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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20241203BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20241203BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20241203BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L29/80 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020073936
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2020184618
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019086053
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】堀切 文正
(72)【発明者】
【氏名】福原 昇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 威友
(72)【発明者】
【氏名】渡久地 政周
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195609(JP,A)
【文献】特表2008-527717(JP,A)
【文献】特開2017-195383(JP,A)
【文献】特開2012-178424(JP,A)
【文献】特表2015-532009(JP,A)
【文献】特開平07-161683(JP,A)
【文献】国際公開第2007/105281(WO,A1)
【文献】特開2013-149914(JP,A)
【文献】特開2011-077122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、III族窒化物で構成された第1層と、前記第1層上に形成され前記第1層を構成するIII族窒化物とは組成の異なるIII族窒化物で構成された第2層と、を有するエッチング対象物を準備する工程と、
前記エッチング対象物が、ペルオキソ二硫酸イオンを含むエッチング液に浸漬された状態で、前記エッチング液を介して前記第2層に光を照射し、前記第2層を構成するIII族窒化物中にホールを生成させ、前記第2層をエッチングする工程と、
を有し、
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層のエッチングの開始時点における前記エッチング液を酸性とすることで、前記第2層がエッチングされる期間中に前記エッチング液が酸性である状態を維持し、
前記第1層は、高電子移動度トランジスタのチャネル層であり、
前記第2層は、高電子移動度トランジスタの障壁層であり、
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層が途中の深さまでエッチングされた凹部を、前記凹部の底の算術平均粗さRaが10nm以下となるように形成する、
構造体の製造方法。
【請求項2】
前記エッチング対象物は、前記障壁層上に形成されたキャップ層をさらに有する、請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第2層をエッチングする工程では、前記高電子移動度トランジスタのゲートリセスを形成する、請求項1または2に記載の構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第2層は、窒化アルミニウムガリウムで構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第1層は、窒化ガリウムまたは窒化アルミニウムガリウムで構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層のエッチングを自動的に停止させる、請求項1~のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項7】
少なくとも、III族窒化物で構成された第1層と、前記第1層上に形成され前記第1層を構成するIII族窒化物とは組成の異なるIII族窒化物で構成された第2層と、を有するエッチング対象物を準備する工程と、
前記エッチング対象物が、ペルオキソ二硫酸イオンを含むエッチング液に浸漬された状態で、前記エッチング液を介して前記第2層に光を照射し、前記第2層を構成するIII族窒化物中にホールを生成させ、前記第2層をエッチングする工程と、
を有し、
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層のエッチングの開始時点における前記エッチング液を酸性とすることで、前記第2層がエッチングされる期間中に前記エッチング液が酸性である状態を維持し、
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層が途中の深さまでエッチングされた凹部を、前記凹部の底の算術平均粗さRaが10nm以下となるように形成する、
構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物は、発光素子、トランジスタ等の半導体装置を製造するための材料として用いられている。
【0003】
GaN等のIII族窒化物に各種構造を形成するためのエッチング技術として、光電気化学(PEC)エッチングが提案されている(例えば非特許文献1参照)。PECエッチングは、一般的なドライエッチングと比べてダメージが少ないウェットエッチングであり、また、中性粒子ビームエッチング(例えば非特許文献2参照)、アトミックレイヤーエッチング(例えば非特許文献3参照)等のダメージの少ない特殊なドライエッチングと比べて装置が簡便である点で好ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】J. Murata et al., “Photo-electrochemical etching of free-standing GaN wafer surfaces grown by hydride vapor phase epitaxy”, Electrochimica Acta 171 (2015) 89-95
【文献】S. Samukawa, JJAP, 45(2006)2395.
【文献】T. Faraz, ECS J. Solid Stat. Scie.&Technol., 4, N5023 (2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、III族窒化物に対するPECエッチングにおいて、エッチング条件の変動を抑制することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
少なくとも、III族窒化物で構成された第1層と、前記第1層上に形成され前記第1層を構成するIII族窒化物とは組成の異なるIII族窒化物で構成された第2層と、を有するエッチング対象物を準備する工程と、
前記エッチング対象物が、ペルオキソ二硫酸イオンを含むエッチング液に浸漬された状態で、前記エッチング液を介して前記第2層に光を照射し、前記第2層を構成するIII族窒化物中にホールを生成させ、前記第2層をエッチングする工程と、
を有し、
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層のエッチングの開始時点における前記エッチング液を酸性とすることで、前記第2層がエッチングされる期間中に前記エッチング液が酸性である状態を維持する、構造体の製造方法
が提供される。
【発明の効果】
【0007】
III族窒化物に対するPECエッチングにおいて、エッチング条件の変動を抑制することができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、本発明の第1実施形態によるエッチング対象物を例示する概略断面図であり、図1(b)は、第1実施形態によるPECエッチング工程を例示する、PECエッチング装置の概略図である。
