で無限に離れて試料を走査することが可能である。この方式は、当業者には「コマ収差フリー平面に旋回点を配置する」として知られている。同様に、無限に薄いわけではない実際のレンズの場合、通常はレンズの中心にかなり近い平面が存在し、走査ビームがこの平面内で光軸と交差するように向けられたときに等方性軸外コマ収差が導入されないという特性を有する。
【0140】
複雑な旋回点を使用することによって、すなわちシフトにシフト依存傾斜補正を加えることによって、等方性コマ収差だけでなく異方性コマ収差も回避又は補正することができる。
【0141】
従来のSPAでは、最大画像シフトは、対物レンズの固有の三次収差によって導入される収差によって設定される。一次収差は非点収差装置又は非点収差レンズによって補正され得る(軸上の)非点収差に対応するため、三次収差は関連する量であり、システムが回転対称であるので、二次収差は消滅する。以下の式は、これを定量的に示す。試料における位置及び角度を複素数u=x+iy及びv=a+iaによって示し、それらの複素共役を追加の上部バーによって示す。全ての三次収差によって引き起こされるシフトの一般式は、以下の通りである。
【0142】
【数6】
ここで、C=球面収差、K=軸外コマ収差、F=像面湾曲、Λ=軸外非点収差(複素数)、D=歪みである。
【0143】
試料においてシフトu→u+s及び傾斜v→v+tを導入する。これは、更なる収差
【0144】
【数7】
を誘発し、
【0145】
【数8】
【0146】
従来の単一粒子分析では、傾斜は適用されず、シフトsのみが適用される。この場合、有効コマ収差が最大画像シフトを制限している。
【0147】
この場合、コマ収差Bが約2μmになると約1Åの解像劣化が生じ、これが実用上許容できる最大の解像劣化である。出願人のKrios(商標)透過型電子顕微鏡は、K=0.15+1.42iを含み、したがって、最大許容画像シフトは約
【0148】
【数9】
である。有効コマ収差は、比t=-Ks/Cで画像シフトs及びビーム傾斜tを同時に適用することによって除去することができる。このスキュー照射は、米国特許第4,101,813号から既知である。
【0149】
画像シフトプロセス中に生じる収差を補正するための上述の技術は、「無収差画像シフト」又は「AFIS」技術と呼ばれることがあり、米国特許出願公開第2021/0272767号に記載されている。
【0150】
無収差画像シフト(AFIS)及び試料高さの影響
電子ビームが下側対物レンズを軸外位置で通過するとき、結果として得られる画像は、コマ収差などの望ましくない位相収差を経験し、これは最終的なSPA画像品質にとって有害であり得る。この軸外コマ収差は、ビームを傾斜させることによって相殺することができ、結果として生じるコマ収差が最小になるように(「回転中心」又は「コマ収差フリー中心」と呼ばれることが多い)下部対物レンズ内の固定点を通過させることができる。コマ収差フリー点を中心にビームを旋回させることは、コマ収差フリー中心の上方で光軸に垂直な各平面について異なるシフトをもたらす。したがって、試料において特定のビームシフトを達成するために、コマ収差フリー中心の上方の試料の高さ(一方は関連する試料点(ターゲット領域)を含み、他方はコマ収差フリー中心を含む、光軸に垂直な2つの平面間の距離)が既知でなければならない。簡単にするために、試料は平坦であり、光軸に対して垂直に配向され、試料は顕微鏡が検出器で撮像する光学面に位置し、したがってコマ収差フリー中心からの試料の高さは固定され、既知であると仮定することが一般的なやり方である。この試料平面は、「画像平面」又は「ターゲット平面」と呼ばれる。コマ収差フリー中心の上方の試料の真の局所高さは、コマ収差フリー中心の上方のターゲット平面の高さとターゲット平面の上方の関連する試料点の高さ(ターゲット平面からの高さ偏差の方向に応じて正又は負であり得る)との和である。ターゲット平面上の試料の高さのこの局所偏差を「試料高さ」又は「試料zオフセット」と称する。
【0151】
現在の顕微鏡システムでは、選択されたターゲット平面における所望のビームシフト及び傾斜と、必要なレンズ電流との間の変換は、専門家によって実行される必要がある較正手順によって確立される。この変換は、各加速電圧に対して経時的に安定しており、再較正のために専門知識を必要とするので、(例えば、試料ステージz座標から導出される)試料の高さがターゲット平面から逸脱することが分かっている場合であっても、ほとんど調整されない。特に、試料ステージが既知の角度だけ傾斜している場合など、予測可能である場合であっても、(画像化システム内のレンズの強度を調整することによって)局所的な試料高さの変動に起因してターゲット平面を動的に調整することは一般的ではない。
【0152】
画像シフト技術は、試料Sの軸外箔穴からの画像データの収集を、これらの箔穴を光軸B’に近づけるためにステージAを移動させることなく可能にする。
【0153】
