(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】粉末供給装置および粉末供給装置を用いるAM装置
(51)【国際特許分類】
B65G 65/40 20060101AFI20241203BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20241203BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241203BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241203BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20241203BHJP
B23K 26/144 20140101ALI20241203BHJP
【FI】
B65G65/40 B
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F3/105
B23K26/144
(21)【出願番号】P 2020169369
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 弘行
(72)【発明者】
【氏名】浅井 潤樹
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-211202(JP,A)
【文献】特開2011-084333(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/40
B29C 64/268
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B22F 3/105
B23K 26/144
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末供給装置であって、前記粉末供給装置は、
粉末を保持するための容器と、
前記容器へ粉末を供給するための供給通路と、
前記供給通路を開閉するためのバルブ構造と、を有し、
前記バルブ構造は、前記供給通路を閉鎖する第1位置と前記供給通路を開放する第2位置との間で移動可能なバルブ本体と、前記バルブ本体が着座するための弁座とを有し、
前記バルブ本体は、第1シール部および第2シール部を有し、
前記弁座は、前記第1シール部が着座する第1シート部と、前記第2シール部が着座する第2シート部と、を有し、
前記バルブ構造は、前記第1シール部が前記第1シート部に着座し、且つ、前記第2シール部が前記第2シート部に着座したときに、密閉される空間を画定し、
前記バルブ構造は、前記密閉される空間から気体を排出するための排気通路と、前記密閉される空間の圧力を監視するための圧力監視通路と、を有する、
粉末供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末供給装置であって、
前記供給通路は、粉末を前記容器へ供給するための管を挿入可能に構成されている、
粉末供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粉末供給装置であって、
前記第1シート部は第1Oリングを備え、前記第2シート部は第2Oリングを備える、粉末供給装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の粉末供給装置であって、
前記バルブ本体は、前記供給通路を閉鎖する第1位置と前記供給通路を開放する第2位置との間で回転移動可能にピンにより支持されている、
粉末供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の粉末供給装置であって、
前記バルブ本体を前記第1位置に向けて付勢する弾性部材を有する、
粉末供給装置。
【請求項6】
粉末供給装置であって、前記粉末供給装置は、
粉末を保持するための容器と、
前記容器へ粉末を供給するための供給通路と、
前記供給通路の第1位置を開閉するための第1バルブと、
前記供給通路の第2位置を開閉するための第2バルブと、
前記供給通路の前記第1位置と前記第2位置との間の空間から気体を排出するための排気通路と、
前記供給通路の前記第1位置と前記第2位置との間の空間の圧力を測定するための圧力測定通路と、を有する、
粉末供給装置。
【請求項7】
粉末供給装置から粉末材料を供給するための方法であって、
前記粉末供給装置は、
粉末を保持するための容器と、
前記容器へ粉末を供給するための供給通路と、
前記供給通路を開閉するためのバルブと、を有し、
前記方法は、
前記バルブを開放するステップと、
前記供給通路を通じて粉末材料を前記容器へ充填するステップと、
前記バルブを閉鎖するステップと、
前記バルブが閉鎖されているかどうかを確認するステップと、
前記バルブが閉鎖されていることが確認された後に、
前記バルブが閉鎖されている状態で前記粉末供給装置から粉末材料を供給するステップと、を有する、
