(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】画像変換プログラム、方法、および装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241203BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
A61B6/03 560E
A61B6/03 560B
G06T7/00 612
(21)【出願番号】P 2020139693
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 信浩
(72)【発明者】
【氏名】武部 浩明
(72)【発明者】
【氏名】馬場 孝之
(72)【発明者】
【氏名】粟井 和夫
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】寺田 大晃
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069369(WO,A1)
【文献】特開平09-186863(JP,A)
【文献】特開2014-229115(JP,A)
【文献】特開2014-137756(JP,A)
【文献】特開2015-091067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00- 6/58
G06T 1/00- 1/40
G06T 3/00- 7/90
G06V 10/00-20/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
機械学習によって学習された機械学習モデルによる識別対象である第1の画像の撮影条件を特定し、
前記第1の画像を、前記撮影条件による影響を打ち消し、前記機械学習モデルの前記機械学習の教師データとして用いられた第2の画像と同一の撮影条件で撮像された画像であって、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質を均一化した第3の画像に変換する
、処理を実行させ
、
前記特定する処理は、
前記第1の画像の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタとして、第1のPSF(Point Spread Function)を特定させ、
前記変換する処理は、
前記第2の画像の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタとして、第2のPSFを適用させる、ことを特徴とする画像変換プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータに、前記機械学習モデルを用いて前記第3の画像を識別する処理をさらに実行させることを特徴とする請求項1に記載の画像変換プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータに、前記第2の画像を含む医用画像を入力、および症例を示す正解ラベルを正解とする前記教師データを学習して構築された前記機械学習モデルを用いて、前記第3の画像を識別する処理をさらに実行させることを特徴とする請求項1に記載の画像変換プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータに、
前記第1の画像をフーリエ変換により空間周波数領域に変換し、
前記空間周波数領域に変換された前記第1の画像に、前記第1のPSFをフーリエ変換したものを除算することにより、前記第1のフィルタの特性を打ち消し、
前記空間周波数領域に変換された前記第1の画像に、前記第2のPSFをフーリエ変換したものを乗算することにより、前記第2のフィルタを適用する
処理をさらに実行させることを特徴とする請求項
1に記載の画像変換プログラム。
【請求項5】
コンピュータに、
機械学習によって学習された機械学習モデルによる識別対象である第1の画像の撮影条件を特定し、
前記第1の画像を、前記撮影条件による影響を打ち消し、前記機械学習モデルの前記機械学習の教師データとして用いられた第2の画像と同一の撮影条件で撮像された画像であって、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質を均一化した第3の画像に変換する、処理を実行させ、
前記特定する処理は、
前記第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
前記変換する処理は、
前記第1のフィルタの特性を打ち消し、前記第2の画像の撮影条件である第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、前記第1の画像を第3の画像に変換する
、ことを特徴とする画像変換プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
機械学習によって学習された機械学習モデルによる識別対象である第1の画像の撮影条件を特定し、
前記第1の画像を、前記撮影条件による影響を打ち消し、前記機械学習モデルの前記機械学習の教師データとして用いられた第2の画像と同一の撮影条件で撮像された画像であって、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質を均一化した第3の画像に変換する、処理を実行させ、
前記特定する処理は、
第1の撮影機器および第1の再構成関数を少なくとも含む、前記第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
前記変換する処理は、
前記第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影機器および第2の再構成関数を少なくとも含む、前記第2の画像の撮影条件である第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、前記第1の画像を第3の画像に変換する
、ことを特徴とする画像変換プログラム。
【請求項7】
前記コンピュータに、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像である前記第1の画像に付けられたタグから、前記第1の撮影機器および前記第1の再構成関数を取得する処理をさらに実行させることを特徴とする請求項
6に記載の画像変換プログラム。
【請求項8】
前記コンピュータに、
前記機械学習モデルを用いて、複数の画像を識別し、
前記複数の画像の中で識別精度が最も高い前記画像に適用されている第3のフィルタを前記第2のフィルタに決定する処理をさらに実行させることを特徴とする請求項
5に記載の画像変換プログラム。
【請求項9】
コンピュータが、
機械学習によって学習された機械学習モデルによる識別対象である第1の画像の撮影条件を特定し、
前記第1の画像を、前記撮影条件による影響を打ち消し、前記機械学習モデルの前記機械学習の教師データとして用いられた第2の画像と同一の撮影条件で撮像された画像であって、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質を均一化した第3の画像に変換する