一例では、試料は、多くの円形箔穴を有するグリッドを含み、各穴は、撮像される分子のほぼ同一のコピーを有する氷の非晶質層を含む。各氷箔穴は約2μm径であり、平均距離は約5μmである。ステージが穴の中心に移動し、2~6つの異なる画像シフトが使用されて、各々が約.0.5×0.5μmの面積をカバーする2~6枚の画像が取得される。次いで、ステージは、次の穴に移動し、手順が繰り返される。このプロセスは、何千回も繰り返すことができ、したがって、何千もの画像を生成する。これらの画像から、粒子が取り出され、分類され、整列され、平均化されて、再構成された粒子において特定の解像度になる。取得セッションは、典型的には、数日かかる可能性がある。
【0154】
ステージシフトの緩和時間は、最大約1分であり得、この待ち時間は、SPAセッションの総時間において優位を占める寄与であり得る。ステージシフトの代わりに画像シフトを使用することができれば、この合計時間を大幅に短縮することができる。
【0155】
ターゲティングソフトウェアは、偏向器を調整することによって、所望の地点の画像を自動的に取り込むように構成されてもよい。既存の技術はまた、改善されたビーム制御を容易にするために、ターゲティング誤差を予測することを目的とする。これは、低倍率(LM)を使用して観察された箔穴の見かけの位置を、高倍率(HM)を使用して観察されたときのそれらの同じ箔穴の見かけの位置と比較する較正プロセスを含み得る。見かけの位置間の不一致は、モデルに当てはめられ、次いで、モデルは、LMモードとHMモードとの間の線形回転及びスケーリング不一致を決定するために使用される。次いで、これらの不一致は、顕微鏡の自動化された動作中により高い倍率で特定の領域を撮像するためにターゲティングを行うときに考慮することができる。
【0156】
LMモード及びHMモードを使用して収集された画像間には、(例えば、スケール、回転、歪みにおいて)比較的大きな不整合が存在する可能性がある。この理由の1つは、顕微鏡Mの投影システム24内の第1の撮像(又は「中間」)レンズが、HMモードでオンに切り替えられ、LMモードでオフに切り替えられることである。
【0157】
単一粒子分析(SPA)技術の一例は、極低温電子顕微鏡法(cryoEM)であり、この場合、試料Sは、極低温に冷却され、ガラス水中に懸濁された試料粒子を含む。試料水溶液を箔メッシュグリッドに塗布し、凍結させる。箔メッシュグリッドは多数の箔穴を含み、そこに凍結溶液が浮遊する。次に、メッシュグリッド内の箔穴を、顕微鏡Mによって分析する。
【0158】
箔穴の分析は、データが収集される速度を改善するように自動的に実行され得る。自動データ収集のスループットを制限する1つの大きなボトルネックは、ステージAのステージ移動に費やされる時間である。ドリフトを低減するために、各ステージ移動の後に整定期間が続かなければならない。更に、ステージ移動の不正確さを補償するために、余分な追跡工程が必要とされる場合がある。上述の画像シフト技術は、必要とされるステージ移動の数を減少させ、それによって自動データ収集中のスループットを増加させるように設計されている。
【0159】
しかしながら、SPAにおける画像シフトの実験的ターゲティング精度は、試料平面上のシフト距離が10μmより大きい場合に、100nmより悪いことが発見されることがある。典型的な不良画像の例が図1Bに示されており、ここでは、(試料Sの箔穴内に浮遊する氷ではなく、箔自体を撮像するために)視野(FOV)の50%超が使用不能である。
【0160】
図1Bは、ターゲティングの不正確さを被る実際のSPA画像を示す。これらの画像のFOVは、約300nmである。
【0161】
フィルムのこの照射部分がカメラFOV内に現れることなく(又は少なくともフィルムがFOVの大部分を支配することなく)、ビームが依然として導電性支持フィルムの一部に接触することを確実にするために(試料に対する帯電効果を低減するのを助けるために)、ターゲット精度は50nmよりも良好である必要がある。したがって、現在のターゲット精度は、単一の撮像中心から到達可能な箔穴の有効数を制限する(言い換えれば、ターゲット精度は、ステージAを移動させずに撮像することができる穴の数を制限する)。
【0162】
本発明の意図は、(現在の画像偏向器の範囲限界である)25μmの大きさのシフト距離で50nmよりも良好な値にターゲット精度を改善することである。このような改良により、画像シフト技術はより多くの領域をカバーすることができ、それによって正方形取得当たりのステージ移動の数を低減することができる。また、傾斜SPA取得におけるスループットが有意に改善され(少なくとも2倍)、これは、COVID-19スパイクタンパク質のような空気-水界面によって誘導される配向優先性を有するタンパクにとって非常に重要であることが証明されている。
【0163】
ターゲティングのための主要なタイプの誤差源には以下が含まれる。
1.試料の非平坦性、
2.HMモードに対して線形回転及びスケーリングを引き起こし、LMマップとHMマップとの間の不一致を示唆する、LMモードにおける焦点ずれ、
3.偏向器の高次歪み及び機械的欠陥などの他の誤差源。
【0164】
既存の技術は、誤差源2:LMモードとHMモードとの間の線形回転及びスケーリングを引き起こす焦点ずれに対処するだけである。一連の画像の収集の開始時に、既知の技術は、いくつかの画像を収集し、線形(スケーリング及び回転)補正を観察されたターゲティング誤差に当てはめる。このようにして、ターゲティング誤差に対する試料の非平坦性の起こり得る影響は、起こり得る高次歪みと共に無視される。
【0165】