方法。
【請求項8】
造形物を製造するためのAM装置であって、前記AM装置は、
DEDノズルを有し、前記DEDノズルは、
前記DEDノズルの先端に設けられたレーザー光を出射するためのレーザー口、および前記レーザー口に連通する、前記DEDノズル内をレーザー光が通過するためのレーザー通路と、
前記DEDノズルの先端に設けられた粉末材料を出射するための粉体口、および前記粉体口に連通する、前記DEDノズル内を粉末材料が通過するための粉体通路と、を有し、
前記AM装置は、前記DEDノズルに粉末材料を供給するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の粉末供給装置を有する、
AM装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、粉末供給装置および粉末供給装置を用いるAM装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元物体を表現したコンピュータ上の三次元データから、三次元物体を直接的に造形する技術が知られている。たとえば、Additive Manufacturing(AM)(付加製造)法が知られている。一例として、デポジション方式のAM法としてダイレクトエナジーデポジション(DED)がある。DEDは、粉末状の金属材料を局所的に供給しながら適当な熱源を用いて基材と共に溶融、凝固させることで造形を行う技術である。
【0003】
DEDにより三次元物体を造形する場合、DEDノズルを用いて、造形位置に粉末材料を供給しながらレーザーを照射して粉末材料を溶融、凝固させて造形する。そのため、DEDにより三次元物体を造形する場合、DEDノズルに粉末材料を供給し続ける必要がある。一般に、DEDノズルへの粉末材料の供給は、粉末供給装置を用いてキャリアガスとともに粉末材料をDEDノズルへ供給する。粉末供給装置は、粉末材料を保持し、所定の供給量でDEDノズルなどの供給先へ粉末材料を供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DEDにより大きな三次元物体を造形する場合、粉末供給装置に予め保持されている粉末材料だけでは造形を完成できないことがあるので、造形している途中で粉末供給装置に粉末材料を補充する必要がある。粉末供給装置への粉末材料の補充は、部品の取り外しなどを必要とすることから手動で行われることが多い。そのため、粉末供給装置への粉末材料の補充を行うためには、DEDでの造形を一時的に中断することになり、造形に要する時間が増加することになる。そのため、粉末供給装置へ粉末材料の供給を手動ではなく、自動で行うことができることが望ましい。また、粉末供給装置への粉末材料の供給を自動で行うことで、人間が粉末材料を吸い込むリスクを軽減することができる。さらに、粉末供給装置によりDEDノズルなどの供給先に粉末材料をキャリアガスとともに供給する際、粉末供給装置において粉末材料を保持している容器が加圧されることがある。そのため、粉末材料を保持している容器を適切にシールしないと、粉末材料が容器から飛散する恐れがある。そこで、粉末材料を保持している容器を適切にシールすることが望ましい。本願は、これらの問題の少なくとも一部を解決ないし緩和するできる構造を提供することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、粉末供給装置が提供され、前記粉末供給装置は、粉末を保持するための容器と、前記容器へ粉末を供給するための供給通路と、前記供給通路を開閉するためのバルブ構造と、を有し、前記バルブ構造は、前記供給通路を閉鎖する第1位置と前記供給通路を開放する第2位置との間で移動可能なバルブ本体と、前記バルブ本体が着座するための弁座とを有し、前記バルブ本体は、第1シール部および第2シール部を有し、前記弁座は、前記第1シール部が着座する第1シート部と、前記第2シール部が着座する第2シート部と、を有し、前記バルブ構造は、前記第1シール部が前記第1シート部に着座し、且つ、前記第2シール部が前記第2シート部に着座したときに、密閉される空間を画
定し、前記バルブ構造は、前記密閉される空間から気体を排出するための排気通路と、前記密閉される空間の圧力を監視するための圧力監視通路と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態による、DEDノズルの断面を概略的に示す図である。
【
図3】一実施形態による、粉末材料源としての粉末供給装置を概略的に示す図である。
【
図4】一実施形態による、粉末容器の上端に取り付けられるカバーの構造を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図4に示されるカバーを下方から見た図である。
【
図6】
図4に示されるカバーの供給通路が開放された状態を示す図である。
【
図7】一実施形態による、粉末容器の上端に取り付けられるカバーの構造を概略的に示す断面図である。
【