、処理を実行
し、
前記特定する処理は、
前記第1の画像の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタとして、第1のPSF(Point Spread Function)を特定させ、
前記変換する処理は、
前記第2の画像の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタとして、第2のPSFを適用させる、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
機械学習によって学習された機械学習モデルによる識別対象である第1の画像の撮影条件を特定する推定部と、
前記第1の画像を、前記撮影条件による影響を打ち消し、前記機械学習モデルの前記機械学習の教師データとして用いられた第2の画像と同一の撮影条件で撮像された画像であって、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質を均一化した第3の画像に変換する変換部と
、を有
し、
前記推定部は、
前記第1の画像の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタとして、第1のPSF(Point Spread Function)を特定させ、
前記変換部は、
前記第2の画像の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタとして、第2のPSFを適用させる、ことを特徴とする装置。
【請求項11】
コンピュータが、
機械学習によって学習された機械学習モデルによる識別対象である第1の画像の撮影条件を特定し、
前記第1の画像を、前記撮影条件による影響を打ち消し、前記機械学習モデルの前記機械学習の教師データとして用いられた第2の画像と同一の撮影条件で撮像された画像であって、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質を均一化した第3の画像に変換する、処理を実行し、
前記特定する処理は、
前記第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
前記変換する処理は、
前記第1のフィルタの特性を打ち消し、前記第2の画像の撮影条件である第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、前記第1の画像を第3の画像に変換する、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
機械学習によって学習された機械学習モデルによる識別対象である第1の画像の撮影条件を特定する推定部と、
前記第1の画像を、前記撮影条件による影響を打ち消し、前記機械学習モデルの前記機械学習の教師データとして用いられた第2の画像と同一の撮影条件で撮像された画像であって、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質を均一化した第3の画像に変換する変換部と、を有し、
前記推定部は、
前記第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
前記変換部は、
前記第1のフィルタの特性を打ち消し、前記第2の画像の撮影条件である第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、前記第1の画像を第3の画像に変換する、ことを特徴とする装置。
【請求項13】
コンピュータが、
機械学習によって学習された機械学習モデルによる識別対象である第1の画像の撮影条件を特定し、
前記第1の画像を、前記撮影条件による影響を打ち消し、前記機械学習モデルの前記機械学習の教師データとして用いられた第2の画像と同一の撮影条件で撮像された画像であって、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質を均一化した第3の画像に変換する、処理を実行し、
前記特定する処理は、
第1の撮影機器および第1の再構成関数を少なくとも含む、前記第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
前記変換する処理は、
前記第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影機器および第2の再構成関数を少なくとも含む、前記第2の画像の撮影条件である第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、前記第1の画像を第3の画像に変換する、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
機械学習によって学習された機械学習モデルによる識別対象である第1の画像の撮影条件を特定する推定部と、
前記第1の画像を、前記撮影条件による影響を打ち消し、前記機械学習モデルの前記機械学習の教師データとして用いられた第2の画像と同一の撮影条件で撮像された画像であって、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質を均一化した第3の画像に変換する変換部と、有し、
前記推定部は、
第1の撮影機器および第1の再構成関数を少なくとも含む、前記第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
前記変換部は、
前記第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影機器および第2の再構成関数を少なくとも含む、前記第2の画像の撮影条件である第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、前記第1の画像を第3の画像に変換する、ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像変換プログラム、方法、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療における画像検査は、医師不足や1検査あたりの撮影画像数の増加により、医師の負担が増大しているため、効率化が求められている。医師が、過去の似た症例の病名やカルテ情報を参考にすることで、画像検査に要する時間を短縮し、効率化することが期待される。
【0003】
過去の似た症例を参考にするためには、機械学習などにより、画像から症例を特徴化し、特徴を基に過去の類似した症例を検索することが考えられる。一方で、画像内の症例を特徴化する機械学習は、学習に含まれていない画像を識別できない。そのため、撮影条件の違いによって画質が異なるCT(Computed Tomography)画像などの医用画像において、想定される撮影条件で撮影された様々なバリエーションを有する画像と症例を示す正解ラベルのペアを大量に生成することが求められる。
【0004】