誤差源1に対処するために、この例において提案される方法は、試料高さの変動が、取得のために選択されたビーム傾斜と組み合わせて(ビーム傾斜は照射方式に固有であるため)照射シフトを生成し得ることを考慮に入れる。このシフトは、既知の画像シフト技術に現在影響を与えている不正確さのかなりの部分を占める場合がある。
【0166】
誤差源1を補償することに加えて、誤差源2及び3に対処するために、特定の例では、提案された方法は、残余誤差にその場で平滑二次元関数を当てはめて、近くの取得領域についての正確な誤差予測を可能にし、それによって、ターゲティングを更に改善する。高次誤差寄与の物理的根本原因は、未知であり得る。しかしながら、物理的な根本原因を誤差寄与に起因させることは必要でない場合がある。本発明は、これらの誤差を高次項としてモデル化することによって良好に機能し得る。
【0167】
1つの一般的な例示的実装形態が、図2A図2Dを参照して示され、以下のように要約され得る。
1)図2Aに示されるように、低倍率(LM)での試料の概観画像I(u)を取得する(ここでは、
【0168】
【数10】
は、試料上の位置を示す二次元ベクトルである)、
2)この概観画像から、高倍率で記録される外観画像のサブ領域の画像座標uを判定する(第1の対象サブ領域uは、図2Aでは「X」で示されている)、
3)HM画像の中心が第1の対象サブ領域uの判定された座標にあるように、偏向器を使用してビームをシフトする(意図されるシフトは、図2Aで矢印によって示されている)、
4)図2Bに示されるように、高倍率(HM)でターゲット領域の画像を記録する。
【0169】
(従来技術が想定する)理想的なシナリオでは、このHM画像の中心は対象領域uの中心に対応する。しかしながら、様々な理由により、これらの中心間に見かけのシフトが存在し得る。これは、以下によって引き起こされる可能性がある。
i.LM及び/又はHM画像の倍率の不正確な較正、
ii.LM及び/又はHM画像の不正確な配向、
iii.LM画像における歪み、この歪みは以下が原因であり得る。
a.光学収差、及び/又は
b.カメラの不完全性、
iv.以下に説明するように、試料の非平坦性に起因する不正確なターゲティング
v.ステージのドリフト、及び
vi.他の特定されない因子。
【0170】
そのようなターゲティング誤差を説明するために、以下の工程が本方法に追加され得る。
5)相互相関、ニューラルネットワーク、又はAIを使用して、図2Bの矢印によって示されるように、HM画像の中心と第1のターゲット領域uの中心との間の見かけのシフト又は「ターゲティング誤差」Δを判定する。
【0171】
全てのターゲット領域uが訪問されて記録されたら、誤差マップΔが概観画像のために提供される。根底にある原因i、ii、iii、iv、vは全て、滑らかに変化する誤差マップを生成するため、この誤差マップは平滑である(言い換えれば、急激な変化がない)はずである。この平滑さのために、既に記録されたHM画像及びそれらの誤差を使用してマップを作成することができ、このマップを、まだ取得されていない領域に補間及び/又は外挿することができる。したがって、画像取得がまだ進行中である間に、既に記録されたHM画像を使用して、次のHM画像を記録するためにビームシフトにどのような補正を適用すべきかを予測し得る。
6)最新の見かけのシフト/ターゲティング誤差Δを使用して、誤差マップを精緻化する、
7)精緻化された誤差マップを使用して、次のターゲット地点Δi+1でターゲティング誤差ui+1を予測し、較正ターゲット地点
【0172】
【数11】
を計算して、図2Cの矢印によって示されるように、予測ターゲティング誤差を説明する(単に例示目的として、同じターゲット地点uを仮定する)、
8)図2Dに示すように、ビームを次の較正ターゲット地点にシフトし、高倍率(HM)で次の画像を取り込む、
9)全てのターゲットサブ領域が撮像されるまで、工程4~8を繰り返す。
【0173】
いくつかの例示的な方法は、誤差マップが最適な方法で作成され、更新され、外挿され得るように、ターゲット領域uが記録される順序を変更する。例えば、ターゲット領域uは、LM概観(又は「基準」)画像の中心から螺旋状に広がる螺旋経路に沿って訪問され得る。
【0174】
誤差マップΔ(u)は、基底関数B(u)の和として書くことができる。言い換えれば、Δ(u)=Σ(u)。係数cは、最初は全て0であり(したがって誤差がない)、測定誤差Δを使用して判定され、微調整される。
【0175】
一例では、ゼルニケ多項式が基底関数に使用され得る。これらの関数は、光学収差を記述するのに有用であり得る。あるいは又は加えて、2Dスプライン関数が基底関数に使用され得る。これらの関数は、試料の非平坦性を記述するのにより適している場合がある。
【0176】
この方法は、ある中間倍率MMでのマップが記録される(例えば、LM=100倍、MM=6,000倍、HM=100,000倍)追加の工程2a(工程2の後に外観画像を取得し、工程3の後にHMで最後の画像を取得する)によって拡張されて、Δ(u)の第1近似を測定し構築する。
【0177】
図3Aは、「較正方法1」及び「較正方法2」のフローチャートを示す。以下、フローチャートに示す工程について個別に説明する。
【0178】
