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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】内視鏡挿入用補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/01 20060101AFI20241203BHJP
   A61B 1/273 20060101ALI20241203BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61B1/01 511
A61B1/01 513
A61B1/273
G02B23/24 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020001089
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021108798
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-09-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519070817
【氏名又は名称】河本 博文
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩太
(72)【発明者】
【氏名】河本 博文
【審査官】廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-131047(JP,A)
【文献】特開昭62-022623(JP,A)
【文献】国際公開第2010/089923(WO,A1)
【文献】特開昭60-185532(JP,A)
【文献】特開平09-225036(JP,A)
【文献】実開平04-124164(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部を被験者の管腔内に案内するための内視鏡挿入用補助具であって、
可撓性を有し、規定の平面に置いた状態で所定の曲率を保持する、前記挿入部を挿通可能な孔が軸方向に延びる管状に成形された湾曲形状の筒状体と、
前記筒状体の軸方向先端側の前記湾曲形状を規定する中心側の側壁に形成され、前記挿入部の先端部を導出する開口部と、
前記筒状体の前記開口部よりも先端側の周面に沿って設けられ、膨縮可能なバルーンと、
を有し、
前記筒状体を前記内視鏡の挿入部に被せて当該内視鏡とともに前記被験者の口腔から挿入し、前記被験者の十二指腸まで押し進められた後、当該十二指腸を姿勢変動させ、当該内視鏡の前記挿入部の前記先端部を前記開口部から導出させて、膨張した前記バルーンに突き当たって前記被験者の十二指腸乳頭の方向を向くように押し返された前記先端部を前記被験者の十二指腸乳頭を経て胆管に案内するために用いられ、
前記筒状体は、前記湾曲形状がヒトの胃の内壁要部に収まり易い形状に形成され、
前記開口部は、前記被験者の十二指腸が姿勢変動され、前記筒状体が前記被験者の前記胃内に収まった状態の時に、当該開口部が前記十二指腸乳頭に向き合う位置となるように前記筒状体の周方向の傾斜角度が設定されており、前記筒状体の外周の直径をaとしたときに前記外周から0.3aから0.7aの深さを有し、
前記筒状体の外径が15mm以下であり、
前記筒状体の前記湾曲形状が直径250mm~450mmの円弧形状であることを特徴とする内視鏡挿入用補助具。
【請求項2】
前記開口部は、前記筒状体の表面の前記規定の平面に対して前記筒状体の周方向に0°から90°の傾斜角度を有する位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡挿入用補助具。
【請求項3】
前記開口部は、前記筒状体の軸方向に1.0aから2.0aの長さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の内視鏡挿入用補助具。
【請求項4】
前記バルーンは、前記筒状体の周面のうち前記開口部が形成されている側の反対側周面での膨張が規制される構成を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内視鏡挿入用補助具。
【請求項5】
前記筒状体の表面に前記軸方向に沿って形成され、前記バルーンを膨縮させるための媒体を送る媒体流路と、前記媒体流路の開閉弁と、をさらに有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡挿入用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細径内視鏡の挿入部を被験者の管腔内へと案内するために用いる内視鏡挿入用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低侵襲診療に対する関心が高まる中、胆、膵疾患に対する内視鏡検査や治療が広く普及している。
【0003】