図8】一実施形態による、粉末容器の上端に取り付けられるカバーの構造を概略的に示す断面図である。
【
図9】一実施形態による、粉末容器の供給通路付近の構造を概略的に示す断面図である。
【
図10】一実施形態による、粉末供給装置から粉末材料を供給するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明に係る粉末供給装置、および粉末供給装置を使用するAM装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0009】
図1は、一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。
図1に示されるように、AM装置100は、ベースプレート102を備える。ベースプレート102上に造形物Mが造形されることになる。ベースプレート102は、造形物Mを支持することができる任意の材料から形成されるプレートとすることができる。一実施形態において、ベースプレート102は、XYステージ104の上に配置される。XYステージ104は、水平面内で直交する二方向(x方向、y方向)に移動可能なステージ104である。なお、XYステージ104は、高さ方向(z方向)に移動可能なリフト機構に連結されていてもよい。また、一実施形態においては、XYステージ104はなくてもよい。
【0010】
一実施形態において、
図1に示されるように、AM装置100は、DEDヘッド200を備える。DEDヘッド200は、レーザー源202、粉末材料源300、およびガス源206に接続されている。DEDヘッド200は、DEDノズル250を有する。DEDノズル250は、レーザー源202、粉末材料源300、およびガス源206からのレーザー、粉末材料、およびガスを噴射するように構成される。
【0011】
DEDヘッド200は任意のものとすることができ、たとえば公知のDEDヘッドを使用することができる。DEDヘッド200は、移動機構220に連結されており、移動可能に構成される。移動機構220は、任意のものとすることができ、たとえば、レールなどの特定の軸に沿ってDEDヘッド200を移動可能なものとしてもよく、あるいは、任意の位置および向きにDEDヘッド200を移動させることができるロボットから構成さ
れてもよい。一実施形態として、移動機構220は、直交する3軸に沿ってDEDヘッド200を移動可能に構成することができる。
【0012】
一実施形態によるAM装置100は、
図1に示されるように制御装置170を有する。制御装置170は、AM装置100の各種の動作機構、たとえば上述のDEDヘッド200、各種の動作機構220などの動作を制御するように構成される。制御装置170は、一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0013】
図2は一実施形態によるDEDノズル250の断面を概略的に示す図である。図示の実施形態によるDEDノズル250は、全体として切頭円錐形状のDEDノズル本体259である。図示の実施形態によるDEDノズル250は、DEDノズル本体259の中心にレーザー251が通過する第1通路252を備える。第1通路252を通ったレーザーは、DEDノズル本体259のレーザー口252aから放出される。また、DEDノズル本体259は、第1通路252の外側に、粉末材料および粉末材料を輸送するためのキャリアガスが通過する第2通路254を備える。第2通路254を通った粉末材料は粉体口254aから放出される。さらに、DEDノズル本体259は、第2通路254の外側に、シールドガスが通過する第3通路256を備える。第3通路256を通ったシールドガスは、ガス口256aから放出される。
【0014】
第2通路254は、DEDノズル250から排出される粉末材料がレーザー251の集光点251aと実質的に同一の位置に収束するように構成される。なお、
図2において粉末材料およびキャリアガスの流れは破線で示されている。キャリアガスは、たとえばアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスとすることができる。キャリアガスとして、空気より重いアルゴンガスを使用することがより望ましい。なお、キャリアガスに不活性ガスを用いることで、粉末材料が溶融して形成される溶融池を不活性ガスで覆うことで酸化を防止することができる。ただし、粉体口254aから放出されるキャリアガスの流れにより、その外側の空気が巻き込まれることがある。そこで、
図2に示されるDEDノズル250は、粉末材料およびキャリアガスが排出される第2通路254の外側に配置された第3通路256からシールドガスを低速で供給することで、周囲の空気が巻き込まれることを防止することができる。キャリアガスにより周囲の空気(特に酸素)が巻き込まれることを防止することで、造形時に金属酸化膜が生成されることを抑制でき、また、濡れ性の良い溶融池を形成することができる。
図2において、シールドガスの流れは矢印で示されている。
【0015】
上述のようにDEDノズル250を用いて造形を行う場合、粉末材料をDEDノズル250に供給する必要がある。