図2図2(a)は、第1実験例の結果を示すグラフであり、図2(b)は、第2実験例の結果を示すグラフである。
図3図3(a)および図3(b)は、第3実験例の結果を示すグラフである。
図4図4(a)は、第4実験例の結果を示すレーザ顕微鏡像であり、図4(b)は、第4実験例の結果を示すSEM像である。
図5図5(a)は、第4実験例の結果を示すAFM測定の各種データであり、図5(b)は、第4実験例の結果を示すAFM像である。
図6図6は、第1実施形態の変形例による前処理工程を例示する、PECエッチング装置の概略図である。
図7図7(a)は、第2実施形態によるHEMTを例示する概略断面図であり、図7(b)は、第2実施形態のHEMTの材料として用いられるウエハを例示する概略断面図である。
図8図8(a)は、第2実施形態の処理対象物を例示する概略断面図であり、図8(b)は、PECエッチング工程を例示する、PECエッチング装置の概略断面図である。
図9図9(a)は、第5実験例におけるエッチング時間とエッチング深さとの関係性を示すグラフであり、図9(b)は、第5実験例で形成された凹部を平面視した光学顕微鏡写真、および、第5実験例で形成された凹部の断面形状の模式図である。
図10図10(a)は、第5実験例で形成された凹部についてのAFM測定による各種データであり、図10(b)は、第5実験例で形成された凹部のAFM像である。
図11図11は、第6実験例で形成された凹部を平面視した光学顕微鏡写真、および、第6実験例で形成された凹部の断面形状の模式図である。
図12図12(a)は、第6実験例で形成された凹部についてのAFM測定による各種データであり、図12(b)は、第6実験例で形成された凹部のAFM像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の第1実施形態>
本発明の第1実施形態による、構造体の製造方法について説明する。本実施形態による製造方法は、当該構造体の材料となるエッチング対象物10(以下、ウエハ10ともいう)に対する、光電気化学(PEC)エッチングを用いたエッチング工程(以下、PECエッチング工程ともいう)を有する。PECエッチングを、以下単に、エッチングともいう。
【0010】
図1(a)は、PECエッチングされるウエハ10を例示する概略断面図である。まず、図1(a)に示すように、ウエハ10を準備する。ウエハ10は、少なくとも表面20(エッチングされるべき被エッチング面20)が、III族窒化物で構成されている。
【0011】
ウエハ10の構造は、特に限定されない。ウエハ10の構造の一例(後述の実験例に用いたもの)として、n型窒化ガリウム(GaN)基板11と、GaN基板11上にエピタキシャル成長されたn型GaN層12と、の積層構造が挙げられる。n型GaN層12は、例えば、n型不純物濃度が5×1016/cmで、厚さが3μmである。
【0012】
PECエッチング処理の対象物、つまり、エッチング液201に浸漬される(接触する)対象物を、処理対象物100と称する。処理対象物100は、少なくともウエハ10を有し、さらに、PECエッチング処理に要する部材として、例えばマスク50を有してよい。マスク50は、ウエハ10の被エッチング面20上に、エッチングされる領域21が開口したパターンで、形成される。マスク50の材料は、エッチング液201に耐えてマスクとして機能する材料であれば特に限定されず、例えばレジストであってよく、また例えば酸化シリコンであってよく、また例えば窒化シリコンであってよく、また例えばチタン等の金属であってよい。エッチングされる領域21の形状、広さ、エッチングされる深さ、等は、必要に応じ適宜選択されてよい。処理対象物100は、最終的な構造体を得るための、中間段階の構造体(中間構造体)として捉えることができる。
【0013】
図1(b)は、PECエッチング工程を示す、PECエッチング装置200の概略断面図である。PECエッチング装置200は、エッチング液201を収容する容器210と、紫外(UV)光221を出射する光源220と、を有する。PECエッチング装置200は、ウエハ10を所定の高さに載置する支持台240を備えてもよい。
【0014】
PECエッチング工程では、処理対象物100が(つまりウエハ10が)、エッチング液201に浸漬された状態で、被エッチング面20に、エッチング液201を介して、UV光221を照射することで、被エッチング面20を構成するIII族窒化物をエッチングする。エッチング液201、UV光221、および、PECエッチングの機構の詳細については、後述する。
【0015】
PECエッチング装置200は、好ましくはさらに、pHメータ230を有する。PECエッチング工程は、pHメータ230により、エッチング液201のpHが適正な範囲内の値であるかどうか、測定しながら行うことが好ましい。この際、pHメータ230のプローブ231の、UV光221による影が、被エッチング面20に映らない位置に、プローブ231を配置することが好ましい。
【0016】
なお、本実施形態による、構造体の製造方法は、必要に応じ、その他の工程として、電極形成、保護膜形成等の工程を有してもよい。
【0017】
次に、エッチング液201、UV光221、および、PECエッチングの機構の詳細について説明する。エッチングされるIII族窒化物として、GaNを例示する。
【0018】
エッチング液201としては、被エッチング面20を構成するIII族窒化物が含有するIII族元素の酸化物の生成に用いられる酸素を含み、さらに、電子を受け取る酸化剤としてペルオキソ二硫酸イオン(S 2-)を含む、エッチング液201が用いられる。また、本実施形態におけるエッチング液201としては、被エッチング面20を構成するIII族窒化物のエッチングの開始時点において、酸性であるエッチング液201が用いられる。
【0019】
エッチング液201の第1例としては、水酸化カリウム(KOH)水溶液とペルオキソ二硫酸カリウム(K)水溶液とを混合したものが挙げられる。このようなエッチング液201は、例えば、0.001MのKOH水溶液と、0.05MのK水溶液と、を1:1で混合することで調製される。なお、KOH水溶液の濃度、K水溶液の濃度、および、これらの水溶液の混合比率は、必要に応じ適宜調整されてよい。
【0020】
単体のKOH水溶液は、アルカリ性であり、単体のK水溶液は、酸性である。したがって、KOH水溶液の濃度が過度に高い(例えば0.01Mとする)と、KOH水溶液とK水溶液とが混合されたエッチング液201としては、アルカリ性になってしまう(このような、アルカリ性のエッチング液201を、以下、参考例のエッチング液201ともいう)。第1例のエッチング液201は、KOH水溶液の濃度を適度に低くすることで、KOH水溶液とK水溶液とが混合されたエッチング液201を、酸性としている。
【0021】
第1例のエッチング液201を用いる場合のPECエッチング機構について説明する。ウエハ10に波長365nm以下のUV光221が照射されることによって、被エッチング面20を構成するGaN中に、ホールと電子とが対で生成される。生成されたホールによりGaNがGa3+とNとに分解され(化1)、さらに、Ga3+が水酸化物イオン(OH)によって酸化されることで酸化ガリウム(Ga)が生成する(化2)。そして、生成されたGaが、酸(またはアルカリ)に溶解される。このようにして、GaNのPECエッチングが行われる。なお、生成されたホールが水と反応して、水が分解されることで、酸素が発生する(化3)。
【化1】
【化2】
【化3】
【0022】
また、Kが水に溶解することでペルオキソ二硫酸イオン(S 2-)が生成し(化4)、S 2-にUV光221が照射されることで硫酸イオンラジカル(SO -*ラジカル)が生成する(化5)。ホールと対で生成された電子が、SO -*ラジカルとともに水と反応して、水が分解されることで、水素が発生する(化6)。この際に、硫酸イオン(SO 2-)が生成することで、エッチング液201の酸性が強くなる。このように、本実施形態のPECエッチングでは、SO -*ラジカルを用いることで、GaN中にホールと対で生成された電子を消費させることができるため、PECエッチングを良好に進行させることができる。そして、PECエッチングが進行するにつれ、エッチング液201の酸性が強くなっていく(pHが低下していく)。
