(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】アスベスト計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/24 20060101AFI20241203BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20241203BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G01N33/24 A
G01N21/64 F
G01N21/64 E
G01N1/02 G
(21)【出願番号】P 2021074756
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2024-02-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、独立行政法人環境再生保全機構 環境研究総合推進費「蛍光顕微鏡法による大気アスベスト連続自動計測装置の開発と解体現場におけるアスベスト飛散状況の解明」委託研究 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】黒田 章夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 智基
(72)【発明者】
【氏名】加賀 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隼人
(72)【発明者】
【氏名】中静 崇
(72)【発明者】
【氏名】浦田 吉康
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017666(JP,A)
【文献】特開平07-244163(JP,A)
【文献】特開2007-147437(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0321635(US,A1)
【文献】米国特許第07295308(US,B1)
【文献】国際公開第2007/055243(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3210639(JP,U)
【文献】黒田章夫,大気アスベストを迅速検査するための蛍光顕微鏡法の開発と自動化の試み,廃棄物資源循環学会誌,2020年,31(5),pp.345-351
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/24
G01N 21/64
G01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中のアスベストを捕集する濾紙を搬送する濾紙搬送ユニットと、
前記濾紙搬送ユニットで搬送される前記濾紙の搬送途上に設けられた捕集染色ユニットと、
前記濾紙搬送ユニットで搬送される前記濾紙の搬送途上であって、前記捕集染色ユニットの下流側に設けられた蛍光検出ユニットと、
前記気体が前記捕集染色ユニットを通過
した後に排気される排気管と、前記排気管に設けられ、前記気体を吸引する吸引ポンプとを有する通気ユニットを備え、
前記捕集染色ユニットは、開閉可能な供給側ブロックと排出側ブロックとを有し、前記濾紙を挟んで閉じた際に、前記供給側ブロックと前記排出側ブロックとの間に前記気体が前記濾紙を通過する捕集場所が形成されるように構成され、
前記供給側ブロックには、前記気体を前記捕集場所の前記濾紙に導く気体導入路と、蛍光標識されているアスベストと結合可能なアスベスト結合物質を含む染色液を
前記捕集場所の前記濾紙に導く染色液導入路と、アスベストに結合していない前記染色液を前記濾紙から除去する洗浄液を
前記捕集場所の前記濾紙に導く洗浄液導入路とが形成されており、
前記排出側ブロックには、前記通気ユニットの前記排気管に接続する排気路が形成されて
おり、
前記濾紙に導かれた前記染色液と前記洗浄液は、前記排気管に設けられた前記吸引ポンプにより、吸引可能とされていることを特徴とするアスベスト計測装置。
【請求項2】
前記捕集染色ユニットの前記供給側ブロックが上側に、前記排出側ブロックが前記供給側ブロックの下側に配置され、
前記供給側ブロックと前記排出側ブロックとを前記濾紙を挟んで閉じた際に、
前記気体導入路は、前記捕集場所の前記濾紙に対して、斜め上方から前記気体を導くように形成されており、前記染色液導入路は、前記捕集場所の前記濾紙に前記染色液を滴下可能に形成されており、前記洗浄液導入路は、前記捕集場所の前記濾紙に前記洗浄液を滴下可能に形成されている、請求項1に記載のアスベスト計測装置。
【請求項3】
前記排気管の前記吸引ポンプの上流側に、気液分離のためのバッファータンクを有している、請求項
1又は2に記載のアスベスト計測装置。
【請求項4】
前記通気ユニットは、前記排気路内の圧力を大気圧に戻すための大気開放弁を有する、請求項3に記載のアスベスト計測装置。
【請求項5】
前記蛍光検出ユニットが、前記濾紙の下面を支える試料台と、前記試料台の上方に設けられ、前記濾紙から発せられる蛍光を検出する蛍光検出器とを有し、