図1に示されるように、DEDノズル250には、粉末材料源300に接続されている。
図3は、一実施形態による、粉末材料源300としての粉末供給装置300を概略的に示す図である。
【0016】
図3に示されるように、粉末供給装置300は、粉末材料301を保持するための粉末容器302を備える。粉末容器302の上端は、カバー350が取り付けられている。カバー350は、粉末容器302から取り外し可能に構成してもよい。カバー350を粉末容器302から取り外し可能に構成する場合、カバー350を取り外して粉末材料を、粉末容器302に補充するようにしてもよい。また、後述するように、一実施形態において、カバー350が粉末容器302に取り付けられた状態のままで、粉末材料を補充できるように構成してもよい。一実施形態において、粉末容器302内には攪拌装置310が配置されており、粉末容器302内の粉末材料を攪拌できるように構成されている。
【0017】
粉末容器302の下端は、計量装置304に接続されている。計量装置304は、さらにガス源306に接続されている。ガス源306は、たとえばアルゴンガスなどのキャリ
アガスを計量装置304に供給することができる。ガス源306は、
図1に示されるガス源206と同一のガス源を用いてもよい。粉末容器302から計量装置304に供給された粉末材料は計量されて、キャリアガスとともにDEDノズル250へ送られる。
【0018】
図4は、一実施形態による、粉末容器302の上端に取り付けられるカバー350の構造を示す断面図である。
図5は、
図4に示されるカバー350を下方から見た図である。図示の実施形態によるカバー350は、粉末容器302の上端に図示しないボルトなどで固定される。カバー350は、カバー本体352を備える。一実施形態において、粉末容器302は概ね円筒形状の容器であり、カバー本体352は、全体として円板形状である。カバー本体352の中心には供給口354が形成されており、供給口354からカバー本体352を貫通するように供給通路356が画定されている。
【0019】
一実施形態において、
図4に示されるように、カバー350は、供給通路356を開閉するためのバルブ構造357が設けられている。バルブ構造357は、バルブ本体358を備える。バルブ本体358は、ピン360により回転移動が可能に支持されている。カバー本体352の下面には、第1Oリング362が取り付けられている。また、カバー本体352の下面において、第1Oリング362の外側に第2Oリング364が取り付けられている。なお、
図5においては、バルブ357が省略して示されている。
【0020】
バルブ本体358は、上面が第1Oリング362および第2Oリング364に接触する第1位置と、上面が第1Oリング362および第2Oリング364から離間する第2位置との間で、ピン360を中心に回転移動が可能に構成されている。バルブ本体358が第1位置にあるときは、供給通路356がバルブ本体358により閉鎖される。また、バルブ本体358が第2位置にあるときは、供給通路356は開放されており、供給口354および供給通路356を通じて、粉末容器302に粉末材料を充填することができる。
図4に示される実施形態において、第1Oリング362および第2Oリング364は、バルブ本体358が着座する弁座を構成している。第1位置においてバルブ本体358の第1Oリングに接触する部分が第1シール部を構成し、第2Oリング364に接触する部分が第2シール部分を構成する。また、第1Oリング362は第1シート部を構成し、第2Oリング364は第2シート部を構成する。
図4に示される実施形態において、第1Oリング362および第2Oリング364は、カバー本体352の下面に設けられているが、一実施形態として、第1Oリング362および第2Oリング364をバルブ本体358の上面に設けるようにしてもよい。
【0021】
かかる実施形態における粉末供給装置300は、カバー350を取り外すことなく、バルブ構造を通じて、供給口354および供給通路356から粉末材料を粉末容器302に充填することができる。たとえば、粉末材料を充填するための管390(
図6など参照)などを供給口354および供給通路356に挿入して、粉末材料を粉末容器302へ補充することができる。粉末材料を充填するための管390をロボットなどで自動操作および/または遠隔操作することで、粉末供給装置300への粉末材料の供給を自動で行うことができる。AM装置による造形においては、安全性の観点から造形中の造形室には人間が立ち入れないようすることがある。そのため、粉末供給装置300への粉末材料の補充を手動ではなく自動で行うことができれば、造形を中断せずに粉末供給装置300への粉末材料の補充を行うことができ、効率的である。また、かかる実施形態における粉末供給装置300によれば、人手を介さずに粉末材料を粉末供給装置300へ供給することが可能になるので、安全性の点からも望ましい。
【0022】
一実施形態において、バルブ構造357は、バルブ本体358を第1位置に向けて付勢する弾性部材361を備えることができる。一実施形態において、弾性部材361は、