【化4】
【化5】
【化6】
【0023】
エッチング液201の第2例としては、リン酸(HPO)水溶液とペルオキソ二硫酸カリウム(K)水溶液とを混合したものが挙げられる。このようなエッチング液201は、例えば、0.01MのHPO水溶液と、0.05MのK水溶液と、を1:1で混合することで調製される。なお、HPO水溶液の濃度、K水溶液の濃度、および、これらの水溶液の混合比率は、必要に応じ適宜調整されてよい。
【0024】
PO水溶液およびK水溶液は、ともに酸性である。したがって、第2例として挙げる、HPO水溶液とK水溶液とが混合されたエッチング液は、任意の混合比率で酸性である。
【0025】
第2例のエッチング液201を用いる場合のPECエッチング機構は、第1例のエッチング液201を用いる場合について説明した(化1)~(化3)が、(化7)に置き換わったものと推測される。つまり、GaNと、UV光221の照射で生成されたホールと、水と、が反応することで、Gaと、水素イオン(H)と、Nと、が生成する(化7)。そして、生成されたGaが、酸に溶解される。このようにして、GaNのPECエッチングが行われる。なお、(化4)~(化6)に示したような、ホールと対で生成された電子がS 2-により消費される機構は、第1例のエッチング液201を用いる場合と同様である。
【化7】
【0026】
(化5)に示すように、S 2-からSO -*ラジカルを生成する手法としては、UV光221の照射、および、加熱の少なくとも一方を用いることができる。UV光221の照射を用いる場合、S 2-による光吸収を大きくしてSO -*ラジカルを効率的に生成させるために、UV光221の波長を、200nm以上310nm未満とすることが好ましい。つまり、UV光221の照射により、ウエハ10においてIII族窒化物中にホールを生成させるとともに、エッチング液201においてS 2-からSO -*ラジカルを生成させることを、効率的に行う観点からは、UV光221の波長を、200nm以上310nm未満とすることが好ましい。S 2-からSO -*ラジカルを生成することを、加熱で行う場合は、UV光221の波長を、(365nm以下で)310nm以上としてもよい。
【0027】
UV光221の照射によりS 2-からSO -*ラジカルを生成させる場合、ウエハ10の被エッチング面20からエッチング液201の上面202までの距離Lは、例えば、1mm以上100mm以下とすることが好ましく、5mm以上100mm以下とすることがより好ましい。距離Lが、例えば1mm未満と過度に短いと、ウエハ10上方のエッチング液201において生成されるSO -*ラジカルの量が、距離Lの変動により不安定になる可能性がある。また、距離Lが、例えば100mm超と過度に長いと、ウエハ10上方のエッチング液201において、PECエッチングに寄与しない、無駄に多くのSO -*ラジカルが生成されるため、エッチング液201の利用効率が低下する。
【0028】
なお、S 2-を含むとともに、エッチング開始時点で酸性であるエッチング液201は、上述の第1例および第2例のものに限定されない。このようなエッチング液201として、例えば、K水溶液のみを用いることも可能である。この場合、K水溶液の濃度は、例えば0.025Mとすればよい。
【0029】
なお、PECエッチングは、例示したGaN以外のIII族窒化物に対しても行うことができる。III族窒化物が含有するIII族元素は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)およびインジウム(In)のうちの少なくとも1つであってよい。III族窒化物におけるAl成分またはIn成分に対するPECエッチングの考え方は、Ga成分について(化1)および(化2)、または、(化7)を参照して説明した考え方と同様である。つまり、UV光221の照射によりホールを生成させることで、Alの酸化物またはInの酸化物を生成させ、これらの酸化物を酸(またはアルカリ)に溶解させることで、PECエッチングを行うことができる。UV光221の(光221の)ピーク波長は、エッチングの対象とするIII族窒化物の組成に応じて、適宜変更されてよい。GaNのPECエッチングを基準として、Alを含有する場合は、より短波長の光を用いればよく、Inを含有する場合は、より長波長の光も利用可能となる。なお、PECエッチングされるIII族窒化物には、必要に応じて、導電型決定不純物等の不純物が添加されていてよい。
【0030】
本実施形態によるPECエッチングでは、エッチング液が酸化剤として含むS 2-により(より具体的にはS 2-から生成されたSO -*ラジカルにより)、III族窒化物に対する光照射でホールとともに生成された電子を、消費させることで、PECエッチングを進行させることができる。つまり、処理対象物100からエッチング液201中に直接的に(外部の配線を介さずに)電子を放出する態様で、PECエッチングを行うことができる。
【0031】
これに対し、このような酸化剤を用いないPECエッチングの技術として、III族窒化物中に生成された電子を、エッチング液の外部に延在する配線を介して、エッチング液に浸漬されたカソード電極からエッチング液中に放出する態様のPECエッチングがある。このようなカソード電極を用いる有電極PECエッチングに対し、本実施形態によるPECエッチングは、このようなカソード電極を設ける必要のない、無電極(コンタクトレス)PECエッチングである。
【0032】
次に、本実施形態のPECエッチングに係る第1~第4実験例について説明する。図2(a)および図2(b)は、それぞれ、第1実験例および第2実験例の結果を示すグラフである。また、図2(a)および図2(b)には、それぞれ、参考実験例の結果も示す。
【0033】
第1実験例では、第1例のエッチング液201として説明した、0.001MのKOH水溶液と、0.05MのK水溶液と、が1:1で混合されたエッチング液201を用いた。第2実験例では、第2例のエッチング液201として説明した、0.01MのHPO水溶液と、0.05MのK水溶液と、が1:1で混合されたエッチング液201を用いた。参考実験例では、参考例のエッチング液201として説明した、0.01MのKOH水溶液と、0.05MのK水溶液と、が1:1で混合されたエッチング液201を用いた。
【0034】
本実験例では、エッチング液201にUV光221を照射することにより、エッチング液のpHが時間的にどのように変化するかを測定した。ピーク波長が260nmのUV光221を照射した。なお、本実験例では、エッチング液中にウエハ10を浸漬してPECエッチングを行うことはしておらず、エッチング液のpH変化のみを測定しているが、PECエッチングを行う場合でも、エッチング液のpH変化はほぼ同様と考えられる。
【0035】
図2(a)および図2(b)において、横軸は、UV光221の照射開始からの時間を示し、縦軸は、エッチング液201のpHを示す。横軸の時間は、PECエッチングの開始からの時間と捉えることができる。
【0036】
図2(a)に示すように、参考実験例において、参考例のエッチング液201は、エッチング開始時点において、pHが12程度であり、アルカリ性である。上述のように、UV光221の照射により、エッチング液201中のSO 2-が増加するため、エッチング時間が長くなるほど、エッチング液201のpHは低下していく。参考例のエッチング液201は、エッチング時間が40分のときに、pHが7の中性となり、それ以降は、酸性となる。
【0037】
PECエッチングは、生成されたGaが、アルカリまたは酸に溶解されることで進行する。したがって、参考実験例では、エッチング液201が中性近傍の期間に、エッチングが進行しなくなる。また、参考実験例では、エッチング液201のpHの時間的な変動が大きいため、Gaの溶解条件の時間的な変動が大きい。したがって、PECエッチングの時間的な均一性を保つことが難しい。
【0038】
図2(a)に示すように、第1実験例において、第1例のエッチング液201は、エッチング開始時点において、pHが4.4であり、酸性である。したがって、第1例のエッチング液201は、エッチング開始時点からずっと、酸性である。このため、第1例のエッチング液201を用いることで、エッチング液201が中性となることに起因してPECエッチングが進行しなくなることを、生じないようにできる。また、参考例のエッチング液201を用いる場合と比べて、エッチング期間中のpHの変動幅を小さくすることができる。