しかし、胆管や膵管は十二指腸と急峻な角度で交わる方向に走行しており、かつ内径が一般的な内視鏡(十二指腸鏡や上部消化管用内視鏡等の挿入部外径が10mm前後の内視鏡)よりも細いため、通常の内視鏡は胆管や膵管へ挿入することができず、胆管や膵管の内部は直接視認することができないという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、例えば内視鏡の挿入部を挿通させる筒状体と、筒状体の先端側に設けられてその側壁に開口する開口部と、筒状体の開口部よりも先端側に膨縮可能なバルーンを備えた内視鏡挿入用補助具を用いて、挿入部外径が望ましくは6mm前後であるとされる内視鏡を胆管内へ挿入することが提案されている(特許文献1参照)。この内視鏡挿入用補助具によれば、筒状体を被せた挿入部を体腔内の所望の位置まで挿入した後、バルーンを膨張させて体腔内の内壁に密着させることにより、側壁開口部を所望の位置(例えば十二指腸乳頭に対向する位置)に保持しておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-22623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡挿入用補助具は、筒状体の開口部が十二指腸乳頭に向かう位置にならないことがあった。この種の一般的な補助具は、可撓性の素材からなり、補助具の基端側に与えたトルクが先端側に伝わり難く、基端側をねじることで先端側に位置する開口部を十二指腸乳頭に向くように調整することは困難である。したがって、補助具を一旦挿入した後は、開口部の位置を調整することは難しく、開口部が十二指腸乳頭に向かない場合は一旦内視鏡と補助具を体外へ抜去し、開口部の向きを調整してから再度体内へ挿入するという行為を、開口部が十二指腸乳頭に向くまで繰り返す必要があった。
【0007】
そして、筒状体の開口部が十二指腸乳頭に向かう位置にならない場合は、胆管に内視鏡を挿入することができず、内視鏡検査・治療が行えないという問題点があった。
【0008】
また、近年の内視鏡検査では、例えば、図13(a)に示すように、一般的な内視鏡30(側視鏡)の所定のチャネルを通して、挿入部外径が3.5mm程度である特別に細径化された胆管挿入用の内視鏡(胆道鏡)31をカテーテルのようにして胆管内へ挿入し、胆管内を観察する方法も行われるようになった。この方法では、内視鏡31の構造が複雑で高コストとならざるを得ず、しかも、図13(b)に示す挿入部外径が6mm前後である汎用的な細径内視鏡20に比べて視野が狭く、画像についても高解像度が期待できなかった。このため、近年では、特別に細径化された胆道鏡31よりも視野が広くかつ画像解像度に優れる汎用的な細径内視鏡20の胆管への直接的挿入をサポート可能な補助具が待たれていた。
【0009】
そこで、本発明は、簡易な構成で、確実かつ容易に開口部を十二指腸乳頭に向くように配置可能な内視鏡挿入用補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的達成のため、本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、内視鏡の挿入部を被験者の管腔内に案内するための内視鏡挿入用補助具であって、可撓性を有し、規定の平面に置いた状態で所定の曲率を保持する、前記挿入部を挿通可能な孔が軸方向に延びる管状に成形された湾曲形状の筒状体と、前記筒状体の軸方向先端側の前記湾曲形状を規定する中心側の側壁に形成され、前記挿入部の先端部を導出する開口部と、を有する構成である。
【0011】
本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、筒状体が可撓性を有する材質によって湾曲形状に形成され、かつ、その湾曲形状を規定する中心側の側壁に開口部が設けられたシンプルな構造により実現できる。また、この内視鏡挿入用補助具では、筒状体の湾曲形状を人(ヒト)の胃内での収まりがよくしかも収まり姿勢が一定の姿勢に近いものとなるような形状とし、かつ、開口部の配設位置をヒトの上記収まり姿勢の筒状体に対する十二指腸乳頭の位置(収まり位置)を考慮して設定することで、内視鏡の挿入部に被せて十二指腸の奥まで案内する際に、筒状体の開口部を十二指腸乳頭に向き合う位置に配置し易いものとなる。
【0012】
本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、前記開口部は、前記筒状体の表面の前記規定の平面に対して前記筒状体の周方向に0°から90°の傾斜角度を有する位置に設けられる構成としてもよい。
【0013】
本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、胃内での筒状体の収まり位置を起点とする十二指腸乳頭の位置に合わせて筒状体の周方向における開口部の傾斜角度を設定することで、内視鏡の挿入部に被せて被験者の十二指腸の奥まで案内する過程で、筒状体の開口部が自然に十二指腸乳頭に確実に向き合う位置に配置することができる。また、その後、挿入部の先端部を開口部から導出させて十二指腸乳頭に簡単に挿入でき、そこからさらに総胆管内へと容易に挿入部を案内可能となる。
【0014】
本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、前記開口部は、前記筒状体の外周の直径(外径)をaとしたときに、前記筒状体の軸方向に1.0aから2.0aの長さを有し、前記外周から0.3aから0.7aの深さを有する構成であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、筒状体のサイズに対して大きなサイズで開口する開口部を有するため、内視鏡の挿入部を導出する操作、その先へ押し進める操作を確実かつ容易に行うことができる。
【0016】
本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、前記筒状体の前記開口部よりも先端側の周面に沿って設けられ、膨縮可能なバルーンを有する構成とすることもできる。
【0017】
この構成により、本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、開口部から導出した内視鏡の挿入部の先端部を膨張されたバルーンに突き当てて向きを変えることで、挿入部の先端部を十二指腸乳頭へと簡単に案内することができる。