前記試料台の上面が撥水性とされている、請求項1~4のいずれか一項に記載のアスベスト計測装置。
【請求項6】
前記アスベスト結合物質がアスベスト結合タンパク質である、請求項1~5のいずれか一項に記載のアスベスト計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト計測装置に関する。さらに詳しくは、蛍光顕微鏡法により、気体中のアスベストを自動的に計測できるアスベスト計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト(石綿)は肺ガンや中皮腫などを引き起こすことから、我が国では2006年に全面禁止された。しかし、古い建物には約4,000万トンのアスベスト含有建材が残されており、これらの建物の解体は2040年以降まで続くとされている。
もし、古い建物の解体現場でアスベストの飛散が確認された場合には、工事関係者や自治体等が必要な措置を執らなければならない。また、解体現場でのアスベスト飛散状況を解明し、アスベストリスクを低減するためにも、現場における自動的かつ継続的なアスベスト計測が求められる。
【0003】
しかし、飛散アスベスト検査の公定法である位相差/蛍光顕微鏡法(非特許文献1)は、電子顕微鏡を用いる方法に比べて迅速な方法となったが、依然として複雑な工程を有し、自動化には不向きである。
一方、蛍光顕微鏡法は、位相差モードでの繊維の観察を行わず、直接、蛍光繊維の形状と蛍光でアスベストを判定、計測する方法である(非特許文献1)。そのため、公定法と比較すれば自動化が容易で、自動化を達成することにより、継続的なアスベスト計測が達成できると考えられた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「アスベストモニタリングマニュアル(第4.1版)」、環境省水・大気環境局大気環境課、平成29年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蛍光顕微鏡法によるアスベスト計測の全行程を自動化した装置は未だ実現されておらず、熟練した計測者による手作業による計測が行われてきた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、蛍光顕微鏡法によるアスベスト計測の全行程を自動化したアスベスト計測装置を提供し、もって、社会のアスベストリスクを低減させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]気体中のアスベストを捕集する濾紙を搬送する濾紙搬送ユニットと、
前記濾紙搬送ユニットで搬送される前記濾紙の搬送途上に設けられた捕集染色ユニットと、
前記濾紙搬送ユニットで搬送される前記濾紙の搬送途上であって、前記捕集染色ユニットの下流側に設けられた蛍光検出ユニットと、
前記気体が前記捕集染色ユニットを通過するように吸引又は加圧するポンプと前記捕集染色ユニットを通過した気体が排気される排気管を有する通気ユニットを備え、
前記捕集染色ユニットは、開閉可能な供給側ブロックと排出側ブロックとを有し、前記濾紙を挟んで閉じた際に、前記供給側ブロックと前記排出側ブロックとの間に前記気体が前記濾紙を通過する捕集場所が形成されるように構成され、
前記供給側ブロックには、前記気体を前記捕集場所の前記濾紙に導く気体導入路と、蛍光標識されているアスベストと結合可能なアスベスト結合物質を含む染色液を前記濾紙に導く染色液導入路と、アスベストに結合していない前記染色液を前記濾紙から除去する洗浄液を前記濾紙に導く洗浄液導入路とが形成されており、
前記排出側ブロックには、前記通気ユニットの前記排気管に接続する排気路が形成されていることを特徴とするアスベスト計測装置。
[2]前記捕集染色ユニットの前記供給側ブロックが上側に、前記排出側ブロックが前記供給側ブロックの下側に配置され、
前記供給側ブロックと前記排出側ブロックとを前記濾紙を挟んで閉じた際に、
前記気体導入路は、前記捕集場所の前記濾紙に対して、斜め上方から前記気体を導くように形成されており、前記染色液導入路は、前記捕集場所の前記濾紙に前記染色液を滴下可能に形成されており、前記洗浄液導入路は、前記捕集場所の前記濾紙に前記洗浄液を滴下可能に形成されている、[1]に記載のアスベスト計測装置。
[3]前記通気ユニットは、前記ポンプとして、前記排気管に設けられた吸引ポンプを有し、
前記排気管の前記吸引ポンプの上流側に、気液分離のためのバッファータンクを有し、前記捕集場所に対して滴下された前記染色液及び前記洗浄液を、各々前記吸引ポンプによって吸引するようになっている、[2]に記載のアスベスト計測装置。
[4]前記通気ユニットは、前記排気路内の圧力を大気圧に戻すための大気開放弁を有する、[3]に記載のアスベスト計測装置。
[5]前記蛍光検出ユニットが、前記濾紙の下面を支える試料台と、前記試料台の上方に設けられ、前記濾紙から発せられる蛍光を検出する蛍光検出器とを有し、
前記試料台の上面が撥水性とされている、[1]~[4]のいずれか一項に記載のアスベスト計測装置。