【0039】
図2(b)に示すように、第2実験例において、第2例のエッチング液201は、エッチング開始時点において、pHが2.3であり、酸性である。したがって、第2例のエッチング液201は、第1例のエッチング液201と同様に、エッチング開始時点からずっと、酸性である。このため、第2例のエッチング液201を用いることで、第1例のエッチング液201と同様に、エッチング液201が中性となることに起因してPECエッチングが進行しなくなることを、生じないようにできるとともに、参考例のエッチング液201を用いる場合と比べて、エッチング期間中のpHの変動幅を小さくすることができる。
【0040】
このように、本実施形態では、第1例および第2例のような、エッチング開始時点において酸性のエッチング液201を用いることで、エッチング期間の全期間にわたって、エッチング液201が酸性である状態を維持する。これにより、エッチング液201が中性になることに起因してPECエッチングが進行しなくなることを、抑制できる。また、参考例のエッチング液201を用いる場合のように、エッチング期間中にエッチング液201がアルカリ性から酸性に変化する態様と比べて、エッチング期間中のpHの変動幅を小さくすることができる。
【0041】
さらに、エッチング液201が酸性である状態が維持されることは、マスク50としてレジストマスクの使用を容易にする観点からも好ましい。これに対し、エッチング液201がアルカリ性であると、レジストが剥離しやすいため、マスク50としてレジストマスクを使用することが難しい。なお、酸性のエッチング液201を用いる場合に、必要に応じて、レジスト以外のマスク材料(酸化シリコン、窒化シリコン等)を用いてもよい。
【0042】
なお、参考例のエッチング液201がアルカリ性である状態を維持するよう、中性に達する前に、エッチング液201を交換し続けることで、PECエッチングが進行しなくなることを抑制する態様も考えられる。しかし、この態様では、エッチング液201を交換する手間が煩雑である。第1例および第2例のエッチング液201を用いることで、このようなエッチング液201の交換をせずとも、長時間(例えば、好ましくは30分、より好ましくは60分、さらに好ましくは90分以上、さらに好ましくは120分以上)のPECエッチングを、エッチング液201の交換をせずに、つまり同一のエッチング液201を用いて、行うことが容易になる。
【0043】
また、エッチング液201を交換しないことで、エッチング液201が攪拌されることも抑制できる。エッチング液201の攪拌を行わないことで、被エッチング面20へのS 2-、SO -*ラジカル等の供給状態の、時間的な均一性を高めることができるため、エッチングされた面の平坦性を高めること(面内均一性を高めること)が容易になる。このことも、長時間のエッチングを行う際の利点となる。なお、本実施形態において、エッチング液201を静止させることは必須でなく、必要に応じ、(酸性である)エッチング液201を流しながらPECエッチングを行ってもよい。エッチング液201を流す場合、同じエッチング液201を循環させる(エッチング液201を交換しない)態様であってもよいし、新しいエッチング液201を連続的に供給する(エッチング液201を交換する)態様であってもよい。
【0044】
第2例のエッチング液201を用いることで、さらに、以下のような効果を得ることもできる。第2例のエッチング液201は、0超7未満の酸解離定数pKを有する弱酸の一例として、HPOを含む。第2例のエッチング液201を用いることで、pHが0超7未満の酸性領域において弱酸の緩衝作用を利用できるため、エッチング期間中のpHの低下幅を小さくすること、換言すると、エッチング期間中のpHを一定に近づけること、が容易になる。HPOの第1酸解離定数pKa1は、2.12である。
【0045】
したがって、第2例のエッチング液201を用いることで、第1例のエッチング液201を用いる態様と比べて、さらに、エッチング液201のpHの時間的な変動を小さくできるため、Gaの溶解条件の時間的な変動を小さくできる。したがって、PECエッチングの時間的な均一性を保つことが、より容易になる。
【0046】
エッチング液201のpHの時間的な変動を小さくする観点から、一つの目安として、以下のようにいうことができる。エッチング終了時点におけるエッチング液201のpHの、エッチング開始時点におけるエッチング液201のpHに対する低下幅は、例えば、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下にするとよい。
【0047】
また、当該観点から、他の目安として、以下のようにいうことができる。エッチング液201に含まれるS 2-がすべてSO 2-に変化した場合におけるエッチング液201のpHの、エッチング開始時点におけるエッチング液201のpHに対する低下幅は、例えば、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下であるとよい。
【0048】
第1例および第2例のエッチング液201において、S 2-がすべてSO 2-に変化した場合におけるエッチング液201のpHは(つまり、エッチング時間を長くしていった場合の極限的なpHは)、1.5程度である。
【0049】
第2例のエッチング液201のように、弱酸を含む場合、以下のような条件を選択することが、より好ましい。エッチング開始時点におけるエッチング液201のpHの、弱酸の酸解離定数pKに対する差は、例えば、好ましくはプラスマイナス1以下、より好ましくはプラスマイナス0.5以下であるとよい。弱酸の緩衝作用は、当該弱酸の酸解離定数pKの近傍で大きい。このため、エッチング開始時点におけるエッチング液201のpHの、弱酸の酸解離定数pKに対する差を小さくすることで、当該弱酸の緩衝作用を利用することが容易になる。
【0050】
また、エッチング開始時点におけるエッチング液201のpHは、弱酸の酸解離定数pKよりも高いことが好ましい。これにより、PECエッチングが進行するにつれて、エッチング液201のpHが低下していき、当該弱酸の酸解離定数pKに近づいていくため、当該弱酸の緩衝作用をより長時間利用することが容易になる。
【0051】
また、エッチング液201に含まれる弱酸の酸解離定数pKは、エッチング液201に含まれるS 2-がすべてSO 2-に変化した場合におけるエッチング液201のpH(以下、極限的なpHともいう)よりも高いことが好ましい。これにより、エッチング液201のpHが極限的なpHに近づいていく途中で、弱酸の緩衝作用を利用することができる。
【0052】
図3(a)および図3(b)は、第3実験例の結果を示すグラフであり、各種条件でのPECエッチングにおける、エッチング時間とエッチング深さとの関係を示す。グラフの傾きが、エッチングレートを表す。
【0053】
図3(a)には、酸化シリコン(SiO)によるマスク50を形成した処理対象物100に対し参考例のエッチング液201でエッチングを行った結果(四角のプロット)と、酸化シリコンによるマスク50を形成した処理対象物100に対し第2例のエッチング液201でエッチングを行った結果(三角のプロット)と、レジストによるマスク50を形成した処理対象物100に対し第2例のエッチング液201でエッチングを行った結果(円形のプロット)と、を示す。UV光221の波長(λUVC)は260nmとし、照射強度(I)は4mW/cmとした。被エッチング面20からエッチング液201の上面202までの距離L(delectrolyte)は、5mmとした。
【0054】
参考例のエッチング液201を用いる場合と、第2例のエッチング液201を用いる場合とにおいて、概ね同程度のエッチングレートで、PECエッチングが行えることがわかる。また、第2例のエッチング液201を用いる場合、マスク50が酸化シリコンで形成されていても、レジストで形成されていても、概ね同程度のエッチングレートで、PECエッチングが行えることがわかる。なお、参考例のエッチング液201はアルカリ性であるので、レジストによるマスク50を用いることは困難である。
【0055】