画像と正解ラベルのペアを大量に生成する方法として、医師が知見に基づいて、CT画像内の症例の正解ラベルを手作業で作成する方法が考えられる。また、既に正解ラベル付けされた学習データに対し、回転、反転、平行移動、スケール変化、色変化、コントラスト変化などの画像処理を行うことで、様々なバリエーションを有する画像を生成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-180729号公報
【文献】特開2019-56957号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】ピクトグラムでわかる呼吸器内科(https://respiresi.exblog.jp/23965463/)
【文献】三浦 健太、喜田 卓也、“花画像データセットの構築と畳み込みニューラルネットワーク”、DEIM Forum 2017.
【文献】A. Dosovitskiy, J. T. Springenberg, and T. Brox, “Unsupervisedfeature learning by augmenting single images,” arXiv, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法には、適切な学習用の画像と正解ラベルのペアを、効率良く生成できない場合があるという問題がある。例えば、医師が正解ラベルを手作業で作成する方法は、手作業を要する上に、十分な量の画像をあらかじめ用意する必要があり、画像と正解ラベルのペアを効率良く生成できない場合がある。また、画像処理により画像を生成する方法では、撮影画像として存在し得ない画像が生成されることがあり、識別精度を向上させることができない場合がある。
【0008】
1つの側面では、様々な撮影条件で撮影された医用画像を効率的に識別できる画像変換プログラム、方法、および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様において、画像変換プログラムは、コンピュータに、第1の画像に適用された第1のフィルタを特定し、第1のフィルタの特性を打ち消し、機械学習モデルの教師データとして用いられた第2の画像に適用された第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、様々な撮影条件で撮影された医用画像を効率的に識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、類似症例の検索方法を説明する図である。
【
図2】
図2は、画像変換システムの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、学習データのデータ構造の例を示す図である。
【
図5】
図5は、撮影条件データのデータ構造の例を示す図である。
【
図6】
図6は、識別データのデータ構造の例を示す図である。
【
図7】
図7は、画像変換および識別処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、PSF推定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、周波数変換処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、画像変換処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、画像識別処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る画像変換プログラム、方法、および装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。また、各実施例は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0013】
まず、
図1を用いて、CT画像による類似症例の検索方法の概要について説明する。
図1は、類似症例の検索方法を説明する図である。
図1に示すように、検索キーとなるCT画像から、機械学習および画像解析により症例を特徴化し、異常陰影の候補が抽出される。そして、抽出された異常陰影の候補とデータベース(DB)に保存済みの過去の症例の陰影のデータとの照合が行われ、検索キーであるCT画像と類似する画像の一覧が検索結果として得られる。
【0014】
ここで、検索結果である類似症例の精度は、類似症例との比較対象である、CT画像からの症例の特徴化の精度に依存する。そして、CT画像からの症例の特徴化は、CT画像を入力、および症例を示す正解ラベルを正解とする教師データを学習して構築された機械学習モデルを用いて行われる。しかしながら、CT画像は、様々な撮影条件で撮影されるため、例えば、識別対象のCT画像と異なる撮影条件で撮影されたCT画像を多数学習して構築された機械学習モデルでは、識別対象のCT画像を正しく識別できない。
【0015】
そこで、本発明では、識別対象のCT画像の撮影条件の特性を打ち消し、機械学習に用いたCT画像と同一の撮影条件を適用することで識別対象のCT画像を識別する。
【0016】
次に、本発明を実施するための画像変換システムについて説明する。
図2は、画像変換システムの構成例を示す図である。
図2に示すように、画像変換システム1は、画像変換装置10、記憶装置20、画像入力装置30、および計算機40を有する。例えば、計算機40は、ユーザが操作するパーソナルコンピュータなどの端末である。また、例えば、画像変換装置10、記憶装置20、および画像入力装置30は、サーバコンピュータである。また、画像変換システム1の各装置の機能の一部および全部は、一体として構成されていてもよい。
【0017】
画像変換装置10は、カメラ装置などである画像入力装置30から入力された識別対象の画像の撮影条件の特性を打ち消し、機械学習に用いた画像と同一の撮影条件を適用する。これにより、識別対象の画像と機械学習に用いた画像との画質の均一化を図る。また、画像変換装置10は、必要に応じて記憶装置20に記憶されている情報を参照する。なお、画像変換装置10は、計算機40を介して行われた操作に応じて処理を行ってもよい。
【0018】
画像変換装置10は、推定部101、変換部102、識別部103、および決定部104を有する。また、記憶装置20は、学習データ201、撮影条件データ202、および識別データ203を記憶する。
【0019】
推定部101は、識別対象のCT画像に適用されたフィルタを特定する。ここで、本実施例におけるフィルタは、例えば、PSF(Point Spread Function:点拡がり関数または点像分布関数)である。PSFは、畳み込み演算により画像に適用される。そのため、例えば、推定部101は、CT画像に畳み込み演算により適用されたPSFを特定する。
【0020】
また、PSFは撮影条件と対応付けられている。そのため、撮影画像を撮影した際の撮影条件を推定することにより、撮影画像に適用されたPSFを特定できる。なお、撮影条件には、例えば、撮影機器の種類および再構成関数が含まれる。
【0021】