【0018】
本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、前記バルーンは、前記筒状体の周面のうち前記開口部が形成されている側の反対側周面での膨張が規制される構成であってもよい。
【0019】
この構成により、本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、開口部を十二指腸乳頭に向けた状態でバルーンを膨張させることによって、開口部と十二指腸乳頭との間に内視鏡の挿入部の先端部を十二指腸乳頭へ向けて湾曲させるために必要な間隔をとることが容易になり、内視鏡の挿入部を十二指腸乳頭へとより簡単に案内することができる。
【0020】
本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、前記筒状体の表面に前記軸方向に沿って形成され、前記バルーンを膨縮させるための媒体を送る媒体流路と、前記媒体流路の開閉弁と、をさらに有するものであってもよい。
【0021】
この構成により、本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、施術者が手元で開閉弁を操作し、内視鏡の挿入部を開口部から導出させるタイミングに合わせて容易にバルーンを膨張させることができる。
【0022】
本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、前記内視鏡の挿入部に被せて前記挿入部を前記被験者の十二指腸乳頭を経て胆管に案内するために用いられ、前記筒状体は、前記湾曲形状がヒトの胃の内壁要部に収まり易い形状に形成され、前記開口部は、前記被験者の十二指腸が姿勢変動され、前記筒状体が前記被験者の前記胃内に収まった状態の時に、当該開口部が前記十二指腸乳頭に向き合う位置となるように前記筒状体の周方向の傾斜角度が設定されている構成とすることもできる。
【0023】
この構成により、本発明に係る内視鏡挿入用補助具は、筒状体の湾曲形状をヒトの胃内で収まりのよい形状とし、その収まり位置を起点とする十二指腸乳頭の位置に合わせて筒状体の湾曲形状内側の開口部の位置を設定することにより、内視鏡の挿入部に被せて被験者の十二指腸の奥まで案内する過程で、内視鏡のコシの力も利用して十二指腸を姿勢変動させ、開口部が自然に十二指腸乳頭に向き合う位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡易な構成で、確実かつ容易に開口部を十二指腸乳頭に向くように配置することができる内視鏡挿入用補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施の形態に係る細径内視鏡挿入用オーバーチューブの斜視図である。
図2図1の細径内視鏡挿入用オーバーチューブを裏返しに置いた状態を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る細径内視鏡挿入用オーバーチューブの水平に置いた状態を示す平面図である。
図4図3における細径内視鏡挿入用オーバーチューブのA-A線による断面図である。
図5図3における細径内視鏡挿入用オーバーチューブのB-B線による断面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る細径内視鏡挿入用オーバーチューブの側面図であり、(a)は図5の矢視C方向から見た図を示し、(b)は矢視D方向から見た図を示している。
図7図3の細径内視鏡挿入用オーバーチューブの矢視E方向から見た正面図であり、(a)はバルーン縮小時の状態を示し、(b)はバルーン膨張時の状態を示している。
図8】本発明の一実施の形態に係る細径内視鏡挿入用オーバーチューブのグリップの構成を示す側面図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る細径内視鏡挿入用オーバーチューブを用いた細径内視鏡の被験者の管腔内に対する挿入手順を示す概念図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る細径内視鏡挿入用オーバーチューブを用いた細径内視鏡の被験者の十二指腸から先の挿入手順を示す概念図であり、(a)は十二指腸の奥への挿入手順を示し、(b)は十二指腸乳頭から胆管への挿入手順を示している。
図11図10(a)におけるF-F線による断面を示す概念図である。
図12図10(b)における細径内視鏡挿入用オーバーチューブのバルーン膨張状態を示す拡大側面図である。
図13】種別の異なる内視鏡の構成を示す斜視図であり、(a)は特別に細径化された胆道鏡を内挿した内視鏡を示し、(b)は細径内視鏡を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1ないし図8は、本発明の一実施の形態に係る細径内視鏡挿入用オーバーチューブ1を示している。
【0028】
この細径内視鏡挿入用オーバーチューブ(以下、単にオーバーチューブと称する。)1は、本発明における内視鏡挿入用補助具に相当し、細径内視鏡20(図13(b)参照)の挿入部21を被験者の管腔内に案内するために用いられる。
【0029】
本実施の形態においては、オーバーチューブ1が側壁に設けられる横穴(側壁開口部12:図3参照)を有し、細径内視鏡20の挿入部21に被せて被験者の例えば口腔から十二指腸51の奥へと挿入することにより、自然に、オーバーチューブ1の横穴が十二指腸乳頭51a(図9図10参照)に向く位置となるようにしたものである。