図3(b)は、レジストによるマスク50を形成した処理対象物100に対し第2例のエッチング液201でエッチングを行った、他の結果を示す。図3(a)に示した結果と同様に、第2例のエッチング液201を用いることで、レジストマスクを利用したPECエッチングが良好に行えることがわかる。
【0056】
次に、第4実験例について説明する。図4(a)は、幅10μmのラインアンドスペースパターンのレジストマスクを形成して、第2例の(リン酸を用いた)エッチング液201でPECエッチングを行った結果を示すレーザ顕微鏡像である。レーザ顕微鏡像の暗い領域が、エッチングされた領域を示す。
【0057】
図4(b)は、図4(a)に示した試料の、エッチングされた領域の走査電子顕微鏡(SEM)像である。エッチングされた領域の、5μm角の領域における二乗平均平方根(RMS)表面粗さは、2.76nmであった。
【0058】
図5(a)は、図4(a)に示した試料の、原子間力顕微鏡(AFM)測定による各種データである。図5(b)は、レジストマスクを形成して第2例の(リン酸を用いた)エッチング液201によりエッチングを行った他の試料のAFM像である。
【0059】
これらの実験例により、本願発明者は、電子を受け取る酸化剤としてS 2-を含むとともに、エッチング開始時点から酸性であるエッチング液201を用いて、PECエッチングが可能であるという知見を得た。また、このようなエッチング液201を調製するために、例えば、弱酸であるリン酸を好ましく用いることができるとの知見を得た。さらに、本願発明者は、このようなエッチング液201を用いることで、レジストマスクを用いたPECエッチングを良好に行うことが可能であるという知見も得た。このようなエッチング液201を用いてPECエッチングを行うこと、そして、当該PECエッチングにレジストマスクを用いることは、これまで提案されておらず、本願発明者が初めて提案するものである。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、エッチング開始時点から酸性であるエッチング液201を用いてPECエッチングを行うことで、エッチング開始時点にアルカリ性であるエッチング液201を用いてPECエッチングを行う場合と比べて、エッチング条件の時間的変動が抑制されたPECエッチングを行うことができる。また、このような酸性のエッチング液201を用いることで、マスク50としてレジストマスクを利用することが容易になる。
【0061】
<第1実施形態の変形例>
次に、上述の第1実施形態の変形例について説明する。上述の実施形態では、第1例のエッチング液201を用いることで(図2(a))、第2例のエッチング液201を用いる場合(図2(b))と比べて、エッチング開始時点のpHが高くなる態様、つまり、エッチング期間におけるpHの変動幅が大きくなる態様を例示した。本変形例では、第1例のエッチング液201を用いても、エッチング開始時点におけるpHを低くできる態様、つまり、エッチング期間におけるpHの変動幅を小さくできる態様について例示する。
【0062】
図6は、本変形例で追加される前処理工程を例示する、PECエッチング装置200の概略図である。当該前処理工程は、ウエハ10をエッチングする工程(図1(b))の前に、ウエハ10がエッチング液201に浸漬されていない状態において、エッチング液201にUV光221を照射することで、S 2-の一部をSO 2-に変化させることにより、エッチング液201のpHを低下させる工程である。
【0063】
具体的には例えば、図2(a)から理解されるように、第1例のエッチング液201を用いる場合、エッチング開始前にUV光221の照射を20分行うことで、エッチング液201のpHを2.5まで低下させる。その後、エッチング液201にウエハ10を浸漬させて、エッチングを開始することで、エッチング開始時点のpHが、例えば2.5となる。
【0064】
本変形例では、当該前処理工程により、エッチング液201のpHを、予め所定のpHまで低下させてから、エッチングを開始する。これにより、当該前処理工程を行わない場合と比べて、エッチング開始時点からエッチング終了時点までpHの低下幅を小さくすることができるため、エッチング条件の変動を抑制することができる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態による、構造体150の製造方法について説明する。構造体150として、高電子移動度トランジスタ(HEMT)が例示される。以下、構造体150を、HEMT150ともいう。ここで構造体とは、PECエッチングにより形成された構造を有するウエハ10、または、このようなウエハ10を含む部材、を意味する。またここで、高電子移動度トランジスタ(HEMT)とは、電極等まで形成されたHEMT素子だけでなく、HEMT素子に用いられる(HEMT用の)半導体積層部材のことも意味する。
【0066】
本実施形態では、詳細は後述するように、HEMT150のゲート電極152が配置される凹部(ゲートリセス)110を、第1実施形態で説明したような、酸性のエッチング液201を用いたPECエッチングにより形成する態様を説明する。
【0067】
本実施形態において、PECエッチングの対象物となるウエハ10は、III族窒化物で構成された下層と、当該下層上に形成され当該下層を構成するIII族窒化物とは組成の異なるIII族窒化物(好ましくは、当該下層を構成するIII族窒化物よりもバンドギャップが大きいIII族窒化物)で構成された上層と、を有すること、つまり、互いに異なる組成を有するIII族窒化物の積層で構成されたヘテロ接合構造を有すること、を特徴とする。このようなヘテロ接合構造の一例として、本実施形態では、HEMT150におけるチャネル層12bと障壁層12cとの積層構造を例示する。
【0068】
後述の第5、第6実験例で説明されるように、本願発明者は、このようなヘテロ接合構造に対してPECエッチングを施す際、エッチング液201を酸性とすることで、エッチング液201をアルカリ性とする場合と比べて、エッチング条件の変動を抑制できること、より具体的には、エッチングを面内で均一に進行させられることを見出した。本実施形態は、このような知見に基づく。
【0069】
まず、HEMT150、および、HEMT150の材料として用いられるウエハ10の構造について説明する。図7(a)は、HEMT150を例示する概略断面図であり、図7(b)は、ウエハ10を例示する概略断面図である。
【0070】
ウエハ10は、基板11と、基板11上に形成された(エピタキシャル成長された)III族窒化物層12(以下、エピ層12ともいう)と、を有する。基板11としては、半絶縁性基板が用いられる。ここで、「半絶縁性」とは、例えば、比抵抗が10Ωcm以上である状態をいう。半絶縁性基板としては、例えば、半絶縁性の炭化シリコン(SiC)基板が用いられ、また例えば、半絶縁性のGaN基板が用いられる。半絶縁性のGaN基板は、例えば、(Fe)ドープやマンガン(Mn)ドープのGaN基板である。
【0071】
基板11にSiC基板を用いる際の、エピ層12としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)で構成された核生成層12a、窒化ガリウム(GaN)で構成されたチャネル層12b、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)で構成された障壁層12c、および、GaNで構成されたキャップ層12dの積層構造が用いられる。なお、キャップ層12dは、省略されてもよい。なお、基板11にGaN基板を用いる場合のエピ層12においては、核生成層12aが省略されてもよい。
【0072】
チャネル層12bと障壁層12cとの積層構造において、チャネル層12bの上面近傍に、HEMT150のチャネルとなる2次元電子ガス(2DEG)が生成される。なお、チャネル層12bの材料として、GaN以外に、AlGaNが用いられてもよい。チャネル層12bに用いられるAlGaNとしては、障壁層12cに用いられるAlGaNよりも、Al組成が低い(バンドギャップが狭い)ものが用いられる。
【0073】
基板11としては、SiC基板、GaN基板に限らず、他の基板(サファイア基板、シリコン(Si)基板、等)が用いられてもよい。エピ層12の積層構造は、基板11の種類、得たいHEMT150の特性、等に応じ、適宜選択されてよい。