PSFの特定方法の具体例として、例えば、推定部101は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像に付けられたタグから撮影機器名(種類)および再構成関数を抽出できる。DICOMは、CT画像など医用画像のフォーマットおよび医用画像情報を通信する際の通信プロトコルの国際標準規格である。DICOMタグ(0008、1090)の“Manufacturer’s Model Name”は撮影機器名に対応する。また、DICOMタグ(0018、1210)の“Convolution Kernel”は再構成関数に対応する。推定部101は、抽出された撮影条件である撮影機器および再構成関数から、対応付けられるPSFを特定できる。
【0022】
特定したPSFの推定方法として、従来の推定方法を用いることができる。例えば、推定部101は、金属ワイヤ(ファントム)の撮影によるPSF推定を行うことができる(参考文献:市川勝弘、原孝則、丹羽伸次、大橋一也、“CTにおける金属ワイヤによるMTFの測定法”、日本放射線学会雑誌、2008)。さらに別例として、推定部101は、CT画像中の血管を利用したPSF推定を行うことができる(参考文献:河田佳樹、中屋良宏、仁木登、大松広伸、江口研二、金子昌弘、森山 紀之、“CT像からのPSF測定法”、電子情報通信学会論文誌、2008)。
【0023】
また、推定部101は、機械学習モデルの教師データとして用いられたCT画像に適用されたPSFを上記方法により特定してもよい。ここで、当該機械学習モデルは、CT画像を入力、および当該CT画像に投影された症例を示す正解ラベルを正解とする教師データを学習して構築された機械学習モデルである。
【0024】
変換部102は、識別対象のCT画像に対し、適用されたPSFの特性を打ち消し、機械学習モデルの教師データとして用いられたCT画像に適用されたPSFを適用することで、識別対象のCT画像を、当該機械学習モデルにより識別可能なCT画像に変換する。そのために、変換部102は、空間領域のPSFまたはCT画像を、フーリエ変換により空間周波数領域へ変換する。また、変換部102は、空間周波数領域のPSFまたはCT画像を、フーリエ逆変換により空間領域へ変換する。
【0025】
より具体的には、変換部102は、空間領域のCT画像であるI(x,y)を、式(1)のように空間周波数領域に変換する。F{ }は、括弧内の値をフーリエ変換することを示す。
【0026】
【0027】
変換部102は、空間領域のPSFであるP(x,y)を、式(2)のように空間周波数領域に変換する。
【0028】
【0029】
ここで、CT画像であるI(x,y)に対し、CT機器で取得したPSF適用前の画像データをO(x,y)とする。また、PSFをP(x,y)とする。このとき、I(x,y)は、式(3)のように表される。ただし、*は畳み込み演算子(フィルタリング処理)である。
【0030】
【0031】
そして、変換部102は、式(4)に示すように、フーリエ変換されたCT画像を示すF{O(x,y)}・F{P(x,y)}に、CT画像に適用されているPSFをフーリエ変換したF{P(x,y)}を除算することにより、当該PSFを打ち消す。
【0032】
【0033】
さらに、変換部102は、式(4)に示すように、機械学習モデルに用いられたCT画像に適用されたPSFを示すF{P´(x,y)}を乗算することにより当該PSFを適用し、機械学習モデルで識別可能なCT画像を示すF{I´(x,y)}に変換する。
【0034】
このように、空間領域における畳み込み演算は、空間周波数領域における乗算で表現でき、フーリエ変換したPSFを除算することにより当該PSFを打ち消し、フーリエ変換したPSFを乗算することにより当該PSFを適用できる。
【0035】
さらに、変換部102は、式(5)に示すように、変換されたF{I´(x,y)}をフーリエ逆変換により空間周波数領域から空間領域へ変換し、I´(x,y)を得る。
【0036】
【0037】
ここで、式(6)のように、空間領域における畳み込み演算が、空間周波数領域では乗算で表現可能であることを証明する。
【0038】
【0039】
まず、畳み込み演算は式(7)のように定義される。
【0040】
【0041】
また、離散時間フーリエ変換は式(8)のように定義される。
【0042】
【0043】
このとき、式(9)により、離散時間フーリエ変換により変換された畳み込み演算は、乗算で表現されることが証明される。
【0044】
【0045】
識別部103は、変換部102によって変換された識別対象のCT画像を、CT画像を入力、および当該CT画像に投影された症例を示す正解ラベルを正解とする教師データを学習して構築された機械学習モデルを用いて識別する。
【0046】
図3は、画像識別処理の例を示す図である。
図3に示すように、識別部103は、少なくとも機械学習モデルを備えた識別器50に、変換部102によって変換された識別対象のCT画像を入力することにより、識別器50から出力される識別ラベルを得る。なお、識別器50は、画像変換装置10に備えられてもよいし、画像変換装置10とは別の装置に備えられてもよい。
【0047】
なお、ここで識別される識別対象のCT画像は、式(5)でいうI´(x,y)である。I´(x,y)は、機械学習モデルの教師データとして用いられたCT画像のPSFが適用されているため、当該機械学習モデルを用いて高精度で識別できる。例えば、機械学習モデルの教師データとして用いられたCT画像に、I´(x,y)の原画像の撮影条件と同一の撮影条件で撮影された画像が無い、または少ない場合であっても、新たに機械学習モデルの教師データを集めなくてもI´(x,y)を識別できる。
【0048】
また、識別部103は、識別対象のCT画像に適用するPSFを決定するために、機械学習モデルを用いて複数のCT画像を識別する。
【0049】
決定部104は、識別部103によって識別された複数のCT画像の中で識別精度が最も高いCT画像に適用されているPSFを、識別対象のCT画像に適用するPSFに決定する。例えば、撮影条件A~Dで撮影されたCT画像を機械学習モデルで識別した結果、識別精度がそれぞれ、78%、80%、90%、84%であったとする。この場合は、撮影条件Cの識別精度が最も高いため、撮影条件Cに対応付けられたPSFを識別対象のCT画像に適用するPSFに決定する。これにより、CT画像をより高精度に識別できる。なお、機械学習モデルの識別精度は、機械学習モデルに対する再学習に応じて変化するため、決定部104による適用PSFの決定は定期的に行われてよい。また、決定部104による適用PSFの決定は、識別対象のCT画像を識別する際に行われるのではなく、予め行っておくこともできる。これにより、識別対象のCT画像の識別をより速く行うことができる。
【0050】
学習データ201は、機械学習モデルに対する学習や再学習に用いられる学習用の画像に関する情報を含む。学習用の画像は、例えば、機械学習モデルの教師データとして用いるために、CT機器などによって撮影されるCT画像のデータである。なお、学習用の画像は、様々な撮影条件で撮影された画像を含むため、各画像に適用されたPSFも様々である。
【0051】
図4は、学習データのデータ構造の例を示す図である。
図4に示すように、学習データ201は、ファイル名、リンクを含む。「ファイル名」は、画像ファイルの名称である。「リンク」は画像ファイルの格納場所のパスである。学習データ201には、
図4のデータ項目以外にも、例えば、CT画像に投影された症例を示す正解ラベルを含むこともできる。