[6]前記アスベスト結合物質がアスベスト結合タンパク質である、請求項1~5のいずれか一項に記載のアスベスト計測装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアスベスト計測装置によれば、蛍光顕微鏡法によるアスベスト計測の全行程が自動化されているため、熟練者の技能に頼ることなく、解体現場等で迅速かつ継続的にアスベストの飛散を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアスベスト計測装置の概略構成図である。
【
図2】本発明のアスベスト計測装置における捕集染色ユニットの一例を示す要部縦断面図である。
【
図3】本発明のアスベスト計測装置における捕集染色ユニットの他の一例を示す要部縦断面図である。
【
図4】本発明のアスベスト計測装置の動作シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、本実施形態のアスベスト計測装置1は、濾紙搬送ユニット10と捕集染色ユニット20と蛍光検出ユニット60と吸引ユニット70(本発明の通気ユニットの一態様である。)と、演算制御装置80とで、概略構成されている。
演算制御装置80は、アスベスト計測装置1全体の動作を制御すると共に、蛍光検出ユニット60からのデータが入力されるようになっている。
【0010】
濾紙搬送ユニット10は、濾紙11を繰り出す濾紙繰出しロール12と、濾紙11を巻き取る濾紙巻取りロール13と、濾紙巻取りロール13に濾紙11を巻き取らせるように、濾紙巻取りロール13を回転させる濾紙送りモーターM1とを有している。
濾紙送りモーターM1は、演算制御装置80からON信号を受信している間、濾紙巻取りロール13を回転させるようになっている。
【0011】
本実施形態では、濾紙11は、濾紙送りモーターM1の駆動により搬送され、濾紙繰出しロール12から濾紙巻取りロール13へと走行するようになっている。
濾紙11が走行する方向は、水平に対して±10°以内が好ましく、±5°以内がより好ましく、水平であることが特に好ましい。濾紙11が走行する方向の水平に対する角度が好ましい範囲内であることにより、鮮明な画像を撮影しやすい。
【0012】
捕集染色ユニット20は、濾紙搬送ユニット10による濾紙11の搬送途上に設けられている。
本実施形態の捕集染色ユニット20は、供給側ブロックとしての上側ブロック30と、排出側ブロックとしての下側ブロック40とを有する。上側ブロック30と下側ブロック40とは、濾紙11を挟んで開閉可能とされている。
上側ブロック30は濾紙11の上側に設けられ、下側ブロック40は濾紙11の下側に設けられている。
【0013】
下側ブロック40は、開閉モーターM2の駆動により上下に移動可能となっている。
開閉モーターM2は、演算制御装置80からON信号を受信していない間(OFF状態の間)、下側ブロック40を上に移動した位置に保つようになっている。
開閉モーターM2は、演算制御装置80からON信号を受信している間、下側ブロック40を下に移動した位置に保つようになっている。
【0014】
下側ブロック40が上に移動した位置とされている際は、下側ブロック40の上面は濾紙11を挟んで上側ブロック30の下面に当接する状態となる。すなわち、上側ブロック30と下側ブロック40とが、濾紙11を挟んで閉じた状態となる。
この上側ブロック30と下側ブロック40とが閉じた状態において、上側ブロック30と下側ブロック40との間に気体が濾紙11を通過する捕集場所が形成されるようになっている。
【0015】
下側ブロック40が下に移動した位置とされている際は、下側ブロック40の上面は上側ブロック30の下面から離間した状態となる。すなわち、上側ブロック30と下側ブロック40とが開いた状態となる。
この上側ブロック30と下側ブロック40とが開いた状態において、濾紙11は、上側ブロック30と下側ブロック40との間を走行可能となる。
【0016】
上側ブロック30には、気体導入管51、洗浄液導入管52及び染色液導入管54が接続されている。気体導入管51の一端は開口し、測定対象の気体、例えば大気を上側ブロック30に供給できるようになっている。洗浄液導入管52の一端は洗浄液タンク53に挿入され、洗浄液ポンプP2の駆動により洗浄液タンク53内の洗浄液を上側ブロック30に供給できるようになっている。染色液導入管54の一端は染色液タンク55に挿入され、染色液ポンプP3の駆動により染色液タンク55内の染色液を上側ブロック30に供給できるようになっている。
洗浄液ポンプP2と染色液ポンプP3は、各々演算制御装置80からON信号を受信している間駆動する。
【0017】
蛍光検出ユニット60は、濾紙搬送ユニット10による濾紙11の搬送途上であって、捕集染色ユニット20の下流側(捕集染色ユニット20よりも濾紙巻取りロール13側)に設けられている。
本実施形態の蛍光検出ユニット60は、濾紙11の下面を支えるように配置される試料台61と、濾紙11から発せられる蛍光を濾紙11の上面側から検出するように、試料台61の上方に配置される蛍光検出器62とを有する。
【0018】
本実施形態において、試料台61の上面は撥水性とされている。試料台61の上面は、例えば、フッ素樹脂等の撥水性の材料で試料台61を製造することにより撥水性とすることができる。また、フッ素樹脂等の撥水化剤を塗布する等の撥水加工により撥水性としてもよい。