【0074】
エピ層12の表面20は、例えば、エピ層12を構成するIII族窒化物のc面で構成されている。ここで「c面で構成されている」とは、表面20に対して最も近い低指数の結晶面が、エピ層12を構成するIII族窒化物結晶のc面であることを意味する。
【0075】
本実施形態のHEMT150において、ゲート電極152は、エピ層12の表面(上面)20に形成された凹部(ゲートリセス)110の底120上に形成されている。凹部110の底120は、障壁層12cの厚さ範囲内に配置されており、凹部110の下方の障壁層12cの厚さ(チャネル層12bの上面から凹部110の底120までの厚さ)は、HEMT150の閾値ゲート電圧が所定値となるように、所定の厚さに設定されてよい。ソース電極151およびドレイン電極153は、エピ層12の表面20上に形成されている。ソース電極151、ゲート電極152およびドレイン電極153の上面上に開口を有するように、保護膜154が形成されている。
【0076】
ゲート電極152は、例えば、ニッケル(Ni)層上に金(Au)層が積層されたNi/Au層により形成される。ソース電極151およびドレイン電極153のそれぞれは、例えば、チタン(Ti)層上にAl層が積層され、さらにAl層上にAu層が積層されたTi/Al/Au層により形成される。
【0077】
HEMT150は、隣接する素子間を分離する素子分離溝160を有する。素子分離溝160は、その底がチャネル層12bの上面よりも深い位置に配置されるように、つまり、隣接する素子間で、2DEGが素子分離溝160により分断されるように、設けられている。
【0078】
次に、HEMT150の製造方法について説明する。本実施形態によるHEMT150の製造方法は、PECエッチングの処理対象物100を(つまりウエハ10を)準備する工程と、PECエッチングにより障壁層12cをエッチングする工程と、を有する。
【0079】
図8(a)は、処理対象物100を例示する概略断面図である。処理対象物100は、ウエハ10のエピ層12上に、マスク50およびカソードパッド30が設けられた構造を有する。本例の処理対象物100は、カソードパッド30を、HEMTのソース電極151およびドレイン電極153(の少なくとも一方)として利用する態様であり、具体的には例えば、ウエハ10の表面20上にソース電極151およびドレイン電極153が形成された段階の部材に、PECエッチング用のマスク50が形成された構造を有する。
【0080】
マスク50は、エピ層12の表面20上に形成され、凹部110を形成すべき領域21(以下、被エッチング領域21ともいう)に開口を有するとともに、カソードパッド30(ソース電極151およびドレイン電極153)の上面を露出させる開口を有する。マスク50は、非導電性材料、例えば、レジスト、酸化シリコン等で形成される。
【0081】
カソードパッド30は、導電性材料で形成された導電性部材であって、被エッチング領域21と電気的に接続された、ウエハ10の(エピ層12の)導電性領域の表面の少なくとも一部と接触するように設けられている。
【0082】
ウエハ10の基板11が半絶縁性であって、また、マスク50が非導電性材料で形成されている場合、処理対象物100は、カソードパッド30をさらに有していることが好ましい。カソードパッド30は、金属等の導電性材料で形成された導電性部材であって、被エッチング領域20と電気的に接続された、エッチング対象物10の導電性領域の表面の少なくとも一部と接触するように設けられている。カソードパッド30は、PECエッチング時に、カソードパッド30の少なくとも一部、例えば上面が、エッチング液310と接触するように、設けられている。
【0083】
PECエッチングが生じる被エッチング領域20は、ホールが消費されるアノード領域として機能すると考えられる。これに対し、被エッチング領域20と電気的に接続された導電性部材であるカソードパッド30の、エッチング液310と接触する表面は、電子が消費される(放出される)カソード領域として機能すると考えられる。エッチング対象物10が、裏面側が非導電性の部材で構成されるとともに、マスク50が、非導電性材料で形成されている場合、カソードパッド30が形成されていないと、電子が消費されるカソード領域を確保することが困難となる。このような場合であっても、カソードパッド30を形成することにより、カソード領域を確保することが容易となるため、PECエッチングを促進させることができる。
【0084】
なお、本願発明者は、PECエッチングに用いるマスクの縁が導電性材料で構成されていると、PECエッチングで形成される凹部の縁の形状が、マスクの縁に沿わない乱れた形状となりやすく、マスクの縁が非導電性材料で構成されていることで、PECエッチングで形成される凹部の縁の形状を、マスクの縁に沿った形状に制御しやすい、という知見を得ている。したがって、被エッチング領域21を画定するマスク端は(つまり、凹部110の縁は)、非導電性材料で構成されたマスク50により画定されることが好ましい。カソードパッド30は、(平面視で)凹部110の縁から離れた位置に(凹部110の縁を画定しない位置に)配置されることが好ましい。凹部110の縁の形状を良好に制御する観点から、(平面視での)マスク50の縁と、カソードパッド30の縁と、の距離DOFFは、5μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることがより好ましい。
【0085】
図8(b)は、PECエッチングにより障壁層12cをエッチングする工程(以下単に、PECエッチング工程ともいう)を示す、PECエッチング装置200の概略断面図である。
【0086】
PECエッチング工程では、処理対象物100がエッチング液201に浸漬され、被エッチング領域21、および、カソードパッド30(カソードパッド30の少なくとも一部、例えば上面)がエッチング液201と接触した状態で、エピ層12の表面20に、エッチング液201を介してUV光221を照射する。このようにして、被エッチング領域21を構成するIII族窒化物をエッチングすることで、凹部110を形成する。より具体的には、エピ層12の(キャップ層12dおよび)障壁層12cにエッチングを施すことで、凹部110を形成する。
【0087】
本実施形態の処理対象物100において、アノードである被エッチング領域21(凹部110の底120)と、カソードであるカソードパッド30とは、2DEGを介して導通する。このため、PECエッチングの進行に伴い障壁層12cが薄くなって、凹部110の下方における2DEGが減少すると、PECエッチングが進行しにくくなり、やがて、凹部110の下方に、所定の均一な厚さの障壁層12cが残った状態で、PECエッチングを自動的に停止させることができる。当該所定厚さは、例えば、UV光221の強度により調整することができる。このようにして、PECエッチングを自動的に停止させることで、凹部110の形成を終了させることができる。
【0088】
本実施形態のPECエッチング工程において、好ましくは、エッチング液201を酸性(つまりpH7未満)とする。つまり、障壁層12cのエッチングの開始時点におけるエッチング液201を酸性とすることで、障壁層12cがエッチングされる期間中にエッチング液201が酸性である状態を維持する。エッチング液201を酸性とすることで、上述のような、凹部110の下方に所定の均一な厚さの障壁層12cが残った状態で、PECエッチングを自動的に停止させることを、より適切に行うことができる。
【0089】
なお、素子分離溝160が形成されていない状態の処理対象物100にPECエッチングを施して凹部110を形成する態様を例示したが、素子分離溝160が形成された状態の処理対象物100にPECエッチングを施して凹部110を形成する態様であってもよい。
【0090】
次に、本実施形態のPECエッチングに係る第5、第6実験例について説明する。第5および第6実験例では、GaN基板11上にGaNチャネル層12bおよびAlGaN障壁層12cが積層されたウエハを用い、障壁層12cにPECエッチングにより凹部を形成した。第5実験例のPECエッチングでは、酸性のエッチング液を用い、第6実験例のPECエッチングでは、アルカリ性のエッチング液を用いた。