【0052】
撮影条件データ202は、撮影条件に関する情報を含む。例えば、撮影条件は、画像を撮影したCT機器の種類および再構成関数である。また、撮影条件は、管電圧などを含んでもよい。
【0053】
図5は、撮影条件データのデータ構造の例を示す図である。
図5に示すように、撮影条件データ202は、撮影機器、再構成関数、空間データ、リンク(空間データ)、空間周波数データ、リンク(空間周波数データ)、変換を含む。「撮影機器」および「再構成関数」は、撮影条件に相当する。「空間データ」は、空間領域のPSFの有無を管理するためのフラグである。「リンク(空間データ)」は、空間領域のPSFデータの格納場所である。「空間周波数データ」は、空間周波数領域のPSFの有無を管理するためのフラグである。「リンク(空間周波数データ)」は、空間周波数領域のPSFデータの格納場所である。なお、格納場所は、データが格納されている場所であってもよいし、対応するデータが生成された場合に格納される予定の場所であってもよい。「変換」は、識別対象のCT画像の変換への利用を管理するためのフラグである。例えば、
図5の例では、撮影機器が「D2」および再構成関数が「F4」の撮影条件は、空間領域および空間周波数領域のPSFは存在し、識別対象のCT画像の変換に利用することを示している。
【0054】
識別データ203は、識別対象の画像に関する情報を含む。識別対象の画像は、例えば、医師が検査を行うために、CT機器などによって撮影されるCT画像のデータである。識別対象の画像は、様々な撮影条件で撮影される画像であるため、適用されるPSFも様々である。
【0055】
図6は、識別データのデータ構造の例を示す図である。
図6に示すように、識別データ203は、ファイル名、リンクを含む。ファイル名は、画像ファイルの名称である。リンクは画像ファイルの格納場所のパスである。
【0056】
次に、画像変換装置10によって実行される画像変換および識別処理を流れに沿って説明する。
図7は、画像変換および識別処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
図7に示すように、まず、画像変換装置10の推定部101は、PSF推定処理を実行する(ステップS1)。次に、画像変換装置10の変換部102は、周波数変換処理を実行する(ステップS2)。続けて、変換部102は、画像変換処理を実行する(ステップS3)。そして、画像変換装置10の識別部103は、画像識別処理を実行し(ステップS4)、識別結果を出力する(ステップS5)。各処理の詳細について説明する。
【0058】
まず、PSF推定処理について説明する。
図8は、PSF推定処理の流れを示すフローチャートである。
図8の処理は、画像変換装置10の推定部101によって実行される
図7のPSF推定処理(ステップS1)に相当する。
【0059】
まず、推定部101は、
図8に示すように、記憶装置20から機械学習モデルに対する学習に利用した画像を取得する(ステップS101)。当該画像は、例えば、CT機器によって予め撮影され、学習データ201の「リンク」に示される記憶装置20の格納場所に格納されたCT画像である。
【0060】
次に、推定部101は、ステップS101で取得された画像のDICOMタグから撮影条件を特定する(ステップS102)。当該撮影条件は、例えば、画像を撮影したCT機器の種類、再構成関数、および管電圧などを含む。
【0061】
次に、他に学習に利用した画像が存在する場合(ステップS103:Yes)、推定部101はステップS102に戻り処理を繰り返す。一方、他に学習に利用した画像が存在しない場合(ステップS103:No)、推定部101はステップS107に進む。
【0062】
また、ステップS101~S103と並行または前後して、推定部101は、記憶装置20から識別を行う識別対象の画像を取得し(ステップS104)、当該画像のDICOMタグから撮影条件を特定する(ステップS105)。当該画像は、例えば、医師が検査を行うために、CT機器によって予め撮影され、識別データ203の「リンク」に示される記憶装置20の格納場所に格納されたCT画像である。
【0063】
また、他に識別対象の画像が存在する場合(ステップS106:Yes)、推定部101はステップS105に戻り処理を繰り返し、他に識別対象の画像が存在しない場合(ステップS106:No)、推定部101はステップS107に進む。
【0064】
ステップS103およびS106のNoルートに進み、推定部101は、記憶装置20の撮影条件データ202に、撮影条件に対応するPSFの「空間データ」フラグが0であるデータが存在するか判定する(ステップS107)。
【0065】
「空間データ」フラグが0であるデータが存在する場合(ステップS107:Yes)、対応するPSFはまだ特定されていないため、推定部101は、対応するPSFを特定し、「空間データ」フラグを1に設定し(ステップS108)、ステップS109に進む。一方、「空間データ」フラグが0であるデータが存在しない場合(ステップS107:No)、対応するPSFは特定済みであるため、ステップS109に進む。
【0066】
次に、処理を行っていない撮影条件が存在する場合(ステップS109:Yes)、推定部101は、ステップS107に戻り処理を繰り返す。一方、処理を行っていない撮影条件が存在しない場合(ステップS109:No)、決定部104は、識別を行う画像を変換するPSFを決定する(ステップS110)。
【0067】
ここで、識別を行う画像を変換するPSFとは、ステップS101で取得された機械学習モデルに対する学習に利用した画像に適用されているPSFである。上述したように、例えば、複数の画像の中で機械学習モデルの識別精度が最も高い画像に適用されているPSFを、識別を行う画像を変換するPSFとして決定する。決定されたPSFを、識別を行う画像に適用することにより、機械学習モデルで識別を行う画像を識別できる。
【0068】
そして、決定部104は、利用するPSFの「変換」フラグを1に設定する(ステップS111)。ステップS111の後、
図8の処理は終了する。
【0069】
なお、決定部104によるPSFの決定処理(ステップS110およびS111)は、PSF推定処理の中で行う必要はなく、予め行っておくこともできる。例えば、PSF推定処理では、識別を行う画像の撮影条件に対応するPSFのみを特定し、識別を行う画像を変換するPSF、すなわち、機械学習モデルに対する学習に利用した画像に適用されているPSFの決定は、別処理として予め行っておくことができる。別処理として行う場合、ステップS101~S103を実行し、各画像のPSFを特定した後、S110およびS111を実行する。この場合、PSF推定処理(ステップS1)は、別処理として実行するステップS101~S103、S110、およびS111を含まなくてよい。
【0070】
次に、周波数変換処理について説明する。
図9は、周波数変換処理の流れを示すフローチャートである。
図9の処理は、画像変換装置10の変換部102によって実行される
図7の周波数変換処理(ステップS2)に相当する。
【0071】
まず、変換部102は、
図9に示すように、記憶装置20から識別を行う識別対象の画像を取得し(ステップS201)、周波数変換して記憶装置20に格納する(ステップS202)。