【0030】
これを実現するため、本実施の形態では、オーバーチューブ1のチューブ本体(筒状体10:図3参照)が可撓性を有することを前提とし、該チューブ本体の形状をヒトの胃50(図9図10参照)内で収まりがよく、一定の姿勢に近い収まり姿勢となるような湾曲形状にするとともに、上記収まり姿勢でのヒトの胃50内でのチューブ本体の収まり位置を起点とする十二指腸乳頭51aの位置に合わせてチューブ本体の湾曲形状部分に対する横穴の配設位置および傾斜角度θ1を設定したものである。
【0031】
まず、オーバーチューブ1の構成について説明する。
【0032】
図1ないし図3に示すように、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、細径内視鏡20を挿通可能な筒状体10と、この筒状体10を操作するためのグリップ11と、を備えている。
【0033】
筒状体10は、例えば、可撓性を有する材質の材料を、細径内視鏡20を挿通可能な孔が軸方向に延びるチューブ状(管状)に成形して構成されるものであり、外周面および孔の内周面には潤滑コートが被覆されている。筒状体10は、例えば、図4に示すように、外径OD1が例えば10mm、内径ID1が例えば8mmのものである。なお、内径ID1は、筒状体10に細径内視鏡20を挿通させるために、5mm以上であることが好ましく、7mm以上であることがより好ましい。また、外径OD1は、筒状体10を十二指腸内に挿入するために、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましい。筒状体10の材質としては、ポリアミド樹脂やポリアミド系エラストマー、ポリウレタン、シリコーン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)等の高分子材料が挙げられる。筒状体10の材質は透明であることが望ましいが、これに限られるものではない。
【0034】
筒状体10は、利用者(施術者)の力が作用しない自然状態、例えば、図3においてX-Y平面として規定される水平面(本発明における規定の平面に相当する。)に載置した状態で所定の曲率でカーブする(曲線を描く)湾曲形状を保持している。特に、図3においては、上記湾曲形状が、一定の曲率でカーブする形状であって、直径D1の略円形の円弧に相当する形状(円弧形状)を有する筒状体10を例示している。ここで筒状体10の直径D1は、特に限定されないが、好ましくは250mm~450mmの範囲で設定され、例えば400mmである。また、上記直径D1=400mmとした場合の筒状体10の全長は、例えば、1256(π×D1=1256)mmよりも短いことが好ましく、例えば、1000mm程度の長さとしてもよい。このように、筒状体10は、可撓性を有し、水平面に置いた状態で所定の曲率を保持する湾曲形状をなしている。図3の例では、筒状体10の湾曲形状は、上述した略円形の円の中心Cから曲率半径が(D1)/2である円弧を描く形状として規定されている。
【0035】
筒状体10は、グリップ11が設けられる側を後端側、その反対側を先端側とすると、両端側で開口し、それぞれ、後端開口部10a、先端開口部10b(図1ないし図3参照)を形成している。後端開口部10aは細径内視鏡20の挿入部21を差し込む差込口として機能し、先端開口部10bは、細径内視鏡20の撮像領域を確保するための窓、および細径内視鏡20の挿入部21が突出する突出口として機能する。
【0036】
なお、グリップ11は、例えば、図8に示すように樹脂製の材料を円筒形状に成形したものであり、円筒形状の中心軸方向に筒状体10を固定状態に挿通して構成される。図8に示すグリップ11は、軸方向の両端部から中心に近づくにしたがって外周が漸次小さくなる鼓形状となっているが、これ以外の形状であってもよい。図8に例示するグリップ11は、両端部間の長さL1が例えば40mmであり、両端側の端面の直径D2が例えば32mmである。また、グリップ11は、両端部間を結ぶ側面が、軸方向に曲率半径R1の円弧に沿った面を形成している。一例として、曲率半径R1は、例えば40mmの長さであり、この場合の側面の長さL2は当該曲率半径R1によって決まることとなる。
【0037】
オーバーチューブ1において、筒状体10の先端側の側壁には、挿通されている細径内視鏡20の挿入部21の先端部22を導出するための側壁開口部12が設けられている。側壁開口部12は、本発明における開口部に相当する。
【0038】
図1ないし図3図5および図6に示すように、側壁開口部12は、筒状体10の軸方向先端側の上述した湾曲形状の内側の側面に形成される。より詳しくは、側壁開口部12は、筒状体10における上記湾曲形状を規定する中心C(図3参照)側の側壁に、当該筒状体10の軸方向に沿って形成されている。また、側壁開口部12は、例えば、図5に示すように、図3におけるオーバーチューブ1を載置した平面(X-Y平面:水平面)に対して0°(度)から90°傾斜した向きに開口している。
【0039】
特に、図5では、側壁開口部12が、筒状体10の表面の上記水平面に対して当該筒状体10の周方向に所定の傾斜角度θ1を有する位置に設けられている。図5に例示した筒状体10において、側壁開口部12は、水平面に対して傾斜角度θ1=50°で斜め下方を向いて開口する構造となっている。水平面に対して斜め下方を向いて側壁開口部12が形成された筒状体10を有するオーバーチューブ1を、裏返して用いる場合(例えば、図2参照)には、該側壁開口部12が上記水平面に対して斜め上方を向く状態となることはいうまでもない。
【0040】