【0091】
第5実験例では、酸性のエッチング液として、0.025MのK水溶液を用いた。図9(a)は、第5実験例におけるエッチング時間と、障壁層12cのエッチング深さとの関係性を示すグラフ(「HEMT」と示すグラフ)である。10分程度のエッチングで、エッチング深さがほぼ一定となっていること、つまり、エッチングが自動的に停止していることがわかる。なお、図9(a)に、参考として、n型GaN層を同様にエッチングした場合の、エッチング時間とエッチング深さとの関係性を示すグラフ(「n-GaN」と示すグラフ)を示す。n型GaN層をエッチングした場合は、エッチング時間にほぼ比例してエッチング深さが制限なく深くなっており、エッチングの自動的な停止が起こらないことがわかる。
【0092】
図9(b)は、第5実験例で形成された凹部110を平面視した光学顕微鏡写真、および、第5実験例で形成された凹部110の断面形状の模式図である。第5実験例では、障壁層12cが途中の深さまで面内で均一にエッチングされ、平坦な底120を有する凹部110が形成されている。
【0093】
図10(a)は、第5実験例で形成された凹部110についてのAFM測定による各種データであり、図10(b)は、第5実験例で形成された凹部110のAFM像である。図9(b)の光学顕微鏡測定、図10(a)および10(b)のAFM測定におけるエッチング時間は、30分である。AFM測定から、第5実験例では、深さが50nm程度で、平坦な底120を有する凹部110が形成されていることが確認される。第5実験例による凹部110の底120の算術平均粗さRaは、0.4nmであり、1nm以下となっている。
【0094】
第6実験例では、アルカリ性のエッチング液として、0.1MのKOH水溶液と、0.05MのK水溶液と、が1:1で混合されたエッチング液を用いた。図11は、第6実験例で形成された凹部110を平面視した光学顕微鏡写真、および、第6実験例で形成された凹部110の断面形状の模式図である。第6実験例では、凹部110の幅方向中央部においては、エッチングが障壁層12cの途中の深さまでで停止しているものの、凹部110の幅方向両端部においては、障壁層12cが全厚さエッチングされ、さらにチャネル層12bの上部までエッチングが進行してしまっている。このように、第6実験例では、平坦な底120を有する凹部110が形成されない。
【0095】
図12(a)は、第6実験例で形成された凹部110についてのAFM測定による各種データであり、図12(b)は、第6実験例で形成された凹部110のAFM像である。図11の光学顕微鏡測定、図12(a)および12(b)のAFM測定におけるエッチング時間は、30分である。AFM測定から、第6実験例では、幅方向の両端部が中央部に比べて異常に深くなった、平坦性の低い底120を有する凹部110が形成されていることが確認される。幅方向の中央部は、おおむね平坦で深さが50nm程度に形成されているが、両端部は、中央部に比べて150nm程度深くなっている。第6実験例による凹部110の底120の算術平均粗さRaは、51nmであり、50nm以上となっている。
【0096】
このように、本願発明者は、無電極PECエッチングを用いて障壁層12cをエッチングする場合に、第5実験例のように(障壁層12cのエッチングの開始時点から)酸性のエッチング液を用いることで、第6実験例のようにアルカリ性のエッチング液を用いる場合と比べて、エッチングを面内で均一に進行させることができ、より平坦な底120を有する凹部110を形成できるという知見を得た。
【0097】
アルカリ性のエッチング液を用いる場合に得られる底120の算術平均粗さRaが50nm以上となるのに比べ、酸性のエッチング液を用いることで、より平坦性が高くなるように、具体的には当該算術平均粗さRaが好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは1nm以下となるように、障壁層12cをエッチングして、凹部110を形成することができる。
【0098】
第5、第6実験例のように、エッチング液が酸性であるかアルカリ性であるかによって無電極PECエッチングの進行状態が異なる現象のメカニズムは明確でないが、酸性の場合に生じるエッチングの自動停止が、アルカリ性の場合には生じにくいことから考えて、互いに異なる組成を有するIII族窒化物の積層で構成されたヘテロ接合構造に対してPECエッチングを行うことが(より具体的には、下層よりも上層の方がバンドギャップの大きいヘテロ接合構造に対し、上層のPECエッチングを行うことが)、このような現象の発生に寄与しているものと考えられる。また、PECエッチングされる層(本例における障壁層12c)がAlGaNで構成されていることで、このような現象が生じている、あるいは促進されている可能性もある。
【0099】
したがって、このようなヘテロ接合構造に対して無電極PECエッチングを行う場合、好ましくは、このようなヘテロ接合構造が有するAlGaN層に対して無電極PECエッチングを行う場合、酸性のエッチング液を用いることが、エッチングを面内で均一に進行させるために好ましい。
【0100】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態および変形例を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態および変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。
【0101】
例えば、上述の説明では、S 2-をペルオキソ二硫酸カリウム(K)から供給する態様を例示したが、S 2-は、その他例えば、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(Na)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム、(NH)等から供給するようにしてもよい。
【0102】
また、S 2-からSO -*ラジカルを生成する手法は特に限定されず、例えば、エッチング液に対する光の照射、および、加熱の少なくとも一方が用いられてよい。
【0103】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0104】
(付記1)
少なくとも表面がIII族窒化物で構成されたエッチング対象物を準備する工程と、
前記エッチング対象物が、ペルオキソ二硫酸イオンを含むエッチング液に浸漬された状態で、前記エッチング対象物の前記表面に、前記エッチング液を介して紫外光を照射し、前記ペルオキソ二硫酸イオンから硫酸イオンラジカルを生成させるとともに、前記III族窒化物中にホールを生成させることにより、前記III族窒化物をエッチングする工程と、
を有し、
前記III族窒化物をエッチングする工程では、前記III族窒化物のエッチングの開始時点における前記エッチング液を酸性とすることで、前記III族窒化物がエッチングされる期間中に前記エッチング液が酸性である状態を維持する、構造体の製造方法。
【0105】
(付記2)
前記エッチングの終了時点における前記エッチング液のpHの、前記開始時点における前記エッチング液のpHに対する低下幅が、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下である、付記1に記載の構造体の製造方法。
【0106】
(付記3)
前記エッチング液に含まれる前記ペルオキソ二硫酸イオンがすべて硫酸イオンに変化した場合における前記エッチング液のpHの、前記開始時点における前記エッチング液のpHに対する低下幅が、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下である、付記1または2に記載の構造体の製造方法。
【0107】
(付記4)
前記エッチング液は、0超7未満の酸解離定数pKを有する弱酸を含む、付記1~3のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0108】
(付記5)
前記弱酸がリン酸である、付記4に記載の構造体の製造方法。
【0109】
(付記6)
前記開始時点における前記エッチング液のpHの、前記弱酸の酸解離定数pKに対する差が、好ましくはプラスマイナス1以下、より好ましくはプラスマイナス0.5以下である、付記4または5に記載の構造体の製造方法。