【0019】
蛍光検出器62としては、蛍光フィルターユニットを装備した落射型蛍光顕微鏡を用いることが好ましい。
図1には、対物レンズ63とカメラ64のみを模式的に示しているが、落射型蛍光顕微鏡は、内部に励起光源を有している。励起光源としては、水銀ランプ、LED等を使用できる。
カメラ64はデジタルカメラであり、演算制御装置80からスタート信号を受信している間、試料台61上の濾紙11から発せられる蛍光の画像を取得するようになっている。
【0020】
吸引ユニット70は、下側ブロック40に接続される第一吸引管71と第一吸引管71の下流側に接続される第二吸引管72と第二吸引管72の途中から分岐する圧抜き管73と、第二吸引管72の圧抜き管73より下流側において、第二吸引管72と並列するバイパス管74とを有している。
【0021】
第一吸引管71と第二吸引管72との間には気液分離のためのバッファータンク75が設けられている。
第一吸引管71と第二吸引管72とは、本発明の排気管の一態様として、バッファータンク75を介して接続された吸引管を構成している。
【0022】
第一吸引管71の下流端はバッファータンク75の底面近傍まで挿入されており、下側ブロック40から排出された液体は、バッファータンク75に溜まるようになっている。また、第二吸引管72は、上流端がバッファータンク75の上面近傍となるようにバッファータンク75に挿入されており、バッファータンク75の底面近傍に液体が溜まっていても、上方の気相から気体を吸引できるようになっている。
【0023】
第二吸引管72から分岐した圧抜き管73には、大気開放弁76が設けられている。大気開放弁76は常閉弁であり、演算制御装置80からON信号を受信している間、開いた状態とされる。
【0024】
第二吸引管72のバイパス管74の上流端が分岐した箇所とバイパス管74の下流端が合流する箇所との間には、吸引ポンプP1が設けられている。吸引ポンプP1は、演算制御装置80からON信号を受信している間駆動する。
また、バイパス管74には、流量調整弁77がもうけられており、演算制御装置80の指示を受けて流量調整弁77の開度を調整することにより、吸引ポンプP1が下側ブロック40から吸引する気体の流量を調整できるようになっている。
【0025】
図2に捕集染色ユニット20の一例を示す。
図2は、濾紙11を挟んで閉じた状態の捕集染色ユニット20を、濾紙11の幅方向に沿って切断し、濾紙繰出しロール12側から見た縦断面図である。
図2の捕集染色ユニット20において、上側ブロック30の下面に平面視円形の略円盤状の捕集空間31が形成されている。捕集空間31は、上側ブロック30の下面の平面視において略中央であって、濾紙11の幅方向中央に面する部分に形成されている。
この捕集空間31に濾紙11が面する部分の周縁を除いた部分が捕集場所21となっている。
【0026】
上側ブロック30には、気体導入路32と洗浄液導入路33と染色液導入路34が形成されている。
気体導入路32の上流端には、気体導入管接続具35が取り付けられ、気体導入管51が接続できるようになっている。洗浄液導入路33の上流端には洗浄液導入管接続具36が取り付けられ、
図1に示す洗浄液導入管52が接続できるようになっている。染色液導入路34の上流端には染色液導入管接続具37が取り付けられ、
図1に示す染色液導入管54が接続できるようになっている。
【0027】
気体導入路32は、上側ブロック30の側面から捕集空間31に向けて斜めに形成されており、捕集場所21の濾紙11に対して、斜め上方から気体を導くようになっている。
気体導入路32の角度に特に限定はないが、気体導入路32の下流端側の濾紙11に対する角度は、10~50°とすることが好ましく、15~30°とすることがより好ましい。
【0028】
濾紙11に対する角度が好ましい範囲の下限値以上であることにより、気体が濾紙11を通過しやすくなる。濾紙11に対する角度が好ましい範囲の上限値以下であることにより、気体導入管接続具35と干渉せずに、洗浄液導入管接続具36と染色液導入管接続具37とを上側ブロック30に取り付けやすくなる。
【0029】
洗浄液導入路33と染色液導入路34とは、各々上流端が上側ブロック30の上面に開口し、下流端が捕集空間31に開口するように形成されている。
これにより、洗浄液導入路33から導入された洗浄液と染色液導入路34から導入された染色液とは、各々捕集空間31内に放出され、捕集場所21における濾紙11に滴下するようになっている。
【0030】
図2の例において、洗浄液導入路33は、濾紙11に対して垂直、すなわち、鉛直方向に沿って形成されている。また、染色液導入路34は、洗浄液導入路33に対して、斜めに形成されている。
洗浄液導入路33と染色液導入路34との角度に特に限定はないが、0~25°とすることが好ましく、5~20°とすることがより好ましい。
【0031】
洗浄液導入路33と染色液導入路34との角度が好ましい範囲の下限値以上であることにより、洗浄液導入管接続具36と染色液導入管接続具37とを、互いに干渉することなく上側ブロック30に取り付けやすくなる。