筒状体10の側壁開口部12は、例えば、図6(a)および(b)に示すように、筒状体10の軸方向の長さL5が例えば15mmであり、筒状体10の外周面からの深さL6が例えば5mmであり、幅L7(筒状体10の軸方向と直交する方向の長さ)が例えば8mmに設定されている。このように、オーバーチューブ1の側壁開口部12は、筒状体10の外周の直径OD1(=10mm)をaとしたときに、筒状体10の軸方向に直径aの1.5倍の長さを有し、外周から直径aの1/2倍の深さを有している。図6(a)および(b)に示す側壁開口部12の形状はあくまでも一例であって、本実施の形態に係るオーバーチューブ1における側壁開口部12は、筒状体10の軸方向に1.0aから2.0aの長さを有し、筒状体10の外周から0.3aから0.7aの深さを有することが望ましい。
【0041】
図5および図6に示す側壁開口部12の形態は、筒状体10の湾曲形状がヒトの胃50の内壁要部の形状に対して収まり易い形状に形成されていることを前提とし、筒状体10のヒトの胃50内における収まり位置を起点とする十二指腸乳頭51aの位置(図9図10参照)に合わせて筒状体10の周方向における上記平面に対する傾斜角度θ1が設定されたものである。
【0042】
筒状体10は、図1ないし図3図6図7に示すように、側壁開口部12のさらに先端側の周面にバルーン13が設けられている。バルーン13は、筒状体10の周方向に一部区間を残して巻き付け固定され、該一部区間の反対側の周面で周方向外方に向けて選択的に膨張、収縮可能な構成となっている。すなわち、バルーン13は、筒状体10の周面のうち側壁開口部12が形成されている側の反対側の周面での膨張が規制される偏心膨張バルーンを構成している。このような偏心膨張バルーンについては、例えば、筒状体10の全周面に亘って設けたバルーン13のうち、上述した一部区間に相当する領域を膨張できないように抑え込む構造や、バルーン13の膜厚が、上述した一部区間に相当する領域で他の領域よりも厚くなっており膨張できないようになっている構造であってもよい。
【0043】
バルーン13について、筒状体10における膨張が規制された領域の周長に対応する角度θ2は、例えば、図7に示すように、θ2=50°とすることができる。このバルーン13は、筒状体10における角度θ2の周面位置での膨張が規制され、図7(b)に示すように、その反対側の周面側でのみ、例えば、上述した水平面に対して斜め下方25°((θ2)/2)の角度で筒状体10外方に向けて膨張することとなる。ここで、斜め下方25°の角度に向けて膨張するバルーン13は、筒状体10の周方向の領域について、上記水平面に対して傾斜角度θ1で設けられる側壁開口部12の幅方向の全領域を網羅するものとなる。
【0044】
バルーン13の材質は、特に限定されないが、ある程度の可撓性を有する材質であることが好ましく、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリイミドエラストマー、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等が使用できる。
【0045】
バルーン13は、上述した材質の材料を用いて、バルーン成形法として従来公知の各種の成形法、例えばブロー成形法等を適用して製造することができる。バルーン13の肉厚は、例えば、0.01~0.50mm程度とすることができるが、特に限定されない。バルーン13のサイズの一例としては、図6に示すように、収縮時における外径D3を例えば14mm、軸方向の長さL3を例えば20mmとすることができる。
【0046】
オーバーチューブ1はまた、筒状体10の表面に軸方向に沿って形成され、バルーン13を膨縮させるための媒体(例えば、液体や気体)を送る流体通路14を有している。流体通路14は、図4に示すように、外径OD2が例えば2mm、内径ID2が例えば1mmのサイズで形成される。
【0047】
図1ないし図3に示すように、筒状体10の後端側には、流体通路14の開閉を行う活栓15が設けられる。活栓15は、流体供給/吸入装置を介して流体貯留装置(いずれも図示せず)に連結されている。オーバーチューブ1は、活栓15を開/閉操作することにより、流体供給/吸入装置により流体貯留装置から流体通路14を通じて流体を供給してバルーン13を膨張させること(図7(b)参照)、あるいは、流体供給/吸入装置により流体通路14内の流体を流体貯留装置に戻すことでバルーン13を収縮させる(図7(a)に示すように膨らみがない状態に畳み込む)ことが可能となっている。バルーン13は、上記流体の供給により膨らんだ際には、側壁開口部12から導出される細径内視鏡20の挿入部21の先端部22を受け止めてその向きを変更する機能(図12参照)を果たす。流体通路14、活栓15は、それぞれ、本発明の媒体流路、開閉弁に相当する。
【0048】
次に、オーバーチューブ1を挿入用補助具として用いる内視鏡について説明する。オーバーチューブ1は、例えば、図13(b)に示す細径内視鏡20を被験者の管腔(総胆管53)内まで案内するために用いられる。細径内視鏡20は、最も一般的な内視鏡である内視鏡30(図13(a)参照)等に比べて挿入部外径が細い内視鏡であり、好ましくは4~8mmの範囲、より好ましくは5~7mmの範囲の挿入部外径を有する細径内視鏡20が使用に供される。
【0049】
細径内視鏡20は、図13(b)に示すように、挿入部21の先端部22における先端面22aに、観察光学系23、照明用光学系24、送気・送水ノズル25、鉗子口26が設けられている。細径内視鏡20において、挿入部21は内視鏡検査・治療に適合する所要の長さを有し、その後端側(先端部22とは反対の側)には、手元操作部(図示せず)が設けられている。挿入部21には、先端面22aと手元操作部との間に、手元操作部での各種操作ボタン等の操作によって観察光学系23を通して前方の画像を取得するための機構、照明用光学系24を駆動して前方を照らす機構、送気・送水ノズル25を介して送記・送水を行う機構、鉗子等の処置具を挿通するための鉗子口26等が収容されている。