図4、
図6に示されるような、ねじりバネとすることができる。ねじりバネは、ピン360
に巻き付けられて配置される。弾性部材361により、バルブ本体358は、供給通路356を開放するための力が与えられないかぎり、供給通路356を閉鎖する第1位置に位置決めされることになる。そのため、偶発的にバルブ本体358が開放されて、粉末容器302内の粉末材料が供給通路356から排出されることが防止される。粉末材料を粉末容器302に充填するときは、
図6に示されるような、円筒状の管390を供給口354から供給通路356内に差し込み、バルブ本体358を第2位置まで移動させて供給通路356を開放して、管390から粉末材料を供給することで、粉末材料を粉末容器302内に充填することができる。弾性部材361を使用している場合、管390がバルブ本体358を押し下げることで、バルブ本体358を第1位置から第2位置へ回転移動させることができ、管390を引き抜くと弾性部材361の作用により自動的にバルブ本体358は第1位置へ戻って、供給通路356を閉鎖することができる。かかる実施形態においては、管390を供給通路356内に差し込むことで、バルブ357を自動的に解放することができ、管390を供給通路356から取り出すことでバルブ357を自動的に閉鎖することができる。
【0023】
図4に示されるように、カバー本体352において、第1Oリング362と第2Oリング364との間にリング状の溝366が形成されている。
図4に示されるように、リング状の溝366には、カバー本体352の側面まで延びる排気通路368が形成されている。排気通路368は、真空ポンプ372に連結される。また、リング状の溝366には、さらに、カバー本体352の反対側の側面まで延びる圧力監視通路370が形成されている。圧力監視通路370は、圧力計374に連結される。バルブ本体358が第1位置に配置されて、供給通路356が閉鎖されているときに、排気通路368からリング状の溝366を真空引きし、圧力監視通路370からリング状の溝366内の圧力を監視することで、カバー本体352と第1Oリング362および第2Oリング364との間のリークを検知することができる。
【0024】
上記の実施形態においては、第1Oリング362と第2Oリング364との間に形成されているリング状の溝366の圧力を監視することで、バルブ本体358により供給通路356を確実に閉鎖できているかどうかを監視することができる。バルブ本体358により供給通路356を確実に閉鎖できている場合に限り、粉末供給装置300から粉末材料の供給を開始するように制御することで、粉末材料が周囲に飛散することを防止することができる。
【0025】
図7は一実施形態による、粉末容器302の上端に取り付けられるカバー350の構造を示す断面図である。
図7に示される実施形態によるカバー350は、供給通路356を開閉するバルブ構造357以外は
図4に示されるカバー350と同一とすることができる。
図7に示される実施形態によるバルブ構造357おいて、バルブ本体358は、カバー350の平面方向および平面方向に直交する方向に移動可能に構成されている。
図7に示される実施形態において、バルブ本体358は、上面が第1Oリング362および第2Oリング364に接触する第1位置と、上面が第1Oリング362および第2Oリング364から離間する第2位置との間で移動することが可能に構成されている。バルブ本体358が第1位置にあるときは、供給通路356がバルブ本体358により閉鎖される。また、バルブ本体358が第2位置にあるときは、供給通路356は開放されており、供給口354および供給通路356を通じて、粉末容器302に粉末材料を充填することができる。
図7に示される実施形態においても、第1Oリング362および第2Oリング364は、カバー本体352の下面に設けられているが、一実施形態として、第1Oリング362および第2Oリング364をバルブ本体358の上面に設けるようにしてもよい。
図7に示される実施形態においても、
図4-6で説明した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0026】
図8は一実施形態による、粉末容器302の上端に取り付けられるカバー350の構造を示す断面図である。
図8に示される実施形態によるカバー350は、
図7に示されるカバー350と類似の構造ではあるが、カバー本体352にはリング状の溝366、排気通路368、および圧力監視通路370が設けられていない。
図8に示される実施形態において、バルブ本体358において、第1Oリング362(第1シート部)が接触する位置(第1シール部)と、第2Oリング364(第2シート部)が接触する位置(第2シール部)との間にリング状の溝394が形成されている。