洗浄液導入路33と染色液導入路34との角度が好ましい範囲の上限値以下であることにより、染色液導入路34から導入された染色液を、捕集場所21における濾紙11に導きやすくなる。
【0032】
下側ブロック40には、平面視において略中央に吸引路41(本発明の排気路の一態様である。)が形成されている。吸引路41の上端は捕集空間31に対向して開口しており、捕集空間31の下面より若干小径の円形とされている。
捕集空間31に濾紙11が面する部分の内、吸引路41の上端に対応する部分が捕集場所21となっている。
【0033】
吸引路41の下端は、下側ブロック40の下面において開口している。吸引路41の下端には、吸引管接続具42が取り付けられ、第一吸引管71の上流端が接続できるようになっている。
図2の例において、吸引路41は、鉛直方向(濾紙11に対して垂直の方向)に沿って形成されている。吸引路41の角度に特に限定はないが、鉛直方向に対して±10°以内であることが好ましく、±5°以内であることがより好ましい。
吸引路41が鉛直方向又は鉛直方向に近い角度で設けられていることにより、捕集場所21の濾紙11に滴下された液体を吸引ユニット70により吸引した際、濾紙11内に浸透させやすくなる。
【0034】
図3に捕集染色ユニット20の他の一例を示す。
図3も、濾紙11を挟んで閉じた状態の捕集染色ユニット20を、濾紙11の幅方向に沿って切断し、濾紙繰出しロール12側から見た縦断面図である。
図3において、
図2と同一の構成部材については、
図2と同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
図3の捕集染色ユニット20は、上側ブロック30に形成された洗浄液導入路33と染色液導入路34の角度のみが、
図2の捕集染色ユニット20と相違する。
図3の例において、洗浄液導入路33と染色液導入路34とは、共に鉛直方向に対して傾きをもって形成されている。洗浄液導入路33と染色液導入路34の鉛直方向に対する傾きの大きさは、同じであっても異なっていてもよいが、
図3には、同一である例を示している。
【0036】
洗浄液導入路33と染色液導入路34との角度に特に限定はないが、5~25°とすることが好ましく、10~20°とすることがより好ましい。
洗浄液導入路33と染色液導入路34との角度が好ましい範囲の下限値以上であることにより、洗浄液導入管接続具36と染色液導入管接続具37とを、互いに干渉することなく上側ブロック30に取り付けやすくなる。
洗浄液導入路33と染色液導入路34との角度が好ましい範囲の上限値以下であることにより、洗浄液導入路33から導入された洗浄液と染色液導入路34から導入された染色液を、捕集場所21における濾紙11に導きやすくなる。
【0037】
本実施形態のアスベスト計測装置1は、演算制御装置80の制御の下以下のステップS1から、ステップS10を、順次行うようになっている。
ステップS1:捕集場所21の濾紙11に気体を通過させるステップ。
ステップS2:捕集場所21の濾紙11に洗浄液を滴下吸引するステップ(1回目)。
ステップS3:捕集場所21の濾紙11に染色液を滴下吸引するステップ(1回目)。
ステップS4:捕集場所21の濾紙11 に染色液を滴下吸引するステップ(2回目)。
ステップS5:捕集場所21の濾紙11に洗浄液を滴下吸引するステップ(2回目)。
ステップS6:捕集場所21の濾紙11に洗浄液を滴下吸引するステップ(3回目)。
ステップS7:捕集場所21の濾紙11に洗浄液を滴下吸引するステップ(4回目)。
ステップS8:吸引路41内の圧力を大気圧に戻すステップ。
ステップS9:濾紙11を搬送するステップ。
ステップS10:蛍光を検出するステップ。
【0038】
以下、
図4を参照しつつ、各ステップについて詳述する。
図4は、各モーター、ポンプ等のオンオフ状態を時間軸(図の左から右に向かって進行)に沿って示すものである。
なお、
図4における各ステップの時間軸の長さは、実際の時間の長短を正確に表しているものではない。
【0039】
ステップS1は、捕集場所21の濾紙11に気体を通過させるステップである。ステップS1では、吸引ポンプP1のみをONとする。なお、開閉モーターM2はOFFであるので、捕集染色ユニット20の上側ブロック30と下側ブロック40とは閉じている。
これにより、大気等の気体が、気体導入管51から捕集空間31に導入され、捕集場所21の濾紙11を通過し、第一吸引管71、第二吸引管72を通して排出される。その結果、気体に含まれるアスベスト等が捕集場所21の濾紙11に捕集される。
【0040】
ステップS1による気体の吸引量は、単位時間あたりの流量と吸引時間により決まる。 単位時間あたりの流量は、特に限定する必要はないが、例えば1~20(リットル/分)とすることが好ましい。
吸引時間は、特に限定する必要はないが、1~100分とすることが好ましい。
なお、ステップS2からステップS7においても、若干の気体が吸引されるが、ステップS1と比較して短い時間なので、ステップS1における気体吸引量と比較すると無視できる程度である。
【0041】
ステップS2は、捕集場所21の濾紙11に洗浄液を滴下吸引するステップ(1回目)である。ステップS2では、洗浄液ポンプP2のみをONとした後、吸引ポンプP1のみをONとする。