【0072】
次に、処理を行っていない画像が存在する場合(ステップS203:Yes)、変換部102は、ステップS202に戻り処理を繰り返す。一方、処理を行っていない画像が存在しない場合(ステップS203:No)、
図9の処理は終了する。
【0073】
また、ステップS201~S203と並行または前後して、変換部102は、記憶装置20から撮影条件を取得し(ステップS204)、撮影条件に対応するPSFの「変換」フラグが1かつ「空間周波数データ」フラグが0であるか判定する(ステップS205)。
【0074】
撮影条件に対応するPSFの「変換」フラグが1かつ「空間周波数データ」フラグが0である場合(ステップS205:Yes)、変換部102は、対応するPSFを周波数変換して記憶装置20に格納し「空間周波数データ」フラグを1に設定する(ステップS206)。以降、このとき格納した周波数領域に変換済みのPSFを、空間周波数データと呼ぶ。一方、撮影条件に対応するPSFの「変換」フラグが1でないか、または、「空間周波数データ」フラグが0でない場合(ステップS205:No)、ステップS207に進む。
【0075】
次に、処理を行っていない撮影条件が存在する場合(ステップS207:Yes)、変換部102は、ステップS205に戻り処理を繰り返す。一方、処理を行っていない撮影条件が存在しない場合(ステップS207:No)、
図9の処理を終了する。
【0076】
次に、画像変換処理について説明する。
図10は、画像変換処理の流れを示すフローチャートである。
図10の処理は、画像変換装置10の変換部102によって実行される
図7の画像変換処理(ステップS3)に相当する。
【0077】
まず、変換部102は、
図10に示すように、記憶装置20から識別を行う識別対象の画像の周波数変換結果を取得する(ステップS301)。また、識別部103は、記憶装置20から識別を行う識別対象の画像の撮影条件に対応したPSFの周波数変換結果を取得する(ステップS302)。
【0078】
次に、変換部102は、識別を行う識別対象の画像の撮影条件の特性を打ち消す(ステップS303)。これは、上述したように、識別対象の画像および特定されたPSFをフーリエ変換し、識別対象の画像に特定されたPSFを除算することにより、打ち消すことができる。
【0079】
次に、変換部102は、記憶装置20の撮影条件データ202から撮影条件を取得し(ステップS304)、「変換」フラグが1であるか判定する(ステップS305)。
【0080】
「変換」フラグが1でない場合(ステップS305:No)、ステップS308に進む。一方、「変換」フラグが1である場合(ステップS305:Yes)、変換部102は、当該撮影条件に対応する空間周波数データを取得する(ステップS306)。ここで取得される空間周波数データは、
図9の周波数変換処理のステップS206で記憶装置20に格納された周波数領域に変換済みのPSFである。
【0081】
次に、変換部102は、ステップS303で撮影条件の特性を打ち消した識別対象の画像に対して空間周波数データを適用し、記憶装置20に格納する(ステップS307)。これは、上述したように、フーリエ変換され撮影条件の特性を打ち消された識別対象の画像に空間周波数データを乗算することにより、適用できる。
【0082】
次に、処理していない撮影条件が存在する場合(ステップS308:Yes)、変換部102は、ステップS305に戻り処理を繰り返す。一方、処理していない撮影条件が存在しない場合(ステップS308:No)、ステップS309に進む。
【0083】
次に、処理していない識別対象の画像が存在する場合(ステップS309:Yes)、識別部103はステップS301に戻り処理を繰り返す。一方、処理していない識別対象の画像が存在しない場合(ステップS309:No)、
図10の処理を終了する。
【0084】
次に、画像識別処理について説明する。
図11は、画像識別処理の流れを示すフローチャートである。
図11の処理は、画像変換装置10の識別部103によって実行される
図7の画像識別処理(ステップS4)に相当する。
【0085】
まず、識別部103は、
図11に示すように、記憶装置20から画像変換処理で得られた識別対象の画像を取得する(ステップS401)。ここで取得される画像は、
図10の画像変換処理のステップS307で記憶装置20に格納された、機械学習モデルで識別可能なPSF適用済みの画像である。
【0086】
次に、識別部103は、記憶装置20から機械学習で生成した識別器50を取得する(ステップS402)。識別器50は、上述したように、例えば、CT画像を入力、および当該CT画像に投影された症例を示す正解ラベルを正解とする教師データを学習して構築された機械学習モデルを備える。
【0087】
次に、識別部103は、画像変換処理で得られた識別対象の画像を識別器50に入力することにより、当該画像を識別し(ステップS403)、識別結果として、識別器50から出力される識別ラベルを得る。
【0088】
次に、処理していない識別対象の画像が存在する場合(ステップS404:Yes)、識別部103はステップS401に戻り処理を繰り返す。一方、処理していない識別対象の画像が存在しない場合(ステップS404:No)、
図11の処理を終了する。
【0089】
[効果]
以上、説明したように、画像変換装置100は、第1の画像に適用された第1のフィルタを特定し、第1のフィルタの特性を打ち消し、機械学習モデルの教師データとして用いられた第2の画像に適用された第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する。
【0090】
このように、画像変換装置100は、機械学習モデルの教師データとして用いられた画像のフィルタを識別対象の画像に適用する。これにより、画像変換装置100は、機械学習モデルの教師データとして用いられた画像に、識別対象の画像の撮影条件と同一の撮影条件で撮影された画像が無い、または少ない場合であっても、新たに機械学習モデルの教師データを集めなくても識別対象の画像を識別できる。すなわち、画像変換装置100は、様々な撮影条件で撮影された画像を効率的に識別できる。
【0091】
また、画像変換装置100は、機械学習モデルを用いて第3の画像を識別する。
【0092】
これにより、画像変換装置100は、様々な撮影条件で撮影された画像を効率的に識別できる。
【0093】
また、画像変換装置100は、第2の画像を含む医用画像を入力、および症例を示す正解ラベルを正解とする教師データを学習して構築された機械学習モデルを用いて、第3の画像を識別する。
【0094】
これにより、画像変換装置100は、様々な撮影条件で撮影された医用画像を効率的に識別できる。
【0095】
また、画像変換装置100は、第1のフィルタとして、第1のPSFを特定し、第2のフィルタとして、第2のPSFを適用する。
【0096】
これにより、画像変換装置100は、機械学習モデルの教師データとして用いられた医用画像に、識別対象の医用画像の撮影条件と同一の撮影条件で撮影された医用画像が少ない場合であっても、医用画像を効率的に識別できる。
【0097】