工程S301で、ターゲティングモデルが初期化される。この初期化は、同一性マップ、すなわち、任意のターゲット地点が与えられると、与えられたターゲット地点と同じである較正ターゲット地点を返すモデルとすることができる。あるいは、初期化は、モデル当てはめからのパラメータを別のグリッド正方形からのターゲットにコピーすることによって行われ得る。
【0179】
工程S302で、グリッド正方形画像が取得される。
【0180】
工程S302で取得されたグリッド正方形画像に基づいて、工程S303でターゲット地点が識別される。これは、典型的には穴発見アルゴリズムによって行われるが、人間のオペレータによって完全に支援又は実行され得る。
【0181】
工程S304で、ターゲット地点のサブセットが、工程S303で識別されたターゲット地点から選択される。この選択は、小さいモデリング誤差(例えば、任意の箔穴位置において50nm未満)を有するモデルが、可能な限り少ない選択された点に当てはめられ得るように、箔穴の領域(例えば、全てのターゲット地点の凸包)が選択された点でカバーされるように行われる。典型的には、平滑なターゲティング誤差場の場合、これは、50μm辺長を有するグリッド正方形内の少なくとも10個の地点を使用して、空間的に均一なカバレッジによって達成されることができる。あるいは、選択は、選択された数のビンの各々からランダムに行われてもよく、各ビンは、選択された数の地点を選択された順序で含む。例えば、地点の順序は、取得ソフトウェアによって設定される取得の順序であってもよい。
【0182】
工程S305で、較正基準は、現在のターゲットモデルが依然として有効であるかどうかを決定する。この評価は、現在のモデルを当てはめるために使用される画像の取得と比較して、光学設定が変化したかどうかに基づいて行われ得る。評価は更に、現在のモデルが当てはめられたグリッド正方形と比較した現在のグリッド正方形に関する事前の知識に基づいてもよい。例えば、この事前知識は、高さ偏差、汚染レベル、亀裂などの推定値を含み得る。
【0183】
工程S305で評価されたターゲティングモデルが無効である場合、本方法はループに入る。ループの開始時に、工程S306で停止基準がチェックされる。この停止基準は、「利用可能な次のターゲットがないか?」及び更なる基準の論理ORであってもよい。これらの更なる基準は、現在のターゲットモデルが選択された値よりも小さい誤差を有するという信頼値に基づき得る。
【0184】
工程S307で、次のターゲット地点が、ターゲット地点のサブセット4から現在のターゲット地点として選択される。
【0185】
「較正方法2」では、工程S308で、現在のターゲット地点に現在のターゲットモデルを適用して、較正ターゲット地点を生成する。「較正方法1」では、較正ターゲット地点が現在のターゲット地点として選択される。
【0186】
工程S309で、中間(MM)又は高(HM)倍率の画像が、較正ターゲット地点に中心がくるようにビームを偏向させる画像シフトを使用して、較正ターゲット地点で取得される。
【0187】
較正ターゲット地点におけるターゲティング誤差は、較正ターゲット地点におけるグリッド正方形画像のクロップを、工程S309で取得された画像と比較することによって、工程S310で測定される。この測定は、2つの画像間のシフトを検出するために、画像処理技術、例えば、特徴追跡、光学フロー、特徴認識、又は画像登録を使用して実行され得る。較正ターゲット地点における測定ターゲティング誤差が記憶される。
【0188】
新しいターゲティングモデルが、これまでに利用可能なデータ対(u,Δ)に当てはめられ、i番目の位置について、
【0189】
【数12】
は、較正ターゲット地点であり、
【0190】
【数13】
は、測定ターゲティング誤差である。この新しいターゲットモデルは、次の反復のための新しい現在のターゲットモデルであるとみなされ得る。このモデル更新は、モデル品質チェックの対象となり得る。例えば、パラメータが有効なパラメータの選択された範囲外である場合、新しいモデルを拒否し得る。新しいモデルはまた、品質メトリック、例えば、選択された誤差メトリックに対する測定ターゲティング誤差に対する当てはめの品質に基づいて拒否され得る。
【0191】
工程S305で評価されたモデルが依然として有効である場合、又は工程S306でチェックされた停止基準に達した場合のいずれかで到達する工程S312では、現在のターゲットモデルが、工程S304で選択された全てのターゲット地点に適用され、全てのターゲット地点について較正位置をもたらす。
【0192】
従来のデータ取得方法は、工程S312からの較正ターゲット地点を使用して、工程S313で実行される。
【0193】
図3Bは、「較正方法3」のフローチャートを示す。以下、フローチャートに示す工程について個別に説明する。
【0194】
工程S321で、ターゲティングモデルが初期化される。この初期化は、同一性マップ、すなわち、任意のターゲット地点が与えられると、与えられたターゲット地点と同じである較正ターゲット地点を返すモデルとすることができる。あるいは、初期化は、モデル当てはめからのパラメータを別のグリッド正方形からのターゲットにコピーすることによって行われ得る。
【0195】
工程S322で、グリッド正方形画像が取得される。
【0196】