洗浄液ポンプP2のみをONとしている間、洗浄液タンク53の洗浄液が洗浄液導入管52から捕集空間31に導入され、捕集場所21の濾紙11に滴下される。その後、吸引ポンプP1のみをONとすることにより、濾紙11上に滴下された洗浄液が、濾紙11内に含浸される。
【0042】
なお、ステップS2以降、濾紙11を通過した液は、第一吸引管71を経由して、バッファータンク75に捕集される。
ステップS2により、予め濾紙11に洗浄液を含浸させておくことにより、ステップS3以降に滴下される染色液中のタンパク質が、非特異的に濾紙11に吸着することを防ぐことができる。
【0043】
ステップS2で使用する洗浄液は、塩や界面活性剤を含んでもよく、界面活性剤を含むことがより好ましい。塩や界面活性剤を添加することで、より結合特異性の高いタンパク質のみを濾紙11に残すことが可能となる。また、洗浄液は、pHが一定の範囲とされた緩衝液であることが好ましい。
【0044】
塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等が挙げられるが、特に限定はされない。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤を使用することが好ましい。洗浄液における界面活性剤の濃度は、0.01~2質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。
【0045】
洗浄液のpHは、4~9であることが好ましく、5~8であることがより好ましい。
好ましい範囲のpHとするために好適な緩衝液としては、例えば、トリス塩酸緩衝液(pH7.5またはpH8.0)、リン酸緩衝液(pH7.5またはpH8.0)が挙げられる。
【0046】
ステップS2で滴下する洗浄液の液量は、10~200μLであることが好ましく、20~100μLであることがより好ましい。
ステップS2において、吸引ポンプP1をONとする時間(吸引時間)は、1~100秒とすることが好ましく、2~20秒とすることがより好ましい。吸引時間が好ましい範囲の下限値以上であれば、洗浄液を充分に濾紙11に含浸させることができる。吸引時間が好ましい範囲の上限値以下であれば、捕集空間31及び吸引路41が過剰に陰圧となることを防ぐことができる。
【0047】
ステップS3、ステップS4は、各々捕集場所21の濾紙11に染色液を滴下吸引するステップ(1回目、2回目)である。ステップS3、ステップS4では、各々染色液ポンプP3のみをONとした後、吸引ポンプP1のみをONとする。
染色液ポンプP3のみをONとしている間、染色液タンク55の染色液が染色液導入管54から捕集空間31に導入され、捕集場所21の濾紙11に滴下される。その後、吸引ポンプP1のみをONとすることにより、濾紙11上に滴下された染色液が、濾紙11内に含浸される。
【0048】
ステップS3、ステップS4により、濾紙11に染色液を含浸させることにより、染色液中のタンパク質が、濾紙11に捕集されたアスベストと特異的に結合して濾紙11上に残る。
なお、染色液を滴下吸引するステップを2回繰り返すのは、捕集場所21における濾紙11全体に染色液を含浸させるためである。
【0049】
ステップS3、ステップS4で使用する染色液としては、アスベストに結合するタンパク質が蛍光物質で修飾された蛍光標識アスベスト結合タンパク質を含む緩衝液を用いる。
染色液は、蛍光標識アスベスト結合タンパク質の他に、緩衝液、界面活性剤、防腐剤を含んでいてもよい。また、染色液は、pHが一定の範囲とされた緩衝液であることが好ましい。
【0050】
なお、アスベストとは、蛇紋石や角閃石が繊維状に変形した天然の鉱石で無機繊維状鉱物の総称であり、蛇紋石系(クリソタイル)と角閃石系(クロシドライト、アモサイトなど)に大別される。
アスベストの種類により特異性が異なるアスベスト結合タンパク質を、蛍光色の異なる蛍光物質で修飾して使用することにより、アスベストの種類を同定することも可能である。
【0051】
例えば、DksAをCy3(550nm付近で励起され、570nm付近の赤色の蛍光を呈する化合物)で修飾したもの(DksA-Cy3)と、GatZをFITC(495nm付近で励起され、520nm付近の緑色の蛍光を呈する化合物)で修飾したもの(GatZ-FITC)を用いれば、クリソタイルは赤色蛍光、角閃石アスベストは緑色蛍光を呈する。
また、両アスベストの識別が必要でない場合、DksAとGatZの両方をFITCで修飾したものを用いてもかまわない。
アスベスト結合タンパク質は、アスベストに結合する蛍光タンパク質であれば特に限定はない。
【0052】
染色液のpHは、特に限定されるものでないが、例えば中性付近の6~8であることが好ましい。
好ましい範囲のpHとするために好適な緩衝液としては、例えば、トリス塩酸緩衝液(pH7.5またはpH8.0)、リン酸緩衝液(pH7.5またはpH8.0)が挙げられる。
具体的な染色液としては、例えば特許第5464385号に記載された石綿と結合しうるタンパク質を含む物が挙げられる。
【0053】
ステップS3、ステップS4で滴下する染色液の液量は、各々10~200μLであることが好ましく、20~100μLであることがより好ましい。