また、画像変換装置100は、第1の画像をフーリエ変換により空間周波数領域に変換し、空間周波数領域に変換された第1の画像に、第1のPSFをフーリエ変換したものを除算することにより、第1のフィルタの特性を打ち消し、空間周波数領域に変換された第1の画像に、第2のPSFをフーリエ変換したものを乗算することにより、第2のフィルタを適用する。
【0098】
これにより、画像変換装置100は、機械学習モデルの教師データとして用いられた医用画像に、識別対象の医用画像の撮影条件と同一の撮影条件で撮影された医用画像が少ない場合であっても、医用画像をより効率的に識別できる。
【0099】
また、画像変換装置100は、第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する。
【0100】
これにより、画像変換装置100は、機械学習モデルの教師データとして用いられた画像に、識別対象の画像の撮影条件と同一の撮影条件で撮影された画像が少ない場合であっても、識別対象の画像を効率的に識別できる。
【0101】
また、画像変換装置100は、第1の撮影機器および第1の再構成関数を少なくとも含む第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影機器および第2の再構成関数を少なくとも含む第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する。
【0102】
これにより、機械学習モデルの教師データとして用いられた画像に、識別対象の画像の撮影条件と同一の撮影機器および再構成関数を用いて撮影された画像が少ない場合であっても、識別対象の画像を効率的に識別できる。
【0103】
また、画像変換装置100は、DICOM画像である第1の画像に付けられたタグから、第1の撮影機器および第1の再構成関数を取得する。
【0104】
これにより、画像変換装置100は、医用画像の撮影条件およびPSFをより容易に推定できる。
【0105】
また、画像変換装置100は、機械学習モデルを用いて、複数の画像を識別し、複数の画像の中で識別精度が最も高い画像に適用されている第3のフィルタを第2のフィルタに決定する。
【0106】
これにより、画像変換装置100は、識別対象の画像をより高精度に識別できる。
【0107】
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更できる。また、実施例で説明した具体例、分布、数値などは、あくまで一例であり、任意に変更できる。
【0108】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0109】
図12は、ハードウェア構成例を説明する図である。
図12に示すように、画像変換装置10は、通信インタフェース10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、
図12に示した各部は、バスなどで相互に接続される。
【0110】
通信インタフェース10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、
図2に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0111】
プロセッサ10dは、
図2に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10bなどから読み出してメモリ10cに展開することで、
図2などで説明した各機能を実行するプロセスを動作させるハードウェア回路である。すなわち、このプロセスは、画像変換装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、推定部101、変換部102、識別部103、および決定部104と同様の機能を有するプログラムをHDD10bなどから読み出す。そして、プロセッサ10dは、推定部101、変換部102、識別部103、および決定部104などと同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0112】
このように画像変換装置10は、プログラムを読み出して実行することで学習方法を実行する情報処理装置として動作する。また、画像変換装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施例でいうプログラムは、画像変換装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用できる。
【0113】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布できる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行できる。
【0114】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0115】
(付記1)コンピュータに、
第1の画像に適用された第1のフィルタを特定し、
第1のフィルタの特性を打ち消し、機械学習モデルの教師データとして用いられた第2の画像に適用された第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する
処理を実行させることを特徴とする画像変換プログラム。
【0116】
(付記2)コンピュータに、機械学習モデルを用いて第3の画像を識別する処理をさらに実行させることを特徴とする付記1に記載の画像変換プログラム。
【0117】
(付記3)コンピュータに、第2の画像を含む医用画像を入力、および症例を示す正解ラベルを正解とする教師データを学習して構築された機械学習モデルを用いて、第3の画像を識別する処理をさらに実行させることを特徴とする付記1に記載の画像変換プログラム。
【0118】
(付記4)コンピュータに、
第1のフィルタとして、第1のPSF(Point Spread Function)を特定させ、
第2のフィルタとして、第2のPSFを適用させる
ことを特徴とする付記1に記載の画像変換プログラム。
【0119】
(付記5)コンピュータに、
第1の画像をフーリエ変換により空間周波数領域に変換し、
空間周波数領域に変換された第1の画像に、第1のPSFをフーリエ変換したものを除算することにより、第1のフィルタの特性を打ち消し、
空間周波数領域に変換された第1の画像に、第2のPSFをフーリエ変換したものを乗算することにより、第2のフィルタを適用する
処理をさらに実行させることを特徴とする付記4に記載の画像変換プログラム。
【0120】
(付記6)コンピュータに、
第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する
処理を実行させることを特徴とする付記1に記載の画像変換プログラム。
【0121】
(付記7)コンピュータに、
第1の撮影機器および第1の再構成関数を少なくとも含む第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影機器および第2の再構成関数を少なくとも含む第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する