工程S322で取得されたグリッド正方形画像に基づいて、工程S323でターゲット地点が識別される。これは、典型的には穴発見アルゴリズムによって行われるが、人間のオペレータによって完全に支援又は実行され得る。
【0197】
工程S324で、取得のために処理されるべき更なるターゲットが残っているかどうかがチェックされる。残っていない場合、現在のグリッド正方形についてのデータ取得は終了し、方法は工程S313に進む。アプリケーションは、次のグリッド正方形において取得を継続することを決定してもよい。
【0198】
処理されるべきターゲットがまだ残っている場合、工程S325で次のターゲットが選択される。
【0199】
工程S326で、較正基準は、現在のターゲットモデルが依然として有効であるかどうかを決定する。この評価は、現在のモデルを当てはめるために使用される画像の取得と比較して、光学設定が変化したかどうかに基づいて行われ得る。評価は更に、現在のモデルが当てはめられたグリッド正方形と比較した現在のグリッド正方形に関する事前の知識に基づいてもよい。例えば、この事前知識は、高さ偏差、汚染レベル、亀裂などの推定値を含み得る。評価は、最後の較正からの時間、総ドリフト推定値、又はそれらの組み合わせに更に基づき得る。
【0200】
現在のモデルが有効である場合、工程S331で、現在のターゲット地点を較正するために直ちに適用される。そうでない場合、工程S327で、現在のモデルが現在のターゲットに適用され、予備較正ターゲット地点が生成される。
【0201】
工程S328で、中間倍率(MM)での画像が、予備較正ターゲット地点に中心が置かれるようにビームを偏向させる画像シフトを使用して、予備較正ターゲット地点で取得される。
【0202】
予備較正ターゲット地点におけるターゲティング誤差は、予備較正ターゲット地点におけるグリッド正方形画像のクロップを工程S328で取得された画像と比較することによって、工程S329で測定される。この測定は、2つの画像間のシフトを検出するために、画像処理技術、例えば、特徴追跡、光学フロー、特徴認識、又は画像登録を使用して実行され得る。予備較正ターゲット地点で測定ターゲティング誤差が記憶される。
【0203】
工程S330で、新しいターゲティングモデルが、これまでに利用可能なデータ(u,Δ)に当てはめられ、i番目の位置について、
【0204】
【数14】
は、予備較正ターゲット地点であり、
【0205】
【数15】
は、測定ターゲティング誤差である。この新しいターゲットモデルは、次の反復のための新しい現在のターゲットモデルであるとみなされ得る。このモデル更新は、モデル品質チェックの対象となり得る。例えば、パラメータが有効なパラメータの選択された範囲外である場合、新しいモデルを拒否し得る。新しいモデルはまた、品質メトリック、例えば、選択された誤差メトリックに対する測定ターゲティング誤差に対する当てはめの品質に基づいて拒否され得る。工程S331で、現在のターゲットモデルがターゲット地点に適用され、較正ターゲット地点を生成する。
【0206】
工程S332で、高倍率(HM)画像が、較正ターゲット地点において取得される。
【0207】
図3Cは、「較正方法4」のフローチャートを示す。以下、フローチャートに示す工程について個別に説明する。
【0208】
工程S341で、ターゲットモデルが初期化される。この初期化は、同一性マップ、すなわち、任意のターゲット地点が与えられると、与えられたターゲット地点と同じである較正ターゲット地点を返すモデルとすることができる。あるいは、初期化は、モデル当てはめからのパラメータを別のグリッド正方形からのターゲットにコピーすることによって行われ得る。
【0209】
工程S342で、グリッド正方形画像が取得される。
【0210】
工程S342で取得されたグリッド正方形画像に基づいて、工程S343でターゲット地点が識別される。これは、典型的には穴発見アルゴリズムによって行われるが、人間のオペレータによって完全に支援又は実行され得る。
【0211】
工程S344で、取得のために処理されるべき更なるターゲットが残っているかどうかがチェックされる。残っていない場合、工程S351で、現在のグリッド正方形についてのデータ取得が終了する。アプリケーションは、次のグリッド正方形において取得を継続することを決定してもよい。
【0212】
処理されるべきターゲットがまだ残っている場合、工程S345で次のターゲットが選択される。
【0213】
工程S346で、較正基準は、現在のターゲットモデルが依然として有効であるかどうかを決定する。この評価は、現在のモデルを当てはめるために使用される画像の取得と比較して、光学設定が変化したかどうかに基づいて行われ得る。評価は更に、現在のモデルが当てはめられたグリッド正方形と比較した現在のグリッド正方形に関する事前の知識に基づいてもよい。例えば、この事前知識は、高さ偏差、汚染レベル、亀裂などの推定値を含み得る。評価は、最後の較正からの時間、総ドリフト推定値、又はそれらの組み合わせに更に基づき得る。
【0214】
現在のモデルが有効である場合、工程S348で、現在のターゲット地点を較正するために直ちに適用される。そうでない場合、工程S347で、新しいターゲティングモデルが、これまでに利用可能なデータ対(u,Δ)に当てはめられ、i番目の位置について、
【0215】