図8に示されるように、バルブ本体358に形成されているリング状の溝394には、バルブ本体358の側面まで延びる排気通路396が形成されている。排気通路396は、真空ポンプ372に連結される。また、リング状の溝394には、さらに、バルブ本体358の側面まで延びる圧力監視通路398が形成されている。圧力監視通路398は、圧力計374に連結される。バルブ本体358が第1位置に配置されて、供給通路356が閉鎖されているときに、排気通路396からリング状の溝394を真空引きし、圧力監視通路398からリング状の溝394内の圧力を監視することで、バルブ本体358と、第1Oリング362および第2Oリング364との間のリークを検知することができる。
図8に示される実施形態においても、第1Oリング362および第2Oリング364は、カバー本体352の下面に設けられているが、一実施形態として、第1Oリング362および第2Oリング364をバルブ本体358の上面に設けるようにしてもよい。
図8に示される実施形態においても、
図4-7で説明した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0027】
図9は、一実施形態による、粉末容器302の供給通路356付近の構造を概略的に示す断面図である。
図9に示される実施形態において、粉末容器302の供給通路356には、第1位置を開閉するための第1バルブ330と第2位置を開閉するための第2バルブ332とが備えられている。
図9に示される実施形態において、供給通路356の第1位置と第2位置との間の空間には、真空引きするための排気ライン334が接続されている。排気ライン334は、真空ポンプ372に連結される。また、供給通路356の第1位置と第2位置との間の空間には、さらに、圧力を監視するための圧力監視ライン336が接続されている。圧力監視ライン336は、圧力計374に連結される。第1バルブ330および第2バルブ332が閉鎖されているときに、両バルブの間の空間を排気ライン334から真空引きし、圧力監視ライン336から圧力を監視することで、第1バルブ330および第2バルブ332からのリークを監視することができる。
図9に示される実施形態においても、
図4-8で説明した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0028】
図10は、一実施形態による、粉末供給装置から粉末材料を供給するための方法を示すフローチャートである。
図10に示される実施形態において、粉末供給装置は、上述の実施形態の任意の粉末供給装置300または、それ以外の任意の粉末供給装置を使用することができる。
【0029】
一実施形態による粉末材料の供給方法において、まず粉末供給装置へ粉末材料を充填するためにバルブを開放する(S100)。
図4~6に示される実施形態による粉末供給装置300の場合、管390を供給口354から供給通路356に挿入することで、バルブ本体358を回転させることで粉末供給装置300のバルブを開放することができる。管390の挿入は、ロボットなどにより自動操作および/または遠隔操作により行うことが望ましい。
図7および
図8に示される実施形態による粉末供給装置300の場合、バルブ本体358を下方および横方向に移動させることで、供給通路356を開放することができる。
図9に示される実施形態による粉末供給装置300の場合、第1バルブ330および第2バルブ332の両方を開くことで供給通路356を開放することができる。
図7~9に示される粉末供給装置300においても、バルブの開放は電気的、電磁的な作用により人手を介さずに行うことが望ましい。
【0030】
バルブを開放したら、粉末供給装置300の粉末容器302に粉末材料を充填する(S102)。粉末材料の充填は、たとえば管390を挿入して管390の内部を通じて粉末材料を粉末容器302内に供給する。粉末材料を粉末容器302に充填するときは、粉末がバルブ本体358の上面のシール部やOリングなどのシート部に付着しないようにすることが望ましい。そのため、管390を挿入して粉末材料を供給する場合、管390の下端が、バルブ本体358よりも下に位置する状態にして、粉末材料を粉末容器302に供給することが望ましい。
【0031】
粉末材料を粉末容器302内に充填したら、粉末供給装置300のバルブを閉鎖する(S104)。
図4~6に示される実施形態のように、弾性部材361を備える場合、管390を供給通路356から引き抜くと自動的にバルブ本体358が供給通路356を閉鎖する。
図7,8に示される実施形態による粉末供給装置300の場合、管390を供給通路356から引き抜いた後、バルブ本体358を第1位置まで移動させて、供給通路356を閉鎖する。
図9に示される実施形態による粉末供給装置300の場合、第1バルブ330および第2バルブ332の両方を閉鎖することで供給通路356を閉鎖することができる。
【0032】
粉末供給装置300のバルブを閉鎖したら、バルブが閉鎖されているかどうかを確認する(S106)。