【0050】
次に、本実施の形態に係るオーバーチューブ1の操作方法について図9図12を参照して説明する。ここでは、細径内視鏡20として経鼻内視鏡として市販されている内視鏡を用い、その挿入部21を被せたオーバーチューブ1、すなわち、筒状体10の軸方向に延びる孔内に挿入部21が挿通された状態のオーバーチューブ1を、被験者の胆管(総胆管53)内に案内する場合の操作方法について説明する。
【0051】
細径内視鏡20を用いた胆管を対象とする内視鏡検査・治療においてはまず、施術者(担当医)は、細径内視鏡20の挿入部21にオーバーチューブ1を被せ、この状態でオーバーチューブ1を挿入部21とともに被験者の口腔から挿入する。このときの被験者の姿勢は、伏臥位、左側臥位のいずれであってもよい。なお、オーバーチューブ1を挿入部21に被せる操作は、筒状体10の後端開口部10aから差し込んだ挿入部21をその先端が先端開口部10b近傍位置に達するまで、もしくは挿入部21の先端が先端開口部10bから突出するところまで押し進めることで行う。
【0052】
引き続き、施術者は、オーバーチューブ1を、図9に示すように、被験者の胃50内の十二指腸51の入口直前位置まで押し進める操作を行う。この操作は、オーバーチューブ1の先端開口部10bから観察光学系23を介して得られる撮像画像をモニタに表示しつつ進行位置を確認しながら行うことができる。このとき、オーバーチューブ1の筒状体10の先端側に設けられているバルーン13は収縮した状態(図7(a)参照)である。
【0053】
さらに施術者は、オーバーチューブ1を十二指腸51の奥へと押し進めるように操作する。この操作に際して、施術者は、観察光学系23によって得られる撮像画像をモニタに表示して挿入位置を確認しつつ押し進める一方で、X線透視画像も確認しながらオーバーチューブ1の側壁開口部12を十二指腸乳頭51aよりも十二指腸51の奥へと推し進め、しかる後、細径内視鏡20を、オーバーチューブ1の側壁開口部12の位置もしくはさらに後端側まで戻し、そこで得られる撮像画像から十二指腸乳頭51aの位置を確認する。
【0054】
施術者は、細径内視鏡20および/もしくはオーバーチューブ1にひねり等の操作を行うことで、十二指腸51を図9に示す姿勢から図10(a)に示す姿勢へと変動させる。
【0055】
このように十二指腸51を姿勢変動させることで、細径内視鏡20を胆管内(肝臓52側)へ挿入した時に、細径内視鏡20の手元部を押し込んだ際の押し込みの力がより先端側へと伝わりやすくなる。
【0056】
本実施形態に係るオーバーチューブ1を、被験者の十二指腸51の奥へ押し込み、該十二指腸51が図10(a)に示す姿勢となった状態で、筒状体10の側壁開口部12は十二指腸乳頭51aに対向する位置に配置されるようになる。すなわち、本実施の形態においては、筒状体10が、被験者の胃50の内壁の形状に対して収まりのよい湾曲形状(図9参照)に形成され、当該十二指腸51の姿勢変動により決まる十二指腸乳頭51aの位置に側壁開口部12が向くように、筒状体10の湾曲形状の内側における当該側壁開口部12の傾斜角度θ1(図5参照)が設定されたものである。
【0057】
図11は、図10(a)におけるF-F線による断面の様子を概念的に示したものであり、オーバーチューブ1の筒状体10の側壁開口部12が、被験者の十二指腸51の十二指腸乳頭51aに向いた位置に配置されている。
【0058】
筒状体10の側壁開口部12が十二指腸乳頭51aに対向する位置(図10(a)参照)となるまでオーバーチューブ1を挿入した状態で、施術者は、細径内視鏡20の挿入部21を、筒状体10の側壁開口部12から前方へと導出させて十二指腸乳頭51aから総胆管53の奥へとさらに挿入する操作を行う。
【0059】
この操作に先立ち、施術者は、図10(a)に示すオーバーチューブ1の挿入状態から、細径内視鏡20の挿入部21を、先端面22aが筒状体10の側壁開口部12の位置にくるまで引き戻す。
【0060】
次いで、施術者は、その位置で観察光学系23によって得られる撮像画像をモニタしつつ側壁開口部12が十二指腸乳頭51aに対向する位置にあることを確認したうえで、細径内視鏡20の挿入部21の先端部22を導出させる。挿入部21の先端部22の導出は、例えば、施術者が細径内視鏡20の手元操作部(図示せず)を操作することにより、挿入部21の先端部22を湾曲させることにより行うことができる。
【0061】
引き続き、施術者は、図10(b)に示すように、オーバーチューブ1の筒状体10の先端部に設けられるバルーン13を膨張させる操作を行う。その際、施術者は、活栓15を開操作することにより、流体供給/吸入装置により流体貯留装置から流体通路14を通じて流体を供給してバルーン13を膨張させる。
【0062】
図12は、図10(b)におけるオーバーチューブ1のバルーン13の膨張状態を示す拡大側面図である。図12に示すように、細径内視鏡20の挿入部21の先端部22を筒状体10の側壁開口部12から導出し、かつ、バルーン13を膨張させた状態で、さらに施術者は、当該細径内視鏡20をその前方(矢印の方向)に向けて押し進める操作を行う。
【0063】
その際、細径内視鏡20の挿入部21は、先端部22が膨張したバルーン13に突き当たって十二指腸乳頭51aの方向を向くように押し返される。これにより、施術者は、挿入部21を矢印の方向にさらに押し進める操作を継続することで、図10(b)に示すように、挿入部21の先端部22を、十二指腸乳頭51aに差し込みさらに総胆管53の奥へと押し進めることが可能となる。