【数16】
は、較正ターゲット地点であり、
【0216】
【数17】
は、測定ターゲティング誤差である。この新しいターゲットモデルは、次の反復のための新しい現在のターゲットモデルであるとみなされ得る。このモデル更新は、モデル品質チェックの対象となり得る。例えば、パラメータが有効なパラメータの選択された範囲外である場合、新しいモデルを拒否し得る。新しいモデルはまた、品質メトリック、例えば、選択された誤差メトリックに対する測定ターゲティング誤差に対する当てはめの品質に基づいて拒否され得る。
【0217】
工程S348で、現在のターゲットモデルがターゲット地点に適用され、較正ターゲット地点を生成する。
【0218】
工程S349で、高倍率(HM)画像が、較正ターゲット地点において取得される。
【0219】
較正ターゲット地点におけるターゲティング誤差は、較正ターゲット地点におけるグリッド正方形画像のクロップを、工程S349で取得された画像と比較することによって、工程S350で測定される。この測定は、2つの画像間のシフトを検出するために、画像処理技術、例えば、特徴追跡、光学フロー、穴認識、又は画像登録を使用して実行され得る。予備較正ターゲット地点で測定ターゲティング誤差が記憶される。
【0220】
更なる特定の例において示される提案された方法において、試料高さの変動は、モデルによって説明され得る。これが達成され得る1つの方法は、次元zをターゲティングアルゴリズムに追加することによるものである(以下に説明されるように、「仮想ターゲティング平面」からの試料高さ偏差)。
【0221】
ターゲティング誤差を判定するための幾何学的モデルを図4に示す。このモデルは、試料高さ変動を考慮に入れる。簡単にするために、この図は、コマ収差フリー旋回点が対物レンズの中心と一致すると仮定する。
【0222】
見かけのターゲティング誤差ベクトルは以下のように定義される。Δ=u’-u。これらのベクトルのx成分及びy成分は、Δ=(e,e)、u=(x,y)、及びu’=(x’,y’)として示される。試料が平坦であり、「理想的な平坦試料面」と重なっている場合、照射位置は、式(1a)及び(1b)によって与えられる。
x’=x+e (1a)
z’=h+xtan(α)+etan(α) (1b)
【0223】
同様の三角形を比較すると、式(2)において以下のように結論付けられる。
f/x=(h+xtan(α)+etan(α))/e (2)
【0224】
したがって、ターゲティング誤差eは、式(3)を使用して次のように計算することができる。
=(xh+xtan(α))/(f-xtan(α)) (3)
【0225】
特定の例では、提案される方法は、最初に、試料が平坦であり、「理想的な平坦試料平面」と重複すると仮定して、上記の式を使用して、試料高さを近似する。本方法は、いったん利用可能な隣接位置からの十分な焦点ずれ値が存在すると、試料高さ変動を考慮に入れるより正確な高さ外挿方式に切り替わる。このアプローチは、SPA試料の局所平滑性を仮定する。特定の提案される方法は、(ニューラルネットワークベースの画像認識を用いて)誤差を監視し続け、平滑な関数を使用して試料高さの予測をその場で精緻化する。
【0226】
従来の技術と比較して、(3D-AFISと呼ばれることがある)提案された方法によって改良が提供され、それは以下を含む。
試料高さ変動を考慮に入れること、
試料高さ予測のために外挿を使用すること、
残余誤差のその場での監視及び訂正。
【0227】
詳細な例が図5のフローチャートに示されている。この方法は工程S501で開始される。
【0228】
工程S502で、従来のビーム制御方法が実行される。
【0229】
工程S503で、システムは、(例えば、上述のEPUソフトウェアにおいて提供されるような「データ取得」プリセット機能を使用して)次のHM画像を取得する。
【0230】
工程S504で、システムは、箔穴縁部が可視であるかどうかを判定する。はいの場合、方法は工程S505に進む。いいえの場合、方法は工程S506に進む。
【0231】
工程S505で、システムは、最初に、以下によってu’を決定する。
1.エッジの輪郭を描くための画像分割
2.幾何学的解析
【0232】
第2に、システムは、式(4)を用いて誤差ベクトルを計算する。
e=(e,e)=u’-u-predicted_optical_error(u’) (4)
【0233】
ここで、予測される光学誤差は、デフォルトでセッションの開始時に(0,0)に設定される。また、z’の変化によって導入される光学誤差は無視できると仮定し、これは、小さいビーム傾斜角を考慮すると有効である。
【0234】
工程S506で、システムは、以下の2つの基準が満たされるかどうかを判定する。
閾値「M」を超える数のHM画像が、測定焦点ずれと共に取得される。
閾値「N」を超える数の、箔穴縁部を有するHM画像が解析される。
【0235】
MとNは、ロバスト性を保証するためにユーザによって設定される正の整数パラメータである。これらは実験タイプに基づいて決定することができる。
【0236】
両方の基準が満たされる場合、方法は工程S509に進む。一方又は両方の基準が満たされない場合、本方法は工程S507に進む。
【0237】
工程S507で、システムは、試料が平坦であると仮定し、αを用いてzを推定する。