【0110】
(付記7)
前記開始時点における前記エッチング液のpHが、前記弱酸の酸解離定数pKよりも高い、付記4~6のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0111】
(付記8)
前記弱酸の酸解離定数pKが、前記エッチング液に含まれる前記ペルオキソ二硫酸イオンがすべて硫酸イオンに変化した場合における前記エッチング液のpHよりも高い、付記4~7のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0112】
(付記9)
前記III族窒化物がエッチングされる期間中に、前記エッチング液の交換を行わない、付記1~8のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0113】
(付記10)
前記III族窒化物がエッチングされる期間中に、前記エッチング液の攪拌を行わない、付記1~9のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0114】
(付記11)
前記III族窒化物がエッチングされる期間は、好ましくは30分、より好ましくは60分、さらに好ましくは90分以上、さらに好ましくは120分以上である、付記1~10のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0115】
(付記12)
前記III族窒化物がエッチングされる期間中に、前記エッチング液のpHを測定する、付記1~11のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0116】
(付記13)
前記エッチング液のpHを測定する際、pHメータのプローブの、前記紫外光による影が、前記エッチング対象物の前記表面に映らない位置に、前記プローブを配置する、付記12に記載の構造体の製造方法。
【0117】
(付記14)
前記III族窒化物をエッチングする工程の前に、前記エッチング対象物が前記エッチング液に浸漬されていない状態において、前記エッチング液に紫外光を照射することで、前記ペルオキソ二硫酸イオンの一部を硫酸イオンに変化させることにより、前記エッチング液のpHを低下させる工程、をさらに有する、付記1~13のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0118】
(付記15)
前記III族窒化物をエッチングする工程では、前記表面上に(前記表面の一部上に)マスクが形成された状態で、前記エッチングを行う、付記1~14のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0119】
(付記16)
前記マスクは、レジストマスクである、付記15に記載の構造体の製造方法。
【0120】
(付記17)
少なくとも表面がIII族窒化物で構成されたエッチング対象物と、
前記表面上に(前記表面の一部上に)形成されたマスクと、
を有し、
ペルオキソ二硫酸イオンを含む酸性のエッチング液に浸漬される、中間構造体。
【0121】
(付記18)
前記マスクは、レジストマスクである、付記17に記載の中間構造体。
【0122】
(付記19)
前記表面に、前記エッチング液を介して紫外光が照射される、付記17または18に記載の中間構造体。
【0123】
(付記20)
少なくとも、III族窒化物で構成された第1層と、前記第1層上に形成され前記第1層を構成するIII族窒化物とは組成の異なるIII族窒化物(好ましくは、前記第1層を構成するIII族窒化物よりもバンドギャップが大きいIII族窒化物)で構成された第2層と、を有するエッチング対象物を準備する工程と、
前記エッチング対象物が、ペルオキソ二硫酸イオンを含むエッチング液に浸漬された状態で、前記エッチング液を介して前記第2層に光を照射し、前記第2層を構成するIII族窒化物中にホールを生成させ、前記第2層をエッチングする工程と、
を有し、
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層のエッチングの開始時点における前記エッチング液を酸性とすることで、前記第2層がエッチングされる期間中に前記エッチング液が酸性である状態を維持する、構造体の製造方法。
【0124】
(付記21)
前記第1層は、高電子移動度トランジスタのチャネル層であり、
前記第2層は、高電子移動度トランジスタの障壁層である、付記20に記載の構造体の製造方法。
【0125】
(付記22)
前記エッチング対象物は、前記障壁層上に形成されたキャップ層をさらに有する、付記21に記載の構造体の製造方法。
【0126】
(付記23)
前記第2層をエッチングする工程では、前記高電子移動度トランジスタのゲートリセスを形成する、付記21または22に記載の構造体の製造方法。
【0127】
(付記24)
前記第2層は、窒化アルミニウムガリウムで構成されている、付記20~23のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0128】
(付記25)
前記第1層は、窒化ガリウムまたは窒化アルミニウムガリウムで構成されている、付記20~24のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0129】
(付記26)
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層が途中の深さまでエッチングされた凹部を、前記凹部の底の算術平均粗さRaが10nm以下(より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは1nm以下)となるように、形成する、付記20~25のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0130】
(付記27)
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層のエッチングを(前記第2層が途中の深さまでエッチングされた状態で)自動的に停止させる、付記20~26のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0131】
(付記28)
前記第2層は、前記第1層に2次元電子ガスを形成する、付記20~27のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0132】
(付記29)
前記第2層をエッチングする工程では、前記第2層上に、被エッチング領域を画定するマスクが形成されている、付記20~28のいずれか1つに記載の構造体の製造方法。
【0133】
(付記30)
Alを含むIII族窒化物(好ましくは例えばAlGaN)で構成された第1層を有するエッチング対象物を準備する工程と、
前記エッチング対象物が、ペルオキソ二硫酸イオンを含むエッチング液に浸漬された状態で、前記エッチング液を介して前記第1層に光を照射し、前記第1層を構成するIII族窒化物中にホールを生成させ、前記第1層をエッチングする工程と、
を有し、
前記第1層をエッチングする工程では、前記第1層のエッチングの開始時点における前記エッチング液を酸性とすることで、前記第1層がエッチングされる期間中に前記エッチング液が酸性である状態を維持する、構造体の製造方法。
【符号の説明】
【0134】
10…エッチング対象物、11…基板、12…III族窒化物層、12a…核生成層、12b…チャネル層、12c…障壁層、12d…キャップ層、20…被エッチング面20、21…エッチングされる領域、30…カソードパッド、50…マスク、100…処理対象物、110…凹部(ゲートリセス)、120…底、150…構造体(高電子移動度トランジスタ)、151…ソース電極、152…ゲート電極、153…ドレイン電極、154…保護膜、160…素子分離溝、200…PECエッチング装置、201…エッチング液、202…エッチング液の上面、210…容器、220…光源、221…UV光、230…pHメータ、231…プローブ、240…支持台
図1
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