【0064】
挿入部21の先端部22が総胆管53内に挿入された状態で、施術者は、照明用光学系24により総胆管53内を照射し、観察光学系23によって得られる撮像画像をモニタしつつ総胆管53の内部の状態を確認することによって、胆管の内視鏡検査を実行することができる。また、必要に応じて送気・送水ノズル25から気体もしくは液体を送り込み、かつ、鉗子等の処置具を鉗子口26から導出させることによって総胆管53の内視鏡治療を実行することができる。
【0065】
次に、作用について説明する。
【0066】
本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、筒状体10の形状が、例えば、ヒトの胃50の内壁のカーブに対して収まりのよい湾曲形状に形成されている。被験者の胃50に対するオーバーチューブ1の収まりがよいということは、オーバーチューブ1を、胃50に挿入された状態で、挿入開始時の姿勢等にかかわらず、胃50の内壁に沿った湾曲形状に維持し易いこと、つまり、胃50の中で一定の姿勢あるいはそれに近い姿勢に保ち易いことを意味する。
【0067】
本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、筒状体10の湾曲形状の内側に設ける側壁開口部12の位置と傾斜角度θ1が、筒状体10のヒトの胃50内における上述した一定の姿勢(あるいはそれに近い姿勢)での収まり位置を起点とする十二指腸乳頭51aの位置に合わせて設定されたものである。これにより、本実施の形態に係るオーバーチューブ1では、細径内視鏡20を被験者の管腔内に挿入するための補助具として用いる際、筒状体10の湾曲形状により被験者の胃50の内壁への収まりが良く、その先の十二指腸51内にさらに押し込んだ際に、自然に側壁開口部12が十二指腸乳頭51aに向くようになる。このため、その後、細径内視鏡20の挿入部21の十二指腸乳頭51aから総胆管53内への挿入を容易に行うことが可能となる。
【0068】
なお、上述の一実施の形態においては、細径内視鏡20の挿入部21を被験者の総胆管53内に挿入する内視鏡検査・治療の例を挙げているが、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、総肝管、膵管に挿入する場合についても同様に扱うことができるものである。このオーバーチューブ1は、上述した経鼻内視鏡の他、被験者の口から挿入可能なもの等の細径内視鏡20一般に適用可能である。
【0069】
また、上述の一実施の形態においては、オーバーチューブ1における筒状体10、グリップ11、側壁開口部12、バルーン13等の形状および寸法を明示しているが、これはあくまでも一例であって、他の種々の形状および寸法を採用し得ることはいうまでもない。
【0070】
上述したように、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、細径内視鏡20の挿入部21を被験者の管腔内に案内するための内視鏡挿入用補助具であって、可撓性を有し、規定の平面に置いた状態で所定の曲率を保持する、挿入部21を挿通可能な孔が軸方向に延びる管状に成形された湾曲形状の筒状体10と、筒状体10の軸方向先端側の湾曲形状を規定する中心C側の側壁に形成され、挿入部21の先端部22を導出する側壁開口部12と、を有する構成である。
【0071】
本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、筒状体10が可撓性を有する材質によって湾曲形状に形成され、かつ、その湾曲形状を規定する中心C側の側壁に側壁開口部12が設けられたシンプルな構造により実現できる。
【0072】
また、このオーバーチューブ1では、筒状体10の湾曲形状をヒトの胃50内での収まりがよくしかも収まり姿勢が一定の姿勢に近いものとなるような形状とし、かつ、側壁開口部12の配設位置をヒトの上記収まり姿勢の筒状体10に対する十二指腸乳頭51aの位置(収まり位置)を考慮して設定することで、細径内視鏡20の挿入部21に被せて十二指腸51の奥まで案内する際に、筒状体10の側壁開口部12を十二指腸乳頭51aに向き合う位置に配置し易いものとなる。
【0073】
また、本実施の形態に係るオーバーチューブ1において、側壁開口部12は、筒状体10の表面の上述した規定の平面に対して筒状体10の周方向に所定の傾斜角度θ1を有する位置に設けられる構成である。
【0074】
この構成により、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、胃50内での筒状体10の収まり位置を起点とする十二指腸乳頭51aの位置に合わせて筒状体10の周方向における側壁開口部12の傾斜角度θ1を設定することで、細径内視鏡20の挿入部21を被せて被験者の十二指腸51の奥まで案内する過程で、筒状体10の側壁開口部12が自然に十二指腸乳頭51aに確実に向き合う位置に配置することができる。また、その後、挿入部21の先端部22を側壁開口部12から導出させて十二指腸乳頭51aに簡単に挿入でき、そこからさらに総胆管53内へと容易に挿入部21を案内可能となる。
【0075】
また、本実施の形態に係るオーバーチューブ1において、側壁開口部12は、筒状体10の外周の直径をaとしたときに、筒状体10の軸方向に1.0aから2.0aの長さを有し、筒状体10の外周から0.3aから0.7aの深さを有する構成である。
【0076】