【0238】
工程S508で、システムは、改善されたビーム制御を実行する。ここで、x、y、z及び関数predict_optical_error(.,.)は、次のHM領域に対するビーム/画像傾斜/シフトを予測するために使用される。z=0の場合も同様である。
【0239】
工程S509で、システムは、事前に取得されたHM画像からの全てのx、y、b、及びzを使用して、事前に既知のパラメータとしてf及びαを使用して、zを外挿し、決定する。ここで、bは、Thonリング測定焦点ずれと対物レンズ焦点ずれとの差として定義される。それは、理想的な平坦な試料平面からの試料の高さの局所的偏差及び試料の傾きからの寄与を用いて、「仮想ターゲティング平面」からの試料高さ偏差を測定する。
【0240】
ビーム角において奇数次である収差(例えば、一次である焦点及び非点収差、並びに三次である球面収差)は、これらの奇数次の収差が画像のフーリエ変換におけるいわゆる「Thonリング」に影響を及ぼすため、観察され得る(Thonリングは、フーリエ変換における0強度のリング又は楕円である)。画像のフーリエ変換は、リアルタイムで観察されてもよく、焦点及び非点収差の制御は、画像解像度を最適化するために調整されてもよい。Thonリング測定焦点ずれと対物レンズ焦点ずれとの間の差は、Thonリングの位置及び楕円率を分析することによって判定され得る。
【0241】
工程S510で、システムは、predict_optical_error(.,.)関数を、上の式(3)を使用して、測定されたeと予測されたeとの間の差で当てはめ、更新する。
【0242】
この方法では、物理的な根本原因を知る必要なしに、モデルにおいて光学的誤差が対処され、考慮される。
【0243】
実験結果
ターゲティングの不正確さは、典型的なSPA試料及び傾斜金グリッド試料について調査された。最初に、「生」データをグリッド正方形全体について収集した(補正なし)。そうするために、以下の工程を実行した。
グリッド全体がカバーされるように画像シフト範囲を設定し、
ソフトウェアにおけるスケーリング及び回転較正をオフに切り替え、
グリッド正方形全体における全ての箔穴のHM画像を収集し、
「生の」ターゲティング誤差(すなわち、LMに記録された試料マップ内の位置とHM画像から測定された位置との間の差)を評価する。
【0244】
図6は、ライフサイエンス試料上で実験的に測定されたターゲティング誤差を示す。誤差測定値は、いかなる補正も適用せずに画像シフトを用いてグリッド正方形上の全ての到達可能な位置を対象とすることによって得られた。ベクトル場プロット内の各矢印は、1つの誤差測定を示し、ベクトルの開始は、その測定のためのターゲット地点に配置され、ベクトルの先端は、測定誤差だけベクトルの開始から変位される。
【0245】
図6Aは、生の誤差ベクトル場(補正が適用されていない)を示す。図6Bは、既知の技術で実行されるようなスケーリング及び回転較正をエミュレートした後の残余誤差ベクトル場を示す(面積の約50%が50nm以上の誤差を有する)。図6Cは、本出願において提案される特定の例示的な技術をエミュレートした後の残余誤差ベクトル場を示す(面積の約7%が50nm以上の誤差を有する)。
【0246】
図7は、30度傾斜した金グリッド試料上のターゲティング誤差を示す。図7Aは、生の誤差ベクトル場(補正なし)を示す。図7Bは、既知の技術で実行されるようなスケーリング及び回転較正をエミュレートした後の残余誤差ベクトル場を示す(面積の約52%が50nm以上の誤差を有する)。図7Cは、本出願において提案される特定の例示的な技術をエミュレートした後の残余誤差ベクトル場を示す(面積の1%未満が50nm以上の誤差を有する)。
【0247】
「生の」ターゲティング誤差を図6A及び7Aに示す。
【0248】
既知の手法の性能を図6B及び図7Bに示す。これらの図は、既知の技術を使用した、回転及び線形スケーリングによる生のターゲット誤差の補正を示す。
【0249】
最後に、同じ生のターゲット誤差が、本出願で説明される特定の方法を使用して補正される。これは、取得順に箔穴をループし、最も近い既に取得された箔穴からターゲット誤差を予測することによって行われる。結果を図6C及び7Cに示す。全ての場合において、現行のアプローチは、50nm以上の全体精度に達するには不十分であることが判明したが、大部分の箔穴に対して提案された技術を使用すると、精度は50nmよりも良好であった。
【0250】
図6C及び図7Cに示される残余誤差の部分は、提案された方法を使用した補正後の実際の誤差ではなく、箔穴中心の不正確な測定によるものであり得ることは注目に値する。
【0251】
画像の位相収差及び見かけの非点収差は、画像のフーリエ変換におけるThonリングの位置及び楕円率を測定する「Thonリング当てはめ」として知られる技術を使用して判定され得る。コントラスト伝達関数(CTF)は、収差が画像にどのように影響を及ぼすかを数学的に記述し、(焦点ずれなどの他のパラメータの中でも)位相収差及び見かけの非点収差を定量化するパラメータを判定するために使用され得る。
【0252】