ステップS3、ステップS4において、吸引ポンプP1をONとする時間(吸引時間)は、1~100秒とすることが好ましく、2~20秒とすることがより好ましい。吸引時間が好ましい範囲の下限値以上であれば、染色液を充分に濾紙11に含浸させることができる。吸引時間が好ましい範囲の上限値以下であれば、捕集空間31及び吸引路41が過剰に陰圧となることを防ぐことができる。
【0054】
ステップS5、ステップS6、ステップS7は、各々捕集場所21の濾紙11に洗浄液を滴下吸引するステップ(2回目~4回目)である。ステップS5、ステップS6、ステップS7では、各々洗浄液ポンプP2のみをONとした後、吸引ポンプP1のみをONとする。
【0055】
洗浄液ポンプP2のみをONとしている間、洗浄液タンク53の洗浄液が洗浄液導入管52から捕集空間31に導入され、捕集場所21の濾紙11に滴下される。その後、吸引ポンプP1のみをONとすることにより、濾紙11上に滴下された洗浄液が、濾紙11内に含浸される。濾紙11を通過した液は、第一吸引管71を経由して、バッファータンク75に捕集される。
【0056】
ステップS5、ステップS6、ステップS7により、ステップS3、ステップS4で滴下された染色液中のタンパク質の内、アスベストに特異的に結合していないタンパク質を除去することができる。
なお、洗浄液を滴下吸引するステップを3回繰り返すのは、捕集場所21における濾紙11全体に洗浄液を含浸させて、全体を洗浄するためである。
【0057】
ステップS5、ステップS6、ステップS7で使用する洗浄液は、ステップS2で使用した洗浄液と同じである。ステップS5、ステップS6、ステップS7で滴下する洗浄液の好ましい液量は、各々ステップS2で滴下する洗浄液の好ましい液量と同じである。
ステップS5、ステップS6、ステップS7において、吸引ポンプP1をONとする時間(吸引時間)の好ましい範囲は、ステップS2において、吸引ポンプP1をONとする時間(吸引時間)の好ましい範囲と同じである。
【0058】
ステップS8は、吸引路41内の圧力を大気圧に戻すステップである。ステップS8では、大気開放弁76をONとして開く。
吸引路41内の圧力は、吸引ポンプP1をOFFとするだけでも、徐々に大気圧に戻るが、捕集場所21における濾紙11が濡れていることから、第二吸引管72の下流端から長い配管を経由して全体が大気圧に戻るまでには、ある程度の時間を要する。
【0059】
本実施形態では、大気開放弁76を開とすることにより、速やかに第一吸引管71、第二吸引管72内が大気圧に戻り、第一吸引管71が接続された吸引路41が大気圧に戻るのも早い。そのため、捕集空間31の圧力も早期に大気圧に戻りやすい。
その結果、速やかにステップS9に移行することができる。
【0060】
ステップS9は、濾紙11を搬送するステップである。ステップS9では、濾紙11の搬送に先立ち、まず、開閉モーターM2をONとして、下側ブロック40を下げ、上側ブロック30の下面と下側ブロック40の上面とを離間させる。すなわち、上側ブロック30と下側ブロック40とを開く。ステップS8により、吸引路41が大気圧に戻っていることから、上側ブロック30と下側ブロック40とは容易に離間させることができる。
【0061】
その後、濾紙送りモーターM1をONとして、濾紙11を搬送し、捕集場所21に新たな濾紙11の面を配置すると共に、それまで捕集場所21に位置していた濾紙11を蛍光検出ユニット60の試料台61上に送る。
濾紙11の搬送終了後、開閉モーターM2をOFFとして、下側ブロック40を上げ、上側ブロック30と下側ブロック40とを閉じた状態に戻す。
【0062】
ステップS10は、蛍光を検出するステップである。ステップS10では、演算制御装置80のカメラスタート信号を受けて、カメラ64が、濾紙11の試料台61上の濾紙11の蛍光画像を取得する。
演算制御装置80は、取得した蛍光画像を解析して、アスベストの同定、定量等を行う。
【0063】
ステップS10が行われている間、捕集場所21では、新たに捕集場所21に配置された濾紙11の面に対して、上記ステップS1が平行して開始され、次の捕集染色が行われる。そして、ステップS10が終了すると、次の捕集染色が終了してステップS9が開始するまで、蛍光検出ユニット60は待機状態となり、試料台61上の濾紙11は、そのまま試料台61上に留まる。
【0064】
ここで、試料台61上の濾紙11は、次の捕集染色が行われ、蛍光検出ユニット60が待機状態となっている間に乾燥して、試料台61に張り付く可能性がある。
しかし、本実施形態では、試料台61の上面が撥水性とされているため、濾紙11が試料台61に張り付くことが防止され、次の捕集染色が行われた濾紙11についてステップS9を問題なく行うことができる。
【0065】
本実施形態では、気体導入管51が捕集場所21の濾紙11に対して、斜め上方から気体を導くように形成されており、染色液導入路34が、捕集場所21の濾紙11に染色液を滴下可能に形成されており、洗浄液導入路33が捕集場所21の濾紙11に洗浄液を滴下可能に形成されている。