図4~8に示される実施形態による粉末供給装置300においては、排気通路368、396を介して、リング状の溝366、394を真空引きし、圧力監視通路370、398を介して、リング状の溝366、394内の圧力を測定する。リング状の溝366、394内の圧力が十分に低ければ、バルブ本体358およびOリング362,364によるシールが適切にされていると判断される。リング状の溝366、394内の圧力が所定の値よりも大きい場合。バルブ本体358およびOリング362,364によるシールが適切にされていないと判断される。シールが適切にされていない場合、バルブ機構の清掃や部品の交換などのメンテナンスを行う必要がある。
【0033】
バルブの閉鎖が確認されたら、粉末供給装置300から粉末材料を目的の場所へ供給する。たとえば、粉末供給装置300から粉末材料をAM装置100のDEDノズル250へ供給することができる。
【0034】
上述の実施形態による方法によれば、粉末材料を目的の場所へ供給する前に、バルブが閉鎖されていることを確認しているので、粉末材料の供給中に粉末材料が供給通路356などから漏れ出ることを防止することができる。
【0035】
上述の実施形態から少なくとも以下の技術的思想が把握される。
[形態1]形態1によれば、粉末供給装置が提供され、前記粉末供給装置は、粉末を保持するための容器と、前記容器へ粉末を供給するための供給通路と、前記供給通路を開閉するためのバルブ構造と、を有し、前記バルブ構造は、前記供給通路を閉鎖する第1位置と前記供給通路を開放する第2位置との間で移動可能なバルブ本体と、前記バルブ本体が着座するための弁座とを有し、前記バルブ本体は、第1シール部および第2シール部を有し、前記弁座は、前記第1シール部が着座する第1シート部と、前記第2シール部が着座する第2シート部と、を有し、前記バルブ構造は、前記第1シール部が前記第1シート部に着座し、且つ、前記第2シール部が前記第2シート部に着座したときに、密閉される空間を画定し、前記バルブ構造は、前記密閉される空間から気体を排出するための排気通路と、前記密閉される空間の圧力を監視するための圧力監視通路と、を有する。
【0036】
[形態2]形態2によれば、形態1による粉末供給装置において、前記供給通路は、粉末を前記容器へ供給するための管を挿入可能に構成されている。
【0037】
[形態3]形態3によれば、形態1または2による粉末供給装置において、前記第1シート部は第1Oリングを備え、前記第2シート部は第2Oリングを備える。
【0038】
[形態4]形態4によれば、形態1から形態3のいずれか1つの形態による粉末供給装置において、前記バルブ本体は、前記供給通路を閉鎖する第1位置と前記供給通路を開放する第2位置との間で回転移動可能にピンにより支持されている。
【0039】
[形態5]形態5によれば、形態4による粉末供給装置において、前記バルブ本体を前記第1位置に向けて付勢する弾性部材を有する。
【0040】
[形態6]形態6によれば、粉末供給装置が提供され、前記粉末供給装置は、粉末を保持するための容器と、前記容器へ粉末を供給するための供給通路と、前記供給通路の第1位置を開閉するための第1バルブと、前記供給通路の第2位置を開閉するための第2バルブと、前記供給通路の前記第1位置と前記第2位置との間の空間から気体を排出するための排気通路と、前記供給通路の前記第1位置と前記第2位置との間の空間の圧力を測定するための圧力測定通路と、を有する。
【0041】
[形態7]形態7よれば、粉末供給装置から粉末材料を供給するための方法が提供され、前記粉末供給装置は、粉末を保持するための容器と、前記容器へ粉末を供給するための供給通路と、前記供給通路を開閉するためのバルブと、を有し、前記方法は、前記バルブを開放するステップと、前記供給通路を通じて粉末材料を前記容器へ充填するステップと、前記バルブを閉鎖するステップと、前記バルブが閉鎖されているかどうかを確認するステップと、前記バルブが閉鎖されていることが確認された後に、前記粉末供給装置から粉末材料を供給するステップと、を有する。
【0042】
[形態8]形態8によれば、造形物を製造するためのAM装置が提供され、前記AM装置は、DEDノズルを有し、前記DEDノズルは、前記DEDノズルの先端に設けられたレーザー光を出射するためのレーザー口、および前記レーザー口に連通する、前記DEDノズル内をレーザー光が通過するためのレーザー通路と、前記DEDノズルの先端に設けられた粉末材料を出射するための粉体口、および前記粉体口に連通する、前記DEDノズル内を粉末材料が通過するための粉体通路と、を有し、前記AM装置は、前記DEDノズルに粉末材料を供給するための、形態1から形態6のいずれか1つの形態による粉末供給装置を有する。
【符号の説明】
【0043】
100…AM装置
300…粉末供給装置
301…粉末材料
302…粉末容器
304…計量装置
306…ガス源
310…攪拌装置
330…第1バルブ
332…第2バルブ
334…排気ライン
336…圧力監視ライン
350…カバー
352…カバー本体
354…供給口
356…供給通路
357…バルブ機構
358…バルブ本体
360…ピン
362…第1Oリング
364…第2Oリング
366…リング状の溝
368…排気通路
370…圧力監視通路
372…真空ポンプ
374…圧力計
390…管
394…リング状の溝
396…排気通路
398…圧力監視通路