この構成により、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、筒状体10のサイズに対して大きなサイズで開口する側壁開口部12を有するため、細径内視鏡20の挿入部21を導出する操作、その先へ押し進める操作を確実かつ容易に行うことができる。
【0077】
また、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、筒状体10の側壁開口部12よりも先端側の周面に沿って設けられ、膨縮可能なバルーン13を有している。
【0078】
この構成により、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、側壁開口部12から導出した細径内視鏡20の挿入部21の先端部22を膨張されたバルーン13に突き当てて向きを変えることで、挿入部21の先端部22を十二指腸乳頭51aへと簡単に案内することができる。
【0079】
また、本実施の形態に係るオーバーチューブ1において、バルーン13は、筒状体10の周面のうち側壁開口部12が形成されている側の反対側の周面での膨張が規制される構成を有している。
【0080】
本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、バルーン13が筒状体10の側壁開口部12が形成されている側に対してのみ膨張する偏心膨張バルーン構造であり、これにより、側壁開口部12を十二指腸乳頭51aに向けた状態でバルーン13を膨張させることによって、側壁開口部12と十二指腸乳頭51aとの間に細径内視鏡20の挿入部21の先端部22を十二指腸乳頭51aへ向けて湾曲させるために必要な間隔をとることが容易になり、細径内視鏡20の挿入部21を十二指腸乳頭51aへとより簡単に案内することができる。
【0081】
また、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、筒状体10の表面に軸方向に沿って形成され、バルーン13を膨縮させるための流体を送る流体通路14と、流体通路14に連なる活栓15と、をさらに有して構成される。
【0082】
この構成により、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、施術者が手元で活栓15を操作し、細径内視鏡20の挿入部21を側壁開口部12から導出させるタイミングに合わせて容易にバルーン13を膨張させることができる。
【0083】
また、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、細径内視鏡20の挿入部21に被せて挿入部21を被験者の十二指腸乳頭51aを経て総胆管53に案内するために用いられ、筒状体10は、湾曲形状がヒトの胃50の内壁要部に収まり易い形状に形成され、側壁開口部12は、被験者の十二指腸51が姿勢変動され、筒状体10が被験者の胃50内に収まった状態の時に、当該側壁開口部12が十二指腸乳頭51aに向き合う位置となるように筒状体10の周方向の傾斜角度θ1が設定されている構成である。
【0084】
この構成により、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、筒状体10の湾曲形状をヒトの胃50内で収まりのよい形状とし、その収まり位置を起点とする十二指腸乳頭51aの位置に合わせて筒状体10の湾曲形状内側の側壁開口部12の位置を設定することにより、細径内視鏡20の挿入部21に被せて被験者の十二指腸51の奥まで案内する過程で、細径内視鏡20のコシの力も利用して十二指腸51を姿勢変動させ、側壁開口部12が自然に十二指腸乳頭51aに向き合う位置に配置することができる。
【0085】
加えて、本実施の形態に係るオーバーチューブ1は、施術者による操作が簡単でありながら、側壁開口部12が十二指腸乳頭51aに確実に向くように配置可能であり、施術の難易度を低く抑えることができる。
【0086】
また、このオーバーチューブ1は、細径内視鏡20を総胆管53に繰り返し抜き差しすることが容易となり、複数回の胆管挿抜性に優れる。
【0087】
また、このオーバーチューブ1は、挿入部外径が3.5mm程度である特別に細径化された胆道鏡31を用いる場合に比べて、筒状体10の内径を比較的大きな径とし、側壁開口部12の大きさも大きく設定することができる。これにより、比較的大径の鉗子口26を有する細径内視鏡20の案内に適したものとなる。
【0088】
また、このオーバーチューブ1は、特別に細径化された胆道鏡31と比べて解像度の高いカメラを搭載する細径内視鏡20の総胆管53への案内が簡単に行えるため、観察光学系23を介して得られる撮像画像の画像解像度を高めることができる。
【0089】
また、このオーバーチューブ1は、広く普及している細径内視鏡20の総胆管53への案内を可能としているため、特別に細径化された胆道鏡31を用いる場合に比べて低コスト化が図れる。
【0090】
以上説明したように、本発明の内視鏡挿入用補助具は、簡易な構成で、確実かつ容易に開口部を十二指腸乳頭に向くように配置することができるという作用効果を奏し、細径内視鏡の案内に用いる内視鏡挿入用補助具全般に有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 細径内視鏡挿入用オーバーチューブ(内視鏡挿入用補助具)
10 筒状体
12 側壁開口部(開口部)
13 バルーン
14 流体通路(媒体流路)
15 活栓(開閉弁)
20 細径内視鏡(内視鏡)
21 挿入部
22 挿入部の先端部
50 胃
51 十二指腸
51a 十二指腸乳頭
52 肝臓
53 総胆管(胆管、管腔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13