すなわち、気体も各液体も同じ捕集場所21に供給される。そのため、ステップS1からステップS7までの間、濾紙11を移動させる必要がなく、ステップS7終了後、1回のみ移動させればよい。そのため、短時間で一連の計測動作を完了させることができる。
【0066】
また、洗浄液と染色液の滴下場所が同じなので、洗浄液と染色液との滴下順や滴下回数を適宜変更できる。
例えば、ステップS2による洗浄液の滴下を再度繰り返したり、ステップS3とステップS4の2回の染色液滴下を3回以上に増やしたりすることも可能である。
【0067】
また、各液体を滴下後吸引する態様としたので、各液体を充分に濾紙11に含浸させることができる。また、気体も各液体も同じ捕集場所21に供給されると共に、吸引ポンプP1の上流側にバッファータンク75を備えるので、気体を吸引するための吸引ポンプP1を、液体の吸引にも利用できる。
【0068】
なお、本発明における捕集染色ユニット20には、液体の滴下場所が気体の捕集場所の下流側であってもよい。その場合、気体の捕集が終了した後に、気体の捕集場所にあった濾紙11を、液体の滴下場所まで搬送する必要がある。
また、液体の滴下場所が気体の捕集場所の下流側にある場合、洗浄液の滴下場所と染色液の滴下場所とは異なる場所であってもよい。その場合、洗浄液の滴下場所と染色液の滴下場所との間で濾紙11を移動させる必要がある。
【0069】
このように、濾紙11の搬送の回数が増えた場合も、試料台61の上面が撥水性とされていれば、濾紙11の移動が容易である。
また、液体の滴下場所を気体の捕集場所と別個に設けた場合、液体の滴下場所に滴下した液体を吸引する液体用の吸引路を形成し、液体の濾紙11への含浸を促進することが好ましい。液体用の吸引路を形成する場合は、この吸引路内の圧力を速やかに大気圧に戻すための大気開放弁を設けることが好ましい。
【0070】
また、上記実施形態において、洗浄液導入路33と染色液導入路34とが、各々独立して上側ブロック30に形成された態様としたが、洗浄液導入路33と染色液導入路34とを、上側ブロック30の下面側で合流させ、Y字型に形成してもよい。すなわち、洗浄液導入路33と染色液導入路34とは、一部が一体化していてもよい。
【0071】
また、洗浄液導入路33と染色液導入路34とを兼ねる一つの導入路を上側ブロック30に形成してもよい。すなわち、洗浄液導入路33と染色液導入路34とは、完全に一体化していてもよい。
その場合、2つの管を接続できる接続具を用いることにより、その1つの導入路に、洗浄液導入管52と染色液導入管54とを接続できる。
【0072】
また、上記実施形態では、大気開放弁76は常閉弁としステップS8でのみ開く態様としたが、大気開放弁76をニードル弁とすれば、ステップS2からステップS7の間、大気開放弁76を多少開いた状態とすることができる。その場合、吸引ポンプP1による吸引路41の吸引力を弱め、陰圧を小さくすることができるので、ステップS9への移行を、より速やかに行うことができる。
また、上記実施形態では、吸引ポンプP1の流量調整をバイパス管74に設けた流量調整弁77で行う態様としたが、吸引ポンプP1の流量調整の方法に特に限定はなく、公知の種々の調整方法を採用することができる。
【0073】
また、本実施形態では、捕集染色ユニット20の開閉を、下側ブロック40を上下させることにより行ったが、上側ブロック30を上下させることにより開閉してもよい。
また、蛍光検出ユニット60が待機中の間、試料台61を下降させて濾紙11から離間させる構成とし、濾紙11の試料台61への張り付きを防止するようにしてもよい。その場合も、試料台61の上面は撥水性であることが好ましいが、撥水性でなくともよい。
【0074】
また、供給側ブロックと排出側ブロックとは、必ずしも上下に配置される必要はなく、例えば、排出側ブロックを供給側ブロックの斜め下方に配置したり、供給側ブロックと排出側ブロックとを水平方向に並べて配置してもよい。その場合、染色液や洗浄液の濾紙への供給は、滴下によらず、例えば、吹きつけなどによって行うことができる。
また、吸引ポンプに代えて、供給側ブロックの上流側に設けられ、供給側ブロック側から排出側ブロック側に通気させる加圧ポンプを用いてもよい。
【0075】
また、本発明のアスベスト結合物質は、タンパク質以外のアスベストに結合可能な物質が蛍光標識されたものであってもよい。
また、演算制御装置80の一部又は全部はアスベスト計測装置1と別体に設けてもよい。例えば、有線又は無線により接続された外部コントローラーや外部コンピュータ等を利用可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 アスベスト計測装置
10 濾紙搬送ユニット
11 濾紙
12 濾紙繰出しロール
13 濾紙巻取りロール
20 捕集染色ユニット
21 捕集場所
30 上側ブロック
31 捕集空間
32 気体導入路
33 洗浄液導入路
34 染色液導入路
40 下側ブロック
41 吸引路
60 蛍光検出ユニット
61 試料台
62 蛍光検出器
70 吸引ユニット
71 第一吸引管
72 第二吸引管
75 バッファータンク
76 大気開放弁
77 流量調整弁
80 演算制御装置
M1 濾紙送りモーター
M2 開閉モーター
P1 吸引ポンプ
P2 洗浄液ポンプ
P3 染色液ポンプ