取り込まれた画像の全てが有用であるように、導電性支持フィルムがカメラFOVの内側に出現しないことが望ましい。しかしながら、ソフトウェアは、箔穴縁部の予想位置と観察位置との間の不一致を観察することによって判定される残余ターゲティング誤差に基づいてモデルを精緻化する。これらの不一致を観察/測定するために、箔穴縁部はFOV内にある必要がある。1つの解決策は、同じHM倍率で、モデルを精緻化するための箔穴縁部を含む初期画像と、箔穴縁部を含まない後続画像のより多くの画像を撮影することである。別の解決策では、高倍率HM画像と同時に、わずかに低い倍率で補助HM画像が取得され得る。このようにして、カメラのFOVは、箔穴縁部がない画像を取り込むのと同時に、箔穴の縁部を見るために広げられる。高倍率HM画像(箔穴縁部なし)及び低倍率HM画像(箔穴縁部を含む)は、顕微鏡設定のほとんどが同じであるため、同じターゲティング誤差を共有する。最終倍率のみが調整され、わずかに調整されるだけである。
【0253】
特許請求の範囲内を含む、本明細書において使用される際、特に文脈が示さない限り、本明細書における用語の単数形は、複数形を含むものとして解釈され、逆の場合も同様である。例えば、文脈が他の意味を示さない限り、「a」又は「an」(アナログ-デジタル変換器など)などの特許請求の範囲を含む単数形の参照は、「1つ以上」を意味する(例えば、1つ以上のアナログ-デジタル変換器)。本開示の明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」、「含む」(including)、「有する(having)」、及び「含む(contain)」などの語、並びに、語の変形、例えば、「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprises)」又は同様のものは、「~を含むが、これに限定されない」ことを意味し、他のコンポーネントを排除することを意図したものではない。
【0254】
本開示による実施形態は、特定のタイプの装置及び用途(特に、透過型電子顕微鏡、単一粒子分析及び極低温電子顕微鏡)を参照して説明されており、実施形態は、本明細書で考察されるように、そのような場合に特定の利点を有するが、本開示によるアプローチは、他のタイプの装置及び/又は用途に適用され得る。顕微鏡の具体的な構造の詳細は、(特に、既知の電子顕微鏡システムの制約及び能力を考慮して)潜在的に有利であるが、同様又は同一の動作を有するデバイスに到達するように大幅に変更され得る。本明細書に開示される各特徴は、別段の指定のない限り、同一、同等、又は類似の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えられ得る。したがって、別段の指定のない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等又は類似の特徴の単なる一例である。
【0255】
上記の技術は、透過型電子顕微鏡(TEM)に関連して説明される。本技術は、走査型トンネル電子顕微鏡(STEM)システム、走査型電子顕微鏡(SEM)システム、デュアルビーム顕微鏡システム、及び/又はイオンベースの顕微鏡など、他の荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける試料位置合わせに適用されるときに有用であり得ることを理解されたい。TEM画像化の本考察は、単に1つの好適な画像化モダリティの実施例として提供される。これらの技術は、コリメートされた入射ビームと共に使用されてもよい。
【0256】
本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(「例えば(for
instance)」、「など(such as)」、「例えば(for
example)」など)の使用は、単に本発明をよりよく説明するためのものであり、範囲の限定を示すものではなく、別段の主張がない限り、本発明の範囲内である。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠であると主張されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0257】
本明細書に記載された任意のステップは、異なるように記載されていない限り、又は文脈により別の意味が必要とされない限り、任意の順序で、又は同時に実行され得る。
【0258】
本明細書で開示される態様及び/又は特徴の全ては、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書で説明されるように、補償パラメータのセットを決定し、補償パラメータのセットを測定値に適用する態様など、更なる利益となる態様の特定の組み合わせがあり得る。特に、本発明の好適な特徴は、本発明の全ての態様に適用可能であり、任意の組み合わせで使用され得る。同様に、必須ではない組み合わせで記載された特徴は、(組み合わせではなく)別々に使用され得る。
【0259】
本出願が「奇数」及び「偶数」次数の収差に言及する場合、これは、(位相依存性ではなく)角度依存性の次数を指す。言い換えれば、奇数次収差は、一次の焦点及び非点収差と、三次の球面収差とを含む。偶数次収差は、軸上及び軸外コマ収差を含み得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7