処理を実行させることを特徴とする付記1に記載の画像変換プログラム。
【0122】
(付記8)コンピュータに、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像である第1の画像に付けられたタグから、第1の撮影機器および第1の再構成関数を取得する処理をさらに実行させることを特徴とする付記7に記載の画像変換プログラム。
【0123】
(付記9)コンピュータに、機械学習モデルを用いて、複数の画像を識別し、
複数の画像の中で識別精度が最も高い画像に適用されている第3のフィルタを第2のフィルタに決定する処理をさらに実行させることを特徴とする付記1に記載の画像変換プログラム。
【0124】
(付記10)コンピュータが、
第1の画像に適用された第1のフィルタを特定し、
第1のフィルタの特性を打ち消し、機械学習モデルの教師データとして用いられた第2の画像に適用された第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する
処理を実行することを特徴とする方法。
【0125】
(付記11)コンピュータが、機械学習モデルを用いて第3の画像を識別する処理をさらに実行することを特徴とする付記10に記載の方法。
【0126】
(付記12)コンピュータが、第2の画像を含む医用画像を入力、および症例を示す正解ラベルを正解とする教師データを学習して構築された機械学習モデルを用いて、第3の画像を識別する処理をさらに実行することを特徴とする付記10に記載の方法。
【0127】
(付記13)コンピュータが、
第1のフィルタとして、第1のPSF(Point Spread Function)を特定し、
第2のフィルタとして、第2のPSFを適用する
ことを特徴とする付記10に記載の方法。
【0128】
(付記14)コンピュータが、
第1の画像をフーリエ変換により空間周波数領域に変換し、
空間周波数領域に変換された第1の画像に、第1のPSFをフーリエ変換したものを除算することにより、第1のフィルタの特性を打ち消し、
空間周波数領域に変換された第1の画像に、第2のPSFをフーリエ変換したものを乗算することにより、第2のフィルタを適用する
処理をさらに実行することを特徴とする付記13に記載の方法。
【0129】
(付記15)コンピュータが、
第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する
処理を実行することを特徴とする付記10に記載の方法。
【0130】
(付記16)コンピュータが、
第1の撮影機器および第1の再構成関数を少なくとも含む第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影機器および第2の再構成関数を少なくとも含む第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する
処理を実行することを特徴とする付記10に記載の方法。
【0131】
(付記17)コンピュータが、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像である第1の画像に付けられたタグから、第1の撮影機器および第1の再構成関数を取得する処理をさらに実行することを特徴とする付記16に記載の方法。
【0132】
(付記18)コンピュータが、機械学習モデルを用いて、複数の画像を識別し、
複数の画像の中で識別精度が最も高い画像に適用されている第3のフィルタを第2のフィルタに決定する処理をさらに実行することを特徴とする付記10に記載の方法。
【0133】
(付記19)第1の画像に適用された第1のフィルタを特定する推定部と、
第1のフィルタの特性を打ち消し、機械学習モデルの教師データとして用いられた第2の画像に適用された第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する変換部と
を有することを特徴とする装置。
【0134】
(付記20)機械学習モデルを用いて第3の画像を識別する識別部をさらに有することを特徴とする付記19に記載の装置。
【0135】
(付記21)装置が、第2の画像を含む医用画像を入力、および症例を示す正解ラベルを正解とする教師データを学習して構築された機械学習モデルを用いて、第3の画像を識別する識別部をさらに有することを特徴とする付記19に記載の装置。
【0136】
(付記22)推定部は、第1のフィルタとして、第1のPSF(Point Spread Function)を特定し、
変換部は、第2のフィルタとして、第2のPSFを適用する
ことを特徴とする付記19に記載の装置。
【0137】
(付記23)変換部はさらに、
第1の画像をフーリエ変換により空間周波数領域に変換し、
空間周波数領域に変換された第1の画像に、第1のPSFをフーリエ変換したものを除算することにより、第1のフィルタの特性を打ち消し、
空間周波数領域に変換された第1の画像に、第2のPSFをフーリエ変換したものを乗算することにより、第2のフィルタを適用する
ことを特徴とする付記22に記載の装置。
【0138】
(付記24)推定部は、第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
変換部は、第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する
ことを特徴とする付記19に記載の装置。
【0139】
(付記25)推定部は、第1の撮影機器および第1の再構成関数を少なくとも含む第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを特定し、
変換部は、第1のフィルタの特性を打ち消し、第2の撮影機器および第2の再構成関数を少なくとも含む第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する
ことを特徴とする付記19に記載の装置。
【0140】
(付記26)推定部はさらに、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像である第1の画像に付けられたタグから、第1の撮影機器および第1の再構成関数を取得することを特徴とする付記25に記載の装置。
【0141】
(付記27)識別部は、機械学習モデルを用いて、複数の画像を識別し、
複数の画像の中で識別精度が最も高い画像に適用されている第3のフィルタを第2のフィルタに決定する決定部をさらに有することを特徴とする付記19に記載の装置。
【0142】
(付記28)プロセッサと、
プロセッサに動作可能に接続されたメモリと
を備えた情報処理装置であって、プロセッサは、
第1の画像に適用された第1のフィルタを特定する推定部と、
第1のフィルタの特性を打ち消し、機械学習モデルの教師データとして用いられた第2の画像に適用された第2のフィルタを適用することで、第1の画像を第3の画像に変換する変換部と
を有することを特徴とする装置。
【符号の説明】
【0143】
1 画像変換システム
10 画像変換装置
20 記憶装置
30 画像入力装置
40 計算機
50 識別器
101 推定部
102 変換部
103 識別部
104 決定部
201 学習データ
202 撮影条件データ
203 識別データ